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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】ライダー受信ユニット
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/4863 20200101AFI20230829BHJP
   H01L 31/12 20060101ALN20230829BHJP
【FI】
G01S7/4863
H01L31/12 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021576713
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-01
(86)【国際出願番号】 EP2020067139
(87)【国際公開番号】W WO2021001177
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】102019209697.2
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505472816
【氏名又は名称】マイクロビジョン,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ボイシェル
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/039432(WO,A1)
【文献】特開2011-146587(JP,A)
【文献】国際公開第2013/084406(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/022220(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0011567(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017222970(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03318895(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - G01S 7/51
G01S 17/00 - G01S 17/95
H01L 27/14 - H01L 27/148
H04N 5/00- H04N 5/956
H04N 25/00 - H04N 25/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点面アレイ構成におけるライダー受信ユニット(16)であって、
ライダー送信ユニット(18)の光パルスを受信する複数のセンサ素子(24)と、
前記センサ素子の信号を前記ライダー受信ユニットの縁領域(R)に搬送する複数のルーティングチャネル(32)と、
を有し、
複数のセンサ素子の各々が、前記ライダー送信ユニットの送信素子(22)に割り当てられたマクロセル(26、26´)に配置され、
複数のマクロセルが、マクロセルクラスタ(30)を形成し、複数のマクロセルクラスタの各々が、複数の行(Z1、Z2、Z3)に配置され、
前記ルーティングチャネルは、所与の行の隣接するマクロセルクラスタ間を各々通って前記複数の行に交差し、前記信号を前記複数の行に垂直な方向に搬送するように構成され、
マクロセルクラスタ(30)は、14~34個のセンサ素子(24)を備え、
2つのマクロセルは、マクロセルクラスタ(30)を形成し、
前記マクロセルクラスタの前記2つのマクロセルが、行(Z1、Z2、Z3)に平行に配置され、
行(Z、Z、Z)の隣接するマクロセルクラスタ(30)間の間隔(A3)は、隣接する行における隣接するマクロセルクラスタ間の間隔(A4)よりも大きく、かつ、
前記センサ素子(24)を読み取る前処理素子の各々が、隣接する行(Z、Z、Z)間に配置され、前記前処理素子は、トランジスタを備える、
ライダー受信ユニット(16)。
【請求項2】
第1の行(Z1、Z2、Z3)の前記マクロセルクラスタ(30)は、前記第1の行に隣接する第2の行の前記マクロセルクラスタに対してオフセットして配置された、請求項1に記載のライダー受信ユニット(16)。
【請求項3】
前記ルーティングチャネル(32)は、前記行(Z1、Z2、Z3)間のチャネル部分(34)に前記行に平行に延在する、請求項1または請求項2に記載のライダー受信ユニット(16)。
【請求項4】
前記センサ素子(24)の直径(DS)の整数倍は、前記ライダー送信ユニット(18)の割り当てられた前記送信素子(22)の中心点の間の間隔(DA)とは異なる、請求項1から3のいずれか一項に記載のライダー受信ユニット(16)。
