(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】加工プログラム生成支援装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4097 20060101AFI20230829BHJP
B23Q 15/00 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
G05B19/4097 C
B23Q15/00 B
(21)【出願番号】P 2019154765
(22)【出願日】2019-08-27
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】劉 兆甲
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/167736(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/122986(WO,A1)
【文献】特開平09-062326(JP,A)
【文献】特開2021-028766(JP,A)
【文献】特開2019-219878(JP,A)
【文献】特開平11-066112(JP,A)
【文献】国際公開第2005/040948(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18-19/416
B23Q 15/00-15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークのCADデータから前記ワークの加工プログラムを生成することを支援する加工プログラム生成支援装置であって、
前記CADデータを解析して、前記ワークの形状情報であるCAD形状情報を得るCADデータ解析部と、
作業者によって作成された作成途中の加工プログラムを解析して、作成途中の前記ワークの形状情報である加工形状情報を得る加工プログラム解析部と、
前記CADデータ解析部によって得られた前記CAD形状情報と前記加工プログラム解析部によって得られた作成途中の前記加工形状情報との形状の相対位置マッチングを行い、相対位置マッチング形状情報を得るとともに、前記相対位置マッチング形状情報に基づいて、前記加工形状情報における作業者による位置の入力ミスの有無を判定する相対位置マッチング部と、
前記加工プログラム解析部によって得られた前記加工形状情報を表示するとともに、前記相対位置マッチング部によって判定された前記加工形状情報における作業者による位置の入力ミスの部位をエラー表示する表示部と、
前記CADデータ解析部によって得られた前記CAD形状情報の座標系を設定する座標系設定部と、
前記座標系設定部によって設定した前記CAD形状情報の座標と前記加工プログラム解析部によって得られた前記加工形状情報の座標とのマッチングを行い、座標マッチングされたマッチング座標情報を得るとともに、前記マッチング座標情報に基づいて、前記加工形状情報における作業者による座標値の入力ミスの有無を判定する座標値チェック部と、
前記座標系設定部によって設定した座標系における前記CAD形状情報に基づいて、前記座標値チェック部によって得られた前記マッチング座標情報に続く候補形状を予測することにより、前記加工形状情報に続く候補形状を予測し、候補形状情報を自動で生成する候補予測部と、
を備え
、
前記表示部は、更に、前記座標値チェック部によって判定された前記加工形状情報における作業者による座標値の入力ミスの部位をエラー表示するとともに、前記加工プログラム解析部によって得られた前記加工形状情報に重ねて、前記候補予測部によって生成された前記候補形状情報を表示する、加工プログラム生成支援装置。
【請求項2】
前記候補予測部によって生成された前記候補形状情報を作業者によって選択入力する候補選択部と、
前記候補選択部によって選択入力された前記候補形状情報に基づいて、前記加工プログラムを自動で修正するプログラム修正部と、
を更に備え、
前記表示部は、更に、前記プログラム修正部によって前記加工プログラムが修正された場合に、修正後の前記加工プログラムを表示する、請求項1に記載の加工プログラム生成支援装置。
【請求項3】
ワークのCADデータから前記ワークの加工プログラムを生成することを支援する加工プログラム生成支援装置であって、
前記CADデータを解析して、前記ワークの形状情報であるCAD形状情報を得るCADデータ解析部と、
作業者によって作成された作成途中の加工プログラムを解析して、作成途中の前記ワークの形状情報である加工形状情報を得る加工プログラム解析部と、
前記CADデータ解析部によって得られた前記CAD形状情報と前記加工プログラム解析部によって得られた作成途中の前記加工形状情報との形状の相対位置マッチングを行い、相対位置マッチング形状情報を得るとともに、前記相対位置マッチング形状情報に基づいて、前記加工形状情報における作業者による位置の入力ミスの有無を判定する相対位置マッチング部と、
前記加工プログラム解析部によって得られた前記加工形状情報を表示するとともに、前記相対位置マッチング部によって判定された前記加工形状情報における作業者による位置の入力ミスの部位をエラー表示する表示部と、
前記CADデータ解析部によって得られた前記CAD形状情報の座標系を設定する座標系設定部と、
前記座標系設定部によって設定した前記CAD形状情報の座標と前記加工プログラム解析部によって得られた前記加工形状情報の座標とのマッチングを行い、座標マッチングされたマッチング座標情報を得るとともに、前記マッチング座標情報に基づいて、前記加工形状情報における作業者による座標値の入力ミスの有無を判定する座標値チェック部と、
前記座標系設定部によって設定した座標系における前記CAD形状情報に基づいて、前記座標値チェック部によって得られた前記マッチング座標情報に続く候補形状を予測することにより、前記加工形状情報に続く候補形状を予測し、候補形状情報を自動で生成する候補予測部と、
前記候補予測部によって生成された前記候補形状情報を作業者によって選択入力する候補選択部と、
前記候補選択部によって選択入力された前記候補形状情報に基づいて、前記加工プログラムを自動で修正するプログラム修正部と、
を備え、
前記表示部は、更に、前記座標値チェック部によって判定された前記加工形状情報における作業者による座標値の入力ミスの部位をエラー表示するとともに、前記プログラム修正部によって前記加工プログラムが修正された場合に、修正後の前記加工プログラムを表示する、加工プログラム生成支援装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記エラー表示を強調表示する、請求項1~
