(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】ベルト伝動装置
(51)【国際特許分類】
F02B 67/06 20060101AFI20230829BHJP
F16H 7/12 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
F02B67/06 A
F16H7/12 A
(21)【出願番号】P 2022542806
(86)(22)【出願日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 JP2021028550
(87)【国際公開番号】W WO2022034820
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】P 2020135516
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】小村 啓介
(72)【発明者】
【氏名】蒲原 輝展
(72)【発明者】
【氏名】勘解由 文民
(72)【発明者】
【氏名】上野 慎司
(72)【発明者】
【氏名】國丹 翼
(72)【発明者】
【氏名】徳丸 裕貴
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-287776(JP,A)
【文献】特表2009-501306(JP,A)
【文献】特表2018-504569(JP,A)
【文献】特表2019-529823(JP,A)
【文献】特開2020-045990(JP,A)
【文献】特開2020-118132(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0315673(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017008443(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 67/06
F16H 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のクランク軸に固定されたクランクプーリと、
前記クランク軸と平行に設けられた補機の回転軸に固定された補機プーリと、
前記クランクプーリと前記補機プーリとを含む複数のプーリに巻き掛けられるベルトと、
前記補機プーリの回転軸と平行に延びる揺動軸を中心として揺動可能であって、前記ベルトの循環方向において前記補機プーリを境に一対のテンショナプーリが配置され、前記一対のテンショナプーリを相互に繋ぐ板状のスプリングを有し、前記ベルトに張力を付与するベルトテンショナと、
を備え、
前記一対のテンショナプーリは、その中心が前記ベルトテンショナの揺動軸を通る鉛直方向に延びた線を挟むように設けられ、
前記ベルトの循環方向において前記補機プーリの下流側に配置されるテンショナプーリが前記ベルトによって弾かれ難くなるように、
前記補機プーリの下流側に配置されるテンショナプーリの重さが
前記補機プーリの上流側に配置されるテンショナプーリの重さよりも重く設定される、
ベルト伝動装置
。
【請求項2】
前記補機は、前記内燃機関の始動時に電力が供給されることにより前記回転軸が駆動されるスタータである、
請求項1に記載のベルト伝動装置
。
【請求項3】
内燃機関のクランク軸に固定されたクランクプーリと、
前記クランク軸と平行に設けられた補機の回転軸に固定された補機プーリと、
前記クランクプーリと前記補機プーリとを含む複数のプーリに巻き掛けられるベルトと、
前記補機プーリの回転軸と平行に延びる揺動軸を中心として揺動可能であって、前記ベルトの循環方向において前記補機プーリを境に一対のテンショナプーリが配置され、前記一対のテンショナプーリを相互に繋ぐ板状のスプリングを有し、前記ベルトに張力を付与するベルトテンショナと、
を備え、
前記複数のプーリは、前記ベルトの循環方向において前記補機プーリの上流側に設けられた上流側プーリと、前記補機プーリの下流側に設けられた下流側プーリと、をさらに含み、
前記一対のテンショナプーリは、前記一対のテンショナプーリのいずれか一方が前記ベルトによって弾かれ難くなるように、当該いずれか一方のテンショナプーリの重さがいずれか他方のテンショナプーリの重さよりも重く設定され、
前記補機プーリから前記下流側プーリまでの前記ベルトの長さ