【請求項5】
低減した感度の前記センサ素子(24)が、前記マクロセルクラスタ(30)のマクロセル(26、26´)間に配置された、請求項1から4のいずれか一項に記載のライダー受信ユニット(16)。
【請求項6】
前記センサ素子(24)の行毎の読取りのための評価電子装置(38)を有する請求項1から5のいずれか一項に記載のライダー受信ユニット(16)。
【請求項7】
車両(14)の環境において物体(12)を検出するライダー測定装置(10)であって、
請求項1から6のいずれか一項に記載のライダー受信ユニット(16)と、
光パルスを送信する複数の送信素子(22)を有するライダー送信ユニット(18)と、
前記物体を検出するために、前記ライダー送信ユニットを制御し、前記センサ素子(24)の信号を評価する制御部(20)と、
を有するライダー測定装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点面アレイ構成におけるライダー受信ユニットに関する。本発明は、さらに、車両の環境における物体を検出するライダー測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の車両(乗用車、小型トラック、貨物自動車、オートバイ、無人交通システムなど)は、運転手若しくは作業者に情報を提供し及び/又は部分的若しくは完全に自動化された態様で車両の個々の機能を制御する複数のシステムを備える。車両及び適切な場合には他の道路使用者の環境が、センサによって検出される。検出データに基づいて、車両環境のモデルが作成され、この車両環境の変化に反応することができる。自律的に及び部分的に自律的に走行する車両の分野における発展のために、運転支援システム(Advanced Driver Assistance Systems:ADAS)及び自律運転交通システムの影響及び有効範囲が、一層広がっている。より一層高精度なセンサの開発により、環境を検出し、運転手による介在なしに完全に又は部分的に車両の個々の機能を制御することが可能となる。
【0003】
ここで、環境の検出のために重要なセンサの原理は、ライダー(LiDAR:light detection and ranging、光検出と測距)技術である。ライダーセンサは、光パルスの送信及び反射光の検出に基づくものである。飛行時間測定によって、反射部位までの距離が計算可能となる。受信反射を評価することによって、対象物の検出が実行可能となる。対応するセンサの技術的実現に関して、一般にマイクロミラーに基づいて機能する走査系と、複数の送信素子及び受信素子が並べて固定配置された非走査系(特に、焦点面アレイ構成として知られるもの)との間で区別がなされる。
【0004】
この背景において、特許文献1には、光学的距離測定のための方法及び装置が記載される。測定パルスを送信するための送信マトリクス及び測定パルスを受信するための受信マトリクスの使用が開示される。測定パルスの送信中に、送信マトリクスの送信素子のサブセットが活性化される。
【0005】
非走査ライダー測定システムの分野における1つの課題は、受信アレイにおけるセンサ素子の配置構成及び受信アレイの縁部にセンサ素子の信号をルーティングすることにある。一方では、アレイのセンサ素子の最大可能密度が達成されるべきである。他方では、更なる処理のためにアレイの縁部への信号の効率的なルーティングが可能とされるべきである。さらに、高い解像度又は良好な検出が確保されるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2017/081294号
【発明の概要】
【0007】
これに基づき、本発明の課題は、センサ素子のアレイの効率的な読取りのための手法を提供することである。特に、死角領域が最大限回避されるアレイが実現されるべきである。さらに、高い解像度が達成されるべきである。
【0008】
この課題を達成するために、本発明は、第1の態様では、焦点面アレイ構成におけるライダー受信ユニットであって、
ライダー送信ユニットの光パルスを受信する複数のセンサ素子と、
センサ素子の信号をライダー受信ユニットの縁領域に搬送する複数のルーティングチャネルと、を有し、
複数のセンサ素子の各々が、ライダー送信ユニットの送信素子に割り当てられたマクロセルに配置され、
複数のマクロセルの各々が、マクロセルクラスタを形成し、複数のマクロセルクラスタの各々が、複数の行に配置され、
ルーティングチャネルは、所与の行の隣接するマクロセルクラスタ間を各々通って複数の行に交差し、信号を複数の行に垂直な方向に搬送するように構成された、ライダー受信ユニットに関する。
【0009】
更なる態様では、本発明は、車両の環境において物体を検出するライダー測定装置であって、
