(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】ゲル状組成物並びにそれを含む化粧料及び外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20230829BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20230829BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230829BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230829BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20230829BHJP
C11D 3/08 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/25
A61K8/34
A61Q19/00
C09K3/00 103N
C11D3/08
(21)【出願番号】P 2021125967
(22)【出願日】2021-07-30
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】519041909
【氏名又は名称】株式会社DESIGN京都
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】吉満 英二
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-125402(JP,A)
【文献】特開2015-086192(JP,A)
【文献】特開2020-29417(JP,A)
【文献】特開2002-155265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C11D 1/00-19/00
A61K 9/06
A61K 47/10
A61K 47/02
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チキソトロピー性を発現するゲル状組成物であって、
水と、
低級アルコール及び/又は多価アルコールと、
ゲル状固形物からなる合成珪酸塩と
を有
し、
前記合成珪酸塩の含有量が10質量%~25質量%であり、
下記測定方法で得られた、円錐平板型コーンプレート測定治具の回転上昇時の回転速度が50rpmのときの2段目の粘度に対する1段目の粘度の比および回転下降時の回転速度が50rpmのときの2段目の粘度に対する1段目の粘度の比がいずれも0.75~1.55の範囲であることを特徴とするゲル状組成物。
(測定方法)
(1段目の測定)
ゲル状組成物を常温で24時間静置し、次いで温度25℃の恒温槽に18時間静置した後、円錐平板型コーンプレート測定治具を使用して、測定治具の回転速度を0.1rpmから100rpmまで上昇させた後100rpmから0.1rpmまで降下させて粘度を測定する。
(2段目の測定)
1段目の測定後、ゲル状組成物を常温で24時間静置し、次いで温度25℃の恒温槽に18時間静置した後、1段目と同様にしてゲル状組成物の粘度を測定する。
【請求項2】
前記測定方法で得られた、2段目の粘度測定における円錐平板型コーンプレート測定治具の回転上昇時の50rpmの粘度に対する5rpmの粘度の比および回転下降時の50rpmの粘度に対する5rpmの粘度の比のいずれもが1.0~9.0の範囲である請求項1に記載のゲル状組成物。
【請求項3】
チキソトロピー性を発現するゲル状組成物であって、
水と、
低級アルコール及び/又は多価アルコールと、
ゲル状固形物からなる合成珪酸塩と
を有
し、
前記合成珪酸塩の含有量が10質量%~25質量%であり、
下記測定方法で得られた、2段目の粘度測定における円錐平板型コーンプレート測定治具の回転上昇時の50rpmの粘度に対する5rpmの粘度の比および回転下降時の50rpmの粘度に対する5rpmの粘度の比のいずれもが1.0~9.0の範囲であることを特徴とするゲル状組成物。
(測定方法)
(1段目の測定)
ゲル状組成物を常温で24時間静置し、次いで温度25℃の恒温槽に18時間静置した後、円錐平板型コーンプレート測定治具を使用して、測定治具の回転速度を0.1rpmから100rpmまで上昇させた後100rpmから0.1rpmまで降下させて粘度を測定する。
(2段目の測定)
1段目の測定後、ゲル状組成物を常温で24時間静置し、次いで温度25℃の恒温槽に18時間静置した後、1段目と同様にしてゲル状組成物の粘度を測定する。
【請求項4】
前記低級アルコールがエチルアルコールである請求項1
から請求項3のいずれかに記載のゲル状組成物。
【請求項5】
前記多価アルコールが、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、濃グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンからなる群から選択される少なくとも1つである請求項1
から請求項4のいずれかに記載のゲル状組成物。
【請求項6】
前記合成珪酸塩が、合成珪酸マグネシウム、合成珪酸ナトリウム・マグネシウム、合成珪酸リチウム・マグネシウム・ナトリウム、合成珪酸アルミニウム・マグネシウムの群から選択される少なくとも1つである請求項1から請求項
