(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】工具搬送装置、工作システムおよび工具搬送方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/155 20060101AFI20230829BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20230829BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
B23Q3/155 Z
B23Q3/155 F
B25J13/00 Z
G05B19/18 T
(21)【出願番号】P 2019005370
(22)【出願日】2019-01-16
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】尾川 宜嗣
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-120542(JP,A)
【文献】特開平8-187640(JP,A)
【文献】特開2005-205503(JP,A)
【文献】特開2004-90097(JP,A)
【文献】特開昭63-267136(JP,A)
【文献】特開2006-272473(JP,A)
【文献】特開平8-115113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155
B25J 13/00
G05B 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の旋回式の工具マガジンに対して工具の着脱を行う工具搬送装置であって、
前記工具を把持する多関節アームを有するロボットと、
前記工作機械が所定重量以上である特定工具を用いて加工を行う前に、前記特定工具を前記工具マガジンに取り付けるように前記ロボットを制御する第1の制御を行い、前記第1の制御の後であって前記工作機械が前記特定工具を用いた加工を終了した後に、前記特定工具を前記工具マガジンから取り外すように前記ロボットを制御する第2の制御を行うロボット制御部と、
を備え、
前記ロボット制御部は、一つの加工プログラムが前記工作機械により実行される間に、前記第1の制御と前記第2の制御との両方を行
い、
前記第1の制御は、前記特定工具を用いた加工の1つ前に前記特定工具以外の前記工具である第1工具を用いて行われる加工が実行される期間内に実行され、
前記第2の制御は、前記特定工具を用いた加工の1つ後に前記特定工具以外の前記工具である第2工具が前記工作機械の主軸に装着されてから、前記第2工具を用いて行われる加工が終了するまでの期間内に実行される、工具搬送装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の工具搬送装置であって、
前記ロボット制御部は、前記工作機械からの指令に基づいて、前記ロボットによる前記特定工具の前記工具マガジンへの取り付けおよび取り外しの制御を実行する、工具搬送装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の工具搬送装置であって、
前記ロボットによる前記特定工具の取り付け動作および取り外し動作が完了した場合は、完了したことを前記工作機械に通知する通信部を備える、工具搬送装置。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の工具搬送装置と、
前記工作機械と、
を備える、工作システム。
【請求項5】
請求項
4に記載の工作システムであって、
前記工作機械は、
前記工具マガジンを旋回させるための旋回モータと、
前記工具マガジンに取り付けられている前記工具のうち最も重量が大きい前記工具の重量である最大工具重量に応じた旋回速度または旋回加速度で前記工具マガジンが旋回するように前記旋回モータを制御するモータ制御部と、
を有する、工作システム。
【請求項6】
請求項
5に記載の工作システムであって、
前記モータ制御部は、前記最大工具重量が小さい程、前記旋回速度または前記旋回加速度の少なくともいずれか一つが速くなるように前記旋回モータを制御する、工作システム。
【請求項7】
請求項
5または
6に記載の工作システムであって、
前記工作機械は
、
前記主軸を回転駆動する主軸頭と、
前記主軸頭を軸方向に移動させる軸送りモータと、
前記主軸頭が軸方向に沿って移動したときに前記工具マガジンを揺動させる揺動機構と、
を有し、
前記モータ制御部は、前記最大工具重量に応じた軸送り速度または軸送り加速度で前記主軸頭が移動するように前記軸送りモータを制御する、工作システム。
【請求項8】
請求項
4に記載の工作システムであって、
前記工作機械は
、
前記主軸を回転駆動する主軸頭と、
前記主軸頭を軸方向に移動させる軸送りモータと、
前記主軸頭が軸方向に沿って移動したときに前記工具マガジンを揺動させる揺動機構と、
前記工具マガジンに取り付けられている前記工具のうち最も重量が大きい前記工具の重量である最大工具重量に応じた軸送り速度または軸送り加速度で前記主軸頭が移動するように前記軸送りモータを制御するモータ制御部と、
を有する、工作システム。
【請求項9】
請求項
7または
8に記載の工作システムであって、
前記モータ制御部は、前記最大工具重量が小さい程、前記軸送り速度または前記軸送り加速度の少なくともいずれか一つが速くなるように前記軸送りモータを制御する、工作システム。
【請求項10】
工作機械の旋回式の工具マガジンに対して工具の着脱を行う、前記工具を把持する多関節アームを有するロボットを備える工具搬送装置の工具搬送方法であって、
前記工作機械が所定重量以上である特定工具を用いて加工を行う前に、前記特定工具を前記工具マガジンに取り付けるように前記ロボットを制御する工具取り付けステップと、
前記工具取り付けステップの後において前記工作機械が前記特定工具を用いた加工を終了した後に、前記特定工具を前記工具マガジンから取り外すように前記ロボットを制御する工具取り外しステップと、
