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  • 特許-長尺体巻取装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】長尺体巻取装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 3/1007 20200101AFI20230829BHJP
【FI】
G01B3/1007
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019131430
(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公開番号】P2021015102
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000156307
【氏名又は名称】株式会社TJMデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 章夫
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-005302(JP,A)
【文献】登録実用新案第3195769(JP,U)
【文献】特開平07-294203(JP,A)
【文献】登録実用新案第047919(JP,Z1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 3/10-3/1094
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺体が繰出し可能に巻き付けられたドラムと、
前記ドラムを収容するドラム収容部を有するケースと、
前記ケースの内部に配置され、前記長尺体が繰出された際に前記ドラムを巻き戻すゼンマイばねと、
前記ケースの内部で前記ゼンマイばねを保持するばね柱と、を備え、
前記ばね柱の中心軸は、前記ドラムの中心軸に対して偏心しており、
前記ばね柱は、前記ドラム収容部の中心軸に対して偏心して設けられていることを特徴とする長尺体巻取装置
【請求項2】
長尺体が繰出し可能に巻き付けられたドラムと、
前記ドラムを収容するドラム収容部を有するケースと、
前記ケースの内部に配置され、前記長尺体が繰出された際に前記ドラムを巻き戻すゼンマイばねと、
前記ケースの内部で前記ゼンマイばねを保持するばね柱と、を備え、
前記ばね柱の中心軸は、前記ドラムの中心軸に対して偏心しており、
前記ケースの内面には、前記ドラムに形成された軸受凹部に対応する軸状凸部が設けられており、前記ばね柱の中心軸は、前記軸状凸部の中心軸に対して偏心していることを特徴とする長尺体巻取装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば巻尺等の長尺体巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設現場等において長さを測る際に用いる長尺体巻取装置が知られている。例えば、特許文献1には、メジャーテープ(長尺体)を繰り延ばし可能に巻き取るリール(ドラム)と、リールを収容する左右分割式のケースと、ケースの中心に固定され、ゼンマイ状ばねの内端を係止するばね巻き芯スタッド(ばね柱)と、を備えた長尺体巻取装置が開示されている。
【0003】
上記特許文献1の長尺体巻取装置にあっては、ばね巻き芯スタッドがケース半部とは別体の金属又はガラス繊維補強によるポリアセタール樹脂成形体のような剛性材料の軸杆より成るようにすることで、必要太さの制限を緩和して細くすることができ、また、インサート成形により強固に埋込み固定することで、堅固なばね係止とケース半部の結合が実現可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-294203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような長尺体巻取装置では、通常、ケースの内部に収容されるドラムの中心軸とばね柱の中心軸が同軸となるように配置されているため、ケース内部の部品配置が制約されてしまうという問題がある。
【0006】
それゆえ本発明は、ケース内部の部品配置の制約が少ない長尺体巻取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の長尺体巻取装置は、長尺体が繰出し可能に巻き付けられたドラムと、
