(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】車両用ドア開閉装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/655 20150101AFI20230829BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20230829BHJP
B60J 5/06 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
E05F15/655
B60J5/00 D
B60J5/06 A
(21)【出願番号】P 2020172319
(22)【出願日】2020-10-13
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小島 侑也
(72)【発明者】
【氏名】柴田 悠基
(72)【発明者】
【氏名】日比 和宏
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-154580(JP,A)
【文献】特開2007-23586(JP,A)
【文献】特開2003-336442(JP,A)
【文献】米国特許第6079767(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/655
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側部に形成された乗降口を全閉する全閉位置と前記全閉位置よりも後方に位置して前記乗降口を全開する全開位置との間で移動するドアと、
前記ドアを開閉駆動する駆動部と、
前記ドアを開閉する指令信号の入力に基づいて前記駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記車両の側部における前記乗降口よりも後側の位置には、操作対象物を操作する操作部が設けられ、
前記制御部は、前記操作部が操作された場合に、前記駆動部の駆動による前記ドアの前記全開位置側への移動を禁止または制限することを特徴とする車両用ドア開閉装置。
【請求項2】
前記操作対象物は、前記車両の背面に形成された開口部を開閉するバックドアであり、
前記操作部は、前記バックドアを開閉動作させる操作スイッチであることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア開閉装置。
【請求項3】
前記全閉位置と前記全開位置との間における前記ドアが前記乗降口の一部を開放する位置を基準位置とするとき、
前記制御部は、前記ドアの前記全開位置側への移動中に前記操作部が操作された場合であって且つ前記ドアが前記基準位置よりも前記全閉位置側に位置する場合に、前記ドアが前記基準位置で停止されるように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用ドア開閉装置。
【請求項4】
前記全閉位置と前記全開位置との間における前記ドアが前記乗降口の一部を開放する位置を基準位置とするとき、
前記制御部は、前記ドアの前記全開位置側への移動中に前記操作部が操作された場合であって且つ前記ドアが前記基準位置よりも前記全開位置側に位置する場合に、前記ドアが停止されるように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用ドア開閉装置。
【請求項5】
前記全閉位置と前記全開位置との間における前記ドアが前記乗降口の一部を開放する位置を基準位置とするとき、
前記制御部は、前記操作部の操作中に前記ドアを前記全開位置側へ移動させる場合であって且つ前記ドアが前記基準位置よりも前記全閉位置側に位置する場合に、前記ドアが前記基準位置で停止されるように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用ドア開閉装置。
【請求項6】
前記全閉位置と前記全開位置との間における前記ドアが前記乗降口の一部を開放する位置を基準位置とするとき、
前記制御部は、前記操作部の操作中に前記ドアを前記全開位置側へ移動させる場合であって且つ前記ドアが前記基準位置または前記基準位置よりも前記全開位置側に位置する場合に、前記ドアの前記全開位置側への移動が禁止されるように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用ドア開閉装置。
【請求項7】
前記車両における車幅方向の両方の前記側部に前記乗降口、前記乗降口を開閉する前記ドア、及び前記操作部がそれぞれ設けられ、