5のいずれかに記載のゲル状組成物。
【請求項7】
水とアルコールの混合溶媒が、
(I)水と低級アルコールの混合溶媒の場合、低級アルコール/(水+低級アルコール)は0.15~0.55の範囲であり、
(II)水と多価アルコールの混合溶媒の場合、多価アルコール/(水+多価アルコール)は0.5~1.0の範囲であり、
(III)水と低級アルコールと多価アルコールの混合溶媒の場合、(低級アルコール+多価アルコール)/(水+低級アルコール+多価アルコール)は0.15~0.80の範囲である請求項1から請求項
6のいずれかに記載のゲル状組成物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれかに記載のゲル状組成物を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項9】
請求項1~
7のいずれかに記載のゲル状組成物を含有することを特徴とする外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゲル状組成物並びにそれを含む化粧料及び外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チキソトロピー性を向上させる増粘剤やゲル化剤がこれまでから種々提案されている(例えば特許文献1~4)。また、自己組織化によって高分子のような会合体を形成して、水や有機溶媒を物理的にゲル化する低分子化合物についても研究発表がされている(例えば、非特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-227630号公報
【文献】特開2012-240966号公報
【文献】特開2016-113490号公報
【文献】特開2020-11936号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】英謙二,白井汪芳,“ゲル化剤に見る自己組織化現象”,SEN’I GAKKAISHI(繊維と工業),Vol.62,No.4(2006)
【文献】英謙二,星沢祐子,“新しい増粘剤およびゲル化剤の開発”,ネットワークポリマー,Vol.31,No.6(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チキソトロピー性を有する組成物では、剪断速度を変化させたときの剪断応力の変化は、剪断速度の上昇過程の変化曲線全体が剪断速度の降下過程の変化曲線全体を覆うようなヒステリシスループを描くことが理想的とされる。特に速い剪断速度のときには、大きい剪断応力であることが理想的で、時間依存性が確保された高いチキソトロピー性を有しているとされる。
【0006】
しかしながら、これまでの水と低級アルコールの混合溶媒系、水と多価アルコールの混合溶媒系、水と低級アルコール溶媒と多価アルコールの混合溶媒系のゲル状組成物では、チキソトロピー性の発現向上が十分ではなく、更に時間依存性のあるチキソトロピー性の高いものが望まれていた。
【0007】
そこで本発明の目的は、水と低級アルコール、水と多価アルコール、または水と低級アルコールと多価アルコールとが含有された組成物で、時間依存性挙動のある高いチキソトロピー性を有するゲル状組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために本発明に係るゲル状組成物は、チキソトロピー性を発現するゲル状組成物であって、水と、低級アルコール及び/又は多価アルコールと、合成珪酸塩とを有することを特徴とする。
【0009】
前記構成のゲル状組成物において、前記低級アルコールはエチルアルコールであるのが好ましい。
【0010】
また前記構成のゲル状組成物において、前記多価アルコールは、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、濃グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンからなる群から選択される少なくとも1つであるのが好ましい。
【0011】
また前記構成のゲル状組成物において、前記合成珪酸塩は、合成珪酸マグネシウム、合成珪酸ナトリウム・マグネシウム、合成珪酸リチウム・マグネシウム・ナトリウム、合成珪酸アルミニウム・マグネシウムの群から選択される少なくとも1つであるのが好ましい。そして、前記合成珪酸塩がゲル状固形物である場合、固形分含有率は1.2質量%以上4.2質量%以下の範囲であるのが好ましい。
【0012】
また前記構成のゲル状組成物において、水とアルコールの混合溶媒が、(I)水と低級アルコールの混合溶媒の場合、低級アルコール/(水+低級アルコール)は0.15~0.55の範囲であり、(II)水と多価アルコールの混合溶媒の場合、多価アルコール/(水+多価アルコール)は0.5~1.0の範囲であり、(III)水と低級アルコールと多価アルコールの混合溶媒の場合、(低級アルコール+多価アルコール)/(水+低級アルコール+多価アルコール)は0.15~0.80の範囲であるのが好ましい。
【0013】
また前記構成のゲル状組成物において、下記測定方法で得られた、円錐平板型コーンプレート測定治具の回転上昇時の回転速度が50rpmのときの2段目の粘度に対する1段目の粘度の比および回転下降時の回転速度が50rpmのときの2段目の粘度に対する1段目の粘度の比がいずれも0.75~1.55の範囲であるのが好ましい。
