(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】コーヒーマシンおよびフィルタコーヒーを調製するための方法
(51)【国際特許分類】
A47J 31/44 20060101AFI20230829BHJP
A47J 31/057 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
A47J31/44 196
A47J31/057
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019111860
(22)【出願日】2019-06-17
【審査請求日】2022-03-15
(31)【優先権主張番号】10 2018 114 588.8
(32)【優先日】2018-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390014155
【氏名又は名称】メリタ オイローパ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Melitta Europa GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Ringstrasse99,D-32427 Minden,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ザハトレーベン
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン ノイハウス
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-204528(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/44
A47J 31/057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱湯を沸かすためのユニットと、熱湯のための分配装置と、該分配装置の下に配置され、フィルタおよびコーヒー粉を挿入可能であるフィルタ容器(8)とを備えたコーヒーマシン(1)であって、
前記分配装置が、少なくとも2つの流出開口(71,72)を備える、回転可能に支承された流出部分(7)を有しており、該流出部分(7)が、抽出工程のために駆動装置(12)により回転可能であ
り、
前記流出部分(7)の回転方向に応じて、熱湯を異なる流出開口(71,72)を通して流すために、切換ユニットが設けられている、
ことを特徴とする、コーヒーマシン(1)。
【請求項2】
前記流出開口(71,72)が、前記流出部分(7)の回転軸線から離間して配置されている、請求項1記載のコーヒーマシン。
【請求項3】
前記流出部分(7)は、前記駆動装置(12)により双方向に回転可能である、請求項1または2記載のコーヒーマシン。
【請求項4】
少なくとも、2つの流出開口(71,72)の間で前記流出部分に分離壁(73)が設けられている、請求項1から
3までのいずれか1項記載のコーヒーマシン。
【請求項5】
前記流出部分(7)の上方に、ガイドエレメント(23)が設けられていて、該ガイドエレメント(23)が、熱湯を選択的に前記分離壁(73)の第1の側に、または前記分離壁(73)の、反対の側に位置する第2の側に供給する、請求項
4記載のコーヒーマシン。
【請求項6】
ガイドエレメント(23)が、前記流出部分(7)に対して相対的に予め規定された角度範囲で回転可能である、請求項1から
5までのいずれか1項記載のコーヒーマシン。
【請求項7】
前記ガイドエレメント(23)が、環状の通路(25)に設けられた流出開口(26)を有している、請求項
5または6記載のコーヒーマシン。
【請求項8】
前記流出開口(26)
は、管片として形成されており、当該管片が、
前記流出部分(7)の上側部分(76)に形成された湾曲された開口(32)
内に
突入するように構成されており、該管片を介して前記流出部分(7)が回転可能である、請求項
7記載のコーヒーマシン。
【請求項9】
前記流出部分(7)が、複数の転動体(41)を介して支承リング(40)において回転可能に保持されている、請求項1から
8までのいずれか1項記載のコーヒーマシン。
【請求項10】
前記流出部分(7)が、係止結合部を介して前記支承リング(40)に保持されている、請求項
9記載のコーヒーマシン。
【請求項11】
フィルタコーヒーを調製する方法であって、以下のステップ、すなわち
-熱湯を沸かし、該熱湯を、流出部分(7)を備える分配装置に供給するステップと、
