(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】オゾン処理装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/20 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
A61L2/20 100
(21)【出願番号】P 2019135747
(22)【出願日】2019-07-24
【審査請求日】2022-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悠太
(72)【発明者】
【氏名】五味 工
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-017808(JP,A)
【文献】特開2009-082359(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0360977(US,A1)
【文献】特開平07-016163(JP,A)
【文献】登録実用新案第3039714(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00-2/28、9/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を開口部からオゾン処理部に収容するオゾン処理室と、被処理物をオゾン処理するオゾン処理手段とを有し、前記オゾン処理室の収容幅よりも前記開口部の開口幅が小さ
く、前記開口部から被処理物の搬入出が困難となる設置困難領域に、前記オゾン処理手段を配置したオゾン処理装置において、
前記設置困難領域は、
前記開口部の開口面に対する垂直方向に対して水平横方向に開く角度で定められ、前記開口部の開口幅の中央と、前記開口部の開口面より奥側に突出した構造物の最大突出端とを結ぶ線分によって表される収容臨界角よりも大きい角度範囲と、前記オゾン処理室の筐体とで囲まれた領域であることを
特徴とするオゾン処理装置。
【請求項2】
前記開口幅が80cm以上であり、前記オゾン処理室の筐体の高さが140cm以下であるオゾン処理装置おいて、
前記設置困難領域は、
被処理物を搬入出する作業者が、前記開口幅の中央に居る状態で、視認できないことで死角となる領域であって、前記開口部の
開口面より奥側に突出した構造物の陰となって形成される領域であ
り、
前記設置困難領域には、前記オゾン処理手段を鉛直方向に沿って配置したことを特徴とする請求項
1に記載のオゾン処理装置。
【請求項3】
前記オゾン処理手段は、前記オゾン処理部にオゾンを供給するオゾン生成部と、前記オゾン処理部のオゾンを除去するオゾン除去部と、前記オゾン生成部と前記オゾン除去部を制御する電源制御部とからなり、
前記オゾン生成部と前記オゾン除去部とは、それぞれ前記オゾン処理部と空間的に接続した別の流路を有し、
前記電源制御部は、前記オゾン処理部と空間的に隔離された流路を有することを特徴とする請求項1から請求項
2のいずれか1項に記載のオゾン処理装置。
【請求項4】
前記オゾン生成部の筐体に収容したオゾン生成手段と、前記オゾン除去部の筐体に収容したオゾン除去手段とは、前記オゾン処理室の筐体と分離可能な状態で一体となっていることを特徴とする請求項
3に記載のオゾン処理装置。
【請求項5】
前記電源制御部の下側には前記オゾン生成部を設け、前記オゾン生成部の筐体の下部には流入口、上部には流出口を設け、
前記オゾン生成部の下側には前記オゾン除去部を設け、前記オゾン除去部の筐体の下部には流入口、上部には流出口を設け、
前記オゾン生成部の流入口付近と流出口付近との温度差を10℃以下としたことを特徴とする請求項
3または
4に記載のオゾン処理装置。
【請求項6】
前記電源制御部の筐体下面と前記オゾン生成部の筐体上面との間には、前記オゾン生成部にて生成されたオゾンが流れる隙間を設け、
前記オゾン生成部の筐体下面と前記オゾン除去部の筐体上面との間には、前記オゾン処理部の酸素を含むガスが流れる隙間を設け、
前記オゾン除去部の筐体下面と前記オゾン処理室の筐体床面との間には、前記オゾン処理部のオゾンを含むガスが流れる隙間を設けたことを特徴とする請求項
3または
4に記載のオゾン処理装置。
【請求項7】
前記オゾン処理室の筐体には、前記電源制御部と電気的に接続された操作パネルを装置設置床面からの高さ80cm~110cmの範囲を含む位置に配設したことを特徴とする請求項
