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特許7339077樹脂成形体の製造方法、及び、樹脂成形体の成形型
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】樹脂成形体の製造方法、及び、樹脂成形体の成形型
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20230829BHJP
   B29C 33/14 20060101ALI20230829BHJP
   B29C 45/27 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C33/14
B29C45/27
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019158682
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021037634
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹木 康弘
(72)【発明者】
【氏名】杉山 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】岩本 拓久
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-002927(JP,U)
【文献】特開2019-072916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/14
B29C 45/14
H01R 43/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次成形体が二次成形体にインサート成形された樹脂成形体を製造するための樹脂成形体の製造方法であって、
前記一次成形体は、
前記樹脂成形体の外表面に露出することになる第1側面と、前記第1側面に対する交差角度が90度よりも大きい第2側面と、を有し、
当該製造方法は、
成形型が有する第1キャビティ面及び第2キャビティ面に前記第1側面及び前記第2側面がそれぞれ当接した状態にて、前記一次成形体を前記成形型のキャビティ内に収容する工程と、
前記キャビティ内に樹脂を注入して前記二次成形体を成形するとともに、前記一次成形体が前記二次成形体にインサート成形された前記樹脂成形体を成形する工程と、を備え
前記成形型は、
前記樹脂を前記キャビティ内に注入するための注入孔を、前記第1キャビティ面及び前記第2キャビティ面と当該注入孔との間に前記一次成形体を収容することになる位置に、有し、
前記第2側面に当接する前記第2キャビティ面は、上下方向に対して傾斜しており、
前記注入孔は、前記第2キャビティ面より上方であり且つ上方からみて前記第2キャビティ面と重なる位置に配置されている、
樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
一次成形体が二次成形体にインサート成形された樹脂成形体を製造するための樹脂成形体の成形型であって、
前記一次成形体は、
前記樹脂成形体の外表面に露出することになる第1側面と、前記第1側面に対する交差角度が90度よりも大きい第2側面と、を有し、
当該成形型は、
前記第1側面を当接可能な第1キャビティ面と、前記第2側面を当接可能な第2キャビティ面と、を有するとともに、前記第1側面及び前記第2側面に前記第1キャビティ面及び前記第2キャビティ面がそれぞれ当接した状態にて、前記一次成形体を収容可能なキャビティを画成する、ように構成され
樹脂を前記キャビティ内に注入するための注入孔を、前記第1キャビティ面及び前記第2キャビティ面と当該注入孔との間に前記一次成形体を収容することになる位置に、有し、
前記第2側面に当接する前記第2キャビティ面は、上下方向に対して傾斜しており、
前記注入孔は、前記第2キャビティ面より上方であり且つ上方からみて前記第2キャビティ面と重なる位置に配置されている、
樹脂成形体の成形型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体の製造方法、及び、樹脂成形体の成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂成形体を所定の金型を用いた射出成形などの手法によって製造する製造方法が知られている。例えば、従来の製造方法の一つは、金型のキャビティ内の所定の位置に予備成形体を配置した後、キャビティ内に樹脂を注入することで、予備成形体がインサート成形された最終成形体を製造するようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-018633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の製造方法では、キャビティを画成する金型の内側面に設けた所定の凸部や凹部に予備成形体を係止させることで、キャビティ内の所定の位置に予備成形体を配置するようになっている。しかし、例えば、キャビティ内における予備成形体の姿勢や係止の強度によっては、予備成形体が凸部や凹部に接触はしているものの傾いた状態となり、本来の設計上の位置から変位する(位置ズレが生じる)可能性があると考えられる。樹脂成形体の寸法精度などの品質を向上する観点から、このような位置ズレは出来る限り抑制されることが望ましい。