前述のライダー受信ユニットと、
光パルスを送信する複数の送信素子を有するライダー送信ユニットと、
物体を検出するために、ライダー送信ユニットを制御し、センサ素子の信号を評価する制御部と、を有するライダー測定装置に関する。
【0010】
本発明の好適な実施形態は、従属請求項に記載される。上記の特徴及び以下でさらに説明される特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれ指定された組合せだけでなく他の組合せ又は単独で使用可能であることが理解されるべきである。特に、ライダー測定装置又はライダー送信ユニットは、ライダー受信ユニットについての従属請求項に記載された実施形態に応じて実現され得る。
【0011】
ライダー受信ユニットのセンサ素子は、対応するライダー送信ユニットの光パルスを受信するように構成される。複数のセンサ素子が、ともにマクロセルを形成する。複数のマクロセルが、ともにマクロセルクラスタを形成する。ライダー受信ユニットのマクロセルクラスタは、行状に配置される。光パルスを受信する際にセンサ素子において生成される信号を評価するために、それらの信号は、センサ素子からルーティングチャネルを介してライダー受信ユニットの縁領域に搬送されなければならない。本発明によると、ルーティングチャネルは、行に垂直に配置される。ルーティングチャネルの各々は、所与の行の2つの隣接するマクロセルクラスタ間に延在する。特に、ライダー受信ユニットはセンサ素子が配置されたマイクロチップであり、信号は対応する評価電子装置が位置するチップの縁領域にルーティングされなければならない。
【0012】
ライダー受信ユニットの縁領域へのセンサ素子の信号の効率的な転送が、本発明によるルーティングチャネルの配置構成によって達成される。ライダー受信ユニット及びライダー送信ユニットの行毎の設計において、又はライダー送信ユニットの行毎の制御の場合に、行に垂直な信号のルーティングを達成することができる。結果として、高い性能が、遠位領域において確保可能となる。近位領域では、ルーティングに起因する隙間があるものの、その結果として解像度が低減され、ライダー測定装置が一定角度の解像度で動作するので、有効空間解像度が改善される。効率的なルーティングが達成される。高い解像度が達成可能となる。焦点面アレイ構成の使用によって、振動に対して高い強靭性がもたらされる。ライダー測定装置の運用寿命が改善される。さらに、製造性に関して、有利な効果がもたらされる。コスト効率の高い実現が可能となる。
【0013】
好適な実施形態では、2つのマクロセルの各々は、マクロセルクラスタを形成する。マクロセルクラスタの2つのマクロセルは、好ましくは行に平行に配置される。
【0014】
ルーティングチャネルが各々所与の行の2つの隣接するマクロセルクラスタ間に延在するので、マクロセルクラスタの2つのマクロセルは両側から読取り可能となる。効率的な読取り可能性がもたらされる。行に平行なマクロセルの配置構成によって、良好な接触性がもたらされる。
【0015】
好適な実施形態では、第1の行のマクロセルクラスタは、第1の行に隣接する第2の行のマクロセルクラスタに対してオフセットして配置される。オフセット配置構成(インターレース構造)によって、検出が実行可能でない縦方向の(行に垂直な)死角領域が、回避される。物体の検出が向上することになる。
【0016】
好適な実施形態では、ルーティングチャネルは、行間のチャネル部分において行に平行に延在する。チャネルは、少なくとも特定の部分において行に平行に延在し得る。それでもなお、信号は、アレイから行に垂直に搬送される。行に平行に延在するチャネル部分は、この場合、特に、2つの隣接する行のマクロセルクラスタが相互にオフセットして配置される場合に有利である。
【0017】
好適な実施形態では、所与の行の隣接するマクロセルクラスタ間の間隔は、隣接する行の隣接するマクロセルクラスタ間の間隔よりも大きい。追加的又は代替的に、前処理素子が、各々、センサ素子を読み取るために隣接する行間に配置される。前処理素子は、好ましくは、この場合にはトランジスタからなる。これらの間隔は、好ましくは、ライダー受信ユニットのセンサ素子の最大可能密度がもたらされるように選択される。可能な限り多くのセンサ素子が、チップ上に配置されるべきである。ルーティングは、所与の行の隣接するマクロセルクラスタ間で各々行われる。前処理素子は行間に配置され、これは大部分において比較的少ない空間しか必要としない。
【0018】
