(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収装置及び二酸化炭素回収方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/62 20060101AFI20230829BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20230829BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20230829BHJP
B01D 53/047 20060101ALI20230829BHJP
B01D 53/08 20060101ALI20230829BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20230829BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20230829BHJP
C07C 1/12 20060101ALI20230829BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20230829BHJP
B01J 23/46 20060101ALI20230829BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230829BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
B01D53/14 100
B01D53/04 220
B01D53/04 230
B01D53/047
B01D53/08
B01D53/26 100
B01D53/26 200
C07C9/04
C07C1/12
B01J35/02 G
B01J23/46 Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020119418
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 陽介
(72)【発明者】
【氏名】廣田 靖樹
(72)【発明者】
【氏名】山内 崇史
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-108290(JP,A)
【文献】特開2019-210260(JP,A)
【文献】特開2019-142807(JP,A)
【文献】特開2019-142806(JP,A)
【文献】特開2020-100597(JP,A)
【文献】特開2020-28847(JP,A)
【文献】特開2000-143204(JP,A)
【文献】国際公開第2019/73867(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/62
B01D 53/14
B01D 53/04
B01D 53/047
B01D 53/08
B01D 53/26
C07C 9/04
C07C 1/12
B01J 35/02
B01J 23/46
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素吸蔵性能を有する金属酸化物と、メタン化触媒性能を有する金属と、を含む二酸化炭素吸蔵還元触媒を収容する二酸化炭素回収還元器と、
二酸化炭素吸蔵性能を有する吸着材料を収容する二酸化炭素吸蔵器と、
前記二酸化炭素回収還元器に水素を供給する水素供給源と、
前記二酸化炭素吸蔵器に二酸化炭素含有ガスを供給する二酸化炭素含有ガス供給流路と、
前記二酸化炭素吸蔵器から前記二酸化炭素回収還元器へガスを供給する第1ガス供給流路と、
前記二酸化炭素回収還元器から大気へガスを排出する排出流路と、
前記二酸化炭素回収還元器から前記二酸化炭素吸蔵器へガスを供給する第2ガス供給流路と、
を備える二酸化炭素回収装置。
【請求項2】
前記二酸化炭素含有ガスを生成する燃焼器と、
前記吸着材料から脱離した二酸化炭素を、メタンに転化するメタン転化器と、
をさらに備える、請求項1に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項3】
前記二酸化炭素吸蔵器内の圧力を低下させるポンプをさらに備える、請求項1又は請求項2に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項4】
2基以上の二酸化炭素吸蔵器及び2基以上の二酸化炭素回収還元器をそれぞれ並列に備える、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項5】
2基以上の二酸化炭素吸蔵器及び2基以上の二酸化炭素回収還元器を備え、
前記二酸化炭素含有ガスが供給される少なくとも1基の二酸化炭素吸蔵器と、前記二酸化炭素回収還元器から排出されたガスが供給される少なくとも1基の二酸化炭素吸蔵器との間で、収容されている吸着材料を互いに交換する第1交換部と、
前記二酸化炭素吸蔵器から排出されたガスが供給される少なくとも1基の二酸化炭素回収還元器と、前記水素が供給される少なくとも1基の二酸化炭素回収還元器との間で、収容されている二酸化炭素吸蔵還元触媒を互いに交換する第2交換部と、をさらに備える、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項6】
前記第1交換部は、各二酸化炭素吸蔵器内で、ガスの流れ方向と対向する方向に向かって、各吸着材料を移動させ、
前記第2交換部は、各二酸化炭素回収還元器内で、ガスの流れ方向と対向する方向に向かって、各二酸化炭素吸蔵還元触媒を移動させる、請求項5に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項7】
前記二酸化炭素回収還元器と前記二酸化炭素吸蔵器との間に、水分を除去する除湿器をさらに備える、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項8】
前記二酸化炭素回収還元器で発生した排熱を蓄熱する蓄熱器をさらに備える、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項9】
二酸化炭素吸蔵性能を有する金属酸化物と、メタン化触媒性能を有する金属と、を含む二酸化炭素吸蔵還元触媒を収容する二酸化炭素回収還元器に水素を供給する工程と、
二酸化炭素吸蔵性能を有する吸着材料を収容する二酸化炭素吸蔵器に二酸化炭素含有ガスを供給する工程と、
前記二酸化炭素吸蔵器から前記二酸化炭素回収還元器へガスを供給する工程と、
前記二酸化炭素回収還元器から大気へガスを排出する工程と、
前記二酸化炭素回収還元器から前記二酸化炭素吸蔵器へガスを供給する工程と、
を含む二酸化炭素回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二酸化炭素回収装置及び二酸化炭素回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素を回収する方法は、地球温暖化問題における二酸化炭素排出量の削減という点で注目されている。
【0003】
