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特許7338610燃料電池のガスリーク検査装置、およびその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】燃料電池のガスリーク検査装置、およびその方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04664 20160101AFI20230829BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20230829BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20230829BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20230829BHJP
   G01M 3/26 20060101ALI20230829BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20230829BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20230829BHJP
【FI】
H01M8/04664
H01M8/04746
H01M8/0438
H01M8/04 J
G01M3/26 M
H01M8/10 101
H01M8/12 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020187656
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077045
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 哲治
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-198909(JP,A)
【文献】特開2006-066107(JP,A)
【文献】特開2009-059570(JP,A)
【文献】特開2005-190764(JP,A)
【文献】特開2009-146651(JP,A)
【文献】特開2007-051917(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0134277(US,A1)
【文献】特開2015-122268(JP,A)
【文献】特開2015-092447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04-8/0668
G01M 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池のガスリーク検査装置であって、
前記燃料電池のアノードに取り付け可能なアノード接続部を有する第一供給管と、
前記アノードおよび前記第一供給管を気密にするための第一気密機構と、
前記アノードの内圧を検出するためのアノード圧計測部と、
前記燃料電池のカソードに取り付け可能なカソード接続部を有する第二供給管と、
前記カソードおよび前記第二供給管を気密にするための第二気密機構と、
前記カソードの内圧を検出するためのカソード圧計測部と、
一端が前記第一供給管に接続され、他端が前記第二供給管に接続される連結管を含む連通状態切換部であって、前記第一供給管と前記第二供給管とが連通する連通状態と、前記第一供給管と前記第二供給管とが連通しない非連通状態とを切り換え可能な連通状態切換部と、を備える、
燃料電池のガスリーク検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池のガスリーク検査装置であって、
さらに、前記第一気密機構、前記第二気密機構、ならびに前記連通状態切換部の動作を制御する制御装置、を備え、
前記制御装置は、
前記連通状態切換部を動作させて、前記連通状態に切り換えるとともに、検査ガス供給部から前記アノードおよび前記第一供給管と、前記カソードおよび前記第二供給管とに検査ガスを供給させ、
前記第一気密機構を動作させて、前記検査ガスを供給された前記アノードおよび前記第一供給管を気密にするとともに、前記第二気密機構を動作させて、前記検査ガスを供給された前記カソードおよび前記第二供給管を気密にし、
前記連通状態切換部を動作させて、前記非連通状態に切り換えるとともに、前記アノード圧計測部によって検出された前記アノードの内圧を用いて前記アノードのガスリークの有無を判定するとともに、前記カソード圧計測部によって検出された前記カソードの内圧を用いて、前記カソードのガスリークの有無を判定する、
燃料電池のガスリーク検査装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料電池のガスリーク検査装置であって、
前記連通状態切換部は、さらに、前記連結管に設けられる開閉弁であって、弁体の開閉を切り換えることによって、前記連通状態と前記非連通状態とを切り換え可能な開閉弁、を備え、
前記第一気密機構は、前記第一供給管に配されるアノード気密弁を備え、
前記第二気密機構は、前記第二供給管に配されるカソード気密弁を備え、
前記連結管の一端は、前記第一供給管における前記アノード気密弁と前記アノード接続部との間に接続され、
前記連結管の他端は、前記第二供給管における前記カソード気密弁と前記カソード接続部との間に接続される、
燃料電池のガスリーク検査装置。
【請求項4】
前記アノード圧計測部および前記カソード圧計測部は、容器と、前記容器と前記アノードとの差圧、および前記容器と前記カソードとの差圧を検出するための差圧センサとを含んでいる、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の燃料電池のガスリーク検査装置。
【請求項5】
燃料電池のガスリーク検査方法であって、
