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▶ ウニヴェルズィテート・フューア・ボーデンクルトゥーア・ウィーンの特許一覧

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  • 特許-媒質中の三次元粒子分布の特定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】媒質中の三次元粒子分布の特定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20230829BHJP
   G01N 21/45 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
G01N21/17 610
G01N21/45 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020566974
(86)(22)【出願日】2019-05-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2019061615
(87)【国際公開番号】W WO2019228763
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-04-15
(31)【優先権主張番号】18174605.8
(32)【優先日】2018-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507205623
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート・フューア・ボーデンクルトゥーア・ウィーン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン オーストラム,ぺトラス ドミニカス ジョアネス
(72)【発明者】
【氏名】ライムホルト,エリク オロフ
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0187613(US,A1)
【文献】特表2002-526815(JP,A)
【文献】特開2016-206061(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0219998(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0202163(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/00-21/01
G01N21/17-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
子(P)の三次元粒子分布(6)を特定する方法であって、
上記粒子(P)を含む媒質(M)の試料(3)を提供する工程と、
光源(2)を用いて、コヒーレント光ビーム(9)を放射し、試料(3)に上記光ビーム(9)を照射し、光ビーム(9)の第一の部分が粒子(P)に散乱され散乱光ビーム(10)となる工程と、
散乱光ビーム(10)と、上記光ビームの散乱されていない第二の部分(11)との干渉画像(12)を、カメラ(5)によって記録する工程と、
上記試料(3)内に位置する複数の仮想平面(13)のそれぞれについて、その仮想平面(13)における上記試料(3)の再構成画像(14)であって、強度値(I)と位相値(Φ)とを有する複数の画素(15)を有する再構成画像(14)を、プロセッサ(7)によって上記干渉画像(12)から計算する工程と、
上記再構成画像(14)のそれぞれについて、画素(17)のレイアウトが上記再構成画像(14)と同じである存在画像(16)であって、各画素(17)について、上記再構成画像(14)における対応する画素(15)の強度値(I)が所定の閾値(TH)を超えるという第1の条件、および、上記再構成画像(14)における対応する画素(15)の位相値(Φ)が所定の符号(SG)を有するという第2の条件が満たされる場合に、該画素(17)に値が与えられ、上記二つの条件のうちの少なくとも一つが満たされない場合に、該画素(17)に値が与えられない存在画像(16)を、上記プロセッサ(7)によって生成する工程と、
存在画像(16)において値が与えられている画素(17)から、上記三次元粒子分布(6)を特定する工程と、を含む方法。
【請求項2】
