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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】回路基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/11 20060101AFI20230829BHJP
   H05K 3/40 20060101ALI20230829BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
H05K1/11 M
H05K3/40 J
H05K3/00 W
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019115781
(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公開番号】P2021002598
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000215833
【氏名又は名称】帝国通信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094226
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100087066
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 真也
(72)【発明者】
【氏名】永井 伸明
(72)【発明者】
【氏名】牧野 大介
【審査官】原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-083347(JP,A)
【文献】特開昭62-162303(JP,A)
【文献】特開2006-344819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/11
H05K 3/40
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融樹脂の射出成形によって形成され、且つ所望の位置にハトメカシメ孔と回転体軸支用の軸支孔とを形成してなる絶縁基板と、
前記絶縁基板の少なくとも何れか一方の面に形成される回路パターンと、
を有し、
前記絶縁基板の射出成形の際のゲート接続部を、前記ハトメカシメ孔近傍に設けるとともに、当該ゲート接続部の位置から前記ハトメカシメ孔及び前記軸支孔を介して当該軸支孔より離れた位置にウェルドを形成したことを特徴とする回路基板。
【請求項2】
請求項1に記載の回路基板であって、
前記ハトメカシメ孔の少なくとも一方の開口辺をテーパー面としたことを特徴とする回路基板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回路基板であって、
前記絶縁基板を構成する合成樹脂はナイロンであることを特徴とする回路基板。
【請求項4】
金型のキャビティ内に溶融樹脂を射出することで、所望の位置にハトメカシメ孔と回転体軸支用の軸支孔とを形成してなる絶縁基板を成形する工程と、
前記絶縁基板の少なくとも何れか一方の面に回路パターンを形成する工程と、
を有し、
前記溶融樹脂の射出成形時のゲート接続位置を、前記キャビティ内に突出するハトメカシメ孔形成用の突部近傍に設けることで、前記ゲートから前記キャビティ内に導入された溶融樹脂を、前記ハトメカシメ孔形成用の突部及び前記キャビティ内に突出する軸支孔形成用の突部を介して当該軸支孔形成用の突部より離れた側の位置にウェルドを形成するように流すことを特徴とする回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属端子をハトメカシメするのに用いて好適な回路基板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属端子をハトメカシメできる回路基板として、ガラスエポキシ樹脂基板(以下「ガラエポ基板」という)やフェノール基板等の硬質の回路基板があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭56-121207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の回路基板には、以下のような問題があった。
(1)ガラエポ基板やフェノール基板に回路パターンを印刷して乾燥・焼成させる際に、前記ガラエポ基板やフェノール基板からガスが発生して乾燥炉を傷めてしまう虞があった。