を有し、
一つの加工プログラムが前記工作機械により実行される間に、前記工具取り付けステップと前記工具取り外しステップとの両方が行わ
れ、
前記工具取り付けステップは、前記特定工具を用いた加工の1つ前に前記特定工具以外の前記工具である第1工具を用いて行われる加工が実行される期間内に行われ、
前記工具取り外しステップは、前記特定工具を用いた加工の1つ後に前記特定工具以外の前記工具である第2工具が前記工作機械の主軸に装着されてから、前記第2工具を用いて行われる加工が終了するまでの期間内に実行される、工具搬送方法。
【請求項11】
請求項
10に記載の工具搬送方法であって、
前記工具取り付けステップは、前記工作機械からの指令に基づいて、前記ロボットによる前記特定工具の前記工具マガジンへの取り付けの制御を実行し、
前記工具取り外しステップは、前記工作機械からの指令に基づいて、前記ロボットによる前記特定工具の前記工具マガジンからの取り外しの制御を実行する、工具搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に工具の着脱を行う工具搬送装置、工作システムおよび工具搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記に示す特許文献1に記載されているような旋回式の工具マガジンであるタレットを備えた工作機械においては、工具に作用する遠心力を考慮し、工具の質量に応じて工具マガジンの旋回速度を決定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、旋回式の工具マガジンを有した工作機械においては、工具マガジンの旋回速度といった工作機械の動作が工具マガジンに装着されている工具の質量、特に最大重量の制約を受けるので、生産性の向上の阻害要因になっていた。
【0005】
そこで、本発明は、工作機械の生産性を向上させることができる工具搬送装置、工作システムおよび工具搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、工具搬送装置であって、工作機械の旋回式の工具マガジンに対して工具の着脱を行う工具搬送装置であって、前記工具を把持する多関節アームを有するロボットと、前記工作機械が所定重量以上である特定工具を用いて加工を行う前に、前記特定工具を前記工具マガジンに取り付けるように前記ロボットを制御する第1の制御を行い、前記第1の制御の後であって前記工作機械が前記特定工具を用いた加工を終了した後に、前記特定工具を前記工具マガジンから取り外すように前記ロボットを制御する第2の制御を行うロボット制御部と、を備える。
【0007】
本発明の第2の態様は、工作システムであって、工具搬送装置と、前記工作機械と、を備える。
【0008】
本発明の第3の態様は、工作機械の旋回式の工具マガジンに対して工具の着脱を行う、前記工具を把持する多関節アームを有するロボットを備える工具搬送装置の工具搬送方法であって、前記工作機械が所定重量以上である特定工具を用いて加工を行う前に、前記特定工具を前記工具マガジンに取り付けるように前記ロボットを制御する工具取り付けステップと、前記工具取り付けステップの後において前記工作機械が前記特定工具を用いた加工を終了した後に、前記特定工具を前記工具マガジンから取り外すように前記ロボットを制御する工具取り外しステップと、を有し、一つの加工プログラムが前記工作機械により実行される間に、前記工具取り付けステップと前記工具取り外しステップとの両方が行われる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、工作機械の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態にかかる工作システムの外観構成図である。
【
図3】記憶部が記憶している各マガジン番号および各ストッカ番号と工具の重量との対応関係を示す図である。
【
図4】加工プログラムに従って最大工具重量および動作モードが変化する様子を説明する図である。
【
図5】工具着脱コードの指令内容を説明する図である。
【
図6】工具交換コードによる工作システムの制御を説明するフローチャートである。
【
図7】工具着脱コードによる工作システムの制御を説明するフローチャートである。
【
図8】変形例1にかかる加工プログラムの構成を示す図である。
【
図9】変形例1にかかる工具マガジンを示す図である。
【
図10】変形例1にかかる工具ストッカを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る工具搬送装置、工作システムおよび工具搬送方法について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0012】
[実施の形態]
図1は、実施の形態にかかる工作システム10の外観構成図である。工作システム10は、工作機械12と、工具搬送装置14と、工具ストッカ16とを備える。工作機械12は、工作機械本体20と、工作機械本体20を制御する制御装置22とを備える。
図2は、工作機械12の側面図である。
図2では、加工対象物28から下の構成は省いて示してある。
【0013】
工作機械本体20は、主軸30と、Z方向に平行な回転軸(Z軸)を中心に主軸30を回転駆動する主軸頭32と、台座33から上方(+Z方向)に立設し、主軸頭32のZ軸方向(上下方向)への移動を案内するコラム34とを備える。なお、-Z方向を重力が働く方向とする。なお、加工対象物28を支持するテーブル46は、主軸頭32の下方(-Z方向)に設けられている。テーブル46を、X方向およびY方向に移動させるための移動機構の図示は省略する。なお、X方向、Y方向、Z方向は、互いに直交している。
【0014】
主軸頭32の上部には、主軸30を回転させるための主軸モータ36が設けられている。工具40は、主軸30に着脱可能である。工具40は、主軸30に装着されると主軸30と一緒に回転する。工作機械本体20は、主軸30に取り付けられる工具40を自動で交換するための自動工具交換装置48を備える。自動工具交換装置48は、旋回式の工具マガジン50および工具マガジン50を旋回させるための旋回モータ50aを有する。