3から請求項
6のいずれか1項に記載のオゾン処理装置。
【請求項8】
前記オゾン処理室の筐体には、前記オゾン生成部のエキシマランプから放射される可視光を透過する窓を、前記エキシマランプの外表面から放射する紫外線の紫外線強度比が20%に減衰する透過距離よりも遠い位置であって、装置設置床面からの高さ40cm~80cmの範囲を含む位置に配設したことを特徴とする請求項
3から請求項
7のいずれか1項に記載のオゾン処理装置。
【請求項9】
前記オゾン生成部の筐体には、前記電源制御部を介して前記オゾン生成手段に電力を供給する電源回路の少なくとも一部を収容することを特徴とする請求項
4に記載のオゾン処理装置。
【請求項10】
前記オゾン生成手段は、波長200nm以下にピーク波長を有する紫外線を放射するエキシマランプであって、酸素を含む原料ガスに紫外線を照射することでオゾンを生成することを特徴とする請求項
4に記載のオゾン処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生成したオゾンによって脱臭や殺菌などの処理を行うオゾン処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾン処理装置では、酸素を含む対象物(例えば空気)に紫外線を照射することによってオゾンを生成する。オゾンの酸化力によって有機物などが分解され、殺菌(滅菌、除菌)、脱臭(消臭)などのオゾン処理を行うことができる。
【0003】
短時間で被処理物に対して均一にオゾン処理するためには、被処理物の大きさに応じたオゾン処理室(オゾン処理部)の大きさを選定する必要がある。例えば、オゾン処理室内で澱みなく気体が循環できるように、被処理物の周囲には空間を設けるとよい。しかしながら、その空間が大き過ぎると、オゾン濃度の上昇と降下の時間が長くなり、オゾン処理効率が悪くなるという問題がある。
【0004】
オゾンによって脱臭や殺菌などの処理を行う装置としては、殺菌、脱臭、除湿乾燥装置を密閉容器の側面に隣接して設けた装置がある(特許文献1参照)。
【0005】
このような装置では、オゾン処理室である容器又はそれに隣接して設けたケース内に、オゾン発生装置、脱オゾンフィルターおよび送風機を設けた殺菌脱臭装置を設置しているので、オゾン処理室内に脱臭殺菌装置を設置したときは、収容可能な被処理物の大きさに対するオゾン処理部の容積が大きくなり、オゾン処理効率が悪い。また、オゾン処理室に隣接したケース内に殺菌脱臭装置を設置したときにも、オゾン処理が可能な被処理物の大きさに対して、オゾン処理室とケースとからなるオゾン処理装置の設置容積が大きくなって、コンパクトな装置にできないという問題がある。
【0006】
また、エキシマランプにより生成されたオゾンにより、車いす等の搬送用車体を脱臭や殺菌などの処理を行うオゾン処理装置がある(特許文献2参照)。
【0007】
オゾン処理により生じる副生成物が到達しないように、オゾン生成ユニットをオゾン処理室の上方(オゾン処理部に設置した被処理物の上方の領域)に位置しているため、収容可能な被処理物の大きさに対する外部筐体(オゾン処理室)の容積が大きくなり、オゾン処理効率が悪い。その結果、オゾン処理装置の高さ方向の設置容積が大きくなって、コンパクトな装置にできないという問題がある。また、オゾン生成ユニットを操作する操作部も同様にオゾン処理装置の上部に設けているため、車いすに座った状態でオゾン処理の操作や装置のメンテナンスができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平6-47244号公報
【文献】特開2019-17808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、収容できる被処理物の大きさに対するオゾン処理室の大きさがコンパクトな装置であって、設置容積が小さくオゾン処理効率がよいオゾン処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
被処理物を開口部からオゾン処理部に収容するオゾン処理室と、被処理物をオゾン処理するオゾン処理手段とを有するオゾン処理装置であって、開口部から被処理物の搬入出が困難となる設置困難領域に、オゾン処理手段を配置したことにより、コンパクトなオゾン処理室を有するオゾン処理装置とすることができる。
【0011】
