(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】アルツハイマー病動物モデルおよびその使用
(51)【国際特許分類】
A01K 67/027 20060101AFI20230829BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230829BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20230829BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230829BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
A01K67/027 ZNA
C12N5/10
C12N15/09 110
C12N15/12
C12Q1/02
(21)【出願番号】P 2021500328
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(86)【国際出願番号】 CN2019078754
(87)【国際公開番号】W WO2019179445
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-15
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/079552
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520362686
【氏名又は名称】チンホワ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルゥー パイ
(72)【発明者】
【氏名】パン ケリアン
(72)【発明者】
【氏名】グゥオ ウェイ
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-000027(JP,A)
【文献】特開2012-085656(JP,A)
【文献】国際公開第2006/128163(WO,A2)
【文献】国際公開第2003/072041(WO,A2)
【文献】Takashi Saito et al.,NATURE NEUROSCIENCE,2014年,vol.17, No.5,pp.661-663
【文献】Akira Masuda et al.,Neurobiology of Learning and Memory,2016年,vol.135,pp.73-82
【文献】Ondrej Bugos et al.,Cell Mol Neurobiol,2009年,vol.29,pp.859-869
【文献】Li Liu et al.,Neurobiol Dis.,2008年,vol.31, No.1,pp.46-57
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラットまたはその生体部分であって、前記ラットは、APPノックインラットであり、前記ラットまたは生体分は、改変されたAPPをコードするキメラApp遺伝子を含み、前記改変されたAPPタンパク質は、SEQ ID NO:1で表される野生型ラットAPPと比較して、K670N、M671L、I716FおよびE693Gの変異を有し、前記ラットまたはその生体部分の内在性App遺伝子の少なくとも一部が、前記改変されたAPPの少なくとも一部をコードする異種核酸配列によって置換されている、前記ラットまたはその生体部分。
【請求項2】
前記改変されたAPPは、さらに、G676R、F681YおよびR684Hのアミノ酸置換を含む、請求項1に記載のラットまたはその生体部分。
【請求項3】
完全長APPまたはAPP断片の発現レベルは、対応野生型ラットの発現レベルと有意差がない、
請求項1に記載のラットまたはその生体部分。
【請求項4】
以下の効果の1種類または複数種類を検出可能な、請求項1に記載のラットまたはその生体部分:
1)前記ラットは、3ヵ月齢またはより早期の月齢にAβオリゴマーを認める;
2)前記ラットは、4ヵ月齢またはより早期の月齢にアミロイド斑を認める;
3)前記ラットの小脳内には、Aβペプチドが実質的に蓄積していない;
4)前記ラットまたはその生体部分において、tauの過剰リン酸化が検出可能である;
5)前記ラットまたはその生体部分において、tauタンパク質のオリゴマー化および/または凝集が検出可能である;
6)前記ラットまたはその生体部分において、ニューロン脱落を検出することができる;
7)前記ラットまたはその生体部分において、ネクロソームが検出可能である;
8)前記ラットまたはその生体部分において、神経膠症が検出可能である;
9)前記ラットまたはその生体部分において、シナプス変性が検出可能である;
10)対応野生型ラットよりも、前記ラットまたはその生体部分において脳形態および/または脳重量変化が検出可能である;
11)対応野生型ラットよりも、前記ラット中での認知障害が検出可能である。
【請求項5】
前記ラットまたはその生体部分において、Neu-N陽性ニューロンの数が、対応野生型ラットよりも減少する、
請求項1に記載のラットまたはその生体部分。
【請求項6】
前記ラットは、内在性App遺伝子の少なくとも一部が、
少なくともエクソン16の一部、及び少なくともエクソン17の一部を含み、前記異種核酸配列
が変異したエクソン16及び変異したエクソン17を含む、
請求項1に記載のラットまたはその生体部分。
【請求項7】
前記改変されたAPPは、SEQ ID NO:2で表されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のラットまたはその生体部分。
【請求項8】
請求項1に記載のラットまたはその生体部分に由来する、組織。
【請求項9】
請求項1に記載のラットまたはその生体部分に由来する、細胞。
【請求項10】
アルツハイマー病の治療、診断、予防、監視および/または予後に有用な物質、装置、組成物および/またはバイオマーカーをスクリーニングするために用いられる、
請求項1に記載のラットまたはその生体部分
、請求項
8に記載の組織、または請求項
9に記載の細胞。
【請求項11】
異種核酸配列を内在性App遺伝子座にノックインし、ここで、前記ノックインが内在性App遺伝子の少なくとも一部を、前記改変されたAPPの少なくとも一部をコードする異種核酸配列に置換することを含む、
請求項1に記載のラットまたはその生体部分を作出する方法。
【請求項12】
前記ノックインは、前記異種核酸配列を有するドナー核酸分子の存在下で、前記ラットの幹細胞あるいは受精卵のゲノムを、以下の
1)CRISPR関連(Cas)タンパク質、および
2)i)エクソン16上流の内在性App遺伝子の一部と相補的な部分、 ii)エクソン17下流の内在性App遺伝子の一部と相補的な部分、 iii)Casタンパク質の結合部位を含む1種類または複数種類のリボ核酸(RNA)配列である物質、
と接触させることを含む、
請求項
11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
近年、多くの国における人口の高齢化に伴って、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease、AD)が主な原因の一つになる老人性認知症の患者が顕著に増加して行く。家族性アルツハイマー病(familial Alzheimer's disease、FAD)における遺伝子異常を手がかりに、老人斑と神経原線維変化の形成メカニズムなどが次第に明らかにされつつある。しかし、今まで、ADに対しての有効治療方法が未だに少なく、AD発症機序や治療方案の更なる検討の必要性が大きくなってきている。
【0002】
ADの検討において、適応な動物モデルの不足が大きな妨害の1つである。今、Tg2576マウス(Science, 274: 99-102 (1996))およびその他のAPPマウスモデル、例えば、Nature, 373: 523-7 (1995) and Nature, 395: 755-6 (1998)に報道されている2種類のようなアミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein、APP)過剰発現遺伝子導入マウスモデルが開発されている。しかしながら、これらのAPP過剰発現動物モデルでは、ヒトから見られた病理を再現することができない場合がよくあることによって、臨床上有効なAD治療の開発が困難になり、ひいては不可能になってしまう。例えば、APP過剰発現が、運動タンパク質との相互作用によって、軸索輸送を混乱させることが見られた。なお、これらAPP遺伝子導入マウスにおいて、完全長のAPPだけではなく、APPのその他の断片(例えばsAPP、 CTF-β、 CTF-a and AICD)が過剰に産生するため、正常な生理機能が影響されてしまう。通常時に遺伝子導入マウスは、その他の突然変異マウスとの交雑によってより複雑の人工的な表現型を生み出す。人工プロモーターの使用によって遺伝子のトランスジーンの発現が内在性APP発現細胞と必ず同一と限らなく、しかも、人工プロモーターが内在性プロモーターと一般の転写因子を競争する可能性がある場合がよくある。トランスジーンが、宿主動物の1つの遺伝子座に、通常多コピーで挿入されることによって、内在性遺伝子の機能を壊す可能性にもなる。なお、APP遺伝子導入マウスは、よく原因不明で死ぬ。
【0003】
AD検討のために120個を超えたマウスモデルが作成されたとしても、ヒトADの患者によく見られた神経病理表現型を全部確実に再現することができるものが多くはない(もしあるなら)。より重要なことは、最近かなり多くの候補的なAD治療法がADマウスモデルにおいて有効であることが示されるが、臨床試験に失敗した。これらの問題の全てがマウスADモデルの固有制限によるものでありうる。
【0004】
数十年以来、生理、遺伝子や形態についてヒトに近いその他の動物モデル、例えばラットモデルまたは非人類霊長類動物(non-human primate、NHP)モデルの開発が試しにされている。しかしながら、NHP中で遺伝子編集を実行する適切な技術の不足、およびNHPの繁殖や維持の困難なので、理想的なNHPモデルの開発が通常、極めて困難である。
【0005】
ラットに対して若干の試しを行った。しかしながら、ラットは、マウスよりも、単一細胞胚の原核可視性が低く、血漿および原核膜が柔軟で、それによって、原核のトランスジーン注入がより困難になってしまう。注入後、胚の低生存率により、ラットの遺伝子導入について要求が高く、手間になってしまう。なお、ラットゲノム操作ツールの入手も容易ではない。生存しているラット胚性幹細胞を取得し難く、胚性幹細胞に基づく標的指向技術が最近まで適用されるようになる。現在、周知のラットADモデルは、神経炎プラーク、神経原線維変化またはニューロン脱落を示さないため、ADの正確なモデル系を代表することができないものが多い。対応マウスADモデルと完全に同じの構造を持つごくわずかのラットADモデルについて、ラットから観察された表現型が弱くて、攻撃性が低くなってしまう。
従って、新規な臨床関連性があり、ヒトAD患者表現型をより確実に再現する動物モデルの開発が望まれている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、アルツハイマー病(AD)の新規な動物モデルおよびその使用を提供する。具体的に、本発明は、内在性アミロイド前駆体タンパク質(APP)遺伝子の少なくとも一部が異種核酸配列(少なくとも一部改変されたAPPタンパク質をコードする)に置換されるアルツハイマー病ラットモデルを提供する。本発明に記載のラットモデルにおいて、完全長APPだけではなく、その他のAPP断片(例えばCTF-α、CTF- βおよびAICD)の発現が共に生理レベル以上(例えば、対応野生型ラットに比べて、過剰に発現していない)である。なお、既存のラットモデルは、3ヵ月齢、2ヵ月齢、またはより早期に(例えば改変されたAPP発現ヘテロ接合体ラット)、もしくは、ひいては1ヵ月齢またはより早期の時間に(例えば改変されたAPP発現ホモ接合体ラット)Aβオリゴマーを発現した。場合によって、本発明のラットモデルは、アミロイド斑が4ヵ月齢またはより早期の時間(例えば改変されたAPP発現ヘテロ接合体ラット)、もしくは、ひいては1ヵ月齢またはより早期の時間 (例えば改変されたAPP発現ホモ接合体ラット)に現れることを示し、アミロイド斑の形態および/または構造が月齢によって変化する。本ラットモデルにおいて、小脳内に実質的なAβ蓄積を観察しなずに、これは、ヒトAD患者に観察した様子と合っている。
【0007】
なお、本発明のラットモデル(例えば、改変されたAPP発現ヘテロ接合体またはホモ接合体ラット)には、 1)tauタンパク質が、対応野生型ラットよりも、tauタンパク質のThr231および/またはSer202タンパク質のリン酸化レベルが上昇するような(例えば、ラット脳内)過剰リン酸化によって示され、2)抗MC1抗体染色がtauタンパク質の凝集(例えばtauオリゴマー)、オリゴマーとチューブリン/微小管の共局在(例えば抗MAP2と抗MC1の共染色)を示すようなtauタンパク質構造変更によって示され、3)ラット(例えば、ラット脳内)に、例えば、神経細胞アポトーシス、Bax、Bcl-2、Cl-caspase3および/またはPro-caspase3レベルが対応野生型ラットよりも上昇するようなニューロン脱落を示し、 4)例えば、対応野生型ラットよりも, 上記のラット(例えば、ラット脳内)におけるRIPK1および/またはpMLKLレベルの増加が表されることで、壊死した神経細胞を示し得、しかし、前述ラットにおけるRIPK3レベルが、対応野生型ラットに相当するようなニューロン脱落、例えば壊死(例えば、ネクロトーシス)を示し、5)前述ラット(例えばラット脳内)にネクロソームを形成し、6)RIPK1とRIPK3は、対応野生型ラットよりも、上記のラット(例えばラット脳内)における共局在が増加し、 7)RIPK1とMLKLは、対応野生型ラットよりも、上記のラット(例えばラット脳内)における共局在が増加し、 8)MLKLは、対応野生型ラットよりも、上記のラット(例えばラット脳内)における凝集が増加し、 9)アミロイド斑と関連し得る小膠細胞症および/または星状細胞増加症のような神経膠症(例えばラット脳内)を示し、 10)対応野生型ラットよりも、上記のラット(例えばラット脳内)におけるRIPK1とミクログリア(例えば抗Iba1染色の示すような)共局在が増加し、 11)対応野生型ラットよりも、上記のラット(例えばラット脳内)におけるRIPK1、ミクログリア(例えば抗iba1染色の示すような)とアミロイド斑の共局在が増加し、 12)対応野生型ラットよりも、上記のラット(例えばラット脳内)におけるRIPK3とミクログリア(例えばIba1染色の示すような)共局在が増加し、 13)対応野生型ラットよりも、上記のラット(例えばラット脳内)におけるRIPK3、ミクログリア(例えばIba1染色の示すような)とアミロイド斑の共局在が増加し、14)シナプス変性(例えばラット脳内)が、シナプス後肥厚部の腫脹および/またはキャビティによって示され、15)対応野生型ラットよりも、上記のラット(例えばラット脳内)の神経細胞が減少し(例えばNeu-N陽性ニューロンの数が減少する)、16)脳容積の縮小、脳室腔の表現および/または拡大、および/または海馬の損傷のような前述ラットの脳形態および/または脳重量変化を示し、 17)上記のラットが、認知障害として現れ、オープンフィールド試験、モリス迷路試験および/またはT字型迷路作業記憶試験に検出されることができる、の1つまたは複数の特性があり得る。
【0008】
本発明に係る新規なADモデルは、新規なAD治療/予防薬を認識する重要なツールになる。なお、本発明に係る新規なADモデルは、AD診断のための新規なバイオマーカーの認識および/またはADの重症度または進行の評価の重要なツールになる。
【0009】
そのため、1つの局面において、本発明は、SEQ ID NO:1で表される野生型ラットAPPよりも、K670、M671、I716およびE693の残基にアミノ酸置換を含有する改変されたAPPをコードするキメラApp遺伝子を含む、ラットまたはその生体部分を提供する。
【0010】
ある実施形態において、改変されたAPPは、さらに、G676R、F681YおよびR684Hのアミノ酸置換より構成される。
【0011】
ある実施形態において、改変されたAPPは、Swedish二重突然変異を含有する。例えば、Swedish二重突然変異がK670N置換とM671L置換を含有可能である。ある実施形態において、改変されたAPPは、Beyreuther/Iberian突然変異を含有する。例えば、Beyreuther/Iberian突然変異は、I716F置換を含有可能である。ある実施形態において、改変されたAPPは、Arctic突然変異を含有する。例えば、北極型突然変異は、E693G置換を含有可能である。
【0012】
ある実施形態において、キメラApp遺伝子について、ラットまたはその生体部分がホモ接合もしくはヘテロ接合になっている。
【0013】
ある実施形態において、ラットまたはその生体部分における完全長APPの発現レベルは、対応野生型ラットの発現レベルと有意差がない。
【0014】
ある実施形態において、ラットまたはその生体部分におけるAPP断片の発現レベルは、対応野生型ラットの発現レベルと有意差がない。例えば、APP断片は、sAPP、CTF-α、 CTF- βおよび/またはAICDを含有可能である。
【0015】
ある実施形態において、本発明のラットは(例えば、キメラApp遺伝子がヘテロ接合になった場合に)、3ヵ月齢またはより早期にAβオリゴマーを示す。
【0016】
ある実施形態において、本発明のラットは(例えば、キメラApp遺伝子がホモ接合になった場合に)、2ヵ月齢またはより早期にAβオリゴマーを示す。
【0017】
ある実施形態において、本発明のラットは(例えば、キメラApp遺伝子がヘテロ接合になった場合に)、4ヵ月齢またはより早期にアミロイド斑を示す。
【0018】
ある実施形態において、本発明のラットは(例えば、キメラApp遺伝子がホモ接合になった場合に)、2ヵ月齢またはより早期にアミロイド斑を示す。
【0019】
ある実施形態において、本発明のラットは、小脳内のAβが多量蓄積していない。
【0020】
ある実施形態において、本発明に基づき、ラットまたはその生体部分において、tauタンパク質の過剰リン酸化が検出可能である。例えば、tauタンパク質の過剰リン酸化は、対応野生型ラットよりも、tauタンパク質のThr231および/またはSer202のリン酸化レベルが増加する(例えば、ラット脳内)ことによって示され得る。
【0021】
ある実施形態において、前述ラットまたはその生体部分において、tauタンパク質のオリゴマー化および/または凝集が検出可能である。ある実施形態において、抗MC1抗体によって、上記のtauタンパク質のオリゴマー化および/または凝集が検出可能である。
【0022】
ある実施形態において、本発明に基づき、ラットまたはその生体部分において、ニューロン脱落が検出可能である。例えば、該ラットまたはその生体部分において、Neu-N陽性ニューロンの数が、対応野生型ラットよりも減少している。例えば、このようなニューロン脱落は、神経細胞のアポトーシスおよび/または神経細胞の壊死(例えば、ネクロトーシス)を含む。ある実施形態において、ラット(例えばラット脳内)またはその生体部分は、対応野生型ラットよりも、アポトーシスが検出可能な一部の指標、例えばBax、Bcl-2、Cl-caspase3および/またはPro-caspase3のレベルが上昇する。ある実施形態において、壊死(例えばネクロトーシス)が、対応野生型ラットよりも、ラット(例えば、ラット脳内)またはその生体部分におけるRIPK1および/またはpMLKLのレベルの増加によって検出される。ある実施形態において、ラットまたはその生体部分におけるRIPK3レベルが、対応野生型ラットにおけるRIPK3レベルに相当する。ある実施形態において、前述ラットまたはその生体部分中でのネクロソームが検出可能である。
【0023】
ある実施形態において、本発明に基づき、ラットまたはその生体部分中での神経膠症が検出可能である。神経膠症は、小膠細胞症および/または星状細胞増加症を含んで良い。場合によって、小膠細胞症および/または星状細胞増加症が、アミロイド斑と関連付け得る。
【0024】
ある実施形態において、本発明に基づき、ラットまたはその活性部分中でのシナプス変性が検出可能である。例えば、シナプス変性が、シナプス後肥厚部の腫脹および/またはキャビティにより現れることができる。
【0025】
ある実施形態において、対応野生型ラットよりも、前述ラットまたはその活性部分中での脳形態および/または体重変化が検出可能である。ある実施形態において、前述脳形態および/または重量変化には、脳容積縮小、脳室空洞発生および/または脳室拡大、および/または海馬損傷を含む。
【0026】
ある実施形態において、対応野生型ラットよりも、前述ラット中での脳認知障害が検出可能である。ある実施形態において、前述認知障害は、オープンフィールド試験、モリス迷路試験および/またはT字型迷路作業記憶試験に検出される。
【0027】
ある実施形態において、前述ラットは、ノックインラットまたはノックインラット由来である。これらのラットにおいて、内在性App遺伝子の少なくとも一部は、少なくとも一部改変されたAPPをコードする外来性核酸配列に置換される可能性がある。少なくとも一部内在性App遺伝子は、少なくとも一部のエクソン16および一部のエクソン17を含有可能である。前述異種核酸配列は、突然変異したエクソン16および突然変異したエクソン17を含む。
ある実施形態において、改変されたAPPは、SEQ ID NO: 2で表されるアミノ酸配列を有する。
【0028】
一方、本発明は、本発明に係るラットの子孫を提供する。該子孫は、本発明のラットを、本発明に定義されて改変されたAPPをコードするAppキメラ遺伝子を含有または非含有可能な二匹目のラットと交雑することによって得られる。ある実施形態において、子孫は、本発明に定義されて改変されたAPPをコードするAppキメラ遺伝子を含む。
【0029】
一方、本発明は、ラットまたはその生体部分由来、あるいはその子孫由来細胞株または初代細胞培養を提供する。
【0030】
一方、本発明は、ラットまたはその生体部分由来の組織、あるいは本発明に基づくその子孫由来組織を提供する。該組織は、ラットまたはその子孫の体液を含んでよい。例えば、体液は、血液、血漿(例えば、血漿に含まれるエクソソーム)、血清、尿、汗液、涙液、唾液、精液および脳脊髄液の群から選ばれる。
【0031】
ある実施形態において、該組織は、前述ラットまたは前述子孫由来大脳またはその生体部分を含む。例えば、大脳の一部は、嗅球、扁桃核、大脳基底核、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄および小脳からなる大脳の一部より構成されうる。
ある実施形態において、該組織は、前述ラットまたは前述子孫の嗅粘膜より構成される。
【0032】
ある実施形態において、前述組織は、中枢神経系の一部(例えば脊髄またはその一部)、末梢神経系の一部、皮膚組織、筋肉組織および/または前述ラットまたはその子孫由来内臓器官を含む。
【0033】
一方、本発明は、本発明に基づくラットまたはその生体部分由来、もしくはその子孫由来細胞を提供する。
【0034】
ある実施形態において、前述細胞は、初代ニューロン、ミクログリア、アストロサイト、希突起細胞、マクロファージ、血管周囲類上皮細胞、B細胞、T細胞、体性幹細胞、NK細胞、全能性幹細胞、単能性幹細胞、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞および配偶子の一連タイプの異なる細胞を含む。配偶子は、精子および/または卵母細胞を含んでよい。
【0035】
ある実施形態において、前述細胞は、完全のラットに発育することができない。例えば、該細胞は、全能性幹細胞または胚性幹細胞ではないかもしれない。
【0036】
ある実施形態において、本発明に基づき、前述ラットまたはその生体部分、子孫、細胞株または初代細胞培養、組織、あるいは細胞は、アルツハイマー病の治療診断、予防、監視および/または予後に有用な物質、機器、組成物および/またはバイオマーカーをスクリーニングするために使用される。
