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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/10 20060101AFI20230829BHJP
   B62D 21/15 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
B62D25/10 E
B62D21/15 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020194171
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022082969
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷中 壯弘
(72)【発明者】
【氏名】倉知 晋士
(72)【発明者】
【氏名】岩山 英徳
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/096244(WO,A1)
【文献】特開2018-203025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/10-25/13
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
B60R 21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フードを有する車両であって、
前記フードが、
フードアウタと、
板形状を有し、前記フードアウタの下面を覆っており、樹脂により構成されているフードインナと、
を有し、
前記フードアウタと前記フードインナの間に空間が設けられており、
前記フードインナが、前記空間に向かって突出するように屈曲している衝撃吸収部を有しており、
前記衝撃吸収部が、前記車両の左右方向において前記衝撃吸収部の中央に位置する中央部と、前記左右方向において前記中央部の両側に位置する側部を有し、
前記中央部における前記フードインナの厚さが、前記側部における前記フードインナの厚さよりも厚く、
前記衝撃吸収部において、前記フードインナが前側に向かって突出するように屈曲しており、
前記フードインナが、前記衝撃吸収部の下端から前側に伸びる前側部分を有し、
前記前側部分の一部が、前記衝撃吸収部の前端から間隔を開けて前記前端の下側に配置されている、
車両。
【請求項2】
前記衝撃吸収部の上面が、前記左右方向に長く伸びる稜線を有し、
前記稜線が、前記衝撃吸収部の前記下端よりも前側に配置されている、
請求項1に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、フードを有する車両に関する。
【0002】
特許文献1に開示の車両は、コンパートメントを覆うフードを有している。フードは、フードアウタとフードインナを有している。フードインナは、フードアウタの下面を覆っている。フードアウタとフードインナの間には、空間が設けられている。その空間には、衝撃吸収体が設けられている。フードに物体が衝突すると、衝撃吸収体が圧縮されることで衝撃が吸収される。これによって、物体に加わる衝撃が緩和される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-285466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようにフードインナとフードアウタの間の空間に衝撃吸収体が設けられている構造では、フードの組み立て後に衝撃吸収体を外部から視認することが困難であり、衝撃吸収体に位置ずれ等が生じている場合には十分な衝撃吸収性能を確保できないおそれがある。本明細書では、衝撃を吸収可能な新たなフード構造を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する車両は、フードを有する。この車両では、前記フードが、フードアウタと、フードインナを有している。前記フードインナは、板形状をし、前記フードアウタの下面を覆っており、樹脂により構成されている。前記フードアウタと前記フードインナの間に空間が設けられている。前記フードインナが、前記空間に向かって突出するように屈曲している衝撃吸収部を有している。前記衝撃吸収部が、前記車両の左右方向において前記衝撃吸収部の中央に位置する中央部と、前記左右方向において前記中央部の両側に位置する側部を有している。前記中央部における前記フードインナの厚さが、前記側部における前記フードインナの厚さよりも厚い。
【0006】
この車両では、フードアウタとフードインナの間に空間が設けられており、フードインナのうちの空間に向かって突出するように屈曲している部分によって、衝撃吸収部が構成されている。フードに物体が衝突すると、衝撃吸収部が圧縮されることで、衝撃が吸収される。このように、衝撃吸収部がフードインナに設けられた屈曲部によって構成されているので、フードの組み立て後に衝撃吸収部を容易に視認でき、衝撃吸収部で異常が生じ難い。したがって、衝撃吸収部で十分な衝撃吸収能力を確保することができる。また、衝撃吸収部の中央部におけるフードインナの厚さが、衝撃吸収部の側部におけるフードインナの厚さよりも厚い。このため、側部は中央部よりも潰れやすい。したがって、フードに物体が衝突したときに、側部が中央部よりも先に潰れやすい。これによって、フードに衝突した物体を、中央部から側部に近い方へ変位させることができる。これにより、物体が中央部付近の車両部品に衝突することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】車両の斜視図。
