(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】離水パターン調節充填液を含むハイドロゲルパッチ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20230829BHJP
A61K 8/20 20060101ALI20230829BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230829BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20230829BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20230829BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20230829BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230829BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/20
A61K8/34
A61K8/365
A61K8/44
A61K8/49
A61K8/73
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2021184568
(22)【出願日】2021-11-12
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0155170
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521497361
【氏名又は名称】ジンコステック カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】リ,ウォン ジン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジョン ピョ
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-528443(JP,A)
【文献】特開2009-066061(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2016-0055542(KR,A)
【文献】特表2015-536977(JP,A)
【文献】国際公開第2013/047982(WO,A2)
【文献】特表2008-519864(JP,A)
【文献】特開2005-194200(JP,A)
【文献】特開2005-320264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/02
A61K 8/20
A61K 8/34
A61K 8/365
A61K 8/44
A61K 8/49
A61K 8/73
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋剤と精製水からなるA相、有機高分子と多価アルコールからなるB相、及び、pH調節剤と精製水からなるC相において、前記A相、前記B相、及び前記C相をそれぞれ撹拌した後、前記A相に前記B相及び前記C相を独立して存在する状態から順次に投入して、前記C相の前記pH調節剤により、pHが中性及び塩基性である組成物Aのハイドロゲルを製造するステップと、
保湿剤と精製水からなるD相、増粘剤と多価アルコールからなるE相、及びpH調節剤と精製水からなるF相において、前記D相、前記E相、及び前記F相をそれぞれ撹拌した後、前記D相に前記E相及び前記F相を独立して存在する状態から順次に投入して前記F相の前記pH調節剤により、pHが中性及び塩基性である組成物Cの充填液を製造するステップと、
前記充填液を前記ハイドロゲルに充填するステップと、を含み、
前記有機高分子は、カラギーナン及びカロブガムを含み、
前記架橋剤、前記カラギーナン、前記カロブガム、及び前記多価アルコールは、前記ハイドロゲルの全体重量に対して、それぞれ、0%w/wよりも大きくて5.0%w/w以下、0.1~5.0%w/w、0%w/wよりも大きくて4.0%w/w以下、及び15.0~30.0%w/wを含み、前記増粘剤は、前記充填液の全体重量に対して、0%w/wよりも大きくて5.0%w/w以下を含み、
前記E相の前記増粘剤は、前記充填液の粘度を高め、前記充填液と前記ハイドロゲルとの間の浸透圧差を減らすことを特徴とする離水パターン調節充填液を含み、
前記組成物A及び前記組成物Cからなるハイドロゲルパッチにおいて、前記組成物Aは、前記ハイドロゲルパッチの全体重量に対して、70%w/wよりも大きく、前記組成物Cは、前記ハイドロゲルの全体重量に対して、30%w/wよりも小さ
く、
前記架橋剤が塩化カルシウムであり、前記B相に含まれる前記多価アルコールがグリセリン及びブチレングリコールであり、前記B相及び前記F相に含まれる前記pH調節剤がいずれもアルギニンであり、前記保湿剤がアラントインであり、前記増粘剤がキサンタンガムであり、前記E相に含まれる前記多価アルコールがグリセリンであるハイドロゲルパッチの製造方法。
【請求項2】
架橋剤と精製水からなるA相、有機高分子と多価アルコールからなるB相、及び、pH調節剤と精製水からなるC相において、前記A相、前記B相、及び前記C相をそれぞれ撹拌した後、前記A相に前記B相及び前記C相を独立して存在する状態から順次に投入して、前記C相の前記pH調節剤により、pHが酸性である組成物Bのハイドロゲルを製造するステップと、
保湿剤と精製水からなるD相、増粘剤と多価アルコールからなるE相、及びpH調節剤と精製水からなるF相において、前記D相、前記E相、及び前記F相をそれぞれ撹拌した後、前記D相に前記E相及び前記F相を独立して存在する状態から順次に投入して、前記F相の前記pH調節剤により、pHが酸性である組成物Dの充填液を製造するステップと、
前記充填液を前記ハイドロゲルに充填するステップと、を含み、
前記有機高分子は、カラギーナン及びカロブガムを含み、
前記架橋剤、前記カラギーナン、前記カロブガム、及び前記多価アルコールは、前記ハイドロゲルの全体重量に対して、それぞれ、0%w/wよりも大きくて5.0%w/w以下、0.1~5.0%w/w、0%w/wよりも大きくて4.0%w/w以下、及び15.0~30.0%w/wを含み、前記増粘剤は、前記充填液の全体重量に対して、0%w/wよりも大きくて5.0%w/w以下を含み、
前記E相の前記増粘剤は、前記充填液の粘度を高め、前記充填液と前記ハイドロゲルとの間の浸透圧差を減らすことを特徴とする離水パターン調節充填液を含み、
