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特許7339053評価方法、評価システム、および評価プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】評価方法、評価システム、および評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/00 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
A63B69/00 505H
A63B69/00 505L
A63B69/00 505J
A63B69/00 505Z
A63B69/00 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019139928
(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公開番号】P2021020005
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田渕 規之
(72)【発明者】
【氏名】見邨 康平
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/030424(WO,A1)
【文献】特開2019-097853(JP,A)
【文献】国際公開第2018/027280(WO,A1)
【文献】特開2003-265665(JP,A)
【文献】特開2016-073547(JP,A)
【文献】特開2019-081064(JP,A)
【文献】特開2015-150130(JP,A)
【文献】特開2018-086288(JP,A)
【文献】特表2019-501725(JP,A)
【文献】特開2014-180576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛来する対象物に対する被験者のスイング特性を評価するための評価方法であって、
前記被験者が前記対象物に対して打球具をスイングした場合に、前記打球具に取り付けられた第1センサによって検出されたセンサデータに基づいて、前記対象物の運動特性に対応するスイング情報を算出するステップと、
前記対象物の運動特性に少なくとも基づいて、複数の前記スイング情報を複数のグループに分類するステップと、
前記複数のグループの各々について、当該グループに属する1以上のスイング情報に基づいて、当該グループにおける代表スイング情報を抽出するステップと、
各グループの前記代表スイング情報に基づいて、前記被験者のスイング特性を評価するステップとを含
前記対象物の運動特性は、前記対象物のコースを含む、評価方法。
【請求項2】
前記算出するステップは、前記第1センサにより検出されたセンサデータに基づいて、前記スイング情報として、スイング時間、スイング速度、インパクト時のスイング加速度、インパクト時の回転速度、スイング回転半径、前記打球具のヘッド角度、およびスイング軌道のうちの少なくとも1つを算出することを含む、請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
前記対象物の運動特性は、前記対象物の速度、球種の少なくとも1つをさらに含む、請求項1または2に記載の評価方法。
【請求項4】
前記分類するステップは、前記対象物の運動特性と、前記対象物の運動特性が前記被験者に事前に通知されているか否かの第1条件とに基づいて、複数の前記スイング情報を前記複数のグループに分類することを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項5】
前記分類するステップは、k回目(kは2以上の整数)の前記対象物の運動特性と、(k-n)回目(nは1以上k未満の整数)から(k-1)回目までの前記対象物の運動特性がk回目の前記対象物の運動特性と同一であるか否かの第2条件とに基づいて、複数の前記スイング情報を前記複数のグループに分類することを含み、
(k-n)回目から(k-1)回目の各々の前記対象物の運動特性は同一である、請求項1~のいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項6】
前記対象物の運動特性は、前記対象物を観察した観察者によって定められる、請求項1~のいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項7】
前記対象物の運動特性は、前記対象物に内蔵された第3センサにより検出されたセンサデータに基づいて定められる、または、前記対象物を撮像した撮像画像に基づいて定められる、または、前記対象物をレーダーによってトラッキングすることにより得られたデータに基づいて定められる、請求項1~のいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項8】
前記グループにおける前記代表スイング情報は、前記グループに属する1以上のスイング情報の平均値、中央値または分散である、請求項1~のいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項9】
前記算出するステップは、前記被験者が仮想現実環境下で仮想現実上の対象物に対して前記打球具をスイングした場合の前記スイング情報を算出することを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項10】
前記評価するステップは、前記複数のグループのうちの第1グループの前記代表スイング情報と、前記複数のグループのうちの第2グループの前記代表スイング情報との比較結果に基づいて、前記被験者のスイング特性を評価することを含み、
前記被験者のスイング特性の評価結果から導き出されるアドバイスを出力するステップをさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項11】
飛来する対象物に対する被験者のスイング特性を評価するための評価システムであって、
前記被験者が前記対象物に対して打球具をスイングした場合に、前記打球具に取り付けられた第1センサによって検出されたセンサデータに基づいて、前記対象物の運動特性に対応するスイング情報を算出するスイング情報算出部と、
前記対象物の運動特性に少なくとも基づいて、複数の前記スイング情報を複数のグループに分類する分類部と、
前記複数のグループの各々について、当該グループに属する1以上のスイング情報に基づいて、当該グループにおける代表スイング情報を抽出する抽出部と、
各グループの前記代表スイング情報に基づいて、前記被験者のスイング特性を評価する評価部とを備え、
前記対象物の運動特性は、前記対象物のコースを含む、評価システム。
【請求項12】
飛来する対象物に対する被験者のスイング特性をコンピュータに評価させるための評価プログラムであって、
前記評価プログラムは、前記コンピュータに、
前記被験者が前記対象物に対して打球具をスイングした場合に、前記打球具に取り付けられた第1センサによって検出されたセンサデータに基づいて、前記対象物の運動特性に対応するスイング情報を算出するステップと、
前記対象物の運動特性に少なくとも基づいて、複数の前記スイング情報を複数のグループに分類するステップと、
前記複数のグループの各々について、当該グループに属する1以上のスイング情報に基づいて、当該グループにおける代表スイング情報を抽出するステップと、
各グループの前記代表スイング情報に基づいて、前記被験者のスイング特性を評価するステップとを実行させ、
前記対象物の運動特性は、前記対象物のコースを含む、評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被験者のスイング特性を評価するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
野球やソフトボールのバット等の打球具を用いて行なうスポーツにおいて、プレーヤーが打球具をスイングする能力は、試合などを有利に進める上で重要な指標である。そのため、プレーヤーのスイングの評価が適切に行なわれることによって、プレーヤーの技量の向上や打球具の研究開発にも寄与することが期待される。
【0003】
特開2015-123304号公報(特許文献1)は、打撃具のスイングを評価するスイング評価方法を開示している。スイング評価方法は、スイングの目標方向に対する打撃具の速度である目標方向速度を測定する目標方向速度測定工程と、スイング中の打撃具の速度を継続的に記録した履歴速度を測定する履歴速度測定工程と、目標方向速度と、履歴速度とに基づいて、スイングを評価する評価工程とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-123304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プレーヤーは、競技中においては、自身に対して飛来してくる様々な種類(例えば、球種、コース等)のボールを適切に打撃する必要がある。したがって、プレーヤーのスイング特性を適切に評価するためには、どのような種類のボールに対してプレーヤーがどのようにスイングしているのかを適切に評価することが求められる。特許文献1では、スイングの目標方向と打撃具の速度との関係を評価することを検討しているが、上記ニーズに対する技術を何ら教示ないし示唆していない。