好適な実施形態では、センサ素子の直径の整数倍は、ライダー送信ユニットの割り当てられた送信素子の中心点間の間隔とは異なる。複数のセンサ素子の各々は、送信素子の光パルスを受信するので、アライメント誤差に起因して検出不良となり得る。これらの誤差のバランス化又は平均化が、センサ素子の直径又は割り当てられた送信素子の中心点間の間隔の対応する選択によって行われ得る。したがって、誤差の平準化がもたらされ、すなわち、その受信アレイ上の結像位置の観点では、少なくとも1つのマクロセルが、割り当てられた送信素子と完全には一致しないことになる。センサデータの利用性向上の点で、物体の検出が向上することになる。
【0019】
好適な実施形態では、低減した感度のセンサ素子が、マクロセルクラスタのマクロセル間に配置される。特に、開口部において金属被覆を有することにより、受信する光子が少ない送信素子が用いられてもよい。これにより、マクロセルクラスタの隣接するマクロセル間の境界識別性が向上する。物体の検出が向上することになる。
【0020】
好適な実施形態では、ライダー受信ユニットは、センサ素子の行毎の読取りのための評価電子装置を備える。評価電子装置は、チップ上に同様に好適に配置される。センサ素子の信号は、物体検出を可能とするために評価される。
【0021】
好適な実施形態では、マクロセルクラスタは、14~34個のセンサ素子を備える。
【0022】
焦点面アレイ構成は、実質的に一平面内のセンサ素子(又は送信素子)の構成を意味するものとして理解される。ライダー受信ユニットは、特に、対応するセンサ素子を有するマイクロチップである。ライダー送信ユニットも同様に、特に、対応する送信素子を有するマイクロチップである。受信ユニット及び送信ユニットは、1つのマイクロチップ上にともに配置されてもよい。センサ素子は、チップ上に行列状に配置される。センサ素子は、ライダー受信ユニットのチップの表面にわたって分散される。ライダー送信ユニットの光パルスは、特に、レーザ光のパルスを意味するものとして理解される。車両の環境は、特に、車両の付近において車両から視認可能な領域を備える。
【0023】
添付図面との関連において幾つかの選択された例示実施形態に基づいて、以下に本発明をより詳細に記載及び説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】車両の環境において物体を検出するための本発明によるライダー測定デバイスの概略図である。
図2】光パルスを送信するためのライダー送信ユニットの概略図である。
図3】本発明によるライダー受信ユニットの概略図である。
図4】本発明によるライダー受信ユニットのマクロセルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に、車両14の環境において物体12を検出するための本発明によるライダー測定装置10を模式的に示す。図示する例示的実施形態では、ライダー測定装置10は、車両14に一体化される。車両14の環境における物体12は、例えば、他の車両、静止物体(道路標識、家屋、樹木など)又は他の道路使用者(歩行者、自転車に乗る人など)であり得る。ライダー測定装置10は、好ましくは、車両14のバンパーの領域に搭載され、特に、車両の前方における車両14の環境を評価することができる。例えば、ライダー測定装置10は、フロントバンパーに一体化され得る。
【0026】
本発明によるライダー測定装置10は、ライダー受信ユニット16及びライダー送信ユニット18を備える。さらに、ライダー測定装置10は、ライダー送信ユニット18を制御するための及びライダー受信ユニット16のセンサ素子の信号を評価するための制御部20を備える。
【0027】
好ましくは、ライダー受信ユニット16及びライダー送信ユニット18の双方が、焦点面アレイ構成で構築される。それぞれの装置の素子は、実質的に、対応するチップの一平面に配置される。ライダー受信ユニット又はライダー送信ユニットのチップは、対応する光学素子(送信光学素子又は受信光学素子)の焦点に配置される。特に、ライダー受信ユニットのセンサ素子又はライダー送信ユニット18の送信素子は、それぞれの受信又は送信光学素子の焦点に配置される。この光学素子は、例えば、光学レンズ系によって構成され得る。
【0028】
ライダー受信ユニット16のセンサ素子は、好ましくはSPAD(単一光子アバランシェダイオード)として構成される。ライダー送信ユニット18は、レーザ光又はレーザパルスを送信する複数の送信素子を備える。送信素子は、好ましくはVCSEL(垂直共振器面発光レーザ)として構成される。ライダー送信ユニット18の送信素子は、送信チップの領域にわたって分散される。ライダー受信ユニット16のセンサ素子は、受信チップの領域にわたって分散される。
【0029】