前記ドラムを収容するドラム収容部を有するケースと、
前記ケースの内部に配置され、前記長尺体が繰出された際に前記ドラムを巻き戻すゼンマイばねと、
前記ケースの内部で前記ゼンマイばねを保持するばね柱と、を備え、
前記ばね柱の中心軸は、前記ドラムの中心軸に対して偏心しており、
前記ばね柱は、前記ドラム収容部の中心軸に対して偏心して設けられていることを特徴とするものである
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の長尺体巻取装置は、長尺体が繰出し可能に巻き付けられたドラムと、
前記ドラムを収容するドラム収容部を有するケースと、
前記ケースの内部に配置され、前記長尺体が繰出された際に前記ドラムを巻き戻すゼンマイばねと、
前記ケースの内部で前記ゼンマイばねを保持するばね柱と、を備え、
前記ばね柱の中心軸は、前記ドラムの中心軸に対して偏心しており、
前記ケースの内面には、前記ドラムに形成された軸受凹部に対応する軸状凸部が設けられており、前記ばね柱の中心軸は、前記軸状凸部の中心軸に対して偏心していることを特徴とするものである
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ケース内部の部品配置の制約が少ない長尺体巻取装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る長尺体巻取装置を示す斜視図である。
図2図1に示す長尺体巻取装置のケース、ドラム、及びばね柱を部分的に断面で示す斜視図である。
図3図1に示す長尺体巻取装置を逆側から見た斜視図である。
図4図1に示す長尺体巻取装置の軸状凸部及びばね柱の位置関係を示す側面図である。
図5図1に示す長尺体巻取装置のケース、ドラム、ゼンマイばね及びばね柱の位置関係を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について例示説明する。図1は本発明の一実施形態としての巻尺1(長尺体巻取装置)の概略を示す側面図である。図2は、ドラム10、ケース20、ゼンマイばね30及びばね柱40の位置関係を表した斜視図であり、一部を断面で示している。
【0013】
図1、2に示すように、巻尺1は、長尺体としてのメジャーテープ11が繰出し可能に巻き付けられたドラム10と、ドラム10を収容するドラム収容部Sを有するケース20と、ケース20の内部に配置されドラム10を巻き戻すゼンマイばね30と、ケース20の内部でゼンマイばね30を保持するばね柱40と、を備える。
【0014】
ここで、軸線Aは、ドラム10の中心軸を示している。本例においてドラム10の中心軸は、ケース20に形成されたドラム収容部S及び軸状凸部23の中心軸に一致する。なお、ドラム10の中心軸は、必ずしもドラム収容部S及び軸状凸部23の中心軸に一致していなくてもよい。また、軸線Bは、ばね柱40の中心軸を示している。ばね柱40の中心軸(軸線B)は、ドラム10の中心軸(軸線A)に対して偏心している。なお、ばね柱40の中心軸(軸線B)は、ドラム10の中心軸(軸線A)に対して平行に延在している。
【0015】
ドラム10は、円筒状の周壁12と、周壁12の両端部にそれぞれ設けられた側壁13、14とを備える。側壁13、14は、周壁12よりも直径が大きい円形の板で構成され、その中心部には、軸受凹部としての円形の貫通孔15、16が形成されている。貫通孔15、16の中心は、ドラム10の中心軸(軸線A)上に位置している。周壁12の外周面には、長尺帯状のメジャーテープ11が繰出し可能に巻き付けられている。また、周壁12の径方向内側には、ゼンマイばね30が配置されている。
【0016】
ケース20は、左右に分割可能な左半部21と右半部22とを有する。本例では、左半部21の内側面に円柱状の軸状凸部23が設けられている。軸状凸部23には、ばね柱40が固定されている。軸状凸部23は、その中心軸がドラム収容部Sの中心軸(軸線A)に一致するように、ケース20の内面に設けられている。軸状凸部23は、軸受凹部としての貫通孔15に嵌め込まれて、ドラム10が回転する際の回転軸として機能する。なお、本例では、右半部22の内側面にも左半部21の軸状凸部23と同形状の軸状凸部23が設けられている。これにより、ドラム10の左右の貫通孔15、16にそれぞれ軸状凸部23が嵌り込むことで、ドラム10を左右両側から均等に支持することができる。
【0017】
