(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】血液浄化装置及び血液浄化装置による医療部品の判定方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/22 20180101AFI20230829BHJP
A61M 1/16 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
G06Q50/22
A61M1/16
(21)【出願番号】P 2018091451
(22)【出願日】2018-05-10
【審査請求日】2021-02-09
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】太田 雅顕
(72)【発明者】
【氏名】小野 和秀
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】佐々木 正章
【審判官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/129344(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3199614(JP,U)
【文献】特開2008-220774(JP,A)
【文献】特開2003-33371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 50/22
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に血液浄化治療を行うための
部品であってエアトラップチャンバが接続された血液回路を含む医療部品を取付可能な取付位置を有し、当該取付位置に前記医療部品が取り付けられる装置本体と、
患者の血液浄化治療に関する治療情報が記憶された記憶部と、
前記装置本体に取り付けられる前の状態の前記医療部品を密閉状態で収容する滅菌袋又は別個の収容手段に取り付けられた情報保持部と、
前記情報保持部にて保持された部品情報を読み取り可能な読み取り部と、
前記読み取り部で読み取られた部品情報と前記記憶部で記憶された治療情報とを照合して、前記装置本体に取り付ける医療部品としての適否について判定可能な判定部と、
を具備した血液浄化装置において、
前記読み取り部は、前記滅菌袋の外部から前記情報保持部にて保持された前記部品情報を読み取り可能とされるとともに、前記装置本体における前記取付位置とは異なる位置に形成されて前記装置本体の前面側の所定範囲において当該取付位置とは異なる位置にある前記情報保持部の部品情報を読み取り可能とされ、且つ、前記装置本体は、複数設置され、各装置本体が中央監視装置に接続されて患者の血液浄化治療に関する治療情報が各装置本体の前記記憶部に送信されることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項2】
前記情報保持部は、前記滅菌袋に形成されたことを特徴とする請求項1記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記情報保持部は、バーコード、二次元コード、データマトリックスコード、カラーラベル又は識別マークから成ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記情報保持部は、前記読み取り部に対して前記部品情報を送信可能な送信手段から成ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の血液浄化装置。
【請求項5】
前記読み取り部は、滅菌袋を開封して医療部品を取り出す作業位置にある前記情報保持部の部品情報を読み取り可能とされたことを特徴とする請求項1~4の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項6】
前記情報保持部は、前記滅菌袋の外面若しくは内面、又は当該滅菌袋に収容された前記医療部品に貼着されたことを特徴とする請求項1~5の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項7】
前記滅菌袋には複数の医療部品が収容されるとともに、前記判定部は、当該複数の医療部品に関する部品情報を一括して照合し、前記装置本体に取り付ける医療部品としての適否を一括して判定可能とされたことを特徴とする請求項1~6の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項8】
前記滅菌袋には血液回路及び血液浄化器を含む複数の医療部品が収容されるとともに、前記判定部は、当該血液回路及び血液浄化器を含む複数の医療部品に関する部品情報を一括して照合して判定可能とされたことを特徴とする請求項1~7の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項9】