【0037】
一方、本発明は、前述候補物質、装置および/または組成物を、本発明に記載のラットまたはその生体部分、子孫、細胞株あるいは細胞培養、前述組織、および/または前述細胞に適用すると共に、前述候補物質、装置および/または組成物による1)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫、前述細胞株または初代細胞培養、前述組織および/または前述細胞におけるAβの発現および/または蓄積、2)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫、前述細胞株または初代細胞培養、前述組織および/または前述細胞におけるAPP断片(例えば、sAPP、CTF-βおよび/またはAICD)の発現および/または蓄積、3)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫、前述細胞株または初代細胞培養、前述組織および/または前述細胞におけるTauタンパク質のリン酸化、4)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫、前述細胞株または初代細胞培養、前述組織および/または前述細胞におけるTauタンパク質のオリゴマー化および/または凝集、5)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫、前述細胞株または初代細胞培養、前述組織および/または前述細胞における脳形態および/または脳重量、6)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫、前述細胞株または初代細胞培養、前述組織および/または前述細胞における脳神経原線維変化の形成、7)前述ラットまたは前述子孫の学習機能、記憶機能、認知機能、感覚機能、運動機能、情動機能および/またはシナプス機能、8)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫および/または前述組織の脳損傷、9)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫、前述細胞株または初代細胞培養、前述組織および/または前述細胞に存在するニューロン脱落、ネクロソーム形成、ニューロン死、ニューロンアポトーシス、ニューロン壊死、ニューロンネクロトーシス、Neu-N陽性ニューロン数および/または神経変性、10)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫、前述細胞株または初代細胞培養、前述組織および/または前述細胞における神経膠症、ミクログリア活性化、アストロサイト活性化および/または炎症反応、11)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫、前述細胞株または初代細胞培養、前述組織および/または前述細胞における酸化ストレスおよび/またはミトコンドリア機能障害、12)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫、前述細胞株または初代細胞培養、前述組織および/または前述細胞の血管機能障害、13)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫、前述細胞株または初代細胞培養、前述組織および/または前述細胞におけるミスフォールドしたタンパク質分解および/またはオートファジーの失効、および14)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫および/または前述組織における脳グルコースおよび/または脂質代謝の1種類または複数種類への影響を測定することが含まれる、予防および/またはアルツハイマー病の予後のための物質、装置および/または治療に有用な組成物をスクリーニングするための方法を提供する。
【0038】
スクリーニング方法は、インビトロ方法、エクスビボ方法またはインビボ方法であって良い。
【0039】
ある実施形態において、Aβ蓄積は、Aβのオリゴマー化および/またはアミロイド斑の形成で構成される。
【0040】
ある実施形態において、シナプス機能は、シナプス伝達、シナプス可塑性、シナプスタンパク質の形成および/または機能、および/またはシナプス形態を含む。
【0041】
ある実施形態において、炎症反応は、先天性免疫細胞による反応を含む。先天性免疫細胞は、T細胞、B細胞、NK細胞、マクロファージおよび/または樹状細胞を含有可能である。
ある実施形態において、血管機能障害は、アミロイド血管症および/または血液脳関門(blood-brain barrier、BBB)破壊を含む。
【0042】
一方、本発明は、本発明に記載のラットまたは生体部分、子孫、細胞株または初代細胞培養、組織、および/または細胞を活用して、アルツハイマー病の治療、診断、予防、監視および/または予後のための物質、装置、組成物および/またはバイオマーカーをスクリーニングするためのシステムを構築する使用を提供する。
【0043】
本発明において、該装置は、医療装置、例えばアルツハイマー病の治療、診断、予防、監視および/または予後に有効と思われる医療装置を含んでよい。
【0044】
本発明において、前述組成物は、1種類または複数種類の生物体由来の混合物を含んでよい。生物体は、植物、動物および/または微生物であって良い。例えば、前述組成物は、組織ホモジネートおよび/または血液サンプルを含有可能である。ある実施形態において、前述組成物は、1種類または複数種類の植物における抽出物を含有する。例えば、該成分は、1種類の候補漢方薬を含有可能である。
【0045】
別の方面、本発明は、アルツハイマー病の診断および/または監視に有用のバイオマーカーをスクリーニングする方法を提供する。前述方法は、AD関連インジケータの検出前と検出後に、前述検出の前後における存在および/またはレベル変化する物質を識別するように、本発明のラットまたはその生体部分もしくは子孫から得られるサンプルにおける何らかの物質の存在および/またはレベルをを測定することを含有可能である。
【0046】
一方、本発明は、本発明に基づき、ラットまたはその生体部分を産生する方法を提供する。前述方法は、異種核酸配列をラットの内在性App遺伝子座にノックインすることを含んでよい。ノックインは、内在性App遺伝子の少なくとも一部を少なくとも一部改変されたAPPをコードする異種核酸配列に置換することができる。内在性App遺伝子は、少なくとも一部が、内在性App遺伝子のエクソン16の少なくとも一部およびエクソン17の少なくとも一部を含む。
【0047】
ある実施形態において、前述異種核酸配列は、野生型ラットApp遺伝子の突然変異したエクソン16および突然変異したエクソン17を含む。突然変異したエクソン16および突然変異したエクソン17は、それがコードするポリペプチド(例えばそれらがコードするタンパク質産物)に、K670、M671、I716およびE693の残基にアミノ酸置換を含有可能である複数のアミノ酸置換を導入している可能性がある。例えば、前述複数のアミノ酸置換は、K670のアミノ酸置換、M671のアミノ酸置換、I716のアミノ酸置換およびE693のアミノ酸置換を有してよい。前述複数種類のアミノ酸置換は、さらに、G676R、F681YおよびR684Hのアミノ酸置換を有してよい。ある実施形態において、複数のアミノ酸置換は、置換K670N、M671L、I716Fおよび/またはE693Gを有する。
【0048】
いくつかの実施形態において、前述方法におけるノックインは、異種核酸配列を有するドナー核酸分子がある場合に、ラットの幹細胞または接合体と接触するゲノムが、1)CRISPR関連タンパク質(Cas)、および2)i)内在性App遺伝子の16エクソン上流の一部と相補的な部分、 ii)内在性App遺伝子の17エクソン下流の一部と相補的な部分、 iii)Casタンパク質の結合部位を含有する1個または複数のリボ核酸(RNA)配列を含有することを含む。
【0049】
ある実施形態において、前述方法におけるノックインは、さらに、1つまたは複数のRNA配列が内在性App遺伝子の16エクソン上流部分および内在性App遺伝子の17エクソン下流部分と交雑する条件下で、細胞あるいは受精卵を維持すると共に、1つまたは複数のRNA配列が交雑した後、Casタンパク質が内在性App遺伝子核酸配列を切断することを含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、前述方法におけるCasタンパク質は、Cas9である。
【0051】
ある実施形態において、前述方法における幹細胞は、胚性幹細胞、体性幹細胞、全能性幹細胞、単能性幹細胞および誘導多能性幹細胞の群から選ばれる。
【0052】
ある実施形態において、前述方法におけるCasタンパク質の結合部位は、tracrRNA配列を有する。
【0053】
ある実施形態において、前述方法は、タンパク質、該Casタンパク質をコードする伝令RNA(mRNA)または該Casタンパク質をコードするDNAの形態で、該Casタンパク質をラットの細胞あるいは受精卵に導入する。
【0054】
ある実施形態において、前述方法は、1つあるいは複数のRNA分子または1つあるいは複数のRNA配列をコードするDNA分子の形態で、1つまたは複数のRNA配列を細胞あるいは受精卵に導入する。
【0055】
ある実施形態において、前述方法における内在性App遺伝子のエクソン16上流の一部と相補的な部分、または内在性App遺伝子のエクソン17下流の一部と相補的な部分は、SEQ ID NO: 3-12で表されるいずれかの配列を有する核酸分子によりコードされる。
【0056】
ある実施形態において、前述方法における内在性App遺伝子のエクソン16上流の一部と相補的な部分は、SEQ ID NO: 3で表される配列を有する核酸分子によりコードされる。
【0057】
ある実施形態において、前述方法における内在性App遺伝子のエクソン17下流の一部と相補的な部分は、SEQ ID NO: 4で表される配列を有する核酸分子によりコードされる。
【0058】
本発明は、その他の点やメリットが、以下、説明的実施形態の単なる詳細な表現や記述によって、当該技術分野における当業者による把握が容易である。以下のように実施される通りに、本発明は、若干の細かい箇所をいろんな明確な点で修正するように、その他の異なる実施形態を達成することができるために、本発明からはずれることがない。そのため、図面や説明を、制限的ものではなく説明的ものと考えるべきである。
【0059】
参照文献による合体
【0060】
本明細書に関するすべての出版物、特許および特許出願は、ここで参照文献によって、単一の出版物、特許または特許出願が具体的かつ単一的に参照文献によって提出して包含されるように、その中に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
本発明における新規な特徴は、添付の請求項に特殊性をもって記述されている。以下を参照して、本発明の原理の説明的実施態様の詳細な記載や図面(ここで「図」ともいう)を用いることにより、本発明の特徴や利点をより良く理解することができる。ここで、
【
図1】
図1は、本発明に係る改変されたAPPに含まれる突然変異体を示す。
【
図2】
図2は、潜在的なCRISPR RNAの標的部位のシーケンス結果である。
【
図3】
図3A~3Bは、各種sgRNAsの活性を説明する。
【
図4】
図4は、sgRNAsを連結するシーケンス結果である。
【
図5】
図5は、ターゲティングベクターの酵素消化結果である。
【
図6】
図6A~6Bは、F0ラット遺伝子型同定結果である。
【
図8】
図8は、Southern BlotによるF1ラット遺伝子型同定結果である。
【
図9】
図9は、F1ラット遺伝子型同定結果である。
【
図11】
図11A~11Bは、ラットの異なる箇所におけるAPPの発現検出を説明する。
【
図12】
図12A~12Bは、ラットの異なる箇所におけるAPPの完全長発現検出を示す。
【
図14】
図14は、ラット小脳におけるアミロイド斑の欠乏を示す。
【
図15】
図15は、本発明の3ヵ月齢の野生型ラットと3ヵ月齢のラットのAβオリゴマーの形成を示す。
【
図16B】
図16Bは、本発明における6ヵ月齢のラットにおけるアミロイド斑の形成を示す。
【
図16C】
図16Cは、本発明の10ヵ月齢のラットにおけるアミロイド斑の形成を示す。
【
図16D】
図16Dは、本発明の14ヵ月齢のラットにおけるアミロイド斑の形成を示す。
【
図16E】
図16Eは、本発明の22ヵ月齢のラットにおけるアミロイド斑の形成を示す。
【
図17】
図17A~17Cは、野生型ラットと本発明のラットのtauタンパク質の過剰リン酸化を示す。
【
図18-1】
図18A~18Dは、野生型ラットと本発明のラットの脳内アポトーシスを示す。
【
図18-2】
図18A~18Dは、野生型ラットと本発明のラットの脳内アポトーシスを示す。
【
図19-1】
図19A~19Eは、野生型ラットと本発明のラットの脳内ネクロトーシスを示す。
【
図19-2】
図19A~19Eは、野生型ラットと本発明のラットの脳内ネクロトーシスを示す。
【
図20-1】
図20A~20Dは、野生型ラットと本発明のラットの小膠細胞症および星状細胞増加症を示す。
【
図20-2】
図20A~20Dは、野生型ラットと本発明のラットの小膠細胞症および星状細胞増加症を示す。
【
図21】
図21は、本発明のラット大脳における小膠細胞症および星状細胞増加症とアミロイド斑の関係を示す。
【
図22】
図22は、本発明のラット大脳における小膠細胞症および星状細胞増加症とアミロイド斑の関係を示す。
【
図23】
図23は、本発明のラット大脳のシナプス変性を示す。
【
図24】
図24は、本発明のAPPターゲティングベクターを示す模式図である。
【
図25】
図25は、1ヵ月齢の野生型ラットと本発明の1ヵ月齢のラット、および2ヵ月齢の野生型ラットと本発明の2ヵ月齢のラットのAβオリゴマーの形成様子を示す。
【
図26A】
図26Aは、1ヵ月齢の野生型ラットと本発明の1ヵ月齢のラットのAβオリゴマーレベルを示す。
【
図26B】
図26Bは、2ヵ月齢の野生型ラットと本発明の2ヵ月齢のラットのAβオリゴマーレベルを示す。
【
図27A】
図27Aは、本発明の1ヵ月齢のラットにおけるアミロイド斑の形成を示す。
【
図27B】
図27Bは、本発明の2ヵ月齢のラットにおけるアミロイド斑の形成を示す。
【
図27C】
図27Cは、本発明の3ヵ月齢のラットにおけるアミロイド斑の形成を示す。
【
図27D】
図27Dは、本発明の6ヵ月齢のラットにおけるアミロイド斑の形成を示す。
【
図27E】
図27Eは、本発明の12ヵ月齢のラットにおけるアミロイド斑の形成を示す。
【
図27F】
図27Fは、本発明の22ヵ月齢のラットにおけるアミロイド斑の形成を示す。
【
図28】
図28は、本発明のラットの異なる大脳領域におけるアミロイド斑のドメインを示す。
【
図29A】
図29Aは、本発明の1ヵ月齢のラットにおける単一のアミロイド斑の超高解像度構造を示す。
【
図29B】
図29Bは、本発明の2ヵ月齢のラットにおける単一のアミロイド斑の超高解像度構造を示す。
【
図29C】
図29Cは、本発明の3ヵ月齢のラットにおける単一のアミロイド斑の超高解像度構造を示す。
【
図29D】
図29Dは、本発明の6ヵ月齢のラットにおける単一のアミロイド斑の超高解像度構造を示す。
【
図29E】
図29Eは、本発明の12ヵ月齢のラットにおける単一のアミロイド斑の超高解像度構造を示す。
【
図29F】
図29Fは、本発明の22ヵ月齢のラットにおける単一のアミロイド斑の超高解像度構造を示す。
【
図30】
図30は、本発明の12ヵ月齢のラットおよび36ヵ月齢のラットにおけるアミロイド斑の形成様子を示す。
【
図31A】
図31Aは、本発明の1ヵ月齢のラットにおけるアミロイド斑の厚さを示す。
【
図31B】
図31Bは、本発明の2ヵ月齢のラットにおけるアミロイド斑の厚さを示す。
【
図31C】
図31Cは、本発明の3ヵ月齢のラットにおけるアミロイド斑の厚さを示す。
【
図31D】
図31Dは、本発明の6ヵ月齢のラットにおけるアミロイド斑の厚さを示す。
【
図31E】
図31Eは、本発明の12ヵ月齢のラットにおけるアミロイド斑の厚さを示す。
【
図31F】
図31Fは、本発明の22ヵ月齢のラットにおけるアミロイド斑の厚さを示す。
【
図32】
図32は、本発明のラットにおけるアミロイド斑の平均生物体厚さを示す。
【
図33-1】
図33A~33Cは、12ヵ月齢3Tgマウス、22ヵ月齢の野生型ラットと本発明の22ヵ月齢のラットのtauタンパク質の凝集様子を示す。
【
図33-2】
図33A~33Cは、12ヵ月齢3Tgマウス、22ヵ月齢の野生型ラットと本発明の22ヵ月齢のラットのtauタンパク質の凝集様子を示す。
【
図33-3】
図33A~33Cは、12ヵ月齢3Tgマウス、22ヵ月齢の野生型ラットと本発明の22ヵ月齢のラットのtauタンパク質の凝集様子を示す。
【
図34】
図34は、6ヵ月齢の野生型ラットと本発明の6ヵ月齢のラット、および12ヵ月齢の野生型ラットと本発明の12ヵ月齢のラットにおけるRIPK1発現様子である。
【
図35A】
図35Aは、6ヵ月齢の野生型ラットと本発明の6ヵ月齢のラットにおけるRIPK1発現を示す。
【
図35B】
図35Bは、12ヵ月齢の野生型ラットと本発明の12ヵ月齢のラットにおけるRIPK1発現を示す。
【
図36】
図36は、6ヵ月齢の野生型ラットと本発明の6ヵ月齢のラット、および12ヵ月齢の野生型ラットと本発明の12ヵ月齢のラットにおけるRIPK3発現様子である。
【
図37A】
図37Aは、6ヵ月齢の野生型ラットと本発明の6ヵ月齢のラットにおけるRIPK3発現様子を示す。
【
図37B】
図37Bは、12ヵ月齢の野生型ラットと本発明の12ヵ月齢のラットにおけるRIPK3発現を示す。
【
図38】
図38A~38Bは、RIPK1とRIPK3の発現と共局在によって、12ヵ月齢の野生型ラットと本発明の12ヵ月齢のラットにおけるネクロソームの形成を開示することを示す。
【
図39】
図39は、12ヵ月齢の野生型ラットと本発明の12ヵ月齢のラットにおけるRIPK1とRIPK3の共局在を示す。
【
図40】
図40A~40Bは、RIPK1とMLKLの発現と共局在によって、12ヵ月齢の野生型ラットと本発明の12ヵ月齢のラットにおけるネクロソームの形成を開示することを示す。
【
図41】
図41は、12ヵ月齢の野生型ラットと本発明の12ヵ月齢のラットにおけるRIPK1とMLKLの共局在を示す。
【
図42】
図42A~42Bは、RIPK3とMLKLの発現および共局在によって、12ヵ月齢の野生型ラットと本発明の12ヵ月齢のラットにおけるネクロソームの形成を開示することを示す。
【
図43】
図43は、12ヵ月齢の野生型ラットと本発明の12ヵ月齢のラット大脳におけるRIPK3とMLKLの共局在を示す。
【
図44-1】
図44A~44Bは、6ヵ月齢の野生型ラットと本発明の6ヵ月齢のラット大脳におけるRIPK1とIba1の共局在を示す。
【
図44-2】
図44A~44Bは、6ヵ月齢の野生型ラットと本発明の6ヵ月齢のラット大脳におけるRIPK1とIba1の共局在を示す。
【
図45】
図45は、6ヵ月齢の野生型ラットと本発明の6ヵ月齢のラット大脳におけるRIPK1とIba1の共局在を示す。
【
図46-1】
図46A~46Bは、12ヵ月齢の野生型ラットと本発明の12ヵ月齢のラット大脳におけるRIPK1とIba1の共局在を示す。
【
図46-2】
図46A~46Bは、12ヵ月齢の野生型ラットと本発明の12ヵ月齢のラット大脳におけるRIPK1とIba1の共局在を示す。
【
図47】
図47は、12ヵ月齢の野生型ラットと本発明の12ヵ月齢のラット大脳におけるRIPK1とIba1の共局在を示す。
【
図48-1】
図48A~48Bは、6ヵ月齢の野生型ラットと本発明の6ヵ月齢のラット大脳におけるRIPK3とIba1の共局在を示す。
【
図48-2】
図48A~48Bは、6ヵ月齢の野生型ラットと本発明の6ヵ月齢のラット大脳におけるRIPK3とIba1の共局在を示す。
【
図49】
図49は、6ヵ月齢の野生型ラットと本発明の6ヵ月齢のラット大脳におけるRIPK3とIba1の共局在を示す。
【
図50-1】
図50A~50Bは、12ヵ月齢の野生型ラットと本発明の12ヵ月齢のラット大脳におけるRIPK3とIba1の共局在を示す。
【
図50-2】
図50A~50Bは、12ヵ月齢の野生型ラットと本発明の12ヵ月齢のラット大脳におけるRIPK3とIba1の共局在を示す。
【
図51】
図51は、12ヵ月齢の野生型ラットと本発明の12ヵ月齢のラット大脳におけるRIPK3とIba1の共局在を示す。
【
図52-1】
図52A~52Bは、9ヵ月齢の野生型ラットと本発明の9ヵ月齢のラット大脳シナプス変性を示す。
【
図52-2】
図52A~52Bは、9ヵ月齢の野生型ラットと本発明の9ヵ月齢のラット大脳シナプス変性を示す。
【
図53】
図53は、6ヵ月齢の野生型ラットと本発明の6ヵ月齢のラット、12ヵ月齢の野生型ラットと本発明の12ヵ月齢のラット大脳の小膠細胞症および星状細胞増加症を示す。
【
図54-1】
図54A~54Bは、6ヵ月齢の野生型ラットと本発明の6ヵ月齢のラットの小膠細胞症および星状細胞増加症を示す。
【
図54-2】
図54A~54Bは、6ヵ月齢の野生型ラットと本発明の6ヵ月齢のラットの小膠細胞症および星状細胞増加症を示す。
【
図55】
図55A~55Bは、6ヵ月齢の野生型ラットと本発明の6ヵ月齢のラット、12ヵ月齢の野生型ラットと本発明の12ヵ月齢のラット大脳の小膠細胞症および星状細胞増加症を示す。
【
図56】
図56は、22ヵ月齢の野生型ラットと本発明の22ヵ月齢のラットの脳神経細胞脱落様子を示す。
【
図57】
図57A~57Bは、22ヵ月齢の野生型ラットと本発明の22ヵ月齢のラット大脳神経細胞の脱落を示す。
【
図58】
図58は、22ヵ月齢の野生型ラットと本発明の22ヵ月齢のラット大脳サイズ変化を示す。
【
図59】
図59は、6ヵ月齢の野生型ラットと本発明の6ヵ月齢のラットの脳構造および形態的変化を示す。
【
図60】
図60A~60Bは、6ヵ月齢の野生型ラットと本発明の6ヵ月齢のラット、22ヵ月齢の野生型ラットと本発明の22ヵ月齢のラット脳重量変化である。
【
図61】
図61A~61Cは、4ヵ月齢の野生型ラットと本発明の4ヵ月齢のラットのオープンフィールド試験結果である。
【
図62】
図62A~62Bは、4ヵ月齢の野生型ラットと本発明の4ヵ月齢のラット、6ヵ月齢の野生型ラットと本発明の6ヵ月齢のラットのロータロッド試験検出結果である。
【
図63】
図63A~63Bは、本試験における6ヵ月齢の野生型ラットと本発明の6ヵ月齢のラットのmorris水迷路の結果である。
【
図64】
図64A~64Bは、4ヵ月齢の野生型ラットと本発明の4ヵ月齢のラットのmorris水迷路の結果である。
【
図65】
図65A~65Bは、4ヵ月齢の野生型ラットと本発明の4ヵ月齢のラットのmorris水迷路の結果である。
【
図66】
図66A~66Bは、6ヵ月齢の野生型ラットと本発明の6ヵ月齢のラットのT-迷路作業記憶試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
ここで、本発明の様々な実施形態は、表現や記述を行ったが、当該技術分野における当業者にとって、これらの実施形態が単なる例として提供されるに過ぎないことが明らかである。当該技術分野における当業者は、本発明を逸脱することなく多様な変化、変更および置換をすることができる。本明細書に記載した本発明の実施形態の様々な置換態様は、本発明の実施に用いられることができると理解されるべきである。
【0063】
本明細書に記載のように、「生体部分」という用語は、通常、生物体(例えば、ネズミ)が前述した生物体の少なくとも一部の遺伝子情報(例えば、DNAまたはその一部)を安定して持つ一部を指す。例えば、本発明に定義されるように、本発明のラットの「生体部分」は、改変されたAPPをコードするキメラApp遺伝子を安定して持つことができる。生体部分は、器官、組織および/または細胞を有する場合がある。
【0064】
