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▶ コニカ ミノルタ ラボラトリー ユー.エス.エー.,インコーポレイテッドの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】離散的三次元印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20230829BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20230829BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230829BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230829BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20230829BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/118
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019046700
(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公開番号】P2019202535
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-02-01
(31)【優先権主張番号】15/941,123
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507031918
【氏名又は名称】コニカ ミノルタ ラボラトリー ユー.エス.エー.,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天野 純
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-125324(JP,A)
【文献】特開2016-135597(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0266235(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0113409(US,A1)
【文献】特表2016-518267(JP,A)
【文献】特開2016-088003(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107599379(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料押出法を用いて、三次元で印刷された物体を製造する方法であって、
間隙により隔てられる第1の糸状体を第1層についての1回目の動作で堆積させる工程、
第2の糸状体を前記第1層についての2回目の動作で堆積させる工程、
間隙により隔てられる第3の糸状体を第2層についての1回目の動作で堆積させる工程、及び
第4の糸状体を前記第2層についての2回目の動作で堆積させる工程を含み、
前記第2の糸状体は、前記第1の糸状体のそれぞれの長さに沿って、前記第1の糸状体同士の間の前記間隙を埋め、複数の第1層垂直界面を生成し、
前記複数の第1層垂直界面の各々は、前記第1の糸状体の長手方向の端部と、前記第2の糸状体の長手方向の端部とを接続する界面であり、
前記第4の糸状体は、前記第3の糸状体のそれぞれの長さに沿って、前記第3の糸状体同士の間の前記間隙を埋め、複数の第2層垂直界面を生成し、
前記複数の第2層垂直界面の各々は、前記第3の糸状体の長手方向の端部と、前記第4の糸状体の長手方向の端部とを接続する界面であり、
前記複数の第1層垂直界面のうちの1つ以上が前記複数の第2層垂直界面と重なり合わないように、前記第2層を前記第1層の上に堆積させる、方法。
【請求項2】
