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特許7338987光拡散性フィルム用ポリ塩化ビニル系樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】光拡散性フィルム用ポリ塩化ビニル系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/06 20060101AFI20230829BHJP
   B29C 43/24 20060101ALI20230829BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20230829BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20230829BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20230829BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20230829BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20230829BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20230829BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
C08L27/06
B29C43/24
C08J5/18
C08K3/22
C08K3/30
C08K5/07
C08K5/10
C08L51/06
G02B5/02 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019033440
(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公開番号】P2020138997
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184653
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 寧
(72)【発明者】
【氏名】田村弘
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-276566(JP,A)
【文献】特開2004-197040(JP,A)
【文献】特開2016-186060(JP,A)
【文献】特開2015-100942(JP,A)
【文献】特開2000-120941(JP,A)
【文献】特開2018-016719(JP,A)
【文献】特開2020-094117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/06
B29C 43/24
C08J 5/18
C08K 3/22
C08K 3/30
C08K 5/07
C08K 5/10
C08L 51/06
G02B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリ塩化ビニル系樹脂 100質量部;及び、
(C)平均粒子径0.1~20μmの硫酸バリウム 40質量部超、かつ150質量部以下;
を含む光拡散性フィルム用樹脂組成物。
【請求項2】
(A)ポリ塩化ビニル系樹脂 60~99.9質量%;及び、
(B)コアシェルゴム 40~0.1質量%;
からなる樹脂混合物 100質量部に対して、
(C)平均粒子径0.1~20μmの硫酸バリウム 40質量部超、かつ150質量部以下;
を含み、
ここで上記成分(A)ポリ塩化ビニル系樹脂と上記成分(B)コアシェルゴムの和は100質量%である;
光拡散性フィルム用樹脂組成物。
【請求項3】
上記成分(C)平均粒子径0.1~20μmの硫酸バリウムの配合量が45~150質量部である請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂微粒子を含まない、請求項1~の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
更に、(D)酸化チタン 0.01~1質量部を含む請求項1~の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
更に、(E)可塑剤 1~60質量部を含む請求項1~の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
上記成分(E)可塑剤がポリエステル系可塑剤を含み、ここで該ポリエステル系可塑剤のポリスチレン換算の質量平均分子量が1000以上である請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
更に、(F)紫外線吸収剤を含む請求項1~の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
上記(F)紫外線吸収剤が、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤と蓚酸アニリド系紫外線吸収剤を含む請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~の何れか1項に記載の樹脂組成物からなる光拡散性フィルム。
【請求項11】
全光線透過率が80%以上であり、かつ光拡散率が20%以上である請求項10に記載の光拡散性フィルム。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の光拡散性フィルムを含む物品。
【請求項13】
光拡散性フィルムを生産する方法であって、請求項1~の何れか1項に記載の樹脂組成物を用い、カレンダーロール圧延製膜装置を使用して製膜する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物に関する。更に詳しくは、本発明は、光拡散性フィルムの材料として好適に用いることのできるポリ塩化ビニル系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶画像表示装置などの透過型画像表示装置には、表示パネルを照射するバックライトとして機能する面光源装置が使用されている。面光源装置には、光源からの光を拡散させて光源の像を隠す(隠蔽し、目立たなくさせる)目的、及び画像が拡大投影された場合にも、輝度が画面の端部と中央部とで異なることなく、良好な画像が表示されるようにする目的から、光拡散性を有するフィルム(光拡散性フィルム)が組み込まれている。光拡散性フィルムには、高い光拡散性を有し、十分な光源隠蔽性を発現すること、及び高い光透過性を有し、光源光の利用効率が十分に高いことが求められる。
【0003】
近年、省エネルギーの要請から、光源としてLED(発光ダイオード)が普及しており、光拡散性フィルムにはより高度な光源隠蔽性が要求されるようになっている。そこで光拡散性フィルムを高性能化させるべく、多くの提案がある(例えば、特許文献1)。この技術では、光拡散剤として架橋メラミン樹脂を含む球状体を用いることが提案されている。
【0004】
ところが昨年来、マイクロプラスチックスの環境問題が急速に高まり、欧州化学機関は、2019年1月30日に、製品に意図的に添加されるマイクロプラスチックスを原則全面禁止する規制案(以下、「ECHA規制案」と略すことがある。)を公表し、一般協議に付した。洗剤に添加されるマイクロプラスチックスのように環境中に放出されることが明らかものとは異なり、光拡散剤はフィルム中に固定されるものであるから、現時点では、例外として使用禁止にならない可能性もあるが、事業者としては、光拡散剤としてのマイクロプラスチックスも使用禁止となることを想定して対策することが急務と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011‐175227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、光拡散性(光源隠蔽性)、光透過性の良好な光拡散性フィルムを得ることのできるポリ塩化ビニル系樹脂組成物を提供することにある。本発明の他の課題は、ECHA規制案の原則通り、拡散剤としてのマイクロプラスチックスが使用禁止となるリスクの解消されたポリ塩化ビニル系樹脂組成物、及びその光拡散性フィルムを提供することにある。本発明の更なる課題は、カレンダーロール圧延製膜やTダイ押出製膜を適用しても変色の少ないポリ塩化ビニル系樹脂組成物、及びこれを用いた光拡散性(光源隠蔽性)、光透過性に優れ、耐候性の良好な光拡散性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究した結果、特定のポリ塩化ビニル系樹脂組成物により、上記課題を達成できることを見出した。
【0008】
即ち、本発明の諸態様は、以下の通りである。
[1].