【0005】
(2)ガラエポ基板やフェノール基板の代わりに、セラミック基板を用いれば、乾燥・焼成時にガスが発生することはないが、セラミック基板はもろいので、当該セラミック基板に金属板製の端子をハトメカシメしようとすると、セラミック基板に割れが生じてしまう虞があった。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、端子のハトメカシメを容易且つ確実に行え、また回路パターンの乾燥・焼成時に乾燥炉を傷めることも無い回路基板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる回路基板は、溶融樹脂の射出成形によって形成され、且つ所望の位置にハトメカシメ孔と回転体軸支用の軸支孔とを形成してなる絶縁基板と、前記絶縁基板の少なくとも何れか一方の面に形成される回路パターンと、を有し、前記絶縁基板の射出成形の際のゲート接続部を、前記ハトメカシメ孔近傍に設けるとともに、当該ゲート接続部の位置から前記ハトメカシメ孔及び前記軸支孔を介して当該軸支孔より離れた位置にウェルドを形成したことを特徴としている。
上記射出成形は、射出圧縮成形を含む概念である。
本発明によれば、ゲート接続部をハトメカシメ孔近傍に設けて、ゲート接続部の位置からハトメカシメ孔と軸支孔を介してそれより離れた位置にウェルド(外観上確認できるウェルド)を形成するので、ハトメカシメ孔の周囲に生じるウェルド(ウェルドライン)を外観上確認しにくいものにすることができる。これは、ハトメカシメ孔を形成するためキャビティ内に突出させる突部で溶融樹脂が分流して当該突部を回り込んで再び合流する際でも、当該突部の位置がゲート接続部に近い位置なので、合流時の溶融樹脂の温度が高く、このため溶融樹脂の粘度が低くて溶融樹脂の合流時の接合面が容易に混ざり合い、ウェルドが生じ難いからである。このため、ハトメカシメ孔の周囲のウェルドによる強度低下を最小限に抑えることができる。これによって、このハトメカシメ孔に金属板製の端子をハトメカシメしても割れ難くなり、容易且つ確実に取り付けることができる。
さらに言えば、ハトメカシメ孔と軸支孔とを有する絶縁基板において、軸支孔の位置を、ゲート接続部から見てハトメカシメ孔よりも離れた位置とするので、ゲート接続部から溶融樹脂を射出した際、ゲート接続部から離れた軸支孔の後方位置に、外観上確認できるウェルドが形成される。言い換えれば、ハトメカシメ孔の周囲に生じるウェルドは外観上確認しにくいウェルドとなるので、このハトメカシメ孔に金属板製の端子をハトメカシメしても割れ難くでき、容易且つ確実に取り付けることができる。
また、溶融樹脂の射出成形によって絶縁基板が構成されるので、回路パターンを印刷して乾燥・焼成させる際に、ガラエポ基板やフェノール基板と比較すると、ガスの発生量が少なく、このため乾燥炉の損傷を防止することができる。
【0008】
また本発明は、上記特徴に加え、前記ハトメカシメ孔の少なくとも一方の開口辺をテーパー面としたことを特徴としている。
本発明によれば、ハトメカシメ孔に端子の円筒状のカシメ部を挿入してハトメカシメする際、変形するカシメ部が開口辺の部分に強く当接することを防止でき、これによって、このハトメカシメ孔に金属板製の端子をハトメカシメする際の絶縁基板の割れを、さらに確実に防止できる。
【0009】
また本発明は、上記特徴に加え、前記絶縁基板を構成する合成樹脂はナイロンであることを特徴としている。
ナイロン樹脂を用いた絶縁基板は、他の材質の合成樹脂に比べて、金属板製の端子をハトメカシメしても割れにくい。また、回路パターンの印刷密着性も良い。このため、ハトメカシメ孔を有する回路基板に用いて特に好適である。
【0011】
また本発明にかかる回路基板の製造方法は、金型のキャビティ内に溶融樹脂を射出することで、所望の位置にハトメカシメ孔と回転体軸支用の軸支孔とを形成してなる絶縁基板を成形する工程と、前記絶縁基板の少なくとも何れか一方の面に回路パターンを形成する工程と、を有し、前記溶融樹脂の射出成形時のゲート接続位置を、前記キャビティ内に突出するハトメカシメ孔形成用の突部近傍に設けることで、前記ゲートから前記キャビティ内に導入された溶融樹脂を、前記ハトメカシメ孔形成用の突部及び前記キャビティ内に突出する軸支孔形成用の突部を介して当該軸支孔形成用の突部より離れた側の位置にウェルドを形成するように流すことを特徴としている。
