(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】射出成形するための方法および工具
(51)【国際特許分類】
B29C 45/30 20060101AFI20230829BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20230829BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
B29C45/30
B29C45/00
B29C45/76
(21)【出願番号】P 2020551878
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(86)【国際出願番号】 SE2019050257
(87)【国際公開番号】W WO2019190380
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-18
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】520363982
【氏名又は名称】フレキシジェクト エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カールソン,レナート
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-005116(JP,A)
【文献】実開昭55-102522(JP,U)
【文献】特開2007-175903(JP,A)
【文献】特開2004-188771(JP,A)
【文献】登録実用新案第3003711(JP,U)
【文献】特開平06-210669(JP,A)
【文献】特開平03-010821(JP,A)
【文献】特開2003-276059(JP,A)
【文献】特開平10-175234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機、ならびに2つ以上の金型キャビティ(17)と、少なくとも1つのゲート(18)、および前記少なくとも1つのゲート(18)の上流に位置する複数のランナー(19、20、21)を備える供給システムとを備える工具(12、13)を使用して、2つ以上の、異なるサイズ、形状および/または容積の部品を同時に射出成形するための方法であって、
前記複数のランナー(19、20、21)は、少なくとも1つの可動壁を備え、かつ
a)複数のランナー(19、20、21)内の材料に、および、2つ以上の金型キャビティ(17)に、保圧を加えること、
b)前記複数のランナー(19、20、21)内の残留物を圧縮することのうちの少なくとも1つを達成するために、前記
可動壁を移動させることによって、前記複数のランナー(19、20、21)の少なくとも1つの断面寸法(T、B、H、S、またはS+ΔS)を変更するステップを含み、
それにより、前記複数のランナー(19、20、21)の前記少なくとも1つの断面寸法(T、B、H、S、またはS+ΔS)が個別に変えられ、
さらに、前記複数のランナー(19、20、21)を、前記複数のランナー(19、20、21)内の材料の融点または溶融間隔よりも低い温度に加熱するステップを含む、ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記可動壁は、機械的、油圧的または電気的に制御されるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2つ以上の金型キャビティ(17)と、少なくとも1つのゲート(18)、および前記少なくとも1つのゲート(18)の上流に位置するように構成された複数のランナー(19、20、21)を備える供給システムとを備える、射出成形機を使用して、2つ以上の、異なるサイズ、形状および/または容積の部品を同時に射出成形するための、
請求項1又は2に記載の方法を実行するための射出成形工具(12、13)であって、
前記複数のランナー(19、20、21)は、
a)前記複数のランナー(28、34、36)内の材料に、および、複数の金型キャビティ(17)に、保圧を加えること、および
b)前記複数のランナー(19、20、21)内の残留物を圧縮することのうちの少なくとも1つを達成するために、前記複数のランナー(19、20、21)の少なくとも1つの断面寸法(T、B、H、S、またはS+ΔS)が変更されることを可能にするように構成された少なくとも1つの可動壁を備え、これにより前記工具(12、13)は、前記複数のランナー(19、20、21)の前記少なくとも1つの断面寸法(T、B、H、S、またはS+ΔS)を変更するための手段を備え、および、それにより、前記複数のランナー(19、20、21)の前記少なくとも1つの断面寸法(T、B、H、S、またはS+ΔS)が個別に変えられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法を実行するための射出成形工具(12、13)。
【請求項4】
前記複数のランナー(19)の前記少なくとも1つの断面寸法(T)を、駆動ユニットおよび制御システムを含む、機械的手段、または油圧装置、または電気回路を用いて、無段階方式で、または段階的な方式で、自動的に変更するように適合された複数の隣接して配置されたゲートインサート(16、26)を備えることを特徴とする、請求項3に記載の工具(12、13)。
【請求項5】
前記複数のランナー(19、20、21)を、前記複数のランナー(19、20、21)内の前記材料の融点または溶融間隔よりも低い温度に加熱するための加熱手段を備えることを特徴とする、請求項3または4に記載の工具(12、13)。
【請求項6】
前記可動壁は、前記複数のランナー(19、20、21)の前記少なくとも1つの断面寸法(T、B、H、SまたはS+ΔS)を変更するために、前記手段によって機械的、油圧的または電気的に制御されるように構成されていることを特徴とする、請求項3~5のいずれかに記載の工具。
【請求項7】
前記複数のランナー(19、20、21)の前記少なくとも1つの断面寸法(T、B、H、SまたはS+ΔS)を変更するための前記手段の少なくとも一部は、前記工具に取り外し可能に取り付けられるように構成された交換可能なカセットを構成することを特徴とする、請求項3~5のいずれか一項に記載の工具(12、13)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの金型キャビティと、少なくとも1つのゲート、すなわちサイドゲートまたは任意の他のタイプのゲートと、少なくとも1つのゲートの上流に位置する少なくとも1つのランナーとを備える射出成形工具において1つまたは複数の部品を射出成形するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の高度な射出成形法、
a)2つの異なるグレードのプラスチック材料の「共射出」または「サンドイッチ射出成形」、および
b)「系列部品の射出成形」は、現在の射出成形および工具技術と比較して、コストの低下、環境負荷の低減、資源のより有効な利用、部品の品質の向上を実現するのに大きな可能性を有する。
【0003】
共射出/サンドイッチ射出成形法では、2つの異なるグレードのプラスチック材料が射出成形部品の壁の断面にサンドイッチ構造を形成し、これによりキャビティの中に最初に射出された溶融物が、通常「スキン」と呼ばれる比較的薄い表面層を形成し、この面が部品全体を覆い、そして同時に、またはその直後に、その次に射出された溶融物が、「コア層」と呼ばれる比較的厚い層をスキンの内部に形成する、
図1a、
図1bおよび
図1cを参照されたい。
【0004】
共射出には、2つの異なる成形プロセスがあり、
-2つの完璧な射出ユニットを備えた機械を使用して、2つのプラスチックグレードの溶融物のキャビティへの同時の共射出であり、最初の方法でもある同時共射出と、
-1つの射出ユニットのみを備えた機械を使用する、2つのプラスチックグレードのキャビティ内への連続する共射出であって、これは、いわゆる「コールドランナー」しか工具内のプラスチック溶融物の供給システムに使用できない結果となり、コールドランナーと、いわゆる「ホットランナー」の両方を使用できる同時共射出とは対照的である。Mono Sandwichは、
図1a、
図1b、および
図1cに示されている連続共射出プロセスの商標名である。
【0005】
コールドランナーの「コールド」という言葉の意味は、ランナーの壁が、半結晶性ポリマーの融点または非晶性ポリマーの軟化/溶融間隔よりも低い表面温度に加熱され、その結果、溶融物がランナーを通って流れるとき、材料の薄い層がコールドランナーの壁の表面に当たって固化することである。
【0006】
共射出法は、
-例えば、所望の色、高い耐紫外線性および/または光沢を有する表面層材料と、部品に高い剛性を与えるように強化されたコア層材料など、射出成形部品で2つのプラスチック材料の異なる特性を組み合わせるため、または