【0006】
本開示のある局面における目的は、飛来する対象物に対する被験者のスイング特性をより精度よく評価することが可能な評価方法、評価システム、および評価プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある実施の形態に従うと、飛来する対象物に対する被験者のスイング特性を評価するための評価方法が提供される。評価方法は、被験者が対象物に対して打球具をスイングした場合に、打球具または被験者の手甲に取り付けられた第1センサ、および被験者の腰部に取り付けられた第2センサのうちの少なくとも一方によって検出されたセンサデータに基づいて、対象物の運動特性に対応するスイング情報を算出するステップと、対象物の運動特性に少なくとも基づいて、複数のスイング情報を複数のグループに分類するステップと、複数のグループの各々について、当該グループに属する1以上のスイング情報に基づいて、当該グループにおける代表スイング情報を抽出するステップと、各グループの代表スイング情報に基づいて、被験者のスイング特性を評価するステップとを含む。
【0008】
好ましくは、算出するステップは、第1センサにより検出されたセンサデータに基づいて、スイング情報として、スイング時間、スイング速度、インパクト時のスイング加速度、インパクト時の回転速度、スイング回転半径、打球具のヘッド角度、およびスイング軌道のうちの少なくとも1つを算出することを含む。
【0009】
好ましくは、算出するステップは、第2センサにより検出されたセンサデータに基づいて、スイング情報として、被験者の体軸まわりの最大角速度を算出することを含む。
【0010】
好ましくは、対象物の運動特性は、対象物の速度、球種およびコースのうちの少なくとも1つを含む。
【0011】
好ましくは、分類するステップは、対象物の運動特性と、対象物の運動特性が被験者に事前に通知されているか否かの第1条件とに基づいて、複数のスイング情報を複数のグループに分類することを含む。
【0012】
好ましくは、分類するステップは、k回目(kは2以上の整数)の対象物の運動特性と、(k-n)回目(nは1以上k未満の整数)から(k-1)回目までの対象物の運動特性がk回目の対象物の運動特性と同一であるか否かの第2条件とに基づいて、複数のスイング情報を複数のグループに分類することを含む。(k-n)回目から(k-1)回目の各々の対象物の運動特性は同一である。
【0013】
好ましくは、対象物の運動特性は、対象物を観察した観察者によって定められる。
好ましくは、対象物の運動特性は、対象物に内蔵された第3センサにより検出されたセンサデータに基づいて定められる、または、対象物を撮像した撮像画像に基づいて定められる、または、対象物をレーダーによってトラッキングすることにより得られたデータに基づいて定められる。
【0014】
好ましくは、グループにおける代表スイング情報は、グループに属する1以上のスイング情報の平均値、中央値または分散である。
【0015】
好ましくは、算出するステップは、被験者が仮想現実環境下で仮想現実上の対象物に対して打球具をスイングした場合のスイング情報を算出することを含む。
【0016】
好ましくは、評価するステップは、複数のグループのうちの第1グループの代表スイング情報と、複数のグループのうちの第2グループの代表スイング情報との比較結果に基づいて、被験者のスイング特性を評価することを含む。被験者のスイング特性の評価結果から導き出されるアドバイスを出力するステップをさらに含む。
【0017】
他の実施の形態に従うと、飛来する対象物に対する被験者のスイング特性を評価するための評価システムが提供される。評価システムは、被験者が対象物に対して打球具をスイングした場合に、打球具または被験者の手甲に取り付けられた第1センサ、および被験者の腰部に取り付けられた第2センサのうちの少なくとも一方によって検出されたセンサデータに基づいて、対象物の運動特性に対応するスイング情報を算出するスイング情報算出部と、対象物の運動特性に少なくとも基づいて、複数のスイング情報を複数のグループに分類する分類部と、複数のグループの各々について、当該グループに属する1以上のスイング情報に基づいて、当該グループにおける代表スイング情報を抽出する抽出部と、各グループの代表スイング情報に基づいて、被験者のスイング特性を評価する評価部とを備える。
【0018】
さらに他の実施の形態に従うと、飛来する対象物に対する被験者のスイング特性をコンピュータに評価させるための評価プログラムが提供される。評価プログラムは、コンピュータに、被験者が対象物に対して打球具をスイングした場合に、打球具または被験者の手甲に取り付けられた第1センサ、および被験者の腰部に取り付けられた第2センサのうちの少なくとも一方によって検出されたセンサデータに基づいて、対象物の運動特性に対応するスイング情報を算出するステップと、対象物の運動特性に少なくとも基づいて、複数のスイング情報を複数のグループに分類するステップと、複数のグループの各々について、当該グループに属する1以上のスイング情報に基づいて、当該グループにおける代表スイング情報を抽出するステップと、各グループの代表スイング情報に基づいて、被験者のスイング特性を評価するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によると、飛来する対象物に対する被験者のスイング特性をより精度よく評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施の形態に従う評価システムの全体構成を説明するための図である。
図2】本実施の形態に従う評価システムの動作概要を説明するためのフローチャートである。
図3】本実施の形態に従う評価装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】本実施の形態に従うセンサ装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5】実施例1に従うスイング情報のテーブルを示す図である。
図6】実施例1に従う被験者のスイング特性を説明するための図である。
図7】実施例1に従う代表スイング情報のテーブルを示す図である。
図8】実施例2に従う被験者のスイング特性を説明するための図である。
図9】実施例3に従う被験者のスイング特性を説明するための図である。
図10】実施例4に従う被験者のスイング特性を説明するための図である。
図11】ボールの運動特性のラベリング方式の一例を示す図である。
図12】ボールの球種およびボールパラメータの関係を示す図である。
図13】本実施の形態の変形例に従う評価システムの全体構成を説明するための図である。
図14】本実施の形態に従う評価装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0022】
<システムの構成>
図1は、本実施の形態に従う評価システム1000の全体構成を説明するための図である。図1を参照して、評価システム1000は、飛来する対象物(例えば、ボール)に対する被験者2のスイング特性を評価するためのシステムである。具体的には、評価システム1000は、評価装置10と、センサ装置20,25とを含む。
【0023】
本実施の形態では、「打球具」として野球、ソフトボールなどで用いられるバット80を使用し、被験者2が右利きのバッターであるとする。また、飛来するボール30に対して被験者2がバット80をスイングする場面を想定する。バット80は、被験者2自身が用意したものや他の者が用意したものなど、いずれのバットであってもよい。
【0024】
評価装置10は、ラップトップ型のPC(personal Computer)で構成される。ただし、評価装置10は、種類を問わず任意の装置として実現できる。例えば、評価装置10は、スマートフォン、タブレット端末、デスクトップ型のPC等の機器であってもよい。
【0025】
評価装置10は、無線通信方式によりセンサ装置20,25と通信する。例えば、無線通信方式としては、BLE(Bluetooth(登録商標) low energy)、Bluetooth(登録商標)、無線LAN(local area network)等が採用される。なお、評価装置10は、USB(Universal Serial Bus)などの有線通信を利用してセンサ装置20,25と通信可能に構成されていてもよい。
【0026】