上記試料(3)の外に位置する焦点(F)を有する光学デバイス(4)によって、上記散乱光ビーム(10)を、散乱後、かつ、記録前に、上記カメラ(5)上に向けることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記所定の符号(SG)は、上記焦点(F)が、上記光ビーム(9)の方向において上記試料(3)を基準としたときに位置する側と、上記粒子(P)の屈折率に対する上記媒質(M)の屈折率とに依存することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記仮想平面(13)のそれぞれは、所定の間隔(IV)で離間しており、上記試料(3)の全体をカバーする、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
上記光源(2)と、上記試料(3)と、上記カメラ(5)とを含むインライン干渉計(1)が設けられていることを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
上記カメラ(5)として、デジタルカメラが設けられていることを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
上記干渉画像(12)の平面に対応する二次元の平面に、上記三次元粒子分布(6)を投影することを特徴とする、請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも一つの上記再構成画像(14)の各画素(15)について、上記閾値(TH)を、その画素(15)からの所定の範囲内に位置する画素の強度値の代表値の所定のパーセンテージとして計算する、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
上記閾値(TH)を、基準の強度分布(18)の第二の最大強度値(M)と第三の最大強度値(M)との間となるように決定することを特徴とする、請求項1~8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
放射、照射、記録、生成、および特定を繰り返すことにより第一および第二の粒子分布(6)を特定し、上記第一の粒子分布(6)における少なくとも一つの粒子(P)を、第二の粒子分布(6)における同じ粒子(P)と対応付けて、上記粒子(P)の移動を追跡することを特徴とする、請求項1~9の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、媒質中の三次元粒子分布、好ましくはバクテリア分布を特定する方法に関する。
【0002】
本発明の背景は、例えば尿路感染におけるバクテリア感染の開始を研究するために、媒質中のバクテリアのようなコロイドを観察する分野にある。また、海水中のプラスチック粒子、液体食品または医薬品中の不純物、または体液中の細胞を観察し得る。バクテリア分布については、デジタルホログラフィー顕微鏡法によって媒質中のバクテリアの移動を観察することが知られている。このような方法では、上記バクテリアを含む試料にコヒーレント光を照射し、その干渉画像を得る。この干渉画像に再構成アルゴリズム(例えば、バックプロパゲーションアルゴリズムまたは逆投影アルゴリズム)を適用することによって、バクテリア分布の三次元モデルを計算することができる。しかしながら、このようにして得られた三次元モデルは、詳細な解析には定性的に不適切であることが多いことが実験により示されている。
【0003】
この問題を克服するために、従来技術では、干渉画像に対して空間フィルタリングまたは時間平均化ステップを行うことによりバックグラウンド画像を生成することが知られている。この画像は、関心対象でない物体あって、バックグラウンド画像の除算または減算によって干渉画像から除去することができる物体に関連する縞に関する情報を含む。その後、このようにして「きれい」にされた干渉画像に対して再構成アルゴリズムを用い、三次元粒子分布を特定する。しかしながら、これらの処理ステップは、三次元モデルの全体的な品質が場合によってはまだ不十分であるというデメリットを有する。ここで生じる問題は、光を沢山散乱する物体が縞を有し、この縞は、散乱の明るさがより低い物体と間違えられやすいことである。
【0004】
したがって、本発明の目的の一つは、三次元粒子分布を特定する方法であって、定性的に高い出力を保ち、かつ、計算面においても容易である方法を提供することである。
【0005】
