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特許7338907二酸化炭素がシェワネラ・プトレファシエンスの腐敗作用を抑制する効果を測定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】二酸化炭素がシェワネラ・プトレファシエンスの腐敗作用を抑制する効果を測定する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
C12Q1/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022039935
(22)【出願日】2022-03-15
(65)【公開番号】P2023105775
(43)【公開日】2023-07-31
【審査請求日】2022-03-15
(31)【優先権主張番号】202210058233.1
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516217413
【氏名又は名称】上海海洋大学
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI OCEAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.999, Huchenghuan Rd, Pudong New District, Shanghai 201306 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】謝 晶
(72)【発明者】
【氏名】李 沛▲イン▼
(72)【発明者】
【氏名】王 金鋒
(72)【発明者】
【氏名】陳 岳明
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111066874(CN,A)
【文献】LWT - Food Science and Technology,140, 110741,2021年,p. 1-10
【文献】食品科学,2010年,Vol. 31, No. 20,p. 355-359
【文献】APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY,2000年,Vol. 66, No. 8,p. 3528-3534
【文献】International Journal of Food Microbiology,1993年,19,p. 283-294
【文献】International Journal of Food Microbiology,1995年,26,p. 305-317
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを含む、二酸化炭素がシェワネラ・プトレファシエンスの腐敗作用を抑制する効果を測定する方法であって、
(1)菌液活性化:凍結保存されたシェワネラ・プトレファシエンス種を取り出して解凍し、そしてトリプトン大豆ブロス(trypticase soy broth,TSB)培地に加え、シェーカーで振盪しながら10~14時間培養し、一次培養液を得、
(2)細菌懸濁液の調製:一次培養液を液体培地に接種し、再度シェーカーで振盪しながら4~8h培養し、細菌濃度が10~10CFU/mLの細菌懸濁液を作成し、
(3)試料の準備及び処理:魚類水産物食材を用意し、前記魚類水産物食材を血抜きし、内臓を取り除き、頭部を切除する処理を行った後、複数の質量が80~120gのシート状食材にカットし、そして0~4℃の水で洗浄して水切りし、試料を作成し、
(4)細菌接種処理:複数の試料をエタノール溶液に20~40s浸漬した後、取り出し、無菌蒸留水で2~4回洗浄し、さらに紫外線で15~25min殺菌し、複数の殺菌試料を得、細菌懸濁液を細菌濃度10~10CFU/mLに希釈し、そして希釈後の細菌懸濁液を用いて殺菌試料に対して細菌接種処理を行い、複数の細菌接種処理試料を得、