前記制御部は、2つの前記操作部のうちの一方が操作された場合に、前記駆動部の駆動による当該操作された一方の前記操作部が設けられた方の前記側部に設けられた前記ドアの前記全開位置側への移動を禁止または制限することを特徴とする請求項1~請求項6のうちいずれか一項に記載の車両用ドア開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワンボックスタイプの車両として例えば特許文献1に示すようなものが知られている。こうした車両には、車両の側部に形成された乗降口を開閉する電動式のスライドドアと、背面に形成された開口部を開閉する電動式のバックドアとが搭載されている。スライドドアは、電動モータの駆動により車両前後方向に移動することで乗降口を開閉する。バックドアは、電動モータの駆動により開口部の上部に設けられたドアヒンジを介して上下に回動することにより開口部を開閉する。そして、上述のようなバックドアには、通常、バックドアの外面中央部に開閉用のスイッチが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のようなバックドアでは、ユーザーがバックドアと対向する位置に立った状態でスイッチを操作してバックドアを開けることになるので、スイッチを操作した後に開くバックドアを避けるべく大きく後ろへ下がる必要がある。したがって、特に限られたスペース内でバックドアを開閉する場合には、バックドアの使い勝手が悪くなってしまうという問題がある。
【0005】
この問題を解決してバックドアの使い勝手を良くするには、バックドアの開閉用のスイッチを車両の側部における後端部に配置することが考えられる。このようにすれば、バックドアの横に立ってバックドアの開閉用のスイッチを操作することができるので、開くバックドアを避ける必要がなく、限られたスペース内でもバックドアを容易に開閉操作することができる。
【0006】
しかしながら、上述のような車両において、車両の側部における後端部に配置されたバックドアの開閉用のスイッチを操作しているときにスライドドアが開けられると、当該スイッチを操作している人がバックドアの開閉操作に気を取られて後方に下がるスライドドアに気づかないことがある。このため、後方に下がるスライドドアがバックドアの開閉用のスイッチを操作している人に接触するおそれがあるという問題がある。
【0007】
なお、こうした問題は、バックドアの開閉操作に限らず、バックドア以外の操作対象物の操作においては概ね共通したものとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する車両用ドア開閉装置は、車両の側部に形成された乗降口を全閉する全閉位置と前記全閉位置よりも後方に位置して前記乗降口を全開する全開位置との間で移動するドアと、前記ドアを開閉駆動する駆動部と、前記ドアを開閉する指令信号の入力に基づいて前記駆動部を制御する制御部と、を備え、前記車両の側部における前記乗降口よりも後側の位置には、操作対象物を操作する操作部が設けられ、前記制御部は、前記操作部が操作された場合に、前記駆動部の駆動による前記ドアの前記全開位置側への移動を禁止または制限することを要旨とする。
【0009】
この構成によれば、操作部が操作された場合にはドアの全開位置側への移動が禁止または制限されるので、操作部を操作している操作者にドアが接触することを抑制できる。
上記車両用ドア開閉装置において、前記操作対象物は、前記車両の背面に形成された開口部を開閉するバックドアであり、前記操作部は、前記バックドアを開閉動作させる操作スイッチであることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、操作者が操作スイッチを操作してバックドアを開閉動作させているときにドアの全開位置側への移動が禁止または制限されるので、操作者にドアが接触することを抑制できる。
【0011】
上記車両用ドア開閉装置において、前記全閉位置と前記全開位置との間における前記ドアが前記乗降口の一部を開放する位置を基準位置とするとき、前記制御部は、前記ドアの前記全開位置側への移動中に前記操作部が操作された場合であって且つ前記ドアが前記基準位置よりも前記全閉位置側に位置する場合に、前記ドアが前記基準位置で停止されるように前記駆動部を制御することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、最低限人が通れる程度に乗降口が開放される位置にドアの基準位置を設定することで、操作者へのドアの接触を抑制しつつ、操作者とは別の人が乗降口から車両に対して乗降できるようにすることができる。
【0013】
上記車両用ドア開閉装置において、前記全閉位置と前記全開位置との間における前記ドアが前記乗降口の一部を開放する位置を基準位置とするとき、前記制御部は、前記ドアの前記全開位置側への移動中に前記操作部が操作された場合であって且つ前記ドアが前記基準位置よりも前記全開位置側に位置する場合に、前記ドアが停止されるように前記駆動部を制御することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、最低限人が通れる程度に乗降口が開放される位置にドアの基準位置を設定することで、操作者へのドアの接触を抑制しつつ、操作者とは別の人が乗降口から車両に対して乗降できるようにすることができる。
