(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】物品携帯用クリップ
(51)【国際特許分類】
F16B 2/24 20060101AFI20230829BHJP
B25H 3/00 20060101ALI20230829BHJP
F16B 2/22 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
F16B2/24 A
B25H3/00 Z
F16B2/22 B
(21)【出願番号】P 2019106646
(22)【出願日】2019-06-07
【審査請求日】2022-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000156307
【氏名又は名称】株式会社TJMデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 章夫
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-181397(JP,A)
【文献】特開昭61-184210(JP,A)
【文献】特公昭47-051151(JP,B1)
【文献】実開昭61-057208(JP,U)
【文献】特表平08-502671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/00-2/26
B25H 3/00-3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に固定される固定部と、
前記固定部に対して弾性連結部を介して揺動可能に連結された押さえ部と、を備え、
前記固定部と前記押さえ部との間に帯状の被装着体を挟持可能な物品携帯用クリップであって、
前記弾性連結部は、弾性を有する板材が1周以上巻き回された周回部を有
し、
前記物品から取り外した状態で、前記固定部と前記押さえ部とが側面視で交差するように構成されている、ことを特徴とする物品携帯用クリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯して用いる物品を、帯状の被装着体に係合保持するための物品携帯用クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、巻尺等の物品を携帯して持ち運ぶ際には、巻尺に固定されたベルトクリップを、作業者の腰に巻き付けたベルトに引っ掛けて係合保持させるようにしている。このような物品携帯用のクリップとしては、例えば、ステンレス等の金属板を二つ折り状態で折り曲げて成形され、一端を巻尺に固定するとともに、他端を押さえ部とし、巻尺に固定された固定部と押さえ部とでベルトを挟持するものが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1のクリップにあっては、固定部と押さえ部を連結する折返し板状の連結部を支点として、押さえ部が固定部から離間するように弾性変形可能となっている。そのため、ベルトを腰から取り外さなくても、腰に巻かれたベルトに対してクリップを上方から差し込んだり、上方に引き抜いて取り外したりして、クリップを容易に着脱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のクリップは、金属板を単純に二つ折りした形状であるため、固定部と押さえ部の間からベルトが滑って抜け易く、例えば作業者が屈んだ場合に、ベルトからクリップが滑り抜けてしまう虞がある。また、クリップがベルトを挟んでいるときには、クリップの折返し連結部が弾性変形して拡がった状態であるため、長年の使用によりベルトクリップが塑性変形して保持力が弱まってしまうという問題もある。
【0006】
それゆえ本発明は、強力な保持力と、長期使用が可能な耐久性とを備えた物品携帯用クリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の物品携帯用クリップは、物品に固定される固定部と、
前記固定部に対して弾性連結部を介して揺動可能に連結された押さえ部と、を備え、
前記固定部と前記押さえ部との間に帯状の被装着体を挟持可能な物品携帯用クリップであって、
前記弾性連結部は、弾性を有する板材が1周以上巻き回された周回部を有し、
