(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230829BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
H01L21/304 651G
H01L21/68 A
H01L21/304 651J
H01L21/304 651H
H01L21/304 651L
(21)【出願番号】P 2019144816
(22)【出願日】2019-08-06
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000134028
【氏名又は名称】株式会社SCREEN SPE テック
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】松田 将平
(72)【発明者】
【氏名】柴本 邦雄
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-131681(JP,A)
【文献】特開2012-199371(JP,A)
【文献】特開2012-209285(JP,A)
【文献】特開2007-305949(JP,A)
【文献】特開2006-156648(JP,A)
【文献】特開2009-202111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/677
F26B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が付着した複数の基板を一括して乾燥させる基板処理装置であって、
少なくとも鉛直上側に開口する内部空間を形成し、前記内部空間において前記複数の基板をその厚み方向に沿って並べた状態で格納する基板格納容器を、所定の回動軸のまわりで回動させて、前記基板格納容器を揺動させる揺動部と、
前記複数の基板および前記基板格納容器に乾燥用のガスを吐出するガスノズルと
を備え、
前記回動軸は、鉛直方向に沿うZ軸と、前記Z軸に垂直であり前記厚み方向に沿うY軸と、前記Y軸および前記Z軸に垂直なX軸とに対して交差
し、
前記Z軸に沿って見て、前記回動軸が前記X軸に対してなす角度は、10度以上かつ80度以下である、基板処理装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の基板処理装置であって、
前記X軸において両側に位置する前記基板格納容器の側壁部の内面には、複数の凸部が前記Y軸に沿って並んで形成されており、
前記複数の基板の各々は前記複数の凸部の二者の間に挿入されており、
前記Z軸に沿って見て、前記回動軸が前記X軸に対してなす角度は、10度以上かつ45度以下である、基板処理装置。
【請求項3】
請求項1
または請求項
2に記載の基板処理装置であって、
前記Y軸に沿って見て、前記回動軸が前記X軸に対してなす角度は、1度以上である、基板処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれか一つに記載の基板処理装置であって、
前記揺動部は、前記回動軸のまわりで前記基板格納容器を±6度以上の角度範囲で回動させる、基板処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか一つに記載の基板処理装置であって、
処理液を貯留し、前記基板格納容器を前記処理液に浸漬させる貯留槽と、
前記貯留槽に前記処理液を供給する液ノズルと、
前記貯留槽から前記処理液を排出する排出部と
を備え、
前記ガスノズルは前記貯留槽よりも上側に設けられ、有機溶剤の蒸気を吐出して、前記貯留槽に貯留された前記処理液の液面に前記有機溶剤の液膜を形成する、基板処理装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の基板処理装置であって、
前記ガスノズルは水平方向または水平方向よりも上側に向けて前記有機溶剤の蒸気を吐出する、基板処理装置。
【請求項7】
請求項
5または請求項
6に記載の基板処理装置であって、
前記ガスノズルが前記有機溶剤の蒸気を供給しつつ前記排出部が前記処理液を前記貯留槽から排出して前記処理液の液面を下降させることで、前記基板格納容器および前記複数の基板の表面に付着した前記処理液を前記有機溶剤に置換し、
前記揺動部は、前記処理液の液面が前記基板格納容器の下端に到達した到達時点以後に、前記基板格納容器の揺動を開始する、基板処理装置。
【請求項8】
液体が付着した複数の基板を一括して乾燥させる基板処理装置であって、
少なくとも鉛直上側に開口する内部空間を形成し、前記内部空間において前記複数の基板をその厚み方向に沿って並べた状態で格納する基板格納容器を、所定の回動軸のまわりで回動させて、前記基板格納容器を揺動させる揺動部と、
前記複数の基板および前記基板格納容器に乾燥用のガスを吐出するガスノズルと、
処理液を貯留し、前記基板格納容器を前記処理液に浸漬させる貯留槽と、
前記貯留槽に前記処理液を供給する液ノズルと、
前記貯留槽から前記処理液を排出する排出部と
を備え、
前記回動軸は、鉛直方向に沿うZ軸と、前記Z軸に垂直であり前記厚み方向に沿うY軸と、前記Y軸および前記Z軸に垂直なX軸とに対して交差し、
前記ガスノズルは前記貯留槽よりも上側に設けられ、有機溶剤の蒸気を吐出して、前記貯留槽に貯留された前記処理液の液面に前記有機溶剤の液膜を形成し、
前記ガスノズルが前記有機溶剤の蒸気を供給しつつ前記排出部が前記処理液を前記貯留槽から排出して前記処理液の液面を下降させることで、前記基板格納容器および前記複数の基板の表面に付着した前記処理液を前記有機溶剤に置換し、
前記揺動部は、前記処理液の液面が前記基板格納容器の下端に到達した到達時点以後に、前記基板格納容器の揺動を開始し、
前記ガスノズルは、前記基板格納容器に向けて不活性ガスも吐出し、
前記ガスノズルは、前記到達時点から所定期間に亘って前記有機溶剤の蒸気の吐出を維持し、前記所定期間が経過したときに前記有機溶剤の吐出を停止し、
前記揺動部は、前記到達時点から前記所定期間が経過するまでの時点において、前記基板格納容器の揺動を開始する、基板処理装置。
【請求項9】
請求項
7に記載の基板処理装置であって、
前記ガスノズルは、前記基板格納容器に向けて不活性ガスも吐出し、
前記ガスノズルは、前記到達時点以後に前記有機溶剤の蒸気の吐出を停止し、
前記揺動部は前記有機溶剤の蒸気の吐出の停止以後に、前記基板格納容器の揺動を開始する、基板処理装置。
【請求項10】
液体が付着した複数の基板を一括して乾燥させる基板処理装置であって、
少なくとも鉛直上側に開口する内部空間を形成し、前記内部空間において前記複数の基板をその厚み方向に沿って並べた状態で格納する基板格納容器を、所定の回動軸のまわりで回動させて、前記基板格納容器を揺動させる揺動部と、
前記複数の基板および前記基板格納容器に乾燥用のガスを吐出するガスノズルと
を備え、
前記回動軸は、鉛直方向に沿うZ軸と、前記Z軸に垂直であり前記厚み方向に沿うY軸と、前記Y軸および前記Z軸に垂直なX軸とに対して交差し、
前記揺動部は、前記基板格納容器を載置する載置台を含み、
前記載置台の上面には、前記複数の基板を前記基板格納容器から持ち上げて支持する突起支持部が設けられている、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の基板に対して一括して乾燥処理を施すバッチ式の乾燥ユニットが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1において、乾燥ユニットの乾燥チャンバには、貯留槽と第1吐出ノズルと第2吐出ノズルと排出部と揺動部が設けられている。第1吐出ノズルは貯留槽に対して鉛直上側に配置され、この貯留槽に純水を供給する。第2吐出ノズルは貯留槽に対して鉛直上側に配置され、IPA(イソプロピルアルコール)の蒸気および乾燥用の高温ガスを選択的に吐出する。排出部は、貯留槽の底部に連通接続した排出管と、その排出管内の流路の開閉を切り替える開閉弁とを有している。
【0003】
この乾燥ユニットにおいて、まず第1吐出ノズルから純水が貯留槽に吐出される。これにより、貯留槽には純水が貯留される。貯留槽に十分な純水が貯留されると、複数の基板を収納したキャリアを、その純水に浸漬させる。複数の基板は起立姿勢で純水に浸漬される。
【0004】
次に第2吐出ノズルからIPAの蒸気を吐出する。この蒸気が貯留槽内の純水の液面上で液化し、IPAの液膜が形成される。次にIPAの蒸気を吐出したまま、開閉弁を開いて処理液を貯留槽から排出する。これにより、貯留槽内においてIPAの液膜が下降し、基板の表面の純水が順次にIPAに置換される。
【0005】
処理液の排出が終了すると、第2吐出ノズルからIPAの蒸気の吐出を停止し、高温ガスを吐出する。また、揺動部は高温ガスの吐出中にキャリアを揺動する。具体的には、揺動部は基板の表面に平行かつ水平な回動軸のまわりでキャリアを回動させる。この揺動により、キャリアおよび複数の基板に付着したIPAを振り落とすことができ、乾燥を促進することができる。
【0006】
特許文献1では、蒸発しやすいIPAが純水に置き換えられた状態で、複数の基板に高温ガスが供給されるので、ウォーターマークの発生を回避しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、キャリアは一対の第1側壁と一対の第2側壁とを含む。一対の第1側壁は基板の厚み方向において複数の基板の一組を挟む位置に配置され、一対の第2側壁は、厚み方向に垂直かつ水平な左右方向において複数の基板の一組を挟む位置に配置される。一対の第1側壁および一対の第2側壁は互いに連結され、平面視において複数の基板を囲む。この第1側壁の上面は左右方向に長い長尺形状を有し、第2側壁の上面は厚み方向に長い長尺形状を有する。
【0009】
さて、特許文献1では、キャリアを揺動するための回動軸が左右方向に平行である。よって、特許文献1では、キャリアの揺動中において、第1側壁の上面に付着した液体(IPA)には、その短手方向に沿って力(例えば重力)が作用し、第2側壁の上面に付着した液体には、その長手方向に沿って力(例えば重力)が作用する。このように液体に作用する力が、その液体が付着した上面の長手方向または短手方向に沿っている場合には、その上面から液体を十分に振り落とすことができない場合があった。
【0010】
そこで、本願は、基板収容器の上面に残留する液体を効果的に振り落とすことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
基板処理装置の第1の態様は、液体が付着した複数の基板を一括して乾燥させる基板処理装置であって、少なくとも鉛直上側に開口する内部空間を形成し、前記内部空間において前記複数の基板をその厚み方向に沿って並べた状態で格納する基板格納容器を、所定の回動軸のまわりで回動させて、前記基板格納容器を揺動させる揺動部と、前記複数の基板および前記基板格納容器に乾燥用のガスを吐出するガスノズルとを備え、前記回動軸は、鉛直方向に沿うZ軸と、前記Z軸に垂直であり前記厚み方向に沿うY軸と、前記Y軸および前記Z軸に垂直なX軸とに対して交差し、前記Z軸に沿って見て、前記回動軸が前記X軸に対してなす角度は、10度以上かつ80度以下である。
