(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】接近検出装置及び接近検出システム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/50 20060101AFI20230829BHJP
G08B 21/22 20060101ALI20230829BHJP
G01V 3/12 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
G01S13/50
G08B21/22
G01V3/12 A
(21)【出願番号】P 2019066672
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 俊一
(72)【発明者】
【氏名】桜井 勝
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 舞子
(72)【発明者】
【氏名】柳 政宏
(72)【発明者】
【氏名】円山 仁浩
(72)【発明者】
【氏名】松本 裕伸
【審査官】石原 徹弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-055374(JP,A)
【文献】特開2016-142110(JP,A)
【文献】特開2010-008069(JP,A)
【文献】特開2006-275629(JP,A)
【文献】特開2002-267743(JP,A)
【文献】特開2002-092754(JP,A)
【文献】特開昭61-264276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
G08B 19/00-21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を送信する送信部と、
前記電波の反射波を受信する受信部と、
前記反射波に基づいて
第1移動体の接近を検出する第1検出部と、
前記第1移動体の接近の通知を受けて警報を制御する他装置に対し、前記第1検出部
による前記
第1移動体の接近
の検出
に応じて、前記
第1移動体の接近を通知するように前記送信部に前記電波を変調させて送信させる制御部と、
前記他装置への第2移動体の接近を通知する
前記他装置の変調波を検出する第2検出部と、
前記第2検出部の検出結果に基づき警報の出力を制御する警報制御部とを有することを特徴とする接近検出装置。
【請求項2】
第1接近検出装置と、第2接近検出装置とを有し、
前記第1接近検出装置は、
第1電波を送信する第1送信部と、
前記第1電波の反射波を受信する第1受信部と、
前記第1電波の反射波に基づいて前記第1接近検出装置への第1移動体の接近を検出する第1検出部と、
前記第2接近検出装置への第2移動体の接近を検出する第2検出部と、
前記第1検出部が前記第1移動体の接近を検出したとき、前記第1送信部に前記第1電波を第1変調波に変調させて送信させる第1制御部と、
前記第2検出部の検出結果に基づき警報の出力を制御する第1警報制御部とを有し、
前記第2接近検出装置は、
第2電波を送信する第2送信部と、
前記第2電波の反射波を受信する第2受信部と、
前記第2電波の反射波に基づいて前記第2接近検出装置への前記第2移動体の接近を検出する第3検出部と、
前記第1接近検出装置への前記第1移動体の接近を検出する第4検出部と、
前記第3検出部が前記第2移動体の接近を検出したとき、前記第2送信部に前記第2電波を第2変調波に変調させて送信させる第2制御部と、
前記第4検出部の検出結果に基づき警報の出力を制御する第2警報制御部とを有し、
前記第2検出部は、前記第1受信部による前記第2変調波の受信に応じて前記第2移動体の接近を検出し、
前記第4検出部は、前記第2受信部による前記第1変調波の受信に応じて前記第1移動体の接近を検出することを特徴とする接近検出システム。
【請求項3】
前記第1警報制御部及び前記第2警報制御部には、互いに異なる優先度が設定され、
前記第2検出部及び前記第4検出部が前記第2移動体及び前記第1移動体の接近をそれぞれ検出した場合、前記第1警報制御部及び前記第2警報制御部のうち、優先度が低い方の警報制御部は、警報を遅延または中止させることを特徴とする請求項2に記載の接近検出システム。
【請求項4】
前記第1接近検出装置は、扉の一方側に設けられており、