この目的は、以下の方法によって達成される。媒質における三次元粒子分布、好ましくはバクテリア分布を特定する方法であって、上記粒子を含む上記媒質の試料を提供する工程と、光源を用いて、コヒーレント光ビームを放射し、試料に上記光ビームを照射し、光ビームの第一の部分が粒子に散乱され散乱光ビームとなる工程と、散乱光ビームと、上記光ビームの散乱されていない第二の部分との干渉画像を、カメラによって記録する工程と、上記試料内に位置する複数の仮想平面のそれぞれについて、その仮想平面における上記試料の再構成画像であって、強度値と位相値とを有する複数の画素を有する再構成画像を、プロセッサによって上記干渉画像から計算する工程と、上記再構成画像のそれぞれについて、画素のレイアウトが上記再構成画像と同じである存在画像であって、上記存在画像の各画素について、上記再構成画像における対応する画素の強度値が所定の閾値を超え、かつ、上記再構成画像における対応する画素の位相値が符号を有する場合に、該画素に値が与えられ、上記二つの条件のうちの少なくとも一つが満たされない場合に、該画素に値が与えられない存在画像を、上記プロセッサによって生成する工程と、存在画像において値が与えられている画素から、上記三次元粒子分布を特定する工程と、を備える方法。
【0006】
この方法は、特別なフィルタアルゴリズムを各再構成画像に適用すること(すなわち、再構成アルゴリズムの対象である干渉画像ではなく、再構成された試料の「断面」に適用すること)により、特定された三次元粒子分布の質を向上するという利点を有する。
【0007】
各粒子が、再構成画像において複数の最大値を有する強度パターンを生じさせることが分かった。上記した二つの新規のフィルタリング工程により、「異常値」の最大値、すなわち、実際の粒子に対応しない強度最大値を生じさせる強度値を削除することを可能にする。このため、三次元粒子分布において粒子の縁におけるぼやけが減り、粒子がその縁においてより鮮明に映り、これにより、例えば、統計分析の改善が可能になる。したがって、この方法は、各画素について二つの値のみの簡単な計算を必要とする、計算効率の高いアルゴリズムによって、粒子の周りの第二や第三の強度最大値などを除去することを可能にする。
【0008】
好ましくは、この方法は、上記試料の外に位置する焦点を有する光学デバイスによって、上記散乱光ビームを、散乱後、かつ、記録前に、上記カメラ上に向ける工程を備える。焦点が試料の外にある光学デバイスが設けられているため、大量の試料を干渉画像に表すことができる。また、光学デバイスにより、干渉画像(ホログラフィック像)をある程度拡大することができ、これにより、より詳細な計算解析が可能になる。焦点が試料内に位置する場合、再構成画像の位相値は、焦点の平面の外にのみ存在する。
【0009】
本実施形態では、上記所定の符号は、以下に依存することが更に好ましい:上記焦点が、上記光ビームの方向において上記試料を基準としたときに位置する側;および上記粒子の屈折率に対する上記媒質の屈折率。例示的なシナリオにおいて、焦点がカメラと試料との間に位置し、媒質の屈折率が粒子の屈折率よりも低い場合、所定の符号は正となる。これらの基準のうちの一つが変わると、符号が1回反転する。これは、本方法を実行する前に所定の符号を特定することができる(すなわち、符号を特定するのに試行錯誤を必要としない)という利点を有する。
【0010】
さらに好ましくは、上記仮想平面のそれぞれは、所定の間隔で離間しており、上記試料の全体をカバーする。これにより、再構成画像、ひいては存在画像が互いに等しい距離に配置され、存在画像の各画素に、所定の間隔に等しい所定の「高さ」(粒子分布における第三次元に対応する)を割り当てることができる。
【0011】
試料、光源、およびカメラは、従来技術で知られている任意の干渉計として具体化することができる。例えば、放射された光ビームの一部を、ビームスプリッタによって分岐させ、カメラで記録する前に散乱光ビームと合波させることができる。しかしながら、ビーム分割により振動が起こりやすいことが、実験によって示されている。好ましくは、この方法では、上記光源と、上記試料と、上記カメラとを含むインライン干渉計が設けられている。
【0012】
このカメラは、干渉画像を記録することのできる、従来技術で公知の任意の種類で具現化することができる。カメラがデジタルカメラ、好ましくは相補型金属酸化膜半導体(CMOS;Complementary Metal-Oxide Semiconductor)または電荷結合素子(CCD;Charge Coupled Device)であることが特に好ましい。これにより、記録された干渉画像に対して、容易にデジタル処理できるので、特に効率的な計算解析が可能になる。さらに、CMOSおよびCCDは、高解像度で容易に入手可能である。
【0013】
好ましくは、この方法は、逆ラドン変換を用いて再構成画像を計算する工程を備える。逆ラドン変換は、同様の目的のために最適化されているため好ましい。一般に、反復再構成アルゴリズムまたはフーリエドメイン再構成アルゴリズムなどの他の再構成アルゴリズムも、再構成画像の特定に用いることができる。