-前記流出部分(7)を回転させ、同時に、該流出部分(7)の下にあるフィルタ容器(8)内のコーヒー粉上に少なくとも1つの流出開口(71,72)を介して熱湯を供給するステップと
、
予め規定された時間後に、前記流出部分(7)の回転方向を変更するステップと、
を有している、方法。
【請求項12】
前記流出部分(7)の第1の回転方向では、熱湯を、前記流出部分(7)に設けられた少なくとも1つの第1の流出開口(71)を通じて供給し、前記流出部分(7)の第2の回転方向では、熱湯を、少なくとも1つの第2の流出開口(72)を通して前記流出部分(7)により供給する、請求項
11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱湯を沸かすためのユニットと、熱湯のための分配装置と、分配装置の下に配置された、フィルタおよびコーヒー粉が挿入可能であるフィルタ容器とを備えるコーヒーマシンと、フィルタコーヒーを調製するための方法とに関する。
【0002】
独国特許出願公開第102015121634号明細書(DE102015121634A1)は、流出ユニットが複数の流出開口を有していて、内側または外側の流出開口を通って流れる熱湯の量が選択スイッチを介して制御可能であるコーヒーマシンを開示している。これにより、コーヒー粉の抽出、ひいてはコーヒーの風味に意図的に影響が与えられる。この静的な調整は、均一な加湿、ひいては最適な抽出を常に達成することはできないという欠点を有している。
【0003】
手動で調製したコーヒーは、フィルタバッグ内にあるコーヒー粉上に手動で湯を注ぐことにより、使用者により調節された加湿と、その結果生じる良好な抽出とが可能であるので、有利である。抽出時間も、手で影響を与えることができる供給速度により最適に調節することができる。しかし、比較的大量のコーヒーの調製時に、手動の調製は比較的手間がかかる。
【0004】
したがって、本発明の課題は、コーヒーマシンと、フィルタコーヒーを調製するための方法とを改良して、コーヒー粉上への熱湯の供給が手動の調製を倣うことにより、抽出を最適化することである。
【0005】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有するコーヒーマシンと、請求項12に記載の特徴を有する方法とにより解決される。
【0006】
本発明に係るコーヒーマシンは、熱湯のための分配装置を含んでいる。この分配装置は、少なくとも2つの流出開口を備える、回転可能に支承された流出部分を有している。流出部分は、コーヒー粉を均一に湿らせるために、駆動装置により回転可能に支承されている。これにより、コーヒー粉は、1つまたは複数の流出開口下での定置の水供給部によって湿らせられるのではなく、流出部分が運動し、これにより、抽出時にコーヒー粉のより大きな面積を湿らせることができ、ひいてはより均一な抽出を可能にすることができる。
【0007】
好適には、流出開口は、流出部分の回転軸線から離間して配置されている。これにより、流出部分の回転時に、各流出開口のための回転軸線を中心とした環状の面積が湿らせられる。
【0008】
意図的な抽出制御のために、流出部分は好適には双方向に回転可能である。この構成では、切換ユニットが設けられていてよく、流出部分の回転方向に応じて、熱湯を異なる流出開口を通して流すことができる。切換ユニットは、電子的、電気的または機械的に構成されていてよい。好適には、流出部分の回転は、切換プロセスのために使用される。
【0009】
流出部分には、好適には、少なくとも、2つの流出開口の間に分離壁が設けられている。流出部分の上には、ガイドエレメントが設けられていてよい。このガイドエレメントは熱湯を分離壁の第1の側、または分離壁の、反対の側に位置する第2の側に選択的に供給する。これにより、流出部分に対するガイドエレメントの相対運動により、切換プロセスを引き起こすことができ、これにより、第1の側に配置された流出開口または第2の側に配置された流出開口に選択的に熱湯を供給することができる。ガイドエレメントは、たとえば予め規定された角度範囲で、特に20°~60°の間の角度範囲で流出部分に対して相対的に回転可能に形成されていてよい。
【0010】
別の構成では、ガイドエレメントが、環状の通路に設けられた流出開口を有している。流出開口は、流出部分に熱湯を供給し、流出開口は、流出部分上の種々異なる位置において位置決めされ得る。
【0011】
本発明に係る方法では、熱湯を流出部分にガイドし、流出部分は、少なくとも1つの流出開口を介して、下に配置されているフィルタ容器内のコーヒー粉上に熱湯を供給すると同時に回転する。好適には、予め規定された時間後に、流出部分の回転方向が変更される。流出部分は第1の方向では熱湯を少なくとも1つの第1の流出開口を通じて供給し、流出部分の第2の回転方向では流出部分に設けられた少なくとも1つの第2の流出開口を通して供給する。このことは、ハンドドリッププロセスに似たコーヒー粉の最適化された加湿を可能にする。
