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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20230829BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020529062
(86)(22)【出願日】2019-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2019026799
(87)【国際公開番号】W WO2020009219
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2018127944
(32)【優先日】2018-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019124266
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】舛屋 勇希
(72)【発明者】
【氏名】秦 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐治 俊輔
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-064759(JP,A)
【文献】国際公開第2017/134865(WO,A1)
【文献】特開2017-206191(JP,A)
【文献】特開2018-077400(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129219(WO,A1)
【文献】実用新案登録第2543711(JP,Y2)
【文献】米国特許出願公開第2013/0179023(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、虚像表示領域(9,29,39,49,59,69,79)で虚像を視認者に視認させるヘッドアップディスプレイ装置(1,21,31,41,51,61,71)であって、
前記虚像の元となる表示光(5)を射出する表示面(16)を有する表示部(21)と、
前記表示面(16)が射出する前記表示光(5)を被投影部(2)に向けてリレーし、
前記虚像表示領域(9,29,39,49,59,69,79)の少なくとも一部が、前記車両が進行する路面(8)の下方に配置する、ように構成されたリレー光学系(13)と、から構成され、
前記車両の前後方向で前記視認者から見た前記虚像表示領域(39,49)の遠方端(39f,49f)が、前記虚像表示領域(39,49)の最高位置となるように配置され、
前記虚像表示領域(49)は、前記車両の前後方向に対する接線の角度(θ4)が、前記視認者の近傍から遠方に向かうにつれて広義単調増加するように構成される、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
車両に搭載され、虚像表示領域(9,29,39,49,59,69,79)で虚像を視認者に視認させるヘッドアップディスプレイ装置(1,21,31,41,51,61,71)であって、
前記虚像の元となる表示光(5)を射出する表示面(16)を有する表示部(21)と、
前記表示面(16)が射出する前記表示光(5)を被投影部(2)に向けてリレーし、
前記虚像表示領域(9,29,39,49,59,69,79)の少なくとも一部が、前記車両が進行する路面(8)の下方に配置する、ように構成されたリレー光学系(13)と、から構成され、
前記車両の前後方向で前記視認者から見た前記虚像表示領域(59,69)の遠方端(59f,69f)が、前記虚像表示領域(59,69)の最低位置となるように配置される、
ように構成されるヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
記車両の前後方向に対する接線の角度(θ6)が、前記視認者の近傍から遠方に向かうにつれて広義単調増加するように構成される前記虚像表示領域(69)、
から構成される請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
車両に搭載され、虚像表示領域(9,29,39,49,59,69,79)で虚像を視認者に視認させるヘッドアップディスプレイ装置(1,21,31,41,51,61,71)であって、
前記虚像の元となる表示光(5)を射出する表示面(16)を有する表示部(21)と、
前記表示面(16)が射出する前記表示光(5)を被投影部(2)に向けてリレーし、
前記虚像表示領域(9,29,39,49,59,69,79)の少なくとも一部が、前記車両が進行する路面(8)の下方に配置する、ように構成されたリレー光学系(13)と、から構成され、
前記車両の前後方向で前記視認者から見た遠方端(59f,59f)が、前記路面(8)より下方に配置され、
前記車両の前後方向で前記視認者から見た近傍端(59n,59n)が、前記路面(8)より上方に配置される、ように構成される前記虚像表示領域(59,69)、
から構成されるヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
車両に搭載され、虚像表示領域(9,29,39,49,59,69,79)で虚像を視認者に視認させるヘッドアップディスプレイ装置(1,21,31,41,51,61,71)であって、
前記虚像の元となる表示光(5)を射出する表示面(16)を有する表示部(21)と、
前記表示面(16)が射出する前記表示光(5)を被投影部(2)に向けてリレーし、
