IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スライブ バイオサイエンス, インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】液体移送システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/26 20060101AFI20230829BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230829BHJP
   B01L 1/00 20060101ALI20230829BHJP
   B01L 3/02 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
C12M1/26
C12M1/00 C
B01L1/00 C
B01L3/02 D
【請求項の数】 59
(21)【出願番号】P 2019563598
(86)(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 US2018033350
(87)【国際公開番号】W WO2018213682
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-05-17
(31)【優先権主張番号】62/508,883
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518155982
【氏名又は名称】スライブ バイオサイエンス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ブランチャード, アラン
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0283884(US,A1)
【文献】米国特許第05779984(US,A)
【文献】米国特許第06117394(US,A)
【文献】国際公開第2016/161163(WO,A2)
【文献】特開2010-156545(JP,A)
【文献】米国特許第04877585(US,A)
【文献】特開平08-219956(JP,A)
【文献】特開平04-045856(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106311369(CN,A)
【文献】特開2000-140655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
C12Q
G01N
B01L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペットチップであって、
内部容積を画定し、第1の端部と、第2の端部とを有する、本体であって、前記第1の端部は、前記ピペットチップの中および外に液体を通過させるように配列され、前記第2の端部は、ピペットへの取り付けのために配列される、本体と、
前記本体に密閉して取り付けられる、ブラダであって、前記ブラダは、前記内部容積内に配置された圧潰された構成の膜嚢であって、前記嚢を横断して印加される圧力勾配に応答して、所定の体積の液体を、前記第1の端部を通して前記嚢の中に引き込み、かつそこから排出するように配列される、膜嚢を含む、ブラダと、
前記ピペットの前記本体内の、印加される圧力に応答して前記ブラダを受容するピペットシェルであって、前記ピペットシェルはピペットシェル本体を含み、前記ブラダは前記印加される圧力に応答して前記ピペットシェル本体に引き込まれるように構成され、前記ピペットシェルは堅性な材料で作製される、ピペットシェルと
を備える、ピペットチップ。
【請求項2】
前記ブラダは、前記本体の内部容積内に配置可能である、請求項1に記載のピペットチップ。
【請求項3】
前記ブラダは、第1の側と、第2の側とを有し、前記第1の側は、前記ピペットチップ本体の第1の端部に面し、前記負の圧力勾配は、前記第2の側で真空引きすることによって生成される、請求項1に記載のピペットチップ。
【請求項4】
前記ブラダは、前記本体の第1および第2の端部の一方において前記本体に取り付けられる、請求項1に記載のピペットチップ。
【請求項5】
前記ブラダは、前記本体の第1の端部と第2の端部との間の場所において前記本体に取り付けられる、請求項1に記載のピペットチップ。
【請求項6】
前記ピペットシェルが、前記ピペットチップ本体に除去可能に取り付け可能である、請求項に記載のピペットチップ。
【請求項7】
前記ブラダは、少なくとも部分的に前記内部容積の外側に配置されるように膨張可能である、請求項1に記載のピペットチップ。
【請求項8】
前記ピペットシェルが、前記ブラダの容積と少なくとも等しい容積を有する、請求項に記載のピペットチップ。
【請求項9】
前記ブラダは、前記ブラダの第1の側と前記本体の第1の端部との間に画定される第1のコンパートメントを、前記ブラダの第2の側と前記ピペットとの間に画定される第2のコンパートメントから密閉する、請求項1に記載のピペットチップ。
【請求項10】
前記ブラダは、前記第1のコンパートメントの中に引き込まれた液体が前記第2のコンパートメントに入るのを妨げる、請求項に記載のピペットチップ。
【請求項11】
前記嚢は、その周囲において前記本体に恒久的に取り付けられる、請求項1に記載のピペットチップ。
【請求項12】
第2のピペットチップは、
第2の内部容積を画定し、第3の端部と、第4の端部とを有する、第2の本体であって、前記第3の端部は、前記第2のピペットチップの中および外に液体を通過させるように配列され、前記第4の端部は、ピペットへの取り付けのために配列される、第2の本体と、前記第2の本体に密閉して取り付けられる、第2のブラダと、
を備え、前記第1および第2のピペットチップは、入れ子式である、第2のピペットチップと組み合わせられる、請求項1に記載のピペットチップ。
【請求項13】
前記第2のブラダは、第2の内部容積内に配置可能である、請求項12に記載のピペットチップ。
【請求項14】
前記ピペットは、前記ピペットチップ本体の第2の端部に取り付けられる、ピペットと組み合わせられる、請求項1に記載のピペットチップ。
【請求項15】
第1の印加圧力に応答して、前記ブラダは、前記本体の第1の端部から離れる方向に移動し、前記ピペットチップの中に所定の体積の液体を引き込むように配列される、請求項1に記載のピペットチップ。
【請求項16】
第2の印加圧力に応答して、前記ブラダは、前記本体の第1の端部に向かった方向に移動し、前記ピペットチップの外に所定の体積の液体を移送するように配列される、請求項15に記載のピペットチップ。
【請求項17】
前記ピペットチップの中に引き込まれる前記液体の体積は、前記第1の印加圧力の大きさに比例する、請求項15に記載のピペットチップ。
【請求項18】
液体移送システムであって、
内部容積を画定し、第1の端部と、第2の端部とを有する、本体であって、前記第1の端部は、ピペットチップであって、前記ピペットチップの中および外に液体を通過させるように配列され、前記第2の端部は、ピペットへの取り付けのために配列される、本体と、前記本体に密閉して取り付けられる、ブラダとを有し、前記ブラダは、前記内部容積内に配置された圧潰された構成の膜嚢であって、前記嚢を横断して印加される圧力勾配に応答して、所定の体積の液体を、前記第1の端部を通して前記嚢の中に引き込み、かつそこから排出するように配列される、膜嚢を含む、ピペットチップと、
前記ピペットの前記本体内の、印加される圧力に応答して前記ブラダを受容するピペットシェルであって、前記ピペットシェルはピペットシェル本体を含み、前記ブラダは前記印加される圧力に応答して前記ピペットシェル本体に引き込まれるように構成され、前記ピペットシェルは堅性な材料で作製される、ピペットシェルと、
前記ピペットチップに取り付けられる、ピペットであって、前記ブラダを横断して圧力勾配を生成し、前記ピペットチップの中および外に所定の体積の液体を移送するように配列される、ピペットと、
を備える、液体移送システム。
【請求項19】
前記嚢は、前記本体の内部容積内に配置可能であり、それに恒久的に取り付けられる、請求項18に記載の液体移送システム。
【請求項20】
前記ブラダおよび前記内部容積の少なくとも一部は、所定の体積の液体を収容するように配列され、前記ブラダの第1の側は、収容される液体の体積に暴露される、請求項18に記載の液体移送システム。
【請求項21】
前記ブラダの第2の対向する側は、前記ピペットに暴露される、請求項20に記載の液体移送システム。
【請求項22】
前記ピペットシェルは、前記ピペットチップおよび前記ピペットチップ本体の一方に除去可能に取り付け可能である、請求項18に記載の液体移送システム。
【請求項23】
前記ピペットチップの第2の端部は、前記ピペットに取り付けられる、請求項18に記載の液体移送システム。
【請求項24】
前記ピペットチップは、前記ピペットへの圧入またスナッブ嵌合のうちの少なくとも1つにある、請求項23に記載の液体移送システム。
【請求項25】
ピペットチップであって、
内部容積を画定し、第1の端部と、第2の端部とを有する、本体であって、前記第1の端部は、前記ピペットチップの中および外に液体を通過させるように配列され、前記第2の端部は、ピペットへの取り付けのために配列される、本体と、
前記本体に密閉して取り付けられる、ブラダであって、前記ブラダは、前記内部容積内に配置された圧潰された構成の膜嚢であって、前記嚢を横断して印加される圧力勾配に応答して、所定の体積の液体を、前記第1の端部を通して前記嚢の中に引き込み、かつそこから排出するように配列される、膜嚢を含む、ブラダと、
前記ピペットの前記本体内の、印加される圧力に応答して前記ブラダを受容するピペットシェルであって、前記ピペットシェルはピペットシェル本体を含み、前記ブラダは前記印加される圧力に応答して前記ピペットシェル本体に引き込まれるように構成され、前記ピペットシェルは堅性な材料で作製される、ピペットシェルと、
を備える、ピペットチップ。
【請求項26】
前記嚢は、前記本体に恒久的に取り付けられる、請求項25に記載のピペットチップ。
【請求項27】
前記ブラダの第2の側は、前記ピペットチップに取り付け可能なピペットに暴露される、請求項26に記載のピペットチップ。
【請求項28】
前記ブラダは、前記ブラダの第1の側と前記本体の第1の端部との間に画定される第1のコンパートメントと、前記ブラダの第2の側と前記ピペットとの間に画定される第2のコンパートメントとの間にシールを提供する、請求項27に記載のピペットチップ。
【請求項29】
前記第2のコンパートメントは、前記ピペットチップの中に前記液体の体積を引き込むための第1の印加圧力、および前記ピペットチップから前記液体の体積を排出するための第2の印加圧力のうちの少なくとも一方を受容するように配列される、請求項28に記載のピペットチップ。
【請求項30】
前記第1の圧力は、前記ブラダに真空を印加する、負圧である、請求項29に記載のピペットチップ。
【請求項31】
前記第2の圧力は、正圧である、請求項29に記載のピペットチップ。
【請求項32】
前記液体の体積は、前記ブラダの容積と、前記本体の内部容積の少なくとも一部の容積との合計未満またはそれに等しい、請求項25に記載のピペットチップ。
【請求項33】
前記ピペットチップの中に引き込まれる前記液体の体積は、前記第1の印加圧力に比例し、前記ピペットチップから排出される前記液体の体積は、前記第2の印加圧力に比例する、請求項28に記載のピペットチップ。
【請求項34】
液体移送システムであって、
内部容積を画定し、第1の端部と、第2の端部とを有する、本体であって、前記第1の端部は、ピペットチップであって、前記ピペットチップの中および外に液体を通過させるように配列され、前記第2の端部は、マニピュレータへの取り付けのために配列される、本体と、前記本体に密閉して取り付けられる、ブラダとを有し、ここで、前記ブラダは、前記内部容積内に配置された圧潰された構成の膜嚢であって、前記嚢を横断して印加される圧力勾配に応答して、所定の体積の液体を、前記第1の端部を通して前記嚢の中に引き込み、かつそこから排出するように配列される、膜嚢を含む、ピペットチップと、
前記嚢を横断して圧力勾配を生成し、前記ピペットチップの中または外に液体の所定の体積を移送するように配列される、マニピュレータと、
前記ピペットの前記本体内の、印加される圧力に応答して前記ブラダを受容するピペットシェルであって、前記ピペットシェルはピペットシェル本体を含み、前記ブラダは前記印加される圧力に応答して前記ピペットシェル本体に引き込まれるように構成され、前記ピペットシェルは堅性な材料で作製される、ピペットシェルと、
を備える、液体移送システム。
【請求項35】
前記嚢は、前記本体に恒久的に取り付けられる、請求項34に記載の液体移送システム。
【請求項36】
前記ピペットチップは、前記マニピュレータに除去可能に取り付け可能である、請求項34に記載の液体移送システム。
【請求項37】
前記ピペットチップは、前記マニピュレータのへのスナッブ嵌合または圧入のうちの少なくとも1つにある、請求項36に記載の液体移送システム。
【請求項38】
前記マニピュレータは、前記ブラダに圧力を印加し、前記ピペットチップの本体の外に前記液体の体積の少なくとも一部を移送するように配列される、請求項34に記載の液体移送システム。
【請求項39】
内部容積を画定し、第3の端部と、第4の端部とを有する、第2の本体であって、前記第3の端部は、第2のピペットチップであって、前記第2のピペットチップの中および外に液体を通過させるように配列され、前記第4の端部は、マニピュレータへの取り付けのために配列される、第2の本体と、前記第2の本体に密閉して取り付けられる、第2のブラダとを有する、第2のピペットチップをさらに備える、請求項34に記載の液体移送システム。
【請求項40】
前記第2のブラダは、前記第2の本体の内部容積内に配置可能である、請求項39に記載の液体移送システム。
【請求項41】
前記マニピュレータは、前記第2のブラダを横断して圧力勾配を生成し、前記第2の本体の第3の端部の中および外に液体の第2の体積を移送するように配列される、請求項39に記載の液体移送システム。
【請求項42】
前記第1および第2の体積は、同一の細胞培養容器の外に移送される、請求項41に記載の液体移送システム。
【請求項43】
前記液体の第1の体積は、第1の細胞培養容器の外に移送され、前記液体の第2の体積は、第2の細胞培養培地の外に移送される、請求項41に記載の液体移送システム。
【請求項44】
細胞培養インキュベータであって、
1つまたはそれを上回る細胞培養容器内での細胞のインキュベーションのための内部チャンバを備える、インキュベータキャビネットと、
外部環境から前記内部チャンバへの、ドア開口部と、
前記内部チャンバ内の前記細胞を撮像するように配列される、撮像機と、
前記内部チャンバ内の前記1つまたはそれを上回る細胞培養容器内の前記細胞を操作するための、マニピュレータであって、前記内部チャンバ内の前記1つまたはそれを上回る細胞培養容器の中または外に前記細胞を含む培地の第1の体積を移送するように構成される、少なくとも1つのピペットを備える、マニピュレータと、
前記ピペットと流体連通しているピペットチップであって、内部容積を画定し、第1の端部と、第2の端部とを有する、本体であって、前記第1の端部は、前記ピペットチップの中および外に所定の体積の液体を移送するように配列され、前記第2の端部は、マニピュレータへの取り付けのために配列される、本体と、前記本体に密閉して取り付けられる、ブラダとを有し、ここで、前記ブラダは、前記内部容積内に配置された圧潰された構成の膜嚢であって、前記嚢を横断して印加される圧力勾配に応答して、所定の体積の液体を、前記第1の端部を通して前記嚢の中に引き込み、かつそこから排出するように配列される、膜嚢を含む、ピペットチップと、
前記ピペットの前記本体内の、印加される圧力に応答して前記ブラダを受容するピペットシェルであって、前記ピペットシェルはピペットシェル本体を含み、前記ブラダは前記印加される圧力に応答して前記ピペットシェル本体に引き込まれるように構成され、前記ピペットシェルは堅性な材料で作製される、ピペットシェルと、
前記内部チャンバ内の場所間で、前記1つまたはそれを上回る細胞培養容器を移動させるための、細胞培養容器移送デバイスと、
を備え、前記マニピュレータは、前記ブラダに圧力を印加し、前記ピペットチップの中または外に前記細胞を含む培地の第1の体積を移送する、細胞培養インキュベータ。
【請求項45】
前記マニピュレータは、前記ブラダに第1の圧力を印加し、前記本体の第1の端部から離れる方向に前記ブラダを移動させ、前記ピペットチップの中に前記培地の第1の体積を移送する、請求項44に記載の細胞培養インキュベータ。
【請求項46】
前記嚢は、前記本体に恒久的に取り付けられる、請求項44に記載の細胞培養インキュベータ。
【請求項47】
前記ピペットチップの中または外に移送される前記培地の第1の体積は、前記ブラダに印加される前記圧力の大きさに比例する、請求項46に記載の細胞培養インキュベータ。
【請求項48】
前記マニピュレータは、前記ブラダに第2の圧力を印加し、前記本体の第1の端部に向かう方向に前記ブラダを移動させ、前記ピペットチップの外に前記培地の第1の体積を排出する、請求項47に記載の細胞インキュベータ。
【請求項49】
前記内部チャンバ内の前記1つまたはそれを上回る細胞培養容器の中もしくは外に、細胞を含む培地の第2の体積を移送するための第2のピペットチップであって、前記第2のチップは、内部容積を画定し、第3の端部と、第4の端部とを有する、第2の本体であって、前記第3の端部は、前記第2のピペットチップの中および外に液体を移送するように配列され、前記第4の端部は、マニピュレータへの取り付けのために配列される、第2の本体と、前記本体に密閉して取り付けられる、第2のブラダとを有する、第2のピペットチップをさらに備える、請求項44に記載の細胞培養インキュベータ。
【請求項50】
前記第2のブラダは、前記第2の本体の内部容積内に配置可能である、請求項49に記載の細胞培養インキュベータ。
【請求項51】
前記第1および第2の体積は、前記同一の細胞培養容器の外に移送される、請求項49に記載の細胞培養インキュベータ。
【請求項52】
前記第1の体積は、第1の細胞培養容器の外に移送され、前記第2の体積は、前記第2の細胞培養容器の外に移送される、請求項49に記載の細胞培養インキュベータ。
【請求項53】
ピペットチップを分与するためのカートリッジであって、
筐体と、
前記筐体内に配置される、2つまたはそれを上回るピペットチップであって、前記ピペットチップはそれぞれ、内部容積を画定し、第1の端部と、第2の端部とを有する、本体であって、前記第1の端部は、前記ピペットチップの中および外に液体を通過させるように配列され、前記第2の端部は、ピペットへの取り付けのために配列される、本体と、前記本体に密閉して取り付けられる、ブラダとを含み、前記2つまたはそれを上回るピペットチップは、入れ子式であり、ここで、前記ブラダは、前記内部容積内に配置された圧潰された構成の膜嚢であって、前記嚢を横断して印加される圧力勾配に応答して、所定の体積の液体を、前記第1の端部を通して前記嚢の中に引き込み、かつそこから排出するように配列される、膜嚢を含む、2つまたはそれを上回るピペットチップと、
前記ピペットの前記本体内の、印加される圧力に応答して前記ブラダを受容するピペットシェルであって、前記ピペットシェルはピペットシェル本体を含み、前記ブラダは前記印加される圧力に応答して前記ピペットシェル本体に引き込まれるように構成され、前記ピペットシェルは堅性な材料で作製される、ピペットシェルと、
を備える、カートリッジ。
【請求項54】
前記2つまたはそれを上回るピペットチップは、第1のピペットチップと、第2のピペットチップとを含み、前記第1のピペットチップは、前記第2のピペットチップの上部で入れ子になっている、請求項53に記載のカートリッジ。
【請求項55】
前記第1のピペットチップの本体は、前記第1のピペットチップが前記第2のピペットチップ上にスタックされると、前記第2のピペットチップのブラダに隣接する、請求項54に記載のカートリッジ。
【請求項56】
ピペットチップの中または外に所定の体積の液体を移送する方法であって、
請求項1に記載のピペットチップのブラダを横断して第1の圧力勾配を印加するステップであって、所定の体積の液体を前記本体の第1の端部を介して前記ピペットチップの中に引き込ませるステップを含む、方法。
【請求項57】
前記ピペットチップのブラダを横断して第2の圧力勾配を印加するステップであって、所定の体積の液体を前記本体の第1の端部を介して前記ピペットチップから排出させるステップをさらに含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記第1の圧力勾配を印加するステップは、前記第1の端部から前記第2の端部に向かってかつ前記ブラダを横断して指向される、負の圧力勾配を印加することを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記第2の圧力勾配を印加するステップは、前記第1の端部から前記第1の端部に向かってかつ前記ブラダを横断して指向される、正の圧力勾配を印加するステップを含む、請求項57に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年5月19日に出願された「LIQUID TRANSFER SYSTEM」と題する米国仮出願番号第62/508,883号に基づく米国特許法第119条(e)項の下の利益を主張しており、この仮出願は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
分野
種々の側面は、ピペットチップの中および外に所定の体積の液体を移送するためのシステムを使用するための、液体移送システムおよび方法に関する。いくつかの側面は、細胞培養インキュベータ内でそのような液体移送システムを使用することと、そのようなインキュベータを使用するための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
ピペットは、細胞培養容器間で細胞を含む培地を移送する等、所定の体積の液体を移送するために使用される。細胞培養は、研究および臨床状況の両方において有用な技法である。例えば、哺乳類細胞の培養は、多くの場合、クローン細胞株の確立、組織調製、インビトロ受精調製、または幹細胞の集団の増殖のために実施される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
要旨
現在利用可能なピペットチップは、ピペットチップ内のサンプルの中に汚染物質をもたらし得る。例えば、ピペットチップは、多数のピペットチップの中および外に多くの異なるサンプルを移送するために使用される、ピペットに隣接する端部において開放しているため、相互汚染が、生じ得る。細胞培養においてそのようなピペットチップを使用する実施形態では、これは、培養効率および再現性を低下させ得る。加えて、伝統的なピペットチップは、単回使用のみのために設計されるため、大量の廃棄物(例えば、大量の使用済みチップ)が、インキュベータ内で実施されている細胞培養等の実験の間に結果として生じ得る。単回使用ピペットチップはまた、貯蔵のための広い面積を必要とし得る。したがって、いくつかの側面によると、本書は、相互汚染を最小限にさせる、またはさらに排除し、また、廃棄物ならびに/もしくは貯蔵空間を低減させるように配列されるピペットチップを有する、液体移送システムを提供する。
【0004】
一側面によると、本書は、内部容積を画定し、第1の端部と、第2の端部とを有する、本体であって、第1の端部は、ピペットチップの中および外に液体を通過させるように配列され、第2の端部は、ピペットへの取り付けのために配列される、本体と、本体に密閉して取り付けられる、ブラダ(bladder)とを伴う、ピペットチップを提供する。いくつかの実施形態では、ブラダは、本体の内部容積内に配置可能である。いくつかの実施形態では、ブラダの第1の側は、所定の体積の収容される液体に暴露される。そのような実施形態では、第2の対向する側は、ピペットに暴露されてもよい。いくつかの実施形態では、ブラダは、本体の第2の端部に取り付けられてもよい。ブラダはまた、第1の端部または第1の端部と第2の端部との間の場所に取り付けられてもよい。
【0005】
いくつかの実施形態では、ブラダは、所定の体積の液体または液体の上方の所定の体積の空気(例えば、所定の体積の液体を移動させるために使用される空気)をピペットチップ内に収容するように配列される。いくつかの実施形態によると、ブラダは、操作(例えば、移動、後退、膨張、収縮、および/または伸展)され、ピペットチップの中もしくは外に所定の体積の液体を移送する。例えば、ある圧力が、ブラダを操作するようにブラダに印加されてもよい。いくつかの実施形態では、ブラダは、印加圧力に応答して前後に移動するように配列される。例えば、ブラダは、少なくとも部分的にピペットチップ本体の外側に後退され、負圧に応答してピペットチップの中に所定の体積の液体を引き込んでもよい。正圧に応答して、ブラダは、ピペットチップの中に(例えば、ピペットチップ本体の内部容積の中に)後退され、ピペットチップから液体の体積の少なくとも一部を排出してもよい。他の実施形態では、ブラダは、印加圧力に応答して膨張および収縮するように構成される。ブラダはまた、印加圧力に応答して伸展するように配列されてもよい。
【0006】
いくつかの実施形態では、負圧は、ブラダに印加される真空を作成する。例えば、負圧差が、コンテナ内の空気圧(例えば、チップ内の空気圧)と環境の空気圧との間に作成され得る。そのような実施形態では、圧力差、すなわち、圧力勾配が、ブラダを横断して印加されてもよい。
【0007】
一側面によると、ブラダは、液体の体積を収容するように配列される、膜嚢を含む。いくつかの実施形態では、ブラダは、定形の膜嚢が、チップの中に折曲される、ピペットチップの本体内に配置可能である。例えば、ブラダは、膜嚢が第2の端部または第1の端部と第2の端部との間の場所から第1の端部に向かって拡張するように、ピペットチップ内に配置されてもよい。
【0008】