前記組成物B及び前記組成物Dからなるハイドロゲルパッチにおいて、前記組成物Bは、前記ハイドロゲルパッチの全体重量に対して、70%w/wよりも大きく、前記組成物Dは、前記ハイドロゲルパッチの全体重量に対して、30%w/wよりも小さ
く、
前記架橋剤が塩化カルシウムであり、前記B相に含まれる前記多価アルコールがグリセリン及びブチレングリコールであり、前記B相及び前記F相に含まれる前記pH調節剤がいずれもクエン酸であり、前記保湿剤がアラントインであり、前記増粘剤がキサンタンガムであり、前記E相に含まれる前記多価アルコールがグリセリンであるハイドロゲルパッチの製造方法。
【請求項3】
前記ハイドロゲルにおいて、前記架橋剤は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含む陽イオン性無機化合物若しくはそれらの混合物であり、前記多価アルコールは、グリセリン、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、プロパンジオール、及びペンチレングリコールのうちから選ばれたいずれか一つ若しくはそれらの組合せであることを特徴とする請求項1または2に記載の離水パターン調節充填液を含むハイドロゲルパッチの製造方法。
【請求項4】
前記多価アルコールは、前記グリセリンと前記ブチレングリコールの組合せであって、全体のハイドロゲルの重量に対して、5.0~20.0%w/wのグリセリン及び0%w/wよりも大きくて10.0%w/w以下であるブチレングリコールの組合せであり、前記組合せは、15.0%w/w以上であり、30.0%w/w以下であることを特徴とする請求項3に記載の離水パターン調節充填液を含むハイドロゲルパッチの製造方法。
【請求項5】
前記充填液において、前記増粘剤は、カルボマー、キサンタンガム、アクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマー、アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VPコポリマー、ヒドロキシエチルアクリラート/アクリロイルジメチルタウリンナトリウムコポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、グアーガム、カロブガム、及びセルロースガムのうちから選ばれた少なくとも一つであり、前記保湿剤は、アラントイン、ベタイン、グルコース、ソルビトール、グリセリン、ブチレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコールで構成された群から選ばれた少なくとも一つの組合せからなることを特徴とする請求項1または2に記載の離水パターン調節充填液を含むハイドロゲルパッチの製造方法。
【請求項6】
前記pH調節剤は、塩基性pH調節剤はアルギニンであり、酸性pH調節剤はクエン酸であることを特徴とする請求項1または2に記載の離水パターン調節充填液を含むハイドロゲルパッチの製造方法。
【請求項7】
前記A相に前記B相を投入した後、70~95℃及び1,000~3,000rpmで撹拌し、前記A相に前記C相を投入した後、70~95℃及び1,000~3,000rpmで撹拌することを特徴とする請求項3に記載の離水パターン調節充填液を含むハイドロゲルパッチの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロゲルパッチ及びその製造方法に係り、さらに詳しくは、化粧品に適用され、ハイドロゲルの内部の浸透圧と関連した離水パターンを調節することができる充填液を含み、有効性分の経皮伝達を向上させるハイドロゲルパッチ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロゲルは、有機高分子が網目構造をなし、網目構造の空孔(vacancy)を水が占有する物質であって、その用途に応じて、20~80%の含水率を有する。ハイドロゲルは、生体適合性に優れた軟性物質であり、用途に応じた形に成形しやすく、医薬、化粧品、保形物等の様々な分野において用いられる。特に、化粧品分野では、ハイドロゲルで発生する離水液を介して有効性分の経皮伝達を誘導する剤形として用いられる。S.Boral(2009)、Syneresis in agar hydrogel、及びK.Xu(2008)、Spontaneous volume transition of polyampholyte nanocomposite hydrogels based on pure electrostatic interactionによれば、ハイドロゲルの離水現象は、ハイドロゲルを構成する有機高分子の機械的、化学的特性に起因し、このような要素の熱力学的特性の変化により、有機高分子の不規則的な収縮、弛緩現象が誘発される。
【0003】
有機高分子の機械的特性は、高分子の分子量、鎖長さ、不飽和結合の個数、架橋結合密度等があり、化学的特性は、イオン均衡、pH、温度、架橋剤、及びコロイド分散媒の種類等がある。これらの要素が、外部環境の変化により、ハイドロゲル網目構造の体積を自発的に変化させることを、オーバーシューティング(overshooting)現象という。C.Li(2010)、Overshooting Effect of Poly(Dimethylaminoethyl Methacrylate)hydrogelによれば、温度、pH、イオン濃度により、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)ハイドロゲルの膨潤率が変わり、膨潤率の変化は、網目構造をなす有機高分子の鎖長さの変化に起因する。
【0004】
ハイドロゲルの離水パターンを調節するための様々な研究事例が提示されている。韓国特許出願番号第2007-0036270号では、イオタカラギーナン(Iota-Carrageenan)及びローカストビーンガムの含量を調節して、含水率の維持に効果的なハイドロゲルが開示されているが、肌に付着するときの離水現象の改善については具体的に提示していない。韓国特許出願番号第2012-0068886号は、プルロニック(登録商標)F68の光架橋結合を介して体温(37℃)付近で離水現象を誘発する温度感応型ハイドロゲルを開示している。しかし、大韓民国食品医薬品安全処の流通化粧品の安定性評価ガイドラインによれば、極限的な温度及び圧力条件に露出し得るので、40℃以上での熱的安定性評価を勧奨している。また、体温に反応して離水が発生する温度感応型ハイドロゲルの場合、肌に付着する前に離水が発生し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国特許出願番号第2007-0036270号