3の何れか1項に記載の加工プログラム生成支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工プログラム生成支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、工作機械又は産業用ロボット等の産業用機械の動作を制御してワーク(加工対象物)の加工を行うための加工プログラムを、ワークのCAD(Computer Aided Design)データから生成する技術が知られている。このような加工プログラム生成技術として、CADデータから自動で加工プログラムを生成するCAM(Computer Aided Manufacturing)等の技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、簡単な加工の場合、CAMを用いずに、例えばCNC(Computer Numerical Control)上でCAD図面を表示し、CAD図面を見ながら、作業者が手動で加工プログラムを生成することがある。このような場合、ワークの全ての形状(加工形状)を手動で入力すると、作業効率が悪く、入力ミスが増える。
【0005】
そこで、作業者が手動で加工プログラムを生成する際に、作業者の入力ミスをチェックすることができる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る加工プログラム生成支援装置は、ワークのCADデータから前記ワークの加工プログラムを生成することを支援する加工プログラム生成支援装置であって、前記CADデータを解析して、前記ワークの形状情報であるCAD形状情報を得るCADデータ解析部と、作業者によって作成された作成途中の加工プログラムを解析して、作成途中の前記ワークの形状情報である加工形状情報を得る加工プログラム解析部と、前記CADデータ解析部によって得られた前記CAD形状情報と前記加工プログラム解析部によって得られた作成途中の前記加工形状情報との形状の相対位置マッチングを行い、マッチング形状情報を得るとともに、前記マッチング形状情報に基づいて、前記加工形状情報における作業者による入力ミス部位の有無を判定する相対位置マッチング部と、前記加工プログラム解析部によって得られた前記加工形状情報を表示するとともに、前記相対位置マッチング部によって判定された前記加工形状情報における作業者による入力ミス部位をエラー表示する表示部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、作業者が手動で加工プログラムを生成する際に、作業者の入力ミスをチャックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】加工プログラム生成支援装置の一実施形態を示す図である。
【
図2A】作業者によって作成された作成途中のNCプログラムと、NCプログラム解析部によって解析されたNCプログラムにおける作成途中のワークの形状情報(NC形状情報)との一例を示す図である。
【
図2B】NCプログラム解析部によるNCプログラム解析処理を示すフローチャートである。
【
図3A】CADデータと、CADデータ解析部によって解析されたワークの形状情報(CAD形状情報)との一例を示す図である。
【
図3B】CADデータ解析部によるCADデータ解析処理を示すフローチャートである。
【
図4A】相対位置マッチング部によって相対位置マッチングされる穴加工におけるNC形状情報とCAD形状情報との一例を示す図である。
【
図4B】相対位置マッチング部による相対位置マッチング処理(穴位置)を示すフローチャートである。
【
図5】相対位置マッチング部による相対位置マッチング処理(穴位置)による穴位置の一例を示す図である。
【
図6A】相対位置マッチング部によって形状マッチングされる輪郭加工におけるNC形状情報とCAD形状情報との一例を示す図である。
【
図6B】相対位置マッチング部による相対位置マッチング処理(輪郭形状)を示すフローチャートである。
【
図7A】相対位置マッチング部による相対位置マッチング処理(輪郭形状)における輪郭形状の一例を示す図である。
【
図7B】相対位置マッチング部による相対位置マッチング処理(輪郭形状)における輪郭形状の他の一例を示す図である。
【
図7C】相対位置マッチング部による相対位置マッチング処理(輪郭形状)における輪郭形状の更に他の一例を示す図である。
【
図7D】相対位置マッチング部による相対位置マッチング処理(輪郭形状)における輪郭形状の更に他の一例を示す図である。
【
図8A】座標値チェック部によって座標マッチングされる穴加工におけるNC形状情報と座標設定部によって設定した座標系におけるCAD形状情報との一例を示す図である。
【
図8B】座標値チェック部による座標値チェック処理(穴位置)を示すフローチャートである。
【
図9A】座標値チェック部によって座標マッチングされる輪郭加工におけるNC形状情報と座標設定部によって設定した座標系におけるCAD形状情報との一例を示す図である。
【
図9B】座標値チェック部による座標値チェック処理(輪郭形状)を示すフローチャートである。
【
図10】候補予測部による候補予測処理(穴位置)を示すフローチャートである。
【
図11A】穴加工におけるマッチング形状情報、作業者による入力ミス部位及び候補予測部によって生成される候補形状(格子)の一例を示す図である。
【
図11B】穴加工におけるマッチング形状情報、作業者による入力ミス部位及び候補予測部によって生成される候補形状(格子)の他の一例を示す図である。
【
図11C】穴加工におけるマッチング形状情報、作業者による入力ミス部位及び候補予測部によって生成される候補形状(格子)の更に他の一例を示す図である。
【
図11D】穴加工におけるマッチング形状情報、作業者による入力ミス部位及び候補予測部によって生成される候補形状(直線)の一例を示す図である。
【
図11E】穴加工におけるマッチング形状情報、作業者による入力ミス部位及び候補予測部によって生成される候補形状(円弧)の一例を示す図である。
【
図11F】穴加工におけるマッチング形状情報、作業者による入力ミス部位及び候補予測部によって生成される候補形状(四角)の一例を示す図である。ある。
【
図12】候補予測部による候補予測処理(輪郭形状)を示すフローチャートである。
【
図13】輪郭加工におけるマッチング形状情報、作業者の入力ミスによる形状及び候補予測部によって生成される候補形状の一例を示す図である。
【
図14】加工プログラム修正部による加工プログラム修正処理(穴位置)を示すフローチャートである。
【
図15】加工プログラム修正部による加工プログラム修正処理(輪郭形状)を示すフローチャートである。
【
図16】表示部のCADデータ表示(右側)及びプログラム表示(左側)の一例を示す図である(穴加工)。
【