前記第1層についての前記1回目の動作、前記第1層についての前記2回目の動作、前記第2層についての前記1回目の動作、及び前記第2層についての前記2回目の動作のうちの少なくとも1つを繰り返してそれぞれの前記糸状体を堆積させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の第1層垂直界面のいずれも、前記複数の第2層垂直界面と重なり合わない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1層及び前記第2層が三次元印刷機により糸状材料として堆積される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の第1層垂直界面及び前記複数の第2層垂直界面のうちの少なくとも一方は周期的である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
周期的な前記複数の第1層垂直界面及び周期的な前記複数の第2層垂直界面のうちの少なくとも一方は、一定の周期的間隔を有する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
周期的な前記複数の第1層垂直界面及び周期的な前記複数の第2層垂直界面のうちの少なくとも一方は、複数の周期的間隔を有する、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の第1層垂直界面の周期は、前記複数の第2層垂直界面の周期とは異なる、請求項に記載の方法。
【請求項9】
印刷サーバーに、材料押出法を用いて三次元物体を製造する工程を実行させる命令を含み、コンピューターにより実行されるプログラムであって、前記工程は、
間隙により隔てられる第1の糸状体を第1層についての1回目の動作で堆積させること、
第2の糸状体を前記第1層についての2回目の動作で堆積させること、
間隙により隔てられる第3の糸状体を第2層についての1回目の動作で堆積させること、及び
第4の糸状体を前記第2層についての2回目の動作で堆積させることを含み、
前記第2の糸状体は、前記第1の糸状体のそれぞれの長さに沿って、前記第1の糸状体同士の間の前記間隙を埋め、複数の第1層垂直界面を生成し、
前記複数の第1層垂直界面の各々は、前記第1の糸状体の長手方向の端部と、前記第2の糸状体の長手方向の端部とを接続する界面であり、
前記第4の糸状体は、前記第3の糸状体のそれぞれの長さに沿って、前記第3の糸状体同士の間の前記間隙を埋め、複数の第2層垂直界面を生成し、
前記複数の第2層垂直界面の各々は、前記第3の糸状体の長手方向の端部と、前記第4の糸状体の長手方向の端部とを接続する界面であり、
前記複数の第1層垂直界面のうちの1つ以上が前記複数の第2層垂直界面と重なり合わないように、前記第2層が前記第1層の上に堆積させる、プログラム。
【請求項10】
前記工程では、前記第1層についての前記1回目の動作、前記第1層についての前記2回目の動作、前記第2層についての前記1回目の動作、及び前記第2層についての前記2回目の動作のうちの少なくとも1つを繰り返してそれぞれの前記糸状体を堆積させる、請求項に記載のプログラム。
【請求項11】
前記複数の第1層垂直界面のいずれも、前記複数の第2層垂直界面と重なり合わない、請求項又は10に記載のプログラム。
【請求項12】
前記第1層及び前記第2層が三次元印刷機により糸状材料として堆積される、請求項11のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項13】
材料押出法を用いた物体の三次元印刷のためのシステムであって、
メモリーと、
前記メモリーに接続されたコンピュータープロセッサーと、を備え、
前記コンピュータープロセッサーは、前記システムに連結された三次元印刷機の印刷ヘッドに、
間隙により隔てられる第1の糸状体を第1層についての1回目の動作で堆積させること、
第2の糸状体を前記第1層についての2回目の動作で堆積させること、
間隙により隔てられる第3の糸状体を第2層についての1回目の動作で堆積させること、及び
第4の糸状体を前記第2層についての2回目の動作で堆積させることを行わせ、
前記第2の糸状体は、前記第1の糸状体のそれぞれの長さに沿って、前記第1の糸状体同士の間の前記間隙を埋め、第1層の複数の垂直界面を生成し、
前記複数の第1層垂直界面の各々は、前記第1の糸状体の長手方向の端部と、前記第2の糸状体の長手方向の端部とを接続する界面であり、
前記第4の糸状体は、前記第3の糸状体のそれぞれの長さに沿って、前記第3の糸状体同士の間の前記間隙を埋め、第2層の複数の垂直界面を生成し、
前記複数の第2層垂直界面の各々は、前記第3の糸状体の長手方向の端部と、前記第4の糸状体の長手方向の端部とを接続する界面であり、
前記複数の第1層垂直界面のうちの1つ以上が前記複数の第2層垂直界面と重なり合わないように前記第2層を前記第1層の上に堆積させる、システム。