他の実施形態では、ブラダは、平面膜を含む。いくつかの実施形態では、平面膜は、膜嚢の未定形の状態を含んでもよい。例えば、エラストマ膜が、膜が静置状態の平面構成を有する、チップ内に配置されてもよい。いったんある圧力(例えば、負圧)が膜に印加されると、膜は、膜が液体の体積を収容し得る膜嚢を形成するように、伸展および/または膨張されてもよい。他の実施形態では、平面膜は、膨張および収縮することなく、印加圧力に応答して単に前後に移動してもよい。理解されるように、平面膜を作成するために使用される材料に応じて、膜の少なくとも一部(例えば、膜の中心部分)が、重力に応答して、膜を通して延在する平面の下方に(例えば、わずかにピペットチップの第1の端部に向かって)落下し、凹面形配列を形成してもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、ピペットチップは、ブラダの容積と、ピペットチップの本体の内部容積の容積との合計未満またはそれに等しい、体積液体を収容するように配列される。理解されるように、収容される液体の体積は、ブラダの容積によって限定されてもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、ブラダの容積は、膜嚢によって画定される容積を含む。いくつかの実施形態では、ブラダは、ブラダが膜嚢の容積を越えて膨張することを可能にする材料で形成される。そのような実施形態では、ブラダの容積はまた、膨張されるブラダ(例えば、ブラダの中に液体を単に引き込むために必要とされるものを上回る、印加圧力の後のブラダ)の容積を含んでもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、ブラダは、ピペットチップ本体(例えば、本体の第2の端部)に恒久的に取り付けられる。他の実施形態では、ブラダは、ピペットチップ本体に除去可能に取り付けられてもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、ピペットチップの第2の端部は、ピペットに隣接する。いくつかの実施形態では、ブラダ(例えば、定形の膜嚢または平面膜)は、第2の端部に位置付けられる。いくつかの実施形態では、膜嚢は、本体の第2の端部から本体の第1の端部に向かって拡張する。
【0013】
いくつかの実施形態では、ピペットチップは、再利用可能である。ピペットチップはまた、チップが単回の液体移送のためにのみ使用されるように使い捨てであってもよい。これらの状況では、ピペットチップは、ピペットに除去可能に取り付けられてもよい。
【0014】
さらに別の側面に従って、本書は、内部容積を画定し、第1の端部と、第2の端部とを有する、本体であって、第1の端部は、ピペットチップの中および外に液体を通過させるように配列され、第2の端部は、ピペットへの取り付けのために配列される、本体と、本体に密閉して取り付けられる、ブラダとを有するピペットチップを含む、液体移送システムを提供する。いくつかの実施形態では、ブラダは、内部容積内に配置可能である。本システムはまた、ピペットチップに取り付けられるピペットであって、ブラダを横断して圧力勾配を生成し、ピペットチップの中および外に所定の体積の液体を移送するように配列される、ピペットを含んでもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、ピペットチップの中に引き込まれる(またはそれから排出される)液体の体積は、第1の印加圧力に依存する。例えば、ピペットチップの中に引き込まれる(またはその外に分与される)液体の体積は、(例えば、コンテナ内の空気と環境との間の)圧力差の大きさおよび印加圧力の持続時間に基づいてもよい。理解されるように、ピペットチップによって収容される液体の体積は、ピペットチップ本体の容積と、ブラダの容積との合計によって限定される。
【0016】
いくつかの実施形態では、ブラダは、印加圧力に応答して、ピペットの本体の中に後退(例えば、部分的に後退)、膨張、または伸展されてもよい。そのような実施形態では、ピペット本体の容積は、膜の容積(例えば、ブラダおよび/または隔膜の容積)を上回るもしくはそれに等しくあり得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、ピペット本体は、(例えば、液体または空気等の流体を介して)ピペットチップに圧力を印加する、ポンプを含む。他の実施形態では、ピペットは、弁およびポンプを介してピペットチップに圧力(例えば、負圧)を印加する、流体導管に接続される。理解されるように、流体導管は、流体供給部(例えば、空気または液体供給部)に接続されてもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、ピペットは、ピペット本体の内側に配置され、ピペットチップからピペット本体を分離する、ピペットシェルを含む。理解されるように、そのような実施形態では、ピペットシェルはさらに、ピペットとピペットチップの中に引き込まれている液体との間の相互汚染を最小限にし得る。いくつかの実施形態では、ピペットシェルは、使い捨てである。他の実施形態では、ピペットシェルは、再利用可能であってもよい。
【0019】
さらに別の側面によると、本書は、内部容積を画定し、第1の端部と、第2の端部とを有する、本体であって、第1の端部は、ピペットチップの中および外に液体を通過させるように配列され、第2の端部は、ピペットへの取り付けのために配列される、本体と、本体に密閉して取り付けられる、ブラダとを含む、ピペットチップを提供する。いくつかの実施形態では、ブラダは、本体の内部容積内に配置可能である。ブラダおよび内部容積の少なくとも一部は、所定の体積の流体を収容するように配列される。
【0020】
いくつかの実施形態では、液体の体積は、ブラダの容積と、本体の容積との合計未満またはそれに等しい。いくつかの実施形態では、ブラダは、本体を第1および第2のコンパートメントに分割する。第1のコンパートメントは、第1の端部と流体連通してもよく、第2のコンパートメントは、第2の端部と流体連通してもよい。第2のコンパートメントは、本体の中に所定の体積の液体を引き込むための第1の印加圧力、およびピペットチップから液体の体積を排出するための第2の印加圧力のうちの少なくとも一方を受容するように配列されてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、ブラダは、印加圧力に応答して伸展され、所定の体積の液体を収容するための嚢を形成する、膜(例えば、エラストマ膜)を含む。
【0022】
別の側面によると、本書は、内部容積を画定し、第1の端部と、第2の端部とを有する、本体であって、第1の端部は、ピペットチップの中および外に液体を通過させるように配列され、第2の端部は、ピペットへの取り付けのために配列される、本体と、本体に密閉して取り付けられる、ブラダとを有するピペットチップを含む、液体移送システムを提供する。いくつかの実施形態では、ブラダは、本体の内部容積内に配置可能である。本システムはまた、ブラダを横断して圧力勾配を生成し、ピペットチップの中または外に液体の第1の体積を移送するように配列される、マニピュレータを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、印加圧力に応答して、ブラダは、少なくとも部分的にマニピュレータの内部容積の中に後退される。そのような実施形態では、圧力は、負圧であり、ブラダは、ピペットの本体の中に所定の体積の液体を引き込むように後退する。いくつかの実施形態では、マニピュレータは、ブラダに空気圧を印加し、ピペットチップの外に液体の体積の一部を移送するように配列される。そのような実施形態では、ブラダは、本体の中に移動される。
【0024】
ピペットチップは、マニピュレータに除去可能に取り付け可能であってもよい。マニピュレータは、マルチチップピペットを含んでもよい。ピペットシェルは、ピペットチップを取り付けるステップに先立って、マニピュレータに取り付けられてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、本システムは、内部容積を画定し、第3および第4の端部を伴う第2の本体を有する、第2のピペットチップであって、第3の端部は、本体の中および外に流体を移送するように配列され、第4の端部は、マニピュレータへの取り付けのために配列される、第2のピペットチップと、第2の本体の内部容積に密閉して取り付けられる、第2のブラダとを含む。いくつかの実施形態では、ブラダは、第2の本体内に配置可能である。そのような実施形態では、マニピュレータはまた、第2のブラダに圧力を印加し、ピペットチップの第3の端部の中または外に液体の第2の体積を移送するように配列されてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、第1および第2のピペットチップは、同一の細胞培養容器から、それぞれ、第1および第2の体積を移送するように構成される。他の実施形態では、第1および第2のピペットチップは、それぞれ、第1および第2の細胞培養容器から第1および第2の体積を移送する。
【0027】
いくつかの実施形態では、システムは、本書に説明されるようなピペットチップを有する、(例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれを上回る)2つを上回るピペットを含む。
【0028】
別の側面によると、本書は、1つまたはそれを上回る細胞培養容器内での細胞のインキュベーションのための内部チャンバと、外部環境から該内部チャンバへの、ドア開口部と、内部チャンバ内の細胞を撮像するように配列される、撮像機と、内部チャンバ内の1つまたはそれを上回る細胞培養容器内の細胞を操作するための、マニピュレータであって、内部チャンバ内の1つまたはそれを上回る細胞培養容器の中もしくは外に細胞を含む培地の第1の体積を移送するように構成される、少なくとも1つのピペットを備える、マニピュレータと、ピペットと流体連通しているピペットチップであって、内部容積を画定し、第1の端部と、第2の端部とを有する、本体であって、第1の端部は、ピペットチップの中および外に所定の体積の液体を移送するように配列され、第2の端部は、マニピュレータへの取り付けのために配列される、本体と、ピペットチップに密閉して取り付けられる、ブラダとを有する、ピペットチップと、内部チャンバ内の場所間で1つまたはそれを上回る細胞培養容器を移動させるための、細胞培養容器移送デバイスとを有する、細胞インキュベータを提供する。マニピュレータは、ブラダに圧力を印加し、ピペットチップの中または外に、細胞を含む培地の第1の体積を移送する。いくつかの実施形態では、培地の第1の体積は、印加圧力に比例する。いくつかの実施形態では、ブラダは、ピペットチップの内部容積内に配置可能である。
【0029】
いくつかの実施形態では、ピペットは、ピペットチップのブラダに圧力を印加し、ピペットチップの中に培地の第1の体積を引き込む。いくつかの実施形態では、印加圧力は、ブラダに真空を印加する、負圧である。
【0030】
いくつかの実施形態では、インキュベータは、内部チャンバ内の1つまたはそれを上回る細胞培養容器の中もしくは外に細胞を含む培地の第2の体積を移送するための、第2のピペットを含む。第2のピペットチップは、第2のピペットと併用されてもよい。第2のチッブは、内部容積を画定し、第3の端部と、第4の端部とを有する、本体であって、第3の端部は、ピペットチップの中および外に液体を移送するように配列され、第4の端部は、ピペット等のマニピュレータへの取り付けのために配列される、本体を有してもよい。いくつかの実施形態では、第2のブラダは、第2の本体の内部容積内に配置可能である。いくつかの実施形態では、ブラダは、第4の端部または第3の端部と第4の端部との間の場所から第3の端部に向かって拡張する、膜嚢を含む。いくつかの実施形態では、第4の端部は、マニピュレータに取り付けられる。いくつかの実施形態では、インキュベータは、そのそれぞれが、本書に説明されるようなピペットチップと併用され得る、2つを上回る(例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれを上回る)ピペットを含む。
【0031】
そのような実施形態では、第1および第2のピペットチップは、同一の細胞培養容器の外に、それぞれ、第1および第2の体積を移送するように構成されてもよい。他の実施形態では、第1および第2のチップは、それぞれ、第1および第2の細胞培養容器の外に第1および第2の体積を移送するように構成される。
【0032】
別の側面によると、本書は、他のピペットチップと入れ子式であり得る、ピペットチップを提供する。いくつかの実施形態では、入れ子になっているピペットチップは、カートリッジ内にコンパクトに貯蔵され得る。いくつかの実施形態では、ピペットチップは、カートリッジを介してピペット上に直接装填されてもよい。
【0033】
さらに別の側面によると、本書は、ピペットチップを分与するための、カートリッジを提供する。いくつかの実施形態では、カートリッジは、筐体と、2つまたはそれを上回るピペットチップとを含む。各ピペットチップは、内部容積を画定し、第1の端部と、第2の端部とを有する、本体であって、第1の端部は、ピペットチップの中および外に液体を通過させるように配列され、第2の端部は、ピペットへの取り付けのために配列される、本体と、本体に密閉して取り付けられる、ブラダとを含む。2つまたはそれを上回るピペットチップは、入れ子式である。いくつかの実施形態では、ブラダは、内部容積内に配置可能である。
【0034】
別の側面によると、本書は、内部容積を画定し、第1の端部と、第2の端部とを有する、本体であって、第1の端部は、ピペットチップの中および外に液体を通過させるように配列され、第2の端部は、ピペットへの取り付けのために配列される、本体と、本体に密閉して取り付けられる、ブラダとを有する、ピペットチップの中または外に所定の体積の液体を移送する方法を提供する。本方法は、ピペットチップのブラダを横断して第1の圧力勾配を印加し、所定の体積の液体を本体の第1の端部を介してピペットチップの中に引き込ませる。
【0035】
前述の概念および以下に議論される付加的概念は、任意の好適な組み合わせで配列されてもよく、本開示は、本点において限定されないことを理解されたい。
【0036】
本教示の前述および他の側面、実施形態、ならびに特徴は、付随の図面と併せて以下の説明からより完全に理解されることができる。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
ピペットチップであって、
内部容積を画定し、第1の端部と、第2の端部とを有する、本体であって、前記第1の端部は、前記ピペットチップの中および外に液体を通過させるように配列され、前記第2の端部は、ピペットへの取り付けのために配列される、本体と、
前記本体に密閉して取り付けられる、ブラダと、
を備える、ピペットチップ。
(項目2)
前記ブラダは、前記本体の内部容積内に配置可能である、項目1に記載のピペットチップ。
(項目3)
前記ブラダは、所定の体積の液体を、前記ブラダを横断して印加される圧力勾配に応答して、前記第1の端部を通して前記内部容積の中に引き込ませるか、またはそれから排出させるように配列される、項目1に記載のピペットチップ。
(項目4)
前記ブラダは、所定の体積の液体が、前記第1の端部から前記第2の端部に向かってかつ前記ブラダを横断して指向される、負の圧力勾配に応答して、前記第1の端部を通して前記内部容積の中に引き込まれることを可能にするように配列され、前記ブラダは、所定の体積の液体が、前記第1の端部から前記第2の端部に向かってかつ前記ブラダを横断して指向される、正の圧力勾配に応答して、前記第1の端部を通して前記内部容積から排出されることを可能にするように配列される、項目1に記載のピペットチップ。
(項目5)
前記ブラダは、第1の側と、第2の側とを有し、前記第1の側は、前記本体の第1の端部に面し、前記負の圧力勾配は、前記第2の側で真空引きすることによって生成される、項目4に記載のピペットチップ。
(項目6)
前記ブラダは、前記本体の第1および第2の端部の一方において前記本体に取り付けられる、項目1に記載のピペットチップ。
(項目7)
前記ブラダは、前記本体の第1の端部と第2の端部との間の場所において前記本体に取り付けられる、項目1に記載のピペットチップ。
(項目8)
前記ブラダは、膜嚢を含む、項目1に記載のピペットチップ。
(項目9)
前記膜嚢が圧潰された構成であるとき、前記ブラダは、前記内部容積内に配置される、項目8に記載のピペットチップ。
(項目10)
前記膜嚢が膨張される構成にあるとき、前記ブラダは、少なくとも部分的に前記内部容積の外側に配置される、項目8に記載のピペットチップ。
(項目11)
前記ブラダは、平面膜を含む、項目1に記載のピペットチップ。
(項目12)
前記ブラダは、前記ブラダの第1の側と前記本体の第1の端部との間に画定される第1のコンパートメントと、前記ブラダの第2の側と前記ピペットとの間に画定される第2のコンパートメントとの間にシールを提供する、項目1に記載のピペットチップ。
(項目13)
前記ブラダは、液体が前記第1のコンパートメントの中に引き込まれる間、シールを提供する、項目12に記載のピペットチップ。
(項目14)
前記ブラダは、前記ブラダの周囲において前記本体に取り付けられる、項目1に記載のピペットチップ。
(項目15)
第2のピペットチップは、
第2の内部容積を画定し、第3の端部と、第4の端部とを有する、第2の本体であって、前記第3の端部は、前記第2のピペットチップの中および外に液体を通過させるように配列され、前記第4の端部は、ピペットへの取り付けのために配列される、第2の本体と、前記第2の本体に密閉して取り付けられる、第2のブラダと、
を備え、前記第1および第2のピペットチップは、入れ子式である、第2のピペットチップと組み合わせられる、項目1に記載のピペットチップ。
(項目16)
前記第2のブラダは、第2の内部容積内に配置可能である、項目15に記載のピペットチップ。
(項目17)
前記第1のピペットチップは、前記第2のピペットチップの上部で入れ子になっている、項目15に記載の組み合わせ。
(項目18)
前記第1のピペットチップが前記第2のピペットチップの上部で入れ子になっているとき、前記第2のブラダは、前記第1のピペットチップの本体に隣接する、項目17に記載の組み合わせ。
(項目19)
前記入れ子になっているピペットチップは、カートリッジの中に収容される、項目17に記載の組み合わせ。
(項目20)
前記ピペットは、前記ピペットチップ本体の第2の端部に取り付けられる、ピペットと組み合わせられる、項目1に記載のピペットチップ。
(項目21)
前記ピペットチップは、スナップ嵌合または圧入取り付けを介して前記ピペットに取り付けられる、項目20に記載の組み合わせ。
(項目22)
第1の印加圧力に応答して、前記ブラダは、前記本体の第1の端部から離れる方向に移動し、前記ピペットチップの中に所定の体積の液体を引き込むように配列される、項目1に記載のピペットチップ。
(項目23)
第2の印加圧力に応答して、前記ブラダは、前記本体の第1の端部に向かった方向に移動し、前記ピペットチップの外に所定の体積の液体を移送するように配列される、項目22に記載のピペットチップ。
(項目24)
第1の印加圧力に応答して、前記ブラダの少なくとも一部が、所定の体積の液体を収容するように配列される、項目22に記載のピペットチップ。
(項目25)
前記ピペットチップの中に引き込まれる前記液体の体積は、前記第1の印加圧力の大きさに比例する、項目22に記載の液体移送デバイス。
(項目26)
液体移送システムであって、
内部容積を画定し、第1の端部と、第2の端部とを有する、本体であって、前記第1の端部は、前記ピペットチップの中および外に液体を通過させるように配列され、前記第2の端部は、ピペットへの取り付けのために配列される、本体と、前記本体に密閉して取り付けられる、ブラダとを有する、ピペットチップと、
前記ピペットチップに取り付けられる、ピペットであって、前記ブラダを横断して圧力勾配を生成し、前記ピペットチップの中および外に所定の体積の液体を移送するように配列される、ピペットと、
を備える、液体移送システム。
(項目27)
前記ブラダは、前記本体の内部容積内に配置可能である、項目26に記載の液体移送システム。
(項目28)
前記ブラダおよび前記内部容積の少なくとも一部は、所定の体積の液体を収容するように配列され、前記ブラダの第1の側は、収容される液体の体積に暴露される、項目26に記載の液体移送システム。
(項目29)
前記ブラダの第2の対向する側は、前記ピペットに暴露される、項目28に記載の液体移送システム。
(項目30)
前記ピペットの本体内に配置される、ピペットシェルをさらに備える、項目26に記載の液体移送システム。
(項目31)
前記ピペットシェルは、前記ピペットチップおよび前記ピペットの一方に除去可能に取り付け可能である、項目30に記載の液体移送システム。
(項目32)
前記ピペットチップの第2の端部は、前記ピペットに取り付けられる、項目26に記載の液体移送システム。
(項目33)
前記ピペットチップは、前記ピペットへの圧入またスナッブ嵌合のうちの少なくとも1つにある、項目32に記載の液体移送システム。
(項目34)
ピペットチップであって、
内部容積を画定し、第1の端部と、第2の端部とを有する、本体であって、前記第1の端部は、前記ピペットチップの中および外に液体を通過させるように配列され、前記第2の端部は、ピペットへの取り付けのために配列される、本体と、
前記本体に密閉して取り付けられる、ブラダとを備え、前記ブラダおよび前記内部容積の少なくとも一部は、所定の体積の液体を収容するように配列される、
ピペットチップ。
(項目35)
前記ブラダは、前記本体の内部容積内に配置可能である、項目34に記載のピペットチップ。
(項目36)
前記ブラダの第1の側は、所定の体積の収容される液体に暴露される、項目34に記載のピペットチップ。
(項目37)
前記ブラダの第2の側は、前記ピペットチップに取り付け可能なピペットに暴露される、項目36に記載のピペットチップ。
(項目38)
前記ブラダは、前記ブラダの第1の側と前記本体の第1の端部との間に画定される第1のコンパートメントと、前記ブラダの第2の側と前記ピペットとの間に画定される第2のコンパートメントとの間にシールを提供する、項目37に記載のピペットチップ。
(項目39)
前記第2のコンパートメントは、前記ピペットチップの中に前記液体の体積を引き込むための第1の印加圧力、および前記ピペットチップから前記液体の体積を排出するための第2の印加圧力のうちの少なくとも一方を受容するように配列される、項目38に記載のピペットチップ。
(項目40)
前記第1の圧力は、前記ブラダに真空を印加する、負圧である、項目39に記載のピペットチップ。
(項目41)
前記第2の圧力は、正圧である、項目39に記載のピペットチップ。
(項目42)
前記液体の体積は、前記ブラダの容積と、前記本体の内部容積の少なくとも一部の容積との合計未満またはそれに等しい、項目34に記載のピペットチップ。
(項目43)
前記ピペットチップの中に引き込まれる前記液体の体積は、前記第1の印加圧力に比例し、前記ピペットチップから排出される前記液体の体積は、前記第2の印加圧力に比例する、項目38に記載のピペットチップ。
(項目44)
液体移送システムであって、
内部容積を画定し、第1の端部と、第2の端部とを有する、本体であって、前記第1の端部は、前記ピペットチップの中および外に液体を通過させるように配列され、前記第2の端部は、マニピュレータへの取り付けのために配列される、本体と、前記本体に密閉して取り付けられる、ブラダとを有する、ピペットチップと、
前記ブラダを横断して圧力勾配を生成し、前記ピペットチップの中または外に液体の第1の体積を移送するように配列される、マニピュレータと、
を備える、液体移送システム。
(項目45)
前記ブラダは、前記本体の内部容積内に配置可能である、項目44に記載の液体移送システム。
(項目46)
前記マニピュレータは、多先端ピペットである、項目44に記載の液体移送システム。
(項目47)
前記ピペットチップは、前記マニピュレータに除去可能に取り付け可能である、項目44に記載の液体移送システム。
(項目48)
前記ピペットチップは、前記マニピュレータのへのスナッブ嵌合または圧入のうちの少なくとも1つにある、項目47に記載の液体移送システム。
(項目49)
前記マニピュレータは、前記ブラダに圧力を印加し、前記ピペットチップの本体の外に前記液体の体積の少なくとも一部を移送するように配列される、項目44に記載の液体移送システム。
(項目50)
内部容積を画定し、第3の端部と、第4の端部とを有する、第2の本体であって、前記第3の端部は、前記第2のピペットチップの中および外に液体を通過させるように配列され、前記第4の端部は、マニピュレータへの取り付けのために配列される、第2の本体と、前記第2の本体に密閉して取り付けられる、第2のブラダとを有する、第2のピペットチップをさらに備える、項目44に記載の液体移送システム。
(項目51)
前記第2のブラダは、前記第2の本体の内部容積内に配置可能である、項目50に記載の液体移送システム。
(項目52)
前記マニピュレータは、前記第2のブラダを横断して圧力勾配を生成し、前記第2の本体の第3の端部の中および外に液体の第2の体積を移送するように配列される、項目50に記載の液体移送システム。
(項目53)
前記第1および第2の体積は、同一の細胞培養容器の外に移送される、項目52に記載の液体移送システム。
(項目54)
前記液体の第1の体積は、第1の細胞培養容器の外に移送され、前記液体の第2の体積は、第2の細胞培養培地の外に移送される、項目52に記載の液体移送システム。
(項目55)
細胞培養インキュベータであって、
1つまたはそれを上回る細胞培養容器内での細胞のインキュベーションのための内部チャンバを備える、インキュベータキャビネットと、
外部環境から前記内部チャンバへの、ドア開口部と、
前記内部チャンバ内の前記細胞を撮像するように配列される、撮像機と、
前記内部チャンバ内の前記1つまたはそれを上回る細胞培養容器内の前記細胞を操作するための、マニピュレータであって、前記内部チャンバ内の前記1つまたはそれを上回る細胞培養容器の中または外に前記細胞を含む培地の第1の体積を移送するように構成される、少なくとも1つのピペットを備える、マニピュレータと、
前記ピペットと流体連通しているピペットチップであって、内部容積を画定し、第1の端部と、第2の端部とを有する、本体であって、前記第1の端部は、前記ピペットチップの中および外に所定の体積の液体を移送するように配列され、前記第2の端部は、マニピュレータへの取り付けのために配列される、本体と、前記ブラダに密閉して取り付けられる、ブラダとを有する、ピペットチップと、
前記内部チャンバ内の場所間で、前記1つまたはそれを上回る細胞培養容器を移動させるための、細胞培養容器移送デバイスと、
を備え、前記マニピュレータは、前記ブラダに圧力を印加し、前記ピペットチップの中または外に前記細胞を含む培地の第1の体積を移送する、細胞培養インキュベータ。
(項目56)
前記ブラダは、前記本体の内部容積内に配置可能である、項目55に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目57)
前記マニピュレータは、前記ブラダに第1の圧力を印加し、前記本体の第1の端部から離れる方向に前記ブラダを移動させ、前記ピペットチップの中に前記培地の第1の体積を移送する、項目55に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目58)
前記圧力は、前記膜に真空を印加する、負圧である、項目55に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目59)
前記ピペットチップの中または外に移送される前記培地の第1の体積は、前記ブラダに印加される前記圧力の大きさに比例する、項目58に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目60)