図17】表示部のCADデータ表示(右側)及びプログラム表示(左側)の一例を示す図である(輪郭加工)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0010】
図1は、加工プログラム生成支援装置の一実施形態を示す図である。
図1に示す加工プログラム生成支援装置1は、例えば工作機械の数値制御装置(Computer Numerical Control:CNC)に搭載される。数値制御装置は、加工プログラム(以下、NCプログラムともいう。)に基づいて工作機械の動作を制御し、ワークの加工を行う。簡単な加工の場合、CAMを用いずに、例えば数値制御装置上でCAD図面を表示し、CAD図面を見ながら、作業者が手動で加工プログラムを生成することがある。このように、作業者が手動で加工プログラムを生成する際、加工プログラム生成支援装置1は、作業者による入力ミスの有無をチェックして、加工プログラムの生成を支援する。
【0011】
加工プログラム生成支援装置1は、NCプログラム入力部11と、NCプログラム解析部12と、NC形状情報保存部13と、CADデータ入力部21と、CADデータ解析部22と、第1のCAD形状情報保存部23と、相対位置マッチング部30と、座標系設定部41と、第2のCAD形状情報保存部42と、座標値チェック部50と、候補予測部60と、候補選択部71と、プログラム修正部72と、表示部80と、を備える。
【0012】
NCプログラム入力部11は、作業者によって作成されたNCプログラムを入力する。
【0013】
NCプログラム解析部12は、加工プログラム解析部であり、作業者によって作成された作成途中のNCプログラムを解析して、作成途中のワークの形状情報であるNC形状情報を得る。NCプログラムは、作業者によってNCプログラム入力部11に入力される加工プログラムである。
【0014】
NC形状情報は、加工形状情報である。NC形状情報は、後述するように、穴加工の場合には、「穴位置の中心点の座標」を含み、輪郭加工の場合には、「直線の始点の座標及び終点の座標」、「円の中心点の座標及び半径」、又は「円弧の中心点の座標、半径、起点角度及び終点角度」、のうちの少なくとも1つを含む。
【0015】
NC形状情報保存部13は、NCプログラム解析部12によって解析されたNC形状情報を保存する。
【0016】
CADデータ入力部21は、例えばCADからのワークのCADデータを入力する。
【0017】
CADデータ解析部22は、CADデータを解析して、ワークの形状情報であるCAD形状情報を得る。CAD形状情報は、後述するように、穴加工の場合には、「穴位置の中心点の座標」を含み、輪郭加工の場合には、「直線の始点の座標及び終点の座標」、「円の中心点の座標及び半径」、又は「円弧の中心点の座標、半径、起点角度及び終点角度」、のうちの少なくとも1つを含む。
【0018】
第1のCAD形状情報保存部23は、CADデータ解析部22によって解析されたCAD形状情報を保存する。
【0019】
相対位置マッチング部30は、NCプログラム解析部12によって得られたNC形状情報をNC形状情報保存部13から読み出すとともに、CADデータ解析部22によって得られたCAD形状情報を第1のCAD形状情報保存部23から読み出し、NC形状情報とCAD形状情報との形状の相対位置マッチングを行う。これによって、相対位置マッチング部30は、形状の相対位置がマッチングされた相対位置マッチング形状情報を得る。これとともに、相対位置マッチング部30は、得られた相対位置マッチング形状情報に基づいて、NC形状情報における作業者による位置の入力ミスの有無を判定する。相対位置マッチング部30によってNC形状情報における作業者による位置の入力ミスがあると判定された場合、その入力ミスの部位に関する判定結果の情報は表示部80に送られる。
【0020】
座標系設定部41は、CADデータ解析部22によって得られたCAD形状情報を第1のCAD形状情報保存部23から読み出すとともに、そのCAD形状情報について、CAD形状情報の座標系を設定する。具体的には、座標系設定部41は、CAD形状情報について、後述する表示部80のCADデータ表示部81上のXY座標系と原点を設定する。
【0021】
第2のCAD形状情報保存部42は、座標系設定部41によって設定した座標系におけるCAD形状情報を保存する。
【0022】
座標値チェック部50は、NCプログラム解析部12によって得られたNC形状情報をNC形状情報保存部13から読み出すとともに、座標系設定部41によって設定した座標系におけるCAD形状情報を第2のCAD形状情報保存部42から読み出し、NC形状情報の座標とCAD形状情報の座標とのマッチングを行い、座標マッチングされたマッチング座標情報(マッチングされたCAD形状情報)を得る。これとともに、座標値チェック部50は、得られたマッチング座標情報に基づいて、NC形状情報における作業者による座標値の入力ミスの有無を判定する。座標値チェック部50によってNC形状情報における作業者による座標値の入力ミスがあると判定された場合、その入力ミスの座標値に関する判定結果の情報は表示部80に送られる。
【0023】
候補予測部60は、座標系設定部41によって設定した座標系におけるCAD形状情報に基づいて、座標値チェック部50によって得られたマッチング座標情報に続く候補形状を予測することにより、作成途中のNC形状情報に続く候補形状を予測し、座標値を含む候補形状情報を自動で生成する。候補予測部60による候補形状の予測は、例えば、座標値チェック部50によってNC形状情報における作業者による座標値の入力ミスがあると判定された場合に行うことができる。候補予測部60によって予測された候補形状情報は、作成途中のNC形状情報において、作業者によって入力ミスされた座標値及びその座標値が示す位置に代わって正しいと想定される座標値及びその座標値が示す位置を表す。候補予測部60によって生成された候補形状情報は、表示部80に送られる。
【0024】
候補選択部71は、候補予測部60によって生成された候補形状情報を作業者が選択入力可能に構成される。例えば、候補選択部71は、候補形状情報が表示された表示部80の画面上に設定することができる。これによって、作業者は、表示部80の画面上に表示された候補形状情報を直接選択入力することができる。
【0025】
プログラム修正部72は、候補選択部71によって作業者が選択入力した候補形状情報に基づいて、作業者によって作成された作成途中のNCプログラムを自動で修正し、候補選択部71によって選択入力された候補形状情報をNCプログラムに反映させる。プログラム修正部72によって修正された修正後のNCプログラムは、表示部80に送られる。
【0026】
表示部80は、液晶ディスプレイ等の表示装置である。本実施形態における表示部80は、
図1に示すように、少なくとも、CADデータ表示部81と、プログラム表示部82と、相対位置エラー表示部83と、座標値エラー表示部84と、候補表示部85と、を含む。