ここで用いられる「CRISPR」という用語は、通常、規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)を指す。CRISPR遺伝子座とその他のSSRsの違いは、短鎖規則的な間隔反復配列(SRSRs)という反復配列の構造にある。一般的に、反復配列は、基本的に一定の長さのユニークな介在配列によって規則的に間隔が空いたクラスターで現れる短鎖エレメントである。反復配列は、株間で高度に保存されているが、散在の反復配列の数およびスベーサー領域の配列は、株毎に異なることが一般的である。
【0065】
本明細書に記載のように、「sgRNA」、「ガイドRNA」、「シングルガイドRNA」および「合成ガイドRNA」という用語は、置換可能であり、通常、前述したガイド配列を有するポリヌクレオチド配列を指す。ガイド配列は、約20 bpであり、標的部位を指定するガイドRNAにある。
【0066】
本明細書に記載のように、「異種核酸配列」という用語は、通常、外来性由来および/または非内在的に存在する核酸配列を指す。例えば、異種核酸配列は、外来物に由来してよく、外来種に由来してよく、人工合成してよく、外来部位への位置合わせおよび/または実質的な改変をしてよい。
【0067】
本明細書に記載のように、「相同組換え」という用語は、通常、ヌクレオチド配列が2つの類似または同一のDNA分子(相同配列またはホモロジーアームという)の間で交換される遺伝子組換えを指す。
【0068】
本明細書に記載のように、「内在性App遺伝子」という用語は、通常、アミロイド前駆体タンパク質(APP)またはその断片をコードする内在性DNA断片(例えば、内在性ラットDNA断片)を指す。
【0069】
本明細書に記載のように、「CRISPR関連タンパク質9」または「Cas9」タンパク質という用語は、通常、何らかの細菌(例えば、化膿レンサ球菌およびその他の細菌)において見出されるCRISPR(規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列)II型適応免疫系に関連付けられるRNAガイドDNAエンドヌクレアーゼを指す。例えば、Cas9タンパク質は、化膿レンサ球菌において見出される野生型Cas9に限定されなく、その様々な変異体、例えば、WO2013/176772A1に記載の変異体も含む。ある実施形態において、Cas9タンパク質は、Esvelt等によるNature Methods、10(11):1116-1121、2013に記載したように、化膿レンサ球菌、髓膜炎菌、ストレブトコッカスサーモフィルスおよびトレボネーマデンティコラ由来のCas9配列を有している。
【0070】
本明細書に記載のように、「Cas9コード配列」という用語は、通常、宿主細胞/宿主動物における遺伝子コードに基づいて転写および/または翻訳されて、Cas9タンパク質を産生することができるポリヌクレオチド配列を指す。Cas9コード配列は、DNA(例えばプラスミド)またはRNA(例えばmRNA)であり得る。
【0071】
本明細書に記載のように、「Cas9リボタンパク質」という用語は、通常、Cas9タンパク質と関連gRNAで構成されるタンパク質/RNA複合体を指す。
【0072】
本明細書に記載のように、「CRISPR/Cas9系」という用語は、通常、生物体において部位特異的ゲノム標的化を行うツールを指す。例えば、ノンコーディングRNAでCas9ヌクレアーゼを導くことで、部位特異的DNA開裂を誘導する原核生物適応免疫応答系であるII型CRISPR/Cas系であり得る。このようなDNA損傷は、細胞DNA修復機構によって修復され、または非相同末端結合DNA修復経路(NHEJ、non-homologous end joining DNA repair pathway)または相同組換え修復(HDR、homology directed repair)経路で修復される。CRISPR/Cas9系は、哺乳動物の細胞ゲノム編集を媒介するとともに、遺伝子ノックアウト(挿入/欠失による)またはノックイン(HDRによる)を得るように、簡単なRNAプログラム可能な手法を作成するために用いられる。
【0073】
本明細書に記載のように、「ノッキングイン(knocking-in)」または「ノックイン(knock in)」という用語は、通常、遺伝子座においてDNA配列情報に対して置換を1対1で行い、または、内在性遺伝子座に見出されていない配列情報を挿入することに関わる遺伝子工学工程を指す。ノックインは、1つの遺伝子を1つの所定の部位に挿入することに関与可能であり、そのため、「標的化」による挿入になる可能性がある。
【0074】
本明細書に記載のように、「ベクター」という用語は、通常、別の細胞または宿主に人工的に持ち込んで、複製および/または発現されるベクターとしてのDNA分子を指す。
【0075】
本明細書に記載のように、「ターゲティングベクター」という用語は、通常、宿主ゲノムの挿入または取り込みおよび/または内在性DNA断片の置換のために標的配列を持つベクターを指す。
【0076】
本明細書に記載のように、「胚性幹細胞」または「ES細胞」という用語は、通常、正常の胚盤胞の腔に挿入/注入される前に、インビトロで長期間後に培養することができ、また、胚発生の正常のプログラムを再開して、生殖細胞を含む成体哺乳動物の様々な細胞型に分化するように誘発させることができる、胚盤胞(哺乳動物の初期着床前胚)の内部細胞塊(innercell mass、ICM)に由来する多能性幹細胞を指す。
【0077】
本明細書に記載のように、「受精卵」という用語は、通常、2つの配偶子(例えば、哺乳動物の卵子および精子)の間での受精によって形成される真核細胞を指す。
本明細書に記載のように、「接合性」という用語は、通常、生物体における形質に関する対立遺伝子の類似性の度合いを指す。
【0078】
本明細書に記載のように、「ホモ接合子」または「ホモ接合」という用語は、特定の遺伝子またはDNA(例えば、ノックインされる異種核酸配列)に関して使用され、2つの相同染色体が遺伝子/DNAの同じ対立遺伝子またはコピーを有する二倍体細胞または生物体を指す。
【0079】
本明細書に記載のように、「ヘテロ接合子」または「ヘテロ接合」という用語は、特定の遺伝子またはDNA(例えば、ノックインされた異種核酸配列)に関して使用され、2つの相同染色体が遺伝子またはDNAの異なる対立遺伝子/コピー/型を有する二倍体細胞または生物体を指す。
【0080】
本明細書に記載のように、「キメラApp遺伝子」という用語は、通常、アミロイド前駆体タンパク質をコードする少なくとも一部が内在性App遺伝子に由来しないDNA断片またはその断片を指す。例えば、キメラApp遺伝子は、一部の内在性App遺伝子が置換される異種核酸配列を有して良い。
【0081】
本明細書に記載のように、「改変されたAPP」という用語は、通常、少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失および/または置換を有するアミロイド前駆体タンパク質を指す。
【0082】
本明細書に記載のように、「Swedish二重突然変異」または「Swedish突然変異」という用語は、通常、Nat Genet 、1992.8、1(5):345-7に記載のように、APPのアミロイドβ-ペプチド(Aβ)領域の前に位置することによって、Aβの産生および分泌が増加する最初Swedishファミリーにおいて見出されるApp遺伝子の二重突然変異を指す。Swedish二重突然変異は、ヒトApp遺伝子のエクソン16にあり、現在既知のAPPのβ-セクレターゼ部位に隣接している唯一な突然変異である。Swedish突然変異は、リミん(K)670とメチオニン(M)671の2つのアミノ酸の置換に繋がる場合がある。Swedish二重突然変異は、総Aβレベルを増加可能と認められた。特に、Aβ40およびAβ42の産生や分泌を増加することができるが、Aβ40/Aβ42の比率が影響されないことが一般的である。ある実施形態において、Swedish二重突然変異は、アミノ酸置換K670NとM671Lを含む。
【0083】
本明細書に記載のように、「Beyreuther/Iberian突然変異」という用語は、通常、γ-セクレターゼによるAPPの切断に影響を与えるApp遺伝子における(例えば、残基I716における)突然変異を指し。具体的に、Beyreuther/Iberian突然変異は、ヒトApp遺伝子のエクソン17にあり、γ-セクレターゼ切断特異性に影響を与えうり、且つ、Aβ42/Aβ40の比率の急激な増加に繋がる。ある実施形態において、Beyreuther/Iberian突然変異は、アミノ酸置換I716Fを含む。
【0084】
本明細書に記載のように、「Arctic突然変異」は、通常、Aβ40原線維形成の傾向増加および加速に繋がるApp遺伝子における(例えば、残基E693における)突然変異を指し。Aβペプチドの22つのアミノ酸に影響を与えるため、「E22G」とも言われる。Arctic突然変異は、幾つかの病原性APP突然変異の一つであり、Aβ40のネブリライシン触媒によるタンパク質加水分解に対して抵抗性を生じることが判明した。Arctic突然変異は、ヒトApp遺伝子のエクソン17にある。ある実施形態において、Arctic突然変異は、アミノ酸置換E693Gを含む。
【0085】
本明細書に記載の「有意差がない」という用語は、通常、2つの値または2つの対象間の違いが実質的ではないことを指す。例えば、2つの値を比較する場合に、差分が10%ぐらいより小さく、例えば、約9%より小さく、約8%より小さく、約7%より小さく、約6%より小さく、約5.5%より小さく、約5%より小さく、約4.5%より小さく、約3.5%より小さく、約3.5%より小さく、約2.5%より小さく、約2%より小さく、約1.5%より小さく、約1%より小さく、ひいては、より小さくて、有意差がないとみなされる。
【0086】
本明細書に記載のように、「Aβオリゴマー」という用語は、通常、一般的に小さな凝集塊を形成する可溶性アミロイドβ(Aβ)ペプチド凝集体を指す。Aβオリゴマーは、Aβペプチド二量体、三量体またはその他の多量体であってよい。
【0087】
本明細書に記載のように、「Aβ斑」または「アミロイド斑」という用語は、通常、Aβペプチドのコピーが多く貼り付けられて線維または線維性沈着物(例えば、斑)を形成したAβペプチド(例えば、Aβ42および/またはAβ40)の線維凝集体を指す。
【0088】
本明細書に記載のように、「Aβペプチドの多量蓄積」という用語は、通常、Aβオリゴマーまたはアミロイド斑の形成が、汎用の検出手段またはツール、例えば、特定のAβ抗体染色によって検出してよいことを指す。
【0089】
本明細書に記載のように、「Aβ」または「アミロイドβ」という用語は、通常、アミロイド前駆体タンパク質(APP)の膜内タンパク質を加水分解して産生されるアミロイドβペプチドを指す。β-とγ-セクレターゼによる連続的なタンパク質加水分解反応は、Aβ40とAβ42を含む長さの異なるAβペプチドを産生する。その2つの超疎水性残基は、Aβ42の可溶性オリゴマーと不溶性沈着物への凝集の傾向を高め、また、Aβ40は、近年、脳脊髄液の質量分析(CSF)によって観察される短鎖ペプチドのレンジが大きくなっている。Aβは、二量体から緻密な神経炎斑におけるβプリーツシート線維までの複数種類の凝集形態がある。過剰のAβは、複数種類の病理学的過程を誘発し得る。Aβは、ニューロンおよびグリア細胞機能、シナプス生理、神経伝達および認知機能を損ない得る。ある証拠から、細胞間拡散、テンプレート化された種の形成および凝集したAβのニューロン以外のアミロイド斑への沈着は、ADの病理学的特徴であることを示した。
【0090】
本明細書に記載のように、「ヒト化Aβ」および「ヒトAβ」という用語は、置換可能に用いられ、通常、野生型ヒトAβペプチドとほとんど同じのアミノ酸配列を有するか、または有するように改変されたAβペプチドを指す。
【0091】
本明細書に記載のように、「過剰リン酸化の」または「過剰リン酸化」という用語は、1つまたは複数の付加部位において異常にリン酸化される状態を指す。例えば、タンパク質tauのリン酸化は、微小管会合の促進におけるその活性を負に制御することを判明し、異常に高リン酸化されるtauは、AD患者のPHFsの主な要素であると思われている。t正常の脳では、1モル毎に2~3モルのホスフェイトを有する。ヒトの脳における生検組織に対する検討によると、tauにおける少しのセリンとトレオニン残基は、通常、低い準化学量論レベルでリン酸化されることが分かる。AD脳から検屍して分離されたtauのリン酸化レベルは、正常なヒト脳よりも3~4倍高い。異なる部位のTauリン酸化は、その生物学的機能および病原性効果へ異なる影響を与える。高リン酸化tauと正常tauとの結合に対する検討によると、Ser199/Ser202/Thr205、Thr212、Thr231/Ser235、Ser262/Ser356およびSer422は、tauを、微小管結合タンパク質を正常な微小管から脱離させる阻害分子に転換する重要なリン酸化部位であることが分かる。
【0092】
本明細書に記載のように、「ニューロン脱落」という用語は、通常、有機体における神経細胞の数または機能の減少を指す。ニューロン脱落は、神経細胞死と現れうる。
【0093】
本明細書に記載のように、「tauタンパク質」という用語は、通常、微小管を安定化させる微小管関連タンパク質tau(microtubule-associated protein tau、MAPT)を指す。tauタンパク質は、中枢神経系のニューロンにおいて含有量が豊かであるが、その他の箇所でよくみられていなく、但し、中枢神経系のアストロサイトおよび希突起膠細胞でも極めて低レベルで発現している。tauタンパク質は、異なるアイソフォームとリン酸化という微小管の安定性を制御する2つの方法があり得る。例えば、ホモサピエンスtauアイソフォーム1のNCBIの登録IDは、NP_058519.3である。ADは、欠陥があり、微小管を正常に安定化させることができないtauタンパク質に関係する可能性がある。
【0094】
本明細書に記載のように、「Neu-N」という用語は、通常、ニューロンのバイオマーカーとして用いられることが一般的であるニューロン核抗原であるFox-3、Rbfox3またはヘキサヌクレオチド結合タンパク質-3を指す。ある実施形態において、ニューロンの圧倒的多数は、強いNeu-N陽性を示し、また、Neu-N免疫反応性は、組織培養と切片におけるニューロン認識および大脳領域におけるニューロン/グリア細胞の比の計測に広く用いられる。
【0095】
本明細書に記載のように、「ネクロソーム」という用語は、通常、ネクロトーシスまたは炎症性細胞死を指す。例えば、壊死は、細胞アポトーシスによる規則正しいプログラム細胞死ではなく、細胞損傷に起因した非プログラム細胞死に関係し得る。
【0096】
本明細書に記載の「形態変化」という用語は、通常、生物体の形態構造およびその所定の構造の特徴的変化を指す。例えば、形態変化は、外部形態(例えば、形状、構造、色、パターン、サイズ)および内部形態(例えば、内部部材の形状と構造)の変化を含む。
【0097】
本明細書に記載のように、「心室」という用語は、一般的に、心房から受けた血液を収集または排出して、体および肺の外周へ送る心臓の底にある1つの大きいチャンバを指す。
【0098】
本明細書に記載の「海馬(hippocampus)」という用語は、通常、大脳の側面における側頭葉に位置する大脳の主な構成要素を指す。アルツハイマー病では、海馬は、大脳における最初に損傷を受ける領域の1つであって、短期記憶喪失および見当識障害が初期症状の1つである。
【0099】
本明細書に記載のように、「AD」という用語は、通常、立ち遅れ、経時的にだんだん悪化する慢性神経変性疾患であるアルツハイマー病を指す。例えば、ADは、記憶、言語、知覚スキル、注意力、運動スキル、見当識、問題解決および機能実行という8つの知的ドメインが、最もよく障害される。これらのドメインは、米国精神医学会発行の《精神障害の診断と統計マニュアル》(DSM-IV-TR)に記載のように、NINCDS-ADRDAアルツハイマー診断基準に相当する。
【0100】
本明細書に記載のように、「認知障害」という用語は、通常、ADに罹患する患者の認知損害を指す。例えば、認知損害は、学習機能、記憶機能、認知機能、感覚機能、運動機能および/または情動機能の損害を含む。
【0101】
本明細書に記載のように、「アポトーシス」という用語は、通常、刺激物の存在または抑制剤や刺激物の除去によって活性化される核DNA断片化をマークとする細胞自己破壊の遺伝子指向性プロセスを指す。細胞アポトーシスは、細胞自殺、プログラム細胞死とも称する。Bcl-2ファミリータンパク質は、細胞アポトーシスの主な細胞内調節因子の1つである。Bcl-2ファミリーの細胞内タンパク質は、プロカスパーゼの活性化を制御することに寄与している。Bcl-2ファミリーは、酵素原の活性化と細胞死を促進するメンバーがいくつかある。例えば、アポトーシス促進剤Badは、ファミリーにおける死亡抑制メンバーと結合して不活性化させることで機能する一方、BaxやBakのようなその他のものは、ミトコンドリアからのシトクロムcの放出を刺激する。BaxやBakそのものも、Bcl-2ファミリーのその他のアポトーシス促進メンバー、例えばBidによって活性化される。Caspase-3は、Caspase-8およびCaspase-9と相互作用するCaspaseタンパク質を指す。これは、CASP3遺伝子によってコードされる。Caspasesによる連続的な活性化は、細胞アポトーシスの実行段階で重要な役割を果たす。Caspasesは、不活性酵素原として存在し、保存されたアスパラギン酸残基でのタンパク質加水分解プロセスによって、大きいのと小さいの2つのサブユニットを産生し、二量化によって活性酵素を形成する。Caspase-3は、アミロイドβ4A前駆体タンパク質(APPとも称する)の切断に関与する主なCaspaseであり、アルツハイマー病のニューロン死に関係する。Caspase3の前駆体(「Pro-caspase3」)およびその切断形態(「Cl-caspase3」)のレベル上昇は、通常、細胞アポトーシスの増加に関係する。
【0102】
本明細書に記載のように、「壊死」という用語は、通常、自己クラッキングによる生体組織内の細胞の早期死をもたらす細胞傷害の一形態を指す。シグナリング経路は、壊死またはネクロトーシスを実行するよう担当すると一般的に考えられている。ウイルス感染では、TNFαの産生によってその受容体TNFR1が刺激を受ける。TNFR関連デスタンパク質TRADDは、RIPK3を補充してネクロソームを形成するRIPK1(receptor-interactive protein kinases 1)へ信号を送信する。RipoptosomeによるMLKL(mixed lineage kinase domain-like)のリン酸化(「pMLKL」)は、MLKLオリゴマー化を駆動させるによって、MLKLを形質膜と細胞小器官に挿入して透過させる。MLKLの取り込みは、炎症表現型と損傷関連分子パターン(DAMPs)放出を引き起こし、免疫応答を誘発する。具体的に、ネクロトーシスは、RIPK1およびRIPK3によって誘発されるMLKLで実行される規則正しい壊死形態である。検討によると、死亡したヒトAD脳でネクロトーシスが活性化され、脳組織Braak ステージと正の相関を示し、脳重量および認知スコアと負の相関を示すことが分かる。なお、検討によると、RIPK1に制御される遺伝子と複数の別体のAD転写組は、著しいオーバラップを特徴とし、RIPK1活性がAD転写組変化を解釈できる1つの重要な部分であることを示すことも分ける。
【0103】
本明細書に記載のように、「神経膠症」という用語は、通常、中枢神経系(central nervous system、CNS)損傷領域グリア細胞の線維増殖を指す。神経膠腫と多数のその他の神経系疾患(例えば、アルツハイマー病)には、星状細胞増加症が広くあり、免疫組織化学法によって死後の組織サンプルにおけるグリア線維性酸性タンパク質(glial fibrillary acidic protein、GFAP)レベルの上昇を検出する。通常、神経膠症は、星状細胞増加症と小膠細胞症の合併症である。
【0104】
本明細書に記載のように、「シナプス変性」という用語は、通常、シナプスマーカーの状態/発現および/またはシナプス後肥厚部によって反映し得るシナプスの脱落または機能障害を指す。シナプス後肥厚部(postsynapticdensity、PSD)は、シナプス後膜に付着する緻密なタンパク質である。シナプス後肥厚部は、最初、電子顕微鏡でシナプス後ニューロン膜における1つの高電子密度領域に同定される。シナプス後高密度領域は、シナプス前活性領域と、緊密な関係を持ち、受容体とシナプス前神経伝達物質放出部位が近接するように確保している。例えば、シナプス後高密度領域のキャビティまたは腫脹は、シナプス変性を示し得る。シナプス状態は、シナプス小胞タンパク質(Synaptophysin)の発現またはレベルを検出することによって検出される。Synaptophysinは、種々の作動性ニューロンにおける膜糖タンパク質であり、ニューロンが刺激された場合にも見出される。
【0105】
本明細書に記載のように、「ドナー核酸分子」という用語は、通常、受容体(例えば、受容核酸分子)へ異種核酸配列を与える核酸分子を指す。
【0106】
本明細書に記載のように、「上流」という用語は、DNA、RNAまたは遺伝子配列と使用される場合に、通常、DNA、RNAまたは遺伝子配列における5'末端へ向かう相対的位置を指す。2本鎖DNAを考えると、上流は、該遺伝子コード鎖の5'末端を指す。
【0107】
本明細書に記載のように、「下流」という用語は、DNA、RNAまたは遺伝子配列と使用される場合に、通常、DNA、RNAまたは遺伝子配列における3'末端へ向かう相対的位置を指す。2本鎖DNAを考えると、下流は、該遺伝子コード鎖の3'末端を指す。
【0108】
本明細書に記載のように、「….と交雑する」または「交雑」という用語は、分子生物学で使用される場合に、通常、1本鎖デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)分子が相補的DNAまたはRNAにアニールする過程を指す。
【0109】
本明細書に記載のように、「誘導多能性幹細胞」または「iPS細胞」という用語は、通常、児童または成人の任意の組織(通常、皮膚または血液)から抽出されるものであり、遺伝子改変によって、表現型が胚性幹細胞に類似している細胞を指す。その名のとおり、これらの細胞は、多能性ものであり、成体細胞タイプの圧倒的多数(全部でなければ)に形成することができることを意味する。
【0110】
本明細書に記載のように、「tracrRNA」という用語は、通常、トランスコードされる小さいRNAであるトランス活性化crRNA(tracrRNA)を指す。TracrRNAとpre-crRNAは、相補的塩基対合によってRNA2本鎖を形成する。それは、RNA特異的リボヌクレアーゼIIIによって切断され、crRNA/tracrRNAハイブリッドを1つ形成する。このハイブリッドは、エンドヌクレアーゼCas9のガイドとして、侵入した核酸を切断することができる。
【0111】
アルツハイマー病動物モデル
1つの局面において、本発明は、改変されたAPPをコードするキメラApp遺伝子を含むラットまたはその生体部分を提供する。改変されたAPPは、SEQ ID NO:1で表される野生型ラットAPPよりも、K670、M671、I716およびE693の群から選ばれる1つまたは複数の箇所におけるアミノ酸置換を有してよい。ある実施態様において、改変されたAPPは、さらに、K670、M671、I716およびE693の残基におけるアミノ酸置換を有してよい。例えば、複数のアミノ酸置換は、K670のアミノ酸置換、M671のアミノ酸置換、I716のアミノ酸置換およびE693のアミノ酸置換を有してよい。
【0112】
複数のアミノ酸置換は、さらに、G676R、F681YおよびR684Hのアミノ酸置換を有してよい。そのため、ある実施態様において、複数のアミノ酸置換は、置換としてのG676R、F681Y、R684H、K670のアミノ酸置換、M671のアミノ酸置換、およびE693のアミノ酸置換を有してよい。
【0113】
本発明において、アミノ酸置換と言及される場合に、「XnY」が、残基nにおけるアミノ酸Xがアミノ酸Yに置換されることを指す。