特許文献1には、二酸化炭素吸蔵能及びメタン生成能を有する二酸化炭素吸蔵還元型触媒を備える反応器と、メタン化触媒を備える反応器と、パージガスを供給する手段と、還元性ガスを供給する手段とを備える、二酸化炭素含有ガスからメタンを製造するための装置であって、2基以上の二酸化炭素吸蔵還元型触媒を備える反応器が並列に配置されており、少なくとも1基のパージガスを供給する手段及び少なくとも1基の還元性ガスを供給する手段が、ガス流路の二酸化炭素吸蔵還元型触媒を備える反応器より上流に配置されており、少なくとも1基のメタン化触媒を備える反応器が、ガス流路の二酸化炭素吸蔵還元型触媒を備える反応器より下流に配置されており、二酸化炭素吸蔵還元型触媒を備える反応器のガス出口と該反応器以外の少なくとも1基の二酸化炭素吸蔵還元型触媒を備える他の反応器のガス入口とが、反応器のガス出口から排出されたパージガスを他の反応器のガス入口から供給するためのパージガス再循環ラインで接続されているメタンの製造装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二酸化炭素を含むガスから、二酸化炭素を分離回収する場合において、エネルギー消費を抑えることが求められている。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、二酸化炭素を含むガスから、二酸化炭素を回収し、低エネルギーでメタンに変換する二酸化炭素回収装置を提供することである。
また、本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、二酸化炭素を含むガスから、二酸化炭素を回収し、低エネルギーでメタンに変換する二酸化炭素回収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を含む。
<1>二酸化炭素吸蔵性能を有する金属酸化物と、メタン化触媒性能を有する金属と、を含む二酸化炭素吸蔵還元触媒を収容する二酸化炭素回収還元器と、二酸化炭素吸蔵性能を有する吸着材料を収容する二酸化炭素吸蔵器と、二酸化炭素回収還元器に水素を供給する水素供給源と、二酸化炭素吸蔵器に二酸化炭素含有ガスを供給する二酸化炭素含有ガス供給流路と、二酸化炭素吸蔵器から二酸化炭素回収還元器へガスを供給する第1ガス供給流路と、二酸化炭素回収還元器から大気へガスを排出する排出流路と、二酸化炭素回収還元器から二酸化炭素吸蔵器へガスを供給する第2ガス供給流路と、を備える二酸化炭素回収装置。
<2>二酸化炭素含有ガスを生成する燃焼器と、吸着材料から脱離した二酸化炭素を、メタンに転化するメタン転化器と、をさらに備える、<1>に記載の二酸化炭素回収装置。
<3>二酸化炭素吸蔵器内の圧力を低下させるポンプをさらに備える、<1>又は<2>に記載の二酸化炭素回収装置。
<4>2基以上の二酸化炭素吸蔵器及び2基以上の二酸化炭素回収還元器をそれぞれ並列に備える、<1>~<3>のいずれか1つに記載の二酸化炭素回収装置。
<5>2基以上の二酸化炭素吸蔵器及び2基以上の二酸化炭素回収還元器を備え、二酸化炭素含有ガスが供給される少なくとも1基の二酸化炭素吸蔵器と、二酸化炭素回収還元器から排出されたガスが供給される少なくとも1基の二酸化炭素吸蔵器との間で、収容されている吸着材料を互いに交換する第1交換部と、二酸化炭素吸蔵器から排出されたガスが供給される少なくとも1基の二酸化炭素回収還元器と、水素が供給される少なくとも1基の二酸化炭素回収還元器との間で、収容されている二酸化炭素吸蔵還元触媒を互いに交換する第2交換部と、をさらに備える、<1>~<3>のいずれか1つに記載の二酸化炭素回収装置。
<6>第1交換部は、各二酸化炭素吸蔵器内で、ガスの流れ方向と対向する方向に向かって、各吸着材料を移動させ、第2交換部は、各二酸化炭素回収還元器内で、ガスの流れ方向と対向する方向に向かって、各二酸化炭素吸蔵還元触媒を移動させる、<5>に記載の二酸化炭素回収装置。
<7>二酸化炭素回収還元器と二酸化炭素吸蔵器との間に、水分を除去する除湿器をさらに備える、<1>~<6>のいずれか1つに記載の二酸化炭素回収装置。
<8>二酸化炭素回収還元器で発生した排熱を蓄熱する蓄熱器をさらに備える、<1>~<7>のいずれか1つに記載の二酸化炭素回収装置。
<9>二酸化炭素吸蔵性能を有する金属酸化物と、メタン化触媒性能を有する金属と、を含む二酸化炭素吸蔵還元触媒を収容する二酸化炭素回収還元器に水素を供給する工程と、二酸化炭素吸蔵性能を有する吸着材料を収容する二酸化炭素吸蔵器に二酸化炭素含有ガスを供給する工程と、二酸化炭素吸蔵器から前記二酸化炭素回収還元器へガスを供給する工程と、二酸化炭素回収還元器から大気へガスを排出する工程と、二酸化炭素回収還元器から二酸化炭素吸蔵器へガスを供給する工程と、を含む二酸化炭素回収方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施態様によれば、二酸化炭素を含むガスから、二酸化炭素を回収し、低エネルギーでメタンに変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態の二酸化炭素回収装置を示す概略図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の二酸化炭素回収装置を用いた二酸化炭素回収方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、第2実施形態の二酸化炭素回収装置を示す概略図である。
【
図4】
図4は、第3実施形態の二酸化炭素回収装置を示す概略図である。
【
図5】
図5は、第3実施形態の二酸化炭素回収装置を用いた二酸化炭素回収方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第4実施形態の二酸化炭素回収装置を示す概略図である。
【
図7】
図7は、第4実施形態の二酸化炭素回収装置を用いた二酸化炭素回収方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第5実施形態の二酸化炭素回収装置を示す概略図である。
【
図9】
図9は、比較例1の二酸化炭素回収装置を示す概略図である。
【
図10】
図10は、比較例2の二酸化炭素回収装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の二酸化炭素回収装置を示す概略図である。
図1に示すように、二酸化炭素回収装置100は、燃焼器Aと、原料ガスの供給源の一例である熱利用機器Bと、二酸化炭素吸蔵器Cと、二酸化炭素回収還元器Dと、メタン転化器Eと、水素供給源Hと、を備える。
【0012】
燃焼器Aは、ガスを燃焼するための装置である。燃焼器Aには、大気供給流路11と、燃焼ガス供給流路12と、メタン供給流路19と、が接続されている。燃焼器Aの運転は、制御部(図示せず)によって制御される。
【0013】
燃焼器Aでは、燃料(具体的には、水素、メタン等)を燃焼させ、燃焼ガスを発生させる。燃焼温度は特に限定されないが、例えば、800℃~1500℃である。燃焼に用いる加熱器としては、バーナー、ガスタービン、及びボイラーが挙げられる。
【0014】
大気供給流路11は、燃焼器Aに大気を供給するための流路である。大気供給流路11上には、大気供給バルブV1が設けられている。大気供給バルブV1の開弁時には、大気が燃焼器Aに供給される。一方、大気供給バルブV1の閉弁時には、大気の燃焼器Aへの供給が停止される。大気供給バルブV1の開閉は、制御部(図示せず)によって制御される。大気には、酸素、窒素、二酸化炭素等が含まれている。
【0015】
第1燃焼ガス供給流路12は、燃焼器Aで発生した燃焼ガスを熱利用機器Bへ供給するための流路である。第1燃焼ガス供給流路12上には、第1燃焼ガス供給バルブV2が設けられている。第1燃焼ガス供給バルブV2の開弁時には、燃焼ガスが熱利用機器Bに供給される。一方、第1燃焼ガス供給バルブV2の閉弁時には、燃焼ガスの熱利用機器Bへの供給が停止される。第1燃焼ガス供給バルブV2の開閉は、制御部によって制御される。
【0016】