前記滅菌袋は、前記医療部品を収容しつつ前記情報保持部が形成されるとともに、別個の収容手段に収容されたことを特徴とする請求項1~8の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項10】
前記滅菌袋は、前記医療部品を収容しつつ別個の収容手段に収容されるとともに、前記別個の収容手段に前記情報保持部が形成されたことを特徴とする請求項1~8の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項11】
患者に血液浄化治療を行うための
部品であってエアトラップチャンバが接続された血液回路を含む医療部品を取付可能な取付位置を有し、当該取付位置に前記医療部品が取り付けられる装置本体と、
患者の血液浄化治療に関する治療情報が記憶された記憶部と、
前記装置本体に取り付けられる前の状態の前記医療部品を密閉状態で収容する滅菌袋又は別個の収容手段に取り付けられた情報保持部と、
前記情報保持部にて保持された部品情報を読み取り可能な読み取り部と、
前記読み取り部で読み取られた部品情報と前記記憶部で記憶された治療情報とを照合して、前記装置本体に取り付ける医療部品としての適否について判定可能な判定部と、
を具備した血液浄化装置による医療部品の判定方法において、
前記読み取り部によって、前記滅菌袋の外部から前記情報保持部にて保持された前記部品情報を読み取るとともに、前記装置本体における前記取付位置とは異なる位置に形成されて前記装置本体の前面側の所定範囲において当該取付位置とは異なる位置にある前記情報保持部の部品情報を読み取り、且つ、前記装置本体は、複数設置され、各装置本体が中央監視装置に接続されて患者の血液浄化治療に関する治療情報が各装置本体の前記記憶部に送信されることを特徴とする血液浄化装置による医療部品の判定方法。
【請求項12】
前記情報保持部は、前記滅菌袋に形成されたことを特徴とする請求項11記載の血液浄化装置による医療部品の判定方法。
【請求項13】
前記情報保持部は、バーコード、二次元コード、データマトリックスコード、カラーラベル又は識別マークから成ることを特徴とする請求項11又は請求項12記載の血液浄化装置による医療部品の判定方法。
【請求項14】
前記情報保持部は、前記読み取り部に対して前記部品情報を送信可能な送信手段から成ることを特徴とする請求項11又は請求項12記載の血液浄化装置による医療部品の判定方法。
【請求項15】
前記読み取り部によって、滅菌袋を開封して医療部品を取り出す作業位置にある前記情報保持部の部品情報を読み取ることを特徴とする請求項11~14の何れか1つに記載の血液浄化装置による医療部品の判定方法。
【請求項16】
前記情報保持部は、前記滅菌袋の外面若しくは内面、又は当該滅菌袋に収容された前記医療部品に貼着されたことを特徴とする請求項11~15の何れか1つに記載の血液浄化装置による医療部品の判定方法。
【請求項17】
前記滅菌袋には複数の医療部品が収容されるとともに、前記判定部は、当該複数の医療部品に関する部品情報を一括して照合し、前記装置本体に取り付ける医療部品としての適否を一括して判定することを特徴とする請求項11~16の何れか1つに記載の血液浄化装置による医療部品の判定方法。
【請求項18】
前記滅菌袋には血液回路及び血液浄化器を含む複数の医療部品が収容されるとともに、前記判定部は、当該血液回路及び血液浄化器を含む複数の医療部品に関する部品情報を一括して照合して判定可能とされたことを特徴とする請求項11~17の何れか1つに記載の血液浄化装置による医療部品の判定方法。
【請求項19】
前記滅菌袋は、前記医療部品を収容しつつ前記情報保持部が形成されるとともに、別個の収容手段に収容されたことを特徴とする請求項11~18の何れか1つに記載の血液浄化装置による医療部品の判定方法。
【請求項20】
前記滅菌袋は、前記医療部品を収容しつつ別個の収容手段に収容されるとともに、前記別個の収容手段に前記情報保持部が形成されたことを特徴とする請求項11~18の何れか1つに記載の血液浄化装置による医療部品の判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療部品が取り付けられて血液浄化治療を行う血液浄化装置及び血液浄化装置による医療部品の判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、血液透析治療等の血液浄化治療は、複数台の血液浄化装置が設置された病院の治療室にて行われ、複数の患者(例えば10~50人)がほぼ同時に順次治療することとなる。しかるに、血液浄化治療前の準備段階において、装置本体に対して血液回路やダイアライザ等の医療部品が取り付けられ、その取り付けられた医療部品によって血液浄化治療が行われる。かかる医療部品は、治療毎に使い捨てされるディスポーザブル部品から成り、通常、滅菌袋に密閉状態で収容されている。