-リサイクル材料、低い指定されたいわゆる工業用プラスチックグレード、または添加物を全く含まない、または重合後に混入されたわずかな量の添加剤の量しか含まない新たに生みだされたプラスチックグレードなど、コア層に低価格の材料を使用することによって、射出成形部品のプラスチック材料のコストを節約するためのいずれかで使用される。
系列部品の射出成形は、形状、サイズ、および/または重量が異なる2つ以上の部品が、複数のキャビティを備える同じ工具のそれぞれの金型キャビティ内で同時に成形されることを意味する。異なるサイズ、体積および/または形状の金型キャビティを充填するための射出時間は異なり、このことは、溶融物に加えられる保圧を異なる時点でキャビティ内で作動させる必要がある。
【0007】
しかしながら、共射出法またはサンドイッチ射出成形法および系列部品の射出成形法は、上記で言及した方法と同時に導入された「オーバーモールディング」や「ガスアシスト射出成形」などの他の方法ほどには市場で確立されていない。このことの1つの理由は、およびおそらく主な理由は、これらの方法が使用されてから、適切な工具技術が十分に開発されていないことである。
【0008】
現在の工具およびプロセス技術の制限をなくす必要性があり、これらの制限が、共射出および系列部品の射出成形がその市場のシェアを拡大するのをおそらく妨げていた。
【0009】
Mono Sandwichプロセスは、
図1a~
図1cに示されるように、射出ユニットを1つしか持たない機械で実施される。最終部品のコア層を形成することを目的とした溶融物の体積3が最初に射出ユニット1に計量供給される。次に、最終部品の薄い表面層を形成することを目的とした溶融物の体積2が、機械の押出機ユニット内で可塑化され、溶融物の体積3の前方の位置に置かれるように、射出ユニット1のオリフィスを通して計量供給される。
図1bに示されるように、射出ユニット1のスクリューピストン4がそのストロークを開始すると、最初に表面材料2が金型キャビティ5に射出され、それによって表面材料の薄い層が、金型キャビティの比較的冷温の成形面に当たって固化することになる。表面材料2が金型キャビティ5に部分的に射出され、スクリューピストン4がストロークを続けるとき、同時にコア材料が表面材料層の内側の金型キャビティを充填すると、コア材料3は表面材料2の内部にも浸透し、表面材料2を金型キャビティ5の成形面に押し付けることになる(
図1cに示されるように)。このようにして、薄い表面層と、その中にカプセル化された連続する実質的により厚みのあるコア層とを備えた二層の射出成形部品が得られる。
【0010】
既知の同時共射出法のいずれか1つに従って多層部品を射出成形する場合、部品のすべての断面が、1つの表面材料の比較的薄い表面層と、コア材料のより厚みのある層とを有することが通常望ましい。共射出成形法を使用する場合、コア材料に対する表面材料の最適な体積配分比率は約25/75%である。共射出法による多層部品の射出成形で現行の工具を使用する場合、部品が、
図1a~
図1cに示される部品/キャビティなどの単純なまたは対称的な形状である場合に限って、このような約25/75%の配分比率が達成される。
【0011】
図2および
図3は、金型キャビティ内への不適切なゲーティングを使用して、より複雑な部品を成形するために共射出が使用される場合に発生する可能性がある問題の例を示している。溶融物の流れは、スプルーゲート6から金型キャビティの外側の外形までさまざまな方向に延びる。溶融物の流動距離が異なり、キャビティの成形面の間の部品壁の厚さが異なる場合、金型キャビティ内のさまざまな流路において多層溶融物の様々な流動抵抗が生じることになり、これは、共射出プロセスにおいて、2つのプラスチック溶融物の流頭が互いに対して均一ではなく、金型キャビティの外側の輪郭に対しても均一でなくなる結果となる。溶融物の流路が金型キャビティの他の部分における流路よりも実質的に長くなる金型キャビティの部分では、表面材料とコア材料の妥当な最適な配分比率はそれぞれ、この部分を、上から、および線A-Aに沿った断面で示している
図2の部分の右手側に示されるように、コア材料7しか存在しないスプルーゲート6から最も遠い流路の末端での断面では獲得されない。
【0012】
すなわち、コア材料の溶融物7は流頭で表面材料8を突き抜けていることを
図2で見ることができる。
【0013】
表面材料の溶融物を過剰に投与することにより、最も長い流路を有する金型キャビティの部分において多層構造を部分的に獲得することは可能であるが、
図3からわかるように、より短い流路の末端では得られる表面材料8が多くなりすぎ、これは、コア材料が、このような位置では金型キャビティの外側の外形に到達しないことを意味する。さらに、流頭が補強材9またはアタッチメント手段10などの接続用の開口部を通過するとき、多層溶融物の流頭は分割されることになる。これは、
図2に示されるように、コア材料の突破、および製品の望ましくない位置で得られる過剰な表面材料のために、表面材料およびコア材料の最適な体積の配分比率を通常維持することができないことを意味しており、
図2は、補強材9の中のコア材料の標準的な部分と、スナップ作用のアタッチメント10の中にコア材料しかないことを示している。
図3では、補強材が大きすぎる表面材料の部分を有し、スナップ作用部材10はより標準的な配分比率を有する。
【0014】
パネル、カバー、ハウジング、ノブ、ハンドルなどの射出成形部品の場合、部品の目に見える表面層の特性に対して、例えば高度な仕上げ、紫外線(UV)耐性、耐熱性、形状精度が高い、沈み込みがないなどの特殊機能など、一般的に特有の要望がある。これは、そのような部品が、比較的高価な材料を1つだけ使用する現在の方法で射出成形される場合、部品のコストがかなり高くなることを意味する。部品の使用中、目に見えない部品の部分については、そのような特性に対する要求はないのが通常である。靭性や剛性などの優れた機械的特性を示す必要がある接続、補強材、アタッチメントなどの機能は、使用中目に見える部品の部分には適さない材料を使用して射出成形する必要がある場合がある。このようなタイプの部品は、多くの場合、「ダブルモールディング」と呼ばれるオーバーモールディング法を使用して多層射出成形される。
図4は、オーバーモールディング法を使用して射出成形された
図2および
図3に示される部品を示している。この方法では、最初に材料7が1つの金型キャビティに射出され、この金型キャビティは接続部9および10で後部を形成しており、その後、後部の上面を形成したキャビティは、オーバーモールディング工具で幾分大きいキャビティに自動的に変更され、このことは、
図4に示されるように表面層材料8でオーバーモールディングが行うことができることを意味している。ただし、この方法では、機械や工具への投資がかなり高くなり、サイクルタイムが比較的長くなる。
【0015】
表面材料の溶融物を過剰に投与することにより、最も長い流路を有する金型キャビティの部分において多層構造を部分的に獲得することが可能であるが、
図3からわかるように、より短い流路の末端では得られる表面材料8の量が多くなりすぎ、これは、コア材料が、このような位置では金型キャビティの外側の外形に到達しないことを意味する。
【0016】
特許文献1は、共射出のための従来の工具を使用する場合に上で概説した問題に対する解決策を提供する共射出方法による多層射出成形のための方法および工具を開示している。特許文献1によれば、部品の上部と、それと一体化された少なくとも1つの接続部とを組み込んだ部品を共射出成形する方法が記載されている。少なくとも1つの接続のためのキャビティが、可動の工具コア内に位置決めされ(
図5aおよび
図5bを参照)、このコアは、少なくとも1つの接続のためのキャビティの入口を開閉するように制御できる。部品の上部は、適切なゲートを介して、例えばサイドゲートの上流に複数のランナーを有するサイドゲート、または任意の他の適切なタイプのゲートを介して充填される。
図5aに示されるように、少なくとも1つの接続への入口が閉じた位置にある場合、少なくとも1つの接続のためのキャビティは、部品の上部の共射出プロセスの流頭を分割させることがないため、部品の上部のためのキャビティは適切に共射出されることになる。部品の上部のキャビティが完全に充填され、すべての計量供給された表面材料が部品の上部の表面層の成形に使用されるとき、少なくとも1つの接続のための工具コアが作動されて、入口を開放し、これによりコア材料の溶融物は、入口で表面材料層を突き破り、少なくとも1つの接続のキャビティを充填する、つまり、少なくとも1つの接続はコア材料のみで構成されることになる。したがって、特許文献1による方法では、オーバーモールド法によって射出成形された、
図4に示す部品と同様の多層成形部品が得られることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【発明の概要】
【0018】
本発明の目的は、1つまたは複数の金型キャビティを備え、少なくとも1つのゲートの上流に位置する少なくとも1つのランナーを備える、溶融物のための供給システムを有する射出成形工具において1つまたは複数の部品を射出成形するための改善された方法を提供することである。ゲートは、溶融物を少なくとも1つの金型キャビティの中に入れるサイドゲートまたは任意の他のタイプのゲートであり得る。したがって、供給システムは、射出成形機の射出ユニットからやってくる溶融物を収容し、1つまたは複数のランナー内の溶融物を、射出成形工具を通して1つまたは複数のゲートに案内し、1つまたは複数の金型キャビティの中に案内する。