(5)袋への包装:複数の細菌接種処理試料をそれぞれガス置換包装用の袋に入れ、
(6)ガス置換包装:ガス置換包装機を起動し、真空ポンプを起動し、ガス置換包装モードで包装し、包装時の鮮度保持ガス中のCOの体積百分率が0~100%であり、残部がNであり、
(7)冷蔵庫での冷蔵:包装した後の細菌接種処理試料を冷蔵庫に置き、4.0±0.5℃条件下で保存し、
(8)性能測定:それぞれ0~18日間保存した後に、冷蔵した前記細菌接種処理試料からランダムに3つを選択して並行群とし、並行群に対して、異なるCO 濃度の鮮度保持ガス条件下での各細菌接種処理試料のコロニー総数、バイオフィルム、アデノシン三リン酸含有量、スルフヒドリル基含有量、筋原線維タンパク質の三次構造及び硬度値を測定することにより、シェワネラ・プトレファシエンスの腐敗作用に対する抑制効果を測定することを特徴とする、方法。
【請求項2】
ステップ(1)において、トリプトン大豆ブロス培地の使用量は5~10mLであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(4)において、エタノール溶液の質量濃度は70~80%であり、エタノール溶液と試料の質量比は(2~4):1であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(4)において、細菌接種処理では、希釈後の細菌懸濁液が殺菌試料の質量の5~15%となるように、殺菌試料の細菌含有量を≦10CFU/mLにすることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐敗防止技術分野に属し、特にシェワネラ・プトレファシエンスの腐敗作用に対する二酸化炭素の抑制を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シェワネラ・プトレファシエンス(Shewanella putrefaciens)は、魚、エビ、貝などの新鮮な水産物の典型的な腐敗菌(specific spoilage organism,SSO)である。水産物の冷蔵期間中、シェワネラ・プトレファシエンスは、トリメチルアミンオキシドを還元してHSガスを産生することで腐った匂いを生じることができる。また、シェワネラ・プトレファシエンスが分泌する細胞外プロテアーゼはタンパク質や他の栄養素を分解し、水産物の栄養価を破壊し、風味の質を低下させることができる。シェワネラ・プトレファシエンスの成長繁殖はバイオフィルムを産生する。バイオフィルムは、乾燥状態であろうと抗生物質の使用であろうと、一定の耐性を生じる可能性があり、完全に除去することは非常に困難であり、継続的な再汚染の原因となっている。食品加工機器のバイオフィルムは、加工中にエネルギー損失を引き起こし、熱伝導効率を低下させ、生産効率に影響を与え、加工機器の腐食を引き起こす。水産物貯蔵過程においてシェワネラ・プトレファシエンスが増殖して生物被膜を形成することにより、水産物に対する腐敗作用を悪化させ、水産物加工と貯蔵に深刻な危害をもたらす。そこで、シェワネラ・プトレファシエンスの成長繁殖及び腐敗作用を抑制することは、水産物加工と貯蔵の改善にとって非常に重要である。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、シェワネラ・プトレファシエンスの腐敗作用に対する二酸化炭素の抑制を測定する方法を提供することである。シェワネラ・プトレファシエンスを無菌フウセイのスライスに接種した後、それぞれ濃度が異なるCO環境に保存し、シェワネラ・プトレファシエンスの増殖変化状況及びフウセイタンパク質の品質変化状況を検出することにより、異なる保存条件下でのシェワネラ・プトレファシエンスの成長繁殖速度を測定し、シェワネラ・プトレファシエンスの成長繁殖速度及び腐敗作用を如何に効果的に低下させるかを証明する。
【0004】
本発明の方法は、以下のステップに従って行う。
(1)菌液活性化:凍結保存されたシェワネラ・プトレファシエンス種を取り出して解凍し、そしてトリプトン大豆ブロス(trypticase soy broth,TSB)培地に加え、シェーカーで振盪しながら10~14時間培養し、一次培養液を得、