【請求項14】
前記複数の第1層垂直界面のいずれも、前記複数の第2層垂直界面と重なり合わない、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記複数の第1層垂直界面及び前記複数の第2層垂直界面のうちの少なくとも一方は周期的である、請求項13又は14に記載のシステム。
【請求項16】
周期的な前記複数の第1層垂直界面及び周期的な前記複数の第2層垂直界面のうちの少なくとも一方は、一定の周期的間隔を有する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
周期的な前記複数の第1層垂直界面及び周期的な前記複数の第2層垂直界面のうちの少なくとも一方は、複数の周期的間隔を有する、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記複数の第1層垂直界面の周期は、前記複数の第2層垂直界面の周期とは異なる、請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
物体の三次元モジュールを作製する三次元印刷がよく知られている。三次元印刷方法は、三次元印刷機のノズルを用いて、例えば溶融した三次元印刷材料を基板表面に押し出し、三次元印刷材料の複数の層同士を連続的に積み重ねて三次元印刷物体を作製する。最終的には、三次元印刷材料は凝固し、互いに積み重なって界面(すなわち層間界面)で接続された固体層が形成される。三次元印刷物体に応力が加えられると、層間界面は壊れ、いくつかの層が三次元印刷物体から剥離する場合もある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
一般に一側面では、本発明は、材料押出法を用いて、三次元で印刷された(3D印刷された)物体を製造する方法に関する。この方法は、間隙により隔てられる第1の糸状体を第1層についての1回目の動作で堆積させる工程、第2の糸状体を第1層についての2回目の動作で堆積させる工程、間隙により隔てられる第3の糸状体を第2層についての1回目の動作で堆積させる工程、及び第4の糸状体を第2層についての2回目の動作で堆積させる工程を含む。第2の糸状体は、前記第1の糸状体のそれぞれの長さに沿って、第1の糸状体同士の間の間隙を埋め、複数の第1層垂直界面を生成する。複数の第1層垂直界面の各々は、第1の糸状体の長手方向の端部と、第2の糸状体の長手方向の端部とを接続する界面である。第4の糸状体は、前記第3の糸状体のそれぞれの長さに沿って、第3の糸状体同士の間の間隙を埋め、複数の第2層垂直界面を生成する。複数の第2層垂直界面の各々は、第3の糸状体の長手方向の端部と、第4の糸状体の長手方向の端部とを接続する界面である。複数の第1層垂直界面のうちの1つ以上が複数の第2層垂直界面と重なり合わないように、第2層を第1層の上に堆積させる。
【0003】
一般に一側面では、本発明は、印刷サーバーに、材料押出法を用いて三次元物体を製造する工程を実行させる命令を含み、コンピューターにより実行されるプログラムに関する。工程は、間隙により隔てられる第1の糸状体を第1層についての1回目の動作で堆積させること、第2の糸状体を第1層についての2回目の動作で堆積させること、間隙により隔てられる第3の糸状体を第2層についての1回目の動作で堆積させること、及び第4の糸状体を第2層についての2回目の動作で堆積させることを含む。第2の糸状体は、前記第1の糸状体のそれぞれの長さに沿って、第1の糸状体同士の間の間隙を埋め、複数の第1層垂直界面を生成する。複数の第1層垂直界面の各々は、第1の糸状体の長手方向の端部と、第2の糸状体の長手方向の端部とを接続する界面である。第4の糸状体は、前記第3の糸状体のそれぞれの長さに沿って、第3の糸状体同士の間の間隙を埋め、複数の第2層垂直界面を生成する。複数の第2層垂直界面の各々は、第3の糸状体の長手方向の端部と、第4の糸状体の長手方向の端部とを接続する界面である。複数の第1層垂直界面のうちの1つ以上が複数の第2層垂直界面と重なり合わないように、第2層を第1層の上に堆積させる。
【0004】