前記第2接近検出装置は、前記扉の他方側に設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の接近検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接近検出装置及び接近検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通行者が扉の向こう側の人に気づかずに開扉すると、扉と人が衝突するおそれがある。これに対し、扉の両側にいる人を検出することにより開扉時の衝突を防止する装置がある(特許文献1及び2参照、)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-142110号公報
【文献】特開2002-92754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の装置は、センサによる人の検出結果を扉の反対側の警報器に通知する必要があるため、壁を越えて通信する手段が必要である。通信手段としては、例えば無線LAN(Local Area Network)や3G(3rd Generation)の通信機が用いられるが、消費電力の増加や大規模化が問題となる。
【0005】
そこで本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、低消費電力で小型の接近検出装置及び接近検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、接近検出装置は、電波を送信する送信部と、前記電波の反射波を受信する受信部と、前記反射波に基づいて第1移動体の接近を検出する第1検出部と、前記第1移動体の接近の通知を受けて警報を制御する他装置に対し、前記第1検出部による前記第1移動体の接近の検出に応じて、前記第1移動体の接近を通知するように前記送信部に前記電波を変調させて送信させる制御部と、前記他装置への第2移動体の接近を通知する前記他装置の変調波を検出する第2検出部と、前記第2検出部の検出結果に基づき警報の出力を制御する警報制御部とを有する。
【0007】
1つの態様では、第1接近検出装置と、第2接近検出装置とを有し、前記第1接近検出装置は、第1電波を送信する第1送信部と、前記第1電波の反射波を受信する第1受信部と、前記第1電波の反射波に基づいて前記第1接近検出装置への第1移動体の接近を検出する第1検出部と、前記第2接近検出装置への第2移動体の接近を検出する第2検出部と、前記第1検出部が前記第1移動体の接近を検出したとき、前記第1送信部に前記第1電波を第1変調波に変調させて送信させる第1制御部と、前記第2検出部の検出結果に基づき警報の出力を制御する第1警報制御部とを有し、前記第2接近検出装置は、第2電波を送信する第2送信部と、前記第2電波の反射波を受信する第2受信部と、前記第2電波の反射波に基づいて前記第2接近検出装置への前記第2移動体の接近を検出する第3検出部と、前記第1接近検出装置への前記第1移動体の接近を検出する第4検出部と、前記第3検出部が前記第2移動体の接近を検出したとき、前記第2送信部に前記第2電波を第2変調波に変調させて送信させる第2制御部と、前記第4検出部の検出結果に基づき警報の出力を制御する第2警報制御部とを有し、前記第2検出部は、前記第1受信部による前記第2変調波の受信に応じて前記第2移動体の接近を検出し、前記第4検出部は、前記第2受信部による前記第1変調波の受信に応じて前記第1移動体の接近を検出する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、接近検出装置及び接近検出システムを小型化し、消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、接近検出システムの動作例を示す図である。
【
図2】
図2は、接近検出システムの一例を示す構成図である。
【
図3】
図3(a)は、IF(Intermediate Frequency)信号のI成分及びQ成分の例を示す波形図であり、
図3(b)は、送信アンテナ及び受信アンテナの指向性の例を示す図である。
【
図4】
図4(a)は、変調信号の一例を示す波形図であり、
図4(b)は、変調信号の他の例を示す波形図である。
【
図5】
図5は、接近検出装置の一例を示す構成図である。
【
図6】
図6は、電波の送信処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、警報の出力処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、接近検出システムの動作例を示す図である。接近検出システムは、扉92がある壁90の両面にそれぞれ取り付けられた接近検出装置1a,1bを含む。接近検出装置1a,1bは、それぞれ、電波を送信し、その反射波から人の接近を検出する。