センサ装置20は、互いに直交する3軸(図1中のx1軸,y1軸,z1軸)まわりの角速度を検出可能な角速度センサと、互いに直交する3軸(図1中のx1軸,y1軸,z1軸)方向の加速度を検出可能な加速度センサとを含む。
【0027】
センサ装置20は、自装置の加速度センサおよび角速度センサがバット振動の影響を受けにくいように、バット80のグリップエンド部に取り付けられる。センサ装置20は、バット80のスイング中にも動かないように強固にグリップエンド部に固定される。好ましくは、センサ装置20に含まれる加速度センサは、バット80の長軸回りの回転による遠心加速度の影響を除外するため、バット80の長軸上に配置される。ここで、センサ座標系におけるz1軸はバット長軸とし、x1軸およびy1軸はそれぞれ任意に設定可能とする。
【0028】
センサ装置25は、互いに直交する3軸(図1中のx2軸,y2軸,z2軸)まわりの角速度を計測可能な角速度センサを含む。なお、センサ装置25は、互いに直交する3軸(図1中のx2軸,y2軸,z2軸)方向の加速度を計測可能な加速度センサを含んでいてもよい。
【0029】
センサ装置25は、角速度センサ(および加速度センサ)における上記3軸のうちの1つがバッターの体軸方向(図1中のy2軸:腰部から頭部方向に延びる軸)に向くように、腰部取付部材(図示しない)を介して被験者2の腰部に取り付けられる。例えば、センサ座標系におけるz2軸はバッターのスイング方向に延びる軸に設定され、x2軸はy2軸およびz2軸の垂直方向に延びる軸に設定される。ここで、スイング方向とは、ボールが打ち出される方向(打球方向)である。
【0030】
絶対座標系におけるZ軸は鉛直方向とし、X軸およびY軸はそれぞれ任意に設定される。
【0031】
<システムの動作概要>
図2は、本実施の形態に従う評価システム1000の動作概要を説明するためのフローチャートである。
【0032】
図2を参照して、評価システム1000では、飛来するボール30に対して被験者2がバット80をスイングすると、評価装置10は、各センサ装置20,25からセンサデータを受信する(ステップS110)。具体的には、評価装置10は、センサ装置20からバット80における加速度情報(3軸方向の加速度)および角速度情報(3軸方向の角速度)を受信し、センサ装置25から被験者2の腰部における角速度情報(3軸方向の角速度)を受信する。典型的には、ボール30は、予め設定した投球条件に従ってピッチングマシンにより被験者2に対して放たれる。
【0033】
センサ装置20は、サンプリング周期(例えば、1ms)ごとにセンサ座標系(すなわち、ローカル座標系)における角速度情報および加速度情報を検出し、当該検出した角速度情報および加速度情報を評価装置10に送信する。センサ装置25は、サンプリング周期(例えば、1ms)ごとにセンサ座標系における角速度情報を検出し、当該検出した角速度情報を評価装置10に送信する。
【0034】
評価装置10は、センサ装置20,25の各々から受信したセンサデータに基づいて、スイング情報を算出する(ステップS120)。具体的には、評価装置10は、センサ装置20から送信された時系列の加速度情報および角速度情報に基づいて、スイング情報として、スイング時間、スイング速度、インパクト加速度、回転速度、スイング半径、ヘッド角度およびスイング軌道を算出する。評価装置10は、センサ装置25から送信された時系列の角速度情報に基づいて、スイング情報として、被験者2の腰部の体軸まわりの最大角速度を算出する。
【0035】
評価装置10は、ステップS110,S120の処理を実行することによって、被験者2がボール30に対してバット80をスイングした場合のスイング情報を算出する。より具体的には、当該算出されるスイング情報は、飛来したボール30の運動特性に対応するスイング情報となる。例えば、飛来したボール30の球種がストレートであった場合、球種「ストレート」に対応するスイング情報が算出される。
【0036】
評価装置10は、所定回数分のスイング情報が算出されたか否かを判断する(ステップS130)。所定回数分のスイング情報が算出されていない場合には(ステップS130においてNO)、ステップS110,S120の処理を繰り返す。
【0037】
所定回数分のスイング情報が算出された場合には(ステップS130においてYES)、評価装置10は、ボール30の運動特性に基づいて、所定回数分のスイング情報を複数のグループに分類する(ステップS140)。例えば、評価装置10は、所定回数分のスイング情報のうち、球種「ストレート」に対応するスイング情報をグループGU1に分類し、球種「カーブ」に対応するスイング情報をグループGU2に分類する。
【0038】
評価装置10は、複数のグループの各々について、当該グループに属する1以上のスイング情報に基づいて、当該グループにおける代表スイング情報を抽出する(ステップS150)。例えば、評価装置10は、グループに属する1以上のスイング情報の平均値を当該グループの代表スイング情報として演算する。
【0039】
評価装置10は、各グループの代表スイング情報に基づいて、被験者のスイング特性を評価する(ステップS160)。例えば、評価装置10は、グループGU1の代表スイング情報と、グループGU2の代表スイング情報との比較結果に基づいて、被験者のスイング特性を評価する。例えば、グループGU1の代表スイング情報におけるスイング速度(球種「ストレート」における平均スイング速度)よりも、グループGU2の代表スイング情報におけるスイング速度(球種「カーブ」における平均スイング速度)の方が大きいとする。この場合、評価装置10は、被験者2が「ストレート」よりも「カーブ」の方がスイング速度が大きいというスイング特性を有していると評価できる。
【0040】
評価装置10は、被験者2のスイング特性の評価結果を出力する(ステップS170)。具体的には、評価装置10は、ディスプレイに当該評価結果を表示する。また、評価装置10は、当該推定結果から導き出されるアドバイスを出力してもよい。
【0041】
<ハードウェア構成>
(評価装置)
図3は、本実施の形態に従う評価装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。図3を参照して、評価装置10は、主たる構成要素として、プロセッサ102と、メモリ104と、入力装置106と、通信インターフェイス(I/F)108と、入出力インターフェイス(I/F)110と、ディスプレイ112とを含む。これらの各部は、互いにバスに接続される。
【0042】
プロセッサ102は、メモリ104に記憶された各種プログラムを読み出して実行することで、評価装置10の各部の動作を制御する。プロセッサ102は、典型的には、CPU(Central Processing Unit)あるいはMPU(Multi Processing Unit)といった演算処理部である。
【0043】
メモリ104は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read-Only Memory)、フラッシュメモリ等によって実現される。メモリ104は、プロセッサ102によって実行されるプログラム、またはプロセッサ102によって用いられるデータなどを記憶する。
【0044】
入力装置106は、評価装置10に対する操作入力を受け付ける。入力装置106は、例えば、キーボード、ボタン、マウスなどによって実現される。また、入力装置106は、タッチパネルとして実現されていてもよい。
【0045】
通信インターフェイス(I/F)108は、センサ装置20,25との間で各種データを送受信する。通信方式としては、例えば、BLE、Bluetooth(登録商標)、無線LANなどによる無線通信方式が用いられる。なお、通信方式として、USB等の有線通信方式を用いてもよい。
【0046】
入出力インターフェイス110は、外部装置との間で信号を通信する。典型的には、入出力インターフェイス110は、USB等の有線通信方式を用いて外部装置と通信する。
【0047】
ディスプレイ112は、プロセッサ102からの信号に基づいて、表示画面に画像、テキスト、その他の情報を表示する。
【0048】
(センサ装置)
図4は、本実施の形態に従うセンサ装置20のハードウェア構成を示すブロック図である。図4を参照して、センサ装置20は、主たる構成要素として、各種処理を実行するためのプロセッサ252と、プロセッサ252によって実行されるプログラム、データなどを格納するためのメモリ254と、3軸方向の加速度を検出可能な加速度センサ256と、3軸のそれぞれのまわりの角速度を検出可能な角速度センサ258と、評価装置10と通信するための通信インターフェイス(I/F)260と、センサ装置20の各種構成要素に電力を供給する蓄電池262とを含む。なお、センサ装置25は、センサ装置20と同様のハードウェア構成を有する。
【0049】
<評価方式>
スイング特性の評価方式の各種実施例について説明する。
【0050】