【文献】韓国特許出願番号第2012-0068886号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、有効性分の経皮伝達を向上させるようにハイドロゲルの離水パターンを調節し、化粧品に適用するために、ゲル形成能、剤形安定性、使用感等のような物性が良好なハイドロゲルパッチ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を解決するための離水パターン調節充填液を含むハイドロゲルパッチは、架橋剤と精製水からなるA相、有機高分子と多価アルコールからなるB相、及びpH調節剤と精製水からなるC相において、前記A相、前記B相、及び前記C相が混合してなり、前記C相の前記pH調節剤により、pHが中性及び塩基性である組成物A及びpHが酸性である組成物Bに分けられるハイドロゲルと、保湿剤と精製水からなるD相、増粘剤と多価アルコールからなるE相、及びpH調節剤と精製水からなるF相において、前記D相、前記E相、及び前記F相が混合してなり、前記F相の前記pH調節剤により、pHが中性及び塩基性である組成物C及びpHが酸性である組成物Dに分けられる充填液と、を含む。このとき、前記組成物Aのハイドロゲルは、前記組成物Cの充填液により充填され、前記組成物Bのハイドロゲルは、前記組成物Dの充填液により充填される。
【0008】
本発明のパッチにおいて、前記pH調節剤は、塩基性pH調節剤はアルギニンであり、酸性pH調節剤はクエン酸であってもよい。前記組成物A及び前記組成物Cからなる前記ハイドロゲルにおいて、前記ハイドロゲルの全体重量に対して、前記組成物Aは、70%w/wよりも大きく、前記組成物Cは、30%w/wよりも小さくてもよい。前記組成物B及び前記組成物Dからなる前記ハイドロゲルにおいて、前記ハイドロゲルの全体重量に対して、前記組成物Bは、70%w/wよりも大きく、前記組成物Dは、30%w/wよりも小さくてもよい。
【0009】
本発明の好適なパッチにおいて、前記ハイドロゲルにおいて、前記架橋剤は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含む陽イオン性無機化合物若しくはそれらの混合物であり、前記有機高分子は、カラギーナン、グアーガム、カロブガム、セルロースガム、及びポリアクリレートのうちから選ばれた少なくとも一つであり、前記多価アルコールは、グリセリン、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、プロパンジオール、及びペンチレングリコールのうちから選ばれたいずれか一つ若しくはそれらの組合せであってもよい。前記多価アルコールは、前記グリセリンと前記ブチレングリコールの組合せであって、全体のハイドロゲルの重量に対して、5.0~20.0%w/wのグリセリン及び0%w/wよりも大きくて10.0%w/w以下であるブチレングリコールの組合せであり、前記組合せは、15.0%w/w以上であってもよい。
【0010】
本発明のパッチにおいて、前記充填液において、前記増粘剤は、カルボマー、キサンタンガム、アクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマー、アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VPコポリマー、ヒドロキシエチルアクリラート/アクリロイルジメチルタウリンナトリウムコポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、グアーガム、カロブガム、及びセルロースガムのうちから選ばれた少なくとも一つであり、前記保湿剤は、アラントイン、ベタイン、グルコース、ソルビトール、グリセリン、ブチレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコールで構成された群から選ばれた少なくとも一つの組合せからなってもよい。
【0011】
本発明の他の課題を解決するための離水パターン調節充填液を含むハイドロゲルパッチの製造方法は、まず、架橋剤と精製水からなるA相、有機高分子と多価アルコールからなるB相、及びpH調節剤と精製水からなるC相において、前記A相、前記B相、及び前記C相をそれぞれ撹拌した後、前記A相に前記B相及び前記C相を順次に投入してハイドロゲルを製造する。その後、保湿剤と精製水からなるD相、増粘剤と多価アルコールからなるE相、及びpH調節剤と精製水からなるF相において、前記D相、前記E相、及び前記F相をそれぞれ撹拌した後、前記D相に前記E相及び前記F相を順次に投入して充填液を製造する。前記充填液を前記ハイドロゲルに充填する。
【0012】
本発明の方法において、前記A相に前記B相を投入した後、70~95℃及び1,000~3,000rpmで撹拌し、前記A相に前記C相を投入した後、70~95℃及び1,000~3,000rpmで撹拌してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明による離水パターン調節充填液を含むハイドロゲルパッチ及びその製造方法によれば、離水パターンを調節する充填液を充填することにより、有効性分の経皮伝達を向上させるようにハイドロゲルの離水パターンを調節し、化粧品に適用するために、ゲル形成能、剤形安定性、使用感等のような物性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例1~4及び比較例1~5における経時によるハイドロゲルの膨潤率(%)の変化を示すグラフである。
【
図2】本発明の実施例1~4及び比較例1~5における経時によるハイドロゲルを肌に付着するときの膨潤率(%)の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付された図面を参照して、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。後述する実施例は、様々な他の形態に変形されてもよく、本発明の範囲が後述する実施例に限定されるものではない。本発明の実施例は、当該技術分野における通常の知識を有する者に本発明をさらに完全に説明するために提供されるものである。
【0016】
本発明の実施例は、離水パターンを調節する充填液を充填することにより、有効性分の経皮伝達を向上させるようにハイドロゲルの離水パターンを調節し、化粧品に適用するために、ゲル形成能、剤形安定性、使用感等のような物性が良好なハイドロゲルパッチ及びその製造方法を提示する。このため、ハイドロゲル及びそれに充填される充填液について詳細に調べ、前記充填液が充填されたハイドロゲルパッチの物性について詳細に説明する。ここで、離水パターンは、ハイドロゲルの内部の浸透圧と関連しており、離水現象ともいう。以下では、離水パターンを調節する充填液が充填されたハイドロゲルパッチ、及び前記ハイドロゲルパッチの製造方法に分けて説明する。
【0017】