前記燃料電池のアノードに接続される第一供給管と、前記燃料電池のカソードに接続される第二供給管とが連通する状態で、前記アノードおよび前記カソードに検査ガスを供給し、
前記検査ガスが供給された前記アノードおよび前記第一供給管と、前記検査ガスが供給された前記カソードおよび前記第二供給管とを気密にするとともに、前記第一供給管と前記第二供給管とが連通しない非連通状態に切り換え、
前記非連通状態で検出された前記アノードの内圧を用いて、前記アノードのガスリークの有無を判定するとともに、前記非連通状態で検出された前記カソードの内圧を用いて、前記カソードのガスリークの有無を判定する、
燃料電池のガスリーク検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池のガスリーク検査の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池スタックのアノード、カソードのそれぞれに検査ガスを供給して気密にした後に検査ガスの圧力を計測することにより、アノード、カソードのそれぞれのリーク検査を行う燃料電池スタックのリーク検査装置が知られている(例えば、特許文献1)。このリーク検査装置では、検査ガスの温度を燃料電池の温度に合わせるように調節することで、燃料電池内での検査ガスの圧力が安定するまでの時間を短縮させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-198909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のリーク検査装置の装置構成では、検査ガスを用いて燃料電池のリーク検査を行う場合に生じ得る燃料電池の特有の問題は考慮されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、燃料電池のガスリーク検査装置が提供される。この形態の燃料電池のガスリーク検査装置は、前記燃料電池のアノードに取り付け可能なアノード接続部を有する第一供給管と、前記アノードおよび前記第一供給管を気密にするための第一気密機構と、前記アノードの内圧を検出するためのアノード圧計測部と、前記燃料電池のカソードに取り付け可能なカソード接続部を有する第二供給管と、前記カソードおよび前記第二供給管を気密にするための第二気密機構と、前記カソードの内圧を検出するためのカソード圧計測部と、一端が前記第一供給管に接続され、他端が前記第二供給管に接続される連結管を含む連通状態切換部であって、前記第一供給管と前記第二供給管とが連通する連通状態と、前記第一供給管と前記第二供給管とが連通しない非連通状態とを切り換え可能な連通状態切換部と、を備える。
この形態の燃料電池のガスリーク検査装置によれば、アノードに接続される第一供給管と、カソードに接続される第二供給管とを連通させることにより、燃料電池のアノードと、カソードとの内圧を等しくしたうえで、アノードのガスリークの検査と、カソードのガスリークとの検査を実行することができる。したがって、燃料電池特有の問題である燃料電池の電解質膜を介した検査ガスのクロスリークが発生することを低減または防止した状態でガスリーク検査を行うことができる燃料電池のガスリーク検査装置を提供することができる。
(2)上記形態の燃料電池のガスリーク検査装置において、前記第一気密機構、前記第二気密機構、ならびに前記連通状態切換部の動作を制御する制御装置、を備えてよい。前記制御装置は、前記連通状態切換部を動作させて、前記連通状態に切り換えるとともに、検査ガス供給部から前記アノードおよび前記第一供給管と、前記カソードおよび前記第二供給管とに検査ガスを供給させ、前記第一気密機構を動作させて、前記検査ガスを供給された前記アノードおよび前記第一供給管を気密にするとともに、前記第二気密機構を動作させて、前記検査ガスを供給された前記カソードおよび前記第二供給管を気密にし、前記連通状態切換部を動作させて、前記非連通状態に切り換えるとともに、前記アノード圧計測部によって検出された前記アノードの内圧を用いて前記アノードのガスリークの有無を判定するとともに、前記カソード圧計測部によって検出された前記カソードの内圧を用いて、前記カソードのガスリークの有無を判定してよい。
この形態の燃料電池のガスリーク検査装置によれば、連結管が、第一供給管および第二供給管のうち、第一気密機構および第二気密機構によって検査ガスが気密にされる位置に接続されていない場合であっても、第一供給管と第二供給管との連通状態と非連通状態とを切り換えることができる。
(3)上記形態の燃料電池のガスリーク検査装置において、前記連通状態切換部は、さらに、前記連結管に設けられる開閉弁であって、弁体の開閉を切り換えることによって、前記連通状態と前記非連通状態とを切り換え可能な開閉弁、を備えてよい。前記第一気密機構は、前記第一供給管に配されるアノード気密弁を備え、前記第二気密機構は、前記第二供給管に配されるカソード気密弁を備えてよい。前記連結管の一端は、前記第一供給管における前記アノード気密弁と前記アノード接続部との間に接続され、前記連結管の他端は、前記第二供給管における前記カソード気密弁と前記カソード接続部との間に接続されてよい。
この形態の燃料電池のガスリーク検査装置によれば、アノードとカソードとともに気密にされた状態の連結管における開閉弁の開閉の切り換えのみによって、連通状態と、非連通状態とを切り換えることができる。したがって、連通状態と、非連通状態とを切り換えることによる検査ガスの圧力変化を、低減または抑制することができ、検査ガスのクロスリークの発生をより低減または防止することができる。
(4)上記形態の燃料電池のガスリーク検査装置において、前記アノード圧計測部および前記カソード圧計測部は、容器と、前記容器と前記アノードとの差圧、および前記容器と前記カソードとの差圧を検出するための差圧センサとを含んでよい。
この形態の燃料電池のガスリーク検査装置によれば、直圧式の圧力センサを用いる場合に比較して、検査期間を短縮することができる。