【0015】
工具マガジン50は、周方向に沿って設けられた複数のグリップ54を有する。グリップ54の各々は、工具を着脱可能に保持する。複数のグリップ54の各々はマガジン番号が付与されて識別される。
図1の工具マガジン50にはマガジン番号が1から8まで付与されている。
【0016】
工具マガジン50は、コラム34から+Y方向に延びた一対の支持部材56によって支持されている。工具マガジン50は、一対の支持部材56の先端部に設けられた揺動軸(回動軸)60によって揺動可能(回動可能)に支持されている。この一対の支持部材56の間に主軸頭32および主軸モータ36が設けられている。
【0017】
主軸頭32の側面には、カム62が設けられており、工具マガジン50には、カム62と接触するカムフォロア64が設けられている。コラム34には主軸頭32を軸方向に移動させる軸送りモータ34aが設けられている。軸送りモータ34aが駆動して主軸頭32がコラム34に対して軸方向(Z方向)に移動することで、カムフォロア64がカム62の形状に沿ってカム62上を移動する。これにより、工具マガジン50が揺動軸60を中心に揺動(回動)する。カム62とカムフォロア64によって工具マガジン50を揺動させる揺動機構が構成される。
【0018】
制御装置22は、CPU等のプロセッサとメモリとを有し、メモリに記憶されたプログラムを実行することで、本実施の形態の制御装置22として機能する。制御装置22は、モータ制御部24、通信部26、加工プログラム等を記憶する記憶部27および後述する動作モードを設定する動作モード設定部24aを有する。モータ制御部24は、旋回モータ50aを制御することで、工具マガジン50を回転軸52回りに回転させ、軸送りモータ34aを制御することで、主軸頭32をZ方向に移動させる。
【0019】
工具ストッカ16は、複数の工具40を収納することができる。ここでは、工具ストッカ16が各工具40を収納する場所にストッカ番号を付与して識別する。
図1の工具ストッカ16にはストッカ番号が1から20まで付与されている。
【0020】
工具搬送装置14は、工具を把持する多関節アームを有するロボット70と、ロボット制御装置72とを備えて、工具マガジン50に対して工具着脱動作、すなわち工具40の取り付け動作および取り外し動作を行う。ロボット70は、工具マガジン50に対する工具40の着脱に加えて、工具ストッカ16に収納されている工具40の取り出しおよび工具40の工具ストッカ16への収納も実行することができる。ロボット制御装置72は、ロボット70を制御するロボット制御部74と、工作機械12の制御装置22の通信部26と通信する通信部76と、を備える。
【0021】
工作機械12は、記憶部27に記憶されている加工プログラムに基づいて、モータ制御部24が工作機械本体20(軸送りモータ34aおよび旋回モータ50aを含む)を制御することにより、加工対象物28を3次元に加工する等の所定の動作を行う。このとき、軸送りモータ34aおよび旋回モータ50aは、動作モード設定部24aが設定する動作モードに応じた軸送り速度および旋回速度といったパラメータで動作する。工具マガジン50に取り付けられている工具40のうち最も重量が大きい工具40の重量を最大工具重量と呼ぶ。動作モードは、最大工具重量に対応している。
【0022】
一例として、以下の説明では、最大工具重量が、2kg、3kgおよび4kgのいずれかであるとし、これらの最大工具重量に対応する動作モードは、高速モード、中速モードおよび低速モードのいずれかであるとする。そして、高速モードは最大工具重量=2kgに対応し、中速モードは最大工具重量=3kgに対応し、低速モードは最大工具重量=4kgに対応する。ただし、最大工具重量および動作モードの種類および数はこれらに限定されるわけではない。最大工具重量が変化するとそれに応じて動作モードも切り替えられる。このように最大工具重量および動作モードはそれぞれ変化するので、記憶部27は、現在の最大工具重量および現在の動作モードをそれぞれ記憶している。
【0023】
記憶部27は、各動作モードに応じた旋回パラメータも記憶している。旋回パラメータは旋回速度、旋回加速度またはその両方である。ここで、動作モードに対応する最大工具重量が小さい程、当該動作モードに応じた旋回パラメータの値は大きく、すなわち、旋回速度または旋回加速度は速い値となるように記憶されている。したがって、モータ制御部24は、現在の動作モードに応じた旋回パラメータを記憶部27から取得することで、最大工具重量に応じた旋回速度または旋回加速度で工具マガジン50が旋回するように旋回モータ50aを制御することができる。すなわち、モータ制御部24は、最大工具重量が小さい程、旋回速度または旋回加速度の少なくともいずれか一つが速くなるように旋回モータ50aを制御できる。
【0024】
また、記憶部27は、各動作モードに応じた軸送りパラメータも記憶している。軸送りパラメータは軸送り速度、軸送り加速度またはその両方である。動作モードに対応する最大工具重量が小さい程、当該動作モードに応じた軸送りパラメータの値は大きく、すなわち、軸送り速度または軸送り加速度は速い値となるように記憶されている。したがって、モータ制御部24は、現在の動作モードに応じた軸送りパラメータを記憶部27から取得することで、最大工具重量に応じた軸送り速度または軸送り加速度で主軸頭32が移動するように軸送りモータ34aを制御することができる。すなわち、モータ制御部24は、最大工具重量が小さい程、軸送り速度または軸送り加速度の少なくともいずれか一つが速くなるように軸送りモータ34aを制御できる。
【0025】
さらに、記憶部27は、工具マガジン50の各マガジン番号のグリップ54に装着されている工具40の種類および重量と、工具ストッカ16の各ストッカ番号の場所に収納されている工具の種類および重量とをさらに記憶している。
