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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】光半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/02255 20210101AFI20230829BHJP
   H01S 5/0687 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
H01S5/02255
H01S5/0687
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020515489
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(86)【国際出願番号】 JP2019017263
(87)【国際公開番号】W WO2019208575
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2018085695
(32)【優先日】2018-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019005113
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】河村 浩充
【審査官】東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01432088(EP,A1)
【文献】特開2015-060961(JP,A)
【文献】特開2014-165384(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0302051(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長可変レーザ素子と、
前記波長可変レーザ素子の出射光を、第1の光と第2の光とに分岐し出力するビームスプリッタと、
前記第1の光および前記第2の光のうち少なくとも一方の偏波状態を変化させ、他方の偏波状態とは異ならせる偏光板と、
前記第1の光および前記第2の光が入射するエタロンと、を具備し、
前記エタロンは、前記エタロンに入射する光の偏波に対応して固有の屈折率を有する材料で構成され、
前記偏光板は、前記ビームスプリッタと前記エタロンとの間に配置されている光半導体装置。
【請求項2】
前記偏光板は第1偏光板および第2偏光板を含み、
前記第1偏光板は前記第1の光の偏波状態を変化させ、前記第2偏光板は前記第2の光の偏波状態を前記第1の光とは異なる偏波状態に変化させる請求項1に記載の光半導体装置。
【請求項3】
前記ビームスプリッタは前記出射光を反射する反射面を有し、
前記偏光板は前記反射面に設けられている請求項1または2に記載の光半導体装置。
【請求項4】
前記エタロンは一様の厚さを有する請求項1から3のいずれか一項に記載の光半導体装置。
【請求項5】
前記ビームスプリッタに含まれる反射面は、前記出射光を第1の軸に向けて前記第1の光を出力する第1反射面と、前記出射光を第2の軸に向けて前記第2の光を出力する第2反射面とを有し、
前記第1の軸と前記第2の軸は互いに平行であり、かつ前記出射光の光軸とは異なる請求項に記載の光半導体装置。
【請求項6】
前記反射面は、前記出射光の一部を透過して第3の光を出力する請求項3または5に記載の光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は光半導体装置に関するものである。


【背景技術】
【0002】
出力波長を選択可能な波長可変レーザが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-034114号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示に係る光半導体装置は、波長可変レーザ素子と、前記波長可変レーザ素子の出射光を、互いに平行な第1の光と第2の光とに分岐し出力するビームスプリッタと、前記第1の光および前記第2の光を透過するエタロンと、を具備し、前記エタロンの前記第1の光に対する光路長は前記第2の光に対する光路長とは異なるものである。
【0005】
本開示に係る光半導体装置は、波長可変レーザ素子と、前記波長可変レーザ素子の出射光を、第1の光と第2の光とに分岐し出力するビームスプリッタと、前記第1の光および前記第2の光を透過するエタロンと、を具備し、前記第1の光は前記エタロンへ第1の方向から入射し前記エタロン内で第1の光路を形成し、前記第2の光は前記エタロンに前記第1の方向とは異なる第2の方向から入射し前記エタロン内で第2の光路を形成し、前記第1の光路の光路長は前記第2の光路の光路長と異なるものである。
【0006】
本開示に係る光半導体装置は、波長可変レーザ素子と、前記波長可変レーザ素子の出射光を、第1の光と第2の光とに分岐し出力するビームスプリッタと、前記第1の光および前記第2の光のうち少なくとも一方の偏波状態を変化させ、他方の偏波状態とは異ならせる偏光板と、前記偏光板を通過した前記第1の光および前記第2の光を透過するエタロンと、を具備し、前記エタロンは、前記エタロンに入射する光の偏波に対応して固有の屈折率を有する材料で構成されているものである。
【0007】