(2)細菌懸濁液の調製:一次培養液を液体培地に接種し、再度シェーカーで振盪しながら4~8h培養し、細菌濃度が10~10CFU/mLの細菌懸濁液を作成し、
(3)試料の準備及び処理:水産物食材を用意し、処理した後、複数の質量が80~120gのシート状食材にカットし、そして0~4℃の水で洗浄して水切りし、試料を作成し、
(4)細菌接種処理:複数の試料をエタノール溶液に20~40s浸漬した後、取り出し、無菌蒸留水で2~4回洗浄し、さらに紫外線で15~25min殺菌し、複数の殺菌試料を得、細菌懸濁液を細菌濃度10~10CFU/mLに希釈し、そして希釈後の細菌懸濁液を用いて殺菌試料に対して細菌接種処理を行い、複数の細菌接種処理試料を得、
(5)袋への包装:複数の細菌接種処理試料をそれぞれガス置換包装袋に入れ、
(6)ガス置換包装:袋式ガス置換包装機を起動し、真空ポンプを起動し、ガス置換包装モードで包装し、包装時の鮮度保持ガス中のCOの体積百分率が0~100%であり、残部がNであり、
(7)冷蔵庫での冷蔵:包装した後の細菌接種処理試料を冷蔵庫に置き、4.0±0.5℃条件下で保存し、
(8)性能測定:包装した細菌接種処理試料をサンプルとし、それぞれ0~18日間保存した後に、ランダムに3つのサンプルを選択して並行群とし、並行群を検出し、異なるCO濃度の鮮度保持ガス条件下でのシェワネラ・プトレファシエンスの腐敗作用に対する抑制効果を測定する。
【0005】
前記ステップ(1)において、凍結保存の温度は≦-80℃である。
【0006】
前記ステップ(1)において、解凍温度は30±2℃である。
【0007】
前記ステップ(1)において、トリプトン大豆ブロス培地の使用量は5~10mLである。
【0008】
前記ステップ(2)において、接種量は質量百分率で0.5~1.5%である。
【0009】
前記ステップ(2)において、液体培地はトリプトン大豆ブロス培地である。
【0010】
前記ステップ(3)において、水産物食材は質量が1000±50gのフウセイを使用し、フウセイの輸送過程において発泡スチロール箱に酸素を供給する。
【0011】
前記ステップ(3)において、処理とは、フウセイに対して血抜きし、内臓を取り除き、さらに頭部を切除することを指す。
【0012】
前記ステップ(4)において、エタノール溶液の質量濃度は70~80%、エタノール溶液と試料との質量比は(2~4):1である。
【0013】
前記ステップ(4)において、細菌接種処理では、希釈後の細菌懸濁液が殺菌試料の質量の5~15%となるように、殺菌試料の細菌含有量を≦10CFU/mLにする。
【0014】
前記ステップ(5)において、ガス置換包装袋は高バリア性ポリ塩化ビニリデン包装袋である。
【0015】
前記ステップ(6)において、包装する際に、それぞれのガス置換包装袋内の鮮度保持ガス体積と細菌接種処理試料の質量との比を2~4mL/g、真空引き時間を5~15s、充気時間を3~5s、ヒートシール口温度を125~150℃、鮮度保持ガス源圧力を4~6kg/cm、パワーガス源圧力を7~8kg/cmに設定し、袋式ガス置換包装機の動作が安定した後、細菌接種処理試料が入ったガス置換包装袋の袋口をガス置換及びヒートシール口に置き、ガス置換包装を行う。
【0016】
前記ステップ(8)において、検出項目は、コロニー総数、バイオフィルム、アデノシン三リン酸含有量、スルフヒドリル基(チオール基)含有量、筋原線維タンパク質の三次構造、筋原線維タンパク質の超微細構造及び硬度値である。
【0017】
前記コロニー総数の検出方法