【0015】
上記車両用ドア開閉装置において、前記全閉位置と前記全開位置との間における前記ドアが前記乗降口の一部を開放する位置を基準位置とするとき、前記制御部は、前記操作部の操作中に前記ドアを前記全開位置側へ移動させる場合であって且つ前記ドアが前記基準位置よりも前記全閉位置側に位置する場合に、前記ドアが前記基準位置で停止されるように前記駆動部を制御することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、最低限人が通れる程度に乗降口が開放される位置にドアの基準位置を設定することで、操作者へのドアの接触を抑制しつつ、操作者とは別の人が乗降口から車両に対して乗降できるようにすることができる。
【0017】
上記車両用ドア開閉装置において、前記全閉位置と前記全開位置との間における前記ドアが前記乗降口の一部を開放する位置を基準位置とするとき、前記制御部は、前記操作部の操作中に前記ドアを前記全開位置側へ移動させる場合であって且つ前記ドアが前記基準位置または前記基準位置よりも前記全開位置側に位置する場合に、前記ドアの前記全開位置側への移動が禁止されるように前記駆動部を制御することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、ドアが基準位置または基準位置よりも全開位置側の位置にあっても、操作者へのドアの接触を抑制することができる。
上記車両用ドア開閉装置において、前記車両における車幅方向の両方の前記側部に前記乗降口、前記乗降口を開閉する前記ドア、及び前記操作部がそれぞれ設けられ、前記制御部は、2つの前記操作部のうちの一方が操作された場合に、前記駆動部の駆動による当該操作された一方の前記操作部が設けられた方の前記側部に設けられた前記ドアの前記全開位置側への移動を禁止または制限することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、一方の操作部が操作された場合には当該操作された一方の操作部が設けられた方の側部に設けられたドアの全開位置側への移動が禁止または制限されるので、操作者が2つの操作部のどちらを操作した場合でも操作者にドアが接触することを抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、操作部を操作している操作者にドアが接触することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】同車両において左PSDが全開位置にあるときの状態を示す側面図。
【
図3】同車両において左PSDが基準位置にあるときの状態を示す側面図。
【
図5】PSD開駆動処理ルーチンを示すフローチャート。
【
図6】(a)~(d)は、PSD開駆動処理の実行態様の一例を示すタイミングチャート。
【
図7】(a)~(d)は、PSD開駆動処理の実行態様の一例を示すタイミングチャート。
【
図8】(a)~(d)は、PSD開駆動処理の実行態様の一例を示すタイミングチャート。
【
図9】(a)~(d)は、PSD開駆動処理の実行態様の一例を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、車両用ドア開閉装置が搭載された車両の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両11の内部には、乗員Pが着座可能な複数(本実施形態では6つ)の座席12が設けられている。すなわち、車両11の内部には、車幅方向Yに並ぶ左右一対の座席12が車両前後方向Xに3列になるように配置されている。最前列の右側の座席12は運転席であり、最前列の左側の座席12は助手席である。
【0023】
車両11における助手席の左側及び運転席の右側には、左フロントドア13及び右フロントドア14がそれぞれ設けられている。左フロントドア13及び右フロントドア14は、車両11における前側に位置する車幅方向Yの両方の側部に設けられた乗降口15をそれぞれ開閉する。左フロントドア13及び右フロントドア14は、いずれも手動式のヒンジドアによって構成されている。
【0024】
車両11における二列目の左側の座席12の左側及び二列目の右側の座席12の右側には、ドアの一例としての左PSD16及びドアの一例としての右PSD17がそれぞれ設けられている。本明細書において、「PSD」は、電動式のスライドドアであるパワースライドドアを意味するものとする。
【0025】