【0027】
ここで、表示部80について、
図16及び
図17を参照して説明する。
図16は、表示部のCADデータ表示(右側)及びプログラム表示(左側)の一例を示す図である(穴加工)。
図17は、表示部のCADデータ表示(右側)及びプログラム表示(左側)の一例を示す図である(輪郭加工)。
【0028】
CADデータ表示部81は、表示部80の画面上の右側半分の矩形領域に設定される。CADデータ表示部81は、CADデータ解析部22によって解析されたワークのCADデータ(CAD図面)を表示する。これにより、作業者は、CADデータ表示部81を見ながら手動でNCプログラムを生成することができる。
【0029】
プログラム表示部82は、表示部80の画面上の左側半分の矩形領域に設定される。プログラム表示部82は、作業者によって作成された作成途中のNCプログラムを表示する。プログラム修正部72によってNCプログラムが修正された場合は、その修正された後のNCプログラムを表示することもできる。
【0030】
相対位置エラー表示部83は、CADデータ表示部81上に設定される。相対位置エラー表示部83は、相対位置マッチング部30によってNC形状情報における作業者による位置の入力ミスがあると判定された場合の判定結果の情報を、CADデータ表示部81に表示されるCADデータに重ねてエラー表示する。
【0031】
相対位置エラー表示部83によるエラー表示は、作業者による位置の入力ミスの部位を、他の部位に対して容易に識別可能となるように行われることが望ましい。相対位置エラー表示部83によるエラー表示は、例えば強調表示であってもよい。強調表示の具体的な方法としては、入力ミスの部位の色を他の部位の色とは異なる色(例えば、赤色、黄色等)で表示する方法、入力ミスの部位を点滅表示する方法、入力ミスの部位を矢印で指示する方法等が挙げられる。これによって、作業者は、作成途中のNCプログラムの形状情報について位置の誤りがあることを、画面上で容易に認識することができる。
【0032】
座標値エラー表示部84は、プログラム表示部82上に設定される。座標値エラー表示部84は、座標値チェック部50によってNC形状情報における作業者による座標値の入力ミスがあると判定された場合の判定結果を、プログラム表示部82に表示される作成途中のNCプログラムに重ねてエラー表示する。
【0033】
座標値エラー表示部84によるエラー表示は、NC形状情報における作業者による座標値の入力ミスの部位を、他の部位に対して容易に識別可能となるように行われることが望ましい。例えば、座標値エラー表示部84によるエラー表示は、相対位置エラー表示部83によるエラー表示と同様の方法によって表示される強調表示であってもよい。これによって、作業者は、作成途中のNCプログラムの座標値について誤りがあることを、画面上で容易に認識することができる。
【0034】
候補表示部85は、CADデータ表示部81上及びプログラム表示部82上に設定される。候補表示部85は、候補予測部60によって生成された候補形状情報における座標値及びその座標値によって示される形状を、プログラム表示部82に表示される作成途中のNC形状情報及びCADデータ表示部81に表示されるCADデータに重ねて表示する。候補予測部60によって予測された候補形状情報は、作成途中のNC形状情報において、作業者によって入力ミスされた座標値及びその座標値によって示される形状に代わって正しいと想定される座標値及び形状を表す。具体的な候補表示の方法としては、候補形状情報を示す候補座標値又は候補位置を、上記で例示した強調表示と同様の方法によって表示する方法が挙げられる。候補表示部85は、座標値の候補表示を、
図16及び
図17に示すように、CADデータ表示部81に表示されるCADデータに重ねて表示してもよい。
【0035】
表示部80は、
図16及び
図17に示すように、例えば画面の下部に、作業者による入力ミスがあったことを文字列によって表示する文字列表示部86を更に有することもできる。
【0036】
加工プログラム生成支援装置1(NC形状情報保存部13、第1のCAD形状情報保存部23、第2のCAD形状情報保存部42及び表示部80を除く。)は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field‐Programmable Gate Array)等の演算プロセッサで構成される。加工プログラム生成支援装置1(NC形状情報保存部13、第1のCAD形状情報保存部23、第2のCAD形状情報保存部42及び表示部80を除く。)の各種機能は、例えば記憶部に格納された所定のソフトウェア(プログラム、アプリケーション)を実行することで実現される。加工プログラム生成支援装置1(NC形状情報保存部13、第1のCAD形状情報保存部23、第2のCAD形状情報保存部42及び表示部80を除く。)の各種機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働で実現されてもよいし、ハードウェア(電子回路)のみで実現されてもよい。
【0037】
NC形状情報保存部13、第1のCAD形状情報保存部23及び第2のCAD形状情報保存部42は、例えばEEPROM等の書き換え可能なメモリ、又は、例えばHDD(Hard Disk Drive)もしくはSSD(Solid State Drive)等の書き換え可能なディスクを使用することができる。
【0038】
次に、加工プログラム生成支援装置1の動作について説明する。まず、加工プログラム生成支援装置1は、入力されたワークのCADデータ(すなわち、ワークのCAD図面)を表示部80のCADデータ表示部81に表示する。すると、作業者は、CADデータ表示部81に表示されたワークのCAD図面に基づいて、NCプログラム入力部11によってNCプログラムを手動で作成(入力)する。加工プログラム生成支援装置1は、作業者によって作成(入力)された作成途中のNCプログラムを表示部80のプログラム表示部82に表示する。以下では、加工プログラム生成支援装置1における各部の動作について詳細に説明する。
【0039】
(NCプログラム解析)
図2Aは、作業者によって作成された作成途中のNCプログラムと、NCプログラム解析部によって解析されたNCプログラムにおける作成途中のワークの形状情報(以下、NC形状情報ともいう。)との一例を示す図である。
図2Bは、NCプログラム解析部によるNCプログラム解析処理を示すフローチャートである。
【0040】
まず、NCプログラム解析部12は、作業者によって作成されてプログラム表示部82に表示された作成途中のNCプログラムにおけるカーソル直前の1ブロックを解析する(S101)。NCプログラム解析部12は、例えばGコード指令に基づいて、加工指令が穴加工又は輪郭加工(例えば端面荒削りサイクル)の開始であるか否かを判定する(S102)。例えば、NCプログラム解析部12は、Gコード指令が「G81」である場合には加工指令が穴加工の開始であると判定し、Gコード指令が「G72」である場合には加工指令が輪郭加工の開始であると判定する。