前記マニピュレータは、前記ブラダに第2の圧力を印加し、前記本体の第1の端部に向かう方向に前記ブラダを移動させ、前記ピペットチップの外に前記培地の第1の体積を排出する、項目59に記載の細胞インキュベータ。
(項目61)
前記内部チャンバ内の前記1つまたはそれを上回る細胞培養容器の中もしくは外に、細胞を含む培地の第2の体積を移送するための第2のピペットチップであって、前記第2のチップは、内部容積を画定し、第3の端部と、第4の端部とを有する、第2の本体であって、前記第3の端部は、前記第2のピペットチップの中および外に液体を移送するように配列され、前記第4の端部は、マニピュレータへの取り付けのために配列される、第2の本体と、前記本体に密閉して取り付けられる、第2のブラダとを有する、第2のピペットチップをさらに備える、項目55に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目62)
前記第2のブラダは、前記第2の本体の内部容積内に配置可能である、項目61に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目63)
前記第1および第2の体積は、前記同一の細胞培養容器の外に移送される、項目61に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目64)
前記第1の体積は、第1の細胞培養容器の外に移送され、前記第2の体積は、前記第2の細胞培養容器の外に移送される、項目61に記載の細胞培養インキュベータ。
(項目65)
ピペットチップを分与するためのカートリッジであって、
筐体と、
前記筐体内に配置される、2つまたはそれを上回るピペットチップであって、前記ピペットチップはそれぞれ、内部容積を画定し、第1の端部と、第2の端部とを有する、本体であって、前記第1の端部は、前記ピペットチップの中および外に液体を通過させるように配列され、前記第2の端部は、ピペットへの取り付けのために配列される、本体と、前記本体に密閉して取り付けられる、ブラダとを含み、前記2つまたはそれを上回るピペットチップは、入れ子式である、2つまたはそれを上回るピペットチップと、
を備える、カートリッジ。
(項目66)
前記ブラダは、前記内部容積内に配置可能である、項目65に記載のカートリッジ。
(項目67)
前記2つまたはそれを上回るピペットチップは、第1のピペットチップと、第2のピペットチップとを含み、前記第1のピペットチップは、前記第2のピペットチップの上部で入れ子になっている、項目65に記載のカートリッジ。
(項目68)
前記第1のピペットチップの本体は、前記第1のピペットチップが前記第2のピペットチップ上にスタックされると、前記第2のピペットチップのブラダに隣接する、項目67に記載のカートリッジ。
(項目69)
ピペットチップの中または外に所定の体積の液体を移送する方法であって、
項目1に記載のピペットチップのブラダを横断して第1の圧力勾配を印加するステップであって、所定の体積の液体を前記本体の第1の端部を介して前記ピペットチップの中に引き込ませるステップを含む、方法。
(項目70)
前記ピペットチップのブラダを横断して第2の圧力勾配を印加するステップであって、所定の体積の液体を前記本体の第1の端部を介して前記ピペットチップから排出させるステップをさらに含む、項目69に記載の方法。
(項目71)
前記第1の圧力勾配を印加するステップは、前記第1の端部から前記第2の端部に向かってかつ前記ブラダを横断して指向される、負の圧力勾配を印加することを含む、項目69に記載の方法。
(項目72)
前記第2の圧力勾配を印加するステップは、前記第1の端部から前記第1の端部に向かってかつ前記ブラダを横断して指向される、正の圧力勾配を印加するステップを含む、項目70に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0037】
付随の図面は、正確な縮尺で描かれることを意図するものではない。図面では、種々の図に図示されるそれぞれ同じまたはほぼ同じ構成要素は、同様の番号によって表され得る。明確性の目的のために、全ての構成要素が、全ての図面において標識されない場合がある。本発明の種々の実施形態が、ここで、一例として、付随の図面を参照して説明される。
【0038】
図1図1および2は、いくつかの実施形態による、ピペットチップの概略断面側面図である。
【0039】
図2図1および2は、いくつかの実施形態による、ピペットチップの概略断面側面図である。
【0040】
図3A図3Aは、一実施形態による、ピペットチップの概略断面側面図である。
【0041】
図3B図3Bは、ブラダが拡張構成にある、図3Aのピペットチップの概略図である。
【0042】
図4A図4Aは、別の実施形態による、ピペットチップの概略断面側面図である。
【0043】
図4B図4Bは、ブラダが拡張構成にある、図4Aのピペットチップの概略断面側面図である。
【0044】
図5図5A図5Eは、ピペットに取り付けられるピペットチップの中および外に移送されている、所定の体積の液体の概略図である。
【0045】
図6図6Aおよび6Bは、ピペットシェルを伴うピペットに取り付けられるピペットチップの中に移送されている、所定の体積の液体の概略図である。
【0046】
図7図7は、撮像器と、マニピュレータと、ピペットチップとを有する、細胞培養インキュベータの例証的実施形態の概略図である。
【0047】
図8図8~9は、細胞培養インキュベータの例証的実施形態の概略図であって、図8は、第2の撮像機を有する細胞培養インキュベータの概略図を示し、図6は、細胞培養インキュベータの概略図を示し、撮像場所および操作場所は、同一の場所である。
【0048】
図9図8~9は、細胞培養インキュベータの例証的実施形態の概略図であって、図8は、第2の撮像機を有する細胞培養インキュベータの概略図を示し、図6は、細胞培養インキュベータの概略図を示し、撮像場所および操作場所は、同一の場所である。
【0049】
図10図10は、細胞培養インキュベータのさらなる構成要素を描写する概略図である。
【0050】
図11図11Aおよび11Bは、ピペットチップに圧力を印加するように配列される、ピペットの略図である。
【0051】
図12図12は、入れ子になっているピペットチップの略図である。
【0052】
図13図13は、ピペットチップのカートリッジの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
詳細な説明
現在利用可能なピペットは、体積液体を測定および移送するために使用される。例えば、ピペットは、第1の培養容器から細胞を含む培地のサンプルを引き込み、その後、第2の培養容器の中にサンプルを分与してもよい。ピペットは、ユーザがピペットを握持および操作し、液体の測定された体積を移送する、ハンドヘルド式であってもよい。例えば、ピストン駆動式ピペットを用いて、ユーザは、プランジャを押下し、真空を作成し、ピペットチップの中に液体のサンプルを引き込んでもよい。他の実施例では、ピペットは、自動化されてもよい。そのような実施形態では、自動化されたピペットは、印加圧力の強度および持続時間を制御する、コントローラ(例えば、インキュベータ内のコンピュータ)と併用されてもよい。
【0054】
残念ながら、そのようなピペット(例えば、インキュベータ内のピペット)と併用される、現在利用可能なピペットチップは、液体の中に汚染物質をもたらし得る。例えば、未使用のピペットチップが、以前に使用されたピペットに取り付けられ、所定の体積の液体を移送すると、ピペットチップが、ピペットに隣接する端部において開放しているため、相互汚染が、ピペットとピペットチップ内の液体との間に生じ得る。細胞培養において現在利用可能なピペットチップを使用する実施形態では、これは、培養効率および再現性を低下させ得る。加えて、ピペットチップが、単回使用のみのために設計されるため、大量の廃棄物(例えば、大量の使用済みチップ)が、細胞培養の保守の間等に蓄積され得る。
【0055】
本出願人は、ピペットからピペットチップの中に移送されている所定の体積の液体を分離し得るピペットチップを提供することによって、種々の利点が存在し得ることを認識している。本出願人はさらに、再利用可能であり得るピペットチップを提供することによって、利点が実現され得ることを認識している。
【0056】
故に、いくつかの側面では、本書は、内部容積を画定し、第1の端部と、第2の端部とを有する、本体であって、第1の端部は、ピペットチップの中および外に液体を通過させるように配列され、第2の端部は、ピペットへの取り付けのために配列される、本体と、本体に密閉して取り付けられる、ブラダとを有する、ピペットチップに関する。いくつかの実施形態では、ブラダは、内部容積内に配置可能である。理解されるように、他の実施形態では、ブラダは、内部容積内に配置可能ではない。いくつかの実施形態では、ブラダは、移送される液体とピペットとの間に設置されてもよい。いくつかの実施形態では、ブラダは、本体の第1の端部と第2の端部との間の位置から本体の第1の端部に向かって拡張してもよい。例えば、ブラダは、第2の端部に取り付けられてもよく、ブラダが圧縮構成にあるとき等、本体の第1の端部に向かって拡張してもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、内部容積の少なくとも一部は、所定の体積の液体を収容するように配列される。いくつかの実施形態では、ブラダは、所定の体積の液体を収容するように配列されてもよい。いくつかの実施形態では、ブラダは、液体の体積を収容するように膨張可能であってもよい。
【0058】
本明細書の目的のために、本体に密閉して取り付けられることは、シールが、ブラダが本体に取り付けられている場所に形成されるように、ブラダが本体に取り付けられることを意味する。例えば、ブラダは、本体にヒートシール、接着、接合、または別様に好適に取り付けられ、シールを作成してもよい。いくつかの実施形態では、ブラダは、ブラダの周囲において本体に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、本体に密閉して取り付けられることによって、所定の体積の移送される液体が、ブラダが本体に取り付けられる場所において内部容積の外側に通過し得ない。そのような実施形態では、汚染物質もまた、本取り付け場所において内部容積の中に通過し得ない。
【0059】
本明細書の目的のために、用語「ブラダ(bladder)」は、(例えば、印加圧力に応答して)移動し、ピペットチップ本体の本体の中および外に所定の体積の流体を移送するように配列される、可撓性膜を指す。いくつかの実施形態では、ブラダは、ピペットチップ本体の内部容積の中に移送される、所定の体積の液体を収容するように配列される。いくつかの実施形態では、ブラダは、膜嚢を含んでもよい。ブラダはまた、略平面状の膜を含んでもよい。理解されるように、ブラダは、他の実施形態において他の好適な配列を有してもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、ブラダは、圧力がピペットチップに印加され、液体の体積を移送すると、前後に移動するように配列される。例えば、ブラダは、圧力がピペットチップに印加され、内部容積の中に所定の体積の液体を引き込むと、ピペットチップの第1の端部から離れる方向に移動されてもよい。いくつかの実施形態では、ブラダは、本体の第1の端部に向かって移動され、ピペットチップから所定の体積の液体を排出してもよい。例えば、ブラダが液体の体積を収容するように本体の外側に移動する実施形態では、ブラダは、液体の体積がピペットチップから排出されると、ピペットチップの本体の中に移動されてもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、ブラダは、所定の体積の液体を収容するように膨張および収縮してもよい。そのような実施形態では、ブラダは、静置容積と、膨張容積とを有してもよく、圧力がピペットチップに印加され、ピペットチップの中に所定の体積の液体を移送すると、ブラダは、静置容積から膨張容積に膨張する。いくつかの実施形態では、ブラダは、膨張構成にあるとき、所定の体積の液体を収容してもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、ブラダは、圧潰または未定形構成で本体内に配置される。例えば、膜嚢は、ピペットチップが静置状態であるとき、ピペットチップ本体の中に折曲されてもよい。そのような実施例では、ブラダは、圧力がピペットチップに印加されると、膨張し、膜嚢を形成してもよい。理解されるように、そのような実施例では、ブラダは、本体の第1の端部と第2の端部との間に拡張してもよい。他の実施形態では、ブラダは、第1の端部と第2の端部との間に位置付けられるが、静置状態にある間、第1の端部と第2の端部との間に拡張しない、平面膜を含んでもよい。いくつかの実施形態では、平面膜は、ピペットチップの長手軸に対して実質的に垂直のままであってもよい。理解されるように、いくつかの実施形態では、膜の少なくとも一部は、重力等に応答してピペットチップの第1の端部に向かって拡張してもよい。そのような実施形態では、平面膜は、所定の体積の液体を収容するための印加圧力に応答して、前後に移動してもよい。他の実施形態では、印加圧力に応答して、平面膜は、膨張し、膜嚢を形成してもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、ブラダは、本体の第2の端部に取り付けられ、本体の第1の端部は、ピペットチップの中および外に液体の体積を移送するように配列される。ブラダはまた、本体の第1の端部または本体の第1の端部と第2の端部との間の場所に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、ブラダは、ピペット本体に恒久的に取り付けられてもよい、または除去可能に取り付けられてもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、ブラダは、移送されている液体(例えば、細胞培養コンテナから移送されている培地)およびピペットまたはピペットチップに圧力を印加するように配列される他の好適なマニピュレータを分離するように配列される。言い換えると、ブラダおよび/またはピペットチップの本体のみが、移送されている液体に接触してもよい。理解されるように、液体がブラダに接触する程度は、ピペットの中に引き込まれている液体の体積およびピペットチップに印加されている圧力に依存する。例えば、小量の液体のみがピペットの中に引き込まれる場合、液体は、ブラダが液体の上方の空気に接触する状態で、ピペットの本体にのみ接触してもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、ブラダは、ピペットチップを第1および第2のコンパートメントに分割し、第1のコンパートメントは、ピペットチップの中および外に液体を移送するために第1の端部と流体連通し、第2のコンパートメントは、負圧等の印加圧力を受容するために第2の端部と流体連通している。いくつかの実施形態では、ブラダの第1の側は、第1のチャンバに暴露されてもよく、ブラダの第2の側は、第2のチャンバに暴露されてもよい。この点について、ブラダの第2の側が、ピペットに暴露される間、ブラダの第1の側は、ピペットチップ本体の中および外に移送されている液体に暴露され得る。そのような実施形態では、ブラダは、ピペットから液体を物理的に分離することによって、液体とピペットとの間の相互汚染を低減またはさらに排除し得る。いくつかの実施形態では、移送される液体は、ピペットに接触せず、ブラダおよび/またはピペットチップ本体にのみ接触するため、汚染物質は、ピペット(例えば、ピペットのピストン)と液体との間を通過し得ない。
【0066】
理解されるように、ブラダを形成するために使用される材料に応じて、汚染物質が、液体がピペットから物理的に分離されるときてあっても、ブラダを通過し、液体を汚染することが、依然として可能性として考えられ得る。したがって、いくつかの側面によると、ブラダは、既知または可能性として考えられる汚染物質に不浸透性である材料で形成されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、ブラダは、疎水性または疎水性になるように処理された膜で形成される。ブラダはまた、非多孔性材料または既知もしくは可能性として考えられる汚染物質のサイズ未満の孔隙を伴う材料を有する膜で形成されてもよい。いくつかの実施形態では、ブラダは、膜壁内に汚染物質を捕捉する材料で形成される。例えば、膜は、ピペットが使用されている間、汚染物質が液体に到達しないように防止するように十分に厚く、さらに依然として、ブラダが印加圧力によって操作されることを可能にするように十分に可撓性であってもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、ブラダは、空気源および/または真空源から液体を分離するように配列される。理解されるように、ブラダはまた、空気を印加および除去し、真空を作成するために使用される他の構成から液体を分離してもよい。例えば、液体移送システムは、ポンプ、圧縮空気、弁、または移送される液体から分離される他の好適な構成要素を含んでもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、真空源は、空気または液体等の流体を移動させる(例えば、除去もしくは供給する)ことによって作成されてもよい。そのような実施形態では、ピペットは、1つまたはそれを上回る流体導管を介して液体供給部(例えば、ポンプおよび弁)に接続されてもよい。理解されるように、他の構成もまた、真空を作成するためにピペットチップと併用されてもよい。例えば、ハンドヘルド式ピペットが、プランジャが押下され、真空源を作成する状態で、使用されてもよい。そのようなハンドヘルド式ピペットは、真空を作成するための埋込式ポンプを有してもよい。
【0069】
本書に説明されるように、印加圧力に応答して、所定の体積の液体が、培養容器からピペットチップの中および/またはピペットチップから細胞培養容器へ等、ピペットチップの中もしくは外に移送されてもよい。本明細書の目的のために、ピペットチップの中または外に移送される、引き込まれる、ならびに/もしくは排出されることは、液体の体積が、ピペットチップの本体の内部容積の中または外に移送される、引き込まれる、ならびに/もしくは排出されることを意味し得る。これはまた、液体の体積がブラダ(例えば、伸展膜)ならびに内部容積の中または外に移送される、引き込まれる、もしくは排出されることを意味し得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、印加圧力は、ブラダに印加される真空を作成する、負圧である。本明細書の目的のために、負圧は、コンテナ内の空気圧と、ブラダの上方のピペットおよび/またはピペットチップ内の空気圧と、(例えば、チップの外側ならびに/もしくはブラダの下方の大気の)環境の空気圧との間に負圧差が存在することを意味し得る。理解されるように、ブラダの上方のピペットおよび/またはピペットチップから除去される空気が多いほど、より大きい真空力が、ブラダ上に印加される。いくつかの実施形態では、真空の程度(したがって、負圧の程度)は、培養培地の表面張力および体積重量に依存する。故に、これらの付加的な要因は、ピペットチップの中に液体(例えば、培養培地)を引き込むために要求される圧力差に影響を及ぼし得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、印加負圧、例えば、ピペット等のマニピュレータを介して印加される負圧に応答して、ブラダは、本体によって画定される内部容積の外側に移動される。本明細書の目的のために、ピペットチップおよび/またはピペットの本体の外側に移動されることは、ブラダが、ピペットチップ本体によって画定される内部容積の外に後退されることを意味し得る。例えば、ブラダは、本体の第2の端部を通して延在する平面を越えて外向きに移動してもよい。いくつかの実施形態では、ブラダは、少なくとも部分的に本体の外側に後退される。そのような実施形態では、ブラダが、印加負圧に応答して後退されると、所定の体積の液体が、ピペットチップの中に引き込まれる。いくつかの実施形態では、印加圧力に応答して、所定の体積の液体が、ブラダの中に引き込まれてもよい。
【0072】
理解されるように、ブラダは、圧力がピペットチップに印加され、内部容積の中に所定の体積の液体を引き込むと、本体の外側に拡張する必要はない。例えば、ブラダが、本体の第1の端部と第2の端部との間の中間に配置される実施形態では、ブラダは、拡張されるが、本体を越えて外向きに移動しなくてもよい。さらに理解されるように、負圧が本体の外向きにブラダを引き込むために使用される実施形態が説明されているが、他の実施形態では、ブラダは、印加圧力に応答して本体の内側に(例えば、本体の第1の端部に向かって)移動されてもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、印加圧力は、正圧である。理解されるように、正圧は、コンテナ内の空気圧と、ブラダの上方のピペットおよび/またはピペットチップ内の空気圧と、(例えば、チップの外側ならびに/もしくはブラダの下方の大気の)環境の空気圧との間に正圧差が存在することを意味し得る。いくつかの実施形態では、ブラダに印加される圧力が、環境の圧力を上回ると、ブラダは、本体の中に戻るように移動(例えば、押動または後退)され、ピペットチップから体積の少なくとも一部(例えば、所定の体積の液体培地)を分与する。
【0074】
いくつかの実施形態では、ピペットチップは、所定の体積の液体を収容するように配列される。いくつかの実施形態では、本体の内部容積の少なくとも一部が、液体の体積を収容するように配列されてもよい。理解されるように、液体を収容することが可能である内部容積の一部は、本体内のブラダの位置に基づいて画定されてもよい。例えば、ブラダが第1の端部と第2の端部との間の中間の場所に位置付けられる場合、ピペットチップは、内部容積の総容積の約半分のみである、所定の体積の液体を収容するように配列されてもよい。いくつかの実施形態では、ピペットチップによって収容される液体の体積はまた、ブラダが収容することが可能である、所定の体積の液体を含み得る。いくつかの実施形態では、ブラダが膨張および収縮するように構成される場合、ブラダの容積は、膨張容積等の、膜嚢によって封入される容積を含む。例えば、いくつかの実施形態では、膜嚢の容積は、膜が静置位置から膨張位置に伸展される(例えば、膜がブラダの形状をとるように伸展されるとき)容積を含む。この点について、ピペットチップによって収容される液体の総体積は、ピペットチップ本体の内部容積の容積と、ブラダによって収容される体積との合計未満またはそれに等しくあり得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、ピペットチップは、1μLの液体を収容し得る本体と、約9μLまで収容し得るブラダとを有してもよい。そのような状況では、ピペットは、約0μL~10μLの体積の液体を収容するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、ピペットはまた、ブラダが膨張し、液体のさらにより大きい体積を収容することを可能にする、弾性材料で作製されてもよい。理解されるように、これらの実施形態では、ピペットは、伝統的なピペットより大きい範囲の液体の体積を収容するように構成されてもよい(例えば、典型的な1μLピペットチップは、0μL~1μLの容積に限定される)。
【0076】
いくつかの実施形態では、ピペットチップによって収容される液体の体積は、圧力差(例えば、コンテナ内の空気と環境との間の)の大きさならびに印加圧力の持続時間に比例する。例えば、より大きい負圧をより長い時間周期にわたって印加することは、より少ない負圧を同一の時間周期にわたってブラダに印加することより大きい液体の体積をピペットチップの中に引き込み得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、ブラダは、ピペットチップ本体(例えば、第2の端部)に恒久的に取り付けられてもよい。ブラダはまた、本体に除去可能に取り付けられてもよい。例えば、ブラダは、使用に先立ってピペットチップの中にスナップ嵌合されてもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、液体移送デバイスは、いくつかの実施形態では、チップの第2の端部に隣接して位置付けられる、ピペット等のマニピュレータを含む。チップは、マニピュレータに除去可能に取り付けられてもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、ピペットは、ピペットチップからピペット本体を分離するためにピペットの内側に配置される、ピペットシェルを含む。理解されるように、そのような実施形態では、ピペットシェルはさらに、ピペットとピペットチップの中に引き込まれている液体との間の相互汚染を最小限にし得る。いくつかの実施形態では、ピペットシェルは、使い捨てである。そのような実施形態では、ピペットシェルは、液体がピペットチップの中に引き込まれている間、ピペットチップおよび/またはピペットに取り付けられ、その後、廃棄されてもよい。他の実施形態では、ピペットシェルは、再利用可能であってもよい。理解されるように、そのような実施形態では、ピペットシェルは、使用の間に殺菌されてもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、ピペットシェルは、依然としてピペットチップに取り付けられている間、ピペットから放出されてもよい。そのような実施形態では、ピペットシェルは、ピペットチップおよびピペットチップの中に引き込まれた液体を貯蔵するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、ある圧力が、ピペットシェルを介してピペットチップに印加される。例えば、いくつかの実施形態では、ピペットシェルは、それを通して圧力(例えば、空気または流体圧力)が印加される、開口部を有してもよい。他の実施形態では、ピペットシェルは、ピペットチップに印加される圧力を調整するための弁を含んでもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、液体移送システムはまた、容積を画定し、第1の端部と、第2の端部をと有する、第2のピペット本体と、第2のピペットチップの本体に密閉して取り付けられる、ブラダとを有する、第2のピペットチップを含む。いくつかの実施形態では、ブラダは、第2のピペットチップの内部容積内に配置可能である。いくつかの実施形態では、ブラダは、第1の端部と第2の端部の間の位置に配置され、第1の端部(静置状態にあるとき等)に向かって拡張してもよい。そのような実施形態では、マニピュレータは、第1および/または第2のブラダに圧力を印加し、それぞれ、第1ならびに/もしくは第2のピペットチップの中または外に液体の第2の体積を移送するように配列されてもよい。いくつかの実施形態では、第1および第2の体積は、同一の培養容器の外に移送されるが、第1および第2の体積は、異なる培養容器の外に移送されてもよい(例えば、第1の細胞培養容器の外に液体の第1の体積を移送し、第2の細胞培養培地の外に液体の第2の体積を移送する)。