左PSD16及び右PSD17は、一例として、それぞれ左リアドア及び右リアドアを構成している。左PSD16及び右PSD17は、車両11における後側に位置する車幅方向Yの両方の側部に設けられた乗降口18をそれぞれ開閉する。車両11における前側の両側部の乗降口15と車両11における後側の両側部の乗降口18との間には、それぞれピラー19が設けられている。
【0026】
左PSD16は、車両11に設けられた駆動部の一例としての左PSDモータ20によって左側の乗降口18を全閉する全閉位置(
図1の実線で示す位置)と、当該全閉位置よりも後方に位置して左側の乗降口18を全開する全開位置(
図1の二点鎖線で示す位置)との間で開閉駆動される。左PSDモータ20は、正転と逆転が可能な電動モータである。左PSDモータ20には、その回転量に比例する数のパルス信号を出力可能な左側磁気センサ42(
図4参照)が内蔵されている。この左側磁気センサ42は、例えばホールICによって構成される。
【0027】
右PSD17は、車両11に設けられた駆動部の一例としての右PSDモータ21によって右側の乗降口18を全閉する全閉位置(
図1の実線で示す位置)と、当該全閉位置よりも後方に位置して右側の乗降口18を全開する全開位置(
図1の二点鎖線で示す位置)との間で開閉駆動される。右PSDモータ21は、正転と逆転が可能な電動モータである。右PSDモータ21には、その回転量に比例する数のパルス信号を出力可能な右側磁気センサ43(
図4参照)が内蔵されている。この右側磁気センサ43は、例えばホールICによって構成される。
【0028】
車両11における全閉位置にある状態の左PSD16の近傍位置には、左PSD16が全閉位置にあることを検出する左PSD全閉センサ22が設けられている。車両11における全閉位置にある状態の右PSD17の近傍位置には、右PSD17が全閉位置にあることを検出する右PSD全閉センサ23が設けられている。
【0029】
車両11の内部における運転席の前方に位置するインストルメントパネル(図示略)には、左PSD16を開閉操作するための左PSD操作スイッチ24及び右PSD17を開閉操作するための右PSD操作スイッチ25が設けられている。車両11における背面部(後端部)には、操作対象物の一例としてのPBD26が設けられている。本明細書において、「PBD」は、電動式のバックドアであるパワーバックドアを意味するものとする。PBD26は、車両11の背面に形成された開口部27を開閉する。
【0030】
PBD26は、車両11に設けられたPBDモータ28によって開口部27を全閉する全閉位置(
図1の実線で示す位置)と、当該全閉位置よりも上方に位置して開口部27を全開する全開位置(
図1の二点鎖線で示す位置)との間で開閉駆動される。PBDモータ28は、正転と逆転が可能な電動モータである。
【0031】
PBDモータ28には、その回転量に比例する数のパルス信号を出力可能な後側磁気センサ47(
図4参照)が内蔵されている。この後側磁気センサ47は、例えばホールICによって構成される。車両11における全閉位置にある状態のPBD26の近傍位置には、PBD26が全閉位置にあることを検出するPBD全閉センサ29が設けられている。
【0032】
車両11における車幅方向Yの両側部における両乗降口18よりも後側の位置である後端部には、PBD26を開閉操作する操作部の一例としての左PBD操作スイッチ30及びPBD26を開閉操作する操作部の一例としての右PBD操作スイッチ31がそれぞれ設けられている。つまり、左PBD操作スイッチ30及び右PBD操作スイッチ31は、一部が車外に露出しており、車外からいずれを操作してもPBD26が開閉動作される。
【0033】
PBD26は、上端部にヒンジを有しており、当該ヒンジを回動中心として全閉位置と全開位置との間で回動可能になっている。PBD26は、左PBD操作スイッチ30または右PBD操作スイッチ31の操作により、全閉位置と全開位置との間の任意の位置で停止可能になっている。
【0034】
図2に示すように、車両11における車幅方向Yの左側部には、左PSD16の全開位置と全閉位置との間でのスライド移動を案内するための上部スライド機構32、中央スライド機構33、及び下部スライド機構34が設けられている。
【0035】
上部スライド機構32は、車両11の左側面における乗降口18よりも上側の位置で車両前後方向Xに延びる上部ガイドレール35と、左PSD16の内面上部に設けられた上部ガイドローラ36とを備えている。上部ガイドローラ36は、上部ガイドレール35の内部を移動するように配置されている。上部スライド機構32は、上部ガイドレール35によって上部ガイドローラ36を案内することによって、左PSD16の上部が車両前後方向Xにスライド移動するように案内する。
【0036】