(A)ポリ塩化ビニル系樹脂 100質量部;及び、
(C)平均粒子径0.1~20μmの硫酸バリウム 10~150質量部;
を含む樹脂組成物。
[2].
(A)ポリ塩化ビニル系樹脂 60~99.9質量%;及び、
(B)コアシェルゴム 40~0.1質量%;
からなる樹脂混合物 100質量部に対して、
(C)平均粒子径0.1~20μmの硫酸バリウム 10~150質量部;
を含み、ここで上記成分(A)ポリ塩化ビニル系樹脂と上記成分(B)コアシェルゴムの和は100質量%である;樹脂組成物。
[3].
樹脂微粒子を含まない、[1]又は[2]項に記載の樹脂組成物。
[4].
更に、(D)酸化チタン 0.01~1質量部を含む[1]~[3]の何れか1項に記載の樹脂組成物。
[5].
更に、(E)可塑剤 1~60質量部を含む[1]~[4]の何れか1項に記載の樹脂組成物。
[6].
上記成分(E)可塑剤がポリエステル系可塑剤を含み、ここで該ポリエステル系可塑剤のポリスチレン換算の質量平均分子量が1000以上である[5]項に記載の樹脂組成物。
[7].
更に、(F)紫外線吸収剤を含む[1]~[6]の何れか1項に記載の樹脂組成物。
[8].
上記(F)紫外線吸収剤が、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤と上記蓚酸アニリド系紫外線吸収剤を含む[7]項に記載の樹脂組成物。
[9].
光拡散性フィルム用である[1]~[8]の何れか1項に記載の樹脂組成物。
[10].
[1]~[9]の何れか1項に記載の樹脂組成物を含む物品。
[11].
[1]~[9]の何れか1項に記載の樹脂組成物からなる光拡散性フィルム。
[12].
全光線透過率が80%以上であり、かつ光拡散率が20%以上である[11]項に記載の光拡散性フィルム。
[13].
[11]又は[12]項に記載の光拡散性フィルムを含む物品。
[14].
光拡散性フィルムを生産する方法であって、[1]~[9]の何れか1項に記載の樹脂組成物を用い、カレンダーロール圧延製膜装置を使用して製膜する工程を含む方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物を用いて製膜された光拡散性フィルムは、光拡散性(光源隠蔽性)、光透過性が良好である。また本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、光拡散剤として硫酸バリウムを用いているため、ECHA規制案の原則通り、光拡散剤としてのマイクロプラスチックスが使用禁止となるリスクは解消されている。更に本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、カレンダーロール圧延製膜やTダイ押出製膜を適用しても変色が少なく、光拡散性(光源隠蔽性)及び光透過性に優れ、耐候性の良好な光拡散性フィルムを得ることができる。そのため本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物を用いて製膜された光拡散性フィルムは、液晶画像表示装置などの透過型画像表示装置に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において「樹脂」の用語は、2種以上の樹脂を含む樹脂混合物や、樹脂以外の成分を含む樹脂組成物をも含む用語として使用する。本明細書において「フィルム」の用語は、「シート」と相互交換的に又は相互置換可能に使用する。本明細書において、「フィルム」及び「シート」の用語は、工業的にロール状に巻き取ることのできるものに使用する。「板」の用語は、工業的にロール状に巻き取ることのできないものに使用する。また本明細書において、ある層と他の層とを順に積層することは、それらの層を直接積層すること、及び、それらの層の間にアンカーコートなどの別の層を1層以上介在させて積層することの両方を含む。
【0011】
本明細書において数値範囲に係る「以上」の用語は、ある数値又はある数値超の意味で使用する。例えば、20%以上は、20%又は20%超を意味する。数値範囲に係る「以下」の用語は、ある数値又はある数値未満の意味で使用する。例えば、20%以下は、20%又は20%未満を意味する。数値範囲に係る「~」の記号は、ある数値、ある数値超かつ他のある数値未満、又は他のある数値の意味で使用する。ここで、他のある数値は、ある数値よりも大きい数値とする。例えば、10~90%は、10%、10%超かつ90%未満、又は90%を意味する。更に、数値範囲の上限と下限とは、任意に組み合わせることができるものとし、任意に組み合わせた実施形態が読み取れるものとする。例えば、ある特性の数値範囲に係る「通常10%以上、好ましくは20%以上である。一方、通常40%以下、好ましくは30%以下である。」や「通常10~40%、好ましくは20~30%である。」という記載から、ある特性は、一実施形態において10~40%、20~30%、10~30%、又は20~40%であることが読み取れるものとする。
【0012】
実施例以外において、又は別段に指定されていない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用されるすべての数値は、「約」という用語により修飾されるものとして理解されるべきである。特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとすることなく、各数値は、有効数字に照らして、及び通常の丸め手法を適用することにより解釈されるべきである。
【0013】
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、(A)ポリ塩化ビニル系樹脂;及び、(C)硫酸バリウムを含む。本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、実施形態の1つにおいて、(A)ポリ塩化ビニル系樹脂;(B)コアシェルゴム;及び、(C)硫酸バリウムを含む。本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、他の実施形態の1つにおいて、更に(D)酸化チタンを含むものであってよい。本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、他の実施形態の1つにおいて、更に(E)可塑剤を含むものであってよい。以下、各成分について説明する。
【0014】
(A)ポリ塩化ビニル系樹脂:
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、上記成分(A)ポリ塩化ビニル系樹脂を含む。上記成分(A)として用い得るポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル(塩化ビニル単独重合体);塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、塩化ビニル・マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、塩化ビニル・プロピレン共重合体、塩化ビニル・スチレン共重合体、塩化ビニル・イソブチレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル・スチレン・無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル・スチレン・アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル・ブタジエン共重合体、塩化ビニル・イソプレン共重合体、塩化ビニル・塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン・酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル・アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル・各種ビニルエーテル共重合体等の塩化ビニルと塩化ビニルと共重合可能な他のモノマーとの塩化ビニル系共重合体;後塩素化ビニル共重合体等のポリ塩化ビニルや塩化ビニル系共重合体を改質(塩素化等)したもの;などをあげることができる。更には塩素化ポリエチレン等の、化学構造がポリ塩化ビニルと類似する塩素化ポリオレフィンを用いてもよい。これらの中で、耐黄変性の観点から、ポリ塩化ビニル(塩化ビニル単独重合体)が好ましい。上記成分(A)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0015】
(B)コアシェルゴム:
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、実施形態の1つにおいて、上記成分(B)コアシェルゴムを含む。上記成分(B)はカレンダーロール圧延製膜性を良好にする働きをする。また耐候性、耐変色性を良好にする働きをする。
【0016】
上記成分(B)としては、例えば、メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、メタクリル酸エステル・スチレン/スチレン・ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/スチレン・ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/エチレン・プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、メタクリル酸エステル・スチレン/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、及びメタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体などをあげることができる。これらの中で、耐変色性、耐候性の観点から、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、メタクリル酸エステル・スチレン/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、及びメタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体などの、(メタ)アクリル酸エステルゴムに(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル、スチレンなどがグラフト共重合されたアクリル系コアシェルゴムが好ましい。本明細書において、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸又はメタクリル酸を意味する。上記成分(B)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0017】
上記成分(B)を含む実施形態において、上記成分(B)の配合比率は、上記成分(A)と上記成分(B)との和を100質量%として、カレンダーロール圧延製膜性の改良効果を確実に得る観点、及び耐候性の観点から、通常0.1質量%以上(上記成分(A)99.9質量%以下)、好ましくは0.5質量%以上(上記成分(A)99.5質量%以下)、より好ましくは1質量%以上(上記成分(A)99質量%以下)、更に好ましくは4質量%以上(上記成分(A)96質量%以下)、より更に好ましくは7質量%以上(上記成分(A)93質量%以下)、最も好ましくは10質量%以上(上記成分(A)90質量%以下)であってよい。一方、光透過性の観点から、通常40質量%以下(上記成分(A)60質量%以上)、好ましくは30質量%以下(上記成分(A)70質量%以上)、より好ましくは25質量%以下(上記成分(A)75質量%以上)、更に好ましくは20質量%以下(上記成分(A)80質量%以上)であってよい。
【0018】
(C)平均粒子径0.1~20μmの硫酸バリウム:
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、上記成分(C)平均粒子径0.1~20μmの硫酸バリウムを含む。上記成分(C)は光拡散性を良好にする働きをする。
【0019】
上記成分(C)の平均粒子径は、光拡散性を確実に得る観点から、通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。一方、全光線透過率を高く保持する観点から、通常20μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは7μm以下である。
【0020】
本明細書において、硫酸バリウムの平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により、レーザー回折・散乱式粒度分析計を使用して測定される粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径である。上記レーザー回折・散乱式粒度分析計としては、例えば、日機装株式会社のレーザー回折・散乱式粒度分析計「MT3200II(商品名)」を使用することができる。
【0021】
上記成分(C)平均粒子径0.1~20μmの硫酸バリウムとしては、例えば、天然鉱物(例えば、重晶石などをあげることができる。)の粉砕物(以下、「簸性硫酸バリウム」ということがある。);複分解(典型的には、硫化バリウムと硫酸ナトリウムとの複分解)により製造される沈降性硫酸バリウム;などをあげることができる。これらの中で、光拡散性フィルムの外観(表面平滑性、色調など)の観点から、沈降性硫酸バリウムが好ましい。