図2図1のII-II線における断面図。
図3】衝撃吸収部を車両の外側から見た斜視図
図4】インパクタの衝突を示す断面図。
図5】インパクタの衝突を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書が開示する一例の車両では、前記衝撃吸収部において、前記フードインナが前側に向かって突出するように屈曲していてもよい。前記フードインナが、前記衝撃吸収部の下端から前側に伸びる前側部分を有していてもよい。前記前側部分の一部が、前記衝撃吸収部の前端から間隔を開けて前記前端の下側に配置されていてもよい。
【0009】
この構成によれば、衝撃吸収部に対して上側から衝撃が加わる場合に、衝撃吸収部が潰れ易く、衝撃吸収部で衝撃エネルギーを吸収し易い。
【0010】
本明細書が開示する一例の車両では、前記衝撃吸収部の上面が、前記左右方向に長く伸びる稜線を有していてもよい。
【0011】
この構成によれば、フードに物体が衝突した場合に、衝撃吸収部の稜線の位置に最初に衝撃が加わり易い。このように、最初に衝撃が加わる位置を制御できるので、衝撃吸収部が適切に潰れ易い。したがって、衝撃吸収部で衝突エネルギーを吸収し易い。
【0012】
本明細書が開示する一例の車両では、前記稜線が、前記中央部では前記側部よりも前記車両の前側に位置するように湾曲していてもよい。
【0013】
この構成によれば、衝撃吸収部が潰れるときに、フードに衝突した物体を中央部の後方に存在する車両部品から遠ざける方向に変位させやすい。したがって、フードに衝突した物体が当該車両部品に衝突することを抑制することができる。
【0014】
本明細書が開示する一例の車両では、前記衝撃吸収部の上面が、前記左右方向に長く伸びる稜線を有していてもよい。前記稜線が、前記衝撃吸収部の前記下端よりも前側に配置されていてもよい。
【0015】
この構成によれば、衝撃吸収部と前側部分の間の間隔の上部に稜線が位置するので、衝撃吸収部と前側部分の間の間隔が潰れ易い。したがって、より多くの衝突エネルギーを吸収し易い。
【0016】
本明細書が開示する一例の車両は、前記中央部の後方に突起物を有していてもよい。
【0017】
この構成によれば、車両に衝突した物体が突起物に衝突することを抑制できる。
【0018】
図1に示す実施形態の車両10は、モータの駆動力によって走行する電動車両である。なお、図1を含む各図において、矢印FRは車両前側を示し、矢印RHは車両右側を示し、矢印UPは車両上側を示す。車両10は、フード12、ウィンドシールド14、及び、カウルトップ16を有している。フード12は、ウィンドシールド14の前方で車両10の上面を覆っている。フード12の下部には、モータ等を収容しているコンパートメントが設けられている。フード12は開閉可能とされている。カウルトップ16は、フード12とウィンドシールド14の間の領域を覆っている。カウルトップ16には、ワイパー18が設置されている。
【0019】
図2は、図1のII-II線の位置における断面を示している。図2に示すように、カウルトップ16には、ワイパー18の回転軸18aが設置されている。回転軸18aの上端は、カウルトップ16から上側に突出している。
【0020】
フード12の後端部は、カウルトップ16の前端部を覆っている。フード12は、フードアウタ12xとフードインナ12yを有している。フードアウタ12xは、板状の部材であり、フード12のうちの車両10表面に露出する部分を構成している。フードアウタ12xは、樹脂により構成されている。フードインナ12yは、板状の部材であり、フードアウタ12xの内面(すなわち、下面)に固定されている。フードインナ12yは、フードアウタ12xの内面の略全体を覆っている。フードインナ12yは、樹脂により構成されている。フードアウタ12xとフードインナ12yの間に、空間13が設けられている。
【0021】
フードインナ12yは、空間13に向かって(すなわち、フードアウタ12xに向かって)突出するように屈曲した衝撃吸収部30を有している。衝撃吸収部30は、上板32と下板34を有している。また、フードインナ12yは、上端部分12aと前側部分12bを有する。上端部分12aは、フードインナ12yの上端を構成しており、フードアウタ12xに固定されている。上板32は、上端部分12aから前側に向かって伸びている。上板32の前端は、衝撃吸収部30の前端30aである。前端30aにおいて、上板32に下板34が接続されている。前端30aにおいてフードインナ12yは急激に曲がっており、下板34は前端30aから後方に向かって斜め下方向に伸びている。したがって、下板34は、上板32の下部に配置されている。前端30aを除いて、上板32と下板34の間に間隔33が設けられている。下板34の下端は、衝撃吸収部30の下端30bである。下端30bにおいて、下板34に前側部分12bが接続されている。下端30bにおいてフードインナ12yは急激に曲がっており、前側部分12bは下端30bから前側に向かって伸びている。したがって、前側部分12bの一部は、下板34の下部に配置されている。下端30bを除いて、前側部分12bのうちの下板34の下部に配置されている部分と下板34の間に間隔35が設けられている。すなわち、前側部分12bの一部は、衝撃吸収部30の前端30aから間隔35を開けて前端30aの下側に配置されている。前側部分12bの前端部(すなわち、下端部)は、フードアウタ12xに固定されている。
【0022】
上記のように上板32と下板34が構成されているので、衝撃吸収部30は、上端部分12a及び下端30bよりも空間13に向かって(すなわち、フードアウタ12xに向かって)突出している。衝撃吸収部30は、上端部分12a及び下端30bよりも前側に向かって突出している。