【0013】
基板処理装置の第2の態様は、第1の態様にかかる基板処理装置であって、前記X軸において両側に位置する前記基板格納容器の側壁部の内面には、複数の凸部が前記Y軸に沿って並んで形成されており、前記複数の基板の各々は前記複数の凸部の二者の間に挿入されており、前記Z軸に沿って見て、前記回動軸が前記X軸に対してなす角度は、10度以上かつ45度以下である。
【0014】
基板処理装置の第3の態様は、第1または第2の態様にかかる基板処理装置であって、前記Y軸に沿って見て、前記回動軸が前記X軸に対してなす角度は、1度以上である。
【0015】
基板処理装置の第4の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様にかかる基板処理装置であって、前記揺動部は、前記回動軸のまわりで前記基板格納容器を±6度以上の角度範囲で回動させる。
【0016】
基板処理装置の第5の態様は、第1から第4のいずれか一つの態様にかかる基板処理装置であって、処理液を貯留し、前記基板格納容器を前記処理液に浸漬させる貯留槽と、前記貯留槽に前記処理液を供給する液ノズルと、前記貯留槽から前記処理液を排出する排出部とを備え、前記ガスノズルは前記貯留槽よりも上側に設けられ、有機溶剤の蒸気を吐出して、前記貯留槽に貯留された前記処理液の液面に前記有機溶剤の液膜を形成する。
【0017】
基板処理装置の第6の態様は、第5の態様にかかる基板処理装置であって、前記ガスノズルは水平方向または水平方向よりも上側に向けて前記有機溶剤の蒸気を吐出する。
【0018】
基板処理装置の第7の態様は、第5または第6の態様にかかる基板処理装置であって、前記ガスノズルが前記有機溶剤の蒸気を供給しつつ前記排出部が前記処理液を前記貯留槽から排出して前記処理液の液面を下降させることで、前記基板格納容器および前記複数の基板の表面に付着した前記処理液を前記有機溶剤に置換し、前記揺動部は、前記処理液の液面が前記基板格納容器の下端に到達した到達時点以後に、前記基板格納容器の揺動を開始する。
【0019】
基板処理装置の第8の態様は、液体が付着した複数の基板を一括して乾燥させる基板処理装置であって、少なくとも鉛直上側に開口する内部空間を形成し、前記内部空間において前記複数の基板をその厚み方向に沿って並べた状態で格納する基板格納容器を、所定の回動軸のまわりで回動させて、前記基板格納容器を揺動させる揺動部と、前記複数の基板および前記基板格納容器に乾燥用のガスを吐出するガスノズルと、処理液を貯留し、前記基板格納容器を前記処理液に浸漬させる貯留槽と、前記貯留槽に前記処理液を供給する液ノズルと、前記貯留槽から前記処理液を排出する排出部とを備え、前記回動軸は、鉛直方向に沿うZ軸と、前記Z軸に垂直であり前記厚み方向に沿うY軸と、前記Y軸および前記Z軸に垂直なX軸とに対して交差し、前記ガスノズルは前記貯留槽よりも上側に設けられ、有機溶剤の蒸気を吐出して、前記貯留槽に貯留された前記処理液の液面に前記有機溶剤の液膜を形成し、前記ガスノズルが前記有機溶剤の蒸気を供給しつつ前記排出部が前記処理液を前記貯留槽から排出して前記処理液の液面を下降させることで、前記基板格納容器および前記複数の基板の表面に付着した前記処理液を前記有機溶剤に置換し、前記揺動部は、前記処理液の液面が前記基板格納容器の下端に到達した到達時点以後に、前記基板格納容器の揺動を開始し、前記ガスノズルは、前記基板格納容器に向けて不活性ガスも吐出し、前記ガスノズルは、前記到達時点から所定期間に亘って前記有機溶剤の蒸気の吐出を維持し、前記所定期間が経過したときに前記有機溶剤の吐出を停止し、前記揺動部は、前記到達時点から前記所定期間が経過するまでの時点において、前記基板格納容器の揺動を開始する。
【0020】
基板処理装置の第9の態様は、第7の態様にかかる基板処理装置であって、前記ガスノズルは、前記基板格納容器に向けて不活性ガスも吐出し、前記ガスノズルは、前記到達時点以後に前記有機溶剤の蒸気の吐出を停止し、前記揺動部は前記有機溶剤の蒸気の吐出の停止以後に、前記基板格納容器の揺動を開始する。
【0021】
基板処理装置の第10の態様は、液体が付着した複数の基板を一括して乾燥させる基板処理装置であって、少なくとも鉛直上側に開口する内部空間を形成し、前記内部空間において前記複数の基板をその厚み方向に沿って並べた状態で格納する基板格納容器を、所定の回動軸のまわりで回動させて、前記基板格納容器を揺動させる揺動部と、前記複数の基板および前記基板格納容器に乾燥用のガスを吐出するガスノズルとを備え、前記回動軸は、鉛直方向に沿うZ軸と、前記Z軸に垂直であり前記厚み方向に沿うY軸と、前記Y軸および前記Z軸に垂直なX軸とに対して交差し、前記揺動部は、前記基板格納容器を載置する載置台を含み、前記載置台の上面には、前記複数の基板を前記基板格納容器から持ち上げて支持する突起支持部が設けられている。
【発明の効果】
【0022】
基板処理装置の第1の態様によれば、回動軸はX軸、Y軸およびZ軸のいずれとも交差する。よって、基板格納容器の揺動中において、基板格納容器の側壁部の上端面はX軸およびY軸の両方に対して傾斜する。したがって、側壁部の上端面の上に液体が残留していた場合に、当該液体を上端面の上から容易に振り落とすことができる。よって、基板格納容器を短時間で乾燥することができる。
【0023】
しかも、基板格納容器の揺動により、その上端面の上の液体を容易に振り落とすことができる。
【0024】
基板処理装置の第2の態様によれば、基板格納容器の揺動中において基板に生じる力のY軸成分(厚み方向成分)をX軸成分よりも大きくできる。これにより、基板格納容器の揺動中において、基板をそのY軸方向に容易に変位させることができる。よって、基板格納容器の揺動中において、各基板と凸部との間の隙間を大きくすることができ、当該隙間に残留する液体を容易に落下させることができる。
【0025】
基板処理装置の第3の態様によれば、基板格納容器の上端面の上の液体を容易に振り落とすことができる。
【0026】
基板処理装置の第4の態様によれば、基板格納容器の上端面の上の液体を容易に振り落とすことができる。
【0027】
基板処理装置の第5の態様によれば、処理液の液面に有機溶剤の液膜を形成することができる。この処理液の排出中に有機溶剤の液膜が複数の基板およびキャリアに作用して、基板およびキャリアに付着した処理液を有機溶剤に置換できる(液置換処理)。これにより、ウォーターマークを抑制しつつ乾燥処理を行うことができる。
【0028】
基板処理装置の第6の態様によれば、ガスノズルが有機溶剤の蒸気を水平方向または水平方向よりも鉛直上側に向けて吐出することで、この蒸気はより広がった状態で処理液の液面に接触し、当該液面で液化する。これにより、蒸気をより広い範囲でより均一に処理液の液面に接触させることができる。よって、液面の揺らぎを低減でき、また有機溶剤の液膜の厚みのばらつきを低減することができる。したがって、処理液の排出の際に複数の基板の相互間に作用する表面張力のばらつきを低減できる。
【0029】
基板処理装置の第7の態様によれば、処理液の液面の下降中に基板格納容器が揺動しないので、基板格納容器の揺動による液面の揺らぎを回避できる。
【0030】
基板処理装置の第8の態様によれば、液膜による液置換処理後において、有機溶剤の蒸気の供給が維持されつつキャリアの揺動が行われる。よって、キャリアおよび基板に付着した液体を振り落とすことができつつ、有機溶剤の蒸気がキャリアおよび基板に付着して液化する。つまり、液膜による液置換処理の後にも、蒸気による液置換処理を行うことができる。よって、液膜による液置換処理によっても処理液がなおキャリアおよび基板に残留していたとしても、その処理液の少なくとも一部を有機溶剤に置換することができる。
【0031】
基板処理装置の第9の態様によれば、液膜による液置換処理の終了後に、速やかに不活性ガスによる乾燥処理を行うことができる。また、この乾燥処理中に基板格納容器を揺動させるので、短時間でより適切に乾燥を行うことができる。
【0032】
基板処理装置の第10の態様によれば、複数の基板が突起支持部に支持された状態で、基板の側面と基板格納容器の面との間に間隙(空間)が生じる。処理液の排出の際には、処理液はこの間隙を流れることができるので、処理液の残留を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】基板処理装置の構成の一例を概略的に示す図である。
【
図2】基板処理装置の構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図3】基板処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】処理液の排出中における基板処理装置の様子の一例を概略的に示す図である。
【
図5】キャリアの揺動中の基板処理装置の一例を概略的に示す図である。
【
図6】キャリアの揺動中の基板処理装置の一例を概略的に示す図である。
【
図7】キャリアの揺動中の基板処理装置の一例を概略的に示す図である。
【
図8】キャリアの揺動中の基板処理装置の一例を概略的に示す図である。
【
図9】キャリアの上端面の傾斜を説明するための図である。
【
図10】比較例にかかるキャリアの上端面の傾斜を説明するための図である。
【
図11】基板処理装置の構成の他の一例を概略的に示す図である。
【
図12】基板処理装置の動作の他の一例を示すフローチャートである。
【
図13】基板処理装置の構成の他の一例を概略的に示す図である。
【
図14】基板処理装置の構成の他の一例を概略的に示す図である。
【
図15】突起支持部、キャリアおよび基板の位置関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。なお、図面は概略的に示されており、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化がなされ得る。また、図面にそれぞれ示される構成などの大きさおよび位置の相互関係は必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。また各図において、構成要素の位置関係を明確にするため、Z軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付している。以下では、Z軸方向の一方側(ここでは鉛直上側)を+Z側と呼び、Z軸方向の他方側(ここでは鉛直下側)を-Z側とも呼ぶ。X軸およびY軸も同様である。
【0035】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0036】
第1の実施の形態.
