(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】管理装置及び管理方法
(51)【国際特許分類】
B22D 46/00 20060101AFI20230829BHJP
B22C 9/00 20060101ALI20230829BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
B22D46/00
B22C9/00 E
G05B19/418 Z
(21)【出願番号】P 2020169011
(22)【出願日】2020-10-06
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康次郎
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-164747(JP,A)
【文献】特開2013-240815(JP,A)
【文献】特開平9-53923(JP,A)
【文献】特開平6-331568(JP,A)
【文献】特開2000-015395(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0036928(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105451913(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 46/00
B22C 9/00
G01N 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂型を用いた鋳造について管理する管理装置であって、
砂型の表面模様の情報を登録のために取得する登録模様取得部と、
登録のために取得された前記表面模様の情報と、当該表面模様を備える砂型を用いて鋳造される鋳物の管理情報とを関連付けて記憶するよう制御する登録制御部と、
照会のために砂型の表面模様の情報を取得する照会模様取得部と、
前記管理情報と関連付けて記憶されている前記表面模様の情報と、照会のために取得された前記表面模様の情報とを照合することにより、記憶されている前記管理情報の中から、照会のために取得された前記表面模様の情報の取得元である対象物についての前記管理情報を抽出する情報抽出部と、
を有する管理装置。
【請求項2】
取得される前記表面模様の情報は、砂型から取得される情報である
請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
取得される前記表面模様の情報は、砂型を用いて鋳造された鋳物から取得される情報である
請求項1に記載の管理装置。
【請求項4】
前記管理情報は前記表面模様が形成された鋳物の鋳造条件の情報である
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項5】
前記管理情報は前記表面模様が形成された砂型の製造条件の情報である
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項6】
砂型を用いた鋳造について管理する管理方法であって、
砂型の表面模様の情報を登録のために取得し、
登録のために取得された前記表面模様の情報と、当該表面模様を備える砂型を用いて鋳造される鋳物の管理情報とを関連付けて記憶し、
照会のために砂型の表面模様の情報を取得し、
前記管理情報と関連付けて記憶されている前記表面模様の情報と、照会のために取得された前記表面模様の情報とを照合することにより、記憶されている前記管理情報の中から、照会のために取得された前記表面模様の情報の取得元である対象物についての前記管理情報を抽出する
管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は管理装置及び管理方法に関し、特に砂型を用いた鋳造についての管理に関する。
【背景技術】
【0002】
工場のIoT(Internet of Things)化に伴い、製品とその製品に関する情報との紐付けを行うことにより製品の生産性や品質を向上することが進められている。例えば、特許文献1では、製品管理コードを製品に対してマークすることにより、トレーサビリティを確保する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、鋳造製品の表面に管理コードを打刻又はレーザ加工などによってマークする場合、製品の形状が複雑であったり、製品の大きさが微小であったり、製品の表面の清浄が悪いなどのときには、管理コードを製品にマークすることが難しい。したがって、そのような場合、製品を個別に識別することが困難であり、製品のトレーサビリティを確保することは困難である。
