(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】寝具
(51)【国際特許分類】
A47G 9/08 20060101AFI20230829BHJP
A47G 9/02 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
A47G9/08 Z
A47G9/02 H
(21)【出願番号】P 2022019616
(22)【出願日】2022-02-10
(62)【分割の表示】P 2019165286の分割
【原出願日】2019-09-11
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】520204261
【氏名又は名称】有限会社ブンカドー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】須賀田 覺信
【審査官】高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】実公昭35-013374(JP,Y1)
【文献】特開2016-129552(JP,A)
【文献】登録実用新案第3019001(JP,U)
【文献】特開平09-266829(JP,A)
【文献】特開2019-047880(JP,A)
【文献】特開2007-044170(JP,A)
【文献】登録実用新案第3080213(JP,U)
【文献】特開2018-171295(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0038775(KR,A)
【文献】実開昭57-027967(JP,U)
【文献】米国特許第07971293(US,B1)
【文献】登録実用新案第3036242(JP,U)
【文献】特開2000-005016(JP,A)
【文献】実開昭49-112517(JP,U)
【文献】登録実用新案第3085942(JP,U)
【文献】実開昭62-141380(JP,U)
【文献】登録実用新案第3152038(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 9/08
A47G 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
就寝者が横たわるためのシート状の敷き寝具と、
この敷き寝具上に横たわる就寝者を覆う上掛け寝具と、
この上掛け寝具と前記敷き寝具との間に設けられる被覆シート部材と、
を備え、
前記被覆シート部材は、矩形状である上側シート部材と、この上側シート部材と略同一の形状且つ大きさである下側シート部材とを備え、前記上側シート部材と下側シート部材とは、平面視で、前記上側シート部材及び下側シート部材の周縁部のうち、就寝者の頭側の縁端部が開放され、左側の縁端部、右側の縁端部、及び就寝者の爪先側の縁端部が閉じられており、
前記被覆シート部材の前記上側シート部材及び下側シート部材は、伸縮自在な材料により形成され、就寝者が前記敷き寝具上に横たわった状態で、幅方向において前記敷き寝具及び就寝者の全周を囲み、前記敷き寝具上に横たわった就寝者に向かって縮むように形成され、
前記上掛け寝具は、平面視で、長手方向において就寝者の頭側及び爪先側の縁端から所定長さまでの端部、並びに、幅方向において右側及び左側の縁端から所定長さまでの端部が、その他の部分よりも分厚くなるように構成され
、
前記被覆シート部材は、第1の被覆シート部材と、この第1の被覆シート部材の上面及び下面を含む外周を覆う第2の被覆シート部材と、を含み、
前記第1の被覆シート部材には、就寝者の頭側の縁端部にカバーが設けられ、このカバーは、前記第1の被覆シート部材の他の部分に対して着脱自在に取り付けられると共に、前記第2の被覆シート部材と比べて長手方向の長さが長く形成され、就寝者の頭側で折り返されて前記第2の被覆シート部材に被さるように構成されている、
ことを特徴とする寝具。
【請求項2】
前記上掛け寝具は、平面視で、長手方向において就寝者の頭側及び爪先側の縁端から所定長さまでの端部、並びに、幅方向において右側及び左側の縁端から所定長さまでの端部が、その他の部分に対して編み目の方向が異なるように構成されている、請求項1に記載の寝具。
【請求項3】
摩擦力を低減させるための摩擦力低減部材を更に備え、
この摩擦力低減部材は、前記上掛け寝具と前記被覆シート部材との間に設けられている、請求項1又は2に記載の寝具。
【請求項4】
就寝中の就寝者の体温を保つための保温シートを更に備え、
この保温シートは、前記被覆シート部材の上面に載置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の寝具。
【請求項5】
鉛直方向に延びる立壁を更に備え、
この立壁は、平面視で、前記敷き寝具の全周を囲んでいる、請求項1~4のいずれか1項に記載の寝具。
【請求項6】
前記上掛け寝具は、追加シートを備え、
この追加シートは、前記上掛け寝具の本体部に対して連結手段により着脱自在に取り付けられている、請求項1~5のいずれか1項に記載の寝具。
【請求項7】
前記被覆シート部材の上側シート部材と下側シート部材とは、ジッパーによって着脱自在に接合されている、請求項1~
6のいずれか1項に記載の寝具。
【請求項8】
更に、前記被覆シート部材は、
前記第2の被覆シート部材の上面及び下面を含む外周を覆う第3の被覆シート部材と、を含み、
前記第1の被覆シート部材の
カバーは、就寝者の頭側において、前記第2の被覆シート部材及び前記第3の被覆シート部材と比べて長手方向の長さが長く形成され
、就寝者の頭側で折り返されて前記第3の被覆シート部材に被さるように構成されている、請求項1~
7のいずれか1項に記載の寝具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝具に関し、特に、就寝者が横たわるためのシート状の敷き寝具と、この敷き寝具上に横たわる就寝者を覆う上掛け寝具と、この上掛け寝具と敷き寝具との間に設けられる被覆シート部材と、を備えた寝具に関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活において、就寝者は、敷布団又はベッドのマットレスなどの敷き寝具の上に横たわり、掛け布団、毛布又はタオルケットなどの上掛け寝具を被って就寝している。就寝者は、季節、寝室の温度、湿度又は就寝者の着衣量に応じて、適切な厚さ、大きさ、重量、材料の上掛け寝具を選択して就寝する際に使用している。