<基板処理装置>
図1は、第1の実施の形態にかかる基板処理装置10の構成の一例を概略的に示す図であり、
図2は、基板処理装置10の構成の一例を概略的に示す平面図である。この基板処理装置10は、複数の基板Wに対して一括して乾燥処理を行うバッチ式の乾燥処理装置である。
【0037】
処理対象となる基板Wは平板状の形状を有しており、
図1の例では、基板Wの厚み方向に沿って見て、略円形状を有している。基板Wは例えば半導体基板(例えばパワートランジスタ用の半導体基板)である。半導体基板はシリコンの他、GaAs(ガリウムヒ素)またはSiC(シリコンカーバイド)等の半導体基板も含む。
【0038】
複数の基板Wの直径は例えば数十[mm]~数百[mm]程度である。基板Wの厚みは例えば数百[μm]程度であり、例えば200[μm]~350[μm]程度である。より具体的な一例として、基板Wの直径はSEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)規格における8インチ(あるいは6インチ)の直径と同程度であり、その厚みは8インチ(あるいは6インチ)の厚みの半分程度である。このように厚みの薄い基板Wを採用すれば、より多くの基板Wを後述のキャリア(基板格納容器)Cに格納することができる。つまり、一度に処理できる基板Wの枚数を増大できる。よって基板処理装置10の処理能力を向上できる。なお基板Wは必ずしも半導体基板に限らず、他の任意の基板であってもよい。また上述のサイズは一例であって、これに限定されるものではない。
【0039】
複数の基板WはキャリアCに格納された状態で基板処理装置10内に搬送される。このキャリアCは、少なくとも+Z側および-Z側に開口する内部空間を有しており、この内部空間内に複数の基板Wが格納される。複数の基板WはキャリアCの内部空間において、起立姿勢をとっており、また基板Wの法線方向(厚み方向:ここではY軸方向)に沿って並んで格納される。起立姿勢とは、基板Wの法線方向(厚み方向)が水平方向に沿う姿勢である。キャリアCに格納される基板Wの枚数は特に限定される必要はないものの、例えば数十枚(例えば50枚)程度である。
【0040】
基板処理装置10はチャンバ1と揺動部5とガス供給部6と制御部7とを含んでいる。
図1の例では、基板処理装置10はさらに貯留槽2と処理液供給部3と排出部4とを含んでいる。以下では、各構成を概説した後に詳述する。
【0041】
チャンバ1は筐体11と蓋12とを含んでいる。筐体11は、+Z側に開口する箱状の形状を有している。蓋12は開閉可能に筐体11の+Z側の端部に取り付けられている。蓋12の開閉は制御部7によって制御され、蓋12が閉じることで、チャンバ1の+Z側の開口部が閉塞する。
【0042】
チャンバ1の内部には、貯留槽2が配置されている。貯留槽2は、+Z側に開口する開口部を有しており、この開口部から貯留槽2の内部に処理液が供給される。貯留槽2は、供給された処理液を貯留する。
図1の例では、貯留槽2は筐体11の底部から離れた状態で固定部材21を介して筐体11に固定されている。
【0043】
複数の基板WはキャリアCに格納された状態で、不図示の搬送機構によってチャンバ1内に搬送される。具体的には、キャリアCは蓋12が開いたときの筐体11の開口部を通過して、貯留槽2の内部に搬入される。
【0044】
処理液供給部3は貯留槽2に処理液を供給する。これにより、貯留槽2には処理液が貯留される。貯留槽2には、キャリアCが処理液に浸漬する程度に処理液が貯留される。
【0045】
ガス供給部6は乾燥用のガスをチャンバ1内に供給する。このガス供給部6は有機溶剤ガス供給部61を含んでいる。有機溶剤ガス供給部61はチャンバ1内において、貯留槽2よりも+Z側の空間(以下、上部空間と呼ぶ)に対して、有機溶剤の蒸気を供給する。この蒸気は上部空間で広がり、その一部が貯留槽2に貯留された処理液の液面で液化して有機溶剤の液膜を形成する。
【0046】
有機溶剤は例えば処理液よりも表面張力が小さい溶剤である。またここでは基板処理装置10は基板Wを乾燥する乾燥処理を行うので、その乾燥のために処理液よりも蒸発潜熱が小さい有機溶剤が採用される。具体的な一例として、例えばIPA(イソプロピルアルコール)が採用される。なお、有機溶剤ガス供給部61はキャリアガスとして不活性ガスを有機溶剤の蒸気とともに供給してもよい。不活性ガスとしては、基板Wと化学反応を起こしにくい気体(例えば、ヘリウムおよびアルゴンのような希ガス、または、窒素ガス)を採用できる。
【0047】
排出部4は貯留槽2内の処理液をチャンバ1の外部へ排出する。具体的には、排出部4は、貯留槽2内の処理液の液面に有機溶剤の液膜が形成された状態で処理液を排出する。これにより、処理液の液面(有機溶剤の液膜)が時間の経過とともに下降する。この液膜が各基板WおよびキャリアCの表面と接触することで、各表面に付着した処理液が、蒸発潜熱の小さい有機溶剤に順次に置換される。
【0048】
ガス供給部6は高温ガス供給部62も含んでいる。高温ガス供給部62は、基板WおよびキャリアCに向けて高温の不活性ガスを供給する。不活性ガスとしては、基板Wと化学反応を起こしにくい気体(例えば、ヘリウムおよびアルゴンのような希ガス、または、窒素)を採用できる。高温ガス供給部62が処理液の排出後に、高温の不活性ガスを基板WおよびキャリアCに供給することにより、基板WおよびキャリアCを乾燥することができる(乾燥処理)。
【0049】
揺動部5は、貯留槽2内に載置されたキャリアCを、所定の回動軸Q1のまわりにおいて所定の角度範囲で交互に反対方向に回動させて、キャリアCを揺動させる。これにより、基板WおよびキャリアCに付着した液体(主として有機溶剤)を振り落とすことができる。揺動部5は少なくとも乾燥処理中において、キャリアCを揺動させることにより、基板WおよびキャリアCの乾燥を促進する。
【0050】
<処理液供給部>
処理液供給部3は液ノズル31と供給管32と開閉弁33とを含んでいる。液ノズル31はチャンバ1内の上部空間(貯留槽2よりも+Z側の空間)に配置されており、例えば筐体11の内側面に固定される。また液ノズル31は供給管32を介して処理液供給源34に連通接続されている。つまり、供給管32の一端は液ノズル31に連通接続され、他端は処理液供給源34に連通接続される。開閉弁33は供給管32の途中に設けられており、供給管32内の流路の開閉を切り替える。開閉弁33が開くことにより、処理液が処理液供給源34から供給管32の内部を流れ、液ノズル31から貯留槽2へと吐出される。開閉弁33が閉じることで、液ノズル31からの処理液の吐出が終了する。処理液は例えば純水である。
【0051】
<排出部>
図1の例では、排出部4は排出管41,42と開閉弁43,44とを含んでいる。排出管41は、貯留槽2に貯留された処理液を貯留槽2の外部に排出するための配管である。
図1の例では、排出管41の一端は貯留槽2の底部と連通接続されており、他端は筐体11内において開口している。開閉弁43は排出管41の途中に設けられており、排出管41内の流路の開閉を切り替える。開閉弁43が開くことにより、貯留槽2の内部の処理液が排出管41の内部を通って、排出管41の他端から筐体11の底部へと流れ出る。開閉弁43が閉じることにより、貯留槽2からの処理液の排出が終了する。
【0052】
排出管42は、筐体11の底部に溜まった処理液をチャンバ1の外部に排出する。排出管42の一端は筐体11の底部に連通接続されており、他端は排出ドレイン45に連通接続されている。開閉弁44は排出管42の途中に設けられており、排出管42内の流路の開閉を切り替える。開閉弁44が開くことにより、筐体11内の処理液が排出管42の内部を通って排出ドレイン45へと排出される。開閉弁44が閉じることにより、筐体11からの処理液の排出が終了する。
【0053】
<有機溶剤ガス供給部>
有機溶剤ガス供給部61はガスノズル601と供給管602a,602b,603と開閉弁605と加熱部606とを含んでいる。ガスノズル601はチャンバ1内の上部空間(貯留槽2よりも+Z側の空間)に配置されている。
図1の例では、ガスノズル601として、一対のガスノズル601a,601bが配置されている。ガスノズル601a,601bは例えばX軸方向において互いに離れている。平面視において(つまり、Z軸に沿って見て)、ガスノズル601aは貯留槽2の中心に対して-X側に配置され、ガスノズル601bは貯留槽2の中心に対して+X側に配置される。
図1の例では、ガスノズル601a,601bは略同じ高さ位置に配置されている。ガスノズル601a,601bは例えばY軸方向に沿って延在しており、Y軸方向に沿って並ぶ複数の吐出口を有していてもよい。
図1の例では、ガスノズル601aは+X側かつ-Z側の斜め方向にガスを吐出し、ガスノズル601bは-X側かつ-Z側の斜め方向にガスを吐出する。
【0054】
ガスノズル601aは供給管602a,603を介して有機溶剤ガス供給源604に連通接続される。具体的には、供給管602aの一端はガスノズル601aに連通接続され、供給管602aの他端は供給管603の一端に連通接続され、供給管603の他端は有機溶剤ガス供給源604に連通接続される。有機溶剤ガス供給源604は供給管603の他端に有機溶剤の蒸気を供給する。ガスノズル601bは供給管602b,603を介して有機溶剤ガス供給源604に連通接続される。具体的には、供給管602bの一端はガスノズル601bに連通接続され、供給管602bの他端は供給管603の一端に連通接続される。
【0055】
開閉弁605は供給管603の途中に設けられ、供給管603内の流路の開閉を切り替える。加熱部606は例えばヒータであり、開閉弁605よりも下流側において供給管603に設けられている。加熱部606は供給管603の内部を流れるガスを加熱する。