図3は、記憶部27が記憶している各マガジン番号および各ストッカ番号と工具の重量の対応関係を示す図である。
図3は、ある時点で記憶部27が記憶している各マガジン番号および各ストッカ番号と工具の重量との対応関係を示している。したがって、工具搬送装置14によって工具40が工具マガジン50と工具ストッカ16との間で移動させられた場合は、記憶部27が記憶している各マガジン番号および各ストッカ番号と工具の重量の対応関係は更新される。本実施の形態においては、予め所定重量を決定しておき、所定重量以上である工具40を特定工具と呼ぶ。ここでは、一例として所定重量を3kgとしておく。したがって、3kgおよび4kgの工具40は特定工具になる。
【0026】
本実施の形態にかかる工作システム10においては、特定工具を用いた加工を工作機械12において実行する前に、工具搬送装置14に当該特定工具を工具マガジン50に取り付けさせ、特定工具を用いた加工を工作機械12が実行した後に、工具搬送装置14に当該特定工具を工具マガジン50から取り外させる。
【0027】
工具搬送装置14による特定工具の取り付け動作の開始は、ロボット70が工具ストッカ16に収納されている特定工具を掴むために動き出すことである。特定工具の取り付け動作の完了とは、ロボット70が特定工具を工具マガジン50に取り付けてから退避位置まで移動したことである。
【0028】
工具搬送装置14の通信部76は、特定工具の取り付け動作の開始から完了まで工具着脱信号をONにして、工具着脱信号を工作機械12の通信部26に送信し続ける。そして、特定工具の取り付け動作が完了すると工具着脱信号をOFFにして、工具着脱信号の通信部26への送信を停止する。これにより、通信部76は、特定工具の取り付け動作が完了したことを通信部26に通知する。なお、通信部76は、特定工具の取り付け動作が完了したこと、別途完了信号を送信することにより通信部26に通知してもよい。
【0029】
工具搬送装置14による特定工具の取り外し動作の開始は、ロボット70が工具マガジン50に取り付けられている特定工具を掴むために動き出すことである。特定工具の取り外し動作の完了とは、ロボット70が特定工具を工具マガジン50から取り外して工具ストッカ16に収納してから退避位置まで移動したことである。
【0030】
工具搬送装置14の通信部76は、特定工具の取り外し動作の開始から完了まで工具着脱信号をONにして、工具着脱信号を工作機械12の通信部26に送信し続ける。そして、特定工具の取り外し動作が完了すると工具着脱信号をOFFにして、工具着脱信号の通信部26への送信を停止する。これにより、通信部76は、特定工具の取り外し動作が完了したことを通信部26に通知する。なお、通信部76は、別途完了信号を送信することにより、特定工具の取り外し動作が完了したことを通信部26に通知してもよい。
【0031】
ロボット制御部74は、工作機械12が特定工具を用いて加工を行う前に、特定工具の取り付け動作を実行する。すなわち、特定工具を工具マガジン50に取り付けるようにロボット70を制御する。さらに、ロボット制御部74は、工作機械12が特定工具を用いた加工を終了した後に、特定工具の取り外し動作を実行する。すなわち、特定工具を工具マガジン50から取り外すようにロボット70を制御する。ロボット制御装置72の通信部76は、ロボット70による特定工具の取り付け動作および取り外し動作が完了した場合は、完了したことを制御装置22の通信部26に上述したように通知する。
【0032】
制御装置22(モータ制御部24)は、加工プログラムに従って工作機械本体20を制御することにより、主軸30に装着する工具40の工具交換および加工対象物28に対する加工を実行させる。さらに、本実施の形態においては、制御装置22(通信部26)が加工プログラムに基づいて工具搬送装置14に指令を送ることにより、工具搬送装置14による工具マガジン50への工具着脱動作が実行される。
図4は、加工プログラム80に従って最大工具重量および動作モードが変化する様子を説明する図である。
【0033】
図4の加工プログラム80に記載されている「M6T1」~「M6T4」は、主軸30に装着する工具40の工具交換を指令する工具交換コードである。「T1」~「T4」は、それぞれ工具マガジン50のマガジン番号1の工具40~マガジン番号4の工具40を示している。したがって、「M6T1」は、主軸30に装着する工具40を工具マガジン50のマガジン番号1の工具に交換することを指令している。
【0034】
図4の加工プログラム80に記載されている「M100D2E1」は、工具搬送装置14による工具マガジン50への工具着脱動作を指令する工具着脱コードである。「D2」は、工具マガジン50のマガジン番号2を示し、「E1」は、工具ストッカ16のストッカ番号1を示している。したがって、「M100D2E1」は、工具マガジン50のマガジン番号2と工具ストッカ16のストッカ番号1との間で工具を移動させるために、工具搬送装置14による工具マガジン50への工具を着脱させることを指令している。
図5は、工具着脱コードの指令内容を説明する図である。
図5の破線矢印が工具着脱コード「M100D2E1」の指示内容を示している。
【0035】
本実施の形態においては、モータ制御部24は、記憶部27に記憶されている
図3に示される工具40の配置状況に基づいて、加工プログラム80に記載されている工具着脱コード「M100D2E1」が特定工具の取り付け動作または取り外し動作のいずれを意味しているのかを判断することができる。したがって、後述する工具着脱指令を通信部26から通信部76に通知させる場合に、特定工具の取り付け動作または取り外し動作のいずれを意味しているかの情報も付加して通知させることができる。
【0036】
したがって、加工プログラム80の1番目に記載されている「M100D2E1」は、工具ストッカ16のストッカ番号1に収納されている工具40を、工具マガジン50のマガジン番号2に取り付けることを指令している。これに対して、加工プログラム80の2番目に記載されている「M100D2E1」は、工具マガジン50のマガジン番号2に取り付けられている工具を取り外して、工具ストッカ16のストッカ番号1に収納させることを指令している。