<離水パターンを調節する充填液が充填されたハイドロゲルパッチ>
【0018】
本発明の実施例によるハイドロゲルは、架橋剤、多価アルコール、有機高分子、保湿剤、増粘剤、pH調節剤、精製水、及びその他の添加剤を含む。前記架橋剤は、前記有機高分子においてイオン性架橋結合を誘導する。前記イオン性架橋結合は、有機高分子の陰イオン性作用基のCOO-、OH-等とイオン化されたアルカリ金属またはアルカリ土類金属の静電相互作用からなる。前記架橋結合は、精製水内における網目構造の有機高分子を示し、前記網目構造の空孔に水が占有されてハイドロゲルを形成する。架橋剤イオン種をハイドロゲルに安定的に提供するために、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が好ましい。前記アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の対イオンは、有機高分子及び架橋結合に影響を与える。前記対イオンは、前記有機高分子との反応如何、イオン強度等を考慮して、主に、塩素酸塩、乳酸塩、炭酸塩、水酸塩が好ましい。
【0019】
前記架橋剤は、塩化カルシウムが好ましい。前記塩化カルシウムの水に対する溶解度は、無水物を基準として74.5g/100mlで水溶液において安定的に溶解される。また、前記対イオンで一緒にイオン化される塩素イオンは、有機高分子との反応がないので、安定したハイドロゲル組成物を製造するための架橋剤として適切である。前記架橋剤の含量は、ハイドロゲル重量対比で、0%w/wよりも大きくて5.0%w/w以下であり、好ましくは0.1~0.2%w/wが適切である。5.0%w/wを超えると、前記ハイドロゲルの脆性により柔軟性がなく切れ、乾燥した使用感が現れる。前記架橋剤の含量は、有機高分子の種類、作用基の個数、重合度、含量により変更されてもよい。
【0020】
前記多価アルコールは、有機高分子を湿潤させ、有機高分子のレオロジー構造を変化させる。前記有機高分子と溶媒の親和力により、有機高分子の流体力学的半径(hydrodynamic radius、α)が決まる。α>1の場合、良溶媒(good solvent)、α=1の場合、θ溶媒(theta solvent)、α<1の場合、貧溶媒(poor solvent)に分けられる。前記ハイドロゲルの鎖状構造を実現するために、良溶媒またはθ溶媒に高分子を膨潤させた後、架橋結合させることが好ましい。前記貧溶媒の場合、有機高分子のランダムコイル(random coil)の挙動により、有機高分子はねじれ形態となり、網目構造をなし難い。これにより、前記有機高分子を膨潤させるために、適切な溶媒の選択が必要である。
【0021】
前記多価アルコールは、全体のハイドロゲルの重量対比で、5.0~20.0%w/wのグリセリン、及び0%w/wよりも大きくて10.0%w/w以下であるブチレングリコールの組合せであり、前記組合せは、15.0%w/w以上が好ましい。前記グリセリンは、前記有機高分子に対して高い親和力を有し、前記ブチレングリコールは、前記グリセリンよりも低い親和力を有する。前記両溶媒を組み合わせた混合溶液は、前記有機高分子の親和力を考慮して、流体力学的半径が調節されてもよい。また、全体の有機溶媒の含量が15.0%w/wよりも小さいと、前記有機高分子の濃度が高すぎる。前記濃度が高くなると、それぞれの有機高分子化学種のファンデルワールス力に起因した反発力及び占有空間が不足である。これにより、高い親和力の有機溶媒を用いても、ランダムコイルの挙動を示し、ハイドロゲル反応に適切でない。
【0022】
前記有機高分子は、カラギーナン、カロブガムを含み、場合に応じて、キサンタンガム、グアーガム、ゲランゴム、セルロースガム、アガー(agar)、ポリアクリルアミド(Polyacrylamide)、ポリビニルアルコール(Polyviylalcohol)、ポリアクリレート(Polyacrylate)、ポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane)のうちから選ばれた少なくともいずれか一つが含まれてもよい。一方、前記有機高分子の架橋結合は、物理的結合及び化学的結合に分けられる。前記物理的結合は、鎖状高分子のファンデルワールス力によるもつれ現象(entanglemnet)により形成される。前記化学的結合は、主に、前記架橋剤が前記有機高分子と結合して行われる。前記化学的結合は、イオン性化学種の静電相互作用によるイオン性架橋結合、架橋剤化学種と有機高分子の作用基の置換、縮合またはラジカル反応による共有結合性架橋結合に分けられる。
【0023】
前記カラギーナンは、紅藻類(red algae)から抽出した天然高分子であって、六炭糖のガラクトースと3,6-ガラクトース無水物の共重合体と、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、及び硫酸アンモニウムのエステルと、からなっている。このような硫酸エステル作用基は、他の硫酸無機塩に比べて、静電気的に強い陰性を有する。前記カラギーナンは、結合構造が、作用基の位置により、λ、κ、ι、ε、μタイプに分けられ、κ-カラギーナンとι-カラギーナンは、それぞれカリウムとカルシウムによる架橋結合によりゲルを形成する。λ-カラギーナンは、αヘリックスの構造特性上、ゲル化反応を引き起こさない。[Necas,Jiri,and Ladislava Bartosikova.“carrageenan:a review.” Veterinarni medicina 58.4(2013)。]
【0024】
前記カラギーナンは、ハイドロゲルの剛性を構成する成分であって、全体のハイドロゲルの重量対比で、0.1~5.0%w/w、好ましくは1.0~3.0%w/wが適切である。0.1%w/wよりも小さいと、ゲル形成に必要な基礎的な剛性が実現されず、5.0%w/wよりも大きいと、脆性が強くなり、ゲルが切れるかつぶれる現象が起こる。
【0025】
前記カロブガムは、豆から抽出され、マンノース(Mannose)が4部分のガラクトースで置換されたガラクトマンナン(Galactomannan)の一種であって、マンナン(Mannan)の主鎖に沿ってガラクトース側鎖が不規則的に結合されている。マンノースがない部分における螺旋構造をなす部分において、アガー、κ-カラギーナン、キサンタンガムと高温で反応してゲル形成を助け、独自にはゲルを形成せず、硫酸触媒下、高温で、クエン酸と架橋結合が形成される。[Hadinugroho,Wuryanto,et al.“Study of Catalyst of Citric Acid Crosslinking on Locust Bean Gum.” Journal of chemical Technology and Metallurgy 52.6(2017): 1086-1091.]