【0011】
本例では、人物Haが接近検出装置1a側から扉92に接近し、人物Hbが接近検出装置1b側から扉92に接近している場合を挙げる。ここで、人物Haが人物Hbより先に扉92に到着して扉92を押し開いたとき(R参照)、扉92と人物Hbが衝突するおそれがある。
図1において、開いた状態の扉92は点線で示す。
【0012】
接近検出装置1aは電波Wsを送信し、人物Haにより反射された電波Wsの反射波Wrにより、扉92への人物Haの接近を検出する。ここで、接近検出装置1aは、ドップラー効果の原理を利用し、送信した電波Wsと受信した反射波Wrの各周波数に基づいて人物Haの移動を検出する。
【0013】
接近検出装置1aは、人物Haの扉92への接近を検出すると他方の接近検出装置1bに接近を通知する(S参照)。接近検出装置1bは、接近検出装置1aからの通知を受けると警報を出力する。
【0014】
人物Hbは、警報に気が付くと扉92の向こう側に人物Haがいると認識でき、扉92の前で立ち止まることができる。このため、人物Haが扉92を開けても反対側の人物Hbに扉92が衝突することがない。なお、人物Hbが人物Haより先に扉92に到着した場合も、接近検出装置1bが人物Hbの接近を検出して他方の接近検出装置1aに通知することで接近検出装置1aが警報を出力するため、人物Haと扉92の衝突が防止される。
【0015】
図2は、接近検出システムの一例を示す構成図である。接近検出装置1a,1bは、第1及び第2接近検出装置の例であり、壁90の両面に設けられる。接近検出装置1a,1bは移動体91a,91bの接近を検出して他方の接近検出装置1b,1aに通知する。接近検出装置1a,1bは、他方の接近検出装置1b,1aから移動体接近の通知を受けると警報を出力する。移動体91a,91bは第1及び第2移動体の一例である。以下、接近検出装置1a,1bを区別する場合には、各要素の符号にaまたはbを付し、共通の説明とする場合にはa及びbを省略した符号で総称する場合がある。
【0016】
各々の接近検出装置1は、MCU(Micro Control Unit)10、RF(Radio Frequency)モジュール11、ディップスイッチ(SW)12、送信アンテナ13、受信アンテナ14、警報器15をそれぞれ有する。
【0017】
RFモジュール11は、送信アンテナ13により検出波84を送信し、受信アンテナ14により反射波85を受信する。検出波84は、人物Hなどの移動体91に向けて放射される電波Wsの成分である。
【0018】
検出波84は、例えばISM(Industry Science and Medical)帯の周波数(例えば24GHz帯)を有する正弦波状の連続波(CW: Continuous Wave)であり、接近検出装置1aが送信する検出波84aと、接近検出装置1bが送信する検出波84bとは周波数が相違する。反射波85は、検出波84が移動体91に反射されることで生ずる。このとき、検出波84a,84bの周波数は互いに相違するため、反射波85a,85bの周波数も相違する。したがって、反射波85a,85b同士の干渉により移動体91a,91bの検出が阻害されることはない。
【0019】
ドップラー効果の原理によると、移動体91が接近検出装置1に接近している場合、図示のように反射波85の周波数は検出波84の周波数より高くなり、移動体91が接近検出装置1から遠ざかっている場合、反射波85の周波数は検出波84の周波数より低くなる。移動体91が停止している場合、検出波84と反射波85の各周波数は同一である。
【0020】
RFモジュール11は、VCO(Voltage Controlled Oscillator)の正弦波信号に基づき検出波84を生成する。RFモジュール11は、反射波85を検波して得たRF信号とVCOの正弦波信号をミキシングし、検出波84と反射波85の周波数差に応じてIF信号を生成してMCU10に出力する。
【0021】
図3(a)は、IF信号のI成分Si及びQ成分Sqの例を示す波形図である。符号82は、移動体91が停止している場合または移動体91が無い場合の波形図を示し、符号83は、移動体91が移動している場合の波形図を示す。各波形図において、横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示す。
【0022】
移動体91が停止している場合または移動体91が無い場合、I成分Si及びQ成分Sqは平坦な波形となる。移動体91が移動している場合、I成分Si及びQ成分Sqは、互いの位相がずれた正弦波となる。なお、正弦波は一例であり、I成分Si及びQ成分Sqの波形は他の形状ともなり得る。