【0022】
上記成分(C)は、本発明の目的に反しない限度において、鉄、マンガン、ストロンチウム、カルシウム、及び硫化物などの不純物を含むものであってよい。上記成分(C)は、光拡散性フィルムの外観(特に色調)、及び耐候性の観点から、不純物の少ないもの/純度の高いものが好ましい。
【0023】
上記成分(C)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0024】
上記成分(C)の配合量は、上記成分(A)100質量部(上記成分(B)を用いる実施形態にあっては、上記成分(A)と上記成分(B)との合計100質量部。)に対して、光拡散性を良好にする観点から、通常10質量部以上、好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは40質量部以上、最も好ましくは45質量部以上である。一方、カレンダーロール圧延製膜性の観点、及び全光線透過率を高く保持する観点から、通常150質量部以下、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは90質量部以下である。
【0025】
(D)酸化チタン:
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、更に上記成分(D)酸化チタンを含ませることができる。上記成分(D)は十分な光源隠蔽性を発現させる働きをする。近年省エネルギーの要請から、光源としてLED(発光ダイオード)が普及しており、光拡散性フィルムにはより高度な光源隠蔽性が求められている。高度な光源隠蔽性を付与しようとする場合には、上記成分(D)を用いることは好ましい。また上記成分(D)は紫外線吸収剤として、耐候性を向上させる働きもする。
【0026】
上記成分(D)の平均粒子径は、特に制限されないが、分散性の観点から、通常2μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下であってよい。一方、光源隠蔽性の観点から、通常0.1μm以上、好ましくは0.2μm以上であってよい。
【0027】
本明細書において、酸化チタンの平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により、レーザー回折・散乱式粒度分析計を使用して測定される粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径である。上記レーザー回折・散乱式粒度分析計としては、例えば、日機装株式会社のレーザー回折・散乱式粒度分析計「MT3200II(商品名)」を使用することができる。
【0028】
上記成分(D)として用いる酸化チタンは、ルチル型であってもよく、アナターゼ型であってもよく制限されない。
【0029】
上記成分(D)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0030】
上記成分(D)の配合量は、任意成分であるから特に制限されない。上記成分(D)を含む実施形態において、上記成分(D)の配合量は、上記成分(A)100質量部(上記成分(B)を含む実施形態にあっては、上記成分(A)と上記成分(B)との合計100質量部。)に対して、光源隠蔽性向上効果を確実に得る観点から、通常0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であってよい。一方、全光線透過率を高く保持する観点から、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下、更に好ましくは0.25質量部以下であってよい。
【0031】
(E)可塑剤:
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、更に上記成分(E)可塑剤を含ませることができる。上記成分(E)可塑剤は、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物に通常使用される可塑剤である限り、特に制限されない。
【0032】
上記可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、イタコン酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤、及びエポキシ系可塑剤などをあげることができる。
【0033】
上記可塑剤としては、例えば、多価アルコールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-へキサンジオール、1,6-へキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどを用い、多価カルボン酸として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメリット酸、ピメリン酸、スベリン酸、マレイン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などを用い、必要により一価アルコール、モノカルボン酸をストッパーに用いて得られるポリエステル系可塑剤をあげることができる。
【0034】
上記フタル酸エステル系可塑剤としては、例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジラウリル、フタル酸ジシクロヘキシル、及びテレフタル酸ジオクチルなどをあげることができる。
【0035】
上記トリメリット酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリ(2-エチルヘキシル)トリメリテート、トリ(n-オクチル)トリメリテート、及びトリ(イソノニル)トリメリテートなどをあげることができる。
【0036】
上記アジピン酸エステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、及びアジピン酸ジイソデシルなどをあげることができる。
【0037】
上記エポキシ系可塑剤としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化脂肪酸オクチルエステル、及びエポキシ化脂肪酸アルキルエステルなどをあげることができる。
【0038】