メタン供給流路19は、メタン転化器Eで生成された生成ガスを燃焼器Aに供給するための流路である。生成ガスには、主にメタンが含まれている。メタン供給流路19上には、メタン供給バルブV9が設けられている。メタン供給バルブV9の開弁時には、生成ガスが燃焼器Aに供給される。一方、メタン供給バルブV9の閉弁時には、生成ガスの燃焼器Aへの供給が停止される。メタン供給バルブV9の開閉は、制御部によって制御される。
【0017】
熱利用機器Bは、燃焼器Aで発生した燃焼ガスの熱エネルギーを利用する機器である。燃焼ガスは、熱利用機器Bで熱エネルギーに変換されて使用された後、温度が低下する。燃焼ガスには、二酸化炭素、窒素、水蒸気等が含まれている。熱利用機器Bとしては、例えば、給湯器及び空調機器が挙げられる。熱利用機器Bには、第1燃焼ガス供給流路12と、第2燃焼ガス供給流路13と、が接続されている。
【0018】
第2燃焼ガス供給流路13は、熱利用機器Bから排出された燃焼ガスを二酸化炭素吸蔵器Cへ供給するための流路である。第2燃焼ガス供給流路13上には、第2燃焼ガス供給バルブV3が設けられている。第2燃焼ガス供給バルブV3の開弁時には、燃焼ガスが二酸化炭素吸蔵器Cに供給される。一方、第2燃焼ガス供給バルブV3の閉弁時には、燃焼ガスの二酸化炭素吸蔵器Cへの供給が停止される。第2燃焼ガス供給バルブV3の開閉は、制御部によって制御される。
【0019】
二酸化炭素吸蔵器Cは、吸着材料としてゼオライトを収容している。二酸化炭素吸蔵器Cには、第2燃焼ガス供給流路13と、ガス供給流路14と、ガス供給流路15と、生成ガス供給流路18と、が接続されている。
【0020】
吸着材料としては、ゼオライト以外に、活性炭、シリカゲル、及びアミン担持固体が挙げられる。
【0021】
また、二酸化炭素吸蔵器Cには、濃度検出部として二酸化炭素検出センサ(図示せず)が取り付けられている。二酸化炭素検出センサは、二酸化炭素吸蔵器Cの雰囲気中の二酸化炭素濃度を検出する装置であり、制御部と接続されている。
【0022】
二酸化炭素回収還元器Dは、二酸化炭素吸蔵器Cで二酸化炭素が吸蔵された後の残留ガスに含まれる二酸化炭素を吸蔵し、かつ、吸蔵された二酸化炭素を、供給される水素により還元してメタンに変換するための装置である。二酸化炭素回収還元器Dは、二酸化炭素吸蔵還元触媒を収容している。二酸化炭素吸蔵還元触媒は、二酸化炭素吸蔵性能を有する金属酸化物と、メタン化触媒性能を有する金属と、を含む。
【0023】
二酸化炭素吸蔵還元触媒は、二酸化炭素吸蔵性能を有する金属酸化物と、メタン化触媒性能を有する金属と、を担体に担持させた触媒であることが好ましい。担体は、アルミナであり、二酸化炭素吸蔵性能を有する金属酸化物は、酸化カルシウムであり、メタン化触媒性能を有する金属は、ルテニウム(Ru)である。
【0024】
担体としては、アルミナ以外に、例えば、シリカ、シリカ-アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア及びセリア-ジルコニアが挙げられる。二酸化炭素吸蔵性能を有する金属酸化物としては、例えば、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物が挙げられ、酸化カルシウム以外に、酸化カリウム及び酸化マグネシウムが挙げられる。メタン化触媒性能を有する金属としては、ルテニウム(Ru)以外に、例えば、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rd)、コバルト(Co)、鉄(Fe)及びマンガン(Mn)が挙げられる。これらの金属は1種のみであってもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0025】
また、二酸化炭素吸蔵還元触媒には、焼結防止剤が含まれていてもよい。二酸化炭素吸蔵性能を有する金属酸化物が酸化カルシウムである場合に、焼結防止剤によって、酸化カルシウム同士の焼結を防止することができる。酸化カルシウム同士が焼結すると、比表面積が低下して、反応のための界面が小さくなる。また、固体内の拡散距離が長くなることにより、酸化カルシウムと二酸化炭素との反応性が低下する傾向にある。酸化カルシウム同士の焼結を防止することにより、酸化カルシウムと二酸化炭素との反応性を高く維持することができる。
【0026】
焼結防止剤としては、例えば、マグネシア、アルミナ、カルシウムアルミネート、シリカ、カルシウムシリケート、チタニア、カルシウムチタネート、ジルコニア、カルシウムジルコネート、イットリア、及びランタニアが挙げられる。
【0027】
二酸化炭素回収還元器Dには、ガス供給流路14と、ガス供給流路15と、ガス排出流路16と、水素供給流路17と、が接続されている。
【0028】
また、二酸化炭素回収還元器Dには、濃度検出部として二酸化炭素検出センサ(図示せず)が取り付けられている。二酸化炭素検出センサは、二酸化炭素回収還元器Dの雰囲気中の二酸化炭素濃度を検出する装置であり、制御部と接続されている。
【0029】
ガス供給流路14は、二酸化炭素吸蔵器Cで二酸化炭素が吸蔵された後の残留ガスを二酸化炭素回収還元器Dへ供給するための流路である。ガス供給流路14上には、ガス供給バルブV4が設けられている。ガス供給バルブV4の開弁時には、残留ガスが二酸化炭素回収還元器Dに供給される。一方、ガス供給バルブV4の閉弁時には、残留ガスの二酸化炭素回収還元器Dへの供給が停止される。ガス供給バルブV4の開閉は、制御部によって制御される。
【0030】
ガス供給流路15は、二酸化炭素回収還元器Dで吸蔵された二酸化炭素のメタン化反応によって得られた生成ガスを、二酸化炭素吸蔵器Cへ供給するための流路である。ガス供給流路15上には、ガス供給バルブV5が設けられている。ガス供給バルブV5の開弁時には、生成ガスが二酸化炭素吸蔵器Cに供給される。一方、ガス供給バルブV5の閉弁時には、生成ガスの二酸化炭素吸蔵器Cへの供給が停止される。ガス供給バルブV5の開閉は、制御部によって制御される。
【0031】
ガス排出流路16は、二酸化炭素回収還元器Dで二酸化炭素が吸蔵された後の残留ガスを、大気中へ排出する流路である。残留ガスは、二酸化炭素回収還元器Dで吸蔵されなかった、二酸化炭素以外のガスであり、主に、窒素及び水蒸気からなる。ガス排出流路16上には、ガス排出バルブV6が設けられている。ガス排出バルブV6の開弁時には、残留ガスが大気中へ排出される。一方、ガス排出バルブV6の閉弁時には、残留ガスの大気中への排出が停止される。ガス排出バルブV6の開閉は、制御部によって制御される。
【0032】
水素供給流路17は、水素供給源Hから二酸化炭素回収還元器Dへ水素を供給するための流路である。水素供給流路17上には、水素供給バルブV7が設けられている。水素供給バルブV7の開弁時には、水素が二酸化炭素回収還元器Dへ供給される。一方、水素供給バルブV7の閉弁時には、水素の二酸化炭素回収還元器Dへの供給が停止される。水素供給バルブV7の開閉は、制御部によって制御される。
【0033】
生成ガス供給流路18は、二酸化炭素回収還元器Dで吸蔵された二酸化炭素のメタン化反応によって得られた生成ガスと、二酸化炭素吸蔵器Cに収容されているゼオライトから脱離した二酸化炭素と、を含む混合ガスを、メタン転化器Eへ供給するための流路である。生成ガス供給流路18上には、生成ガス供給バルブV8が設けられている。生成ガス供給バルブV8の開弁時には、混合ガスがメタン転化器Eへ供給される。一方、生成ガス供給バルブV8の閉弁時には、混合ガスのメタン転化器Eへの供給が停止される。生成ガス供給バルブV8の開閉は、制御部によって制御される。
【0034】
メタン転化器Eは、二酸化炭素吸蔵器Cから供給された混合ガスに含まれる二酸化炭素及び水素からメタンを生成するための装置である。メタン転化器Eは、メタン化触媒を収容している。メタン転化器Eには、生成ガス供給流路18と、メタン供給流路19と、が接続されている。メタン化触媒は、メタン化触媒性能を有する金属を担体に担持させた触媒であることが好ましい。メタン化触媒性能を有する金属は、ルテニウム(Ru)であり、担体はアルミナである。