中央スライド機構33は、車両11の左側面における乗降口18よりも後方側の位置で車両前後方向Xに延びる中央ガイドレール37と、左PSD16の内面における上下方向の中央部に設けられた中央ガイドローラ38とを備えている。中央ガイドローラ38は、中央ガイドレール37の内部を移動するように配置されている。中央スライド機構33は、中央ガイドレール37によって中央ガイドローラ38を案内することによって、左PSD16における上下方向の中央部が車両前後方向Xにスライド移動するように案内する。
【0037】
下部スライド機構34は、車両11の左側面における乗降口18よりも下側の位置で車両前後方向Xに延びる下部ガイドレール39と、左PSD16の内面下部に設けられた下部ガイドローラ40とを備えている。下部ガイドローラ40は、下部ガイドレール39の内部を移動するように配置されている。下部スライド機構34は、下部ガイドレール39によって下部ガイドローラ40を案内することによって、左PSD16の下部が車両前後方向Xにスライド移動するように案内する。
【0038】
図1及び
図3に示すように、左PSD16が全閉位置と全開位置との間において乗降口18の一部を開放する位置は、基準位置とされている。この基準位置は、左PSD16が基準位置にあるときに、車両11における二列目の座席12に着座する乗員Pの左側の乗降口18を介した乗降を妨げず且つ左PBD操作スイッチ30の前に立って左PBD操作スイッチ30を操作する他の乗員Pに左PSD16が確実に接触しない位置である。
【0039】
上述した左PSD16の場合と同様に、車両11における車幅方向Yの右側部にも、右PSD17の全開位置と全閉位置との間でのスライド移動を案内するための上部スライド機構32、中央スライド機構33、及び下部スライド機構34が設けられている。さらに、右PSD17が全閉位置と全開位置との間において乗降口18の一部を開放する位置は、基準位置とされている。
【0040】
この基準位置は、上述した左PSD16の場合と同様に、右PSD17が基準位置にあるときに、車両11における二列目の座席12に着座する乗員Pの右側の乗降口18を介した乗降を妨げず且つ右PBD操作スイッチ31の前に立って右PBD操作スイッチ31を操作する他の乗員Pに右PSD17が確実に接触しない位置である。
【0041】
次に、車両11の電気的構成について説明する。
図4に示すように、車両11は、車両11全体を統括的に制御する制御部41を備えている。制御部41は、コンピュータによって構成され、CPU、ROM、及びRAMを備えている。ROMには、
図5のフローチャートで示すPSD開駆動処理用のプログラムを含む各種制御プログラム及び各種情報(左PSD16の基準位置情報及び右PSD17の基準位置情報)などが記憶されている。RAMには、CPUによる演算結果及び処理結果である各種データなどが一時記憶される。
【0042】
制御部41の入力側インターフェース(図示略)には、PSD操作スイッチ24,25、PSD全閉センサ22,23、PBD全閉センサ29、PBD操作スイッチ30,31、及び磁気センサ42,43がそれぞれ電気的に接続されている。一方、制御部41の出力側インターフェース(図示略)には、左PSDモータ20、右PSDモータ21、及びPBDモータ28がそれぞれモータドライバ44、モータドライバ45、及びモータドライバ46を介して電気的に接続されている。
【0043】
制御部41は、PSD操作スイッチ24,25から送信されるPSD16,17を開閉する指令信号に基づいてPSDモータ20,21の駆動を、モータドライバ44,45を介してそれぞれ制御する。制御部41は、磁気センサ42,43から出力されるパルス信号及びPSD全閉センサ22,23から出力される信号に基づいてPSD16,17の位置をそれぞれ把握する。
【0044】
制御部41は、左PBD操作スイッチ30または右PBD操作スイッチ31から送信されるPBD26を開閉する指令信号に基づいてPBDモータ28の駆動を、モータドライバ46を介して制御する。制御部41は、後側磁気センサ47から出力されるパルス信号及びPBD全閉センサ29から出力される信号に基づいてPBD26の位置を把握する。なお、本実施形態では、PSD16,17、PSDモータ20,21、及び制御部41によって車両用ドア開閉装置が構成されている。
【0045】
次に、制御部41が実行するPSD開駆動処理ルーチン(PSD開駆動処理)について
図5に示すフローチャートに基づいて説明する。PSD開駆動処理ルーチンは、右PSD操作スイッチ25及び左PSD操作スイッチ24のうち少なくとも一方が開操作された際に制御部41によって所定周期毎に繰り返し実行される。なお、左PSD操作スイッチ24が開操作される場合の処理と右PSD操作スイッチ25が開操作される場合の処理とは同一なので、ここでは左PSD操作スイッチ24が開操作される場合の処理についてのみ説明する。
【0046】
