(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】エレベーターの上下レールの加工装置
(51)【国際特許分類】
B66B 7/02 20060101AFI20230829BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
B66B7/02 B
B23Q17/00 F
(21)【出願番号】P 2022151818
(22)【出願日】2022-09-22
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 高宏
(72)【発明者】
【氏名】寺西 啓治
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-195772(JP,A)
【文献】国際公開第2018/117120(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/084669(WO,A1)
【文献】特開2002-052413(JP,A)
【文献】特開2005-222438(JP,A)
【文献】特開平05-111837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B
B23C、B23P、B23Q
G05B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターのかごを案内するガイドレールの上端又は下端となる上下レールを加工・切断する加工手段と、前記加工手段の上流側に、前記加工手段に向けて前記上下レールを送り込む送込み手段を具え、前記各手段を制御手段により制御する、エレベーターの上下レールの加工装置であって、
加工・切断される前記上下レールには、少なくとも送り込まれる上下レールの端面情報と加工情報とを含む情報マークがプリントされたラベルが付されており、
前記送込み手段は、前記情報マークを読み取る第1読取手段と、前記上下レールの端面形状を読み取る第2読取手段と、を具え、
前記上下レールが前記送込み手段に送り込まれると、前記第1読取手段は前記情報マークを読み取り、前記第2読取手段は、前記端面形状を読み取り、
前記制御手段は、前記第1読取手段により読み込まれた前記情報マークの前記端面情報と、前記第2読取手段により読み込まれた端面形状が一致するかを判断し、一致する場合には、前記加工手段に、前記情報マークの前記加工情報に基づき、前記上下レールの加工・切断を実行させる、
エレベーターの上下レールの加工装置。
【請求項2】
前記情報マークは、二次元バーコード又はバーコードである、
請求項1に記載のエレベーターの上下レールの加工装置。
【請求項3】
前記端面情報は、前記上下レールの送込み方向及びサイズを含む、
請求項2に記載のエレベーターの上下レールの加工装置。
【請求項4】
前記加工情報は、前記上下レールの加工される長さ、孔寸法、孔位置、及び、孔ピッチからなる群より選択される少なくとも1種を含む、
請求項3に記載のエレベーターの上下レールの加工装置。
【請求項5】
前記情報マークは、前記加工情報に工程登録番号を含んでおり、
前記制御手段は、前記工程登録番号に紐付けられた加工方法及び切断長さを少なくとも記憶しており、前記加工手段に、前記上下レールの加工・切断を実行させる、
請求項
4に記載のエレベーターの上下レールの加工装置。
【請求項6】
前記送込み手段は、複数の上下レールが搬入されたときに、1本ずつ上下レールを前記加工手段に送り込むセパレーターを具える、
請求項
5に記載のエレベーターの上下レールの加工装置。
【請求項7】
前記加工手段の下流側に、前記加工手段で加工・切断されたレール製品と端材を振り分ける振分け手段を具える、
請求項
6に記載のエレベーターの上下レールの加工装置。
【請求項8】
前記送込み手段は、複数の上下レールが搬入されたときに、1本ずつ上下レールを前記加工手段に送り込むセパレーターを具える、
請求項1に記載のエレベーターの上下レールの加工装置。
【請求項9】
前記加工手段の下流側に、前記加工手段で加工・切断されたレール製品と端材を振り分ける振分け手段を具える、