【0035】
メタン化触媒性能を有する金属としては、ルテニウム(Ru)以外に、例えば、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rd)、コバルト(Co)、鉄(Fe)及びマンガン(Mn)が挙げられる。これらの金属は1種のみであってもよく、2種以上を組み合わせてもよい。担体としては、アルミナ以外に、例えば、シリカ、シリカ-アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア及びセリア-ジルコニアが挙げられる
【0036】
メタン供給流路19は、メタン転化器Eで生成した生成ガスを燃焼器Aへ供給するための流路である。メタン供給流路19上には、メタン供給バルブV9が設けられている。メタン供給バルブV9の開弁時には、生成ガスが燃焼器Aへ供給される。一方、メタン供給バルブV9の閉弁時には、生成ガスの燃焼器Aへの供給が停止される。メタン供給バルブV9の開閉は、制御部によって制御される。
【0037】
水素供給源Hは、二酸化炭素回収還元器Dへ水素を供給するための供給源である。水素供給源Hには、水素供給流路17が接続されている。水素は、水素ガスとして供給されることが好ましい。
【0038】
次に、
図2を参照して、第1実施形態の二酸化炭素回収装置を用いた二酸化炭素回収方法について説明する。
図2は、第1実施形態の二酸化炭素回収装置を用いた二酸化炭素回収方法を示すフローチャートである。
【0039】
最初に、大気供給バルブV1、第1燃焼ガス供給バルブV2、第2燃焼ガス供給バルブV3、ガス供給バルブV4、ガス供給バルブV5、ガス排出バルブV6、水素供給バルブV7、生成ガス供給バルブV8、メタン供給バルブV9は閉じているものとする。また、燃焼器Aには、あらかじめ、メタンが貯蔵されているものとする。各バルブは、図示しないが、制御部(例えばコンピュータ)と電気的接続され、制御部からの信号により開閉動作できるようになっている。
【0040】
まず、制御部は、燃焼器Aの運転を開始させ、大気供給バルブV1、第1燃焼ガス供給バルブV2、第2燃焼ガス供給バルブV3、ガス供給バルブV4、及びガス排出バルブV6を開ける(ステップS11)。
【0041】
大気供給バルブV1の開弁により、大気供給流路11を介して、燃焼器Aへ大気が供給される。大気中の二酸化炭素濃度は約400ppmとする。燃焼器Aでメタンが燃焼され、燃焼ガスが発生する。
【0042】
第1燃焼ガス供給バルブV2の開弁により、第1燃焼ガス供給流路12を介して、燃焼器Aから熱利用機器Bへ燃焼ガスが供給される。熱利用機器Bにおいて、燃焼ガスの熱エネルギーが使用され、燃焼ガスの温度が低下する。
【0043】
第2燃焼ガス供給バルブV3の開弁により、第2燃焼ガス供給流路13を介して、熱利用機器Bから二酸化炭素吸蔵器Cへ燃焼ガスが供給される。
【0044】
二酸化炭素吸蔵器Cでは、燃焼ガスに含まれる二酸化炭素が、ゼオライトに吸蔵される。これにより、二酸化炭素吸蔵器Cのガス供給口における二酸化炭素濃度と比較して、ガス排出口における二酸化炭素濃度が低下する。
【0045】
ガス供給バルブV4の開弁により、二酸化炭素吸蔵器C内の残留ガスがガス供給流路4を介して二酸化炭素回収還元器Dへ供給される。ここでいう残留ガスは、二酸化炭素吸蔵器Cに収容されている吸着材料に二酸化炭素が吸蔵された後の残留ガスである。残留ガスには、窒素、水蒸気、及び、二酸化炭素が含まれる。
【0046】
二酸化炭素回収還元器Dでは、二酸化炭素吸蔵器Cから供給された残留ガスに含まれる二酸化炭素が、二酸化炭素吸蔵還元触媒に吸蔵される。具体的には、二酸化炭素回収還元器D内において、二酸化炭素吸蔵還元触媒に含まれる酸化カルシウムが二酸化炭素と反応して、炭酸カルシウムとなる反応が進行する。これにより、二酸化炭素回収還元器Dのガス供給口における二酸化炭素濃度と比較して、ガス排出口における二酸化炭素濃度が低下する。
【0047】
ガス排出バルブV6の開弁により、二酸化炭素回収還元器D内の残留ガスがガス排出流路16を介して大気中へ排出される。残留ガスには、窒素、水蒸気、及び、二酸化炭素が含まれる。大気中へ排出される残留ガスに含まれる二酸化炭素濃度は、10ppm以下である。
【0048】
次に、制御部は、燃焼ガスの供給停止条件を満たしたか否かを判定する(ステップS12)。供給停止条件としては、例えば、二酸化炭素回収還元器Dのガス排出口における二酸化炭素濃度があらかじめ設定された濃度(例えば、10ppm)を超えたという条件が挙げられる。
【0049】
制御部は、燃焼ガスの供給停止条件を満たしたと判定すると(ステップS12:YES)、燃焼器Aの運転を停止させ、大気供給バルブV1、第1燃焼ガス供給バルブV2、第2燃焼ガス供給バルブV3、ガス供給バルブV4、及びガス排出バルブV6を閉じる。(ステップS13)。制御部が燃焼ガスの供給停止条件を満たしたと判定するまで、熱利用機器Bから二酸化炭素吸蔵器Cへ燃焼ガスが供給され、二酸化炭素吸蔵器Cから二酸化炭素回収還元器Dへガスが供給され、二酸化炭素回収還元器D内の残留ガスがガス排出流路16を介して大気中へ排出される。(ステップS12:NO)。
【0050】
次に、制御部は、ガス供給バルブV5、水素供給バルブV7、生成ガス供給バルブV8、及びメタン供給バルブV9を開ける(ステップS14)。
【0051】
水素供給バルブV7の開弁により、水素供給流路17を介して、水素供給源Hから二酸化炭素回収還元器Dへ水素が供給される。
【0052】
二酸化炭素回収還元器Dでは、二酸化炭素吸蔵還元触媒に吸蔵された二酸化炭素が脱離し、水素によって還元される。これにより、メタンと水素とを主に含む生成ガスが得られる。
【0053】
ガス供給バルブV5の開弁により、ガス供給流路15を介して、二酸化炭素回収還元器Dから二酸化炭素吸蔵器Cへ生成ガスが供給される。
【0054】
二酸化炭素吸蔵器Cでは、熱を付与することにより、ゼオライトに吸蔵されている二酸化炭素が脱離する。
【0055】
生成ガス供給バルブV8の開弁により、生成ガス供給流路18を介して、二酸化炭素吸蔵器Cからメタン転化器Eへ、二酸化炭素回収還元器Dで得られた生成ガスと、ゼオライトから脱離した二酸化炭素と、を含む混合ガスが供給される。混合ガスには、メタン、二酸化炭素及び水素が含まれている。
【0056】
メタン転化器Eでは、メタン化触媒と水素によって、混合ガスに含まれる二酸化炭素がメタンに転化される。これにより、水素と高濃度のメタンが得られる。
【0057】
メタン供給バルブV9の開弁により、メタン供給流路19を介して、メタン転化器Eから燃焼器Aへ、メタン転化器Eで生成した水素と高濃度のメタンが供給される。
【0058】
次に、制御部は、水素供給停止条件を満たしたか否かを判定する(ステップS15)。水素供給停止条件としては、例えば、二酸化炭素吸蔵器Cのガス排出口からメタン化反応器へ排出された二酸化炭素の累積量に対する水素の累積量(水素/二酸化炭素)の比率が4を超えたという条件が挙げられる。また、水素供給停止条件としては、例えば、メタン転化器Eのガス排出口におけるメタン濃度があらかじめ設定された濃度(例えば、99体積%)を下回ったという条件が挙げられる。
【0059】
制御部は、水素供給停止条件を満たしたと判定すると(ステップS15:YES)、ガス供給バルブV5、水素供給バルブV7、生成ガス供給バルブV8、及びメタン供給バルブV9を閉める(ステップS16)。制御部が水素供給停止条件を満たしたと判定するまで、二酸化炭素回収還元器Dへ水素が供給される(ステップS15:NO)。