(1)サンプル5.00gを取り、45mL滅菌生理食塩水に入れて均一に混合し、均一希釈液を作成する。(2)1mL滅菌ピペットにて均一希釈液1mLを吸い取り、壁に沿って9mL滅菌生理食塩水を注入して10倍希釈し、一次サンプル希釈液を作成する。(3)一次サンプル希釈液を均一希釈液としてステップ(2)を繰り返し、二次サンプル希釈液を作成する。上記のように、三次サンプル希釈液から十次サンプル希釈液を作成する。(4)一次サンプル希釈液から十次サンプル希釈液の中から3つのサンプル希釈液をランダムに選択し、それぞれ1mL吸い取って滅菌シャーレに入れるとともに、それぞれ1mL滅菌生理食塩水を吸い取って2つの滅菌シャーレに入れ、開口のままでクリーンベンチ内に置き、ブランク対照とする。(5)15~20mLのプレートカウント寒天培地を45±0.5℃に冷却し、前記滅菌シャーレを注入し、回転して均一に混合する。寒天が凝固した後、プレートを温度が30±1℃の生化学的インキュベータに逆さまに置いて72±3時間培養する。(6)プレートカウント法によりシャーレ内のコロニー総数を測定し、滅菌生理食塩水をブランクとして対照実験を行う。培養終了後に、コロニー総数が30~300のシャーレを選択してカウントする。
【0018】
バイオフィルムの検出方法
1mLサンプルを取って48マイクロウェルプレートに入れ、4.0±0.5℃の条件下で24時間静置培養した後、上清液を取り除き、残りの部分を滅菌リン酸緩衝液で2回洗浄して浮遊菌を除去する。前記滅菌リン酸緩衝液の濃度は0.01M、pH値=7.0である。洗浄後の材料を50±1℃で30min乾燥させ、そして濃度0.2%のクリスタルバイオレット染色液で15min染色して染色材料を得る。染色材料を水で洗浄して付着していないクリスタルバイオレット染色液を除去し、その後、50±1℃で30min乾燥させ、そして質量濃度95%のエタノール溶液に5min浸漬することでバイオフィルムに付着したクリスタルバイオレットをエタノール溶液に溶解する。クリスタルバイオレットが溶解されたエタノール溶液に対して600nmでの吸光度を測定し、吸光度の変化によりバイオフィルムの成長状況を示す。
【0019】
アデノシン三リン酸濃度の検出方法
アデノシン三リン酸キットによりサンプルのシェワネラ・プトレファシエンスアデノシン三リン酸濃度を測定する。
【0020】
スルフヒドリル基含有量の検出方法
2gサンプルを20mL冷蔵Tris-bufferAと均一に混合する。前記冷蔵Tris-bufferA中のKCl濃度は0.05M、Tris-maleate濃度は20mM、pH値は7.0である。そして、回転速度10000×g及び温度4℃の条件下で15min遠心分離して上清液を除去し、残りの材料に対して上記のように1回繰り返し、沈殿物を得る。沈殿物を20mL冷蔵Tris-bufferBと均一に混合する。前記冷蔵Tris-bufferB中のKCl濃度は0.6M、Tris-maleate濃度は20mM、pH値は7.0である。そして、4℃の条件下で3時間浸出し、浸出物を10000×gの条件下で15min遠心分離し、遠心分離して得られた上清液は筋原線維タンパク質抽出液である。総スルフヒドリル基含有量キットを用いて筋原線維タンパク質抽出液におけるスルフヒドリル基含有量を測定する。
【0021】
筋原線維タンパク質の三次構造の検出方法
筋原線維タンパク質抽出液を得た後、それを凍結乾燥し、凍結乾燥筋原線維タンパク質溶液を得る。蛍光分光光度計を用いてエミッション走査モードで凍結乾燥筋原線維タンパク質溶液を走査する。励起波長を295nm、発光波長を300~410 nmに設定して異なる群の凍結乾燥筋原線維タンパク質溶液の内因性蛍光強度(intrinsic fluorescence intensity,IFI)を測定して三次構造を表す。
【0022】
筋原線維タンパク質の超微細構造の検出方法
サンプルをサイズが3mm×3mm×1.5mmの切断サンプルにカットし、切断サンプルに質量濃度2.5%のグルタルアルデヒド溶液を加え、4℃の条件下で24時間固定し、浸出した後、液体部分を除去し、浸出後の切断サンプルを得る。0.1mol/LのpH値7.3のリン酸緩衝液で浸出後切断サンプルを毎回15minで3回すすぎ、洗浄サンプルを得る。前記リン酸緩衝液の濃度は0.1M、pH値は7.3である。そして、体積百分率がそれぞれ30%、50%、70%、80%、90%、95%及び100%のエタノール溶液を用いて順に洗浄サンプルを勾配溶出し、さらに、酢酸イソアミルで洗浄サンプル表面を洗浄してエタノールを置換し、処理サンプルを得る。