オゾン処理室の収容幅よりも開口部の開口幅が小さいオゾン処理装置であって、設置困難領域は、オゾン処理室の収容幅と開口部の開口幅とから導出する収容臨界角よりも大きい角度範囲と、オゾン処理室の筐体とで囲まれた領域であることにより、オゾン処理装置の正面側にオゾン処理手段が設置されるのでメンテナンスが容易となる、オゾン処理装置とすることができる。
【0012】
開口幅が80cm以上であり、オゾン処理室の筐体の高さが140cm以下であるオゾン処理装置であって、設置困難領域は、開口部の扉開閉構造の陰となって形成される領域であることで、車いすなどの被処理物の形状に応じて、開口幅が広く、筐体の高さが低くしたコンパクトなオゾン処理室を有し、車いすに座った状態での操作が容易となるオゾン処理装置とすることができる。
【0013】
オゾン処理手段は、オゾン処理部にオゾンを供給するオゾン生成部と、オゾン処理部のオゾンを除去するオゾン除去部と、オゾン生成部とオゾン除去部を制御する電源制御部とからなり、オゾン生成部とオゾン除去部とは、それぞれオゾン処理部と空間的に接続した別の流路を有し、電源制御部は、オゾン処理部と空間的に隔離された流路を有することにより、コンパクトなオゾン処理室でありながら、電源制御部がオゾンにより劣化することを防ぐ。
【0014】
オゾン生成部の筐体に収容したオゾン生成手段と、オゾン除去部の筐体に収容したオゾン除去手段とは、オゾン処理室の筐体と分離可能な状態で一体となっていることにより、メンテナンスが容易なオゾン処理装置とすることができる。
【0015】
電源制御部の下側にはオゾン生成部を設け、オゾン生成部の筐体の下部には流入口、上部には流出口を設け、オゾン生成部の下側にはオゾン除去部を設け、オゾン除去部の筐体の下部には流入口、上部には流出口を設けたことにより、簡単な構成でありながら、オゾン濃度の上昇や降下の時間が短くオゾン処理効率のよいオゾン処理装置とすることができる。
【0016】
電源制御部の筐体下面とオゾン生成部の筐体上面との間には、オゾン生成部にて生成されたオゾンが流れる隙間を設け、オゾン生成部の筐体下面とオゾン除去部の筐体上面との間には、オゾン処理部の酸素を含むガスが流れる隙間を設け、オゾン除去部の筐体下面とオゾン処理室の筐体床面との間には、オゾン処理部のオゾンを含むガスが流れる隙間を設けたことにより、気体が流れる流路の構成を簡略化にしたオゾン処理装置とすることができる。
【0017】
オゾン処理室の筐体には、電源制御部と電気的に接続された操作パネルを、装置が設置された床面からの高さ80cm~110cmの範囲を含む位置に配設したことにより、車いすに座った状態での操作が容易となる。
【0018】
オゾン処理室の筐体には、オゾン生成部のエキシマランプから放射される可視光を透過する窓を、エキシマランプの外表面から放射する紫外線の紫外線強度比が20%に減衰する透過距離よりも遠い位置であって、装置が設置された床面からの高さ40cm~80cmの範囲を含む位置に配設したことにより、車いすに座った状態でエキシマランプが点灯状態であることを容易に視認できる。
【0019】
オゾン生成部の筐体には、電源制御部を介してオゾン生成手段に電力を供給する電源回路の少なくとも一部を収容することにより、電源制御部からオゾン生成部に対して高周波の高電圧として電力を供給する必要が無いので、信頼性の高いオゾン処理手段を備えたオゾン処理装置とすることができる。
【0020】
オゾン生成手段は、波長200nm以下にピーク波長を有する紫外線を放射するエキシマランプであって、酸素を含む原料ガスに紫外線を照射することでオゾンを生成することにより、高濃度のオゾンにより除菌脱臭できるオゾン処理装置とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、オゾン処理室の大きさがコンパクトでオゾン処理効率がよいオゾン処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】オゾン処理装置の正面扉が閉じた状態の全体構成を示す正面図である。
【
図2】オゾン処理装置の正面扉が閉じた状態の全体構成を示す断面図である。
【
図3】オゾン処理装置の正面扉が開いた状態の全体構成を示す正面図である。
【
図4】オゾン処理装置の正面扉が開いた状態の全体構成を示す断面図である。
【
図5】オゾン処理装置のオゾン処理ユニットの構成を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0024】
図1は、オゾン処理装置の正面扉が閉じた状態の全体構成を示す正面図である。