【0003】
従来の血液浄化装置は、例えば特許文献1にて開示されているように、装置本体に取り付けられた医療部品がこれから行われる治療条件に適したものか否かが判定(照合)されるよう構成されている。これにより、装置本体に間違って取り付けられた医療部品にて治療が行われてしまうのを防止することができ、血液浄化治療における安全性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、医療部品を装置本体に取り付けた状態において、その取り付けられた医療部品の適否が判定されるので、治療条件に適さないと判定された場合、医療部品を廃棄せざるを得ず医療機関の負担となってしまうという問題があった。すなわち、医療部品は、治療前において滅菌袋を開封することにより取り出され、装置本体に取り付けられるので、治療条件に適さないと判定された場合、次回の治療まで滅菌状態を維持するのは難しく廃棄せざるを得ないのである。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、滅菌袋を開封することなく医療部品の判定を行わせることができる血液浄化装置及び血液浄化装置による医療部品の判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、患者に血液浄化治療を行うための部品であってエアトラップチャンバが接続された血液回路を含む医療部品を取付可能な取付位置を有し、当該取付位置に前記医療部品が取り付けられる装置本体と、患者の血液浄化治療に関する治療情報が記憶された記憶部と、前記装置本体に取り付けられる前の状態の前記医療部品を密閉状態で収容する滅菌袋又は別個の収容手段に取り付けられた情報保持部と、前記情報保持部にて保持された部品情報を読み取り可能な読み取り部と、前記読み取り部で読み取られた部品情報と前記記憶部で記憶された治療情報とを照合して、前記装置本体に取り付ける医療部品としての適否について判定可能な判定部とを具備した血液浄化装置において、前記読み取り部は、前記滅菌袋の外部から前記情報保持部にて保持された前記部品情報を読み取り可能とされるとともに、前記装置本体における前記取付位置とは異なる位置に形成されて前記装置本体の前面側の所定範囲において当該取付位置とは異なる位置にある前記情報保持部の部品情報を読み取り可能とされ、且つ、前記装置本体は、複数設置され、各装置本体が中央監視装置に接続されて患者の血液浄化治療に関する治療情報が各装置本体の前記記憶部に送信されることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の血液浄化装置において、前記情報保持部は、前記滅菌袋に形成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の血液浄化装置において、前記情報保持部は、バーコード、二次元コード、データマトリックスコード、カラーラベル又は識別マークから成ることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の血液浄化装置において、前記情報保持部は、前記読み取り部に対して前記部品情報を送信可能な送信手段から成ることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1~4の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記読み取り部は、滅菌袋を開封して医療部品を取り出す作業位置にある前記情報保持部の部品情報を読み取り可能とされたことを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1~5の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記情報保持部は、前記滅菌袋の外面若しくは内面、又は当該滅菌袋に収容された前記医療部品に貼着されたことを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項1~6の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記滅菌袋には複数の医療部品が収容されるとともに、前記判定部は、当該複数の医療部品に関する部品情報を一括して照合し、前記装置本体に取り付ける医療部品としての適否を一括して判定可能とされたことを特徴とする。
【0015】