ケース20の内部には、ドラム10を収容するドラム収容部Sが区画形成される。ドラム収容部Sを構成するケース20の内面形状は、ドラム10の外形に対応している。本例では、ケース20の上部に、ドラム10の側壁13、14の外周縁部の形状に対応する円弧状内面領域24が形成されており、当該円弧状内面領域24の曲率中心は、軸線A上に位置する。これにより、ケース20のドラム収容部Sにドラム10を配置すると、円弧状内面領域24にドラム10の外周縁部が沿うように配置される。
【0018】
本例の巻尺1は、ドラム10を回転可能あるいは回転不能に切り替えるためのロックボタン25を備えている。このロックボタン25は、ケース20の前側に設けられた窓孔26に沿ってスライド可能になっている。ロックボタン25を上部に向けてスライドさせることによりドラム10の回転を可能とし、下部に向けてスライドさせることによりドラム10の回転を不能にすることができる。これにより、引き出しにかかるメジャーテープ11の引き出し長さを一定に保持するとともに引き出し状態のメジャーテープ11を簡単に収納することができるようになっている。
【0019】
ゼンマイばね30は、長尺帯状の板ばねを渦巻き状に巻回したものであり、当該渦巻き状に戻ろうとする際の巻き戻しトルク(復元力)を利用して、メジャーテープ11が繰出されたドラム10を初期状態まで巻き戻すことができる。ゼンマイばね30は、ドラム10の周壁12の内周側(径方向内側)、且つ、ばね柱40の外周側(径方向外側)に配置されている。また、ゼンマイばね30の長手方向の一端部(外周側に位置する端部)はドラム10の周壁12に固定され、他端部(内周側に位置する端部)は、ばね柱40に保持(固定)される。ばね柱40はケース20に固定されているため、ゼンマイばね30の内周側の端部もケース20に対して回転不能に保持される。ゼンマイばね30は、例えば、内周側の端部をばね柱40に設けられたスリット状の溝43に差し込んで係合させることにより、ばね柱40に保持することができる。
【0020】
ばね柱40は、基端部に設けられた固定部41と、固定部41から直線状に突出する軸部42とを有する。固定部41は、ケース20に埋め込み配置される部分であり、形状は特に限定されない。固定部41は、軸部42よりも外形が大きくなっている。固定部41は、円形ではなく、楕円形、多角形等の非円形であることが好ましく、これによれば、ケース20に対してばね柱40が回転してしまうことをより確実に抑制することができる。軸部42は、軸線Bに沿って真っ直ぐに(直線的に)延在する筒又は柱状の構成である。本例の軸部42は円筒状であるが、これに限定されず、軸部42の形状は適宜変更可能である。本例の軸部42は、軸部42の先端部から軸線Bに沿って延在するスリット状の溝43を有する。スリット状の溝43は、軸線Bを挟んで対向する周方向の2箇所に形成されている。なお、スリット状の溝43は、必須の構成ではない。
【0021】
ばね柱40は、金属製でも合成樹脂製でもよい。ばね柱40は、例えばアルミ製とすることができる。ばね柱40は、合成樹脂製のケース20を射出成形する際に、金型にインサート材としてばね柱40を配置するインサート成形により、ケース20と一体に形成することができる。なお、本例のばね柱40は、ケース20の左半部21に固定されているが、右半部22に固定してもよい。
【0022】
ばね柱40の先端部は、ねじ28を締結可能に構成されており、本例では先端部の内周面に雌ねじが形成されている。これにより、例えば図3に示すような、使用者の腰ベルトに係合保持するためのブラケット27又はベルトクリップ等を、ケース20の右半部22の外側面にねじ28で固定することができる。すなわち、図3に示すように、ケース20の右半部22の外側面にブラケット27を配置して、当該ブラケット27及びケース20の右半部22を貫通するようにねじ28を外側から挿入し、ばね柱40の先端に螺着させることで、ブラケット27をケース20に固定しつつ、ばね柱40の先端部もケース20に固定することができる。このようにねじ28でばね柱40の先端部をケース20に固定した場合、ばね柱40の安定性を高めることができる。ブラケット27は、例えば、使用者の腰ベルトに予め装着されたホルダに対して着脱可能な構成とすることができる。このような構成により、使用者の腰ベルト等に対して容易に巻尺1を取り付けて携帯することができる。なお、本例ではケース20の一方側(右半部22側)のみにブラケット27又はベルトクリップ等が取付けられる構成としているが、ケース20の他方側(左半部21側)のみにブラケット27又はベルトクリップ等を取り付ける構成としてもよいし、左右両側にブラケット27又はベルトクリップ等を取り付ける構成としてもよい。左右両側にブラケット27又はベルトクリップ等を取り付ける場合には、使用者が右利きの場合と左利きの場合とでベルトに対する装着方向を選択可能となるため、利便性が向上する。また、ケース20にブラケット27又はベルトクリップ等を取り付ける際には、本例のようにばね柱40にねじ28を締結してもよいし、ばね柱40以外の部分(ケース20等)にねじ28を締結するようにしてもよい。また、ねじ28等の締結具以外の方法でブラケット27又はベルトクリップ等をケース20に取り付けてもよい。