図2は、オゾン処理装置の正面扉が閉じた状態の全体構成を示す断面図である。
【0025】
オゾン処理装置1は、オゾン処理部3を囲む外部筐体であるオゾン処理室2を備えている。オゾン処理室2の正面の開口部4は、正面扉4L,4Rによって閉じた状態とすることで、オゾン処理部3が装置外部と空間的に隔離され、気体の流れが遮断された密閉状態となる。
【0026】
オゾン処理室2の筐体の大きさは、例えば縦の長さ(奥行)は約140cm、横の長さ(幅)は約170cm、高さは約120cmとする。このような広い床面積と低い筐体高さと有するオゾン処理装置とすることで、車いすの除菌脱臭処理に適している。
【0027】
正面扉4L,4Rは、その背面(オゾン処理部側面)に形成した軸部(図示せず)を中心として回動可能な状態で、それぞれ開閉機構5L,5Rにより支持されている。さらに、開閉機構5L,5Rは、オゾン処理室2の筐体と一体となっている柱状部6L,6Rに形成された軸部(図示せず)を中心に回動可能な状態で支持されている。このように、柱状部6L,6Rと、開閉機構5L,5Rとにより構成される扉開閉構造によって、正面扉4L,4Rをそれぞれ移動させることで開口部4が開閉動作をする。
【0028】
正面扉4L,4Rには、それぞれ把持手段(ハンドル)7L,7Rが設けられ、作業者がハンドルを把持して正面扉の開閉動作(水平方向への移動)をする。把持手段7L,7Rは、オゾン処理装置が設置された床面からの高さ90cmを含む位置に設置することで、車いすに座った状態での把持動作が容易となる。例えば、車いす使用者が容易に接近するための「蹴り込み構造」のように、ハンドルの下端の高さが約60cmとなるように、高さ方向(鉛直方向)に沿って長さ約40cmのハンドルを設置すると、高さ90cmとなる位置がハンドルの長さ方向に含まれるのでよい。
【0029】
ここで、把持手段7L,7Rは、車いすに座った状態で正面扉4L,4Rの開閉が滑らかに行える範囲に設置するとよい。例えば、正面扉の高さと同じ長さの把持手段7L,7Rを設置すると、その上端または下端付近を作業者が把持したときに、正面扉を支持する扉開閉構造の上下で動きが同調せず、扉開閉動作が不安定となるおそれがある。
【0030】
図3は、オゾン処理装置の正面扉が開いた状態の全体構成を示す正面図である。
図4は、オゾン処理装置の正面扉が開いた状態の全体構成を示す断面図である。
【0031】
作業者が正面扉4L,4Rの把持手段(ハンドル)7L,7Rを、把持して正面扉の開動作(水平方向への移動)をして開口部4を開放状態とすることで、オゾン処理部3が装置外部と空間的に接続され、オゾン処理部3に被処理物の搬入と搬出が行える。
【0032】
バリアフリーの観点で、車いすで通過しやすい開口幅は90cm程度であり、このような開口幅とするために引き戸を横に移動させる距離は90cm程度となる。そこで、作業者が把持手段7L,7Rを握った状態で水平方向へ正面扉を移動させる距離を90cm以下とすることで、車いすに座った状態での開閉動作が容易となる。これに対して、正面扉を移動させる距離が90cmより大きいときには、ハンドルの長さ方向が水平方向(正面扉を移動させる方向)となるように設置して、ハンドルの長さによって90cm以上の長さの分を補うとよいが、作業者が開閉動作中に握り直す動作が必要となるので作業性が悪い。
【0033】
バリアフリーの観点で、車いすが通過できる幅は80cm以上であり、車いすをオゾン処理するためにはオゾン処理室の開口幅を80cm以上とする必要がある。開口部4の開口面における開口幅W1は、幅方向に突出している扉開閉構造の開閉機構5L,5Rが対向する水平方向の最短距離であり、例えば約110cmとなる。なお、開閉機構5L,5Rが幅方向に突出していない構造であるときは、開口部4の横幅が開口幅W1となる。それに対し、オゾン処理部3の収容幅W2は、オゾン処理室2の筐体内部の横幅であり、例えば約160cmとする。このように開口幅W1と収容幅W2の関係は、W1<W2 であり、収容幅を大きくしつつ、開口幅を小さくすることで、コンパクトなオゾン処理装置とすることができる。
【0034】
このように、収容幅W2よりも開口幅W1が小さいときには、被処理物が容易に設置できる範囲が限られ、開口部4の開口面に対する垂直方向(オゾン処理室2の奥行き方向)に対する水平横方向に開く角度として、被処理物を設置できる収容臨界角R(°)が定まる。この収容臨界角Rよりも大きい角度範囲では、被処理物の設置が難しい設置困難領域(デッドスペース)となる。例えば、収容臨界角は60°以下の角度として、この角度よりも小さい範囲に被処理物が設置できる領域を設定するとよい。
