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特許7338943ハニカムコア用アルミニウム箔の耐食処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】ハニカムコア用アルミニウム箔の耐食処理方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 26/00 20060101AFI20230829BHJP
   B32B 3/12 20060101ALI20230829BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20230829BHJP
   C23C 22/05 20060101ALI20230829BHJP
   C23C 28/04 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
C23C26/00 C
B32B3/12 A
B32B15/01 G
C23C22/05
C23C28/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022039311
(22)【出願日】2022-03-14
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000187208
【氏名又は名称】昭和飛行機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086092
【弁理士】
【氏名又は名称】合志 元延
(72)【発明者】
【氏名】板本 貴志
(72)【発明者】
【氏名】宮田 稜
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/088846(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0095448(US,A1)
【文献】特表2016-537481(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0280253(US,A1)
【文献】特表2006-519307(JP,A)
【文献】特開2020-073729(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0143418(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110861366(CN,A)
【文献】特開2002-161377(JP,A)
【文献】特表2012-528251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 26/00
C23C 22/05~22/68
C23C 28/00~28/04
B32B 3/12
B32B 15/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカムコアの母材段階のアルミニウム箔表面に、まず、密着性に優れたハイブリッド被膜を塗布形成し、
該ハイブリッド被膜は、ポリマーに少なくとも該ハイブリッド被膜用のチタン化合物が分散された処理剤を、該アルミニウム箔表面に塗布することにより、
該アルミニウム箔から溶解電離したアルミニウムイオンが、該チタン化合物と共に、該アルミニウム箔表面に均一分布された該ポリマーに、分散されており、
次に、形成された該ハイブリッド被膜を介して、耐食性と共に結合性,安定性にも優れた耐食被膜用のチタンキレート化合物と接着性に優れたカップリング剤との混合物を、該アルミニウム箔に塗布し、
塗布された該混合物の被膜が、該ハイブリッド被膜を介することにより該アルミニウム箔に密着されて、耐食被膜が形成されること、を特徴とする、ハニカムコア用アルミニウム箔の耐食処理方法。
【請求項2】
請求項1において、請求項1中では、ハニカムコアの母材段階の該アルミニウム箔表面に、とあるが、ハニカムコアの母材段階の該アルミニウム箔表面ではなく、成形されたハニカムコアのセル壁の該アルミニウム箔表面に、とすること、を特徴とする、ハニカムコア用アルミニウム箔の耐食処理方法。
【請求項3】