【0003】
就寝者は就寝中に無意識に複数回の寝返りを行うが、寝返りを行った際に、就寝者が被っている上掛け寝具が定位置からずれ落ちる場合がある。この上掛け寝具のずれ落ちは、寝具の種類に関係なく発生する課題であり、特に軽くて薄い寝具(例えば、毛布、タオルケットなど)を使用した場合に頻繁に発生する。上掛け寝具がずれ落ちると、身体の一部が露出するので、冬季などの室温が低い時期には、身体が冷気に触れることになる。これにより、就寝者の体温が低下して目を覚まし、快適な睡眠は妨げられる。
【0004】
一方、重くて厚い寝具(例えば、掛け布団など)を上掛け寝具として使用すると、軽い寝具の場合と比べてずれ落ちの発生を低減させることができるが、就寝者の寝返りや蹴飛ばしにより依然としてずれ落ちが発生する。また、厚い寝具は、厚みがあるため就寝者の身体のラインに沿って湾曲し難くなっている。これにより、上掛け寝具と就寝者との間に隙間が発生して冷気が侵入する。身体が冷気に触れると、就寝者の体温が低下して目を覚し、快適な睡眠は妨げられる。
【0005】
従来から、上掛け寝具のずれ落ちや隙間発生を抑制するために、上掛け寝具を敷き寝具に固定する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的に、この寝具は、伸縮自在な複数のゴム紐を用いて上掛け寝具の周縁を敷き寝具の周縁に固定している。これにより、就寝者が寝返りを行っても上掛け寝具が定位置から移動しないようにしている。また、複数のゴム紐の復元力により上掛け寝具を就寝者に密着させているので、上掛け寝具と就寝者との間に隙間が形成されないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の寝具は、上掛け寝具の平面全体を就寝者の身体に密着させるために、比較的強い復元力を有する複数のゴム紐が用いられており、ゴム紐の設置箇所において上掛け寝具と敷き寝具とを比較的強い力で引っ張り合わせている。このため、就寝者の身体の一部に対して局所的に強い力が作用し、就寝者は身体の一部に圧迫感を感じて目を覚ましてしまうという問題があった。
また、上掛け寝具及び敷き寝具のゴム紐の取り付け部分(付け根)では、ゴム紐により局所的に強い引っ張り力が作用しているため、破れたり劣化したりするおそれがあった。
【0008】
本発明は、上述した従来の寝具の問題点を解決するためになされたものであり、就寝者に快適な睡眠を提供する共に、寝具の耐久性を向上させることができる寝具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は、就寝者が横たわるためのシート状の敷き寝具と、この敷き寝具上に横たわる就寝者を覆う上掛け寝具と、この上掛け寝具と敷き寝具との間に設けられる被覆シート部材と、を備え、被覆シート部材は、矩形状である上側シート部材と、この上側シート部材と略同一の形状且つ大きさである下側シート部材とを備え、上側シート部材と下側シート部材とは、平面視で、上側シート部材及び下側シート部材の周縁部のうち、就寝者の頭側の縁端部が開放され、左側の縁端部、右側の縁端部、及び就寝者の爪先側の縁端部が閉じられており、被覆シート部材の上側シート部材及び下側シート部材は、伸縮自在な材料により形成され、就寝者が敷き寝具上に横たわった状態で、幅方向において敷き寝具及び就寝者の全周を囲み、敷き寝具上に横たわった就寝者に向かって縮むように形成され、上掛け寝具は、平面視で、長手方向において就寝者の頭側及び爪先側の縁端から所定長さまでの端部、並びに、幅方向において右側及び左側の縁端から所定長さまでの端部が、その他の部分よりも分厚くなるように構成され、被覆シート部材は、第1の被覆シート部材と、この第1の被覆シート部材の上面及び下面を含む外周を覆う第2の被覆シート部材と、を含み、第1の被覆シート部材には、就寝者の頭側の縁端部にカバーが設けられ、このカバーは、第1の被覆シート部材の他の部分に対して着脱自在に取り付けられると共に、第2の被覆シート部材と比べて長手方向の長さが長く形成され、就寝者の頭側で折り返されて第2の被覆シート部材に被さるように構成されている。
このように構成された本発明では、就寝者が被覆シート部材によって囲まれているので、就寝者の身体が冷気に触れることを防止できる。また、従来のように、ゴム紐などで引っ張る構成ではないため、就寝者が圧迫感を感じることがなく、上掛け寝具及び敷き寝具が破れることを防止できる。
また、被覆シート部材は伸縮自在な材料により形成されているので、就寝者は被覆シート部材の中に容易に入ることができる。また、被覆シート部材は就寝者に向かって縮むように形成されているので、被覆シート部材が身体に密着して被覆シート部材と就寝者との間に隙間が発生することを抑制できる。
更に、上掛け寝具は、平面視で、長手方向において就寝者の頭側及び爪先側の縁端から所定長さまでの端部、並びに、幅方向において右側及び左側の縁端から所定長さまでの端部が、その他の部分よりも分厚くなるように構成されているので、上掛け寝具がずれ落ちるのを抑制することができる。
また、被覆シート部材は、第1の被覆シート部材と、この第1の被覆シート部材の上面及び下面を含む外周を覆う第2の被覆シート部材と、を含み、第1の被覆シート部材には、就寝者の頭側の縁端部にカバーが設けられ、このカバーは、第1の被覆シート部材の他の部分に対して着脱自在に取り付けられると共に、第2の被覆シート部材と比べて長手方向の長さが長く形成され、就寝者の頭側で折り返されて第2の被覆シート部材に被さるように構成されているので、汚れが発生した場合にカバーを交換することができる。
よって、就寝者に快適な睡眠が提供でき、寝具の耐久性を向上させることができる。
【0010】
本発明では、好ましくは、上掛け寝具は、平面視で、長手方向において就寝者の頭側及び爪先側の縁端から所定長さまでの端部、並びに、幅方向において右側及び左側の縁端から所定長さまでの端部が、その他の部分に対して編み目の方向が異なるように構成されている。