【0005】
上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、一次成形体の位置ズレを抑制しながら二次成形体のインサート成形が可能な樹脂成形体の製造方法、及び、樹脂成形体の成形型、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る樹脂成形体の製造方法および成形型は、下記[1]~[]を特徴としている。
[1]
一次成形体が二次成形体にインサート成形された樹脂成形体を製造するための樹脂成形体の製造方法であって、
前記一次成形体は、
前記樹脂成形体の外表面に露出することになる第1側面と、前記第1側面に対する交差角度が90度よりも大きい第2側面と、を有し、
当該製造方法は、
成形型が有する第1キャビティ面及び第2キャビティ面に前記第1側面及び前記第2側面がそれぞれ当接した状態にて、前記一次成形体を前記成形型のキャビティ内に収容する工程と、
前記キャビティ内に樹脂を注入して前記二次成形体を成形するとともに、前記一次成形体が前記二次成形体にインサート成形された前記樹脂成形体を成形する工程と、を備え
前記成形型は、
前記樹脂を前記キャビティ内に注入するための注入孔を、前記第1キャビティ面及び前記第2キャビティ面と当該注入孔との間に前記一次成形体を収容することになる位置に、有し、
前記第2側面に当接する前記第2キャビティ面は、上下方向に対して傾斜しており、
前記注入孔は、前記第2キャビティ面より上方であり且つ上方からみて前記第2キャビティ面と重なる位置に配置されている、
樹脂成形体の製造方法であること。

一次成形体が二次成形体にインサート成形された樹脂成形体を製造するための樹脂成形体の成形型であって、
前記一次成形体は、
前記樹脂成形体の外表面に露出することになる第1側面と、前記第1側面に対する交差角度が90度よりも大きい第2側面と、を有し、
当該成形型は、
前記第1側面を当接可能な第1キャビティ面と、前記第2側面を当接可能な第2キャビティ面と、を有するとともに、前記第1側面及び前記第2側面に前記第1キャビティ面及び前記第2キャビティ面がそれぞれ当接した状態にて、前記一次成形体を収容可能なキャビティを画成する、ように構成され
樹脂を前記キャビティ内に注入するための注入孔を、前記第1キャビティ面及び前記第2キャビティ面と当該注入孔との間に前記一次成形体を収容することになる位置に、有し、
前記第2側面に当接する前記第2キャビティ面は、上下方向に対して傾斜しており、
前記注入孔は、前記第2キャビティ面より上方であり且つ上方からみて前記第2キャビティ面と重なる位置に配置されている、
樹脂成形体の成形型であること。
【0007】
上記[1]の構成の樹脂成形体の製造方法によれば、一次成形体の第1側面および第2側面が成形型の第1キャビティ面および第2キャビティ面にそれぞれ当接した状態で、一次成形体が成形型内に配置される。第1側面と第2側面とは、90度よりも大きい交差角度(即ち、鈍角)をなす位置関係にあるため、一次成形体を成形型に配置した際、第1側面が第1キャビティ面から離れるように傾こうとすると、第2側面が第2キャビティ面に押し付けられることで、そのような傾きが抑制される。逆に、第2側面が第2キャビティ面から離れるように傾こうとすると、第1側面が第1キャビティ面に押し付けられることで、そのような傾きが抑制される。よって、交差角度が90度以下(例えば、直角)である場合に比べ、一次成形体の自重や外部からの振動などによって一次成形体が変位すること(位置ズレ)を抑制できる。よって、本構成の製造方法は、従来の製造方法に比べ、一次成形体の位置ズレを抑制しながら二次成形体のインサート成形が可能である。
【0008】
更に、上記[]の構成の樹脂成形体の製造方法によれば、成形型のキャビティ内に樹脂を注入すると、樹脂の注入圧により、一次成形体が第1キャビティ面および第2キャビティ面に押し付けられることになる。上述したように、一次成形体の第1側面および第2側面と、成形型の第1キャビティ面および第2キャビティ面と、の当接により、一次成形体の変位が抑制されている。これにより、樹脂の注入圧によって一次成形体の変位が生じることが抑制される。よって、一次成形体の位置ズレをより適正に抑制できる。
【0009】
上記[]の構成の樹脂成形体の成形型によれば、一次成形体の第1側面および第2側面が成形型の第1キャビティ面および第2キャビティ面にそれぞれ当接した状態で、一次成形体が成形型内に配置される。第1側面と第2側面とは、90度よりも大きい交差角度(即ち、鈍角)をなす位置関係にあるため、一次成形体を成形型に配置した際、第1側面が第1キャビティ面から離れるように傾こうとすると、第2側面が第2キャビティ面に押し付けられることで、そのような傾きが抑制される。逆に、第2側面が第2キャビティ面から離れるように傾こうとすると、第1側面が第1キャビティ面に押し付けられることで、そのような傾きが抑制される。よって、交差角度が90度以下(例えば、直角)である場合に比べ、一次成形体の自重や外部からの振動などによって一次成形体が変位すること(位置ズレ)を抑制できる。よって、本構成の成形型は、従来の製造方法に比べ、一次成形体の位置ズレを抑制しながら二次成形体のインサート成形が可能である。