図3は、加工プログラム80の1番目に記載されている「M100D2E1」が実行される前に、記憶部27が記憶している各マガジン番号および各ストッカ番号と工具の重量との対応関係を示している。したがって、この時点では工具マガジン50のマガジン番号2にまだ工具40が取り付けられていないので、
図3の該当する欄は「無し」になっている。
【0037】
以下、
図4の加工プログラム80の処理の順に、
図6および
図7のフローチャートをさらに用いて、本実施の形態における工作システム10の動作を説明する。
図6は、工具交換コードによる工作システム10の制御を説明するフローチャートである。
図7は、工具着脱コードによる工作システム10の制御を説明するフローチャートである。
図6は、工作機械12の制御が記載され、
図7は、工作機械12の制御および工具搬送装置14の制御が記載されている。
【0038】
まず、
図4の加工プログラム80の最初に工具交換コード「M6T1」が記載されているので(
図6、ステップS10)、ステップS11に進む。ステップS11では、最大工具重量が動作モードに対応する最大工具重量より小さいか否かをモータ制御部24が判定する。
図4の加工プログラム80の実行開始時の最大工具重量は2kgで、そのときの動作モードに対応する最大工具重量も2kg(高速モード)であり、両者は同じ重量になっている。したがって、ステップS11で、最大工具重量は動作モードに対応する最大工具重量より小さくないので(ステップS11、NO)、ステップS15に進む。ステップS15では、通信部26が工具着脱信号を受信しているか否かがモータ制御部24により判定される。この時点で工具搬送装置14は工具着脱動作を開始していないので、工具着脱信号を通信部26は受け取っておらず(ステップS15、NO)、工作機械本体20による工具交換動作が実行される(ステップS16)。すなわち、工具交換コード「M6T1」に従って、工具マガジン50のマガジン番号1の2kgの工具40が主軸30に装着される。
【0039】
図4の加工プログラム80の「M6T1」の次の行には、1番目の工具着脱コード「M100D2E1」が記載されている(
図7、ステップS20)。このコードを解釈したモータ制御部24は、通信部26に工具着脱指令を通信部76へ通知させる(ステップS21)。このときの工具着脱指令は特定工具の取り付け動作の指令である。そして、モータ制御部24は、工具マガジン50への工具40の着脱後に最大工具重量が現在の最大工具重量より大きくなるか否かを判定する(ステップS22)。ここでは、
図5のストッカ番号1の欄からマガジン番号2の欄に向かう破線矢印が示すように、工具ストッカ16の3kgの特定工具が工具マガジン50へ取り付けられることになり最大工具重量が2kgから3kgに変化することになる。このように、最大工具重量が大きくなる場合は(ステップS22、YES)、工作機械本体20は軸動作を停止し(ステップS23)、動作モード設定部24aは記憶部27に記憶されている動作モードを最大工具重量=2kgに対応する高速モードから最大工具重量=3kgに対応する中速モードに変更する(ステップS24)。ステップS24は、
図4のAに対応している。
【0040】
ステップS24の後は、工作機械本体20による軸動作が再開される(ステップS25)。そして、工具交換コード「M6T1」によって主軸30に既に装着されている2kgの工具40を用いて、
図4の「T1の工具を用いた加工用コード」に従った加工が実行される。このとき、ロボット制御部74は、遅くとも工作機械12が特定工具の1つ前に加工に使用する主軸30に装着された2kgの工具40を用いた上記加工が終了するまでに、3kgの特定工具を工具マガジン50に取り付けるようにロボット70を制御する。そして、通信部76からの工具着脱信号の通信部26による受信が停止されたか否かの判定(ステップS26)が、工具着脱信号が通信部26に受信されなくなるまでモータ制御部24によって繰り替えされる。工具着脱信号が通信部26に受信されなくなるのは、工具搬送装置14による工具着脱動作が完了して、通信部76が通信部26への工具着脱信号の送信を停止した場合である。そして、工具着脱信号が通信部26に受信されなくなると(ステップS26、YES)、モータ制御部24は上記の工具着脱動作による最大工具重量の変化の有無を判定する(ステップS27)。上述したように工具搬送装置14が工具マガジン50に3kgの工具40を取り付けたので、最大工具重量が2kgから3kgに変化する(ステップS27、YES)。したがって、モータ制御部24は記憶部27に記憶されている最大工具重量を2kgから3kgに更新して(ステップS28)、次の処理(ステップS29)に進む。ステップS28は、
図4のBに対応している。なお、ステップS28において、モータ制御部24は、記憶部27が記憶している各マガジン番号および各ストッカ番号と工具の重量の対応関係も、
図3においてマガジン番号2の欄を「3kg」、ストッカ番号1の欄を「無し」とするように更新する。
【0041】
その後、加工プログラム80の工具交換コード「M6T2」では、最初の工具交換コード「M6T1」と同様に動作モードは変化せず、工具マガジン50のマガジン番号2の3kgの特定工具が主軸30に装着される。そして、加工プログラム80の「T2の工具を用いた加工用コード」に従った特定工具を用いた加工が実行される。
【0042】
その後、加工プログラム80の工具交換コード「M6T3」でも、動作モードは変化しない。そして、工具マガジン50のマガジン番号3の2kgの工具40が主軸30に装着される。すなわち、主軸30に特定工具の1つ後に加工に使用される2kgの工具40が装着される。加工プログラム80の工具交換コード「M6T3」の次の行には、2番目の工具着脱コード「M100D2E1」が記載されている(