このように構成された本発明では、上掛け寝具は、平面視で、長手方向において就寝者の頭側及び爪先側の縁端から所定長さまでの端部、並びに、幅方向において右側及び左側の縁端から所定長さまでの端部が、その他の部分に対して編み目の方向が異なるように構成されているので、上掛け寝具の端部が捲れることを抑制することができる。
【0011】
本発明では、好ましくは、摩擦力を低減させるための摩擦力低減部材を更に備え、この摩擦力低減部材は、上掛け寝具と被覆シート部材との間に設けられている。
このように構成された本発明では、上掛け寝具と被覆シート部材との間に摩擦力低減部材が設けられているので、上掛け寝具と被覆シート部材との間に発生する摩擦力を抑制することができる。これにより、寝返りの際に被覆シート部材が移動して、上掛け寝具が引きずられてずれ落ちるのを抑制することができる。
【0012】
また、本発明では、好ましくは、就寝中の就寝者の体温を保つための保温シートを更に備え、この保温シートは、被覆シート部材の上面に載置されている。
このように構成された本発明では、保温シートが就寝者に近接するようになっているので、就寝者は暖かくして寝ることができる。
【0013】
本発明では、好ましくは、鉛直方向に延びる立壁を更に備え、この立壁は、平面視で、敷き寝具の全周を囲んでいる。
このように構成された本発明では、敷き寝具の全周に立壁が設けられているので、上掛け寝具ずれ落ちるのを抑制することができる。
【0014】
また、本発明では、好ましくは、上掛け寝具は、追加シートを備え、この追加シートは、上掛け寝具の本体部に対して連結手段により着脱自在に取り付けられている。
このように構成された本発明では、上掛け寝具の大きさを就寝者の好みに合わせて変更することができる。
【0015】
本発明では、好ましくは、被覆シート部材の上側シート部材と下側シート部材とは、ジッパーによって着脱自在に接合されている。
また、本発明では、好ましくは、被覆シート部材は、第2の被覆シート部材の上面及び下面を含む外周を覆う第3の被覆シート部材と、を含み、第1の被覆シート部材のカバーは、就寝者の頭側において、第2の被覆シート部材及び第3の被覆シート部材と比べて長手方向の長さが長く形成され、就寝者の頭側で折り返されて第3の被覆シート部材に被さるように構成されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の寝具によれば、就寝者に快適な睡眠を提供すると共に、寝具の耐久性を向上させることを目的としている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態による寝具の全体図である。
【
図2】本発明の実施形態による寝具の分解図である。
【
図3】本発明の実施形態による寝具の被覆シート部材の分解図である。
【
図4】本発明の実施形態による寝具の被覆シート部材の裏地を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態による寝具の使用状態を示す図である。
【
図6】(a)は、本発明の実施形態において就寝者が仰向けに寝ている状態を示す図であり、(b)は、本発明の実施形態において就寝者が横向きに寝ている状態を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態による寝具を囲む外枠の斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態による上掛け寝具及びその追加シートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
先ず、
図1及び
図2を参照して、本発明の一実施形態の寝具を説明する。
本実施形態の寝具1は、就寝者が横たわって就寝するための布団セットである。本実施形態の寝具1は、寝室の床上又は畳の上に直接置かれる敷き寝具10と、就寝者を上方から覆うように被せられる上掛け寝具20と、敷き寝具10と上掛け寝具20との間に配置される被覆シート部材30とから構成されている。本実施形態の寝具1は、シングル(一人用)サイズであるが、これに限定されるものではなく、ダブル(二人用)又はトリプル(三人用)サイズなどでもよい。
【0019】
敷き寝具10は、例えば、市販されている敷き布団であるシート状の敷きものであり、就寝者が長手方向に沿うように身体を横たえる部分である。敷き寝具10は、例えば、矩形状(直方形状)であり、長手方向(縦方向)の長さが約200cm、幅方向(横方向)の長さが約100cm、厚さ(高さ方向の長さ)が約7cmである。敷き寝具10は、例えば、不使用時に持ち運びし易いように総重量が約5.5kgである軽量タイプの敷布団である。敷き寝具10は、敷き寝具の弾力性によって床からの反力が就寝者に直接伝わることを抑制できると共に、背骨の自然な形状を維持して理想の寝姿勢で就寝することができるようになっている。敷き寝具10は、理想の寝姿勢を保つために厚さが約5cm以上であることが好ましい。また、敷き寝具10としてベッド用のマットレスを使用した場合、敷き寝具10の下面から上掛け寝具20の上面までの厚さが約70cm以上になる。
【0020】
また、敷き寝具10に用いられる材料は、汗を吸収し易く且つ肌触りのよい木綿からなるものを使用することが好ましいが、繊維自体が自然保温力の豊かな羊毛の毛織物、絹織物、綿織物を使用してもよい。さらには、保温に適した天然繊維に加え、合成繊維、化学繊維の織物、例えばウレタン、テトロン、ポリエステル、ナイロンなどの織物も肌触りが良く保温性に優れた材料として採用することができる。
【0021】
敷き寝具10は、季節、室温、湿度、就寝者の年齢又は性別などに応じて、適切な大きさ、厚さ、硬さ、材料などを就寝者が適宜選択して、就寝者の好みに適合した寝具が使用される。敷き寝具10は、敷布団に限定されずに、敷布団に代えて、ベッド用マットレス、薄手の布団や毛布などを使用することができる。本実施形態の敷き寝具は、敷き寝具をシーツで覆わない状態で使用しているが、敷き寝具の表面をシーツで覆って、敷き寝具の汚れを抑制するようにしてもよい。
【0022】