と、前記上流側プーリから前記補機プーリまでの前記ベルトの長さ
とは、異なっており、
前記いずれか一方のテンショナプーリは、
前記上流側プーリと前記下流側プーリのうち前記補機プーリから
の前記ベルトの長さが長い方のプーリと、前記補機プーリとの間に配置される
、
ベルト伝動装置。
【請求項4】
前記ベルトテンショナは、
前記一対のテンショナプーリがそれぞれ支持される第1アーム及び第2アームと、
前記内燃機関に固定され、前記第1アーム及び第2アームがそれぞれ回転可能に支持されるハウジングと、
を含み、
前記一対のテンショナプーリは、それぞれ、
プーリ本体と、
前記プーリ本体を前記第1アーム又は前記第2アームに取り付ける締結部材と、
前記プーリ本体と前記締結部材との間に設けられるスペーサと、
を有し、
前記いずれか一方のテンショナプーリの重さが前記いずれか他方のテンショナプーリの重さよりも重くなるように、前記いずれか一方のテンショナプーリの前記スペーサの厚みは前記いずれか他方のテンショナプーリの前記スペーサの厚みよりも厚く設定される、
請求項1から
3のいずれか一項に記載のベルト伝動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ベルト伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内燃機関のクランク軸に固定されたクランクプーリと、クランク軸と平行に設けられた補機の回転軸に固定された補機プーリと、クランクプーリと補機プーリとを含む複数のプーリに巻き掛けられたベルトと、補機プーリの回転軸を中心として揺動可能であって、ベルトの循環方向において補機プーリを境に一対のテンショナプーリが配置され、ベルトに張力を付与するベルトテンショナと、を備えるベルト伝動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたベルト伝動装置では、内燃機関の初爆等によりベルトが急激に張ることで、テンショナプーリがベルトに弾かれ、弾かれたテンショナプーリがベルトに復帰する際にテンショナプーリに打音を生じる。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本発明の実施形態は、テンショナプーリに生じる打音を抑制できるベルト伝動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るベルト伝動装置は、内燃機関のクランク軸に固定されたクランクプーリと、前記クランク軸と平行に設けられた補機の回転軸に固定された補機プーリと、前記クランクプーリと前記補機プーリとを含む複数のプーリに巻き掛けられたベルトと、前記補機プーリの回転軸と平行に延びる揺動軸を中心として揺動可能であって、前記ベルトの循環方向において前記補機プーリを境に一対のテンショナプーリが配置され、前記ベルトに張力を付与するベルトテンショナと、を備え、前記一対のテンショナプーリは、前記一対のテンショナプーリのいずれか一方が前記ベルトによって弾かれ難くなるように、当該いずれか一方のテンショナプーリの重さがいずれか他方のテンショナプーリの重さよりも重く設定される。
【0007】
上記の構成によれば、ベルトの循環方向において補機プーリよりも下流側又は上流側のいずれか一方でベルトが急激に張っても、当該いずれか一方でテンショナプーリがベルトによって弾かれ難くなり、当該テンショナプーリに生じる打音を抑制できる。
【0008】
本発明の実施形態では、上記の構成において、前記いずれか一方のテンショナプーリは、前記ベルトの循環方向において前記補機プーリの下流側に配置されるテンショナプーリである。
【0009】
ベルトの循環方向において補機プーリの下流側のベルトは、内燃機関の回転数が大きく変動する際に張りやすい。上記の構成によれば、ベルトの循環方向において補機プーリの下流側のベルトが急激に張っても、補機プーリの下流側でテンショナプーリがベルトによって弾かれ難くなり、当該テンショナプーリに生じる打音を抑制できる。
【0010】
本発明の実施形態では、上記の構成において、前記補機は、前記内燃機関の始動時に電力が供給されることにより前記回転軸が駆動されるスタータである。
【0011】