前記虚像表示領域(9,29,39,49,59,69,79)の少なくとも一部が、前記車両が進行する路面(8)の下方に配置する、ように構成されたリレー光学系(13)と、から構成され、
前記車両の前後方向で前記視認者から見た前記虚像表示領域(79)の遠方端(79f)と近傍端(79n)とのミドル領域(79m)が、前記虚像表示領域(79)の最低位置となるように配置される、
ように構成されるヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
記遠方端(79f)又は/及び前記近傍端(79n)が、前記路面(8)より上方に配置される、ように構成される前記虚像表示領域(79)、
から構成される請求項5に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項7】
車両に搭載され、虚像表示領域(9,29,39,49,59,69,79)で虚像を視認者に視認させるヘッドアップディスプレイ装置(1,21,31,41,51,61,71)であって、
前記虚像の元となる表示光(5)を射出する表示面(16)を有する表示部(21)と、
前記表示面(16)が射出する前記表示光(5)を被投影部(2)に向けてリレーし、
前記虚像表示領域(9,29,39,49,59,69,79)の少なくとも一部が、前記車両が進行する路面(8)の下方に配置する、ように構成されたリレー光学系(13)と、から構成され、
前記表示面(16)又は/及び前記リレー光学系(13)を移動又は/及び回転させるように構成される1つ又はそれ以上のアクチュエータ(13C,16C)と、
1つ又はそれ以上のI/Oインタフェース(141)と、
1つ又はそれ以上のプロセッサ(142)と、
メモリ(143)と、
前記メモリ(143)に格納され、前記1つ又はそれ以上のプロセッサ(142)によって実行されるように構成される1つ又はそれ以上のコンピュータ・プログラムと、をさらに備え、
前記1つ又はそれ以上のプロセッサ(142)は、
前記路面(8)の位置を取得し、
前記路面(8)の位置に基づき、前記虚像表示領域(9,29,39,49,59,69,79)の少なくとも一部が、前記路面(8)の下方に配置するように、前記アクチュエータ(13C,16C)を駆動する、命令を実行する、
ように構成されたヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項8】
前記表示面(16)は、前記視認者に向かう前記表示光(5)の光軸(5p)に対して、前記虚像表示領域(9,39,49,59,69,79)が前記車両の前後方向に沿うような方向に傾いて配置される、ように構成された前記表示部(21)、
から構成される、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項9】
前記車両の前後方向で前記視認者から見た遠方端(39f,49f)が、前記路面(8)より上方に配置され、
前記車両の前後方向で前記視認者から見た近傍端(39n,49n)が、前記路面(8)より下方に配置される、ように構成される前記虚像表示領域(39,49)、
から構成される請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントウインドシールドやコンバイナ等に虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントウインドシールドやコンバイナ等の反射透光部材を透過する実景(車両前方の風景)に重ねて、その反射透光部材に反射された表示光により虚像を生成して表示するヘッドアップディスプレイ装置は、車両を運転する視認者の視線移動を極力抑えつつ、視認者が所望する情報を虚像により提供することによって、安全で快適な車両運行に寄与する。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置は、車両のダッシュボードに設けられてフロントウインドシールドに表示光を投影し、フロントウインドシールドで反射された表示光により視認者に虚像表示領域上の虚像を視認させる。同特許文献では、車両が進行する路面と略平行な第一の虚像表示領域上にある第一の虚像と、車両の進行方向と垂直な方向に略平行な第二の虚像表示領域上にある第二の虚像とが、所定の角度をなすように表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-212338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1において、第一の虚像は路面の所定の範囲に亘って重畳して視認されるが、第一の虚像表示領域が路面の上方に位置しているため(同特許文献の段落0015、図1参照)、視認者には、第一の虚像が路面から浮いているように視認される。同特許文献における第一の虚像のように、車両の経路を示す矢印等の虚像は、路面から浮いているように視認されるのではなく、路面に張り付いて視認される方が望ましい場合がある。
【0006】
しかしながら、そのために図15(a)に示すように虚像表示領域80を路面81の上方ではなく路面81と同じ高さに位置させると、車両82の走行中、路面81が平坦でなかったり、車両82の姿勢変化(ピッチング角の変化)があったりした場合に、同図(b)に示すように虚像表示領域80が路面81の上方に浮いて虚像83が路面81から浮き上がることになり、虚像83が路面81に調和していないとの違和感を視認者84が覚えやすいという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、路面に張り付いて視認される虚像を車両の走行時に安定して表示することができるヘッドアップディスプレイ装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置は、虚像の元となる表示光を射出する表示面を有する表示部と、表示面が射出する表示光を被投影部に向けてリレーし、虚像表示領域の少なくとも一部が、車両が進行する路面の下方に配置する、ように構成されたリレー光学系と、から構成される。