上掛け寝具20は、市販品、手編みの編物などの手作り品などの種々の掛け布団であり、就寝中の就寝者の体温を保つために、敷き寝具10上に横になった就寝者の身体全体を上から覆う部分である。上掛け寝具20は、例えば、敷き寝具10の外郭より大きな矩形で形成され、長手方向の長さが約250cm、幅方向の長さが約180~200cmである。上掛け寝具20は、例えば、不使用時に持ち運びし易いように総重量が約1.8kgである軽量タイプの掛け布団である。上掛け寝具20は、冷気を通さないような厚さ、材料で構成されており、就寝者に圧迫感を感じさせないような重さで構成されている。
【0023】
上掛け寝具20は、市場に出回っている寝具であって、幅方向の長さが約75cmである寝具を二枚準備して、この二枚の上掛け寝具を幅方向に並べて縫い合わせることによって幅方向の長さが約150cmとなるように構成してもよい。これにより、上掛け寝具の材料費を低減することができると共に、敷布団に対して上掛け布団を位置合わせする際に縫い目を目印として使用することもできる。
【0024】
また、上掛け寝具20に用いられる材料は、毛糸の編み物、羊毛の毛織物、絹織物、綿織物を使用してもよい。さらには、天然繊維、リヨセルに加え、合成繊維、化学繊維の織物、羽毛などを使用してもよい。上掛け寝具20は、季節、室温、湿度、就寝者の年齢又は性別などに応じて、適切な大きさ、厚さ、硬さ、材料などを就寝者が適宜選択して、就寝者の好みに適合した寝具が使用される。上掛け寝具20として、毛布、タオルケットなどの軽量なものを使用してもよい。
【0025】
また、上掛け寝具20は、平面視において、長手方向に頭側又は爪先側の縁端から約10cmまでの端部において、その他領域と比べて分厚く編み込まれている。また、同様に、上掛け寝具20は、幅方向に左側及び右側の縁端から約10cmまでの端部において、その他領域と比べて分厚く編み込まれている。これにより、上掛け寝具20の端部が自重により鉛直方向に垂れ下がって床面に接触するようになっている(
図6参照)。上掛け寝具20の端部と床面とが接触することにより接触面において摩擦抵抗が生じるので、上掛け寝具20がずれ落ちることを抑制できる。また、この摩擦抵抗は上掛け寝具20の厚さが厚いほど大きくなるので、上掛け寝具20がずれ落ちることを抑制できる。上掛け寝具20の端部は、床面と接触するため低廉な素材により構成することが好ましい。なお、上掛け寝具20は、表面積が大きいほどずれ落ちることを抑制できる。
【0026】
上掛け寝具20は、部分的に保温効果を増大させるために、就寝者のニーズに合うように部分的に分厚く編まれている。例えば、就寝者が冷え症である場合、上掛け寝具20は、平面視で、爪先側の縁端を基準として長手方向に30cmの位置から50cmの位置までの間を分厚く編み込むことにより、就寝者の爪先を集中的に温めることができる。
【0027】
上掛け寝具20は、平面視で、頭側及び爪先側の縁端から長手方向に約10cmまでの端部、並びに、左側及び右側の縁端から幅方向に約10cmまでの端部において、その他領域とは別の編み方により編まれている。具体的に、各端部とその他領域の部分とは、編み目の方向が約90度異なるようになっている。これにより、上掛け寝具20の端部が捲れることを抑制することができる。
【0028】
被覆シート部材30は、敷き寝具10及び就寝者の幅方向の全周を取り囲む部分である。被覆シート部材30は、伸縮自在な材料により形成され、就寝者は、被覆シート部材30内であれば自由に移動することができるようになっている。
【0029】
図2、
図3を参照して、被覆シート部材30は、第1の被覆シート部材32と、第1の被覆シート部材32の外周を覆う第2の被覆シート部材34と、第2の被覆シート部材34の外周を覆う第3の被覆シート部材36とを備え、3層である多段積層式の構造により構成されている。第1の被覆シート部材32、第2の被覆シート部材34及び第3の被覆シート部材36は、同一形状且つ同一サイズの袋状で形成され、長手方向の長さが約250cm、幅方向の長さが約160~200cmの矩形で形成されている。被覆シート部材30は、第1の被覆シート部材32が第2の被覆シート部材34の中に挿入され、第1の被覆シート部材32及び第2の被覆シート部材34が第3の被覆シート部材36の中に挿入されて構成されている。即ち、この多段積層式の構造は、袋体の被覆シート部材の内側に、別の袋体の被覆シート部材が順次に挿入されることにより構成されている。
【0030】
各被覆シート部材32,34,36は、それぞれ、矩形状の布である上側シート部材32a,34a,36aと、この上側シート部材と同一形状且つ同一サイズの布である下側シート部材32b,34b,36bから構成されている。各被覆シート部材は、上側シート部材32a,34a,36aと下側シート部材32b,34b,36bとを重ねた状態で、両シート部材を糸37によって縫い合わせることにより形成している。なお、各被覆シート部材は、複数の小さな矩形状のシートを継ぎ合わせることにより構成してもよい。この場合、大量生産される比較的安い市販の布を用いて縫い合わせて構成することにより、材料費を低減することができる。また、糸の縫い目は、被覆シート部材30と敷き寝具10とを位置合わせする際に、目印として使用することができる。
【0031】
各被覆シート部材32,34,36は、平面視で、上側シート部材32a,34a,36aと下側シート部材32b,34b,36bとが重なり合った状態で、上側シート部材及び下側シート部材の周縁部のうち、左側の縁端部32c,34c,36c、右側の縁端部32d,34d,36d、及び爪先側(底側)の縁端部32e,34e,36eが糸37により縫い合わされている(
図3参照)。即ち、各被覆シート部材32,34,36は、就寝者の頭側の縁端部を除いて、平面視で、コ字形に糸37により縫われている。各被覆シート部材32,34,36は、就寝者の頭側の縁端部を開放状態にすることにより開口部32f,34f,36fが形成されている(
図2参照)。
【0032】
各被覆シート部材32,34,36の開口部32f,34f,36fは、敷き寝具10及び就寝者が通過できる程の大きさの開口面積を有している。これにより、第1の被覆シート部材32の開口部32fから敷き寝具10が挿入されて、第1の被覆シート部材32の内側に敷き寝具10が収容されるようになっている。また、第1の被覆シート部材32は、敷き寝具10が第1の被覆シート部材32内に収納された状態で、就寝者が開口部32fから中に入ることができるようになっている。なお、夏季の暑い時期には被覆シート部材32の下側シート部材32bの上にタオルケットなどの吸水性の高いシートを敷いてもよい。