【0060】
制御部は、熱利用機器Bによる熱要求があるか否かを判定する(ステップS17)。
【0061】
制御部は、熱利用機器Bによる熱要求があると判定すると(ステップS17:YES)、ステップS11へ戻って、ステップS11以降の処理を繰り返す。制御部は、熱利用機器Bによる熱要求がないと判定すると(ステップS17:NO)、本処理を終了する。
【0062】
第1実施形態の二酸化炭素回収装置100を用いると、取り込んだ大気から二酸化炭素を分離回収することができる。二酸化炭素吸蔵器Cには、吸着材料が収容されており、吸着材料に二酸化炭素を吸蔵させることにより、雰囲気中の二酸化炭素濃度を約3000ppmまで低下させることができる。二酸化炭素回収還元器Dに収容されている二酸化炭素吸蔵還元触媒は酸化カルシウムを含んでおり、二酸化炭素を炭酸カルシウムに変換させることにより、雰囲気中の二酸化炭素濃度を約10ppmまで低下させることができる。また、二酸化炭素回収還元器Dに収容されている二酸化炭素吸蔵還元触媒はルテニウムを含んでおり、二酸化炭素回収還元器Dに水素を供給することにより、炭酸カルシウムからメタンに転化させることができる。
【0063】
二酸化炭素を吸蔵した二酸化炭素吸蔵還元触媒に水素を流通させてメタンを生成させる場合、反応生成物であるメタンの濃度が高くなると、炭酸カルシウムと水素からメタンが生成する反応が進行しにくくなる。例えば、二酸化炭素吸蔵器に水素を導入すると、水素と二酸化炭素の混合ガスが排出される。この混合ガスが二酸化炭素回収還元容器に供給されると、炭酸カルシウムよりも優先してガス中の二酸化炭素がメタンに転化されるためメタン濃度が上昇し、炭酸カルシウムと水素からメタンを生成する反応が進行しにくくなる。これに対して、第1実施形態の二酸化炭素回収装置100では、二酸化炭素吸蔵器Cから二酸化炭素回収還元器Dに供給されるガスが二酸化炭素を含まないため、炭酸カルシウムのメタン化反応が進行しやすい。
【0064】
第1実施形態の二酸化炭素回収装置100では、二酸化炭素回収還元器Dから二酸化炭素吸蔵器Cへ、メタンと水素を含む混合ガスが供給される。二酸化炭素吸蔵器Cに供給される混合ガスには二酸化炭素が含まれてない。そのため、二酸化炭素吸蔵器Cにおいて、吸着材料から二酸化炭素の脱離が二酸化炭素によって阻害されることなく進行する。
【0065】
通常、炭酸カルシウムから二酸化炭素を脱離させるためには、約1000℃まで加熱する必要がある。これに対して、炭酸カルシウムをメタンに変換させる反応は、約300℃で進行する。第1実施形態の二酸化炭素回収装置100では、酸化カルシウム1g当たりの二酸化炭素吸蔵量が18mモル、酸化カルシウムの比熱が47J/モル・Kであり、酸化カルシウムの分子量が56g/モルであり、昇温幅を300℃とすると、酸化カルシウムの顕熱が二酸化炭素1モル当たり14kJであり、炭酸カルシウムからの二酸化炭素の脱離熱が二酸化炭素1モル当たり175kJである。すなわち、エネルギー消費量は、二酸化炭素1モル当たり189kJである。
【0066】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態の二酸化炭素回収装置を示す概略図である。なお、第2実施形態の二酸化炭素回収装置について、第1実施形態の二酸化炭素回収装置と同一の構成及び作用効果については、同一の符号を用いて説明を省略する。
【0067】
第2実施形態の二酸化炭素回収装置200の、第1実施形態の二酸化炭素回収装置100と異なる構成について説明する。
【0068】
第2実施形態の二酸化炭素回収装置200は、二酸化炭素吸蔵器Cとメタン転化器Eとの間に、二酸化炭素吸蔵器C内の圧力を低下させるポンプP1を備える。ポンプP1の動作は、制御部によって制御される。二酸化炭素吸蔵器内の圧力は、10~200,000Paに調整されることが好ましい。
【0069】
次に、第2実施形態の二酸化炭素回収装置200を用いた二酸化炭素回収方法について説明する。
【0070】
第2実施形態では、第1実施形態のステップS14において、制御部が、ガス供給バルブV5、水素供給バルブV7、生成ガス供給バルブV8、及びメタン供給バルブV9を開けると共に、ポンプP1の動作を開始させる点で、第1実施形態と異なる。また、第2実施形態では、第1実施形態のステップS16において、制御部が、ガス供給バルブV5、水素供給バルブV7、生成ガス供給バルブV8、及びメタン供給バルブV9を閉めると共に、ポンプP1の動作を停止させる点で、第1実施形態と異なる。
【0071】
第2実施形態の二酸化炭素回収装置200では、二酸化炭素が吸蔵されている吸着材料から二酸化炭素を脱離させる際に、二酸化炭素吸蔵器C内の圧力を低下させることにより、二酸化炭素の脱離を促進させることができる。ポンプP1が設けられていない場合と比較して、吸着材料からより多くの二酸化炭素を脱離させることができ、吸着材料の吸蔵可能な容量が増える。そのため、次のサイクルで、二酸化炭素を吸蔵させる際に、二酸化炭素の吸蔵量が増え、1サイクル当たりの二酸化炭素回収量及びメタン生成量が向上する。
【0072】
なお、ポンプP1の動作を開始させるタイミングは、ガス供給バルブV5、水素供給バルブV7、生成ガス供給バルブV8、及びメタン供給バルブV9と同時である場合に限らず、各バルブを開けた後の任意のタイミングであってよい。ポンプP1の動作を開始させるタイミングが早いほど、吸着材料の吸蔵可能な容量が増える。ポンプP1を動作させるエネルギー消費量とのバランスを考慮して、ポンプP1の動作を開始させるタイミングは適宜調整してもよい。
【0073】
[第3実施形態]
図4は、第3実施形態の二酸化炭素回収装置を示す概略図である。なお、第3実施形態の二酸化炭素回収装置について、第1実施形態の二酸化炭素回収装置100と同一の構成及び作用効果については、同一の符号を用いて説明を省略する。
【0074】
第3実施形態の二酸化炭素回収装置300の、第1実施形態の二酸化炭素回収装置100と異なる構成について説明する。
【0075】
第3実施形態の二酸化炭素回収装置300は、2基の二酸化炭素吸蔵器C1、C2と、2基の二酸化炭素回収還元器D1、D2と、二酸化炭素吸蔵器C1と二酸化炭素吸蔵器C2との間で吸着材料を交換する第1交換部51と、二酸化炭素回収還元器D1と二酸化炭素回収還元器D2との間で二酸化炭素吸蔵還元触媒を交換する第2交換部52と、を備える。
【0076】
二酸化炭素吸蔵器C1には、第2燃焼ガス供給流路13と、ガス供給流路14と、が接続されている。
【0077】
二酸化炭素回収還元器D1には、ガス供給流路14と、ガス排出流路16と、が接続されている。
【0078】
二酸化炭素吸蔵器C2には、ガス供給流路15と、生成ガス供給流路18と、が接続されている。
【0079】
二酸化炭素回収還元器D2には、ガス供給流路15と、水素供給流路17と、が接続されている。
【0080】
第1交換部51は、二酸化炭素吸蔵器C1と二酸化炭素吸蔵器C2との間で、収容されている吸着材料を互いに交換する手段である。
【0081】
第1交換部51は、二酸化炭素吸蔵器C1内で、ガスの流れ方向と対向する方向に向かって、吸着材料を移動させることが好ましい。ガスの流れ方向と対向する方向とは、ガス供給流路14と接続されているガス排出口から、第1燃焼ガス供給流路13と接続されているガス供給口に向かう方向である。同様に、第1交換部51は、二酸化炭素吸蔵器C2内で、ガスの流れ方向と対向する方向に向かって、吸着材料を移動させることが好ましい。ガスの流れ方向と対向する方向とは、生成ガス供給流路18と接続されているガス排出口から、ガス供給流路15と接続されているガス供給口に向かう方向である。
【0082】