【0082】
いくつかの実施形態では、ピペットチップは、再利用可能である。すなわち、ピペットは、廃棄に先立って、同一の培養容器から細胞を含む2つまたはそれを上回る培地の体積を移送するために使用されてもよい。ピペットはまた、2つまたはそれを上回る培養容器から培地の体積を移送するために使用されてもよい。そのような実施形態では、理解されるように、ピペットチップは、各サンプルを移送することに先立って、(例えば、消毒液を用いた処理を介して)殺菌されてもよい。ピペットチップはまた、チップが単回の液体移送のためのみに使用されるように使い捨てであってもよい。これらの状況では、ピペットチップは、ピペットに除去可能に取り付けられてもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、ピペットチップは、ピペットチップの中に移送されている液体の体積を評価するために使用されてもよい。例えば、ピペットチップ内の液体の体積のサンプルは、さらなる試験を受け、サンプル内の細胞数を判定してもよく、これは、液体の体積(または培養容器)内の細胞の数を判定するように推定され得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、ピペットチップは、細胞をインキュベートするための内部チャンバが1つまたはそれを上回る細胞培養容器の中にある、インキュベータキャビネットを有する、細胞培養インキュベータ内で使用される。そのような実施形態では、ピペットチップは、ピペットチップ本体内のブラダ(例えば、定形の膜嚢および/または静置状態の平面膜)に圧力を印加するマニピュレータに流体的に結合されてもよい。マニピュレータは、内部チャンバ内の1つまたはそれを上回る細胞培養容器の中もしくは外に細胞を含む所定の体積の培地を移送するように配列される、1つまたはそれを上回るピペットを含んでもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットはまた、外部環境から内部チャンバへのドア開口部を有する。撮像機が、内部チャンバ内の細胞を撮像するために使用されてもよい。細胞培養容器移送デバイスが、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を内部チャンバ内の場所間で移動させるために使用されてもよい。
【0085】
本明細書で使用されるように、「インキュベータキャビネット」は、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を保持するように構成される1つまたはそれを上回るチャンバを含む、筐体である。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、移送チャンバと、内部チャンバとを含み、その一方または両方は、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を保持するように構成される。いくつかの実施形態では、インキュベータは、1つまたはそれを上回るガス源(例えば、圧縮ガスシリンダまたはオゾン発生器)、管類(例えば、水、蒸留水、脱イオン水、細胞培養培地、空気、二酸化炭素、オゾン、および酸素等の1つまたはそれを上回る液体もしくはガスを伝達する)、空気流量機構(例えば、弁、解放弁、ピン孔、ガス調整器、および質量流量調整器)、圧力機構(例えば、乾燥スクロールポンプ、回転式ポンプ、運動量移送ポンプ、拡散ポンプ、またはダイヤフラムポンプ等のポンプ;吸引管;真空システム;および空気送風機)、環境モニタおよび制御(例えば、二酸化炭素、酸素、およびオゾン等のガスの濃度を感知および/または制御するためのガスセンサおよび/またはモニタ;熱源またはシンク;温度モニタおよび制御;湿度モニタ;ガススクラバ;空気フィルタ;粒子状物質を測定するための器具類;圧力ゲージ;および流量計)、ドア(例えば、開口部またはパネル)、窓(例えば、インキュベータキャビネットの内側の面積を視認するためのガラス、プラスチック、複合材、または他の実質的に透明材料から作製される光学窓)、ポート(例えば、1つまたはそれを上回るガスもしくは液体の導入または除去を可能にする)、光源(例えば、ランプ、電球、レーザ、およびダイオード)、光学要素(例えば、顕微鏡対物レンズ、ミラー、レンズ、フィルタ、開口、波プレート、窓、偏光器、ファイバ、ビームスプリッタ、およびビームコンバイナ)、撮像要素(例えば、バーコード読取機、カメラ等)、電気要素(例えば、回路、ケーブル、電源コード、ならびにバッテリ、ジェネレータ、および直流または交流電流供給源等の電力供給源)、コンピュータ、機械的要素(例えば、モータ、ホイール、歯車、ロボット要素、ならびに空気圧アクチュエータ、電磁アクチュエータ、カムを伴うモータ、圧電アクチュエータ、および送りねじを伴うモータ等のアクチュエータ)、および制御要素(例えば、スピンホイール、ボタン、キー、トグル、スイッチ、カーソル、ねじ、ダイヤル、画面、およびタッチ画面)等の1つまたはそれを上回る他の要素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、これらの他の要素のうちの1つまたはそれを上回るものは、インキュベータの一部であるが、インキュベータキャビネットの外部にある。いくつかの実施形態では、これらの他の要素のうちの1つまたはそれを上回るものは、インキュベータキャビネット内に含まれる。
【0086】
本明細書で使用されるように、「内部チャンバ」は、インキュベータキャビネット内に配置される、チャンバである。内部チャンバは、1つまたはそれを上回る窓(例えば、インキュベータキャビネットの内側の面積を視認するためのガラス、プラスチック、複合材、または他の実質的に透明材料から作製される光学窓)を含んでもよい。内部チャンバは、少なくとも1つのドア(例えば、内部チャンバの内外へのアイテムの移送を可能にする)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのドアは、内部チャンバと移送チャンバとの間に配置されてもよい。ある実施形態では、インターロックは、ドアが望ましくない時間に開放しないように防止し得る(例えば、インキュベータキャビネットの一部が周囲環境に開放されているとき、汚染物質が内部チャンバに進入し得ないように)。内部チャンバは、任意の適切なサイズおよび幾何学形状であってもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、1つまたはそれを上回るパーティションを含み、内部チャンバの異なる領域を画定してもよい。1つまたはそれを上回る内部チャンバまたはそのパーティションは、異なる環境条件を有してもよい。内部チャンバの内側の環境(例えば、空気圧力、ガス内容物、温度、光、および湿度)は、1つまたはそれを上回るメータ、モニタ、センサ、制御、ポンプ、弁、開口、および/または光源によって測定および/または制御されてもよい。いくつかの実施形態では、内部チャンバは、気密または密閉シールを、例えば、1つまたはそれを上回る窓またはドアの周囲に有してもよい。特定の実施形態では、グリース等のシーラントおよび/またはOリング、ガスケット、隔壁、KF、LF、QF、クイックカップリング、または他のシール機構等の機械的要素が、1つまたはそれを上回る気密シールを確立するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、溝、凹部、突出部、および/または成型プラスチック要素は、1つまたはそれを上回る気密シールの確立を促進し得る。
【0087】
内部チャンバは、任意の有用な材料から作製されてもよい。いくつかの実施形態では、内部チャンバは、1つまたはそれを上回るプラスチック、ポリマー、金属、またはガラスを含んでもよい。
【0088】
本明細書で使用されるように、「ドア」は、開放されると、2つまたはそれを上回る環境もしくは領域間の連通を可能にし、閉鎖されると、2つまたはそれを上回る環境もしくは領域間の連通を防止する、要素である。ドアは、スライドドア、ポケットドア、スイングドア、ヒンジドア、回転ドア、枢動ドア、または折り畳みドア等の任意のタイプであってもよい。ドアは、手動で、機械的に、または電気的に動作されてもよい。例えば、オペレータは、ドアまたはその要素(例えば、ハンドル)を手動で握持する、引動する、押動する、および/またはそれと別様に物理的に相互作用することによって、または機械的制御(例えば、ボタン、トグル、スピンホイール、キー、スイッチ、カーソル、ねじ、ダイヤル、画面、またはタッチ画面)を動作させることによって、ドアを開閉してもよい。ある実施形態では、ドアは、コンピュータ等によって、電気またはデジタル制御によって制御されてもよい。ドアは、自動的開放式ドアであってもよい。例えば、ドアは、ドアが開放または閉鎖しているかどうかを検出する、および/またはドアが開閉するときを制御する、圧力、赤外線、運動、または遠隔センサ等のセンサを含んでもよい。ドアは、機械的、空気圧、電気、または他の手段によって開放してもよい。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回るドアは、1つまたはそれを上回るロック機構を含んでもよい。特定の環境では、1つまたはそれを上回るドアは、1つまたはそれを上回るインターロック(例えば、ピン、バー、またはロック等の機械的インターロックもしくはスイッチ等の電気的インターロック)を含み、1つまたはそれを上回るドアが望ましくない時間に開放しないように防止する(例えば、1つまたはそれを上回るチャンバが外側環境に開放されるとき)。
【0089】
1つまたはそれを上回るアイテムを移動させるための移送デバイスが、アイテムを移送チャンバと内部チャンバとの間で移動させるために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、移送デバイスは、アイテムを操縦するためのコンベヤベルトまたは他の類似デバイスを備える。移送デバイスによって移動され得る、アイテムの非限定的実施例は、細胞培養容器、ピペット、コンテナ、シリンジ、および他の材料、ならびに細胞の培養において利用される器具を含む。いくつかの実施形態では、1つを上回る移送デバイスが、含まれてもよい。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る移送デバイスが、移送チャンバおよび/または内部チャンバ内に位置する。いくつかの実施形態では、移送デバイスは、1つまたはそれを上回るロボット要素を含んでもよい。例えば、移送デバイスは、1つまたはそれを上回るアイテム(例えば、ピペット)を把持する、持ち上げる、押動する、握持する、摺動する、回転させる、平行移動させる、解放する、上昇させる、降下させる、および/または傾斜させることが可能な1つまたはそれを上回るロボットアームを備えてもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、移送デバイスは、細胞培養容器移送デバイスである。本明細書で使用されるように、「細胞培養容器移送デバイス」は、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を第1の場所から第2の場所に移送することができる、デバイスを指す。いくつかの実施形態では、移送デバイスは、内部チャンバ内に係留される。ある実施形態では、移送デバイスは、1つまたはそれを上回るアイテムをインキュベータキャビネット内の複数の場所へまたはそこから移送してもよい。例えば、細胞培養容器移送デバイスは、細胞培養容器を移送チャンバから内部チャンバ、および/または貯蔵場所から撮像場所に移動させるために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、1つまたはそれを上回るアイテムを移動させるための1つを上回る移送デバイス(例えば、アイテムをチャンバ間およびその中で移送するための別個の手段)を含む。細胞培養容器移送デバイスは、弁(例えば、電磁または空気圧弁)、歯車、モータ(例えば、電気またはステッパモータ)、段(例えば、xyまたはxyz段)、ピストン、ブレーキ、ケーブル、ボールねじアセンブリ、ラックピニオン配列、グリッパ、アーム、枢動点、継手、平行移動要素、または他の機械的もしくは電気的要素等の1つまたはそれを上回る要素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、細胞培養容器移送デバイスは、1つまたはそれを上回るロボット要素を含んでもよい。例えば、細胞培養容器移送デバイスは、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を把持する、持ち上げる、押動する、握持する、摺動する、回転させる、並進させる、解放する、上昇させる、降下させる、および/または傾斜させることが可能なロボットアームを含んでもよい。ある場合には、細胞培養容器移送デバイスは、選択的かつ解放可能に、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を把持する。ある実施形態では、細胞培養容器移送デバイスは、機械的グリッパに結合されるアームを含んでもよい。例えば、アームは、機械的グリッパを細胞培養容器を解放可能に把持するための一端またはその近傍に含み、他端またはその近傍においてインキュベータの表面または要素に固着して結合されてもよい。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、機械的グリッパがアームおよびアームに沿った1つまたはそれを上回る枢動および/または平行移動継手に結合し、アームの一部の可撓性回転および平行移動を可能にする、枢動点を含む。このように、ロボットアームは、インキュベータキャビネット(例えば、内部チャンバ内の貯蔵アレイ)内の異なる水平および垂直位置において、1つまたはそれを上回る細胞培養容器にアクセスしてもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、細胞培養容器移送デバイスは、自動化された移送デバイスである。例えば、自動化された移送デバイスは、細胞培養容器をインキュベータの内部チャンバ内の貯蔵場所からインキュベータの内部チャンバ内の撮像場所に移動させるようにプログラムされるコンピュータによって制御される、ロボットアームであってもよい。いくつかの実施形態では、細胞培養容器移送デバイスは、手動で動作される。例えば、インキュベータの内部チャンバの内側に位置するロボットアームは、細胞培養容器をインキュベータの内部チャンバ内の貯蔵場所からインキュベータの内部チャンバ内の撮像場所に移動させるために、インキュベータの内部チャンバの外側の場所からユーザ制御用ジョイステ
ィックによって動作されてもよい。
【0092】
本明細書で使用されるように、「細胞培養容器」は、筐体と、細胞を培養するための1つまたはそれを上回るチャンバとを含む、デバイスである。いくつかの実施形態では、筐体は、フレームである。フレームは、蓋に結合されてもよい。1つまたはそれを上回るチャンバは、1つまたはそれを上回る膜を含む、細胞培養培地を含んでもよい。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、細胞の成長を助長するための栄養素を含んでもよい。ある実施形態では、細胞培養容器は、1つまたはそれを上回る細胞もしくはその群を完全に封入してもよい。細胞培養容器の筐体は、1つまたはそれを上回る細孔もしくは開口部を含み、細胞培養容器とその周囲環境との間のガスの移送を可能にしてもよい。細胞培養容器の非限定的実施例は、フラスコ、懸濁液培養フラスコ、スピナーフラスコ、プレート、ペトリ皿、および/またはバッグを含む。ある実施形態では、細胞培養容器は、透明または光学的にクリアな窓を含む。例えば、細胞培養容器の筐体に結合される蓋は、例えば、顕微鏡または他の撮像機を用いて、細胞を視認するための光学的にクリアな部分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、実質的に非反射性である、1つまたはそれを上回る部分を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、バーコード化される。したがって、いくつかの実施形態では、インキュベータは、バーコード読取機を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、特定の目的のため、例えば、細胞を成長させる、細胞を分化する、細胞を特定のアッセイ条件に曝す等のために、所望の1つまたはそれを上回る試薬とともに事前にキット化されてもよい。いくつかの実施形態では、事前にキット化された細胞培養容器は、実験に先立って、細胞培養上で特定の実験を実施するために有用な試薬(例えば、細胞成長培地、成長因子、選択剤、標識剤等)を含む。事前にキット化された細胞培養容器は、試薬の添加を要求しない、細胞培養の準備ができた容器を提供することによって、実験プロトコルを促進し得る。例えば、患者からの前駆細胞が、自家細胞療法のために分化された細胞の集団を増殖させる目的のために、細胞分化のための試薬で事前にキット化された細胞培養容器に添加されてもよい。事前にキット化された細胞培養容器は、任意の適切な温度で貯蔵されることができ、これは、事前にキット化された細胞培養容器内の試薬の推奨される貯蔵パラメータによって判定される。いくつかの実施形態では、事前にキット化された細胞培養貯蔵容器は、使用に先立って約-80℃~約37℃の温度で貯蔵される。いくつかの実施形態では、事前にキット化された細胞培養貯蔵容器は、使用に先立って約-80℃~約-20℃の温度で貯蔵される。いくつかの実施形態では、事前にキット化された細胞培養貯蔵容器は、使用に先立って約-20℃~約4℃の温度で貯蔵される。いくつかの実施形態では、事前にキット化された細胞培養貯蔵容器は、使用に先立って約4℃~約37℃の温度で貯蔵される。いくつかの実施形態では、事前にキット化された細胞培養容器は、使い捨てである。いくつかの実施形態では、事前にキット化された細胞培養容器は、再使用可能および/または再充填可能である。
【0094】
本明細書で使用されるように、「貯蔵場所」は、1つまたはそれを上回る細胞培養容器が貯蔵される場所(例えば、インキュベータキャビネット内)を指す。例えば、1つまたはそれを上回る細胞培養容器は、貯蔵場所に貯蔵され、後に、異なる場所(例えば、撮像場所)に移送されてもよい。貯蔵場所は、インキュベータの内部チャンバキャビネット内に配置されてもよい。貯蔵場所は、複数の細胞培養容器を貯蔵するために構成されてもよい。例えば、貯蔵場所は、1つまたはそれを上回る貯蔵アレイ、ラック、棚、分類棚、整理棚、トレイ、スロット、または他の位置もしくは機構を含んでもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所は、細胞培養容器を水平に貯蔵するように構成されてもよい一方、他の実施形態では、細胞培養容器を垂直に貯蔵するように構成されてもよい。例えば、貯蔵場所は、相互にわたって垂直にスタックされた細胞培養容器を受容するための複数のスロットを含んでもよい。貯蔵場所は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、または任意の他の数の細胞培養容器を保持するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所は、100を上回る細胞培養容器を保持するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所は、1つまたはそれを上回る貯蔵アレイ、ラック、棚、分類棚、整理棚、トレイ、スロット、または他の位置もしくは機構を移動させるための機構を含んでもよい。例えば、貯蔵場所は、1つまたはそれを上回るモータおよび可動段(例えば、xyまたはxyz段)を含み、貯蔵ラックを内部チャンバ内の1つの位置から内部チャンバ内の別の位置に移動させ、例えば、異なる場所内に貯蔵される1つまたはそれを上回る細胞培養容器へのアクセスを促進してもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を移動させるための1つまたはそれを上回る細胞培養容器移送デバイスを含んでもよい。
【0095】
貯蔵場所は、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を固着して保持もしくは受容するように構成されてもよい。例えば、貯蔵場所の1つまたはそれを上回る構成要素は、1つまたはそれを上回る接着剤、磁気、電気、および/または機械的構成要素(例えば、スナップ、締結具、ロック、留め金、ガスケット、Oリング、隔壁、ばね、および他の係合部材)を有する、1つまたはそれを上回るロック機構を含んでもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所および/または細胞培養容器は、1つまたはそれを上回る溝もしくは凹部を含んでもよい、および/または成型プラスチック片を伴ってもよい。例えば、細胞培養容器は、貯蔵場所における1つまたはそれを上回る対応する溝、孔、または凹部の中への挿入のために成型される、1つまたはそれを上回る突出特徴(例えば、リムまたはノブ)を含んでもよい。ある場合には、細胞培養容器は、貯蔵場所における1つまたはそれを上回る対応する突出特徴に嵌合するように成型される、1つまたはそれを上回る溝、孔、もしくは凹部を含んでもよい。
【0096】
本明細書で使用されるように、「撮像機」は、光(例えば、伝送または散乱された光)、色、形態、またはいくつかの要素もしくはそれらの組み合わせ等の他の検出可能パラメータを測定するための撮像デバイスを指す。撮像機はまた、撮像デバイスと称され得る。ある実施形態では、撮像機は、1つまたはそれを上回るレンズ、ファイバ、カメラ(例えば、電荷結合素子カメラまたはCMOSカメラ)、開口、ミラー、光源(例えば、レーザまたはランプ)、または他の光学要素を含む。撮像機は、顕微鏡であってもよい。いくつかの実施形態では、撮像機は、明視野顕微鏡である。他の実施形態では、撮像機は、ホログラフィック撮像機または顕微鏡である。他の実施形態では、撮像機は、蛍光撮像機または顕微鏡である。
【0097】
本明細書で使用されるように、「蛍光顕微鏡」は、細胞または他の生物学的実体の表面内および/または上のいずれかに存在する蛍光性マーカから放出される光を検出可能であって、該マーカが、異なる波長の光の吸収に応答して、光を具体的波長で放出する、撮像デバイスを指す。
【0098】
本明細書で使用されるように、「明視野顕微鏡」は、サンプルを照明し、サンプルによって吸収された光に基づいて画像を生成する、撮像機である。任意の適切な明視野顕微鏡が、本明細書に提供されるインキュベータキャビネットと組み合わせて使用されてもよい。
【0099】
本明細書で使用されるように、「ホログラフィック撮像機」は、電磁放射の強度および位相情報(例えば、波正面)の両方を測定することによって、オブジェクト(例えば、サンプル)についての情報を提供する、撮像機である。例えば、ホログラフィック顕微鏡は、サンプルを通して通過後に伝送される光ならびにサンプルを通して伝送される光のビームと基準ビームを組み合わせることによって取得される干渉パターン(例えば、位相情報)の両方を測定する。
【0100】
ホログラフィック撮像機はまた、1つまたはそれを上回る放射検出器を介して、別個の基準ビームに干渉せず、かつ実質的にコヒーレントな源と放射検出器との間の任意の屈折または反射光学要素の有無を問わず、撮像されるべきオブジェクトによって直接回折または散乱された実質的にコヒーレントな源から、電磁放射のパターンを記録する、デバイスであり得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、単一撮像機を含む。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、2つの撮像機を含む。いくつかの実施形態では、2つの撮像機は、同一タイプの撮像機(例えば、2つのホログラフィック撮像機または2つの明視野顕微鏡)である。いくつかの実施形態では、第1の撮像機は、明視野顕微鏡であって、第2の撮像機は、ホログラフィック撮像機である。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、2つを上回る撮像機を備える。いくつかの実施形態では、細胞培養インキュベータは、3つの撮像機を備える。いくつかの実施形態では、3つの撮像機を有する、細胞培養インキュベータは、ホログラフィック顕微鏡、明視野顕微鏡、および蛍光顕微鏡を備える。
【0102】
本明細書で使用されるように、「撮像場所」は、撮像機が1つまたはそれを上回る細胞を撮像する、場所である。例えば、撮像場所は、光源の上方および/または1つまたはそれを上回る光学要素(例えば、レンズ、開口、ミラー、対物レンズ、および光コレクタ)と垂直整合して配置されてもよい。
【0103】
本明細書で使用されるように、「基準マーク」は、1つまたはそれを上回る構成要素の整合を促進する、特徴を指す。いくつかの実施形態では、基準マークは、蛍光性培地または印刷もしくはエンボス加工された蛍光性材料にわたって1つまたはそれを上回る孔開口を含んでもよい。他の実施形態では、基準マークは、グリッド、ライン、または記号を含んでもよい。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る細胞培養容器は、1つまたはそれを上回る基準マークを含み、1つまたはそれを上回る細胞培養容器と撮像機の整合を促進する。いくつかの実施形態では、基準マークは、移送デバイスおよびロボットデバイスを含む、可動部分と関連付けられてもよい。
【0104】
いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、撮像機と実質的に整合される。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、少なくとも1つの基準マークの使用を介して、撮像機と実質的に整合される。本明細書で使用されるように、用語「実質的に整合される」は、1つまたはそれを上回る要素が、実質的に重複する、同じである、および/または相互に並ぶことを含意する。1つまたはそれを上回る場所(例えば、撮像場所)における1つまたはそれを上回る細胞培養容器の実質的整合は、取得されるべき細胞培養容器の重複画像を可能にすることによって、サンプルの分析を促進し得る。例えば、細胞培養容器は、第1の撮像機によって、第1の撮像場所において撮像され、続いて、第2の撮像機によって、第2の撮像場所において撮像されてもよい。個別の撮像機の撮像場が、実質的に整合される場合、第1および第2の撮像機によって記録される画像は、分析のために組み合わせられてもよい(「ともにステッチングされる」)。1つまたはそれを上回る細胞培養容器上に存在する、1つまたはそれを上回る基準マークは、実質的整合を促進し得る。ある場合には、1つまたはそれを上回る撮像または他の場所(例えば、操作または保守場所)に存在する、1つまたはそれを上回る基準マークは、実質的整合を促進し得る。