【0009】
ここで、「車両が進行する路面」とは、車両が走行すると想定される高さの路面も含み、又は車両の進行方向にあって視認者が実景として視認する路面(車両が前方に走行する場合には、車両の前方の路面)のことであり、例えば「車両が進行する路面」を路面検出手段により検出しても、車両が接地する路面の高さと同一の高さの路面を「車両が進行する路面」とみなしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置によれば、路面に張り付いて視認される虚像を車両の走行時に安定して表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】発明を実施するための形態に係るヘッドアップディスプレイ装置が設けられた車両を示す説明図である。
図2図1のヘッドアップディスプレイ装置の構成を示す説明図である。
図3図1のヘッドアップディスプレイ装置の構成と、これに接続される外部機器との関係を示すブロック図である。
図4A図1のヘッドアップディスプレイ装置によりフロントウインドシールドにナビゲーションの矢印が表示された例を示す説明図である。
図4B図1のヘッドアップディスプレイ装置により先行車との車間距離を表すガイドが表示された例を示す説明図である。
図5図1のヘッドアップディスプレイ装置により生成される虚像表示領域の調整処理を示す流れ図である。
図6】(a)は図1のヘッドアップディスプレイ装置により生成される虚像表示領域を示す説明図、(b)は(a)の車両の前部が浮き後部が沈んだときの虚像表示領域を示す説明図である。
図7】発明を実施するための形態に係る他のヘッドアップディスプレイ装置が設けられた車両を示す説明図である。
図8A】いくつかの実施形態に係る、ヘッドアップディスプレイ装置によって表示される虚像の例を示す図である。
図8B】いくつかの実施形態に係る、ヘッドアップディスプレイ装置によって表示される虚像の例を示す図である。
図9】いくつかの実施形態に係る、ヘッドアップディスプレイ装置によって表示される虚像の例を示す図である。
図10】いくつかの実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置により生成される虚像表示領域を示す説明図である。
図11】いくつかの実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置により生成される虚像表示領域を示す説明図である。
図12】いくつかの実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置により生成される虚像表示領域を示す説明図である。
図13】いくつかの実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置により生成される虚像表示領域を示す説明図である。
図14】いくつかの実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置により生成される虚像表示領域を示す説明図である。
図15】(a)は従来のヘッドアップディスプレイ装置により生成される虚像表示領域を示す説明図、(b)は(a)の車両の前部が浮き後部が沈んだときの虚像表示領域を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、本実施形態の説明では、車両の運転席に着座する運転者(視認者)が車両の前方を向いた際の左右方向をX軸(左方向がX軸正方向)、上下方向をY軸(上方向がY軸正方向)、前後方向をZ軸(前方向がZ軸正方向)とする。
【0013】
図1に示すように、本実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置(HUD)1は、車両2のフロントウインドシールド3の下方に位置するダッシュボード4の内部に設けられ、フロントウインドシールド3の一部に表示光5を投影する。HUD1は、光を反射及び透過する反射透過部材であるフロントウインドシールド3(被投影部の一例である)に表示光5を向けて出射し、フロントウインドシールド3で反射された表示光5により所定領域のアイボックス(不図示)を生成する。視認者7は、アイポイントを前記アイボックスに配置することで、HUD1が表示する画像の全体を視認することができる。なお、ここでは、前記アイボックスを画像の全体が見える領域と定義したが、これに限定されるものではなく、視認者が視認するHUD1の表示する画像の歪みが所定閾値内に収まる領域など、HUD1が表示する画像が所望の状態で視認される領域である。フロントウインドシールド3(被投影部の一例である)よりも前方側(Z軸正方向)の虚像表示領域9で画像(虚像6)を視認させる。これにより、視認者7は、フロントウインドシールド3を介して視認される現実空間である前景に重なった画像(虚像6)を視認できる。
【0014】
HUD1は、画像を表示する表示面を有する表示部12と、リレー光学系13と、を含む。
【0015】