本開示に係る光半導体装置の制御方法は、波長可変レーザ素子と、前記波長可変レーザ素子の出射光を互いに平行な第1の光と第2の光とに分岐し出力するビームスプリッタと、前記第1の光および前記第2の光を透過するエタロンと、前記エタロンを通過した前記第1の光を受光する第1の検知部と、前記エタロンを通過した第2の光を受光する第2の検知部と、前記エタロンを通過する前の第2の光を受光する第3の検知部と、を具備する光半導体装置の制御方法であって、前記エタロンの前記第1の光に対する光路長は前記第2の光に対する光路長とは異なり、前記波長可変レーザ素子の出射光の目標波長に対応する駆動条件にて前記波長可変レーザ素子を駆動するステップと、前記第1の検知部および前記第2の検知部のうちいずれか一方の検知結果と前記第3の検知部の検知結果とを用いて目標波長を選択するステップと、を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1Aは実施例1に係る光半導体装置を例示する平面図である。
図1B図1Bはエタロンおよびビームスプリッタの拡大図である。
図2A図2Aはエタロンの透過特性を示す図である。
図2B図2Bはエタロンの透過特性を示す図である。
図3図3は比較例1に係る光半導体装置を例示する平面図である。
図4A図4Aはエタロンの透過特性を示す図である。
図4B図4Bはエタロンの透過特性を示す図である。
図5図5は比較例2に係る光半導体装置を例示する平面図である。
図6A図6Aはエタロンの通過特性を示す図である。
図6B図6Bはエタロンの通過特性を示す図である。
図7A図7Aはエタロンの通過特性を示す図である。
図7B図7Bはエタロンの通過特性を示す図である。
図8A図8Aはエタロンの通過特性を示す図である。
図8B図8Bはエタロンの通過特性を示す図である。
図9図9は制御部が実行する制御を例示するフローチャートである。
図10A図10Aは実施例2に係る光半導体装置を例示する平面図である。
図10B図10Bはエタロンおよびビームスプリッタの拡大図である。
図11A図11Aはエタロンの透過特性を示す図である。
図11B図11Bはエタロンの透過特性を示す図である。
図12図12は実施例3に係る光半導体装置を例示する平面図である。
図13A図13Aはエタロンの透過特性を示す図である。
図13B図13Bはエタロンの透過特性を示す図である。
図14図14は実施例4に係る光半導体装置を例示する平面図である。
図15A図15Aは実施例5に係る光半導体装置を例示する平面図である。
図15B図15Bはエタロンおよびビームスプリッタの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【本開示が解決しようとする課題】
【0009】
波長制御のためにエタロンを用いる。エタロンは光の波長および周波数に対して周期的な透過特性を有している。エタロンの透過特性は、極大値を示すピークと極小値を示すボトムとの間では波長に対して単調増加および単調減少であるが、ピークおよびボトム近傍では単調増加および単調減少ではない。したがって、波長制御が困難である。そこで、安定した波長制御が可能な光半導体装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【本開示の効果】
【0010】
本開示によれば、安定した波長制御が可能である。
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
本開示の一形態は、(1)波長可変レーザ素子と、前記波長可変レーザ素子の出射光を、互いに平行な第1の光と第2の光とに分岐し出力するビームスプリッタと、前記第1の光および前記第2の光を透過するエタロンと、を具備し、前記エタロンの前記第1の光に対する光路長は前記第2の光に対する光路長とは異なる光半導体装置である。これにより1つのエタロンの透過特性を調整することができ、製造バラツキおよび組み立てバラツキなどを抑制することができる。しがたって安定した波長制御が可能となる。
(2)前記エタロンは前記第1の光に対する光路長を画定する第1の部位と、前記第2の光に対する光路長を画定する第2の部位とを有し、前記第1の部位の厚さは前記第2の部位の厚さとは異なってもよい。エタロンの厚さが変わることで、第1の光の光路長は第2の光の光路長より大きくなる。このため安定した波長制御が可能である。
(3)波長可変レーザ素子と、前記波長可変レーザ素子の出射光を、第1の光と第2の光とに分岐し出力するビームスプリッタと、前記第1の光および前記第2の光を透過するエタロンと、を具備し、前記第1の光は前記エタロンへ第1の方向から入射し前記エタロン内で第1の光路を形成し、前記第2の光は前記エタロンに前記第1の方向とは異なる第2の方向から入射し前記エタロン内で第2の光路を形成し、前記第1の光路の光路長は前記第2の光路の光路長と異なる光半導体装置である。これにより1つのエタロンの透過特性を調整することができ、製造バラツキおよび組み立てバラツキなどを抑制することができる。しがたって安定した波長制御が可能となる。
(4)前記ビームスプリッタは第1の反射面と第2の反射面とを備え、前記第1の反射面は前記出射光の一部を前記第1の光として前記第1の方向に出力し、前記第2の反射面は前記出射光の他の一部を前記第2の光として前記第2方向に出力してもよい。これにより非平行な第1の光および第2の光を形成し、エタロンへの入射角を互いに異ならせることができる。
(5)波長可変レーザ素子と、前記波長可変レーザ素子の出射光を、第1の光と第2の光とに分岐し出力するビームスプリッタと、前記第1の光および前記第2の光のうち少なくとも一方の偏波状態を変化させ、他方の偏波状態とは異ならせる偏光板と、前記偏光板を通過した前記第1の光および前記第2の光を透過するエタロンと、を具備し、前記エタロンは、前記エタロンに入射する光の偏波に対応して固有の屈折率を有する材料で構成されている光半導体装置である。これにより1つのエタロンの透過特性を調整することができ、製造バラツキおよび組み立てバラツキなどを抑制することができる。しがたって安定した波長制御が可能となる。