【0005】
本開示は、上記した事情を背景としてなされたものであり、対象物にコードをマークすることなく、対象物のトレーサビリティを確保することができる管理装置及び管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本開示の一態様は、砂型を用いた鋳造について管理する管理装置であって、砂型の表面模様の情報を登録のために取得する登録模様取得部と、登録のために取得された前記表面模様の情報と、当該表面模様を備える砂型を用いて鋳造される鋳物の管理情報とを関連付けて記憶するよう制御する登録制御部と、照会のために砂型の表面模様の情報を取得する照会模様取得部と、前記管理情報と関連付けて記憶されている前記表面模様の情報と、照会のために取得された前記表面模様の情報とを照合することにより、記憶されている前記管理情報の中から、照会のために取得された前記表面模様の情報の取得元である対象物についての前記管理情報を抽出する情報抽出部と、を有する管理装置である。
この管理装置によれば、砂型の表面模様によって対象物が識別され、対象物に対応する管理情報が抽出される。このため、対象物にコードをマークすることなく、対象物のトレーサビリティを確保することができる。
【0007】
上記の一態様において、取得される前記表面模様の情報は、砂型から取得される情報である。
このようにすることで、砂型から直接取得した表面模様を用いて、対象物のトレーサビリティを確保することができる。
【0008】
上記の一態様において、取得される前記表面模様の情報は、砂型を用いて鋳造された鋳物から取得される情報である。
このようにすることで、鋳物に転写された砂型の表面模様を用いて、対象物のトレーサビリティを確保することができる。
【0009】
上記の一態様において、前記管理情報は前記表面模様が形成された鋳物の鋳造条件の情報である。
このようにすることで、それぞれの鋳物の鋳造条件を容易に確認することができる。
【0010】
上記の一態様において、前記管理情報は前記表面模様が形成された砂型の製造条件の情報である
このようにすることで、それぞれの鋳物の鋳造の際に用いられた砂型の製造条件を容易に確認することができる。
【0011】
上記目的を達成するための本開示の他の一態様は、砂型を用いた鋳造について管理する管理方法であって、砂型の表面模様の情報を登録のために取得し、登録のために取得された前記表面模様の情報と、当該表面模様を備える砂型を用いて鋳造される鋳物の管理情報とを関連付けて記憶し、照会のために砂型の表面模様の情報を取得し、前記管理情報と関連付けて記憶されている前記表面模様の情報と、照会のために取得された前記表面模様の情報とを照合することにより、記憶されている前記管理情報の中から、照会のために取得された前記表面模様の情報の取得元である対象物についての前記管理情報を抽出する管理方法である。
この管理方法によれば、砂型の表面模様によって対象物が識別され、対象物に対応する管理情報が抽出される。このため、対象物にコードをマークすることなく、対象物のトレーサビリティを確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、対象物にコードをマークすることなく、対象物のトレーサビリティを確保することができる管理装置及び管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態の概要にかかる管理装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態の概要にかかる管理方法における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図3】実施の形態にかかる管理装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】情報記憶部が記憶する情報の例を示す表である。
【
図5】鋳物が製造され、市場に出荷されるまでの工程を示す模式図である。
【
図6】実施の形態にかかる管理装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態にかかる管理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0015】
