(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】熱処理炉
(51)【国際特許分類】
F27B 5/16 20060101AFI20230829BHJP
F27D 9/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
F27B5/16
F27D9/00
(21)【出願番号】P 2019215732
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】591159619
【氏名又は名称】島津産機システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100094248
【氏名又は名称】楠本 高義
(72)【発明者】
【氏名】森元 陽介
【審査官】相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-223593(JP,A)
【文献】特開2002-333277(JP,A)
【文献】特開2005-002384(JP,A)
【文献】登録実用新案第3221478(JP,U)
【文献】特開昭62-167803(JP,A)
【文献】特開平07-252524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 5/00- 5/18
F27D 7/00-15/02
C21D 1/02- 1/84
B22F 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器状の圧力容器と、
前記圧力容器の内部空間に配置された断熱体と、
前記断熱体によって形成された内部空間に配置されたヒーターと、
前記圧力容器の内部空間に冷却ガスを供給する第1ポートと、
前記圧力容器の外部に冷却ガスを排気する第2ポートと、
前記断熱体に
複数形成され、前記冷却ガスを断熱体によって形成された内部空間に導くための第1貫通孔と、
前記断熱体に形成され、前記冷却ガスを断熱体によって形成された内部空間から排気するための第2貫通孔と、
前記冷却ガスを循環させる第1ファンと、
前記冷却ガスを冷却させる冷却装置と、
前記断熱体によって形成された内部空間に配置され、被処理物を収容し、前記冷却ガスで冷却され、熱の輻射によって該被処理物を冷却するタイトボックスと、
を備えた熱処理炉。
【請求項2】
前記第1ポートが圧力容器の下部、第2ポートが圧力容器の上部に設けられ、または、第1ポートが圧力容器の上部、第2ポートが圧力容器の下部に設けられた請求項1の熱処理炉。
【請求項3】
前記タイトボックスが、筒状のタイトボックス本体と該タイトボックス本体の両端を開閉するタイトボックス蓋とで構成され、
前記タイトボックス蓋の開閉装置を備え、
前記冷却ガスが断熱体の内部空間に供給されているときにタイトボックス蓋の開閉可能である請求項1または2の熱処理炉。
【請求項4】
前記圧力容器と断熱体との間にシャワープレートを配置した請求項1から3のいずれかの熱処理炉。
【請求項5】
前記第1ファンと冷却装置が圧力容器の外部に備えられた請求項1から4のいずれかの熱処理炉。
【請求項6】
前記圧力容器の内部空間に第2ファンを備えた請求項1から5のいずれかの熱処理炉。
【請求項7】
前記圧力容器の内壁にバック断熱体を配置した請求項1から6のいずれかの熱処理炉。
【請求項8】
前記第1ポート、第2ポートまたはその両方のポートに該ポートを開閉可能なポート蓋を備えた請求項1から7のいずれかの熱処理
炉。
【請求項9】
前記第2貫通孔が、前記断熱体に複数形成されている請求項1から8のいずれかの熱処理炉。
【請求項10】
前記第1貫通孔が、前記タイトボックスの長手側の面に対向して前記断熱体に形成されている請求項1から9のいずれかの熱処理炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属または磁性材料などからなる被処理物を熱処理炉に入れ、真空または加圧環境下で熱処理している。たとえば、下記の特許文献1は、圧力容器の炉蓋の内面に冷却フィンを設けた熱処理炉を開示している。冷却フィンによって圧力容器内を流れるガスが冷却される面積を拡大し、冷却能力を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱処理炉では一度に複数の被処理物が処理されるため、被処理物が熱処理炉の中のどの位置にあっても同一条件で処理されることが好ましい。たとえば、すべての被処理物が均一に冷却されなければ、一部の被処理物が不良品になるおそれがある。被処理物が不良品になれば歩留まりが悪化する。特許文献1は冷却能力を高めることを開示しているが、被処理物を均一に冷却することを開示していない。