図2の表示部12は、プロジェクタ15と、プロジェクタ15からの投影光を受光して画像(実像)を表示するスクリーン16(表示面の一例)と、で構成されるプロジェクション型ディスプレイである。なお、表示部12は、LCDなどのバックライトからの光を透過する透過型ディスプレイであってもよく、自発光型ディスプレイであってもよい。これらの場合、表示面は、透過型ディスプレイにおけるディスプレイ表面(表示面の一例)であり、プロジェクション型ディスプレイのスクリーン16(表示面の一例)である。前記表示面は、前記表示面から後述のリレー光学系13、及び前記被投影部を介して前記アイボックス(前記アイボックスの中央)へ向かう表示光5の光軸5pに対し垂直になる角度から傾いて配置され、これにより、虚像表示領域9を路面8に沿うように配置することができる。なお、表示部12は、表示制御装置14により制御されるモータなどの第1アクチュエータ16C(図3)が取り付けられ、表示面16を移動、及び/又は回転可能であってもよい。
【0016】
リレー光学系13は、表示部12とフロントウインドシールド3(被投影部の一例。)との間の表示部12からの画像の光(表示部12から前記アイボックスへ向かう光。)の光路上に配置され、表示部12からの画像の光をHUD1の外側のフロントウインドシールド3に投影する1つ又はそれ以上の光学部材で構成される。図2のリレー光学系13は、1つの凹状の第1ミラー13aと、1つの平面の第2ミラー13bと、を含む。
【0017】
第1ミラー13aは、正の光学的パワーを有する自由曲面形状である。なお、第2ミラー13bは、平面ではなく、光学的パワーを有する曲面であってもよい。本実施形態のリレー光学系13は、この曲面形状(光学的パワーの一例。)により、虚像が結像される位置(虚像表示領域9)までの距離を設定する機能、スクリーン16(表示面)に表示された画像を拡大した虚像を生成する機能、を有するが、これに加えて、フロントウインドシールド3の湾曲形状により生じ得る虚像の歪みを抑制する(補正する)機能、を有していてもよい。リレー光学系13は、複数のミラー(例えば、本実施形態の第1ミラー13a、第2ミラー13b。)を合成することで、上記の光学的機能を果たしてもよい。
【0018】
なお、本実施形態では、リレー光学系13は、2つのミラーを含んでいたが、これに限定されるものではなく、これらに追加又は代替で、1つ又はそれ以上の、レンズなどの屈折光学部材、ホログラムなどの回折光学部材、反射光学部材、又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0019】
また、リレー光学系13は、表示制御装置14により制御されるモータなどの第2アクチュエータ13C(図3)が取り付けられ、移動、及び/又は回転可能であってもよい。
【0020】
表示制御装置14は、1つ又はそれ以上のI/Oインタフェース141、1つ又はそれ以上のプロセッサ142、及び1つ又はそれ以上のメモリ143を備える。図3に記載される様々な機能ブロックは、ハードウェア、ソフトウェア、又はこれら両方の組み合わせで構成されてもよい。
【0021】
プロセッサ142は、メモリ143と動作可能に連結される。より具体的には、プロセッサ142は、メモリ143に記憶されているプログラムを実行することで、例えば画像データを生成、及び/又は送信するなど、表示部12の制御、第1アクチュエータ16C、及び第2アクチュエータ13Cの制御を行うことができる。プロセッサ142は、少なくとも1つの汎用マイクロプロセッサ(例えば、中央処理装置(CPU))、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC)、少なくとも1つのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。メモリ143は、ハードディスクのような任意のタイプの磁気媒体、CD及びDVDのような任意のタイプの光学媒体、揮発性メモリのような任意のタイプの半導体メモリ、及び不揮発性メモリを含む。揮発性メモリは、DRAM及びSRAMを含み、不揮発性メモリは、ROM及びNVROMを含んでもよい。
【0022】
図示するように、プロセッサ142は、I/Oインタフェース141と動作可能に連結されている。I/Oインタフェース141は、例えば、CAN(Controller Area Network)の規格に応じて、カメラ、LiDAR又はV2X等により車両2が進行する路面8その他の車両周囲の対象物を検出する対象物検出部101や、CANトランシーバIC、GNSS、加速度センサ、モーションセンサ、ジャイロセンサ等により車速、加速度その他の車両情報を検出する車両情報検出部102との通信(CAN通信とも称する)をバス27を介して行ってもよい。なお、I/Oインタフェース141が採用する通信規格は、CANに限定されず、例えば、CANFD(CAN with Flexible Data Rate)、LIN(Local Interconnect Network)、Ethernet(登録商標)、MOST(Media Oriented Systems Transport:MOSTは登録商標)、UART、あるいはUSBなどの有線通信インタフェース、又は、例えば、Bluetooth(登録商標)ネットワークなどのパーソナルエリアネットワーク(PAN)、802.11x Wi-Fi(登録商標)ネットワークなどのローカルエリアネットワーク(LAN)等の数十メートル内の近距離無線通信インタフェースである車内通信(内部通信)インタフェースを含む。また、I/Oインタフェース141は、無線ワイドエリアネットワーク(WWAN0、IEEE802.16-2004(WiMAX:Worldwide Interoperability for Microwave Access))、IEEE802.16eベース(Mobile WiMAX)、4G、4G-LTE、LTE Advanced、5Gなどのセルラー通信規格により広域通信網(例えば、インターネット通信網)などの車外通信(外部通信)インタフェースを含んでいてもよい。