前記物品から取り外した状態で、前記固定部と前記押さえ部とが側面視で交差するように構成されている、ことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の物品携帯用クリップにあっては、前記押さえ部には、前記固定部が通過可能な開口部が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、強力な保持力と、長期使用が可能な耐久性とを備えた物品携帯用クリップを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る物品携帯用クリップを示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す物品携帯用クリップの側面図である。
【
図3】
図1に示す物品携帯用クリップを巻尺に装着した状態を示す側面図である。
【
図4】
図1に示す物品携帯用クリップの変形例の側面図である。
【
図5】本発明の物品携帯用クリップを構成する板材の一例を示す展開図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る物品携帯用クリップの正面図である。
【
図9】本発明のさらに他の実施形態に係る物品携帯用クリップの正面図である。
【
図10】本発明の他の実施形態に係る物品携帯用クリップを構成する板材の展開図である。
【
図11】本発明のさらに他の実施形態に係る物品携帯用クリップの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について例示説明する。
図1は本発明の一実施形態としての物品携帯用クリップ1の斜視図であり、
図2は側面図であり、
図3は携帯する物品としての巻尺Mに物品携帯用クリップ1を装着した状態を示す側面図である。
【0013】
図1、2に示すように、物品携帯用クリップ1は、物品に固定される固定部10と、固定部10に対して弾性連結部30を介して揺動可能に連結された押さえ部20とを備え、固定部10と押さえ部20との間に帯状の被装着体を挟持可能に構成されている。なお、本例の物品携帯用クリップ1は一体物であり、固定部10及び押さえ部20は弾性連結部30を介して連続しているが、これに限定されず、複数の部品を組み合わせた構成としてもよい。なお、本例の物品携帯用クリップ1は、例えばステンレス等の1枚の金属板をプレス加工し、孔開け、曲げ等を行うことにより形成することができる。物品携帯用クリップ1は、金属製に限らず、射出成形等により形成された樹脂製であってもよい。
【0014】
固定部10は、平坦な板状である。固定部10には、ねじ等の締結具を通すための締結孔11が形成されている。本例の固定部10は略矩形の平坦な板状であり、締結孔11は、固定部10の中央部分に形成されている。
【0015】
押さえ部20は、弾性連結部30を中心として揺動可能であり、固定部10から押さえ部20が離間する方向に揺動させることで、物品携帯用クリップ1が開き、ベルト等の被装着体を差し込むことが可能となる。なお、物品携帯用クリップ1を開いた際には、弾性連結部30の復元力(バネ作用)により固定部10と押さえ部20とが閉じる方向に強力な保持力が生じることとなる。
【0016】
押さえ部20には、固定部10が通過可能な開口部21が形成されている。なお、本例の開口部21は固定部10の形状に対応する略矩形状であるが、固定部10に干渉しない形状であればよく、その形状は適宜変更可能である。
【0017】
本例の押さえ部20は、左右一対の平坦な側板部22、23と、一対の側板部22、23を連結する連結板部24とを有する。また、押さえ部20の下端部(弾性連結部30から遠い側の端部)側には、湾曲部25が設けられている。本例において、湾曲部25は、連結板部24に形成されている。湾曲部25を設けることで、
図3に示すように、押さえ部20の下端が固定部10から離間するため、押さえ部20と固定部10との間に被装着体を差し込み易くなる。
【0018】
弾性連結部30は、金属板等の弾性を有する板材が1周以上巻き回された周回部31を有する。
図2、3に示すように、本例の周回部31は、側面視で円形となるように湾曲した形状である。これに限られず、周回部31は、側面視で楕円または多角形となるように湾曲した形状であってもよい。また周回部31は、弾性を有する板材が少なくとも1周以上巻き回されていればよく、例えば、1.5周もしくは2周巻き回されていてもよい。
【0019】
弾性連結部30は、周回部31と固定部10との連結部に設けられた固定部側屈曲部32と、周回部31と押さえ部20との連結部に設けられた押さえ部側屈曲部33とを有する。本例では、固定部側屈曲部32と押さえ部側屈曲部33の屈曲角度は約90°となっているが、適宜変更可能である。なお、固定部側屈曲部32と押さえ部側屈曲部33は、周回部31における金属板の巻き方向とは逆側に屈曲している。
【0020】