(実施例1)
図5は、実施例1に従うスイング情報のテーブル410を示す図である。テーブル410において、投球条件は、球種、球速、および通知条件の3つの条件を含む。球種「S」は球種がストレートであることを示し、球種「C」は球種がカーブであることを示している。また、球速は120km/hまたは90km/hの場合が示されている。
【0051】
通知条件「ノーマル」(テーブル410中の「N」に対応)は、どのような運動特性を有するボール30が飛来するのかを事前に被験者2に通知する条件を示している。通知条件「ランダム」(テーブル410中の「R]に対応)は、どのような運動特性を有するボール30が飛来するのかを事前に被験者2に通知しない条件を示している。
【0052】
例えば、行X1に対応する投球条件は、球種「ストレート」および球速「120km/h」を有するボール30が飛来することを事前に被験者2に通知する条件である。一方、行X2に対応する投球条件は、球種「カーブ」および球速「90km/h」を有するボール30が飛来することを事前に被験者2に通知しない条件である。
【0053】
テーブル410には、各投球条件に対応するスイング情報が示されている。例えば、行X1に対応する投球条件のときのスイング情報は、スイング時間「0.121(s)」、スイング速度「117.5(km/h)」、インパクト加速度「153(m/s)」、回転速度「1.60(rps)」、スイング半径「0.11(m)」、ヘッド角度「-32.5(deg)」、およびスイング軌道「-1.4(deg)」を含む。
【0054】
スイング時間は、スイング開始時からインパクト時までの時間である。スイング速度は、スイング中のヘッドスピードの最大速度である。インパクト加速度は、インパクト時の瞬間的なスイング加速度である。回転速度は、インパクト時でのバット80の順方向の(z1軸まわりの)回転速度である。スイング半径は、スイングの回転半径であり、バット80の回転中心がグリップエンドからどれだけバット80のヘッド側方向に位置しているのかを示している。ヘッド角度は、インパクト時のバット80のヘッドの下がり具合(角度)を示している。例えば、ヘッドが上がっている場合にはヘッド角度は正の値となり、ヘッドが下がっている場合にはヘッド角度は負の値となる。スイング軌道は、インパクト時におけるバット80の移動方向(アッパー方向、あるいはダウン方向)を示している。例えば、バット80の移動方向がアッパー方向である場合には、スイング軌道は正の値となり、バット80の移動方向がダウン方向である場合には、スイング軌道は負の値となる。
【0055】
テーブル410に示すスイング情報は、バット80に取り付けられたセンサ装置20によって検出された時系列の加速度情報および角速度情報を、公知のスイング解析アプリケーションプログラムを用いて解析することにより算出される。
【0056】
また、打撃結果「OK」は、飛来するボール30をバット80で適切に打撃できた場合を示しており、打撃結果「NG」は、ボール30を適切に打撃できなかった場合を示している。典型的には、打撃結果は、人(例えば、被験者2のスイングを観察している観察者)によって判断される。なお、打撃されたボール30の飛距離等を公知の測定装置により測定した測定結果に基づいて、打撃結果を客観的に判断する構成であってもよい。
【0057】
被験者2は、各投球条件に従うボール30を打撃するためにバット80をスイングする。例えば、ある投球条件に従うボール30に対して被験者2がスイングしたときに、評価装置10は、センサ装置20からセンサデータ(すなわち、時系列の加速度情報および角速度情報)を取得して、センサデータに基づいてスイング情報を算出する。また、そのときの打撃結果が人によって判断され、当該打撃結果が評価装置10に対して入力される。評価装置10は、当該投球条件と、算出したスイング情報と、打撃結果とを関連付けてメモリ104に記憶する。これを繰り返すことにより、テーブル410が得られる。
【0058】
図6は、実施例1に従う被験者のスイング特性を説明するための図である。具体的には、図6(a)および図6(b)は、それぞれ被験者2のスイング時間およびスイング速度を示している。図6(c)および図6(d)は、それぞれ他の被験者Uのスイング時間およびスイング速度を示している。図6(e)および図6(f)は、それぞれ被験者Tのスイング時間およびスイング速度を示している。
【0059】
評価装置10は、テーブル410を参照して、ボール30の運動特性に基づいて、複数のスイング情報を複数のグループに分類する。図6の例では、評価装置10は、ボール30の球種(ストレートまたはカーブ)と、通知条件とに基づいて、複数のスイング情報を複数のグループに分類する。詳細には、評価装置10は、テーブル410に示す複数のスイング情報を、通知条件「ノーマル」および球種「カーブ」に対応するスイング情報を含むグループA1と、通知条件「ランダム」および球種「カーブ」に対応するスイング情報を含むグループA2と、通知条件「ノーマル」および球種「ストレート」に対応するスイング情報を含むグループA3と、通知条件「ランダム」および球種「ストレート」に対応するスイング情報を含むグループA4とに分類する。
【0060】
図6(a)には、グループA1に属する各スイング情報に含まれるスイング時間のグラフ501と、グループA2に属する各スイング情報に含まれるスイング時間のグラフ502と、グループA3に属する各スイング情報に含まれるスイング時間のグラフ503と、グループA4に属する各スイング情報に含まれるスイング時間のグラフ504とが示されている。図6(b)についても同様に、グループA1~A4に属するスイング速度のグラフ511~514が示されている。
【0061】
ここで、評価装置10は、各グループA1~A4について、当該グループの代表スイング情報として、当該グループに属する各スイング情報の平均値を算出する。例えば、グループA1の代表スイング時間は、グループA1に属する各スイング時間の平均値であり、グループA1の代表スイング速度は、グループA1に属する各スイング速度の平均値である。なお、各グループの代表スイング情報は、当該グループに属する各スイング情報の中央値であってもよいし、当該グループに属する各スイング情報の分散であってもよい。
【0062】
評価装置10は、グループA1~A4の各代表スイング時間(または、代表スイング速度)を比較することによって、被験者2のスイング特性を評価する。図6(a)の場合、グラフ501に対応する各スイング時間の平均値よりも、グラフ503に対応する各スイング時間の平均値の方が高く、グラフ502に対応する各スイング時間の平均値よりも、グラフ504に対応する各スイング時間の平均値の方が大きい。そのため、例えば、評価装置10は、被験者2が、球種「カーブ」の場合のスイング時間よりも、球種「ストレート」の場合のスイング時間の方が長いというスイング特性を有すると評価する。図6(b)の場合には、例えば、評価装置10は、被験者2が、球種「カーブ」の場合のスイング速度よりも、球種「ストレート」の場合のスイング速度の方が大きいというスイング特性を有すると評価する。
【0063】
図6(c)の場合には、例えば、評価装置10は、被験者Uが、通知条件「ノーマル」の場合についてのみ、球種「カーブ」に対応するスイング時間よりも球種「ストレート」に対応するスイング時間の方が長いというスイング特性を有すると評価する。図6(d)の場合には、例えば、評価装置10は、被験者Uが、通知条件「ノーマル」の場合についてのみ、球種「カーブ」に対応するスイング速度よりも球種「ストレート」に対応するスイング速度の方が大きいというスイング特性を有すると評価する。
【0064】
図6(e)の場合には、例えば、評価装置10は、被験者Tが、いずれの球種においても、通知条件「ノーマル」の場合のスイング時間よりも、通知条件「ランダム」の場合のスイング時間の方が長いというスイング特性を有すると評価する。また、評価装置10は、被験者Tが、球種「カーブ」の場合のスイング時間よりも、球種「ストレート」の場合のスイング時間の方が長いというスイング特性も有すると評価する。
【0065】
図6(f)の場合には、例えば、評価装置10は、被験者Tが、いずれの球種においても、通知条件「ノーマル」の場合のスイング速度よりも、通知条件「ランダム」の場合のスイング速度の方が低いというスイング特性を有すると評価する。また、評価装置10は、被験者Tが、球種「カーブ」の場合のスイング速度よりも、球種「ストレート」の場合のスイング速度の方が大きいというスイング特性も有すると評価する。
【0066】
このように、評価装置10は、グループA1~A4の各代表スイング情報を比較することによって、被験者2のスイング特性を評価することができる。さらに、評価装置10は、スイング特性の評価結果と、打撃結果とに基づいて、被験者2のスイングに対するアドバイス情報を生成することもできる。
【0067】