内燃機関の始動時に電力が供給されることにより補機(モータジェネレータ)の回転軸が駆動され、ベルトの循環方向において補機プーリ(MGプーリ)の上流側のベルトが張られ下流側のベルトが緩む。その後、内燃機関の初爆によってクランク軸が回転を始め、ベルトの循環方向において補機プーリ(MGプーリ)の下流側のベルトが急激に張られるため、補機プーリの下流側のテンショナプーリは弾かれやすい。また、クランクプーリの回転トルクがベルトを介して補機プーリ(MGプーリ)に伝達されている状態では、ベルトの循環方向において補機プーリ(MGプーリ)の下流側のベルトが張られ上流側のベルトが緩む。その後、補機(モータジェネレータ)によりクランクプーリの回転をアシストする場合は、ベルトの循環方向において補機プーリ(MGプーリ)の上流側のベルトが急激に張られるため、補機プーリの上流側のテンショナプーリは弾かれやすい。すなわち、モータジェネレータを境に配置される一対のテンショナプーリは、ベルトによって弾かれやすくなっている。上記の構成によれば、モータジェネレータを境に配置される一対のテンショナプーリテンショナプーリがベルトによって弾かれ難くなり、当該テンショナプーリに生じる打音を抑制できる。
【0012】
本発明の実施形態では、上記の構成において、前記ベルトの循環方向において前記補機プーリの下流側に配置されるテンショナプーリが前記ベルトから弾かれ難くなるように、前記下流側に配置されるテンショナプーリの重さが前記ベルトの循環方向において前記補機プーリの上流側に配置されるテンショナプーリの重さよりも重く設定される。
【0013】
上記の構成によれば、内燃機関の初爆によりベルトの循環方向において補機プーリの下流側のベルトが急激に張っても、ベルトの循環方向において補機プーリの下流側のテンショナプーリがベルトによって弾かれ難くなり、当該下流側のテンショナプーリに生じる打音を抑制できる。
【0014】
本発明の実施形態では、上記の構成において、前記複数のプーリは、前記ベルトの循環方向において前記補機プーリの上流側に設けられた上流側プーリと、前記補機プーリの下流側に設けられた下流側プーリと、をさらに含み、前記補機プーリから前記下流側プーリまでの前記ベルトの長さは、前記上流側プーリから前記補機プーリまでの前記ベルトの長さよりも長く、前記いずれか一方のテンショナプーリは、前記補機プーリから前記下流側プーリまでの間に配置される。
【0015】
上記の構成によれば、補機プーリから下流側プーリまでのベルトの長さは、上流側プーリから補機プーリまでのベルトの長さよりも長いので、ベルトの循環方向において補機プーリよりも下流側に配置されたテンショナプーリのほうが上流側のテンショナプーリよりも弾かれ易い。これにより、いずれか他方のテンショナプーリの重さよりも重さが重いいずれか一方のテンショナプーリを補機プーリから下流側プーリまでの間に配置されたので、テンショナプーリが弾かれ難くなり、当該テンショナプーリに生じる打音を抑制できる。
【0016】
本発明の実施形態では、上記の構成において、前記ベルトテンショナは、前記一対のテンショナプーリがそれぞれ支持される第1アーム及び第2アームと、前記内燃機関に固定され、前記第1アーム及び第2アームがそれぞれ回転可能に支持されるハウジングと、を含み、前記一対のテンショナプーリは、それぞれ、プーリ本体と、前記プーリ本体を前記第1アーム又は前記第2アームに取り付ける締結部材と、前記プーリ本体と前記締結部材との間に設けられるスペーサと、を有し、前記いずれか一方のテンショナプーリの重さが前記いずれか他方のテンショナプーリの重さよりも重くなるように、前記いずれか一方のテンショナプーリの前記スペーサの厚みを前記いずれか他方のテンショナプーリの前記スペーサの厚みよりも厚く設定する。
【0017】
上記の構成によれば、いずれか一方のテンショナプーリのスペーサの厚みをいずれか他方のテンショナプーリのスペーサの厚みよりも厚くするだけで、いずれか一方のテンショナプーリの重さがいずれか他方のテンショナプーリの重さよりも重くすることができるため、プーリ本体の重さをそれぞれ変更する必要がなく、部品を共用化できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施形態によれば、内燃機関の初爆等によりベルトが急激に張っても一対のテンショナプーリのいずれか一方がベルトによって弾かれ難くなり、当該いずれか一方のテンショナプーリに生じる打音を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るベルト伝動装置を概略的に示す正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るベルトテンショナを内燃機関側から視た斜視図である。