一般に一側面では、本発明は、材料押出法を用いた物体の三次元印刷のためのシステムに関する。このシステムは、メモリーと、メモリーに接続されたコンピュータープロセッサーと、を備える。コンピュータープロセッサーは、システムに連結された三次元印刷機の印刷ヘッドに、間隙により隔てられる第1の糸状体を第1層についての1回目の動作で堆積させること、第2の糸状体を第1層についての2回目の動作で堆積させること、間隙により隔てられる第3の糸状体を第2層についての1回目の動作で堆積させること、及び第4の糸状体を第2層についての2回目の動作で堆積させることを行わせ、第2の糸状体は、前記第1の糸状体のそれぞれの長さに沿って、第1の糸状体同士の間の間隙を埋め、複数の第1層垂直界面を生成する。複数の第1層垂直界面の各々は、第1の糸状体の長手方向の端部と、第2の糸状体の長手方向の端部とを接続する界面である。第4の糸状体は、前記第3の糸状体のそれぞれの長さに沿って、第3の糸状体同士の間の間隙を埋め、複数の第2層垂直界面を生成する。複数の第2層垂直界面の各々は、第3の糸状体の長手方向の端部と、第4の糸状体の長手方向の端部とを接続する界面である。複数の第1層垂直界面のうちの1つ以上が複数の第2層垂直界面と重なり合わないように、第2層を第1層の上に堆積させる。
【0005】
本発明の他の側面は、以下の記載及び添付の特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の1つ以上の実施形態によるシステムを示す。
図2】本発明の1つ以上の実施形態によるフローチャートを示す。
図3A】従来の例示的な三次元印刷を示す。
図3B】従来の例示的な三次元印刷を示す。
図3C】従来の例示的な三次元印刷を示す。
図4A】本発明の1つ以上の実施形態による具体的実施例を示す。
図4B】本発明の1つ以上の実施形態による具体的実施例を示す。
図4C】本発明の1つ以上の実施形態による具体的実施例を示す。
図5】本発明の1つ以上の実施形態による具体的実施例を示す。
図6】本発明の1つ以上の実施形態による具体的実施例を示す。
図7】本発明の1つ以上の実施形態による具体的実施例を示す。
図8A】本発明の1つ以上の実施形態による具体的実施例を示す。
図8B】本発明の1つ以上の実施形態による具体的実施例を示す。
図9】本発明の1つ以上の実施形態による演算システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ここで、添付の図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳細に記載する。一貫性を保つため、様々な図面中で同じ要素は同じ符号で示される。
【0008】
本発明の実施形態の以下の詳細な記載では、本発明の理解を深めるようにするために多くの具体的な詳細を記載する。しかし、これらの具体的な詳細を用いずに本発明を実施できることが当業者には明らかである。他の例では、記載を不必要に複雑にしないようにするために周知の特徴を詳細には記載しない。
【0009】
一般に、本発明の実施形態は、三次元印刷物体の三次元印刷の方法、非一時的コンピューター可読媒体(CRM)、及びシステムを提供する。具体的には、三次元印刷物体の三次元印刷のために三次元印刷材料を糸状(すなわち印刷ノズルから押し出され表面に堆積する材料の糸状のライン)に堆積させ、三次元印刷物体の各層を形成する。各層を複数回の動作(以下「離散的堆積」)で形成してもよい。例えば、1つ以上の実施形態では、糸状体の端部同士が間隙により隔てられるように複数の糸状体を堆積してもよい。これらの間隙は、さらなる動作により新たな糸状体で埋められる。層に糸を離散的に堆積させることで層の糸状体同士の間に垂直な界面を形成する。ある糸状体の端部と先に堆積した別の糸状体の端部との間の接触により、垂直界面が形成される。三次元印刷物体は、隣接して延びる2本の糸の間の接触部として規定される層間界面も含む。
【0010】
本発明の1つ以上の実施形態では、三次元印刷物体を複数の層で形成してもよい。三次元印刷物体の各層は、垂直界面を含んでもよい。連続する層の垂直界面は、重なり合わなくてもよい(すなわち、直接接触する2つの層の垂直界面は直接には接続されない)。
【0011】
図1は、本発明の1つ以上の実施形態によるシステム(100)を示す。図1に示すように、システム(100)は、複数の構成要素、例えばバッファー(101)及び三次元印刷エンジン(103)を含む。これらの構成要素のそれぞれ(101、103)は、同じ演算装置(例えばパーソナルコンピューター(PC)、ラップトップ、タブレットPC、スマートフォン、多機能プリンター、キオスク、サーバーなど)又は有線区分及び/又は無線区分を有する任意の大きさのネットワークで接続されている異なる演算装置に配置されてもよい。
【0012】