【0114】
ある実施態様において、改変されたAPPは、Swedish二重突然変異を含有してよい。例えば、Swedish二重突然変異は、K670Nの置換とM671Lの置換を有してよい。ある実施態様において、改変されたAPPは、Beyreuther/Iberian突然変異を含有してよい。例えば、Beyreuther/Iberian突然変異は、I716F置換を有し得る。ある実施態様において、改変されたAPPは、Arctic突然変異を含有してよい。例えば、Arctic突然変異は、E693G置換を有してよい。ある実施態様において、改変されたAPPは、Swedish二重突然変異、Beyreuther/Iberian突然変異およびArctic突然変異を含有してよい。例えば、改変されたAPPは、K670N、M671L、I716FおよびE693Gのアミノ酸置換を有してよい。ある実施態様において、改変されたAPPは、SEQIDNO.1で表される野生型ラットAPPよりも、K670N、M671L、I716F、E693G、G676R、F681YおよびR684Hのアミノ酸置換を含有する複数のアミノ酸置換を有してよい。
【0115】
ラットのキメラApp遺伝子は、ホモ接合体もしくはヘテロ接合体でありうる。ある実施態様において、ラットまたはその生体部分は、キメラApp遺伝子ヘテロ接合体でありうる。例えば、ラットまたはその活性部分は、内在性App遺伝子のコピーの1つおよびキメラApp遺伝子のコピーの1つを含有してよい。ある実施態様において、ラットまたはその生体部分は、キメラApp遺伝子がホモ接合になっている。例えば、ラットまたはその生体部分は、キメラApp遺伝子コピーを2つ含有してよい。
【0116】
本発明は、ラットに含まれるキメラApp遺伝子は、ヒトAβペプチドを産生することができる。例えば、ラットは、ヒトAβペプチドを産生するために、それぞれ、内在性Aβの5番目のアミノ酸G(APPにおける676番目のアミノ酸)がR、内在性Aβ(APPにおける681番目のアミノ酸)の10番目のアミノ酸FがY、内在性Aβ(APPにおける684番目のアミノ酸)の13番目のアミノ酸Rが Hに置換されてよい。
【0117】
改変されたAPPをコードするキメラApp遺伝子は、ラットのゲノムまたはその生体部分に安定に組み入れられることができる。例えば、改変されたAPPをコードする異種核酸配列は、ラットの細胞に持続可能であり、改変されたAPPに転写および翻訳を行わせることができる状態にある。異種核酸配列は、宿主(例えば、ラットまたはその細胞)の染色体に組み入れられることができる。
【0118】
本発明のラットは、改変されたAPPをコードする異種核酸配列を、例えば、ラットの受精卵、未受精卵、精子、原始生殖細胞、卵祖細胞、卵母細胞、卵母細胞、精原細胞、精母細胞および/または精細胞に導入することによって、例えば、受精卵の胚発育初期(例えば8細胞期の前)に作出される。異種核酸配列は、遺伝子移入法、例えば、リン酸カルシウム共沈殿法、電気穿孔法、リポフェクション法、凝集法、微量注入法、遺伝子銃(粒子銃)および/またはDEAE-デキストラン法によって導入されることができる。異種核酸配列は、ラットの体細胞、組織および/または器官(例えば、遺伝子移入方法によって)に導入され、そして、さらに、前述工学的体細胞、組織および/または器官を培養および/または維持することもできる。前述工学的細胞は、本発明のラットを作出するように、細胞融合法により、胚または別の細胞(例えば、ラット生殖細胞系由来細胞)に融合させることもできる。
【0119】
ある実施態様において、本発明に係るラットは、改変されたAPPをコードする異種核酸配列を、ラットの胚性幹細胞(ES cell)またはiPS細胞(例えば、遺伝子移入方法により)に導入し、その中に核酸配列が安定に組み入れられるクローンを選択し、ES細胞またはiPS細胞を胚盤胞またはES細胞/iPS細胞集塊と8細胞期の胚の集合に注入することによって、キメララットを作出し、また、その細胞株に異種核酸配列が導入される胚を選択するように得られる。
【0120】
ある実施態様において、本発明に係るラットは、ノックイン(KI)ラットであってよい、本発明に記載のように、ここで、内在性App遺伝子は、少なくとも一部が改変された異種APPをコードする核酸配列に置換される。例えば、本発明に係るラットは、適切なターゲティングベクターにより外来性核酸配列をES細胞またはiPS細胞に導入すると共に、内在性App遺伝子またはその少なくとも一部を、例えば、相同組換えによって、異種核酸配列またはその少なくとも一部に置換することによって作製される。
【0121】
本発明に記載のラットまたはその生体部分において、完全長APPの発現レベルが、対応野生型ラットの発現レベルとは有意差がない可能性がある。例えば、抗APP抗体による免疫染色のような例えば抗APP C末端抗体(例えば、A8717)または抗ヒトAβ抗体(例えば、抗体6E10)である。
【0122】
前述ラットまたはその生体において、APP由来断片(またはAPP断片、例えばsAPP、CTF-α、CTF-βおよび/またはAICD)の発現レベルが、対応野生型ラットとは有意差がない可能性がある。例えば、適切な抗体による免疫染色のような例えば抗APP-CTF抗体(例えば、Sigma、A8717)または抗APP N末端抗体(例えば、Millipore、22C11)である。
【0123】
本発明のラットは、4ヵ月齢またはより早期の月齢(例えば、3.5ヵ月齢またはより早期の月齢、3ヵ月齢またはより早期の月齢、2.5ヵ月齢またはより早期の月齢、2ヵ月齢またはより早期の月齢、1ヵ月齢またはより早期の月齢)にAβオリゴマーが現れる。例えば、本発明のキメラApp遺伝子がヘテロ接合になっているラットにおいて、3ヵ月齢またはより早期の月齢(例えば、2.5ヵ月齢またはより早期の月齢、2ヵ月齢またはより早期の月齢、1.5ヵ月齢またはより早期の月齢、1ヵ月齢またはより早期の月齢)にAβオリゴマーを検出することができる。場合によって、本発明のキメラApp遺伝子がヘテロ接合になっているラットにおいて、1ヵ月齢より早くまたはひいては更なる早期の月齢にAβオリゴマーが検出可能である。別の実施例において、本発明のキメラApp遺伝子がホモ接合になっているラットに、2ヵ月齢またはより早期の月齢(例えば、1.5ヵ月齢またはより早期の月齢、あるいは1ヵ月齢またはより早期の月齢)にAβオリゴマーが検出可能である。例えば、前述Aβオリゴマーは、抗β-アミロイド抗体(例えば、Cell Signaling Technology、2454)および/または抗β-アミロイドオリゴマー抗体(OMAB)(例えば、Agrisera、AS10932)による免疫染色によって表される。場合によって、本発明のキメラApp遺伝子がホモ接合になっているラットにおいて、1ヵ月齢またはより早期の月齢の場合でもAβオリゴマーを検出することができる。
【0124】
本発明に記載のラットは、5ヵ月齢またはより早期の月齢(例えば、4.5ヵ月齢またはより早期の月齢、4ヵ月齢またはより早期の月齢、3.5ヵ月齢またはより早期の月齢、3ヵ月齢またはより早期の月齢、2.5ヵ月齢またはより早期の月齢、2ヵ月齢またはより早期の月齢、1.5ヵ月齢またはより早期、あるいは1ヵ月齢またはより早期)にアミロイド斑を示す可能性がある。例えば、本発明のキメラApp遺伝子がヘテロ接合になっているラットにおいて、アミロイド斑が、5ヵ月齢またはより早期の月齢(例えば、4.5ヵ月齢またはより早期の月齢、4ヵ月齢またはより早期の月齢、3.5ヵ月齢またはより早期の月齢、3ヵ月齢またはより早期の月齢、2.5ヵ月齢またはより早期の月齢、2ヵ月齢またはより早期の月齢、あるいは1ヵ月齢またはより早期の月齢)に検出されることができる。本発明のキメラApp遺伝子がホモ接合になっているラットにおいて、アミロイド斑が、1ヵ月齢またはより早期の月齢に検出されることができる。
【0125】
なお、本発明のキメラApp遺伝子がヘテロ接合になっているラットにおいて、12ヵ月齢またはそれ以上、24ヵ月齢またはそれ以上、あるいは36ヵ月齢またはそれ以上の場合でも、Aβ斑が検出されることができる。別の実施例として、本発明のキメラApp遺伝子がホモ接合になっているラットにおいて、アミロイド斑が、3ヵ月齢またはより早期の月齢(例えば、2.8ヵ月齢またはより早期の月齢、2.5ヵ月齢またはより早期の月齢、2ヵ月齢またはより早期の月齢、1.5ヵ月齢またはより早期の月齢、あるいは1ヵ月齢またはより早期の月齢)に検出されることができる。場合によって、本発明のラットは、例えば、キメラApp遺伝子がホモ接合になっている場合に、アミロイド斑が、1ヵ月齢より早くまたはより早期に示される。なお、本発明のキメラApp遺伝子がホモ接合になっているラットにおいて、6ヵ月齢またはそれ以上、12ヵ月齢またはそれ以上、22ヵ月齢またはそれ以上、あるいは24ヵ月齢またはそれ以上の場合でも、Aβ斑が検出可能である。場合によって、本発明のラットに、Aβ斑の厚さおよび/または密度(例えば、キメラApp遺伝子がホモ接合になっているラット)がラットの月齢によって変化する。例えば、ラットが年を取れば、Aβ斑がより薄くおよび/またはより緻密になり得る。ある実施態様において、本発明の22ヵ月齢のラット(本発明のキメラApp遺伝子がホモ接合になっているラット)は、本発明の12ヵ月齢のラットよりも、検出されたAβ斑が薄いおよび/または緻密である。もう1つの実施例において、本発明の6ヵ月齢のラット(本発明のキメラApp遺伝子がホモ接合になっているラット)は、本発明の3ヵ月齢、2ヵ月齢または1ヵ月齢のラットよりも、検出されたAβ斑が薄いおよび/または緻密である。
【0126】
抗P-アミロイド抗体(例えば、Cell Signaling Technology、2454)および/または抗P-アミロイドオリゴマー抗体(OMAB)(例えば、Agrisera、AS10932)を用いて免疫染色を行うことによって、アミロイド斑が現れる。
【0127】
なお、本発明のラット(例えば、キメラApp遺伝子のホモ接合体)において、Aβ斑の皮質、海馬および/または皮質下脳領域における分布がADヒト患者と類似し得る。
【0128】
ある実施態様において、本発明のラットは、Apペプチドの小脳内における多量蓄積が見つけられていない。これは、その他のADモデル動物に見つけられた表現型よりもヒト患者に見つけられたものと類似する予想のつかないメリットである。
【0129】
ある実施態様において、本発明に基づき、ラットまたはその生体部分中でのtauの過剰リン酸化が検出可能である。例えば、tauの過剰リン酸化は、対応野生型ラットよりも、tauのThr231および/またはSer202のリン酸化が増加することを含むか、またはこのことによって表される(例えば、ラットの大脳内)。場合によって、本発明のラット(例えば、キメラApp遺伝子ホモ接合体)または本発明に係るその生体部分中で配座が変化したtauタンパク質、例えば、オリゴマー化および/または凝集が検出可能である。tauタンパク質のオリゴマー化および/または凝集は、抗MC1抗体染色による検出が可能である。場合によって、tauタンパク質オリゴマーおよび/または凝集物は、本発明のラットにおけるチューブリンおよび/または微小管との共局在(例えば、キメラApp遺伝子がホモ接合になっている)が可能であり、ヒトAD患者で見つけられる表現型と一致する。このような共局在を、抗MC1抗体染色(tauタンパク質に用いられる)や抗MAP2抗体染色(チューブリンおよび/または微小管に用いられる)によって検出することができる。本発明のラットにおけるtauタンパク質は、このようなオリゴマー化および/または凝集(例えば、キメラApp遺伝子がホモ接合になっている)が、24ヵ月齢より早くまたはより早期の月齢、例えば、22ヵ月齢またはより早期、20ヵ月齢またはより早期、18ヵ月齢またはより早期、16ヵ月齢またはより早期、ひいては更なる早期に検出される。いくつかの実施態様において、本発明に基づき、ラットまたはその生体部分でのニューロン脱落が検出可能である。例えば、このようなニューロン脱落は、神経細胞のアポトーシスおよび/または神経細胞の壊死(例えば、ネクロトーシス)を含んでよい。いくつかの実施態様において、対応野生型ラットよりも、ラット(例えば、在ラット脳中)またはその活性部分において、Bax、Bcl-2、Cl-caspase3および/またはPro-caspase3のレベルの増加を検出することによって、アポトーシスを示す。いくつかの実施態様において、対応野生型ラットよりも、ラット(例えば、ラット大脳)またはその生体部分において、RIPK1および/またはpMLKLのレベルの増加によって、壊死(例えば、ネクロトーシス)を検出することができる。例えば、該ラットの6ヵ月齢またはより早期の月齢、あるいは12ヵ月齢またはより早期の月齢におけるキメラApp遺伝子ホモ接合体は、本発明のラットにおけるRIPK1のレベルの有意な増加を検出することができる。いくつかの実施態様において、本発明のラットまたはその生体部分におけるRIPK3レベルは、対応野生型ラットにおけるRIPK3レベルに相当し得る。いくつかの実施態様において、対応野生型ラットよりも、本発明の6ヵ月齢またはそれ以上、あるいは12ヵ月齢またはそれ以上のキメラApp遺伝子ホモ接合体ラットにおけるRIPK3発現レベルの実質的変化が検出されていない。場合によって、対応野生型ラットよりも、前述ラットまたはその生体部分のMLKL凝集が増加し得る。
【0130】
本発明のラット(またはその一部)に、RIPK1とRIPK3の発現は、共局在して前述ラットまたはその生体部分にネクロソームがあることを示すことができる。例えば、本発明のラット(またはその一部)において、例えば、ラットがキメラApp遺伝子ホモ接合体である場合、ネクロソーム付近にRIPK1とRIPK3の共局在発現を検出することができる。このようなRIPK1とRIPK3は、12ヵ月齢またはより早期のラットにおけるネクロソーム付近の共局在発現が検出可能である。
【0131】
本発明のラット(またはその一部)に、RIPK1とMLKLの発現は、共局在して前述ラットまたはその生体部分にネクロソームがあることを示すことができる。例えば、本発明のラット(またはその一部)において、例えば、ラットがキメラApp遺伝子がホモ接合になっている場合、ネクロソーム付近にRIPK1とMLKLの共局在発現を検出することができる。このようなRIPK1とMLKLは、12ヵ月齢またはより早期のラットにおけるネクロソーム付近の共局在発現が検出可能である。
【0132】
本発明のラット(またはその一部)に、RIPK3とMLKLの発現は、共局在して前述ラットまたはその生体部分にネクロソームがあることを示すことができる。例えば、本発明のラット(またはその一部)において、例えば、ラットがキメラApp遺伝子ホモ接合体である場合、ネクロソーム付近にRIPK3とMLKLの共局在発現を検出することができる。このようなRIPK3とMLKLは、12ヵ月齢またはより早期のラットにおけるネクロソーム付近の共局在発現が検出可能である。
【0133】
本発明のラットまたはその生体部分(例えば、組織、器官またはその他の部分)において、対応野生型ラットよりも、RIPK1とRIPK3、RIPK1とMLKLの間および/またはRIPK3とMLKLの間の共局在の増加を検出することができる。例えば、ラットは、キメラApp遺伝子ホモ接合体であり得る。
【0134】
本発明のラットまたはその部分(例えば、組織、器官またはその他の部分)において、対応野生型ラットよりも、MLKLの凝集の増加を検出することができる。例えば、ラットは、キメラApp遺伝子ホモ接合体であり得る。例えば、前述MLKLは、その凝集により、細胞および/または組織膜上の局在を駆動することができる。
【0135】
本発明のラットまたはその部分(例えば、組織、器官またはその他の部分)において、例えばRIPK1発現とIba1発現の共局在に示されるように、ネクロソームとミクログリアの共局在を検出することができる。場合によって、例えば、抗Iba1抗体、抗RIPK1抗体および1-フルオロ-2,5-ビス[(E)3-カルボキシ-4-ヒドロキシスチリル]ベンゼン(l-Fluoro-2,5-bis[(E)-3-carboxy-4-hydroxystyryl]benzene、FSB)による三重標識によって、ネクロソーム、ミクログリアとAβ斑の共局在、例えば、Aβ斑の付近または場所におけるRIPK1とIba1の共発現を検出することができる。例えば、ラットが、キメラApp遺伝子ホモ接合体でありうる。又、例えば、ラットの月齢が、12ヵ月齢またはより早期、10ヵ月齢またはより早期、8ヵ月齢またはより早期、あるいは6ヵ月齢またはより早期であって良い。対応野生型ラットよりも、本発明に記載のラットまたはその部分におけるこのような共局在が明らかに増加する。
【0136】
本発明のラットまたはその部分(例えば、組織、器官またはその他の部分)において、例えば、RIPK3発現とIba1発現の共局在に示されるように、ネクロソームと小神経膠細胞の共局在を検出することができる。場合によって、例えば、抗Iba1抗体、抗RIPK3抗体およびFSB(1-フルオロ-2,5-ビス[(E)3-カルボキシ-4-ヒドロキシスチリル]ベンゼン)による三重標識によって、ネクロソーム、小神経膠細胞とAβ斑の共局在、例えば、Aβ斑の付近または場所におけるRIPK3とIba1の共発現を検出することができる。例えば、ラットが、キメラApp遺伝子ホモ接合体でありうる。例えば、ラットの月齢が、12ヵ月齢またはより早期、10ヵ月齢またはより早期、8ヵ月齢またはより早期、あるいは6ヵ月齢またはより早期であって良い。対応野生型ラットよりも、本発明に係るラットまたはその部分におけるこのような共局在が明らかに増加する。興味深いことに、本発明のラットは、対応野生型ラットよりも、RIPK3の発現レベルが類似しても、このような共局在の増加が見られる。
【0137】
ある実施態様において、前述ラットまたはその生体部分中での神経細胞脱落が検出される。例えば、前述ラットまたはその生体中でのNeu-N陽性ニューロン数の減少が検出可能である。前述ラットまたはその部分が、対応野生型ラットよりも、22ヵ月齢またはより早期の月齢(例えば、20ヵ月齢またはより早期、例えば、16ヵ月齢またはより早期、10ヵ月齢またはより早期、または6ヵ月齢またはより早期)に、このような減少が見られる。例えば、ラットが、キメラApp遺伝子ホモ接合体であって良い。
【0138】
ある実施態様において、本発明に基づき、ラットまたはその生体部分における神経膠症が検出される。神経膠症は、小膠細胞症および/または星状細胞増加症を含んでよい。場合によって、小膠細胞症および/または星状細胞増加症は、アミロイド斑と関連しうる。例えば、アストロサイトとミクログリアは、アミロイド斑の周辺に凝集し、数もと共に増加しうる。
【0139】
ある実施態様において、本発明に基づき、ラットまたはその生体部分でのシナプス変性が検出可能である。例えば、シナプス変性が、シナプス後肥厚部の腫脹、および/またはキャビティ、および/またはシナプスマーカーの状態/発現により現れる。このようなシナプス後密度、および/またはシナプス前密度の腫脹、および/またはキャビティは、抗PSD95染色による検出が可能である。このようなシナプスマーカーの状態/発現は、抗synaptophysin染色による検出が可能である。
【0140】
例えば、本発明に係るキメラApp遺伝子のホモ接合体において、ラットまたはその生体中でのシナプス変性が検出可能である。例えば、前述ラットまたはその部分は、12ヵ月齢またはより早期、9ヵ月齢またはより早期、あるいは6ヵ月齢またはより早期の月齢におけるシナプス変性が検出可能である。
【0141】
ある実施態様において、対応野生型ラットよりも、前述ラットまたはその生体部分中での大脳形態および/または重量変化が検出可能である。例えば、大脳の形態および/または重量の変化に、大脳容積減少、脳室空洞発生、および/または脳室拡大、および/または海馬損傷を含有可能である。例えば、本発明に基づき、ラットまたはその生体部分中での大脳サイズ縮小が検出可能である。ラットは、キメラApp遺伝子ホモ接合体でありうる。このような変化は、22ヵ月齢またはより早期、20ヵ月齢またはより早期、15ヵ月齢またはより早期、10ヵ月齢またはより早期、6ヵ月齢またはより早期のラットまたはその部分中での検出が可能である。例えば、本発明に基づき、22ヵ月齢またはより早期、20ヵ月齢またはより早期、15ヵ月齢またはより早期、10ヵ月齢またはより早期、あるいは6ヵ月齢またはより早期の月齢のラットまたはその生体中での脳重量の減少が検出可能である。例えば、本発明に基づき、22ヵ月齢またはより早期、20ヵ月齢またはより早期、15ヵ月齢またはより早期、10ヵ月齢またはより早期、あるいは6ヵ月齢またはより早期のキメラApp遺伝子ホモ接合体ラットまたはその生体中での脳室拡大および/または海馬損傷が検出可能である。
【0142】
ある実施態様において、対応野生型ラットよりも、前述ラット中での認知障害が検出可能である。例えば、認知障害は、オープンフィールド試験、Morris迷路試験および/またはT字型迷路作業記憶試験による検出が可能である。例えば、認知機能は、学習機能、記憶機能、認知機能、感覚機能、運動機能および/または情動機能を含む。
【0143】
学習機能障害は、オープンフィールド試験、Morris迷路試験および/またはT字型迷路作業記憶試験における検出が可能である。例えば、記憶機能障害は、オープンフィールド試験、Morris迷路試験および/またはT字型迷路作業記憶試験における検出が可能である。認知機能障害は、オープンフィールド試験、Morris迷路試験および/またはT字型迷路作業記憶試験における検出が可能である。例えば、感官機能障害は、オープンフィールド試験、Morris迷路試験および/またはT字型迷路作業記憶試験における検出が可能である。
【0144】
本発明に係るラットは、ノックイン鼠であって良く、ノックイン鼠由来であっても良い。ラットにおいて、内在性App遺伝子の少なくとも一部が、改変されたAPPをコードする少なくとも一部の異種核酸配列に置換されてよい。
【0145】
内在性App遺伝子の少なくとも一部は、内在性App遺伝子のエクソン16の少なくとも一部とエクソン17の少なくとも一部を含んでよい。ある実施態様において、内在性App遺伝子の少なくとも一部は、内在性App遺伝子のエクソン16の少なくとも一部、イントロン16の少なくとも一部およびエクソン17の少なくとも一部を含んでよい。ある実施態様において、内在性App遺伝子の少なくとも一部は、内在性App遺伝子のエクソン16とエクソン17を含んでよい。ある実施態様において、内在性App遺伝子の少なくとも一部は、内在性App遺伝子のエクソン16、イントロン16およびエクソン17を含んでよい。
【0146】
異種核酸配列は、突然変異したエクソン16および突然変異したエクソン17を含んでよい。突然変異したエクソン16は、APPにSwedish二重突然変異をしてしまう突然変異を含有可能である。突然変異したエクソン17は、APPにBeyreuther/Iberian突然変異およびArctic突然変異をしてしまう突然変異を1つまたは複数含有可能である。ある実施態様において、異種核酸配列の長さが約3.5kb~10.5kb(例えば、約4kb~10.5kb、約5kb~10.5kb、約6kb~10.5kb、約7kb~10.5kb、約8kb~10.5kb、約9kb~10.5kb)であってよい。
ある実施態様において、改変されたAPPは、SEQ ID NO:2で表されるアミノ酸配列を有してよい。
【0147】
一方、本発明は、本発明に係るラットの子孫を提供する。本発明のラットを、本発明における改変されたAPPをコードするキメラApp遺伝子を含むかまたは含まない二匹目ラットと交雑することによって、子孫が得られる。ある実施態様において、子孫は、本発明に定義されて改変されたAPPをコードするキメラApp遺伝子を含んでよい。例えば、該子孫は、本発明に係るラットの子孫でありうる。別の実施例において、本発明のラットを、異種または異なる遺伝子情報を持つ別のラットと交雑することによって、子孫(例えば、本発明のキメラApp遺伝子非含有、またはさらなる突然変異/外来性/異種遺伝子断片含有)を得る。
一方、本発明は、本発明に基づき、ラット、またはその生体部分もしくは子孫由来の細胞株または初代細胞培養を提供する。
【0148】