上記可塑剤としては、その他、トリメリット酸系可塑剤、テトラヒドロフタル酸ジエステル系可塑剤、グリセリンエステル系可塑剤、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジエステル系可塑剤、イソソルバイドジエステル系可塑剤、ホスフェート系可塑剤系、アゼライン酸系可塑剤、セバチン酸系可塑剤、ステアリン酸系可塑剤、クエン酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ビフェニルテトラカルボン酸エステル系可塑剤、及び塩素系可塑剤などをあげることができる。
【0039】
これらの中で、上記成分(E)としては、耐候性の観点から、上記ポリエステル系可塑剤が好ましい。上記ポリエステル系可塑剤と上記エポキシ系可塑剤を併用することも好ましい。
【0040】
上記ポリエステル系可塑剤のゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略すことがある。)により測定した微分分子量分布曲線(以下、「GPC曲線」と略すことがある。)から求めたポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は、耐候性、及び可塑剤のブリードを抑制する観点から、通常1000以上、好ましくは2500以上、より好ましくは3100以上、更に好ましくは3500以上、より更に好ましくは4000以上、更に更に好ましくは4500以上、最も好ましくは5000以上であってよい。一方、可塑剤の可塑化効率の観点から、質量平均分子量は通常10万以下、好ましくは5万以下、より好ましくは1万以下であってよい。
【0041】
GPCの測定は、システムとして東ソー株式会社の高速液体クロマトグラフィーシステム「HLC-8320(商品名)」(デガッサー、送液ポンプ、オートサンプラー、カラムオーブン及びRI(示差屈折率)検出器を含むシステム。)を使用し;GPCカラムとしShodex社のGPCカラム「KF-806L(商品名)」を2本、「KF-802(商品名)」及び「KF-801(商品名)」を各1本の合計4本を、上流側からKF-806L、KF-806L、KF-802、及びKF-801の順に連結して使用し;和光純薬工業株式会社の高速液体クロマトグラフ用テトラヒドロフラン(安定剤不含)を移動相として;流速1.0ミリリットル/分、カラム温度40℃、試料濃度1ミリグラム/ミリリットル、及び試料注入量100マイクロリットルの条件で行うことができる。各保持容量における溶出量は、測定試料の屈折率の分子量依存性が無いと見なしてRI検出器の検出量から求めることができる。また保持容量からポリスチレン換算分子量への較正曲線は、アジレントテクノロジー(Agilent Technology)株式会社の標準ポリスチレン「EasiCal PS-1(商品名)」(Plain Aの分子量6375000、573000、117000、31500、3480;Plain Bの分子量2517000、270600、71800、10750、705)を使用して作成することができる。解析プログラムは、東ソー株式会社の「TOSOH HLC-8320GPC EcoSEC(商品名)」を使用することができる。なおGPCの理論及び測定の実際については、共立出版株式会社の「サイズ排除クロマトグラフィー 高分子の高速液体クロマトグラフィー、著者:森定雄、初版第1刷1991年12月10日」などの参考書を参照することができる。
【0042】
図1に実施例で用いた下記成分(E-1)の微分分子量分布曲線を示す。分子量650、860、1100、及び1400にオリゴマー成分のピークトップ、分子量5500に主要成分のピークトップを有し、全体の質量平均分子量は5200、数平均分子量は2300である。
【0043】
上記成分(E)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0044】
上記成分(E)の配合量は、任意成分であるから特に制限されない。上記成分(E)を含む実施形態において、上記成分(E)の配合量は、上記成分(A)100質量部(上記成分(B)を含む実施形態にあっては、上記成分(A)と上記成分(B)との合計100質量部。)に対して、耐ブロッキング性、及び可塑剤の移行によるトラブルを抑止する観点から、通常60質量部以下、好ましくは45質量部以下、より好ましくは35質量部以下であってよい。一方、上記成分(E)の配合量の下限は、任意成分であるから特にないが、カレンダーロール圧延製膜性の観点から、通常1質量部以上、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上であってよい。
【0045】
(F)紫外線吸収剤:
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、更に上記成分(F)紫外線吸収剤を含ませることができる。上記成分(F)は本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物の耐候性を向上させる働きをする。
【0046】
上記成分(F)としては、有機化合物系紫外線吸収剤;酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化セリウム、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、カーボンブラック、ホワイトカーボン、ゼオライト、及びグラファイトなどの無機系紫外線吸収剤;の何れも用いることができる。上記成分(F)としては、全光線透過率を高く保持する観点から、有機化合物系紫外線吸収剤が好ましい。
【0047】
上記有機化合物系紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、芳香族ベンゾエート系紫外線吸収剤、蓚酸アニリド系紫外線吸収剤、及びマロン酸エステル系紫外線吸収剤などをあげることができる。
【0048】
上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、[2‐ヒドロキシ‐4‐(オクチルオキシ)フェニル](フェニル)メタンオン、2,2’,4,4’‐テトラヒドロキシベンゾフェノン、及び2,2’‐ジヒドロキシ‐4,4’‐ジメトキシベンゾフェノンなどをあげることができる。
【0049】
上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2‐(5‐クロロ‐2H‐ベンゾトリアゾール‐2‐イル)‐4‐メチル‐6‐tert‐ブチルフェノール、2‐(2H‐ベンゾトリアゾール‐2‐イル)‐4,6‐ビス(1‐メチル‐1‐フェニルエチル)フェノール、2‐(2H‐ベンゾトリアゾール‐2‐イル)‐4‐(1,1,3,3‐テトラメチルブチル)フェノール、2,2’‐メチレンビス[6‐(2H‐ベンゾトリアゾール‐2‐イル)‐4‐(1,1,3,3‐テトラメチルブチル)フェノール]、及び2‐(2H‐ベンゾトリアゾール‐2‐イル)‐p‐クレゾールなどをあげることができる。