図7、ステップS20)。このコードを解釈したモータ制御部24は、通信部26に工具着脱指令を通信部76へ通知させる(ステップS21)。このときの工具着脱指令は特定工具の取り外し動作の指令である。そして、すでに、主軸30に特定工具の1つ後に加工に使用される2kgの工具40が装着されているので、ロボット制御部74は、早くても上記2kgの工具40が主軸30に装着された後に、特定工具を工具マガジン50から取り外すようにロボット70を制御する。さらに、モータ制御部24は、工具マガジン50への工具40の着脱後に最大工具重量が大きくなるか否かを判定する(ステップS22)。ここでは、工具マガジン50から特定工具が取り外されるので、最大工具重量が3kgから2kgに変化することになる。このように、最大工具重量が大きくならない場合は(ステップS22、NO)、
図4のCに示されるように動作モードは変更されずに、ステップS26に進んで、工具着脱信号が受信されなくなるまでステップS26がモータ制御部24によって繰り替えされる。
【0043】
そして、通信部76からの工具着脱信号が通信部26に受信されなくなるとモータ制御部24が判定すると(ステップS26、YES)、モータ制御部24は上記の工具着脱による最大工具重量の変化の有無を判定する(ステップS27)。上述したように工具マガジン50から特定工具が取り外されたので、最大工具重量が3kgから2kgに変化している(ステップS27、YES)。したがって、モータ制御部24は記憶部27に記憶されている最大工具重量を3kgから2kgに更新して(ステップS28)、次の処理(ステップS29)に進む。ここでのステップS28は、
図4のDに対応している。ロボット制御部74が、特定工具を工具マガジン50から取り外すようにロボット70を制御している間に、工具交換コード「M6T3」によって主軸30に装着された2kgの工具40を用いて、
図4の「T3の工具を用いた加工用コード」に従った加工が実行される。なお、ステップS28において、モータ制御部24は、記憶部27が記憶している各マガジン番号および各ストッカ番号と工具の重量の対応関係を更新して、
図3の状態に戻す。
【0044】
ここで、ステップS21において工作機械12の通信部26から工具搬送装置14の通信部76に工具着脱指令が通知されたときの工具搬送装置14の制御を説明する。まず、ロボット制御部74は、常に、工具着脱指令の有無を判定している(ステップS30)。ステップS21において通信部76が工具着脱指令を受け取ると(ステップS30、YES)、ロボット制御部74は、上記指令に基づいて、工具着脱動作を開始する(ステップS31)。すなわち、ロボット制御部74は、ロボットによる特定工具の工具マガジン50への取り付けまたは取り外しの制御を実行する。上述したように、工作機械12の通信部26からの工具着脱指令は、特定工具を工具マガジン50に取り付けるようにロボット70を制御する工具取り付け動作(ステップS31)の指令、または、特定工具を工具マガジン50から取り外すようにロボット70を制御する工具取り外し動作(ステップS31)の指令のいずれかである。ここでは、加工プログラム80に記載される工具着脱コードが上記2つのいずれを指令しているかは、モータ制御部24が判断するとして説明した。
【0045】
しかし、
図3の工具40の配置状況についての情報を記憶部27が記憶してなくても、モータ制御部24が工具着脱コードの加工プログラム80における記載の順番に従って判断して、上記2つのいずれの指令であるかを通信部26から通信部76に伝えるようにしてもよい。または、加工プログラム80に記載される工具着脱コードに上記2つのいずれの指令であるか明記しておいてもよい。また、ロボット制御装置72の記憶部(図示せず)が
図3の工具40の配置状況を記憶していて、通信部76が工具着脱指令を受信したときに上記2つのいずれを指令しているかを判断するようにしてもよい。また、単に、通信部76が受信した工具着脱指令の順番でロボット制御部74が上記2つのいずれを指令しているかを判断するようにしてもよい。
【0046】
工具着脱動作の開始と共に、通信部76は、工具着脱信号をONにして、工具着脱信号を通信部26に送信する。工具着脱動作の最中も、ロボット制御部74は、工具着脱指令があるか、すなわち新たに送られてきているか否かを判定している(ステップS32)。工具搬送装置14による工具着脱動作の最中に新たな工具着脱指令を通信部76が受信した場合は(ステップS32、YES)、当該指令をロボット制御装置72の記憶部(図示せず)に記憶させる(ステップS33)。新たな工具着脱指令を通信部76が受信しない場合(ステップS32、NO)およびステップS33の後は、ロボット制御部74は、工具着脱動作の完了の判定(ステップS34)を行う。ロボット制御部74の制御によるロボット70の工具着脱動作が完了したとロボット制御部74が判定すると(ステップS34、YES)、ロボット制御部74は工具着脱信号をOFFにして通信部76に通信部26への工具着脱信号の送信を停止させる等して、ロボット70による特定工具の取り付け動作および取り外し動作が完了したことを工作機械12に通知する(ステップS35)。なお、ステップS35において通信部76が通信部26への工具着脱信号の送信を停止する工具着脱の完了の通知に基づいて、工作機械12の制御はステップS26からステップS27に進むことになる。
【0047】
図4の加工プログラム80に戻ると、工具交換コード「M6T4」が記載されているので(
図6、ステップS10)、ステップS11に進む。この時点で、最大工具重量は2kgで、動作モードが対応する最大工具重量は3kg(中速モード)になっている。すなわち、ステップS11で、最大工具重量は動作モードに対応する最大工具重量より小さいとモータ制御部24が判定するので(ステップS11、YES)、工作機械本体20は軸動作を停止する(ステップS12)。そして、動作モード設定部24aは記憶部27に記憶されている動作モードを最大工具重量=3kgに対応する中速モードから最大工具重量=2kgに対応する高速モードに変更する(ステップS13)。ここでの、ステップS13は、
図4のEに対応している。
【0048】