処理サンプルを凍結乾燥し、イオンスパッタ装置において1min金属スパッタした後、20kV加速電圧で走査型電子顕微鏡により観察する。処理サンプルをサイズ1mm×1mm×1mmの二次切断サンプルにカットし、質量濃度2.5%のグルタルアルデヒド溶液で固定した後、リン酸塩緩衝液及び体積百分率がそれぞれ70%、80%、95%、100%のエタノール溶液を用いて順に浸漬溶出する。固定ステップ及びそれぞれの浸漬溶出ステップの時間は10minである。さらに、エポキシ樹脂で包埋し、最後に、透過型電子顕微鏡により観察する。
【0023】
硬度値の検出方法
サンプルをサイズ15mm×15mm×15mmの切断サンプルにカットし、TPAモードで測定する。測定の設定パラメータは以下の通りである。測定前のプローブ下降速度が2.00mm/s、測定速度が1.00mm/s、測定後のプローブ戻り速度が5.00mm/s、圧縮比が40%、トリガー力が5.0g、プローブタイプがp/5、データ採取速度が200.00points/sである。各群のサンプルについて3回の並行実験を行い、平均値を硬度値として求める。
【0024】
本発明の方法では、シャーレに冷却したプレートカウント寒天培地を加え、シャーレを回転させることで均一に混合する。寒天が凝固した後、プレートを生化学的インキュベータに逆さまに置いて培養し、プレートカウント法によりコロニー総数を測定し、滅菌生理食塩水をブランクとして対照試験を行う。本発明では、全てのサンプルを4±0.5℃の条件下で保存し、0~100%のCO鮮度保持ガスを用いて細菌接種処理試料を包装することにより、COは、シェワネラ・プトレファシエンスの成長繁殖速度及び細菌接種処理試料の腐敗分解を効果的に低下でき、水産物食材の品質に対するシェワネラ・プトレファシエンスの劣化速度を遅くするとともに、COは安全で環境に優しく、生産コストが比較的低く、商シェワネラ・プトレファシエンスの腐敗作用を抑制する業的価値が極めて高い手段である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施例におけるコロニー総数の検出結果の曲線図である。
図2】本発明の実施例におけるスルフヒドリル基含有量の検出結果の曲線図である。
図3】本発明の実施例におけるカルボニル基濃度の検出結果の曲線図である。
図4】本発明の実施例におけるCa2+-ATP酵素活性の検出結果の曲線図である。
図5】本発明の実施例における筋原線維タンパク質の三次構造の検出結果の曲線図である。
図6】本発明の実施例における筋原線維タンパク質の超微細構造の出結果の曲線図である。同図において、上図はSEM図であり、下図はTEM図である。上図における上段図は処理されていない場合の検出結果であり、下段図は18日間保存した後の異なる鮮度保持ガス条件での検出結果である。下図における上段図は処理されていない検出結果であり、下段図は18日間保存した後の異なる鮮度保持ガス条件での検出結果である。
図7】本発明の実施例における硬度値の検出結果の曲線図である。
【0026】
上記各図において、APは空気条件包装対照群であり、MAP1はCO含有量が0、他のガスが窒素ガスである条件での包装試験群であり、MAP2はCO体積百分率が20%、他が窒素ガスである条件での包装試験群であり、MAP3はCO体積百分率が60%、他が窒素ガス条件での包装試験群であり、MAP4はCO体積百分率が100%である条件での包装試験群である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施例で使用されるガス置換包装袋のサイズは、28cm×28cmである。
【0028】
本発明の実施例における異なるCO濃度の鮮度保持ガス条件下で18日間保存した後のコロニー総数、バイオフィルム、アデノシン三リン酸含有量、スルフヒドリル基含有量、筋原線維タンパク質の三次構造、筋原線維タンパク質の超微細構造及び硬度値の測定結果を表1に示す。
【表1】