本発明の1つ以上の実施形態では、バッファー(101)をハードウェア(すなわち回路)、ソフトウェア、又はこれらの任意の組み合わせで実装してもよい。システム(100)は、三次元印刷物体の三次元モデルファイル(102)を取得し、バッファー(101)は、三次元モデルファイル(102)を記憶するようになっている。三次元モデルファイル(102)は、画像及び/又は図形(例えば、ステレオリソグラフィー(STL)形式、仮想現実設計言語(VRML)形式ファイル、付加製造ファイル(AMF)形式など)であってもよい。三次元モデルファイル(102)を任意の発信元から取得してもよい(例えばダウンロード、装置内での作成など)。
【0013】
本発明の1つ以上の実施形態では、三次元印刷エンジン(103)をハードウェア(すなわち回路)、ソフトウェア、又はこれらの組み合わせで実装してもよい。三次元印刷エンジン(103)は、三次元モデルファイル(102)を実行して三次元印刷物体を印刷する。図2図4A図4C図5図7、及び図8A図8Bを参照してこの印刷を以下にさらに詳細に例示する。
【0014】
システム(100)は、2つの構成要素(101、103)を有するものとして示しているが、本発明の他の実施形態では、システム(100)は、それよりも多いか少ない構成要素を含んでもよい。さらに、上記の各構成要素の機能を構成要素間で分割してもよい。さらに、各構成要素(101、103)を複数回用いて反復演算を実行してもよい。
【0015】
図2は、本発明の1つ以上の実施形態によるフローチャートを示す。このフローチャートは、三次元印刷物体を製造する過程を示す。図2の工程の1つ以上を、図1を参照して上記で考察したシステム(100)の構成要素で実行してもよい。具体的には、図2の1つ以上の工程を、図1を参照して上記で考察した三次元印刷エンジン(103)で実行してもよい。本発明の1つ以上の実施形態では、図2に示す工程のうちの1つ以上を省き、繰り返し、及び/又は図2に示す順序とは異なる順序で実行してもよい。したがって、本発明の範囲は、図2に示す特定の順序の工程に限定されると考えるべきではない。
【0016】
図2に示すように、最初に三次元印刷物体の三次元モデルファイルを取得及び記憶する(工程205)。例えば、システム(100)は、三次元モデルファイル(102)を取得してこれをバッファー(101)に記憶してもよい。1つ以上の実施形態では、三次元モデルファイルは、三次元印刷に必要な三次元印刷物体の三次元模式図、印刷命令又は任意の他のパラメーターを含んでもよい。
【0017】
工程210で、1回目の動作で第1の糸状体を堆積し、第1層を形成する(すなわち第1層についての1回目の動作)。例えば、1つ以上の実施形態で、三次元印刷エンジン(103)は、三次元印刷材料を基板上に堆積させることができる印刷ヘッドに連結されていてもよい。第1の糸状体同士が間隙により隔てられるように、第1層についての1回目の動作により離散的に第1の糸状体を堆積させる。第1層を、三次元印刷物体の任意の別の層又は基板上に堆積してもよい。
【0018】
工程215では、第2の糸状体を2回目の動作で堆積して第1層を完成させる(すなわち第1層についての2回目の動作)。第2の糸状体は、第1の糸状体同士の間の間隙を埋め、これにより第1層における垂直界面(すなわち、第1層垂直界面)を形成する。1つ以上の実施形態では、第1層垂直界面は、第1の糸状体の一端と第2の糸状体の一端との間の接点であってもよい。このようにして、第1層垂直界面は、第1の糸状体と第2の糸状体の長さ方向に沿って第1の糸状体と第2の糸状体を接続する。
【0019】
工程220で、第3の糸状体を1回目の動作で堆積して第2層を生成する(すなわち第2層についての1回目の動作)。第3の糸状体同士が間隙により隔てられるように、第2層の1回目の動作で第3の糸状体を離散的に堆積させる。第2層を第1層上に堆積してもよい。
【0020】
工程225で、第4の糸状体を2回目の動作で堆積して第2層を完成させる(すなわち第2層についての2回目の動作)。第4の糸状体は、第3の糸状体同士の間の間隙を埋め、これにより第2層における垂直界面(すなわち、第2層垂直界面)を形成する。第2層垂直界面は、第3の糸状体の一端と第4の糸状体の一端との間の接点であってもよい。このように、第2層垂直界面は、第3の糸状体と第4の糸状体の長さに沿って第3の糸状体と第4の糸状体を接続する。
【0021】
本発明の1つの実施形態では、第1層垂直界面は、第2層垂直界面と重なり合わない。あるいは、他の実施形態では、いくつかの第1層垂直界面が、設計及び/又は性能の制約の結果、第2層垂直界面と重なり合ってもよい。