図7は、実施例1に従う代表スイング情報のテーブル420を示す図である。図7を参照して、評価装置10は、テーブル410の各スイング情報に基づいて、テーブル420を生成し、メモリ104に記憶する。具体的には、評価装置10は、ボール30の運動特性と打撃結果とに基づいて、テーブル410に示す複数のスイング情報を複数のグループに分類する。
【0068】
例えば、評価装置10は、テーブル410に示す複数のスイング情報を、球種「ストレート」および打撃結果「OK」に対応するスイング情報を含むグループB1と、球種「ストレート」および打撃結果「NG」に対応するスイング情報を含むグループB2と、球種「カーブ」および打撃結果「OK」に対応するスイング情報を含むグループB3と、球種「カーブ」および打撃結果「NG」に対応するスイング情報を含むグループB4とに分類する。評価装置10は、各グループB1~B4について、当該グループの代表スイング情報として、当該グループに属する各スイング情報の平均値を算出する。行Xa1~行Xa4のスイング情報は、それぞれグループB1~B4の代表スイング情報に対応している。
【0069】
テーブル420のスイング軌道に着目すると、いずれの球種でも、打撃結果「NG」の場合よりも打撃結果「OK」の場合の方がスイング軌道が大きい。スイング軌道の値が大きいほど、スイング軌道がアッパー方向のスイングであることを示している。そのため、被験者2は、アッパースイングのときに適切にボール30を打撃できている。
【0070】
また、テーブル420の球種「カーブ」の場合のヘッド角度に着目すると、打撃結果「OK」の場合よりも打撃結果「NG」の場合の方がヘッド角度が小さい。ヘッド角度の値が小さいほど、バット80のヘッドが下がっていることを示している。そのため、被験者2は、球種「カーブ」のときにバット80のヘッドが下がると適切にボール30を打撃できていない。
【0071】
評価装置10は、打撃結果「OK」の場合の被験者2のスイング特性と、打撃結果「NG」の場合の被験者2のスイング特性との比較結果に基づいて、被験者2のスイングを改善するためのアドバイス情報を生成する。例えば、評価装置10は、『もう少しアッパースイングを心がけましょう。カーブを打つときには、特にヘッドが下がらないように意識しましょう。』とのアドバイス情報を生成し、ディスプレイ112に表示する。
【0072】
(実施例2)
図8は、実施例2に従う被験者のスイング特性を説明するための図である。具体的には、図8(a)は、被験者2のスイング情報を示すテーブル430を示している。図8(b)は、被験者Uのスイング情報を示すテーブル435を示している。
【0073】
実施例2では、被験者2および被験者Uは、インコースまたはアウトコースに置かれたティー上のボール30を打撃する。この場合、被験者2および被験者Uは、自身に対するボール30の相対的位置が制約された状態で、インコースまたはアウトコースに位置するボール30に対してスイングする。そのため、ボール30が静止していても、実際にインコースまたはアウトコースにボール30が飛来したときのスイングを模擬できる。ただし、被験者2および被験者Uは、予め投球コース(インコースまたはアウトコース)が設定されたピッチングマシンから放たれたボール30に対してスイングしてもよいし、人によってインコースまたはアウトコースにトスされたボール30に対してスイングしてもよい。
【0074】
図8のテーブル430において、ボール30の運動特性としてのコース「in」は、投球コースがインコースであることを示している。コース「out」は、投球コースがアウトコースであることを示している。
【0075】
テーブル430のスイング情報は、センサ装置20からのセンサデータに基づいて算出される各パラメータ(すなわち、スイング時間、スイング速度、インパクト加速度、回転速度、スイング半径、ヘッド角度、スイング軌道)と、センサ装置25からのセンサデータに基づいて算出されるパラメータ(すなわち、腰部角速度)とを含む。腰部角速度は、被験者2の体軸まわり(すなわち、図1中のy2軸まわり)の最大角速度である。
【0076】
テーブル430の行Xinには、インコースに対応する各スイング情報の平均値が示されており、行Xoutには、アウトコースに対応する各スイング情報の平均値が示されている。
【0077】
評価装置10は、ボール30のコースに基づいて、行Xb1~Xbnに対応する複数のスイング情報を複数のグループに分類する。具体的には、評価装置10は、当該複数のスイング情報を、コース「in」に対応するスイング情報を含むグループC1と、コース「out」に対応するスイング情報を含むグループC2とに分類する。評価装置10は、各グループC1,C2について、当該グループの代表スイング情報として、当該グループに属する各スイング情報の平均値を算出する。行Xinのスイング情報はグループC1の代表スイング情報を示しており、行XoutはグループC2の代表スイング情報を示している。
【0078】
評価装置10は、グループC1,C2の各代表スイング情報を比較することによって、被験者2のスイング特性を評価する。図8(a)の場合、例えば、評価装置10は、インコースの場合の腰部角速度よりも、アウトコースの場合の腰部角速度の方が大きいというスイング特性を有すると評価する。したがって、被験者2は、ボール30がインコースに飛来した場合には、スイング時の身体の回転速度が高くなる傾向がある。
【0079】
図8(b)の場合、例えば、評価装置10は、インコースでのスイング軌道よりも、アウトコースでのスイング軌道の方が大きいというスイング特性を有すると評価する。したがって、被験者Uは、ボール30がアウトコースに飛来した場合には、アッパースイングになる傾向がある。
【0080】
上記では、評価装置10は、スイング情報の各パラメータのうち、腰部角速度およびスイング軌道に着目して被験者2のスイング特性を評価する構成について説明したが、当該構成に限られない。評価装置10は、他のパラメータに基づいて、被験者2のスイング特性を評価してもよい。
【0081】
(実施例3)
図9は、実施例3に従う被験者のスイング特性を説明するための図である。具体的には、図9に示すテーブル440は、実施例3に従って被験者2がスイングした場合の代表スイング情報を示している。
【0082】
実施例3では、飛来するボール30の運動特性を被験者2に事前通知せずに(すなわち、通知条件「ランダム」で)、ボール30を打撃してもらう。これを、m回(mは2以上の整数)繰り返し、評価装置10はm回分のスイング情報を取得する。評価装置10は、k回目(kは2以上の整数であり、k≦m)のボール30の運動特性(例えば、球種)と、(k-1)回目およびk回目のボール30の運動特性が同一であるか否かを示す履歴条件とに基づいて、(m-1)回分のスイング情報を複数のグループに分類する。
【0083】
具体的には、m回のうちの(k-1)回目に飛来したボール30の球種が「ストレート」であり、かつk回目に飛来したボール30の球種が「ストレート」であったとする。この場合、評価装置10は、k回目のスイング情報を条件「SS」に対応するスイング情報としてグループD1に分類する。(k-1)回目に飛来したボール30の球種が「カーブ」であり、かつk回目に飛来したボール30の球種が「ストレート」であった場合、評価装置10は、k回目のスイング情報を条件「CS」に対応するスイング情報としてグループD2に分類する。
【0084】
(k-1)回目に飛来したボール30の球種が「ストレート」であり、かつk回目に飛来したボール30の球種が「カーブ」であった場合、評価装置10は、k回目のスイング情報を条件「SC」に対応するスイング情報としてグループD3に分類する。(k-1)回目に飛来したボール30の球種が「カーブ」であり、かつk回目に飛来したボール30の球種が「カーブ」であった場合、評価装置10は、k回目のスイング情報を条件「CC」に対応するスイング情報としてグループD4に分類する。
【0085】
評価装置10は、各グループD1~D4について、当該グループの代表スイング情報として、当該グループに属する各スイング情報の平均値を算出する。行Xc1~行Xc4のスイング情報は、それぞれグループD1~D4の代表スイング情報に対応している。
【0086】
テーブル440において、今回の球種が「ストレート」の場合のスイング速度に着目する。前回と今回とで球種が異なる場合(すなわち、条件「CS」の場合)のスイング速度は、前回と今回とで球種が同じ場合(すなわち、条件「SS」の場合)のスイング速度よりも低い。次に、今回の球種が「カーブ」の場合のスイング速度に着目する。前回と今回とで球種が異なる場合(すなわち、条件「SC」の場合)のスイング速度は、前回と今回とで球種が同じ場合(すなわち、条件「CC」の場合)のスイング速度よりも低い。したがって、評価装置10は、例えば、被験者2が、前回と今回とで球種が変化した場合にスイング速度が低下するというスイング特性を有すると評価する。
【0087】