【0019】
本発明による少なくとも1つのランナーは少なくとも1つの可動壁を備え、方法は、可動壁を移動させることによって少なくとも1つのランナーの少なくとも1つの断面寸法を変更して、少なくとも1つのランナーの少なくとも1つの断面寸法、例えば高さおよび/または幅および/または直径および/任意の他の形状を有する断面での任意の他の寸法を、射出成形作業が開始する前に、または継続中の成形サイクル中に、手動でまたは自動的に変更することを可能にし、これにより、少なくとも1つのランナーにおけるメルトフローレートを調整する、および/または少なくとも1つのランナー内の材料に、および結果として少なくとも1つの金型キャビティに保圧を加える、すなわち金型キャビティ固有の保圧を各々の金型キャビティに加えることを可能にする、および/または少なくとも1つのランナー内の残留物を圧縮するステップを含む。可動壁は、機械的、油圧的、または電気的に制御されるように構成されている。
【0020】
本発明による改善された方法は、
-1個取りキャビティ工具または多数個取りキャビティ工具を使用することによる、サンドイッチ構造を有する部品、すなわち2つのプラスチック材料の表面層とコア層を有する部品の共射出、および
-金型キャビティが異なるサイズ、形状、および/または体積を有する多数個取りキャビティ工具での系列部品の同時の射出成形に関して、汎用性および費用効率を高め、かつ環境負荷および関連する資源の利用を低下させるために使用されることが主に意図されている。
【0021】
本発明による方法はまた、様々なプロセスおよび工具の欠陥を低減または排除するために、従来の射出成形に適用することもできる。
【0022】
本発明は、本発明の実施形態のいずれかによる方法を実行するための射出成形工具にも関係する。工具は、少なくとも1つの金型キャビティと、少なくとも1つのゲート、および少なくとも1つのゲートの上流に位置するように配置された少なくとも1つのランナーを備える供給システムとを備える。少なくとも1つのランナーは、以下の、
a)少なくとも1つのランナー内の材料の流量を変更すること、
b)少なくとも1つのランナー内の材料に、および結果として少なくとも1つの金型キャビティに保圧を加えること、
c)少なくとも1つのランナー内の残留物を圧縮することのうちの少なくとも1つを達成するために、少なくとも1つのランナーの少なくとも1つの断面寸法が変更されることを可能にするように構成された少なくとも1つの可動壁を備え、これにより、工具は、少なくとも1つのランナーの少なくとも1つの断面寸法を変更するための手段を備える。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、供給システムは、少なくとも1つのゲートの上流に位置する複数のランナーを備えてよく、これにより、少なくとも1つのランナーの少なくとも1つの断面寸法は、個別に変えられるように構成されている。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、工具は、複数のランナーの少なくとも1つの断面寸法を変更するように適合された、隣接して配置された複数のゲートインサートを備える。各ゲートインサートは、1つのランナーの少なくとも1つの断面寸法を変更するように構成されてよく、これにより、複数のランナーを介して金型キャビティに進入する材料の流頭が正確に制御されてよい。
【0025】
本発明の実施形態によれば、工具は、少なくとも1つのランナーを、少なくとも1つのランナー内の材料の融点または溶融間隔よりも低い温度に加熱するための加熱手段を備える。
【0026】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1つのランナーの少なくとも1つの断面寸法を変更するための手段の一部は可動壁を構成する。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、可動壁は、少なくとも1つのランナーの少なくとも1つの断面寸法を変更するための手段によって機械的、油圧的または電気的に制御されるように構成されている。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つのランナーの少なくとも1つの断面寸法を変更するための手段の少なくとも一部は、工具に取り外し可能に取り付けられるように構成された交換可能なカセットを構成する。「カセット」は、鋼などの耐摩耗性材料を含む保護ケースまたはホルダーであり、これは、少なくとも1つのランナーの少なくとも1つの断面寸法を変更するための手段が、例えば高圧下で作動されているとき、その内容物を損傷から保護する。
【0029】
この目的は、特許請求の範囲に記載された特徴を有する方法および工具によって達成され、この特徴は、
-メルトフローレート(cm3s-1)を少なくとも1つのランナーにおいて、およびこれによりランナーに接続された少なくとも1つの金型キャビティ内で変化させること、
-少なくとも1つのランナーを介して溶融物に、およびこれにより、ランナーに接続された少なくとも1つの金型キャビティに保圧を加えること、
-供給システム内の残留物を、供給システムにおけるランナーの少なくとも1つにおいて最小体積まで圧縮することを可能にする。
【0030】
「ランナーの断面の少なくとも1つの寸法を変更する」という表現は、少なくとも1つのランナーの少なくとも一部の少なくとも1つの寸法が変更され得ることを意味することが意図されていることに留意されたい。例えば、ランナーの一部のみの高さが変更されてもよく、必ずしもそのランナーの全長に沿った高さではない。
【0031】
技術用語「サイドゲート」は、少なくとも1つのランナーを1つの金型キャビティに接続するスロットを意味しており、このスロットは狭すぎず、ゲートに接続された金型キャビティ内の溶融物が広がるのに適した長さである。サイドゲートは、溶融物を側方縁部で、あるいは単一の湾曲した壁または二重の湾曲した壁のいずれかのそのような縁部の近くで、または成形すべき部品の平坦な壁の直線の縁部で溶融物を入れるように設置されてよい。ゲートは、材料を劣化させる可能性のある高すぎるせん断を発生させることなく、金型キャビティを充填するのに溶融物の十分な流れを可能にするような寸法にすべきである。
【0032】
溶融物は、任意のプラスチック、ガラス、エラストマー、熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーなどの任意の射出成形可能な材料、または菓子などの食用物質、または少なくとも1つのそのような材料を含む混合物であってよい。
【0033】
本発明の実施形態によれば、供給システムは、少なくとも1つのゲートの上流に位置する複数のランナーを備え、少なくとも1つのランナーの少なくとも1つの断面寸法が個別に変えられることにより、ランナーの少なくとも1つにおける少なくとも1つの断面寸法を個別に調整することによって、複数のランナーの各々におけるメルトフローレートを個別に制御することができる。少なくとも1つのランナーの出口からの所望の個別の流量を達成するために少なくとも1つの可動壁に必要とされる調整は好ましくは、少なくとも1つのランナーにおける少なくとも1つの可動壁を移動させるための手段の手動操作による調整によって実行される。その結果、流頭の輪郭および金型キャビティ内の溶融物の広がりを、均一であり、連続するように制御することができ、流頭全体を、金型キャビティのサイドゲートから最も遠い外形に同時にまたはほぼ同時に到達するように制御することができる。
【0034】
したがって、本発明による方法は、かなり複雑な設計を有する可能性のある様々なタイプの部品を成形するために使用することができ、とりわけ共射出成形部品に使用される場合、コア層材料の配分比率が高まり、従来の供給システムを有する工具を使用する従来の先行技術の共射出成形方法で可能であるものと比べてより均一に広がる。本発明の実施形態によれば、従来の供給システムでの従来の工具の使用と比較して実質的に高いコア材料の配分比率に到達することが可能である。コア材料溶融物が表面材料層を突き抜けることなく、および/または部品の特定の領域に過剰な表面材料が蓄積することなく、かなり複雑な形状の部品の総体積の少なくとも約50%の配分比率に到達することが可能である。部品が単純で対称的な形状をしている場合、50%以上の配分比率も達成されるであろう。
【0035】
ランナーの少なくとも1つの寸法が調整されることで、
-ねじ装置を使用して、成形作業全体において固定された量だけ無段階方式で、成形作業の開始前に手動で、または
-例えば、継続中の射出成形サイクル中に、無段階方式で、または段階的な方式で駆動ユニットと、制御システムとを含む機構または油圧装置または電気回路を利用して、自動的に、(駆動システムは油圧装置(段階的に可変である)またはサーボモータを備えた電気装置(無段階可変である)であり得る)のいずれかでメルトフローレートを変更することを可能にしてよい。