ここで、鮮度保持ガスは、空気である場合APで表され、100%Nである場合MAP1で表され、CO20%及びN80%である場合MAP2で表され、CO60%及びN40%である場合MAP3で表され、100%COである場合MAP4で表される。
【0029】
本発明の操作手順及び特徴をより詳しく述べ、使用者がよりよく理解及び利用できるために、以下、具体的な実施形態によりさらに詳しく説明する。
【0030】
実施例1
凍結保存されたシェワネラ・プトレファシエンス種を取り出して解凍した後、トリプトン大豆ブロス培地に加え、シェーカーで振盪しながら12時間培養し、一次培養液を得る。凍結保存の温度は≦-80℃、解凍温度は30±2℃、トリプトン大豆ブロス培地の使用量は5~10mLである。
【0031】
一次培養液を液体培地に接種し、再度シェーカーで振盪しながら6時間培養し、細菌濃度が10CFU/mLの細菌懸濁液を作成する。接種量は1%(質量百分率)であり、液体培地はトリプトン大豆ブロス培地である。
【0032】
水産物食材を用意し、処理した後、複数の質量が100gのシート状食材に切り、そして0~4℃の水で洗浄した後、水切りし、試料を作成する。水産物食材として質量が1000±50gのフウセイ(Larimichthys crocea)を使用する。フウセイの輸送過程において発泡スチロール箱に酸素を供給する。前記処理とは、フウセイを血抜きし、内臓を取り除き、頭部を切除することを指す。
【0033】
複数の試料をエタノール溶液に30s浸漬した後、取り出し、無菌蒸留水で3回洗浄し、さらに紫外線で20min殺菌し、複数の殺菌試料を得る。細菌懸濁液を細菌濃度10CFU/mLに希釈し、そして希釈後の細菌懸濁液を用いて殺菌試料に対して細菌接種処理を行い、複数の細菌接種処理試料を得る。エタノール溶液の質量濃度は75%、エタノール溶液の使用量は質量比でエタノール溶液:試料=3:1である。希釈後の細菌懸濁液が殺菌試料質量の10%となるように、殺菌試料の細菌含有量を≦10CFU/mLにする。
【0034】
複数の細菌接種処理試料をそれぞれガス置換包装袋に入れる。ガス置換包装袋は、高バリア性ポリ塩化ビニリデン包装袋である。
【0035】
袋式ガス置換包装機を起動し、真空ポンプを起動し、ガス置換包装モードで包装する。包装時の鮮度保持ガス中のCOの体積百分率はそれぞれ0%(MAP1)、20%(MAP2)、60%(MAP3)及び100%(MAP4)であり、残部がNである。包装する際に、それぞれのガス置換包装袋内の鮮度保持ガスの体積と細菌接種処理試料の質量との比を3mL/g、真空引き時間を10s、充気時間を4s、ヒートシール口温度を140℃、鮮度保持ガス源の圧力を5kg/cm、パワーガス源の圧力を7.5kg/cmに設定し、袋式ガス置換包装機の動作が安定した後、細菌接種処理試料が入ったガス置換包装袋の袋口をガス置換及びヒートシール口に置き、ガス置換包装を行う。
【0036】
包装された細菌接種処理試料を冷蔵庫に置き、4.0±0.5℃の条件下で保存する。
【0037】
保存の0日、3日、6日、9日、12日、15日、及び18日目のそれぞれに、ランダムに3つのサンプルを並行群として取り、並行群を検出し、異なるCO濃度の鮮度保持ガス条件下でのシェワネラ・プトレファシエンスの腐敗作用に対する抑制効果を評価する。
【0038】
検出項目は、コロニー総数、バイオフィルム、アデノシン三リン酸含有量、スルフヒドリル基含有量、筋原線維タンパク質の三次構造、筋原線維タンパク質の超微細構造及び硬度値である。
【0039】
コロニー総数の検出方法
