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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】ジェル状化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/87 20060101AFI20230829BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230829BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20230829BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
A61K8/87
A61K8/81
A61K8/34
A61K8/02
A61Q19/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019129940
(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公開番号】P2021014428
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 玲央
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/044880(WO,A1)
【文献】特開2015-030698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)~(C)を含有するジェル状化粧料。
(A)疎水変性ポリエーテルウレタン
(B)デンプン・アクリル酸グラフト重合体及び/又はその塩
(C)ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール及びベヘニルアルコールから選択される1種または2種以上
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェル状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の生活環境においては、肌は、冬の暖房、夏の冷房などの影響で一年中、乾燥環境に晒されている。この様な状況に対応して、皮膚の乾燥状態を改善すべく、各種の製剤が開発されている。化粧水、乳液、クリーム、ジェル等があり、中でも、ジェル剤型は、その保湿感の高さ、使用感のよさにおいて、近年、人気が高い。
【0003】
ジェル剤形には、種々の水溶性の高分子が配合されている。例えば、多糖類、カゼイン、キサンタンガム等の天然高分子、アクリル酸ポリマー、カルボキシビニルポリマー等の合成高分子が挙げられる。このような高分子を配合した組成物を化粧品に利用する場合、製剤を保持できる粘度や硬度が得られること、同時に外用剤として皮膚に対して使用されるため、使用したときの感触、すなわちべたつきのない使用性のよさなどが要求される。従来の高分子を配合した化粧料組成物は、粘度や硬度の安定性および好ましい使用性を十分に満たすものは知られていなかった。例えば、従来用いられてきたビニル系、セルロース系等の高分子を配合した化粧料組成物は、少量の配合では粘度や硬度の安定性に課題があり、増量すると高分子特有のぬめり感を生じ、好ましくない使用感を有する。
【0004】
そのため検討を重ねた結果、疎水性変性ポリエーテルウレタンが、とりわけ粘度の安定性および好ましい使用性を有することが分った(例えば特許文献1)。また他の高分子と組み合わせることで、さらに効果的であることも報告されている(例えば特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-71766号公報
【文献】特開2000-239120号公報
【文献】特開2015-030698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1~3に示されるようなジェル状化粧料は、エモリエント感に欠けるという課題があった。そこで、本願発明は、ジェル状化粧料としての使用感が良好で、高いエモリエント効果を有するジェル状化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(A)~(C)を含有するジェル状化粧料。
(A)疎水変性ポリエーテルウレタン
(B)デンプン・アクリル酸グラフト重合体及び/又はその塩
(C)炭素数6~26の高級アルコール
【発明の効果】
【0008】
本発明のジェル状化粧料は、ジェル状化粧料としての使用感が良好で、かつ高いエモリエント効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0010】
本発明のジェル状化粧料は、化粧品、医薬部外品のいずれの用途にも用いられ得る。
【0011】
本発明のジェル状化粧料には(A)疎水変性ポリエーテルウレタンを用いる。疎水変性ポリエーテルウレタンは、親水基部を骨格とし、末端に疎水性部分をもつ両親媒性コポリマーであり、水性媒体中でコポリマーの疎水性部分同士が会合し増粘作用を示すものであれば特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)で表わされるもの等が挙げられる。
【0012】
R1-{(O-R2k-OCONH-R3[-NHCOO-(R4-O)n-R5hm (1)
【0013】