本開示は、燃料電池のガスリーク検査装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、燃料電池のガスリーク検査方法、燃料電池のガスリーク検査装置の制御方法、その制御方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態のガスリーク検査装置の概略構成を示す説明図。
図2】第1実施形態のガスリーク検査装置が実行するガスリーク検査制御を示すフロー図。
図3】第2実施形態のガスリーク検査装置の概略構成を示す説明図。
図4】第2実施形態のガスリーク検査装置が実行するガスリーク検査制御を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態としてのガスリーク検査装置100の概略構成を示す説明図である。図1に示すように、ガスリーク検査装置100は、燃料電池90に取り付けられて用いられる。ガスリーク検査装置100は、検査ガス供給部30から供給される検査ガスを用いて、燃料電池のアノードおよびカソードのガスリークの有無を検出する装置である。ガスリーク検査装置100は、さらに、燃料電池90の冷媒流路のリークの有無を検出してもよい。ガスリーク検査装置100は、例えば、燃料電池の製造工程において、燃料電池の品質を確認するために用いられる。本実施形態のガスリーク検査装置100は、制御装置20と、ガス供給管40と、第一供給管41と、第二供給管42と、アノードリーク検出器60と、カソードリーク検出器70と、アノード排出口気密部52と、カソード排出口気密部56と、連結管82と、を備えている。
【0009】
燃料電池90は、燃料ガスとしての水素ガスおよび酸化ガスとしての空気を反応ガスとして供給されて発電する固体高分子形燃料電池である。燃料電池90は、電解質膜の両側にアノードとカソードとの両電極を接合させた膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly/MEA)を有する複数のセルを積層したスタック構造を有している。燃料電池90は、例えば、燃料電池を駆動源とする燃料電池車両に搭載される。燃料電池90は、MEAのアノード電極に接するアノードガス流路93と、水素ガスをアノードガス流路93に供給するためのアノード供給口92と、水素ガスをアノードガス流路93から排出するためのアノード排出口94と、MEAのカソード電極に接するカソードガス流路95と、空気をカソードガス流路95に供給するためのカソード供給口96と、空気をカソードガス流路95から排出するためのカソード排出口98とを備えている。燃料電池90は、固体高分子形に限らず、りん酸形、溶融炭酸塩形、固体酸化物形などの種々の方式の燃料電池であってよい。燃料電池90は、燃料電池車両のほか、家庭用電源や定置発電などに用いられてもよい。燃料電池90では、燃料電池90を構成する部品の寸法や組付の精度のばらつき等によって、検査ガスをアノードおよびカソードに気密にした後のアノードの体積変化量と、カソードの体積変化量とに差が生じることがある。このアノードの体積変化量と、カソードの体積変化量との差は、アノードの内圧と、カソードの内圧との差を発生させ得る。この圧力差が発生すると、検査ガスが燃料電池の電解質膜(MEA)を透過して、アノードとカソードとの間を移動するクロスリークを発生させ、検査精度の低下を招くおそれがある。
【0010】
検査ガス供給部30は、ガスリーク検査に用いられる検査ガスを数MPa程度の高圧な状態で保存している。検査ガスとしては、例えば、窒素ガス等の不活性ガスが用いられる。検査ガス供給部30には、ガス供給管40の一端が接続されている。ガス供給管40の他端は、第一供給管41と、第二供給管42とに分岐されている。検査ガス供給部30からガス供給管40に供給された検査ガスは、第一供給管41と、第二供給管42とのそれぞれに供給される。
【0011】
ガス供給管40には、レギュレータ50が設けられている。レギュレータ50は、制御装置20の制御によって開閉動作を制御され、検査ガス供給部30からの検査ガスの圧力を、数百kPa程度にまで減圧する。なお、ガス供給管40は省略されることができる。ガス供給管40が省略される場合には、レギュレータ50を備える第一供給管41と、レギュレータ50を備える第二供給管42とがそれぞれ検査ガス供給部30に接続される。
【0012】
第一供給管41は、アノード接続部41Eを備えている。アノード接続部41Eは、第一供給管41のうち燃料電池90のアノード供給口92に取り付け可能な検査ガスの供給口である。第一供給管41は、レギュレータ50によって減圧された検査ガスを、アノード接続部41Eを介して、燃料電池90のアノードガス流路93に供給する。第一供給管41には、アノードリーク検出器60が設けられている。
【0013】
アノードリーク検出器60は、いわゆる差圧式のリークテスタであり、燃料電池90のアノードガス流路93のガスリークの有無を検出するために用いられる。アノードリーク検出器60は、第一検査ガス供給管63と、アノード気密弁62と、第一マスタ供給管65と、第一マスタ気密弁64と、第一分岐管67と、第一差圧センサ66と、第一マスタチャンバ68とを備えている。
【0014】
第一検査ガス供給管63は、アノードリーク検出器60内に設けられる管路である。第一検査ガス供給管63の両端は、第一供給管41に接続されている。第一検査ガス供給管63は、第一供給管41と同様に機能する。アノード気密弁62は、第一検査ガス供給管63のうち最も上流側に設けられている。「上流」とは、検査ガスの流通経路における一の基準位置に対して検査ガス供給部30に近い位置を意味し、「下流」とは、検査ガスの流通経路における一の基準位置に対して燃料電池90に近い位置を意味する。アノード気密弁62は、アノードリーク検出器60よりも上流側の第一供給管41に設けられてもよい。アノード気密弁62としては、例えば電磁弁や電動弁を用いることができる。アノード気密弁62の開閉駆動は、制御装置20によって制御される。アノード気密弁62が開かれると、検査ガスは、第一検査ガス供給管63および第一供給管41を介して、燃料電池90のアノードガス流路93に供給される。
【0015】