【0033】
各被覆シート部材32,34,36は、メリヤス編みで編んだ布にて構成されて伸縮自在に形成されている。各被覆シート部材32,34,36は、例えば、伸縮性を有する線状材料を編んだシート状の編み物又は織物や、伸縮性線状材料又は非伸縮性線状材料をゴム編みなどすることにより伸縮性が付与されたシート状の編み物又は織物で形成してもよい。
【0034】
第1の被覆シート部材32において、頭側の縁端から長手方向に所定長さの部分である就寝者の首と接する部分には、汚れが発生した場合に交換することができるように、着脱自在なカバーにより構成してもよい。このカバーは、第1の被覆シート部材32にジッパーなどにより着脱自在に取り付けられている。このカバーは、幅方向の長さが第1の被覆シート部材32と同一の長さで、約160~200cmである。また、カバーは、長手方向の長さが第1の被覆シート部材32の半分の長さで、約160~200cmである。なお、カバーは、長手方向の長さを長くして、頭側で折り返して上掛け寝具20の上に被さるように構成してもよい。これにより、寝具全体がずれることを抑制して安定化させることができる。
【0035】
第1の被覆シート部材32の上側シート部材32aは、第2の被覆シート部材34や第3の被覆シート部材36より長手方向の長さを長くして、頭側で折り返して上掛け寝具20の上に被さるように構成してもよい。この場合、第1の被覆シート部材32の上側シート部材32aは、折り返し部分の長手方向の長さが約125cm以上の長さで形成される。これにより、第1の被覆シート部材32の上側シート部材32aの折り返し部分が第2の被覆シート部材34、第3の被覆シート部材36及び上掛け寝具20の頭側の端部を覆うために、第2の被覆シート部材34、第3の被覆シート部材36及び上掛け寝具20の端部が汚れることを防止することができる。
【0036】
各被覆シート部材32,34,36は、伸縮自在な材料であるため、素材自体又は編み方により元の形状に戻ろうとする復元力が発生するようになっている。各被覆シート部材の開口部32f,34f,36fは、敷き寝具10が第1の被覆シート部材32内に収容された状態で就寝者が通ることができる程度の大きさまで伸びるようになっている。また、各被覆シート部材32,34,36は、就寝者が敷き寝具10に横たわった状態で、敷き寝具10及び就寝者に向かって縮んで就寝者の身体に密着するようになっている。このため、就寝者が就寝中に寝返りを行っても、就寝者の姿勢の変化に追従して各被覆シート部材32,34,36が就寝者の身体に密着するようになっている。
【0037】
図4を参照して、第1の被覆シート部材32は、ボンボン編みによって形成されている。第1の被覆シート部材32の上側シート部材32aの裏地には、小さな球体であるボンボン39が複数縫い付けられている。ボンボン39は、上側シート部材32aの裏地の全面に設けられている。複数のボンボン39により、ボンボン39とボンボン39との間に複数の小さな空間が形成されて断熱効果を得ることができる。これにより、就寝者は暖かくして寝ることができる。
【0038】
各被覆シート部材32,34,36は、ボンボン編みに代えて、メリヤス編み、ゴム編み、ループ編み、鎖編みなどで形成しもよく伸縮自在であればよい。また、各被覆シート部材32,34,36が毛糸で構成される場合、毛糸の太さが太いほど使用時に就寝者に対する密着性が向上すると共に重量も増すため、就寝者に圧迫感を与えることになる。しかしながら、毛糸の太さが細いほど重量が減るため、就寝者に圧迫感を与えることを抑制できる。各被覆シート部材がカシミヤ材料により形成される寝心地がよく最も好ましい。
【0039】
また、第1の被覆シート部材32は、就寝者に直接触れるため、肌に優しい材料、例えば、綿、麻などの天然繊維、テンセル(登録商標)、リヨセルを採用するのが好ましい。綿、麻などの天然繊維は、他の材料に比べて吸水性にも優れており寝心地を向上させることができる。また、真綿、脱脂面を積層させた構造のシートを用いた場合、保温性や吸水性を向上させることができる。
【0040】
各被覆シート部材32,34,36は、医療用の包帯状のシートにより構成することができる。この場合、第1の被覆シート部材32は、平面視で、表面積が第2の被覆シート部材34や第3の被覆シート部材36よりも大きくなるように形成される。これにより、就寝者が被覆シート部材の中に入り易くなり、被覆シート部材が敷き寝具に対してずれることも抑制できる。
【0041】
また、各被覆シート部材32,34,36は、アルミ状着シートやアルミ織物により構成することもできる。これにより、被覆シート部材の耐久性を向上させることができる。アルミ状着シートやアルミ織物は、薄くてずれ易いため、縁端部に幅が小さい(例えば、約2cm)の布テープを取り付けて他の部材と固定することが出来るように構成してもよい。各被覆シート部材32,34,36は、蓄熱用のアルミ状着シートで形成して、内側を金色にし、外側を銀色にして形成してもよい。
【0042】
第1の被覆シート部材32は、真綿又は脱脂綿で形成されたシートを布シートにより上下方向から挟み込むことにより構成してもよい。これにより、保温性、水分の発散性や吸収性を向上させることができる。なお、布シートにより挟み込まれる真綿及び脱脂綿を重ね合わせることにより二重構造で構成してもよい。
【0043】
本実施形態では、上側シート部材32a,34a,36aと下側シート部材32b,34b,36bとを糸で接合したが、この糸に代えてジッパー、ボタン、紐、面ファスナーなどの脱着手段で接合してもよい。これにより、後述する保温シート40,42などの出し入れの利便性を向上させることができる。また、本実施形態では、被覆シート部材30は、就寝者の頭側を全開放状態としたが、これに代えて、一部のみだけを開放してもよく、ファスナーなどを設けて開口部32fの開口面積を調整できるようにしてもよい。
【0044】
また、各被覆シート部材32,34,36は、上側シート部材32a,34a,36aと下側シート部材32b,34b,36bとの両方を伸縮自在な材料で形成したが、上側シート部材32a,34a,36aのみを伸縮自在な材料で構成し、下側シート部材32b,34b,36bを伸縮しないように構成してもよい。被覆シート部材30は、第1の被覆シート部材32、第2の被覆シート部材34及び第3の被覆シート部材36の3層で構成したが、第1の被覆シート部材32の1層のみで構成しても、第4、第5の被覆シート部材を更に追加して4層、5層で構成してもよい。