【0023】
図示するように、プロセッサ142は、I/Oインタフェース141と相互動作可能に連結されることで、HUD1に接続される種々の他の電子機器等と情報を授受可能となる。I/Oインタフェース141には、例えば、車両2に設けられた車外センサ(対象物検出部101の一例)、車外カメラ(対象物検出部101の一例)、速度センサ(車両情報検出部102の一例)、車両ECU(車両情報検出部102の一例)、車外通信機器(不図示)、目位置センサ(不図示)、及びハイトセンサ(車両情報検出部102の一例)などが動作可能に連結される。
【0024】
表示部12は、プロセッサ142に動作可能に連結される。したがって、表示部12によって表示される画像は、プロセッサ142から受信された画像データに基づいてもよい。プロセッサ142は、I/Oインタフェース141から得られる情報に基づき、表示部12が表示する画像を制御する。なお、I/Oインタフェース141は、HUD1に接続される他の電子機器等から受信する情報を加工(変換、演算、解析)する機能を含んでいてもよい。
【0025】
表示光5により生成される虚像6は、車両2が進行する路面8に沿うように視認されるもので、図4Aに示すフロントウインドシールド3の虚像表示領域9に表示されるナビゲーションの矢印18や、図4Bに示す先行車(先行車は、視認者7に実景として視認される。)との車間距離を表すガイド19等を含んでいてもよい。本実施形態のHUD1は、虚像表示領域9を路面8に沿うように形成する。図1では、HUD1が、虚像表示領域9が路面8に対して概ね平行となるように、かつ、路面8の下方に位置するように表示光5を投影し(図1参照)、虚像表示領域9は、車両2から所定距離(8~50m。時には8~180m。)だけ遠方(前方)の路面8において、所定深さ(路面8の下方30~300cm)に位置している。具体的には、虚像表示領域9は、車両2から50[meter]の位置に遠方端9f、車両2から8[meter]の位置に近傍端9n、が配置されるように構成される。なお、虚像表示領域9は、HUD1の内部で生成された画像が、虚像として結像する曲面、又は一部曲面の領域であり、結像面とも呼ばれる。虚像表示領域9は、HUD1の後述する表示面(スクリーン16)の虚像が結像される位置であり、すなわち、虚像表示領域9は、HUD1の後述する表示面に対応し、虚像表示領域9で視認される虚像6は、HUD1の後述する表示面に表示される画像(不図示)に対応している、と言える。虚像表示領域9自体は、実際に視認者7に視認されない、又は視認されにくい程度に視認性が低いことが好ましい。
【0026】
また、表示制御装置14は、図5に示すように、車両2に対する虚像表示領域9の位置を一定となるように(上記所定距離及び/又は上記所定深さが維持されるように)調整してもよい。すなわち、表示制御装置14は、車両情報検出部102(加速度センサ、モーションセンサ、ジャイロセンサ等)の検出結果から車両のピッチング角を取得し(ステップS1)、そのピッチング角と上記所定距離及び/又は上記所定深さに基づいて、虚像表示領域9の所望の表示位置(図6(a))と取得したピッチング角の分ずれた表示位置(図6(b))とのずれ量を算出する(ステップS2)。そして、そのずれ量を打ち消すように、第1アクチュエータ16C又は/及び第2アクチュエータ13Cにより、表示面16又は/及びリレー光学系13を、回転又は/及び移動させることで、車両2に対する虚像表示領域9の位置を調整し(ステップS3)、調整後の虚像表示領域9に対応する表示光5を投影するように表示部12を制御してもよい(ステップS4)。
【0027】
なお、図5においては、表示制御装置14が現に生じたピッチング角の変化に応じて虚像表示領域9の位置を調整しているが、対象物検出部101(カメラ、LiDAR等)により路面8の形状や凹凸等を検出してその検出結果も勘案し、次の瞬間のピッチング角を推定して虚像表示領域9の位置を調整することによって、リアルタイム性を向上させてもよい。
【0028】
さらに、虚像表示領域9を路面8の下方に位置させるために、表示制御装置14は、対象物検出部101により路面8を検出したり、あるいは、車両2が接地する路面の高さと同一とみなしたりすることによって、路面8の高さを把握してもよい。
【0029】
本実施の形態に係るHUD1では、虚像表示領域9が、車両2が進行する路面8の下方に位置し、虚像6も路面8の下方に表示されるが、虚像6は、視認者7には、路面8にそれ以上奥側がないという先入観から、路面8に張り付いているように視認され、この傾向は、特に虚像表示領域9及び虚像6が車両2から遠方に位置するほど、視認者7の奥行知覚が鈍感になり顕著となる。つまり、実際には、視認者7から見て、虚像6は路面8の奥側(下方)で結像しているにもかかわらず、視認者7は、あたかも路面8の表面に虚像6が張り付いて表示されているかのように知覚する。
【0030】
また、仮に、表示制御装置14により生成される虚像表示領域9の位置調整機能がない場合に車両2のピッチング角が変化した際や、その位置調整機能の想定を超えて車両2のピッチング角が変化した際に、虚像表示領域9が図6(a)から(b)に示すように浮き上がったとしても、路面8の下方に位置していた虚像表示領域9は、浮き上がってもなお路面8の下方に位置しやすくなる、又は虚像表示領域9が路面8の上側に配置してしまった場合でも路面8と路面8の上側に配置されてしまった虚像表示領域9との間の高さ方向(Y軸方向)の距離を小さく抑えることができ、視認者7にとって虚像6は路面8に張り付いたままに見え、路面8との重畳感が失われない。
【0031】