【0056】
開閉弁605が開くことにより、有機溶剤の蒸気が有機溶剤ガス供給源604から供給管603,602a,602bの内部を流れる。この蒸気は加熱部606によって加熱された上で、ガスノズル601a,601bから吐出される。
【0057】
<高温ガス供給部>
図1の例では、高温ガス供給部62はガスノズル601から高温の不活性ガスを吐出する。つまり、
図1の例では、ガスノズル601は有機溶剤ガス供給部61および高温ガス供給部62によって兼用される。高温ガス供給部62は供給管623と開閉弁625とを含んでいる。
【0058】
供給管623の一端は開閉弁605と加熱部606との間において、供給管603に連通接続され、供給管623の他端はガス供給源624に連通接続される。ガス供給源624は不活性ガスを供給管623の他端に供給する。
【0059】
開閉弁625は供給管623の途中に設けられ、供給管623内の流路の開閉を切り替える。開閉弁625が開くことにより、不活性ガスがガス供給源624から供給管623,603,602a,602bの内部を流れる。不活性ガスは加熱部606によって加熱された上で、ガスノズル601a,601bから基板WおよびキャリアCに向けて高温ガスとして吐出される。
【0060】
<揺動部>
揺動部5は、チャンバ1内に載置されたキャリアCを所定の回動軸Q1のまわりで交互に反対方向に回動させて、キャリアCを揺動させる。これにより、基板WおよびキャリアCに付着した液体を振り落とす。ここでは、揺動部5の説明する前に、まず、キャリアCの形状の一例について説明する。
【0061】
キャリアCは、例えば、フッ素樹脂によって構成されており、キャリア本体91と支持脚92とを含んでいる。キャリア本体91は、複数の基板Wを格納する部材である。キャリア本体91は+Z側に開口しており、複数の基板Wは+Z側からキャリア本体91に挿入される。キャリア本体91は-Z側にも開口している。ただし、キャリア本体91は複数の基板Wを支持しており、複数の基板Wがキャリア本体91の-Z側の開口部から落下することはない。
【0062】
支持脚92はキャリア本体91の下端から-Z側に延在している。
図1の例では、一対の支持脚92が設けられており、これらはX軸方向において間隔を空けて配置されている。支持脚92はY軸方向に沿って延在しており、そのY軸方向における長さは例えばキャリア本体91の長さに略等しい。
【0063】
キャリア本体91は前壁部911と後壁部912と側壁部913と側壁部914とを有している。前壁部911および後壁部912はY軸方向において互いに対向する。前壁部911は+Y側に位置し、後壁部912は-Y側に位置する。
図2を参照して、側壁部913は前壁部911の-X側の端部と後壁部912の-X側の端部とを連結し、側壁部914は前壁部911の+X側の端部と後壁部912の+X側の端部とを連結する。前壁部911、後壁部912、側壁部913および側壁部914によって囲まれた空間がキャリアCの内部空間に相当する。
【0064】
側壁部913,914の間隔は、-Z側の領域において、-Z側に向かうにつれて狭くなっており、複数の基板Wはその-Z側の領域において側壁部913,914の内周面に当接して、側壁部913,914によって支持される。
【0065】
図2に例示するように、側壁部913の+X側の面(内面)には、複数の凸部93がY軸方向に沿って間隔を空けて並んで形成されている。この凸部93は+X側に突起する。隣り合う2つの凸部93の間には、1枚の基板Wの周縁部が挿入される。側壁部914の-X側の面(内面)には、複数の凸部94がY軸方向に沿って間隔を空けて並んで形成されている。この凸部94は+X側に突起しており、凸部93とY軸方向において対向する位置に設けられている。隣り合う2つの凸部94の間には、1枚の基板Wの周縁部が挿入される。このように基板Wの周縁部が凸部93の間および凸部94の間に挿入されることにより、基板Wが起立姿勢を保つ。
【0066】
図2に例示するように、キャリアCの側壁部913の+Z側の面(以下、上端面と呼ぶ)913aはY軸方向に沿って延在しており、Y軸方向に長い長尺形状を有している。つまり、上端面913aのY軸方向の幅は上端面913aのX軸方向の幅よりも長い。上端面914aも同様の形状を有している。
【0067】
図1の例では、前壁部911の上端面911aは、+Z側に開口する略U字状の形状を有しており、その両端はそれぞれ上端面913a,914aの+Y側の端と連続する。この上端面911aのU字状の中央部(底部)はX軸方向に沿って延在しており、X軸方向に長い長尺形状を有している。つまり、上端面911aの当該中央部のX軸方向の幅は上端面911aのY軸方向の幅よりも長い。後壁部912の上端面912aも前壁部911の上端面911aと同様に、略U字状の形状を有しており、その中央部は平面視においてX軸方向に長い長尺形状を有している。
【0068】
このようなキャリアCが貯留槽2内の処理液に浸漬した後に、排出部4が処理液を排出すると、キャリアCの上端面911a~914aには、液体(主として有機溶剤)が残留する。キャリアCが疎水性を有している場合には、当該液体が比較的盛り上がった状態で残留し、その体積が大きくなる。体積の大きい液体は乾燥しにくいので、乾燥時間が長くなる。よって、キャリアCの上端面911a~914aに残留した液体の大部分をキャリアCから落下させることが望ましい。
【0069】
揺動部5は、貯留槽2内に載置されたキャリアCを回動軸Q1のまわりで交互に反対方向に回動させて、キャリアCを揺動させる。この回動軸Q1はX軸、Y軸およびZ軸のいずれとも交差するように設定される。つまり、回動軸Q1は、キャリアCにおいて複数の基板Wが並ぶ配列方向(Y軸方向)、鉛直方向(Z軸方向)およびこれらと垂直な水平方向(X軸方向)のいずれとも交差する。
図2の例では、回動軸Q1は平面視において傾斜角θxzでX軸と交差している。この傾斜角θxzは10度以上かつ80度以下であり、より好ましくは、10度以上かつ45度以下である。ここでは一例として、傾斜角θxzは30度程度である。以下、揺動部5の具体的な構成の一例について述べる。
【0070】
図1および
図2の例では、揺動部5は載置台51と固定部材52と回動駆動部59とを含んでいる。載置台51は板状の形状を有しており、その厚み方向がZ軸方向に沿うように、貯留槽2の内部に配置される。載置台51の+Z側の主面の上には、キャリアCが載置される。
図2の例では、載置台51は平面視において略矩形状の形状を有しており、その一辺がX軸に沿うように配置されている。
【0071】
固定部材52は載置台51を回動可能にチャンバ1に連結する。
図1および
図2の例では、固定部材52は垂直板53,54と垂下部55,56と軸受57,58とを含んでいる。
【0072】
垂直板53はZ軸方向に延在しており、その-Z側の端部は載置台51の端部(
図2の例では-X側かつ+Y側の端部)に連結されている。垂直板53は載置台51から貯留槽2の内壁に沿って+Z側に延在しており、その+Z側の端部は貯留槽2の+Z側の端部よりも高くに位置する。垂下部55はY軸方向に沿って見て、L字状の形状を有している。垂下部55の+Z側の端部は垂直板53の+Z側の端部に連結されており、垂下部55は貯留槽2の外側を-Z側へと延在する。垂下部55は軸受57を介して筐体11の-X側の側壁に連結される。軸受57は回動軸Q1上に配置されており、垂下部55を回動軸Q1のまわりで回動可能に筐体11の側壁に固定する。具体的には、垂下部55には、回動軸Q1に沿って延在するシャフト部(不図示)が設けられており、このシャフト部が軸受57の内輪に連結され、軸受57の外輪が筐体11の側壁に固定される。
【0073】
垂直板54はZ軸方向に延在しており、その-Z側の端部は載置台51の端部(
図2の例では+X側かつ-Y側の端部)に連結されている。垂直板54は載置台51から貯留槽2の内壁に沿って+Z側に延在しており、その+Z側の端部は貯留槽2の+Z側の端部よりも高くに位置する。垂下部56はY軸方向に沿って見て、L字状の形状を有している。垂下部56の+Z側の端部は垂直板54の+Z側の端部に連結されており、垂下部56は貯留槽2の外側を-Z側へと延在する。垂下部56は軸受58を介して筐体11の+X側の側壁に固定される。軸受58は回動軸Q1上に配置されており、垂下部56を回動軸Q1のまわりで回動可能に筐体11の側壁に固定する。具体的には、垂下部56には、回動軸Q1に沿って延在するシャフト部(不図示)が設けられており、このシャフト部が軸受58の内輪に連結され、軸受58の外輪が筐体11の側壁に固定される。
【0074】
このような固定部材52によれば、載置台51を回動軸Q1のまわりで回動可能にチャンバ1の筐体11に固定しつつ、その回動軸Q1を基板Wの中央(Z軸方向における中央)付近に設定することができる。
【0075】
回動駆動部59は、垂下部55に設けられたシャフト部を回動軸Q1のまわりで所定の角度範囲で交互に回動させる。これにより、載置台51、固定部材52およびキャリアCが一体に揺動する。回動駆動部59は例えば不図示のエアシリンダおよびリンク部材を有している。リンク部材は例えば棒状の形状を有しており、その一端が垂下部55のシャフト部に連結されている。リンク部材は回動軸Q1についての径方向に延在しており、その他端がエアシリンダのピストンロッドの先端に連結される。エアシリンダはピストンロッドの先端を回動軸Q1の周方向に沿って進退させる。これにより、リンク部材が所定の角度範囲で回動軸Q1のまわりを交互に揺動し、リンク部材に連結されたシャフト部が当該所定の角度範囲で回動軸Q1のまわりを交互に回動する。したがって、載置台51、固定部材52およびキャリアCが回動軸Q1のまわりで所定の角度範囲で交互に回動する。