【0036】
本発明による方法は、多数個取りキャビティ工具のキャビティ間の溶融物の流れのバランスをとる/微調整するために、または系列部品の成形などの他の射出成形ケースで必要なときに溶融物の流れを調整するために使用できる。電気サーボモータを駆動ユニットとして使用することで、ランナーにおける移動コアの運動および力の汎用性のある迅速な変化を実現し、これにより継続中の成形サイクル中により溶融物の流れと保圧動作の両方の制御を行うことができる。
【0037】
本発明の実施形態によれば、複数のランナーの1つまたは複数の中の溶融物に保圧を加えることができ、これにより、圧力は、金型キャビティをランナーに接続するゲートを介して、その金型キャビティに、または各それぞれの金型キャビティに瞬間的に伝達される。保圧は、すべての射出成形方法において、常に溶融物に加えられて、金型キャビティ内の溶融物は、それが固化する間、それは高密度に押し固められた状態であることを保証する。本発明による保圧動作は、1つまたは複数のキャビティのそれぞれに対して個別に制御され、これは「金型キャビティ固有」と表現することができ、保圧動作は、体積測定充填とも呼ばれる、1つまたは複数の金型キャビティの各々への溶融物の充填が完了するのと同じ時点で、または実質的に同じ時点で開始される。射出成形機の保圧機能はこれにより利用されない。代わりに、各金型キャビティにおける射出成形サイクルは、
i)各ランナーにおいて流頭を個別に制御することを可能にするため、本発明の方法および工具を使用することによって改善される、射出成形機の射出機能を使用すること、および
ii)射出成形機の保圧機能ではなく、金型キャビティ固有の保圧を加え、これにより、各金型キャビティが充填されると、射出成形機は圧力、速度、および開始点に関してリセットされることを含む。
【0038】
系列部品を射出成形する場合、工具は、異なる射出時間を使用して充填する必要がある、サイズ、体積および/または形状が等しくない金型キャビティを備え、このことは、さまざまな金型で異なる時点で保圧動作を開始する必要があることを意味する。
【0039】
複数のランナーの1つまたは複数における溶融物に保圧を加えることは、ゲートインサートの移動パッケージ/行に結合された、および/または複数のランナーの上流、または金型キャビティ内への任意の他の選択したタイプのゲートの上流にある供給システム内の複数のランナー内の移動コアに結合された駆動ユニットを備えた機械的手段によって達成されてよい。ランナー内の溶融物の流れを変化させるために使用される機構および駆動システムは、ランナー内の材料に、および結果としてそれぞれの金型キャビティに保圧を加えるために使用することもできる。機構および駆動システムは、ゲートインサートのパッケージ/行、および/またはゲートインサートの上流の1つまたは複数のランナー内のコアを後方に移動させることにより、ランナー内に、いわゆる溶融物クッションを構成する十分な量の溶融物を蓄積させることができるように調整する必要があり、この溶融物クッションは、駆動システムが保圧時間全体にわたって溶融物を加圧することを保証する。
【0040】
保圧が加えられることが意図されるランナーの上流の溶融物の流れを遮断するための装置は、溶融物クッション内の溶融物の一部がランナー内で逆流し、これにより所望の保圧に到達しなくなることを回避するように構成される必要がある。保圧を加えるのに必要な力は、一部のケースでは、ランナーにおけるメルトフローレートを変更するために必要な力よりも大きくする必要があることに留意されたい。流量を変更し、保圧をそれぞれ適用する際、インサートおよび/またはコアを移動させるのに必要な速度は、流量を変えることは、通常迅速な移動であるため、異なるのが通常である。したがって、溶融物の流れを変更する動作と、同一の成形サイクル中で同一のランナーに保圧を加える動作を組み合わせる場合、機構および駆動システムの寸法決定および仕様は、両方の動作に必要な力および速度に適合させる必要がある。
【0041】
本発明によるこの方法は、「多数個取りキャビティ金型」で、すなわち複数の金型キャビティを備える工具で系列部品を単一材料射出成形するのに使用されることがとりわけ意図されており、この場合、2つ以上のキャビティは、形状、サイズおよび/または体積に関して異なっており、これにより、大きな体積を有するキャビティは、より小さな体積を有するキャビティよりも長い時間を必要とするため、キャビティは一部分のみが同時に充填される。
【0042】
したがって、系列部品を射出成形するための供給システムは、
-各キャビティ内において個々に機能する、金型キャビティ固有の保圧機能、および
-保圧動作が作動されるときの溶融物の逆流を防止するために、保圧機能のランナー(複数可)の上流にある遮断装置のための手段を備えるべきである。
【0043】
これにより、各個別の金型キャビティ内の部品に関する成形プロセスは、その部品があたかも従来の方法で個別に成形されたかのようであることが事実上判明し、それによって各部品の重量および品質、例えば表面仕上げ、形状精度、機械的特性などは変わらずに維持されることになる。
【0044】
本発明は、共射出成形および/または系列部品の射出成形に使用されることに限定されず、例えば、1つまたは複数の同等のキャビティを有する単一材料の射出成形、および複数材料のオーバーモールディングにも適用されてもよい。
【0045】
本発明による工具および方法は好ましくは、例えば可塑化および計量供給のための時間が非常に長いため、全成形サイクルを実施するための時間を長くする必要がある場合など、従来の射出成形方法の特定のケースで使用することができる。本発明による工具および方法を使用することにより、金型キャビティ固有の保圧動作が開始されるとすぐに可塑化および計量供給を開始することができ、したがって、サイクル時間を短縮することが可能になる。
【0046】
本発明の実施形態によれば、供給システム内の材料の残留物を圧縮することで、機械の射出ユニット内の残留物を直接粉砕および可塑化するか、別個にリサイクルするかのいずれかによってリサイクルされる量を実質的に減らすことができる。複数のサイドゲートランナーの上流にある1つまたは複数のランナー内の残留物は、圧縮動作が保圧動作と組み合わされる場合、または保圧動作が1つまたは複数のランナーで使用されない場合、別個の圧縮動作によって圧縮することができる。最初のケース、つまり保圧動作と組み合わせるケースでは、1つまたは複数のランナー内の残留物を圧縮した後の最小の残留物は、溶融物クッションを、ちょうど保圧動作に必要な体積、またはそれよりわずかに大きい溶融物の体積を含むように調整し、これにより、保圧動作の全期間中、圧力が溶融物に加えられるはずであることによって達成される。
【0047】
次に、1つまたは複数のランナーにおけるコアの移動および加圧が、その後、固化し、溶融した材料の残留物の混合物を最小の体積に圧縮する。1つまたは複数ランナーにおけるコアが、単にメルトフローレートを変更するために使用される場合、射出動作が停止したとき、制御システムを、1つまたは複数のランナーでの圧縮動作に対して適切な速度、圧力、および/または時間に切り替えるだけで圧縮動作を実行することができる。圧縮による供給システム内の残留物の削減の度合いは、溶融し固化した材料の混合物の剛性、溶融粘度、補強などの要因、およびランナーの壁の温度に依存することに留意されたい。
【0048】
複数のランナー内の残留物を圧縮する方法はまた、本発明によれば、工具の分割線の両側で互いに反対側に組み立てられ、その各々が駆動ユニットに結合されたゲートインサートの2つのパッケージ/行の実施形態を組み合わせ、これにより、キャビティの体積測定充填の直後に、圧縮動作と保圧動作が同時に実行されることによって提供される。インサートのパッケージ/行におけるゲートインサートは、分割線の反対側にあるインサートと衝突することなく、圧縮された残留物ができるだけ薄くなるように調整する必要がある。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、この方法は、少なくとも1つのランナーを、少なくとも1つのランナー内の材料の融点または溶融間隔よりも低い温度に加熱する手段を備える。これは、ランナーが位置決めされている工具インサートを、プラスチック材料製造業者が推奨する金型温度よりも大幅に高い温度に加熱することによって達成することができる。プラスチック層は、少なくとも1つのランナーの表面に当たって固化する溶融物の「スキン」と呼ばれることが多く、これは非常に薄くなる。加熱される表面の温度が高いほど、スキンの厚さは薄くなる。工具インサートの加熱は、別個の加熱ユニットを使用して行われ、インサートは、金型プレート、金型キャビティインサートなどの工具の他の部分に熱が伝導または放射されるのを阻止するために断熱する必要がある。そのようなランナーの名称は、その壁面温度が材料の融点または溶融間隔よりも低く、スキンがランナーの表面に当たって固化することを意味するため、なおも「コールドランナー」である。
【0050】