本発明によれば、ゲート接続部の位置からハトメカシメ孔と軸支孔を介して離れた位置に、外観上確認できるウェルドが形成されるので、ハトメカシメ孔の周囲に生じるウェルドを、外観上確認しにくいものにすることができる。このため、ハトメカシメ孔の周囲のウェルドによる強度低下を最小限に抑えることができ、これによって、このハトメカシメ孔に金属板製の端子をハトメカシメしても割れ難くなり、容易且つ確実に取り付けることができる。
また、溶融樹脂の射出成形によって絶縁基板が構成されるので、回路パターンを印刷して乾燥・焼成させる際に、ガラエポ基板やフェノール基板と比較すると、ガスの発生量が少なく、このため乾燥炉の損傷を防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回路基板への端子のハトメカシメを容易且つ確実に行え、また回路パターンの乾燥・焼成時に乾燥炉を傷めることもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】端子付き回路基板1-1を上側から見た斜視図である。
図2】端子付き回路基板1-1を下面側から見た斜視図である。
図3】絶縁基板20を上側から見た斜視図である。
図4】絶縁基板20を下側から見た斜視図である。
図5】回路基板10を下側から見た斜視図である。
図6】金型内のキャビティC1の平断面での溶融樹脂流れ説明図である。
図7】金型内のキャビティC1の縦断面での溶融樹脂流れ説明図である。
図8図1のA-A概略断面拡大図である。
図9】端子付き回路基板1-2を上側から見た斜視図である。
図10】端子付き回路基板1-2を下側から見た斜視図である。
図11】端子付き回路基板1-2を上側から見た分解斜視図である。
図12】金型内のキャビティC1-2の平断面での溶融樹脂流れ説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明を用いて構成された端子付き回路基板1-1を上側から見た斜視図、図2は端子付き回路基板1-1を下側から見た斜視図である。なお、説明文中の上下方向は、図1に示した端子付き回路基板1-1の上下方向として定義する。
【0015】
これらの図に示すように、端子付き回路基板1-1は、絶縁基板20の下面に回路パターン40を形成してなる回路基板10と、当該回路基板10に取り付けられる3本の端子50とを具備して構成されている。
【0016】
図3は絶縁基板20を上側から見た斜視図、図4は絶縁基板20を下側から見た斜視図である。これらの図に示すように、絶縁基板20は平板状であって、回路パターン40を形成する略円形の回路パターン形成部21と、回路パターン形成部21の外周の一部から半径方向外方に向けて突出する略矩形状の端子取付部23とを一体に成形して構成されている。成形の方法としては、溶融樹脂の射出成形が用いられている。また使用する合成樹脂としては、ナイロン樹脂が用いられている。
【0017】
回路パターン形成部21の中央には円形の軸支孔25が形成されている。軸支孔25は、この絶縁基板20の上面側または下面側に配置される回転体の軸を挿入して軸支する寸法形状に形成されている。
【0018】
端子取付部23には、その長手方向に向かって並列に、3つのハトメカシメ孔31が形成されている。各ハトメカシメ孔31は円形であり、前記軸支孔25よりもその直径が小さく、その上面側の開口辺33はテーパー面34となっており、またその下面側の開口辺35もテーパー面37となっている。また、端子取付部23の中央のハトメカシメ孔31近傍の外周側面には、ゲート接続部39が形成されている。ゲート接続部39は、下記する金型E1,E2内に溶融樹脂を射出して絶縁基板20を成形する際に金型E1,E2のゲートGを接続していた部分(その切断跡部)である。この例の場合、ゲート接続部39は、中央のハトメカシメ孔31の中心と、軸支孔25の中心とを直線状に結ぶ線上に設けられている。
【0019】
絶縁基板20には、軸支孔25の中心と中央のハトメカシメ孔31の中心とを結ぶ直線上において、軸支孔25と絶縁基板20の外周辺間を結ぶ第1ウェルドW1と、軸支孔25と中央のハトメカシメ孔31間を結ぶ第2ウェルドW2とが形成されている。
【0020】
第1ウェルドW1は、外観上確認できる線であるのに対して、第2ウェルドW2は、第1ウェルドW1に比べて、外観上確認しにくい線である。なお、実際には、左右両側のハトメカシメ孔31の外周部分にも、外観上確認しにくい線からなるウェルドが形成されているが、前記第2ウェルドW2と同様なので、その記載および説明は省略する。
【0021】
図6図7は、溶融樹脂の射出成形時の溶融樹脂流れ説明図であり、図6は金型E1,E2内のキャビティC1の平断面での溶融樹脂流れ説明図、図7は金型E1,E2内のキャビティC1の縦断面での溶融樹脂流れ説明図である。
【0022】