【0041】
ステップS102において、加工指令が穴加工の開始でも輪郭加工の開始でもない場合、NCプログラム解析部12は、直前の1ブロック、すなわち次の1ブロックを解析し(S103)、ステップS102に戻る。このように、NCプログラム解析部12は、作成途中のNCプログラムを1ブロックずつ解析する。
【0042】
ステップS102において、加工指令が穴加工又は輪郭加工の開始である場合、NCプログラム解析部12は、加工指令が穴加工であるか否かを判定する(S104)。加工指令が穴加工である場合、NCプログラム解析部12は、加工指令の後に続く最初の穴位置を、NC形状情報としてNC形状情報保存部13に保存する(S105)。
【0043】
次に、NCプログラム解析部12は、次の行を解析し(S106)、カーソル行であるか否か、すなわち全ての形状ブロックの解析が終了したか否かを判定する(S107)。カーソル行でない場合、ステップS105に戻り、ステップS105からステップS107までの処理を繰り返す。一方、カーソル行である場合、NCプログラム解析部12は、解析を終了する。
【0044】
これにより、穴加工の場合、NCプログラム解析部12は、作業者によって作成(入力)された穴位置P1,P2,P3・・・PMを、NC形状情報として得る。穴位置は、例えば中心点である。ここで、Mは2以上N未満の任意の整数である(Nは後述)。
【0045】
一方、ステップS104において、加工指令が穴加工でない場合、すなわち加工指令が輪郭加工である場合、NCプログラム解析部12は、加工指令の後に続く最初の要素を、NC形状情報としてNC形状情報保存部13に保存する(S108)。要素は、直線「G01」、円「G02」、円弧「G03」等である。直線「G01」の場合は、直線の始点、直線の終点を含む。円「G02」の場合は、円の中心点、円の半径を含む。円弧「G03」の場合は、円弧の中心点、円弧の半径、円弧の起点角度、円弧の終点角度を含む。
【0046】
次に、NCプログラム解析部12は、次の行を解析し(S109)、カーソル行であるか否か、すなわち全ての形状ブロックの解析が終了したか否かを判定する(S110)。カーソル行でない場合、ステップS108に戻り、ステップS108からステップS110までの処理を繰り返す。一方、カーソル行である場合、NCプログラム解析部12は、解析を終了する。
【0047】
これにより、輪郭加工の場合、NCプログラム解析部12は、作業者によって作成(入力)された要素E1,E2,E3・・・EMを、NC形状情報として得る。ここで、Mは2以上N未満の任意の整数である(Nは後述)。要素とは、上述したように、直線、円、円弧等である。
【0048】
(CADデータ解析)
図3Aは、CADデータ(CADファイル)と、CADデータ解析部によって解析されたワークの形状情報(以下、CAD形状情報ともいう。)との一例を示す図である。
図3Bは、CADデータ解析部によるCADデータ解析処理を示すフローチャートである。
【0049】
まず、CADデータ解析部22は、CADデータにおけるENTITIES SECTION(コンポーネント オブジェクト)を1行ずつ解析し(S201)、CIRCLE開始か否か、すなわち円形状開始か否かを判定する(S202)。CIRCLE開始の場合、CADデータ解析部22は、CADデータにおけるこのSECTIONを1行ずつ解析し(S203)、CIRCLE終了か否か、すなわち円形状終了か否かを判定する(S204)。CIRCLE終了でない場合、CADデータ解析部22は、穴位置又は輪郭形状を、CAD形状情報として第1のCAD形状情報保存部23に保存する(S205)。その後、CADデータ解析部22は、ステップS203に戻り、ステップS203からステップS205までの処理を繰り返す。
【0050】
これにより、穴位置の場合、CADデータ解析部22は、CADデータにおける穴位置C1,C2,C3・・・CNを、CAD形状情報として得る。穴位置は、例えば中心点である。ここで、Nは2以上の任意の整数である(N>M)。
【0051】
輪郭形状の場合、CADデータ解析部22は、CADデータにおける要素V1,V2,V3・・・VNを、CAD形状情報として得る。ここで、Nは2以上の任意の整数である(N>M)。要素とは、上述したように、直線、円、円弧等である。
【0052】
一方、ステップS202において、CIRCLE開始でない場合、すなわちCIRCLE以外の要素の開始である場合、CADデータ解析部22は、CADデータにおけるこのSECTIONを1行ずつ解析し(S206)、CIRCLE以外の要素の終了か否かを判定する(S207)。CIRCLE以外の要素の終了でない場合、CADデータ解析部22は、輪郭形状を、CAD形状情報として第1のCAD形状情報保存部23に保存する(S208)。その後、CADデータ解析部22は、ステップS206に戻り、ステップS206からステップS208までの処理を繰り返す。
【0053】
これにより、CADデータ解析部22は、CADデータにおける要素V1,V2,V3・・・VNを、CAD形状情報として得る。
【0054】
なお、ステップS204においてCIRCLE終了である場合、及びステップS207においてCIRCLE以外の要素の終了である場合、CADデータ解析部22は、CADデータにおけるENTITIES SECTIONの終了か否かを判定する(S209)。ENTITIES SECTIONの終了でない場合、CADデータ解析部22は、ステップS201に戻り、次のENTITIES SECTIONについてステップS201からステップS209までの処理を行う。一方、ENTITIES SECTIONの終了である場合、CADデータ解析部22は、解析処理を終了する。
【0055】
(相対位置マッチング;穴位置)
図4Aは、相対位置マッチング部によって相対位置マッチングされる穴加工におけるNC形状情報とCAD形状情報との一例を示す図である。
図4Bは、相対位置マッチング部による相対位置マッチング処理(穴位置)を示すフローチャートである。
図5は、相対位置マッチング部による相対位置マッチング処理(穴位置)による穴位置の一例を示す図である。
【0056】
図4Aに示すように、NC形状情報保存部13には、作業者によって作成された穴位置(中心点)として、穴位置P1,P2,P3・・・PMが保存されている。
【0057】
まず、相対位置マッチング部30は、NC形状情報保存部13から読み出したNC形状情報の各穴位置から、穴位置の中心点同士を結ぶ直線Lを引く(S301)。直線Lを引く処理は、隣接する各穴位置に対してそれぞれ実行される。全ての穴位置の中心点を結ぶ直線Lが形成されることによって、