一方、本発明は、本発明に基づき、ラット、またはその生体部分もしくは子孫由来の組織を提供する。該組織は、ラットまたは子孫の体液を含んでよい。例えば、体液は、血液、血漿(例えば、エクソン含有血漿)、血清、尿、汗液、涙液、唾液、精液および脳脊髄液の群から選ばれる。
【0149】
本発明に係る組織は、前述ラットまたは前述子孫由来の大脳またはその部分を含んでよい。例えば、大脳の一部は、嗅球、扁桃核、大脳基底核、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄および小脳の群から選ばれる大脳部分を含んでよい。ある実施態様において、該組織は、前述ラットまたは前述子孫の嗅粘膜を含んでよい。該組織は、さらに、本発明のラットまたはその子孫由来中枢神経系の一部(例えば、脊髄またはその一部)、末梢神経系の一部、皮膚組織、筋肉組織および/または内臓器官を含んでよい。
一方、本発明は、本発明に基づき、ラット、またはその生体部分もしくは子孫由来の細胞を提供する。
【0150】
本発明に係る細胞は、初代ニューロン、ミクログリア、アストロサイト、希突起膠細胞、マクロファージ、血管周囲類上皮細胞、B細胞、T細胞、体性幹細胞、NK細胞、全能性幹細胞、単能性幹細胞、胚性幹細胞、胚性幹細胞および誘導多能性幹細胞および配偶子の群から選ばれる細胞を含んでよい。配偶子は、精子および/または卵母細胞を含有可能である。
【0151】
ある実施態様において、細胞は、完全なラットに発育することができない可能性がある。例えば、該細胞は、全能性幹細胞または胚性幹細胞ではない可能性がある。
【0152】
組織または細胞は、本発明のラットまたはその生体部分に由来可能である。または、組織または細胞は、改変されたAPPをコードする異種核酸配列を、そのゲノムに導入し、さらに、これらの工学的/改変された細胞/組織を選択的に培養することによって産生される。
【0153】
ある実施態様において、本発明に係るラットまたはその生体部分、子孫、細胞株または初代細胞培養、組織または細胞が、アルツハイマー病の治療、診断、予防、監視および/または予後のための物質、装置、組成物および/またはバイオマーカーのスクリーニングに使用可能である。例えば、AD関連症状の表現前と表現後(例えば、Aβ沈着、神経原線維変化、シナプス形態または機能異常(ディスインテグレーション)、神経細胞死または記憶や学習機能障害)に、本発明のラットまたはその生体もしくは子孫から、サンプル(例えば、細胞、組織またはその他のDNAまたはRNA含有サンプル、タンパク質含有サンプル、および/または代謝物含有サンプル)を抽出し、そして、サンプル由来遺伝子転写産物(転写群)、遺伝子翻訳産物(タンパク質群)または代謝物(代謝群)を完全に解釈することで、AD関連症状の表現前後に変化する物質を識別する。
【0154】
遺伝子転写産物(例えば、転写群)は、核酸マイクロアレイ(例えば、DNAマイクロアレイ)チップによる解析、遺伝子翻訳産物(例えば、タンパク質群)は、ゲル電気泳動(例えば、二次元ゲル電気泳動)または質量分析法(例えば、飛行時間型質量分析法、エレクトロンスプレーイオン質量分析法、キャピラリー高速液体クロマトグラフィー/質量分析法およびLC/MS/MS)による解析、代謝物(代謝群)は、核磁気共鳴、キャピラリー電気泳動、LC/MSおよび/またはLC/MS/MSによる解析をそれぞれ行う。
【0155】
ある物質の存在/数がAD関連症状または病理の表現前後に有意差が出る場合に、該物質が、ADのバイオマーカーとして、ADの早期診断(特に、臨床前診断)に用いられる。識別されたバイオマーカーは、さらに、所定の薬剤または検出方法での検出が可能である。例えば、バイオマーカーは、タンパク質またはペプチドの場合、所定の抗体用免疫解析法での検出が可能である。バイオマーカーは、核酸分子(例えば、転写産物)の場合、所定のプローブによるNorthernブロッティング解析、または所定のプライマーによるRT-PCRの検出が可能である。
【0156】
スクリーニング方法及び使用
一方、本発明は、本発明のラットまたはその生体部分、子孫、細胞株または初代細胞培養、組織および/または細胞に候補物質、装置および/または組成物を適用する共に、前述候補物質、装置および/または組成物による1)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫、前述細胞株または初代細胞培養、前述組織および/または前述細胞におけるAβの発現および/または蓄積、2)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫、前述細胞株または初代細胞培養、前述組織および/または前述細胞におけるAPP断片(例えば、sAPP、CTF-β、CTF-aおよび/またはAICD)の発現および/または蓄積、3)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫、前述細胞株または初代細胞培養、前述組織および/または前述細胞におけるTauタンパク質のリン酸化、4)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫、前述細胞株または初代細胞培養、前述組織および/または前述細胞におけるTauタンパク質のオリゴマー化および/または凝集、5)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫、前述細胞株または初代細胞培養、前述組織および/または前述細胞における脳形態および/または脳重量、6)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫、前述細胞株または初代細胞培養、前述組織および/または前述細胞における脳神経原線維変化の形成、7)前述ラットまたは前述子孫の学習機能、記憶機能、認知機能、感覚機能、運動機能、情動機能および/またはシナプス機能、8)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫および/または前述組織の脳損傷、9)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫、前述細胞株または初代細胞培養、前述組織および/または前述細胞に存在するニューロン脱落、ネクロソーム形成、ニューロン死、ニューロンアポトーシス、ニューロン壊死、ニューロンネクロトーシス、Neu-N陽性ニューロン数および/または神経変性、10)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫、前述細胞株または初代細胞培養、前述組織および/または前述細胞における神経膠症、ミクログリア活性化、アストロサイト活性化および/または炎症反応、11)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫、前述細胞株または初代細胞培養、前述組織および/または前述細胞における酸化ストレスおよび/またはミトコンドリア機能障害、12)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫、前述細胞株または初代細胞培養、前述組織および/または前述細胞における血管機能障害、13)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫、前述細胞株または初代細胞培養、前述組織および/または前述細胞におけるミスフォールドしたタンパク質分解および/またはオートファジーの失効、および、14)前述ラットまたはその生体部分、前述子孫および/または前述組織における脳グルコースおよび/または脂質代謝の1種類または複数種類への影響を特定することを含む、アルツハイマー病の治療、予防および/または予後のための物質、装置および/または組成物をスクリーニングする方法を提供する。
【0157】
スクリーニング方法は、インビトロ方法、エクスビボ方法またはインビボ方法であって良い。
【0158】
ある実施態様において、Aβの蓄積は、Aβのオリゴマー化および/またはアミロイド斑の形成より構成されてよい。
【0159】
ある実施態様において、シナプス機能は、シナプス伝達、シナプス可塑性、シナプスタンパク質の形成および/または機能、および/またはシナプス形態を含んでもよい。
【0160】
ある実施態様において、炎症反応は、自然免疫(innate immune)細胞による反応を含んでよい。自然免疫細胞は、T細胞、B細胞、NK細胞、マクロファージおよび/または樹状細胞を含有してもよい。
【0161】
ある実施態様において、血管機能障害は、アミロイド血管症および/または血液脳関門(BBB)破壊を含んでよい。
【0162】
一方、本発明は、アルツハイマー病の治療、診断、予防、監視および/または予後のための物質、装置、組成物および/またはバイオマーカーをスクリーニングするシステムの構築における上述したラットまたはその関連生体部分、子孫、細胞株または初代細胞培養、組織および/または細胞の使用を提供する。
【0163】
アルツハイマー病の治療、予防および/または予後のための物質、装置および/または組成物は、Aβ蓄積抑制、神経原線維変化抑制および/または脳損傷抑制(例えば、神経変性病変や炎症反応)の物質、装置および/または組成物であってよい。該物質、装置および/または組成物は、アルツハイマー病の治療、予防および/または予後のための候補薬または装置として使用されてよい。
【0164】
該方法では、候補物質、装置および/または組成物は、本発明のラット、その生体部分、その子孫またはそれ由来の細胞/組織に用いられることによって、大脳におけるAβ沈着、大脳神経原線維変化および/または大脳損傷(例えば、神経変性病変や炎症反応)を検出することができる。
【0165】
候補物質は、合成された化合物、ペプチド、タンパク質、DNAライブラリーまたは該ライブラリーにおける核酸分子、動物(例えば、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、豚、牛、羊、サルまたはヒト)組織抽出物あるいは細胞培養上清液、植物や微生物の抽出物あるいは培養産物、または以上の物質のいずれかの混合物であってよい。
【0166】
本発明において、前述装置は、例えばアルツハイマー病の治療、診断、予防、監視および/または予後に有効と言われる医療機器を含んでよい。
【0167】
本発明において、組成物は、1種類または複数種類の生物体由来の混合物を含んでよい。該生物体は、植物、動物および/または微生物であってよい。例えば、組成物は、組織ホモジネートおよび/または血液サンプルを含んでよい。ある実施態様において、組成物は、1種類または複数種類の植物由来の抽出物を含んでよい。例えば、該組成物は、候補漢方薬を含んでもよい。
【0168】
該方法では、候補物質、装置および/または組成物によって、本発明に記載のラット、その生体部分、その子孫、またはそれ由来の細胞/組織を処理した場合に、処理されたラット、その生体部分、またはその子孫から、脳または脳組織/細胞を単離させることができる。その後、ホモジネート溶液が得られるように、適当な緩衝液(例えば、リン酸塩緩衝液)を使用して大脳または大脳組織/細胞を均質化させる。その後、ホモジネート溶液から可溶画分および/または不可溶画分を分離させることができる。その後、免疫測定法により、例えば、抗Aβ抗体および/または抗APP抗体を使用して検出することができる。ある実施態様において、Aβ42およびAβ40の量を計測することができる。ある実施態様において、Aβ42/Aβ40の比を算出することもできる。
【0169】
ある実施例において、脳または脳組織/細胞を単離後、脳または脳組織/細胞の凍結切片またはパラフィン包埋切片を調製することができる。その後、例えば、抗APP抗体および/または抗Aβ抗体によって脳切片を免疫染色することで、APPまたはAβ沈着を評価することができる。なお、シナプス前または樹状マーカータンパク質に対する抗体によって脳部を免疫染色することによって、シナプス異常を評価することができる。細胞骨格タンパク質の形態異常については、抗リン酸化tauタンパク質抗体によって脳切片を免疫染色することで評価することができる。ニッスル染色またはHE染色によって神経細胞死(例えば、Am.J.Pathol、2004年、第165巻、第1289-1300ページに記載)を評価することができる。結果を対照群(例えば、その中で候補物質、装置および/または組成物を使用していないもの、または候補物質、装置および/または組成物の代わりのブランク対照緩衝液)の結果と対比することができる。
【0170】
対照群から得られた結果に比べて、候補物質、装置および/または組成物を使用した場合、Aβの総量が減少すると、Aβ42の量が減少し、および/またはAβ42/Aβ40の比が減少するため、候補物質、装置および/または組成物を選択してさらなる検討(例えば、AD治療またはAβ蓄積抑制のための潜在的治療薬/装置/組成物)を行うことができる。
【0171】
対照群から得られた結果に比べて、候補物質、装置および/または組成物を使用した場合、アミロイド沈着が減少し、神経原線維変化が減少し、シナプス異常(崩壊)が減少し、神経細胞死が減少し、および/または炎症反応が減少すると、候補物質、装置および/または組成物を選択してさらなる検討(例えば、AD治療、Aβ沈着抑制、神経原線維変化抑制、脳損傷(例えば、神経変性疾患)抑制、または炎症反応抑制のための潜在的治療薬品/装置/組成物)を行うことができる。
【0172】
学習機能、記憶機能、認知機能、シナプス機能(例えば、シナプス伝達、シナプス可塑性、シナプスタンパク質形成および/または機能、および/またはシナプス形態)、感覚機能(例えば、嗅覚、聴覚、感覚、味覚、触感等)、運動機能(例えば、ローカル運動機能や筋肉機能等)、および情動機能(例えば、抑うつ度)については、例えば、動物行動解析によって、候補物質、装置および/または組成物の治療群と対照群の間における比較に用いられることができる。例えば、対照群に比べて、候補物質、装置および/または組成物によって処理された場合に、学習や記憶障害、シナプス機能、感覚機能、運動機能、および/または情動機能が顕著に改善したことを観察すれば、候補物質、装置および/または組成物を選択してさらなる検討(例えば、学習や記憶障害の治療のための潜在的治療薬品/装置/組成物)を行うことができる。
【0173】
スクリーニングする方法は、本発明に係るラット由来の組織および/または細胞、例えば、神経細胞、脳領域、またはAD病変含有/対応その他の組織、またはその一部組織(例えば、嗅球、扁桃核、大脳基底核、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、中枢神経系、末梢神経系、脊髄、小脳、皮膚組織、筋肉組織、および/または内蔵器官)によって行うこともできる場合がある。例えば、インビトロまたはエクスビボ(ex vivo)で組織および/または細胞を培養し、そして、適当なタイムゾーンで保育し、候補物質、装置および/または組成物を、培養される組織および/または細胞に(例えば、数時間、数日、数週間、または数ヶ月)投与し、前述の方法によって治療されるラットから単離させる脳組織/細胞を検査することができる。
【0174】
一方、本発明は、APPまたはAβに対する親和力のある物質のスクリーニング方法を提供する。例えば、候補物質を本発明のラットまたはその生体部分に適用し、Aβ沈着領域における候補物質の存在を検出することができる。APPまたはAβに特異的に結合する候補物質は、AD早期診断に用いられることができる。
【0175】
一方、本発明は、アルツハイマー病の診断および/または監視のためのバイオマーカーをスクリーニングする方法を提供する。該方法は、AD関連インジケータの検出前と検出後に、前述検出前後で存在および/またはレベル変化する物質を識別するように、本発明のラットまたはその生体部分あるいは子孫から得られたサンプルにおけるある物質の存在および/またはレベルを検出することを含む。
【0176】
例えば、このようなバイオマーカーをスクリーニングする方法では、本発明のラット、その生体、またはその子孫に由来するAD関連症状(例えば、Aβ沈着、神経原線維変化、形態または機能異常(崩壊)シナプス、神経細胞死、または記憶力や学習機能障害)表現の前後におけるサンプル(例えば、細胞、組織またはその他のDNAもしくはRNA含有サンプル、タンパク質含有サンプル、および/または代謝物含有サンプル)を採取して、サンプル由来の遺伝子転写産物(転写群)、遺伝子翻訳産物(タンパク質群)、または代謝物(代謝群)を完全に解析することで、AD関連症状の表現前後で変化する物質を識別する。ある実施態様において、サンプルは、ラット体液、例えば、ラット血液、血漿(例えば、エクソソーム含有血漿)、血清、尿、汗液、涙液、唾液、精液、および/または脳脊髄液より構成されてよい。
【0177】
核酸マイクロアレイチップ(microarray)、例えば、DNAマイクロアレイチップによって、遺伝子転写産物(例えば、転写群)を解析してよく、ゲル電気泳動(例えば、二次元ゲル電気泳動)または質量分析(例えば、飛行時間型質量分析、電子スプレーイオン質量分析、キャピラリーHPLC/MSおよびLC/MS/MSによって遺伝子翻訳産物(例えば、タンパク質群))を解析してよく、NMR、キャピラリー電気泳動、LC/MSおよびLC/MS/MSによって代謝物(代謝群)を解析してよい。
【0178】
物質の存在/含有量がAD関連症状や病理の表現前後で有意差を示した場合に、該物質は、ADバイオマーカーとして、早期診断(特にADに対する臨床前診断)に用いられることができる。さらに、特異的試薬や検出方法によって識別されたバイオマーカーを検出することができる。例えば、バイオマーカーは、タンパク質やペプチドの場合、特異的抗体による免疫解析で検出することができる。バイオマーカーは、核酸分子(例えば、転写産物)の場合、特異的プローブによるNorthern blotで解析し、または、特異的プライマーによるRT-PCRで検出することができる。
【0179】
モデル動物の作出方法
一方、本発明は、本発明に係るラットまたはその生体部分の作出方法を提供する。該方法は、例えば、ラットにキメラApp遺伝子を与えるように異種核酸配列をラットの内在性App遺伝子座にノックインすることを含んでよい。該ノックインでは、少なくとも一部の内在性App遺伝子が、異種核酸配列(少なくとも一部が改変されたAPPをコードする)に置換されることができる。
【0180】
前述少なくとも一部の内在性App遺伝子は、少なくとも一部の内在性App遺伝子のエクソン16と少なくとも一部のエクソン17を含んでよい。場合によって、少なくとも一部の内在性App遺伝子は、少なくとも一部の内在性App遺伝子のエクソン16、少なくとも一部のイントロン16と少なくとも一部の内在性App遺伝子のエクソン17を含んでよい。異種核酸配列は、突然変異したエクソン16および突然変異したエクソン17を含んでよい。ある実施態様において、少なくとも一部の内在性App遺伝子は、内在性App遺伝子のエクソン16とエクソン17を含んでもよい。場合によって、少なくとも一部の内在性App遺伝子は、内在性App遺伝子のエクソン16、イントロン16とエクソン17を含んでもよい。ある実施態様において、異種核酸配列は、Appの突然変異したエクソン16、イントロン16および突然変異したエクソン17を含んでもよい。
【0181】
突然変異したエクソン16および突然変異したエクソン17の突然変異は、それによってコードされたポリペプチド(例えば、それらによってコードされたタンパク質産物)に、K670、M671、I716およびE693の残基にありうる複数のアミノ酸置換が導入されることができる。例えば、複数のアミノ酸置換は、K670のアミノ酸置換、M671のアミノ酸置換、I716のアミノ酸置換およびE693のアミノ酸置換を含んでよい。複数のアミノ酸置換は、G676R、F681YおよびR684Hのアミノ酸置換をさらに含んでもよい。ある実施態様において、複数のアミノ酸置換は、K670N、M671L、I716F、および/またはE693Gを含む。ある実施態様において、複数のアミノ酸置換は、K670N、M671L、I716F、E693G、G676R、F681YおよびR684Hを含む。
【0182】
本発明に係るモデル動物の作出方法では、ヌクレアーゼ試薬は、標的App遺伝子座修飾の補助として用いられることができる。このようなヌクレアーゼ試薬は、ドナー核酸分子と標的遺伝子座の間の相同組換えを促進することができる。ある実施態様において、ヌクレアーゼ試薬は、エンドヌクレアーゼ試薬より構成される。
【0183】
本明細書のように、「ヌクレアーゼ試薬の認識部位」という用語は、通常、ヌクレアーゼによるニックや2本鎖切断の導入が可能なDNA配列を指す。ヌクレアーゼ試薬の認識部位は、細胞内在性(または天然)の認識部位、または細胞外来性の認識部位のいずれかであってよい。ある実施態様において、認識部位は、細胞の外来性ものであるので、天然に細胞ゲノムに存在することがない。さらなる実施態様において、外来性または内在性認識部位は、宿主細胞ゲノムに一回しか存在しなくてよい。所定の実施態様において、ゲノムに一回しか存在しない内在性または天然部位を識別することができ、また、このような部位を、内在性認識部位にニックや2本鎖切断を生じさせるように設計されるヌクレアーゼ試薬に用いられることができる。
【0184】
認識部位の長さは、例えば、長さが少なくとも4、6、8、10、12、14、16、18、19、20、21、22、23、 24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70個またはそれより多いヌクレオチドの認識部位を含んで可変なものであって良い。ある実施態様において、ヌクレアーゼ試薬は、各モノマーが、それぞれ少なくとも9つのヌクレオチドの認識部位を認識することができる。その他の実施態様において、認識部位は、長さが、約9~12個のヌクレオチドであってもよく、約12~15個のヌクレオチドであってもよく、約15~18個のヌクレオチドであってもよく、または、約18~21個のヌクレオチド、および、これらのサブレンジにおけるいずれかの組み合わせ(例えば、9-18個のヌクレオチド)であってもよい。認識部位は、回文構造、つまり、1本鎖における配列が相補鎖における逆向きの配列と同じものであってよい。周知のように、指定されるヌクレアーゼ試薬は、認識部位に対して、結合して切断することができたり、または、認識部位と異なる配列に結合することができる。なお、「認識部位」という用語は、ニック/切断部位が、ヌクレアーゼ結合部位の内外のいずれか一方にあるのにもかかわらず、同時にヌクレアーゼ結合部位とニック/切断部位を含むことができるものを指す。他の変異体では、ヌクレアーゼの切断は、平滑末端の切断を生じるように、互いに対向するヌクレオチド位置で発生してよく、または、その他の場合に、ニックは、5'オーバーハングであってもよく3'オーバーハングであってもよい「粘着末端」とも呼ばれる1本鎖オーバーハングを生じるようにずれることができる。
【0185】
予想の認識部位にニックや2本鎖切断を生じさせるいずれかのヌクレアーゼ試薬は、ともに本発明の方法に適用可能である。自然的または天然的なヌクレアーゼ試薬を用いてよく、該ヌクレアーゼ試薬が、予想の認識部位にニックや2本鎖切断を誘導すればよい。あるいは、修飾または改変されるヌクレアーゼ試薬を用いてもよく、「改変ヌクレアーゼ試薬」は、特異的に認識することによって予想の認識部位におけるニックや2本鎖切断を誘導するその自然型で工学的改変された(修飾またはそれ由来)ヌクレアーゼを含む。従って、改変されるヌクレアーゼ試薬は、天然または自然に産生されるヌクレアーゼ試薬に由来するものであってもよく、または、人工産生や合成されるものであってもよい。ヌクレアーゼ試薬の修飾は、タンパク質開裂剤における1つのアミノ酸または核酸開裂剤における1つのヌクレオチド程度小さいものであって良い。ある実施態様において、改変ヌクレアーゼは、天然(未改変または未修飾)ヌクレアーゼ試薬による認識が不可能な配列である認識部位にニックや2本鎖切断を含んでよい。認識部位またはその他のDNAにニックや2本鎖切断を生じさせることは、本明細書で認識部位またはその他のDNAを「切断」するまたは「開裂」すると呼ばれる。
【0186】