図6図7に示すように、絶縁基板20を製造するには、まず金型E1,E2を接合することで、金型E1,E2内に絶縁基板20の形状のキャビティC1を形成する。キャビティC1内には、前記絶縁基板20の軸支孔25を形成するための円柱状の突部C11と、前記絶縁基板20の3つのハトメカシメ孔31を形成するための円柱状の突部C13,15,17とが形成され、また前記突部C15近傍のキャビティC1の側壁にゲートGが開口している。
【0023】
次に、前記ゲートGからキャビティC1内へ溶融樹脂を射出成形する。キャビティC1内に導入された溶融樹脂は、図6図7に一点鎖線で示すように、突部C15によって2つに分流され、当該突部C15の反対側(下流側)で再び接合し一体化する。この接合面に上記第2ウェルドW2が形成される。この状況は、突部C13,17においても同様である。さらに突部C11では、前記突部C15によって分流した溶融樹脂が、そのまま突部C11の両側に回り込み、当該突部C11の反対側(下流側)で再び接合し一体化する。この接合面に上記第1ウェルドW1が形成される。
【0024】
この時、上述のように、第1ウェルドW1が外観上確認できる線になるのに対して、第2ウェルドW2が外観上確認しにくい線になる理由を説明する。即ち、ゲートGから射出された溶融樹脂が、その近傍に位置する突部C15によって分流されて当該突部C15を回り込んで再び合流する際に第2ウェルドW2が形成されるが、当該突部C15の位置はゲートGに近い位置であり且つ突部C15の直径は小さくてこれを回り込む距離も短いので、合流時の溶融樹脂の温度が未だ高い。このため合流時の溶融樹脂の粘度が低くて合流時の接合面が容易に混ざり合い、ウェルドが生じ難いのである。このため、第2ウェルドW2は外観上確認しにくい線になる。このため、ハトメカシメ孔31の周囲のウェルドによる強度低下を最小限に抑えることができる。この点は中央のハトメカシメ孔31の周囲の第2ウェルドW2のみでなく、両側のハトメカシメ孔31の周囲の図示しない第2ウェルドにおいても、ゲートGからの距離が短いので同様である。
【0025】
一方、ゲートGから射出された溶融樹脂が、突部C15よりも遠い位置にある突部C11によって分流されて当該突部C11を回り込んで再び合流する際に第1ウェルドW1が形成されるが、当該突部C11の位置はゲートGから遠く、且つ突部C11の直径は突部C15の直径より大きいので回り込んで合流するまでの距離が長く、このため合流時の溶融樹脂の温度が低めになる。このため溶融樹脂の粘度が高めとなって溶融樹脂の合流時の接合面が混ざり合い難くなり、ウェルドが生じ易くなる。このため、第1ウェルドW1は外観上確認できる線になる。
【0026】
以上のようにして製造された絶縁基板20の下面に、図5に示すように、回路パターン40を印刷する。印刷方法として、この例ではスクリーン印刷を用いるが、他の各種印刷方法を用いて印刷しても良い。回路パターン40は、絶縁基板20下面の軸支孔25の周囲を囲む導電パターン(集電パターン)41と、導電パターン41の周囲を囲むように形成される抵抗体パターン43と、各ハトメカシメ孔31の周囲に形成され前記導電パターン41の外周と抵抗体パターン43の両端にそれぞれ接続される3本の端子接続パターン45とを有して構成されている。
【0027】
次に、前記絶縁基板20を乾燥炉に投入し、これを乾燥・焼成する。乾燥・焼成の際、絶縁基板20は高温になるが、ガラエポ基板やフェノール基板と比較すると、射出成型による絶縁基板20からのガスの発生量は少ない。このため乾燥炉を傷めることはない。これによって所望の性能の回路パターン40を容易に形成することができる。また、外形形状はキャビティC1の形状で決まり、外形形状のプレス加工を行う必要がないので、破断面による切りカスが生じず、従って洗浄工程などを省け、この点からも絶縁基板20の製造を容易に行うことができる。これによって、回路基板10が完成する。
【0028】
ところで、上記絶縁基板20を構成する合成樹脂として、ナイロン樹脂を用いたが、その理由は以下のとおりである。即ち、ナイロン樹脂を用いた絶縁基板20は、他の材質の合成樹脂を用いた場合に比べて、曲げ弾性率が低く、即ち柔らかく、下記する金属板製の端子50をハトメカシメしても割れにくい。また、回路パターン40の印刷密着性も良い。
【0029】
次に、図1図2に示すように、3つのハトメカシメ孔31にそれぞれ金属板製の端子50を取り付ける。即ち、端子50は、平板状で所望の形状に湾曲させた端子本体部51と、端子本体部51の一端近傍部分を円筒状に絞って立設させたカシメ部53とを具備して構成されている。そして各端子50のカシメ部53を、回路基板10の下面側から、各ハトメカシメ孔31に挿入して回路基板10の上面側に突出させ、このカシメ部53の先端をハトメカシメする。これによって端子付き回路基板1-1が完成する。なお上記製造手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0030】