(6)前記偏光板は第1偏光板および第2偏光板を含み、前記第1偏光板は前記第1の光の偏波状態を変化させ、前記第2偏光板は前記第2の光の偏波状態を前記第1の光とは異なる偏波状態に変化させてもよい。第1の光および第2の光の偏波状態を調整することができるため、より安定した波長制御が可能である。
(7)前記ビームスプリッタは前記出射光を反射する反射面を有し、前記偏光板は前記反射面に設けられてもよい。これにより安定した波長制御が可能となる。
(8)前記エタロンは一様の厚さを有してもよい。一様な厚さのエタロンに、入射角の異なる第1の光および第2の光が入射することで、エタロンの透過特性を調整することができる。
(9)前記ビームスプリッタは、前記出射光を第1の軸に向けて前記第1の光を出力する第1反射面と、前記出射光を第2の軸に向けて前記第2の光を出力する第2反射面とを有し、前記第1の軸と前記第2の軸は互いに平行であり、かつ前記出射光の光軸とは異なってもよい。これにより平行な第1の光および第2の光を形成し、エタロンへの入射角を等しくすることができる。
(10)前記反射面は、前記出射光の一部を透過して第3の光を出力してもよい。エタロンを透過しない第3の光の強度を検出し、第3の光と第1の光との強度の比、および第3の光と第2の光との強度の比に基づいて波長制御を行う。
(11)波長可変レーザ素子と、前記波長可変レーザ素子の出射光を互いに平行な第1の光と第2の光とに分岐し出力するビームスプリッタと、前記第1の光および前記第2の光を透過するエタロンと、前記エタロンを通過した前記第1の光を受光する第1の検知部と、前記エタロンを通過した第2の光を受光する第2の検知部と、前記エタロンを通過する前の第2の光を受光する第3の検知部と、を具備する光半導体装置の制御方法であって、前記エタロンの前記第1の光に対する光路長は前記第2の光に対する光路長とは異なり、前記波長可変レーザ素子の出射光の目標波長に対応する駆動条件にて前記波長可変レーザ素子を駆動するステップと、前記第1の検知部および前記第2の検知部のうちいずれか一方の検知結果と前記第3の検知部の検知結果と用いて目標波長を選択するステップと、を含む光半導体装置の制御方法である。安定した波長制御が可能となる。
(12)前記波長可変レーザ素子の駆動情報を格納するメモリをさらに備える光半導体装置の制御方法であって、前記目標波長を選択するステップは、前記目標波長に基づいて前記メモリに格納されている前記第1の検知部および前記第2の検知部のいずれを用いるのか選択するステップを含んでもよい。これにより安定した波長制御が可能となる。
【0012】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る光半導体装置およびその制御方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【実施例1】
【0013】
図1Aは実施例1に係る光半導体装置100を例示する平面図である。一点鎖線は光を示す。X方向とY方向とは互いに直交する。図1Aに示すように、光半導体装置100は、パッケージ10、TEC(Thermoelectric Cooler)12、キャリア14、波長可変レーザ素子16、レンズフォルダ18、ビームスプリッタ20および22、エタロン24、受光素子26、28および30を有する。
【0014】
パッケージ10の上面はXY平面に広がり、上面にTEC12が搭載されている。TEC12の上にキャリア14、レンズフォルダ18、ビームスプリッタ20および22、エタロン24、受光素子26、28および30が搭載されている。キャリア14の上には波長可変レーザ素子16が搭載されている。
【0015】
レンズフォルダ18は波長可変レーザ素子16の出力端の-X側に位置し、ビームスプリッタ20はレンズフォルダ18の-X側に位置する。ビームスプリッタ22はビームスプリッタ20の+Y側に位置し、受光素子30はビームスプリッタ22の+Y側に位置する。エタロン24はビームスプリッタ22の+X側に位置する。受光素子26および28はエタロン24の+X側に位置し、Y方向に沿って並ぶ。
【0016】
TEC12はペルチェ素子を含み、波長可変レーザ素子16およびエタロン24の温度を制御する温度制御装置として機能する。波長可変レーザ素子16は、波長を制御可能なチューナブル半導体レーザを備え、レーザ光L0を出力する。波長可変レーザ素子16は、例えば部分回折格子活性領域(SG-DFB:Sampled Grating Distributed Feedback)、CSG-DBR(Chirped Sampled Grating Distributed Bragg Reflector)領域、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)領域を含む。SG-DFB領域にキャリア注入することで、波長可変レーザ素子16は発振する。例えばCSG-DBR領域にヒータが設けられ、ヒータに電力が入力されることでCSG-DBR領域の温度が変化し、屈折率が変化する。これによりレーザ光L0の波長が変化する。SOA領域に電流が入力されることで、レーザ光L0の強度が調整される。レンズフォルダ18はレンズを保持する。
【0017】
ビームスプリッタ20および22は例えばキューブ型のビームスプリッタである。ビームスプリッタ20は、波長可変レーザ素子16から出力されるレーザ光L0の一部を-X側に透過させ、一部を+Y側に反射する。ビームスプリッタ20を透過したレーザ光L0が、光半導体装置100から外部に出力される出力光である。
【0018】