【0014】
媒質中の粒子の移動を特定するために、この方法は、射、照射、記録、生成、および特定の工程を繰り返すことにより第一および第二の粒子分布を特定し、上記第一の粒子分布における少なくとも一つの粒子を、第二の粒子分布における同じ粒子と対応付けて、上記粒子の移動を追跡すること含んでもよい。したがって、二つの三次元粒子分布が特定され、各粒子が二つの分布の間を追跡される。一方の粒子を他方の分布内の同じ粒子に対応付けるために、最大粒子速度などの追加の制約を設定することができる。
【0015】
好ましくは、この方法は、上記干渉画像の平面に対応する二次元の平面に、上記三次元粒子分布を投影する工程を備える。これにより、干渉画像のビューに対応する二次元画像を得ることができる。換言すれば、基準画像を計算し、二つのフィルタリング条件によって存在画像を生成し、二次元の平面にまた投影することにより、干渉画像において干渉の影響が解消され、各粒子が容易に特定できる形で利用可能となる。
【0016】
好適には、少なくとも一つの上記再構成画像の各画素について、上記閾値を、その画素からの所定の範囲内に位置する画素の強度値の代表値の所定のパーセンテージとして計算する。これにより、閾値を、局所的な強度レベルに応じたレベルに調整することができる。再構成画像の各画素について閾値を計算することによって、「閾値マップ」が生成される。閾値マップは粒子の散乱強度を表すため、強散乱粒子と弱散乱粒子の両方を含む試料を分析できる。したがって、一つの再構成画像のある部分が低い強度を有し、別の部分が高い強度を有する場合であっても、本方法の出力の質は影響を受けない。
【0017】
別の好ましい実施形態では、この方法は、上記閾値を、基準の強度分布の第二の最大強度値と第三の最大強度値との間となるように決定する工程を備える。したがって、所定の閾値は、この基準により第三や第四などの強度最大値の除去が可能となるように、第二および第三の強度最大値の間となるように選択される。したがって、所定の符号は第二の強度最大値の位相値に対応し、このため、その除去が可能となる。
【0018】
以下、添付の図面を参照して、本発明を、その好ましい例示的な実施形態に基づいて、より詳細に説明する。
【0019】
図1〕本発明の方法に用いられるインライン干渉計を模式的に示す側面図である。
【0020】
図2〕干渉による、粒子の強度分布および位相進行を示すグラフである。
【0021】
図3図1の方法の出力としての、干渉画像、複数の再構成画像、および三次元粒子分布を模式的に示す図である。
【0022】
図1は、光源2と、試料3と、光学デバイス4と、カメラ5とを備えるインライン干渉計1を示す。試料3は粒子P(微細粒子)を含む媒質Mからなる。一実施形態では、粒子Pはバクテリアであってもよく、媒質Mは、水、血液、溶液などであってもよい。別の実施形態において、粒子Pは、例えば、電気泳動を調べるために、水中または油中の荷電粒子であってもよい。
【0023】
インライン干渉計1は、三次元粒子分布6を特定するために使用され(図3)、三次元粒子分布6は、インタフェース8を介してカメラ5に接続されたプロセッサ7によって特定することができる。
【0024】
図2および図3に示す例に基づいて、三次元粒子分布6を特定する方法を以下に詳述する。
【0025】
最初に、光源2は、コヒーレント光ビーム9を放射して、試料3に光ビーム9を照射する。短すぎるコヒーレンス長が選択された場合、三次元粒子分布6において発生するスペックルの数が過剰となり得るため、本方法では、コヒーレンス長を微調整してもよい。光源2は、コヒーレント光ビーム9を放射することができる任意の種類(例えば、レーザダイオード)とすることができる。
【0026】
光ビーム9を試料3に照射すると、光ビーム9の第一の部分が粒子Pによって散乱され、散乱光ビーム10が生成される。選択された媒質Mおよび粒子Pの種類によって、散乱光のパーセンテージは変わり得る。バクテリアおよび水の例では、光ビーム9の約5パーセントが散乱される。図示の実施形態では、光ビーム9の第二の部分が粒子Pによって散乱されておらず、非散乱光ビーム11として試料3を通る。本明細書では、「散乱」は、回折、屈折、または反射を意味することができ、使用される干渉計1の選択に依存し、その選択は、粒子の特性(例えば、粒子の透明性、反射性、または屈折性)に依存し得る。
【0027】
光ビーム9が散乱光ビーム10および非散乱光ビーム11として試料3を通った後、光学デバイス4(いくつかの実施形態では任意である)によって散乱光ビーム10を拡大してもよい。光学デバイス4は、インライン干渉計1の従来技術で知られているように、散乱光ビーム10を非散乱光ビーム11と干渉させると考えられる。この目的のために、光学デバイス4は、試料3の外に、試料3から所定距離Dだけ離れた位置にある焦点Fを有してもよい。これは、干渉画像12をさらに拡大するのにも役立つ。焦点Fは、光ビーム9の方向から見て、試料3の任意の側に位置してもよい。