【0023】
再び
図2を参照すると、MCU10aはI成分Si及びQ成分Sqの位相関係から移動体91aの接近を検出する。MCU10aは、移動体91aの接近を検出したとき、RFモジュール11aに検出波84aを変調させる。これにより、接近検出装置1bは、他方の接近検出装置1bに移動体91aの接近を通知する。
【0024】
送信アンテナ13及び受信アンテナ14は、壁90の正面側だけでなく裏面側にも指向性を備える。このため、送信アンテナ13から放射された電波Wsの一部は壁90を透過する。壁90を透過した透過波86は壁90の裏面側の受信アンテナ14で受信される。
【0025】
図3(b)は、送信アンテナ13及び受信アンテナ14の指向性の例を示す図である。送信アンテナ13及び受信アンテナ14は、点Pを中心として0°の方向にメインローブ80が広がり、180°の方向にバックローブ81が広がるような指向性を有する。ここで、壁90は90°及び270°の方向に広がる。
【0026】
送信アンテナ13は、メインローブ80を移動体91に向け、バックローブ81を壁90の裏面側の受信アンテナ14に向けて設置される。また、受信アンテナ14は、メインローブ80を反射波85が到来する方向に向け、バックローブ81を壁90の裏面側の送信アンテナ13から透過波86が到来する方向に向けて設置される。
【0027】
再び
図2を参照すると、送信アンテナ13aは、メインローブ80である検出波84aを移動体91aに放射するとともに、バックローブ81である透過波86aが壁90の裏面側の受信アンテナ14bに向けて放射される。受信アンテナ14bは、バックローブ81により透過波86aを受信し、メインローブ80により反射波85bを受信する。
【0028】
また、送信アンテナ13bは、メインローブ80である検出波84bを移動体91bに放射するとともに、バックローブ81である透過波86bが壁90の反対側の受信アンテナ14aに向けて放射される。受信アンテナ14aは、バックローブ81により透過波86bを受信し、メインローブ80により反射波85bを受信する。
【0029】
RFモジュール11は、透過波86を検波することにより電気的な透過信号に変換してMCU10に出力する。MCU10は、透過信号が変調信号であるか否かを判定し、透過信号が変調信号である場合、警報器15に警報を出力させる。
【0030】
上述のようにMCU10aは、移動体91aの接近を検出したとき、RFモジュール11aに電波Wsを変調波に変調させる。この場合、検出波84aだけでなく透過波86aも変調されるため、壁90の裏面側のMCU10bは、透過信号が変調信号であるか否かを判定する。変調方式としては、例えば以下のOOK(On Off Keying)とPPM(Pulse Position Modulation)が挙げられる。
【0031】
図4(a)は、変調信号の一例を示す波形図である。本例の変調方式はOOKである。
【0032】
変調前の検出波84及び透過波86は連続的な正弦波であるが、検出波84及び透過波86である変調波は、一定周期でオンオフされる断続的な正弦波となる。このため、透過波86から得られる透過信号は、論理値「1」,「0」を一定周期で繰り返す変調信号となる。
【0033】
図4(b)は、変調信号の他の例を示す波形図である。本例の変調方式はPPMである。
【0034】
検出波84及び透過波86を変調した変調波は、周期的な所定パタンでオンオフされる断続的な正弦波となる。このため、透過波86から得られる透過信号は、論理値「1」,「0」の所定パタンを一定周期で繰り返す変調信号となる。なお、変調方式の種類(OOK及びPPMなど)は、例えばユーザがSW12の設定により切り替えられるようにしてもよい。
【0035】
再び
図2を参照すると、MCU10は、例えば、透過信号を所定パタンと照合することにより透過信号が変調信号であるか否かを判定する。MCU10は、透過信号が変調信号である場合、警報を出力するように警報器15を制御し、透過信号が変調信号ではない場合は警報器15a,15bを制御しない。MCU10は、警報の出力後、例えば所定期間が経過すると警報を出力停止するように警報器15を制御する。
【0036】
警報器15は、例えばブザーやLED(Light Emitting Diode)などである。ブザーは音により移動体91の接近を通知し、LEDは光により移動体91の接近を通知する。なお、MCU10は、SW12からの設定に応じて音や光のパタンを制御してもよい。
【0037】