ビームスプリッタ22は、互いに平行な2つの反射面22aおよび22bを有する。反射面22b(第2反射面)にはビームスプリッタ20において分岐されたレーザ光L0の1つが入射し、反射面22bでさらに分岐する。反射面22bで分岐した光のうちの1つである光L2(第2の光)は+X方向に伝搬し、エタロン24を透過し、受光素子28に入力する。反射面22bを透過した光は反射面22a(第1反射面)に入射し、分岐する。反射面22aで分岐した光のうちの1つである光L1(第1の光)は+X方向に伝搬し、エタロン24を透過し、受光素子26に入力する。光L1およびL2の光軸は互いに平行であり、レーザ光L0の光軸とは異なる方向である。反射面22bおよび22aを透過した光は受光素子30に入力する。
【0019】
エタロン24は例えば水晶などで形成されている。エタロン24の透過率は、入射光の波長に応じて周期的に変化する。受光素子26、28および30は例えばフォトダイオードであり、光を受光することで電流を出力する。
【0020】
図1Bはエタロン24およびビームスプリッタ22の拡大図である。図1Bに示すようにエタロン24はX軸およびY軸に対して傾斜しており、エタロン24とY軸との間の角度はθ1である。エタロン24の面24cは受光素子26および28に対向する平坦な面である。面24aおよび24bは、面24cとは反対側の面であり、ビームスプリッタ22に対向する。面24aは、ビームスプリッタ22の反射面22aの+X側に位置し、光L1が入射する。面24bは、反射面22bの+X側に位置し、光L2が入射する。互いに平行な反射面22aおよび22bで形成される光L1と光L2とは、互いに平行である。このため光L1のエタロン24への入射角は光L2の入射角に等しく、θ1である。
【0021】
面24aと面24bとの間には段差24dが形成されている。エタロン24の厚さは段差24dを境界として変化し、面24bと面24cとの間における厚さT2は、面24aと面24cとの間における厚さT1より大きい。これにより、エタロン24における光L1の光路長は、エタロン24における光L2の光路長より小さくなる。したがって、エタロン24における光L1が確定する部位の光路長は、エタロン24における光L2が確定する部位の光路長より小さくなる。
【0022】
受光素子30はエタロン24を透過しない光を受光し、光電流Im3を出力する。受光素子26は、エタロン24の面24aと面24cとの間を透過する光L1を受光し、光電流Im1を出力する。受光素子28は、エタロン24の面24bと面24cとの間を透過する光L2を受光し、光電流Im1を出力する。各光の強度に応じて光電流は変化する。光電流Im1とIm3との比は光L1とL3との強度の比、Im2とIm3との比は光L2とL3との強度の比に対応し、これらに基づいて波長制御を行う。
【0023】
制御部35はTEC12、波長可変レーザ素子16、受光素子に電気的に接続された電子機器であり、TEC12および波長可変レーザ素子16電気信号を出力し、また受光素子から出力される光電流を検出する。制御部35が波長可変レーザ素子16の不図示のヒータに電力を入力することで、波長可変レーザ素子16の温度が変化し、発振波長が変化する。また、制御部35が波長可変レーザ素子16のSOA領域に電流を入力することで、波長可変レーザ素子16の出射光の強度が変化する。制御部35はメモリを含み、メモリには波長に応じた透過率が格納されている。
【0024】
図2Aおよび図2Bはエタロン24の透過特性を示す図である。エタロン24の透過特性は、エタロン24内での光の光路長(エタロン24の共振器長)、エタロン24の屈折率、および光の入射角により定まる。実施例1では、光L1と光L2とで光路長を異ならせることで、図2Aおよび図2Bのような所望の透過特性を実現し、安定した波長制御を可能とする。実施例1における透過特性を説明する前に、比較例を説明する。
【0025】
(比較例1)
図3は比較例1に係る光半導体装置100Rを例示する平面図である。図3に示すように、ビームスプリッタ21はビームスプリッタ20の+Y側に位置し、1つの反射面を有する。受光素子30はビームスプリッタ20の+Y側に位置し、ビームスプリッタ20を透過した光を受光する。エタロン24および受光素子26はビームスプリッタ21の+X側に位置し、光L1が入射する。
【0026】
図4Aおよび図4Bはエタロン24の透過特性を示す図である。横軸は光の周波数を表し、図4Aでは191.250THz~191.450THzの範囲、図4Bでは196.100THz~196.300THzの範囲である。縦軸は光電流の比Im1/Im3であり、エタロン24の透過特性を表す。図4Aおよび図4Bに示すように、比Im1/Im3、すなわち透過特性は周波数および波長に対して周期的に変化する。つまり比が極大値を取るピークPと、極小値を取るボトムBとが交互に並ぶ。比Im1/Im3を所望の値とすることで、目標とする周波数、すなわち波長を有するレーザ光を出力することができる。
【0027】
ピークPとボトムBとの間では、周波数の上昇に対して比は単調増加または単調減少するため、比に基づく波長制御が容易である。しかしピークP付近およびボトムB付近では比が単調増加および単調減少しない。すなわちピークP付近では、極大値を挟んで、周波数の上昇に対して比が増加する部分と減少する部分とが存在する。ボトムB付近でも極小値を挟んで増加部分と減少部分とが存在する。このため波長制御が困難である。
【0028】
(比較例2)
図5は比較例2に係る光半導体装置200Rを例示する平面図である。図5に示すように、ビームスプリッタ21の+X側にビームスプリッタ23が配置され、ビームスプリッタ23の+X側にエタロン24が配置され、+Y側にエタロン25が配置される。ビームスプリッタ23は、ビームスプリッタ21から出力される光を光L1およびL2に分岐する。受光素子26はエタロン24を透過した光L1を受光し、受光素子28はエタロン25を透過した光L2を受光する。
【0029】
図6Aから図8Bはエタロン24および25の通過特性を示す図である。実線は比Im1/Im3を表し、エタロン24の通過特性に対応する。破線は比Im2/Im3を表し、エタロン25の通過特性に対応する。