請求項1において、該アルミニウム箔は、少なくともマグネシウムを含有したアルミニウム合金箔よりなること、を特徴とする、ハニカムコア用アルミニウム箔の耐食処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムコア用アルミニウム箔の耐食処理方法に関する。すなわち、ハニカムコアのセル壁の母材として用いられる、アルミニウム箔の耐食処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
セル壁にて区画形成された中空柱状のセルの集合体よりなるハニカムコアは、重量比強度に優れるのを始め種々の優れた特性を備えており、各種の構造材として広く使用されている。
ハニカムコアのセル壁そしてその母材としては、金属,プラスチック,紙等が用いられるが、金属としては、アルミニウム箔やステンレス箔が代表的である。
そして、アルミニウム箔等のハニカムコアを用いる分野、例えば航空機用,鉄道用,車輛用の構造材や構造部品の分野では、最近、より一層の耐食性が求められている状況にある。
【0003】
《従来技術》
ところで、ハニカムコア用アルミニウム箔の耐食処理は、従来、次のように行われていた。
従来技術1:六価クロム化合物によるクロム酸塩化成処理を施すことで、アルミニウム箔表面に酸化被膜を形成して、耐食性を付与していた。
従来技術2:三価クロム化合物によるクロム酸塩化成処理を施すことで、アルミニウム箔表面に酸化被膜を形成して、耐食性を付与していた。
従来技術3:リン酸陽極処理を施すことで、アルミニウム箔表面にリン酸塩被膜を形成して、耐食性を付与することも、行われていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題点》
上述したハニカムコア用アルミニウム箔の耐食処理については、従来、次のような問題が指摘されており、課題となっていた。
従来技術1:六価クロムは、周知のごとく毒性が高く、法的にも規制されている。このように環境負荷が大きく、六価クロムを使用しないクロムフリーの化成処理ニーズが高まっている状況にある。
従来技術2:三価クロムによるクロム酸塩化成処理については、六価クロムの場合に比し、環境負荷は低下する。しかしながら、耐食処理性能を安定させるためには、六価クロムの場合に比べ、より厳しい工程管理が必要とされ、もってコストアップが問題となっていた。
従来技術3:リン酸陽極処理は、クロム酸塩化成処理と比べ、耐食性に優れる反面、処理コストが高く、過剰品質で高コストな処理方法とされていた。
【0005】
《本発明について》
本発明のハニカムコア用アルミニウム箔の耐食処理方法は、このような実情に鑑み、上記従来技術の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、耐食性,接着性,密着性に優れると共に、第2に、コスト面,環境負荷面にも優れた、ハニカムコア用アルミニウム箔の耐食処理方法を提案することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
《各請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、特許請求の範囲に記載したように、次のとおりである。
請求項1については、次のとおり。
請求項1のハニカムコア用アルミニウム箔の耐食処理方法では、ハニカムコアの母材段階のアルミニウム箔表面に、まず、密着性に優れたハイブリッド被膜を塗布形成する。
該ハイブリッド被膜は、ポリマーに少なくとも該ハイブリッド被膜用のチタン化合物が分散された処理剤を、該アルミニウム箔表面に塗布することにより、該アルミニウム箔から溶解電離したアルミニウムイオンが、該チタン化合物と共に、該アルミニウム箔表面に均一分布された該ポリマーに、分散されている。
次に、形成された該ハイブリッド被膜を介して、耐食性と共に結合性,安定性にも優れた耐食被膜用のチタンキレート化合物と接着性に優れたカップリング剤との混合物を、該アルミニウム箔に塗布する。
そして塗布された該混合物の被膜が、該ハイブリッド被膜を介することにより該アルミニウム箔に密着されて、耐食被膜が形成されること、を特徴とする。
【0007】
請求項2については、次のとおり。