【
図3】
図2に示したベルトテンショナを内燃機関側から視た正面図である。
【
図4】
図2に示したハウジングとアーム組立体とを示す分解斜視図である。
【
図5】
図4に示したアーム組立体の分解斜視図である。
【
図6】
図3に示したテンショナプーリの構造を示すVI-VI線断面図である。
【
図7】
図3に示したテンショナプーリの構造を示すVII-VII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係るベルト伝動装置1を概略的に示す正面図である。
図2は、本発明の実施形態に係るベルトテンショナ5を内燃機関21側から視た斜視図であり、
図3は、
図2に示したベルトテンショナ5を内燃機関21側から視た正面図である。
図4は、
図2に示したアーム組立体54とハウジング57とを示す分解斜視図であり、
図5は、
図4に示したアーム組立体54の分解斜視図である。
図6は、
図3に示したテンショナプーリ51の構造を示すVI-VI線断面図であり、
図7は、
図3に示したテンショナプーリ52の構造を示すVII-VII線断面図である。
【0022】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るベルト伝動装置1は、クランクプーリ2、補機プーリ3、ベルト4及びベルトテンショナ5を備える。
【0023】
クランクプーリ2は、内燃機関21のクランク軸211に固定されたプーリである。クランク軸211は、内燃機関21の主軸であり、内燃機関21の下方域略中央に配置されている。クランクプーリ2は、クランク軸211の回転によって回転する。内燃機関21の始動時には、クランクプーリ2の回転によってクランク軸211が回転し、内燃機関21の運転時には、クランク軸211の回転によってクランクプーリ2が回転する。
【0024】
補機プーリ3は、内燃機関21のクランク軸211と平行に設けられた補機31の回転軸311に固定されたプーリである。補機31は、内燃機関21によって駆動される機器である。補機31は、例えば、モータジェネレータ31Aであるが、これに限られるものではなく、ウォータポンプ(図示せず)又はエアコン用のコンプレッサ31Cなどであってもよい。
【0025】
ベルト4は、クランクプーリ2と補機プーリ3とを含む複数のプーリに巻き掛けられている。複数のプーリは、クランクプーリ2、補機プーリ3のほか、例えば、ウォータポンプの回転軸311Bに設けられたウォータポンププーリ3B、エアコン用のコンプレッサ31Cの回転軸311Cに設けられたエアコンプーリ3C、又はアイドラプーリ6である。しかしながら、複数のプーリは、これらのプーリ全てを含む必要はなく、少なくともクランクプーリ2と補機プーリ3を有するものであればよい。また、
図1に示すように、エアコンプーリ3Cとクランクプーリ2との間に張力を付与するアイドラプーリ7を設けてもよい。このように、ベルト4がクランクプーリ2と補機プーリ3とを含む複数のプーリに巻き掛けられていることによって、クランクプーリ2の回転トルクがベルト4を介して補機プーリ3に伝達され、補機プーリ3の回転トルクがベルト4を介してクランクプーリ2に伝達される。
【0026】
ベルトテンショナ5は、補機プーリ3の回転軸311と平行な軸を中心として揺動可能であって、ベルト4の循環方向において補機プーリ3を境に一対のテンショナプーリ51,52が配置され、ベルト4に張力を付与する。ベルトテンショナ5の一対のテンショナプーリ51,52は、個別に揺動可能である。
図2及び
図3に示すように、一対のテンショナプーリ51,52の間には、一対のテンショナプーリ51,52を相互に繋ぐ板状のスプリング53が設けられている。よって、ベルト4の循環方向において補機プーリ3を境に一方のベルト4が張り他方のベルト4が弛むと、張った方のベルト4が一方のテンショナプーリ51(52)を押し上げるとともに他方のテンショナプーリ52(51)を押し下げて、弛んだ方のベルト4の弛みを取り除く。本実施形態では、一対のテンショナプーリ51,52は、その中心がベルトテンショナ5の揺動軸を通る鉛直方向に延びた線を挟むように設けられる。
【0027】
本発明の実施形態に係るベルトテンショナ5では、一対のテンショナプーリ51,52は、一対のテンショナプーリ51,52のいずれか一方がベルト4によって弾かれ難くなるように、いずれか一方のテンショナプーリ51(52)の重さをいずれか他方のテンショナプーリ52(51)の重さより重くする。