請求項11記載の発明は、患者に血液浄化治療を行うための部品であってエアトラップチャンバが接続された血液回路を含む医療部品を取付可能な取付位置を有し、当該取付位置に前記医療部品が取り付けられる装置本体と、患者の血液浄化治療に関する治療情報が記憶された記憶部と、前記装置本体に取り付けられる前の状態の前記医療部品を密閉状態で収容する滅菌袋又は別個の収容手段に取り付けられた情報保持部と、前記情報保持部にて保持された部品情報を読み取り可能な読み取り部と、前記読み取り部で読み取られた部品情報と前記記憶部で記憶された治療情報とを照合して、前記装置本体に取り付ける医療部品としての適否について判定可能な判定部とを具備した血液浄化装置による医療部品の判定方法において、前記読み取り部によって、前記滅菌袋の外部から前記情報保持部にて保持された前記部品情報を読み取るとともに、前記装置本体における前記取付位置とは異なる位置に形成されて前記装置本体の前面側の所定範囲において当該取付位置とは異なる位置にある前記情報保持部の部品情報を読み取り、且つ、前記装置本体は、複数設置され、各装置本体が中央監視装置に接続されて患者の血液浄化治療に関する治療情報が各装置本体の前記記憶部に送信されることを特徴とする。
【0016】
請求項12記載の発明は、請求項11記載の血液浄化装置による医療部品の判定方法において、前記情報保持部は、前記滅菌袋に形成されたことを特徴とする。
【0018】
請求項13記載の発明は、請求項11又は請求項12記載の血液浄化装置による医療部品の判定方法において、前記情報保持部は、バーコード、二次元コード、データマトリックスコード、カラーラベル又は識別マークから成ることを特徴とする。
【0019】
請求項14記載の発明は、請求項11又は請求項12記載の血液浄化装置による医療部品の判定方法において、前記情報保持部は、前記読み取り部に対して前記部品情報を送信可能な送信手段から成ることを特徴とする。
【0020】
請求項15記載の発明は、請求項11~14の何れか1つに記載の血液浄化装置による医療部品の判定方法において、前記読み取り部によって、滅菌袋を開封して医療部品を取り出す作業位置にある前記情報保持部の部品情報を読み取ることを特徴とする。
【0021】
請求項16記載の発明は、請求項11~15の何れか1つに記載の血液浄化装置による医療部品の判定方法において、前記情報保持部は、前記滅菌袋の外面若しくは内面、又は当該滅菌袋に収容された前記医療部品に貼着されたことを特徴とする。
【0022】
請求項17記載の発明は、請求項11~16の何れか1つに記載の血液浄化装置による医療部品の判定方法において、前記滅菌袋には複数の医療部品が収容されるとともに、前記判定部は、当該複数の医療部品に関する部品情報を一括して照合し、前記装置本体に取り付ける医療部品としての適否を一括して判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1、11の発明によれば、医療部品は、装置本体に取り付けられる前の状態で滅菌袋内に密閉状態とされるとともに、読み取り部によって、滅菌袋の外部から情報保持部にて保持された部品情報を読み取るので、滅菌袋を開封することなく医療部品の判定を行わせることができる。
また、装置本体は、医療部品を取付可能な取付位置を有するとともに、読み取り部によって、当該取付位置とは異なる位置にある情報保持部の部品情報を読み取るので、医療部品を装置本体に取り付ける前に情報保持部の部品情報を容易に読み取ることができる。
【0024】
請求項2、12の発明によれば、情報保持部は、滅菌袋に形成されたので、滅菌袋を開封することなく滅菌袋に形成された情報保持部の部品情報を読み取らせて医療部品の判定を行わせることができる。
【0026】
請求項3、13の発明によれば、情報保持部は、バーコード、二次元コード、データマトリックスコード、カラーラベル又は識別マークから成るので、汎用的な情報保持部にて部品情報を保持させることができ、製造コストが嵩んでしまうのを抑制できる。
【0027】
請求項4、14の発明によれば、情報保持部は、読み取り部に対して部品情報を送信可能な送信手段から成るので、情報保持部にて比較的大量の部品情報を保持させることができる。
【0028】
請求項5、15の発明によれば、読み取り部によって、滅菌袋を開封して医療部品を取り出す作業位置にある情報保持部の部品情報を読み取るので、情報保持部の部品情報の読み取り作業、滅菌袋の開封作業、及び医療部品の取付作業を円滑に行わせて作業性を向上させることができる。
【0029】
請求項6、16の発明によれば、情報保持部は、滅菌袋の外面若しくは内面、又は当該滅菌袋に収容された医療部品に貼着されたので、読み取り部によって、開封される前の滅菌袋の外部から部品情報を容易且つ確実に読み取ることができる。
【0030】
請求項7、17の発明によれば、滅菌袋には複数の医療部品が収容されるとともに、判定部は、当該複数の医療部品に関する部品情報を一括して照合し、装置本体に取り付ける医療部品としての適否を一括して判定するので、医療部品を一つずつ判定するものに比べ、作業時間を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施形態に係る血液浄化装置を示すブロック図