【0023】
図4に示すように、本例のばね柱40の中心軸(軸線B)は、ドラム10の中心軸(軸線A)に対して上方に偏心(変位)しているが、これに限られるものではなく、ドラム10とばね柱40との位置関係は適宜変更可能である。例えば、ばね柱40の中心軸(軸線B)が、ドラム10の中心軸(軸線A)に対して下方もしくは左右方向、または斜め方向に偏心しているような構成としてもよい。
【0024】
以上のように、本実施形態の巻尺1にあっては、ばね柱40の中心軸(軸線B)が、ドラム10の中心軸(軸線A)に対して偏心している。このような構成とすることにより、ケース20の内部に設けられる部品の配置に制約が少なくなり、各部品を最適な位置に配置し易くなる。また、本実施形態の巻尺1にあっては、ばね柱40の中心軸(軸線B)とドラム10の中心軸(軸線A)とを一致させる必要がないので、外観デザインの制約も少なくなり、外観デザインの自由度を向上させることができる。
【0025】
また、本実施形態の巻尺1にあっては、ばね柱40の中心軸(軸線B)が、ドラム収容部Sの中心軸(軸線A)に対して偏心していることが好ましい。このような構成により、ケース20内部の部品配置、及び外観デザインの制約をより低減することができる。
【0026】
ここで、本実施形態の巻尺1にあっては、ケース20の軸状凸部23にばね柱40の固定部41が埋め込まれており、固定部41の外形(最大径)は、軸状凸部23の直径よりも小さくなっている。そのため、軸状凸部23内に固定部41が収まる範囲であれば、ばね柱40の位置は適宜変更することができる。ばね柱40を配置可能な範囲を大きく確保するため、軸状凸部23の直径は可能な限り大きい方が好ましく、また、固定部41の直径は可能な限り小さい方が好ましい。
【0027】
図5は、ドラム10及びゼンマイばね30の関係に基づく、ばね柱40の配置可能な範囲を示している。図5に示すように、ドラム10の周壁12の内周面に対してゼンマイばね30の外周縁部が当接する範囲まで、ばね柱40の中心軸(軸線B)をドラム10の中心軸(軸線A)から偏心させることができ、当該範囲内であれば、ゼンマイばね30の巻き戻しトルク(復元力)の低下を伴うこともない。なお、図5に示すゼンマイばね30の外形は、ゼンマイばね30の直径が最小となる状態(完全に巻き締められた状態)を示している。
【0028】
また、本実施形態の巻尺1にあっては、ケース20の内面に軸状凸部23が設けられており、ばね柱40の中心軸(軸線B)は、軸状凸部23の中心軸(軸線A)に対して偏心している。このような構成により、ケース20内でのドラム10の位置が安定するため、ばね柱40の中心軸(軸線B)がドラム10の中心軸(軸線A)から偏心した状態で安定し易くなる。
【0029】
以上、図示例に基づき説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができるものである。例えば、先の実施形態においては、ケース20が左右方向の中心位置で2分割される構成であったが、ケース20の分割位置は図示例に限定されず、適宜変更可能である。また、ケース20には、メジャーテープ11の巻き戻しを抑制するロックボタン25が設けられていなくてもよい。
【0030】
また、先の実施形態では、長尺体巻取装置としての巻尺1を例に説明したが、ドラムに巻き付けた帯状またはひも状等の長尺体を繰り出し、且つ、ゼンマイばねでドラムを巻き戻すものであれば、巻尺1以外の物品にも適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1:巻尺(長尺体巻取装置)
10:ドラム
11:メジャーテープ(長尺体)
12:周壁
13、14:側壁
15、16:貫通孔(軸受凹部)
20:ケース
21:左半部
22:右半部
23:軸状凸部
24:円弧状内面領域
25:ロックボタン
26:窓孔
27:ブラケット
28:ねじ
30:ゼンマイばね
40:ばね柱
41:固定部
42:軸部
43:溝
A:軸線(ドラムの中心軸)
B:軸線(ばね柱の中心軸)
S:ドラム収容部
図1
図2
図3
図4
図5