加熱されたランナーの実施形態は、効率的な保圧動作を実現するために、ランナー内の溶融物クッションが可能な限り高い割合の溶融した材料を包含することを保証するために主に提供されている。溶融物の流動抵抗およびせん断も同様に低くなり、このことは、ランナーを通り、金型キャビティに進入するように溶融物を充填するのに必要とされる射出圧力が低くなることを意味しており、これは、流路が長い場合および/または金型キャビティの流動抵抗が高い場合に有利な場合がある。
【0051】
すべての熱可塑性射出成形グレード、アモルファスならびに半結晶性グレード、および熱弾性グレードを本発明による実施形態で使用することができる。PC(ポリカーボネート)、PSU(ポリスルホン)、PES(ポリエーテルスルホン)などの高粘度のアモルファス熱可塑性グレードは、高温に加熱されたランナーでより流れ易いのに対して、射出速度および/または圧力の増加による影響は小さくなる。SEBSなどの熱エラストマーの流動性は、溶融物の高せん断によって改善される。特定のプラスチック材料に関するこのようなポリマー固有の処理特性は、ランナーを個別に加熱する必要があること、およびランナー内に強力な溶融物の流れを提供するプロセスを見つけようとする場合、ランナーの断面積を調整する必要があることを指摘する。
【0052】
一般に、高粘度、高度な強化、感熱溶融、高せん断依存の流動性などの特殊な処理特性/要件を持つプラスチック材料は、本発明の1つまたは複数の実施形態を使用することにより、工具内の溶融物供給システムに関する現行の技術の使用と比べて、射出成形においてより最適に機能する可能性がある。サイドゲートの上流のランナーの実施形態は主に、
a)いわゆる「コールドランナー」であるため、いわゆる「ホットランナー」とは対照的に、上記で例示したように、使用されるプラスチック材料のさまざまな処理要件に供給システムを適合させるための柔軟性および信頼性が向上する、
b)
-その断面積を無限に調整(増大させる、または減少させる)することにより、
-または、ランナーが中に位置決めされている工具インサートを個別に加熱または冷却することにより、つまり、これらの工具インサートは、工具の他の部分から断熱されていることにより、減少または増加させることができる流動抵抗を有することによって特徴付けられる。コールドランナーの断面積を増大させる、および/または壁の温度を上昇させるとき、固化したスキンの「覆われていない」断面積が増大し、これによりランナーの流動抵抗が減少する。
【0053】
現在の射出成形作業におけるコスト、環境負荷、および資源の利用は、本発明による工具および方法を実施することによって低減させることができる。さまざまな射出成形用途の利点は次のとおりである。
a)共射出成形:
-通常はより高価な表面層材料のみの従来の単一材料射出成形と比較して、コア層にリサイクルグレードなどの低コストのプラスチック材料を使用することによる、部品の総プラスチック材料コストの10~20%の節約、
-リサイクルされたプラスチック材料を使用することによる環境負荷の低減、
-押出成形機を射出ユニットから前後に移動させるコア材料の可塑化/計量供給のための時間と、表面材料の可塑化/計量のための時間が、成形動作に必要とされる特有のサイクル時間と比べてかなり長いケースにおいて、Mono Sandwich法を使用する際の生産能力の増加を意味するサイクル時間の短縮、
-オーバーモールド法と比較して、工具コストの削減およびサイクル時間の短縮、
b)系列部品の射出成形:
-系列部品ごとに個別の工具を購入する場合と比較して、系列部品の合計購入価格の約30%の節約、
-機械および周辺機器の取得およびメンテナンスのコスト、占有される工場エリアおよびオペレーターのコストが低くなるため、生産コストの削減、
-鋼材や工具のさまざまな構成要素などの資源の使用率の低下、
c)その他の従来の射出成形ケース:
-プラスチック材料の可塑化/計量供給のための時間が、総サイクルタイムを長くする必要があるほどに非常に長い場合の生産能力の向上を意味する、サイクル時間の短縮、
-キャビティの形状、サイズ、体積が等しい多数個取りキャビティ工具の充填バランスの信頼性の向上、これは部品が完全に充填されないリスクの軽減を意味する。
【0054】
本発明による方法を参照して説明される特徴の任意の1つまたは、本発明による工具にも適用され、逆もまた同様である。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、工具は、任意の適切な固定手段を使用して、射出成形工具に取り外し可能に取り付けられるように構成された、工具の1つまたは複数の特徴部分を備える交換可能なカセットを構成する。溶融物の流れを変化させる手段および圧力を加える手段の任意の部分またはすべての部分など、工具の任意の部分(複数可)は、そのような取り外し可能なカセットに収容されてよい。
【0056】
本発明は、添付の概略図を参照して非限定的な実施例によって以下にさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1a】従来技術によるモノサンドイッチ法を示す図である。
【
図1b】従来技術によるモノサンドイッチ法を示す図である。
【
図1c】従来技術によるモノサンドイッチ法を示す図である。
【
図2】従来技術による任意の共射出方法を使用して複雑な形状を有する部品を射出成形するときに発生する可能性があるいくつかの問題を示す図である。
【
図3】従来技術による任意の共射出方法を使用して複雑な形状を有する部品を射出成形するときに発生する可能性があるいくつかの問題を示す図である。
【
図4】従来技術によるオーバーモールド法を使用して射出成形された、
図2および
図3に示される部品を示す図である。
【
図5a】先行技術による方法を使用する、共射出成形された上部と、コア材料のみで充填された、それと一体化された少なくとも1つの接続部とを組み込む部品を示す図である。
【
図5b】先行技術による方法を使用する、共射出成形された上部と、コア材料のみで充填された、それと一体化された少なくとも1つの接続部とを組み込む部品を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態による工具の特徴部を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態による工具の特徴部を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態による供給システムを示す図である。
【
図10a】本発明の一実施形態による、断面寸法を変更し、複数のランナー内の溶融物に圧力を加えるための手段を示す図である。
【
図10b】本発明の一実施形態による、断面寸法を変更し、複数のランナー内の溶融物に圧力を加えるための手段を示す図である。
【
図10c】本発明の一実施形態による、断面寸法を変更し、複数のランナー内の溶融物に圧力を加えるための手段を示す図である。
【
図10d】本発明の一実施形態による、断面寸法を変更し、複数のランナー内の溶融物に圧力を加えるための手段を示す図である。
【
図11a】本発明の一実施形態による、断面寸法を変更し、複数のランナー内の溶融物に圧力を加えるための手段を示す図である。
【
図11b】本発明の一実施形態による、断面寸法を変更し、複数のランナー内の溶融物に圧力を加えるための手段を示す図である。
【
図11c】本発明の一実施形態による、断面寸法を変更し、複数のランナー内の溶融物に圧力を加えるための手段を示す図である。
【
図12】本発明の一実施形態による方法のステップを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図面は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、特定の特徴の寸法は明確にするために誇張されている場合があることに留意されたい。
【0059】
図6および
図7は、射出成形工具の2つの側を示しており、一方の側12は、工具が収納されている射出成形機のクランプユニットの静止側にあり、もう片側13はその移動側にあり、この工具は、任意の共射出法および系列部品を成形する方法などの本発明による方法で使用されてよい。図示の工具の片側12および13は、ストリッパープレート14が第3のプレートを構成する3プレートの金型を備える。ストリッパープレート14に取り付けられたビーム15は、サイドゲートインサート16または26を備え、ビーム15およびサイドゲートインサート16または26は、ストリッパープレート14から着脱可能である。
【0060】
工具の片側12および13は、部品が形成される2つの金型キャビティ17を備え、各金型キャビティはサイドゲート18を有する。工具の片側12および13はまた、複数のサイドゲートランナー19、ならびに複数の2つの分岐ランナー20およびメインランナー21が位置決めされる工具インサート25も備える。
【0061】
図6および
図7の図示される工具の片側12および13において、ランナー20および21は長方形の断面を有し、移動側の工具の片側13に取り付けられた工具インサート25の中に完全に位置決めされ、移動コア(