【0026】
前記カロブガムは、前記カラギーナンのゲル化反応を促進するための補助ゲル化剤として用いられ、全体のハイドロゲルの重量対比で、0~4.0%w/w、好ましくは1.0~3.0%w/wが適切である。4.0%w/wよりも大きくても、ハイドロゲルの剤形を構成することができるが、ガラクトマンナン系高分子の特性上、離水液の粘度を上昇させる。このような粘度が上昇すると、肌に触れたとき、不快な使用感が発生し得る。
【0027】
前記グアーガムは、主に豆類から抽出され、ガラクトースとマンノースで構成された六炭糖のポリサッカライドであって、β-1,4結合されたマンノース残基の線状鎖であり、ガラクトース残基は、二番目のマンノース毎に1,6-結合された側鎖を形成する。構造的には、上記したカロブガム及び後述するキサンタンガムに極めて類似する。水溶液上において、非イオン性コロイドを形成し、独自には、ゲル形成反応は引き起こさない。但し、カルシウムによりゲル形成反応が誘導され得る。前記グアーガムは、カラギーナンのゲル化反応を促進するためのゲル化剤であって、全体のハイドロゲル重量の0%w/wよりも大きくて4.0%w/w以下、好ましくは0%w/wよりも大きくて2.0%w/w以下が適切である。4.0%w/wを超えると、ゲル形成には異常はないが、ハイドロゲルの離水液が滑らかになり付着性が落ちる。
【0028】
前記キサンタンガムは、炭水化物をキサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)で発酵して得られ、D-グルコース、D-マンノース、D-グルコン酸からなる長鎖状のポリサッカライドである。また、前記キサンタンガムは、独自には、ゲル化反応が起きず、水相でコロイドを形成し、高濃度で粘度が高くなり、擬塑性流動(Pseudoplastic flow)の流体力学的挙動を示す。前記キサンタンガムは、グアーガムの代替成分として用いられ、カルシウム架橋剤下で、カラギーナンを代替してハイドロゲルのネットワーク構造を形成することができる。前記キサンタンガムは、全体のハイドロゲル重量対比で、0~5.0%w/w、好ましくは0~2.0%w/wが適切である。5.0%w/wよりも大きいと、カルシウムイオンが架橋剤として用いられた場合、4.0%w/w以上において、ハイドロゲルの脆性が強くなり、ゲルの構造が崩れ、肌に付着したときにつぶれる現象が発生する。
【0029】
前記セルロースガムは、カルボキシメチルセルロース(CMC;Carboxymethyl cellulose)とも命名され、セルロースの主鎖をなすグルコースの水酸基にカルボキシメチル作用基(-CH2-COOH)が結合されたセルロース誘導体である。セルロースガムは、独自には、ゲルを形成せず、離水液の増粘効果を誘導する。前記セルロースガムは、全体のハイドロゲル重量対比で、0%w/wよりも大きくて3.0%w/w以下、好ましくは0%w/wよりも大きくて2.0%w/w以下が適切である。3.0%w/wよりも大きいと、ゲル形成は行われるが、離水液が肌に吸収され、肌に残留して垢のようにこすられる現象が起きる。
【0030】
前記保湿剤は、アラントイン、ベタイン、グルコース、ソルビトール、グリセリン、ブチレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコールで構成された群から選ばれた少なくとも一つの組合せからなる。前記アラントインは、グリコール酸にジウレアが置換された成分であって、表皮最外殻の死んだ表皮細胞を脱殻させるのに効果的であり、細胞外基質(extracellular matrix)の含水率を高める保湿剤として、化粧品に広く用いられる。前記アラントインは、全体の充填液の重量対比で、0%w/wよりも大きくて1.0%w/w以下、好ましくは0%w/wよりも大きくて0.5%w/w以下が適切である。1.0%w/wよりも大きいと、剤形に影響はないが、肌に吸収され、ごわついた使用感が残って、好ましくない。
【0031】
前記増粘剤は、充填液の粘度を増加させ、ハイドロゲルと充填液との浸透圧を調節して、肌への付着前後の離水パターンを調節する。ハイドロゲルの離水パターンは、ハイドロゲル浸透圧と物質移動係数に起因する。前記増粘剤は、前記ハイドロゲルの外部の濃度を高め、前記ハイドロゲル構造の内部と外部の浸透圧差を減らして、自然に発生するハイドロゲルの離水液を減少させる。前記増粘剤は、カルボマー、キサンタンガム、アクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマー、アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VPコポリマー、ヒドロキシエチルアクリラート/アクリロイルジメチルタウリンナトリウムコポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、グアーガム、カロブガム、及びセルロースガムのうちから選ばれた少なくとも一つであってもよい。このような増粘剤は、前記ハイドロゲルを構成している有機高分子の化学構造に類似した成分を選択して、前記有機高分子と充填液の増粘剤との間の意図しない化学反応の可能性をなくすことが好ましい。