【0050】
上記トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2‐(4,6‐ジフェニル‐1,3,5‐トリアジン‐2‐イル)‐5‐[2‐(2‐エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール、及び2,4,6‐トリス(2‐ヒドロキシ‐4‐ヘキシルオキシ‐3‐メチルフェニル)‐1,3,5‐トリアジンなどをあげることができる。
【0051】
上記シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、エチル‐2‐シアノ‐3,3‐ジフェニルアクリレート、2‐エチルヘキシル‐2‐シアノ‐3,3‐ジフェニルアクリレート、及びペンタエリスリトールテトラキス(3,3‐ジフェニル‐2‐シアノアクリレート)などをあげることができる。
【0052】
上記芳香族ベンゾエート系紫外線吸収剤としては、例えば、4‐tert‐ブチルフェニルサリシレート、4‐オクチルフェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4‐ジtert‐ブチルフェニル‐3,5‐ジtert‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンゾエート、及びヘキサデシル‐3,5‐ジtert‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンゾエートなどをあげることができる。
【0053】
上記蓚酸アニリド系紫外線吸収剤としては、例えば、2‐エチル‐2’‐エトキシオキザニリド、及び2‐エトキシ‐4’‐ドデシルオキザニリドなどをあげることができる。
【0054】
上記マロン酸エステル系紫外線吸収剤としては、例えば、[(4‐メトキシフェニル)‐メチレン]プロパン二酸ジメチル、及びテトラエチル‐2,2‐(1,4‐フェニレン‐ジメチリデン)‐ビスマロネートなどをあげることができる。
【0055】
これらの中で、上記成分(F)としては、フィルムの色調(黄味の少なさ)の観点から、上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、上記蓚酸アニリド系紫外線吸収剤、及び上記マロン酸エステル系紫外線吸収剤が好ましく、上記蓚酸アニリド系紫外線吸収剤、及び上記マロン酸エステル系紫外線吸収剤がより好ましい。
【0056】
上記成分(F)として、上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤と上記蓚酸アニリド系紫外線吸収剤又は/及びマロン酸エステル系紫外線吸収剤とを併用することは好ましい。両者の相乗効果により、耐候性を大きく向上させることができる。上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤と上記蓚酸アニリド系紫外線吸収剤又は/及びマロン酸エステル系紫外線吸収剤とを併用する場合、両者の混和比(上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の配合量(質量部)/上記蓚酸アニリド系紫外線吸収剤の配合量とマロン酸エステル系紫外線吸収剤の配合量の和(質量部))は、通常20/1~1/20、好ましくは10/1~1/10、より好ましくは5/1~1/5、更に好ましくは3/1~1/3、最も好ましくは2/1~1/2であってよい。
【0057】
上記成分(F)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0058】
上記成分(F)の配合量は、任意成分であるから特に制限されない。上記成分(F)を含む実施形態において、上記成分(F)の配合量は、上記成分(A)100質量部(上記成分(B)を含む実施形態にあっては、上記成分(A)と上記成分(B)との合計100質量部。)に対して、耐候性の観点から、通常0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であってよい。一方、上記成分(F)がフィルム表面にブリードアウトするトラブルを抑制する観点から、通常10質量部以下、好ましくは7質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは4質量部以下であってよい。
【0059】
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、更にポリ塩化ビニル系樹脂組成物に通常使用される物質を含ませることができる。含む得る任意成分としては、滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、加工助剤、核剤、離型剤、帯電防止剤、尿素-ホルムアルデヒドワックス、及び、界面活性剤等の添加剤;炭酸カルシウム、タルク、マイカ、及びクレー等の無機充填材;などをあげることができる。これらの任意成分の配合量は、任意成分であるから特に制限されない。これらの任意成分の配合量は、上記成分(A)100質量部(上記成分(B)を含む実施形態にあっては、上記成分(A)と上記成分(B)との合計100質量部。)に対して、通常50質量部以下、好ましくは20質量部以下、あるいは通常0.01~10質量部程度であってよい。
【0060】
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、好ましい実施形態の1つにおいて、樹脂微粒子を含まない。樹脂微粒子(典型的には、メラミン樹脂などのアミノ系化合物とホルムアルデヒドとの硬化樹脂;アクリル系樹脂の架橋物;などをあげることができる。)、特に適切な平均粒子径の樹脂微粒子は、光拡散性を良好にするという観点では有用である。一方、樹脂微粒子には、将来、ECHA規制案の原則通り、使用禁止となるリスクがある。そこで本発明では好ましい実施形態の1つにおいて、光拡散剤として硫酸バリウムを用いることにより、このリスクを解消したものである。
【0061】
ここで「樹脂微粒子」は、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の通常の加工温度で溶融混練したり、フィルム製膜したりしても粒子形状を保持するものであることに留意されたい。即ち、ポリ塩化ビニル系樹脂、コアシェルゴム、及びアクリル系加工助剤などのパウダーのように、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物の通常の加工温度で溶融混練等することにより溶融し、一体化して粒子形状を失うものは、樹脂微粒子から除かれる。また「樹脂微粒子を含まない」とは、樹脂微粒子を意図的に添加していないことを意味する。樹脂微粒子を光拡散剤として用いる場合、ベース樹脂100質量部に対して、通常1質量部以上の量で添加するから、「樹脂微粒子を含まない」とは、樹脂微粒子の含有量がベース樹脂100質量部に対して、通常1質量部未満、好ましくは0.1質量部以下、より好ましくは0.01質量部以下と言い換えることもできる。