【0105】
本明細書で使用されるように、「細胞を操作するためのマニピュレータ」は、内部チャンバ内の細胞を操作するためのデバイスを指す。マニピュレータは、1つまたはそれを上回るニードル、毛細管、ピペット、および/またはマイクロマニピュレータを含んでもよい。例えば、マニピュレータは、細胞ピッカを含んでもよい。細胞を操作するためのマニピュレータは、所定の基準に基づいて、第1の場所に存在する望ましい細胞またはその群を検出し、所望の細胞またはその群を第1の場所から第2の場所に移送することによって動作し得る。細胞ピッカは、手動または自動化された分析に基づいて、望ましいまたは望ましくない(例えば、事前に分化された細胞間引き)細胞またはその群を検出する、取り上げる、および/または移送してもよい。いくつかの実施形態では、撮像機によって生成された情報は、分析され、望ましいまたは望ましくない細胞を検出してもよい。細胞ピッカは、次いで、望ましいまたは望ましくない細胞を第2の場所に移送してもよい。例えば、撮像機は、撮像場所における細胞培養容器内または上の細胞を撮像し、画像は、望ましいもしくは望ましくない細胞またはその群を識別するために使用されてもよい。細胞ピッカは、次いで、例えば、各所望の細胞または複数の細胞にニードル、毛細管、ピペット、またはマイクロマニピュレータで接触し、その第1の場所から内部チャンバ内の細胞培養容器または他の場所内または上の第2の場所に細胞もしくは複数の細胞の移動をもたらすことによって、望ましいまたは望ましくない細胞を移送してもよい。いくつかの実施形態では、細胞の第1の場所は、細胞培養容器内または上であってもよい。特定の実施形態では、細胞ピッカは、細胞を細胞培養容器内または上の第1の場所から同一細胞培養容器上の第2の場所に移送する。他の実施形態では、細胞ピッカは、細胞を第1の細胞培養容器内または上の第1の場所から第2の細胞培養容器内もしくは上の第2の場所に移送する。ある他の実施形態では、細胞ピッカは、細胞を細胞培養容器内または上の第1の場所から細胞培養容器内もしくは上ではない内部チャンバ内の第2の場所に移送する。
【0106】
いくつかの実施形態では、マニピュレータは、少なくとも1つのマイクロ電極を含む。本明細書で使用されるように、用語「マイクロ電極」は、電気刺激を細胞に送達するために使用される、電気導体を指す。例えば、マイクロ電極は、エレクトロポレーションによって、遺伝子材料を細胞の中に送達するために使用されることができる。いくつかの実施形態では、マニピュレータは、少なくとも1つのマイクロ注入器を含む。概して、マイクロ注入器は、細胞の膜を穿刺し、細胞の中への遺伝子材料の導入のための導管としての役割を果たすことが可能な鋭的中空構造を形成するように引き延ばされている、ガラスマイクロピペットである。
【0107】
いくつかの実施形態では、マニピュレータは、手動で動作される。例えば、インキュベータの内部チャンバキャビネットの内側に位置する細胞ピッカを有する、は、マニピュレータは、インキュベータの内部チャンバキャビネットの外側に位置するユーザ指示用ジョイスティックに電子的にリンクされ、それによって制御されてもよい。いくつかの実施形態では、ユーザ指示用ジョイスティックは、ディスプレイデバイスに接続される。いくつかの実施形態では、ディスプレイデバイスは、インキュベータの内部チャンバキャビネットの内側の撮像デバイスによって捕捉された画像を示す。
【0108】
いくつかの実施形態では、マニピュレータは、自動化される。例えば、インキュベータキャビネットの内部チャンバの内側のマニピュレータは、インキュベータのキャビネットの外側のコントローラに電子的に接続されてもよく、これは、マニピュレータに指示する、コンピュータに電子的に接続される。例えば、コントローラは、マニピュレータに、真空をマニピュレータに流動的に接続される1つまたはそれを上回るピペット先端に印加するように命令してもよい。
【0109】
細胞を操作するためのマニピュレータの1つまたはそれを上回る要素は、操作に先立って、例えば、滅菌組成物または方法(例えば、エタノールまたはオゾンガス、UV光、過酸化水素)を使用して、滅菌されてもよい。
【0110】
本明細書で使用されるように、「操作場所」は、細胞が細胞を操作するためのマニピュレータ(例えば、細胞ピッカ)によって操作される、場所を指す。ある実施形態では、操作場所は、撮像場所と同一であってもよい。
【0111】
一側面によると、細胞培養インキュベータは、撮像場所および操作場所を伴う、インキュベータキャビネットを含む。細胞培養容器の細胞は、撮像機によって撮像場所で撮像され、マニピュレータによって操作場所で操作される。いくつかの実施形態では、撮像場所および操作場所は、インキュベータキャビネット内の2つの明確に異なる場所である。細胞培養インキュベータは、細胞培養容器を撮像場所と貯蔵場所との間で移動させる、移送デバイスを含んでもよい。他の実施形態では、撮像場所および操作場所は、培養容器の細胞が操作場所において撮像されるように同一である。
【0112】
いくつかの実施形態では、撮像機は、マニピュレータと併用されてもよい。例えば、撮像機は、撮像場所における細胞培養容器内または上の細胞を撮像し、画像は、望ましい細胞またはその群を識別するために使用されてもよい。撮像場所内に常住してもよい、またはそうではなくてもよい、細胞ピッカは、次いで、例えば、各所望の細胞または複数の細胞にニードル、毛細管、ピペット、またはマイクロマニピュレータで接触し、その第1の場所から細胞培養容器内または上の第2の場所もしくは内部チャンバ内の他の場所への細胞または複数の細胞の移動をもたらすことによって、望ましいまたは望ましくない細胞を移送してもよい。いくつかの実施形態では、細胞ピッカは、細胞を細胞培養容器内または上の第1の場所から同一細胞培養容器上の第2の場所に移送する。他の実施形態では、細胞ピッカは、細胞を第1の細胞培養容器内または上の第1の場所から第2の細胞培養容器内または上の第2の場所に移送する。ある他の実施形態では、細胞ピッカは、細胞を細胞培養容器内または上の第1の場所から細胞培養容器内もしくは上にない内部チャンバ内の第2の場所に移送する。
【0113】
いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネット内の単一場所が、撮像場所および操作場所としての役割を果たしてもよい。一実施形態では、細胞は、マニピュレータによって操作されるにつれて撮像される。いくつかの実施形態では、撮像場所および操作場所は、インキュベータキャビネット内の別個の場所にあってもよい。
【0114】
いくつかの実施形態では、マニピュレータは、その位置を報告し、細胞培養容器の底に触れたときを判定することを可能にする、センサを含む。いくつかの実施形態では、撮像機は、再現性および正確度を達成するために、マニピュレータを誘導するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、マニピュレータにおけるコンプライアンス(例えば、ばね反応性)が、極限の機械的正確度の必要性を緩和するために使用されてもよい。
【0115】
いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回るマニピュレータは、本書に説明されるように、1つまたはそれを上回るピペットを操作するために使用される。いくつかの実施形態では、マニピュレータは、ピペット先端をピペット上に設置する、および/またはそこから除去するために使用される。
【0116】
ここで、図1に目を向けると、図1は、本書の一側面による、ピペットチップ(50)を図示する。本図に示されるように、ピペットチップ(50)は、内部容積を画定し、第1の端部と、第2の端部と(56、54)を有する本体(52)を含む。ピペットチップ(50)はまた、本体(52)の内部容積内に配置されるブラダ(58)を含む。本実施形態では、ブラダ(58)は、第1の端部(56)に向かって拡張する膜(60)によって形成される、膜嚢によって画定される。いくつかの実施形態では、ピペットチップ(50)の第2の端部(54)は、ピペットに取り付けられる(例えば、除去可能に取り付けられる)ように配置される(図5参照)。いくつかの実施形態では、第1の端部(56)は、本体(52)の出口端部である。そのような実施形態では、第1の端部(56)は、本体(52)の内部容積の中および外等、ピペットチップ(50)の中ならびに外に所定の体積の液体を移送するように構成されてもよい。
【0117】
いくつかの実施形態では、図2に示されるように、ブラダ(58)は、ピペットチップ(50)の長手軸Aに対して実質的に垂直である、平面膜(60)によって画定されてもよい。理解されるように、いくつかの実施形態では、膜(60)の少なくとも一部が、重力に応答して、本体の第1の端部(56)に向かって拡張してもよい。いくつかの実施形態では、印加圧力に応答して、平面膜(60)は、前後に移動してもよい。いくつかの実施形態では、印加圧力に応答して、平面膜(60)は、膨張および収縮してもよい。例えば、平面膜(60)は、図2に示される平面膜(60)から図1に示される膜嚢に膨張してもよい。
【0118】
図1に戻ると、いくつかの実施形態では、ブラダ(58)は、本体(52)の第2の端部(54)に取り付けられ、本体の第1の端部(56)に向かって拡張してもよい。そのような実施形態では、ブラダ(58)は、ブラダ(58)の周囲において本体(52)に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、ブラダは、液密シールが、本体(52)とブラダ(58)との間に形成されるように、本体(52)に密閉して取り付けられてもよい。そのような実施形態では、説明されるように、液体は、ブラダが本体に取り付けられる場所においてブラダを越えて進行し得ず、汚染物性が、内部容積の中に進行し得ない。
【0119】
理解されるように、ブラダ(58)は、図1に示される実施形態の第2の端部(54)に取り付けられるが、他の実施形態では、ブラダ(58)は、本体の別の好適な場所に取り付けられてもよい。例えば、図2および3Aに示されるように、ブラダ(58)は、本体(52)の第1の端部と第2の端部と(56、54)との間の場所に取り付けられてもよい。図3Aに示されるように、ブラダ(58)は、依然として、本体(52)の第1の端部(56)に向かって拡張してもよい。いくつかの実施形態では、ブラダ(58)は、本体の第1の端部(56)に向かった途中までのみ拡張してもよい一方、他の実施形態では、ブラダは、本体の第1の端部(56)またはその近傍の位置まで拡張してもよい。図4Aに示されるように、さらに別の実施形態では、ブラダ(58)は、本体(52)の第1の端部(56)またはその近傍に取り付けられてもよい。
【0120】
いくつかの実施形態では、図1図4Aに示されるように、ブラダ(58)は、本体(52)を2つのチャンバ(62、64)に分割する。そのような実施形態では、第1のチャンバ(62)は、ピペットチップの第1の端部(56)、例えば、液体が本体の中および外に移送される場所と流体連通し、第2のチャンバ(64)は、本体(54)の第2の端部と流体連通している。第2のチャンバ(64)はまた、印加圧力(例えば、本書に説明されるような負圧)を受容するために、ピペット(例えば、図5A参照)と流体連通してもよい。そのような実施形態では、ブラダの第1の側は、移送される液体に暴露されてもよい一方、ブラダの第2の対向する側は、ピペットに暴露されてもよい。この点について、ブラダ(58)は、移送される液体からピペットを分離し得る。図5Cに示されるように、例えば、ブラダは、ピペット(66)からピペットチップの中に移送される培養培地を分離し得る。そのような分離は、そのような実施形態では、ピペットと培地との間の汚染を低減またはさらに排除し得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、ブラダ(58)は、ピペットチップ(50)の本体(52)に恒久的に取り付けられる。そのような実施形態では、ブラダ(58)は、ピペットチップに接合、接着、締結、または別様に取り付けられてもよい。ブラダ(58)はまた、ピペットチップに超音波溶接されてもよい。他の実施形態では、ブラダ(58)は、ピペットチップ(50)に除去可能に取り付け可能であってもよい。例えば、ブラダ(58)は、使用に先立って(例えば、ピペットチップの中または外に液体の体積を移送することに先立って)、ピペットチップ(50)の本体(52)上にスナップ嵌合されてもよい。上記に照らして理解されるように、そのような取り付け方法は、ブラダと本体との間に液密シールを形成し得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、ブラダ(58)は、強力であるが可撓性の材料で作製される、膜で形成される。例えば、いくつかの実施形態では、ブラダ(58)は、膨張および収縮し、液体の体積を収容するように配列されてもよい。ブラダ(58)はまた、本体の内側の位置と本体の外側の位置との間に移動され、液体の体積を収容してもよい。いくつかの実施形態では、ブラダ(58)は、エラストマ特性を有してもよい。ブラダ(58)はまた、有機および/または無機金属で作製される膜(60)で形成されてもよい。いくつかの実施形態では、ブラダ(58)は、ポリマー構造を含む。いくつかの実施形態では、ブラダ(58)は、ラテックス材料を含む。いくつかの実施形態では、ブラダ(58)は、ブラダ(58)内に液体を留保するように配列される。そのような実施形態では、ブラダは、無孔および/または液体不浸透性である膜(60)で形成されてもよい。例えば、膜は、疎水性材料で作製されてもよい、または疎水性になるように処理されてもよい。理解されるように、膜のそのような特性は、ピペット(および将来のサンプル)を汚染し得る、移送される液体がピペットチップからピペットの中に通過しないように防止し得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、ブラダ(60)は、平滑な表面を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ブラダ(58)は、折曲部を含まない一方、他の実施形態では、ブラダは、折曲部を含んでもよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、図1に示されるように、ブラダ(58)は、ブラダが静置状態にある(例えば、印加圧力が存在しない)とき、凸面形構成を含んでもよい。そのような実施形態では、ブラダは、ブラダの周囲を通して延在する平面Xの下方に湾曲構成を有してもよい。いくつかの実施形態では、ブラダの少なくとも一部は、印加圧力に応答して、平面Xの他側上に移動してもよい。いくつかの実施形態では、ブラダは、印加圧力に応答して、平面Xの上方に凹面形構成を有してもよい。
【0125】
いくつかの実施形態では、ピペットチップ(50)は、液体のある範囲の体積(例えば、液体の約1μL~約10mLまたはそれを上回るもの)を移送するように構成される。例えば、ピペットチップ(50)は、培養容器とピペットチップとの間、および培養容器に戻るように、または別の培養容器に培養培地を移送するように構成されてもよい。理解されるように、ピペット(66)(図5A参照)等のマニピュレータは、ピペットチップに圧力を印加し、ピペットチップの中および外に液体の所望される体積を移送するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、コントローラが、ピペット(66)にピペットチップの中に液体の所望される体積を移送するように命令するようにプログラムされてもよい。
【0126】
理解されるように、これらの実施例では、ピペットチップによって収容される液体の体積は、ブラダに印加される圧力に比例する。すなわち、ピペットチップの中に引き込まれる(またはその外に分与される)液体の体積は、(例えば、コンテナ内の空気と環境との間の)圧力差の大きさおよび印加圧力の持続時間に依存する。例えば、より大きい負圧をより長い時間周期にわたって印加することは、より少ない負圧を同一の時間周期にわたってブラダに印加することより大きい液体の体積をピペットチップの中に引き込むであろう。したがって、これらの実施形態では、ピペット(66)は、液体の所望される体積に対応する時間周期にわたって、ブラダに圧力を印加するように(例えば、人間の介入を介して、またはコントローラを介して)命令されてもよい。
【0127】
いくつかの実施形態では、ブラダ(58)および/またはピペットチップ(50)は、プラスチック材料を含んでもよい。例えば、ブラダ(58)は、ポリウレタンおよび/またはシリコーン材料を含んでもよい。一実施形態では、ピペットチップ(50)は、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、およびポリスチレン材料を含むが、他の好適な材料もまた、使用されてもよい。いくつかの実施形態では、図1に示されるように、ピペットチップ(50)は、円錐台形状を有してもよいが、他の好適な形状(例えば、円筒形状)もまた、使用されてもよい。
【0128】
図5A-5Eは、ピペットチップ(50)の中および外に細胞(68)を含む所定の体積の培地等の所定の体積の液体を移送するために使用されている、ピペットチップ(50)の実施形態を図示する。図5Aは、ピペット(66)に取り付けられるピペットチップ(50)を示す。本図に示されるように、ブラダ(58)は、ピペットチップを、第1のチャンバ(62)は本体(52)の第1の端部(56)と流体連通し、第2のチャンバ(64)は本体の第2の端部(54)およびピペット(66)と流体連通している、2つのチャンバ(62、64)に分割している。この点について、ブラダは、ピペットから培地培養物を分離し得る。
【0129】
図5C-5Dに示されるように、いくつかの実施形態では、第2のチャンバ(64)は、第1および第2の印加圧力を受容し、それぞれ、ピペットチップ(50)の中ならびに外に所定の体積の液体を移送するように配列される。図5Bに示されるように、ピペットチップ(50)の中に所定の体積の液体を移送し始めるために、ピペットチップ50の第1の端部(56)は、培養容器(70)内に貯蔵される細胞を含む培地(68)の中に挿入される。図5Aおよび5Bに示されるように、ピペットチップ(50)が最初にピペット(66)に取り付けられ、ブラダ(58)に印加されている圧力が存在しないとき、ブラダ(58)は、本体(52)の内側に配置され、第2の端部(54)から第1の端部(56)に向かって拡張する。他の実施形態と同様に、本静置位置では、ブラダは、周囲を通して延在する平面Xの下方に拡張する。図5Cに示されるように、第1の圧力P1がブラダに印加されると、ブラダ(58)は、ピペットチップ(50)の第1の端部(56)から離れる方向に後退され(矢印参照)、したがって、ピペットチップ(50)の中に培地(68)を引き込む。本配列では、ブラダの少なくとも一部は、平面Xの他側上に移動される。
【0130】
図5Cに示されるように、印加圧力に応答して、培地(68)は、本体(52)の中およびピペットチップ(50)のブラダ(58)の中に引き込まれている。理解されるように、他の実施形態では、培地(68)は、ブラダ(58)および本体(52)の一方のみの中に引き込まれてもよい。本書に説明されるように、ピペットチップ本体(52)および/またはブラダ(58)の中に引き込まれる培地のレベルは、印加圧力ならびに印加圧力の持続時間に依存する。
【0131】
いくつかの実施形態では、ブラダ(58)に印加される第1の圧力P1は、負圧であってもよい。本書に説明されるように、そのような負圧は、ブラダ(58)に印加され、したがって、ブラダ(58)を本体(52)の外に後退させ、ピペットチップ(50)の中に培地(68)を引き込ませる、真空を作成し得る。
【0132】
図5Cに示されるように、いくつかの実施形態では、ブラダ(58)は、ピペットチップ(50)の本体(52)の外およびピペット(66)の本体(72)の中に完全に後退されてもよい。他の実施形態では、ブラダ(58)は、ピペット本体(72)の中に部分的にのみ後退されてもよい。さらに他の実施形態では、図3Bおよび4Bに示されるように、ブラダは、圧力が印加されると、ピペットチップ本体の外に後退される必要はない。理解されるように、ピペットチップの本体に対するブラダの移動は、ブラダがピペットチップの本体に取り付けられる位置、およびブラダのサイズならびに伸展性、および印加圧力に基づいて判定されてもよい。例えば、略平面状の膜は、ピペットチップ本体の第2の端部に取り付けられてもよいが、(例えば、ピペットチップ本体の第2の端部を通して延在する平面を越えて)ピペットチップ本体の外に移動可能ではない場合がある。他の実施形態では、図3Aおよび3Bに示されるように、ブラダは、第1の端部と第2の端部との間の中間に位置付けられてもよい。そのような実施形態では、さらにブラダが移動および/または膨張する状態で、ブラダは、ピペットチップの内部容積の外に移動しない。理解されるようにブラダがピペットチップ本体の第1の端部に取り付けられる実施形態では、ブラダは、ブラダが静置位置にあるとき、ピペットチップ本体の第1の端部を越えて外向きに拡張してもよい。
【0133】
図5Cに戻ると、ブラダがピペットチップ本体の外に後退される実施形態では、ブラダは、所定の体積の液体を収容するように配列されてもよい。そのような実施形態では、ブラダ内に収容される液体の体積は、ブラダの容積V1未満またはそれに等しくてもよい。ブラダ内に収容される液体の厳密な体積は、ピペットチップ上に及ぼされる圧力およびブラダがピペットチップ本体を越えて外向きに抽出される量に応じて変動し得る。
【0134】
本書に説明されるように、ピペットチップ(50)は、所定の体積の液体を収容するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、図5Cに示されるように、収容される液体の体積は、ブラダ(58)の容積V1と、ピペットチップ(50)の本体(52)の容積V2との合計未満またはそれに等しくてもよい。本明細書の目的のために、ピペットチップ(50)の本体の容積は、本体(52)の第1の端部(56)とブラダ(58)が本体に取り付けられる場所(例えば、線で標識されるX、すなわち、ブラダの周囲を通して延在する平面参照)との間の容積として定義される。理解されるように、ブラダ(58)が本体の第2の端部(54)に取り付けられる、図5Cに示される実施形態では、本体の容積V2は、第1の端部と第2の端部と(56、54)の間の容積として定義される。しかしながら、ブラダが第1の端部と第2の端部と(56、54)の間の場所に取り付けられる実施形態では、容積は、第1の端部と、中間場所でブラダの周囲を通して延在する平面との間の容積として定義され得る。本明細書の目的のために、ブラダの容積は、本体(52)に取り付けられる膜(60)によって封入される容積として定義される。すなわち、ブラダ(58)の容積は、移動/膨張構成にある膜(60)とブラダが本体に取り付けられる場所(例えば、周囲を通して延在する平面)との間の容積を含み得る。
【0135】
理解されるように、ピペットチップ(50)の中に引き込まれる培地(68)の体積は、ブラダおよびピペットチップ本体の容積の合計によって定義される全体容積を充填する必要はない。したがって、液体の体積は、いくつかの実施形態では、本体の容積と、ブラダの容積との合計未満であってもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、全体体積は、培地によって収容されてもよい。
【0136】
いったん培地(68)がピペットチップ(50)の中に移送されると、培地(68)は、次いで、ピペットチップ(50)の外および同一の培地容器(70)に戻るように移送されてもよい。培地(68)はまた、別の培養容器(70)に移送されてもよい。いずれの状況でも、図5Dに示されるように、第2の圧力P2は、ブラダに印加され、本体(52)の第1の端部(56)に向かってブラダを移動させ(矢印参照)、したがって、ピペットチップから培地を排出してもよい。理解されるように、培地の全体体積が、ピペットチップから排出される必要はない。
【0137】
付加的な液体移送がピペット(66)を介して実施されるべき実施形態では、図5B-5Dに示されるステップが、同一のピペットチップ(50)および培養容器(70)を用いて繰り返されてもよい。いったん移送が終了されると、ピペットチップ(50)は、図5Eに示されるようにピペット(66)から除去されてもよい。ピペットチップ(50)が異なる培養容器と再度併用される実施形態では、ピペットチップ(50)は、新しい培養容器を用いて図5B-5Dに示されるステップを繰り返すことに先立って殺菌されてもよい。理解されるように、ピペットチップ(50)はまた、新しいピペットチップ(50)がピペット(66)に取り付けられているように、各液体移送の後に配置されてもよい。
【0138】
理解されるように、培養培地等の流体を移送するための実施形態が、示され、説明されるが、ピペットチップは、流体の他のタイプ(例えば、空気または水)を移送するために使用されてもよい。
【0139】
いくつかの実施形態では、ピペットチップ(50)は、ピペットチップ(50)をピペット(66)から離れるように引動することによって、ピペット(66)から除去される(図5Eの矢印参照)。他の実施形態では、ピペット(66)は、ピペット(66)からピペットチップ(50)を排出するための排出ボタン(図示せず)を有してもよい。
【0140】
理解されるように、図5A-5Eに示される実施形態は、ピペットチップの中および外に移動(例えば、後退)されているブラダ(58)を図示するが、他の実施形態では、第1ならびに第2の圧力P1、P2は、ブラダを膨張および収縮させ、ブラダの中に液体を引き込むならびにそれから液体を分与してもよい。そのような実施形態では、ブラダは、ピペット(66)の本体(72)の中に膨張されてもよい。
【0141】
さらに理解されるように、図5A-5Eに示される実施形態は、膜嚢によって画定されるブラダを含むが、同一のステップが、平面膜によって画定されるブラダ(58)を有するピペットチップ(50)を用いて繰り返されてもよい。そのような実施形態では、第1の圧力P1は、膜を前後に移動させるために使用されてもよい。他の実施形態では、第1の圧力P1は、膜嚢の中に平面膜を伸展させるために使用されてもよく、これは、その後、液体の体積を収容するために使用される。そのような実施形態では、第2の圧力P2もまた、ピペットチップ(50)の本体の中に伸展されたブラダを戻るように移動させ、ピペットチップ(50)から液体を分与し、膜嚢を平面膜構成に戻すために使用されてもよい。