【0005】
そこで本発明の目的は、被処理物を均一に冷却できる熱処理炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決すべく、本発明に係る熱処理炉は、以下に述べるような構成を有する。
【0007】
本発明の熱処理炉は、容器状の圧力容器と、前記圧力容器の内部空間に配置された断熱体と、前記断熱体によって形成された内部空間に配置されたヒーターと、前記圧力容器の内部空間に冷却ガスを供給する第1ポートと、前記圧力容器の外部に冷却ガスを排気する第2ポートと、前記断熱体に形成され、前記冷却ガスを断熱体によって形成された内部空間に導くための第1貫通孔と、前記断熱体に形成され、前記冷却ガスを断熱体によって形成された内部空間から排気するための第2貫通孔と、前記冷却ガスを循環させる第1ファンと、前記冷却ガスを冷却させる冷却装置と、前記断熱体によって形成された内部空間に配置され、被処理物を収容し、前記冷却ガスで冷却され、熱の輻射によって該被処理物を冷却するタイトボックスとを備える。
【発明の効果】
【0008】
従来では圧力容器の前後方向に冷却ガスが流れるが、本発明によれば、第1ポートから第2ポートに冷却ガスが流れることで、タイトボックスの周囲を回るように冷却ガスが流れる。冷却ガスが被処理物に当てられる前にタイトボックスに均一に当てられてタイトボックスが均一に冷却される。被処理物に対して輻射的に冷却することが可能であり、被処理物が均一に冷却される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】タイトボックス蓋を開けたときのガスの流れを示す図である。
【
図3】タイトボックス蓋を開けたときのガスの流れを示す図である。
【
図5】断熱体蓋を開けたときのガスの流れを示す図である。
【
図6】断熱体蓋を開けたときのガスの流れを示す図である。
【
図7】シャワープレートを備えた熱処理炉の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の熱処理炉について図面を参照して説明する。複数の実施形態を説明するが、異なる実施形態であっても同じ手段には同一の符号を付して説明を省略する場合がある。各図面におけるx方向、y方向およびz方向は互いに直行する方向である。
【0011】
[実施形態1]
図1に示す本願の熱処理炉10は、容器状の圧力容器12、圧力容器12の内部空間14に配置された断熱体16、断熱体16の内部空間18に配置されたヒーター20、被処理物22が収容されるタイトボックス(インナーケース)24、圧力容器12の内部空間14に冷却ガスを供給する第1ポート26、圧力容器12の外部に冷却ガスを排気する第2ポート28、冷却ガスを断熱体16の内部空間18に導くための第1貫通孔30、冷却ガスを断熱体16の内部空間18から排気するための第2貫通孔32、冷却ガスを循環させるための冷却ユニット34を備える。
【0012】
さらに熱処理炉10は、圧力容器12の内部空間14とタイトボックス24の内部空間36にガスを導入するガス源38、および圧力容器12の内部空間14およびタイトボックス24の内部空間36を減圧するためのポンプ40を備える。
【0013】
熱処理炉10は、焼結、半焼結、焼成、脱脂、ろう付け、メタライズ、焼き入れ、容体化処理、焼戻し、焼きなましまたは時効熱処理などをおこなうための炉である。
【0014】
[圧力容器]
図2および
図3に示すように、圧力容器12は容器本体42および容器蓋44を備える。容器本体42は円筒形状になっている(
図4)。容器蓋44は容器本体42の両端を開閉するものである。容器本体42の両端を容器蓋44で閉じると、圧力容器12の内部空間14は気密にされた空間になる。圧力容器12の内部空間14は減圧されたり、加圧されたりする。圧力容器12の耐圧はたとえば約10MPaであり、各種設計によって変更できる。圧力容器12は内壁46と外壁48からなる二重構造であり、内壁46と外壁48の間を冷却液が流れる。内部空間14の温度を下げるときに、冷却液によって下げることができる。
【0015】
[断熱体]
断熱体16は圧力容器12の内部空間14に配置されている。断熱体16は断熱体本体50および断熱体蓋52を備える。断熱体本体50は筒状になっている。