上記式(1)中、R1、R2およびR4は、互いに同一でも異なっても良い炭化水素基を表し、R3はウレタン結合を有していても良い炭化水素基を表し、R5は直鎖、分岐鎖または2級の炭化水素基を表し、mは2以上の数であり、hは1以上の数であり、kおよびnは独立に0~1000の範囲の数である。R1、R2およびR4の炭素数は2~4、R3の炭素数は1~10、R5の炭素数は8~36であることが好適である。またmは好ましくは2、hは好ましくは1であり、kは1~500が好ましく、100~300がより好ましい。またnは1~200が好ましく、10~100がより好ましい。
【0014】
上記一般式(1)で表される疎水変性ポリエーテルウレタンは、例えば、R1-[(O-R2k-OH]mで表される1種または2種以上のポリエーテルポリオールと、R3-(NCO)h+1で表される1種または2種以上のポリイソシアネートと、HO-(R4-O)n-R5で表される1種または2種以上のポリエーテルモノアルコールとを反応させることにより得ることができる。
【0015】
この場合、一般式(1)中のR1~R5は、上記反応に用いるR1-[(O-R2k-OH]m、R3-(NCO)h+1、HO-(R4-O)n-R5により決定される。これら3つの構成成分の仕込み比は、特に限定されないが、ポリエーテルポリオールおよびポリエーテルモノアルコール由来の水酸基と、ポリイソシアネート由来のイソシアネート基の比が、NCO/OH=0.8:1~1.4:1であることが好ましい。
【0016】
上記一般式(1)で表される疎水変性ポリエーテルウレタンの中でも、ポリエチレングリコールの両末端をデシルテトラデシルアルコールで修飾した構造を有し、平均重量分子量が約5万程度(GPC法)のものが好適に用いられる。このような疎水変性ポリエーテルウレタンとしては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)-240/デシルテトラデセス-20/ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)コポリマー等が挙げられる。このPEG-240/デシルテトラデセス-20/HDIコポリマーの市販品としては、ADEKA株式会社製のアデカノールGT-700が例示できる。
【0017】
本発明のジェル状化粧料における疎水変性ポリエーテルウレタンの含有量は、特に限定されないが、ジェル状化粧料全量に対し0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、2質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がさらに好ましく、0.05~2質量%が好ましく、0.1~1.5質量%がさらに好ましい。
【0018】
本発明のジェル状化粧料には(B)デンプン・アクリル酸グラフト重合体及び/又はその塩を用いる。デンプン・アクリル酸ナトリウムグラフト重合体は、既に市販されているものが存在し、この様な市販品を使用することができる。市販品としては、大東化成工業株式会社製のMAKIMOUSSE 12、三洋化成工業株式会社製のサンフレッシュST-100Pが例示でき、大東化成工業株式会社製のMAKIMOUSSE 12を用いることが好ましい。
【0019】
本発明のジェル状化粧料におけるデンプン・アクリル酸グラフト重合体及び/又はその塩の含有量は、特に限定されないが、ジェル状化粧料全量に対し0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、2質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がさらに好ましく、0.05~2質量%が好ましく、0.1~1.5質量%がさらに好ましい。
【0020】
本発明のジェル状化粧料には(C)炭素数6~26の高級アルコールを用いる。高級アルコールとしては、化粧品、医薬品、医薬部外品等の分野において使用できる炭素数6以上、26以下の高級アルコールであれば特に限定されず、飽和直鎖一価アルコール及び不飽和一価アルコール等を包含する。飽和直鎖一価アルコールとしては、ドデカノール(ラウリルアルコール)、トリドデカノール、テトラドデカノール(ミリスチルアルコール)、ペンタデカノール、ヘキサデカノール(セチルアルコール)、ヘプタデカノール、オクタデカノール(ステアリルアルコール)、ノナデカノール、イコサノール(アラキルアルコール)、ヘンイコサノール、ドコサノール(ベヘニルアルコール)、トリコサノール、テトラコサノール(カルナービルアルコール)、ペンタコサノール、ヘキサコサノール(セリルアルコール)等が挙げられる。不飽和一価アルコールとしては、エライジルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。本発明では経時安定性の点から飽和直鎖一価アルコールが好ましい。本発明のジェル状化粧料には、これらの高級アルコールを単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。特に好ましい高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコールから選択される1種または2種以上が挙げられる。
【0021】
本発明のジェル状化粧料における高級アルコールの含有量は、特に限定されないが、ジェル状化粧料全量に対し0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がさらに好ましく、10質量%以下が好ましく、7質量%以下がさらに好ましく、0.1~10質量%が好ましく、0.2~7質量%がさらに好ましい。