【0076】
なお、回動駆動部59は必ずしもエアシリンダおよびリンク部材を有している必要はなく、他の駆動機構(例えばモータ)により垂下部55のシャフト部を回動させてもよい。また、回動駆動部59は垂下部56のシャフト部を回動させてもよい。
【0077】
また、
図1および
図2の例では、載置台51の+Z側の主面の上には、押さえ部材(ストッパー)511が突設されている。押さえ部材511は、キャリアCの揺動に伴って生じる、載置台51上のキャリアCの移動を制限する。
図2の例では、4つの押さえ部材511が配置されている。各押さえ部材511はキャリアCの一対の支持脚92の両端の近傍にそれぞれ配置されている。押さえ部材511は載置台51の+Z側の主面において支持脚92と対向する。キャリアCの揺動中において、押さえ部材511がキャリアCの支持脚92と当接することにより、キャリアCの載置台51に対する移動を制限する。
【0078】
<制御部>
制御部7は基板処理装置10を統括的に制御する。具体的には、制御部7は蓋12の開閉制御、開閉弁33,43,44,605,625の開閉制御、加熱部606の加熱制御および回動駆動部59の回動制御を実行する。また制御部7は不図示の搬送機構も制御してもよい。この搬送機構は、複数の基板Wを格納したキャリアCを外部からチャンバ1内へ搬入したり、あるいは、チャンバ1から外部へ搬出したりする。
【0079】
この制御部7は電子回路機器であって、例えばデータ処理装置および記憶媒体を有していてもよい。データ処理装置は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶媒体は非一時的な記憶媒体(例えばROM(Read Only Memory)またはハードディスク)および一時的な記憶媒体(例えばRAM(Random Access Memory))を有していてもよい。非一時的な記憶媒体には、例えば制御部7が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。処理装置がこのプログラムを実行することにより、制御部7が、プログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部7が実行する処理の一部または全部がハードウェアによって実行されてもよい。
【0080】
<乾燥処理の動作>
図3は、基板処理装置10の動作の一例を示すフローチャートである。この一連の手順の実行前において、開閉弁33,43,44,605,625は閉じている。まずステップS1にて、制御部7は開閉弁33を開いて処理液を貯留槽2に供給する。これにより、貯留槽2に処理液が貯留される。貯留槽2に十分な処理液が貯留されると、ステップS2にて、制御部7は搬送機構を制御して複数の基板Wを基板処理装置10内に搬入させる。具体的には、制御部7は蓋12を開き、その状態で搬送機構にキャリアCをチャンバ1内に搬入させて載置台51の+Z側の主面の上に載置させる。これにより、キャリアCおよび複数の基板Wが処理液に浸漬される。そして、制御部7は搬送機構の一部(ハンド)をチャンバ1から引き抜いた上で、蓋12を閉じる。なお、基板Wが完全に処理液に浸漬される程度の量の処理液が供給されたときに、制御部7は開閉弁33を閉じる。開閉弁33が閉じることにより、処理液の供給が終了する。
【0081】
次にステップS3にて、制御部7は、有機溶剤ガス供給部61に有機溶剤の蒸気をチャンバ1内に供給させるとともに、高温ガス供給部62に不活性ガスをチャンバ1内に供給させる。具体的には、制御部7は開閉弁605,625を開き、加熱部606に有機溶剤の蒸気および不活性ガスを例えば70℃以上に加熱させる。これにより、ガスノズル601a,601bからチャンバ1の上部空間に有機溶剤の蒸気および不活性ガスが吐出される。
図1では、有機溶剤の蒸気および不活性ガスの吐出を破線の矢印で模式的に示している。この有機溶剤の蒸気は上部空間で広がり、その一部が、貯留槽2に貯留された処理液の液面で液化して有機溶剤の液膜L1を形成する。
【0082】
次にステップS4にて、制御部7は排出部4に貯留槽2内の処理液を排出させる。具体的には、制御部7は開閉弁43,44を開く。
図4は、ステップS4における基板処理装置10の構成の一例を概略的に示す図である。
図4では、処理液の排出を排出管41,42付近の破線の矢印で模式的に示している。この処理液の排出によって液膜L1が時間の経過とともに下降する。液膜L1が各基板Wの表面およびキャリアCの表面と接触することで、各基板Wの表面およびキャリアCの表面に付着した処理液が有機溶剤に順次に置換される。
【0083】
ここでは、処理液が貯留槽2から排出されている期間においても、チャンバ1内に有機溶剤の蒸気が供給され続ける。これにより、各基板Wに付着した処理液が有機溶剤に置換されることによる液膜L1の厚みの減少分を補充することできる。したがって、各基板WおよびキャリアCに付着した処理液を有機溶剤に置換する液置換処理がより確実に実行される。処理液が貯留槽2およびチャンバ1から十分に排出されると、制御部7は開閉弁43,44を閉じる。
【0084】
なお、処理液の液面(液膜L1の液面)が下降してキャリアCの下端に到達した到達時点において、液膜L1による液置換処理は実質的に終了する。この到達時点以後に、ステップS5にて、制御部7は揺動部5にキャリアCの揺動を開始させる。揺動部5は所定の角度範囲において回動軸Q1のまわりでキャリアCを交互に反対方向に回動させることにより、キャリアCを揺動させる。キャリアCの揺動角の角度範囲として、例えば±6度以上の範囲を採用できる。なおここでは、キャリアCが水平姿勢をとるときの揺動角を零に設定している。キャリアCの水平姿勢とは、例えば、キャリアC内の基板Wの厚み方向がY軸方向に平行な状態をいう。
【0085】
図5から
図8は、キャリアCの揺動の様子の一例を概略的に示す図である。
図5および
図6は、+Y側からY軸方向に沿って見た基板処理装置10の概略構成の一例を示しており、
図7および
図8は、-X側からX軸方向に沿って見た基板処理装置10の概略構成の一例を示している。
図5および
図7では、キャリアCは水平状態から一方側に揺動(回動)しており、
図6および
図8では、キャリアCは水平状態から他方側に揺動(回動)している。キャリアCの揺動中には、
図5から
図8から理解できるように、上端面911a~914aはX軸方向およびY軸方向の両方に対して傾斜する。なおここでは、上端面911a,912aでは、その傾斜部よりも中央部において液体が残留しやすいので、以下では、上端面911a,912aの傾斜として、その中央部の傾斜を述べる。上端面911a~914aの傾斜については後に詳述する。
【0086】
このキャリアCの揺動により、基板WおよびキャリアCの表面に付着した液体が振り落とされる。当該液体は主として有機溶剤であるものの、その一部に処理液を含んでいる場合がある。
【0087】
図3の例では、液膜L1による液置換処理が実質的に終了した到達時点以後のステップS5においても、有機溶剤の蒸気が供給され続けている。よって、このステップS5においても、当該蒸気が基板WおよびキャリアCの表面に付着して液化する。つまり、基板WおよびキャリアCの表面に付着した処理液の有機溶剤への置換は継続される。
【0088】
ステップS5の開始から所定期間が経過したときに、ステップS6にて、制御部7は有機溶剤ガス供給部61に有機溶剤の蒸気の供給を停止させる。具体的には、制御部7は開閉弁605を閉じる。これにより、有機溶剤の蒸気による液置換処理が終了する。
【0089】
開閉弁605の閉鎖により、ガスノズル601a,601bからは不活性ガスのみが供給される。不活性ガスは基板WおよびキャリアCに向かって流れ、基板WおよびキャリアCを乾燥させる(乾燥処理)。制御部7は加熱部606に不活性ガスの温度をステップS4よりも高い温度に昇温させるとよい。例えば加熱部606は不活性ガスを100℃から200℃の範囲に加熱する。これにより、不活性ガスによる基板WおよびキャリアCの乾燥を促進できる。
【0090】
基板WおよびキャリアCが十分に乾燥すると、ステップS7にて、制御部7は高温ガス供給部62に不活性ガスの供給を停止させる。具体的には、制御部7は開閉弁625を閉じ、加熱部606の加熱動作を停止させる。次にステップS8にて、制御部7は揺動部5にキャリアCの揺動を停止させる。具体的には、制御部7は回動駆動部59に動作を停止させる。次にステップS9にて、基板Wを搬出する。より具体的には、制御部7が蓋12を開いた上で、搬送機構がキャリアCを基板処理装置10の外部へと搬出する。
【0091】
以上のように、本基板処理装置10では、複数の基板Wに付着した処理液を蒸発潜熱の低い有機溶剤に置換させてから、基板Wを乾燥させている。よって、ウォーターマークが発生する可能性を低減できる。
【0092】
しかも、本基板処理装置10においては、キャリアCを回動させるための回動軸Q1はX軸、Y軸およびZ軸のいずれにも交差している。例えば回動軸Q1は平面視において、10度以上かつ80度以下の傾斜角θxzでX軸と交差している。よって、
図5から
図8から理解できるように、キャリアCの揺動中において、上端面911a~914aはX軸およびY軸の両方に対して傾斜する。
【0093】
図9は、揺動中のキャリアCの上端面911a~914aの傾斜を説明するための図である。
図9の例では、キャリアCが水平姿勢をとるときの上端面911a~914aが模式的に実線の平面で示されている。ここでは、キャリアCが水平姿勢をとるときに、揺動角φは零をとるものとする。
図9の例では、揺動角φが所定値であるときの上端面911a~914aが模式的に二点鎖線の平面で示されている。