ある実施態様において、ヌクレアーゼ試薬は、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(Transcription Activator-Like Effector Nuclease、TALEN)であってよい。TALエフェクターヌクレアーゼは、原核または真核生物ゲノムにおける所定の標的配列に2本鎖切断を生じさせるための配列特異的ヌクレアーゼの一種である。 TALエフェクターヌクレアーゼは、天然または改変転写活性化因子様(TAL)エフェクターまたはその機能部分をエンドヌクレアーゼの触媒ドメイン(例えば、FokI)に融合させることで産生される。独特なモジュラーTALエフェクターDNA結合ドメインにおいて、任意に指定されるDNA認識特異性を有するタンパク質を設計することができる。そのため、TALエフェクターヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、所定のDNA標的部位を認識するように改変され、これによって、所望の標的配列に2本鎖切断を行うために用いられる。WO 2010/079430参照、WO 2010/079430参照;Morbitzerなど、(2010) PNAS 10.1073 / pnas.1013133107; Scholze&Boch(2010) Virulence 1:428-432;Christianなど,(2010)Genetics186:757-761; Liなど, (2010) Nuc. Acids Res.,doi:10.1093 / nar / gkq704;Millerなど,(2011) Nature Biotechnology 29:143-148;以上、これらは、参照としてここに組み込まれる。
【0187】
ある実施態様において、ヌクレアーゼ試薬は、例えば、各モノマーがそれぞれ3bpサブサイトに結合するジンクフィンガーによるDNA結合ドメインを3つまたはそれより多く含んでよいジンクフィンガーヌクレアーゼ(zinc-finger nuclease、ZFN)であってよい。その他の実施態様において、ZFNは、操作的にジンクフィンガーによるDNA結合ドメインを独立したヌクレアーゼに連結可能なキメラタンパク質を含んでよい。ある実施態様において、独立したエンドヌクレアーゼは、FokIエンドヌクレアーゼであってよい。ある実施態様において、ヌクレアーゼ試薬は、二量化によって2本鎖切断が誘導されるFokIヌクレアーゼに、それぞれ操作可能に連結される第1のZFNと第2のZFNを含んでよく、ここで、これら第1のZFNと第2のZFNが、約6bp~約40bpまたは約5bp~約6bpの切断部位によって離間される標的DNA 配列における各1本鎖上でそれぞれ連続した2つの標的DNA 配列を認識する。参照は、例えば、US20060246567;US20080182332;US20020081614;US20030021776;WO/2002/057308A2;US20130123484;US20100291048;およびWO/2011/017293A2であり、以上、これらは、参照文献として本明細書に組み込まれる。
【0188】
ある実施態様において、ヌクレアーゼ試薬は、メガヌクレアーゼ(meganuclease)であってよい。メガヌクレアーゼは、保存配列モチーフに基づいて、LAGLIDADG(SEQ ID NO:13)、GIY-YIG、H-N-HおよびHis-Cysボックスファミリーである4つのファミリーに分けられる。これらの異なる構造式(motif)は、金属イオン配位とリン酸ジエステル結合の加水分解に関与する。HEaseは、その長い認識部位およびそのDNA基質におけるいくつかの配列多型性への許容によってよく知られている。メガヌクレアーゼのドメイン、構造および機能は、例えば、GuhanとMuniyappa(2003)Rev BiochemMol Biol38:199-248、 Lucasなど、(2001)Nucleic Acids Res29:960-9、Jurica and Stoddard、(1999)Cell Mol Life Sci 55:1304-26、 Stoddard、(2006)Q Rev Biophys 38:49-95、およびMoureなど、(2002)Nat StructBiol 9:764の参照によって既知である。
【0189】
ある実施態様において、本発明の方法で用いられるヌクレアーゼ試薬は、CRISPR/Cas系を用いることができる。このような系は、例えば、Cas9ヌクレアーゼを用いることができ、場合によって、Cas9ヌクレアーゼは、それを発現する必要な細胞型に対してコドンを最適化することができる。該系は、さらに、コドン最適化されたCas9とともに働く融合したcrRNA-tracrRNAベクターを用いることができる。該単一RNAは、通常、スモールガイドRNA(smallguide RNA)またはsgRNAと呼ばれている。sgRNAにおいて、crRNA部分は、「内在性App遺伝子標的配列と交雑されるヌクレオチド配列」(または「標的配列」)と定義され、また、tracrRNAは、通常、「土台」と見なされる。概して、標的配列を含む短いDNA断片を、sgRNA発現プラスミドに挿入することができる。sgRNA発現プラスミドは、標的配列(ある実施態様において20個ぐらいのヌクレオチド)、tracrRNA配列(土台)構成、および細胞における活性のある適切なプロモーター、真核細胞(例えば、ラット細胞)における正確に稼動する必要エレメントより構成される。そして、sgRNA発現カセットとCas9発現カセットは、細胞に導入されることができる。参照は、例えば、Mali Pなど、(2013)Science、339(6121):823-6; Jinek Mなど、(2012) Science、 337(6096):816-21; Hwang WYなど、(2013) Nat Biotechnol、31(3):227-9;JiangWなど、(2013)Nat Biotechnol、31(3):233-9、およびCong Lなど、(2013) Science,339(6121):819-23である。以上、これらは、参照文献として本明細書に組む込まれる。
【0190】
該方法のいくつかの実施態様において、遺伝子ノックインは、異種核酸配列含有ドナー核酸分子の存在下で、ラットの幹細胞あるいは受精卵のゲノムを、以下の物質、すなわち、1)、CRISPR関連(Cas)タンパク質、2)、i)エクソン16より上流の内在性App遺伝子の一部と相補的な部分(または第1crRNA)、ii)エクソン17より下流の内在性App遺伝子の一部と相補的な部分(または第2crRNA)、iii)Casタンパク質の結合部位を含む1つまたは複数のリボ核酸(RNA)配列に接触させることを含む。
【0191】
該方法のいくつかの実施態様において、遺伝子ノックインは、さらに、1種類または複数種類のRNA配列が、内在性App遺伝子のエクソン16より上流の一部および内在性App遺伝子のエクソン17より下流の一部と交雑される状態で、細胞あるいは受精卵を維持するとともに、Casタンパク質が、1つまたは複数のRNA配列が交雑された場合に内在性App遺伝子核酸配列を切断することを含む。
【0192】
該方法のいくつかの実施態様において、遺伝子ノックインは、さらに、少なくとも一部の修飾されたAPPをコードする異種核酸配列に内在性App遺伝子の少なくとも一部を置換することを含んでよい。
【0193】
Casタンパク質はI型Casタンパク質であってもよく、ある実施態様において、II型Casタンパク質であってもよく、ある実施態様において、Cas9であってもよい。
【0194】
該方法のいくつかの実施態様において、幹細胞は、胚性幹細胞、体性幹細胞、全能性幹細胞、単能性幹細胞および誘導多能性幹細胞の群から選ばれてよい。
【0195】
該方法のいくつかの実施態様において、Casタンパク質の結合部位は、tracrRNA配列を含んでよい。
【0196】
該方法のいくつかの実施態様において、Casタンパク質は、タンパク質、Casタンパク質をコードするmRNAまたはCasタンパク質をコードするDNAの形態でラット細胞あるいは受精卵に導入されてよい。
【0197】
該方法のいくつかの実施態様において、1つまたは複数のRNA配列は、1つまたは複数のRNA分子またはRNA配列をコードする1つまたは複数のDNA分子の形態で細胞あるいは受精卵に導入されてよい。
【0198】
該方法のいくつかの実施態様において、内在性App遺伝子のエクソン16より上流の一部と相補的な部分、または内在性App遺伝子のエクソン17より下流の一部と相補的な部分は、SEQ ID NO:3-12で表されるいずれかの配列を含む核酸分子によってコードされてよい。
【0199】
該方法のいくつかの実施態様において、内在性App遺伝子のエクソン16より上流の一部と相補的な部分は、SEQ ID NO:3で表される配列を含む核酸分子によってコードされてよい。
【0200】
該方法のいくつかの実施態様において、内在性App遺伝子のエクソン17より下流の一部と相補的な部分は、SEQ ID NO:4で表される配列を含む核酸分子によってコードされてよい。
改変されたAPPは、SEQ ID NO:2で表されるアミノ酸配列を含んでよい。
【0201】
いくつかの実施態様において、該方法は、さらに、ノックインされた異種核酸配列を含有するラットの遺伝改変幹細胞あるいは受精卵を同定することを含んでよい。
【0202】
ある実施態様において、該方法は、さらに、ラットの遺伝子改変された幹細胞あるいは受精卵を宿主ラット胚に導入することを含んでよい。
【0203】
ある実施態様において、該方法は、さらに、ノックインされた異種核酸配列を有する(例えば、キメラAPPにおける)改変されたApp遺伝子座を含むラット子孫を出産するラットサロゲートに宿主ラット胚を妊娠させることを含む。異種核酸配列は、生殖細胞系(germline)による伝達が可能である。
【0204】
異種核酸配列を含むドナー核酸分子は、5'ホモロジーアームと3'ホモロジーアームを含んでよい。5′ホモロジーアームと3′ホモロジーアームは、前述改変されたAPPの少なくとも一部をコードする異種核酸配列の側に位置してよい。ドナー核酸分子におけるホモロジーアーム(例えば、5'ホモロジーアームまたは3'ホモロジーアーム)は、例えば、少なくとも5 bps、少なくとも50 bps、少なくとも100 bps、少なくとも150 bps、少なくとも200 bps、少なくとも300 bps、少なくとも400 bps、少なくとも500 bps、少なくとも600 bps、少なくとも700 bps、少なくとも750 bps、少なくとも800 bps、少なくとも850 bps、少なくとも900 bps、少なくとも1kb、少なくとも1.5kb、少なくとも5 kbまたはそれ以上である内在性App遺伝子座における対応領域との相同組換えを促進するのに十分な長さを有してよい。ある実施態様において、ドナー核酸分子は、約800-900bpsの長さの5'ホモロジーアームと約800-950bpsの長さの3'ホモロジーアームを含む。
【0205】
本明細書で示されるように、ホモロジーアームは、標的部位(すなわち、内在性App遺伝子座における相同遺伝子領域または対応領域)と互にマッチまたは対応する場合に、2つの領域における配列のお互いな一致性によって、相同組換え反応における基質として十分である。「相同性」とは、DNA配列が、対応またはマッチする配列とは、同一かまたは一定の配列一致性を持つことを指す。指定される標的部位は、ドナー核酸分子で見つかった対応ホモロジーアームとの間の配列一致性が、相同組換えの産生が許容される任意の程度の配列一致性であってよい。例えば、ドナー核酸分子(またはその断片)のホモロジーアームは、標的部位(またはその断片)と共有する配列同一性の量が、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%であってもよく、それによって、配列を相同組換えする。
【0206】
例えば、ドナー核酸分子では、改変されたAPPの少なくとも一部をコードする異種核酸配列の両側は、1)内在性App遺伝子のエクソン16より上流の部位における第1領域に対応する第1ホモロジーアーム(または5'ホモロジーアーム)、2)内在性App遺伝子のエクソン17より下流の部位における第2領域に対応する第2ホモロジーアーム(または3'ホモロジーアーム)である。このように、ドナー核酸分子は、内在性App遺伝子座におけるホモロジーアームおよびその対応領域の間で生じられる相同組換えによって、異種核酸配列をラットゲノムの内在性App遺伝子座に取り込ませる。
【0207】
ヌクレアーゼ試薬(例えば、Casタンパク質)を用いる場合には、ドナー核酸分子における5'および3'ホモロジーアームに対応する相同ゲノム領域は、認識部位にニックまたは2本鎖切断が表されると、相同ゲノム領域とホモロジーアームの間で相同組換えを生じることを促進するように、ヌクレアーゼ標的部位に十分に近い位置にある。例えば、ヌクレアーゼ標的部位は、5'および3'ホモロジーアームに対応する相同ゲノム領域の間のいかなる箇所に位置してよい。ある実施態様において、認識部位は、対応する相同ゲノム領域の少なくとも1つまたは2つに隣接する。ドナー核酸分子は、さらに、選択カセットまたはレポーター遺伝子を含んでよい。選択カセットは、プロモーターに効果的に連結されることができる、選択マーカーをコードする核酸配列を有してよい。プロモーターは、標的原核細胞および/または標的真核細胞に活性がある。このようなプロモーターは、誘導型プロモーター、レポーター遺伝子または細胞内在性プロモーター、レポーター遺伝子または細胞異種プロモーター、細胞特異性プロモーター、組織特異性プロモーター、または発育時期特異性プロモーターであって良い。ある実施態様において、選択マーカーは、アンピシリン耐性遺伝子(Ampr)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(Neor)、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(Hygr)、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ(Puror)、ブラストサイジンSデアミナーゼ(Bsrr)、キサンチン/グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ (Gpt)または単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-k)およびその組合わせの群から選ばれてよい。ドナー核酸分子の選択マーカーは、5'と3'ホモロジーアームの両側に位置してもよく、ホモロジーアームの5'または3'に位置してもよい。
【0208】
ある実施態様において、ドナー核酸分子は、LacZ、mPlum、mCherry、tdTomato、mStrawberry、J-Red、DsRed、mOrange、mKO、mCitrine、Venus、YPet、増強型黄色蛍光タンパク質(EYFP)、Emerald、増強型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、CyPet、シアン蛍光タンパク質(CFP)、Cerulean、T-Sapphir、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼおよびその組成から選ばれるレポータータンパク質をコードする、プロモーターに効果的に連結されることができるレポーター遺伝子を含んでよい。このようなレポーター遺伝子は、細胞に活性があるプロモーターに効果的に連結されることができる。このようなプロモーターは、誘導型プロモーター、レポーター遺伝子または細胞内在性プロモーター、レポーター遺伝子または細胞異種プロモーター、細胞特異性プロモーター、組織特異性プロモーター、または発育時期特異性プロモーターであって良い。
【0209】
1つまたは複数のRNA配列において、内在性App遺伝子のエクソン16より上流の一部と相補的な部分、内在性App遺伝子のエクソン17より下流の一部と相補的な部分、およびCas結合部位タンパク質(例えば、tracrRNA)が、同一RNA分子または異なるRNA分子に含まれて良い。これらは、単一転写物の形態でラットの幹細胞あるいは受精卵に同時に、または、それぞれ導入されてよい。
【0210】
ある実施態様において、Casタンパク質、内在性App遺伝子のエクソン16より上流の一部と相補的なRNA部分、内在性App遺伝子のエクソン17より下流の一部と相補的なRNA部分、およびCasタンパク質結合部位(例えば、tracrRNA)は、タンパク質-RNA複合体としてラットの幹細胞あるいは受精卵に同時に導入されてよい。
【0211】
ある実施態様において、Casタンパク質をコードするDNAは、Casタンパク質をコードする核酸に効果的に連結されることができる第1プロモーターを含む第1発現ベクターの形態であって良い。
【0212】
ある実施態様において、内在性App遺伝子のエクソン16より上流の一部と相補的なRNA部分をコードするDNAは、上記RNA部分をコードする核酸に効果的に連結されることができる第2プロモーターを含む第2発現ベクターの形態であって良い。
【0213】
ある実施態様において、内在性App遺伝子のエクソン17より下流の一部と相補的なRNA部分をコードするDNAは、上記RNA部分をコードする核酸に効果的に連結されることができる第3プロモーターを含む第3発現ベクターの形態であって良い。
【0214】
ある実施態様において、Casタンパク質結合部位(例えば、tracrRNA)をコードするDNAは、Casタンパク質結合部位(例えば、tracrRNA)をコードする核酸に効果的に連結されることができる第4プロモータータンパク質を含む第4発現ベクターの形態であって良い。
【0215】
第1、第2、第3および第4プロモーターは、ラットにおける幹細胞あるいは受精卵に活性があって良い。
【0216】
ある実施態様において、第1、第2、第3および/または第4発現ベクターは、単一核酸分子にあって良い。
【0217】
ある実施態様において、Casタンパク質をコードするDNAは、Casタンパク質をコードする核酸に効果的に連結されることができる第1プロモーターを含む第1発現ベクターの形態であって良く、内在性App遺伝子のエクソン16より上流の一部と相補的なRNA部分をコードするDNA、およびCasタンパク質結合部位(例えば、tracrRNA)をコードするDNAは、単一転写産物におけるRNA部分と結合部位をコードする核酸に効果的に連結されることができる第2プロモーターを含む第2発現ベクターの形態であって良い。第1や第2プロモーターは、ラットにおける幹細胞あるいは受精卵に活性があって良い。場合によって、第1や第2発現ベクターは、単一核酸分子にあって良い。
【0218】
ある実施態様において、Casタンパク質をコードするDNAは、Casタンパク質をコードする核酸に効果的に連結されることができる第1プロモーターを含む第1発現ベクターの形態であって良く、内在性App遺伝子のエクソン17より下流の一部と相補的なRNA部分をコードするDNA、およびCasタンパク質結合部位(例えば、tracrRNA)をコードするDNAは、単一転写産物におけるRNA部分と結合部位をコードする核酸に効果的に連結されることができる第2プロモーターを含む第2発現ベクターの形態があって良い。第1や第2プロモーターは、ラットにおける幹細胞あるいは受精卵に活性があって良い。場合によって、第1や第2発現ベクターは、単一核酸分子にあって良い。
【0219】
ある実施態様において、内在性App遺伝子のエクソン16より上流の部分および/または内在性App遺伝子のエクソン17より下流の部分は、PAM配列(Protospacer Adjacent Motif)によって(例えば、3'端で)隣接されている。
【0220】
場合によって、ラットにおける幹細胞あるいは受精卵は、ラット胚性幹(ES)細胞であって良い。例えば、ラットにおける幹細胞は、DA株またはACI株に由来してよい。ある実施態様において、ラット幹細胞は、Dnmt3L、Eras、Err-β、Fbxo15、Fgf4、Gdf3、Klf4、Lef1、LIF受容体、Lin28 、Nanog、Oct4、Sox15、Sox2、Utf1およびその組合わせの群から選ばれる分化多能性マーカーを少なくとも1種類発現することを特徴とする。ある実施態様において、ラット幹細胞は、(a)c-Myc、Ecat1およびRexo1を含有する1種類または複数種類の分化多能性マーカー発現欠失、(b)BrachyuryおよびBmpr2を含有する1種類または複数種類の中胚葉マーカー発現欠失、(c)Gata6、Sox17およびSox7を含有する1種類または複数種類の内胚葉マーカー発現欠失、または(d)NestinおよびPax6を含有する1種類または複数種類の神経マーカー発現欠失を1つまたは複数表現することができることを特徴とする。
【0221】
ある実施態様において、ノックインは、本発明に記載の異種核酸配列を有するドナー核酸分子をラット受精卵に注入することを含んでよい。
【実施例】
【0222】
以下、実施例について、当業者に本願の作製および使用についてのすべての開示及び説明を提供するように記述するが、これは、発明者による特定の範囲を制限するものではなく、以下の試験がすべてまたは唯一のものを示すという意味でもない。ここで、用いられる数(例えば、数量、温度など)の正確性の確保に力を尽くしたが、いくつかの試験エラーと偏差を考慮すべきである。特に断らない限り、部は重量部、分子量は平均分子量、温度は摂氏度、圧力は大気圧または大気圧に近いものを指す。標準的な略語、例えば、bp:塩基対、kb:キロベース、pl:ピコリットル、sまたはsec:秒、min:分間、hまたはhr:時間、aa:アミノ酸、nt:ヌクレオチド、i.m.:筋肉内、i.p.:腹腔内、s.c.:皮下などを使用してよい。
【0223】
実施例1:ドナー核酸分子の構築
NCBIデータベースからラットAppのゲノムDNAを検索したところ、該App遺伝子が11番染色体の逆鎖上で約216.3kbkっていることが分かった。遺伝子ID(データベースNCBI由来)は54226であった。この遺伝子には2種類の転写物があった(Ensembl由来であり、タンパク質IDがENSRNOP00000041613およびENSRNOP00000040243であった)。ラットApp遺伝子の各ドメイン及び特徴について、解析を行った。
【0224】
次に、エクソン16、イントロン16、およびエクソン17を含み、エクソン16とエクソン17の断片が約4kbであるラットAppゲノムDNA断片が単離された。次に、G676R、F681Y、およびR684Hのアミノ酸置換を引き起こす突然変異を導入することにより、ラットAppにおけるAβ配列をヒト化した。なお、Swedish二重突然変異(K670NおよびM671L)がエクソン16に導入されると共に、Beyreuther/Iberian(I716F置換)およびArctic(E693G置換)突然変異がエクソン17に導入された。
図1は、改変されたラットAppを得るために導入された突然変異を示す計画を提供した。エンドトキシンフリーのプラスミドDNAキットを用いてドナーベクターを調製した。
【0225】
突然変異した核酸配列は、DNAシークエンシングおよびエンドヌクレアーゼ消化によって確認された。
図5に示すように、レーン1は対照配列、レーン2はHindIIIの酵素消化産物(予想サイズが、それぞれ3620bp、5633bpであった)、レーン3はEcoRVの酵素消化産物(予想サイズが、それぞれ4245bp、5028bpであった)、4番目レーンは、DNA分子量マーカーであった。ドナー核酸分子は、エクソン16より889bpの上流にある5'ホモロジーアーム、及びエクソン17より902bpの下流にある3'ホモロジーアームを含んでいた。
図24は、ドナー核酸分子を含むAPPターゲティングベクターの計画を示した。
【0226】
実施例2:CRISPRの構築および活性測定
異なるラット系において、標的遺伝子配列(すなわち、標的App遺伝子配列)が異なる可能性がある。そこで、Cas9/sgRNAの効率を確保すると共に、sgRNAターゲットとラット尾ゲノム由来DNA配列との一致性を確保するため、ラット尾由来ゲノムDNAに対して、PCRおよびDNAのシークエンシングを行った。結果として、
図2に示すように、レーン1およびレーン2は上流標的配列のPCR増幅産物、レーン3はDNA分子量マーカー、レーン4およびレーン5は下流標的配列のPCR増幅産物である。