(測定方法)
(1段目の測定)
ゲル状組成物を常温で24時間静置し、次いで温度25℃の恒温槽に18時間静置した後、円錐平板型コーンプレート測定治具を使用して、測定治具の回転速度を0.1rpmから100rpmまで上昇させた後100rpmから0.1rpmまで降下させて粘度を測定する。
(2段目の測定)
1段目の測定後、ゲル状組成物を常温で24時間静置し、次いで温度25℃の恒温槽に18時間静置した後、1段目と同様にしてゲル状組成物の粘度を測定する。
【0014】
また前記構成のゲル状組成物において、下記測定方法で得られた、2段目の粘度測定における円錐平板型コーンプレート測定治具の回転上昇時の50rpmの粘度に対する5rpmの粘度の比および回転下降時の50rpmの粘度に対する5rpmの粘度の比のいずれもが1.0~9.0の範囲であるのが好ましい。
(測定方法)
(1段目の測定)
ゲル状組成物を常温で24時間静置し、次いで温度25℃の恒温槽に18時間静置した後、円錐平板型コーンプレート測定治具を使用して、測定治具の回転速度を0.1rpmから100rpmまで上昇させた後100rpmから0.1rpmまで降下させて粘度を測定する。
(2段目の測定)
1段目の測定後、ゲル状組成物を常温で24時間静置し、次いで温度25℃の恒温槽に18時間静置した後、1段目と同様にしてゲル状組成物の粘度を測定する。
【0015】
また本発明によれば、前記のいずれかに記載のゲル状組成物を含有することを特徴とする化粧料が提供される。
【0016】
また本発明によれば、前記のいずれかに記載のゲル状組成物を含有することを特徴とする外用剤が提供される。
【0017】
なお、本明細書において「チキソトロピー性」とは、剪断応力を受け続けると粘度が次第に低下し液状になる一方、静止すると粘度が次第に上昇し最終的に固体状になる性質をいうものとする。
【0018】
また「ヒステリシス」とは、一定の割合で剪断速度を上昇させて、最高値に達した後に剪断速度を降下させて粘度を測定した場合に、同じ剪断速度でも上昇させるときと降下させるときとで異なった粘度曲線を描くことをいい、線画されたものをヒステリシスループという。
【0019】
「降伏値」とは、縦軸を剪断応力、横軸を剪断速度として描かれるヒステリシスループの縦軸に交わる見かけ上の力学的降伏値(Dynamic-yield-value)のことをいう。なお、力学的降伏値は真の降伏値とは異なる。通常、真の降伏値<力学的降伏値と考えられ、真の降伏値は実測不可能とされている。つまり、真の降伏値と力学的降伏値とは区別される。また、粘度計測定上の一定変位点より零点に復帰しようとする降下測定粘度のコーンローターの剪断速度が0.1s-1に達したときの剪断応力Dが0.1以上であれば本発明において降伏値を有するものとみなす。
【発明の効果】
【0020】
本発明のゲル状組成物は、時間依存性挙動があり、高いチキソトロピー性を発現する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例1のゲル状組成物の1段目に測定した粘度曲線である。
【
図2】実施例1のゲル状組成物の2段目に測定した粘度曲線である。
【
図3】比較例1のゲル状組成物の1段目に測定した粘度曲線である。
【
図4】比較例1のゲル状組成物の2段目に測定した粘度曲線である。
【
図5】比較例2のゲル状組成物の1段目に測定した粘度曲線である。
【
図6】比較例2のゲル状組成物の2段目に測定した粘度曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係るゲル状組成物は、チキソトロピー性を発現するゲル状組成物であって、水と、低級アルコール及び/又は多価アルコールと、合成珪酸塩とを有することを特徴とする。以下、これらの構成について順に説明する。なお、本明細書において「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味するものとする。また本明細書において示す「~」は、特に断りのない限り、その前後に記載の数値を下限値及び上限値として含むものとする。
【0023】
(水)
本発明で使用する水に特に限定はなく、イオン交換水、精製水、自然水、水道水、天然水、アルカリイオン水、電解質イオン水などを用いることができる。
【0024】
(低級アルコール)
本発明で使用する低級アルコールは、炭素数が1~3の水酸基数が1つのアルコールである。このような低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロパノール等が挙げられる。これらの中でも特にエタノールが好適に使用される。
【0025】
(多価アルコール)
本発明で使用する多価アルコールは、炭素数が2~6で水酸基数が2~4のアルコールである。このような多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール(トリメチレングリコール)、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール(テトラメチレングリコール)、2-ブテン-1,4-ジオール、1,5-ペンタンジオール(ペンタメチレングリコール)、1,2-ペンタンジオール、イソプレングリコール(イソペンチルジオール)、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、及びジプロピレングリコールなどの2価アルコール;グリセリン、濃グリセリン、化粧用濃グリセリン及びトリメチロールプロパンなどの3価アルコール;並びにジグリセリン、ペンタエリスリトール、及び1,2,6-ヘキサントリオールなどの4価アルコール、その他ではトレハロース、ソルビトール等が挙げられる。これらの中でも、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、濃グリセリン、化粧用濃グリセリン、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールが好適に使用される。