したがって、HUD1によれば、路面8に張り付いて視認される虚像6を、車両2の走行中に車両2のピッチング角や路面8の形状、凹凸が変化したとしても、安定して表示することができる。ここでは、表示制御装置14が車両2に対する虚像表示領域9の位置を一定となるように調整し、虚像表示領域9が路面8から浮き上がること自体が抑制されるとともに、視認者7から見て虚像6が一定の場所に表示されるので、虚像6は、車両2の走行時に、より一層安定的に路面8に張り付いたように表示され、その視認性も向上している。
【0032】
図7は、本実施の形態に係る他のHUD21が設けられた車両2を示す。HUD21は、虚像表示領域の配置が異なるほかは、HUD1と同様の構成を有するので、各部の詳細な説明は省略する。
【0033】
HUD21により生成される虚像表示領域29は、視認者7から見て最も遠方側の路面8と重なって視認される遠方端23が、視認者7から見て最も近傍側の路面8と重なって視認される近傍端24よりも上方(Y軸正方向)に位置し、さらには、路面8の上方に位置する。また、車両2に対する近傍端24が路面8の下方(Y軸負方向)に位置する。
【0034】
例えば、図8Aに示すように、虚像表示領域29の路面8よりも上方の部分には、路面8上の背景に重畳されるFCW(前方衝突警報)を示す上方虚像(車速やナビゲーションによる次の案内地点までの残距離等についての画像であってもよい。)25が表示され、路面8よりも下方の部分には、路面8に沿ったように視認されるパースペクティブな下方虚像(案内経路などを示す画像)26が表示される。
【0035】
また、いくつかの実施形態では、図8Bに示すように、虚像表示領域29の路面8よりも上方の部分にも、案内経路などを示す画像であるが、路面8に沿った角度から視認者7の方に起き上がったように視認される非パースペクティブな(又はパースペクティブな度合いが低い)上方虚像25が表示されてもよい。
【0036】
ここでいうパースペクティブな画像とは、車両2の案内経路を示す矢印形状であり、車両2の運転席に着座する視認者7(運転者)から見ると、車両2の前景の路面8に沿っている仮想オブジェクトのように視認される。そして、前記パースペクティブな画像は、車両2の近傍の路面8に重なって視認される部分のサイズが、車両2の遠方の路面8に重なる部分のサイズより大きいように視認される。具体的には、車両2の近傍の路面8に重なって視認される部分の左右方向(X軸方向)の幅が、車両2の遠方の路面8に重なる部分の左右方向の幅より大きいように視認される。このような場合、視認者7(運転者)は、パースペクティブな画像を、路面8に沿っている仮想オブジェクトを俯瞰している(斜め上から見下ろしている)ように知覚し得る。
【0037】
他方、非パースペクティブな画像は、車両2の近傍の路面8に重なって視認される部分のサイズが、車両2の遠方の路面8に重なる部分のサイズと同等に視認される。具体的には、車両2の近傍の路面8に重なって視認される部分の左右方向(X軸方向)の幅と、車両2の遠方の路面8に重なる部分の左右方向の幅とが同じに視認される。このような場合、視認者7(運転者)は、非パースペクティブな画像を、上下左右方向からなる面(XY平面)に沿っている仮想オブジェクトのように知覚し得る。すなわち、非パースペクティブな画像が、文字や、記号、図形、イラスト、静止画像(写真)、動画像などの画像部品を、正面(又は正面に近い角度)から見た画像であると定義すると、パースペクティブな画像は、前記画像部品を、正面ではない斜めから見た画像であると定義することもできる。
【0038】
HUD21では、虚像表示領域29の遠方側の前景に重なって視認される遠方端23が路面8の上方に位置し、近傍側の前景に重なって視認される近傍端24が路面8の下方に位置しているので、虚像6と同様に路面8に沿うように視認されるパースペクティブな下方虚像26を近傍端24の側に表示しつつ、路面8に沿うように視認されづらい非パースペクティブな(又はパースペクティブな度合いが低い)上方虚像25を遠方端23の側に表示することができる。
【0039】
また、いくつかの実施形態では、図9に示すように、虚像表示領域29の路面8よりも上方の部分にも、案内経路などを示す画像であり、路面8に沿ったように視認されるパースペクティブな上方虚像(案内経路などを示す画像)25が表示されてもよい。
【0040】
なお、虚像表示領域の表示位置及び虚像の表示内容も任意であり、虚像表示領域が路面となす角度についても、虚像表示領域9のように路面8と略平行でも、虚像表示領域29のように路面8と略垂直でも、その他の角度でもかまわない。図10ないし図14を用いて、虚像表示領域と路面との間の角度の例を示す。
【0041】
図10は、本実施の形態に係る他のHUD31が設けられた車両2を示す。HUD31は、虚像表示領域の配置が異なるほかは、HUD1と同様の構成を有するので、各部の詳細な説明は省略する。
【0042】
HUD31により生成される虚像表示領域39は、路面8と平行ではない、すなわち路面8と所定の正の第3チルト角θ3を有し、視認者7から見て最も遠方側の路面8と重なって視認される遠方端39fが、高さ方向(Y軸)で最高位置39Hとなり、視認者7から見て最も近傍側の路面8と重なって視認される近傍端39nが、高さ方向(Y軸)で最低位置39Lとなる。図10の虚像表示領域39は、さらには、虚像表示領域39の全体が路面8の下方(Y軸負方向)に位置する。図10(及び図11ないし図14の以下の説明についても同様。)のZ軸正方向を基準にしてX方向を軸としたY軸正方向への回転角度を「正方向」と定義し、その逆方向への回転角度を「負方向」と定義する。また、HUD31により生成される虚像表示領域39は、車両2の近傍から遠方に向けて路面8に対する角度(チルト角)が概ね一定である。なお、HUD31により生成される虚像表示領域39の一部、すなわち、虚像表示領域39の最高位置39Hを含む一部は、路面8の上方に配置され、かつ、最低位置39Lを含む他部は、路面8の下方に配置されてもよい。視認者から見て路面に対して虚像が手前側にズレて表示される場合の違和感は、路面に対して画像が奥側にズレて表示される場合の違和感より大きい。したがって、車両2の姿勢(ピッチング角)が変化した場合でも路面8より上側に虚像表示領域39が配置されることを抑制することができ、また、車両2の姿勢変化により近傍側の虚像表示領域が路面8の上側に配置される場合でも、近傍側の虚像36と路面8との高さ方向の距離を小さく抑えることができる。