ところで、上述のように、中央のハトメカシメ孔31の周囲に生じる第2ウェルドW2は、外観上確認しにくいものであり、このため、この第2ウェルドW2によるハトメカシメ孔31の強度低下はこれを最小限に抑えることができる。このため、このハトメカシメ孔31に金属板製の端子50をハトメカシメしても割れ難くなり、容易且つ確実に取り付けることができる。上述のように、中央以外のハトメカシメ孔31の周囲にもウェルド(図示は省略)は生じるが、これらも外観上確認しにくいものであって強度の低下が最小限に抑えられているので、これらのハトメカシメ孔31に端子50をハトメカシメしても、同様に、割れ難く、容易且つ確実に取り付けることができる。
【0031】
図8は、図1のA-A概略断面拡大図である。同図において、端子50をカシメする際は、カシメ部53の上端部分が外側に湾曲変形する。カシメ部53が湾曲変形した時、外側湾曲部分(開口辺33に対向する部分)a1が、絶縁基板20のハトメカシメ孔31の上面側の開口辺33の部分に当接して割れが生じる虞が生じるが、本実施形態は、この開口辺33をテーパー面34としたので、上記外側湾曲部分a1が開口辺33に当接することを防止できる。これによって開口辺33の部分に割れが生じることを防止できる。
【0032】
また、端子本体部51の面を円筒状に絞って立設させてカシメ部53を形成する際、その根元側の外側湾曲部分(開口辺35に対向する部分)a2は直角に屈曲せず、所定の曲率の湾曲面になる。そして前記ハトメカシメの際に前記外側湾曲部分a2の湾曲面が、絶縁基板20のハトメカシメ孔31の下面側の開口辺35の部分に強く当接すると割れる虞がある。本実施形態は、この開口辺35もテーパー面37としたので、上記外側湾曲部分a2が開口辺35に当接することを防止できる。これによって開口辺35の部分に割れが生じることも防止できる。
【0033】
なお、もし何れか一方のみにテーパー面を設ける場合は、ハトメカシメ時の力がより大きくかかる上面の開口辺33側のテーパー面34を形成する方が、より効果的である。
【0034】
なおこの実施形態では溶融樹脂の射出成形によって絶縁基板20を形成したが、この射出成形には射出圧縮成形も含まれている。即ち、射出圧縮成形によって絶縁基板20を形成してもよい(他の実施形態においても同様)。
【0035】
図9は本発明を用いて構成された他の端子付き回路基板1-2を上側から見た斜視図、図10は端子付き回路基板1-2を下側から見た斜視図、図11は端子付き回路基板1-2を上側から見た分解斜視図である。これらの図に示す端子付き回路基板1-2において、前記図1図8に示す実施形態にかかる端子付き回路基板1-1と同一又は相当部分には同一符号を付す(但し、各符号には添え字「-2」を付す)。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図1図8に示す実施形態と同じである。
【0036】
これらの図に示すように、端子付き回路基板1-2は、絶縁基板20-2の上面に回路パターン40-2を形成してなる回路基板10-2と、当該回路基板10-2に取り付けられる3本の端子50-2とを具備して構成されている。
【0037】
これらの図に示すように、絶縁基板20-2は略円板状に成形されている。成形の方法には、溶融樹脂の射出成形が用いられている。また使用する合成樹脂としては、ナイロン樹脂が用いられている。
【0038】
絶縁基板20-2の中央1ヶ所と、外周辺近傍2か所とには、それぞれ円形のハトメカシメ孔31-2が形成され、また前記中央のハトメカシメ孔31-2と他の2つのハトメカシメ孔31-2の間の位置には3つの小孔からなる端子挿通孔32-2が並列に形成されている。
【0039】
各ハトメカシメ孔31-2は円形である。各端子挿通孔32-2は円形の小孔であり、各ハトメカシメ孔31-2に対応して1つずつ設けられている。端子挿通孔32-2の直径は、ハトメカシメ孔31-2の直径より小さい。
【0040】
また、絶縁基板20-2の外周近傍の2つのハトメカシメ孔31-2の中間近傍の、絶縁基板20-2の外周側面には、ゲート接続部39-2が形成されている。この例の場合、ゲート接続部39-2は、外周近傍の2つのハトメカシメ孔31-2の中央位置と、中央にある1つのハトメカシメ孔31-2の中心とを直線状に結ぶ線上に設けられている。
【0041】