【0030】
図6Aおよび図6Bに示すように、比Im1/Im3と比Im2/Im3とは同じ周期を有し、互いに約1/4周期ずれている。このため、比Im1/Im3がピークP1またはボトムB1となる周波数において、比Im2/Im3は単調増加または単調減少を示す。このとき、比Im2/Im3を用いて波長制御を行えばよい。また、比Im2/Im3がピークP2またはボトムB2となる周波数において、比Im1/Im3は単調増加または単調減少を示す。このとき、比Im1/Im3を用いて波長制御を行えばよい。
【0031】
しかし、2つのエタロン24および25、ビームスプリッタ20、21および23など多くの要素を用いるため、これらの製造バラツキおよび組み立てのバラツキなどにより、2つのエタロン24および25の透過特性を図6Aおよび図6Bのように調整することは困難である。例えばエタロンの厚さのバラツキ、入射角のバラツキなどにより、意図する透過特性が得られないことがある。
【0032】
図7Aおよび図7Bの例では、ピークP1とピークP2とが同一の周波数に位置し、ボトムB1とボトムB2とが同一の周波数に位置する。図8Aおよび図8Bの例では、ピークP1とボトムB2とが同一の周波数に位置し、ボトムB1とピークP2とが同一の周波数に位置する。このためエタロン24および25のどちらを用いても波長の制御が困難である。
【0033】
一方、実施例1は図1Aおよび図1Bに示すように、1つのエタロン24、ビームスプリッタ20および22を用いるものであり、比較例2に比べ構成が簡単である。このため製造バラツキおよび組み立てバラツキを抑制することができる。エタロン24の厚さT1およびT2、エタロン24のY軸に対する角度θ1などを精度高く調整し、光L1およびL2の光路長および入射角などを、より正確に定めることができる。前述のように、エタロン24の透過特性は光路長、入射角および屈折率により定まる。実施例1では光L1およびL2の光路長を異ならせることにより、光L1に対するエタロン24の透過特性を光L2に対する透過特性とは異なるものとする。したがって安定した波長制御が可能となる。
【0034】
表1はエタロン24への光L1およびL2の入射角、エタロン24の厚さ、エタロン24の屈折率、エタロン24の反射率を例示する表である。
【表1】
表1に示すように、光L1およびL2について入射角、屈折率、反射率は同じである。一方、エタロン24の光L2が透過する部分の厚さ(光路長)は0.97mm+0.14μmであり、光L1が透過する部分の厚さである0.97mmより0.14μm大きい。これにより、光L1に対するエタロン24の透過特性(Im1/Im3に対応)と、光L2に対するエタロン24の透過特性(Im2/Im3に対応)とを図2Aおよび図2Bのように調整することができる。
【0035】
191.250~196.300THzの範囲において、比Im1/Im3と、比Im2/Im3とは同じ周期を有し、互いに約1/4周期ずれている。このため、比Im1/Im3がピークP1またはボトムB1となる周波数において、比Im2/Im3は単調増加または単調減少を示す。このとき、比Im2/Im3を用いて波長制御を行えばよい。また、比Im2/Im3がピークP2またはボトムB2となる周波数において、比Im1/Im3は単調増加または単調減少を示す。このとき、比Im1/Im3を用いて波長制御を行えばよい。
【0036】
図9は制御部35が実行する制御を例示するフローチャートである。制御部35は波長要求を取得する(ステップS20)。制御部35は、目標波長に対応する制御の条件をメモリから抽出する(ステップS22)。次に、制御部35は、波長可変レーザ素子16を駆動させ(ステップS24)、TEC12を駆動させる(ステップS26)。このときの電流および電力は、図3に示した初期設定値のうち要求波長に対応する値である。
【0037】
制御部35は不図示の温度センサから取得する温度が設定範囲内にあるか否かを判定する(ステップS28)。設定範囲とは、波長可変レーザ素子16およびエタロンの目標温度を中心とする所定範囲である。Noと判定された場合、制御部35は、温度THが設定範囲内となるようにTEC12に供給される電流値を変更する。制御部35はAFCおよびAPCを並行して実行する。まずAFCについて説明する。
【0038】
制御部35は、受光素子26および28から出力される電流Im1および電流Im2、受光素子30から出力される電流Im3を取得し、これらの比を算出する(ステップS30)。比Im1/Im3およびIm2/Im3(透過率)のうち、いずれか一方を用いて波長制御を行う。制御部35のメモリには波長に対する比の値が記憶されており、当該値を参照して比のうち単調増加または単調減少を示す側を選択し、AFCに用いる。
【0039】
制御部35は比が目標範囲内にあるか否かを判定する(ステップS32)。目標範囲とは、例えば図2Aおよび図2Bに示したように、周波数に対応する比Im1/Im3およびIm2/Im3の値から所定の範囲である。
【0040】
Noと判定された場合、制御部35は、例えば波長可変レーザ素子16のヒータに入力する電力Pを制御する(ステップS34)。これにより波長可変レーザ素子16の温度を変化させ、発振波長を目標波長へと調整する。比を所望の範囲とすることで、波長制御が可能である。比が目標範囲内であれば、所望の波長が得られる。この場合Yesと判定され、制御部35はその状態を維持するようにAFCを継続する。
【0041】
次にAPCについて説明する。制御部35は受光素子30が出力する電流Im3を取得し(ステップS36)、電流Im3が設定範囲内であるか否かを判定する(ステップS38)。設定範囲とは電流の目標値を中心とする所定の範囲である。Noと判定された場合、制御部35は波長可変レーザ素子16のSOA領域に入力する電流Iを制御する(ステップS40)。Yesと判定された場合、制御部35はその状態を維持するようにAPCを継続する。ステップS38およびS48でYesと判定されると、制御は終了する。