請求項1に記載のエレベーターの上下レールの加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの上下レールの穴あけや切断を自動で行なうことができる加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベーターのかごを案内するガイドレールは、シャフトの上端に設けられる上部レールと、その下側に連結される複数の中間レール、最下の中間レールの下側に連結され、シャフトの下端に設けられる下部レールから構成される。各レールには、連結の位置決めのために、上端に突条、下端に凹条が形成されている。また、各レールには、設置現場や仕様に合わせてボルト孔、座繰り孔などの穴あけ加工や面取り加工が施される。
【0003】
上部レールと下部レール(以下、適宜これらをまとめて「上下レール」という)は、中間レールを切断して作製される。具体的には、上部レールは、下端に凹条が残るように、上端側を切断し、下部レールは、上端に突条が残るように下端側を切断する。従って、設置現場や仕様等によって要求されるガイドレールの全長が異なる場合には、上下レールの何れかの切断により長さ調整するようにしている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、上部レールは、下端に凹条を残して、逆側を切断する必要があり、また、下部レールは、上端に突条を残して、逆側を切断する必要がある。また、穴あけ加工等も上下レールの向きが異なると上下や左右が逆になる。加工されるレールは、作業者が図面のチェック作業やけがき作業、けがき位置のチェック作業などを行なって加工されるが、このとき、上下レールが正しい送込み方向であるかどうかを確認する必要がある。しかしながら、レールは長尺であるから、その確認は煩雑である。上下レールの加工装置への送込み方向を間違えると、加工ミスにより材料歩留りが低下してしまう。
【0006】
本発明は、エレベーターの上下レールの送込み方向やサイズが正しいかを判別し、穴あけ加工や切断加工等を自動で行なうことができる加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエレベーターの上下レールの加工装置は、
エレベーターのかごを案内するガイドレールの上端又は下端となる上下レールを加工・切断する加工手段と、前記加工手段の上流側に、前記加工手段に向けて前記上下レールを送り込む送込み手段を具え、前記各手段を制御手段により制御する、エレベーターの上下レールの加工装置であって、
加工・切断される前記上下レールには、少なくとも送り込まれる上下レールの端面情報と加工情報とを含む情報マークがプリントされたラベルが付されており、
前記送込み手段は、前記情報マークを読み取る第1読取手段と、前記上下レールの端面形状を読み取る第2読取手段と、を具え、
前記上下レールが前記送込み手段に送り込まれると、前記第1読取手段は前記情報マークを読み取り、前記第2読取手段は、前記端面形状を読み取り、
前記制御手段は、前記第1読取手段により読み込まれた前記情報マークの前記端面情報と、前記第2読取手段により読み込まれた端面形状が一致するかを判断し、一致する場合には、前記加工手段に、前記情報マークの前記加工情報に基づき、前記上下レールの加工・切断を実行させる。
【0008】
前記情報マークは、二次元バーコード又はバーコードとすることができる。
【0009】
前記端面情報は、前記上下レールの送込み方向、サイズを含むことが望ましい。
【0010】
前記加工情報は、前記上下レールの加工される長さ、孔寸法、孔位置、及び、孔ピッチからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが望ましい。
【0011】
前記ラベルは、前記上下レールにマグネットにより付すことができる。
【0012】
前記ラベルは、針金が装着されており、前記レール製品に形成された孔に前記針金で取り付けられて出荷することができる。
【0013】
前記情報マークは、前記加工情報に工程登録番号を含んでおり、
前記制御手段は、前記工程登録番号に紐付けられた加工方法及び切断長さを少なくとも記憶しており、前記加工手段に、前記上下レールの加工・切断を実行させることができる。
【0014】
前記送込み手段は、複数の上下レールが搬入されたときに、1本ずつ上下レールを前記加工手段に送り込むセパレーターを具えることが望ましい。
【0015】