図10に示すように、絶縁基板20-2には、中央のハトメカシメ孔31-2の中心と、外周近傍の2つのハトメカシメ孔31-2の中間点とを結ぶ直線上において、中央のハトメカシメ孔31-2と絶縁基板20-2の外周辺間を結ぶ第1ウェルドW1-2と、中央の端子挿通孔32-2と中央のハトメカシメ孔31-2間を結ぶ第2ウェルドW2-2とが形成されている。
【0042】
第1ウェルドW1-2は、中央のハトメカシメ孔31-2に近い部分は外観上確認しにくい線からなり、中央のハトメカシメ孔31-2から遠い部分(外周辺に近い部分)は外観上確認できる線になっている。また第2ウェルドW2-2は、外観上確認しにくい線である。なお、実際には、外周近傍の2つのハトメカシメ孔31-2の外周部分や、左右両側の端子挿通孔32-2の外周部分にも、外観上確認しにくい線からなるウェルドが形成されているが、前記第2ウェルドW2-2と同様なので、その記載および説明は省略する。
【0043】
図12は、絶縁基板20-2を成形するための金型内のキャビティC1-2の平断面での溶融樹脂流れ説明図である。同図に示すように、絶縁基板20-2を製造する場合、まず金型を接合することで、金型内に絶縁基板20-2の形状のキャビティC1-2を形成する。キャビティC1-2内には、前記絶縁基板20の3つのハトメカシメ孔31を形成するための円柱状の突部C13-2,15-2,17-2と、前記絶縁基板20の3つの端子挿通孔32-2を形成するための円柱状の突部C19-2,21-2,23-2とが形成され、また前記2つの突部C13-2,17-2の中間位置に対向するキャビティC1-2の側壁にゲートG-2が開口している。
【0044】
次に、前記ゲートG-2からキャビティC1-2内へ溶融樹脂を射出成形する。キャビティC1-2内に導入された溶融樹脂は、図12に一点鎖線で示すように、突部C21-2によって2つに分流され、当該突部C21-2の反対側(下流側)で再び接合し一体化する。この接合面に上記第2ウェルドW2-2が形成される。この状況は、突部C13-2,17-2,19-2,23-2においても同様である。さらに突部C15-2では、前記突部C21-2によって分流した溶融樹脂が、突部C15-2の両側に回り込み、当該突部C15-2の反対側(下流側)で再び接合し一体化する。この接合面に上記第1ウェルドW1-2が形成される。
【0045】
この時、上述のように、第1ウェルドW1-2の中央のハトメカシメ孔31-2を設けた近傍部分が外観上確認しにくい線になるとともに、第1ウェルドW1-2の中央のハトメカシメ孔31-2よりも離れた部分(外周辺に近い部分)が外観上確認できる線になり、且つ第2ウェルドW2-2が外観上確認しにくい線になる理由を説明する。即ち、ゲートG-2から射出された溶融樹脂が、その近傍に位置する突部C21-2によって分流されて当該突部C21-2を回り込んで再び合流する際に第2ウェルドW2-2が形成されるが、当該突部C21-2の位置がゲートG-2に近い位置であり且つ突部C21-2の直径は小さくてこれを回り込む距離も短いので、合流時の溶融樹脂の温度が未だ高い。このため合流時の溶融樹脂の粘度が低くて合流時の接合面が容易に混ざり合い、このため、第2ウェルドW2-2は外観上確認しにくい線になる。
【0046】
一方、ゲートG-2から射出された溶融樹脂が、突部C15-2によって分流されて当該突部C15-2を回り込んで再び合流する際に第1ウェルドW1-2が形成されるが、突部15-2の直径は小さいため、接合面の内、突部15-2近傍の領域(ゲートG-2に近い側の領域)での溶融樹脂の温度は未だ高い。一方、接合面の内、突部15-2から離れた外周辺近傍の領域(ゲートG-2から遠い側の領域)での溶融樹脂の温度は低くなる。このため接合面の内、溶融樹脂の温度が高くてその粘度が低い接合面は容易に混ざり合い、ウェルドは外観上確認しにくい線になるが、溶融樹脂の温度が低くなり始めてその粘度が高くなり始めた接合面は混ざり合い難くなり、外観上確認できるウェルドが生じ易くなる。このため、第1ウェルドW1-2はゲートG-2に近い側は外観上確認しにくい線になるが、離れた側は外観上確認できる線になる。
【0047】
次に、以上のようにして製造された絶縁基板20-2の上面に、図11に示すように、回路パターン40-2を印刷する。印刷方法として、この例ではスクリーン印刷を用いるが、他の各種印刷方法を用いて印刷しても良い。回路パターン40-2は、絶縁基板20-2の上面中央のハトメカシメ孔31-2の周囲を囲む導電パターン(集電パターン)41-2と、導電パターン41-2の周囲を囲むように形成される抵抗体パターン43-2と、各ハトメカシメ孔31-2の周囲に形成され前記導電パターン41-2の中央側部分と抵抗体パターン43-2の両端に形成される3つの端子接続パターン45-2とを有して構成されている。