【
図2】同血液浄化装置における医療部品としての血液回路を示す模式図
【
図3】同血液浄化装置における装置本体及び読み取り部を示す模式図
【
図4】同血液浄化装置における制御内容を示すフローチャート
【
図5】本発明の他の実施形態(中央監視装置と接続された形態)を示す模式図
【
図6】本発明の他の実施形態(滅菌袋に医療部品が複数収容された形態)を示す模式図
【
図7】本発明の他の実施形態(滅菌袋が収容手段に収容された形態)を示す模式図
【
図8】本発明の他の実施形態(滅菌袋が収容手段に収容され、且つ、情報保持部が収容手段の内部若しくは外部であって滅菌袋の外部に収容された形態)を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る血液浄化装置は、血液透析治療を行うための透析装置から成るもので、
図1~3に示すように、入力部2、記憶部3、読み取り部4、判定部5、表示部6及び制御部7を具備した装置本体1と、装置本体1に取り付けられる医療部品11とを有して構成されている。
【0033】
医療部品11は、装置本体1に取り付けられて患者に血液浄化治療を行うためのもので、治療毎に使い捨てされるディスポーザブル部品から成る。かかる医療部品11は、装置本体1に取り付けられる前の状態で滅菌袋B内に密閉状態とされており、当該滅菌袋Bを開封して取り出し可能とされている。なお、滅菌袋Bは、例えば蒸気滅菌、γ線滅菌、EOG(ethylene oxide gas)滅菌、或いは電子線滅菌等の各種滅菌が施されている。
【0034】
一方、本実施形態に係る医療部品11は、血液浄化治療時に患者の血液を体外循環させるための血液回路とされている。この血液回路は、
図2に示すように、可撓性チューブから成る動脈側血液回路11a及び静脈側血液回路11bから主に構成されており、これら動脈側血液回路11aと静脈側血液回路11bの間に血液浄化器としてのダイアライザDが接続されるようになっている。
【0035】
動脈側血液回路11aには、その先端に動脈側穿刺針を接続するためのコネクタaが形成されているとともに、途中にしごき型の血液ポンプ8が配設されるようになっている。静脈側血液回路11bには、その先端に静脈側穿刺針を接続するためのコネクタbが形成されているとともに、途中にエアトラップチャンバ11cが接続されている。また、血液ポンプ8は、装置本体1に配設されており、血液回路が装置本体1に取り付けられた状態において、動脈側血液回路11aの一部が血液ポンプ8にセットされた状態となる。
【0036】
そして、動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針を患者に穿刺した状態で、血液ポンプ8を駆動させると、患者の血液は、動脈側血液回路11aを通ってダイアライザDに至った後、ダイアライザDによって血液浄化が施され、エアトラップチャンバ11cで除泡がなされつつ静脈側血液回路11bを通って患者の体内に戻る。しかして、患者の血液を血液回路にて体外循環させつつダイアライザDにて浄化するのである。なお、本明細書においては、血液を脱血(採血)する穿刺針の側を「動脈側」と称し、血液を返血する穿刺針の側を「静脈側」と称しており、「動脈側」及び「静脈側」とは、穿刺の対象となる血管が動脈及び静脈の何れかによって定義されるものではない。
【0037】
ダイアライザDは、その筐体部に、血液導入ポートDa、血液導出ポートDb、透析液導入ポートDc及び透析液導出ポートDdが形成されており、このうち血液導入ポートDaには動脈側血液回路11aの基端が接続されるとともに、血液導出ポートDbには静脈側血液回路11bの基端が接続されている。また、透析液導入ポートDc及び透析液導出ポートDdは、装置本体1から延設された透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2とそれぞれ接続されている。
【0038】
ダイアライザD内には、複数の中空糸が収容されており、該中空糸内部が血液の流路(血液流路)とされるとともに、中空糸外周面と筐体部の内周面との間が透析液の流路(透析液流路)とされている。中空糸には、微小な孔(ポア)が多数形成されて中空糸膜(血液浄化膜)を形成しており、該中空糸膜を介して血液流路中の血液の不純物等が透析液流路中の透析液内に透過して排出され得るよう構成されている。
【0039】