図5に示すように、複数の穴位置の相対位置を示す多角形が形成される。穴位置は多角形の頂点にそれぞれ配置される。
【0058】
次に、相対位置マッチング部30は、ステップS301において形成した直線Lから情報Kを求める(S302)。情報Kとは、各直線Lの長さの情報及び隣接する各直線L間の角度の情報である。
【0059】
情報Kを求めた後、相対位置マッチング部30は、第1のCAD形状情報保存部23から読み出したCAD形状情報から、上記情報Kを満たす穴位置(中心点)の集合を構成する点群を探し(S303)、CAD形状情報に同じ点群が存在するか否かを判定する(S304)。CAD形状情報に同じ点群が存在する場合、相対位置マッチング部30は、相対位置のマッチングはOK(正しい)と判定し(S305)、相対位置マッチング処理を終了する。
【0060】
一方、ステップS304において、CAD形状情報に同じ点群が存在しない場合、相対位置マッチング部30は、作業者によって作成された作成途中のNC形状情報における穴位置に、作業者の入力ミスによるエラーが発生していると判定する。その後、相対位置マッチング部30は、入力ミスである穴位置の情報を含む判定結果に関する情報を表示部80に送り、相対位置マッチング処理を終了する。
【0061】
表示部80に送られた入力ミスである穴位置の形状情報は、
図16に示すように、相対位置エラー表示部83によって表示部80に表示される。相対位置エラー表示部83は、穴位置を、CADデータ表示部81のCADデータに重ねて、例えば強調表示する。
【0062】
(相対位置マッチング;輪郭形状)
図6Aは、相対位置マッチング部によって形状マッチングされる輪郭加工におけるNC形状情報とCAD形状情報との一例を示す図である。
図6Bは、相対位置マッチング部による相対位置マッチング処理(輪郭形状)を示すフローチャートである。
図7A~
図7Dは、相対位置マッチング部による相対位置マッチング処理(輪郭形状)における輪郭形状の一例をそれぞれ示す図である。
【0063】
まず、相対位置マッチング部30は、NC形状情報保存部13から読み出したNC形状情報から、M個の各要素Eに関する以下の情報を求める(S401)。
直線:長さ(
図7A)
円弧:角度(
図7A)
円:半径
直線と直線との角度(
図7B)
円心及び接続点を結ぶ交点接続線と直線との角度(
図7C)
2つの円心及び接続点を結ぶ交点接続線同士の角度(
図7D)
【0064】
上記情報を求めた後、相対位置マッチング部30は、繰り返し処理回数iをi=1に設定する(S402)。次に、相対位置マッチング部30は、第1のCAD形状情報保存部23から読み出したCAD形状情報から、ステップS401で求めた要素Eiと同じ情報を有する要素Kiを探し(S403)、CAD形状情報に要素Eiと同じ情報を有する要素Kiが存在するか否かを判定する(S404)。CAD形状情報に要素Eiと同じ情報を有する要素Kiが存在する場合、相対位置マッチング部30は、要素Eiと要素Kiの交点が存在するか否かを判定し(S405)、要素Eiと要素Kiの交点が存在する場合、次に、i>Mであるか否かを判定する(S406)。i>Mである場合、相対位置マッチング部30は、相対位置のマッチングはOK(正しい)と判定し(S407)、相対位置マッチング処理を終了する。
【0065】
ステップS406において、i≦Mである場合、相対位置マッチング部30は、繰り返し処理回数iをインクリメントし(S408)、ステップS402に戻る。その後、相対位置マッチング部30は、ステップS402からステップS408までの処理を繰り返す。
【0066】
一方、ステップS404において、CAD形状情報に要素Eiと同じ情報を有する要素Kiが存在しない場合、又は、ステップS405において、要素Eiと要素Kiの交点が存在しない場合、相対位置マッチング部30は、作業者によって作成された作成途中のNC形状情報における輪郭形状の位置に、作業者の入力ミスによるエラーが発生していると判定する(S409)。その後、相対位置マッチング部30は、入力ミスである輪郭形状の位置の情報を含む判定結果に関する情報を表示部80に送り、相対位置マッチング処理を終了する。
【0067】
表示部80に送られた入力ミスである輪郭形状の情報は、
図17に示すように、相対位置エラー表示部83によって表示部80に表示される。相対位置エラー表示部83は、輪郭形状を、CADデータ表示部81のCADデータに重ねて、例えば強調表示する。
【0068】
このように、加工プログラム生成支援装置1は、相対位置マッチング部30を備えることによって、作業者によって作成された作成途中のNC形状情報における穴位置や輪郭形状について、作業者の入力ミスによるエラーが発生しているかどうかを判定することができる。相対位置マッチング部30は、CADデータ解析部22によって得られたCAD形状情報とNCプログラム解析部12によって得られた作成途中のNC形状情報との形状の相対位置マッチングを行うことによって、NC形状情報における作業者による位置の入力ミスの有無を判定するため、この加工プログラム生成支援装置1は、座標系を設定していなくても、作業者による入力ミスをチェックすることが可能である。
【0069】
(座標値チェック;穴位置)
図8Aは、座標値チェック部によって座標マッチングされる穴加工におけるNC形状情報と座標設定部によって設定した座標系におけるCAD形状情報との一例を示す図である。
図8Bは、座標値チェック部による座標値チェック処理(穴位置)を示すフローチャートである。
【0070】
まず、座標値チェック部50は、繰り返し処理回数iをi=1に設定する(S501)。次に、座標値チェック部50は、設定した座標系におけるCAD形状情報を第2のCAD形状情報保存部42から読み出して、そのCAD形状情報から、NC形状情報における穴位置Piと同じ座標の穴位置を探し(S502)、NC形状情報における穴位置Piと同じ座標の穴位置がCAD形状情報に存在するか否かを判定する(S503)。NC形状情報における穴位置Piと同じ座標の穴位置に係るCAD形状情報に関する情報は、マッチング座標情報である。
【0071】
ステップS503において、NC形状情報における穴位置Piと同じ座標の穴位置がCAD形状情報に存在する場合、座標値チェック部50は、繰り返し処理回数iをインクリメントするとともに、i>Mであるか否かを判定する(S504)。i≦Mである場合、座標値チェック部50は、ステップS501に戻り、ステップS501からステップS504までの処理を繰り返す。また、ステップS503において、NC形状情報における穴位置Piと同じ座標の穴位置がCAD形状情報に存在しない場合、座標値チェック部50は、穴位置Piの情報を所定の記憶領域(β)に保存し(S505)、ステップS504に移行する。これによって保存される穴位置Piの情報は、作業者が入力ミスしたと想定される穴位置の情報である。