<実施の形態の概要>
実施の形態の詳細な説明に先立って、実施の形態の概要を説明する。
図1は、実施の形態の概要にかかる管理装置1の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、管理装置1は、登録模様取得部2と、登録制御部3と、照会模様取得部4と、情報抽出部5とを有し、砂型を用いた鋳造について管理する装置である。
【0016】
登録模様取得部2は、砂型の表面模様の情報を登録のために取得する。この表面模様は、砂による微小な凹凸により表面に形成される不規則な模様である。
登録制御部3は、登録のために取得された表面模様の情報と、当該表面模様を備える砂型を用いて鋳造される鋳物の管理情報とを関連付けて記憶するよう制御する。例えば、登録制御部3は、管理装置1が備える記憶装置(不図示)に情報を記憶してもよいし、管理装置1とネットワークなどを介して通信可能に接続された他の記憶装置に情報を記憶してもよい。
【0017】
一般的に、砂型の表面の模様は個体毎に異なっている。そして、一般的に、鋳造に用いられる砂型は、注湯工程の後に破壊されるため、使い回すことができず、製品の鋳造の度に新たな個体が必要とされる。砂型のこのような特徴に着目し、管理装置1では、砂型の表面模様を識別情報として用いている。
【0018】
なお、砂型の表面模様の情報と関連付けて記憶される管理情報としては、鋳物、すなわち製品を管理するために必要とされる任意の情報を用いることができる。例えば、管理情報は、鋳物の製造条件であってもよい。ここで、鋳物の製造条件は、例えば、鋳物の鋳造条件であってもよいし、鋳物の鋳造の際に用いられる砂型の製造条件であってもよい。
【0019】
照会模様取得部4は、照会のために砂型の表面模様の情報を取得する。
情報抽出部5は、管理情報と関連付けて記憶されている表面模様の情報と、照会のために取得された表面模様の情報とを照合する。そして、これにより、情報抽出部5は、記憶されている管理情報の中から、対象物についての管理情報を抽出する。ここでいう対象物は、照会のために取得された表面模様の情報の取得元の物体であり、砂型であってもよいし、鋳物であってもよい。
【0020】
なお、管理装置1において取得される表面模様の情報は、砂型から取得される情報であってもよいし、砂型を用いて鋳造された鋳物から取得される情報であってもよい。砂型から取得される情報とは、より詳細には、砂型に形成された当該砂型の表面模様の情報、すなわち、砂型の表面から直接取得される情報である。また、砂型を用いて鋳造された鋳物から取得される情報とは、砂型を用いて鋳造された鋳物に転写された当該砂型の表面模様の情報、すなわち、砂型の模様が転写されることにより、鋳物に形成された模様の情報である。
【0021】
図2は、実施の形態の概要にかかる管理方法における処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下、
図2を参照しつつ、処理の流れを説明する。
【0022】
ステップS1において、登録模様取得部2は、砂型の表面模様の情報を登録のために取得する。
次に、ステップS2において、登録制御部3は、ステップS1で取得された表面模様の情報と、当該表面模様を備える砂型を用いて鋳造される鋳物の管理情報とを関連付けて記憶するよう制御する。
次に、ステップS3において、照会模様取得部4は、照会のために砂型の表面模様の情報を取得する。
次に、ステップS4において、情報抽出部5は、表面模様の情報を照合することにより、記憶されている管理情報の中から、管理情報を抽出する。
【0023】
上述の通り、管理装置1では、砂型の表面模様によって対象物が識別され、対象物に対応する管理情報が抽出される。このため、対象物にコードをマークすることなく、対象物のトレーサビリティを確保することができる。
【0024】
<実施の形態の詳細>
次に、実施の形態の詳細について説明する。
図3は、実施の形態にかかる管理装置100の構成の一例を示すブロック図である。管理装置100は、
図1の管理装置1に対応しており、砂型を用いた鋳造について管理する装置である。
図3に示すように、管理装置100は、登録模様取得部101と、製造条件取得部102と、照会模様取得部103と、登録制御部104と、情報記憶部105と、情報抽出部106と、出力制御部107とを有する。
【0025】
登録模様取得部101は、