一方、装置本体1には、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2に跨がって配設された複式ポンプ9が配設されるとともに、複式ポンプ9をバイパスする流路には、ダイアライザD中を流れる患者の血液から水分を除去するための除水ポンプ10が配設されている。さらに、透析液導入ラインL1の一端がダイアライザD(透析液導入ポートDc)に接続されるとともに、他端が所定濃度の透析液を調製する透析液供給装置(不図示)に接続されている。また、透析液排出ラインL2の一端は、ダイアライザD(透析液導出ポートDd)に接続されるとともに、他端が図示しない廃液手段と接続されており、透析液供給装置から供給された透析液が透析液導入ラインL1を通ってダイアライザDの透析液流路に至った後、透析液排出ラインL2を通って廃液手段に送られるようになっている。
【0040】
ここで、本実施形態に係る滅菌袋Bには、医療部品11に関わる部品情報を保持した情報保持部12が取り付けられている。具体的には、情報保持部12は、バーコード、二次元コード(QRコード(登録商標))、データマトリックスコード、カラーラベル又は識別マークから成るもので、当該情報保持部12に保持された医療部品11に関わる部品情報として、例えば血液回路の商品コード、使用期限、ロット番号等が挙げられる。
【0041】
本実施形態に係る情報保持部12は、滅菌袋Bの外面に貼着されたシート等に印刷等にて形成されており、読み取り部4に情報保持部12をかざすことにより、保持した部品情報が非接触にて読み取り可能とされている。また、情報保持部12は、バーコード、二次元コード(QRコード(登録商標))、データマトリックスコード、カラーラベル又は識別マークから成るものに限らず、読み取り部4に対して部品情報を電波等にて送信可能な送信手段(RFタグ等)から成るものとしてもよい。
【0042】
さらに、情報保持部12は、滅菌袋Bに形成され、読み取り部4にて滅菌袋Bの外部から部品情報を読み取り可能とされていれば足り、例えば滅菌袋Bに直接印刷されたバーコード、二次元コード、データマトリックスコード、カラーラベル又は識別マークであってもよく、滅菌袋Bの内面に形成されたものであってもよい。また、滅菌袋Bに収容された医療部品11に情報保持部12を貼着するようにしてもよい。
【0043】
なお、滅菌袋Bの内面又は医療部品11に情報保持部12を形成するものにおいて、情報保持部12がバーコード、二次元コード、データマトリックスコード、カラーラベル又は識別マークである場合、滅菌袋Bは、当該情報保持部12を読み込み可能とするため、透明又は半透明な材質のものが好ましい。また、読み取り部4に対して部品情報を電波等にて送信可能な送信手段(RFタグ等)から成る情報保持部12の場合、滅菌袋Bは、透明又は半透明な材質でなくてもよい。
【0044】
装置本体1は、血液浄化装置の筐体を構成するもので、
図3に示すように、血液ポンプ8が配設されるとともに、血液回路(医療部品)を取り付ける取付位置P1と、ダイアライザDを取り付ける取付位置P2と、タッチパネル等の表示部6とを有して構成されている。この装置本体1は、患者が着座又は横臥するベッドの近傍に設置されており、取付位置P1に取り付けられた血液回路の動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針が患者に穿刺した状態で血液浄化治療が行われるようになっている。
【0045】
また、装置本体1は、血液ポンプ8、複式ポンプ9及び除水ポンプ10の他、血液浄化治療を行うための種々アクチュエータや電磁弁等が配設されており、これら構成部品が制御部7にて制御されて血液浄化治療が行われるよう構成されている。さらに、本実施形態に係る装置本体1は、入力部2と、記憶部3と、読み取り部4と、判定部5と、表示部6と、制御部7とを有している。
【0046】
入力部2は、医師や医療従事者等が所定の情報を装置本体1に対して入力可能なもので、例えば表示部6のタッチパネルや別個の操作ボタン等を操作して入力し得るようになっている。具体的には、入力部2は、患者の血液浄化治療に関する治療情報として、例えば治療モード(治療の種類)、プライミングボリューム(大人、小児又は幼児により異なるプライミングボリューム)等が入力される。
【0047】
記憶部3は、入力部2と接続された記憶媒体から成るもので、入力部2にて入力された患者の血液浄化治療に関する治療情報を記憶可能とされている。すなわち、入力部2にて入力された治療モード(治療の種類)、プライミングボリューム(大人、小児又は幼児により異なるプライミングボリューム)等、これから行われる血液浄化治療における治療情報が記憶され、読み取り部4にて読み取られた部品情報との照合が可能とされているのである。
【0048】
読み取り部4は、情報保持部12にて保持した部品情報を読み取り可能なもので、例えば所定の光をバーコード等に照射し、その反射光に基づいて部品情報を読み取り可能なバーコードリーダ等から成る。しかして、読み取り部4は、滅菌袋Bの外部から部品情報を読み取ることができるので、滅菌袋Bを開封する前に判定部5による照合及び判定が可能とされている。すなわち、作業者が開封前の滅菌袋Bを持って読み取り部4に情報保持部12をかざす(近接させる)と、読み取り部4が非接触にて情報保持部12の部品情報を読み取ることができるのである。なお、読み取り部4は、情報保持部12が読み取り部4に接触することにより部品情報を読み取り可能なものとしてもよい。