【0072】
ステップS504において、i>Mである場合、即ち、穴位置P1~穴位置PMの全てについて同じ座標の穴位置がCAD形状情報に存在するか否かの判定を終了した場合、座標値チェック部50は、β=NULLであるか否か、即ち、所定の記憶領域(β)に保存した穴位置Piの情報があるか否かを判定する(S506)。β=NULLである場合、即ち、所定の記憶領域(β)に保存した穴位置Piの情報が何も存在しない場合、座標値チェック部50は、座標値マッチングはOK(正しい)と判定し(S507)、座標値チェック処理を終了する。
【0073】
一方、ステップS506において、β=NULLではない場合、即ち、所定の記憶領域(β)に保存した穴位置Piの情報が存在する場合、座標値チェック部50は、作業者によって作成された作成途中のNC形状情報における穴位置の座標値に、作業者の入力ミスによるエラーが発生していると判定する(S508)。その後、座標値チェック部50は、入力ミスである穴位置の座標値の情報を含む判定結果に関する情報を表示部80に送り、座標値チェック処理を終了する。
【0074】
表示部80に送られた入力ミスである穴位置の座標値の情報は、
図16に示すように、座標値エラー表示部84によって表示部80に表示される。座標値エラー表示部84は、プログラム表示部82に設定され、穴位置の座標値を例えば強調表示する。座標値エラー表示部84は、
図16に示すように、プログラム表示部82の他に、CADデータ表示部81上に設定されてもよい。
【0075】
(座標値チェック;輪郭形状)
図9Aは、座標値チェック部によって座標マッチングされる輪郭加工におけるNC形状情報と座標設定部によって設定した座標系におけるCAD形状情報との一例を示す図である。
図9Bは、座標値チェック部による座標値チェック処理(輪郭形状)を示すフローチャートである。
【0076】
図9Aに示すように、NC形状情報保存部13には、作業者によって作成された輪郭形状として、要素E1,E2,E3・・・EMが保存されている。要素は、直線、円、円弧等である。
【0077】
まず、座標値チェック部50は、繰り返し処理回数iをi=1に設定する(S601)。次に、座標値チェック部50は、設定した座標系におけるCAD形状情報を第2のCAD形状情報保存部42から読み出して、そのCAD形状情報から、NC形状情報における要素Eiと同じ座標の要素を探し(S602)、NC形状情報における要素Eiと同じ座標の要素がCAD形状情報に存在するか否かを判定する(S603)。NC形状情報における要素Eiと同じ座標の要素に係るCAD形状情報における情報は、マッチング座標情報である。
【0078】
ステップS603において、NC形状情報における要素Eiと同じ座標の要素がCAD形状情報に存在する場合、座標値チェック部50は、繰り返し処理回数iをインクリメントするとともに、i>Mであるか否かを判定する(S604)。i≦Mである場合、座標値チェック部50は、ステップS601に戻り、ステップS601からステップS604までの処理を繰り返す。また、ステップS603において、NC形状情報における要素Eiと同じ座標の要素がCAD形状情報に存在しない場合、座標値チェック部50は、要素Eiの情報を所定の記憶領域(β)に保存し(S605)、ステップS604に移行する。これによって保存される要素Eiの情報は、作業者が入力ミスしたと想定される輪郭形状の要素の情報である。
【0079】
ステップS604において、i>Mである場合、即ち、要素E1~要素EMの全てについて同じ座標の要素がCAD形状情報に存在するか否かの判定を終了した場合、座標値チェック部50は、β=NULLであるか否か、即ち、所定の記憶領域(β)に保存した要素Eiの情報があるか否かを判定する(S606)。β=NULLである場合、即ち、所定の記憶領域(β)に保存した要素Eiの情報が何も存在しない場合、座標値チェック部50は、座標値マッチングはOK(正しい)と判定し(S607)、座標値チェック処理を終了する。
【0080】
一方、ステップS606において、β=NULLではない場合、即ち、所定の記憶領域(β)に保存した要素Eiの情報が存在する場合、座標値チェック部50は、作業者によって作成された作成途中のNC形状情報における輪郭形状の座標値に、作業者の入力ミスによるエラーが発生していると判定し(S608)、入力ミスである輪郭形状の座標値の情報を含む判定結果に関する情報を表示部80に送り、座標値チェック処理を終了する。
【0081】
表示部80に送られた入力ミスである輪郭形状の座標値の情報は、
図17に示すように、座標値エラー表示部84によって表示部80に表示される。座標値エラー表示部84は、プログラム表示部82に設定され、輪郭形状の座標値を例えば強調表示する。座標値エラー表示部84は、
図17に示すように、プログラム表示部82の他に、CADデータ表示部81上に設定されてもよい。
【0082】
このように、加工プログラム生成支援装置1は、座標系設定部41、第2のCAD形状情報保存部42及び座標値チェック部50を備えることによって、作業者によって作成された作成途中のNC形状情報における穴位置や輪郭形状の座標値に、作業者の入力ミスによるエラーが発生しているか否かを判定することができる。
【0083】
(候補予測;穴位置)
図10は、候補予測部による候補予測処理(穴位置)を示すフローチャートである。
図11A~
図11Fは、穴加工におけるマッチング形状情報、作業者による入力ミス部位及び候補予測部によって生成される候補形状の一例をそれぞれ示す図である。
【0084】
まず、候補予測部60は、設定した座標系におけるCAD形状情報を座標値チェック部50から取得し、座標値チェック部50においてチェック済のCAD形状情報の穴位置について、正しい入力点が格子上にあるか否かを判定する(S701)。格子であるか否かは、CAD形状情報に6個以上の穴位置があるか否かによって判断することができる。
図11A~
図11Cに示す格子の例において、格子上に配置される実線の円が、正しい入力点を示している。格子上から外れて配置される実線の円は、作業者が入力ミスしたと想定される入力点である。正しい入力点が格子上にある場合、候補予測部60は、マッチング座標情報であるCAD形状情報における格子上の穴位置に続く格子上の穴位置を予測し、その予測した穴位置を候補形状とし、候補予測処理を終了する(S702)。
図11A~
図11Cにおいて、格子上に配置される破線の円が、予測された候補形状の円を示している。これによって生成された候補形状の情報は、表示部80に送られる。
【0085】
ステップS701において、正しい入力点が格子上にない場合、候補予測部60は、CAD形状情報の穴位置において、正しい入力点が同一直線上にあるか否かを判定する(S703)。