図1の登録模様取得部2に対応しており、登録のために、砂型の表面模様の情報を取得する。登録模様取得部101は、本実施の形態では、砂型から、又は、砂型を用いて鋳造された鋳物から、当該砂型の表面模様の情報を取得する。登録模様取得部101は、具体的には、砂型又は鋳物の表面をカメラで撮影した画像を表面模様の情報として取得する。つまり、登録模様取得部101は、砂型画像又は鋳物画像を表面模様の情報として取得する。なお、砂型画像は、砂型の所定の部分の表面画像であり、鋳物画像は、鋳物の所定の部分の表面画像である。登録模様取得部101は、例えば、表面模様の情報を、カメラなどの他の装置又はクライアント端末などから受信することにより取得してもよいし、管理装置100に接続された記憶媒体などに記憶された表面模様の情報を読み出すことにより取得してもよい。
【0026】
製造条件取得部102は、登録のために、鋳物の製造条件の情報を取得する。具体的には、製造条件取得部102は、鋳物の鋳造条件の情報、又は、鋳物の鋳造の際に用いられる砂型の製造条件の情報を取得する。製造条件取得部102は、鋳物の鋳造条件として、鋳物の鋳造に関する任意の条件を取得することができる。例えば、取得される鋳物の鋳造条件は、注湯工程の条件(例えば、溶けた金属を型に注ぎ入れる際の金属の温度、溶けた金属の型への供給速度、溶けた金属の型への供給圧力など)であってもよいし、鋳物の材料(すなわち、鋳物を構成する金属の種類)であってもよい。また、製造条件取得部102は、砂型の製造条件として、砂型の製造に関する任意の条件を取得することができる。例えば、取得される砂型の製造条件は、砂型の材料、材料を混ぜる時間、砂型を射出成形により造型する際の射出速度又は圧力、造型時の温度などであってもよい。砂型の製造条件の違いは、砂型の強度や、注湯工程における砂型からのガスの発生量などに影響を与える。このため、砂型の製造条件は、鋳物の品質に影響を与えうる。したがって、鋳物の鋳造条件のみならず、砂型の製造条件を管理することは、鋳物の品質を管理する上で重要である。製造条件取得部102は、例えば、鋳物の製造条件の情報を、管理装置100に接続されたキーボードなどの入力装置を介して取得してもよいし、クライアント端末などから受信することにより取得してもよいし、管理装置100に接続された記憶媒体などに記憶された情報を読み出すことにより取得してもよい。
【0027】
照会模様取得部103は、
図1の照会模様取得部4に対応しており、照会のために、砂型の表面模様の情報を取得する。照会模様取得部103は、本実施の形態では、砂型から、又は、砂型を用いて鋳造された鋳物から、当該砂型の表面模様の情報を取得する。照会模様取得部103は、具体的には、砂型又は鋳物の表面をカメラで撮影した画像を表面模様の情報として取得する。つまり、照会模様取得部103は、砂型画像又は鋳物画像を表面模様の情報として取得する。照会模様取得部103は、例えば、表面模様の情報を、カメラなどの他の装置又はクライアント端末などから受信することにより取得してもよいし、管理装置100に接続された記憶媒体などに記憶された表面模様の情報を読み出すことにより取得してもよい。
【0028】
登録制御部104は、
図1の登録制御部3に対応しており、登録模様取得部101が取得した表面模様の情報と、製造条件取得部102が取得した鋳物の製造条件の情報(すなわち、鋳物の鋳造条件の情報、又は、砂型の製造条件の情報)を関連付けて情報記憶部105に記憶する。
【0029】
また、本実施の形態では、登録制御部104は、照会模様取得部103が取得した表面模様の情報と、情報記憶部105に記憶されている表面模様の情報とを照合することにより、注湯工程で使用される砂型に対応する、情報記憶部105の情報(表面模様の情報又は砂型の製造条件の情報)を特定する。すなわち、具体的には、後述する通り、登録制御部104は、照会模様取得部103が取得した注湯工程で使用する砂型についての表面模様の情報を照合に用いることにより、注湯工程で使用する砂型が、情報記憶部105に表面模様の情報が記憶されている砂型のうち、いずれの砂型であるかを特定する。登録制御部104は、使用される砂型を特定すると、すなわち、注湯工程で使用される砂型に対応する、情報記憶部105の情報を特定すると、この情報とこの砂型を用いた鋳物の情報(鋳物画像又は鋳造条件の情報)とを関連付けて、情報記憶部105に記憶する。
【0030】
情報記憶部105は、登録制御部104により関連付けられた情報を記憶する記憶装置である。
図4は、情報記憶部105が記憶する情報の例を示す表である。
図4に示すように、情報記憶部105は、砂型から取得される当該砂型の表面模様の情報である砂型画像と、砂型の製造条件を示す情報と、鋳物の鋳造条件を示す情報と、鋳物から取得される砂型の表面模様の情報である鋳物画像とを関連付けて記憶する。