【0012】
本発明を以下に実施例につき添付の図面に関連して詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るコーヒーマシンの斜視図である。
【
図2】
図1に示したコーヒーマシンの平面図である。
【
図3】
図1に示したコーヒーマシンの駆動装置の平面図である。
【
図4】AおよびBは、
図1に示したコーヒーマシンの水供給部の領域を示す2つの図である。
【
図5】
図1に示したコーヒーマシンの水供給部の領域の断面図である。
【
図6】
図1に示したコーヒーマシンの水供給部の領域の断面図である。
【
図7】
図1に示したコーヒーマシンの水供給部の領域の断面図である。
【
図8】AおよびBは、
図1に示したコーヒーマシンの流出部分のための支承リングを示す2つの図である。
【
図9】A~Cは、
図1に示したコーヒーマシン用の熱湯のためのガイドエレメントを示す図である。
【
図10】熱湯を供給するための流出部分を示す図である。
【
図11】AおよびBは、流出管片を備える流出部分を種々異なる位置で示す2つの図である。
【
図12】AおよびBは、流出管片を備える流出部分を種々異なる位置で示す2つの図である。
【
図13】AおよびBは、流出部分を備えるコーヒーマシンの水供給部を種々異なる位置で示す2つの図である。
【0014】
コーヒーマシン1はケーシング2を含んでいる。このケーシング2には、水用のタンク3が設けられている。タンク3は、取外し可能なカバー4により閉じられていて、水を充填することができる。コーヒーマシン1は、ポンプと加熱ユニットとを有していて、これにより供給管路5を介して流出部分7に供給される熱湯を形成することができる。流出部分7は、フィルタ容器8の上に位置している。フィルタ容器8は特に円錐台形に形成されていて、コーヒー粉を備えたフィルタペーパインサートを収容するために適している。フィルタ容器8は、コーヒーマシン1のケーシング2に取出し可能に組み付けられていて、容器9、たとえば抽出されたコーヒーのための保温瓶またはガラスポットの上に配置されている。
【0015】
コーヒーマシン1は、任意で、さらにグラインダ10を有している。このグラインダ10でコーヒー豆がフレッシュに挽かれて、収容部11にある容器に供給されるので、フレッシュに挽かれたコーヒー粉を、フィルタ容器8のフィルタペーパインサート内に入れることができる。
【0016】
流出部分7は、供給管路5に対して相対的に回転可能に配置されており、したがって回転運動中に熱湯をコーヒー粉に供給することができる。供給管路5の上面には、さらに脱気カバー6が設けられている。この脱気カバー6は、供給管路5の換気のための開口を有している。
【0017】
図3には、駆動装置12を備える流出部分7が示されている。駆動装置12は、たとえば電動モータを有している。駆動装置12は、複数の歯車13を含んでいる。これらの歯車は伝動装置を形成する。歯車の個数は、供給管路5の形に応じて選択することができる。伝動装置の歯車13は、リングギア14を駆動することができる。このリングギア14は、流出部分7を回転させるために、流出部分7に間接的に連結されている。流出部分7は、双方向に回転され得る。
【0018】
図4Aおよび
図4Bには、脱気カバーと流出部分7とを備える供給管路5の領域が外側から示されている。供給管路5には、流入部が設けられている。この流入部から、熱湯がポンプおよび加熱ユニットにより、供給管路5の通路18内に供給される。通路18は、伝動装置の上に配置されており、流出部分7に向かって僅かに下降するように傾斜して配向されている。
【0019】
図5~
図7の断面図には、歯車13がリングギア14を駆動し、リングギア14はガイドエレメント23と一体的に形成されており、ガイドエレメント23が環状の収容部25を有していることが示されている。ガイドエレメント23には、内側の軸15が設けられており、この軸内には、軸方向の位置固定のためにねじ21がねじ込まれている。ねじ21は、半径方向に突出するフランジ区分で内側スリーブ20に係合する。この内側スリーブ20は、固定的に配置されている。熱湯は、流出開口24を介して、ガイドエレメント23の環状の収容部25内に導入される。ガイドエレメント23は、駆動装置により回転する。環状の収容部25から、熱湯は流出管片26に設けられた開口を通って流出する。この流出管片26は、収容部25から下方に向かって突出している。ガイドエレメント23には、さらにシール30が設けられている。このシール30のシールリップは、ガイドエレメント23と、コーヒーマシンのケーシング区分との間のシールのために働く。