【0022】
本発明の1つ以上の実施形態では、1回目又は2回目の動作は複数回の動作を含む場合がある(すなわち1回目又は2回目の動作を2回以上行ってもよい)。例えば、設計の結果、複数回の2回目の動作を行い、1本以上の糸状体を配置して1回目の動作における隣接する2本の糸状体の間の間隙を埋めてもよい。
【0023】
本発明の1つ以上の実施形態では、実施形態で開示される1回目の動作又は2回目の動作のそれぞれで異なる種類の糸状体を堆積してもよい。
【0024】
本発明の1つ以上の実施形態では、材料噴射法、材料押出法、粉末床溶融結合法、及び結合剤噴射法を含むがこれらに限定されない様々な方法で堆積を実行してもよい。
【0025】
本発明の1つ以上の実施形態では、上記で考察した図2の工程205~225を、システム(100)に連結することができる三次元印刷機で実行してもよい。1つ以上の実施形態では、三次元印刷エンジン(103)により三次元印刷機が工程210~225で記載した処理を実行してもよい。
【0026】
本発明の1つ以上の実施形態では、2つの層(すなわち第1層及び第2層)のみに関して図2の工程205~225を記載しているが、当業者には、三次元印刷物体が3つ以上の層を含んでもよく、工程205~225をこれらの層のそれぞれに繰り返してもよいことが明らかである。
【0027】
図3A図3Cに、例示的な従来の三次元印刷処理を示す。図3Aで、各層(310)は、印刷ヘッド(320)で別の層又は基板上に堆積した連続糸状体である。簡単にするために、以下、図中に示すZ軸は、複数の層(310)が互いに重なり合う方向(すなわち層同士が垂直方向に積み重ねられる方向)を示す。Z軸は、印刷ヘッド(320)が堆積させる材料を押し出す方向であってもよい。
【0028】
図3Bでは、複数の層(310)のいくつかに応力(311)が加えられると、各層内に垂直界面がないので、応力(311)は層間界面全体を通って伝播する。図3Cに示すように、層間界面は固体化した糸状体と比べて弱いので、応力(311)は、ある層310が別の層310から剥離することによる三次元印刷物体の機械的不良を引き起こす場合がある。層間界面を有するが各層内に垂直界面がないために、三次元印刷物体の機械的強度は極めて異方性が高くなる(すなわち、三次元で均一でない)。なぜなら、Z軸に沿った機械的強度が低いからである。
【0029】
他方、図4A図4C図5図7、及び図8A図8Bに、本発明の1つ以上の実施形態による具体的実施例を示す。図1及び図2を参照して上述した例示的な三次元印刷方法は、図4A図4C図5図7、及び図8A図8Bに示す具体的実施例に応用される。
【0030】
以下、図4A図5図7、及び図8A図8Bに示す第1層(410A、510A、610A、710A、810A)、及び第2層(410B、510B、610B、710B、810B)を参照して、本発明の1つ以上の実施形態による1つ以上の具体的実施例を記載する。これらの例を三次元印刷物体の任意の層に拡張することができる。
【0031】
図4Aに、三次元印刷物体の一部の三次元図を示す。図4Aに見られるように、第1層(410A)及び第2層(410B)は、Z軸に沿って互いの上に堆積している。これらの層のそれぞれは、複数の糸状体(404A、404B)と、この2本の糸状体(404A、404B)の端部同士を接続する複数の垂直界面(403A、403B)を有する。図4Aの垂直界面(403A、403B)は、図示のみのために、糸状体(404A、404B)の間の間隙として描かれている。実際の三次元印刷物体は、垂直界面(403A403B)に間隙を含まない。
【0032】
本発明の1つ以上の実施形態では、Z軸に沿った方向は、三次元印刷物体の隣接層(例えば第1層(410A)及び第2層(410B))の糸状体を接続する方向である。したがって、Z軸方向は、複数の層(例えば第1層(410)又は第2層(420))の平面に直交する場合も、直交しない場合もある。
【0033】
複数の層(410A、410B)は、各層内で糸状体(404A、404B)を接続する垂直界面(403A、403B)を有するように離散的に堆積される。これらの層の垂直界面(403A、403B)は、隣接する層(410A、410B)の垂直界面(403A、403B)が重なり合わないように、間隔(402A、402B)を置いて配置される。例えば図4Aは、第1層(410A)における垂直界面(すなわち、第1層垂直界面(403A))が第2層410Bにおける垂直界面(すなわち、第2層垂直界面(403B))と重なり合わないことを示している。