【0042】
1つのエタロン24が異なる厚さT1およびT2を持つことで、光L1と光L2とに対して光路長を異ならせる。製造バラツキは2つのエタロンよりも小さくなるため、安定した波長制御が可能となる。
【0043】
ビームスプリッタ22は互いに平行な反射面22aおよび22bを有し、互いに平行な光L1およびL2を出射する。エタロン24への入射角は等しく、エタロン24の光L1およびL2に対する屈折率も同一である。このため、主に厚さ(光路長)の調整により透過特性の制御でき、安定した波長制御が可能である。
【実施例2】
【0044】
図10Aは実施例2に係る光半導体装置200を例示する平面図であり、図10Bはエタロン24およびビームスプリッタ22の拡大図である。実施例1と同じ構成については説明を省略する。
【0045】
図10Aおよび図10Bに示すように、エタロン24のビームスプリッタ22に対向する面24eは平坦であり、段差は形成されていない。つまり、エタロン24の厚さは一様である。エタロン24の面24fは面24eとは反対側の面であり、受光素子26および28に対向する。
【0046】
ビームスプリッタ22は2つの反射面22aおよび22bを有する。反射面22aと反射面22bとは非平行であり、これらの間の角度はθ2である。反射面22aおよび22bは、それぞれ入射する光を分岐する。反射面22aから+X方向に光L1が出力する。反射面22bから、+X方向とは角度θ2ずれた方向に光L2が出力する。
【0047】
光L1と光L2とは非平行であり、エタロン24への入射角も互いに異なる。エタロン24の厚さは一様であるが、入射角が異なるため、光L1の光路長は光L2の光路長とは異なることとなる。このため、光L1に対するエタロン24の透過特性は光L2に対する透過特性とは異なるものとなる。実施例2によれば、実施例1と同様に、製造バラツキおよび組み立てバラツキを抑制することができ、安定した波長制御が可能である。
【0048】
表2はエタロン24への光L1およびL2の入射角、エタロン24の厚さ、エタロン24の屈折率、エタロン24の反射率を例示する表である。
【表2】
表2に示すように、光L1およびL2に対する、厚さ、屈折率、反射率は同じである。一方、光L2の入射角は1.73+0.43°であり、光L1の入射角1.73°より0.43°大きい。これにより、光L1に対するエタロン24の透過特性(Im1/Im3に対応)と、光L2に対するエタロン24の透過特性(Im2/Im3に対応)とを図11Aおよび図11Bのように調整することができる。
【0049】
図11Aおよび図11Bはエタロン24の透過特性を示す図である。比Im1/Im3と、比Im2/Im3とは同じ周期を有し、互いに約1/4周期ずれている。このため、実施例2によれば、実施例1と同様に安定した波長制御が可能である。
【0050】
実施例2によれば、ビームスプリッタ22が非平行な2つの反射面22aおよび22bを有することで、1つのエタロン24への光L1およびL2の入射角を異ならせる。なお、面24eと面24fとの間における厚さは同じであるが、面24eのそれぞれでの部位における光L1およびL2の入射角は異なる。これにより、エタロン24における光L1の光路長は、エタロン24における光L2の光路長より小さくなる。したがって、エタロン24における光L1が確定する部位の光路長は、エタロン24における光L2が確定する部位の光路長より小さくなる。また、製造バラツキおよび組み付けバラツキが抑制されるため、安定した波長制御が可能である。
【0051】
エタロン24が一様な厚さを有し、エタロン24の光L1およびL2に対する屈折率も同一である。このため、主に反射面22aおよび22b間の角度θ2の調整により透過特性の制御が可能である。これにより安定した波長制御が可能である。
【実施例3】
【0052】
図12は実施例3に係る光半導体装置300を例示する平面図である。実施例1または2と同じ構成については説明を省略する。図12に示すように、エタロン24の厚さは一様であり、ビームスプリッタ22は互いに平行な2つの反射面22aおよび22bを有する。反射面22aから出射する光L1と、反射面22bから出射する光L2とは互いに平行である。
【0053】
ビームスプリッタ22のエタロン24と対向する面には偏光板32および34が設けられている。X軸方向において、偏光板32は反射面22aとエタロン24との間に位置し、偏光板34は反射面22bとエタロン24との間に位置する。
【0054】
光L1は、偏光板32(第1偏光板)を透過することで偏波状態が変化した後、エタロン24に入射する。光L2は、偏光板34(第2偏光板)を透過することで偏波状態が変化した後、エタロン24に入射する。偏光板透過後の光L1の偏波状態は光L2の偏波状態とは異なる。
【0055】
エタロン24は例えば水晶などの異方性結晶で形成され、入射する光の偏波状態に応じて固有の屈折率を有する。光L1およびL2は互いに異なる偏波状態であるため、エタロン24の光L1に対する屈折率は光L2に対する屈折率とは異なる。したがって、光L1に対するエタロン24の透過特性は光L2に対する透過特性とは異なるものとなる。実施例3によれば、製造バラツキおよび組み立てバラツキを抑制することができ、安定した波長制御が可能である。
【0056】
表3はエタロン24への光L1およびL2の入射角、エタロン24の厚さ、エタロン24の屈折率、エタロン24の反射率を例示する表である。
【表3】
表3に示すように、光L1およびL2に対する、入射角、厚さ(光路長)、反射率は同じである。一方、光L2に対する屈折率は1.544937であり、光L1に対する屈折率1.5443より大きい。これにより、光L1に対するエタロン24の透過特性(Im1/Im3に対応)と、光L2に対するエタロン24の透過特性(Im2/Im3に対応)を図13Aおよび図13Bのように調整することができる。