図5に示すように、左PSD操作スイッチ24が開操作されると、まず、制御部41は、左PBD操作スイッチ30が操作されたか否かを判定する(ステップS1)。すなわち、制御部41は、左PSD操作スイッチ24と同じ車両11の左側に位置する左PBD操作スイッチ30が操作されたか否かを判定する。ステップS1の判定結果が否定判定である場合、制御部41は、左PSD16が開駆動されるように左PSDモータ20を駆動した後(ステップS2)、PSD開駆動処理ルーチンを終了する。
【0047】
一方、ステップS1の判定結果が肯定判定である場合、制御部41は左PSD16の位置が基準位置よりも全閉位置側にあるか否かを判定する(ステップS3)。ステップS3の判定結果が否定判定である場合、制御部41は、左PSD16が停止されるように左PSDモータ20を停止した後(ステップS4)、PSD開駆動処理ルーチンを終了する。
【0048】
ここで、制御部41は、ステップS3において左PSD16が基準位置にある場合、ステップS4において左PSD16が停止されるように左PSDモータ20を停止する。さらに、制御部41は、ステップS3において左PSD16が基準位置よりも全開位置側にある場合、ステップS4において左PSD16が開駆動されないように左PSDモータ20の駆動を禁止する。
【0049】
一方、ステップS3の判定結果が肯定判定である場合、制御部41は左PSD16が開駆動されるように左PSDモータ20を駆動した後(ステップS5)、PSD開駆動処理ルーチンを終了する。
【0050】
なお、右PSD操作スイッチ25が開操作される場合の説明は、上述した
図5に示すPSD開駆動処理ルーチンのフローチャートの説明において、次のように読み替えればよい。すなわち、左PSD操作スイッチ24を右PSD操作スイッチ25に読み替え、左PSDモータ20を右PSDモータ21に読み替え、左PSD16を右PSD17に読み替えればよい。
【0051】
次に、PSD開駆動処理の実行態様を、当該処理を実行することによる作用とともに説明する。
図6(a)~
図6(d)は、左PSD16の全開位置側への移動中に左PBD操作スイッチ30が操作された場合であって且つ左PSD16が基準位置よりも全閉位置側に位置する場合におけるPSD開駆動処理の実行態様を示している。
【0052】
図6(a)~
図6(d)に示す例では、時刻t1において左PSD操作スイッチ24が開操作されて左PSDモータ20がオンにされると、左PSD16が全開位置に向かって移動し始める。左PSD16が基準位置に達する前の時刻t2において左PSD16の移動中に左PBD操作スイッチ30が操作されると、左PSD16が基準位置に達するまで左PSDモータ20のオン状態が維持される。
【0053】
時刻t3において左PSD16が基準位置に達すると、左PSDモータ20がオフにされ、左PSD16が基準位置で停止される。このため、
図3に示すように、左PSD16の全開位置側への移動が基準位置までに制限されるので、左PSD16が左PSD操作スイッチ24を操作する乗員Pに接触することが回避される。
【0054】
図7(a)~
図7(d)は、左PSD16の全開位置側への移動中に左PBD操作スイッチ30が操作された場合であって且つ左PSD16が基準位置よりも全開位置側に位置する場合におけるPSD開駆動処理の実行態様を示している。
【0055】
図7(a)~
図7(d)に示す例では、時刻t1において左PSD操作スイッチ24が開操作されて左PSDモータ20がオンにされると、左PSD16が全開位置に向かって移動し始める。左PSD16が基準位置よりも全開位置側に位置する時刻t2において左PSD16の移動中に左PBD操作スイッチ30が操作されると、左PSDモータ20が即時にオフにされ、左PSD16が即時に停止される。このため、左PSD16が左PSD操作スイッチ24を操作する乗員Pに接触することが抑制される。
【0056】
図8(a)~
図8(d)は、左PBD操作スイッチ30の操作中に左PSD16を全開位置側へ移動させる場合であって且つ左PSD16が基準位置よりも全閉位置側に位置する場合におけるPSD開駆動処理の実行態様を示している。
【0057】
図8(a)~
図8(d)に示す例では、時刻t1において左PBD操作スイッチ30がオンにされると、PBD26が開閉動作する。左PSD16が基準位置よりも全閉位置側に位置する時刻t2において左PSD操作スイッチ24が開操作されて左PSDモータ20がオンにされると、左PSD16が全開位置に向かって移動し始める。左PSDモータ20のオン状態は、左PSD16が基準位置に達するまで維持される。
【0058】
時刻t3において左PSD16が基準位置に達すると、左PSDモータ20がオフにされ、左PSD16が基準位置で停止される。このため、
図3に示すように、左PSD16の全開位置側への移動が基準位置までに制限されるので、左PSD16が左PSD操作スイッチ24を操作する乗員Pに接触することが回避される。
【0059】
図9(a)~