図11cの40)の上面は、ランナー20および21の底部に位置し、移動コア40のための貫通孔の壁は、ランナーの側面であり、静止する工具の片側でインサート25に向かい合う、金型プレート12の平坦な、または湾曲した面は、ランナーの上面に位置する。
【0062】
図11cは、本発明の実施形態によれば、複数の分岐ランナー20およびメインランナー21が、実質的に円形の断面、実質的に楕円形の断面、または任意の他の形状を有し得ることを示す。
図11cに示されるように、ランナー20または21の断面の対称の軸に高さS
xを設定することにより、断面は、必要に応じて、実質的に楕円形になることができる。実質的に円形または楕円形の断面を有するランナー20または21の特徴は、まず、ランナー20および/または21内のプラスチック残留物が、長方形または正方形の断面を有する対応するランナーよりも同じ流れ抵抗でより小さい体積を有することであり、次に、溝43がコア40の上部の半径方向に成形された表面と共に、コア40のための貫通孔の表面を押すフランジ44を形成することであって、そして特に、高圧が溶融物内で蓄積される場合、または極端に低粘度のプラスチック溶融物が使用される場合、コア上部のこのような設計は、コア40と工具インサート25にあるその貫通穴との間での溶融物の漏出を防ぐために、締め付けの改善に貢献することになる。
【0063】
図6および
図7の工具の片側12および13は、本発明による方法で使用されてよい射出成形工具の単なる一例である。一般に、工具は必ずしもストリッパープレート14およびビーム15を備える必要はない。
図9、
図10a~
図10dおよび
図11a~
図11cに示されるように、複数のランナー19、20および21に対応付けられたサイドゲートインサート16および26またはコア40は、それらが本発明による駆動機構に結合されているかどうかに関係なく、工具の静止側12および移動側13に直接位置決めすることができる。本発明による工具は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の金型キャビティなど、任意の数の金型キャビティ17を備えてよく、複数の金型キャビティの場合、それらの形状、サイズ、および/または体積は同じである場合、または異なる場合もある。
【0064】
図8は、射出成形工具が使用されているときにプラスチック溶融物を1つまたは複数の金型キャビティ17(
図8には図示せず)に供給するために使用される本発明の実施形態による供給システムの特徴を示す。射出成形工具の使用中、つまり、メインランナー21、2つの分岐ランナー20、および5つまたは2つの複数の流線形のサイドゲートランナー19の中にはプラスチック材料が存在している。サイドゲート18はキャビティ17に溶融物を提供する。したがって、
図8は、サイドゲート18およびランナー19、20、および21の例示的な形状および幾何学形状を示している。供給システムは、移動側13と静止側12とビーム15との間で、工具の分割線内に据えられる。
図8に示される供給システム内のプラスチック材料には、圧縮部分や任意の他の変形部分がないため、プラスチック材料の形状/幾何学的形状は、工具の供給システムのランナーおよびサイドゲートの表面/幾何学的形状に完全に一致する。
【0065】
「ゲート」という用語は、少なくとも1つのランナーを金型キャビティに接続する開口部を意味する。サイドゲートはそのようなゲートの例である。サイドゲートは、成形された部品の単一の、または二重の湾曲した壁の側方縁部で、またはそのような縁部の近くで溶融物を入れるように設置されてよい。サイドゲートは当然のことながら、
図7および
図8に示されるより大きなキャビティ17に入るサイドゲート18など、部品の平坦な壁の直線縁部に設置することも可能である。ゲートは、材料のせん断や分解を過度に発生させることなく、金型キャビティを満たすのに十分な溶融物の流れを可能にするように寸法が決められる。溶融物が金型キャビティ17内に広がっているときのウェルドラインを回避する、および最終部品の他の欠陥を回避するために、金型キャビティごとに1つのゲート18しかないことが好ましい。本発明による複数のランナー19は、サイドゲート18を通して溶融物を供給する配置することができる。複数のサイドゲートランナー19への入口に沿ってその延長部を有する分岐ランナー20は、この複数のランナー19に溶融物を供給するように配置する必要があり、これにより、くさび状のチップ52などの手段が各ランナー19の入口で溶融物の流頭を軸方向に分割し、その後溶融物の分割した部分を複数のランナー19の各ランナーへと偏向させ、この偏向は、各ランナーの入口で部分的に断面拡大部分53を機械加工することによって促進させることができる。
【0066】
図8に示される、メインランナー21と2つの分岐ランナー20は、どちらも高さHxと幅Bxの長方形の断面を有する。実質的に円形または楕円形の断面を持つ対応するランナーでは、
図11cに示すように、円形の断面の直径はSxであり、楕円形の断面の幅と高さはそれぞれSx+ΔSxである。複数のランナー19は、溶融物の流れ方向を横切る断面において厚さT
xを有する。指数「x」は、寸法H
x、B
x、S
x、およびT
xが複数のランナーのうちの2つ以上に属し、それにより、異なる、固定された、または調整可能なサイズを有する可能性があることを意味する。図示の工具において、H1、H2およびH3は、メインランナー21および2つの分岐ランナー20の各々のそれぞれの高さであり、これらの高さは、射出成形作業が開始する前にコア40を各ランナーのいずれかの固定位置に移動させることによって設定されてよい、または射出成形作業中の各サイクルに対して段階的にまたは無段階式に変更されてもよい。複数のランナー19におけるそれぞれのランナーの「厚さ」に関する寸法T
xは、大キャビティ17についてはT
1、T
2、T
3、T
4およびT
5であり、小キャビティ17についてはT
6およびT
7であり、ランナー19の各々は、サイドゲートインサート16を止めねじ35で移動させることによって異なる厚さに設定されてよく、
図9および
図10aを参照されたい。
【0067】
本発明の実施形態による工具は、以下の機能、
-メルトフローレートcm3s-1を無限に変えられるように調整して、個別のメルトフローレートを使用して、1つの金型キャビティ17を充填するか、複数の金型キャビティ17の各金型キャビティを充填する、および/または
-1個取り金型キャビティ17内の溶融物に、または複数の金型キャビティ17の各金型キャビティに個別に保圧を加える、および/または
-溶融物に特定の圧力を加えて、供給システムの複数のランナー19、20、21内のプラスチック残留物を圧縮し、ランナー19、20、21内に最小限の量のプラスチックが残るようにすることのうちの1つまたは複数を実行するように構成されている。
【0068】
これらの手段は、
-ゲート18の上流に位置する複数のサイドゲートランナー19(たとえば、
図8を参照)であり、これにより、本発明によるランナー19は、工具の片側の一方にある複数の無限に調整可能なゲートインサート16または26および他方の側にある固定されたゲートインサート34(
図9に示されるように)、または、他方の工具の側にある調節可能なゲートインサート26(
図10dに示される)に対応付けられ、これらのインサートに複数のランナー19を結合させることができる、複数のサイドゲートランナー19と、
-駆動機構(
図10aに示されるように)であって、1つまたは複数のゲートインサート16(または
図10dのインサート26)が止めねじ35を介して上部ウェッジ22に結合され、下部ウェッジ23は接続部45で駆動ユニット(図示せず)に結合されている駆動機構と、
-複数の分岐ランナー20とメインランナー21(
図8に示される)であって、ランナー20と21のそれぞれの可動壁は、インサート25の貫通穴を移動するコア40の上部と(
図11aおよび
図11bの例に示されているような)、貫通穴の表面の一部および反対側の工具の片側にある通常は単一の湾曲面と、分岐ランナー20および/またはメインランナー21のための本発明による機構(
図11aおよび
図11bを参照)とによって構成され、
-複数のランナー20および21の各ランナーに関する機構は、射出成形作業の開始前に、楕円の断面では、高さHx(
図8に示されるように)またはSx(
図11cに示されるように)またはSx+ΔSxで、
コア40を任意選択の固定位置に設定するために無限に調整可能であり、複数のランナー20および21のそれぞれに特定の断面積を与えることで、ランナーを通る望ましいメルトフローレートが獲得される、または
-複数のランナー20および21の各ランナーに関する機構は、射出作業の各サイクル中に各ランナーの各々において個別にメルトフローレートを変更するため、またはランナーの各々において個別に溶融物に保圧動作を加える、または高さHrxまたはSrxに対応するランナー内でプラスチック材料を個別に最小体積に圧縮するように溶融物に圧力を加えるため、あるいは同じ成形サイクル中にメルトフロー調整動作と、保圧動作を順次組み合わせるために使用される、複数の分岐ランナー20とメインランナー21である。指数「r」は、「残留物」、つまり複数のランナー19、20、21に残っているプラスチック材料、またはその金型キャビティ、または各金型キャビティが充填された後のプラスチック材料を意味する(