図2に示すように断熱体本体50は断熱体突出部54を備え、その断熱体突出部54が圧力容器12の内壁46に接している。断熱体突出部54は断熱体16の長手方向両端における上部と下部に設けられる。圧力容器12と断熱体16との間に隙間を有する。断熱体蓋52は断熱体本体50の両端を開閉するものである。容器蓋44が閉じた状態で断熱体蓋52が開閉できるように、断熱体蓋52の開閉装置(図示せず)を備える。断熱体16はグラファイトフェルトまたはグラファイトフォイルなどの耐熱性材料で構成される。
【0016】
[ヒーター]
断熱体16の内部空間18にヒーター20が配置されている。ヒーター20としてグラファイト製のロッドヒーターが挙げられる。ヒーター20はタイトボックス24に対して平行に配置されている。また、タイトボックス24の周囲を回るように複数のヒーター20が配置されている(
図4)。ヒーター20は電極(図示省略)から三相交流の電力が供給され、発熱する。
【0017】
[タイトボックス]
断熱体16の内部空間18の中にタイトボックス24が配置されている。タイトボックス24はグラファイトなどで構成されている。タイトボックス24はタイトボックス本体56とタイトボックス蓋58を備える。タイトボックス本体56は筒状になっている。タイトボックス蓋58はタイトボックス本体56の両端を開閉する。
図2および
図3に示すように、タイトボックス蓋58が開閉できるように、タイトボックス蓋58の開閉装置60を備える。開閉装置60は断熱体蓋52に取り付けられており、タイトボックス蓋58を断熱体蓋52に向けて移動させる装置である。タイトボックス本体56の両端をタイトボックス蓋58で閉じることで、タイトボックス24の内部空間が密閉される。
【0018】
[被処理物]
タイトボックス24の内部空間36に被処理物22が配置される。被処理物22の材料は、超硬金属、鉄系金属、非鉄金属、磁性材料、セラミックス、グラファイト、ハイス鋼、ダイス鋼または低合金鋼などであり、金属は合金を含む。被処理物22は、粉体または所定形状を有した固体である。タイトボックス24の中に被処理物22が収容されることで、被処理物22を脱脂処理したときに被処理物22から放出されるバインダー(ガスおよびワックス)がタイトボックス24の外に放出されるのを防ぐことができる。圧力容器12の内壁46、断熱体16およびヒーター20などが汚染されることを防止できる。
【0019】
[ポート]
熱処理炉10は圧力容器12の内部空間14に冷却ガスを供給する第1ポート26および冷却ガスを排気する第2ポート28を備える。第1ポート26は圧力容器12の下部に備えられる。第2ポート28は圧力容器12の上部に備えられる。第1ポート26と第2ポート28は圧力容器12の中心に対して対称となる位置に配置されている。第1ポート26から圧力容器12の内部空間14を横切って第2ポート28に冷却ガスが流れる。各ポート26、28の数は限定されない。
【0020】
[貫通孔]
断熱体16の内部空間18に冷却ガスを供給する第1貫通孔30および冷却ガスを排出する第2貫通孔32が備えられる。第1貫通孔30は断熱体本体50の下部に備えられる。第2貫通孔32は断熱体本体50の上部に備えられる。第1貫通孔30と第2貫通孔32は断熱体16の中心に対して対称となる位置に配置されている。第1貫通孔32から断熱体16の内部空間18を横切って第2貫通孔32に冷却ガスが流れる。各貫通孔30、32は複数であり、各貫通孔30、32の数は限定されない。断熱体16の内部空間18の中で冷却ガスが均一に流れるようにする。
【0021】
第1ポート26から第1貫通孔30、第2貫通孔32から第2ポート28に冷却ガスを導くために、圧力容器12と断熱体16との間に断熱性の部材64を設ける(
図4)。断熱性の部材64は容器本体42と断熱体本体50とを繋げている。断熱性の部材64の両端は断熱体突出部54に接している。容器本体42、断熱体本体50、断熱性の部材64および断熱体突出部54によって冷却ガスの風路66が形成される。
【0022】
上記冷却ガスの風路66において、容器本体42の内壁46に接する断熱性のバック断熱体68を備えてもよい。バック断熱体68は第1ポート26および第2ポート28に通じる貫通孔70を備えている。断熱体16に第1貫通孔30と第2貫通孔32が形成されていて、断熱体16の内部空間18の断熱性能が低下するおそれがあるが、バック断熱体68によって断熱性能の低下を防止する。
【0023】
第2ポート28を開閉する第2ポート蓋72が備えられてもよい(
図1)。その第2ポート蓋72は開閉装置(図示省略)によって開閉される。第2ポート蓋72は断熱材料で構成される。被処理物22を加熱処理する際に、第2ポート蓋72を閉じることで断熱体16の内部空間18を断熱する。
【0024】
[冷却ユニット]