【0227】
その結果から、ラット尾から得られるPCR産物由来配列は、NCBIおよびEnsemblデータベースに記録されている配列と同一であることが分かった。
【0228】
sgRNAは、挿入サイトの近傍(イントロン領域内)に設計されており、制限的酵素消化部位を含む異種断片の挿入を容易に同定できるようになった。
【0229】
標的指向された(例えばハイブリダイゼーション)配列がそれぞれSEQ ID NO: 3~12で表される異なるsgRNA配列を10個設計した。これらのsgRNAのDNAオリゴヌクレオチドを合成し、それぞれpCS(puro)ベクターに連結した。汎用CRISPR活性測定(UCA、Beijing Biocytogen有限会社)によって、これら10種類の異なるsgRNAの活性を評価した。結果として、
図3A~3Bに示された。これら10個のsgRNAのうち、sgRNA2(その標的配列がSEQ ID NO: 3で表される)およびsgRNA6(その標的配列がSEQ ID NO: 4で表される)が最も高い相対活性を示すため、ノックインラット作製に選択された。
【0230】
そして、マイクロインジェクションのためのインビトロ転写されたsgRNAが得られるように、sgRNA2およびsgRNA6をそれぞれT7プロモーターを有するベクターに連結した。
図4に示すように、転写されたsgRNA2およびsgRNA6が(65℃、5分間)確認された。レーン1はインビトロ転写されたsgRNA-2(変性)、レーン2はインビトロ転写されたsgRNA-2(未変性)、レーン3はDNA分子量マーカー、レーン4はインビトロ転写されたsgRNA-6(変性)、そして、レーン5はインビトロ転写されたsgRNA-6(未変性)であった。
【0231】
同様に、インビトロで、T7 RNAポリメラーゼによって、Cas9 mRNAを転写した。簡単に言えば、PCR増幅により、T7プロモーター配列をCas9鋳型に加えた。T7-Cas9 PCR産物に対しゲル精製を行い、キットプロトコールに従って、MEGAshortscript T7キット(Life Technologies社)と共にインビトロ転写鋳型として用いられた。MEGAclearキットを用いてCas9 mRNAを精製し、RNaseフリー水で溶離した。
【0232】
実施例3:Cas9/sgRNAとドナー核酸分子の注入
動物実験は、いずれもAAALAC(国際実験動物ケア評価認証協会、Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care International)の規準に従って行われていた。清華大学IACUC(施設内動物管理使用委員会、Institutional Animal Care and Use Committee)は、本検討で用いられる動物プロトコール(15-LB5)を承認した。ラットは、標準的な12時間明期/12時間暗期のサイクルで維持されたまま、1~2匹を1群として飼育された。特に断らない限り、食料および水の供給は制限されなかった。
【0233】
ラットにおける選択された単一細胞受精卵を、用意したM2培地ストリップに移して、一列に並べた(約30~50個/列)。M2液滴がオペレーターの垂直方向、すなわちy軸上に伸長するように、注入皿を倒立顕微鏡のステージに置いた。インビトロ転写されたCas9 mRNA、sgRNA2およびsgRNA6(実施例2で得られた)、並びにドナー核酸分子を含むAppターゲティングベクター(実施例1で得られた)をラット受精卵に注入した。細胞質が緩んだ後、速やかに針を抜き出した。注入後、受精卵をM16培地含有ペトリ皿に移し、その後、回復するように37℃、5%二酸化炭素中で0.5~1.0時間放置した。
【0234】
次に、注入された受精卵を、偽妊娠受容雌ラットに移植した。移植して約19~21日に、生れたラットを、F0ラットとした。結果を表1にまとめた。
【0235】
【0236】
実施例4:F0ラットの遺伝子型決定
実施例3で得られたF0ラットは、約8週齢で性成熟した。
PCR産物のシーケンス法を用いてF0ラットの遺伝子型を検出し、5'末端結合領域と3'末端結合領域を増幅した結果を、それぞれ
図6A、6Bに示した。
図6Aでは、レーン1はDNA分子量マーカー、レーン2はNO.7のF0仔ラットの5'末端結合領域におけるPCR産物、レーン3はNO.27のF0仔ラットの5'末端結合領域におけるPCR産物、レーン4は野生型ラット由来の5'末端結合領域におけるPCR産物、レーン5は陰性対照であった。
図6Bでは、レーン1はDNA分子量マーカー、レーン2はNO.7のF0仔ラットの3'末端結合領域におけるPCR産物、レーン3はNO.27のF0仔ラットの3'末端結合領域におけるPCR産物、レーン4は野生型ラット由来の3'末端結合領域におけるPCR産物、レーン5は陰性対照であった。
【0237】
これらPCR産物のシーケンス結果から、NO.7のF0ラットが必要なキメラApp遺伝子を持ち、以降の試験に選択されたことを示した。
【0238】
実施例5:F1ラットの遺伝子型決定
実施例4で得られたNO.7のF0ラットを、野生型SDラットと交雑させ、F1ラットを得た。F1ラットにおける正しい組換えを検証するために、Southernブロッティングを行い、同時に5'ProbeおよびA-Probeを用いて、さらにインサイチュハイブリダイゼーションを確認した。遺伝子編集戦略の計画が、
図7に示された通りであった。
【0239】
PCR産物のシーケンス法によって、F1ラットの遺伝子型を決定し、5'結合領域と3'結合領域を増幅したPCR結果を
図9に示した。
図9では、レーン1はNO.3のF1仔ラットの5'結合領域におけるPCR産物、レーン2はNO.9のF1仔ラットの5'結合領域におけるPCR産物、レーン3はNO.10のF1仔ラットの5'結合領域におけるPCR産物、レーン4はNO.12のF1仔ラットの5'結合領域におけるPCR産物、レーン5はNO.14のF1仔ラットの5'結合領域におけるPCR産物、レーン6は陽性対照、レーン7は野生型ラットの5'結合領域におけるPCR産物、レーン8はブランク陰性対照、レーン9はDNA分子量マーカー、レーン10はNO.3のF1仔ラットの3'結合領域におけるPCR産物、レーン11はNO.9のF1仔ラットの3'結合領域におけるPCR産物、レーン12はNO.10のF1仔ラットの3'結合領域におけるPCR産物、レーン13はNO.12のF1仔ラットの3'結合領域におけるPCR産物、レーン14はNO.14のF1仔ラットの3'結合領域におけるPCR産物、レーン15は陽性対照、レーン16は野生型ラットの3'結合領域におけるPCR産物、レーン17はブランク陰性対照であった。
【0240】
さらに、Southernブロッティングを用いて、F1ラットの遺伝子型を検査した。簡単に言えば、ゲノムDNAは、F1ラットに由来し、EcoRVおよびBamH1で酵素消化された産物を、Southernブロッティングを用いて検査した。予想産物を以下の表2に示した。
【0241】
【0242】
Southernブロッティング解析の結果は、
図8に示された通りであった。レーン1はDNA分子量マーカー、レーン2はNO.3のF1仔ラットの結果、レーン3はNO.10のF1仔ラットの結果、レーン4はNO.12のF1仔ラットの結果、レーン5はNO.14のF1仔ラットの結果、レーン6およびレーン7は野生型ラットの結果であった。NO.10およびNO.12のF1仔ラットは、必要なノックインラットであると確認され(すなわち、必要なキメラApp遺伝子を持っている)、その後の繁殖に選択されたことが分かった。
【0243】
実施例6:ノックインラットにおけるAppおよびApp由来断片の発現の検出
Westernブロッティングは、実施例5で得られたノックインラット(すなわち、F1ラット)におけるヒトApp発現の検出に用いられた。簡単に言えば、ラットの脳組織をプロテアーゼ阻害剤(RocheDiagnostics診断)含有RIPA(50 mM Tris HCl pH 8.0、150 mM NaCl、1%NP-40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、CA630、1%EDTA、0.1%SDS)緩衝液で均質化して診断した。組織破片を、14000 r.p.mで15分間遠心分離して廃棄した。BCAタンパク質アッセイキット(Thermo Fisher)を用いてライセートを定量化し、等量のタンパク質をSDS-PAGEゲルにロードした。タンパク質をアクリルアミドゲルからPVDFメンブレン(Immobilon-P、Millipore)に90 Vで移して100分間待った。TBS-Tで希釈されたウシ血清アルブミン(BSA、5%w/v)を用いて膜を1時間ブロッキングした。ブロッキング後、膜を、TBS-TにおけるBSA(2.5%w/v)で、4℃で、抗ヒトAβ1-12(6E10、1:1000、Covance、39320)、抗APP-CTF(1:1,000、Sigma、A8717)、抗App N末端(1:1000、Millipore、22C11)および抗p-アクチン(1:5000、Abcam、ab9485)の適切な一次抗体と一晩培養した。翌日に、ブロッティングをTBS-Tで15分間を1回として3回洗浄し、所定の二次抗体(1:5000、Invitrogen|Thermo Fisher Scientific、31462および31432)に室温で連続に攪拌しながら1時間培養した。洗浄後、該膜を増強化学発光(enhanced chemiluminescence、ECL)によるWesternブロッティング基質(Thermo Fisher Scientific、34080)および発光検出(Tanon)で検知した。ImageJを用いて信号強度を定量化し、GraphPadを用いてデータを解析した。
【0244】
結果を
図10A~10B、11A~11B、12A~12Bおよび13A~13Cに示した。ヒトAppがノックインラットで発現することが分かった。なお、完全長Appとその各断片(例えば、CTF-a、CTF-β、およびAICD)のレベルは、野生型ラットと本願のノックインラットで類似していた。
【0245】
したがって、本願のノックインラットモデルは、遺伝子導入マウスモデルにおけるApp過剰発現の問題を回避した。なお、本願のノックインラットモデルは、CTF-a、CTF-β、およびAICDを生理学的レベルに発現した。
【0246】
実施例7:ノックインラットにおけるAβオリゴマーおよびアミロイド斑形成の検出
実施例5で得られたノックインラット(例えば、F1ラット)においてAβオリゴマーの病理を検査した。簡単に言えば、ラットに深麻酔でPBSと4%パラホルムアルデヒドを灌流させ、そして、大脳を4%パラホルムアルデヒドで一晩固定した。ビブラトーム(Leica)によって、大脳を30μmの切片に切断した。切片を、0.2%Triton X-100および10%正常ヤギ血清含有PBSで室温で透過処理して2時間ブロッキングした。切片を抗β-アミロイド抗体(1:1000、Cell Signaling Technology、2454)および/または抗β-アミロイドオリゴマー抗体(OMAB)(1:1000、Agrisera、AS10932)と同時に4℃で一晩培養した。1-フルオロ-2,5-ビス(3-カルボキシ-4-ヒドロキシスチリル)ベンゼン(1-fluoro-2,5-bis(3-carboxy-4-hydroxystyryl)benzene、FSB)は、アミロイドーシスの検出に用いられた。翌日に、切片をPBSで3回洗浄して、また、蛍光二次抗体としてAlexa Fluor 647ロバ抗マウスIgG(1:500、Invitrogen)またはAlexa Fluor 594ヤギ抗マウスIgG(1:500、Invitrogen)を加えて染色した。細胞核は、Hoechst 33342(1:5000、Sigma-Aldrich;94403)で描出された。切片は、Olympus FluoView FV1000 BX2正立共焦点顕微鏡で結像された。
【0247】
実施例5で得られたノックインラット(例えば、F1ラット)においてアミロイド斑の形成を検査した。簡単に言えば、AβのN末端(Aβ1-XおよびAβ3(pE)-X9)、AβのN末端領域(82E1、IBL)、Aβ17-24(4G8、Covance)、AβX-40(IBL)および/またはAβX-42(IBL)に特異的に結合する抗体をそれぞれ使用して、パラフィン包埋した凍結ラット脳切片を免疫染色した。必要に応じて、チラミド信号増幅システム(PerkinElmer Life Sciences)を使用した。1-フルオロ-2,5-ビス(3-カルボキシ-4-ヒドロキシスチリル)ベンゼン(1-fluoro-2,5-bis(3-carboxy-4-hydroxystyryl)benzene、FSB)は、アミロイドーシスの検出に用いられた。82E1および6E10染色を使用するために、高圧(121℃、5分間)処理によって抗原賦活化を行う必要があり、または、4G8、AβX-40およびAβX-42抗体の免疫組織化学を行うように、ギ酸処理(90%ギ酸、20~25℃で5分間)によって抗原賦活化を行った。MetaMorphイメージングソフトウェア(Universal Imaging)を用いて、免疫染色領域を定量化した。組織切片間の差異を減らすために、マウスに対して、1匹ごとに少なくとも4つの切片データの平均値を単一値として使用した。
【0248】
以上の試験結果を、
図14、15、16A~16E、25、26A~26B、27A~27F、28、29A~29F、30、31A~31F、および32に示した。本願のノックアウトラットモデルにおける小脳に、アミロイド斑の形成が見られなかったことが分かった(
図14)。なお、
図15に示すように、本願におけるAppノックインラットモデルに、早くも3ヶ月齢に(キメラApp遺伝子ヘテロ接合体ラットに)Aβオリゴマーの病理が検出された。
図25および
図26A~26Bに示すように、キメラApp遺伝子がホモ接合になった場合に、本願におけるAppノックインラットモデルに、早くも1か月齢にAβオリゴマーの病理が検出された。
図16A~16Eおよび
図30に示すように、本願におけるAppノックインラットモデルに、早くも4ヶ月齢に(キメラApp遺伝子がヘテロ接合になっているラットについて)アミロイド斑の形成が検出され、そして、それぞれ6ヶ月齢、10ヶ月齢、12ヶ月齢、14ヶ月齢、22ヶ月齢、および36ヶ月齢に、より多くの斑が検出された。
図27A~27Fに示すように、本願におけるAppノックインラットモデルに、早くも1ヶ月齢にアミロイド斑の形成が検出され(
図27A、キメラApp遺伝子がホモ接合になっているラット)、キメラApp遺伝子がホモ接合になっているラットについて、それぞれ2ヶ月齢、3ヶ月齢、6ヶ月齢、12ヶ月齢、および22ヶ月齢に、より多くの斑の形成が検出された(
図27B~27F)。
【0249】
図28に示すように、本願におけるラット(例えば、キメラApp遺伝子がホモ接合になっているラット)について、アミロイド斑の1ヶ月齢、2ヶ月齢、3ヶ月齢、6ヶ月齢、12ヶ月齢および22ヶ月齢における皮質、海馬、皮質下脳領域の分布が、ヒトAD患者で観察されたパターンと一致していた。
【0250】
図29A~27Fは、それぞれ、本願のラット由来の1ヶ月齢、2ヶ月齢、3ヶ月齢、6ヶ月齢、12ヶ月齢、および22ヶ月齢における単一アミロイド斑の超高解像度構造を示した(例えば、キメラApp遺伝子がホモ接合になっている場合)。
【0251】
図31A~31Fおよび
図32は、それぞれ、本願のラット(例えば、キメラApp遺伝子がホモ接合になっている場合)の1ヶ月齢、2ヶ月齢、3ヶ月齢、6ヶ月齢、12ヶ月齢、および22ヶ月齢におけるアミロイド斑の厚さと密度が、月齢によって変化したことを示した。ラットは、月齢が上がるにつれて、アミロイド斑が、より薄く、より密になることが分かった。例えば、22ヶ月齢に観察されたアミロイド斑は、若年時(例えば、1ヶ月齢、2ヶ月齢、3ヶ月齢、6ヶ月齢、または12ヶ月齢)よりも顕著に緻密になった。
【0252】
実施例8:ノックインラットにおけるtau過剰リン酸化
ウエスタンブロッティング(Western Blotting)は、実施例5で得られたノックインラットモデル(すなわち、F1ラット)におけるtau過剰リン酸化の検出に用いられた。簡単に言えば、プロテアーゼ阻害剤(Roche Diagnostics)含有RIPA緩衝液(50 mM Tris-HCl pH 8.0、150 mM NaCl、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、1%CA630、2mM EDTA、0.1%SDS)中で脳組織を均質化した。そして、組織破片を、14000 r.p.mで15分間遠心分離して廃棄した。BCAタンパク質アッセイキット(Thermo Fisher)を用いてライセートに対してタンパク質定量を行い、等量のタンパク質をSDS-PAGEゲルにロードし、タンパク質をアクリルアミドゲルからPVDFメンブレン(Immobilon-P、Millipore)に90 Vで移して100分間待った。TBS-Tで希釈されたウシ血清アルブミン(BSA、5%w/v)で膜を1時間ブロッキングした。ブロッキング後、膜を、TBS-Tで希釈されたBSA(2.5%w/v)で、4℃で、抗ヒトPHF-Tau(AT180)(1:500、Thermo Scientific、MN1040)、抗ヒトPHF-Tau(AT8)(1:500、Thermo Scientific、MN1020)、抗Tau(Tau5)および抗^-アクチン(1:5000、Abcam、ab9485)の適切な一次抗体と一晩培養した。翌日に、PVDFメンブレンをTBS-Tで15分間連続で3回洗浄し、所定の二次抗体(1:5000、Invitrogen|Thermo Fisher Scientific、31462および31432)に、室温で連続に攪拌しながら1時間培養した。洗浄後、該膜を増強化学発光(ECL)によるWesternブロッティング基質(Thermo Fisher Scientific、34080)および発光イメージャ(Tanon)で検知した。ImageJを用いて信号強度を定量化し、GraphPadを用いてデータを解析した。
【0253】
結果は、
図17A~17Cに示された通りであった。本願におけるノックインラット(脳組織、12か月齢)において、tauタンパク質は、Thr231(AT180抗体検出による)およびSer202(AT8抗体による)におけるリン酸化レベルが増加していることが分かった。
【0254】
実施例9:ノックインラット大脳のアポトーシス
ウエスタンブロッティング(Western Blotting)は、実施例5で得られたノックインラットモデル(すなわち、F1ラット)の神経細胞アポトーシス(apoptosis)検出に用いられた。簡単に言えば、脳組織を、プロテアーゼ阻害剤(Roche Diagnostics)含有RIPA緩衝液(50 mM Tris-HCl pH 8.0、150 mM NaCl、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、1%CA630、2mM EDTA、0.1%SDS)で均質化した。また、組織破片を、14,000 r.p.mで15分間遠心分離して廃棄した。BCAタンパク質アッセイキット(Thermo Fisher)を用いて、ライセートに対してタンパク質定量を行い、等量のタンパク質をSDS-PAGEゲルにロードし、タンパク質をアクリルアミドゲルからPVDFメンブレン(Immobilon-P、Millipore)に90 Vで移して100分間待った。TBS-Tで希釈されたウシ血清アルブミン(BSA、5%w/v)を用いて、膜を1時間ブロッキングした。ブロッキング後、膜を、TBS-Tで希釈されたBSA(2.5%w/v)で、4℃で、抗Caspase3(1:1000、Cell Signaling Technology、9665s)、抗Bax(1:1000、Abcam、ab196436)、抗Bcl-2(1:500、Stata Crus、7382)、および抗P-アクチン(1:5000、Abcam、ab9485)の適切な一次抗体と一晩培養した。翌日に、PVDFメンブレンを、TBS-Tで15分間を1回として3回洗浄し、所定の二次抗体(1:5000、Invitrogen/Thermo Fisher Scientific、31462および31432)に、室温で連続に振とうしながら1時間培養した。洗浄後、該膜を増強化学発光(ECL)によるWesternブロッティング基質(Thermo Fisher Scientific、34080)および発光イメージャ(Tanon)で検知した。ImageJを用いて信号強度を定量化し、GraphPadを用いてデータを解析した。
【0255】
結果は、
図18A~18Dに示された通りであった。本願のノックインラットにおいて、対応野生型ラットよりも、例えば、Bax/Bcl-2およびCl-caspase3/Pro-caspase3のようなアポトーシス分子マーカーが明らかに増加したことが分かった。これらの結果は、本願のノックインラットにニューロンが脱落したことを示した。
【0256】
実施例10:ノックインラット大脳の細胞壊死
ウエスタンブロッティング(Western Blotting)は、実施例5で得られたノックインラットモデル(すなわち、F1ラット)における神経細胞ネクロトーシス(necroptosis)検出に用いられる。簡単に言えば、脳組織をプロテアーゼ阻害剤(Roche Diagnostics)含有RIPA緩衝液(50 mM Tris-HCl pH 8.0、150 mM NaCl、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、1%CA630、2mM EDTA、0.1%SDS)で均質化した。また、組織破片を、14000 r.p.mで15分間遠心分離して廃棄した。BCAタンパク質アッセイキット(Thermo Fisher)を用いて、ライセートに対してタンパク質定量を行い、等量のタンパク質をSDS-PAGEゲルにロードし、タンパク質をアクリルアミドゲルからPVDFメンブレン(Immobilon-P、Millipore)に90 Vで移して100分間待った。TBS-Tで希釈されたウシ血清アルブミン(BSA、5%w/v)を用いて、膜を1時間ブロッキングした。ブロッキング後、膜を、TBS-Tで希釈されたBSA(2.5%w/v)で、4℃で、抗RIPK1(1:1000、BD Biosciences、610459)、抗RIPK3(1:500、Stata Crus、374639)、抗MLKL(1:1000、EnoGene、E2A7412)、抗pMLKL(1:1000、Abcam、ab196436)、および抗P-actin(1:5000、Abcam、ab9485)の適切な一次抗体と一晩培養した。翌日に、PVDFメンブレンを、TBS-Tで15分間を1回として3回洗浄し、所定の二次抗体(1:5000、Invitrogen/Thermo Fisher Scientific、31462および31432)に、室温で連続振とうしながら1時間培養した。洗浄後、該膜を増強化学発光(ECL)によるWesternブロッティング基質(Thermo Fisher Scientific、34080)および発光イメージャ(Tanon)で検知した。ImageJを用いて信号強度を定量化し、GraphPadを用いてデータを解析した。
【0257】
結果は、
図19A~19Eに示された通りであった。本願のノックインラットにおいて、RIP画分タンパク質種RIPK1およびpMLKLのレベルは、野生型ラットよりも明らかに高かったことが示された。そして、本願のノックインラットは、野生型ラットとの間でRIPK3のレベルが類似していることが、従来のAD患者の報告と一致した。
【0258】