図10dおよび
図11cを参照)。
【0069】
図11cは、保圧動作に必要な溶融物クッションを蓄積するために、ランナー20および/または21の実質的に円形の断面が高さS
xからS
x+S
exに拡張する保圧動作を示す。保圧動作の終わりに(
図11cの右側の図を参照)、ランナー内の溶融物は、初期断面が直径Sxを有する実質的に円形である場合、高さSrx=約0.6Sxに圧縮される。
【0070】
ゲート18の上流にある複数のランナー19は、各ランナー19において個別に溶融物の流れを調整するために単に使用されてよく、それにより、溶融物の流頭の輪郭を、最適な充填が実現されるような方法でキャビティ(複数可)17内に広がるように形成することができる。寸法Txは、金型キャビティの溶融物の流頭が所望の輪郭を獲得し、かつ事実上同時に、流頭全体が金型キャビティの最も遠い外形に到達するまで、連続する試行によって複数のランナー19の各ランナーにおいて個別に設定される。
図9は、カセット33の凹部32に取り付けられた複数のゲートインサート16を示しており、インサート16は、反対側にある工具の片側の固定インサート34と共に複数のランナーを形成し、各ランナーは、複数のランナー19において、止めねじ35によって寸法T
xに調整することができる。止めねじ35を回転させることができるようになる前に、カバーねじ36を外す必要がある。カセット33および固定インサート34は、工具の静止金型プレートまたは移動金型プレートへの取り付けおよび取り外しが容易である。
【0071】
図9に例示される実施形態は、
-例えば、複雑な設計の部品の共射出または従来式の単一材料射出成形で、金型キャビティ内での溶融物の広がりに最適な流頭の輪郭、
-多数個取りキャビティ工具で、等しい形状、サイズ、体積を備えた金型キャビティ間での溶融物の流れのバランスの調整と組み合わせた、金型キャビティ内での溶融物の最適な広がりを必要とする工具で使用することができる。
図9に示される実施形態は、サイドゲート18の上流にある複数のゲートランナー19内の溶融物内で保圧動作を実行するために、ゲートインサート16(
図10a~
図10cを参照)に特定の力を加え、その結果、金型キャビティ17に供給された溶融物内の保圧を加える駆動機構を追加することができる。
【0072】
図10aに示される実施形態では、サイドゲートインサート16が取り付けられ、固定インサート34と共に、サイドゲート18の上流に複数のランナー19を形成する凹部32を有するカセット33も存在する。止めねじ35が上部ウェッジ22に接続され、寸法Txは複数のランナー19にある各ゲートインサート16の止めねじ35によって個別に調整できるため、溶融物の流れは複数のランナー19を通過したとき、金型キャビティ17内に所望の流頭を形成することになる。
【0073】
図10a~
図10cは、複数のサイドゲートインサート16が、下部ウェッジ23を介して、複動式油圧シリンダまたは油圧モータまたは電気サーボモータであり得る駆動ユニットへの接続24を有する上部ウェッジ22に結合される、保圧動作ステップの一例を示す。保圧動作は、金型キャビティ17への溶融物充填動作が終了するのと同時に、または充填動作が終了する直前に開始するように作動され、このことは、異なる寸法Tx(
図10aを参照)に設定された複数のサイドゲートランナー19は、次のステップで(
図10bに示される)サイドゲートインサート16のパッケージ/列によって、
サイドゲートインサート16は、寸法T
xに設定された後、互いに対して固定された位置関係であるため、複数のランナー19のすべてのランナーに関して同一である距離T
eだけ拡張するように制御されることを意味する。拡張移動T
eは、カセット33内で下部ウェッジ23を対応する距離だけ後方に引っ張ることによって実行される。それにより、プラスチック溶融物は、複数のランナー19において、いわゆる「溶融クッション」に蓄積され、これは、適切に選択された拡張T
eの結果として特定の体積を達成し、この体積は、全保圧動作中に金型キャビティ17内で所望の保圧を維持するために必要とされるプラスチック溶融物の体積と同じ大さであるか、それよりわずかに大きい。プラスチック材料の圧縮は、複数のランナー19内のプラスチック残留物の異なる寸法Trxで(
図10cを参照)で終了し、この寸法Trxは通常Txよりわずかに大きい。
【0074】
この実施形態では、溶融物が後方に押され、それによりキャビティに供給された溶融物内の所望の保圧が増大できなくなるのを阻止するために、金型キャビティへの溶融物の流れを遮断するための装置が、存在する場合、複数のランナー19の上流にある複数のランナー20または21のうちの1つのランナー内に、保圧動作は、複数のランナー19において、したがって金型キャビティ17において実行することができる。
【0075】
遮断装置は、複数の分岐ランナー20のうちの1つまたはメインランナー21内のいずれかで溶融物の流れを遮断できるように位置決めされてよい。
図7は、それぞれが2つの分岐ランナー20を開閉する遮断コアを駆動する小型油圧シリンダを備える2つの遮断装置30を示す。そのような遮断装置は、さまざまな方法で設計されてよい。
【0076】
図10a~
図10cに例示されている本発明による実施形態は、
-複数の金型キャビティ17を備えた工具、たとえば系列部品の射出成形用工具における金型キャビティの各々に、個別の保圧を加え、保圧動作のための個別の時間を適用すること、
-射出成形機の射出ユニット内での可塑化および計量供給のための時間が長すぎることで、従来の射出成形機で保圧機能を使用する場合にサイクル時間の延長を生じさせるケースにおいて、単一の金型キャビティ、または等しい形状、サイズおよび体積を備える複数の金型キャビティを備える工具内に保圧を加えることで最短の可能なサイクル時間を達成することを必要とする工具で使用することができる。連続共射出法を使用する射出成形Mono Sandwichは、射出、保圧、冷却動作の合計時間が非常に短いため、コア層材料の可塑化および計量供給、ならびに射出ユニットのノズルへの押出機のドッキング、その後の表面層材料の計量供給の合計時間が、サイクル時間を延長させることになる。
【0077】
キャビティ固有の保圧では、機械の射出ユニットでの保圧動作および動作に関するそれに対応する時間が使用されないとき、キャビティ(複数可)が完全に(体積測定式に)充填されるとすぐにコア材料の計量供給を開始することができる。
【0078】
複数のサイドゲートランナー19と、
図10aに示されるカセット37とを備える実施形態は、可能であれば、射出成形機から工具を降ろさなくても、次の方法で工具を取り付けたり、取り外したりすることによって溶融物に保圧を加えるための機構を備える。
【0079】
-取り付けは、ウェッジ23が後方位置にある状態で(
図10bを参照)、カセット37を金型プレート39の間の凹部に押し込んで、その後、継ぎ手45をウェッジに接続する。次に、ウェッジ23は、それがその最終位置に到達するまで(
図10aを参照)前方に押され、同時に、ウェッジ23は、隙間50の中のウェッジ22を工具の片側12と13との間の分割線に向かって押す。カセット33を金型プレート39に取り付けた後、サイドゲートインサート16または26(
図10d)と協働する止めねじ35を、分割線からインサート16または26の中にねじ込み、ウェッジ22の中に締め付ける。これにより、複数のランナー19のすべての寸法T
xは、それらの開始位置T
max、例えば3mmに設定される。最後に、カバーねじ36をサイドゲートインサート16または26のそれぞれにねじ込む必要がある。
-取り外しは、サイドゲートインサート16または26からカバーネジ36を外すことから始まり、反対の方法で実行される。
【0080】
図10a~
図10cに示される実施形態は、駆動機構を含む複数のサイドゲートインサート26(
図10dを参照)と組み合わせることができ、これは
図10a~
図10cに示される固定インサート34に置き換わる。被動サイドゲートインサート26を含む複数のランナー19を有する実施形態を補足する目的は、複数のランナー19内のプラスチック材料の残留物をサイドゲートランナー同士で異なる場合がある寸法Trxに対応する最小体積に圧縮することで、残留物を直接機械の射出ユニットにリサイクルするとき、または残留物を個別にリサイクルするとき、可能な限り少量の残留材料を取得するためである。圧縮動作は、複数のランナー19の両側から同時に実行することができる(
図10dを参照)。
図10dによる複数のサイドゲートインサート26およびその駆動機構は、複数のサイドゲートランナー19内のプラスチック残留物に対して圧縮動作を実行するためだけに設計されており、それにより、
図10a~