また、被験者2は球種の変化への対応能力に課題があると考えられる。そこで、評価装置10は、当該スイング特性の評価結果に基づいて、例えば、『球種がランダムに変化する状況での打撃トレーニングが必要です。』とのアドバイスをディスプレイ112に表示する。
【0088】
上記では、評価装置10は、スイング速度に着目して被験者2のスイング特性を評価する構成について説明したが、当該構成に限られない。評価装置10は、他のパラメータに基づいて、被験者2のスイング特性を評価してもよい。
【0089】
また、上記において、評価装置10は、(k-n)回目~(k-1)回目のボール30の運動特性がk回目のボール30の運動特性と同一であるか否かを示す履歴条件と、k回目のボール30の運動特性とに基づいて、複数のスイング情報を複数のグループに分類してもよい。nは1以上k未満(1≦n<k)の整数である。なお、(k-n)回目~(k-1)回目のボール30の各運動特性は同一であるものとする。例えば、nが“2”、kが“3”である場合について説明する。
【0090】
具体的には、(k-n)回目(すなわち、1回目)および(k-1)回目(すなわち、2回目)に飛来したボール30の球種が「ストレート」であり、かつk回目(すなわち、3回目)に飛来したボール30の球種が「ストレート」であったとする。この場合、評価装置10は、3回目のスイング情報を条件「SSS」に対応するスイング情報としてグループDa1に分類する。1回目および2回目に飛来したボール30の球種が「カーブ」であり、かつ3回目に飛来したボール30の球種が「ストレート」であった場合、評価装置10は、3回目のスイング情報を条件「CCS」に対応するスイング情報としてグループDa2に分類する。
【0091】
1回目および2回目に飛来したボール30の球種が「ストレート」であり、かつ3回目に飛来したボール30の球種が「カーブ」であった場合、評価装置10は、3回目のスイング情報を条件「SSC」に対応するスイング情報としてグループDa3に分類する。1回目および2回目に飛来したボール30の球種が「カーブ」であり、かつ3回目に飛来したボール30の球種が「カーブ」であった場合、評価装置10は、3回目のスイング情報を条件「CCC」に対応するスイング情報としてグループDa4に分類する。
【0092】
(実施例4)
図10は、実施例4に従う被験者のスイング特性を説明するための図である。具体的には、図10に示すテーブル450は、テーブル410の各スイング情報に基づいて生成される。具体的には、評価装置10は、ボール30の運動特性と通知条件とに基づいて、テーブル410に示す複数のスイング情報を複数のグループに分類する。
【0093】
詳細には、評価装置10は、テーブル410に示す複数のスイング情報を、球種「カーブ」および通知条件「ノーマル」に対応するスイング情報を含むグループE1と、球種「カーブ」および通知条件「ランダム」に対応するスイング情報を含むグループE2と、球種「ストレート」および通知条件「ノーマル」に対応するスイング情報を含むグループE3と、球種「ストレート」および通知条件「ランダム」に対応するスイング情報を含むグループE4とに分類する。
【0094】
テーブル450における条件「N_C」に対応するスイング情報はグループE1に分類され、条件「R_C」に対応するスイング情報はグループE2に分類され、条件「N_S」に対応するスイング情報はグループE3に分類され、条件「R_S」に対応するスイング情報はグループE4に分類される。評価装置10は、各グループE1~E4について、当該グループの代表スイング情報として、当該グループに属する各スイング情報の平均値を算出する。行Xd1~行Xd4のスイング情報は、それぞれグループE1~E4の代表スイング情報に対応している。
【0095】
テーブル450のスイング半径に着目すると、球種が「カーブ」である場合(すなわち、条件「N_C」および「R_C」)のスイング半径は、球種が「ストレート」である場合(すなわち、条件「N_S」および「R_S」)のスイング半径よりも大きい。したがって、評価装置10は、例えば、被験者2が、球種が「カーブ」の場合のスイング半径が、球種が「ストレート」の場合のスイング半径よりも大きいというスイング特性を有すると評価する。
【0096】
スイング半径が大きいほど、スイングがコンパクトであることを示している。そのため、評価装置10は、当該スイング特性の評価結果に基づいて、例えば、『ストレートを打つときにはよりコンパクトなスイングを心がけましょう。』とのアドバイスをディスプレイ112に表示する。
【0097】
<ボールの運動特性>
ボール30の運動特性(例えば、球種、球速、および投球コース)をピッチングマシンに事前に設定した場合には、評価装置10は、ピッチングマシンから放たれたボール30の運動特性は、事前に設定された運動特性と一致するとみなすこともできる。しかし、ピッチングマシンに事前に設定した運動特性と、実際に飛来したボール30の運動特性とは必ずしも一致しない場合もある。また、人により投じられたボール30をスイングする場合には、そもそもボール30の運動特性を設定することはできない。
【0098】
したがって、ボール30の運動特性は、実際に飛来したボール30を観察した熟練者(例えば、審判員等)により決定されてもよい。図11は、ボール30の運動特性のラベリング方式の一例を示す図である。
【0099】
図11を参照して、熟練者が実際に飛来したボール30を観察した結果、球種が「ストレート」であり、コースが「インコース」であり、高さが「センター」である場合には、当該ボール30の運動特性はラベル「1」にラベリングされる。ラベル「2」~「5」についても同様である。
【0100】
なお、実際に飛来するボール30を高精度なカメラで撮像し、当該撮像された撮像画像に基づいてボール30の運動特性が定められてもよい。この場合、撮像画像は、静止画および動画を含む。熟練者が撮像画像を確認して図11に示すラベリングを行なってもよいし、評価装置10が公知の画像解析プログラムを利用して撮像画像を解析することによって、当該ラベリングを行なってもよい。
【0101】
他の例として、公知のレーダー弾道測定器を用いて、実際に飛来するボール30をレーダーでトラッキングすることによって得られたデータに基づいて、ボールの運動特性を特定する構成であってもよい。レーダー弾道測定器は、ボールの球速、回転速度、ボールの変化の大きさ、ボールの回転軸、ボール軌道等を測定できる機器である。そのため、レーダー弾道測定器で得られたデータに基づいて、飛来したボール30の球速、球種、およびコースを特定することができる。
【0102】
他の例として、センサ機器が内蔵されたボールから得られた情報を用いて、ボールの運動特性を特定する構成であってもよい。図12は、ボールの球種およびボールパラメータの関係を示す図である。ここでは、評価装置10とボールに内蔵されたセンサ機器とが通信可能であり、評価装置10は、当該センサ機器からのセンサデータを受信するものとする。
【0103】
図12を参照して、テーブル470に示すボールパラメータは、ボールに内蔵されたセンサ機器から取得されるセンサデータを解析することで算出される。具体的には、評価装置10は、通信インターフェイス108を介して、センサ機器から受信したセンサデータ(例えば、時系列の加速度情報、角速度情報および地磁気情報)を受信する。評価装置10は、時系列の加速度情報、角速度情報および地磁気情報を公知のボール解析アプリケーションプログラムを用いて解析することにより、テーブル470に示すボールパラメータを算出する。ボールパラメータは、球速、回転速度、方位角、仰角、水平変化量、および上下変化量を含む。なお、回転速度は、リリース直後のボールの単位時間当たりの回転数である。方位角は、ボールの進行方向と同一の軸をロール軸としたときのヨー角であり、仰角は、ボールの進行方向と同一の軸をロール軸としたときのピッチ角である。水平変化量は、測定されたリリース直後の移動スピードのまま自由落下した際の到達位置と、回転によって生じる揚力を受けた際の到達位置との差の水平成分であり、上下変化量は、当該差の上下成分である。
【0104】
テーブル470によると、球種「ストレート」と「カーブ」とでは、方位角、仰角、水平変化量および上限変化量が大きく異なる。そのため、これらのボールパラメータに基づいて球種を特定することができる。
【0105】
例えば、球種ごとの各ボールパラメータを事前に用意して、各ボールパラメータをメモリ104に記憶しておく。評価装置10は、ボールに内蔵されたセンサ機器から受信したセンサデータを、公知のボール解析アプリケーションプログラムを用いて解析してボールパラメータを算出する。
【0106】
評価装置10は、メモリ104に記憶された球種ごとのボールパラメータと、実際に飛来したボールのボールパラメータとを比較することで、当該実際に飛来したボールの球種を特定できる。例えば、評価装置10は、各球種のボールパラメータのうち、実際に飛来したボールのボールパラメータと最も一致度が高いボールパラメータを特定する。評価装置10は、当該特定されたボールパラメータに対応する球種が、実際に飛来したボールの球種であると判定する。図12の構成によると、ボールの運動特性としての球種および球速を取得することができる。