【0035】
図4においては、開口部4の手前側(図の下側)の中央である開口中央4Pと、柱状部6Rの開口部4の奥側(図の上側)に突出した部分である柱状部突出端6Pとを結ぶ線分によって、被処理物が容易に収容できる範囲である収容臨界角Rが表され、この収容臨界角Rより大きい角度範囲とオゾン処理室2の筐体(天井面と床面と側面)とで囲まれた領域が、設置困難領域3Dとなる。
【0036】
なお、開口部4の開口面より手前側に突出した構造物(例えば、オゾン処理室の外装)や、柱状部6よりも開口部4の奥側に突出した構造物(例えば、オゾン処理室の内装や扉開閉構造の開閉機構)が存在するときには、それぞれの最大突出端を結ぶ線分によって収容臨界角を表すと良い。すなわち、収容臨界角により表される設置困難領域とは、筐体や扉開閉構造の陰となって形成される領域であり、例えば、開口部4の開口中央4Pに作業者が居る状態で、視認できないことで死角となる領域や真直ぐに手が届き難い領域がデッドスペースとなり、被処理物の設置が困難な領域となる。
【0037】
車いすに座った状態での人間工学的寸法では、手の届く範囲は80cmと言われている。そこで、車いすをオゾン処理するためにオゾン処理部3の収容幅や奥行が80cm以上になると、開口部4から見て横側や奥側の隅となる領域が手の届かない範囲となるので、設置困難領域となる。
【0038】
被処理物の搬入出には、被処理物を持ち上げて搬入して置くだけでなく、置いた後にオゾン処理室の奥に押し退ける動作や、奥に置かれた被処理物を手前に引き寄せた後に、被処理物を持ち上げて搬出する動作も想定される。また車輪の付いた被処理物の搬入出は容易である。そのため、被処理物の設置が容易な範囲とは、持ち上げて搬入出できる範囲だけに限らず、その範囲の延長線上で押し退けたり引き寄せたりできる範囲も含まれる。このような方法による搬入出が困難となる領域は、設置困難領域となる。
【0039】
図5は、オゾン処理装置のオゾン処理ユニットの構成を示す部分断面図である。
【0040】
オゾン処理装置1の開口部4の横隣側であって、オゾン処理部3の傍らにある設置困難領域3Dには、オゾン処理部3におけるオゾン処理の機能を有するオゾン処理ユニット(オゾン処理手段)が、鉛直方向に沿って配列している。
【0041】
このよう配列させることで、オゾン処理装置1の正面側にオゾン処理手段が設置されるので、車いすに座った状態でのオゾン処理の操作やオゾン処理手段のメンテナンスが容易となる。
【0042】
オゾン処理手段は、オゾン処理部3にオゾンを供給するオゾン生成部10と、オゾン処理部3のオゾンを除去するオゾン除去部20と、オゾン生成部10とオゾン除去部20に電力を供給して動作を制御する電源制御部30とで構成され、それぞれ別の筐体に収容され有線または無線で接続している。
【0043】
オゾン生成部10の筐体には、オゾン生成手段11と吸気手段(吸気ファン)12と第2電源回路32とが収容されている。オゾン除去部20の筐体には、オゾン除去手段21と排気手段(排気ファン)22が収容されている。電源制御部30の筐体には、操作パネル36、制御回路33、第1電源回路31が収容されている。
【0044】
このように、オゾン処理装置1の正面側にオゾン処理手段が設置されるので、車いすに座った状態でのオゾン生成手段11やオゾン除去手段21の交換やメンテナンスが容易となる。また、このような作業を容易とするために、表示パネルの下側に交換用の扉を設けてもよい。
【0045】
オゾン生成部の筐体に収容されたオゾン生成手段と、オゾン除去部の筐体に収容されたオゾン除去手段とは、それぞれオゾン処理室2の筐体と分離可能な状態で一体となっていることで、オゾン処理装置1の消耗部品の交換などのメンテナンスが容易となる。
【0046】
このような構成とすることで、脱臭殺菌に必要なオゾン生成量(濃度)に応じて、エキシマランプと電源の組み合わせを選択することができる。また、そのオゾン生成量(濃度)に応じて、必要なオゾン除去量(除去速度)のオゾン除去手段を選択することができる。
【0047】
このように、オゾン処理室2の筐体に対して、オゾン生成部10やオゾン除去部20が分離可能な状態で一体になっていることにより、使用環境に応じてオゾンの生成量やオゾンの除去量を変更できるオゾン処理装置とすることができる。
【0048】