【0028】
これにより、一方のテンショナプーリ51(52)は、重さが重いため、ベルト4によって弾かれ難くなり、弾かれた後にベルト4側に戻りベルト4に衝突した際に生じる打音を抑制できる。また、他方のテンショナプーリ52(51)は、ベルトテンショナ5全体が一方のテンショナプーリ51(52)が下方に移動する方向に揺動しようとするため、他方のテンショナプーリ52(51)が弾かれた際にベルト4側に戻ろうとする力が弱まり、ベルト4に衝突した際に生じる打音を抑制できる。このように、一方のテンショナプーリ51(52)がベルト4によって弾かれ難くなるように、一対のテンショナプーリ51、52の重さを異ならせることにより、テンショナプーリ51、52がベルト4に衝突した際に生じる打音を抑制することができる。なお、このとき、重さを重くした一方のテンショナプーリ51(52)の方が、他方のテンショナプーリ52(51)に比べ打音抑制効果が高くなる。
【0029】
そのため、例えば、ベルト4の循環方向において補機プーリ3よりも下流側のベルト4が急激に張ることでベルト4の循環方向において補機プーリ3よりも下流側に配置されたテンショナプーリ51に生じる打音が顕著な場合には、当該下流側に配置されたテンショナプーリ51がベルト4によって弾かれ難くなるように、当該下流側に配置されたテンショナプーリ51の重さを補機プーリ3よりも上流側に配置されたテンショナプーリ52の重さよりも重くすることが好ましい。補機プーリ3よりも下流側に配置されたテンショナプーリ51の重さは、上流側に配置されたテンショナプーリ52の重さよりも例えば90g程度重くする。
【0030】
また、例えば、ベルト4の循環方向において補機プーリ3よりも上流側のベルト4が急激に張ることでベルト4の循環方向において補機プーリ3よりも上流側に配置されたテンショナプーリ52に生じる打音が顕著な場合には、当該上流側に配置されたテンショナプーリ52がベルト4によって弾かれ難くなるように、当該上流側に配置されたテンショナプーリ52の重さを補機プーリ3よりも下流側に配置されたテンショナプーリ51の重さよりも重くすることが好ましい。補機プーリ3よりも上流側に配置されたテンショナプーリ52の重さは、下流側に配置されたテンショナプーリ51の重さよりも例えば90g程度重くする。
【0031】
本発明の実施形態に係るベルト伝動装置1では、上述したいずれか一方のテンショナプーリ51(52)は、ベルト4の循環方向において補機プーリ3の下流側に配置されるテンショナプーリ51である。上述したいずれか一方のテンショナプーリ51(52)は、他方のテンショナプーリ52(51)の重さよりも重いプーリであり、本発明の実施形態係るベルト伝動装置1では、ベルト4の循環方向において補機プーリ3の下流側に配置されたテンショナプーリ51がベルト4によって弾かれ難くなるように、補機プーリ3の下流側に配置されたテンショナプーリ51の重さが上流側に配置されたテンショナプーリ52の重さよりも重く設定される。
【0032】
補機プーリ3の下流側は、内燃機関21の始動時など、内燃機関21の回転数が大きく変動する際にベルト4が張るため、補機プーリ3の下流側に配置されたテンショナプーリ51はベルト4によって弾かれ易い。上述した本発明の実施形態に係るベルト伝動装置1によれば、ベルト4の循環方向において補機プーリ3の下流側のベルト4が急激に張っても、補機プーリ3の下流側でテンショナプーリ51がベルト4によって弾かれ難くなり、当該テンショナプーリ51に生じる打音を抑制できる。
【0033】
本発明の実施形態に係るベルト伝動装置1では、補機31は、モータジェネレータ31Aである。モータジェネレータ31Aは、内燃機関21の始動時に電力が供給されることにより回転軸311Aが駆動され、回転軸311Aに固定されたモータジェネレータプーリ3A(以下「MGプーリ3A」という)の回転トルクがベルト4を介してクランクプーリ2に伝達されることで、クランクプーリ2が固定されたクランク軸211を回転させる(クランキング)ことが可能なスタータとして機能する。また、モータジェネレータ31Aは、クランクプーリ2の回転トルクがベルト4を介してMGプーリ3Aに伝達されることで回転軸311Aが回転され発電することが可能な発電機としても機能する。なお、モータジェネレータ31Aは、内燃機関21の運転中に電力が供給されることにより、クランクプーリ2(すなわちクランク軸211)の回転をアシストする機能を有していてもよい。
【0034】