(1)サンプル5.00gを取り、45mL滅菌生理食塩水に入れて均一に混合し、均一希釈液を作成する。(2)1mL滅菌ピペットにて均一希釈液1mLを吸い取り、壁に沿って9mL滅菌生理食塩水を注入して10倍希釈し、一次サンプル希釈液を作成する。(3)一次サンプル希釈液を均一希釈液としてステップ(2)を繰り返し、二次サンプル希釈液を作成する。上記のように、三次サンプル希釈液から十次サンプル希釈液を作成する。(4)一次サンプル希釈液から十次サンプル希釈液の中から3つのサンプル希釈液をランダムに選択し、それぞれ1mL吸い取って滅菌シャーレに入れるとともに、それぞれ1mL滅菌生理食塩水を吸い取って2つの滅菌シャーレに入れ、開口のままでクリーンベンチ内に置き、ブランク対照とする。(5)15~20mLのプレートカウント寒天培地を45±0.5℃に冷却し、前記滅菌シャーレを注入し、回転して均一に混合する。寒天が凝固した後、プレートを温度が30±1℃の生化学的インキュベータに逆さまに置いて72±3時間培養する。(6)プレートカウント法によりシャーレ内のコロニー総数を測定し、滅菌生理食塩水をブランクとして対照実験を行う。培養終了後に、コロニー総数が30~300のシャーレを選択してカウントする。
【0040】
バイオフィルムの検出方法
1mLサンプルを取って48マイクロウェルプレートに入れ、4.0±0.5℃の条件下で24時間静置培養した後、上清液を取り除き、残りの部分を滅菌リン酸緩衝液で2回洗浄して浮遊菌を除去する。前記滅菌リン酸緩衝液の濃度は0.01M、pH値=7.0である。洗浄後の材料を50±1℃で30min乾燥させ、そして濃度0.2%のクリスタルバイオレット染色液で15min染色して染色材料を得る。染色材料を水で洗浄して付着していないクリスタルバイオレット染色液を除去し、その後、50±1℃で30min乾燥させ、そして質量濃度95%のエタノール溶液に5min浸漬することでバイオフィルムに付着したクリスタルバイオレットをエタノール溶液に溶解する。クリスタルバイオレットが溶解されたエタノール溶液に対して600nmでの吸光度を測定し、吸光度の変化によりバイオフィルムの成長状況を示す。
【0041】
アデノシン三リン酸濃度の検出方法
アデノシン三リン酸キットによりサンプルのシェワネラ・プトレファシエンスアデノシン三リン酸濃度を測定する。
【0042】
スルフヒドリル基含有量の検出方法
2gサンプルを20mL冷蔵Tris-bufferAと均一に混合する。前記冷蔵Tris-bufferA中のKCl濃度は0.05M、Tris-maleate濃度は20mM、pH値は7.0である。そして、回転速度10000×g及び温度4℃の条件下で15min遠心分離して上清液を除去し、残りの材料に対して上記のように1回繰り返し、沈殿物を得る。沈殿物を20mL冷蔵Tris-bufferBと均一に混合する。前記冷蔵Tris-bufferB中のKCl濃度は0.6M、Tris-maleate濃度は20mM、pH値は7.0である。そして、4℃の条件下で3時間浸出し、浸出物を10000×gの条件下で15min遠心分離し、遠心分離して得られた上清液は筋原線維タンパク質抽出液である。総スルフヒドリル基含有量キットを用いて筋原線維タンパク質抽出液におけるスルフヒドリル基含有量を測定する。
【0043】
筋原線維タンパク質の三次構造の検出方法
筋原線維タンパク質抽出液を得た後、それを凍結乾燥し、凍結乾燥筋原線維タンパク質溶液を得る。蛍光分光光度計を用いてエミッション走査モードで凍結乾燥筋原線維タンパク質溶液を走査する。励起波長を295nm、発光波長を300~410 nmに設定して異なる群の凍結乾燥筋原線維タンパク質溶液の内因性蛍光強度(intrinsic fluorescence intensity,IFI)を測定して三次構造を表す。
【0044】
筋原線維タンパク質の超微細構造の検出方法
サンプルをサイズが3mm×3mm×1.5mmの切断サンプルにカットし、切断サンプルに質量濃度2.5%のグルタルアルデヒド溶液を加え、4℃の条件下で24時間固定し、浸出した後、液体部分を除去し、浸出後の切断サンプルを得る。0.1mol/LのpH値7.3のリン酸緩衝液で浸出後切断サンプルを毎回15minで3回すすぎ、洗浄サンプルを得る。前記リン酸緩衝液の濃度は0.1M、pH値は7.3である。そして、体積百分率がそれぞれ30%、50%、70%、80%、90%、95%及び100%のエタノール溶液を用いて順に洗浄サンプルを勾配溶出し、さらに、酢酸イソアミルで洗浄サンプル表面を洗浄してエタノールを置換し、処理サンプルを得る。処理サンプルを凍結乾燥し、イオンスパッタ装置において1min金属スパッタした後、20kV加速電圧で走査型電子顕微鏡により観察する。処理サンプルをサイズ1mm×1mm×1mmの二次切断サンプルにカットし、質量濃度2.5%のグルタルアルデヒド溶液で固定した後、リン酸塩緩衝液及び体積百分率がそれぞれ70%、80%、95%、100%のエタノール溶液を用いて順に浸漬溶出する。固定ステップ及びそれぞれの浸漬溶出ステップの時間は10minである。さらに、エポキシ樹脂で包埋し、最後に、透過型電子顕微鏡により観察する。