図3に示すように、本実施形態の物品携帯用クリップ1は、例えば巻尺M等の物品の平坦な側面(被固定面)に固定部10の背面を当接させ、締結孔11を通してねじを物品のねじ穴に締結することにより固定することができる。そして、物品に取り付けた物品携帯用クリップ1を、使用者の腰に巻かれたベルト等の帯状の被装着体に上方から引っ掛けるように、固定部10と押さえ部20との間に被装着体を差し込むことで、当該物品を被装着体に係合保持することができる。また、固定部10から離間する方向に押さえ部20を弾性変形させることで、被装着体への着脱が容易となる。
【0021】
以上説明したように、本実施形態の物品携帯用クリップ1にあっては、固定部10と押さえ部20とを連結する弾性連結部30が、弾性を有する板材が1周以上巻き回された周回部31を有する構成となっている。このような構成により、固定部10と押さえ部20とで被装着体を挟持した際には、周回部31がねじりコイルバネのようなバネ効果を発揮することとなり、強力な保持力を発揮することができる。また、弾性連結部30が周回部31を有することで、単純に板材を二つ折りした場合に比べて、弾性連結部30が塑性変形し難くなる。したがって、長年にわたって使用した場合でも、保持力が低下し難い。このように、本実施形態の物品携帯用クリップ1によれば、強力な保持力と、長期使用が可能な耐久性とを両立することが可能となる。
【0022】
また、本実施形態の物品携帯用クリップ1にあっては、固定部10と押さえ部20との間に被装着体を挟み込むと、被装着体を挟んでいないときと比べて、弾性連結部30の周回部31の直径が小さくなるように構成されている。すなわち、固定部10と押さえ部20を離間させて物品携帯用クリップ1を開いたときに、弾性連結部30の周回部31が閉じる方向に弾性変形する構成となっているので、弾性連結部30はさらに塑性変形し難くなり、保持力が弱まり難くなる。
【0023】
ここで、本例の物品携帯用クリップ1は、巻尺M等の物品から取り外した状態において、
図2に示すように、側面視で固定部10と押さえ部20とが交差するように構成されている。このような構成とすることで、物品携帯用クリップ1の保持力を更に高めることができる。すなわち、
図2に示す物品携帯用クリップ1を物品に装着すると、
図3に示すように固定部10と押さえ部20とが弾性変形して交差状態が解消される。これにより、弾性連結部30のバネ作用(復元力)により、押さえ部20が固定部10側(物品側)に付勢され、物品に押し付けられた状態となる。そのため、固定部10と押さえ部20との間に帯状の被装着体を挟み込むと、強力な保持力が発揮されることとなる。なお、仮に長期の使用等により物品携帯用クリップ1が塑性変形し、固定部10と押さえ部20とが離間した場合であっても、一度物品から取り外して、固定部10と押さえ部20とが交差するように変形させることにより、容易に
図2に示す初期状態に戻すことができる。これに対して、金属板を単純に二つ折りした形状のクリップでは、上記のような塑性変形が生じた場合に元の形状に変形させようとしても、スプリングバックにより初期状態に戻すことができない。したがって、本実施形態の物品携帯用クリップ1によれば、金属板を単純に二つ折りした形状のクリップに比べて、さらに長期にわたる使用が可能となる。
【0024】
なお、物品携帯用クリップ1は、物品から取り外した際に、
図4に示すように、固定部10と押さえ部20とが交差しない構成であってもよい。この場合、物品から取り外した状態での周回部31は、弾性材が1周以上巻き回されていない状態となっていてもよい。この場合においても、
図4に二点鎖線で示すように、巻尺M等の物品に固定部10を取り付けることで、周回部31を構成する弾性材が1周以上巻き回された状態(
図3と同様の状態)となり、十分に強力な保持力を発揮することができる。
【0025】
図5は、物品携帯用クリップ1を形成する前の金属製の板材100を展開図で示したものである。押さえ部20に相当する部分には、固定部10が通過可能な開口部21が形成されている。また、
図5に示すように、弾性連結部30に相当する部分は、左右一対の板状部34a、34bを有する。本例の板状部34a、34bは、左右対称な形成となっているが、これに限られるものではない。板状部34a、34bは、
図5に示すように、固定部10側の端部の幅W1よりも押さえ部20側の端部の幅W2が大きくなっていることが好ましい。このように、比較的撓み難い固定部10側の幅W1を小さくし、固定部10側よりも撓み易い押さえ部20側の幅W2を大きくすることによって、弾性連結部30を構成する板材の撓み量を均等に近づけることができる。なお、バネ力(復元力)の左右のバランスを均等にする観点から、弾性連結部30を構成する部分の板材は、左右対称形状であることが好ましい。
【0026】
ここで、例えば