【0031】
情報抽出部106は、
図1の情報抽出部5に対応しており、情報記憶部105に記憶されている表面模様の情報と、照会模様取得部103が取得した表面模様の情報とを照合することにより、情報記憶部105に記憶されている情報の中から情報を抽出する。なお、抽出される情報は、例えば、照会のために取得された表面模様の情報の取得元である対象物についての鋳物の製造条件の情報(すなわち、鋳物の鋳造条件又は砂型の製造条件)であるが、表面模様の情報(鋳物画像又は砂型画像)であってもよい。また、照会のために取得された表面模様の情報の取得元である対象物は、例えば、鋳物すなわち製品であるが、砂型であってもよい。
【0032】
出力制御部107は、情報抽出部106が情報記憶部105から抽出した情報を出力するよう制御する。例えば、出力制御部107は、ディスプレイに表示するよう制御してもよいし、クライアント端末などの他の装置に対して送信するよう制御してもよい。
【0033】
図5は、鋳物が製造され、市場に出荷されるまでの工程を示す模式図である。以下、
図5を参照しつつ、工程の流れと表面模様の情報の取得タイミングの例について説明する。
【0034】
ステップS10において、溶解工程が行われる。すなわち、鋳物の材料である金属の溶解が行われる。
【0035】
S20a、S20bにおいて、砂型の材料の混錬工程が行われる。すなわち、砂型の材料である砂及びバインダーなどの混錬が行われる。
図5に示した例では、S20aにおいて、砂型である主型の材料が混錬され、S20bにおいて、砂型である中子の材料が混錬される。
【0036】
ステップS30a、S30bにおいて、砂型の造型工程が行われる。すなわち、砂型を所定の形状に造型する工程が行われる。
図5に示した例では、S30aにおいて、主型の造型が行われ、S30bにおいて、中子の造型が行われる。砂型が造型されると、砂型の表面模様の情報を登録するために、砂型画像が撮影され、登録模様取得部101がこの画像を取得する。取得された砂型画像は、登録制御部104によって、当該砂型の製造条件とともに、情報記憶部105に記憶されることとなる。これにより、
図4に示した表の2番目のデータ又は3番目のデータのように、砂型画像に、砂型の製造条件が関連付けられたデータが情報記憶部105に記憶される。なお、この例では、砂型画像に、砂型の製造条件だけが関連付けられているが、鋳物の鋳造条件が既に取得されている場合には、この時点で、鋳物の鋳造条件も関連付けられてもよい。また、
図5に示した例では、中子の表面模様の情報、すなわち中子の画像が取得されるが、主型の表面模様の情報、すなわち主型の画像が取得されてもよい。ステップS30a、S30bでは、複数の鋳物を製造する準備のため、複数の砂型が製造され、製造された砂型が中間在庫として保管される。
【0037】
ステップS40において、注湯工程が行われる。すなわち、ステップS10で溶解された金属を、ステップS30a、S30bでそれぞれ造型された型を組み合わせた型に入れる工程が行われる。なお、このとき、中間在庫からピックアップされた砂型が用いられる。ピックアップされた砂型が、情報記憶部105に表面模様の情報が記憶されている砂型のどれに対応しているかを特定するために、注湯工程の前に、ピックアップされた砂型の表面模様の情報、すなわち画像が照会模様取得部103により取得される。
図5に示した例では、中子の表面模様の情報、すなわち中子の画像が取得される。登録制御部104は、照会模様取得部103が取得した画像を用いて、注湯工程で使用される砂型に対応する、情報記憶部105の情報を特定する。例えば、登録制御部104は、
図4に示した表の2番目のデータが、注湯工程で使用される砂型に対応する情報であると特定する。
【0038】
ステップS50において、注湯工程の後、金属が冷めて固まると、型ばらし工程が行われる。すなわち、注湯工程で使用された砂型をくずし、鋳物を取り出す工程が行われる。
また、ステップS60において、ショット工程が行われる。すなわち、ショット球を鋳物の表面に衝突させることにより、鋳物付着している砂の除去が行われる。
【0039】