第一マスタ供給管65は、第一検査ガス供給管63と第一マスタチャンバ68とを接続する管路である。より具体的には、第一マスタ供給管65の一端は、第一検査ガス供給管63におけるアノード気密弁62の下流となる位置に接続され、第一マスタ供給管65の他端は、第一マスタチャンバ68に接続されている。第一マスタ供給管65には、第一マスタ気密弁64が設けられている。第一マスタ気密弁64としては、例えば電磁弁や電動弁を用いることができる。第一マスタ気密弁64の開閉駆動は、制御装置20によって制御される。第一マスタ気密弁64が開かれると、第一検査ガス供給管63の検査ガスは、第一マスタチャンバ68に流入することができる。第一マスタチャンバ68は、気体の漏れが抑制された容器である。第一マスタチャンバ68は、ガスリーク検査の対象物との差圧を検出するために用いられる。第一マスタチャンバ68は、第一マスタ気密弁64の閉弁によって、気密にされる。
【0016】
第一分岐管67は、第一検査ガス供給管63と、第一マスタ供給管65とを繋ぐ流路である。より具体的には、第一分岐管67の一端は、第一検査ガス供給管63において、第一マスタ供給管65が第一検査ガス供給管63に接続される位置よりも下流となる位置に接続されている。第一分岐管67の他端は、第一マスタ供給管65における第一マスタチャンバ68と第一マスタ気密弁64との間となる位置に接続されている。第一分岐管67には、第一差圧センサ66が設けられている。
【0017】
第一差圧センサ66は、第一検査ガス供給管63と、第一マスタチャンバ68との差圧を検出する。本実施形態において、第一差圧センサ66には、半導体ピエゾ抵抗拡散圧力センサが用いられている。第一差圧センサ66は、第一マスタ気密弁64を閉弁した状態の第一検査ガス供給管63と、第一マスタチャンバ68との差圧に基づくダイヤフラムの変形によって発生するピエゾ抵抗効果を利用する。第一差圧センサ66は、ブリッジ抵抗の電気抵抗の変化を電気信号に変換することによって第一検査ガス供給管63の内圧、ひいてはアノードガス流路93の内圧、を検出することができる。第一差圧センサ66による検出結果は、制御装置20に送信される。本実施形態において、第一差圧センサ66、第一マスタ気密弁64、ならびに第一マスタチャンバ68は、アノードガス流路93の内圧、すなわち燃料電池90のアノードの内圧を検出する「アノード圧計測部」として機能する。第一差圧センサ66は、半導体ピエゾ抵抗拡散圧力センサに限らず、静電容量型圧力センサであってもよい。
【0018】
アノード排出口気密部52は、燃料電池90のアノード排出口94に取り付けられる栓である。アノード排出口気密部52は、アノード気密弁62とともに、燃料電池90のアノードガス流路93および第一供給管41を気密にするための「第一気密機構」として機能する。アノード排出口気密部52は、例えば、アノード排出口94に取り付けられるアノードの排出管と、アノードの排出管とに備えられる開閉弁とによって構成されてもよい。
【0019】
第二供給管42は、カソード接続部42Eを備えている。カソード接続部42Eは、第二供給管42のうち燃料電池90のカソード供給口96に取り付け可能な検査ガスの供給口である。第二供給管42は、レギュレータ50によって減圧された検査ガスを、カソード接続部42Eを介して、燃料電池90のカソードガス流路95に供給する。第二供給管42には、カソードリーク検出器70が設けられている。
【0020】
カソードリーク検出器70は、アノードリーク検出器60と同様に構成される差圧式のリークテスタであり、カソードガス流路95のガスリークの有無を検出するために用いられる。カソードリーク検出器70は、第二検査ガス供給管73と、カソード気密弁72と、第二マスタ供給管75と、第二マスタ気密弁74と、第二分岐管77と、第二差圧センサ76と、第二マスタチャンバ78とを備えている。第二検査ガス供給管73は、アノードリーク検出器60の第一検査ガス供給管63と同様であり、カソード気密弁72は、アノード気密弁62と同様であり、第二マスタ供給管75は、第一マスタ供給管65と同様であり、第二マスタ気密弁74は、第一マスタ気密弁64と同様であり、第二分岐管77は、第一分岐管67と同様であり、第二マスタチャンバ78は、第一マスタチャンバ68と同様の構成であるので、詳細な説明を省略する。本実施形態において、第二差圧センサ76、第二マスタ気密弁74、ならびに第二マスタチャンバ78は、カソードガス流路95の内圧、すなわち燃料電池90のカソードの内圧を検出する「カソード圧計測部」として機能する。
【0021】
カソード排出口気密部56は、燃料電池90のカソード供給口96に取り付けられる栓である。カソード排出口気密部56は、カソード気密弁72とともに、燃料電池90のカソードガス流路95および第二供給管42を気密にするための「第二気密機構」として機能する。カソード排出口気密部56は、例えば、カソード排出口98に取り付けられる管路と、当該管路に備えられる開閉弁とによって構成されてもよい。
【0022】
連結管82は、第一供給管41と、第二供給管42とを接続している。本実施形態において、連結管82の一端は、第一供給管41のアノード接続部41Eと、アノード気密弁62との間の位置に接続されている。連結管82の他端は、第二供給管42のカソード接続部42Eと、カソード気密弁72との間に接続されている。換言すれば、本実施形態において、連結管82の一端は、第一供給管41のうち、第一気密機構によってアノードガス流路93とともに検査ガスを気密にされる位置に接続され、連結管82の他端は、第二供給管42のうち、第二気密機構によってカソードガス流路95とともに検査ガスを気密にされる位置に接続されている。
【0023】
本実施形態において、連結管82には、連結弁80が備えられている。連結弁80としては、例えば電磁弁や電動弁を用いることができる。連結弁80は、制御装置20によって開閉駆動を制御される。本実施形態において、連結管82と連結弁80とは、制御装置20によって連結弁80が開閉駆動されることにより、第一供給管41と第二供給管42とが連結管82を介して連通する連通状態と、第一供給管41と第二供給管42とが連通しない非連通状態とを切り換える「連通状態切換部」として機能する。