ステップS13の後は、工作機械本体20による軸動作が再開され(ステップS14)、ステップS15に進む。工具着脱動作は既に完了しているので、工具着脱信号を通信部26は受け取っていないとモータ制御部24が判定し(ステップS15、NO)、工作機械本体20による工具交換動作が実行される(ステップS16)。すなわち、工具マガジン50のマガジン番号4の2kgの工具40が主軸30に装着される。そして、工具交換コード「M6T4」によって主軸30に既に装着されている2kgの工具40を用いて、
図4の「T4の工具を用いた加工用コード」に従った加工が実行される。
【0049】
以上で、加工プログラム80の実行は終了である。しかし、上記のステップS15において、加工プログラム80の
図4には記載されていないがこの後に記載される工具着脱コードにより、工具搬送装置14が工具着脱動作を開始して、工具着脱信号を通信部26が受け取ったとモータ制御部24が判定した場合は(ステップS15、YES)、工作機械本体20は軸動作を停止し(ステップS17)、モータ制御部24は、工具着脱信号を通信部26が受信しなくなる(ステップS18、NO)のを待つ。工具着脱信号を通信部26が受信しなくなると(ステップS18、NO)、工具着脱動作が完了したので、工作機械本体20は軸動作を再開して(ステップS19)、工作機械本体20による工具交換動作が実行される(ステップS16)。これにより、工具マガジン50のマガジン番号4の2kgの工具40が主軸30に装着される。すなわち、特定工具の工具着脱動作が完了するのを待って、工具交換動作を行うことが可能となる。このように、ロボット制御装置72が通信部76を備えて、特定工具の工具着脱動作が完了した場合に、完了したことを通信部26に通知することにより、二つの動作による工作機械本体20とロボット70との干渉を回避することができる。
【0050】
以上説明したように、工作機械12が特定工具を用いた加工を実行する前は、工具マガジン50には特定工具を取り付けておかない状態を維持しておく。工具搬送装置14は、工作機械12が特定工具を用いて加工を行う直前に、特定工具を工具マガジン50に取り付ける。そして、工具搬送装置14は、工作機械12が特定工具を用いた加工を終了した後は、特定工具を工具マガジン50から直ちに取り外す。これにより、工作機械12が特定工具を加工に使用しないときには、工具マガジン50を特定工具を取り外した状態にして、最大工具重量を軽くすることが可能になる。その結果、工具マガジン50が特定工具を取り外した状態において、工作機械12の動作モードを高速モードにしておくことが可能となる。
【0051】
したがって、工具マガジン50から特定工具を取り外した状態において、モータ制御部24は、工具マガジン50の旋回速度または旋回加速度の少なくともいずれか一つを工具マガジン50に特定工具が取り付けられている状態より速く制御することができる。その結果、工作機械12の動作速度を速めてサイクルタイムを短縮できるので、生産性を向上させることができる。同様に、工具マガジン50から特定工具を取り外した状態において、モータ制御部24は主軸頭32を軸方向に移動させる軸送り速度または軸送り加速度の少なくともいずれか一つ、さらには工具マガジン50の揺動速度を工具マガジン50に特定工具が取り付けられている状態より速く制御することができる。その結果、工作機械12の動作速度を速めてサイクルタイムを短縮できるので、生産性を向上させることができる。
【0052】
なお、旋回パラメータには、工具マガジン50の旋回加加速度または時定数を含めてもよい。この場合は、動作モードに対応する最大工具重量が小さい程、当該動作モードに応じた旋回加加速度は大きな値とし、当該動作モードに応じた時定数は小さな値にすればよい。また、軸送りパラメータは、主軸頭32の軸送り加加速度または時定数を含めてもよい。この場合は、動作モードに対応する最大工具重量が小さい程、当該動作モードに応じた軸送り加加速度は大きな値とし、当該動作モードに応じた時定数は小さな値にすればよい。
【0053】
また、上記説明では、記憶部27は、各動作モードに応じた旋回パラメータおよび軸送りパラメータの両方を記憶しているとして説明したが、いずれか一方のみが各動作モードに応じて定められているようにしてもかまわない。
【0054】
[変形例]
上記実施の形態は、以下のように変形してもよい。
【0055】
(変形例1)
図8は、変形例1にかかる加工プログラム90の構成を示す図である。
図9は、変形例1にかかる工具マガジン50を示す図である。
図10は、変形例1にかかる工具ストッカ16を示す図である。変形例1にかかる加工プログラム90では、工具交換コード「M6T2」の後に、工具着脱コード「M100D1E1」および「M100D3E3」が連続している。すなわち、工具マガジン50のマガジン番号2に取り付けられている2kgの工具40bでの加工中に、工具マガジン50のマガジン番号1に工具ストッカ16のストッカ番号1に収納されている3kgの特定工具である工具40aを取り付け、さらに工具マガジン50のマガジン番号3に取り付けられている特定工具である工具40cを取り外して工具ストッカ16のストッカ番号3に収納する。このように、一つの工具40bでの加工中に工具着脱動作を連続して実行することにより、工作機械12の生産性をさらに向上させることができる。なお、このように工具着脱コードが連続する場合は、
図7のステップS33で説明したように、後の工具着脱コードによる工具着脱指令をロボット制御装置72の記憶部(図示せず)に記憶させておくことで工具着脱動作を順次処理することが可能となる。
【0056】
[実施の形態から得られる発明]
上記実施の形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0057】
(第1の発明)
工具搬送装置(14)は、工作機械(12)の旋回式の工具マガジン(50)に対して工具(40)の着脱を行う。工具搬送装置(14)は、工具(40)を把持する多関節アームを有するロボット(70)と、工作機械(12)が所定重量以上である特定工具を用いて加工を行う前に、特定工具を工具マガジン(50)に取り付けるようにロボット(70)を制御し、工作機械(12)が特定工具を用いた加工を終了した後に、特定工具を工具マガジン(50)から取り外すようにロボット(70)を制御するロボット制御部(74)と、を備える。