吸着材料の材料供給口は、例えば、二酸化炭素吸蔵器C1の上部に設けられ、吸着材料の材料排出口は、二酸化炭素吸蔵器C1の下部に設けられている。これにより、重力を利用して、吸着材料を、二酸化炭素吸蔵器C1の上部から下部に向かって移動させることができる。一方、燃焼ガスのガス供給口は、例えば、二酸化炭素吸蔵器C1の下部に設けられ、燃焼ガスのガス排出口は、二酸化炭素吸蔵器C1の上部に設けられている。圧力差を利用して、燃焼ガスを、二酸化炭素吸蔵器C1の下部から上部に向かって移動させることができる。
【0083】
なお、吸着材料とガスの移動方向は、上下方向でなく、左右方向であってもよい。吸着材料を移動させるために、二酸化炭素吸蔵器C1内に、ベルトコンベア、スクリューコンベア等の搬送装置を設けてもよい。
【0084】
第2交換部52は、二酸化炭素回収還元器D1と二酸化炭素回収還元器D2との間で、収容されている二酸化炭素吸蔵還元触媒を互いに交換する手段である。
【0085】
第2交換部は、二酸化炭素回収還元器D1内で、ガスの流れ方向と対向する方向に向かって、二酸化炭素吸蔵還元触媒を移動させることが好ましい。ガスの流れ方向とは、外部へのガス排出口から、ガス供給流路14と接続されているガス供給口に向かう方向である。同様に、第2交換部は、二酸化炭素回収還元器D2内で、ガスの流れ方向と対向する方向に向かって、二酸化炭素吸蔵還元触媒を移動させることが好ましい。ガスの流れ方向と対向する方向とは、ガス供給流路15と接続されているガス排出口から、水素供給流路17と接続されているガス供給口に向かう方向である。
【0086】
二酸化炭素吸蔵還元触媒の材料供給口は、例えば、二酸化炭素回収還元器D1の上部に設けられ、二酸化炭素吸蔵還元触媒の材料排出口は、二酸化炭素回収還元器D1の下部に設けられている。これにより、重力を利用して、二酸化炭素吸蔵還元触媒を、二酸化炭素回収還元器D1の上部から下部に向かって移動させることができる。一方、二酸化炭素吸蔵器C1から供給されるガスのガス供給口は、例えば、二酸化炭素回収還元器D1の下部に設けられ、二酸化炭素吸蔵器C1から供給されるガスのガス排出口は、二酸化炭素回収還元器D1の上部に設けられている。圧力差を利用して、二酸化炭素吸蔵器C1から供給されるガスを、二酸化炭素回収還元器D1の下部から上部に向かって移動させることができる。
【0087】
なお、二酸化炭素吸蔵還元触媒とガスの移動方向は、上下方向でなく、左右方向であってもよい。二酸化炭素吸蔵還元触媒を移動させるために、二酸化炭素回収還元器D1内に、ベルトコンベア、スクリューコンベア等の搬送装置を設けてもよい。
【0088】
次に、
図5を参照して、第3実施形態の二酸化炭素回収装置300を用いた二酸化炭素回収方法について説明する。
図5は、第3実施形態の二酸化炭素回収装置を用いた二酸化炭素回収方法を示すフローチャートである。
【0089】
最初に、大気供給バルブV1、第1燃焼ガス供給バルブV2、第2燃焼ガス供給バルブV3、ガス供給バルブV4、ガス供給バルブV5、ガス排出バルブV6、水素供給バルブV7、生成ガス供給バルブV8、及びメタン供給バルブV9は閉じているものとする。
【0090】
まず、燃焼器Aの運転を開始させ、全てのバルブ、すなわち、大気供給バルブV1、第1燃焼ガス供給バルブV2、第2燃焼ガス供給バルブV3、ガス供給バルブV4、ガス供給バルブV5、ガス排出バルブV6、水素供給バルブV7、生成ガス供給バルブV8、及びメタン供給バルブV9を開ける。
【0091】
大気供給バルブV1、及び第1燃焼ガス供給バルブV2の開弁によるガスの流れは、第1実施形態と同様である。
【0092】
第2燃焼ガス供給バルブV3の開弁により、第2燃焼ガス供給流路13を介して、熱利用機器Bから二酸化炭素吸蔵器C1へ燃焼ガスが供給される。このとき、二酸化炭素吸蔵器C1内では、燃焼ガスの流れ方向と対向する方向に向かって、二酸化炭素吸蔵器C1に収容されている吸着材料を移動させる。
【0093】
ガス供給バルブV4の開弁により、二酸化炭素吸蔵器C1内の残留ガスがガス供給流路14を介して二酸化炭素回収還元器D1へ供給される。残留ガスには、窒素、水蒸気、及び二酸化炭素が含まれる。このとき、二酸化炭素回収還元器D1内では、残留ガスの流れ方向と対向する方向に向かって、二酸化炭素回収還元器D1に収容されている二酸化炭素吸蔵還元触媒を移動させる。
【0094】
ガス排出バルブV6の開弁により、二酸化炭素回収還元器D1内の残留ガスがガス排出流路16を介して大気中へ排出される。残留ガスには、窒素、水蒸気、及び、二酸化炭素が含まれる。大気中へ排出される残留ガスに含まれる二酸化炭素濃度は、10ppm以下である。
【0095】
水素供給バルブV7の開弁により、水素供給流路17を介して、水素供給源Hから二酸化炭素回収還元器D2へ水素が供給される。
【0096】
二酸化炭素回収還元器D2では、二酸化炭素吸蔵還元触媒に吸蔵された二酸化炭素が脱離し、水素によって還元される。これにより、メタンと水素とを主に含む生成ガスが得られる。
【0097】
ガス供給バルブV5の開弁により、ガス供給流路15を介して、二酸化炭素回収還元器D2から二酸化炭素吸蔵器C2へ生成ガスが供給される。
【0098】
生成ガス供給バルブV8の開弁により、生成ガス供給流路18を介して、二酸化炭素吸蔵器C2からメタン転化器Eへ、二酸化炭素回収還元器D1で得られた生成ガスと、ゼオライトから脱離した二酸化炭素と、を含む混合ガスが供給される。混合ガスには、メタン、二酸化炭素及び水素が含まれている。
【0099】
メタン供給バルブV9の開弁により、メタン供給流路19を介して、メタン転化器Eから燃焼器Aへ、メタン転化器Eで生成した水素と高濃度のメタンが供給される。
【0100】
第1交換部51は、任意のタイミングで、二酸化炭素吸蔵器C1と二酸化炭素吸蔵器C2との間で、それぞれに収容されている吸着材料を交換する。また、第2交換部52は、任意のタイミングで、二酸化炭素回収還元器D1と二酸化炭素回収還元器D2との間で、それぞれに収容されている二酸化炭素吸蔵還元触媒を交換する
【0101】
次に、制御部は、熱利用機器Bによる熱要求があるか否かを判定する(ステップS22)。
【0102】
制御部は、熱利用機器Bによる熱要求があると判定すると(ステップS22:YES)、ステップS21へ戻って、ステップS21以降の処理を繰り返す。制御部は、熱利用機器Bによる熱要求がないと判定すると(ステップS22:NO)、燃焼器Aの運転を停止させ、全てのバルブを閉じて(ステップS23)、本処理を終了する。
【0103】
第3実施形態の二酸化炭素回収装置300は、二酸化炭素含有ガスが供給される少なくとも1基の二酸化炭素吸蔵器と、二酸化炭素回収還元器から排出されたガスが供給される少なくとも1基の二酸化炭素吸蔵器との間で、収容されている吸着材料を互いに交換する第1交換部と、二酸化炭素吸蔵器から排出されたガスが供給される少なくとも1基の二酸化炭素回収還元器と、水素が供給される少なくとも1基の二酸化炭素回収還元器との間で、収容されている二酸化炭素吸蔵還元触媒を互いに交換する第2交換部と、備えるため、連続的に二酸化炭素を回収し、メタンを得ることができる。
【0104】
また、第3実施形態の二酸化炭素回収装置300では、第1交換部は、ガスの流れ方向と対向する方向に向かって、吸着材料を移動させ、第2交換部は、ガスの流れ方向と対向する方向に向かって、二酸化炭素吸蔵還元触媒を移動させるため、吸着材料及び二酸化炭素吸蔵還元触媒への二酸化炭素の吸蔵量を高めることができる。吸着材料が二酸化炭素吸蔵器に固定されている場合、二酸化炭素濃度の低い位置に固定されている吸着材料は二酸化炭素の吸蔵量が少ない。同様に、二酸化炭素吸蔵還元触媒が二酸化炭素回収還元器に固定されている場合、二酸化炭素濃度の低い位置に固定されている二酸化炭素吸蔵還元触媒は二酸化炭素の吸蔵量が少ない。二酸化炭素の吸蔵量を高めることにより、二酸化炭素の回収量を高めることができ、エネルギー効率が優れる。