SW12は、ユーザが接近検出装置1に各種の設定を行うために用いられる。設定には、例えば接近検出装置1の電波Wsの周波数に応じたチャネルID、警報器15の警報の優先度(「1」:優先、「0」:非優先)、非優先時の警報の出力可否情報、非優先時の警報の遅延時間Td、電波Wsの変調期間Tm、及び警報器15の警報のパタンなどがある。なお、接近検出装置1aと接近検出装置1bとには互いに異なるチャネルIDが設定され、警報器15aと警報器15bとには互いに異なる優先度が設定される。
【0038】
MCU10は、例えば接近検出装置1の起動時にSW12から設定を取得してRFモジュール11及び警報器15に設定する。次に検出装置1の機能的な構成の詳細を述べる。
【0039】
図5は、接近検出装置1の一例を示す構成図である。RFモジュール11は、送信回路110及び受信回路111を有する。送信回路110及び送信アンテナ13は、第1及び第2送信部の一例であり、電波Wsを送信する。受信回路111及び受信アンテナ14は、第1及び第2受信部の一例であり、電波Wsを受信する。なお、送信回路110及び受信回路111は、例えばASIC(Application Specified Integrated Circuit)などのハードウェアから構成される回路である。
【0040】
送信回路110は、正弦波信号を生成するVCO112と、正弦波信号を変調する変調器113を有する。VCO112は、MCU10から通知されたチャネルIDに応じて正弦波信号の周波数を変更する。変調器113は、MCU10のオンオフ制御に従って変調処理を開始または停止する変調器113から出力された信号は、送信アンテナ13及び受信回路111に入力される。送信アンテナ13は正弦波信号を電波Wsとして送信する。変調器113が変調処理を実行している場合、送信アンテナ13からは変調波が送信される。
【0041】
また、受信アンテナ14は、反射波85と、壁90の裏面側の接近検出装置1の送信アンテナ13a,13bから送信された電波Ws、つまり透過波86とを受信する。なお、接近検出装置1は、透過波86を受信するために追加の受信アンテナを壁90の裏面側に備えてもよい。
【0042】
受信回路111は、周波数フィルタ114,118、ミキサ115、及び検波回路116,117を有する。周波数フィルタ114,118は、受信アンテナ14から入力されるRF信号をフィルタリングする。RF信号には、受信アンテナ14が受信した反射波85及び透過波86の信号成分が含まれる。
【0043】
周波数フィルタ114には、MCU10から通知されたチャネルIDに従って検出波84の周波数に応じた透過帯域が設定される。これにより、周波数フィルタ114は、MCU10から通知されたチャネルIDに応じて反射波85の信号成分を透過してミキサ115に出力する。このため、受信回路111は、送信回路110が送信した検出波84の反射波85を受信することができる。
【0044】
ミキサ115は、送信回路110からの正弦波信号と反射波85の信号成分をミキシングして検波回路116に出力する。検波回路116は、ミキサ115から入力されたミキサ信号を検波することによりI成分Si及びQ成分Sqを生成してMCU10に出力する。
【0045】
また、周波数フィルタ114は、MCU10から通知された壁90の裏面側の接近検出装置1のチャネルIDに従って透過波86の周波数に応じた透過帯域が設定される。これにより、周波数フィルタ118は、透過波86の信号成分を透過して検波回路117に出力する。検波回路117は、周波数フィルタ118から入力された信号を検波することにより透過信号Snを生成してMCU10に出力する。
【0046】
MCU10は演算処理回路100及びメモリ106を有する。演算処理回路100は、プログラムに従って演算処理を行うプロセッサであり、メモリ106には、演算処理回路100が用いるプログラム及び変数などが記憶される。
【0047】
演算処理回路100はメモリ106からプログラムを読み込むと、機能として設定処理部101、送信制御部102、接近検出部103、通知検出部104、及び警報制御部105を形成する。
【0048】
設定処理部101は、接近検出装置1の起動時、SW12の設定を取得する。設定処理部101は、送信回路110及び受信回路111にチャネルIDを設定し、警報制御部105に優先度、警報の出力可否情報、及び遅延時間Tdを設定する。また、設定処理部101は、送信制御部102に電波Wsの変調期間Tmを設定する。なお、ユーザは、接近検出装置1aと接近検出装置1bとのチャネルID及び警報器15aと警報器15bとの優先度が相違するようにSW12a,12bを設定する。
【0049】