【0142】
図5A-5Eは、ブラダ(58)がピペット(66)の本体(72)の中に後退可能であるピペット(66)に直接取り付けられている、ピペットチップ(50)を示すが、他の実施形態では、ピペットチップ(50)はさらに、ピペット(66)から分離されてもよい。例えば、図6Aに示されるように、ピペットは、ピペット(66)の本体(72)内に配置され、印加圧力に応答してブラダ(58)を受容するように配列される、ピペットシェル(74)を含んでもよい。そのような実施形態では、図6Bに示されるように、ピペットシェル(74)は、第1の圧力P1に応答してその中にブラダ(58)が後退される本体(76)を含んでもよい。ピペット本体(72)と同様に、ピペットシェル(74)の本体(76)は、ブラダ(58)の容積V1を上回るまたはそれに等しくてもよい。いくつかの実施形態では、ピペットシェル(74)は、ピペット(66)および/またはピペットチップ(50)に除去可能に取り付け可能である。例えば、ピペットシェル(74)は、ピペット(66)にピペットチップ(50)を取り付けることおよびピペットチップ(50)の中に所定の体積の液体を引き込むことに先立って、ピペット(66)ならびに/もしくはピペットチップ(50)に取り付けられてもよい。
【0143】
いくつかの実施形態では、ピペットチップ(50)は、液体がピペットチップ(50)の中および外に引き込まれた後に、ピペットシェル(74)から分離されてもよい。他の実施形態では、ピペットシェル(74)は、ピペットチップ(50)がピペットチップ(50)の中に液体を引き込んだ後にピペットチップ(50)に取り付けられたままであってもよい。そのような実施形態では、液体サンプルが、ピペットチップとともに貯蔵されてもよい。例えば、ピペットシェル(74)は、ピペットチップ(50)がピペット(66)から分離された後、ピペットチップ(50)が直立状態の姿勢で貯蔵され得るように、ピペットチップ(50)に印加される圧力を維持するように配列されてもよい。いったんピペットチップがピペットから分離されると印加圧力が喪失される実施形態では、ピペットチップ(50)およびピペットシェル(74)は、ピペットシェル(74)が後退されたブラダ(液体サンプルを伴う)のための貯蔵部としての役割を果たす状態で、逆転されてもよい。いくつかの実施形態では、カバー(図示せず)が、液体サンプルを貯蔵するためにピペットチップ(50)に取り付けられてもよい。
【0144】
いくつかの実施形態では、圧力が(例えば、ピペット(66)を介して)ピペットチップに印加されることを可能にするように構成される、圧力アプリケータ(78)を含む。いくつかの実施形態では、圧力アプリケータ(78)は、ピペットシェル(74)内に、それを通して圧力がブラダに印加され得る開口部を含む。他の実施形態では、圧力アプリケータ(78)は、ブラダへの印加圧力(例えば、負圧)を調整するための弁を含んでもよい。
【0145】
いくつかの実施形態では、ピペットシェルは、ピペットチップおよびブラダに類似する材料で作製されてもよい。例えば、ピペットシェルは、プラスチック材料で作製されてもよい。理解されるように、ピペットシェルは、堅性な材料で作製されてもよく、したがって、取り付けられたピペットチップおよびピペットシェルが逆転された後、ピペットシェルが表面上に安定して静置することを可能にする。
【0146】
そのような実施形態では、ピペットシェル(74)は、使い捨てであってもよいが、ピペットシェル(74)はまた、再利用可能であってもよい。ピペットシェルが再利用可能である実施形態では、ピペットシェルは、使用の間に殺菌されてもよい。
【0147】
図7は、ピペットチップ(50)が細胞培養インキュベータ内で使用される、実施形態を図示する。細胞培養インキュベータは、1つまたはそれを上回る細胞培養容器内の細胞のインキュベーションのための内部チャンバ(100)を有する、インキュベータキャビネットを含む。インキュベータキャビネットは、外部環境とインキュベータキャビネットとの間の連通を可能にするために開閉する、外部ドア(101)を含む。いくつかの実施形態では、外部ドアは、開閉し、外部環境と内部チャンバとの間の連通を可能にする。内部チャンバは、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を保持するように構成される。1つまたはそれを上回る細胞培養容器は、貯蔵場所(102)内に貯蔵される。いくつかの実施形態では、貯蔵場所は、自立式構造である。例えば、貯蔵場所は、培養容器を装填および装填解除するために、インキュベータの内部チャンバから除去されることができる、試験管または培養フラスコラックであってもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所は、内部チャンバの表面に添着される。例えば、貯蔵場所は、内部チャンバの壁または床に接続され、したがって、インキュベータキャビネットから除去されることが不可能である、一連のラックまたは棚であってもよい。
【0148】
いくつかの実施形態では、細胞培養インキュベータは、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を移動させるための細胞培養容器移送デバイス(103)を含む。細胞培養移送デバイスは、インキュベータの内部チャンバの任意の適切な表面に添着されてもよい。例えば、細胞培養容器移送デバイスは、内部チャンバの上部または天井に添着されてもよい。代替として、細胞培養容器移送デバイスは、内部チャンバの側壁に添着されてもよい。いくつかの実施形態では、細胞培養容器移送デバイスは、内部チャンバの壁に添着されない。例えば、細胞培養容器移送デバイスは、内部チャンバの周囲に移動されることができる、車輪付き三脚または他のモバイル構造上に静置してもよい。
【0149】
いくつかの実施形態では、移送デバイスは、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を貯蔵場所(102)から撮像場所(105)または操作場所(107)に移動させる。移送デバイス(103)はまた、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を撮像場所(105)から操作場所(107)に、または操作場所(107)から撮像場所(105)に移動させることができる。撮像または操作が完了すると、移送デバイス(103)は、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を撮像場所(105)または操作場所(107)から貯蔵場所(102)に移動させる。
【0150】
いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、第1の撮像場所(105)および操作場所(107)を含む。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る撮像場所は、撮像機と反対の内部チャンバの表面上に位置する。いくつかの実施形態では、撮像場所は、プラットフォーム、自立式であるか、または内部チャンバの表面に添着されるかのいずれかである。いくつかの実施形態では、プラットフォームは、移動可能である。例えば、可動プラットフォームは、プラットフォームが、撮像機に関連して、左、右、前方、後方、上、または下に移動されることを可能にする、2つまたはそれを上回るロッドに添着されてもよい。いくつかの実施形態では、可動プラットフォームは、モータ式である。
【0151】
いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、容器が第1の撮像場所(105)にあるとき、細胞培養容器の細胞を撮像する、第1の撮像機(104)を含む。いくつかの実施形態では、第1の撮像機は、明視野顕微鏡である。いくつかの実施形態では、第1の撮像機は、ホログラフィック顕微鏡である。
【0152】
いくつかの実施形態では、マニピュレータ(106)は、容器が操作場所(107)にあるとき、細胞培養容器の細胞を操作する。いくつかの実施形態では、マニピュレータは、ニードル、毛細管、ピペット、および/またはマイクロマニピュレータのアレイを有する。例えば、マニピュレータは、細胞ピッカを含んでもよい。いくつかの実施形態では、マニピュレータは、細胞ピッカを有する。概して、操作場所は、本明細書に説明されるように、多くの特性を撮像場所と共有する。
【0153】
図7に示されるように、マニピュレータ(106)は、ピペットチップ(50)の中および外に細胞を含む所定の体積の培地を移送するために、開示されるピペットチップ(50)のうちの2つと流体連通してもよい。理解されるように、マニピュレータ(106)は、いくつかの実施形態では、1つのピペットチップのみ、または他の実施形態では、3つまたはそれを上回るピペットチップと流体連通してもよい。いくつかの実施形態では、マニピュレータは、ピペットチップのアレイと流体連通してもよい。そのような実施形態では、マニピュレータは、ブラダを操作する(例えば、移動させる、後退させる、膨張させる、収縮させる、または伸展させる)ために、第1および第2の圧力を印加してもよい。
【0154】
図8は、細胞培養インキュベータの別の例証的実施形態を描写する。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、第2の撮像機(108)を有する。第2の撮像場所は、操作場所(107)またはその近傍にあってもよい。いくつかの実施形態では、第2の撮像場所および操作場所(107)は、同一場所である。いくつかの実施形態では、第2の撮像機(108)は、細胞がマニピュレータ(106)によって操作される間、細胞培養容器の細胞を撮像する。いくつかの実施形態では、第2の撮像機は、明視野顕微鏡である。いくつかの実施形態では、第2の撮像機は、ホログラフィック顕微鏡である。
【0155】
図9は、細胞培養インキュベータのある例証的実施形態を描写する。いくつかの実施形態では、細胞培養インキュベータは、同一場所(105)である、撮像場所および操作場所を有する。前述の実施形態と同様に、マニピュレータ(106)は、ピペットチップの中および外に細胞を含む培地の体積を移送するために、1つまたはそれを上回るピペットチップ(50)と流体連通してもよい。
【0156】
図10は、細胞培養インキュベータのさらなる構成要素の例証的実施形態を描写する。理解されるように、さらなる構成要素は、前の実施形態または図のうちの1つに別様に列挙または図示されていない、インキュベータの任意の構成要素である。いくつかの実施形態では、細胞培養インキュベータは、バーコード化された細胞培養容器(109)を含む。したがって、いくつかの実施形態では、細胞培養インキュベータは、インキュベータの内部チャンバキャビネットの内側に位置する、バーコードスキャナ(110)を有する。いくつかの実施形態では、バーコード読取機は、コンピュータ(111)と通信し、バーコードが走査された細胞培養容器についての情報を中継する。ある場合には、バーコードスキャナは、内部チャンバの任意の表面に添着されてもよい。例えば、バーコードスキャナは、撮像場所(105)に近接近して、内部チャンバの壁に添着されることができる。
【0157】
いくつかの実施形態では、細胞培養インキュベータは、内部チャンバ内の環境条件を測定する、少なくとも1つのプローブおよび/または少なくとも1つのセンサ(113)を含む。環境条件を測定するためのプローブの実施例は、限定ではないが、温度プローブ、圧力プローブ、二酸化炭素(CO)センサ、酸素(O)センサ、および相対湿度センサを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプローブおよび/または少なくとも1つのセンサが、器具筐体(112)内に位置する。少なくとも1つのプローブおよび/または少なくとも1つのセンサは、コントローラ(114)に接続される。いくつかの実施形態では、コントローラ(114)は、コンピュータ(111)と通信する。加えて、コントローラ(114)は、流体分与システム(115)と通信してもよい。例えば、COセンサが、内部チャンバ内の低COレベルを示す場合、コントローラ(114)は、内部チャンバのCOレベルを増加させるために、流体分与システム(116)に、COガスを内部チャンバの中に注入するように指示してもよい。
【0158】
理解されるように、コントローラ(114)はまた、マニピュレータ(106)と通信し、ピペットチップ(50)の中および外に所定の体積の液体を移送してもよい。例えば、コントローラは、マニピュレータ(106)に、細胞培養容器の中にピペットチップを位置付けるように命令してもよい。次いで、コントローラは、マニピュレータに、第1の圧力(例えば、負圧)を、ピペットチップ(50)の第2の端部(54)(例えば、ピペットの本体および/またはブラダ(58)の中に細胞培養の細胞を含む所定の体積の培地を引き込むように、膜(60))に印加するように命令してもよい。コントローラ(114)は、その後、マニピュレータ(106)に、ピペットチップ(50)の第2の端部に第2の圧力を印加し、ピペットチップ(50)から培地の体積を排出するように命令してもよい。理解されるように、かつ図5Eおよび5Eに示されるように、第2の圧力(例えば、空気圧)に応答して、ブラダ(58)は、ピペットチップ(50)の中に戻るように移動され、ピペットチップ(50)から所定の体積の液体を分与してもよい。
【0159】
いくつかの実施形態では、ブラダは、空気源および/または真空源からピペットチップ(50)内の液体を分離するように配列される。図11Aに示されるように、ブラダは、ピペット(66)の本体(72)内のポンプ(80)から液体を分離してもよい。理解されるように、ポンプ(80)は、ブラダ(58)に圧力を印加するために使用される。他の実施形態では、図11Bに示されるように、ブラダ(58)は、ブラダ(58)に圧力を印加する液体導管(82)から液体を分離してもよい。そのような実施形態では、液体導管(82)は、ブラダ(58)に印加される圧力を調整および印加する、弁(84)、ポンプ(86)、ならびに加圧空気または流体の供給部(88)に接続されてもよい。理解されるように、いずれか一方のシステムが、細胞培養インキュベータ内で使用され得る。
【0160】
さらに理解されるように、実施形態は、本体内にブラダを有するものとして示され、説明されるが、他の実施形態では、膜は、ピペットから液体を分離すること、およびピペットチップが再利用されることを可能にするために好適な他の構造を形成してもよい。
【0161】
本書の別の側面によると、図12および13に示されるように、ピペットチップ(50)は、入れ子式であってもよい。その点について、第1のピペットチップ(50a)は、第2のピペットチップ(50b)内に入れ子になっていてもよく、これは、ひいては、第3のピペットチップ(50c)内に入れ子になっていてもよい。いくつかの実施形態では、入れ子になっているピペットチップは、図13に示されるもの等、カートリッジ(92)の筐体(90)内に密集して貯蔵されてもよい。いくつかの実施形態では、カートリッジ(92)は、ピペット上にピペットチップ(50)を装填するために使用されてもよい。図13に示されるように、ピペット(66)は、ピペットがピペットチップ(50)と整合されるまでカートリッジに向かって移動されてもよい。ピペットは、次いで、第1または上部ピペットチップ(50a)が(例えば、スナップ嵌合取り付けを介して)ピペット(66)に取り付けられるまで、ピペットチップのスタックに向かって下向きに(矢印標識されるD参照)圧接されてもよい。そのような装填プロセスは、手動で実施されてもよい、または自動化されてもよい。
【0162】
理解されるように、カートリッジは、3つの入れ子になっているピペットチップ(50)を示すが、カートリッジは、他の実施形態では、より多いまたはより少ないピペットチップを有してもよい。さらに理解されるように、ピペットチップは、カートリッジ内に入れ子になっていてもよいが、ピペットチップは、他の配列を有してもよい。
【0163】
自動化された細胞培養
本文書は、細胞を制御条件下(例えば、無菌および/または滅菌条件下)で培養、操作、および/または監視するためのインキュベータおよび方法に関する。いくつかの側面では、インキュベータおよび方法は、自動化された構成要素を含む。いくつかの側面では、インキュベータおよび方法は、長期細胞培養のために有用である(例えば、組み換えタンパク質の発現のために細胞を成長および維持するため、または埋込等の治療用途のための細胞を成長および/または分化する)。いくつかの実施形態では、細胞培養は、本明細書に説明されるインキュベータ内の培養容器の中で成長される。
【0164】
培養容器
細胞培養容器は、真核または原核細胞を含む、異なるタイプの細胞を培養するために構成されてもよい。いくつかの実施形態では、細胞は、哺乳類細胞(例えば、ヒト細胞、イヌ細胞、ウシ細胞、ヒツジ細胞、ネコ細胞、またはウサギ、マウス、もしくはラット細胞等の齧歯類細胞)である。いくつかの実施形態では、細胞は、昆虫細胞、鳥類細胞、微生物細胞(例えば、Saccharomyces cerevisiae、Kluyveromyces lactis、またはPischia pastoris細胞等の酵母細胞、またはEscherichia coli、Bacillus subtilis、またはCorynebacterium細胞等の細菌細胞)、昆虫細胞(例えば、Drosophila細胞またはSf9もしくはSf21細胞)、植物細胞(例えば、藻類細胞)、または任意の他のタイプの細胞である。
【0165】
いくつかの実施形態では、細胞は、天然生成物(例えば、タキソール、顔料、脂肪酸、バイオ燃料等)を生成するために培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、組み換え生成物(例えば、抗体、ホルモン、成長因子、または他の治療用ペプチドもしくはタンパク質等の組み換えタンパク質生成物)を発現させるために培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、対象内の欠失または欠乏している細胞、組織、もしくは器官機能を提供または補完するために、対象(例えば、ヒト対象)の中への埋込等の治療用の使用のために増殖および/または分化される。
【0166】
いくつかの実施形態では、細胞は、不死化細胞株に由来する。細胞株の非限定的実施例は、ヒト細胞、例えば、HeLa細胞、前立腺癌細胞(例えば、DU145、PC3、および/またはLncap細胞)、乳癌細胞(例えば、MCF-7、MDA-MB-438、および/またはT47D細胞)、急性骨髄性白血病細胞(例えば、THP-1細胞)、膠芽腫細胞(例えば、U87細胞)、神経芽腫細胞(例えば、SHSY5Y細胞)、骨癌細胞(例えば、Saos-2細胞)、および慢性骨髄性白血病細胞(例えば、KBM-7細胞)を含む。いくつかの実施形態では、細胞株は、霊長類細胞株、齧歯類細胞株(例えば、ラットまたはマウス細胞株)、イヌ細胞株、ネコ細胞株、Zebrafish細胞株、Xenopus細胞株、植物細胞株、または任意の他の細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、ヒト293細胞(例えば、293-TまたはHEK293細胞)、ネズミ3T3細胞、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞、CML T1細胞、またはJurkat細胞である。
【0167】
いくつかの実施形態では、細胞は、初代細胞、フィーダ細胞、または幹細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、対象(例えば、ヒト対象)から単離される。いくつかの実施形態では、細胞は、組織または生検サンプルから単離された初代細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、造血細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、幹細胞、例えば、胚性幹細胞、間葉系幹細胞、癌幹細胞等である。いくつかの実施形態では、細胞は、限定ではないが、固形組織および器官を含む、組織または器官(例えば、ヒト組織または器官)から単離される。いくつかの実施形態では、細胞は、胎盤、臍帯、骨髄、肝臓、臍帯血を含む血液、または任意の他の好適な組織から単離されることができる。いくつかの実施形態では、患者特異的細胞が、培養(例えば、細胞増殖および随意に分化のために)および同一患者または異なる患者の中への後続再埋込のために患者から単離される。故に、いくつかの実施形態では、本明細書に説明されるインキュベータ内で成長される細胞は、同種または自家療法のために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるインキュベータ内で成長される細胞は、免疫療法を提供する目的のために、遺伝子的に修飾され、増殖され、および患者の中に再導入されてもよい(例えば、キメラ抗原受容体療法(CAR-T)またはCRISPR/Cas修飾細胞の送達)。
【0168】
いくつかの実施形態では、初代細胞培養は、上皮細胞(例えば、角膜上皮細胞、乳房上皮細胞等)、線維芽細胞、筋芽細胞(例えば、ヒト骨格筋筋芽細胞)、ケラチノサイト、内皮細胞(例えば、微小血管内皮細胞)、経細細胞、平滑筋細胞、造血細胞、胎盤細胞、またはその2つもしくはそれを上回るものの組み合わせを含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、細胞は、組み換え細胞(例えば、ハイブリドーマ細胞または1つまたはそれを上回る組み換え生成物を発現する細胞)。いくつかの実施形態では、細胞は、1つまたはそれを上回るウイルスに感染している。
【0170】
初代細胞単離
いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に提供されるインキュベータ内でのエクスビボ培養のために組織または生物学的サンプルから単離される。いくつかの実施形態では、細胞(例えば、白血球)が、血液から単離される。いくつかの実施形態では、細胞は、物理的および/または酵素的崩壊を使用して、組織または生物学的サンプルから解放される。いくつかの実施形態では、コラゲナーゼ、トリプシン、またはプロナーゼ等の1つまたはそれを上回る酵素が、細胞外基質を消化させるために使用される。いくつかの実施形態では、組織または生物学的サンプルは、培養培地内に設置され(例えば、物理的または酵素的崩壊の有無を問わず)、解放され、培養培地中で成長される、細胞は、さらなる培養のために単離されることができる。
【0171】
細胞培養
本明細書で使用されるように、細胞培養は、制御条件(例えば、エクスビボ)下で細胞を維持および/または成長させるための手順を指す。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞成長および複製を助長するための条件、組み換え生成物の発現を助長するための条件、分化を助長するための条件(例えば、1つまたはそれを上回る組織特異的細胞タイプに)、またはその2つもしくはそれを上回るの組み合わせ下で培養される。
【0172】
いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、懸濁液中の細胞を培養するために構成される。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、粘着細胞を培養するために構成される。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、2Dまたは3D細胞培養のために構成される。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、1つまたはそれを上回る表面またはマイクロ担体を含み、細胞成長を支持する。いくつかの実施形態では、これらは、細胞外基質成分(例えば、コラーゲン、フィブリン、および/またはラミニン成分)でコーティングされ、接着性質を増加させ、成長および分化のために必要とされる他の信号を提供する。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、ポリアクリルアミドまたはポリエチレングリコール(PEG)ゲル等の1つまたはそれを上回る合成ヒドロゲルを含み、細胞成長を支持する。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、埋設された栄養素(例えば、ある細菌または酵母培養のために、例えば、ゲルまたは藻類)を伴う、固体支持体を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、液体培養培地を含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、細胞は、任意の好適な培養培地のうちの1つ内で培養される。異なる範囲のpH、グルコース濃度、成長因子、および他のサプリメントを有する、異なる培養培地が、異なる細胞タイプまたは異なる用途のために使用されることができる。いくつかの実施形態では、Dulbecco’s Modified Eagle培地、Minimum Essential培地、RPMI培地、HAもしくはHAT培地、またはLife Technologiesもしくは他の商業的供給源から利用可能な他の培地等のカスタム細胞培養培地または市販の細胞培養培地が、使用されることができる。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、血清(例えば、ウシ胎児血清、仔ウシ血清、ウマ血清、ブタ血清、または他の血清)を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、血清がない。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、ヒト血小板溶解物(hPL)を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、1つまたはそれを上回る抗生物質(例えば、アクチノマイシンD、アンピシリン、カルベニシリン、セフォタキシム、ホスミドマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ペニシリン、ペニシリンストレプトマイシン、ポリミキシンB、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、または任意の他の好適な抗生物質もしくはその2つもしくはそれを上回る任意の組み合わせ)を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、1つまたはそれを上回る塩類(例えば、平衡塩類、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム等)を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、炭酸水素ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、1つまたはそれを上回る緩衝剤(例えば、HEPESまたは他の好適なバッファ)を含む。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回るサプリメントが、含まれる。サプリメントの非限定的実施例は、還元剤(例えば、2-メルカプトエタノール)、アミノ酸、コレステロールサプリメント、ビタミン、トランスフェリン、界面活性剤(例えば、非イオン界面活性剤)、CHOサプリメント、初代細胞サプリメント、酵母溶液、またはその2つもしくはそれを上回るものの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る成長または分化因子は、細胞培養培地に添加される。成長または分化因子(例えば、WNT系タンパク質、BMP系タンパク質、IGF系タンパク質等)は、個々にまたは組み合わせて、例えば、特定系統への分化を引き起こす異なる因子を含む分化混合物として、添加されることができる。成長または分化因子および液体培地の他の側面は、インキュベータ内で統合される自動化された液体ハンドラを使用して添加されることができる。