【0026】
(混合溶媒)
本発明において、水と低級アルコール及び/又は多価アルコールとの混合溶媒は次の3種類がある。これらの混合溶媒におけるアルコール成分の含有比率は質量基準で以下の範囲が好ましい。
(I)水と低級アルコールの混合溶媒の場合、低級アルコール/(水+低級アルコール)は0.15~0.55の範囲が好ましい。
(II)水と多価アルコールの混合溶媒の場合、多価アルコール/(水+多価アルコール)は0.5~1.0の範囲が好ましい。
(III)水と低級アルコールと多価アルコールの混合溶媒の場合、(低級アルコール+多価アルコール)/(水+低級アルコール+多価アルコール)は0.15~0.80の範囲が好ましい。
【0027】
(合成珪酸塩)
本発明で使用する合成珪酸塩は、化粧料原料や外用剤、各種工業用途として通常使用可能な合成珪酸塩であって層状構造を形成する。本発明で使用する合成珪酸塩に特に限定はないが、例えば、合成珪酸マグネシウム、合成珪酸ナトリウム・マグネシウム、合成珪酸リチウム・マグネシウム・ナトリウム、合成珪酸アルミニウム・マグネシウム等が挙げられる。好ましくは、合成珪酸ナトリウム・マグネシウム、合成珪酸リチウム・マグネシウム・ナトリウムである。これらから選択される1種単独、あるいは2種以上を組み合わせて用いることもできる。市販品としては、例えば、「LINKGEL SPIDERM」、「LINKGEL ZEN」、「LINKGEL TRILL」(以上、DESIGN京都社製)、「スメクトンSWN」(クニミネ工業社製)、「LAPONITE RD」、「LAPONITE XLG-XR」(以上、BYK社製)等が挙げられる。これらの中でも、アルコール成分と混ぜ合わさったとこの経時的安定性を考慮したチキソトロピー性が得られる点で、「LINKGEL SPIDERM」、「LINKGEL ZEN」、「LINKGEL TRILL」が好適に使用される。また、これら合成珪酸塩は粉体状であってもゲル状固形物であってもよい。
【0028】
合成珪酸塩がゲル状固形物の場合、固形分含有率は1.2%~4.2%の範囲であるのが好ましい。合成珪酸塩の固形分含有率が1.2%より少ないと、チキソトロピー性の回復性とその発現性に大きなズレが生じ、ゲル状組成物に濁りと分散不良が生じることに加えてチキソトロピー性が発現しないおそれがある。合成珪酸塩の固形分含有率が4.2%より多いと、ゲル状固形物が部分ゲル固化状から次第に系全体がゲル固化状になりチキソトロピー性が発現しないおそれがある。合成珪酸塩は水熱によって合成されるため純度は高く、天然珪酸塩とは異なって着色物質(腐植、鉄)を含有せず、可視透過率(%)、誘電率(μS/cm)も安定して高いことが特徴である。
なお、合成珪酸塩がゲル状固形物の場合の合成珪酸塩の固形分含有率は次のようにして測定されたものである。
ゲル状固形物をアルミニウム製の皿に計り取り、設定温度130℃の恒温槽で1時間保持した後、恒温槽で保持される前の質量に対する保持された後の質量の割合を算出し固形分含有率とする。
【0029】
アルコール成分(低級アルコール+多価アルコール)に対する合成珪酸塩の添加割合が多いほどゲル状組成物は経時的に強い増粘傾向を示す。また、アルコール成分に占める低級アルコールの割合が増えるほどゲル状組成物は凝集状態は強くなる傾向を示す。
【0030】
(添加物)
本発明のゲル状組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲において必要により添加物を配合してもよい。添加物としては、例えば、合成高分子、界面活性剤、殺菌剤などが挙げられる。
【0031】
(合成高分子)
合成高分子は、乳化及び可溶化を必要とする製剤などにおいて安定性をさらに向上させる働きをする。このような合成高分子としては、化粧料原料や外用剤として通常使用可能な高分子増粘剤であって、例えば、アラビアガム、トラガガントガム、ガラクタン、グアガム、カラギーナン、ペクチン、クインスシード抽出物、褐藻粉末およびカンテン等の植物系高分子、キサンタンガム、デキストランおよびプルラン、コラーゲン、カゼイン、アルブミンおよびゼラチン等の動物系高分子、デンプン、カルボキシメチルデンプンおよびメチルヒドロキシデンプン等のデンプン類、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸塩、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、結晶セルロースおよびセルロース末等のセルロース類、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドンおよびカルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子、ポリアクリル酸およびその塩およびポリアクリルイミド等のアクリル系高分子、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリレーツ/アクリル酸アルキルクロスポリマー、PEG-240/デシルテトラデセス-20/ヘキサメチレンジイソシアネート共重合体等の疎水変性ポリエーテルウレタン、グリチルリチン酸やアルギン酸およびその塩等が挙げられる。これらの成分として1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、本発明のゲル状組成物における合成高分子の配合量は、全体に対して1%以下とすることが好ましい。