【0057】
図13Aおよび図13Bはエタロン24の透過特性を示す図である。比Im1/Im3と、比Im2/Im3とは同じ周期を有し、互いに約1/4周期ずれている。このため、実施例3によれば、実施例1および2と同様に安定した波長制御が可能である。
【0058】
実施例3によれば、複屈折を生じさせる1つのエタロン24、偏光板32および34を用いればよいため、製造バラツキおよび組み付けバラツキが抑制される。したがって安定した波長制御が可能である。
【0059】
エタロン24は一様な厚さを有し、ビームスプリッタ22は互いに平行な反射面22aおよび22bを有する。偏光板32および34透過後の偏波状態、およびエタロン24の屈折率の調整により透過特性の制御が可能であり、安定した波長制御が可能である。偏光板は1つでもよく、光L1およびL2の少なくとも一方の偏波状態を変化させればよい。これは、光L1およびL2の偏波状態が異ならせることで、同様の効果を得ることができるためである。なお、偏波状態を精度高く調整するには光L1およびL2それぞれに対応して偏光板32および34を設けることが好ましい。
【実施例4】
【0060】
図14は実施例4に係る光半導体装置400を例示する平面図である。実施例3と同じ構成については説明を省略する。図14に示すように、ビームスプリッタ22は互いに平行な2つの反射面22aおよび22bを有し、反射面22aには偏光反射板36が設けられている。偏光反射板36は例えば反射型偏光フィルムなどであり、光の偏波状態を変化させ、かつ反射する。なお、2つの反射面22aおよび22bは、一部の光を反射し、一部の光を透過するものである。偏光反射板36は、偏波状態が変化する光L1を反射し、偏波状態が変化する光L3を透過する。
【0061】
偏光反射板36において反射することで偏波状態が変化した光L1は、エタロン24に入射する。光L1の偏波状態は光L2の偏波状態とは異なる。エタロン24の光L1に対する屈折率は光L2に対する屈折率とは異なる。したがって、実施例4によれば、光L1に対するエタロン24の透過特性を光L2に対する透過特性とは異なるものとなり、安定した波長制御が可能となる。
【実施例5】
【0062】
図15Aは実施例5に係る光半導体装置500を例示する平面図であり、図15Bは可変偏光板40およびビームスプリッタ42付近を拡大した図である。一点鎖線は光を示す。図15Aに示すように、光半導体装置500は、パッケージ10、TEC12、キャリア14、波長可変レーザ素子16、レンズフォルダ18、ビームスプリッタ20、可変偏光板40、ビームスプリッタ42、エタロン44、受光素子28および30を有する。制御部35は、波長可変レーザ素子16、受光素子28および30、可変偏光板40に接続されている。
【0063】
レンズフォルダ18は波長可変レーザ素子16の出力端の-X側に位置し、ビームスプリッタ20はレンズフォルダ18の-X側に位置する。可変偏光板40はビームスプリッタ20の+Y側に位置し、ビームスプリッタ42は可変偏光板40の+Y側に位置する。受光素子30(第3の検知部)はビームスプリッタ42の-X側に位置する。エタロン44はビームスプリッタ42の+Xおよび+Y側に位置する。受光素子28はエタロン44のビームスプリッタ42側とは反対側に位置する。
【0064】
可変偏光板40は例えば液晶、またはニオブ酸リチウム(LiNbO)などの誘電体の異方性結晶などで形成されている。可変偏光板40は、制御部35から入力される制御信号に応じて、入射した光L0の偏波状態を変化させる。
【0065】
ビームスプリッタ42は、例えば方解石または水晶などで形成され、光学的な性質が結晶軸の方向に応じて異なる光学的異方性結晶であり、光を複屈折させるプリズムである。ビームスプリッタ42は、入射する光の偏波状態に応じて固有の屈折率を有する。ビームスプリッタ42は、可変偏光板40により偏波状態の変化した光L0を屈折させ、光L1、L2およびL3を出射する。
【0066】
可変偏光板40に制御信号が入力されないとき、可変偏光板40は光L0の偏波状態をある状態(第1の状態)とする。ビームスプリッタ42は当該光L0を屈折させ光L1(第1の光)を出射する。可変偏光板40に制御信号が入力されるとき、可変偏光板40は光L0の偏波状態を別の状態(第2の状態)とする。ビームスプリッタ42は当該光L0を屈折させ光L2(第2の光)を出射する。互いに異なる偏波状態の光に対してビームスプリッタ42は異なる屈折率を有するため、光L1の出射方向と光L2の出射方向とは互いに異なる。このため図1Bに示すように、光L1および光L2の出射方向は互いに角度θ異なる方向となる。このため光L1のエタロン44内での光路(第1の光路)と、光L2のエタロン44内での光路(第2の光路)とは、互いに異なる光路長を有する。なお、光L1およびL2がビームスプリッタ42に入射するときの入射方向についても互いに角度が異なる。
【0067】
図1Aおよび図1Bに示すように、エタロン44はX軸およびY軸に対して傾斜しており、一様な厚さTを有する。一方の面はビームスプリッタ42に対向し、他方の面は受光素子28に対向する。エタロン44には光L1およびL2が入射し、エタロン44は光L1およびL2を通過させる。エタロン44は、例えば水晶などで形成されており、透過率は入射光の波長に応じて周期的に変化する。
【0068】
受光素子28(第1および第2の検知部)は、エタロン44を通過した光L1およびL2を受光し、光L1の入射に応じて電流Im1を出力し、光L2の入射に応じて電流Im2を出力する。受光素子30は、エタロン44を透過せず-X方向に出射される光L3を受光し、光電流Im3を出力する。光の強度に応じて光電流は変化する。光電流Im1とIm3との比は光L1とL3との強度の比、Im2とIm3との比は光L2とL3との強度の比に対応し、これらに基づいて波長制御を行う。