前記加工手段の下流側に、前記加工手段で加工・切断されたレール製品と端材を振り分ける振分け手段を具えることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のエレベーターの上下レールの加工装置によれば、上下レールの端面情報と加工情報を含む情報マークのプリントされたラベルが上下レールに付されている。そして、第1読取手段が送り込まれた上下レールに付された情報マークを読み取って制御手段に送信し、また、第2読取手段が送り込まれた上下レールの端面形状を読み取って制御手段に送信する。制御手段は、情報マークに含まれる端面情報が端面形状と一致する場合に、情報マークに含まれる加工情報に従って加工手段を作動させて、自動で上下レールを加工・切断する。上下レールの送込み方向やサイズが誤っているなどには、加工・切断は実施されないから、加工ミスによる歩留まり低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、エレベーターのガイドレールの一例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、(a)情報マークが付されたレールの上端、(b)情報マークが付されたレールの下端を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、情報マークの付されたラベルの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例を示すエレベーターの上下レールの加工装置のブロック図である。
【
図5】
図5は、第1読取手段と第2読取手段によるレールの読み取り状況を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のエレベーターのガイドレール10の加工装置30について、図面を参照しながら説明を行なう。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るエレベーター40の概要構成を示す説明図である。エレベーター40は、建物内を貫通するシャフト41内に上下に、かご42やカウンターウェイト43を昇降可能に案内するガイドレール10を具える。ガイドレール10は、かご42の左右、カウンターウェイト43の左右に夫々配置した構成とすることができる。
【0020】
各々のガイドレール10は、
図1に示すように、上端に設けられる上部レール11Uと、その下側に連結される複数の中間レール11M、最下の中間レール11Mの下側に連結され、シャフト41の下端に設けられる下部レール11Dから構成することができる。上部レール11Uと中間レール11M、中間レール11Mどうし、或いは、中間レール11Mと下部レール11Dの連結面には、位置決めのために上端に突条11a等の上側位置決め機構(
図2(a)参照)、下端に凹条11b等の下側位置決め機構(
図2(b)参照)が形成されている。設置現場で、これら突条11aと凹条11bを位置合わせしてレール11U,11M,11Dが連結される。
【0021】
各レール11U,11M,11Dは、台座部12、と台座部12から立設されたガイド部13を有する形状であり、台座部12をシャフト41の壁面に取り付けられたブラケット(図示せず)にボルト止め等することで固定される。このため、レール11U,11M,11Dには、設置現場に合わせてボルト孔や座繰り孔などの穴あけ加工、面取り加工等(以下、適宜「加工」という)を施す必要がある。なお、
図2(a)、(b)に示すレールの上端、下端近傍の孔14は、予めすべてのレールに共通して開設されている孔である。
【0022】
また、ガイドレール10は、設置現場に応じて要求される全長が異なる。このため、一般的には、規定長さの中間レール11Mの本数を変えると共に、上部レール11Uと下部レール11D(以下、適宜これらをまとめて「上下レール11」という)で端数の長さ調整を行なうようにしている。これら上下レール11は、中間レール11Mを所定長さに切断することにより作製される。
【0023】
上下レール11の加工と切断は、
図4に示す加工装置30により実施することができる。中間レール11Mは、加工のみであって切断は不要であるため、穴あけ加工、面取り加工等のみを行なう加工装置で行なえばよい。
【0024】
上下レール11の加工と切断に際し、上部レール11Uは、下端に中間レール11Mとの連結用の凹条11bを残し(
図2(b))、下部レール11Dは、上端に中間レール11Mとの連結用の突条11a(
図2(a))を残すように長さ調整の切断と、加工を行なわなければならない。上下レール11の向きを間違えて加工、切断を行なうと、中間レール11Mに接続できず、また、ブラケットへボルト止めすることができなくなる。
【0025】