そして、ステップS70において、バリ取り・検査工程が行われる。すなわち、不要なバリの除去、及び、製造された鋳物が所定の基準を満たしているか否かを確認する検査が行われる。製造された鋳物が基準を満たすことが確認されると、鋳物に転写された砂型の表面模様の情報を登録するために、鋳物画像が撮影され、登録模様取得部101がこの画像を取得する。取得された鋳物画像は、登録制御部104によって、当該鋳物の鋳造条件とともに、情報記憶部105に記憶されることとなる。このとき、登録制御部104は、鋳物画像及び鋳造条件を、情報記憶部105に記憶されている情報のうち、注湯工程でピックアップされた砂型に対応する情報と、さらに関連付ける。これにより、
図4で示したように、情報記憶部105において、砂型画像と、砂型の製造条件を示す情報と、鋳物の鋳造条件を示す情報と、鋳物画像とが関連付けて記憶されることとなる。
【0040】
ステップS80において、必要に応じて、塗装工程が行われる。すなわち、鋳物の塗装が行われる。そして、市場に鋳物が出荷される。
【0041】
出荷後、鋳物に不具合が発生すると、当該鋳物の製造条件などの管理情報を確認するために、当該鋳物に転写された砂型の表面模様の情報、すなわち鋳物画像が照会模様取得部103により取得される。これにより、情報抽出部106は、情報記憶部105に記憶されている表面模様の情報と、照会模様取得部103が取得した表面模様の情報とを照合する。そして、情報抽出部106は、情報記憶部105に記憶されている情報の中から、不具合が発生した当該鋳物に対応する情報を抽出する。抽出された情報は、出力制御部107の制御によって、出力される。
【0042】
なお、ここで示した例では、登録のための鋳物画像が、バリ取り・検査工程の直後に取得されているが、型ばらし工程以降の任意のタイミングで撮影された鋳物画像が登録に用いられてもよい。また、照会のための鋳物画像は、必ずしも不具合が発生している鋳物を対象とした画像でなくてもよい。また、その取得タイミングも出荷後に限られない。例えば、照会のための鋳物画像は、登録のための鋳物画像が取得されるタイミングよりも後の任意のタイミングでもよい。
【0043】
次に、管理装置100の処理の流れについてフローチャートを参照して説明する。
図6は、管理装置100の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0044】
ステップS100において、製造条件取得部102は、砂型の製造条件の情報を取得する。
次に、ステップS101において、登録模様取得部101は、ステップS100で取得された製造条件に従って製造された砂型から表面模様の情報(砂型画像)を取得する。
次に、ステップS102において、登録制御部104は、ステップS100で取得された砂型の製造条件の情報とステップS101で取得された表面模様の情報とを関連付けて情報記憶部105に記憶する。
【0045】
次に、ステップS103において、照会模様取得部103は、注湯工程で使用する砂型から表面模様の情報(砂型画像)を取得する。
次に、ステップS104において、登録制御部104は、ステップS103で取得した表面模様の情報と、情報記憶部105に記憶されている表面模様の情報とを照合することにより、使用される砂型を特定する。
【0046】
次に、ステップS105において、製造条件取得部102は、ステップS104で特定された砂型を用いて鋳造される鋳物の鋳造条件の情報を取得する。
次に、ステップS106において、登録模様取得部101は、ステップS105で取得された鋳造条件に従って鋳造された鋳物から表面模様の情報(鋳物画像)を取得する。すなわち、登録模様取得部101は、鋳造された鋳物に転写された砂型の表面模様の情報を取得する。
次に、ステップS107において、登録制御部104は、ステップS105で取得された鋳物の鋳造条件の情報とステップS106で取得された表面模様の情報とを関連付けて情報記憶部105に記憶する。
【0047】
次に、ステップS108において、照会模様取得部103は、製造条件を確認したい鋳物に転写された砂型の表面模様の情報(鋳物画像)を取得する。
次に、ステップS109において、情報抽出部106は、情報記憶部105に記憶されている表面模様の情報と、ステップS108で取得した表面模様の情報とを照合することにより、鋳物の製造条件の情報を抽出する。
次に、ステップS110において、出力制御部107は、ステップS109で情報抽出部106が情報記憶部105から抽出した情報を出力するよう制御する。
【0048】
以上、フローチャートを参照して、処理の流れについて説明したが、フローチャートにより示される処理の実行順序は、一例に過ぎず、技術的な矛盾が生じない限り実行順序を適宜入れ替えることが可能である。
【0049】
最後に、管理装置100のハードウェア構成の一例について説明する。