【0045】
図3を参照して、第1の被覆シート部材32、第2の被覆シート部材34の上側には、就寝中の就寝者の体温を保つための第1の保温シート40、第2の保温シート42がそれぞれ載置されている。具体的に、第1の被覆シート部材32の上側シート部材32aと第2の被覆シート部材34の上側シート部材34aとの間に第1の保温シート40が配置されている。また、第2の被覆シート部材34の上側シート部材34aと第3の被覆シート部材36の上側シート部材36aとの間に第2の保温シート42が配置されている。各保温シートは、季節、室温、湿度に応じて適宜選択されて使用される。本実施形態では、各保温シートは、平面視で、各被覆シート部材32,34,36と同一形状且つ同一サイズで、例えば、長手方向の長さが約250cm、幅方向の長さが約160~200cmで形成される。
【0046】
第1の保温シート40は、第2の被覆シート部材34の中に挿入されて、片寄りを防ぐために、第2の被覆シート部材34の内側の四隅、長手方向の中央部分及び幅方向の中央部分において、紐によって固定されている。また、第2の保温シート42は、第3の被覆シート部材36の中に挿入されて、片寄りを防ぐために、第3の被覆シート部材36の内側の四隅、長手方向の中央部分及び幅方向の中央部分において、紐によって固定されている。
【0047】
各保温シートは、メリヤス編みで編んだ布により伸縮自在に形成されている。また、各保温シートは、カシミヤ、アンゴラ、ヤク、キャメル、羊毛などの天然繊維の編み物などの保温性に優れた材料により形成してもよい。特に、各保温シートにカシミヤを使用した場合、材料が軽いので寝心地がよく好ましい。また、各保温シートに化学繊維であるアクリル、ナイロン、ポリウレタンなどを使用してもよく、これらの材料と自然繊維とを混紡することにより保温性を高めて使用してもよい。また、各保温シートは、被覆シート部材と同様に、ボンボン編みで構成して、保温シートの裏地にボンボンを設けてもよい。
【0048】
図2を参照して、第3の被覆シート部材36の上側シート部材36aの上面には、摩擦力低減部材50が載置されている。具体的に、摩擦力低減部材50は、上掛け寝具20と第3の被覆シート部材36との間に配置されている。摩擦力低減部材50は、平面視で、例えば、各被覆シート部材32,34,36、各保温シートと同一形状且つ同一サイズであり、長手方向の長さが約250cm、幅方向の長さが約160~200cmで形成される。摩擦力低減部材50は、平面視で、各被覆シート部材32,34,36及び各保温シートと中心が一致するように配置されている。
【0049】
摩擦力低減部材50は、上掛け寝具20と第3の被覆シート部材36との接触面における摩擦力の発生を抑制できるように、比較的小さな摩擦抵抗を有する材料で形成されている。例えば、摩擦力低減部材50は、ナイロン、フッ素樹脂、シルク、テンセル(登録商標)などの摩擦係数が小さい材料で形成される。本実施形態においては、摩擦力低減部材として矩形状のシートを使用した例を示しているが、この矩形状のシートに代えて、メッシュ状のシートを使用してもよいし、複数枚のシートを分離して第3の被覆シート部材36の表面に取り付けてもよい。
【0050】
次いで、
図5及び
図6を参照して、本発明の一実施形態の寝具の使用態様を説明する。 第1の被覆シート部材32内に敷き寝具10を挿入した状態で、就寝者は、第1の被覆シート部材32の開口部32fから被覆シート部材30の中に入り、敷き寝具10の長手方向に沿って横たわる。各被覆シート部材32,34,36が伸縮自在な材料で就寝者に向かって縮むように形成されているため、各被覆シート部材32,34,36は、就寝者が横たわった状態で就寝者の身体に沿って密着する(
図5参照)。これにより、就寝者と第1の被覆シート部材32との間には隙間が殆ど生じないようになっている。
【0051】
就寝者が仰向けに寝ている状態(
図6(a))から、横向きに寝ている状態(
図6(b))に寝返りをした場合、被覆シート部材30は、就寝者の姿勢の変化に追従して就寝者の身体に密着するようになっている。就寝者が寝返りをすると、通常では上掛け寝具20と就寝者との間に大きな隙間S1が生じるが、被覆シート部材が就寝者の身体に密着して追従するので就寝者と第1の被覆シート部材32との間には僅かな隙間S2のみが生じるようになっている。これにより、就寝者はどのような態勢になっても隙間が僅かに生じるのみであるため、就寝者が寝返りをした場合に冷気が直接身体に触れることを抑制することができる。
【0052】
また、就寝者が仰向けから横向きに寝返りをした場合に、摩擦力低減部材50が比較的小さな摩擦抵抗を有する材料で形成されているため、摩擦力低減部材50が第3の被覆シート部材36に引きずられてずれ落ちることを抑制することができると共に、上掛け寝具20が摩擦力低減部材50に引きずられてずれ落ちることを抑制するこができる。第3の被覆シート部材36を表面にしわが発生し易い材料で形成した場合、複数のしわによって、第3の被覆シート部材36と摩擦力低減部材50との接触面積を減らすことができ、摩擦力低減部材50が第3の被覆シート部材36に引きずられてずれ落ちることをより抑制することができる。
【0053】
図6に示すように、上掛け寝具20の幅方向の左側及び右側の縁端は床面と接触しており、就寝者が仰向けから横向きに寝返りをした場合でも、上掛け寝具20の端部の縁端が床面に接触している。このため、上掛け寝具20内に冷気が侵入することを抑制することができ、就寝者は暖かくして寝ることができる。
【0054】
次いで、
図7を参照して、本発明のその他実施形態を説明する。
図7は、平面視で、寝具1の全周囲を囲むように、寝具1の外郭に沿って立壁60が設けられている。立壁60は、長手方向に配置される左側立壁60a、右側立壁60b、幅方向に配置される爪先側立壁60c、頭側立壁60dにより構成されている。左側立壁60a、右側立壁60bは、例えば、長手方向に200~260cmの長さで形成され、爪先側立壁60c、頭側立壁60dは、例えば、幅方向に150~210cmの長さで形成される。各立壁の高さは、例えば、40~70cmの高さで形成され、寝具1に横たわっている就寝者の身体の高さと同等又はそれ以上に設定されている。これにより、就寝者が寝返りをしても上掛け寝具20の移動が立壁60により制限されて就寝者の上面からずれ落ちないようになっている。