電源制御部30の上側でありオゾン処理室2の筐体の上部には流入口34を設け、電源制御部30の横側でありオゾン処理室2の筐体の側面部には、流出口(図示せず)を設ける。この電源制御部30の下側に設けたオゾン生成部10の筐体には、下部に流入口13を設け、上部には流出口14を設けた。このオゾン生成部10の下側に設けたオゾン除去部20の筐体には、下部には流入口23、上部に流出口24を設けた。
【0049】
オゾンは空気に比べて重いため、オゾン処理室2の下側に滞留することで、オゾン濃度が高くなる傾向にある。そのため、オゾン生成部10を上側に、オゾン除去部20が下側に成るように配置することで、オゾンを除去する効率がよくなるだけでなく、臭気物質や汚染物質にオゾンが反応した結果として生成された副生成物が、オゾン生成部10よりもオゾン除去部20に入り込みやすくなる。ここで、オゾン除去部20によりオゾンとともに副生成物も除去する構成としてもよい。
【0050】
また、オゾン生成部10とオゾン除去部20とは、それぞれオゾン処理部3と空間的に接続した別の流路を有し、電源制御部30は、オゾン処理部3と空間的に隔離された流路を有する。そこで、電源制御部30内をオゾン処理部3に比べて陽圧状態として、オゾン処理部3のオゾンを含むガスが電源制御部30内に流入してオゾンによって電気回路等が劣化することを防ぐ。
【0051】
電源制御部30の筐体下面とオゾン生成部10の筐体上面との間には、オゾン生成部10にて生成されたオゾンがオゾン処理部3に流れ出る隙間を設け、オゾン生成部10の筐体下面とオゾン除去部20の筐体上面との間には、オゾン処理部3から酸素を含むガスが流れ入る隙間を設け、オゾン除去部20の筐体下面とオゾン処理室2の筐体床面との間には、オゾン処理部3のオゾンを含むガスが流れ入る隙間を設けた。
【0052】
これらの隙間は、流路を形成する。例えば、オゾン生成部10の筐体下面とオゾン除去部20の筐体上面との間の隙間である流出路14Sと、電源制御部30の筐体下面とオゾン生成部10の筐体上面との間の隙間である流入路13Sが、オゾン処理部3とオゾン生成部10とを空間的に接続する流路として構成されている。そのため、オゾン処理部3からオゾン生成部10への流れの向きを、オゾン生成部10からオゾン処理部3への流れの向きにするために、流れを180°反転させるためのダクトや整流板等の構造物をオゾン生成部10に設ける必要が無い。
【0053】
オゾン除去部20においても同様であり、オゾン除去部20の筐体下面とオゾン処理室2の筐体床面との間の隙間である流入路23Sが、オゾン処理部3とオゾン除去部20とを空間的に接続する流路として構成されている。しかし、オゾン生成部10の筐体下面とオゾン除去部20の筐体上面との間の隙間は、オゾン生成部10を流れる流路の一部である流入路13Sを構成するので、流れの向きをオゾン除去部20の中で90°曲げて、流出口24を筐体の側面に設ける構造とした。
【0054】
このように流路を兼ねた隙間を設けることで、オゾン生成部10やオゾン除去部20の交換作業も容易に行えるので、メンテナンスが容易なオゾン処理装置とすることができる。
【0055】
オゾン生成部10の筐体の内部には、流入口13と流出口14との間に流路を形成する。筐体下部の流入口13に設けた吸気ファン12によって、筐体間の隙間を介してオゾン処理部3の空気を流入口13から流入して、隔壁15によってオゾン生成手段11側と第2電源回路32側とに分流して、オゾン生成部10の筐体内を流れ、再び流出口14付近で合流して、筐体上部の流出口14から筐体間の隙間を介してオゾン処理部3へ放出する。
【0056】
オゾン生成部10の筐体に収容された第2電源回路32と、電源制御部30の筐体に収容された第1電源回路31とを電気的に接続することにより、オゾン生成手段11に電力を供給する電源回路が形成される。すなわち、電源制御部30を介してオゾン生成手段11に電力を供給する電源回路の少なくとも一部を、オゾン生成部10の筐体に収容する。このような構成とすることにより、電源制御部30からオゾン生成部10に対して高周波の高電圧として電力を供給する必要が無いので、信頼性の高いオゾン生成手段を備えたオゾン処理装置を提供できる。
【0057】
オゾン生成手段11は、波長200nm以下にピーク波長を有する紫外線を放射するエキシマランプであり、吸気ファン12の流入口13に対向するように配置されている。エキシマランプの周囲を流れる酸素を含む原料ガス(ここでは空気)に、エキシマランプから放射される紫外線(ここでは波長172nm)を照射すると、オゾン生成手段11側の流路においてオゾンが生成される。