【0069】
実施例5では、光L1と光L2とでエタロン44への入射角を異ならせることで、光路長も異ならせる。これにより図2Aおよび図2Bのような所望の透過特性を実現し、安定した波長制御を可能とする。
【0070】
実施例5によれば、可変偏光板40が光L0の偏波状態を変化させ、ビームスプリッタ42は偏波状態に応じて光L1およびL2を異なる方向に出射する。このため光L1およびL2の入射角および光路長は互いに異なり、光L1に対するエタロン44の透過特性が光L2に対する透過特性とは異なるものとなる。したがって安定した波長制御が可能となる。
【0071】
表4はエタロン44への光L1およびL2の入射角、エタロン44の厚さ、エタロン44の屈折率、エタロン44の反射率を例示する表である。
【表4】
表4に示すように、光L1およびL2に対して、厚さ、屈折率、反射率は同じである。一方、光L1の入射角は例えば0°であり、光L2の入射角は例えば0.28°である。この結果、光路長も互いに異なることとなる。これにより、光L1に対するエタロン44の透過特性(Im1/Im3に対応)と、光L2に対するエタロン44の透過特性(Im2/Im3に対応)とを図2Aおよび図2Bのように互いに異なるものとすることができる。
【0072】
図2Aおよび図2Bに示すように、191.250~196.300THzの範囲において、比Im1/Im3と、比Im2/Im3とは同じ周期を有し、例えば3/16周期から5/16周期の範囲で互いに約1/4周期ずれている。このため、比Im1/Im3がピークP1またはボトムB1となる周波数において、比Im2/Im3は単調増加または単調減少を示す。このとき、比Im2/Im3を用いて波長制御を行えばよい。また、比Im2/Im3がピークP2またはボトムB2となる周波数において、比Im1/Im3は単調増加または単調減少を示す。このとき、比Im1/Im3を用いて波長制御を行えばよい。この結果、安定した波長制御が可能となる。
【0073】
制御部35から波長可変レーザ素子16に電気信号を入力して波長可変レーザ素子16を駆動し、可変偏光板40に電気信号を入力することで光L0の偏波状態を変化させ、受光素子28および30の出力電流を検出し、波長制御を行う。具体的に制御部35は、目標波長に応じた透過率をメモリから取得し、当該透過率になるように可変偏光板40に電気信号を入力する。このため可変偏光板40により所望の偏波状態が得られ、安定した波長制御が可能となる。
【0074】
実施例5は、図15Aおよび図15Bに示すように、1つのエタロン44、可変偏光板40およびビームスプリッタ42を用いるものであり、比較例2に比べ構成が簡単である。このため製造バラツキおよび組み立てバラツキを抑制することができる。したがって、光L1およびL2の入射角および光路長などをより正確に定めることができる。
【0075】
可変偏光板40は液晶または誘電体で形成されているため、偏光方向の回転角度が可変である。例えば、制御部35から入力される制御信号に応じて、可変偏光板40は出射光の偏波状態を2つ以上の状態に変えることができる。ビームスプリッタ42は偏波状態に応じて光を異なる方向に屈折させ、出射する。これにより図2Aおよび図2Bに示すようなエタロン44の透過特性を得ることができる。1つの可変偏光板40により、互いに異なる偏波状態の光を出射するため、製造バラツキおよび組み付けバラツキが抑制され、安定した波長制御が可能である。
【0076】
ビームスプリッタ42は光L1、L2およびL3を出射する。このため光L1とL3との強度の比(Im1/Im3)、光L2とL3との強度の比(Im2/Im3)により波長制御が可能である。
【0077】
ビームスプリッタ42は、光の偏波状態に応じて出射方向を変えるものであればよい。好ましくは、ビームスプリッタ42は異方性結晶からなり、光を複屈折させるプリズムである。例えばビームスプリッタ42が方解石または水晶で形成されることで良好な複屈折を示す。1つのビームスプリッタ42が、可変偏光板40の出射する偏向状態の異なる光を複屈折させ、光L1およびL2を出射する。このため製造バラツキおよび組み付けバラツキが抑制され、安定した波長制御が可能である。
【0078】
エタロン44が一様な厚さを有し、エタロン44の光L1およびL2に対する屈折率も同一である。このため、ビームスプリッタ42からの光L1およびL2の出射方向により透過特性の制御が可能である。これにより安定した波長制御が可能である。
【0079】
可変偏光板40およびビームスプリッタ42は、波長可変レーザ素子16の-X側(レーザ光の出射方向側)に位置する。エタロン44は、X軸に沿って可変偏光板40およびビームスプリッタ42よりも波長可変レーザ素子16側に位置する。レーザ光は波長可変レーザ素子16から-X方向に出射し、ビームスプリッタ20からエタロン44にかけて+X方向に伝搬する。このためパッケージ10を例えばX方向に長くしなくてよく、光半導体装置500の小型化が可能となる。
【0080】
以上、本開示の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0081】
10 パッケージ
12 TEC
14 キャリア
16 波長可変レーザ素子
18 レンズフォルダ
20、21、22、23、42 ビームスプリッタ
22a、22b 反射面
24、25、44 エタロン
26、28、30 受光素子
32、34 偏光板
36 偏光反射板
40 可変偏光板
100、200、300、400、500 光半導体装置
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14
図15A
図15B