【0049】
さらに、本実施形態に係る読み取り部4は、装置本体1の取付位置P1とは異なる位置(作業位置P3)にある情報保持部12の部品情報を読み取り可能とされている。すなわち、装置本体1の前面側(正面側)の所定範囲には、
図3に示すように、滅菌袋を開封して医療部品を取り出す作業を行うことができる作業位置P3が設けられており、作業者が開封前の滅菌袋Bを作業位置P3まで持ち上げ、その作業位置P3に情報保持部12が位置する(作業位置P3で設定された範囲内に位置する)ことにより、読み取り部4が情報保持部12の部品情報を読み取ることができるのである。なお、読み取り部4は、装置本体1の前面側(正面側)とは異なる位置(例えば、装置本体1の側面若しくは背面、又は表示部6の正面であって表示部6の画面周囲の枠部分、側面若しくは裏面等)に設置されていてもよい。
【0050】
判定部5は、読み取り部4で読み取られた部品情報と記憶部3で記憶された治療情報とを照合して、装置本体1に取り付ける医療部品としての適否について判定可能なものである。例えば、記憶部3において、所定の治療モードにて治療が行われる治療情報が記憶されている場合、その治療モードに用いられる医療部品(血液回路)か否か判定され、又は小児又は幼児に対して治療が行われる治療情報が記憶されている場合、小児又は幼児の治療に用いられるプライミングボリュームの医療部品(血液回路)か否か判定される。
【0051】
そして、読み取り部4で読み取られた部品情報が記憶部3で記憶された治療情報と照合され、互いの情報(治療条件や使用する部品等)が合致する場合、装置本体1に取り付ける医療部品として適切と判定され、例えば表示部6にてその旨(医療部品が適切である旨)を表示する。また、読み取り部4で読み取られた部品情報が記憶部3で記憶された治療情報と照合され、互いの情報(治療条件や使用する部品等)が合致しない場合、装置本体1に取り付ける医療部品として適切でないと判定され、例えば表示部6にてその旨(医療部品が適切でない旨)を表示する。
【0052】
これにより、判定部5にて装置本体1に取り付ける医療部品としての適否を医療従事者に把握させることができるので、判定部5にて適していると判定された場合、滅菌袋Bを開封して医療部品を取り出し、装置本体1の位置P1に取り付けて血液浄化治療を開始させることができる。一方、判定部5にて適していないと判定された場合、滅菌袋Bの開封をすることなく、適している医療部品に交換することができる。
【0053】
次に、本実施形態に係る制御内容について、
図4のフローチャートに基づいて説明する。
先ず、入力部2に入力された治療情報を記憶部3にて記憶(S1)した後、読み取り部4にて部品情報が読み取られたか否か判定される(S2)。S2にて部品情報が読み取られたと判定されると、S3に進み、読み取り部4で読み取られた部品情報と記憶部3で記憶された治療情報とが照合(比較)される。
【0054】
その後、S3にて行われた照合に基づいて、装置本体1に取り付ける医療部品としての適否が判定され(S4)、装置本体1に取り付ける医療部品として適切であると判定されると、S5にて予め定められた使用期限内であるか否か判定される。そして、S5にて使用期限内であると判定されると、S6に進み、表示部6の画面において、装置本体1に取り付ける医療部品として適切である旨、及び使用期限内である旨が表示される。
【0055】
一方、S4にて装置本体1に取り付ける医療部品として適切でないと判定、又はS5にて使用期限内でないと判定されると、S7に進み、表示部6の画面において、装置本体1に取り付ける医療部品として適切でない旨、又は使用期限内でない旨が表示される。また、装置本体1に取り付ける医療部品として適切でない、又は使用期限内でないと判定された場合、表示部6による表示に代え、又は共に、他の報知手段(例えば、表示灯やスピーカ等)にてその旨報知する(すなわち、他の報知手段による報知のみ行う、又は表示部6による表示及び他の報知手段による報知を行う)ようにしてもよい。
【0056】
なお、S4にて装置本体1に取り付ける医療部品として適切でないと判定、又はS5にて使用期限内でないと判定された場合に限り、表示部6の画面に判定結果を表示させるものとし、S4にて装置本体1に取り付ける医療部品として適切であると判定、又はS5にて使用期限内であると判定された場合、表示部6の画面に判定結果を表示させないものとしてもよい。
【0057】