【0032】
前記増粘剤は、全体の充填液の重量対比で、0%w/wよりも大きくて5.0%w/w以下、好ましくは0%w/wよりも大きくて1.0%w/w以下が適切である。5.0%w/wを超えると、前記ハイドロゲルの濃度よりも高くなり、ハイドロゲルの水が充填液に移動して、ハイドロゲルの内容物の低い含水率を誘発してしまう。
【0033】
前記pH調節剤は、前記有機高分子と前記架橋剤の水溶液における反応と、前記増粘剤の水溶液における反応により誘発されるpH変化を調節する、前記pH調節剤は、酸または塩基性分を適切に組み合わせて、化粧品に適切なpH値を有するようにする。大韓民国食品医薬品安全処の安全管理基準によると、流通化粧品のpH範囲は3.0~9.0に決まっている。しかし、前記ハイドロゲルの特性上、肌に残って持続的に肌に有効性分を伝達するので、前記pHによる刺激が敏感に発生する。すなわち、前記ハイドロゲルのpHの適正範囲は4.0~8.0が適切である。また、前記ハイドロゲルと前記充填液のpHにより、有機高分子の鎖長さが変わり、同じハイドロゲルの異なるpHにおいて相違した離水パターンを示す。
【0034】
本発明の実施例において、塩基性pH調節剤はアルギニンが用いられ、酸性pH調節剤はクエン酸が用いられた。前記アルギニンは、塩基性アミノ酸であり、化粧品において中和剤として広く用いられ、前記クエン酸は、α-ヒドロキシ酸の一種であり、pHを下げるためによく用いられる。
【0035】
また、この実施例において用いられた成分以外にも、様々な添加剤を自由に使用することができる。前記添加剤は、着香剤、着色剤、金属イオン封鎖剤、及び皮膚コンディショニング剤等を含んでもよい。
【0036】
<離水パターンを調節する充填液が充填されたハイドロゲルパッチの製造方法>
以下、ハイドロゲルパッチをなすハイドロゲル及び充填液の製造方法を提示する。ここで、前記ハイドロゲルの製造過程において、架橋剤と精製水はA相、有機高分子と多価アルコールはB相、pH調節剤と精製水はC相となり、前記充填液の製造過程において、精製水と保湿剤はD相、増粘剤と多価アルコールはE相、精製水とpH調節剤はF相に分けられる。このとき、B相とE相は、前記有機高分子が前記多価アルコールに湿潤された状態である。言い換えれば、A相、B相、及びC相は、前記ハイドロゲルを構成する要素となり、D相、E相、及びF相は、前記充填液を構成する要素となる。これにより、A相、B相、C相、D相、E相、及びF相のそれぞれは、混合して、ハイドロゲル及び充填液をなす前までは、独立的に取り扱われる。
【0037】
ハイドロゲルの製造方法は、原料をA相、B相、及びC相に分けて、それぞれ撹拌後、A相にB、C相を順次に投入する方法で行われる。A相では、85℃、800rpm及び5分、B相では、常温、800rpm及び5分、C相では、常温、800rpm及び5分でそれぞれ撹拌した。その後、前記A相に、B相を投入後、70~95℃、1,000~3,000rpm、及び約5分、C相を投入後、70~95℃、1,000~3,000rpm、及び約5分間撹拌した。高温のハイドロゾルをプラスチックフィルムと一緒にローラーにより0.1~5mmでコーティングした後、1℃~常温で、ハイドロゲルが常温に到達するまで冷却してハイドロゲルシートを完成した。完成されたハイドロゲルシートのpHを測定するために、4gのハイドロゲルと60gの精製水に入れ、マグネチックバーを用いて、加熱撹拌機上で十分に膨潤させた後、25℃まで冷却し、pHメーターを用いてpHを測定した。
【0038】
前記B相の投入後、有機高分子と多価アルコールの重量に応じて、適切な回転速度(rpm)を選択して撹拌すればよいが、1,000rpm未満では、高分子が十分に分散せず、固まる現象が発生し、3,000rpmを超えると、前記有機高分子中の鎖状有機高分子に過度なせん断応力が加えられて、ハイドロゲルの剛性を弱化させるだけでなく、ハイドロゲルが反応器の外壁に飛び散り、適切な分散が行われない。また、C相の投入後、1,000rpm未満であると、ハイドロゾルの粘度が高くて、pH調節剤の均等な分散が行われず、3,000rpmを超えると、前記B相と同じ理由により、ゲル剛性及び適切な分散が得られない。
【0039】
また、ハイドロゲルをコーティングするとき、0.1mm未満であると、ハイドロゲルが薄すぎて破れやすく、5mmよりも大きいと、ゲルの重さにより、肌で滑りやすくて密着感が落ちる。ハイドロゲルを冷却するとき、0℃において水の氷への相変化が発生し、体積が膨張してゲルの安定性に影響を与える。