【0032】
(界面活性剤)
界面活性剤は、乳化及び可溶化を必要とする製剤などにおいて安定性をさらに向上させる働きをする。界面活性剤としては、従来から乳化水中油型に使用されている非イオン性界面活性剤から選択される1種又は2種以上の組み合わせがよく、なかでもHLB(Hydrophile Lipophile Balance)が8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上の非イオン性界面活性剤が好ましく用いられる。具体例にはPEG-10水添ヒマシ油、PEG-20水添ヒマシ油、PEG-25水添ヒマシ油、PEG-30水添ヒマシ油、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-50水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油、PEG-80水添ヒマシ油、PEG-100水添ヒマシ油等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。ただし、本発明のゲル状組成物における界面活性剤の配合量は、全体に対して1%以下とすることが好ましい。
【0033】
(殺菌成分)
本発明のゲル状組成物には殺菌成分を含有させてもよい。殺菌成分に特に限定はないが、例えば、イソプロピルメチルフェノールが好適に使用される。またデオドラント化粧料には、必要により、消臭剤(亜鉛華など)、香料、冷感物質(L-メントール、DL-メントール)及びその誘導体、カンファー、ユーカリ油等、粉末、酸化防止剤、各種薬剤、防腐剤等が添加される。
【0034】
(その他の添加剤)
本発明のゲル状組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で他の成分、例えば、粉末成分、紫外線防御剤(吸収剤、散乱剤)、各種水性溶媒、油溶性薬剤、精油、保湿剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、pH調整剤、香料、防腐剤等が必要に応じて適宜配合されてもよい。
【0035】
(ヒステリシスループの測定)
ゲル状組成物の粘弾性はレオメーターまたはE型粘度計によって測定される。具体的には、レオメータ又はE型粘度計に測定サンプルをマウントし、サンプルに定常剪断または振動剪断を与えて時間依存性挙動のチキソトロピー性有無を測定する。
測定治具としては、平行平板間に測定サンプルを配置するパラレルプレート型(平行円盤)と、円錐形のコーンプレートと平板との間に測定サンプルを配置するコーンプレート型(円錐平板)などを用いることができるが、パラレルプレート型(平行円盤)は測定サンプル内における剪断速度分布が不均一になりやすく、これを避けることは難しいため、コーンプレート型(円錐平板)が好適に使用される。コーンプレート型(円錐平板)では、非線形挙動を解析するのに適している多点測定(より広いズリ速度範囲)が可能である。
以下、コーンプレート型(円錐平板)の測定治具を用いた測定サンプルのセット方法について説明する。
【0036】
コーンプレート型(円錐平板)の治具は、下部平板固定プレートと上部円錐型回転プレートとを備える。上部円錐型回転プレートの円錐の先端と下部平板固定プレートとの間隔は、両者の摩擦などの影響を除くために、約50μm前後に設定される。そして、上部円錐型回転プレートと下部平板固定プレートの間に所定量の測定サンプルが注ぎ入れられる。
【0037】
なお、測定サンプルは、作製後24時間以上常温で静置させて粘性を安定させる。そして、測定開始直前に、使用する測定粘度計を使用して測定サンプルの履歴粘性を消去する処理を行う。例えば、上部円錐型回転プレートを100rpmで60秒間回転させた後、180秒間静置する。測定前に測定サンプルの履歴粘性の消去がなされていないと、測定値は履歴粘性が加算された状態での測定値となり、測定サンプルのレオロジー特性の正確な測定値が得られないおそれがある。
【0038】
次に、上部円錐型回転プレートの剪断速度(回転数)を最小剪断速度(例えば0.1rpm)から段階的に最大剪断速度(例えば100rpm)まで上昇させた後、同じ割合で段階的に剪断速度を降下させて測定サンプルの粘度(上部円錐型回転プレートの回転トルク)の測定を行う。
【0039】
なお、粘性を有する測定サンプルが流動すると熱が発生する。この現象は「粘性発熱」または「ビスカスヒーティング」と呼ばれている。測定サンプルの熱伝導率が低いと、発生した熱は測定サンプルから短時間で外部に逃げることは出来ないので測定サンプルの温度が上昇し、測定するレオロジーデータに影響が現れることがある。このため、粘度測定は+1℃以上のビスカスヒーティングが生じない範囲内で行うのが望ましい。