【0022】
本発明のジェル状化粧料には、モノアルキルリン酸エステルを配合することが出来る。モノアルキルリン酸として、好ましくはアルキル基の炭素数が12~32、より好ましくは12~22のモノアルキルリン酸エステルである。アルキル鎖長を変えたアルキルリン酸エステルを合成することは容易であり、任意にアルキル鎖長を変えたアルキルリン酸エステルを合成することができる。モノアルキルリン酸は、アルキル鎖長の異なるアルキルリン酸エステルの1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
またアルキル基の構造は問わず、直鎖および分岐といった任意のアルキル基を用いることができる。モノアルキルリン酸は、市販品として、日光ケミカルズ社製NIKKOLホステンHLP(ラウリルリン酸)、NIKKOLピュアフォスα(セチルリン酸)などを用いることができる。
【0023】
モノアルキルリン酸は、塩基性アミノ酸、有機塩基、無機塩基化合物から選ばれる1種又は2種以上の中和剤で中和して用いることが好ましい。具体的に、塩基性アミノ酸としては、アルギニン、リシン、ヒスチジン、トリプトファンなどが挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。有機塩基としてはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール、アミノエチルプロパンジオール、トリスヒドロキシメチルアミノメタン等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。無機塩基化合物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられ、これらは1種又は2種を用いることができる。これらのうち、中和剤としては、好ましくはアルギニン、トリエタノールアミン、及びアミノメチルプロパノールから選ばれる1種以上であり、特に好ましくはアルギニンである。
【0024】
また成分アルキルリン酸エステルがすでに中和剤によって中和されている状態であってもよい。このような中和された化合物の市販品としては、日光ケミカルズ社製NIKKOLピュアフォスLC(ヘキシルデシルリン酸アルギニン)などが挙げられる。
【0025】
本発明のジェル状化粧料には、ポリオール類を配合することが出来る。ポリオール類としてはグリセリン、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ポリエチレングリコールなどが挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、好ましくはグリセリン、ブチレングリコール及びソルビトールから選ばれる1種以上である。
【0026】
本発明のジェル状化粧料には油性成分を配合することが出来る。かかる油性成分としては、液状油であるスクワランや流動パラフィン、イソパラフィンなどの炭化水素油、トリイソオクタン酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、イソオクタン酸セチル、パルミチン酸イソオクチルなどのエステル油、オリーブ油、マカデミアンナッツ油、ホホバ油などの植物油、ジメチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、シクロメチコン、アモジメチコンなどのシリコーン油、フッ素油など種類を問わず1種または2種以上を組み合わせて使用できる。またワセリンやシアバターなどの半固形油も液状油に溶解することにより、配合することができる。
【0027】
本発明のジェル状化粧料には、前記の必須成分、任意成分以外に本発明の目的を損なわない範囲で、通常の化粧料、医薬部外品に用いられる任意成分を、本発明の効果を阻害しない程度に配合することができる。具体的には、油性成分、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、抗酸化剤、抗炎症剤、抗菌剤等を挙げることができる。
【実施例
【0028】
本発明のジェル状化粧料の実施例を示す。実施例はあくまでも本発明の一例であり、これによって本発明が限定されるものではない。なお、配合量は断りのない限り質量%で示す。
【0029】
本発明の実施例、比較例の評価方法を示す。
【0030】
[官能評価]
調製したジェル状化粧料をジャー容器に充填したものを用いて、ジェル剤型としての使用性(硬さと指どれのバランス、肌なじみ、保湿効果感)、エモリエント感について、スキンケア専門官能評価員3名がそれぞれ独立して定法により使用し、合議により下記の評価基準に従い評価した。
◎:非常に優れている
○:優れている
△:あまり良くない
×:良くない
【0031】
表1の記載に基づき、定法によりジェル状化粧料を調製し、評価に供した。結果を表1に併せて示す。
【0032】
【表1】
【0033】
本発明の実施例にかかるジェル状化粧料は、ジェル剤型としての使用性、エモリエント感ともに、非常に優れていた。これに対し、本発明の必須成分(C)高級アルコールを配合していない比較例1は、エモリエント感が良くない評価であった。また本発明の必須成分(A)疎水変性ポリエーテルウレタンを配合していない比較例2は、ジェルとしての使用性があまり良くなかった。さらに、本発明の必須成分(B)デンプン・アクリル酸グラフト重合体及び/又はその塩を配合していない比較例3は、ジェル剤型としての使用性が良くなく、エモリエント感もあまりよくなかった。