図9(d)は、左PBD操作スイッチ30の操作中に左PSD16を全開位置側へ移動させる場合であって且つ左PSD16が基準位置または基準位置よりも全開位置側に位置する場合におけるPSD開駆動処理の実行態様を示している。
【0060】
図9(a)~
図9(d)に示す例では、時刻t1において左PBD操作スイッチ30がオンにされると、PBD26が開閉動作する。左PSD16が基準位置または基準位置よりも全開位置側に位置する時刻t2において左PSD操作スイッチ24が開操作されると、左PSDモータ20の駆動が禁止され、左PSD16の全開位置側へ移動が禁止される。つまり、時刻t2において左PSD操作スイッチ24が開操作されても左PSD16の停止状態が維持される。このため、左PSD16が左PSD操作スイッチ24を操作する乗員Pに接触することが抑制される。
【0061】
なお、右PSD操作スイッチ25が開操作される場合の説明は、上述した
図6~
図9に示したPSD開駆動処理の実行態様の一例を示すタイミングチャートの説明において、次のように読み替えればよい。すなわち、左PSD操作スイッチ24を右PSD操作スイッチ25に読み替え、左PSDモータ20を右PSDモータ21に読み替え、左PSD16を右PSD17に読み替え、左PBD操作スイッチ30を右PBD操作スイッチ31に読み替えればよい。
【0062】
また、左PSD操作スイッチ24が開操作された後に右PBD操作スイッチ31が操作された場合または右PBD操作スイッチ31が操作された後に左PSD操作スイッチ24が開操作された場合には、左PSD16の全開位置側への移動が禁止または制限されない。同様に、右PSD操作スイッチ25が開操作された後に左PBD操作スイッチ30が操作された場合または左PBD操作スイッチ30が操作された後に右PSD操作スイッチ25が開操作された場合には、右PSD17の全開位置側への移動が禁止または制限されない。
【0063】
つまり、左PBD操作スイッチ30及び右PBD操作スイッチ31のうちの一方が操作された場合に、PSDモータの駆動による当該操作された一方が設けられた方の車両11の側部に設けられたPSDの全開位置側への移動が禁止または制限される。
【0064】
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)車両用ドア開閉装置において、制御部41は、左PBD操作スイッチ30が操作された場合に、左PSDモータ20の駆動による左PSD16の全開位置側への移動を禁止または制限する。この構成によれば、乗員Pが左PBD操作スイッチ30を操作してPBD26を開閉動作させているときに左PSD16の全開位置側への移動が禁止または制限されるので、左PBD操作スイッチ30を操作する乗員Pに左PSD16が接触することを抑制できる。
【0065】
(2)車両用ドア開閉装置において、制御部41は、左PSD16の全開位置側への移動中に左PBD操作スイッチ30が操作された場合であって且つ左PSD16が基準位置よりも全閉位置側に位置する場合に、左PSD16が基準位置で停止されるように左PSDモータ20の駆動を制御する。この構成によれば、左PBD操作スイッチ30を操作する乗員Pへの左PSD16の接触を回避しつつ、別の乗員Pが乗降口18から車両11に対して乗降できるようにすることができる。
【0066】
(3)車両用ドア開閉装置において、制御部41は、左PSD16の全開位置側への移動中に左PBD操作スイッチ30が操作された場合であって且つ左PSD16が基準位置よりも全開位置側に位置する場合に、左PSD16が即時に停止されるように左PSDモータ20を制御する。この構成によれば、左PBD操作スイッチ30を操作する乗員Pへの左PSD16の接触を抑制しつつ、別の乗員Pが乗降口18から車両11に対して乗降できるようにすることができる。
【0067】
(4)車両用ドア開閉装置において、制御部41は、左PBD操作スイッチ30の操作中に左PSD16を全開位置側へ移動させる場合であって且つ左PSD16が基準位置よりも全閉位置側に位置する場合に、左PSD16が基準位置で停止されるように左PSDモータ20を制御する。この構成によれば、左PBD操作スイッチ30を操作する乗員Pへの左PSD16の接触を抑制しつつ、別の乗員Pが乗降口18から車両11に対して乗降できるようにすることができる。
【0068】
(5)車両用ドア開閉装置において、制御部41は、左PBD操作スイッチ30の操作中に左PSD16を全開位置側へ移動させる場合であって且つ左PSD16が基準位置または基準位置よりも全開位置側に位置する場合に、左PSD16の全開位置側への移動が禁止されるように左PSDモータ20を制御する。この構成によれば、左PSD16が基準位置または基準位置よりも全開位置側の位置にあっても、左PBD操作スイッチ30を操作する乗員Pへの左PSD16の接触を抑制することができる。
【0069】