【0020】
流出部分7は、係止手段、特に上方に向かって突出した係止ウェブ74を介して、回転可能な支承リング40に保持されている。支承リング40は、球形の転動体41を介して回転可能にケーシング2に支承されている。転動体41は、環状の軌道45上を転動し、支承リング40を支持する。ケーシング2に対して相対的に容易に回転する支承リング40において、流出部分7は相対回動不能に保持されている。支承リング40は、アングル状に形成されており、その一方の脚部で転動体41に被さり、かつ鉛直方向の1つの脚部を有していて、この鉛直方向の脚部において、流出部分7が保持されている。流出部分7は、底部70に、内側の流出開口71と、2つの外側の流出開口72とを有している。これら内側の流出開口71と外側の流出開口72とは、分離壁73を介して互いに分離されている。流出部分7の上側部分76には、円弧状の開口32が形成されている。この開口32内には、流出管片26が突入する。
【0021】
上側部分76には、さらに取付け手段が形成されている。この取付け手段は、支承リング40に位置固定されている。
【0022】
図8Aおよび
図8Bには、支承リング40が詳細に図示されている。支承リングは、断面ではアングル状に形成されていて、上側のフランジ44を有している。このフランジ44は、転動体41上に支持されている。さらに、鉛直方向の内輪43が設けられている。この内輪43には、流出部分7が保持されている。各転動体41は、ウェブ状の2つの連行部42によりガイドされるので、転動体41の間隔はほぼ一定に維持される。
【0023】
図9A~
図9Cには、ガイドエレメント23が詳細に図示されている。ガイドエレメントは、環状の収容部25を含む。この環状の収容部25には、流出管片26が形成されている。外周面には、一体的に形成されたリングギア14が設けられている。
【0024】
図10には、流出部分7を上から見た平面図が示されている。流出部分7の上面は、円弧状の開口32を有している。この円弧状の開口32の下には、内側の流出開口71が見える。流出管片26は、円弧状の開口32内で選択的に分離壁73の第1の側または分離壁73の第2の側に配置することができ、これにより、内側の流出開口71または外側の流出開口72に熱湯を選択的に供給することができる。
【0025】
図11Aおよび
図12Aでは、両方の外側の流出開口72に熱湯が供給されるように、流出管片26が配置されている。モータの回転方向が変わると、流出管片26は、円弧状の開口32に沿って旋回させられて、これにより流出部分7を別の回転方向に連行することができる。これにより、流出管片26は、流出部分7に対して相対的に運動し、分離壁73の反対に位置する側に配置されているので、今や内側の流出開口71に熱湯が供給される(
図11Bおよび12B)。
【0026】
この切換プロセスが、もう一度概略的に
図13Aおよび
図13Bに示されている。両外側の流出開口72に選択的に熱湯が供給され、これらの外側の流出開口72は、次いでフィルタ容器8内に含まれるコーヒー粉上に熱湯を環状に排出するか、または内側の流出開口71に熱湯が供給され、この内側の流出開口71は次いで同様にコーヒー粉上に熱湯を環状に排出する。
【0027】
図示の実施例では、流出部分7が3つの流出開口71および72を有している。当然ながら、流出開口71および72の個数は、変更することができ、かつその形状も変更することができる。この場合、流出開口は、たとえばスリット状に形成されていてもよい。
【0028】
さらに、回転方向の切替え時に、種々異なる流出開口に熱湯を供給するために働く別の機構を使用することもできる。
【0029】
回転方向の切替えは、たとえば10秒~1分の間隔で行うことができるので、予め規定された範囲の抽出後に、まず、熱湯を注がれたコーヒー粉が再び落ち着くことができる休憩を導入することができる。コーヒー粉を均一に湿らせるために、15秒~25秒の間隔が有利であることが判った。
【符号の説明】
【0030】
1 コーヒーマシン
2 ケーシング
3 タンク
4 カバー
5 供給管路
6 脱気カバー
7 流出部分
8 フィルタ容器
9 容器
10 グラインダ
11 収容部
12 駆動装置
13 歯車
14 リングギア
15 軸
18 通路
20 内側スリーブ
21 ねじ
23 ガイドエレメント
24 流出開口
25 収容部
26 流出管片
30 シール
32 開口
40 支承リング
41 転動体
42 連行部
43 内輪
44 フランジ
45 軌道
70 底部
71 流出開口
72 流出開口
73 分離壁
74 係止ウェブ
75 水流
76 上側部分