請求項2のハニカムコア用アルミニウム箔の耐食処理方法では、請求項1において、請求項1中では、ハニカムコアの母材段階の該アルミニウム箔表面に、とあるが、ハニカムコアの母材段階の該アルミニウム箔表面ではなく、成形されたハニカムコアのセル壁の該アルミニウム箔表面に、とすること、を特徴とする。
【0008】
請求項3については、次のとおり。
請求項3のハニカムコア用アルミニウム箔の耐食処理方法では、請求項1において、該アルミニウム箔は、少なくともマグネシウムを含有したアルミニウム合金箔よりなること、を特徴とする。
【0009】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)本発明の耐食処理方法は、ハニカムコアの母材段階のアルミニウム箔、又は、成形されたハニカムコア段階のセル壁のアルミニウム箔を、対象とする。
(2)アルミニウム箔は、少なくともマグネシウムを含有したアルミニウム合金箔よりなる。
(3)そしてまず、アルミニウム箔について有機と無機のハイブリッド被膜が、塗布形成される。
(4)ハイブリッド被膜は、ポリマーに、少なくともチタン化合物とアルミニウムイオンとが、分散されてなり、密着性に優れている。
(5)ハイブリッド被膜は、ポリマーに少なくともハイブリッド被膜用のチタン化合物が分散された金属表面処理剤を、アルミニウム箔表面に塗布することにより、アルミニウム箔から溶解電離したアルミニウムイオンが、チタン化合物と共に、ポリマーに分散されてなる。
(6)それから、ハイブリッド被膜を介して、チタンキレート化合物とカップリング剤との混合物が塗布される。
(7)そして塗布された混合物被膜が、ハイブリッド被膜を介してアルミニウム箔に密着され、もって耐食被膜が形成される。
(8)本発明の耐食処理方法は、以上のように、耐食性に優れたチタンキレート化合物が、アルミニウム箔への接着性に優れたカップリング剤と混合されると共に、アルミニウム箔への密着性に優れたハイブリッド被膜を介して、アルミニウム箔に塗布され、もって耐食被膜を形成する。
(9)本発明では、このような構成の組み合せにより、耐食性が、接着性および密着性にてサポートされている。耐食性が、接着性および密着性を伴い接着化,密着化されている。
(10)しかも本発明では、ハイブリッド被膜の塗布形成と混合物被膜の塗布とにより、耐食被膜が形成され、工程が簡単容易である。勿論、クロムフリーであり、環境負荷も小さい。
(11)そこで本発明は、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0010】
《第1の効果》
第1に、耐食性,接着性,密着性に優れている。
本発明のハニカムコア用アルミニウム箔の耐食処理方法は、チタンキレート化合物とカップリング剤とが、有機と無機とのハイブリッド被膜を介して、アルミニウム箔表面に耐食被膜を形成する。
このような構成の組み合せにより、本発明の耐食処理方法は、ハニカムコア用のアルミニウム箔では始めて、耐食性が、接着性および密着性にてサポートされ裏付けられており、確実かつ効果的に作用するようになる。
そして本発明の耐食処理方法による耐食性は、米国のSAE Internationalが発行する工業規格:SAE-AMS-C-7438AのClass2の要求満足を意図するものである。
【0011】
《第2の効果》
第2に、コスト面および環境負荷面にも、優れている。
本発明のハニカムコア用アルミニウム箔の耐食処理方法は、ハイブリッド被膜を塗布形成した後、チタンキレート化合物とカップリング剤との混合物被膜を塗布して、耐食被膜を形成する。
このように、簡単容易な工程よりなり、厳しい工程管理を要することが無く、処理コストが嵩むことも無い。前述したこの種従来技術2,3に比し、コスト面に優れている。
しかも、従来より使用されているこの種耐食処理用の設備、例えば前述した従来技術3の被膜形成用の浸漬設備を容易に転用でき、この点からもコスト面に優れている。
更に本発明は、完全にクロムフリー技術であり、環境負荷面にも優れている。六価クロムのような毒性や法的規制の不安はない。
このように、この種従来技術に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るハニカムコア用アルミニウム箔の耐食処理方法について、発明を実施するための形態の説明に供し、工程説明図である。そして(1)図は、準備工程、(2)図は、ハイブリッド被膜の形成工程、(3)図は、耐食被膜の形成工程を示す。