【0105】
[第4実施形態]
図6は、第4実施形態の二酸化炭素回収装置を示す概略図である。なお、第4実施形態の二酸化炭素回収装置について、第1実施形態の二酸化炭素回収装置100と同一の構成及び作用効果については、同一の符号を用いて説明を省略する。
【0106】
第4実施形態の二酸化炭素回収装置400の、第1実施形態の二酸化炭素回収装置100と異なる構成について説明する。
【0107】
第4実施形態の二酸化炭素回収装置400は、2基の二酸化炭素吸蔵器C3、C4及び2基の二酸化炭素回収還元器D3、D4をそれぞれ並列に備える。なお、二酸化炭素吸蔵器及び二酸化炭素回収還元器はそれぞれ3基以上であってもよい。
【0108】
二酸化炭素吸蔵器C3、C4にはそれぞれ、第2燃焼ガス供給流路13a、13bと、ガス供給流路14a、14bと、ガス供給流路15a、15bと、生成ガス供給流路18a、18bと、が接続されている。
【0109】
二酸化炭素回収還元器D3、D4にはそれぞれ、ガス供給流路14a、14bと、ガス供給流路15a、15bと、水素供給流路17a、17bと、が接続されている。
【0110】
第2燃焼ガス供給流路13a、13b、ガス供給流路14a、14b、ガス供給流路15a、15b、ガス排出流路16a、16b、水素供給流路17a、17b及び生成ガス供給流路18a、18bにはそれぞれ、第2燃焼ガス供給バルブV3a、V3b、ガス供給バルブV4a、V4b、ガス供給バルブV5a、V5b、ガス排出バルブV6a、V6b、水素供給バルブV7a、V7b及び生成ガス供給バルブV8a、V8bが設けられている。各バルブの開閉は、制御部によって制御される。
【0111】
次に、
図7を用いて、第4実施形態の二酸化炭素回収装置400を用いた二酸化炭素回収方法について説明する。
図7は、第4実施形態の二酸化炭素回収装置を用いた二酸化炭素回収方法を示すフローチャートである。
【0112】
最初に、大気供給バルブV1、第1燃焼ガス供給バルブV2、第2燃焼ガス供給バルブV3a、V3b、ガス供給バルブV4a、V4b、ガス供給バルブV5a、V5b、ガス排出バルブV6a、V6b、水素供給バルブV7a、V7b、生成ガス供給バルブV8a、V8b、メタン供給バルブV9は閉じているものとする。
【0113】
まず、
図7に示すように、制御部は、燃焼器Aの運転を開始させ、大気供給バルブV1、第1燃焼ガス供給バルブV2、第2燃焼ガス供給バルブV3a、ガス供給バルブV4a、及びガス排出バルブV6aを開ける(ステップS31)。
【0114】
次に、制御部は、燃焼ガスの供給停止条件を満たしたか否かを判定する(ステップS32)。供給停止条件としては、例えば、二酸化炭素回収還元器D3のガス排出口における二酸化炭素濃度があらかじめ設定された濃度(例えば、10ppm)を超えたという条件が挙げられる。
【0115】
制御部は、燃焼ガスの供給停止条件を満たしたと判定すると(ステップS32:YES)、第2燃焼ガス供給バルブV3a、ガス供給バルブV4a、及びガス排出バルブV6aを閉じる(ステップS33)。制御部が燃焼ガスの供給停止条件を満たしたと判定するまで、熱利用機器Bから二酸化炭素吸蔵器Cへ燃焼ガスが供給され、二酸化炭素吸蔵器C3から二酸化炭素回収還元器D3へガスが供給され、二酸化炭素回収還元器D3内の残留ガスがガス排出流路16aを介して大気中へ排出される。(ステップS32:NO)。
【0116】
次に、制御部は、ガス供給バルブV5a、水素供給バルブV7a、生成ガス供給バルブV8a、及びメタン供給バルブV9を開ける(ステップS34)。
【0117】
次に、制御部は、水素供給停止条件を満たしたか否かを判定する(ステップS35)。水素供給停止条件としては、例えば、二酸化炭素吸蔵器C3のガス排出口からメタン化反応器へ排出された二酸化炭素の累積量に対する水素の累積量(水素/二酸化炭素)の比率が4を超えたという条件が挙げられる。また、水素供給停止条件としては、例えば、メタン転化器Eのガス排出口におけるメタン濃度があらかじめ設定された濃度(例えば、99体積%)を下回ったという条件が挙げられる。
【0118】
制御部は、水素供給停止条件を満たしたと判定すると(ステップS35:YES)、ガス供給バルブV5a、水素供給バルブV7a、及び生成ガス供給バルブV8aを閉める(ステップS36)。制御部が水素供給停止条件を満たしたと判定するまで、二酸化炭素回収還元器D3へ水素が供給される(ステップS35:NO)。
【0119】
制御部は、熱利用機器Bによる熱要求があるか否かを判定する(ステップS37)。
【0120】
制御部は、熱利用機器Bによる熱要求があると判定すると(ステップS37:YES)、ステップS38へ進む。ステップS38において、制御部は、ガス供給バルブV3bが閉じているか否かを判定し、閉じていると判定すると(ステップS38:YES)、ステップS31へ戻って、ステップS31以降の処理を繰り返す。2回目以降のサイクルでは、ステップS31において、制御部は、第2燃焼ガス供給バルブV3a、ガス供給バルブV4a、及びガス排出バルブV6aを開ける。ステップS38において、制御部は、ガス供給バルブV3bが閉じていると判定するまで、ステップS38の処理を繰り返す(ステップS38:NO)。
【0121】
制御部は、熱利用機器Bによる熱要求がないと判定すると(ステップS37:NO)、本処理を終了する。
【0122】
一方、ステップS33の後、ステップS39において、制御部は、第2燃焼ガス供給バルブV3b、ガス供給バルブV4b、及びガス排出バルブV6bを開ける。
【0123】
ステップS40~ステップS44の処理は、ステップS32~S36の処理と同様である。
【0124】
制御部は、熱利用機器Bによる熱要求があるか否かを判定する(ステップS45)。
【0125】
制御部は、熱利用機器Bによる熱要求があると判定すると(ステップS45:YES)、ステップS46へ進む。ステップS46において、制御部は、ガス供給バルブV3aが閉じているか否かを判定し、閉じていると判定すると(ステップS46:YES)、ステップS39へ戻って、ステップS39以降の処理を繰り返す。ステップS46において、制御部は、ガス供給バルブV3aが閉じていると判定するまで、ステップS46の処理を繰り返す(ステップS46:NO)。
【0126】
制御部は、熱利用機器Bによる熱要求がないと判定すると(ステップS45:NO)、本処理を終了する。
【0127】
第4実施形態の二酸化炭素回収装置400は、2基の二酸化炭素吸蔵器及び2基の二酸化炭素回収還元器をそれぞれ並列に備えるため、二酸化炭素を連続的に回収することができる。これは、二酸化炭素吸蔵器C3と二酸化炭素回収還元器D3とで、二酸化炭素を吸蔵する処理を行っている間に、二酸化炭素吸蔵器C4と二酸化炭素回収還元器D4とで、吸蔵されている二酸化炭素をメタンに転化させる処理を行うことができるためである。
【0128】
[第5実施形態]
図8は、第5実施形態の二酸化炭素回収装置を示す概略図である。なお、第5実施形態の二酸化炭素回収装置について、第1実施形態の二酸化炭素回収装置100と同一の構成及び作用効果については、同一の符号を用いて説明を省略する。
【0129】
第5実施形態の二酸化炭素回収装置500の、第1実施形態の二酸化炭素回収装置100と異なる構成について説明する。
【0130】
第5実施形態の二酸化炭素回収装置500は、二酸化炭素吸蔵器Cと二酸化炭素回収還元器Dとの間に、水分を除去する除湿器Kをさらに備える。
【0131】
除湿器Kは、二酸化炭素回収還元器から二酸化炭素吸蔵器Cに供給されるガス中の水分を除去する機能を有する装置であれば、特に制限されない。除湿器Kは、シリカゲル等の吸湿剤を収容していてもよい。また、除湿器Kは、ガスの温度を低下させて水を凝縮させる機能を有していてもよい。