【0028】
干渉計1はまた、インライン干渉計以外の干渉計、例えばビームスプリッタ用いた干渉計1として具現化してもよい。例えば、一つのビームスプリッタを、散乱されていない光ビーム9の一部を分岐させるように光源2と試料3との間に配置してもよく、分岐させた一部を、二つのビーム10、11が干渉するように後の段階で散乱光ビーム10と統合させてもよい。
【0029】
光ビーム9の光路の終わりに、カメラ5は、散乱光ビーム10と非散乱光ビーム11の干渉画像12を記録する。この目的のために、カメラ5は、任意のアナログカメラまたはデジタルカメラ(例えば、相補型金属酸化膜半導体(CMOS;Complementary Metal-Oxide Semiconductor)または電荷結合素子(CCD;Charge Coupled Device))であってもよい。代替的に、アクティブ画素センサ(APS;active pixel sensor)を有するカメラなどの他のカメラ5を用いてもよい。
【0030】
カメラ5が干渉画像12を記録した後、カメラ5は干渉画像12を、インタフェース8を介してプロセッサ7に送る。処理が行われ、干渉画像12から三次元粒子分布6を得る。カメラ5は、干渉画像12を純粋な二次元画像として記録する。なお、この干渉画像12は、位相情報に加え、強度をエンコードする。この情報により、プロセッサ7は、第一のステップS1において三次元試料3を「再構成」することができる。
【0031】
図3に示すように、ステップS1において、複数の仮想平面13、13、…、一般に13、を試料3内に定めることができる。好ましくは、仮想平面13のそれぞれは、所定の間隔IVで離間しており(図1)、試料3全体をカバーする。これにより処理がしやすくなる。このように、各仮想平面13は、カメラ5との距離が異なる。
【0032】
代替的に、仮想平面13は異なる間隔IVで離間されていてもよい。この場合、三次元粒子分布6は、異なる間隔IVについて異なる要因を組み込むことによって生成されてもよい。
【0033】
ここで、再構成アルゴリズムを干渉画像12に適用して、各仮想平面13について再構成画像14、14、…、一般に14を計算することができる。従来技術では、複数種類の再構成アルゴリズムが存在し、そのうちのいくつかは、バックプロパゲーションまたは逆投影アルゴリズム(例えば、逆ラドン変換)として知られている。
【0034】
干渉画像12では、通常、強度のみが記録されるが、それから、各再構成画像14について強度と位相情報の両方を特定することが可能である。したがって、各再構成画像14は、強度値Iおよび位相値Φを有する複数の画素15を有するように計算される。
【0035】
再構成画像14を計算した後、プロセッサ7は、第二のステップS2において、各再構成画像14について、存在画像16、16、…、一般に16を生成する。各存在画像16は、対応する再構成画像14と同じ画素17のレイアウトを有する。すなわち、存在画像16は、同じ数で同じように配置された画素17、すなわち、同じアレイで配置された画素17を有する。存在画像16の画素17は、アレイ内において同じ位置にある、再構成画像14の画素15に対応する。再構成画像14の画素15は強度情報Iおよび位相情報Φを記録しているが、存在画像16の画素17は二つの基準に応じて、値が与えられているか、与えられていない。具体的には、プロセッサ7は、存在画像16の各画素17について、上記再構成画像14における対応する画素15の強度値Iが所定の閾値THを超え、かつ、上記再構成画像14における対応する画素15の位相値Φが所定の符号SGを有する場合に、該画素17に値を与える。プロセッサ7は、上記二つの条件のうちの少なくとも一つが満たされない場合、値を与えない。
【0036】
図2は、上記二つの条件の目的を示す。破線18は干渉パターンの強度Iの理想化されたグラフを示す。縦軸は再構成画像14における散乱光ビーム11の強度Iを示し、横軸は、散乱点までの距離xを示す。実線の曲線19は干渉パターンの位相Φの理想化されたグラフを示す。縦軸は再構成画像14における散乱光ビーム11の位相Φを示し、横軸は、散乱点までの距離xを示す。図から分かるように、強度のグラフ18は複数の最大値M、M、M、…、を有し、位相グラフ19は同じ距離xにおいて極値を有するが、強度Iが第二の最大値Mとなる箇所において、位相Φは第一の最小値となる。
【0037】