【0040】
充填液の製造方法は、原料を、D相、E相、及びF相に分けて、それぞれ撹拌した後、前記D相にE相及びF相を順次に投入する方法で行われる。前記D相では、80℃、800rpm及び5分、E相は、常温で800rpm及び5分、F相は、常温で800rpm及び5分間撹拌した。前記D相にE相を投入した後、80℃、400~800rpm及び5分、F相を投入した後、80℃、400~800rpm及び5分間撹拌した後、常温まで冷却する。完成された充填液は、pHメーターを用いてpHを測定した。
【0041】
前記E相の投入後、D相とE相の重量に応じて、適切な回転速度(rpm)を選択して撹拌すればよいが、400rpm未満であると、撹拌が十分に行われず、増粘剤が底に沈むようになり、800rpmを超えると、充填液が反応器の外壁に飛び散って分散が均一ではない。また、前記F相を投入した後、400rpm未満であると、充填液の粘度により、F相の適切な分散が困難であり、800rpmよりも大きいと、充填液が反応器の外壁に飛び散って分散が均一ではない。冷却工程は、空冷、水冷等の方式から自由に選択されてもよい。常温まで冷却すれば、ハイドロゲルと充填液の熱的不均衡による、意図しない副反応の可能性が排除される。
【0042】
以下、本発明のハイドロゲルの物性について詳細に説明するために、下記のような実施例を提示する。しかし、本発明は、以下の実施例に特に限定されるものではない。
【0043】
製造されたハイドロゲルは、直径78mmの容器に積層して入れ、直径75mmの円形に成形した。このとき、ハイドロゲルと充填液を実施例と比較例における割合で一緒に充填して、ハイドロゲルの膨潤率の変化、肌に付着するときのハイドロゲルの膨潤率の変化を測定した。前記ハイドロゲルの保湿感、密着感、剛性、安定性について、自体品質評価団を構成して評価した。前記膨潤率は、下記の式1で計算された。
【0044】
【0045】
表1は、本発明の実施例を説明するために、ハイドロゲルの組成物A及び組成物Bの成分に対する含量及びpHを示すものであり、表2は、本発明の実施例を説明するために、充填液の組成物C及び組成物Dの成分に対する含量及びpHを示すものである。
【0046】
【0047】
【0048】
前記pHの場合、大韓民国食品医薬品安全処の流通化粧品の安全基準に符合するように、4乃至8の範囲として、組成物A及びCのpHは7, 組成物B及びDは5に設定した。
【実施例1】
【0049】
実施例1のハイドロゲルは、組成物Aを製造した。分離された各相の撹拌条件に合わせて、A相は、85℃、800rpm及び5分、B相は、常温、800rpm及び5分、C相は、常温、800rpm及び5分でそれぞれ撹拌し、A相に、B相を投入した後、85℃、2,000rpm及び5分、C相を投入した後、85℃、2,000rpm及び5分間撹拌した。以降、2.0mm厚さでコーティング後、常温で冷却した後、直径75mmの円形に成形した。実施例1の充填液は、組成物Cを製造した。分離された各相の撹拌条件は、D相は、80℃、800rpm及び5分、E相は、常温、800rpm及び5分、F相は、常温、800rpm及び5分間撹拌し、D相に、E相を投入した後、80℃、500rpm及び5分、F相を投入した後、80℃、500rpm、5分間撹拌した。以降、4℃の水で常温まで湯煎して冷却した。実施例1におけるハイドロゲルへの充填液の充填過程は、前記ハイドロゲルを直径78mmの円形容器にハイドロゲル90g及び充填液10gとなるように充填した。
【実施例2】
【0050】
組成物Aのハイドロゲル80g及び組成物Cの充填液20gとなるように、78mmの円形容器に充填することを除いては、実施例1と同様である。
【実施例3】
【0051】
組成物Bのハイドロゲル90g及び組成物Dの充填液10gであることを除いては、実施例1と同様である。
【実施例4】
【0052】
組成物Bのハイドロゲル80g及び組成物Dの充填液20gであることを除いては、実施例3と同様である。
【0053】
<比較例1>
組成物Aのハイドロゲル100g、及び充填液を充填せずに、78mmの円形容器に充填することを除いては、実施例1と同様である。
【0054】
<比較例2>
組成物Aのハイドロゲル70g及び組成物Cの充填液30gであることを除いては、実施例1と同様である。
【0055】
<比較例3>
組成物Aのハイドロゲル60g及び組成物Cの充填液40gであることを除いては、実施例1と同様である。
【0056】
<比較例4>
組成物Bのハイドロゲル100g、及び充填液を充填しないことを除いては、実施例3と同様である。
【0057】
<比較例5>
組成物Bのハイドロゲル70g及び組成物Dの充填液30gであることを除いては、実施例3と同様である。
【0058】