【0024】
本実施形態の100は、さらに、制御装置20を備えている。制御装置20は、論理演算を実行するマイクロプロセッサやROM、RAM等のメモリを備えるマイクロコンピュータで構成される。制御装置20は、マイクロプロセッサがメモリ内に記憶されているプログラムを実行することにより、第一気密機構、第二気密機構、ならびに連通状態切換部の動作の制御や、燃料電池90のガスリーク検査制御を含むガスリーク検査装置100の種々の制御を実行する。
【0025】
図2は、第1実施形態のガスリーク検査装置100の制御装置20が実行するガスリーク検査制御を示すフロー図である。本フローは、例えば、燃料電池90に接続されたガスリーク検査装置100が運転を開始することにより、開始する。
【0026】
ステップS20では、制御装置20は、すべての弁を開弁させて検査ガスの供給を開始する。すべての弁には、燃料電池90に検査ガスを供給するための弁と、アノード圧計測部およびカソード圧計測部に含まれる弁と、連通状態切換部に含まれる弁とが含まれる。本実施形態において、燃料電池90に検査ガスを供給するための弁には、レギュレータ50、アノード気密弁62、ならびにカソード気密弁72が含まれる。アノード計測部およびカソード圧計測部に含まれる弁には、第一マスタ気密弁64および第二マスタ気密弁74が含まれる。連通状態切換部に含まれる弁には、連結弁80が含まれる。各弁の開弁により、検査ガス供給部30からの検査ガスが、燃料電池90のアノードガス流路93およびカソードガス流路95、アノードリーク検出器60の第一マスタチャンバ68、ならびにカソードリーク検出器70の第二マスタチャンバ78へと供給されるとともに、第一供給管41、第二供給管42、連通状態の連結管82に充填される。なお、すべての弁は同時に開弁される必要はなく、任意の順序で開弁されてよい。ステップS20における検査ガスの供給の終了条件としては、検査ガスの供給を開始した時点から予め定められた期間が経過したことや、第一供給管41や第二供給管42の内圧が予め定められた圧力まで上昇したこと等が挙げられる。
【0027】
ステップS30では、制御装置20は、第一気密機構および第二気密機構を動作制御して、アノードガス流路93、カソードガス流路95ならびに連結管82を気密にする。本実施形態では、制御装置20は、アノード気密弁62およびカソード気密弁72を閉弁する。制御装置20は、さらにレギュレータ50を閉弁してよい。この結果、検査ガス供給部30から供給された検査ガスは、アノードガス流路93、カソードガス流路95、第一マスタチャンバ68、第二マスタチャンバ78、第一供給管41、第二供給管42、ならびに連通状態の連結管82に気密にされる。
【0028】
ステップS40では、制御装置20は、連通状態において、アノードの内圧と、カソードの内圧とが略均一の状態で安定する平衡状態であるか否かを確認する。制御装置20は、例えば、第一差圧センサ66や第二差圧センサ76の検出結果が略等しい状態で安定した場合に、アノードの内圧とカソードの内圧とが平衡状態であると判定する。制御装置20は、アノード気密弁62およびカソード気密弁72の閉弁を完了してから、アノードの内圧およびカソードの内圧が略均一の状態で安定する程度の期間が経過したことにより、アノードの内圧と、カソードの内圧とが平衡状態であると判定してもよい。この結果、燃料電池90のアノードガス流路93と、カソードガス流路95との内圧は、ほぼ等しくなる。
【0029】
ステップS50では、制御装置20は、連通状態切換部を制御して、非連通状態に切り換える。本実施形態では、制御装置20は、連結管82の連結弁80を閉弁させることにより、411と第二供給管42とを非連通状態に切り換える。この結果、検査ガスは、アノードガス流路93と、カソードガス流路95とに個別に気密にされる。
【0030】
ステップS60では、アノードリーク検出器60によるアノードガス流路93のガスリーク検査と、カソードリーク検出器70によるカソードガス流路95のガスリーク検査とをそれぞれ開始する。なお、カソードリーク検出器70によるカソードガス流路95のガスリーク検査は、アノードリーク検出器60によるアノードガス流路93のガスリーク検査と同様であるので説明を省略する。ステップS50を完了してからステップS60を開始するまでの期間は、任意に設定することができる。ステップS50を完了してからステップS60を開始するまでの期間は、アノードガス流路93とカソードガス流路95との内圧がなるべく等しい状態でガスリーク検査を実行するために、例えば、数ミリ秒、0.1秒から1.0秒など、短い期間であるほど好ましい。
【0031】
制御装置20は、アノード圧計測部によって検出されたアノードガス流路93の内圧を用いて、アノードガス流路93のガスリークの有無を判定する。第一マスタチャンバ68の内圧は、ステップS20で検査ガスが供給されることにより上昇する。第一マスタチャンバ68の内圧は、ステップS30で検査ガスが気密にされた後に、例えば温度変化などの影響を受けて減少し、一定の期間が経過した時点で、略一定となる。本実施形態では、制御装置20は、アノード圧計測部としての第一差圧センサ66が検出した差圧を用いて、第一マスタチャンバ68の内圧に対してアノードガス流路93の内圧が小さくなったことを確認した場合に、アノードガス流路93にガスリーク有りと判定する。より具体的には、制御装置20は、第一マスタチャンバ68と、アノードガス流路93との差圧が予め定められた値以上であることを確認した場合、すなわち、アノードガス流路93の内圧が第一マスタチャンバ68の内圧に対して予め定められた圧力以上小さくなったことを確認した場合に、アノードガス流路93にガスリーク有りと判定する。第一マスタチャンバ68とアノードガス流路93との差圧が予め定められた値未満である場合には、制御装置20は、アノードガス流路93にガスリーク無しと判定する。制御装置20は、第一マスタチャンバ68とアノードガス流路93との差圧に代えて、第一マスタチャンバ68の圧力変化量と、アノードガス流路93の圧力変化量の差を用いてガスリークの有無を判定してもよい。制御装置20は、アノードガス流路93およびカソードガス流路95のガスリークの有無の判定を終えると、ステップS70に移行してリーク検査を終了し、本フローを終了する。