【0174】
いくつかの側面では、本明細書に説明されるデバイスおよび方法は、細胞成長のために適切な温度およびガス混合物を提供および維持する。細胞成長条件は、異なる細胞タイプに関して異なり、本明細書に説明されるデバイスは、異なる条件を維持するようにプログラムされることができることを理解されたい。いくつかの実施形態では、約37℃および5%COの条件が、哺乳類細胞に関して使用される。
【0175】
いくつかの実施形態では、本明細書に説明されるデバイスおよび方法が、ピペットチップから液体を吸引ならびに/もしくは分与するために適切な圧力を生成するために使用される。例えば、マニピュレータ(106)は、ブラダに印加されている圧力(例えば、ピペットチップ内の空気圧と環境の空気圧との間の圧力差)を監視するセンサを含んでもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に説明されるデバイスおよび方法が、培養の培地または条件を修正もしくは変更し、適切なときに細胞を通過させるために使用される。いくつかの実施形態では、本デバイスおよび方法は、自動化される(例えば、図7に示されるように、コントローラ(114)ならびに/もしくはコンピュータ(111)によって制御される)。
【0176】
いくつかの実施形態では(例えば、付着細胞培養のため)、培養培地は、直接、吸引によって除去され、新しい培地と交換されることができる。いくつかの実施形態では(例えば、非付着/懸濁液培養のために)、培地変更は、細胞培養物を遠心分離し、古い培養培地を除去し、それと新しい培地を交換することを伴うことができる。いくつかの実施形態では、遠心分離機が、インキュベータの内部チャンバ内に位置する。いくつかの実施形態では、培養容器は、連続培地交換を可能にする。いくつかの実施形態では、本明細書に説明されるインキュベータは、培養培地の異なる側面を処理、交換、供給、および/または維持し、細胞を支持するために使用され得る、1つまたはそれを上回る構成要素を含んでもよい。インキュベータは、廃棄培地を含むリザーバおよび/または新しい培地を含むリザーバを含んでもよい。そのようなリザーバは、(例えば、一時的貯蔵のために)インキュベータの内側の冷蔵庫またはインキュベータの冷蔵区分内に存在してもよい。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回るリザーバが、インキュベータの外側に提供され、液体ハンドラユニット(例えば、吸引器を有する液体ハンドルユニット)またはインキュベータ内の一時的リザーバから供給または引出するために、配管が、インキュベータ空間の内外に提供され、細胞給送、培地変更、および他の関連必要性を促進する。懸濁細胞に関して、デバイス(例えば、細胞分画を促進するための遠心分離機)が、インキュベータ内に提供され、細胞を廃棄培地から分離し、本明細書に提供されるインキュベータの一部として自動化された培地変更を促進してもよい。いくつかの実施形態では、本書は、細胞培養の最適成長のために、細胞培養条件を自動的に監視および調節可能である、コンピュータに接続された細胞培養インキュベータを備える、システムを提供する。
【0177】
いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に説明されるインキュベータ内で継代される。いくつかの実施形態では、細胞培養物は、分裂され、細胞培養物のサブセットは、さらなる成長のために、新しい培養容器に移送される。いくつかの実施形態では(例えば、付着細胞培養のために)、細胞は、新しい培養容器に移送されることに先立って、表面から剥離される(例えば、機械的に、例えば、優しい掻爬を使用して、および/または酵素的に、例えば、トリプシン-EDTAもしくは1つまたはそれを上回る他の酵素を使用して)。いくつかの実施形態では(例えば、懸濁細胞培養のために)、小体積の細胞培養が、新しい培養容器に移送される。
【0178】
いくつかの実施形態では、細胞培養は、本明細書に説明されるインキュベータおよび容器内での培養の間、他の方法で操作される。例えば、細胞培養は、核酸(例えば、DNAまたはRNA)でトランスフェクトされる、またはウイルス感染に暴露されてもよい(例えば、組み換えウイルス粒子を使用して、DNAまたはRNAを送達する)。
【0179】
無菌技法は、使用され、成長および操作の間、細胞培養の汚染を防止または最小限にすることができる。いくつかの実施形態では、細胞培養のために使用される機器(例えば、ピペット、流体取扱デバイス、操作デバイス、他の自動化、またはロボットデバイス等)は、適切な技法を使用して滅菌される。非限定的技法は、本明細書に説明されるように、熱暴露(例えば、高圧蒸気殺菌)、表面消毒(例えば、アルコール、漂白剤、または他の消毒剤を使用して)、照射、および/または消毒ガス(例えば、オゾン、過酸化水素等)への暴露を含む。いくつかの実施形態では、培地は、適切な技法を使用して滅菌される。非限定的技法は、熱暴露(例えば、高圧蒸気殺菌)、抗菌/抗ウイルス処置、濾過、および/または照射を含む。
【0180】
いくつかの実施形態では、細胞培養の操作は、無菌条件下、例えば、消毒され、空気が濾過され、潜在的汚染物質を除去した環境(例えば、インキュベータチャンバ)内で実施される。
【0181】
いくつかの実施形態では、細胞培養は、GMP準拠培地またはGMP準拠液体取扱機器を使用して、標準作業手順(SOP)と併せて方法を実施することを含め、GMP準拠条件下で成長および維持される。
【0182】
いくつかの実施形態では、細胞培養は、監視および/または評価され、汚染を検出することができる。いくつかの実施形態では、異なるタイプの微生物からの細胞による汚染が、検出されることができる。いくつかの実施形態では、マイコプラズマ、細菌、酵母、またはウイルスによる哺乳類細胞培養の汚染は、任意の好適な技法を使用して検出されることができる。いくつかの実施形態では、細胞培養汚染は、汚染(例えば、細菌または酵母による)の特性であって、培養物中で成長されている細胞(例えば、哺乳類細胞)の特性ではない、pH、濁度等の1つまたはそれを上回る培養性質の変化または変化率をアッセイすることによって検出されることができる。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る分子検出アッセイ(例えば、PCR、ELISA、RNA標識、または他の酵素技法)または細胞ベースのアッセイが、汚染(例えば、マイコプラズマ、細菌、酵母、ウイルス、または他の汚染)を検出するために使用されることができる。
【0183】
いくつかの実施形態では、細胞培養は、類似タイプの細胞による汚染(例えば、異なるヒト細胞または異なる哺乳類細胞によって汚染されたヒト細胞株)を検出するように監視および/または評価されることができる。いくつかの実施形態では、細胞培養およびその潜在的汚染は、DNAシーケンシングまたはDNAフィンガプリント法(例えば、短鎖縦列反復配列-STR-フィンガプリント法)、アイソザイム分析、ヒトリンパ球抗原(HLA)判定、染色体分析、核型分析、細胞形態、または他の技法を使用して評価されることができる。
【0184】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるデバイスおよび方法を使用して生成される細胞は、後の使用および/または輸送のために、それらを冷凍して保存することができる。いくつかの実施形態では、細胞は、成長および/または分化後、凍結に先立って、凍結保存組成物と混合される。凍結保存組成物は、細胞培養容器に添加されることができる、または細胞は、細胞培養容器から凍結保存容器に凍結保存組成物とともに移送されることができる。凍結保存組成物中に含まれる得る凍結保護物質の非限定的実施例は、DMSO、グリセロール、PEG、スクロース、トレハロース、およびデキストロースを含む。いくつかの実施形態では、凍結装置が、インキュベータ内またはそれに近接して存在し、細胞培養から単離された細胞の凍結を促進してもよい。
【0185】
細胞培養インキュベータ:
本書は、制御条件下(例えば、無菌および/または滅菌条件下)で細胞を培養、操作、および/または監視するためのインキュベータおよび方法に関する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される細胞培養インキュベータは、1つまたはそれを上回る細胞培養容器内の細胞のインキュベーションのための内部チャンバを画定する、インキュベータキャビネットを含み、内部チャンバは、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を保持するように構成される。ある場合には、移送チャンバから内部チャンバへの内部ドアに加え、インキュベータは、外部環境から直接内部チャンバに開放し、例えば、インキュベータが動作していない時間の間、例えば、インキュベータの保守の間、内部チャンバへの代替アクセスを提供する、少なくとも1つの外部ドア(例えば、1、2、3、4、またはそれを上回る外部ドア)を含む。いくつかの実施形態では、インキュベータは、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を貯蔵するための内部チャンバ内の貯蔵場所を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養容器移送デバイスが、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を第1の撮像場所から貯蔵場所および/または貯蔵場所から第1の撮像場所に移動させるためにインキュベータ内に提供される。
【0186】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータまたはインキュベータキャビネットは、直方体形状である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータまたはインキュベータキャビネットは、1フィート~16フィートの範囲内の長方形占有面積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータまたはインキュベータキャビネットは、最大約1フィート、2フィート、3フィート、4フィート、5フィート、6フィート、7フィート、8フィート、9フィート、10フィート、11フィート、12フィート、13フィート、14フィート、15フィート、または16フィートの長方形占有面積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータまたはインキュベータキャビネットは、1フィート~100フィートの範囲内の総チャンバ体積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータまたはインキュベータキャビネットは、最大約1フィート、5フィート、10フィート、25フィート、50フィート、または100フィートのチャンバ体積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータまたはインキュベータキャビネットは、0.09m~1.78mの範囲内の長方形占有面積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータまたはインキュベータキャビネットは、最大約0.1m、0.2m、0.3m、0.4m、0.5m、0.6m、0.7m、0.8m、0.9m、1.0m、1.1m、1.2m、1.3m、1.4m、1.5m、1.6m、または1.7mの長方形占有面積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータまたはインキュベータキャビネットは、0.03m~3mの範囲内の総チャンバ体積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータまたはインキュベータキャビネットは、最大約0.03m、0.1m、0.3m、1m、または3mのチャンバ体積を有する。
【0187】
材料
いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、単壁式である。いくつかの実施形態では、インキュベータは、二重壁式である。いくつかの実施形態では、断熱材が、インキュベータのキャビネットの二重壁間に提供され、キャビネットからの熱損失を制御し、キャビネット内の温度制御を促進する。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットの外壁は、シート金属、例えば、14~20の冷間圧延鋼を含む。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットの内壁(例えば、チャンバ表面)は、電解研磨ステンレス鋼を含む。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットの内壁(例えば、チャンバ表面)は、チタン、コバルト-クロム、タンタル、白金、ジルコニウム、ニオブ、ステンレス鋼、およびその合金等の耐腐食性材料を含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットのチャンバ表面は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のポリマー材料、またはパリレンの商標名で公知のポリマー材料を含む。いくつかの実施形態では、チャンバ表面は、ポリマー表面コーティングの中に組み込まれる銅または銀もしくは抗微生物化合物等、抗微生物性を有してもよい。
【0188】
監視機器
いくつかの実施形態では、インキュベータの内側の環境は、インキュベータの内側の(例えば、1つまたはそれを上回る内部チャンバ内の)温度、湿度、二酸化炭素、酸素、および他のガス状成分(例えば、オゾンおよび過酸化水素等の滅菌ガス)を制御するように構成され得る、制御システムによって制御される。いくつかの実施形態では、制御システムは、各内部チャンバ内の環境条件(例えば、温度、湿度、二酸化炭素、酸素および他のガス状成分)を別個に制御する。例えば、敏感な機械的、電子的、および光学構成要素を保護するために、内部チャンバの湿度は、貯蔵場所を有する内部チャンバより低いレベルに維持されてもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータはさらに、所定のセンサを伴う監視システムを具備する。監視デバイスの実施例は、限定ではないが、酸素モニタ、二酸化炭素モニタ、オゾンガス検出器、過酸化水素モニタ、およびマルチガスモニタを含む。例えば、いくつかの実施形態では、インキュベータは、有利には、温度、空気純度、汚染レベル、pH、湿度、N、CO、O、および光を含み得る、細胞成長に関連する異なるパラメータに応答する複数のセンサを含む。本監視システムを用いて、インキュベータ内のパラメータは、センサを使用して、培養またはプロセスの持続時間にわたって測定されることができる。いくつかの実施形態では、センサによって測定されたパラメータは、本明細書に議論されるように、さらなる処理のために、監視システムによって、回線を介して、コンピュータ制御式監視および制御システムに伝送される。
【0189】
いくつかの実施形態では、環境監視システムは、本明細書に説明されるインキュベータと併用されることができる。いくつかの実施形態では、温度、空気組成物(例えば、CO濃度、O濃度等)、および/またはシステムの湿度の測定を提供する、1つまたはそれを上回るセンサが、インキュベータと関連付けられる(例えば、インキュベータキャビネット内に嵌合される)ことができる。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回るそのようなセンサは、インキュベータの一部として組み込まれる(例えば、インキュベータの内壁またはドアに取り付けられる、それと一体型である、またはそれに別様に接続される)ことができる。ある場合には、1つまたはそれを上回るセンサは、インキュベータキャビネットの外側または内側の任意の好適な場所に位置付けられることができる(例えば、移送チャンバおよび/または内部チャンバ内、例えば、内壁および/または上側または下側内部表面に取り付けられる)。
【0190】
いくつかの実施形態では、ガスセンサが、リアルタイムで、センサと接触するガス(例えば、キャビネット内のガスまたは周囲空気)の濃度をパーセント、百分率、または任意の他の標準的単位で読取値を提供することができるように提供される。本明細書に提供される方法およびインキュベータにおいて使用するためのガスセンサは、COセンサ、Oセンサ、Nセンサ、オゾンガス検出器、過酸化水素モニタ、マルチガスモニタ、およびCOセンサを含む。そのようなセンサは、いくつかの商業的供給源から利用可能である。ある場合には、インキュベータの環境は、本明細書に説明されるセンサによって提供される情報に基づいて変調または制御されてもよい。例えば、インキュベータ内のCOのレベルは、望ましい濃度より低いCOがインキュベータ内に存在することのCOセンサからのインジケーションに応じて増加されてもよい。
【0191】
いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る加熱または冷却要素が、インキュベータ内の温度を制御する目的のために、インキュベータ内に組み込まれることができる(例えば、キャビネットまたはドアの内側表面上に、および/またはキャビネットの壁ならびに/もしくは基部のうちの1つまたはそれを上回るもの内に統合される)。いくつかの実施形態では、加熱要素が、液体、例えば、細胞培養培地または他の試薬を解凍するために使用されることができる。
【0192】
いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る空気もしくは酸素源、炭素フィルタ、および/または1つまたはそれを上回る加湿もしくは脱湿システムが、インキュベータに接続され、インキュベータ内の酸素、二酸化炭素、および/または湿度のレベルを制御するように構成される(例えば、インキュベータ内またはそこに取り付けられる、1つまたはそれを上回るセンサからの信号に応答して)。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回るコントローラは、センサおよび他のシステムに取り付けられ、インキュベータの内部環境を制御する。
【0193】
いくつかの実施形態では、インキュベータは、1つまたはそれを上回る光源(例えば、白熱電球、LED、UVまたは他の光源)を含むことができる。これらは、インキュベータ内に設置され、キャビネット内の領域を照明することができる。いくつかの実施形態では、培養システム動作は、インキュベータ内または外側に設置され得る、カメラまたは他の光敏感なデバイスを使用して監視される。いくつかの実施形態では、光源は、殺菌光源である。例えば、UVランプが、移送チャンバおよび/またはインキュベータの内部チャンバ内に位置してもよい。
【0194】
いくつかの実施形態では、インキュベータは、インキュベータ内からの可視光または他の光波長がインキュベータの外側に設置されたカメラまたは他の光敏感なデバイスによって検出されることを可能にする、透明オブジェクト(例えば、窓)を含む。いくつかの実施形態では、透明オブジェクトの内側表面は、内側表面上に蓄積し(例えば、空気インキュベータの内側の湿った空気に起因する)、システムの監視に干渉し得る、結露を防止または除去するために、払拭されることができる(例えば、キャビネットの内側から)。いくつかの実施形態では、表面は、コントローラによって自動的に制御される、ウイパによって払拭されることができる。
【0195】
シール
いくつかの実施形態では、培養キャビネットは、インキュベータキャビネットが滅菌された後、閉鎖されてシールされると、無菌性を保存する、窓、ドア、または開口部を含む。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットの各シールは、閾値レベルの圧力(例えば、最大1atm)まで気密である。いくつかの実施形態では、ガスケットが、所望のレベルのシール能力を確実にするために提供される。一般に、「ガスケット」は、概して、圧縮下にある間、2つの物体間の漏出を防止するために、2つの物体間の空間を充填する、機械的シールとして理解される。ガスケットは、一般に、ガスケットペーパー、ゴム、シリコーン、金属、コルク、フェルト、ネオプレン、ニトリルゴム、ガラス繊維、またはプラスチックポリマー(ポリクロロトリフルオロエチレン等)等のシート材料から切断することによって生成される。多くの場合、ガスケットは、変形し、任意の若干の不規則性を含むために設計される空間を緊密に充填可能であるように、ある程度の降伏を提供する材料から作製されることが望ましい。いくつかの実施形態では、ガスケットは、適切に機能するために、シーラントのガスケット表面への直接塗布と併用されることができる。いくつかの実施形態では、ガスケット材料は、二酸化炭素またはオゾンと反応しない独立気泡ネオプレンフォームを含むことができる。
【0196】
移送デバイス
本明細書に開示されるインキュベータは、典型的には、1つまたはそれを上回るアイテムを、例えば、インキュベータ内の第1の場所から第2の場所に移動させるために、1つまたはそれを上回る移送デバイスを含む。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回るアイテムは、1つまたはそれを上回る細胞培養容器である。他の実施形態では、1つまたはそれを上回るアイテムは、1つまたはそれを上回る細胞培養容器の保守のために有用であって、限定ではないが、ピペット、毛細管、液体(例えば、細胞培養培地)、栄養素、および他の材料を含む。いくつかの実施形態では、移送デバイスは、ロボットアームを含む。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、インキュベータキャビネットの内側表面(例えば、内壁、基部等)に沿って種々の方向に延設されるレールまたはコンベヤに沿って移動し得る、インキュベータキャビネット内のプラットフォームを含む。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、1つを上回る(例えば、2、3、4、または5つ、またはそれを上回る)ロボットアームとともに構成され、器具のスループットを増加させ、ロボットアームのうちの1つの故障の場合、冗長性を提供してもよい。
【0197】
いくつかの実施形態では、移送デバイスはさらに、ロボットアームに結合される、グリッパアセンブリを含む。いくつかの実施形態では、グリッパアセンブリは、ロボットアームの端部上に搭載される、1つまたはそれを上回るグリッパを含み、各グリッパは、2つまたはそれを上回る(例えば、3、4、5、またはそれを上回る)グリッパフィンガを有する。いくつかの実施形態では、ロボットアーム上のグリッパフィンガはそれぞれ、溝、摩擦プレート、ゴムパッド、または他の把持表面を有する。把持表面は、フィンガが、キャビネット内の種々のタイプのコンテナ(例えば、培養容器)を把持および輸送することを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、グリッパアセンブリまたはプラットフォームのいずれかに結合される絶対エンコーダ、またはグリッパアセンブリおよび/またはプラットフォーム毎の別個の絶対エンコーダを有し、ロボットアームが、障害物に衝打せずに、安全にホームに戻り得る位置にある(例えば、静置または貯蔵構成および/または場所もしくは動作座標系の起点に戻される)かどうかを判定してもよい。
【0198】
いくつかの実施形態では、ある状況では、ロボットアームの到達範囲は、インキュベータキャビネットのある面積まで延在しないことが望ましくあり得るため、ロボットアームは、代わりに、例えば、軸(例えば、x-軸、y-軸)に沿って移動し、ロボットアームが到達することができない、それらの場所の少なくともいくつかへのアクセスを提供する、インキュベータキャビネット床または他の表面上に位置する、シャトルまたはコンベヤベルトの中にコンテナを挿入する、もしくはそこからコンテナを除去することによって、これらの場所に到達してもよい。
【0199】
いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、外部アッセイまたは実験室自動化システムと併用されるように設計される。例えば、いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、フィンガが、培養容器または他のコンテナもしくは構成要素を実験室自動化システムの輸送ラインからインキュベータキャビネットの中に輸送する、または外部アッセイ構成要素をインキュベータのキャビネットの中および/または外に輸送するために十分な到達範囲を伴って、グリッパアームがインキュベータのキャビネットの外側を枢動することを可能にするために十分に大きい開口部を有する、ドアを有してもよい。
【0200】
いくつかの実施形態では、ロボットアームは、とりわけ、培養容器を搬送するように設計されており、その場合、ロボットアームの移動は、そのような容器の急激な動きもしくは加速または容器からのサンプルの溢流を生じさせ得る他の移動を防止するように制御される。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、とりわけ、培養容器を搬送するように設計され、その場合、ロボットアームの移動は、新しく播種された細胞を培養容器の具体的面積内に凝集/集中させるようなそのような容器の移動を防止するように制御される。
【0201】