【0043】
図11は、本実施の形態に係る他のHUD41が設けられた車両2を示す。HUD41は、虚像表示領域の配置、形状が異なるほかは、HUD1と同様の構成を有するので、各部の詳細な説明は省略する。
【0044】
HUD41により生成される虚像表示領域49は、車両2の左右方向から見た場合に湾曲している点で、図10に示す虚像表示領域39と異なる。HUD41により生成される虚像表示領域49は、路面8と平行ではなく、すなわち路面8と一定ではない所定の正の第4チルト角θ4を有し、視認者7から見て最も遠方側の路面8と重なって視認される遠方端49fが、高さ方向(Y軸)で最高位置49Hとなり、視認者7から見て最も近傍側の路面8と重なって視認される近傍端49nが、高さ方向(Y軸)で最低位置49Lとなる。図11の虚像表示領域49は、さらには、最高位置49Hを含む一部は、路面8の上方に配置され、かつ、最低位置49Lを含む他部は、路面8の下方に配置する。また、HUD41により生成される虚像表示領域49は、車両2の近傍から遠方に向けて路面8に対する角度(第4チルト角θ4)が広義単調増加(非単調減少)する。なお、虚像表示領域49の全体が路面8の下方(Y軸負方向)に配置されてもよい。これにより、遠近差(距離差)を感じやすい近傍側の画像が、車両2の姿勢(ピッチング角)が変化した場合でも路面8より上方に配置されることを抑制することができ、また、車両2のピッチングの変化により近傍側の画像が路面8の上方に配置される場合でも、近傍側の画像と路面8との高さ方向の距離を小さく抑えることができる。また、遠方側の虚像表示領域を路面に沿う角度から視認者側に起き上がらせるように湾曲させることで、視認者から見た遠方側の虚像表示領域を広い前景(例えば、路面)の領域に重ねることができる。換言すると、虚像表示領域の単位面積あたりの重なる前景(例えば、路面)の面積を拡げることができ、広い前景に対して効率的に画像を重ねて表示することができる。
【0045】
図12は、本実施の形態に係る他のHUD51が設けられた車両2を示す。HUD51は、虚像表示領域の配置が異なるほかは、HUD1と同様の構成を有するので、各部の詳細な説明は省略する。
【0046】
HUD51により生成される虚像表示領域59は、路面8と平行ではない、すなわち遠方側が低く、近傍側が高く配置されるように路面8と所定の負の第5チルト角θ5を有し、視認者7から見て最も遠方側の路面8と重なって視認される遠方端59fが、高さ方向(Y軸)で最低位置59Lとなり、視認者7から見て最も近傍側の路面8と重なって視認される近傍端59nが、高さ方向(Y軸)で最高位置59Hとなる。図12の虚像表示領域59は、さらには、虚像表示領域59の最高位置59Hを含む一部は、路面8の上方に配置され、かつ、最低位置59Lを含む他部は、路面8の下方に配置する。また、HUD51により生成される虚像表示領域59は、車両2の近傍から遠方に向けて路面8に対する角度(第5チルト角θ5)が概ね一定である。なお、虚像表示領域59の全体が路面8の下方(Y軸負方向)に配置されてもよい。車両2のピッチング角が変化する場合、車両2のピッチング角に伴い、虚像表示領域59の位置が、遠方側ほど大きく移動する。したがって、遠方側の方が、車両2のピッチング角の変化により、大きく路面8の上側に配置されやすい。しかしながら、路面8より下に配置された虚像表示領域59の一部を遠方側とすることで、車両2のピッチング角の変化により位置が変化しやすい遠方側の画像が、車両2のピッチング角が変化した場合でも路面8より上側に配置されることを抑制することができ、また、車両2のピッチング角の変化により遠方側の画像が路面8の上側に配置される場合でも、遠方側の画像と路面8との高さ方向の距離を小さく抑えることができる。
【0047】
図13は、本実施の形態に係る他のHUD61が設けられた車両2を示す。HUD61は、虚像表示領域の配置、形状が異なるほかは、HUD1と同様の構成を有するので、各部の詳細な説明は省略する。
【0048】
HUD61により生成される虚像表示領域69は、車両2の左右方向(X軸方向)から見た場合に湾曲している点で、図12に示す虚像表示領域69と異なる。HUD61により生成される虚像表示領域69は、路面8と平行ではなく、すなわち路面8と一定ではない所定の負の第6チルト角θ6を有し、視認者7から見て最も遠方側の路面8と重なって視認される遠方端69fが、高さ方向(Y軸)で最低位置69Lとなり、視認者7から見て最も近傍側の路面8と重なって視認される近傍端69nが、高さ方向(Y軸)で最高位置69Hとなる。図13の虚像表示領域69は、さらには、虚像表示領域69の最高位置69Hを含む一部は、路面8の上方に配置され、かつ、最低位置69Lを含む他部は、路面8の下方に配置する。また、HUD61により生成される虚像表示領域69は、車両2の近傍から遠方に向けて路面8に対する角度(第6チルト角θ6)が広義単調増加(非単調減少)する。具体的には、遠方端69fにおける虚像表示領域69の接線と路面8との間の第6遠方チルト角θ6f(0[degree]であってもよい)が、近傍端69nにおける虚像表示領域69の接線と路面8との間の第6近傍チルト角θ6n(負の角度)より大きく、かつ第6チルト角θ6が、近傍端69nから遠方端69fに向かうに連れて、負の角度から0[degree]に近づくように広義単調増加(非単調減少)してもよい。これにより、図10に示したHUD51の効果に加えて、遠方側の虚像表示領域のチルト角を増加させることで、視認者から見た遠方側の虚像表示領域を広い路面の領域に重ねることができる。換言すると、虚像表示領域の単位面積あたりの重なる路面の面積を拡げることができ、広い路面に対して効率的に画像を重ねて表示することができる。