【0032】
以上、説明したように、本実施形態のガスリーク検査装置100は、アノードガス流路93に接続される第一供給管41と、カソードガス流路95に接続される第二供給管42とが連通する連通状態と、第一供給管41と第二供給管42とが連通しない非連通状態とを切り換え可能な連通状態切換部を備えている。第一供給管41と、第二供給管42とを連通させることにより、アノードガス流路93の内圧と、カソードガス流路95の内圧とを等しくしたうえで、燃料電池90のアノードのガスリークの検査と、カソードのガスリークとの検査を実行することができる。したがって、燃料電池90の電解質膜を介した検査ガスのクロスリークの発生を低減または防止した状態でガスリーク検査を行うことができるガスリーク検査装置100を得ることができる。
【0033】
本実施形態のガスリーク検査装置100によれば、連結管82は、第一供給管41と第二供給管42との連通状態と非連通状態とを切り換え可能な連結弁80を備えている。連結管82の一端は、第一供給管41のうち、第一気密機構によってアノードガス流路93とともに検査ガスを気密にされる位置に接続され、連結管82の他端は、第二供給管42のうち、第二気密機構によってカソードガス流路95とともに検査ガスを気密にされる位置に接続されている。すなわち、本実施形態のガスリーク検査装置100は、アノードガス流路93およびカソードガス流路95とともに気密にされた状態の連結管82における連結弁80の開閉制御の開閉のみによって、第一供給管41と第二供給管42との連通状態と、非連通状態とを切り換えることができる。したがって、アノードとカソードとの圧力がほぼ等しくなる連通状態から、アノードおよびカソードのガスリークを検査するための非連通状態への切り換えを容易にすることができる。したがって、連通状態から非連通状態への切り換えに伴う検査ガスの圧力変化を低減または抑制することができ、検査ガスのクロスリークの発生をより低減または防止することができるガスリーク検査装置100を得ることができる。
【0034】
本実施形態のガスリーク検査装置100によれば、アノード圧計測部は、第一差圧センサ66を備え、カソード圧計測部は、第二差圧センサ76を備えている。直圧式の圧力センサを用いる場合に比較して、アノードガス流路93およびカソードガス流路95の内圧の検出速度が速くなり、検査期間を短縮することができるガスリーク検査装置100を得ることができる。また、直圧式の圧力センサを用いる場合に比較して、圧力検出の分解能を高くすることができ、ガスリークの検出精度を向上することができるガスリーク検査装置100を得ることができる。
【0035】
B.第2実施形態:
図3は、本開示の第2実施形態としてのガスリーク検査装置100bの概略構成を示す説明図である。第1実施形態のガスリーク検査装置100が差圧方式のリークテスタを備えるのに対して、第2実施形態のガスリーク検査装置100bは、いわゆる直圧方式のリークテスタで構成される点と、連結管82bの配置位置が異なる点において、第1実施形態のガスリーク検査装置100とは相違する。具体的には、第2実施形態のガスリーク検査装置100bは、アノードリーク検出器60に代えてアノード圧センサ69を備え、カソードリーク検出器70に代えてカソード圧センサ79を備え、連結管82に代えて連結管82bを備える点において、第1実施形態のガスリーク検査装置100とは相違し、それ以外の構成は第1実施形態のガスリーク検査装置100と同様である。
【0036】
アノード圧センサ69は、第一供給管41の内圧を検出する圧力センサである。アノード圧センサ69は、ガスリーク検査時において、アノードガス流路93の内圧を検出するための「アノード圧計測部」として機能する。カソード圧センサ79は、第二供給管42の内圧を検出する圧力センサである。カソード圧センサ79は、カソードガス流路95の内圧を検出するための「カソード圧計測部」として機能する。
【0037】
本実施形態において、アノード気密弁62およびアノード排出口気密部52は、第1実施形態と同様に、燃料電池90のアノードガス流路93および第一供給管41に検査ガスを気密にするために用いられる「第一気密機構」として機能する。同様に、カソード気密弁72およびカソード排出口気密部56は、カソードガス流路95および第二供給管42に検査ガスを気密にするために用いられる「第二気密機構」として機能する。
【0038】
連結管82bは、第一供給管41と、第二供給管42とを接続している。本実施形態では、連結管82bは、第一供給管41におけるレギュレータ50とアノード気密弁62との間となる位置と、カソード気密弁72とを接続する管路である。本実施形態では、連結管82bの一端は、第一供給管41のうち第一気密機構によって検査ガスが気密にされる範囲外となる位置に接続され、連結管82bの他端は、第二供給管42のうち第二気密機構によって検査ガスが気密にされる範囲外となる位置に接続されている。
【0039】
本実施形態では、連結管82bと、アノード気密弁62およびカソード気密弁72とが、「連通状態切換部」として機能する。より具体的には、アノード気密弁62とカソード気密弁72とが開弁されることにより、第一供給管41と第二供給管42とが連結管82bを介して連通する連通状態が形成される。カソード気密弁72とカソード気密弁72とが閉弁されることにより、第一供給管41と第二供給管42とが連通しない非連通状態が形成される。
【0040】