【0040】
(ヒステリシスループの解析)
以上のようにして、一定の割合で剪断速度を上昇させて、最高値に達した後に降下させてゲル状組成物の粘度(上部円錐型回転プレートの回転トルク)を測定すると、同じ剪断速度でも上昇させるときと、降下させるときで異なった粘度を示す。すなわち、縦軸を剪断応力(S)とし、横軸を剪断速度(D)として描いた流動曲線はヒステリシスループを描く。なお、剪断応力(S)および剪断速度(D)は下記式(1)及び下記式(2)から算出される。
剪断応力(S)=3T/2πR3 ・・・・・・(1)
(T:上部円錐型回転プレートの回転トルク,R:上部円錐型回転プレートの半径)
剪断速度(D)=0.1047N/φ ・・・(2)
(φ:上部円錐型回転プレートの角度(rad)、N:上部円錐型回転プレートの回転数(rpm))
【0041】
なお、縦軸を剪断応力(S:単位Pa)とし、横軸を剪断速度(D:単位s-1)として線画される流動曲線のヒステリシスループの面積は「Pa×1/s」の単位を持つ。ここで「Pa=Nm-2」であるからヒステリシスループの面積単位は「(N・m/s)×(1/m3)」と書き換えることができる。この面積単位から、ヒステリシスループの面積は単位体積当たりの構造破壊に要したエネルギーであることがわかる。したがって、チキソトロピー性を発現するその大きさを考えるときは流動曲線のヒステリシスループの面積の大きさが指標となる。
【0042】
(二段階剪断評価方法)
一般的にチキソトロピー性がある流体物の粘度回復過程を評価する方法として二段階剪断評価方法とヒステリシスループ評価方法とが知られている。二段階剪断評価方法とヒステリシスループ評価方法は、主にそれ以前に影響を受けた剪断履歴における粘度の影響をゼロにした状態の粘度を対象としている。特に二段階剪断評価方法では静置状態でそれ以後どのように粘度回復するかのメカニズムやプロセス確認に重要な情報が得られる。以下、二段階剪断評価方法について説明する。
【0043】
二段階剪断評価方法は、ゲル状組成物の1段目(1回目)の粘度測定を行った後、16時間以上20時間以下の常温静置し、1段目と同様の手順で2段目(2回目)の粘度測定を行い、上部円錐型回転プレートが所定回転数のときの1段目と2段目の粘度比を一つの指標とする。
本発明では、上部円錐型回転プレートの回転速度を0.1rpmから100rpmまで上昇させた後100rpmから0.1rpmまで下降させてゲル状組成物の粘度を測定し、回転速度が50rpmのときの回転上昇時の2段目の粘度に対する1段目の粘度の比および回転下降時の2段目の粘度に対する1段目の粘度の比をそれぞれ算出する。本発明のゲル状組成物はこの粘度比がいずれも0.75~1.55の範囲であるのが好ましいとした。
【0044】
加えて、本発明のゲル状組成物では、縦軸を剪断応力(S)とし、横軸を剪断速度(D)として描いた流動曲線において降伏値を有しているのが好ましい。本発明のゲル状組成物が降伏値を有していると、アルコール成分とアルコール成分に有効的な合成珪酸塩とが強い凝集状態にあると考えられ、合成珪酸塩が系に対して強い増粘性作用を付与していると考えられるからである。
【0045】
また本発明のゲル状組成物では、2段目の粘度測定における回転上昇時の50rpmの粘度に対する5rpmの粘度の比および回転下降時の50rpmの粘度に対する5rpmの粘度の比のいずれもが1.0~9.0の範囲であるのが好ましい。
【0046】
このように本発明のゲル状組成物は、降伏値を有するような強い凝集力を発現するものであるが、静置時間(16時間以上20時間以内)を経ても一方的な増粘傾向だけを示すものではなく、実用的に系に対して強すぎない適度な凝集力を示す。
【0047】
水溶性高分子物質の水溶液と合成珪酸塩とを混合した水溶液は、これら両成分が互いに相乗的に作用してチキソトロピー性を発現させることがあるが、本発明では水溶液高分子物質の存在が無くともチキソトロピー性を発現させる。
【0048】
(用途)
本発明に係るゲル状組成物の用途に特に限定はないが、化粧料や外用剤などの基材として好適に使用される。例えば、クリーム、ローション、クレンジングジェル、クレンジングクリーム等の基礎化粧料;ファンデーション、アイシャドウ、リップカラー、リップグロス等のメーキャップ化粧料;ヘアクリーム、スタイリングジェル、ヘアワックス等の頭髪用化粧料;シャンプー、リンス、ハンドソープ、ボディーソープ、洗顔フォーム等の洗浄料;無機顔料を配合したUVケア化粧品;保湿化粧料等の基材として好適に使用されるがこの限りではない。
【0049】
本発明のゲル状組成物を含む化粧料または外用剤には、本発明の効果を損なわない範囲において、通常化粧料または外用剤に用いられる各種の成分、例えば、非イオン性界面活性剤、極性脂質、活性成分、保湿成分、抗菌成分、粘度調整剤、合成色素、有色顔料、パール剤、香料、無機顔料等を配合できる。
【0050】
(粘度測定機器)
本発明において粘度を測定する機器としては、従来公知の測定機器を用いることができ、例えば、TV-30型、TV-33型、TVE-25型、TVE-35型のE型粘度計(いづれも東機産業社製)、Rheosol G-3000(UBM社製)、MCR300、MCR301(いずれもAnton Paar社製)、ARES-G2、DHR―2(いずれもティー・エイ・インスツルメント社製)などを使用することができる。
【0051】