【0058】
これにより、特定工具を加工に使用しないときには、工具マガジン(50)から特定工具を取り外した状態にすることができ、工作機械(12)の動作速度を速めて生産性を向上させることができる。
【0059】
ロボット制御部(74)は、遅くとも工作機械(12)が特定工具の1つ前に加工に使用する工具(40)を用いた加工が終了するまでに、特定工具を工具マガジン(50)に取り付けるようにロボット(70)を制御してもよい。ロボット制御部(74)は、早くても工作機械(12)の主軸(30)に特定工具の1つ後に加工に使用される工具(40)が装着された後に、特定工具を工具マガジン(50)から取り外すようにロボット(70)を制御してもよい。
【0060】
ロボット制御部(74)は、工作機械(12)からの指令に基づいて、ロボット(70)による特定工具の工具マガジン(50)への取り付けおよび取り外しの制御を実行してもよい。
【0061】
工具搬送装置(14)は、ロボット(70)による特定工具の取り付け動作および取り外し動作が完了した場合は、完了したことを工作機械(12)に通知する通信部(76)を備えてもよい。これにより、工作機械本体(20)とロボット(70)との干渉を回避することができる。
【0062】
(第2の発明)
工作システム(10)は、上記の工具搬送装置(14)と、工作機械(12)と、を備える。
【0063】
これにより、工作機械(12)の生産性を向上させることが可能となる。
【0064】
工作機械(12)は、工具マガジン(50)を旋回させるための旋回モータ(50a)と、工具マガジン(50)に取り付けられている工具(40)のうち最も重量が大きい工具(40)の重量である最大工具重量に応じた旋回速度または旋回加速度で工具マガジン(50)が旋回するように旋回モータ(50a)を制御するモータ制御部(24)と、を有してもよい。
【0065】
モータ制御部(24)は、最大工具重量が小さい程、旋回速度または旋回加速度の少なくともいずれか一つが速くなるように旋回モータ(50a)を制御してもよい。これにより、工作機械(12)の動作速度を速めて生産性を向上させることができる。
【0066】
工作機械(12)は、主軸(30)と、主軸(30)を回転駆動する主軸頭(32)と、主軸頭(32)を軸方向に移動させる軸送りモータ(34a)と、主軸頭(32)が軸方向に沿って移動したときに工具マガジン(50)を揺動させる揺動機構と、を有してもよい。モータ制御部(24)は、最大工具重量に応じた軸送り速度または軸送り加速度で主軸頭(32)が移動するように軸送りモータ(34a)を制御してもよい。
【0067】
工作機械(12)は、主軸(30)と、主軸(30)を回転駆動する主軸頭(32)と、主軸頭(32)を軸方向に移動させる軸送りモータ(34a)と、主軸頭(32)が軸方向に沿って移動したときに工具マガジン(50)を揺動させる揺動機構と、工具マガジン(50)に取り付けられている工具(40)のうち最も重量が大きい工具(40)の重量である最大工具重量に応じた軸送り速度または軸送り加速度で主軸頭(32)が移動するように軸送りモータ(34a)を制御するモータ制御部(24)と、を有してもよい。
【0068】
モータ制御部(24)は、工具(40)の最大工具重量が小さい程、軸送り速度または軸送り加速度の少なくともいずれか一つが速くなるように軸送りモータ(34a)を制御してもよい。これにより、工作機械(12)の動作速度を速めて生産性を向上させることができる。
【0069】
(第3の発明)
工具搬送方法は、工作機械(12)の旋回式の工具マガジン(50)に対して工具(40)の着脱を行う、工具(40)を把持する多関節アームを有するロボット(70)を備える工具搬送装置(14)の工具搬送方法であって、工作機械(12)が所定重量以上である特定工具を用いて加工を行う前に、特定工具を工具マガジン(50)に取り付けるようにロボット(70)を制御する工具取り付けステップと、工作機械(12)が特定工具を用いた加工を終了した後に、特定工具を工具マガジン(50)から取り外すようにロボット(70)を制御する工具取り外しステップと、を有する。
【0070】
これにより、特定工具を加工に使用しないときには、工具マガジン(50)から特定工具を取り外した状態にすることができ、工作機械(12)の動作速度を速めて生産性を向上させることができる。
【0071】
工具取り付けステップは、遅くとも工作機械(12)が特定工具の1つ前に加工に使用する工具(40)を用いた加工が終了するまでに、特定工具を工具マガジン(50)に取り付けるようにロボット(70)を制御してもよい。工具取り外しステップは、早くても工作機械(12)の主軸(30)に特定工具の1つ後に加工に使用される工具(40)が装着された後に、特定工具を工具マガジン(50)から取り外すようにロボット(70)を制御してもよい。
【0072】
工具取り付けステップは、工作機械(12)からの指令に基づいて、ロボット(70)による特定工具の工具マガジン(50)への取り付けの制御を実行してもよい。工具取り外しステップは、工作機械(12)からの指令に基づいて、ロボット(70)による特定工具の工具マガジン(50)からの取り外しの制御を実行してもよい。
【符号の説明】
【0073】
10…工作システム 12…工作機械
14…工具搬送装置 16…工具ストッカ
20…工作機械本体 22…制御装置
24…モータ制御部 24a…動作モード設定部
26、76…通信部 28…加工対象物
30…主軸 32…主軸頭
34…コラム 34a…軸送りモータ
36…主軸モータ 40、40a、40b、40c…工具
46…テーブル 48…自動工具交換装置
50…工具マガジン 50a…旋回モータ
52…回転軸 54…グリップ
56…支持部材 60…揺動軸
62…カム 64…カムフォロア
70…ロボット 72…ロボット制御装置
74…ロボット制御部 80、90…加工プログラム