【0107】
<変形例>
上述した実施の形態では、実際のボール30を利用して被験者2のスイング特性を評価する構成について説明した。変形例では、仮想現実上のボールを利用して被験者2のスイング特性を評価する構成について説明する。
【0108】
図13は、本実施の形態の変形例に従う評価システム1000Aの全体構成を説明するための図である。図13を参照して、評価システム1000Aは、評価装置10と、センサ装置20,25と、撮像システム35と、ヘッドマウントディスプレイ(以下、「HMD」とも称する。)40と、マーカ50とを含む。変形例では、店舗等に設けられたブース内で、被験者2がバット80をスイングする場面を想定する。
【0109】
評価装置10は、有線通信方式を利用して撮像システム35およびHMD40と通信する。例えば、評価装置10は、入出力インターフェイス110を介して、撮像システム35およびHMD40との間で信号を通信する。
【0110】
撮像システム35は、光学式モーションキャプチャシステムであり、バット80のヘッド部に取り付けられたマーカ50を撮像することにより、ヘッド部の位置情報および姿勢情報を取得する。具体的には、撮像システム35は、ブース内の上方に配置された複数(例えば、3つ)の赤外線カメラを含む。各赤外カメラにはレンズの周囲に赤外LED(light emitting diode)が設けられている。
【0111】
マーカ50として、表面に再帰性反射材が塗布された球状のものを用いることにより、赤外線カメラ方向に赤外光の再帰性反射が生じる。これにより、赤外線カメラで撮影した画像内のマーカ50の位置が取得できる。空間中の配置が既知である複数の赤外線カメラを用いることにより、各カメラ画像中のマーカ50の位置から、マーカ50の空間内での3次元的な位置が算出できる。また、バット80のヘッド部に3つ以上のマーカ50を配置してそれぞれのマーカ50の位置を取得することにより、ヘッド部の位置および姿勢が取得できる。
【0112】
撮像システム35により取得されたバット80のヘッド部の位置情報および姿勢情報は、評価装置10に送信される。撮像システム35としては、例えば、OptiTrack社提供のハードウェア、およびソフトウェア等が用いることができる。
【0113】
HMD40は、被験者2の頭部に装着され、動作中に被験者2に対して奥行きを持った仮想空間の3次元画像を被験者2に提供し得る。具体的には、HMD40は、モニタ42と、HMDセンサ44とを含む。
【0114】
モニタ42は、例えば、非透過型の表示装置として実現される。モニタ42は、被験者2の両目の前方に位置するようにHMD40の本体に配置されており、右目用の画像および左目用の画像をそれぞれ表示する。被験者2の各目がそれぞれの画像を視認すると、被験者2は、両目の視差に基づき当該画像を3次元の画像として認識し得る。これにより、HMD40を頭部に装着した被験者2は、実世界に近い感覚を仮想空間内の3次元映像として体験することができる。
【0115】
HMDセンサ44は、被験者2の頭部の位置および姿勢を検出する。HMDセンサ44は、角速度センサ、加速度センサ等によって、被験者2の頭部の絶対座標系における被験者2の頭部の位置および姿勢を検出し、その検出信号を評価装置10に出力する。HMDセンサ44は、HMD40と一体として設けられているため、HMD40が被験者2の頭部に装着されることによって、被験者2の頭部の動きを追跡して位置および姿勢を検出することができる。そして、その検出結果をHMD40が提示する仮想空間の3次元画像にフィードバックすることにより、被験者2の頭部の動きに応じた視点位置から見た3次元画像を被験者2に対して提示できる。このような構成を有するHMD40としては、例えば、HTC Vive(登録商標)、Oculus Rift(登録商標)等を用いることができる。
【0116】
モニタ42に提示される仮想現実環境下には、例えば、被験者2が扱うバット80の仮想オブジェクトである仮想バット、被験者2の対戦相手となる仮想投手、仮想投手から放たれる仮想ボール等が配置される。評価装置10は、投球直前情報として、仮想投手から放たれる仮想ボールの球種、球速、コース等を設定する。そして、HMD40を装着した被験者2は、仮想現実環境下で飛来する仮想ボールに対してバット80をスイングする。評価装置10は、当該スイングを行なった場合に、センサ装置20,25により検出されたセンサデータに基づいて、ボールの運動特性に対応するスイング情報を算出する。ボールの運動特性は、投球直前情報として事前に設定された、仮想投手から放たれる仮想ボールの球種、球速、コース等である。
【0117】
したがって、変形例によると、実際のボール30を利用する場合と同様に、ボールの運動特性に対応するスイング情報を取得できる。そのため、評価装置10は、取得された複数のスイング情報に基づいて上述した評価方式を適用することにより、被験者2のスイング特性を評価することができる。
【0118】
なお、上記の変形例では、HMDを装着した被験者が仮想現実環境下で仮想現実上のボールに対してスイングする構成について説明したが、当該構成に限られない。例えば、没入型の仮想現実システムを利用した仮想現実環境下で仮想現実上のボールに対してバット80をスイングする構成であってもよい。
【0119】
<機能構成>
図14は、本実施の形態に従う評価装置10の機能ブロック図である。図14を参照して、評価装置10は、主たる機能構成として、センサデータ取得部152と、スイング情報算出部154と、分類部156と、抽出部158と、評価部160と、出力部162とを含む。これらは、基本的には、評価装置10のプロセッサ102がメモリ104に格納されたプログラムを実行し、評価装置10の構成要素へ指令を与えることなどによって実現される。なお、これらの機能構成の一部または全部は、ハードウェアで実現されていてもよい。
【0120】
センサデータ取得部152は、センサ装置20,25の各々により検出されたセンサデータを取得する。具体的には、センサデータ取得部152は、バット80に取り付けられたセンサ装置20から加速度情報および角速度情報を受信し、被験者2の腰部に取り付けられたセンサ装置25から角速度情報を受信する。なお、ボール30の内部にセンサ機器が取り付けられている場合には、センサデータ取得部152は、当該センサ機器から加速度情報、角速度情報および地磁気情報を受信する。
【0121】
運動特性取得部153は、ボール30の運動特性を取得する。ボール30がピッチングマシンにより投じられる場合には、運動特性取得部153は、ピッチングマシンに設定された球速、球種、コースの入力を受け付けて、これらをボール30の運動特性として取得する。
【0122】
他の例として、実際に飛来したボール30を観察した観察者によって、ボール30の運動特性が定められる場合、運動特性取得部153は、当該熟練者によって決定された球種、コースの入力を受け付けることによりボール30の運動特性(この場合、球種、コース)を取得する。なお、ボール30の球速は、ピッチングマシンに設定された球速を採用してもよいし、スピードガンにより計測された値を用いてもよい。
【0123】
さらに他の例として、運動特性取得部153は、実際に飛来したボール30を撮像した撮像画像に基づいてボール30の運動特性を取得してもよい。具体的には、運動特性取得部153は、ボール30の撮像画像を画像解析することによりボール30の球種、コースを取得する。例えば、運動特性取得部153は、高精度なカメラで撮像されたボール30の撮像画像を、公知の画像解析プログラムを利用して解析することによって、ボール30の球種、コースを取得する。
【0124】
さらに他の例として、運動特性取得部153は、実際に飛来したボールに内蔵されたセンサ機器により検出されたセンサデータに基づいて、ボールの運動特性を取得してもよい。具体的には、運動特性取得部153は、当該センサ機器により検出された時系列の加速度情報、角速度情報および地磁気情報を公知のボール解析アプリケーションプログラムを用いて解析することにより、ボールパラメータ(例えば、球速、回転数、方位角、仰角、水平変化量および上限変化量)を算出する。運動特性取得部153は、算出したボールパラメータと、予めメモリ104に記憶されている各球種のボールパラメータとを比較して、各球種のボールパラメータのうち、算出したボールパラメータと最も一致度が高いボールパラメータを特定する。運動特性取得部153は、当該特定されたボールパラメータに対応する球種をボール30の球種であると判定する。
【0125】
スイング情報算出部154は、被験者2がボール30に対してバット80をスイングした場合に、センサ装置20および25のうちの少なくとも一方によって検出されたセンサデータに基づいて、ボール30の運動特性に対応するスイング情報を算出する。