【0062】
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、任意の溶融混練機を使用して、上記成分(A)、(C)、及び所望に応じて用いる任意成分を、同時に又は任意の順に上記溶融混練機に投入し、溶融混練することにより得ることができる。
【0063】
上記溶融混練機としては、加圧ニーダーやミキサーなどのバッチ混練機;一軸押出機、同方向回転二軸押出機、及び異方向回転二軸押出機等の押出混練機;カレンダーロール混練機;などをあげることができる。これらを任意に組み合わせて使用してもよい。
【0064】
得られた組成物は、任意の方法でペレット化した後、任意の方法で任意の物品に成形することができる。上記ペレット化はホットカット、ストランドカット、及びアンダーウォーターカットなどの方法により行うことができる。
【0065】
本発明の光拡散性フィルムは、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物を用い、任意のフィルム製膜装置を使用して製膜することにより得ることができる。上記フィルム製膜装置としては、例えば、カレンダーロール圧延加工機、及び引巻取装置を備えるカレンダーロール圧延製膜装置;押出機、Tダイ、及び引巻取装置を備えるTダイ製膜装置;などをあげることができる。
【0066】
本発明の光拡散性フィルムは、本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物を用い、好ましくはカレンダーロール圧延製膜装置を使用して製膜することにより得ることができる。より好ましくはカレンダーロール圧延製膜装置を使用し、ロール温度160℃~200℃の条件で製膜することにより得ることができる。
【0067】
上記カレンダーロール圧延加工機としては、例えば、直立型3本ロール、直立型4本ロール、L型4本ロール、逆L型4本ロール、及びZ型ロールなどをあげることができる。上記押出機としては、例えば、一軸押出機、同方向回転二軸押出機、及び異方向回転二軸押出機などをあげることができる。上記Tダイとしては、例えば、マニホールドダイ、フィッシュテールダイ、及びコートハンガーダイなどをあげることができる。
【0068】
本発明の光拡散性フィルムの厚みは、特に制限されないが、光源隠蔽性を発現し易くする観点から、通常20μm以上、好ましくは30μm以上であってよい。一方、光透過性の観点から通常200μm以下、好ましくは100μm以下であってよい。
【0069】
本発明の光拡散性フィルムは、光源光の利用効率の観点から、全光線透過率が通常80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは92%以上であってよい。全光線透過率は、光源光の利用効率の観点からは、より高い方が好ましい。ここで、全光線透過率は、JIS K 7105:2011の5.5.2測定法Aに従い測定した値である。
【0070】
本発明の光拡散性フィルムは、光源隠蔽性の観点から、光拡散率が通常20%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは35%以上、最も好ましくは40%以上であってよい。光拡散率は、光源隠蔽性の観点からは、より高い方が好ましい。ここで、光拡散率は、下記実施例の試験(ロ)に従い測定した値である。
【0071】
図2に、日本電色工業株式会社の変角光度計「GC5000L(商品名)」を使用して測定した下記実施例の例1と例13の受光角度と透過光強度(相対値)との関係を示す。例1は、光源隠蔽性の良好な例であるが、透過光が広い受光角度に拡散し、受光角度0度近辺の透過光強度が非常に低くなっている。一方、例13は、光源隠蔽性の不十分な例であるが、透過光が受光角度0度近辺に集中し、受光角度0度近辺の透過光強度が非常に高くなっている。光源隠蔽性は、受光角度0度近辺の透過光強度を比較することによっても評価できることが分かる。
【実施例
【0072】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
測定方法
(イ)全光線透過率、平行光線透過率、拡散透過率、及びヘーズ:
JIS K 7105:2011の5.5.2測定法Aに従い、スガ試験機株式会社の分光光度計「シングルビーム方式ヘーズコンピューター HZ-1(商品名)」を使用し、全光線透過率、平行光線透過率、拡散透過率、及びヘーズを測定した。結果の表には、上記分光光度計から出力された値をそのまま記載した。
【0074】
(ロ)光拡散率:
日本電色工業株式会社の変角光度計「GC5000L(商品名)」を使用し、投光角度0°で光を入射し、受光角度-85°から85°までを1°間隔で透過率と反射率を測定した後、上記変角光度計に内蔵のプログラム(下記の計算式)で光拡散率を計算した。
光拡散率=(L20+L70)/(2・L)=(T20/cos20°+T70/cos70°)/(2・T/cos5°)
ここでL20は受光角度20°のときの反射率、L70は受光角度20°のときの反射率、Lは受光角度5°のときの反射率、T20は受光角度20°のときの透過率、T70は受光角度70°のときの透過率、Tは受光角度5°のときの透過率である。
【0075】
(ハ)光源隠蔽性:
パナソニック株式会社のHf 蛍光灯(32ワット、三波長形昼白色)「FHF32EX‐N‐H(型式)」1本を点灯し、該蛍光灯から5cm離れた位置に光拡散性フィルムをかざし、上記蛍光灯から50cm離れた位置(該位置における照度は500ルクスであった。)から、上記蛍光灯を上記光拡散性フィルム越しに目視(両眼)し、以下の基準で評価した。なお試験者の裸眼視力は両眼とも1.2であった。
〇:蛍光灯の輪郭を認めることはできなかった。
△:蛍光灯の輪郭を不明瞭ながら認めることができた
×:蛍光灯の輪郭を明確に認めることができた
【0076】
(ニ)耐候性:
JIS Z8722:2009に従い、コニタミノルタジャパン株式会社の分光測色計「CM600d」を使用し、幾何条件c、鏡面反射となる成分含む条件で、XYZ座標を測定し、これをL*a*b*座標に換算することにより、処理前のb*値を求めた。続いて、JIS B7753:2007に規定されるスガ試験機株式会社のサンシャインカーボンアーク灯式耐候性試験機(SWOM)「サンシャインウェザーメーター S300(商品名)」を使用し、放射照度225W/m(ガラス製フィルタの仕様は上記規格表2の種類A、放射照度の区分は上記規格表3の通常形)、120分毎に18分間の水噴霧、雰囲気温度43℃、ブラックパネル温度63℃、及び相対湿度50±5%の条件で2000時間処理した後、上述の方法に従い、処理後のb*値を求めた。処理前と処理後のb*値の差の絶対値(Δb*)から以下の基準で評価した。なおL*a*b*座標については、コニタミノルタジャパン株式会社のホームページ(下記アドレス)などを参照することができる。
http://www.konicaminolta.jp/instruments/knowledge/color/part1/07.html
〇:Δb*は10以下であった
△:Δb*は10超、かつ20以下であった
×:Δb*は20超であった
【0077】
(ホ)耐熱変色性:
JIS Z8722:2009に従い、コニタミノルタジャパン株式会社の分光測色計「CM600d」を使用し、幾何条件c、鏡面反射となる成分含む条件で、XYZ座標を測定し、これをL*a*b*座標に換算することにより、処理前の色座標を求めた。次に、80℃のギヤオーブン(湿度のコントールはしなかった。)中で14日間の処理を行った後、同様にして処理後の色座標を求めた。処理前の色座標と処理後の色座標から、CIELAB色差をJIS Z8781-4:2013の4.3色差に準拠して算出し、以下の基準で評価した。
〇:色差が1以下。
△:色差が1を超えて2未満。
×:色差が2以上。
【0078】
(ヘ)製膜性:
日本ロール製造株式会社の逆L型4本カレンダーロール圧延製膜装置を使用し、第1ロール温度180℃、第2ロール温度180℃、第3ロール185℃、第4ロール180℃、及び引巻取速度60m/分の条件で、厚み80μmのフィルムを製膜した際の製膜性を、以下の基準で評価した。
〇:ロール剥離性、耐プレートアウト性、及び色調安定性の何れも良好であった
△:ロール剥離性、耐プレートアウト性、及び色調安定性の少なくとも何れかに問題があった
×:ロール剥離性、耐プレートアウト性、及び色調安定性の少なくとも何れかに大きな問題があった
【0079】
(ト)色調安定性:
8インチ二本テストロールを使用し、温度180℃、ロールの回転速度18回転/分の条件で5分間溶融混練した後、分出しシート(0.3mm厚)を採取し、更に10分間(合計15分間)溶融混練した後、再び分出しシート(0.3mm厚)を採取した。こうして得た分出しシートの色座標を、JIS Z8722:2009に従い、コニタミノルタジャパン株式会社の分光測色計「CM600d」を使用し、幾何条件c、鏡面反射となる成分含む条件で、XYZ座標を測定し、これをL*a*b*座標に換算することにより、測定した。次に、5分間溶融混練後に採取した分出しシートの色座標と、15分間溶融混練後に採取した分出しシートの色座標とのCIELAB色差をJIS Z8781-4:2013の4.3色差に準拠して算出し、以下の基準で評価した。樹脂組成物の色調安定性が良好であることにより、良好な色調のフィルムを得られると期待できる。
〇:色差が1以下。
△:色差が1を超えて2未満。
×:色差が2以上。
【0080】
使用した原材料
(A)ポリ塩化ビニル系樹脂:
(A-1)重合度800のポリ塩化ビニル単独重合体。
【0081】
(B)コアシェルゴム:
(B-1)三菱レイヨン株式会社のアクリル系コアシェルゴム(メタクリル酸エステル・スチレン/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体)「メタブレンW-300A(商品名)」。
【0082】
(C)平均粒子径0.5~10μmの硫酸バリウム:
(C-1)堺化学工業株式会社の沈降性硫酸バリウム「BMH-40(商品名)」、平均粒子径5.0μm。
【0083】
(C’)樹脂微粒子:
(C’-1)株式会社日本触媒のアクリル系樹脂の架橋物の微粒子「エポスターMA1002(商品名)」、平均粒子径2μm。
【0084】
(D)酸化チタン:
(D-1)石原産業株式会社のルチル型酸化チタン「CR-90(商品名)」、平均粒子径0.25μm。
【0085】
(E)可塑剤:
(E-1)株式会社ADEKAのポリエステル系可塑剤「アデカサイザーPN-280(商品名)」、質量平均分子量(Mw)5200。
(E-2)新日本理化株式会社のエポキシヘキサヒドロフタル酸ジ(2‐エチルヘキシル)「サンソサイザーE‐PS(商品名)」。
(E-3)フタル酸ジ(2‐エチルヘキシル)。
【0086】
(F)紫外線吸収剤:
(F-1)株式会社ADEKAのベンゾフェノン系紫外線吸収剤([2‐ヒドロキシ‐4‐(オクチルオキシ)フェニル](フェニル)メタンオン)「アデカスタブ1413(商品名)」。
(F-2)Sabo S.p.a.社の蓚酸アニリド系紫外線吸収剤(2‐エチル‐2’‐エトキシオキザニリド)「SABOSTAB UV312(商品名)」。
【0087】
(G)その他の成分:
(G-1)三菱ケミカル株式会社のアクリル系加工助剤「P‐530A(商品名)」。
(G-2)バリウム亜鉛複合塩系安定剤。
(G-3)株式会社ADEKAの滑剤「アデカスタブLS-16(商品名)」。
【0088】
例1~14
表1又は2に示す配合(質量部)の樹脂組成物を、ミキサー混練機を使用し、排出時樹脂温度140℃の条件で溶融混練し、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を得た。次に日本ロール製造株式会社の逆L型4本カレンダーロール圧延加工機と引巻取装置を備える製膜装置を使用し、第1ロール温度180℃、第2ロール温度180℃、第3ロール185℃、第4ロール180℃、及び引巻取速度60m/分の条件で、厚み80μmのフィルムを製膜した。上記試験(イ)~(ト)を行った。結果を表1又は2に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
本発明のポリ塩化ビニル系樹脂組成物は、カレンダーロール圧延製膜装置を使用して良好なフィルムを製膜することができた。そして得られたフィルムは光拡散性フィルムとして良好な特性を発現していた。
【0092】
また光拡散剤はフィルム中に固定されるものであるから、現時点では、例外として光拡散剤としてのマイクロプラスチックスは使用禁止にならない可能性もある。この場合、光拡散剤として硫酸バリウム(密度4.5Kg/m)と樹脂微粒子(例14で用いたアクリル系樹脂の架橋物の密度は1.2Kg/m)との併用は、物品の軽量化という観点からは有用であることが、例14により確認された。
【図面の簡単な説明】
【0093】
図1】実施例で用いた上記成分(E-1)の微分分子量分布曲線である。
図2】実施例の例1と例13の受光角度と透過光強度との関係である。
図1
図2