図7は、管理装置100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図7に示されるように、管理装置100は、入出力インタフェース150、メモリ151、及びプロセッサ152を含む。
【0050】
入出力インタフェース150は、他の装置との間で、有線又は無線通信を行うためのインタフェースである。例えば、入出力インタフェース150は、他の装置から情報を取得したり、他の装置に情報を出力したりするために用いられる。
【0051】
メモリ151は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの任意の組み合わせによって構成される。メモリ151は、複数のメモリを含んでもよい。メモリ151は、プロセッサ152により実行されるソフトウェア(すなわち、1以上の命令を含むコンピュータプログラム)などを格納するために使用される。上述した情報記憶部105は、例えば、メモリ151などの記憶装置により実現される。
【0052】
プロセッサ152は、メモリ151からソフトウェア(コンピュータプログラム)を読み出して実行することで、上述した登録模様取得部101、製造条件取得部102、照会模様取得部103、登録制御部104、情報抽出部106、及び出力制御部107の処理を実現する。このように、管理装置100は、コンピュータとしての機能を備えている。プロセッサ152は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU(Micro Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)であってもよい。プロセッサ152は、複数のプロセッサを含んでもよい。
【0053】
なお、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、Compact Disc Read Only Memory(CD-ROM)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、Programmable ROM(PROM)、Erasable PROM(EPROM)、フラッシュROM、Random Access Memory(RAM))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0054】
以上、実施の形態について説明した。管理装置100では、砂型の表面模様によって対象物が識別され、対象物に対応する製造情報が抽出される。このため、対象物にコードをマークすることなく、対象物のトレーサビリティを確保することができる。特に、本実施の形態では、製造条件として、鋳物の鋳造条件及び砂型の製造条件が用いられる。このため、管理装置100によれば、鋳物の鋳造条件及び砂型の製造条件を容易に確認することができる。なお、管理される製造条件は、鋳物の鋳造条件と砂型の製造条件のうちのいずれか一方だけであってもよい。
【0055】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述の実施の形態では、主型が砂型であったが、砂型である中子が用いられる鋳造であれば、主型として金型が用いられてもよい。すなわち、上述した管理装置は、砂型を用いる様々な鋳造(例えば、アルミ低圧鋳造、重力鋳造など)に対して用いることができる。また、上述の実施の形態では、照会模様取得部103は、注湯工程で使用される砂型に対応する、情報記憶部105の情報を特定するために、砂型画像を取得したが、情報記憶部105の情報を抽出するために砂型画像の取得が行われてもよい。さらに、上述した実施の形態では、照会のために取得された鋳物画像と、情報記憶部105に記憶されている鋳物画像とを照合することにより、抽出すべき情報の特定が行われたが、照会のために取得された鋳物画像(鋳物に転写された砂型の表面模様の情報)と、情報記憶部105に記憶されている砂型画像(砂型の表面から直接取得された表面模様の情報)とが照合されてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 管理装置
2 登録模様取得部
3 登録制御部
4 照会模様取得部
5 情報抽出部
100 管理装置
101 登録模様取得部
102 製造条件取得部
103 照会模様取得部
104 登録制御部
105 情報記憶部
106 情報抽出部
107 出力制御部
150 入出力インタフェース
151 メモリ
152 プロセッサ