(6)車両用ドア開閉装置において、制御部41は、左PBD操作スイッチ30及び右PBD操作スイッチ31のうちの一方が操作された場合に、PSDモータの駆動による当該操作された一方が設けられた方の車両11の側部に設けられたPSDの全開位置側への移動を禁止または制限する。この構成によれば、乗員Pが左PBD操作スイッチ30及び右PBD操作スイッチ31のどちらを操作した場合でも、当該乗員PにPSDが接触することを抑制できる。
【0070】
なお、上記(1)~(5)において、乗員Pが右PBD操作スイッチ31を操作する場合には、左PBD操作スイッチ30を右PBD操作スイッチ31に読み替え、左PSDモータ20を右PSDモータ21に読み替え、左PSD16を右PSD17に読み替えればよい。
【0071】
(変更例)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0072】
・左PSD16及び右PSD17のうちいずれか一方は、例えばヒンジドアなどの車両前後方向Xに移動しないドアに変更してもよい。
・制御部41は、必ずしも左PBD操作スイッチ30の操作中に左PSD16を全開位置側へ移動させる場合であって且つ左PSD16が基準位置または基準位置よりも全開位置側に位置する場合に、左PSD16の全開位置側への移動が禁止されるように左PSDモータ20を制御する必要はない。
【0073】
・制御部41は、必ずしも左PBD操作スイッチ30の操作中に左PSD16を全開位置側へ移動させる場合であって且つ左PSD16が基準位置よりも全閉位置側に位置する場合に、左PSD16が基準位置で停止されるように左PSDモータ20を制御する必要はない。
【0074】
・制御部41は、必ずしも左PSD16の全開位置側への移動中に左PBD操作スイッチ30が操作された場合であって且つ左PSD16が基準位置よりも全開位置側に位置する場合に、左PSD16が即時に停止されるように左PSDモータ20を制御する必要はない。
【0075】
・制御部41は、必ずしも左PSD16の全開位置側への移動中に左PBD操作スイッチ30が操作された場合であって且つ左PSD16が基準位置よりも全閉位置側に位置する場合に、左PSD16が基準位置で停止されるように左PSDモータ20の駆動を制御する必要はない。
【0076】
・操作対象物は、PBD26に限らず、例えば操作部によって開閉操作可能な燃料タンクの蓋などであってもよい。
・操作対象物は、操作部の操作によって例えばばねの弾性力を利用して機械的に開閉されるバックドアであってもよい。
【0077】
・制御部41は、左PSD16の全開位置側への移動中に左PBD操作スイッチ30が操作された場合であって且つ左PSD16が基準位置よりも全閉位置側に位置する場合に、左PSD16の基準位置までの移動速度を通常よりも遅くするようにしてもよい。
【0078】
・車両11に制御部41によって制御されるブザーを設け、制御部41は、左PSD16の全開位置側への移動中に左PBD操作スイッチ30が操作された場合であって且つ左PSD16が基準位置よりも全閉位置側に位置する場合に、左PSD16が基準位置に達するまでブザーを鳴らすようにしてもよい。
【0079】
・制御部41は、左PSD16が基準位置よりも全閉位置側の位置にあるときに左PBD操作スイッチ30が操作された場合、左PSD操作スイッチ24が開操作されても左PSDモータ20の駆動を禁止するようにしてもよい。すなわち、制御部41は、左PSD16が基準位置よりも全閉位置側の位置にあるときに左PBD操作スイッチ30が操作された場合、左PSD操作スイッチ24が開操作されても左PSD16の全開位置側への移動を禁止するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0080】
11…車両
12…座席
13…左フロントドア
14…右フロントドア
15,18…乗降口
16…ドアの一例としての左PSD
17…ドアの一例としての右PSD
19…ピラー
20…駆動部の一例としての左PSDモータ
21…駆動部の一例としての右PSDモータ
22…左PSD全閉センサ
23…右PSD全閉センサ
24…左PSD操作スイッチ
25…右PSD操作スイッチ
26…操作対象物の一例としてのPBD
27…開口部
28…PBDモータ
29…PBD全閉センサ
30…操作部の一例としての左PBD操作スイッチ
31…操作部の一例としての右PBD操作スイッチ
32…上部スライド機構
33…中央スライド機構
34…下部スライド機構
35…上部ガイドレール
36…上部ガイドローラ
37…中央ガイドレール
38…中央ガイドローラ
39…下部ガイドレール
40…下部ガイドローラ
41…制御部
42…左側磁気センサ
43…右側磁気センサ
44,45,46…モータドライバ
47…後側磁気センサ
P…乗員
t1,t2,t3…時刻
X…車両前後方向
Y…車幅方向