図9の例では、揺動角φを、上端面911a~914aがX軸に対してなす揺動角φxと、上端面911a~914aがY軸に対してなす揺動角φyとで表現している。また、
図9の例では、上端面911a~914aの傾斜変化の図示を容易にすべく、回動軸Q1を上端面911a~914a上に示している。
【0094】
ここで、比較例として、キャリアCを揺動させるための回動軸(回動軸Q2)がX軸方向に平行である場合についても考慮する。
図10は、比較例にかかる揺動中のキャリアCの上端面911a~914aの傾斜を説明するための図である。
図10の例でも、揺動角φが零度であるときの上端面911a~914aが模式的に実線の平面で示されており、揺動角φが所定値であるときの上端面911a~914aが模式的に二点鎖線の平面で示されている。また、
図10の例でも、上端面911a~914aの傾斜変化の図示を容易にすべく、回動軸Q2を上端面911a~914a上に示している。
【0095】
比較例によれば、回動軸Q2のまわりでのキャリアCの揺動中において、上端面911a~914aはY軸に対して揺動角φ(=揺動角φy)をなして傾斜する。一方で、この揺動中において上端面911a~914aがX軸に対してなす揺動角φxは理想的には常に零度である。よって、上端面911a~914aの上に残留する液体には、上端面911a~914aに平行かつ回動軸Q2(X軸)に垂直な方向に力(例えば重力)F2が作用する。したがって、力F2は側壁部913,914の上端面913a,914aの上の液体に対してその長手方向に作用し、前壁部911および後壁部912の上端面911a,912aの上の液体に対してその短手方向に作用する。
【0096】
さて、キャリアCが疎水性を有している場合、液体はその表面張力により各上端面911a~914aの上で盛り上がった状態で残留する。また、液体は各上端面911a~914aの主として長手方向に分散的して残留する。つまり、各上端面911a~914aには、比較的厚みのある液滴が長手方向に分散して残留し得る。
【0097】
キャリアCの揺動中には、上端面913a,914aの上の液滴はその長手方向に力F2を受けるので、当該液滴はその長手方向に変形および移動する。なお揺動角φが小さい場合には、液滴の移動は小さい。この液滴の変形および若干の移動により、液滴はその隣の液滴と合流して大きな一塊の液滴となる。このような体積の大きな液滴は上端面913a,914aから落下しやすい。
【0098】
一方で、上端面911a,912aの上の液滴はその短手方向に力F2を受けるので、当該液滴はその短手方向に変形および移動する。しかるに、短手方向には他の液滴があまり存在しないので、他の液滴と合流せずに上端面911a,912a(特にその中央部)の上に残留し続け得る。つまり、上端面913a,914aの中央部上の液滴は短手方向に沿って揺れ動くものの、上端面911a,912aから落下しにくい。
【0099】
以上のように、揺動部5が、X軸に平行な回動軸Q2のまわりでキャリアCを回動させると、キャリアCの上端面913a,914aから液滴を振り落とすことが困難となる場合がある。
【0100】
なお、キャリアCは必ずしも疎水性を有している必要はない。この場合でも、キャリアCの上端面911a~914aの上の液滴が落下しにくい場合がある。例えば上述のように、上端面913a,914aの上の液滴は長手方向に力F2を受けるので、当該液滴は上端面913a,914aの上を長手方向に往復移動し、上端面913a,914aから容易に落下しない場合もあり得る。つまり、回動軸Q2のまわりでキャリアCを揺動させると、キャリアCの上端面913a,914aから液滴を振り落とすことが困難となる場合もあり得る。
【0101】
これに対して、本実施の形態では、揺動部5は、X軸、Y軸およびZ軸のいずれとも交差する回動軸Q1のまわりでキャリアCを回動させる。
図1および
図2の例では、回動軸Q1はZ軸に略垂直であり、X軸およびY軸とそれぞれ鋭角で交差する。この場合、キャリアCの上端面911a~914aは揺動中において、それぞれX軸およびY軸に対して揺動角φx,φyをなして傾斜する(
図9参照)。よって、上端面911a~914aの上の液滴には、上端面911a~914aに平行、かつ、X軸およびY軸と鋭角で交差する斜め方向(つまり回動軸Q1に垂直な方向)に力(例えば重力)F1が作用する。
【0102】
これによれば、上端面911a~914aの上の液滴は、その長手方向および短手方向に交差する斜め方向に変形および移動する。つまり、上端面911a,912aの上の液滴は短手方向のみならず長手方向にも変形および移動するので、比較例に比べて、その長手方向で隣り合う液滴と合流しやすく、液滴を上端面911a,912aから容易に振り落とすことができる。
【0103】
また、上端面913a,914aの上の液滴も斜め方向に変形および移動するので、長手方向に平行な液滴の往復移動は生じない。この観点では、液滴を上端面913a,914aから容易に振り落とすことができる。
【0104】
より具体的には、平面視における回動軸Q1の傾斜角θxzが10度以上80度以下であれば、効果的に液滴を上端面911a~914aから振り落とすことができる。
【0105】
以上のように、本基板処理装置10によれば、キャリアCの上端面911a~914aの上に付着した液滴を容易に振り落とすことができるので、キャリアCを短時間でより適切に乾燥することができる。
【0106】
また、上述の例では、揺動角φの範囲として±6度以上の範囲を採用している。言い換えれば、揺動角φの角度範囲の下限値は-6度以下であり、当該角度範囲の上限値は6度以上である。これによれば、キャリアCの上端面911a~914aの上の液滴をより効果的に振り落とすことができる。
【0107】
<回動軸Q1の傾斜角θxz>
さて、各基板Wの周縁部は、キャリアCの内部において、側壁部913の凸部93の間および側壁部914の凸部94の間に挿入されている(
図2参照)。よって、各基板Wの-X側の周縁部はY軸方向において凸部93によって挟まれており、各基板Wの+X側の周縁部は凸部94によって挟まれている。基板Wの周縁部と凸部93,94の各々との間の隙間が狭いと、当該隙間に液体が残留する可能性が大きくなる。
【0108】
キャリアCの揺動中において、基板WがキャリアCの内部でY軸方向に沿って簡単に移動すれば、基板Wと凸部93,94の各々との間の隙間を大きくすることができる。例えば
図7の状態において、基板Wが-Y側に変位すれば、基板Wとその+Y側の凸部93との間の隙間が大きくなる。同様に、基板Wとその+Y側の凸部94との間の隙間も大きくなる。また、例えば
図8の状態において、基板Wが+Y側に変位すれば、基板Wとその-Y側の凸部93の間の隙間、および、基板Wとその-Y側の凸部94との間の隙間が大きくなる。このように、キャリアCの揺動中には、基板Wとその両隣の凸部93との間の隙間を交互に大きくすることができ、同様に、基板Wと凸部94との間の隙間も交互に大きくすることができる。よって、当該隙間の液体を効果的に落下させることができる。これにより、より短時間でより適切に乾燥処理を行うことができる。
【0109】
基板WがY軸方向に沿って変位するには、キャリアCの揺動中おいて基板Wに作用する力のY軸成分が大きいことが望ましい。そこで、平面視において回動軸Q1がX軸に対してなす傾斜角θxz(
図2参照)を45度以下に設定することが望ましい。つまり、傾斜角θxzを10度以上45度以下に設定することが望ましい。これによれば、キャリアCの揺動中において各基板Wに作用する力(例えば重力)のY軸成分はそのX軸成分よりも大きくなる。よって、キャリアCの揺動中において、基板WをY軸方向において容易に変位させることができる。
【0110】
<回動軸Q1の傾斜方向>
図11は、基板処理装置10の他の一例を概略的に示す図である。
図11の例では、Y軸に沿って見て、回動軸Q1はX軸およびZ軸と交差している。Y軸に沿って見て回動軸Q1がX軸に対してなす傾斜角θxyは、例えば1度以上である。
【0111】
これによっても、揺動部5が回動軸Q1にまわりでキャリアCを回動させると、キャリアCの上端面911a~914aはX軸およびY軸の両方に対して傾斜する。よって、上端面911a~914aの上の液滴に生じる力F1は、長手方向成分および短手方向成分の両方を含む。したがって、キャリアCの揺動により、液滴を上端面911a~914aから容易に振り落とすことができる。
【0112】
この場合、Z軸に沿って見て、回動軸Q1はX軸に平行であってもよいし、あるいは、X軸と交差してもよい。この場合、平面視において回動軸Q1がX軸に対してなす傾斜角θxzは上述と同様であってもよい。
【0113】
<キャリアの揺動開始タイミング>
上述の例では、揺動部5は処理液の液面(液膜L1の液面)がキャリアCの下端に到達した到達時点以後に、キャリアCの揺動を開始する。言い換えれば、到達時点よりも前においては、キャリアCおよび基板Wは静止している。よって、液膜L1による液置換処理中において、キャリアCの揺動に起因した液膜L1の揺らぎを回避することができる。これによれば、液膜L1の厚みのばらつき等を抑制することができ、液置換処理を複数の基板WおよびキャリアCに対して均等に行うことができる。
【0114】
<処理液排出後の液置換処理>
上述の例では、有機溶剤ガス供給部61は、貯留槽2内の処理液の液面(液膜L1の液面)がキャリアCの下端に到達した到達時点から所定期間に亘って、有機溶剤の蒸気の供給を維持している(ステップS4~S6参照)。つまり、貯留槽2内の処理液の液膜L1による基板WおよびキャリアCに対する液置換処理が終了した後にも、有機溶剤の蒸気の供給が維持される。
【0115】