【0049】
図14は、本実施の形態に係る他のHUD71が設けられた車両2を示す。HUD71は、虚像表示領域の配置、形状が異なるほかは、HUD1と同様の構成を有するので、各部の詳細な説明は省略する。
【0050】
HUD71により生成される虚像表示領域79は、路面8と平行ではなく、すなわち路面8と一定ではない所定の第7チルト角θ7を有し、視認者7から見て最も遠方側の路面8と重なって視認される遠方端79fと、視認者7から見て最も近傍側の路面8と重なって視認される近傍端79nとの間のミドル領域79mが、高さ方向(Y軸)の最低位置79Lとなる。図14の虚像表示領域79は、さらには、虚像表示領域79の最高位置79Hを含む一部は、路面8の上方に配置され、かつ、最低位置79Lを含む他部は、路面8の下方に配置する。また、HUD71により生成される虚像表示領域79は、車両2の近傍から遠方に向けて路面8に対する角度(第7チルト角θ7)が広義単調増加(非単調減少)する。具体的には、近傍端79nにおける虚像表示領域79の接線と路面8との間の第7近傍チルト角θ7nが負の角度であり、ミドル領域79mにおける虚像表示領域79の接線と路面8との間の第7チルト角θ7が0[degree]であり、遠方端79fにおける虚像表示領域79の接線と路面8との間の第7遠方チルト角θ7fが正の角度となり、かつ第7チルト角θ7が、近傍端79nから遠方端79fに向かうに連れて、負の角度から正の角度となるように広義単調増加(非単調減少)してもよい。これにより、近傍端79n、遠方端79f、およびこれらの間の領域において、路面8との高さ方向の距離を小さく抑えることができる。
【0051】
また、図14の虚像表示領域79は、遠方端79fと近傍端79nとを路面8の上方に配置し、かつ、最低位置79Lを含む他部を、路面8の下方に配置する。遠方端79fを路面8の上方に配置することで、視認者から見た遠方側の虚像表示領域を広い前景(例えば、路面)の領域に重ねることができる。換言すると、虚像表示領域の単位面積あたりの重なる前景(例えば、路面)の面積を拡げることができ、広い前景に対して効率的に画像を重ねて表示することができる。また、虚像と該虚像と前後方向で重なる背景(前景。典型的には、路面。)との間の遠近差(距離差)を感じやすい近傍側の虚像表示領域を路面より上方に配置することで、視認者7から見て虚像が路面8より奥側(下方)に表示される違和感を防止することができる。なお、図14の虚像表示領域79は、遠方端79fと近傍端79nとを路面8の上方に配置してあるが、これに限定されず、遠方端79f及び近傍端79nのうち少なくとも一方が路面8の下方に配置されてもよい。
【0052】
以上、本発明を実施するための形態について例示したが、本発明の実施形態は上述したものに限られず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更等してもよい。
【0053】
例えば、HUDは、虚像表示領域の少なくとも一部を車両が進行する路面の下方に位置させることができるのであれば、表示部その他各部の構成は任意である。
【0054】
虚像が路面に張り付いているように見える視覚的な程度(虚像の路面との重畳感、一体感)をより高めるためには、虚像表示領域は全体的に寝た状態(路面と平行に近い状態)で路面の近くにあることが望ましい。
【0055】
図11を再び参照する。具体的には、路面と平行に近い虚像表示領域は、虚像表示領域39の遠方端39fと近傍端39nとの間の奥行方向(Z軸方向)の距離39Zが、虚像表示領域39の最高位置39Hと最低位置39Lとの間の高さ方向(Y軸方向)の距離39Yよりも20倍、又はこれより長いことを示し、さらに好ましくは、奥行方向(Z軸方向)の距離39Zが、高さ方向(Y軸方向)の距離39Yよりも40倍、又はこれより長いことを示す。
【符号の説明】
【0056】
1,21,31,41,51,61,71 :ヘッドアップディスプレイ装置(HUD)
2 :車両
3 :フロントウインドシールド(反射透光部材)
5 :表示光
5p :光軸
6,25,26,36,56 :虚像
7 :視認者
8 :路面
9,29、39,49,59,69,79 :虚像表示領域
9f,39f,49f,59f,69f,79f :(車両に対する虚像表示領域の)遠方端
9n,39n,49n,59n,69n,79n :(車両に対する虚像表示領域の)近傍端
12 :表示部
13 :リレー光学系
13a :第1ミラー
13b :第2ミラー
13C :第2アクチュエータ
14 :表示制御装置
15 :プロジェクタ
16 :スクリーン(表示面)
16C :第1アクチュエータ
101 :対象物検出部
102 :車両情報検出部
141 :I/Oインタフェース
142 :プロセッサ
143 :メモリ
θ :チルト角
θ4 :第4チルト角
θ5 :第5チルト角
θ6 :第6チルト角
θ6f :第6遠方チルト角
θ6n :第6近傍チルト角
θ7 :第7チルト角
θ7f :第7遠方チルト角
θ7n :第7近傍チルト角
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15