このため、加工装置30に正しい向きで正しい上下レール11を送り込み、当該レールに要求される加工データに基づいて加工を行なう必要がある。そこで、本発明では、これらの情報を含む情報マーク21を上下レール11に添付するようにしている。
【0026】
具体的実施形態として、上下レール11(上部レール11U又は下部レール11D)は、
図2に示すように、台座部12が下側、ガイド部13が上側となるように加工装置30に搬入され、加工・切断が行なわれる。そこで、上下レール11には、
図2に示すようにガイド部13の端面、図では上側となる面に、情報マーク21がプリントされたラベル20を付している。情報マーク21は、二次元バーコード(QRコード、マイクロQRコード、DataMatrix、MaxiCode、PDF417、MicroPDF417:登録商標又は各社の商標)やバーコード(一次元バーコード)を採用できる。
【0027】
情報マーク21には、加工される上下レール11の端面情報と加工情報を含めることができる。
【0028】
端面情報は、加工される上下レール11が、上部レール11Uであるか、又は、下部レール11Dであるかの情報と、加工される上下レール11のサイズ、たとえば、台座部12の幅、ガイド部13の高さ、形状などの情報を含むことができる。
【0029】
加工情報は、加工される上下レール11の切断長さ、ボルト孔15や座繰り孔の孔寸法、孔位置、孔ピッチ、面取りの大きさ、有無などである。
【0030】
端面情報と加工情報は、コード化され、情報マーク21に含めることができる。なお、端面情報と加工情報自体は、加工装置30側のデータベースに保持し、情報マーク21には、端面情報と加工情報に紐付けられた数字やアルファベットなどの文字列からなる端面登録番号や工程登録番号を含む構成としてもよい。以下の説明では、情報マーク21は、端面登録番号と工程登録番号を含む構成として説明する。
【0031】
ラベル20は、
図3に示すように、紙やフィルムなどのシート状部材であり、情報マーク21がプリントされる。上下レール11は、一般的に鋼製であるため、ラベル20はマグネット25により上下レール11に付すことができる。これにより、ラベル20は容易に上下レール11に付すことができ、加工・切断完了後、容易に取り外すことができる。なお、ラベル20は、テープや両面テープ、接着剤等により上下レール11に付すこともできる。
【0032】
ラベル20は、
図3のように、作業者等が目視により読み取ることのできる情報として型番22や部品番号23などをプリントしておいてもよい。また、ラベル20として荷札のごとく針金24のような索体付きのものを使用することができ、これにより、加工完了後、当該ラベル20を加工後に上下レール11の孔14に針金24で括り付けることで、レールの型番などを目視により判別することができる。
【0033】
加工装置30は、たとえば、
図4に示すブロック図のように、加工機35と切断機36を含む加工手段34を中心とする構成とすることができる。
【0034】
図示の加工装置30は、上流側から、加工される上下レール11が載置されるコンベア手段31と、コンベア手段31から上下レール11を受け取って、加工手段34に送り込む送込み手段32を有する。また、加工装置30は、送込み手段32の下流側に、上下レール11に穴あけ等の加工を行なう加工手段34、上下レール11を所定長さで切断する切断機36を含む加工手段34を有する。さらに、加工装置30は、加工手段34の下流側に、加工が完了したレール製品16と端材17を振り分ける振分け手段37を具える。なお、加工装置30の構成は、一例であることはもちろんである。
【0035】
加工装置30の各機器は、制御手段38により制御される。制御手段38は、各機器の制御プログラムが記憶されており、制御プログラムに従って各機器を制御する。また、制御手段38は、上下レール11に付されたラベル20の情報マーク21に紐付けられた各種情報、各種レールの端面形状に関するデータを保持するデータベースを有する構成とすることができる。データベースは、制御手段38の記憶領域に格納することができるし、制御手段38が接続可能なサーバーやクラウド上に保管してもよい。データベースに格納される情報については、詳細は後述する。
【0036】
コンベア手段31は、送込み手段32に上下レール11を搬入する搬入コンベア31aを具える。搬入コンベア31aには、作業者によって加工すべき上下レール11がクレーンやフォークリフトにより載置される。作業者は、コンベア手段31に上下レール11が載置されるまで、或いは、遅くとも載置された状態で、ラベル20が上下レール11の送込み方向近傍のガイド部13の上面(コンベア手段31に載置された状態での向き)に付されていることを確認する。