送信光学素子は送信チップに割り当てられ、受信光学素子は受信チップに割り当てられる。光学素子は、空間領域から入射する光をそれぞれのチップ上に結像する。空間領域は、物体12について検証又は走査されるライダー測定装置10の視覚範囲に対応する。ライダー受信ユニット16又はライダー送信ユニット18の空間領域は、実質的に同一である。送信光学素子は、空間領域の部分領域を表す立体角において送信素子を構成する。送信素子は、レーザ光をこの立体角に対応して送信する。送信素子は、ともに空間領域全体を覆う。受信光学素子は、空間領域の部分領域を構成する立体角にセンサ素子をマッピングする。全てのセンサ素子が、空間領域全体を覆う。相互に同じ立体角画像を向く送信素子は及びセンサ素子は、相互に対して結像し、相互に対応して割り当てられ又は配置される。通常は、送信素子のレーザ光は、対応付けられたセンサ素子に結像する。複数のセンサ素子は、有利には送信素子の立体角内に配置される。
【0030】
ライダー測定装置10は、空間領域内の物体12を特定又は検出するための測定手順を実行する。この種の測定手順は、測定システム及びその電子装置の構造的設計に応じて、1以上の測定サイクルを含む。好ましくは、ここではTCSPC法(時間相関単一光子計数法)が制御部20において用いられる。ここで、個々の入射光子が、特にSPADによって検出され、センサ素子のトリガ時(検出時)が記憶素子に記憶される。検出時は、レーザ光が送信される基準時と関係する。レーザ光の飛行時間は差分から特定可能であり、それにより、物体12の距離が特定可能となる。
【0031】
ライダー受信ユニット16のセンサ素子は、一方ではレーザ光によってトリガされ、他方では環境放射によってトリガされ得る。レーザ光は、物体12の特定の距離に対して常に同じ時間で入射するが、環境照射は、任意の時間にセンサ素子をトリガする同様の可能性を有する。複数回の測定、特に複数の測定サイクルを実行すると、物体の距離に対するレーザ光の飛行時間に対応する検出時でのセンサ素子のトリガが追加されていく。これに対して、環境照射に起因するトリガは、測定サイクルの測定継続期間にわたって均等に分散される。測定値は、レーザ光の送信及びその後の検出に対応する。記憶素子に記憶された測定手順の個々の測定サイクルのデータは、物体12の距離に関する結論を出すために、複数回特定された検出時の評価を可能とする。
【0032】
センサ素子は、有利にはTDC(時間/デジタル変換器)に接続される。TDCは、記憶素子におけるセンサ素子のトリガの時刻を記憶する。この種の記憶素子は、例えば、短期記憶装置又は長期記憶装置として構成され得る。TDCは、測定手順について、センサ素子が入射光子を検出する時刻が記憶装置に入力されていく。これは、記憶素子のデータに基づくヒストグラムによってグラフィカルに示され得る。ヒストグラムでは、測定サイクルの継続時間が、非常に短い時間部分(ビンとして知られるもの)に分割される。センサ素子がトリガされると、TDCはビンの値を1だけ増加させる。レーザパルスの飛行時間、すなわち、検出時と基準時の差分に対応するビンが入力されていく。
【0033】
図2に、ライダー送信ユニット18の構造を模式的に示す。チップは、アレイ(行列)状に配置された複数の送信素子22を備える。例えば、数千個の送信素子が使用され得る。送信素子22は、行毎に制御される。より分かり易い概観を与えるために、1つの送信素子22のみに符号を付す。
【0034】
図示する例示的実施形態では、行0・・・ny-1の各々は、複数の送信素子0・・・nx-1に対応する。例えば、100行(ny=100)及び行毎に128個の送信素子(nx=128)が設けられ得る。行間の行間隔A1は、数マイクロメートル、例えば、40μmの領域にあればよい。同じ行における送信素子32間の素子間隔A2は、同程度の大きさにあればよい。
【0035】
図3に、本発明によるライダー受信ユニット16を模式的に示す。ライダー受信ユニット16は、複数のセンサ素子24を備える。センサ素子の各々は、マクロセル26、26´に配置され、マクロセル26、26´は、ライダー送信ユニットの個々の送信素子22にともに割り当てられたセンサ素子24を備える。2つのマクロセル26、26´の各々は、マクロセルクラスタ30に配置される。複数のマクロセルクラスタ30は、複数の行Z、Z、Zに配置される。ルーティングチャネル32の各々は、2つの隣接するマクロセルクラスタ30間に配置され、そのルーティングチャネルは行Z、Z、Zに交差し、センサ素子24の信号をライダー受信ユニット16の縁領域Rに搬送するように構成される。
【0036】
さらに、2つの例示的スポット位置28、28´が、図3の図示において模式的にマークされ、それらはライダー受信ユニット16のアレイにおけるライダー送信ユニットの割当て送信素子の位置に対応する。
【0037】
センサ素子24、ルーティングチャネル32、マクロセル26及びマクロセルクラスタ30の配置構成を可視化するために、図3にはライダー受信ユニット16のチップの構造の詳細のみが示されていることが理解される。チップは、図示において上方及び側方にさらに延在する。好ましくは、マクロセル数は、ライダー送信ユニット18の送信素子数に対応する。より分かり易い概観のために、全てのセンサ素子24又はマクロセル26、26´及びマクロセルクラスタ30の各々に符号が付されているわけではない。