図4は、第2実施形態のガスリーク検査装置100の制御装置20が実行するガスリーク検査制御を示すフロー図である。ステップS22では、制御装置20は、すべての弁を開弁させて検査ガスの供給を開始する。本実施形態において、燃料電池90に検査ガスを供給するための弁には、レギュレータ50、アノード気密弁62、ならびにカソード気密弁72が含まれる。本実施形態において、アノード圧計測部およびカソード圧計測部に含まれる弁に該当する弁はない。連通状態切換部に含まれる弁には、アノード気密弁62およびカソード気密弁72が含まれる。これらの弁を開弁することにより、検査ガス供給部30からの検査ガスが、燃料電池90のアノードガス流路93およびカソードガス流路95へと供給されるとともに、第一供給管41、第二供給管42、連通状態の連結管82bに充填される。ステップS22における検査ガスの供給の終了条件としては、検査ガスの供給を開始した時点から予め定められた期間が経過したことや、アノード圧センサ69やカソード圧センサ79により第一供給管41や第二供給管42の内圧が予め定められた圧力まで上昇したこと等が挙げられる。
【0041】
ステップS32では、制御装置20は、レギュレータ50を閉弁する。この結果、検査ガス供給部30から供給された検査ガスは、アノードガス流路93、カソードガス流路95、第一供給管41、第二供給管42、ならびに連通状態の連結管82bに気密にされる。
【0042】
ステップS42では、制御装置20は、連通状態において、アノードの内圧と、カソードの内圧とが平衡状態であるか否かを確認する。本実施形態において、制御装置20は、アノード圧センサ69の検出結果と、カソード圧センサ79との検出結果とが略等しい状態で安定した場合に、アノードの内圧とカソードの内圧とが平衡状態であると判定する。アノード圧センサ69の検出結果と、カソード圧センサ79との検出結果とが略等しい場合に限らず、アノード圧センサ69の検出結果と、カソード圧センサ79との検出結果との差が、予め定められた閾値よりも小さいことを検出したことによって、アノードの内圧とカソードの内圧とが平衡状態であると判定されてもよい。また、例えば、アノード圧センサ69と、カソード圧センサ79との少なくともいずれか一方の圧力もしくは圧力変化量が所定の値で安定した場合や、アノード気密弁62およびカソード気密弁72の閉弁を完了した時点からアノードの内圧およびカソードの内圧が略均一の状態で安定する程度の期間が経過した場合に、アノードの内圧とカソードの内圧とが平衡状態であると判定してもよい。この結果、燃料電池90のアノードガス流路93とカソードガス流路95との内圧は、ほぼ等しくなる。
【0043】
ステップS52では、制御装置20は、連通状態切換部を制御して、非連通状態に切り換える。本実施形態では、制御装置20は、連通状態切換部としてのアノード気密弁62およびカソード気密弁72を閉弁させることにより、第一供給管41と第二供給管42とを非連通状態に切り換える。
【0044】
ステップS54では、制御装置20は、第一気密機構および第二気密機構を動作制御して、アノードガス流路93とカソードガス流路95とのそれぞれを気密にする。具体的には、制御装置20は、第一気密機構としてのアノード気密弁62を閉弁し、第二気密機構としてのカソード気密弁72を閉弁することによって、アノードガス流路93および第一供給管41と、カソードガス流路95および第二供給管42とを気密にする。なお、本実施形態では、アノード気密弁62およびカソード気密弁72は連通状態切換部として機能するとともに、第一気密機構および第二気密機構としても機能する。そのため、本実施形態では、ステップS52の実行と同時に、ステップS54も実行される。
【0045】
ステップS62では、アノード圧センサ69によるアノードガス流路93のガスリーク検査と、カソード圧センサ79によるカソードガス流路95のガスリーク検査とをそれぞれ開始する。カソード圧センサ79を用いたカソードガス流路95のガスリーク検査は、アノード圧センサ69を用いたアノードガス流路93のガスリーク検査と同様であるので説明を省略する。ステップS52を完了してからステップS62を開始するまでの期間は、アノードガス流路93とカソードガス流路95との内圧がなるべく等しい状態でガスリーク検査を実行するために、例えば、数ミリ秒、0.1秒から1.0秒などの短い期間であるほど好ましい。
【0046】
本実施形態において、制御装置20は、アノード圧計測部としてのアノード圧センサ69によって検出されたアノードガス流路93の内圧を用いて、アノードガス流路93のガスリークの有無を判定する。より具体的には、ステップS54を終了してから一定期間を経過した後にアノード圧センサ69から得られた圧力値が予め定められた圧力値よりも小さい場合に、アノードガス流路93にガスリーク有りと判定する。予め定められた圧力値は、例えば、試験やシミュレーション等により得られたガスリークが無い状態のアノードガス流路93の内圧値またはその内圧値近傍の値を用いて設定することができる。ガスリークの検出方法には、圧力値に限らず、予め定められた期間経過した時点での圧力値の変化量が用いられてもよい。制御装置20は、アノードガス流路93およびカソードガス流路95のガスリークの有無の判定を終えると、ステップS70に移行してリーク検査を終了し、本フローを終了する。
【0047】
本実施形態のガスリーク検査装置100bによれば、制御装置20は、アノード気密弁62およびカソード気密弁72を動作させて、第一供給管41と第二供給管42とを連通状態に切り換えるとともに、アノードガス流路93および第一供給管41と、カソードガス流路95および第二供給管42とに検査ガスを供給する。制御装置20は、アノード気密弁62を動作させて、検査ガスを供給されたアノードガス流路93および第一供給管41を気密にするとともに、カソード気密弁72を動作させて、検査ガスを供給されたカソードガス流路95および第二供給管42を気密にする。制御装置20は、アノード気密弁62およびカソード気密弁72を動作させて、第一供給管41および第二供給管42を非連通状態に切り換えるとともに、アノード圧センサ69によって検出された内圧値を用いてアノードガス流路93のガスリークの有無を判定するとともに、カソード圧センサ79によって検出された内圧値を用いて、カソードガス流路95のガスリークの有無を判定する。本実施形態のガスリーク検査装置100bは、制御装置20により、連通状態によりアノードとカソードとの圧力がほぼ等しくさせてから、非連通状態に切り換えてアノードおよびカソードのガスリークを検査することができる。したがって、燃料電池90の電解質膜を介した検査ガスのクロスリークの発生を低減または防止した状態でガスリーク検査を行うことができ、ガスリークの検出精度を向上することができる。ガスリークの検出精度の向上に伴い、ガスリーク検査装置100による検査期間を短縮することができる。本実施形態のガスリーク検査装置100bによれば、連結管82bが、第一供給管41および第二供給管42のうち、第一気密機構および第二気密機構によって検査ガスが気密にされる位置に接続されていない場合であっても、第一供給管41と第二供給管42との連通状態と非連通状態とを切り換えることができる。