また、上述の例では、この所定期間内の所定の時点、つまり、到達時点から所定期間が経過するまでの時点において、揺動部5がキャリアCの揺動を開始する(ステップS5)。したがって、基板WおよびキャリアCの表面に処理液が残留していたとしても、その処理液を振り落とすことができる。また、所定期間において有機溶剤の蒸気が供給されるので、この蒸気は基板WおよびキャリアCの表面で液化し、基板WおよびキャリアCの表面に付着する。言い換えれば、この所定期間においても、処理液を有機溶剤に置換する液置換処理が当該所定期間でも行われる。
【0116】
以上のように、液膜L1による液置換処理の後でも、有機溶剤の蒸気による液置換処理が行われる。よって、たとえ液膜L1による液置換処理後に処理液が基板WおよびキャリアCに残留していたとしても、その処理液の少なくとも一部を有機溶剤に置換することができる。これによれば、基板WおよびキャリアCにおけるウォーターマークの発生をさらに抑制することができる。
【0117】
<処理液排出後の処理>
その一方で、液膜L1による液置換処理(ステップS4)によって、基板WおよびキャリアCの表面の処理液を十分に有機溶剤に置換できる場合もある。この場合、有機溶剤ガス供給部61は、液膜L1による液置換処理(ステップS4)の後に速やかに有機溶剤の蒸気の供給を停止し、揺動部5はその供給の停止以後に速やかにキャリアCの揺動を開始してもよい。
図12は、基板処理装置10の当該動作の一例を示すフローチャートである。ステップS11~S14はそれぞれステップS1~S4と同一である。
【0118】
処理液の液面(液膜L1の液面)がキャリアCの下端に到達した到達時点以後に、ステップS15にて、制御部7は有機溶剤ガス供給部61に有機溶剤の蒸気の供給を停止させる。例えば、制御部7は、処理液の液面がキャリアCの下端に到達した到達時点と、開閉弁43,44を閉じる時点との間の時点において、有機溶剤の蒸気の供給を停止させる。
【0119】
次に、ステップS16にて、制御部7は揺動部5にキャリアCの揺動を開始させる。次に制御部7はステップS17~S19を実行する。ステップS17~S19はそれぞれステップS7~S9と同一である。
【0120】
これによれば、液膜L1による液置換処理の終了後に速やかに、高温の不活性ガスによる乾燥処理を行うことができる。よって、基板処理装置10の処理時間を短縮することができる。つまり、基板処理装置10のスループットを向上できる。
【0121】
第2の実施の形態.
図13は、第2の実施の形態にかかる基板処理装置10Aの構成の一例を概略的に示す図である。基板処理装置10Aは、ガス供給部6の構成を除いて、基板処理装置10と同様の構成を有している。
【0122】
図13に例示するように、ガス供給部6の有機溶剤ガス供給部61および高温ガス供給部62は、互いに異なるガスノズル601,621からそれぞれ有機溶剤の蒸気および不活性ガスを供給する。これにより、ガスノズル601からの有機溶剤の蒸気の吐出方向を、ガスノズル621からの不活性ガスの吐出方向と独立して設定することができる。
【0123】
例えばガスノズル601a,601bは水平方向に沿って有機溶剤の蒸気を吐出する。つまり、ガスノズル601a,601bからの有機溶剤の蒸気の吐出方向は水平方向(例えばX軸方向)である。具体的には、ガスノズル601aはガスノズル601bへ向かってX軸方向に沿って蒸気を吐出し、ガスノズル601bはガスノズル601aへ向かってX軸方向に沿って蒸気を吐出する。なお、この吐出方向は、ガスノズル601に形成された吐出孔の形状に応じて定まり得る。吐出孔は、ガスノズル601の内部と吐出口とを連通する孔であり、例えば、吐出口付近の当該吐出孔の延在方向(つまり吐出口の開口軸)が蒸気の吐出方向であると定義することができる。
【0124】
図13の例では、ガスノズル621は貯留槽2よりも+Z側の上部空間に配置されている。また
図13の例では、ガスノズル621として、一対のガスノズル621a,621bが配置されている。ガスノズル621a,621bは例えばX軸方向において互いに離れている。具体的には、ガスノズル621aは貯留槽2の中心に対して-X側に配置されており、ガスノズル621bは貯留槽2の中心に対して+X側に配置されている。ガスノズル621a,621bは互いに略等しい高さ位置に配置されている。ガスノズル621a,621bは例えばY軸方向に沿って延在しており、Y軸方向に沿って並ぶ複数の吐出口を有していてもよい。
図13の例では、ガスノズル621a,621bは基板Wに向けて不活性ガスを吐出する。具体的には、ガスノズル621aは+X側かつ-Z側の斜め方向に不活性ガスを吐出し、ガスノズル621bは-X側かつ-Z側の斜め方向に不活性ガスを吐出する。
【0125】
図13の例では、高温ガス供給部62はガスノズル621a,621bと供給管622a,622b,623と開閉弁625と加熱部626とを含んでいる。ガスノズル621aは供給管622a,623を介してガス供給源624に連通接続される。具体的には、供給管622aの一端はガスノズル621aに連通接続され、供給管622aの他端は供給管623の一端に連通接続され、供給管623の他端はガス供給源624に連通接続される。ガス供給源624は供給管623の他端に不活性ガスを供給する。ガスノズル621bは供給管622b,623を介してガス供給源624に連通接続される。具体的には、供給管622bの一端はガスノズル621bに連通接続され、供給管622bの他端は供給管623の一端に連通接続される。
【0126】
開閉弁625は供給管623の途中に設けられ、供給管623内の流路の開閉を切り替える。加熱部626は例えばヒータであり、供給管623に設けられている。加熱部626は供給管623の内部を流れる不活性ガスを、例えば100℃から200℃の範囲に加熱する。
【0127】
開閉弁625が開くことにより、不活性ガスがガス供給源624から供給管623,602a,602bの内部を流れる。この蒸気は加熱部626によって加熱された上で、ガスノズル621a,621bから吐出される。ガスノズル621a,621bは基板WおよびキャリアCに向けて高温の不活性ガスを供給する。よって、不活性ガスが基板WおよびキャリアCを流れやすく、基板WおよびキャリアCを効果的に乾燥させることができる。
【0128】
一方で、ガスノズル601は上述のように、有機溶剤の蒸気を水平方向に沿って吐出する。よって、第1の実施の形態に比して、ガスノズル601から吐出された有機溶剤の蒸気は貯留槽2の上部空間で広がりやすく、貯留槽2に貯留された処理液の液面に対して、より広い範囲でより均一に接触する。したがって、貯留槽2に貯留された処理液の液面に揺らぎが生じにくく、また液膜L1の厚みのばらつきを低減することができる。
【0129】
つまり、第1の実施の形態では、有機溶剤の蒸気が貯留槽2の処理液の液面の例えば中央付近に集中して供給され得る(
図1参照)ので、処理液の液面に揺らぎが生じたり、また液膜L1の厚みにばらつきが生じ得る。これに対して、第2の実施の形態では、ガスノズル601は有機溶剤を水平方向に沿って吐出してるので、処理液の液面の揺らぎを抑制し、液膜L1の厚みのばらつきを低減できる。これにより、この処理液の排出の際に基板Wと液膜L1との間で生じる表面張力の、複数の基板W間のばらつきを低減することができる。
【0130】
例えばある基板Wの-Y側の主面と液膜L1との間に生じる表面張力が、当該基板Wの+Y側の主面と液膜L1との間に生じる表面張力よりも大きい場合について考慮する。もしも、これらの表面張力の差が大きい場合には、処理液の排出中に当該基板Wが-Y側に倒れ得る。このような倒れは、基板Wの自重が軽いほど、また、基板Wが薄いほど生じやすい。また基板Wが薄いほど、衝突による破損が生じやすいので、薄い基板Wがその隣の基板Wと衝突すると破損することもあり得る。しかるに本基板処理装置10では上述のように表面張力の差(ばらつき)を低減できるので、基板Wが倒れにくい。ひいては、基板Wが破損する可能性を低減できる。
【0131】
また基板Wが薄い場合、表面張力の差に起因して基板Wが撓んで、その隣の基板Wと密着することもあり得る。このように基板Wが密着すると、その密着部分で処理液が有機溶剤に置換されにくく、乾燥が困難となる。しかるに本基板処理装置10では、表面張力の差を低減できるので、そのような不具合も生じにくい。
【0132】
なお、ガスノズル601a,601bからの有機溶剤の蒸気の吐出方向は、必ずしも水平方向に沿っている必要はない。例えばガスノズル601a,601bは水平方向よりも+Z側に向けて有機溶剤の蒸気を吐出してもよい。つまり、吐出方向は水平方向よりも+Z側に向く方向であってもよい。これによっても、ガスノズル601a,601bから吐出された有機溶剤の蒸気は上部空間で広がりやすく、処理液の液面に対してより広い範囲でより均一に接触する。よって、液膜L1と基板Wとの間の表面張力のばらつきを低減できる。
【0133】
また
図13の例では、ガスノズル601a,601bはそれぞれガスノズル621a,621bに対して+Z側に配置されている。よって、ガスノズル601a,601bは貯留槽2からより離れた位置で蒸気を吐出できる。これによれば、蒸気は貯留槽2内の処理液の液面に接触するまでにより広い範囲で広がりやすい。よって、処理液の液面の揺らぎを効果的に低減でき、また液膜L1の厚みのばらつきをより効果的に低減できる。一方で、ガスノズル621a,621bはより基板WおよびキャリアCに近い位置で高温の不活性ガスを吐出できる。したがって、より高い圧力かつより高い温度で高温ガスを基板WおよびキャリアCに接触させることができる。これにより、基板WおよびキャリアCをより効果的に乾燥できる。
【0134】
第3の実施の形態.