【0038】
図示するように、図示する例示的実施形態におけるルーティングチャネル32の各々は、隣接するマクロセルクラスタ30間に延在し、信号を行Z、Z、Zのコースに垂直な方向に搬送する。図示する例示的実施形態では、この場合、ルーティングチャネルは、チャネル部分34を有し、それらは行に平行に行間の領域に延在する。結果として、第1の行のマクロセルクラスタ30は、第1の行に隣接する第2の行のマクロセルクラスタ30に対してオフセットして配置されることが可能となる。これは、縦方向において、縦方向の死角領域が形成されないという効果を有する。この点において、マクロセルクラスタ30は、インターレース構造で配置される。隣接する行のセンサ素子又はスポットは、行の隙間に配置される。
【0039】
図示する例示的実施形態にさらに示すように、所与の行の隣接するマクロセルクラスタ30間の間隔A3は、隣接する(隣り合う)行における隣接するマクロセルクラスタ30間の間隔A4よりも大きい。ルーティングチャネル32は、間隔A3内、すなわち、マクロセルクラスタ間に延在する。さらに、前処理素子、好ましくはトランジスタが、行Z、Z、Z間に配置されてもよい。
【0040】
評価電子装置38が、ライダー受信ユニット16のチップの縁領域に設けられてもよく、それはセンサ素子24を行毎に読み取り、又はセンサ素子の信号をさらに処理するように設計される。
【0041】
図4に、個々のマクロセルクラスタ30を模式的に示す。図示する例示的実施形態では、マクロセルクラスタ30は、合計28個のセンサ素子24及び2つのマクロセル26、26´をそれぞれ備える。図示する例示的実施形態では、低減した感度の2つのセンサ素子36、36´が、2つのマクロセル26、26´間又は一方若しくは両方のマクロセル26、26´の縁部に配置される。例えば、低減した感度のセンサ素子36、36´は、より少ない光子しか受信可能とならないように、開口部において金属被覆されたセンサ素子であってもよい。低減した感度のセンサ素子36、36´は、開口SPADといわれるものであってもよい。異なる数の低減した感度のセンサ素子が使用されてもよいことが理解される。
【0042】
図示では、2つの例示的スポット位置28、28´がマークされ、これらはマクロセル26、26´に割り当てられる送信素子の位置を表す。センサ素子の直径Dの整数倍は、位置P1及びP2に位置するライダー送信ユニットの割り当てられた送信素子の中心点間の間隔Dとは異なるので、アライメント誤差のバランスをとることができる。最大光子密度の各々が、マクロセルクラスタ上で送信素子のスポット位置28、28´の中心において受信される。言い換えると、スポット位置28、28´の中心における受信素子の各々が、最大光子密度を受信する。スポット位置28、28´はライダー受信ユニットのアレイに対して正確に配列可能ではないため、間隔Dの整数倍に対応する間隔Dによって、光子が両スポット位置28、28´に良好に当たるか又はそうでないかとなる。間隔D及びDの本発明による選択によってこれが回避され、不正確なアライメントの場合に、誤差の平準化が達成される。
【0043】
本発明を図面及び説明に基づいて包括的に記載及び説明した。記載及び説明は、例として理解されるべきであり、限定的なものではない。本発明は、開示された実施形態に限定されない。他の実施形態又は変形例が、本発明の適用に際して並びに図面、開示及び以降の特許請求の範囲の正確な分析において当業者に想到される。
【0044】
特許請求の範囲において、文言「備える」及び「有する」は、更なる素子/要素又はステップの存在を排除しない。不定冠詞「a」又は「an」は、複数の存在を排除しない。個々の素子/要素又は個々のユニット/部は、特許請求の範囲において言及された幾つかのユニット/部の機能を実行することができる。素子/要素、ユニット/部、インターフェース、装置及びシステムは、ハードウェア及び/又はソフトウェアにおいて部分的又は完全に実施可能である。幾つかの従属請求項における幾つかの規定の単なる言及は、それらの規定の組合せが同様に有利には使用できない旨と理解されるべきではない。特許請求の範囲における符号は、限定的なものとして理解されるべきではない。
【符号の説明】
【0045】
10 ライダー測定装置
12 物体
14 車両
16 ライダー受信ユニット
18 ライダー送信ユニット
20 制御部
22 送信素子
24 センサ素子
26 マクロセル
28 スポット位置
30 マクロセルクラスタ
32 ルーティングチャネル
34 チャネル部分
36、36´ 低減した感度のセンサ素子
図1
図2
図3
図4