図6に示す板材200のように、弾性連結部30を構成する板材の一部の幅W4が、固定部10を構成する部分の幅W3よりも大きくなっている場合、大きい幅W4を有する部分が局所的に撓み難くなり、弾性連結部30のうち有効に撓む部分の割合が小さくなってしまう。そのため、例えば
図7に示す板材300のように、バネ作用を発揮する弾性連結部30の全体の材料幅を略一定にすることが好ましい。このように、弾性連結部30の全体の材料幅を略一定にすることで、弾性連結部30において有効に撓む部分を十分に確保して適度なバネ力を得ることができる。なお、
図7に示す板材300の場合、板状部34aの幅W5と板状部34bの幅W6は一定であり、板状部34aの幅W5と板状部34bの幅W6の合計は、固定部10を構成する部分の幅W3と同一となっているが、これに限られるものではない。
【0027】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。なお、上述した実施形態と基本的な機能が同一である部分は、図中、同一の符号を付して説明を省略する。
【0028】
図8に示す物品携帯用クリップ2は、中央に位置する押さえ部20と、その両側に位置する左右一対の固定部10とを備える。また、弾性連結部30は、押さえ部20と左右一対の固定部10とを連結する左右一対の周回部31を有する。
【0029】
図8に示す物品携帯用クリップ2は、押さえ部20の左右両側に設けた固定部10を物品に固定することができるので、物品に対する物品携帯用クリップ2の固定強度を高め、安定性を高めることができる。また、物品携帯用クリップ2は左右対称な形状であるため、被装着体に物品を係合保持する際の左右のバランスも良好である。
【0030】
図9に示す物品携帯用クリップ3は、
図1に示す物品携帯用クリップ1を左右に2個連ねた形状となっている。すなわち、物品携帯用クリップ3は、左右一対の固定部10を有し、一対の固定部10はそれぞれ、押さえ部20に設けられた一対の開口部21に配置されている。物品携帯用クリップ3は、左右一対の固定部10を物品に固定することで高い固定強度が得られ、安定性を高めることができる。また、物品携帯用クリップ3は左右対称な形状であるため、被装着体に物品を係合保持する際の左右のバランスも良好である。また、物品携帯用クリップ3は、押さえ部20の幅が大きいので、より高い安定性が得られる。
【0031】
図10は、さらに他の実施形態としての物品携帯用クリップを形成するための金属製の板材4の展開図を示している。板材4は、略矩形の板材4にU字状の切込み41を入れたものであり、切込み41によって、固定部10、押さえ部20、及び弾性連結部30が区画形成される。例えば、板材4を用いて、固定部10に相当する部分を押さえ部20に相当する部分に対して裏側又は表側に1周以上巻き回すことで周回部31を形成することができる。また、
図4に示す固定部側屈曲部32と押さえ部側屈曲部33に相当する位置で板材4を折り曲げることで、固定部側屈曲部32と押さえ部側屈曲部33とをそれぞれ形成することができる。
【0032】
図11に示す物品携帯用クリップ5は、
図8に示す物品携帯用クリップ2の左側半部と同様の形状を有し、1つの固定部10と1つの押さえ部20とが左右に並べて配置された形態である。物品携帯用クリップ5は、一枚の略板材を弾性連結部30の周回部31に相当する部分で捻るように巻き回し、固定部側屈曲部32と押さえ部側屈曲部33に相当する位置で板材を折り曲げることで形成することができる。物品携帯用クリップ5は、固定部10を通すための開口部21(
図1、5等参照)を形成する必要がないので、加工が容易である。
【0033】
以上、図示例に基づき説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができるものである。例えば、先の実施形態において固定部10は平坦な略矩形の板状であったが、その形状は取付ける物品の被固定面の形状に合わせて適宜変更可能である。同様に、押さえ部20の形状も適宜変更可能である。また、固定部10に設けた締結孔11の形状、位置等も適宜変更可能であり、ねじ止め以外の方法で携帯用の道具に固定可能であれば締結孔11はなくてもよい。また、本発明の物品携帯用クリップは、巻尺Mに装着して用いる巻尺用クリップに最も適しているが、帯状の被装着体に係合させて携帯可能な物品であれば物品の種類は特に限定されず、例えば巻尺M以外の工具でもよいし、工具以外のものでもよい。
【符号の説明】
【0034】
1、2、3、5:物品携帯用クリップ
4:板材
10:固定部
11:締結孔
20:押さえ部
21:開口部
22、23:側板部
24:連結板部
25:湾曲部
30:弾性連結部
31:周回部
32:固定部側屈曲部
33:押さえ部側屈曲部
34a、34b:板状部
41:切込み
100、200、300:板材
M:巻尺(物品)