図1に示すように冷却ユニット34は第1ファン74および冷却装置76を備える。第1ファン74と冷却装置76は筐体78に収納されている。第1ファン74は冷却ガスを循環させる。第1ファン74を回転させるために第1モーター80が設けられている。冷却装置76は水冷式の熱交換器である。冷却ユニット34と第1ポート26が第1パイプ82で繋げられ、冷却ユニット34と第2ポート28が第2パイプ84で繋げられている。冷却装置76で冷却された冷却ガスが第1パイプ82および第1ポート26を通って圧力容器12に送風される。また、第2ポート28および第2パイプ84を通って冷却ガスが冷却ユニット34に戻される。冷却ユニット34で冷却ガスが冷却されて再び圧力容器12に送られる。なお、第1パイプ82および第2パイプ84にそれぞれバルブを設け、冷却ガスの流れを制御してもよい。
【0025】
冷却ユニット34は圧力容器12に直接取り付けられていてもよいし、圧力容器12から離れた位置に配置されていてもよい。冷却ユニット34は熱処理炉10の設置場所の面積および圧力容器12の大きさに応じて任意の場所に設置される。
【0026】
[ガス源]
ガス源38は窒素、アルゴン、水素、一酸化炭素、ヘリウム、メタンなどを貯蔵、生成またはその両方をおこなう。ガス源38と圧力容器12の内部空間14およびタイトボックス24の内部空間36は第3パイプ90で接続されている。第3パイプ90は分岐しており、それぞれにバルブ92、94が設けられている。バルブ92、94の開閉によってガスの流量を制御できる。ガス源38から第3パイプ90を介して圧力容器12の内部空間14およびタイトボックス24の内部空間36にガスが導入される。ガス源38を複数にして、複数種のガスを圧力容器12の内部空間14およびタイトボックス24の内部空間36に供給してもよい。第3パイプ90を複数設け、複数種のガスが供給されるようにする。なお、断熱体16は完全に気密にされていないため、断熱体16の内部空間18から圧力容器12の内部空間14にガスを導入することができる。
【0027】
[ポンプ]
ポンプ40は圧力容器12の内部空間14およびタイトボックス24の内部空間36に対して排気をおこなう。ポンプ40と圧力容器12は第4パイプ96で接続されており、ポンプ40とタイトボックス24は第5パイプ98で接続されている。ポンプ40によって、圧力容器12の内部空間14およびタイトボックス24の内部空間36が減圧される。第4パイプ96と第5パイプ98にはそれぞれバルブ100、102が備えられていて、バルブ100、102の開閉によっても排気を制御することができる。
【0028】
第5パイプ98にワックスタンク104およびワックスフィルター106が備えられる。被処理物22で脱脂されたバインダーがワックスタンク104およびワックスフィルター106で捕捉される。バインダーがポンプ40まで到達されない。
【0029】
[その他]
圧力容器12の内部空間14に第2ファン108が備えられてもよい。第2ファン108は、容器蓋44が閉じられ、断熱体蓋52が開けられたときに回転する。圧力容器12の内部空間14および断熱体16の内部空間18をガスが循環する。ガスはガス源38から内部空間14、18に導入されたガスであってもよい。タイトボックス蓋58が開けられる場合もある。第2ファン108を回転させるための第2モーター110が容器蓋44に取り付けられている。
【0030】
断熱体本体50から第2ファン108につながるガイド112を設けてもよい。ガイド112によって循環するガスの方向を定める。ガスの方向を定められればガイド112の形状は限定されない。圧力容器12は二重構造になっており、その内部に冷却液が流れるため、その冷却液によって循環するガスが冷却される。なお、第2ファン108と断熱体本体50の間に水冷式の熱交換器を配置し、その熱交換器でもガスを冷却してもよい。
【0031】
熱処理炉10は、断熱体16の内部空間18またはタイトボックス24の内部空間36の温度を測定する温度計(図示省略)、圧力容器12の内部空間14の圧力を測定する圧力計(図示省略)を備える。温度計で測定された温度に応じてヒーター20に供給する電力を制御する。圧力計で測定された圧力に応じてガス源38とポンプ40を制御する。
【0032】
[熱処理]
次に本願の熱処理炉10を使用した熱処理について説明する。なお、説明する熱処理は一例であり、被処理物22の種類および処理方法に応じて適宜変更される。
【0033】
(1)タイトボックス24の内部空間36に被処理物22を収容し、タイトボックス蓋58、断熱体蓋52および容器蓋44を閉じる。
【0034】