図2(a)は、下部レール11Dの送込み方向(下部レール11Dの上端)、
図2(b)は、上部レール11Uの送込み方向(上部レール11Uの下端)であって、それぞれマグネット25によってラベル20を付している。
【0037】
コンベア手段31は、搬入コンベア31aを作動させて、上記上下レール11を送込み手段32に搬入する。
【0038】
送込み手段32は、加工機35、切断機36に上下レール11を送り込む送込み機構を具える。送込み機構は、たとえば、上下レール11を把持するクランプ32aを具える構成とすることができる。クランプ32aはラック・ピニオンによりNC駆動する構成とし、上下レール11を加工機35に送り込む。送込み手段32には、複数の上下レール11が加工機35側に送り込まれることを防止するセパレーター32bを具えることが望ましい。セパレーター32bは、上下レール11の進行を開閉により規制するゲートを例示できる。
【0039】
送込み手段32は、
図4に示すように、下流側に上下レール11に付されたラベル20の情報マーク21を読み取る第1読取手段33と、上下レール11の端面形状を読み取る第2読取手段33aを具える。第1読取手段33は、
図5に拡大して示すように、上下レール11の上側、第2読取手段33aは、上下レール11の送込み方向前方に配置することができる。
【0040】
第1読取手段33は、上下レール11を上側から撮影して、上下レール11に付されたラベル20の情報マーク21を読み取る。たとえば、第1読取手段33は、二次元コードリーダー、スキャナー、デジタルカメラ等の各種カメラなどを例示できる。
【0041】
また、第2読取手段33aは、上下レール11の送込み方向の前方側から、上下レール11の端面形状を撮影する。第2読取手段33aは、デジタルカメラ等の各種カメラなどを例示できる。
【0042】
なお、第1読取手段33及び第2読取手段33aは、本実施形態では送込み手段32に配置しているが、加工手段34の上流側であれば、送込み手段32に限定されない。また、第1読取手段33と第2読取手段33aの設置位置は、
図5に示す実施形態に限らない。たとえば、第1読取手段33と第2読取手段33aを1つの読取手段として、情報マーク21と上下レール11の端面形状の両方を読み取り可能に配置してもよい。
【0043】
然して、送込み手段32は、上下レール11が加工手段34に送り込まれる前に、第1読取手段33と第2読取手段33aで撮影を行ない、情報マーク21を読み取ると共に、端面形状を撮影する。これら情報は、制御手段38に送信される。
【0044】
制御手段38は、第1読取手段33から得られた情報マーク21に関し、当該情報マーク21に紐付けられた各種情報として、具体的には、端面登録番号に紐付けられた端面情報と、工程登録番号に紐付けられた加工情報をデータベースに保持することができる。端面情報は、加工すべき上下レール11の送込み方向(突条11a、凹条11bの有無)、断面サイズ、断面形状を含む。また、加工情報は、工程登録番号と紐付けられた加工インプットデータとして、対象となる上下レール11の加工方法やレール型番すべてのバリエーションをリスト化したものを例示できる。なお、加工情報のうち、可変する長さや孔位置は品目表データを抽出して自動で計算することができるし、品目表の情報から加工日までに加工インプットデータを新たに作成してもよい。
【0045】
一方、第2読取手段33aから得られた端面形状の画像については、当該画像から特徴量を抽出して、撮影された画像の上下レール11の向き(具体的には突条11a、凹条11bの有無で判断できる)、断面サイズ、断面形状を判定する。これら判定はパターンマッチングやAI活用により実行することができる。
【0046】
そして、制御手段38は、情報マーク21の端面情報に紐付けられた加工すべき上下レール11の端面情報が、第2読取手段33aによって撮影された端面形状と一致するか判断する。
【0047】
これらが一致する場合には、制御手段38は、情報マーク21に含まれる加工情報をデータベースから抽出して、当該加工情報に基づいて上下レール11を加工・切断すべく、送込み手段32を制御し、上下レール11を加工手段34に送り込む。一方、端面情報と端面形状が一致しない場合には、上下レール11の送込みを実行せずに、作業者に報知すればよい。
【0048】
加工手段34は、