内燃機関21の始動時に電力が供給されることによりモータジェネレータ31Aの回転軸311Aが駆動され、ベルト4の循環方向においてMGプーリ3Aの下流側のベルト4が緩む。その後、内燃機関21の初爆によってクランク軸211が回転を始め、ベルト4の循環方向においてMGプーリ3Aの下流側のベルト4が急激に張られるため、MGプーリ3Aの下流側のテンショナプーリ51が弾かれ易くなっている。このように、スタータとして機能するモータジェネレータ31Aの、ベルト4の循環方向において下流側に位置するテンショナプーリ51は、ベルト4により弾かれ易い。上述した本発明の実施形態に係るベルト伝動装置1によれば、このような構成でもテンショナプーリ51、52がベルト4に衝突した際に生じる打音を抑制することができる。なお、モータジェネレータ31Aがクランクプーリ2の回転をアシストする機能を有している場合は、アシスト開始前はベルト4の循環方向においてMGプーリ3Aの上流側のベルト4が緩み、アシスト開始時にはベルト4の循環方向においてMGプーリ3Aの上流側のベルト4が張られるため、モータジェネレータ31Aの、ベルト4の循環方向において上流側に位置するテンショナプーリ52がベルト4により弾かれ易くなる。このような場合にも上述した本発明の実施形態に係るベルト伝動装置1によりテンショナプーリ51、52がベルト4に衝突した際に生じる打音を抑制することができる。
【0035】
本発明の実施形態に係るベルト伝動装置1では、内燃機関21の初爆時に、ベルト4の循環方向においてMGプーリ3Aの下流側に配置されるテンショナプーリ51(以下「力行側テンショナプーリ51」という)がベルト4から弾かれ難くなるように、力行側テンショナプーリ51の重さをベルト4の循環方向において補機プーリ3の上流側に配置されるテンショナプーリ52(以下「回生側テンショナプーリ52」という)の重さよりも重くする。
【0036】
上述した本発明の実施形態に係るベルト伝動装置1によれば、内燃機関21の初爆によりベルト4の循環方向においてMGプーリ3Aの下流側のプーリが急激に張っても、力行側テンショナプーリ51が弾かれ難くなり、当該力行側テンショナプーリ51に生じる打音を抑制できる。内燃機関21始動時は、内燃機関21運転中に比べ内燃機関21に発生する音が小さくテンショナプーリ51、52がベルト4に衝突した際に生じる打音が目立つため、内燃機関21始動時に弾かれ易い力行側テンショナプーリ51を重くすることが好ましい。
【0037】
本発明の実施形態に係るベルト伝動装置1では、複数のプーリは、ベルト4の循環方向において補機プーリ3の上流側に設けられた上流側プーリ8と、補機プーリ3の下流側に設けられた下流側プーリ9と、を更に含む。例えば、補機プーリ3の上流側に設けられた上流側プーリ8は、アイドラプーリ6であり、補機プーリ3の下流側に設けられた下流側プーリ9は、エアコンプーリ3Cである。
【0038】
そして、補機プーリ3から下流側プーリ9までのベルト4の長さは、上流側プーリ8から補機プーリ3までのベルト4の長さよりも長く、いずれか他方のテンショナプーリ52(51)の重さよりも重いいずれか一方のテンショナプーリ51(52)は、補機プーリ3から下流側プーリ9までの間に配置する。例えば、補機プーリ3がMGプーリ3A、下流側プーリ9がエアコンプーリ3C、上流側プーリ8がアイドラプーリ6である場合に、MGプーリ3Aからエアコンプーリ3Cまでのベルト4の長さは、アイドラプーリ6からMGプーリ3Aまでのベルト4の長さよりも長く、回生側テンショナプーリ52よりも重い力行側テンショナプーリ51は、MGプーリ3Aからエアコンプーリ3Cまでの間に配置する。
【0039】
上述した本発明の実施形態に係るベルト伝動装置1によれば、補機プーリ3から下流側プーリ9までのベルト4の長さは、上流側プーリ8から補機プーリ3までのベルト4の長さよりも長いので、ベルト4の循環方向において補機プーリ3よりも下流側に配置されたテンショナプーリ51のほうが上流側のテンショナプーリ52よりも弾かれ易い。いずれか他方のテンショナプーリ52よりも重いいずれか一方のテンショナプーリ51を補機プーリ3から下流側プーリ9までの間に配置したので、テンショナプーリ51は弾かれ難くなり、当該テンショナプーリ51に生じる打音を抑制できる。
【0040】
図4に示すように、本発明の実施形態に係るベルトテンショナ5は、第1アーム55及び第2アーム56と、ハウジング57と、を含む。第1アーム55及び第2アーム56は、上述した一対のテンショナプーリ51,52がそれぞれ支持される部品である。第1アーム55と第2アーム56は、組み合わされて一つのアーム組立体54を構成し、