更に、上記[2]の構成の樹脂成形体の成形型によれば、成形型のキャビティ内に樹脂を注入すると、樹脂の注入圧により、一次成形体が第1キャビティ面および第2キャビティ面に押し付けられることになる。上述したように、一次成形体の第1側面および第2側面と、成形型の第1キャビティ面および第2キャビティ面と、の当接により、一次成形体の変位が抑制されている。これにより、樹脂の注入圧によって一次成形体の変位が生じることが抑制される。よって、一次成形体の位置ズレをより適正に抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明によれば、一次成形体の位置ズレを抑制しながら二次成形体のインサート成形が可能な樹脂成形体の製造方法、及び、樹脂成形体の成形型を提供できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態に係る製造方法によって製造される樹脂成形体の斜視図である。
図2図2は、図1のA-A断面図である。
図3図3は、樹脂成形体の製造に用いる成形型に一次成形体を収容する様子を示す概略断面図である。
図4図4は、一次成形体を収容している上型と下型との間にスライドコアを組み付ける様子を示す概略断面図である。
図5図5は、一次成形体が成形型内に収容された様子を示す概略断面図である。
図6図6は、上型に設けられているゲート孔から成形型内に樹脂を注入する様子を示す概略断面図である。
図7図7は、成形後の樹脂成形体を成形型から取り出す様子を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、樹脂成形体1を製造するための本発明の実施形態に係る製造方法について、説明する。以下、説明の便宜上、樹脂成形体1のフード部22,23に相手側端子(図示省略)が嵌合する側(図1図7において左側)を前方側とし、その反対側(図1図7において右側)を後方側と称呼する。また、図1図7において上側及び下側をそれぞれ、上側及び下側と称呼する。
【0014】
図1図2及び図7に示すように、樹脂成形体1は、一次成形体10が二次成形体20にインサート成形されるように構成されている。特に図1に示すように、本例では、2つの一次成形体10が後述するフード部22,23に対応する位置に並んで配置された状態で、二次成形体20にインサート成形されている。
【0015】
一次成形体10は、所定の配列で並ぶように配置された複数の端子金具11の周囲を覆って保持するように樹脂部12が設けられた樹脂成形体である。一次成形体10は、例えば、複数の金型(図示省略)を用いた射出成形によって製造され得る。端子金具11の一端11aは、樹脂部12の後端部13から下方に突出し、それぞれの下端位置が揃うように配置されている。端子金具11の他端11bは、樹脂部12の前端部14から前方に突出し、それぞれの前端位置が揃うように配置されている。樹脂成形体1の内部空間を画成することになる後端部13の下方側に位置する内側面15と、前端部14の後方側に位置する内側面16とは、互いの交差角度θが90度以上であるように、配置されている。樹脂部12の後端部13には、後述する下型32の規制突起32bが挿入される凹部17が設けられている。
【0016】
二次成形体20は、略方形のケース体21と、ケース体21の前面から前方に向けて開口する一対のフード部22,23と、を有する。フード部22,23は、相手側コネクタ(図示省略)を受け入れる嵌合口を画成する。ケース体21は、下方に向けて開口しており、ケース体21の内部に回路基板等(図示省略)が組み込まれた状態で、その回路基板等を覆うようにカバー(図示省略)が組み付けられるようになっている。ケース体21の外周面には、このカバーに設けられている係止突起(図示省略)を係止するための係止部24が設けられている。
【0017】
特に図2に示すように、樹脂成形体1の内部空間を画成することになる樹脂部12の内側面16は、二次成形体20のフード部23の後方側の内側面25と面一となるように配置されている。即ち、樹脂部12の内側面16と二次成形体20の内側面25とが連結して形成される面は、上述した交差角度θに相当する角度だけ、上下方向に対して傾斜している。これにより、例えば、樹脂部12の内側面16と二次成形体20の内側面25との位置ズレが生じて十分に面一な状態で両者が配置されていない場合、目視によってそのような位置ズレを確認し易くなる。
【0018】
一次成形体10が二次成形体20にインサート成形された樹脂成形体1は、図6に示すように、後述する成形型30内に一次成形体10を収容し、一次成形体10と成形型30のキャビティ面との間に画成される成形用空間Sに樹脂を注入して二次成形体20を形成することで、形成されることになる。