【0034】
1つ以上の実施形態では、複数の層(410A、410B)のそれぞれの垂直界面(403A、403B)は、層間界面の平面に延びる方向(すなわち、複数の層(410A、410B)の平面内)とは異なる方向であるZ軸方向に沿って延びる。したがって、垂直界面(403A、403B)は、三次元印刷物体に、より等方性の機械的強度(すなわち三次元でより均一な機械的強度)を提供する。
【0035】
本発明の1つ以上の実施形態では、糸状体(404A、404B)は、第1層垂直界面(403A)が第2層垂直界面(403B)と重なり合わないように配置される。これにより、三次元印刷物体に全体としてより高い機械的強度を提供する。第1層垂直界面(403A)が第2層垂直界面(403B)と重なり合わない場合、垂直界面(403A、403B)に沿った応力は、垂直界面(403A、403B)の端部を接続する糸状体(404A、404B)で緩和又は阻止される。したがって、垂直界面(403A、403B)が崩れても、この崩れはZ軸方向に伝播しない。
【0036】
本発明の1つ以上の実施形態では、いくつかの第1層垂直界面(403A)は、設計及び/又は性能の制約の結果、いくつかの第2層垂直界面(403B)と重なり合う場合がある。
【0037】
図4B図4Cに、垂直界面(403)がどのように応力(401)を局在化して三次元印刷物体の全体的な崩れを防止するかを示す。特定の量の応力(401)が垂直界面(403)を有する層にかかったときには、垂直界面(403)は、応力の影響を直接には受けていない糸状体(404)に対して応力(401)が伝播するのを妨げる。応力(401)の影響を受ける糸状体(404)は、隣接する垂直界面(403)で局所的に崩れる場合がある。したがって、図4Cに示すように、応力を受けた糸状体が崩れると、三次元印刷物体の局部のみが崩れる場合があるが、三次元印刷物体の残りの部分はそのままで変わらない。
【0038】
本発明の1つ以上の実施形態では、より短い間隔(402A、402B)でより多くの垂直界面(403A、403B)を有する堆積層(410A、410B)により、複数の層(410A、410B)内に加えられる応力をより巧みに局在化して複数の層(410A、410B)のいずれかが崩れる面積をさらに最小にすることができる。垂直界面(403A、403B)は、一定の間隔(すなわち、層内の2つの隣接する垂直界面の間の距離である糸状体(404A、404B)の長さ)を置いて周期的に配置されてもよい。
【0039】
図5に、本発明の1つ以上の実施形態による別の具体的実施例を示す。図5に示すように、第1層(510A)及び第2層(510B)の糸状体(504A、504B)を周期的な垂直界面(503A、503B)を有するように堆積し、各周期が異なる間隔(502A、502B)を有するようにしてもよい。
【0040】
図6に、本発明の1つ以上の実施形態による別の具体的実施例を示す。図6に示すように、第1層(610A)及び第2層(610B)の糸状体(604A、604B)を周期的な垂直界面(603A、603B)を有するように堆積し、第1層の間隔(602A)の周期が第2層の間隔(602B)の周期と異なるようにしてもよい。
【0041】
図7に、本発明の1つ以上の実施形態による別の具体的実施例を示す。図7に示すように、第1層(710A)及び第2層(710B)の糸状体(704A、704B)を、第1層の間隔(702A)又は第2層の間隔(702B)が不規則(すなわち周期的でない)になるように堆積してもよい。
【0042】
図8A図8Bに、本発明の1つ以上の実施形態によるさらなる具体的実施例を示す。図8Aに示すように、第1層(810A)及び第2層(810)の糸状体(804A、804B)を、第1層(810A)及び第2層(810B)の一部のみがその層(810A、810B)の残りよりも短い間隔(802A、802B)を有するように堆積してもよい。
【0043】
さらに図8Bに見られるように、他の部分よりも短い間隔を有する三次元印刷物体の部分(すなわち短い間隔部分)が崩れることで、三次元印刷物体の他の部分が崩れるのを防止する。三次元印刷物体の短い間隔部分が崩れると、間隔がより短いので応力点周囲のより狭い区域で糸状体(804A、804B)の応力に関連する剥離を局在化する。したがって、三次元印刷物体のより大きな部分が崩れるのを防ぐことができる。
【0044】