表3は、本発明の実施例1~4及び比較例1~5による物性を示すものである。このとき、5は極めて良好であり、4は良好であり、3は普通であり、2は化粧品として比較的不適切であり、1は実際化粧品に適用することができないものである。
図1は、本発明の実施例1~4及び比較例1~5における経時によるハイドロゲルの膨潤率(%)の変化を示すグラフであり、
図2は、本発明の実施例1~4及び比較例1~5における経時によるハイドロゲルを肌に付着するときの膨潤率(%)の変化を示すグラフである。
【0059】
【0060】
表3によれば、実施例1は、密着感、剛性、安定性は極めて良好であり、保湿感の場合は良好であった。実施例2は、保湿感と密着感は極めて良好であり、剛性と安定性は良好であった。実施例3は、保湿感と密着感が極めて良好であり、剛性と安定性は良好であった。実施例4は、保湿感と密着感が極めて良好であり、剛性は良好であったが、安定性は普通であった。
【0061】
比較例1は、剛性は極めて良好であり、密着感も良好であったが、保湿感と安定性が普通であった。比較例1は、充填液を含まず、容器内において、ハイドロゲルの内部の浸透圧による自然的な離水液が発生し、皮膚への塗布前まで、ハイドロゲルの含水率が減って保湿感が減少した。また、ハイドロゲルが乾燥した状態に露出し続け、ハイドロゲルの上側表面が不安定な形態を示した。
【0062】
比較例2は、保湿感は極めて良好であったが、密着感、剛性、安定性は普通であった。比較例2は、充填液により保湿感は向上したが、充填液の過剰により、
図2のように、ハイドロゲルが膨潤する現象が示され、ゲルの剛性と安定性に否定的な影響を及ぼした。このようになると、相対的に乾燥した肌に付着するとき、過剰したハイドロゲルの離水液が発生し、ハイドロゲルの滑り現象を誘発して、付着感が落ちた。比較例3は、保湿感は極めて良好であったが、密着感、剛性、安定性は、化粧品として比較的不適切であった。比較例2と同様に、充填液による保湿感の向上はあったが、過剰充填により、ハイドロゲルの剛性、安定性、密着感に否定的な影響を及ぼした。
【0063】
比較例4は、ハイドロゲルの保湿感、剛性、安定性は良好であったが、密着感は普通であった。比較例4は、比較例1と同じ理由により、充填液を含まず、離水液が発生して、他の実施例に比べて含水率が減少した。比較例1に比べて、保湿感が向上した原因は、ハイドロゲルがpHにより高分子網目構造の孔隙率が変化することに起因する。pHが低くなるほど、溶媒に対する有機高分子の親和力が高くなり、高分子の構造が伸びる現象が発生する。また、密着感が減少したことは、比較例1に比べて、離水液が多く発生したが、離水液の粘度が極めて低く、肌表面においてゲルの滑りを誘発したからである。これにより、ハイドロゲル充填液の増粘剤が、離水液の粘度を調節して、肌への密着感を向上させることが確認された。
【0064】
比較例5は、保湿感は極めて良好であったが、密着感、剛性、安定性が化粧品として比較的不適切であった。比較例5は、比較例2及び3と同様に、充填液の過剰によるハイドロゲルの膨潤が発生して、剛性と安定性に否定的な影響を及ぼし、離水液の過剰により、密着感にも否定的な影響を及ぼした。また、ハイドロゲルのpHが低く、pH 7.0のハイドロゲルの場合よりも多くの離水液が発生して、比較例3に比べてさらに低い充填液であるにもかかわらず、ハイドロゲルの物性が落ちることが確認された。
【0065】
比較例3及び5は、それぞれ密着感、剛性及び安定性において、化粧品として比較的不適切であり、実際のパッチに適用することができない。比較例1及び4は、保湿感及び安定性が普通であったが、特に保湿感に優れておらず、実際のパッチとして不向きであった。比較例3は、密着感、剛性及び安定性が普通であって、パッチへの適合度が落ちた。実施例4は、たとえ安定性は普通であったが、保湿感及び密着感が極めて良好であり、剛性が良好であって、パッチとして適用することができた。
【0066】
本発明の実施例によれば、前記組成物A及び前記組成物Cからなる前記ハイドロゲル組成物において、前記ハイドロゲルの全体重量に対して、前記組成物Aは、70%w/wよりも大きく、前記組成物Cは、30%w/wよりも小さいことが好ましい。前記組成物B及び前記組成物Dからなる前記ハイドロゲル組成物において、前記ハイドロゲルの全体重量に対して、前記組成物Bは、70%w/wよりも大きく、前記組成物Dは、30%w/wよりも小さいことが好ましい。上記した含量は、好適例に過ぎず、場合に応じて、ハイドロゲルの組成物、厚さ及び充填方法等により、組成物C及びDの含量は、50%w/wよりも大きくてもよい。
【0067】
以上、本発明は、好適な実施例を挙げて詳細に説明したが、実施例に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内において、当該分野における通常の知識を有する者により様々な変形が可能である。