【0055】
立壁60は、例えば、敷き寝具10に沿って配置されるL字状の板枠、少なくとも寝具1の四隅に配置された支柱と、それら支柱の間に張られた帯状の布又は網とを備えた布枠又は網枠、寝具1の周囲を囲むように配置される長方形状の箱型の木枠、チューブ枠、スポンジ製の枠、発泡スチロール製のブロックなどで形成される。また、立壁60として、綺麗な織物、壁画が描かれた板などを用いると就寝者はより快適に寝ることができる。
【0056】
L字状の板枠は、垂直方向に延びる垂直板と、この垂直板の下端から水平方向に延びる水平板とから構成される。L字状の板枠は、水平板が敷き寝具10の下に配置されることによって、寝具1の自重により固定される。L字状の板枠は、固定状態において寝具1の垂直板が鉛直方向に立設するようになっている。L字状の板枠は、平面視で、少なくとも敷き寝具10の左側及び右側の縁端に隣接して、左側及び右側それぞれ2つずつ設けられている。L字状の板枠は、鉄板、パイプ、木材又は丸太などから構成されている。また、L字状の板枠は、安全性に配慮してゴムなどの緩衝材で覆うことが好ましい。さらに、複数のL字状の板枠の間に布を張った場合、上掛け寝具20が就寝者の上面から落下することを確実に防止することができる。
【0057】
帯状の布枠は、平面視で、寝具1の周囲に立設された複数の支柱の間に布が張られることにより構成されている。例えば、平面視で、寝具1の左側又は右側の長手方向に2本ずつ、頭側及び爪先側の幅方向に2本ずつの支柱が等間隔で設置されている。帯状の布枠は、ゴム、紐などによって支柱に固定されている。帯状の布枠は、L字状の板枠と比較して、経済的であり、材料費を抑えることができる。また、支柱は、安全性に配慮してゴム、布などの緩衝材で覆うことが好ましい。
【0058】
網枠は、平面視で寝具1の周囲に立設された複数の支柱の間に網が張られることにより構成されている。例えば、平面視で寝具1の四隅に4本の支柱が設置されている。支柱には、フックが取り付けられており、各支柱のフックに網を引っ掛けることにより網枠が張られている。L字状の板枠や帯状の布枠と比較して、材料費を抑えることができると共に、就寝者に圧迫感を与えることがなく、寝起きの際に邪魔になることがない。綱枠は、綱がたるむのを防止するために、綱の両端がゴム紐などにより引っ張られている。
【0059】
綱枠は、支柱に網を固定する方法に代えて、平面視で、寝具1を囲む矩形状の網を使用して、この網の四隅を天井に固定された4本のロープで引っ張ることにより、ハンモックのように鉛直に立設させてもよい。綱枠は、平面視で、例えば、長手方向に220cmの長さ、幅方向に150cmの長さ、40cmの高さで形成される。網は、天然繊維、化学繊維などの素材で形成される。綱の先端にゴム紐を取り付ければ綱は常にたるむことがない。
【0060】
長方形状の箱型の木枠は、平面視で、寝具1の周囲を囲むように、右側及び左側の2枚の板と、頭側及び爪先側の2枚の板とを備え、釘やボルト又はナットなどによりそれぞれが連結されている。箱型の木枠は、L字状の板枠などと比べて頑丈であり耐久性に優れているので、厚くて重量のある上掛け寝具が就寝者の上面からずれ落ちることを抑制できる。箱型の木枠は、例えば、長手方向に220cmの長さ、幅方向に150cmの長さ、40cmの高さで形成される。箱型の木枠は、長方形状に限定されずに、多角形、円形の形状で形成してもよい。
【0061】
チューブ枠は、平面視で、寝具1の周囲を囲むように、ビニール又はゴム製のチューブにより構成されている。チューブは、小さな密閉空間である空気層が上下方向に複数積み重ねられることにより構成されている。チューブは空気が注入されて膨らんだ状態で使用されるので空気層の断熱効果により、就寝者は暖かくして寝ることができる。チューブ枠は、例えば、長手方向に260cmの長さ、幅方向に170cmの長さ(ダブルサイズの場合、300cm)、45cmの高さで形成される。チューブ枠の幅は、就寝者が跨ぎ易いように50cm以下に設定されている。
【0062】
スポンジ製の枠、発泡スチロール製のブロックは、平面視で、寝具1の周囲を囲むように立設されて構成されている。スポンジや発泡スチロール製のブロックは市販のものを使用することができる。スポンジ製の枠、発泡スチロール製のブロックは、軽量であり、施工性を向上させることができる。また、スポンジや発泡スチロールは、断熱性能が高いために就寝者はより暖かくして寝ることができる。スポンジ製の枠、発泡スチロール製のブロックは、例えば、長手方向に250cmの長さ、幅方向に150cmの長さ、50cmの高さで形成される。スポンジ製の枠、発泡スチロール製のブロックの幅は、就寝者が跨ぎ易いように10cm~50cmで設定されている。
【0063】
立壁60の上方は、平面視で、立壁60の外郭より大きい矩形状の上面シート70により覆われている(
図7参照)。上面シート70は、毛織物、平織の布、断熱シート、ビニール素地のシートなどにより構成されている。上面シート70は、立壁60の上端に載置され、立壁60により囲まれた上方開口及び立壁60の壁面を覆うように構成されている。これにより、上方開口を小さくすることができるため、就寝者はより暖かくして寝ることができる。上面シート70の素材は、季節に応じて選択され、寒い時期に毛織物を使用すると、外観上、暖かな印象を与えることができる。また、上面シート70に重量がある素材を使用すると、上面シート70は自重により下方へ引っ張られるのでしわが生じることを抑制することができる。
【0064】
次いで、
図8を参照して、本発明のその他実施形態を説明する。
上掛け寝具20は、上述した通り、例えば、敷き寝具10の外郭より大きな矩形で形成され、長手方向の長さが約250cm、幅方向の長さが約180~200cmである。しかしながら、身体が大きい人、身長が高い人又は寝相が悪い人が使用すると身体の一部が露出する可能性がある。一方、上掛け寝具を露出しないように大きなサイズにて設計すると、小柄な人又は寝相が良い人にとっては必要以上のサイズであり、経済的に好ましくない。本実施態様では、上掛け寝具20は、本体シート20a及び追加シート20bにより構成され、追加シート20bは、本体シート20aに対して取り外し可能に連結されている。