図10cによるランナー19内の溶融物に保圧を加えるための実施形態のいずれかと組み合わせる必要がある、または機械の射出ユニットでの保圧動作と組み合わせる必要がある。通常、寸法Txは少なくとも50%圧縮することができ、すなわち圧縮寸法Trx≦0.5Txである。
【0081】
図10dに示されるような複数のランナー19におけるプラスチック残留物の圧縮動作の実施形態の機構は、サイドゲートインサート26、セットナット27、ネジ28およびコイルばね29を除いて、保圧動作を実行するための
図10a~
図10cの実施形態の機構と同一である。
図10a~
図10cの複数のランナー19の断面は寸法Txに設定されており、圧縮されたプラスチック残留物の望ましい寸法はTrxであるため、セットナット27を回してサイドゲートインサート26を移動させて、ウェッジ22に永久に完全に締め付けられるネジ28に完全に締め付けられるその最初位置から寸法Tx-Trxに設定する必要がある。コイルばね29は、駆動ユニットがウェッジ22および23を引き戻すときに、セットナットのダボに接続されているインサート26がセットナット27と一緒に戻ることを確実にする。
【0082】
それらのすべてがいわゆる「コールドランナー」である、本発明による複数の分岐ランナー20およびメインランナー21の一例が、供給システムの対応するプラスチック残留物の形態で
図7および
図8に示されている。
【0083】
工具の片側12および13において、すなわち
図6および
図7では、ランナーは長方形の断面を有し、移動側の工具の片側13に取り付けられた工具インサート25内に完全に位置決めされ、そこでは移動コア40の上面がランナー20および21の底部を構成しており、移動コア40のための貫通孔の壁はランナーの側面であり、工具の静止側にある、インサート25に向かい合う、金型プレート12の平らな、または湾曲した表面が、ランナーの上面を構成する。
【0084】
複数のサイドゲートランナー19に関する本発明による機構は、上部ウェッジ22および結合ロッド45に接続された下部ウェッジ23によって構成されており、それらはすべて、金型プレート39の間にある凹部に押し込まれるカセット37内に取り付けられる。上部ウェッジ22は、止めねじ35を介して、複数のサイドゲートインサート16または26に接続されている(
図10aおよび10dを参照)。複数のランナー20および21のための機構(
図11aを参照)もまた、上部ウェッジ22と、結合ロッド45に接続された下部ウェッジ23とで構成されており、これらはすべて、金型プレート39の間にある凹部に押し込まれるカセット37内に取り付けられており、上部ウェッジ22は、傾斜したフック42およびノッチ24を介して移動コア40に結合される。
【0085】
図11aは、工具インサート25にある貫通穴への移動コア40の取り付けを示している。機構の取り付けは、カセット37を位置決めすることから始まり、この場合、上部ウェッジ22および下部ウェッジ23は、凹部の最前方から後方に短い距離で、
図11aに示されるように固定位置にあり、ブリッジング片41を含むコア40がその貫通穴に押し込まれるとすぐに、フック42が、ノッチ24の左側まで短い距離でウェッジ22の上面に据えられることになる。次に、カセット37は短い距離だけその最前部位置まで前方に押され、それによりフック42はノッチ24の中に滑り落ち、それによりコア40は
図11bに示されるように上部ウェッジ22に接続される。次に、コアの動作がそのように要求する場合、継ぎ手45は、メルトフローレートを調整するか、複数のランナー20および/または21に保圧を加えるかのいずれかの目的で、下部ウェッジ23を駆動ユニットに接続することができる、または実質的に長方形あるいは円形または楕円形の断面を有するランナーにおいて、固定位置であるが、任意選択の位置において高さHxまたはSxまたはSx+ΔSxを設定するために、継ぎ手45をねじ装置(例えば装置24を
図10aに見ることができる)に接続することができる。
【0086】
コア40は、それらの下部の両側に平坦な表面を有し、そのような表面が支持片47に当接して滑るように移動することで、工具の使用中にフック42がノッチ24の中で完全に押さえつけられたままであることを確実にする。取り外しは、上部ウェッジ22および下部ウェッジ23が固定位置にある状態で(
図11aに示されるように)、逆の順序で行われ、カセット37を短い距離だけ後方に引くなどする。コア40は、緩められると、それらの貫通孔から引き抜くことができる。
【0087】
複数のランナー19、20および21の機構に結合された駆動手段に関する開始および停止時間ならびに速度/力などの本発明による機能および動作は、この新しい射出成形技術を本発明で利用できる特定の異なる方法に適合させることができるようなやり方で、調整し、制御する必要がある。本発明による射出成形機および工具の典型的な動作は、射出の開始、および機械内のスクリューピストンの往復運動のために異なる位置で射出速度を変更すること、複数の分岐ランナー20またはメインランナー21の1つまたは複数の断面を変更すること、およびそれを開/閉すること、機械の射出ユニットにおいて、または工具内の複数のランナー19、20、21において機械の射出ユニット内の保圧を切り替えること、ならびにランナーの1つまたは複数における保圧動作および圧縮動作を実行することである。
【0088】
結合ロッド45を介して、サイドゲートインサート16および/または26、ならびに移動コア40に接続された機構に接続された駆動手段は、複数のランナー19、20および21に対応付けられており、油圧シリンダであってよい。電気サーボモータまたは油圧モータが使用されてもよい。本発明による工具の駆動手段は、複数の金型キャビティおよび
【0089】
複数のランナーを備えた工具の各金型キャビティでの成形プロセスを、メルトフローレート、およびゲーティングシステムにおけるプラスチック残留物の保圧および/または圧縮に関して、かなりの度合いで個別に、かつ可変式に制御することができるような方法で、電子制御システムに接続されてよい。射出および保圧動作中に複数のサイドゲートインサート16、26およびコア40を移動させるための開始位置および終了位置は、ねじ装置51によって設定されてよい。制御システムは、固定式であり、射出成形機に組み込まれるか、射出成形機の外部に配置されるかのいずれかであってよく、つまり、制御機器は、異なる射出成形機の間で可搬式であってよい。
【0090】
図7および
図10に示される工具インサート25は、本発明による新しい射出成形技術の2つの機能、すなわち、
-工具インサート25を、プラスチック材料製造業者が推奨する従来より使用されている金型温度よりも大幅に高くなるように選択され得る、複数のランナー19、20、21の壁の温度に達するように加熱することであって、インサート25の加熱は、金型プレート、キャビティインサートなどの工具の他の部分に熱が伝導または放射されるのを最小限に抑えるように行われること、および
-工具インサート25の摩耗特性は、移動コア40のための貫通穴、およびインサート25内の移動ゲートインサート16および26の凹部における可能な限り低い摩耗を保証するのに十分であるため、インサート25の存続期間は少なくとも工具の寿命に等しくなることが達成されるように設計されてよい。
【0091】
工具インサート25の加熱は、プラスチック製造者が推奨する金型温度を達成および維持するために工具の残りの部分を焼き戻す加熱ユニットとは別の加熱ユニットを使用することによって実行される。インサート25は、熱が工具の他の部分に伝導または放射されないように断熱する必要があり、次のようないくつかの方法で実現される。
-ステンレス鋼などの熱伝導率が非常に低い鋼種の選択、および
-外側の凹部と内側の凹部を備えたインサート25を設計することにより、凹部内の空気がインサートの材料を通る熱伝導を減少させる。
【0092】
移動コア40あるいはサイドゲートインサート16または22は、各プロセスサイクルで、および主に長期間にわたって、プラスチック溶融物内で高圧および高温下で往復運動を行う。これらのプロセス条件は、コア40とそれらの貫通孔との間、およびサイドゲートインサート16および/または26とそれらの凹部との間にかなり高い圧力を生じさせることになる。特定のタイプのプラスチック材料を射出成形するとき、溶融物からの空気と揮発性物質の混合物は、コア/サイドゲートインサートおよび/または貫通穴/凹部の移動する面に沿って強制的にある程度排出されることになる。したがって、これらの表面には機械的摩耗と腐食性摩耗の両方が存在する可能性がある。移動コア40およびサイドゲートインサート16および22は、製造コストが安く、工具内での交換が容易であるため、軽微な摩耗でも許容できる可能性があるが、プロセス条件では、工具インサート25を非常に高度に硬化した、例えば60HRCまで硬化した耐食性鋼グレードから製造する必要があることが要求される。移動コア40およびサイドゲートインサート16または22は、幾分「これより軟らかい」が、依然として耐食性である材料から製造されてよい。工具インサート25は、従来通りに製造する、または鋼粉を使用する3D印刷添加剤法を使用して製造することができる。
請求項の範囲内での本発明のさらなる修正は、当業者には明らかであろう。