接近検出部103は、第2及び第4検出部の一例であり、電波Wsの反射波85に基づいて移動体91の接近を検出する。接近検出部103は、ドップラー効果の原理に基づきI成分Si及びQ成分Sqの位相関係から移動体91の接近を検出する。接近検出部103は、移動体91が接近していると判断した場合、接近の検出を送信制御部102に通知する。
【0050】
送信制御部102は、制御部の一例であり、接近検出部103が移動体91の接近を検出したとき、送信回路110に電波Wsを、
図4(a)または
図4(b)に示されるような変調波に変調する。送信制御部102は、接近検出部103から移動体91の接近の検出を通知されると、変調器113をオン状態に制御する。
【0051】
これにより、変調器113はVCO112の正弦波信号の変調を開始するため、電波Wsが変調波に変調される。接近検出装置1は、電波Wsを変調することにより、自装置への移動体91の接近を、変調波を用いて壁90の裏面側の接近検出装置1に通知することができる。
【0052】
このように、接近検出装置1は、接近の通知に無線LANや3Gの通信器などを用いず、消費電力が高い大規模な電気部品を必要としないため、低消費電力化及び小型化が可能である。
【0053】
また、送信制御部102は、接近検出部103からの通知を受けた後、変調期間Tmが経過すると変調器113をオフ状態に制御する。これにより、変調器113はVCO112からの信号の変調を停止する。
【0054】
このように、送信制御部102は、変調期間Tmだけ送信回路110に電波Wsを変調させる。このため、接近検出装置1は、ユーザが操作しなくても、壁90の裏面側の接近検出装置1への移動体91の接近の検出を自動的に停止することができる。
【0055】
通知検出部104は、第2及び第4検出部の一例であり、受信回路111による変調波の受信に応じて、壁90の裏面側の接近検出装置1への移動体91の接近を検出する。通知検出部104は、透過信号Snを、
図4(a)または
図4(b)に示されるような変調信号のパタンと照合する。通知検出部104は、照合の結果、透過信号Snがパタンと一致した場合、透過信号Snが移動体91の接近を通知する変調信号であると認識し、壁90の裏面側の接近検出装置1へ移動体91が接近していると判断する。
【0056】
このため、接近検出装置1は、自装置の電波Wsでは検出できない壁90の裏面側の移動体91の接近を検出することができる。通知検出部104は、変調信号の検出を警報制御部105に通知する。
【0057】
警報制御部105は、第1及び第2警報制御部105の一例であり、警報器15による警報の出力を制御する。警報器15は、警報制御部105の制御に従って、壁90の裏面側の接近検出装置1への移動体91の接近を示す警報をそれぞれ出力する。
【0058】
また、警報制御部105には、接近検出部103から移動体91の接近が通知される。警報制御部105は、移動体91a,91bの接近が同時に検出された場合、優先度に応じて自装置の警報器15による警報を遅延または中止させる。各接近検出装置1a,1bの警報制御部105の優先度は異なるため、優先度が高い警報制御部105は自装置の警報器15に警報を出力させる。
【0059】
一方、優先度が低い警報制御部105は、自装置側の警報器15に警報の出力を他方の警報器15より遅延時間Tdだけ遅らせ、または警報の出力を中止させる。ここで、優先度が低い警報制御部105は、警報の出力可否情報が「可」を示す場合、警報の出力を遅らせ、警報の出力可否情報が「不可」を示す場合、警報の出力を中止する。
【0060】
このように、各接近検出装置1a,1bの通知検出部104が移動体91b,91aの接近をそれぞれ検出した場合、各接近検出装置1a,1bの警報制御部105のうち、優先度が低い方の警報制御部105は、警報を遅延または中止させる。このため、例えば
図1の例において、人物Ha,Hbが、接近検出装置1a,1bから同時に警報を受けたために扉92を挟んで立ち止り、結果的に互いに道を譲り合うことが防止される。
【0061】
また、例えば接近検出装置1aが設置された壁面が、扉92を押し開く側の壁面であれば、接近検出装置1aの警報制御部105の優先度を他方の警報制御部105より高く設定してもよい。この場合、人物Haは接近検出装置1aから警報を受けることで注意して扉92を開くため、押し開かれた扉92と人物Hbの衝突を効果的に防止することができる。
【0062】
次に接近検出装置1a,1bの処理を説明する。
【0063】
図6は、電波Wsの送信処理の一例を示すフローチャートである。本処理は、例えば一定の周期で繰り返し実行される。以下、接近検出装置1aが実行する処理について説明するが、接近検出装置1bも同様に処理を実行する。
【0064】