(2)ポンプ40により排気をおこない、圧力容器12の内部空間14、断熱体16の内部空間18およびタイトボックス24の内部空間36を所定の圧力に制御する。ガス源38から圧力容器12の内部空間14、断熱体16の内部空間18およびタイトボックス24の内部空間36にガスを導入し、それらの空間14、18、62を所定のガスで満たす。
【0035】
(3)ヒーター20に電流を流し、断熱体16の内部空間18を昇温させる。断熱体16の内部空間18に配置されたタイトボックス24が加熱され、さらに被処理物22が加熱される。昇温させるときはポート蓋72を閉じておく。
【0036】
タイトボックス24の内部空間36にある被処理物22の温度が上昇し、被処理物22が脱脂される。脱脂するときに、ポンプ40を駆動させ、被処理物22から生じたバインダーは第5パイプ98の途中にあるワックスタンク104とワックスフィルター106に溜める。
【0037】
被処理物22の脱脂終了後、ヒーター20に流れる電流を増加させ、被処理物22の温度を高めて熱処理する。たとえば、約1600℃以上で被処理物22を焼結させる。
【0038】
(4)被処理物22が熱処理された後、被処理物22を冷却する。被処理物22の冷却は2段階でおこなう。第1段階は、ポート蓋72を開け、第1ファン74を回転させる。
図2の符号w1で示すように、第1ポート26および第1貫通孔30を通って冷却ガスが断熱体16の内部空間18に供給される。冷却ガスはタイトボックス24の下部に対して吹き付けられる。その後、
図4の符号w1で示すように、冷却ガスはタイトボックス24の周囲を回る。冷却ガスでタイトボックス24が冷却されることで、内部空間36に配置された被処理物22が熱の輻射によって冷却される。
【0039】
図2に示すように、タイトボックス24のy方向(高さ方向)はx方向(長さ方向)よりも短い。冷却ガスがy方向を向いて均一にタイトボックス24の当てられることで、タイトボックス24を均一に冷却しやすくなっている。タイトボックス24が均一に冷却されることで被処理物22も均一に冷却される。
【0040】
図2と
図3に示すように、タイトボックス蓋58は符号58'の位置から開けられる。一部の冷却ガスがタイトボックス24の内部空間36に入る。被処理物22が冷却ガスで直接冷却される。被処理物22の冷却速度が速くなる。冷却途中でのタイトボックス蓋58の開閉の有無および開閉度合いは被処理物22に対する冷却方法によって適宜変更される。
【0041】
タイトボックス24に当たった冷却ガスは昇温しながら第2貫通孔32および第2ポート28を通って、冷却ユニット34に戻る。冷却ユニット34の冷却装置76が冷却ガスの温度を下げる。その後、冷却ガスは再び第1ポート26に送風される。すなわち、冷却ガスは断熱体16の内部空間18にあったガスが循環されることで、冷却装置76で冷却され、再び断熱体16の内部空間18に送風される。
【0042】
第1段階の冷却で被処理物22が高温から低温になれば、第2段階の冷却を行う。第2段階は、第1段階の冷却に加えて断熱体蓋52を開けて第2ファン108を回転させる。
図5および
図6の符号w2で示すように、断熱体蓋52が開けられることで、圧力容器12の内部空間14でもガスが循環される。圧力容器12の二重構造の内部の冷却液によって炉内を冷却する。冷却能力が高まり、急速に冷却される。断熱体蓋52と一緒にタイトボックス蓋58を開け、タイトボックス24の内部空間36もガスを循環させてもよい。
【0043】
冷却する際、ガス源38から圧力容器12の内部空間14、断熱体16の内部空間18およびタイトボックス24の内部空間36にガスを導入してもよい。
【0044】
第1段階と第2段階の境界は、タイトボックス24の内部空間36の任意の温度である。この温度は被処理物22によって適宜変更される。この温度よりも高ければ第1段階であり、低くなれば第2段階になる。本願は第1段階で被処理物22を均一に冷却し、第2段階で被処理物22を急速に冷却する。
【0045】
被処理物22が冷却されれば、容器蓋44、断熱体蓋52およびタイトボックス蓋58を開け、被処理物22を取り出す。
【0046】
以上のように、本願は第1貫通孔30から第2貫通孔32に冷却ガスを通したことで、タイトボックス24の内部空間36に配置された被処理物22を均一に冷却できる。特に不均一な冷却によって不良品が発生しやすい高温時に被処理物22を均一に冷却するため、歩留まりを良くできる。
【0047】
[実施形態2]
実施形態1に対して、第1ポート26と第2ポート28の位置を入れ替えてもよい。第1ポート26が圧力容器12の上部、第2ポート28が圧力容器12の下部に配置される。さらに、第1貫通孔30が断熱体16の上部、第2貫通孔32が断熱体16の下部に配置される。冷却ガスは圧力容器12の上部から下部に向けて流れる。