上記二つの基準の目的は、第一の最大値Mに対応するもの以外の強度値Iを除外することである。したがって、所定の閾値THは、好ましくは強度値Iの第二の最大値Mと第三の最大値Mとの間となるように選択される。より高い閾値TH(すなわち、第一の最大値Mと第二の最大値Mとの間の閾値TH)を選択しない理由は、より小さいサイズの粒子の強度値を除外するからである。第二の最大値Mも除外するために、位相値Φの所定の符号SGを有する画素を除外するといった第二の基準が導入される。図2の実施形態では、上記所定の符号SGは、第二の強度最大値Mを除外するために負の符号である。
【0038】
さらに、上記閾値THは、局所的に変化する強度最大値を考慮するために、任意で「オンザフライ」で予め決定してもよい。このために、再構成画像14の各画素15について、閾値THを、その画素15からの所定の範囲内に位置する画素(例えば、その画素15を囲む画素のみ、または、その画素15を囲む画素を更に囲む画素も含む)の強度値の代表値の所定のパーセンテージとして計算してもよい。この文脈において、代表値とは、平均値、最頻値、またはその他の任意の統計関数を含む。
【0039】
与えられる値は、一定値(例えば、「1」)か、再構成画像14の対応する画素の強度値Iかのいずれかとすることができる。値を与えないということは、「0」の値、空文字列、または別のプレースホルダを与えることを意味する。
【0040】
図2において、位相グラフ19は、距離x=0において正の値Φを有することが示されている。したがって、所定の符号SGは、第二の強度最大値Mを除外するために負である。しかしながら、位相グラフ19は、距離x=0において負の位相値Φを有し得る。これは、二つの要因に依存する:(i)光学デバイス4の焦点Fが、光ビーム9の方向において、試料3を基準にしたときに位置する側、および(ii)粒子Pの屈折率に対する媒質Mの屈折率。焦点Fがカメラ5と試料3との間に位置し、媒質Mの屈折率が粒子Pの屈折率よりも低い場合、位相値Φは、対応する粒子Pの中心で正となり、所定の符号SGは負となる。これら二つの要因のうちのいずれか一つが変われば、所定の符号SGも変える必要がある。
【0041】
プロセッサ7が全ての存在画像16の全ての画素17に対して値を与えるか与えないかの処理を終えると、存在画像16の、値が与えられた画素17から、三次元粒子分布6を特定することができる。このために、与えられた値を、座標(アレイ内のそれぞれの画素17の位置、および、対応する再構成画像14の仮想平面13の相対的位置)と共に記憶することができ、また、試料3の三次元ビューとしてプロットすることができる。
【0042】
存在画像16の画素17に値を与えている間にまたは与えた後に、追加の基準を使用することもできる。例えば、ある画素17に本来、値が与えられるが、その周辺に、値が与えられた(または与えられるであろう)画素17が存在しない場合、強度閾値THの上述の基準および位相値Φの所定の符号SGに関する上記基準により値が与えられるとしても、この画素17に値を与えないようにしてもよい。この基準は例えば、粒子が単一の画素17よりも大きい面積を占めると予想される場合に使用される。
【0043】
三次元粒子分布6が特定されると、この方法を、所定の時間後に繰り返して第二の粒子分布6を生成してもよい。前の(第一の)粒子分布6および第二の粒子分布6から、一つ以上の粒子Pの移動を追跡することができる。これは、第一の粒子分布6における少なくとも一つの粒子Pを、第二の粒子分布6における同じ粒子Pと対応付けることによってできる。粒子Pの対応付けは、ある粒子Pが第二の粒子分布6において類似の位置を有するかどうかを判定することによって、手動またはコンピュータで行うことができる。最大偏差距離は例えば、粒子の最大速度によって制限することができる。
【0044】
別の用途として、三次元粒子分布6を、干渉画像12の平面に対応する二次元の平面に投影してもよい。これにより、干渉画像12と同様に粒子分布6を正面視で示すが、干渉の影響を受けない「代替的」な画像を生成することができる。さらに、干渉画像12の平面以外の平面にも同様の投影を行い、異なる(仮想の)ビューを生成することができる。
【0045】
したがって、本発明は、本明細書で詳細に説明される具体的な実施形態に限定されず、そのすべての変形形態、組み合わせ、および修正形態を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明の方法に用いられるインライン干渉計を模式的に示す側面図である。
図2】干渉による、粒子の強度分布および位相進行を示すグラフである。
図3図1の方法の出力としての、干渉画像、複数の再構成画像、および三次元粒子分布を模式的に示す図である。
図1
図2
図3