【0065】
追加シート20bは、上掛け寝具の本体シート20aの左側の縁端部にファスナー22(連結手段)により脱着可能に連結されており、本体シート20a及び追加シート20bが連結した状態で全体の大きさは、長手方向の長さが約250cm、幅方向の長さが200cm~240cmである。これにより、大きなサイズの上掛け寝具を新たに購入せずに、就寝者のニーズに合わせて追加シート分を拡張できる。
【0066】
本実施形態では、連結手段としてファスナー22を用いたが、ファスナー22に代えて、糸で縫い付けても良いし、ボタンや面ファスナーなどにより上掛け寝具20と追加シート20bとを連結しても良い。
【0067】
本実施形態の寝具1は、冬季だけでなく夏季においても使用することができる。夏季に使用する被覆シート部材は、上側及び下側シート部材の左側及び右側の縁端部において、長手方向に、爪先側の縁端から約30cmの位置までが接合され、その位置から頭側の縁端までが開放されている。上側及び下側シート部材の接合には、ジッパー、紐、ボタンなどの接続具が使用されて、接合部分及び開放部分の長さが可変可能に構成されている。これにより、夏季の暑い時には、接続具により開放部分の長手方向の長さを長くし、涼しい時には、接合部分の長手方向の長さを長くできるため快適な睡眠を提供できる。また、被覆シート部材の中には、吸水性が高いタオルケットが挿入されており、タオルケットは幅方向の両端及び中央部分が被覆シート部材の内側に紐等によって固定されている。これにより、タオルケットは、被覆シート部材の中で偏ることがなく、就寝者の身体から離れることがない。
【0068】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態の寝具1は、就寝者が横たわるためのシート状の敷き寝具10と、この敷き寝具10上に横たわる就寝者を覆う上掛け寝具20と、この上掛け寝具20と敷き寝具10との間に設けられる被覆シート部材30(各被覆シート部材32,34,36)と、を備え、この被覆シート部材30は、就寝者が敷き寝具10上に横たわった状態で、幅方向において敷き寝具10及び就寝者の全周を囲んでいる。また、被覆シート部材30は、長手方向において爪先側が閉じられており、頭側が開放されている。
【0069】
このように構成された本実施形態の寝具1では、被覆シート部材30が幅方向において敷き寝具10及び就寝者の全周を囲んでいるので、従来のように局所的な引っ張り力が発生して就寝者に圧迫感を感じさせることがなく、上掛け寝具20及び敷き寝具10が破れたり劣化したりすることがない。また、被覆シート部材30により就寝者の身体が冷気と接触することを抑制することができる。よって、就寝者に快適な睡眠を提供する共に、寝具の耐久性を向上させることができる。
【0070】
また、本実施形態の寝具1は、アウトドア用品としての寝袋とは異なり、就寝者がゆったりと就寝することができる程度の大きさに構成されている。アウトドア用の寝袋は、アウトドアで携行することを前提にコンパクトに設計されており、小さ過ぎて寝返りをすることができないが、本実施形態の寝具1は就寝者が自由に寝返りを行うことができる。
【0071】
本実施形態の寝具1は、従来の掛け布団及び敷布団からなる歴史的な寝具とは異なり、被覆シート部材を用いることによって、上掛け寝具の選択肢を増やすことができ、就寝者のニーズにより応えることができる。
【0072】
本実施形態の寝具1は、被覆シート部材30(各被覆シート部材32,34,36)は、伸縮自在な材料により形成され、敷き寝具10上に横たわった就寝者に向かって縮むように形成されている。これにより、被覆シート部材30は伸縮自在な材料により形成されているので、就寝者が第1の被覆シート部材32の中に容易に入ることができる。また、各被覆シート部材32,34,36は就寝者に向かって縮むように形成されているので、寝返りにより生じる就寝者の姿勢の変化に追従して第1の被覆シート部材32が密着し、第1の被覆シート部材32と就寝者との間に隙間が発生することを抑制できる。
【0073】
また、本実施形態の寝具1では、摩擦力を低減させるための摩擦力低減部材50を更に備え、この摩擦力低減部材50は、上掛け寝具20と第3の被覆シート部材36との間に設けられているので、上掛け寝具20と第3の被覆シート部材36との間に発生する摩擦力を抑制することができる。これにより、寝返りの際に第3の被覆シート部材36が移動して、上掛け寝具20が引きずられてずれ落ちることを抑制することができる。
【0074】
本実施形態の寝具1は、就寝中の就寝者の体温を保つための保温シート40,42を更に備え、この保温シート40は、第1の被覆シート部材32と第2の被覆シート部材34との間に配置され、及び保温シート42は、第2の被覆シート部材34と第3の被覆シート部材36との間に載置されて就寝者に近接するようになっているので、就寝者は暖かくして寝ることができる。
【0075】
本実施形態の寝具1は、鉛直方向に延びる立壁60を更に備え、この立壁60は、平面視で、敷き寝具10の全周を囲んでいるので、上掛け寝具20がずれ落ちることを抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態の寝具1は、上掛け寝具20は、追加シート20bを備え、この追加シート20bが上掛け寝具の本体シート20aの左側の縁端部に、ファスナー22などの連結手段により着脱自在に取り付けられているので、上掛け寝具20の大きさを就寝者の好みに合わせて変更することができる。
【0077】
本発明の上述した実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 :寝具
10 :敷き寝具
20 :上掛け寝具
22 :ファスナー
30 :被覆シート部材
32 :第1の被覆シート部材
34 :第2の被覆シート部材
36 :第3の被覆シート部材
40 :第1の保温シート
42 :第2の保温シート
50 :摩擦力低減部材
60 :立壁
70 :上面シート
S1,S2:隙間