いくつかの実施形態では、ロボットアームは、容器または他のコンテナをインキュベータキャビネット内の具体的位置間で輸送するため、ロボットアームまたはインキュベータの他の構成要素は、容器または他のコンテナが位置する場所を精密に追跡するように設計されることができる。ある場合には、ロボットアームが使用され得る、インキュベータキャビネット内には、インキュベータキャビネットの他の構成要素またはインキュベータキャビネットの壁が位置する、したがって、ロボットアームのある移動が限定され得るような面積が存在する可能性が高い。これらの場合、ホーム機構が、アームの種々のモータ(例えば、x-モータ、シータ-モータおよびz-モータ)毎に使用され、電源投入された後、またはロボットアームが別のオブジェクトと衝突する場合、動作を再開する前に、ロボットアームを既知の場所に適切に位置付けることができる。
【0202】
いくつかの実施形態では、無停電電力供給源(「UPS」)が、インキュベータキャビネットにもしくはその中に取り付けられるか、またはそれとともに含有され、種々の自動化およびサンプル情報の保存ならびに進行中の任意の輸送または移送プロセス(例えば、ロボットアームによってその目的地に搬送されているコンテナまたは容器の輸送)の完了を含む、インキュベータ動作の正常シャットダウンを可能にする。オペレータは、可聴信号、視覚的信号、電子信号(例えば、電子メールまたはテキストメッセージ)によって、またはある他の様式において、インキュベータの無許可開放に対してアラートされてもよい。
【0203】
いくつかの実施形態では、センサまたは他の特徴が、インキュベータの1つまたはそれを上回るドアが開放されると(例えば、外部または内部ドア等のインキュベータキャビネットドアが開放されると)、それを検出するために提供される。そのような特徴は、オペレータが、無菌性を脅かす、生成物を駄目にする、アッセイまたは実験を損なわせ得る等、インキュベータ(例えば、インキュベータキャビネット)の任意の予定外または無許可の開放を追跡もしくは警告されることを可能にするため、有用である。
【0204】
いくつかの実施形態では、無線周波数ビーコンまたは他の信号源が、インキュベータキャビネット内の1つまたはそれを上回るデバイス内の場所を判定するために使用され得る、インキュベータ(例えば、インキュベータキャビネット)内に位置する(例えば、信号を検出し、それを使用して、その場所を判定することができる、センサを有するデバイス)。いくつかの実施形態では、デバイスは、信号源を有し得、センサは、インキュベータキャビネットのチャンバのうちの1つまたはそれを上回るもの内に位置し得る(例えば、内部チャンバの内部表面上に位置する)。
【0205】
いくつかの実施形態では、光信号またはレーザ(例えば、レーザ信号のグリッド)が、インキュベータキャビネット内の1つまたはそれを上回るデバイスもしくは構成要素の場所を判定するために使用されることができる。そのような情報は、例えば、有線または無線で、外部コンピュータまたは監視ステーションに通信されることができる。情報は、インキュベータキャビネット内の移送デバイス、例えば、ロボットアームの動作を制御し、移送デバイスが、インキュベータキャビネット内でデバイスまたはアイテムを適切に握持、操作、または操縦し得ることを確実にするために使用されることができる。
【0206】
いくつかの実施形態では、コンテナまたは容器がインキュベータキャビネット内に運ばれる前に、ユーザは、インキュベータキャビネットの中に挿入されている特定のコンテナ、容器、原料、または細胞に基づいて、自動化システムプロトコルを選択することができる。インキュベータおよび/または1つもしくはそれを上回るインキュベータ構成要素ならびに成長されている細胞に関連する関連情報が、データシステムの中に打ち込まれることができる。例えば、バーコード(例えば、1Dまたは2Dバーコード)等の1つまたはそれを上回る識別子が、コンテナまたは容器上に設置されることができ、コンテナのタイプ、コンテナの内容物、コンテナ内のサンプル上で実施されるべきアッセイまたは操作等の他の有意な情報が、規定されることができる。いくつかの実施形態では、インキュベータシステムおよび/または細胞に関連する情報は、別個のデータシステム上の1つまたはそれを上回るバーコードまたはそれらの組み合わせ内に含有されることができる。ユーザはまた、容器もしくは他のコンテナの寸法(例えば、高さ、直径)を識別する情報を打ち込んでもよい、またはシステム自体が、容器もしくは他のコンテナの高さもしくは他の寸法を判定するように構成されることができる。本情報を使用して、ロボットアームは、分析モジュールがアッセイもしくは他の操作を容器内で成長される細胞に実施する準備ができるとき、またはアッセイもしくは操作の実施が完了するとき等、特定のコンテナを輸送するように要求されてもよいも。
【0207】
コンピュータおよび制御機器
本明細書に提供されるインキュベータは、センサ、環境制御システム、ロボット等を含む、いくつかの構成要素を含み、これは、コンピュータ、プロセッサ、マイクロコントローラ、または他のコントローラの指示でともに動作してもよい。構成要素は、例えば、移送デバイス(例えば、ロボットアーム)、液体取扱デバイス、培養容器を送達するための送達システム、インキュベータキャビネットへもしくはそこからの開示されるピペット先端または他の構成要素に取り付けられるマニピュレータ、インキュベータキャビネットの温度および他の環境側面を制御するための環境制御システム、ドア動作システム、撮像または検出システム、および細胞培養アッセイシステムを含んでもよい。
【0208】
ある場合には、細胞培養インキュベータおよび/またはその中に提供されるか、もしくはそれとインターフェースをとる構成要素の動作の制御等の動作は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせを使用して実装されてもよい。ソフトウェア内に実装されると、ソフトウェアコードは、単一構成要素内に提供されるか、または複数の構成要素間に分散されるかどうかにかかわらず、任意の好適なプロセッサまたはプロセッサの集合上で実行されることができる。そのようなプロセッサは、1つまたはそれを上回るプロセッサを集積回路構成要素内に伴う、集積回路として実装されてもよい。プロセッサは、任意の好適な形式における回路を使用して実装されてもよい。
【0209】
コンピュータは、ラック搭載型コンピュータ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、またはタブレットコンピュータ等のいくつかの形態のいずれかで具現化されてもよい。加えて、コンピュータは、携帯情報端末(PDA)、スマートフォン、またはインキュベータ自体を含む、任意の他の好適なポータブル、モバイル、または固定電子デバイスを含む、概して、コンピュータと見なされないが、好適な処理能力を伴う、デバイス内に埋設されてもよい。
【0210】
ある場合には、コンピュータは、1つまたはそれを上回る入力および出力デバイスを有してもよい。これらのデバイスは、とりわけ、ユーザインターフェースを提示するために使用されることができる。ユーザインターフェースを提供するために使用され得る、出力デバイスの実施例は、出力の視覚的提示のためのプリンタまたはディスプレイ画面および出力の可聴提示のためのスピーカまたは他の音発生デバイスを含む。ユーザインターフェースのために使用され得る、入力デバイスの実施例は、キーボード、およびマウス等のポインティングデバイス、タッチパッド、ならびにディジタイジングタブレット等を含む。他の実施例では、コンピュータは、音声認識を通して、または他の可聴フォーマットで、可視ジェスチャを通して、触知入力(例えば、振動、触覚、および/または他の力を含む)を通して、または任意のそれらの組み合わせで入力情報を受信してもよい。
【0211】
1つまたはそれを上回るコンピュータは、企業ネットワークまたはインターネット等のローカルエリアネットワークまたは広域ネットワークを含む、任意の好適な形態において、1つまたはそれを上回るネットワークによって相互接続されてもよい。そのようなネットワークは、任意の好適な技術に基づいてもよく、任意の好適なプロトコルに従って動作してもよく、無線ネットワーク、有線ネットワーク、または光ファイバネットワークを含んでもよい。
【0212】
本明細書に概略された種々の方法またはプロセスは、種々のオペレーティングシステムもしくはプラットフォームのうちの任意の1つを採用する、1つまたはそれを上回るプロセッサ上で実行可能なソフトウェアとしてコード化されてもよい。そのようなソフトウェアは、いくつかの好適なプログラミング言語および/またはプログラミングもしくはスクリプティングツールのいずれかを使用して書き込まれてもよく、フレームワークまたは仮想機械上で実行される、実行可能機械言語コードもしくは中間コードとしてコンパイルされてもよい。
【0213】
本明細書に提供される方法またはプロセスを制御するための1つもしくはそれを上回るアルゴリズムは、1つまたはそれを上回る構成要素もしくは他のプロセッサ上で実行されると、本明細書に説明される種々の方法またはプロセスを実装する方法を行う、1つまたはそれを上回るプログラムでエンコードされた可読記憶媒体(または複数の可読媒体)(例えば、コンピュータメモリ、1つまたはそれを上回るフロッピディスク、コンパクトディスク(CD)、光学ディスク、デジタルビデオディスク(DVD)、磁気テープ、フラッシュメモリ、フィールドプログラマブルゲートアレイもしくは他の半導体デバイス内の回路構成、または他の有形記憶媒体)として具現化されてもよい。
【0214】
いくつかの実施形態では、コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータ実行可能命令を非一過性形態で提供するために十分な時間にわたって情報を留保してもよい。そのようなコンピュータ可読記憶媒体または複数の記憶は、その上に記憶されるプログラムまたは複数のプログラムが、1つまたはそれを上回る異なるコンピュータまたは他のプロセッサ上にロードされ、本明細書に説明される方法またはプロセスの種々の側面を実装し得るように、トランスポート可能であることができる。本明細書で使用されるように、用語「コンピュータ可読記憶媒体」は、製造物(例えば、製造品)または機械と見なされ得る、コンピュータ可読媒体のみを包含する。代替として、または加えて、本明細書に説明される方法またはプロセスは、伝搬信号等のコンピュータ可読記憶媒体以外のコンピュータ可読媒体として具現化されてもよい。
【0215】
用語「プログラム」または「ソフトウェア」は、本明細書では、コンピュータまたは他のプロセッサをプログラムし、本明細書に説明される方法またはプロセスの種々の側面を実装するために採用され得る、任意のタイプのコードまたは実行可能命令のセットを指すために一般的意味で使用される。加えて、本実施形態の一側面によると、実行されると、本明細書に説明される方法またはプロセスを行う、1つまたはそれを上回るプログラムは、単一コンピュータまたはプロセッサ上に常駐する必要はなく、いくつかの異なるコンピュータまたはプロセッサ間にモジュール式方式で分散され、種々の手順または動作を実装してもよいことを理解されたい。
【0216】
実行可能命令は、1つまたはそれを上回るコンピュータもしくは他のデバイスによって実行される、プログラムモジュール等、多くの形態にあってもよい。概して、プログラムモジュールは、特定のタスクを行う、または特定の抽象データタイプを実装する、ルーチン、プログラム、オブジェクト、構成要素、データ構造等を含む。典型的には、プログラムモジュールの機能性は、種々の実施形態では、所望に応じて組み合わせられる、または分散されてもよい。
【0217】
また、データ構造は、任意の好適な形態でコンピュータ可読媒体内に記憶されてもよい。データ記憶の非限定的実施例は、構造化、非構造化、ローカル、分散、短期、および/または長期記憶を含む。データを連通するために使用され得る、プロトコルの非限定的実施例は、専用および/または産業標準的プロトコル(例えば、HTTP、HTML、XML、JSON、SQL、ウェブサービス、テキスト、スプレッドシート等、または任意のそれらの組み合わせ)を含む。例証の便宜上、データ構造は、データ構造内の場所を通して関連するフィールドを有するように示され得る。そのような関係は同様に、フィールド間の関係を伝達するコンピュータ可読媒体内の場所とともにフィールドのための記憶を割り当てることによって達成されてもよい。しかしながら、データ要素間の関係を確立する、ポインタ、タグ、または他の機構の使用を通してを含む、任意の好適な機構が、データ構造のフィールド内の情報間の関係を確立するために使用されてもよい。
【0218】
いくつかの実施形態では、インキュベータの動作に関連する情報(例えば、温度、湿度、ガス組成物、画像、細胞培養条件等、または任意のそれらの組み合わせ)は、インキュベータと関連付けられた(例えば、インキュベータキャビネット内に位置する、またはインキュベータ内であるが、インキュベータキャビネットの外側に位置する)1つまたはそれを上回るセンサから得られることができ、コンピュータ可読媒体内に記憶され、細胞培養インキュベーションの間、条件についての情報を提供することができる。いくつかの実施形態では、可読媒体は、データベースを備える。いくつかの実施形態では、該データベースは、単一インキュベータからのデータを含む。いくつかの実施形態では、該データベースは、複数のインキュベータからのデータを含む。いくつかの実施形態では、データは、改竄防止様式で記憶される。いくつかの実施形態では、器具(例えば、インキュベータ)によって生成された全てのデータが、記憶される。いくつかの実施形態では、データのサブセットが、記憶される。
【0219】
種々の実施形態では、構成要素(例えば、コンピュータ)は、インキュベータの内側で行われる種々のプロセスを制御する。例えば、コンピュータは、制御機器(例えば、マニピュレータ、撮像機、流体取扱システム等)に指示してもよい。いくつかの実施形態では、コンピュータは、細胞培養の撮像、細胞の取り上げ、細胞の間引き(例えば、細胞集塊の除去)、細胞培養条件の監視、細胞培養条件の調節、インキュベータ内の細胞培養容器移動の追跡、および/または前述のプロセスのいずれかのスケジューリングを制御する。細胞アッセイ
【0220】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータキャビネットは、細胞成長、生存率、または細胞の他の側面を監視する目的のために、顕微鏡または他の撮像機もしくは他のデバイスとともに構成される。いくつかの実施形態では、顕微鏡または撮像機は、画像ベースの表現型スクリーニングまたはアッセイ等、インキュベータキャビネット内で実施されるアッセイと併用される。
【0221】
ある実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータは、1つまたはそれを上回るアッセイが、インキュベータキャビネットまたはインキュベータキャビネットに動作可能に接続されるチャンバ、例えば、インキュベータの一部である別個のアッセイチャンバ内で実施されることを可能にするように構成される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータは、細胞計数アッセイ、複製標識化アッセイ、細胞膜統合性アッセイ、細胞ATPに基づく生存率アッセイ、ミトコンドリアレダクターゼ活性アッセイ、カスパーゼ活性アッセイ、アネキシンV染色アッセイ、DNA含有量アッセイ、DNA分解アッセイ、核断片化アッセイ、またはそれらの組み合わせの実施を可能にするように構成される。他の例示的アッセイは、BrdU、EdU、またはH3-チミジン組み込みアッセイ;ヘキスト染色、DAPI、アクチノマイシンD、7-アミノアクチノマイシンD、またはヨウ化プロピジウム等の核酸染色を使用するDNA含有量アッセイ;AlamarBlue、MTT、XTT、およびCellTitre Glo等の細胞代謝アッセイ;核断片化アッセイ;細胞質ヒストン関連DNA断片化アッセイ;PARP切断アッセイ;ならびにTUNEL染色アッセイを含む。
【0222】
処置および実験介入
ある実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータは、インキュベータキャビネット内の高スループットスクリーニング(HTS)を可能にするように構成される。いくつかの実施形態では、HTSは、最大で、例えば、100,000化合物/日の試験を指す。いくつかの実施形態では、スクリーニングアッセイは、マルチウェルフォーマット、例えば、96-ウェル、384-ウェルフォーマット、または1,536-ウェルフォーマットで実施されてもよく、自動化されたプロトコルを使用して実施されることができる。そのような高スループットアッセイでは、1日で数千個の異なる化合物または組成物をスクリーニング可能である。特に、マイクロタイタープレートの各ウェルは、選択された試験化合物に対して別個のアッセイを起動するために使用されることができる、または濃度もしくはインキュベーション時間効果が観察されるべき場合、複数のウェルが、単一化合物の試験サンプルを含むことができる。1日あたり多くのプレートをアッセイすることが可能であって、最大約6,000、20,000、50,000、または100,000個を上回る異なる化合物のためのアッセイスクリーニングが、アッセイを使用して可能である。典型的には、本明細書に説明されるアッセイのHTS実装は、自動化の使用を伴う。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回るロボットアームを含む、統合されたロボットシステムが、化合物、細胞、および/または試薬添加、混合、インキュベーション、および最後に、読取または検出のために、複数のアッセイステーション間でアッセイマイクロプレートを輸送する。いくつかの側面では、HTSアッセイは、多くのプレートを同時に調製、インキュベート、および分析することを含み、データ収集プロセスをさらに加速させてもよい。
【0223】
いくつかの実施形態では、アッセイは、試験細胞、対照細胞、および1つまたはそれを上回る試験化合物、例えば、10、100、1000、10,000個、またはそれを上回る試験化合物を含むことができる。細胞および試験剤が、細胞に及ぼす試験化合物の影響を査定するために好適な様式において、1つまたはそれを上回る容器内に配列されることができる。これらのアッセイは、本明細書に説明される1つまたはそれを上回るインキュベータの1つまたはそれを上回るインキュベータキャビネット内で実施されることができる。典型的には、容器は、好適な組織培養培地を含有し、試験化合物が、組織培養培地内に存在し、自動化された方式において、本明細書に提供されるインキュベータのインキュベータキャビネット内の培養培地に送達されてもよい。特定の細胞タイプを培養するために適切な培地が、使用のために選択されることができる。いくつかの実施形態では、培地は、血清または組織抽出物がない、もしくは本質的にないが、他の実施形態では、そのような成分が、存在する。いくつかの実施形態では、細胞は、プラスチックまたはガラス表面上で培養される。
【0224】
前述の側面および実施形態は、任意の好適な組み合わせで採用されてもよく、本発明は、本点において限定されない。
【0225】
本発明の側面は、ある例証的実施形態および図を参照して本明細書に説明されることを理解されたい。本明細書に説明される例証的実施形態は、必ずしも、全ての本発明の側面を示すことを意図しておらず、むしろ、いくつかの例証的実施形態を説明するために使用される。したがって、本発明の側面は、例証的実施形態に照らして狭義に解釈されることを意図するものではない。加えて、本発明の側面は、単独で、または本発明の他の側面との任意の好適な組み合わせにおいて、使用されてもよいことを理解されたい。
【0226】
したがって、本発明の少なくとも1つの実施形態のいくつかの側面が説明され、種々の改変、修正、および改良が、当業者に容易に想起されるだろうことが理解される。そのような改変、修正、および改良は、本開示の一部であると意図され、本発明の精神および範囲内であることが意図される。故に、前述の説明および図面は、一例にすぎない。
【0227】
本発明のいくつかの実施形態を本明細書で説明および図示したが、当業者であれば、本明細書で説明される機能を果たし、および/または、結果ならびに/もしくは利点のうちの1つまたはそれを上回るものを得るための種々の他の手段および/または構造を容易に想定し、そのような変形例および/もしくは修正のそれぞれは、本発明の範囲内であると見なされる。より一般的には、当業者であれば、本明細書で説明される全パラメータ、寸法、材料、および構成は、例示的となるように意図されており、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、本発明の教示が使用される、1つまたは複数の具体的用途に依存することを、容易に理解するであろう。当業者であれば、日常的にすぎない実験を使用して、本明細書で説明される本発明の具体的実施形態の多くの同等物を認識するか、または確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は、一例のみとして提示され、添付の請求項およびその同等物の範囲内で、具体的に説明およびならびに請求される以外の方法で本発明が実践されてもよいことを理解されたい。本発明は、本明細書で説明される、各個別の特徴、システム、部品、材料、および/または方法を対象とする。加えて、そのような特徴、システム、部品、材料、および/または方法が相互に矛盾していなければ、その2つまたはそれを上回るような特徴、システム、部品、材料、および/または方法の任意の組み合わせが、本発明の範囲内に含まれる。
【0228】
本明細書および本請求項で使用されるような、「1つの」という不定冠詞は、明確にそれとは反対に示されない限り、「少なくとも1つの」を意味すると理解されたい。
【0229】
本明細書および本請求項で使用されるような、「および/または」という語句は、そのように結合される要素、例えば、ある場合では接合的に存在し、他の場合では離接的に存在する要素の「いずれか一方または両方」を意味すると理解されたい。明確にそれとは反対に示されない限り、「および/または」という節によって具体的に識別される要素と関係するか、無関係であるかにかかわらず、それらの具体的に識別される要素以外に、他の要素が必要に応じて存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」の参照は、「~を備える」等の非制約的な用語と併せて使用されると、一実施形態では、BのないA(必要に応じてB以外の要素を含む)を指し、別の実施形態では、AのないB(必要に応じてA以外の要素を含む)を指し、さらに別の実施形態では、AおよびBの両方(必要に応じて他の要素を含む)等を指すことができる。
【0230】
本明細書および本請求項で使用されるような、「または」は、上記で定義されるような「および/または」と同じ意味を有すると理解されたい。例えば、一覧中のアイテムを分離するときに、「または」あるいは「および/または」は、包括的であるとして解釈されるものであり、例えば、少なくとも1つを含むが、多数の要素または要素の一覧のうちの2つまたはそれを上回るものと、必要に応じて、付加的な非記載アイテムも含む。「~のうちの1つのみ」または「~のうちの正確に1つ」等、明確にそれとは反対に示される用語のみ、または、請求項で使用されるときに、「~から成る」が、多数の要素または要素の一覧のうちの正確に1つの包含を指すであろう。一般に、本明細書で使用されるような「または」という用語は、「いずれか一方」、「~のうちの1つ」、「~のうちの1つのみ」、または「~のうちの正確に1つ」等、排他性の用語が先行すると、排他的代替物(例えば、「一方または他方であるが、両方ではない」)としてのみ解釈されるものである。「本質的に~から成る」は、請求項で使用されると、特許法の分野で使用されるような、その通常の意味を有するものである。
【0231】
本明細書および本請求項で使用されるような、1つまたはそれを上回る要素の一覧を参照した「少なくとも1つ」という語句は、要素の一覧中の要素のうちのいずれか1つまたはそれを上回るものから選択される、少なくとも1つの要素を意味するが、要素の一覧内で具体的に記載される、あらゆる要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含むとは限らず、要素の一覧中の要素の任意の組み合わせを除外しないことを理解されたい。この定義はまた、「少なくとも1つ」という語句が指す要素の一覧内で具体的に識別される要素と関係するか、無関係であるかにかかわらず、それらの具体的に識別される要素以外の要素が必要に応じて存在してもよいことも許容する。したがって、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(または同等に、「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、または同等に、「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、Bが存在しない、必要に応じて1つを上回るものを含む、少なくとも1つのA(必要に応じてB以外の要素を含む)を指し、別の実施形態では、Aが存在しない、必要に応じて1つを上回るものを含む、少なくとも1つのB(必要に応じてA以外の要素を含む)を指し、さらに別の実施形態では、必要に応じて1つを上回るものを含む、少なくとも1つのA、および、必要に応じて1つを上回るものを含む、少なくとも1つのB(必要に応じて他の要素を含む)等を指すことができる。
【0232】
請求項ならびに上記の明細書では、「~を備える」、「~を含む」、「~を担持する」、「~を有する」、「~を含む」、「~を伴う」、「~を保持する」および同等物等の全移行句は非制約的である、すなわち、「~を含むが、それらに限定されない」を意味すると理解されたい。「~から成る」および「本質的に~から成る」という移行句のみが、United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures, Section 2111.03に規定されているように、それぞれ、制約的または半制約的な移行句となるものである。
【0233】
請求項要素を修飾するための請求項における「第1」、「第2」、「第3」等の序数用語の使用自体は、任意の優先順位、先行、または別のものに先行する1つの請求項要素の順序、または方法の作用が行われる時間的順序を示すものではなく、単に、ある名称を有する1つの請求項要素を(序数用語の使用がない場合)同一名称を有する別の要素から分化し、請求項要素を分化するための標識として使用される。
【0234】
また、そうではないことが明確に示されない限り、1つを上回るステップまたは作用を含む、本明細書に請求される任意の方法では、方法のステップまたは作用の順序は、必ずしも、方法のステップまたは作用の順序が列挙される(reci1ted)順序に限定されないことを理解されたい。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13