【0048】
次に、前記回路パターン40-2を印刷した絶縁基板20-2を乾燥炉に投入し、これを乾燥・焼成する。乾燥・焼成の際、絶縁基板20-2は高温になるが、ガラエポ基板やフェノール基板と比較すると、射出成型による絶縁基板20-2からのガスの発生量は少ない。このため乾燥炉を傷めることはない。これによって所望の性能の回路パターン40-2を容易に形成することができる。また、外形形状はキャビティC1-2の形状で決まり、外形形状のプレス加工を行う必要がないので、破断面による切りカスが生じず、従って洗浄工程などを省け、この点からも回路基板10-2の製造を容易に行うことができる。これによって、回路基板10-2が完成する。
【0049】
次に、図9図10に示すように、3つのハトメカシメ孔31-2にそれぞれ金属板製の端子50-2を取り付ける。即ち、端子50-2は、図11に示すように、平板状で所望の形状に湾曲させた端子本体部51-2と、端子本体部51の一端近傍部分を円筒状に絞って下向きに立設させたカシメ部53-2とを具備して構成されている。そして端子50-2のカシメ部53-2と端子本体部51-2の先端部分とを、回路基板10-2の上面側から、それぞれハトメカシメ孔31-2と端子挿通孔32-2に挿入して下面側に突出し、回路基板10-2の下面側に突出するカシメ部53-2の先端をハトメカシメする。これによって図9図10に示す端子付き回路基板1-2が完成する。
【0050】
この端子付き回路基板1-2においても、上記端子付き回路基板1-1と同様に、中央に位置するハトメカシメ孔31の周囲に生じる第1ウェルドW1-2(ゲートG-2に近い側部分)と第2ウェルドW2-2は、何れも外観上確認しにくいものである。このため、この第1,第2ウェルドW1-2,W2-2による中央のハトメカシメ孔31-2の強度低下はこれを最小限に抑えることができる。このため、この中央のハトメカシメ孔31-2に金属板製の端子50-2をハトメカシメしても割れ難く、容易且つ確実に取り付けることができる。上述のように、中央以外のハトメカシメ孔31-2の周囲にもウェルド(図示は省略)は生じるが、これらも外観上確認しにくいものであって強度の低下が最小限に抑えられているので、これらのハトメカシメ孔31-2に端子50-2をハトメカシメしても、同様に、割れ難く、容易且つ確実に取り付けることができる。
【0051】
なおこの端子付き回路基板1-2に用いる絶縁基板20-2には、各ハトメカシメ孔31―2の上面側の開口辺と下面側の開口辺の何れにもテーパー面を設けていないが、端子50-2のカシメ時の回路基板10-2の割れをより効果的に防止するためには、これらテーパー面を設けた方が良いことは言うまでもない。
【0052】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、絶縁基板を形成する合成樹脂としては、上述のように、ナイロン樹脂が好ましいが、それ以外の合成樹脂であっても良い。また絶縁基板、回路パターン、金属端子の形状や構造や材質に種々の変更が可能であることは言うまでもない。例えば、回路パターンは回転式可変抵抗器用の回路パターン(導電パターンと抵抗体パターン)に限定されず、例えば回転式スイッチ用の回路パターン(スイッチパターン)や配線用のパターンなどであっても良い。また回路パターンは、絶縁基板の上下両面に形成しても良い。また、上記記載及び各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、上記記載及び各図の記載内容は、その一部であっても、それぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は上記記載及び各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0053】
1-1,1-2 端子付き回路基板
10,10-2 回路基板
20,20-2 絶縁基板
25 軸支孔
31,31-2 ハトメカシメ孔
33 開口辺
34 テーパー面
35 開口辺
37 テーパー面
39,39-2 ゲート接続部
40,40-2 回路パターン
50,50-2 端子
W1,W1-2 第1ウェルド
W2,W2-2 第2ウェルド
G,G-2 ゲート
C1,C1-2 キャビティ
C11,C13,15,17 突部
C13-2,C15-2,17-2,19-2,C21-2,23-2 突部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12