【0048】
[実施形態3]
第1ポート26を開閉するポート蓋を設けてもよい。第1ポート26、第2ポート28またはその両方のポート26、28にポート蓋72を設ける。ポート蓋72を閉じることで断熱体16の断熱性能を高める。被処理物22を冷却するときはポート蓋72を開ける。
【0049】
[実施形態4]
風路66における圧力容器12と断熱体16の間にシャワープレート122を配置してもよい(
図7)。シャワープレート122は板体に複数の開口124を設けてものである。シャワープレート122によって冷却ガスの流れを均一にする。シャワープレート122の開口234の密度を場所によって変えてもよい。たとえば、ポート26、28に近い位置では開口124の密度を疎にして、ポート26、28に遠い位置では開口124の密度を密にする。
【0050】
(第1項)一態様に係る熱処理炉は、容器状の圧力容器と、前記圧力容器の内部空間に配置された断熱体と、前記断熱体によって形成された内部空間に配置されたヒーターと、前記圧力容器の内部空間に冷却ガスを供給する第1ポートと、前記圧力容器の外部に冷却ガスを排気する第2ポートと、前記断熱体に形成され、前記冷却ガスを断熱体によって形成された内部空間に導くための第1貫通孔と、前記断熱体に形成され、前記冷却ガスを断熱体によって形成された内部空間から排気するための第2貫通孔と、前記冷却ガスを循環させる第1ファンと、前記冷却ガスを冷却させる冷却装置と、前記断熱体によって形成された内部空間に配置され、被処理物を収容し、前記冷却ガスで冷却され、熱の輻射によって該被処理物を冷却するタイトボックスとを備える。
【0051】
第1項に記載の熱処理炉によれば、第1ポートから第2ポートに冷却ガスが流れることで、従来に比べてタイトボックスの周囲を回るように冷却ガスが流れる。タイトボックスが均一に冷却され、被処理物が均一に冷却される。
【0052】
(第2項)前記第1ポートが圧力容器の下部、第2ポートが圧力容器の上部に設けられ、または、第1ポートが圧力容器の上部、第2ポートが圧力容器の下部に設けられている。
【0053】
第2項に記載の熱処理炉によれば、タイトボックスの上下方向に冷却ガスが流れるため、タイトボックスを均一に冷却しやすくなっている。
【0054】
(第3項)前記タイトボックスが、筒状のタイトボックス本体と該タイトボックス本体の両端を開閉するタイトボックス蓋とで構成され、前記タイトボックス蓋の開閉装置を備え、前記冷却ガスが断熱体の内部空間に供給されているときにタイトボックス蓋の開閉可能である。
【0055】
第3項に記載の熱処理炉によれば、タイトボックスが冷却されているときに、タイトボックス蓋を開けることができ、タイトボックス蓋を開けることで被処理物に直接冷却ガスを当てることができる。
【0056】
(第4項)前記圧力容器と断熱体との間にシャワープレートが配置されている。
【0057】
第4項に記載の熱処理炉によれば、シャワープレートによって、冷却ガスの流れを均一にできる。
【0058】
(第5項)前記第1ファンと冷却装置が圧力容器の外部に備えられる。
【0059】
第5項に記載の熱処理炉によれば、第1ファンと冷却装置は、圧力容器の外部に自由に配置することができる。
【0060】
(第6項)前記圧力容器の内部空間に第2ファンが備えられている。
【0061】
第6項に記載の熱処理炉によれば、圧力容器の内部空間でもガスの流れを生じさせることができる。
【0062】
(第7項)前記圧力容器の内壁にバック断熱体が配置されている。
【0063】
第7項に記載の熱処理炉によれば、バック断熱体によって第1貫通孔と第2貫通孔によって低下した断熱性能を高めることができる。
【0064】
(第8項)前記第1ポート、第2ポートまたはその両方のポートに該ポートを開閉可能なポート蓋を備える。
【0065】
第8項に記載の熱処理炉によれば、第1ポートおよび第2ポートが閉じられることで断熱体の断熱性能を維持できる。
【0066】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。説明した各実施形態は独立したものではなく、当業者の知識に基づき適宜組み合わせて実施できるものである。
【符号の説明】
【0067】
10:熱処理炉
12:圧力容器
14:圧力容器の内部空間
16:断熱体
18:断熱体の内部空間
20:ヒーター
22:被処理物
24:タイトボックス
26、28:ポート
30、32:貫通孔
34:冷却ユニット
36:タイトボックスの内部空間
68:バック断熱体
72:第2ポート蓋
74:第1ファン
76:冷却装置
80:第1モーター
122:シャワープレート
124:シャワープレートの開口