送信回路110は、送信アンテナ13aから電波Wsを送信する(St1)。接近検出部103は、電波Wsの反射波85aから得られたI成分Si及びQ成分Sqの位相関係から移動体91aが接近検出装置1aに接近しているか否かを判定する(St2)。移動体91aが接近していない場合(St2のNo)、処理は終了する。
【0065】
また、移動体91aが接近している場合(St2のYes)、送信制御部102は変調器113をオン状態に制御する(St3)。これにより、電波Wsは変調される。このとき、電波Wsは、移動体91の検出時と区別ができるように変調される。次に送信制御部102は、変調期間Tmだけ待機した後(St4)、変調器113をオフ状態に制御する(St5)。これにより、電波Wsの変調処理は停止する。このようにして、電波Wsの送信処理は実行される。
【0066】
図7は、警報の出力処理の一例を示すフローチャートである。本処理は、例えば一定の周期で繰り返し実行される。
【0067】
通知検出部104は、受信回路111からの透過信号Snが変調信号であるか否かをパタン照合により判定する(St11)。透過信号Snが変調信号ではない場合(St11のNo)、処理は終了する。
【0068】
また、通知検出部104は、透過信号Snが変調信号である場合(St11のYes)、壁90の裏面側の接近検出装置1bに移動体91bが接近していると判定し、自装置に移動体91aが接近しているか否かを接近検出部103からの通知により判定する(St12)。これにより、接近検出装置1aは、移動体91a,91bが同時に接近検出装置1a,1bに接近しているのか否かを判定する。
【0069】
警報制御部105は、自装置に移動体91aが接近していない場合(St12のNo)、警報器15aに警報の出力を開始させる(St13)。次に警報制御部105は、所定時間だけ待機した後(St14)、警報器15aに警報の出力を停止させる(St15)。
【0070】
また、警報制御部105は、自装置に移動体91aが接近している場合(St12のYes)、移動体91a,91bが同時に接近検出装置1a,1bに接近していると判定し、警報器15aの優先度が「1」(高優先)であるか否かを判定する(St16)。優先度が「1」である場合(St16のYes)、St13以降の各処理が実行される。
【0071】
また、警報制御部105は、優先度が「0」(低優先)である場合(St16のNo)、警報可否情報が「可」を示すか否かを判定する(St17)。警報制御部105は、警報可否情報が「不可」を示す場合(St17のNo)、警報器15aに警告を出力させずに処理を終了する。つまり、警報制御部105は警報の出力を中止する。
【0072】
このため、
図1の例において、扉92の両側の人物Ha,Hbのうち、高優先の警報器15a,15b側の一方は他方の存在に気が付かない。このため、人物Ha,Hbが、接近検出装置1a,1bから同時に警報を受けたために扉92を挟んで立ち止り、結果的に互いに道を譲り合うことが防止される。
【0073】
また、警報制御部105は、警報可否情報が「可」を示す場合(St17のYes)、遅延時間Tdだけ待機した後(St18)、警報器15aに警報の出力を開始させる(St13)。これにより、低優先の警報器15aは高優先の警報器15bより少なくとも遅延時間Tdだけ遅れて警報を出力する。
【0074】
このため、
図1の例において、扉92の両側の人物Ha,Hbが互いに存在に気が付くタイミングをずらすことが可能である。このため、人物Ha,Hbが、接近検出装置1a,1bから同時に警報を受けたために扉92を挟んで立ち止り、結果的に互いに道を譲り合うことが防止される。その後、St14以降の各処理が実行される。このようにして警報の出力処理は実行される。
【0075】
上述したように、接近検出装置1aは、電波Wsを送信して、自装置への移動体91aの接近を反射波85aにより検出する。接近検出装置1aは、移動体91aの接近を検出した場合、電波Wsを変調することにより他方の接近検出装置1aに移動体91aの接近を通知することができる。
【0076】
このため、接近検出装置1は、接近の通知に無線LANや3Gの通信器などを用いず、消費電力が高い大規模な電気部品を必要としないため、低消費電力化及び小型化が可能である。
【0077】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0078】
1a,1b 接近検出装置
10a,10b MCU
11a,11b RFモジュール
13a,13b 送信アンテナ
14a,14b 受信アンテナ
91a,91b 移動体
102 送信制御部
103 接近検出部
104 通知検出部
105 警報制御部
110 送信回路
111 受信回路