図14は、第3の実施の形態にかかる基板処理装置10Bの構成の一例を概略的に示す図である。基板処理装置10Bは、揺動部5の構成を除いて、基板処理装置10と同様の構成を有している。
【0135】
基板処理装置10Bにおいては、揺動部5は突起支持部512をさらに含んでいる。
図15は、突起支持部512、キャリアCおよび基板Wの位置関係を説明するための図である。
図15は、一つの基板Wを通る位置でのZX断面を示している。
図14および
図15を参照して、突起支持部512は載置台51の+Z側の主面から+Z側に突出している。突起支持部512は例えば石英または樹脂等によって形成され得る。この突起支持部512は、キャリアCが載置台51の上に載置された状態で、キャリアCの-Z側の開口部9bとZ軸方向において対向する領域内に配置される。突起支持部512の先端(+Z側の端部)はキャリアCの-Z側の開口部9bにおいて複数の基板Wの側面に当接し、複数の基板WをキャリアCに対して浮かした状態で支持する。つまり、複数の基板Wが突起支持部512に支持された状態においては、基板Wは側壁部913の内周面913bおよび側壁部914の内周面914bから離れており、キャリアCはもはや複数の基板WをZ軸方向において支持していない。ただし、基板Wの起立姿勢を維持できるように、この状態でも各凸部93は2つの基板Wの間に位置しており、各凸部94も2つの基板Wの間に位置している。このような支持は、突起支持部512のZ軸方向における高さを調整することで実現できる。
【0136】
図14および
図15の例では、突起支持部512として一対の突起支持部512a,512bが設けられている。突起支持部512a,512bは、基板WのX軸方向における中心を挟む位置に配置されている。突起支持部512aは当該中心に対して-X側に配置され、突起支持部512bは当該中心に対して+X側に配置される。よって、突起支持部512aの先端は基板Wの中心よりも-X側にずれた位置で複数の基板Wの側面に当接し、突起支持部512bの先端は基板Wの中心よりも+X側にずれた位置で複数の基板Wの側面に当接する。これにより、突起支持部512a,512bは基板WのX軸方向およびZ軸方向における位置を固定することができる。突起支持部512a,512bは、突起支持部512aおよび基板Wの接触位置と、突起支持部512bおよび基板Wの接触位置との間の距離が数十[mm]程度(例えば40[mm])となる位置に配置される。
【0137】
また突起支持部512aは側壁部913,914のいずれともX軸方向において離れており、突起支持部512bは側壁部913,914のいずれともX軸方向において離れている。つまり、突起支持部512aと側壁部913との間には間隙が形成されており、突起支持部512bと側壁部914との間にも間隙が形成されている。
【0138】
この基板処理装置10Bにおいて、基板Wの側面と内周面913bとの間の空間はZX平面においてキャリアCの+Z側の開口部9aに連通しつつ、-Z側の開口部9bにも連通している。言い換えれば、当該空間は開口部9a,9bを繋げる。同様に、基板Wの側面と内周面914bとの間の空間も開口部9a,9bを繋げる。
【0139】
基板処理装置10Bの動作は第1の実施の形態と同様であり、その具体的なフローチャートは
図3または
図12と同一である。ただしステップS2またはステップS12において、キャリアCが貯留槽2の内部へと+Z側から搬入されると、キャリアCが載置台51の+Z側の主面の上に載置される前に、突起支持部512の先端が複数の基板Wの側面に当接する。キャリアCは引き続き-Z側へと移動する一方で、複数の基板Wは突起支持部512に支持されるので-Z側には移動しない。よって、複数の基板WはキャリアCに対して浮いた状態で支持される。
【0140】
この状態では、基板Wの側面と側壁部913,914の内周面913b,914bとの間の空間がZX平面においてキャリアCの開口部9a,9bを繋げる(
図15参照)。よって、ステップS4またはステップS14における処理液の排出中において、基板Wの側面と側壁部913,914の内周面913b,914bとの間の空間内の処理液は-Z側に流れやすく、開口部9bを介して貯留槽2の底部から外部へと搬出されやすい。言い換えれば、基板Wの側面と側壁部913,914の内周面913b,914bの各々との間の空間において処理液の残留が生じにくい。したがって、その後の不活性ガスによる乾燥時間を短縮することができる。発明者は、基板処理装置10Bを採用することにより乾燥時間を約2/3にできることを確認した。
【0141】
<突起支持部の形状>
図14および
図15の例では、突起支持部512は+Z側に向かうにしたがって先細となる先細形状を有している。これよれば、突起支持部512と基板Wの側面との接触面積を小さくすることができるので、この接触箇所における処理液の残留量も低減できる。この観点によれば、突起支持部512はZX平面において点接触で基板Wと接触することが望ましい。また突起支持部512はY軸方向に沿って一様に延在しているとよい。これによれば、全ての基板Wの側面との接触面積を低減できる。
【0142】
以下では、突起支持部512aの先端部を形成する-X側の面および+X側の面をそれぞれ先端面513,514と呼び、突起支持部512bの先端部を形成する-X側の面および+X側の面をそれぞれ先端面515,516と呼ぶ。先端面513,514は例えば平面であって、その+Z側の端部において互いに連結されており、突起支持部512aの先細形状を形成する。先端面515,516は例えば平面であって、その+Z側の端部において互いに連結されており、突起支持部512bの先細形状を形成する。
【0143】
図15の例では、基板Wの中心よりも-X側に位置する突起支持部512aにおいて、-X側の先端面513は+X側の先端面514よりもZ軸方向に沿っている。逆に言えば、突起支持部512aにおいて先端面514の傾斜は先端面513の傾斜よりも緩やかである。
【0144】
一方で、基板Wの中心に対して+X側に位置する突起支持部512bにおいては、+X側の先端面516が-X側の先端面515よりもZ軸方向に沿っている。逆に言えば、突起支持部512bにおいて先端面515の傾斜は先端面516の傾斜よりも緩やかである。
【0145】
より具体的には、一対の突起支持部512の先端はZX平面においてカッター刃と同様の形状を有しており、その頂点がX軸方向において両端に位置している。つまり、-X側の突起支持部512aは、その頂点が-X側にずれたカッター刃形状を有しており、+X側の突起支持部512bはその頂点が+X側にずれたカッター刃形状を有している。
【0146】
側壁部913の内周面913bと基板Wの側面との間の空間を通って流れる処理液は開口部9bにおいて突起支持部512aへ向かって流れる。そして当該処理液は突起支持部512aの先端面513に当る。この突起支持部512aの先端面513はZ軸方向に沿っているので、処理液は先端面513に沿って-Z側に流れやすい。したがって、当該処理液を排出しやすく、処理液の残留を低減できる。
【0147】
同様に、側壁部914の内周面914bと基板Wとの間の空間を通って流れる処理液は開口部9bにおいて突起支持部512bへ向かって流れる。この処理液は突起支持部512bの先端面516に当る。この突起支持部512bの先端面516はZ軸方向に沿っているので、処理液は先端面516に沿って-Z側へと流れやすい。したがって、当該処理液を排出しやすく、処理液の残留を抑制できる。
【0148】
以上、実施の形態が説明されたが、この基板処理装置10はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。本実施の形態は、その開示の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【0149】
例えば上述の例では、揺動部5は載置台51を揺動させることにより、キャリアCを揺動させた。しかるに、キャリアCが貯留槽2の底面の上に載置される場合、つまり、載置台51および固定部材52が設けられない場合には、貯留槽2を回動軸Q1のまわりで揺動させてもよい。言い換えれば、貯留槽2の底部が載置台51として機能してもよい。この場合、貯留槽2を回動軸Q1のまわりで回動可能にチャンバ1に固定する固定部材が設けられればよい。
【符号の説明】
【0150】
2 貯留槽
3 処理液供給部
4 排出部
5 揺動部
10,10A 基板処理装置
31 液ノズル
51 載置台
93,94 凸部
512,512a,512b 突起支持部
601,601a,601b,621,621a,621b ガスノズル
913,914 側壁部
C 基板格納容器(キャリア)
W 基板