粘性という性質によって流動が起こると熱が発生する。この現象は「粘性発熱」または「ビスカスヒーティング」と呼ばれている。測定サンプルの熱伝導率が低いと、発生した熱は測定サンプルから短時間で外部に逃げることは出来なので測定サンプルの温度が上昇し、測定するレオロジーデータに影響が現れることがある。このため、粘度測定は+1℃以上のビスカスヒーティングが生じない範囲内で行った。
【実施例】
【0052】
以下、実験例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例等に制限されるものではない。実施例及び比較例における「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味するものとする。
【0053】
(実施例1)
精製水(60%)、合成珪酸塩(DESIGN京都社製「LINKGEL ZEN」,ゲル状固形物(固形分含有量15%))(15%)、1,3-ブチレングリコール(ダイセル社製)(14%)をホモディスパー(撹拌機)に順に投入し回転数2500rpmで10分間撹拌し、その後95%濃度エタノール(富士フィルム和光純薬工業社製)(10%)、ポリエチレングリコール(青木油脂社製「PEG-200))(0.1%)、香料(0.1%)、1%濃度ヒアルロン酸水溶液(スペラネクサス社製「ヒアルロン酸IW」)(0.8%)をホモディスパーに順に投入し回転数2500rpmで30分間撹拌を行い実施例1のゲル状組成物を得た。
得られたゲル状組成物の1段目および2段目の粘度を後述の測定方法で測定した。以下の実施例および比較例でも同様である。
図1及び
図2に、得られたゲル状組成物の1段目および2段目の粘度曲線を示す。
【0054】
(実施例2)
水道水(60%)、合成珪酸塩(DESIGN京都社製「LINKGEL SPIDERM」,ゲル状固形物(固形分含有量15%))(20%)をホモディスパーに順に投入し回転数2500rpmで10分間撹拌し、その後グリセリン(阪本薬品工業社製)(20%)をホモディスパーに投入し回転数2500rpmで60分間撹拌を行い実施例2のゲル状組成物を得た。
【0055】
(実施例3)
精製水(55%)、合成珪酸塩(DESIGN京都社製「LINKGEL ZEN」,ゲル状固形物(固形分含有量15%))(25%)をホモディスパーに順に投入し回転数2500rpmで10分間撹拌し、その後濃グリセリン(阪本薬品工業社製)(20%)をホモディスパーに投入し回転数2500rpmで60分間撹拌を行い実施例3のゲル状組成物を得た。
【0056】
(実施例4)
濃グリセリン(90%)、合成珪酸塩(DESIGN京都社製「LINKGEL ZEN」,ゲル状固形物(固形分含有量15%))(9.9%)をホモディスパーに順に投入し回転数2500rpmで90分間撹拌し、その後1%濃度ヒアルロン酸水溶液(0.1%)をホモディスパーに投入し回転数2500rpmで60分間撹拌を行い実施例4のゲル状組成物を得た。
【0057】
(実施例5)
濃グリセリン(80%)、合成珪酸塩(DESIGN京都社製「LINKGEL ZEN」,ゲル状固形物(固形分含有量15%))(17%)をホモディスパーに順に投入し回転数2500rpmで90分間撹拌し、その後1,3-ブチレングリコール(2.7%)、ポリエチレングリコール(青木油脂社製「PEG-400」)(0.05%)、EDTA-2Na(0.05%)をホモディスパーに投入し回転数2500pmで60分間撹拌し、更にヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液(0.2%)をホモディスパーに投入し5分間撹拌を行い実施例5のゲル状組成物を得た。
【0058】
(実施例6)
精製水(28%)、合成珪酸塩(DESIGN京都社製「LINKGEL TRILL」,ゲル状固形物(固形分含有量15%))(11%)をホモディスパーに順に投入し回転数2500rpmで10分間撹拌し、その後エタノール(60%)、PEG-400(0.1%)、香料(0.1%)、ヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液(0.8%)をホモディスパーに順に投入し回転数2500rpmで90分間撹拌を行い実施例6のゲル状組成物を得た。
【0059】
(実施例7)
pH12.5のアルカリ水溶液(80%)、合成珪酸塩(DESIGN京都社製「LINKGEL SPIDERM」,ゲル状固形物(固形分含有量15%))(10%)をホモディスパーに順に投入し回転数2500rpmで10分間撹拌し、その後エタノール(10%)をホモディスパーに投入し回転数2500rpmで60分間撹拌を行い実施例7のゲル状組成物を得た。
【0060】
(比較例1)
精製水(60%)、合成珪酸塩(BYK社製「LAPONITE XLG-XR」,粉状)(3%)をホモディスパーに順に投入し回転数2500rpmで10分間撹拌し、その後調整精製水(17%)、濃グリセリン(20%)をホモディスパーに順に投入し回転数3000rpmで60分間撹拌を行い比較例1のゲル状組成物を得た。
図3及び
図4に、得られたゲル状組成物の1段目および2段目の粘度曲線を示す。
【0061】
(比較例2)