1つ以上の実施形態では、図4A図4B図5図7、及び図8A図8Bを参照して上述した任意の組み合わせで示した周期で第1又は第2層の糸状体(404A、404B、504A、504B、604A、604B、704A、704B、804A、804B)を堆積してもよい。
【0045】
本発明の実施形態を、用いられるプラットフォームにかかわらず実質的にいかなる種類の演算子システムに実装してもよい。例えば、演算システムは、1個以上の携帯機器(例えばラップトップコンピューター、スマートフォン、携帯情報端末、タブレットコンピューター、若しくは他の携帯装置)、デスクトップコンピューター、サーバー筐体内のブレード、又は本発明の1つ以上の実施形態を実行する少なくとも最低限の処理電力、メモリー、及び入出力装置を含む任意の他の種類の1個以上の演算装置であってもよい。例えば、演算システム(900)は、1個以上のコンピュータープロセッサー(902)、関連するメモリー(904)(例えばランダムアクセスメモリー(RAM)、キャッシュメモリー、フラッシュメモリーなど)、1個以上の記憶装置(906)(例えばハードディスク、光学式ドライブ、例えばコンパクトディスク(CD)ドライブ又はデジタル多用途ディスク(DVD)ドライブ、フラッシュメモリースティックなど)、ならびに他の様々な要素及び機能を含んでもよい。コンピュータープロセッサー(902)は、命令を処理する集積回路であってもよい。例えば、コンピュータープロセッサーは、1個以上のコア又はプロセッサーのマイクロコアであってもよい。演算システム(900)は、1個以上の入力装置(910)、例えばタッチスクリーン、キーボード、マウス、マイク、タッチバッド、電子ペン、又は任意の他の種類の入力装置も含んでもよい。さらに、演算システム(900)は、画面(例えば液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ、タッチスクリーン、ブラウン管モニター、プロジェクター、又は他のディスプレイ装置)等の1個以上の出力装置(908)、印刷機、外部記憶装置、又は任意の他の出力装置を含んでもよい。出力装置のうちの1つ以上は、入力装置と同じか異なっていてもよい。演算システム(900)をネットワークインターフェース接続部(図示せず)によりネットワーク(912)(例えばローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、例えばインターネット、移動体ネットワーク、又は任意の他の種類のネットワーク)に接続してもよい。入出力装置を装置内又は遠隔から(例えばネットワーク(912)経由で)コンピュータープロセッサー(902)、メモリー(904)、及び記憶装置(906)に接続してもよい。多くの異なる種類の演算システムが存在し、上記の入出力装置は他の形態を取ってもよい。
【0046】
本発明の実施形態を実行するコンピューター可読プログラムコードの形のソフトウェア命令を、全部若しくは一部を問わず、一時的若しくは恒久的に非一時的コンピューター可読媒体、例えばCD、DVD、記憶装置、ディスケット、テープ、フラッシュメモリー、物理メモリー、又は任意の他のコンピューター可読記憶媒体に記憶してもよい。具体的には、ソフトウェア命令は、プロセッサーで実行すると、本発明の実施形態を実行するようになっているコンピューター可読プログラムコードに対応してもよい。
【0047】
さらに、上記の演算システム(900)の1つ以上の要素を離れた位置に置いて、ネットワーク(912)経由で他の要素に接続してもよい。さらに、本発明の1つ以上の実施形態を複数のノードを有する分散システムで実施してもよく、本発明の各部分を分散システム内の異なるノードに配置してもよい。本発明の一実施形態では、ノードは他から明確に区別できる演算装置に対応する。あるいは、ノードは、関連する物理メモリーを含むコンピュータープロセッサーに対応してもよい。あるいは、ノードは、コンピュータープロセッサー又は共有メモリー及び/若しくはリソースを含むコンピュータープロセッサーのマイクロコアに対応してもよい。
【0048】
本発明を限られた数の実施形態に関して記載したが、本開示の利益を受ける当業者は、本明細書に開示した発明の範囲を逸脱しない他の実施形態を考案することができることが分かる。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲のみにより限定されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9