【0048】
C.他の実施形態:
(C1)上記各実施形態では、第一供給管41がアノード供給口92に接続され、第二供給管42がカソード供給口96に接続される例を示したが、ガスリーク検査装置100は、燃料電池90の排出口側に接続されよく、具体的には、第一供給管41がアノード排出口94に接続され、第二供給管42がカソード排出口98に接続されてもよい。この場合に、アノード排出口気密部52は、アノード供給口92に取り付けられ、カソード排出口気密部56はカソード供給口96に取り付けられてよい。また、第一供給管41がアノード供給口92に接続され、第二供給管42がカソード供給口96に接続されるのに対して、アノードリーク検出器60やカソードリーク検出器70などのアノード圧計測部やカソード圧計測部が、燃料電池90のアノード排出口94やカソード排出口98に接続されるアノードの排出管や、カソードの排出管に備えられてもよい。同様に、第一供給管41がアノード供給口92に接続され、第二供給管42がカソード供給口96に接続されるのに対して、連結管82は、燃料電池90のアノード排出口94やカソード排出口98に接続されるアノードの排出管と、カソードの排出管とを接続するように備えられてもよい。
【0049】
(C2)上記第1実施形態のガスリーク検査装置100では、アノードリーク検出器60とカソードリーク検出器70とを備える差圧方式のガスリーク検査の例を示したが、アノードリーク検出器60とカソードリーク検出器70とに代えてアノード圧センサ69とカソード圧センサ79とを採用する直圧方式のガスリーク検査であってもよい。上記第2実施形態のガスリーク検査装置100bは、アノード圧センサ69とカソード圧センサ79とに代えて、アノードリーク検出器60とカソードリーク検出器70とを採用する差圧方式によるガスリーク検査を備えてもよい。
【0050】
(C3)上記第2実施形態のガスリーク検査装置100bにおいて、連結管82bの一端は、第一供給管41におけるアノード供給口92側の端部と、アノードリーク検出器60のアノード気密弁62との間の位置に接続されている例を示した。これに対して、ガスリーク検査装置100bにおいて、レギュレータ50を備える第一供給管41と、レギュレータ50を備える第二供給管42とが個別に検査ガス供給部30に接続される場合には、連結管82bの一端は、第一供給管41におけるアノード気密弁62と、レギュレータ50との間に備えられてよく、連結管82bの他端は、第二供給管42におけるカソード気密弁72と、レギュレータ50との間に備えられてよい。
【0051】
(C4)上記各実施形態では、第一供給管41と、第二供給管42とが連通する連通状態で、アノードガス流路93およびカソードガス流路95に検査ガスを供給し、検査ガスが供給されたアノードガス流路93および第一供給管41と、カソードガス流路95および第二供給管42とを気密にする。気密にされた第一供給管41と第二供給管42とを非連通状態に切り換えて、アノードガス流路93の内圧と、カソードガス流路95の内圧とを用いて、ガスリークの有無を判定する。これに対して、同様に、第一供給管41と、第二供給管42とが連通する連通状態で、アノードガス流路93およびカソードガス流路95に検査ガスを供給し、検査ガスが供給されたアノードガス流路93および第一供給管41と、カソードガス流路95および第二供給管42とを気密にする。この気密にされた連通状態において、アノードガス流路93の内圧と、カソードガス流路95の内圧との少なくともいずれか一方の内圧を用いることにより、燃料電池90のアノードとカソードとを含む空間のリーク検査を実行してもよい。アノードとカソードとを含む空間のリーク検査において、ガスリーク有りと判定される場合に、気密にされた第一供給管41と第二供給管42とを非連通状態に切り換えて、アノードガス流路93の内圧と、カソードガス流路95の内圧とを用いて、ガスリークの有無を判定してよい。アノードとカソードとを含む空間のリーク検査において、ガスリーク無しと判定される場合に、ガスリーク検査を終了してよい。この形態のガスリーク検査方法によれば、アノードとカソードとのガスリーク検査にかかるトータル期間を短縮し得る。
【0052】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
20…制御装置、30…検査ガス供給部、40…ガス供給管、41…第一供給管、41E…アノード接続部、42…第二供給管、42E…カソード接続部、50…レギュレータ、52…アノード排出口気密部、56…カソード排出口気密部、60…アノードリーク検出器、62…アノード気密弁、63…第一検査ガス供給管、64…第一マスタ気密弁、65…第一マスタ供給管、66…第一差圧センサ、67…第一分岐管、68…第一マスタチャンバ、69…アノード圧センサ、70…カソードリーク検出器、72…カソード気密弁、73…第二検査ガス供給管、74…第二マスタ気密弁、75…第二マスタ供給管、76…第二差圧センサ、77…第二分岐管、78…第二マスタチャンバ、79…カソード圧センサ、80…連結弁、82,82b…連結管、90…燃料電池、92…アノード供給口、93…アノードガス流路、94…アノード排出口、95…カソードガス流路、96…カソード供給口、98…カソード排出口、100,100b…ガスリーク検査装置
図1
図2
図3
図4