精製水(60%)、合成珪酸塩(クニミネ工業社製「スメクトンSWF」,粉状)(2.25%)をホモディスパーに順に投入し回転数2500rpmで10分間撹拌し、その後調整精製水(12.57%)、1,3-ブチレングリコール(14%)、エタノール(10%)、香料(0.1%)、ヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液(0.9%)をホモディスパーに順に投入し回転数3000rpmで60分間撹拌を行い比較例2のゲル状組成物を得た。
図5及び
図6に、得られたゲル状組成物の1段目および2段目の粘度曲線を示す。
【0062】
(比較例3)
濃グリセリン(80%)、合成珪酸塩(クニミネ工業社製「スメクトンSWF」,粉状)(2.55%)をホモディスパーに順に投入し回転数2500rpmで10分間撹拌し、その後調整精製水(14.45%)、1,3-ブチレングリコール(2.7%)、エタノール(10%)、香料(0.1%)、ヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液(0.9%)をホモディスパーに順に投入し回転数3000rpmで150分間撹拌を行い比較例3のゲル状組成物を得た。
【0063】
(比較例4)
精製水(60%)、合成珪酸塩(BYK社製「LAPONITE XLG-XR」,粉状)(2.55%)をホモディスパーに順に投入し回転数2500rpmで10分間撹拌し、その後調整精製水(12.57%)、1,3-ブチレングリコール(14%)、エタノール(10%)、香料(0.1%)、ヒアルロン酸ナトリウム1%水溶液(0.9%)をホモディスパーに順に投入し回転数3000rpmで150分間撹拌を行い比較例4のゲル状組成物を得た。
【0064】
(比較例5)
比較として、99%純度の化粧用濃グリセリン(100%)の粘度を測定した。
【0065】
(比較例6)
比較として、1,3-ブチレングリコール(100%)の粘度を測定した。
【0066】
(粘度測定)
(1段目の測定)
実施例および比較例で得られたゲル状組成物を常温で24時間静置し、次いで温度25℃の恒温槽に18時間静置した後、東機産業社製のE型粘度計「TVE-35型」を用いてゲル状組成物の粘度を測定した。治具は円錐平板のコーンプレート型を用いた。粘度測定中ゲル状組成物は循環冷却機付きサーキュレーター(ユラボ社製「CORIO(登録商標)CD-200T」)を用いて温度25℃に保持するようにした。
なお、E型粘度計はJIS Z8809「粘度計校正用標準液」に準じた機器管理の校正を測定前に実施し、E型粘度計の仕様精度について、トレーサビリティが保証された校正を確保した後に実施例および比較例のゲル状組成物の粘度測定を実施した。また、コーンローターによるギャップ調整(測定位置合わせ)も測定前に実施した。
(2段目の測定)
1段目の測定後、ゲル状組成物を常温で24時間静置し、次いで温度25℃の恒温槽に18時間静置した後、1段目と同様にしてゲル状組成物の粘度を測定した。
【0067】
(粘度測定手順)
・最大容量1.1mLのインジェクタシリンダでシリンダ内部に気泡の入らないように注意をしながら1.0mL~1.1mLの範囲でサンプルを採取する。
・測定サンプルカップに気泡・ごみなどの異物が混入していない状態で測定サンプルカップにサンプルをセットする。
・サンプルカップ内でサンプルを3分間の静置し、サンプルの粘度と温度とを安定させる。
・サンプルの粘度を測定開始する。
【0068】
・まず、サンプルの履歴粘性を消去するために100rpm×60秒+0rpm×180秒の測定前プログラムを実施する。
・次に、測定プログラムはビスカスヒーティングの影響を受けない範囲として0.1rpm×180秒、0.5rpm×120秒、1rpm×60秒、5rpm×60秒、10rpm×30秒、50rpm×30秒、100rpm×15秒に設定し、0.1rpm~100rpm~0.1rpmの上昇降下の順で連続的に粘度を測定する。
・縦軸を剪断応力とし、横軸を剪断速度として測定データをプロットして線画グラフを作成する。
【0069】
【表1】
表中の「-」は測定不可能、粘度換算不可能を意味する。
【0070】
実施例1~実施例7のゲル状組成物は全て変色、白濁、分離、離床離水をすることはなかった。また実施例1~実施例7のゲル状組成物は、力学的降伏値(Dynamic-yield-value)を有しチキソトロピー性を十分に発現するものであった。
【0071】
比較例1のゲル状組成物は変色、白濁をすることはなかったが、系は増粘一辺倒で益々粘性増大しチキソトロピー性を発現するものではなかった。比較例1のゲル状組成物では調整直後の粘性は経時後に急激な増粘性が強く発現された。
【0072】
比較例2のゲル状組成物2は白濁し、増粘一辺倒で益々粘性増大しチキソトロピー性を発現するものではなかった。
【0073】
比較例3及び比較例4のゲル状組成物では、分散調整液を作製するために分散処理時間を2倍以上にしても十分な分散状態物を作製することが不可能であり、また系は終始分離した状態で測定分散調整液を作製することが出来ず、どちらも粘度測定するまでには至らなかった。
【0074】
比較例5の化粧用濃グリセリンと比較例6の1,3-ブチレングリコールは、実施例1~実施例7および比較例1~4の組成物との粘度曲線を比較するため測定したものである。比較例5の化粧用濃グリセリン及び比較例6の1,3-ブチレングリコールはどちらも力学的降伏値を有するチキソトロピー性を発現するものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のゲル状組成物は、時間依存性挙動があり、高いチキソトロピー性を発現し有用である。