図5に示すように、相互に独立して揺動可能である。ハウジング57は、補機31(モータジェネレータ31A)に固定され、第1アーム55及び第2アーム56がそれぞれ揺動可能に支持される。
【0041】
図6及び
図7に示すように、一対のテンショナプーリ51,52は、それぞれ、プーリ本体511,521、ボルト512,522及びスペーサ513,523を有する。ボルト512,522は、プーリ本体511,521を第1アーム55又は第2アーム56に回転可能に取り付ける締結部材である。スペーサ513,523は、プーリ本体511,521とボルト512,522との間に設けられる。なお、
図6及び
図7において、第1アーム55及び第2アーム56の形状は簡略化して記載されている。
図6及び
図7に示す例では、第1アーム55又は第2アーム56に設けられた軸部材551,561とプーリ本体511,521との間にベアリング514,524が設けられ、該ベアリング514,524にスペーサ513,523が嵌合される。そして、該スペーサ513,523を貫通するボルト512,522によって、スペーサ513,523と軸部材551,561との間にベアリング514,524が固定される。なお、スペーサ513,523は、プーリ本体511,521とボルト512,522との間の隙間からテンショナプーリ51,52内に異物が入り込み、テンショナプーリ51,52の回転を阻害することを抑制するための部材で、例えば金属板など、両スペーサ513,523同一の材料で形成される。
【0042】
そして、いずれか一方のテンショナプーリ51(52)の重さがいずれか他方のテンショナプーリ52(51)の重さよりも重くなるように、いずれか一方のテンショナプーリ51(52)のスペーサ513(523)の厚みをいずれか他方のスペーサ523(513)の厚みよりも厚く設定する。すなわち、一対のテンショナプーリ51,52のうち、重くする方のテンショナプーリ51(52)のスペーサ513(523)の厚みを他方のテンショナプーリ52のスペーサ523(513)の厚みよりも厚くすることで、重くする方のテンショナプーリ51(52)を他方のテンショナプーリ52(51)よりも重くする。
【0043】
上述した本発明の実施形態に係るベルト伝動装置1によれば、いずれか一方のテンショナプーリ51(52)のスペーサ513(523)の厚みをいずれか他方のテンショナプーリ52(51)の重さよりも重くすることで、いずれか一方のテンショナプーリ51(52)の重さがいずれか他方のテンショナプーリ52の重さよりも重くすることができる。したがって、一対のプーリ本体511,521を同一の材料、形状で形成しても一対のテンショナプーリ51,52の重さを異ならせることができるので、各プーリ本体511,521で製法を異ならせる必要がなく、コストを削減することができる。なお、スペーサ513,523の重さを異ならせるにあたり、厚みを異ならせるのではなく材料を異ならせる等の手段をとることも可能だが、厚みを異ならせることによりどちらのスペーサ513,523が重いのかが把握し易くなるため、誤組防止にもつながる。
【0044】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0045】
本出願は、2020年8月11日出願の日本特許出願2020-135516に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0046】
1 ベルト伝動装置
2 クランクプーリ
21 内燃機関
211 クランク軸
3 補機プーリ
3A MGプーリ(モータジェネレータプーリ)
31 補機
31A モータジェネレータ
311 回転軸
311A 回転軸
3B ウォータポンププーリ
311B 回転軸
3C エアコンプーリ
31C エアコン用のコンプレッサ
311C 回転軸
4 ベルト
5 ベルトテンショナ
51 テンショナプーリ
511 プーリ本体
512 ボルト
513 スペーサ
514 ベアリング
52 テンショナプーリ
521 プーリ本体
522 ボルト
523 スペーサ
524 ベアリング
53 スプリング
54 アーム組立体
55 第1アーム
551 軸部材
56 第2アーム
561 軸部材
57 ハウジング
6 アイドラプーリ
7 アイドラプーリ
8 上流側プーリ
9 下流側プーリ