図2】同発明を実施するための形態の説明に供し、化学構造式である。そして(1)図は、ハイブリッド被膜、(2)図は、シランカップリング剤、(3)図は、チタンキレート化合物を示す。
図3】同発明を実施するための形態の説明に供し、ハニカムコアの展張式成形方法の斜視図である。そして(1)図は、重積工程、(2)図は、展張工程、(3)図は、成形されたハニカムコアを示す。
図4】同発明を実施するための形態の説明に供し、ハニカムコアのコルゲート式成形方法の正面説明図である。そして(1)図は、準備される波板を、(2)図は、成形されたハニカムコアを示す。
図5】同発明を実施するための形態の説明に供し、ハニカムコアの一例の正面説明図である。そして(1)図は、フレックスハニカム、(2)図は、ダブルフレックスハニカムを示す。
図6】同発明を実施するための形態の説明に供し、ハニカムコアの一例の正面写真である。そして(1)図は、フレックスハニカム、(2)図は、ダブルフレックスハニカムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のハニカムコア用アルミニウム箔1の耐食処理方法について、図面を参照して、詳細に説明する。
《本発明の概要》
まず、本発明の概要については、次のとおり。
本発明のハニカムコア用アルミニウム箔1の耐食処理方法は、アルミニウム箔1について、まず、ポリマーに少なくともチタン化合物とアルミニウムイオンとが分散されたハイブリッド被膜2を、塗布形成する。
それから次に、形成されたハイブリッド被膜2を介して、チタンキレート化合物とカップリング剤とを有する耐食被膜3を、塗布形成すること、を特徴とする。
本発明の概要は、以上のとおり。以下、このような本発明について更に詳述する。
【0014】
《ハイブリッド被膜2の形成について》
まず、ハイブリッド被膜2の形成について、図1の(1)図,(2)図,図2の(1)図等を参照して、説明する。
本発明の耐食処理方法では、ハニカムコア用アルミニウム箔1の表面に、まず、有機と無機のハイブリッド被膜2を塗布形成する。
ハイブリッド被膜2は、アルミニウム箔1の表面に均一分布されたポリマーに、少なくともハイブリッド被膜2用のチタン化合物と、アルミニウム箔1から電離したアルミニウムイオンとが、分散されている。
【0015】
このようなハイブリッド被膜2つまり分子複合材料について、更に詳述する。
ハニカムコア4については後述するが、ハイブリッド被膜2は、ハニカムコア4の母材段階のアルミニウム箔1外表面に対し、又は事後、ハニカムコア4に成形された段階(母材がセル壁化された段階)のセル壁のアルミニウム箔1外表面に対し、塗布形成される。
塗布は、対応薬剤が貯溜された浴槽中に、対象のアルミニウム箔1を浸漬して(いわゆるドブ漬けして)取り出すことにより、アルミニウム箔1外表面に付着,被覆せしめることにより行われる。塗布厚0.05μm程度。なお浸漬によらず、スプレー,その他により塗布することも可能である。
このように塗布により形成されるハイブリッド被膜2は、ポリマーに、チタン化合物やアルミニウムイオン等が、分散されている。
例えば図2の(1)図に示したように、ポリマーpolymerは、アルミニウム箔1外表面に均一分布されている。二酸化チタンTiO等のチタン化合物、フッ素F化合物、アルミニウム箔1から溶解電離したアルミニウムイオンAl等が、略網目状に分散されている。
【0016】
ハイブリッド被膜2は、このようにポリマーと共に、チタン化合物やアルミニウムイオン等が分散されてなることにより、アルミニウム箔1への密着性等を発揮する。
このハイブリッド被膜2用のチタン化合物は、その硬質性能,触媒性能,分散性能により、アルミニウム箔1への密着性をサポートすると共に、その耐食性能により、アルミニウム箔1への耐食性補充機能も発揮する。
アルミニウムイオンは、その陽イオン化により、アルミニウム箔1への密着性をサポートすると共に、アルミニウム箔1への耐食性補充機能も発揮する。
このようなハイブリッド被膜2は、ポリマー材に少なくともチタン化合物が分散された金属表面処理剤を、アルミニウム箔1表面に塗布することにより、形成される。
このハイブリッド被膜2形成用の金属表面処理剤は、ポリマー材にチタン化合物等が分散されたチタニウム系処理薬品、つまりクロムフリーの処理薬品よりなる。金属イオン活性剤を含有することもある。
この金属表面処理剤としては、米国のバルクケミカルズ社製のE-CLPS2100が挙げられる。