【0023】
図3は、衝撃吸収部30を車両10の外側から見た図である。なお、図3においては、フードアウタ12xを透視した状態で衝撃吸収部30を示している。図2、3に示すように、衝撃吸収部30は、ワイパー18の回転軸18aの前側に配置されている。衝撃吸収部30は、車両10の左右方向において衝撃吸収部30の中央に位置する中央部30cと、車両10の左右方向において中央部30cの両側に位置する2つの側部30dを有している。車両10の前後方向における衝撃吸収部30の幅は、中央部30cで広く、各側部30dで狭くなっている。中央部30cの後方に、ワイパー18の回転軸18aが配置されている。衝撃吸収部30の上面(すなわち、上板32の上面)に、稜線32aが形成されている。図2に示すように、稜線32aは、上板32が折れ曲がった部分によって構成されている。図3に示すように、稜線32aは、車両10の左右方向に長く伸びている。稜線32aは、中央部30c内において、各側部30d内よりも前側に位置するように湾曲している。図2に示すように、稜線32aは、衝撃吸収部30の下端30bよりも前側に配置されている。すなわち、稜線32aは、間隔35の上部に配置されている。フードインナ12yの厚さは、中央部30cにおいて、各側部30dよりも厚い。したがって、中央部30cは、各側部30dよりも高い剛性を有する。なお、中央部30cと各側部30dの境界では、フードインナ12yの厚さが徐々に変化している。
【0024】
車両10が前方で衝突すると、フード12に物体(例えば、歩行者等)が衝突する場合がある。図4、5に示すインパクタ100は、フード12に対する物体の衝突を模擬する試験装置である。インパクタ100をフード12に衝突させることで、衝撃吸収部30による衝撃吸収能力を試験することができる。図4、5は、インパクタ100が衝撃吸収部30の上部においてフード12に衝突する場合を示している。図4、5に示すように、インパクタ100がフード12に衝突すると、間隔33、35が狭くなるように衝撃吸収部30が潰れる。このように衝撃吸収部30が潰れることで、衝撃吸収部30が衝撃を吸収する。これによって、インパクタ100に加わる衝撃が緩和される。
【0025】
上述したように、衝撃吸収部30の上面には稜線32aが形成されている。このため、インパクタ100の衝突によってフードアウタ12xがフードインナ12y側に変形すると、フードアウタ12xは最初に稜線32aで衝撃吸収部30に衝突し易い。このように、稜線32aが設けられていることで、衝撃吸収部30に最初に衝撃が加わる箇所を稜線32a近傍に制御することができる。これによって、衝撃吸収部30が設計した通りに変形し易くなり、衝撃吸収部30で適切に衝撃を吸収することができる。
【0026】
また、稜線32aが間隔35の上部に配置されているので、稜線32aに衝撃が加わると、図5のように間隔35が潰れて衝撃吸収部30が前側に傾斜する。衝撃吸収部30が前側に傾斜すると、インパクタ100が傾斜してインパクタ100の衝突位置が前側にずれ易い。これによって、インパクタ100がワイパー18の回転軸18aに衝突することを抑制できる。特に、稜線32aは、中央部30cにおいて各側部30dよりも前側に位置するように湾曲している。このため、稜線32aは、ワイパー18の回転軸18aの周囲に沿って伸びている。したがって、インパクタ100から稜線32aに衝撃が加わって衝撃吸収部30が潰れた場合に、インパクタ100が回転軸18aから離れる方向に移動し易い。したがって、インパクタ100がワイパー18の回転軸18aに衝突することをより好適に抑制できる。
【0027】
また、上述したように、フードインナ12yの厚さは、中央部30cで各側部30dよりも厚い。このため、中央部30cと側部30dの境界近傍に衝撃が加わると、側部30dが中央部30cよりも先に潰れやすい。このため、フードアウタ12xに衝突したインパクタ100が、回転軸18aから離れるように横方向に移動し易い。これによって、インパクタ100がワイパー18の回転軸18aに衝突することを抑制できる。
【0028】
以上に説明したように、実施形態の車両10によれば、衝撃吸収部30によってインパクタ100に加わる衝撃を緩和できるとともに、インパクタ100がワイパー18の回転軸18aに衝突することを抑制できる。すなわち、物体(例えば歩行者)がフード12に衝突したときに、物体に加わる衝撃を緩和できるとともに、物体が回転軸18aに衝突することを抑制できる。また、衝撃吸収部30がフードインナ12yに設けられた屈曲部によって構成されているので、フード12の組み立て後に衝撃吸収部30を視認できる。したがって、フード12の組み立て時に衝撃吸収部30を適切に配置することができ、衝撃吸収部30でより確実に衝撃を吸収できる。
【0029】
なお、上述した実施形態では、衝撃吸収部30の後方に配置された突起物がワイパー18の回転軸18aであった。しかしながら、衝撃吸収部30の後方に配置された突起物が、他の突起物(例えば、ウィンドシールド14に向かって洗浄液を噴射する噴射ノズル)であってもよい。
【0030】
また、上述した実施形態において、中央部30cと側部30dのそれぞれの内部においては、フードインナ12yの厚さが一定であってもよいし、フードインナ12yの厚さが変化していてもよい。例えば、上板32と下板34のいずれか一方が他方よりも厚くてもよい。
【0031】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0032】
10:車両
12:フード
12x:フードアウタ
12y:フードインナ
13:空間
14:ウィンドシールド
16:カウルトップ
18:ワイパー
18a:回転軸
30:衝撃吸収部
32a:稜線
100:インパクタ
図1
図2
図3
図4
図5