【0058】
ここで、エキシマランプと第2電源回路32との間に隔壁15を設けることによって、エキシマランプから放射される紫外線は第2電源回路32には照射されず、第2電源回路32側の流路においては、オゾンが生成されない。また、第2電源回路32等はオゾン耐性のある材料を用いたり、保護コーティング膜を形成したりすることで、オゾンから保護するように構成する。
【0059】
エキシマランプ11から紫外線とともに放射される可視光がオゾン処理室2とオゾン生成部10の筐体を透過する窓16を、エキシマランプ11の局所的放電が視認可能な位置に形成する。窓16は、操作パネル36の下側の近くに設置するとよい。例えば、オゾン処理装置が設置された床面からの高さ40cm~80cmの範囲内の位置に配設するとよい。
【0060】
エキシマランプから放射される可視光の波長域は、400nm~450nmおよび500nm~650nmの少なくともいずれかの波長域を含むようにすることが可能である。このような波長域の可視光を透過する窓16を設置することで、エキシマランプが点灯中であり、高濃度のオゾンが生成中であることを容易に把握することができる。
【0061】
一般的に、特定のピーク波長の真空紫外線は、大気中で吸収されやすく、エキシマランプ11から放射される紫外線はすぐに減衰し、紫外線強度が低下する。この減衰の程度は、紫外線の大気中に対する吸収係数の大きさに従う。理想的な測定環境では波長172nmの紫外線の場合、約3mmの進行で紫外線強度比が50%以下まで減衰し、約6mmで20%以下、そして約30mmで紫外線がすべて吸収されてしまう。
【0062】
窓16を構成する部材の紫外線劣化と、オゾン生成効率の観点で、窓16は、エキシマランプの外表面からの距離dが、紫外線強度比が20%まで減衰する透過距離よりも遠くなるように定められている。よって、172nmのピーク波長を有する紫外線の場合、6mm以上、より好ましくは30mm以上の距離dとなる位置に窓16を配置すればよい。このような構成にすることで、オゾン生成装置などの動作状態を、簡単な構成で確実に確認することができる。
【0063】
一般的に、温度によるオゾン分解は約40℃に達すると始まり、約60℃になるとオゾン分解が活発になる。そのため、流入口13付近と流出口14付近の温度差を10℃以下に抑えるように、エキシマランプ11を構成すればよい。
【0064】
オゾン除去部20の筐体の内部には、流入口23と流出口24との間に流路を形成する。筐体側面の流出口24に設けた排気ファン22によって、オゾン処理部3のオゾンを含むガスが流入口23から流入してオゾン除去手段21を通ることで、オゾン処理部3の空気に含まれるオゾンは除去され、オゾン除去部20の筐体内を流れ、装置上部の流出口24からオゾン処理部3へ放出する。
【0065】
ここで、オゾンの除去とは、分解や吸着のように流体に含まれるオゾンを減らす機能全般を含む概念であり、オゾンを吸着分解する活性炭や触媒、波長254nmの光を放射してオゾンを分解する低圧水銀ランプ等、任意のものをオゾン除去手段として選択できる。
【0066】
電源制御部30には、オゾン生成手段11の電源回路の一部である第1電源回路31と、吸気ファン12や排気ファン22や第2電源回路32等を制御する制御回路(制御手段)33と、操作パネル36を設ける。電源制御部30の筐体内は、流入口34と流出口(図示せず)によって、オゾン処理部3とは空間的に隔離した状態で冷却(放熱)することができる。
【0067】
制御回路33に電気的に接続された操作パネル36によって、作業者がオゾン処理装置の運転条件等を設定して、オゾン生成運転やオゾン除去運転させる。例えば、操作パネル36の操作によって、オゾン生成部10やオゾン除去部20の動作開始や動作停止を実行可能である。なお、オゾン処理室2の筐体の正面右側に操作パネル36を設けているが、これ以外の位置に操作パネル36を配してもよい。
【0068】
車いすに座った状態での人間工学的寸法では、目線の高さは105cm~115cm程度とされているため、バリアフリーの観点で、操作ボタンを80cm~110cmの範囲に設けると操作し易いとされている。そこで、操作パネル36の高さは、車いすに座った状態での視認性と操作性を両立させるために、オゾン処理装置1が設置された床面からの高さ80cm~110cmの範囲を含む位置に配設した。
【0069】