【0045】
硬度値の検出方法
サンプルをサイズ15mm×15mm×15mmの切断サンプルにカットし、TPAモードで測定する。測定の設定パラメータは以下の通りである。測定前のプローブ下降速度が2.00mm/s、測定速度が1.00mm/s、測定後のプローブ戻り速度が5.00mm/s、圧縮比が40%、トリガー力が5.0g、プローブタイプがp/5、データ採取速度が200.00points/sである。各群のサンプルについて3回の並行実験を行い、平均値を硬度値として求める。
【0046】
異なる鮮度保持ガス条件で異なる保存日数で保存したコロニー総数の変化結果を図1に示す。バイオフィルムの変化結果を図2に示す。アデノシン三リン酸ATP濃度の変化結果を図3に示す。スルフヒドリル基含有量(濃度)の変化結果を図4に示す。筋原線維タンパク質の三次構造の変化結果を図5に示す。筋原線維タンパク質の超微細構造の変化結果を図6に示す。硬度値の変化結果を図7に示す。
【0047】
検出した結果、CO静菌方法により得られたシェワネラ・プトレファシエンスの成長繁殖速度は、対照群よりも顕著に低く、CO処理群のフウセイの各指標は、いずれも対照群よりも優れている。これは、シェワネラ・プトレファシエンスの成長繁殖速度及び腐敗作用を効果的に低下できることを実証している。
【0048】
実施例2
以下の相違点以外、方法は実施例1と同様である。
(1)シェーカーで振盪しながら10時間培養する。
(2)液体培地に接種し、さらにシェーカーで振盪しながら4時間培養し、細菌濃度が10CFU/mLの細菌懸濁液を作成する。接種量は0.5%(質量百分率)である。
(3)複数の質量80gのシート状食材にカットする。
(4)エタノール溶液に20s浸漬し、無菌蒸留水で4回洗浄し、紫外線で15min殺菌する。細菌懸濁液を細菌濃度10CFU/mLに希釈する。エタノール溶液の質量濃度が70%、エタノール溶液の使用量は、質量比でエタノール溶液:試料=2:1である。希釈後の細菌懸濁液が殺菌試料質量の5%となるように、殺菌試料の細菌含有量を≦10CFU/mLにする。
(5)それぞれのガス置換包装袋内の鮮度保持ガス体積と細菌接種処理試料の質量との比を2mL/g、真空引き時間を5s、充気時間を3s、ヒートシール口温度を150℃、鮮度保持ガス源圧力を4kg/cm、パワーガス源圧力を7kg/cmに設定する。
【0049】
実施例3
以下の相違点以外、方法は実施例1と同様である。
(1)シェーカーで振盪しながら14時間培養する。
(2)液体培地に接種し、さらにシェーカーで振盪しながら8時間培養し、細菌濃度が10CFU/mLの細菌懸濁液を作成する。接種量は1.5%(質量百分率)である。
(3)複数の質量120gのシート状食材にカットする。
(4)エタノール溶液に40s浸漬し、無菌蒸留水で2回洗浄し、紫外線で25min殺菌する。細菌懸濁液を細菌濃度10CFU/mLに希釈する。エタノール溶液の質量濃度が80%、エタノール溶液の使用量は、質量比でエタノール溶液:試料=4:1である。希釈後の細菌懸濁液は殺菌試料質量の15%であり、殺菌試料の細菌含有量は≦10CFU/mLである。
(5)それぞれのガス置換包装袋内の鮮度保持ガス体積と細菌接種処理試料の質量との比を4mL/g、真空引き時間を15s、充気時間を5s、ヒートシール口温度を125℃、鮮度保持ガス源圧力を6kg/cm、パワーガス源圧力を8kg/cmに設定する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7