【0126】
具体的には、スイング情報算出部154は、センサ装置20により検出されたセンサデータ(例えば、時系列の加速度情報および角速度情報)に基づいて、スイング情報として、スイング時間、スイング速度、インパクト加速度、回転速度、スイング半径、ヘッド角度およびスイング軌道のうちの少なくとも1つを算出する。これらのパラメータは、プロセッサ102がメモリ104に記憶された公知のスイング解析プログラムを実行することにより算出される。また、スイング情報算出部154は、センサ装置25により検出されたセンサデータ(例えば、時系列の角速度情報)に基づいて、スイング中における、被験者2の体軸まわりの最大角速度をスイング情報として算出する。
【0127】
なお、スイング情報算出部154は、HMD40を装着した被験者2が仮想現実環境下で仮想現実上のボール30に対してバット80をスイングした場合に、上記スイング情報を算出してもよい。
【0128】
分類部156は、ボール30の運動特性に少なくとも基づいて、複数のスイング情報を複数のグループに分類する。分類部156は、ボール30の運動特性(例えば、球速、球種、コース)に基づいて、球種「ストレート」に対応するスイング情報をグループGU1に分類し、球種「カーブ」に対応するスイング情報をグループGU2に分類する。また、分類部156は、コース「in」に対応するスイング情報をグループC1に分類し、球種「out」に対応するスイング情報をグループC2に分類する。
【0129】
また、分類部156は、ボール30の運動特性と、ボール30の運動特性が被験者2に事前に通知されているか否かの通知条件とに基づいて、複数のスイング情報を複数のグループに分類してもよい。例えば、図10で説明したように、分類部156は、通知条件「ノーマル」および「ランダム」と、球種「カーブ」および「ストレート」とに基づいて、複数のスイング情報をグループE1~E4に分類する。
【0130】
さらに、分類部156は、ボール30の運動特性と打撃結果とに基づいて、複数のスイング情報を複数のグループに分類してもよい。例えば、図7で説明したように、分類部156は、球種「カーブ」および「ストレート」と、打撃結果「OK」および「NG」とに基づいて、複数のスイング情報をグループB1~B4に分類する。
【0131】
さらに、分類部156は、今回(例えば、k回目)のボール30の運動特性と、前回(例えば、(k-1)回目)のボール30の運動特性および今回のボール30の運動特性が同一であるか否かを示す履歴条件とに基づいて、複数のスイング情報を複数のグループに分類してもよい。例えば、図9で説明したように、分類部156は、球種「カーブ」および「ストレート」と、球種が今回と前回とで同一か否かの条件とに基づいて、複数のスイング情報をグループD1~D4に分類する。
【0132】
抽出部158は、分類部156によって分類された複数のグループの各々について、当該グループに属する1以上のスイング情報に基づいて、当該グループにおける代表スイング情報を抽出する。具体的には、抽出部158は、各グループの代表スイング情報として、当該グループに属するスイング情報の平均値、中央値または分散を抽出する。
【0133】
評価部160は、各グループの代表スイング情報に基づいて、被験者2のスイング特性を評価する。具体的には、評価部160は、複数のグループのうちの第1グループの代表スイング情報と、複数のグループのうちの第2グループの代表スイング情報との比較結果に基づいて、被験者2のスイング特性を評価する。例えば、グループGU1の代表スイング情報に含まれるスイング速度(すなわち、球種「ストレート」における平均スイング速度)よりも、グループGU2の代表スイング情報に含まれるスイング速度(すなわち、球種「カーブ」における平均スイング速度)の方が大きいとする。この場合、評価部160は、被験者2が「ストレート」よりも「カーブ」の方がスイング速度が大きいというスイング特性を有していると評価する。
【0134】
出力部162は、スイング特性の評価結果を出力する。典型的には、出力部162は、スイング特性の評価結果をディスプレイ112に表示する。なお、出力部162は、当該評価結果を示す情報を他の外部装置へ送信してもよいし、音声出力してもよい。また、出力部162は、被験者2のスイング特性の評価結果から導き出されるアドバイスを出力してもよい。なお、アドバイスは、評価部160により生成される。
【0135】
<その他の実施の形態>
(1)上述した実施の形態では、打球具としてのバットをスイングする構成について説明したが、当該構成に限られない。被験者2が飛来する対象物(例えば、ボール30)に対して打球具をスイングする点において、例えば、野球、テニス、バドミントンなどのスポーツは共通している。そのため、打球具は、テニスまたはバドミントンで用いられるラケットであってもよい。
【0136】
(2)上述した実施の形態では、基本的には、センサ装置20およびセンサ装置25により検出された各センサデータに基づいて、スイング情報を算出する構成について説明した。ただし、センサ装置20により検出されたセンサデータのみに基づいて、スイング情報(例えば、スイング時間、スイング速度、インパクト加速度、回転速度、スイング半径、ヘッド角度およびスイング軌道)を算出する構成であってもよいし、センサ装置25により検出されたセンサデータのみに基づいて、スイング情報(被験者2の体軸まわりの最大角速度)を算出する構成であってもよい。
【0137】
(3)上述した実施の形態では、センサ装置20がバット80に取り付けられる構成について説明したが、センサ装置20は被験者の手甲に取り付けられる構成であってもよい。「手甲」部分とは、橈骨、尺骨を含む手首から五指の付け根までを含む手の甲部分である。例えば、センサ装置20は、角速度センサおよび加速度センサにおける3軸のうちの1つ(例えば、x1軸)が被験者2の掌の中心から中指方向に延びる軸に向くように、手甲取付部材を介して被験者2の手甲に取り付けられる。なお、z1軸は被験者2の掌の幅方向に延びる軸に設定され、y1軸は手甲に直交する方向に延びる軸(掌から手甲に延びる軸)に設定される。手甲取付部材は、センサ装置20を所定の方向に沿ってバッターの手甲に固定可能に構成される。これにより、センサ装置20は、角速度情報および加速度情報を検出する。
【0138】
(4)上述した実施の形態において、コンピュータを機能させて、上述のフローチャートで説明したような制御を実行させるプログラムを提供することもできる。このようなプログラムは、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、ROM、RAMおよびメモリカードなどの一時的でないコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、コンピュータに内蔵するハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0139】
プログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本実施の形態にかかるプログラムに含まれ得る。
【0140】
また、本実施の形態にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本実施の形態にかかるプログラムに含まれ得る。
【0141】
(5)上述の実施の形態として例示した構成は、本発明の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能である。また、上述した実施の形態において、その他の実施の形態で説明した処理および構成を適宜採用して実施する場合であってもよい。
【0142】
<実施の形態の効果>
本実施の形態によると、飛来するボールに対する被験者のスイング特性をより精度よく評価することができる。これにより、被験者の得意あるいは不得意なボールの運動特性(例えば、球速、球種、コース)が明確となるため、それに基づいたトレーニングの実施が可能となる。
【0143】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0144】
2 被験者、10 評価装置、20,25 センサ装置、30 ボール、35 撮像システム、40 HMD、42 モニタ、44 HMDセンサ、50 マーカ、80 バット、102,252 プロセッサ、104,254 メモリ、106 入力装置、108 通信インターフェイス、110 入出力インターフェイス、112 ディスプレイ、152 センサデータ取得部、153 運動特性取得部、154 スイング情報算出部、156 分類部、158 抽出部、160 評価部、162 出力部、256 加速度センサ、258 角速度センサ、262 蓄電池、1000,1000A 評価システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図14