オゾン処理の効率を高めるためには、被処理物の大きさに応じた処理室の容積を選定する必要がある。電源制御部30をオゾン処理室2の設置困難領域3Dの最上部に設置することにより、オゾン処理室2を低くすることができ、オゾン処理部3の容積を小さくすることができ、必要なオゾン生成量が小さくなり、オゾン濃度の上昇と降下の時間が短くなることで、オゾン処理の効率を高められる。
【0070】
オゾン生成手段11であるエキシマランプの仕様や製造誤差に応じて、最適な高周波電源回路の設定がある。さらに、エキシマランプの点灯条件に応じて、最適な流量などの吸気ファン12の運転条件もある。また、オゾン除去手段21の仕様に応じて、最適な流量などが得られる排気ファン22を選定しないと、十分なオゾン除去性能が得られない。その他にも、吸気ファン12と排気ファン22と第2電源回路32とは、低濃度のオゾンであっても長時間曝露されることでの性能劣化は避けられない。
【0071】
そこで、オゾン生成手段11と吸気ファン12と電源(第2電源回路32)とが一体となったオゾン生成部10と、オゾン除去手段21と排気ファン22とが一体となったオゾン除去部20とが、電源制御部30に対して分離可能な状態でオゾン処理室2の筐体と一体となっている。そのため、オゾン生成部10またはオゾン除去部20(以下、「オゾン生成部など」という)は電源制御部30と分離して交換できる。その結果、それぞれの最適な設定条件を工場出荷前に調整できるので各性能の再現性がよく、信頼性の高いオゾン処理手段を備えたオゾン処理装置を提供することができる。
【0072】
なお、オゾン生成部10またはオゾン除去部20の筐体全体を交換するのではなく、少なくともオゾン生成手段11またはオゾン除去手段21のみを交換する構成としてもよい。このときには、筐体に開口部やメンテナンス用扉等を設けることで、装置正面からの交換等のメンテナンスを容易とするとよい。特に、オゾン処理装置が設置された床面からの高さ40cm~80cmの範囲を含む位置にランプを設置することで車いすに座った状態でもメンテナンスが容易となる。
【0073】
このような構成であれば、電源制御部30はオゾン生成部などと一緒に交換する必要は無い。さらに、オゾン処理室2の容積や処理条件に応じた各種設定条件を電源制御部30の図示しない記憶装置によって記憶していることで、オゾン生成部などの交換後に各種設定条件を再設定する手間を省くだけでなく、不適切な設定条件による使用を防ぐことにより、信頼性の高いオゾン処理手段を備えたオゾン処理装置を提供することができる。
【0074】
本実施形態におけるエキシマランプを点灯させる電源回路において、電源制御部30内の第1電源回路31は、商用周波数を高周波に変換する周波数コンバータであり、オゾン生成部10内の第2電源回路32は、昇圧トランスである。このときには、第1電源回路31によって、商用周波数を高周波に変換され、第2電源回路32によって昇圧され、高周波電圧によりエキシマランプを点灯する。
【0075】
第1の変形例として、第1電源回路を低圧直流電源、第2電源回路をスイッチング回路と昇圧トランスとしてもよい。このときには、第1電源回路によって商用周波数から直流電圧に変換し、第2電源回路で高周波に変換して昇圧して、高周波電圧によりエキシマランプを点灯する。
【0076】
第2の変形例として、第1電源回路では低圧交流電圧(商用電源)をそのまま通過させ、第2電源回路のみで高周波電圧に変換して、エキシマランプを点灯させてもよい。
【0077】
第3の変形例として、第1電源回路を低圧交流電源、第2電源回路をコッククロフト回路とスイッチング回路としてもよい。このときには、第1電源回路から供給された低圧交流電圧(商用電源)を、第2電源回路のコッククロフト回路で直流高電圧に変換し、スイッチング回路で高周波電圧に変換して、エキシマランプを点灯させる。
【符号の説明】
【0078】
1 オゾン処理装置
2 オゾン処理室
3 オゾン処理部
3D 設置困難領域(デッドスペース)
4 開口部
4L,4R 正面扉
4P 開口中央
5L,5R 開閉機構(扉開閉構造)
6L,6R 柱状部(扉開閉構造)
6P 柱状部突出端
7L,7R 把持手段(ハンドル)
10 オゾン生成部
11 オゾン生成手段(エキシマランプ)
12 吸気手段(吸気ファン)
13,23,34 流入口
13S,23S 流入路
14,24 流出口
14S 流出路
15 隔壁
16 窓
20 オゾン除去部
21 オゾン除去手段
22 排気手段(排気ファン)
30 電源制御部
31 第1電源回路
32 第2電源回路
33 制御回路(制御手段)
36 操作パネル
R 収容臨界角
W1 開口幅
W2 収容幅