ハイブリッド被膜2の形成については、以上のとおり。
【0017】
《耐食被膜3の形成について》
次に、耐食被膜3の形成について、図1の(3)図,図2の(2)図,(3)図等を参照して、説明する。
本発明の耐食処理方法では、上述したハイブリッド被膜2形成の次に、形成されたハイブリッド被膜2を介して、チタンキレート化合物とシランカップリング剤等のカップリング剤との混合物を塗布する。
そして塗布された混合物被膜6が、ハイブリッド被膜2を介することにより、アルミニウム箔1に密着されて、耐食被膜3が形成される。
【0018】
このような耐食被膜3について、更に詳述する。
ハニカムコア4用のアルミニウムア箔1表面には、前述によりハイブリッド被膜2が塗布形成されるが、この耐食処理方法では、次に、ハイブリッド被膜2上に混合物被膜6が塗布される。
塗布は、前述したハイブリッド被膜2の場合と同様、浸漬等により行われる。塗布厚0.05μm程度。
混合物被膜6は、チタン化合物とカップリング剤とを有してなる。耐食被膜3のチタン化合物としては、結合性,安定性に優れたチタンキレート化合物が代表的に使用される。図2の(3)図に示した例では、チタンTiにアルデヒド基CHOやメチル基CH等が配位している。いずれにしても耐食性能に優れており、チタン合金として広く使用されている。
【0019】
カップリング剤としては、例えば図2の(2)図に示したシランカップリング剤が代表的に使用される。シランSilane(水素化ケイ素)は、接着性能,結合促進性能に特に優れているが、カップリング剤としては、その他の例えばチタン酸塩系やクロム系のものを使用可能である。
このようなチタン化合物とカップリング剤とからなる混合物被膜6が、塗布されると共に、ハイブリッド被膜2を介することによりアルミニウム箔1に密着され、もって耐食被膜3が形成される。
ハニカムコア4用のアルミニウム箔1表面に、微密で極薄の酸化物被膜が形成され、もって酸化劣化が防止される。
耐食被膜3の形成については、以上のとおり。
【0020】
《ハニカムコア4について》
次に、ハニカムコア4について、図3図6を参照して、概説する。
ハニカムコア4は、セル壁5にて区画形成された多数のセル7の平面的集合体よりなり、重量比強度に優れるのを始め、種々の優れた特性を備えている。ハニカムコア4の成形方法としては、展張式やコルゲート式が一般的である。
展張式では、図3の(1)図,(2)図に示したように、条線状に接着剤8等が塗布されたシート状の母材9を、多数枚、半ピッチずつずれた位置関係で重積方向10に重積した後、母材9間を接着剤8等にて接合してから、重積方向10に引張力を加えて展張することにより、図3の(3)図に示したハニカムコア4を成形する。
コルゲート式では、図4の(1)図に示したように、シート状の母材9をコルゲートした波板11を、多数枚、半ピッチずつずらした位置関係で重積方向10に重積すると共に、相互間を接着剤8等で条線状に接合することにより、図4の(2)図に示したハニカムコア4を成形する。
【0021】
ところでハニカムコア4としては、セル壁5が直線的でセル7が正六角形等のものが代表的であるが(図3の(3)図,図4の(2)図を参照)、セル壁5が内外にわん曲しセル7が略凸状をなすものも、三次元用途等に鑑み開発,使用されている。勿論、これらのハニカムコア4も、母材9段階を経てセル壁5が成形される。
図5の(1)図,図6の(1)図は、このようなハニカムコア4であるフレックスハニカムを示す。図5の(2)図,図6の(2)図は、このようなハニカムコア4であるダブルフレックスハニカムを示す。
【0022】
さて、本発明の耐食処理方法は、上述した各ハニカムコア4について、その母材9段階のアルミニウム箔1を対象とするか、又は、成形された段階のセル壁5のアルミニウム箔1を対象として、実施される。
なおアルミニウム箔1は、肉厚24μm~160μm程度、図示例では100μm程度よりなり(図1の(1)図を参照)、少なくともマグネシウムを含有したアルミニウム合金箔よりなる。
すなわち、アルミニウムAlにマグネシウムMgを添加してなると共に、更に必要に応じ、シリコンSi,鉄Fe,銅Cu,マンガンMn,クロムCr,亜鉛Zn,チタニウムTi等が、選択的に添加される。
ハニカムコア4については、以上のとおり。
【0023】
《作用等》