図4に示すように、上下レール11に穴あけ加工や座繰り孔加工、面取り加工などを行なう加工機35と、上下レール11を切断する切断機36を含む構成とすることができる。加工機35は、種々のワーク35aを具えた自動工具交換装置(ATC)35b付きのMC加工機とすることができ、上下レール11を下流側に移動させながら、主軸35cに装着されたワークを三次元的に移動させつつ回転させて、上下レール11の穴あけ加工、座繰り孔加工等を行なう。また、切断機36は、円板状のレールカッター36aを回転させて、上下レール11を所定長さで切断する構成を例示できる。
【0049】
然して、加工機35は、送込み手段32から送り込まれた上下レール11に対し、制御手段38から受信した加工情報に基づいて、
図4に示すように、上下レール11の所定位置に所定大きさのボルト孔15等を順次開設、面取り加工等を行なう。
【0050】
同様に、下流側の切断機36は、加工が行なわれた上下レール11に対し、制御手段38から受信した加工情報に基づいて、上下レール11を下流側基準として所定長さで切断する。
【0051】
これにより、上下レール11に加工、切断が施される。
【0052】
本発明では、加工手段34に上下レール11が搬入される前に、上下レール11の送込み方向やサイズなどが正しいかどうかを、上下レール11に付された情報マーク21の端面情報と、上下レール11の端面形状に基づいて制御手段38が判断し、正しい場合にのみ加工・切断を行なうようにしている。また、情報マーク21には、加工情報も含まれるから、上下レール11の送込み方向に応じた加工を行なうことができる。従って、上下レール11の送込み方向間違いや、上下レール11の取り違え等による加工ミスの発生を抑え、歩留り向上を図ることができる。
【0053】
加工手段34の下流側には、加工・切断されたレール製品16と端材17とを振り分ける振分け手段37が配備される。レール製品16は、搬出コンベア37aから送り出されて保管、出荷等される。なお、レール製品16に付されているラベル20は、マグネット25を外して針金24でレール製品16の孔14に括り付けておくことが望ましい。これにより、出荷されるレール製品16の型番等をラベル20を目視することで作業者が確認できる。
【0054】
本発明によれば、予め情報マーク21に端面情報、加工情報を含めているから、作業者が加工される上下レール11に対して通常実施する図面のチェック作業やけがき作業、けがき位置のチェック作業などを不要にできる。たとえば、加工される上下レール11の1本あたり約2分の作業時間が必要であれば、エレベーター1基あたり、上下レール11は8本必要であるから、エレベーター11台の上下レール11を加工することを想定すると、176分/日の作業削減を達成できる。
【0055】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0056】
制御手段38のデータベースには、加工手段34に上下レール11が搬入されて加工が開始された時刻と、加工・切断が完了したレール製品16が振分け手段37から搬出された時刻を記録しておくこともできる。
【符号の説明】
【0057】
10 ガイドレール
11 上下レール
11D 下部レール
11M 中間レール
11U 上部レール
11a 突条
11b 凹条
20 ラベル
21 情報マーク
25 マグネット
30 加工装置
31 コンベア手段
32 送込み手段
33 第1読取手段
33a 第2読取手段
34 加工手段
35 加工機
36 切断機
37 振分け手段
38 制御手段
40 エレベーター
42 かご
43 カウンターウェイト
【要約】
【課題】本発明は、エレベーターの上下レールの送込み方向やサイズが正しいかを判別し、加工や切断を自動で行なうことができる加工装置を提供する。
【解決手段】本発明のエレベーター40の上下レール11の加工装置30は、上下レール11を加工・切断する加工手段34と、前記加工手段に向けて前記上下レールを送り込む送込み手段32を具え、前記各手段を制御手段38により制御する、エレベーターの上下レールの加工装置であって、加工・切断される前記上下レールには、少なくとも送り込まれる上下レールの端面情報と加工情報とを含む情報マーク21がプリントされたラベル20が付されており、前記送込み手段は、前記情報マークを読み取る第1読取手段33と、前記上下レールの端面形状を読み取る第2読取手段33aと、を具え、前記制御手段は、前記情報マークの前記端面情報と端面形状が一致するかを判断し、前記上下レールの加工・切断を実行させる。
【選択図】
図2