本実施形態によれば、医療部品は、装置本体1に取り付けられる前の状態で滅菌袋B内に密閉状態とされるとともに、読み取り部4によって、滅菌袋Bの外部から情報保持部12にて保持された部品情報を読み取るので、滅菌袋Bを開封することなく医療部品11の判定(装置本体1に取り付ける医療部品としての適否についての判定)を行わせることができる。特に、本実施形態に係る情報保持部12は、滅菌袋Bに形成されたので、滅菌袋Bを開封することなく滅菌袋Bに形成された情報保持部12の部品情報を読み取らせて医療部品の判定を行わせることができる。
【0058】
また、本実施形態に係る装置本体1は、医療部品11を取付可能な取付位置P1を有するとともに、読み取り部4によって、当該取付位置P1とは異なる位置にある情報保持部12の部品情報を読み取るので、医療部品11を装置本体1に取り付ける前に情報保持部12の部品情報を容易に読み取ることができる。
【0059】
さらに、本実施形態に係る情報保持部12は、バーコード、二次元コード、データマトリックスコード、カラーラベル又は識別マークから成るので、汎用的な情報保持部12にて部品情報を保持させることができ、製造コストが嵩んでしまうのを抑制できる。また、情報保持部12は、読み取り部4に対して部品情報を送信可能な送信手段から成るものとすれば、情報保持部12にて比較的大量の部品情報を保持させることができる。
【0060】
またさらに、読み取り部4によって、滅菌袋Bを開封して医療部品を取り出す作業位置P3にある情報保持部12の部品情報を読み取るので、情報保持部12の部品情報の読み取り作業、滅菌袋Bの開封作業、及び医療部品11の取付作業を円滑に行わせて作業性を向上させることができる。また、本実施形態に係る情報保持部12は、滅菌袋Bの外面若しくは内面、又は当該滅菌袋Bに収容された医療部品11に貼着されたので、読み取り部4によって、開封される前の滅菌袋Bの外部から部品情報を容易且つ確実に読み取ることができる。
【0061】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、滅菌袋Bに収容される医療部品は、本実施形態の如く血液回路(動脈側血液回路11a及び静脈側血液回路11b)に限らず、例えばダイアライザD、持続緩除式血液濾過器、血液吸着器、血漿分離器、血漿成分分画器、血漿吸着器、抗凝固薬、生理食塩液、透析用液、血液製剤、カテーテル等、他の医療部品であってもよい。例えばダイアライザDを医療部品とした場合、情報保持部12にて保持される部品情報として、中空糸(血液浄化膜)の種類、濾過率
、情報商品コード、使用期限、ロット番号等とすることができる。また、
図5に示すように、複数の装置本体1の入力部2と電気的に接続され、患者の血液浄化治療に関する治療情報を各装置本体1に送信可能な中央監視装置Cを具備したものに適用され、入力部2に入力及び記憶部3に記憶される治療情報が中央監視装置Cから送信されるよう構成してもよい。
【0062】
さらに、
図6に示すように、滅菌袋Bには複数の医療部品11(例えば、血液回路及びダイアライザD等)が収容されるとともに、判定部5は、当該複数の医療部品11に関する部品情報を一括して照合し、装置本体1に取り付ける医療部品としての適否を一括して判定可能とされたものとしてもよい。この場合、医療部品11を一つずつ判定するものに比べ、作業時間を短縮させることができる。
【0063】
またさらに、
図7に示すように、情報保持部12が取り付けられた滅菌袋Bが医療部品11を収容し、別個の収容手段F(包装紙、包装袋又は包装箱等含む)にて覆われて収容されたものとしてもよい。また、情報保持部12は、滅菌袋Bに形成されないものとしてもよく、
図8に示すように、例えば滅菌袋Bを収容した別個の収容手段Fであって滅菌袋Bとは異なる位置(収容手段Fの内部及び外部の両方含む)に情報保持部12を形成してもよい。なお、本実施形態においては透析治療における透析装置に適用されているが、患者の血液を浄化治療し得る他の装置(例えば血液濾過透析法、血液濾過法、AFBF、持続緩除式血液濾過療法、血液吸着療法、選択式血球成分除去療法、単純血漿交換療法、二重膜濾過血漿交換療法、又は血漿吸着療法で使用される血液浄化装置、血液吸着装置、血漿吸着装置等)に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
医療部品は、装置本体に取り付けられる前の状態で滅菌袋内に密閉状態とされるとともに、読み取り部によって、滅菌袋の外部から情報保持部にて保持された部品情報を読み取る血液浄化装置及び血液浄化装置による医療部品の判定方法であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 装置本体
2 入力部
3 記憶部
4 読み取り部
5 判定部
6 表示部
7 制御部
8 血液ポンプ
9 複式ポンプ
10 除水ポンプ
11 医療部品
11a 動脈側血液回路
11b 静脈側血液回路
12 情報保持部
D ダイアライザ(血液浄化器)
B 滅菌袋