本発明のハニカムコア用アルミニウム箔1の耐食処理方法は、以上説明したように構成されている。そこで以下のようになる。
(1)この耐食処理方法は、ハニカムコア4の母材9段階のアルミニウム箔1、又は、成形された段階のハニカムコア4のセル壁5のアルミニウム箔1を、対象とする。
すなわち、ハニカムコア4の母材9又はセル壁5について、そのアルミニウム箔1を、対象とする。
【0024】
(2)アルミニウム箔1は、少なくともマグネシウムを含有したアルミニウム合金箔よりなる。
【0025】
(3)この耐食処理方法では、まず、このようなアルミニウム箔1表面に、有機と無機のハイブリッド被膜2が、塗布形成される。
【0026】
(4)ハイブリッド被膜2は、均一分布されたポリマーに、少なくともハイブリッド被膜2用のチタン化合物とアルミニウムイオンとが、分散されてなり、密着性に優れている。
【0027】
(5)ハイブリッド被膜2は、ポリマー材に少なくともチタン化合物が分散された金属表面処理剤を、アルミニウム箔1表面に塗布することにより、アルミニウム箔1から溶解電離したアルミニウムイオンがチタン化合物と共に、ポリマーに分散されてなる。
【0028】
(6)それから、硬化形成されたハイブリッド被膜2を介して、チタンキレート化合物とシランカップリング剤等のカップリング剤との混合物が、速やかに塗布される。
【0029】
(7)そして、このように塗布された混合物被膜6が、ハイブリッド被膜2を介することにより、アルミニウム箔1表面に、密着される。
すなわち、均一分布されたポリマーにチタン化合物やアルミニウムイオンが分散されたハイブリッド被膜2を介することにより、混合物被膜6がアルミニウム箔1に密着される。もってアルミニウム箔1表面に、耐食被膜3が形成される。
【0030】
(8)さて、本発明の耐食処理方法は、以上説明したように、耐食性に優れたチタンキレート化合物が、まず、アルミニウム箔1への接着性に優れたシランカップリング剤等のカップリング剤と混合される。
しかも、アルミニウム箔1との密着性に優れた有機と無機のハイブリッド被膜2を介して、アルミニウム箔1に塗布され、もって耐食被膜3を形成する。
【0031】
(9)このように本発明の耐食処理方法では、このような構成の組み合せにより、耐食性が、接着性および密着性にてサポートされている。ハニカムコア4用のアルミニウム箔1では始めて、メインとする耐食性が、接着性および密着性の両方を伴うことにより、強力に裏付けられている。
このように耐食性が、接着性および密着性を伴い接着化,密着化されるので、確実かつ効果的に機能発揮するようになり、優れた耐食性が実現される。
なお、介在するハイブリッド被膜2のチタン化合物やアルミニウムイオンも、アルミニウム箔1の耐食性を補充する。
【0032】
(10)しかも、本発明の耐食処理方法は、ハイブリッド被膜2を塗布形成した後、混合物被膜6を塗布して、耐食被膜3を形成する。
このように簡単容易な工程よりなると共に、従来より使用されているこの種耐食処理用の設備、例えば被膜形成用の浸漬設備を、転用利用することも容易に可能である。
勿論、クロムフリー技術であり、環境負荷も小さい。
本発明の作用等については、以上のとおり。
【符号の説明】
【0033】
1 アルミニウム箔
2 ハイブリッド被膜
3 耐食被膜
4 ハニカムコア
5 セル壁
6 混合物被膜
7 セル
8 接着剤
9 母材
10 重積方向
11 波板


【要約】      (修正有)
【課題】第1に、耐食性、接着性、密着性に優れると共に、第2に、コスト面および環境負荷面にも優れた、ハニカムコア用アルミニウム箔の耐食処理を提供する。
【解決手段】この耐食処理では、ハニカムコアの母材段階のアルミニウム箔1表面、又は、成形されたハニカムコアのセル壁のアルミニウム箔1表面に、まず、有機と無機のハイブリッド被膜2を、塗布形成する。ハイブリッド被膜2は、アルミニウム箔1表面に均一分布されたポリマーに、少なくともチタン化合物と、アルミニウム箔1から電離したアルミニウムイオンとが、分散されてなる。次に、形成されたハイブリッド被膜2を介して、チタンキレート化合物とシランカップリング剤との混合物を、塗布する。もって塗布された混合物被膜6が、ハイブリッド被膜2を介することによりアルミニウム箔1に密着されて、耐食被膜3が形成される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6