図11Dに示す直線の例において、同一直線上に配置される実線の円が、正しい入力点を示している。同一直線上から外れて配置される実線の円は、作業者が入力ミスしたと想定される入力点である。正しい入力点が同一直線上にある場合、候補予測部60は、CAD形状情報における直線上の穴位置に続く直線上の穴位置を予測し、その予測した穴位置を候補形状とし、候補予測処理を終了する(S704)。
図11Dにおいて、同一直線上に配置される破線の円が、予測された候補形状の円を示している。これによって生成された候補形状の情報は、表示部80に送られる。
【0086】
ステップS703において、正しい入力点が同一直線上にない場合、候補予測部60は、CAD形状情報の穴位置において、正しい入力点が円周上にあるか否かを判定する(S705)。
図11Eに示す円弧の例において、円周上に配置される実線の円が、正しい入力点を示している。円周上から外れて配置される実線の円は、作業者が入力ミスしたと想定される入力点である。正しい入力点が円周上にある場合、候補予測部60は、CAD形状情報における円弧上の穴位置に続く円弧上の穴位置を予測し、その予測した穴位置を候補形状とし、候補予測処理を終了する(S706)。
図11Eにおいて、円周上に配置される破線の円が、予測された候補形状の円を示している。これによって生成された候補形状の情報は、表示部80に送られる。
【0087】
ステップS705において、正しい入力点が円周上にない場合、候補予測部60は、CAD形状情報の穴位置において、正しい入力点が3個あるか否かを判定する(S707)。正しい入力点が3個ある場合、その入力点は四角形の頂点に配置されると判断することができる。
図11Fに示す四角の例において、四角形の頂点に配置される実線の円が、正しい入力点を示している。四角形の頂点から外れて配置される実線の円は、作業者が入力ミスしたと想定される入力点である。正しい入力点が3個ある場合、候補予測部60は、CAD形状情報における3点の穴位置に続く四角形の頂点上の穴位置を予測し、その予測した穴位置を候補形状とし、候補予測処理を終了する(S708)。
図11Fにおいて、四角形の頂点上に配置される破線の円が、予測された候補形状の円を示している。これによって生成された候補形状の情報は、表示部80に送られる。
【0088】
ステップS707において、正しい入力点が3個存在しない場合、候補予測部60は、穴位置における候補予測を行わず、候補予測処理を終了する。
【0089】
このようにして候補予測部60によって予測され、生成された穴位置の候補形状の位置及び座標値は、例えば、
図16に示すように、候補表示部85によって、表示部80におけるCADデータ表示部81のCADデータに重ねて表示される。
【0090】
(候補予測;輪郭形状)
図12は、候補予測部による候補予測処理(輪郭形状)を示すフローチャートである。
図13は、輪郭加工におけるマッチング形状情報、作業者の入力ミスによる形状及び候補予測部によって生成される候補形状の一例を示す図である。
【0091】
まず、候補予測部60は、設定した座標系におけるCAD形状情報を座標値チェック部50から取得し、座標値チェック部50においてチェック済のCAD形状情報の輪郭形状において、正しく入力されている要素と接続する要素Kを探し(S801)、その要素Kを所定の記憶領域に保存する(S802)。
【0092】
即ち、
図13に示すように、正しく入力されている要素Ei-1と要素Ei+1との間に、これらの要素Ei-1,Ei+1と接続しない要素Ei(要素Eiは作業者が入力ミスしたと想定される誤入力形状である。)が存在している場合、候補予測部60は、
図13中の破線で示すように、要素Ei-1,Ei+1と接続する要素を探して保存する。その後、候補予測部60は候補予測処理を終了する。
【0093】
このようにして候補予測部60によって予測され、生成された輪郭形状の候補形状の位置及び座標値は、例えば、
図17に示すように、候補表示部85によって、表示部80におけるCADデータ表示部81のCADデータに重ねて表示される。
【0094】
(プログラム修正;穴位置)
図14は、加工プログラム修正部による加工プログラム修正処理(穴位置)を示すフローチャートである。
【0095】
作業者は、表示部80の表示を確認し、候補選択部71によって、予測された穴位置の候補形状を例えば画面上で選択入力することにより、穴位置の入力ミスの修正を行うことができる。候補選択部71によって予測された穴位置の候補形状が選択入力された場合、プログラム修正部72は、その選択入力された穴位置のプログラムを作成し(S901)、作業者によって作成された作成途中のNCプログラムに反映させることによって、当該NCプログラムを自動で修正する。
【0096】
(プログラム修正;輪郭形状)
図15は、加工プログラム修正部による加工プログラム修正処理(輪郭形状)を示すフローチャートである。
【0097】
作業者は、表示部80の表示を確認し、候補選択部71によって、予測された輪郭形状の候補形状を例えば画面上で選択入力することにより、輪郭形状の入力ミスの修正を行うことができる。候補選択部71によって予測された輪郭形状の候補形状が選択入力された場合、プログラム修正部72は、その選択入力された輪郭形状の要素Kのプログラムを作成し(S1001)、作業者によって作成された作成途中のNCプログラムに反映させることによって、当該NCプログラムを自動で修正する。
【0098】
以上説明したように、本実施形態の加工プログラム生成支援装置1によれば、作業者によって作成される作成途中のNCプログラムと、CADデータとを比較して、作成途中のNCプログラムにおける作業者の入力ミスを自動でチェックし、その結果を作業者に対して視覚的に表示する。これにより、作業者は作成途中のプログラムにおける入力ミスの存在を容易に確認することができる。
【0099】
以上、本開示の加工プログラム生成支援装置の実施形態について説明したが、本開示の加工プログラム生成支援装置は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更及び変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、工作機械を制御する数値制御装置のNCプログラムの生成の支援を行う加工プログラム生成支援装置を例示した。しかし、本開示の加工プログラム生成支援装置はこれに限定されず、種々の産業用機械の加工プログラムの生成の支援を行う種々の加工プログラム生成支援装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 加工プログラム生成支援装置
12 NCプログラム解析部(加工プログラム解析部)
22 CADデータ解析部と、
30 相対位置マッチング部
41 座標系設定部
50 座標値チェック部
60 候補予測部
71 候補選択部
72 プログラム修正部
80 表示部