なお、実施例5で得られたノックインラット(例えば、F1ラット)において、ネクロトーシスマーカー分子であるRIPK1、MLKL、およびRIPK3の発現が検出された。簡単に言えば、ラットに深麻酔下で、PBSと4%パラホルムアルデヒドを灌流させた後、大脳を4%パラホルムアルデヒドで一晩固定した。ビブラトーム(Leica)を用いて、大脳を30μmの切片に切断した。切片を、0.2%Triton X-100および10%正常ヤギ血清含有PBSで、室温で透過処理して2時間ブロッキングした。切片を、4℃で、抗RIPK1(1:200、BD Biosciences、610459)、抗RIPK3(1:500、Stata Crus、374639)、抗MLKL(1:200、EnoGene、E2A7412)、および抗pMLKL(1:200、Abcam、ab196436)の一次抗体と一晩培養した。1-フルオロ-2,5-ビス(3-カルボキシ-4-ヒドロキシスチリル)ベンゼン(FSB)は、アミロイドーシスの検出に用いられる。翌日に、切片を、PBSで3回洗浄し、蛍光二次抗体としてAlexa Fluor 647ロバ抗マウスIgG(1:500、Invitrogen)またはAlexa Fluor 594ヤギ抗マウスIgG(1:500、Invitrogen)を利用して染色し、Hoechst33342(1:5000、Sigma-Aldrich;94403)で細胞核を描出した。切片は、Olympus FluoView FV1000 BX2正立型共焦点顕微鏡で結像され、Image JおよびImaris8ソフトウェアによって、画像を解析し、Graphpadによって、統計データ解析を行った。
【0259】
図34、35A、および35Bに示すように、本願のノックインラット(例えば、6ヶ月齢および12ヶ月齢ラットの脳)は、対応野生型ラットでの観察された結果よりも、RIPK1の発現レベルが、例えば、ラットのキメラApp遺伝子がホモ接合体である場合に増加したことが観察された。
【0260】
図1~
図4に示した通りであった。
図36、37A、および37Bを参照して、例えば、本願のノックインラットと野生型ラット(例えば、それぞれ6ヶ月齢および12ヶ月齢のラットの脳)は、RIPK3の発現レベルが、例えば、ラットのキメラApp遺伝子がホモ接合体である場合に類似していた。
【0261】
なお、
図38A、38B、および39に示すように、本願のノックインラット(例えば、12ヶ月齢ラットの脳)は、対応野生型ラットでの観察された結果よりも、RIPK1発現とRIPK3発現の共局在が、例えば、ラットのキメラApp遺伝子がホモ接合体である場合に増加したことが観察された。
【0262】
図40A、40B、および41に示すように、本願のノックインラット(例えば、12ヶ月齢ラットの脳)は、対応野生型ラットでの観察された結果よりも、RIPK1発現とMLKL発現の共局在が、例えば、ラットのキメラApp遺伝子がホモ接合体である場合に増加したことが観察された。
図42A、42B、および43に示すように、本願のノックインラット(例えば、12ヶ月齢ラットの脳)は、対応野生型ラットでの観察された結果よりも、RIPK3発現とMLKL発現の共局在が、例えば、ラットのキメラApp遺伝子がホモ接合体である場合に増加したことが観察された。しかしながら、
図36、37A、および37Bに示すように、本願のノックインラットは、野生型ラットよりも、RIPK3の発現レベルが増加しなかった。なお、本願のノックインラット(例えば、12ヶ月齢ラットの脳)は、対応野生型ラットでの観察された結果よりも、MLKLの凝集が、例えば、ラットのキメラApp遺伝子がホモ接合体であり、かつMLKLが細胞/組織膜の近くにある場合に増加したことが観察された。これらの結果は、本願のノックインラットにおけるネクロソーム(necrosome)の形成が増加したことを示した。
【0263】
この実施例の結果は、本願のノックインラットにおけるニューロン脱落(ネクロトーシスおよびネクロソームの形成で示された)を示し、表現型がヒトAD患者で見られるものと類似していた。
【0264】
実施例11:ノックインラット大脳の小膠細胞症および星状細胞増加症
Westernブロッティングは、実施例5で得られたノックインラットモデル(すなわち、F1ラット)における小膠細胞症および星状細胞増加症検出に用いられる。簡単に言えば、プロテアーゼ阻害剤(Roche Diagnostics)含有RIPA緩衝液(50 mM Tris-HCl pH 8.0、150 mM NaCl、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、1%CA630、2mM EDTA、0.1%SDS)で脳組織を均質化した。組織破片を、14000 r.p.mで15分間遠心分離して廃棄した。BCAタンパク質アッセイキット(Thermo Fisher)を用いて、ライセートに対してタンパク質定量を行い、等量のタンパク質をSDS-PAGEゲルにロードし、タンパク質をアクリルアミドゲルからPVDFメンブレン(Immobilon-P、Millipore)に90 Vで移して100分間待った。TBS-Tで希釈されたウシ血清アルブミン(BSA、5%w/v)を用いて、膜を1時間ブロッキングした。ブロッキング後、膜を、TBS-Tで希釈されたBSA(2.5%w/v)で、4℃で、抗GFAP(MAB3402、Millipore)、抗Iba1(Wako)、抗β-actin(1:5000、Abcam、ab9485)の適切な一次抗体と一晩培養した。翌日に、PVDFメンブレンをTBS-Tで15分間を1回として3回洗浄し、所定の二次抗体(1:5000、Invitrogen/Thermo Fisher Scientific、31462および31432)に、室温で連続振とうしながら1時間培養した。洗浄後、該膜を増強化学発光(ECL)によるWesternブロッティング基質(Thermo Fisher Scientific、34080)および発光イメージャ(Tanon)で検知した。ImageJを用いて信号強度を定量化し、GraphPadを用いてデータを解析した。
【0265】
結果は、
図20A~20Dに示された通りであった。小膠細胞症の程度を反映するIba1染色および星状細胞増加症の程度を反映するGFAP免疫ブロットについて、本願のノックインラットにおけるこの2種類のタンパク質の発現レベルは、いずれも野生型ラットよりも顕著に高かったことが分かった。
【0266】
実施例12:ノックインラットのアストロサイト(GFAP)、Aβ(FSB)およびミクログリア(Iba1)の免疫組織化学
免疫組織化学および組織化学的手法によって、本願のノックインラット(例えば、F1ラット)におけるアストロサイト(GFAP)、Aβ(FSB)、およびミクログリア(Iba1)の免疫組織化学染色を検出した。簡単に言えば、Iba1(Wako、019-19741)およびGFAP(MAB3402、Millipore)に特異的な抗体を用いて、パラフィン包埋した凍結ラット脳切片を免疫染色した。1-フルオロ-2,5-ビス(3-カルボキシ-4-ヒドロキシスチリル)ベンゼン(FSB)は、アミロイドーシスの検出に用いられ、必要に応じて、チラミン信号増幅システム(PerkinElmer Life Sciences)が用いられた。MetaMorphイメージングソフトウェア(Universal Imaging)を用いて、免疫反応領域を定量化した。組織切片間の差異を減らすために、マウスに対して、1匹ごとに少なくとも4つの切片データの平均値を単一値として使用した。
【0267】
結果は、
図21、22、53、54A、54B、55Aおよび55Bに示された通りであった。本願のノックインラット(6ヶ月齢、12ヶ月齢、または22ヶ月齢ラットの脳)は、対応野生型ラットでの観察された結果よりも、小膠細胞症および星状細胞増加症の現象が明らかに増加したことが分かった。なお、小膠細胞症および星状細胞増加症は、アミロイド斑に関連するものである。
【0268】
実施例13:ノックインラットのシナプス変性
免疫組織化学および組織化学的手法によって、本発明のノックインラット(例えば、F1ラット)におけるシナプス変性(synaptic degeneration)を検出した。簡単に言えば、PSD-95(NeuroMab、73-028)、synaptophysin(FITC結合;cloneSY38、PROGEN)に特異的な抗体およびDAPI(Gibco、D1306)を用いて、パラフィン包埋した凍結ラット脳切片を免疫染色した。1-フルオロ-2,5-ビス(3-カルボキシ-4-ヒドロキシスチリル)ベンゼン(FSB)は、アミロイドーシスの検出に用いられ、必要に応じて、チラミド信号増幅システム(PerkinElmer Life Sciences)が用いられた。MetaMorphイメージングソフトウェア(Universal Imaging)を用いて、免疫反応領域を定量化した。組織切片間の差異を減らすために、マウスに対して、1匹ごとに少なくとも4つの切片のデータの平均値を単一値として使用した。
【0269】
結果は、
図23に示された通りであった。本発明のノックインラットにおいて、これらのラット脳におけるシナプス後肥厚部(PSD-95)の腫脹およびキャビティのようなシナプス変性が観察された。なお、
図52Aおよび
図52Bに示すように、本発明のノックインラット(例えば、9ヶ月齢のキメラApp遺伝子ホモ接合体)において、ラット脳に対して抗PSD-95染色と抗synaptophysin染色を行うことによって、シナプス変性が観察された。なお、観察されたシナプス後肥厚部の腫脹およびキャビティは、アミロイド斑と共局在した。
【0270】
実施例14:tauタンパク質のオリゴマー化および凝集
実施例5で得られたノックインラット(例えば、F1ラット)において、tauタンパク質の配座変化を検出した。簡単に言えば、ラットに深麻酔でPBSと4%パラホルムアルデヒドを灌流させ、そして、大脳を4%パラホルムアルデヒドで一晩固定した。ビブラトーム(Leica)によって、大脳を30μmの切片に切断した。切片を、0.2%Triton X-100および10%正常ヤギ血清含有PBSで室温で透過処理して2時間ブロッキングした。切片を、4℃で、抗MC1(1:20;米国ニューヨーク州アルバートアインシュタイン医科大学のP. Daviesからの贈り物)および抗MAP-2(1:1000、Abcam、ab32454)の一次抗体と一晩培養した。翌日に、切片を、PBSで3回洗浄し、また、蛍光二次抗体としてAlexa Fluor 647ロバ抗マウスIgG(1:500、Invitrogen)またはAlexa Fluor 594ヤギ抗マウスIgG(1:500、Invitrogen)を用いて染色し、細胞核を、Hoechst 33342(1:5000、Sigma-Aldrich;94403)で描出した。切片は、Olympus FluoView FV1000 BX2正立共焦点顕微鏡で結像され、Image JおよびImaris8ソフトウェアによって画像を解析し、Graphpadによって統計データ解析を行った。
【0271】
図33A~33Cに示すように、本発明のノックインラット(例えば、22ヶ月齢のキメラApp遺伝子ホモ接合体ラット)において、tauタンパク質の凝集が観察された。なお、凝集したtauタンパク質(抗MC1染色で示された)は、チューブリン/微小管(抗MAP2染色で示された)と共局在した。三重遺伝子導入マウスでは、類似の結果(
図33Aを参照し、3xTg-ADマウス、陽性対照として使用される)が観察されたが、対応野生型ラットでは、tauタンパク質凝集が観察されなかった(
図33C参照)。
【0272】
実施例15:ネクロソームとミクログリアの共局在
実施例5で得られたノックインラット(例えば、F1ラット)において、細胞ネクロトーシスとミクログリアによる共局在を検査した。簡単に言えば、ラットに深麻酔でPBSと4%パラホルムアルデヒドを灌流させ、そして、大脳を4%パラホルムアルデヒドで一晩固定した。ビブラトーム(Leica)によって、大脳を30μmの切片に切断した。切片を、0.2%Triton X-100および10%正常ヤギ血清含有PBSで室温で透過処理して2時間ブロッキングした。切片を、4℃で、抗RIPK1(1:200、BD Biosciences、610459)、抗RIPK3(1:500、Stata Crus、374639)および抗Iba1(1:1000、Wako、019-19741)の一次抗体と一晩培養した。1-フルオロ-2,5-ビス(3-カルボキシ-4-ヒドロキシスチリル)ベンゼン(FSB)は、アミロイドーシスの検出に用いられた。翌日に、切片を、PBSで3回洗浄し、また、蛍光二次抗体としてAlexa Fluor 647ロバ抗マウスIgG(1:500、Invitrogen)またはAlexa Fluor 594ヤギ抗マウスIgG(1:500、Invitrogen)を用いて染色し、細胞核を、Hoechst 33342(1:5000、Sigma-Aldrich;94403)で描出した。切片は、Olympus FluoView FV1000 BX2正立共焦点顕微鏡で結像され、Image JおよびImaris8ソフトウェアによって画像を解析し、Graphpadによって統計データ解析を行った。
【0273】
図44A~44B、45、46A~46B、47、48A~48B、49、50A-50B、および51に示すように、本発明のノックインラット(例えば、6ヶ月齢および12ヶ月齢ラットの脳)は、対応野生型ラットでの観察された結果よりも、RIPK1発現とIba1の共局在が、例えば、ラットがキメラApp遺伝子ホモ接合体である場合に増加した。これらの結果は、ネクロソームの形成とミクログリアの形成が、大脳の同一領域/細胞で発生し、ヒトAD患者で観察された表現型と類似していることを示した。
【0274】
実施例16:ノックインラットの神経細胞脱落
実施例5で得られたノックインラット(例えば、F1ラット)において、さらに、神経細胞脱落が検出した。簡単に言えば、ラットに深麻酔でPBSと4%パラホルムアルデヒドを灌流させ、そして、大脳を4%パラホルムアルデヒドで一晩固定した。ビブラトーム(Leica)によって、大脳を30μmの切片に切断した。切片を、0.2%Triton X-100および10%正常ヤギ血清含有PBSで室温で透過処理して2時間ブロッキングした。切片を、4℃で、抗NeuN(1:1000;Merck;MAB377)と一晩培養した。翌日に、切片をPBSで3回洗浄し、また、蛍光二次抗体としてAlexa Fluor 647ロバ抗マウスIgG(1:500、Invitrogen)またはAlexa Fluor 594ヤギ抗マウスIgG(1:500、Invitrogen)を用いて染色し、細胞核を、Hoechst 33342(1:5000、Sigma-Aldrich;94403)で描出した。切片は、Olympus FluoView FV1000 BX2正立共焦点顕微鏡で結像され、Image JおよびImaris8ソフトウェアによって画像を解析し、Graphpadによって統計データ解析を行った。
【0275】
結果は、
図56、57Aおよび57Bに示された通りであった。本発明のノックインラット(例えば、22ヶ月齢ラットの脳)は、対応野生型ラットでの観察された結果よりも、NeuN陽性神経細胞の数が、例えば、ラットがキメラApp遺伝子ホモ接合体である場合に減少したことが観察された。
【0276】
実施例17:ラットにおける脳の形態および体重の変化
ラットにおける脳の形態、サイズ、および重量を検出した。組織学的染色のために、ラットを、Nembutal(ペントバルビタールナトリウム、0.2mL/100gの体重)で麻酔し、対応する月齢で断頭して殺し、大脳を取り出し、重量を量った。次に、ラット脳をPBSにおける4%パラホルムアルデヒド(PFA)に浸して固定し、パラフィン包埋し、冠状切片を作製して処理を行った。組織学的解析のために、パラフィン包埋した大脳をミクロトーム上で5μmの厚さで冠状に切断し、APSコートスライドガラス上で広げた。そして、5μm厚の切片を脱パラフィンして、ヘマトキシリン・エオジン(Merck)で染色した。
【0277】
結果は、
図58、59、60A、および60Bに示された通りであった。ノックインラット(例えば、6ヶ月齢および22ヶ月齢ラットの脳)は、対応野生型ラットよりも、例えば、ラットがキメラApp遺伝子ホモ接合体である場合に、脳サイズ縮小、脳重量軽減、脳室拡大、および海馬損傷や脱落増加になっていることが分かった。
【0278】
実施例18:オープンフィールド試験
オープンフィールド試験において、本発明のラットの認知機能を検出した。該試験は、径100cm、壁の高さ50cmの円形のフィールドで行った。中心直径60cmの円形のエリアは、オープンフィールドの中心エリアとして定義された。試験室の照明は、ラットの不安を軽減するために暗くなっていた。動物を、オープンフィールドの中心に移動させ、5分間の水平活動(走行距離)、中心エリアで費やした時間、中心エリアに入った時間を記録して、コンピューターによるシステムで解析した。各試験後、オープンフィールドを洗浄した。
【0279】
結果は、
図61A~61Cに示された通りであった。本発明のノックインラット(例えば、4ヶ月齢のキメラApp遺伝子ホモ接合体)は、対応野生型ラットと比べて、試験して5分間以内に同程度の距離を移動したことが見られ(
図61A)、これらのノックインラットが正常な運動機能を持っていることを示した。しかし、本発明のノックインラットは、対応野生型ラットよりも、視界が開ける中央エリアで費やした時間が少なく(
図61B)、また、中央エリアに入ることが少ないことによって(
図61C)、これらのノックインラットがまだ弱い認知機能を持っていることを示した。
【0280】
実施例19:ロータロッド試験
ロータロッド試験において、本発明のラットの運動機能を検出した。該ロータロッド装置は、0.5mの高さ、7cmの直径のシリンダーより構成された。該シリンダーは、あらかじめ定まった安定な速度で回転および/または加速するように機械的に制御することができる(San Diego Instruments、米国カリフォルニア州サンディエゴ)。該試験は、3つのトレーニング日と1つのテスト日を含む。トレーニング期間に、毎日、各ラットをシリンダーに乗せて、15秒内にシリンダーを5rpmから15rpmまで加速し、1回あたり少なくとも15分間の間隔で該速度で75秒間維持する90秒のトレーニングを、該各ラットに4ラウンド行わせた。試験当日に、各ラットに対して、それぞれ毎回の試験期間に各ラットをシリンダーに乗せて、300秒内にシリンダーを5rpmから40rpmまで加速した試験を3ラウンド行った。この4日間に、各ラットに対して、それぞれ各試験におけるシリンダーから落下する遅延期間が記録され、また、この日のすべての試験の平均遅延期間を算出した。
【0281】
結果は、
図62Aおよび62Bに示された通りであった。本発明のノックインラット(例えば、4ヶ月齢および6ヶ月齢のキメラApp遺伝子ホモ接合体ラット)は、対応野生型ラットと比べて、同程度の運動機能を持つことを示した。
【0282】
実施例20:モリス水迷路試験
モリス水迷路試験は、本発明のラットの認知機能検出に用いられた。試験は、150cmの径の円形プールで行い、また、水(23±2℃)を深さ22cmまで満たした。水を濁らせるように、水に黒インクを加えた。プール周辺の壁に、独特な視覚的手がかりが設定され、ビデオカメラが、水迷路の上に配置され、ソフトウェアによって、ラットの水泳経路を追跡して解析した。水迷路は、開始位置として、4つの論理的象限に均等に区分された。すべてのラットの空間学習機能に対し、トレーニングの試験を4日間連続に行い、そして、5日目に検知試験を行った。空間学習タスクでは、一つのプラットフォーム(直径8cm)を水面直下2cmで配置しながら、迷路壁から45cmの西象限の中央に固定した。4日間の試験に、水泳試験を、異なる象限から各ラットをそれぞれ解放するように、1日に4回行っていた。これは、疑似ランダムな方法で行われ、また、用いられる開始象限は、ラウンドによって異なった。各試験は、最大60秒間まで許容され、ラットが、60秒内にプラットフォームを見つけない場合に、プラットフォームに誘導して10秒間滞在させた。各トレーニング試験後、ラットをティッシュで拭いて乾かし、次の試験までに、ケージに戻して50秒間待ち、また、間隔が合計60秒間ぐらいであった。プラットフォームに脱出した遅延時間および成功した脱出回数を記録した。4日間の空間学習試験後、検知試験を行った。検知試験において、隠されたプラットフォームが除去され、各象限で費やした時間および各象限に入った回数が記録された。
【0283】
結果は、
図63A、63B、64A、64B、65Aおよび65Bに示された通りであった。本発明のノックインラット(例えば、4ヶ月齢および6ヶ月齢のキメラApp遺伝子ホモ接合体ラット)は、対応野生型ラットよりも、悪い空間学習機能が現れたことが示された。
【0284】
実施例21:T字型迷路作業記憶試験
T字型迷路作業記憶試験において、本発明のラットの認知機能を検出した。
動物の用意
T字型迷路タスクでは、試験前に、ラットは、食物が、自由な摂食量の85%~90%に制限され、試験の前日に、甘いペレット(餌)をラットのケージに入れ、試験開始の1時間前にラットを試験室に移した。
【0285】
試験手順:
迷路慣れ(1日目):ラットが迷路で褒美の餌を得るようにトレーニングするために、餌を、T字型迷路の両アーム末端にある餌箱に置いた。毎回、1匹のラットを迷路に入れ、この慣れ過程で自由に迷路を探索させた。すべての餌が消費された後、ラットを迷路から取り出した。
【0286】
迷路慣れ(2日目):該手順は、1日目の慣れ過程と同じであったが、各ラットに対して、それぞれ試験を2回行い、また、ラットが、5分間以上をかけて餌を得った場合に、該過程を繰り返す点で異なった。
【0287】
強制選択トレーニング:強制選択トレーニングでは、ラットは、約5秒間の試験間隔で2回を1ラウンドとする異なる試験を4ラウンド受けられた。1つ目の試験に、T字型迷路の左右両側に食物を置いて、右または左アームの通路が閉塞され、ラットが迷路の未閉塞アームに移動することを強いられた。ラットは、褒美の餌を取得後、迷路から取り出された。次に、反対側のアームの閉塞物を取り外し、ラットを開始位置に返し入れた。1日における4ラウンドの試験に、最初に閉塞されたアームの選択は、ランダムであった。
【0288】
基礎トレーニング:該トレーニング過程では、ラットは、約5秒間の試験間隔で2回を1ラウンドとする異なる試験を4ラウンド受けた。1つ目の試験に、T字型迷路の左右両側に食物を置いた。T字型迷路に入る右または左アームの通路が閉塞され、ラットが迷路の開放アームに移動することを強いられた。ラットは、褒美の餌を取得後、迷路から取り出された。次に、反対側のアームの閉塞物を取り外し、ラットを開始位置に返し入れた。1日における4ラウンドの試験に、最初に閉塞されたアームの選択は、ランダムであった。ラットが、正しいアームに入った場合に、正しい選択と見なされた。動物が、75%の選択精度に3日間連続に達したら、作業記憶試験を行う。
【0289】
作業記憶試験:5秒、120秒および600秒の異なる3種類の試験の間隔(各ラウンドの試験1と2の間)を除いて、基礎トレーニングと同じ手順が採用された。試験のラウンド間に、ラットは、1日に、2回を1ラウンドとする試験を6ラウンド受けられ、1日における6ラウンドの試験に、これら異なる3種類の試験間隔をランダムに適用し、毎日、ラットあたりの試験期間に、1種類の間隔が2回採用された。作業記憶試験は、2日間連続に行われた。
【0290】
結果は、
図66A~66Bに示された通りであった。本発明のノックインラット(例えば、6ヶ月齢のキメラApp遺伝子ホモ接合体ラット)は、対応野生型ラットよりも、低い正確率を示し(
図66A)、また、慣れ過程の間に、75%の正確率に達するトレーニング日数が多かった。これらの結果から、本発明のノックインラットは、認知機能、例えば学習や記憶機能が損なわれたことを示した。
【0291】
ここで、本発明の好ましい実施例は、表現や記述を行ったが、当該技術分野における当業者にとって、これらの実施例が単なる例として提供されるに過ぎないことが明らかである。本発明は、本明細書で提供される所定の例によって制限されると意図しない。本発明は、前述した明細書を参照して説明されたが、本明細書における解釈び図示が限定的に解釈されない。現在、当業者は、本発明から逸脱することなく、多くの関連する変形、変更および置換を想到するであろう。なお、本発明は、すべての点が本明細書に記載の具体的解釈、構造または相対割合に限定されなく、様々な条件および変数によると理解されるべきである。本明細書に記載の本発明の実施態様は、本発明の実施に用いられる置換したものがたくさんあると理解されるべきである。そのため、本発明は、さらに、これらの置換、修正、変形、または等価物のいずれかを含むことが予想される。以下のクレームによって発明の技術的範囲を決定し、また、これらのクレームにおける方法、構造およびその等価物を含むことが目的とされる。
【配列表】