【0132】
第5実施形態の二酸化炭素回収装置500は、除湿器Kを備えるため、二酸化炭素回収還元器Dにおけるメタン化反応で生成したガスから水蒸気が除去されたガスが、二酸化炭素吸蔵器Cへ供給される。そのため、二酸化炭素吸蔵器Cにおいて、二酸化炭素の脱離が水蒸気によって阻害されることなく、効率良く行われる。
【0133】
[変形例1]
第1実施形態~第5実施形態の二酸化炭素回収装置は、メタン転化器の下流側に、メタン転化器で生成した混合ガスを貯蔵するためのメタン貯蔵器を備えていてもよい。混合ガスには、主にメタンが含まれている。メタン貯蔵器が備えられていると、燃焼器が発生する熱の需要が高まるまで、メタンを貯蔵させておくことができ、不要なエネルギー消費を抑制することができる。
【0134】
[変形例2]
第1実施形態~第5実施形態の二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素を含む原料ガスの供給源として、大気中の二酸化炭素を燃焼する燃焼器Aを備え、燃焼器Aで発生した熱を利用するための熱利用機器Bを備えるが、燃焼器Aと熱利用機器Bを備えていなくてもよい。二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素吸蔵器C(C1、C2、C3、C4)へ、二酸化炭素を含むガスを直接供給する供給源を備えていてもよい。
【0135】
[変形例3]
第1実施形態~第5実施形態の二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素回収還元器Dで発生した排熱を、二酸化炭素吸蔵器Cへ供給する排熱供給流路をさらに備えていてもよい。二酸化炭素回収還元器Dでは、酸化カルシウムが二酸化炭素を吸収して炭酸カルシウムを生成する際に、二酸化炭素1モル当たり175kJの熱を発生する。二酸化炭素回収還元器Dで発生した排熱を、二酸化炭素吸蔵器Cへ供給することにより、二酸化炭素吸蔵器Cにおいて、二酸化炭素を脱離させるために追加するエネルギーを抑えることができる。
【0136】
[変形例4]
第1実施形態~第5実施形態の二酸化炭素回収装置では、二酸化炭素吸蔵器C(C1、C2、C3、C4)と二酸化炭素回収還元器D(D1、D2、D3、D4)との間に、ガス供給流路4(4a、4b)とガス供給流路5(5a、5b)の2つが接続されているが、二酸化炭素吸蔵器Cと二酸化炭素回収還元器Dとの間に接続されるガス供給流路は1つであってもよい。二酸化炭素回収装置の構成の簡略化が実現される。
【0137】
[変形例5]
第1実施形態~第5実施形態の二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素回収還元器で発生した排熱を蓄熱する蓄熱器をさらに備えていてもよい。蓄熱の方法は、顕熱蓄熱、潜熱蓄熱、及び化学蓄熱のいずれであってもよい。蓄熱器に蓄熱された排熱は、二酸化炭素吸蔵器において、二酸化炭素を脱離させるために利用することにより、エネルギー消費を抑制することができる。
【0138】
[変形例6]
第3実施形態の二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素吸蔵器C1と二酸化炭素吸蔵器C2との間に、吸着材料を貯蔵しておく貯蔵容器を備えていてもよい。また、第3実施形態の二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素回収還元器D1と二酸化炭素回収還元器D2との間に二酸化炭素吸蔵還元触媒を貯蔵しておく貯蔵容器を備えていてもよい。これらの貯蔵容器が備えられていると、回収した二酸化炭素を貯蔵しておくことができる。
【0139】
[変形例7]
また、第3実施形態の二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素回収還元器D1(又はD2)で発生した排熱を、二酸化炭素吸蔵器C2(又はC1)に輸送する伝熱流路を備えていてもよい。排熱を利用することにより、エネルギー消費を抑制することができる。
【0140】
[比較例1]
図9は、比較例1の二酸化炭素回収装置600を示す概略図である。二酸化炭素回収装置600は、第1実施形態の二酸化炭素回収装置100と異なり、二酸化炭素回収還元器Dを備えていない。二酸化炭素吸蔵器Cに、水素供給源Hから水素を供給するための水素供給流路17cと、二酸化炭素吸蔵器Cで吸蔵されなかった残留ガスを大気中へ排出するためのガス排出流路16cと、が接続されている。水素供給流路17c上には、水素供給バルブV7cが設けられ、ガス排出流路16c上には、ガス排出バルブV6cが設けられている。
【0141】
二酸化炭素吸蔵器Cに収容されている吸着材料では、二酸化炭素の吸蔵量が少ないため、二酸化炭素の回収効率が悪い。また、比較例1の二酸化炭素回収装置600では、ゼオライトの1g当たりの二酸化炭素の吸蔵量は1mモルであり、ゼオライトの比熱が1J/g・Kであり、昇温幅を300℃とすると、ゼオライトの顕熱が二酸化炭素1モル当たり300kJ、ゼオライトからの二酸化炭素の脱離熱が二酸化炭素1モル当たり40kJである。すなわち、エネルギー消費量は、二酸化炭素1モル当たり340kJである。
【0142】
これに対して、本実施形態の二酸化炭素回収装置では、上記のとおり、エネルギー消費量は、二酸化炭素1モル当たり189kJであり、比較例1よりも低エネルギーで二酸化炭素を回収することができる。
【0143】
[比較例2]
図10は、比較例2の二酸化炭素回収装置700を示す概略図である。二酸化炭素回収装置600は、第1実施形態の二酸化炭素回収装置100と異なり、二酸化炭素吸蔵器Cを備えていない。二酸化炭素回収還元器Dに、二酸化炭素回収還元器Dで生成した混合ガスをメタン転化器Eへ供給するための生成ガス供給流路18cが接続されている。生成ガス供給流路18c上には、生成ガス供給バルブV8cが設けられている。
【0144】
比較例2の二酸化炭素回収装置700では、二酸化炭素回収還元器Dから排出される生成ガスは、ガス平衡の点から、メタン濃度が低く抑えられる。具体的には、炭酸カルシウムと水素との反応において、メタンへの転化率が最大となる300℃において、生成ガスに含まれる水素濃度は78%、メタン濃度は7%、水の濃度は15%である。
【0145】
これに対して、本実施形態の二酸化炭素回収装置では、二酸化炭素回収還元器Dから排出される生成ガス(水素とメタンを含む混合ガス)に、二酸化炭素吸蔵器Cから脱離した二酸化炭素を加えて、メタン転化器でメタンに転化させることができる。これにより、高濃度のメタンを生成することができる。
【符号の説明】
【0146】
11 大気供給流路
12 燃焼ガス供給流路
13、13a、13b 第1燃焼ガス供給流路
14、14a、14b ガス供給流路
15、15a、15b ガス供給流路
16、16a、16b、16c ガス排出流路
17、17a、17b、17c 水素供給流路
18、18a、18b 生成ガス供給流路
19 メタン供給流路
51 第1交換部
52 第2交換部
100、200、300、400、500、600 二酸化炭素回収装置
A 燃焼器
B 熱利用機器
C 二酸化炭素吸蔵器
D 二酸化炭素回収還元器
E メタン転化器
H 水素供給源
K 除湿器
V1 大気供給バルブ
V2 第1燃焼ガス供給バルブ
V3、V3a、V3b 第2燃焼ガス供給バルブ
V4、V4a、V4b ガス供給バルブ
V5、V5a、V5b ガス供給バルブ
V6、V6a、V6b、V6c ガス排出バルブ
V7、V7a、V7b、V7c 水素供給バルブ
V8、V8a、V8b 生成ガス供給バルブ
V9 メタン供給バルブ
P1 ポンプ