【0019】
成形型30は、図3図7に示すように、上型31と、下型32と、スライドコア33とから構成されている。上型31及び下型32は、型抜き方向が上下方向に設定されており、それぞれ樹脂成形体1の上下面を成形するためのキャビティ面を有している。上型31には、樹脂Rを成形型30内に注入するためのゲート孔31aが設けられている。下型32のキャビティ面34には、端子金具11の一端11aを挿入可能なセット孔32aが設けられている。セット孔32aは、端子金具11の一端11aの断面形状とほぼ適合する形状を有する。端子金具11の一端11aをセット孔32aに挿入した状態でインサート成形が行われることで、端子金具11の一端11aのうちセット孔32a内に挿入されていた部分が樹脂成形体1の後端部13の面から突出することになる。キャビティ面34には、上方に突出する規制突起32bが設けられている。
【0020】
下型32には、キャビティ面34に対する交差角度が、樹脂部12の後端部13の内側面15と前端部14の内側面16との交差角度θに対応した角度となっているキャビティ面35が設けられている。キャビティ面35は、前方側に面している。更に、下型32には、二次成形体20の内側面25に対応する箇所を成形するための窪み36が設けられている。なお、後述するように、窪み36は、成形型30が型閉じされたときに成形用空間Sの一部を画成することになる。
【0021】
スライドコア33は前後方向(上型31及び下型32の型抜き方向と直交する方向)に移動可能であり、二次成形体20のフード部22,23の内周面を成形するためのキャビティ面を有している。スライドコア33の先端面33aには、端子金具11の他端11bを収容するセット孔33bが設けられている。
【0022】
以下、成形型30を用いて樹脂成形体1を成形する手順について説明する。まず、図3に示すように、一次成形体10の端子金具11の一端11aをセット孔32aに挿入しながら、一次成形体10の内側面15がキャビティ面34に当接し、内側面16がキャビティ面35に当接した状態となるように、一次成形体10を下型32上に配置する。このとき、下型32の規制突起32bが一次成形体10の凹部17に挿入されることで、一次成形体10の前後方向の位置が規制されることになる。また、内側面15がキャビティ面34から離れるように傾こうとすると、内側面16がキャビティ面35に押し付けられることで、そのような傾きが抑制される。逆向きの傾きについても、同様に抑制される。
【0023】
次いで、下型32に上型31を組み付けた後、図4に示すように、スライドコア33を一次成形体10の前端部14に向けて移動させる。具体的には、端子金具11の他端11bをセット孔33bに挿入しながら、スライドコア33の先端面33aが一次成形体10の前端部14に当接するまで、スライドコア33を移動させる。
【0024】
以上の工程を経て、一次成形体10が上下方向および幅方向に移動不能に位置決めされるとともに、上型31、下型32及びスライドコア33による型閉じが完了する。図5に示すように、この型閉じ状態では、上型31のキャビティ面と下型32のキャビティ面とスライドコア33のキャビティ面と一次成形体10の外面とにより、成形用空間Sが形成されている。上述した窪み36は成形用空間Sの一部を画成している。
【0025】
そして、図6に示すように、上型31のゲート孔31aを通じて成形用空間Sに樹脂Rを注入することで、一次成形体10の外面を覆うように二次成形体20を成形する。このとき、ゲート孔31aから注入される樹脂Rの注入圧により、一次成形体10は下方に向かう外力を受け、下型32に向けて押圧される。そして、内側面15がキャビティ面34に押し付けられ、内側面16がキャビティ面35に押し付けられる。このとき、内側面15,16が上述した交差角度θを有し、且つ、キャビティ面34,35に密着しているため、一次成形体10がそのような外力によって傾く等の変位が抑制される。
【0026】
所定の冷却期間の経過後、図7に示すように、型開きを行い、一次成形体10が二次成形体20にインサート成形された樹脂成形体1を成形型30から取り出す。
【0027】
以上、樹脂成形体1を製造する際に用いた本発明の実施形態に係る製造方法によれば、一次成形体10の内側面15および内側面16が成形型30の第1キャビティ面34および第2キャビティ面35にそれぞれ当接した状態で、一次成形体10が成形型30内に配置される。内側面15と内側面16とは、90度よりも大きい交差角度θ(即ち、鈍角)をなす位置関係にあるため、一次成形体を成形型30に配置した際、内側面15が第1キャビティ面34から離れるように傾こうとすると、内側面16が第2キャビティ面35に押し付けられることで、そのような傾きが抑制される。逆に、内側面16が第2キャビティ面35から離れるように傾こうとすると、内側面15が第1キャビティ面34に押し付けられることで、そのような傾きが抑制される。よって、交差角度θが90度以下(例えば、直角)である場合に比べ、一次成形体10の自重や外部からの振動などによって一次成形体10が変位すること(位置ズレ)を抑制できる。よって、本構成の製造方法は、従来の製造方法に比べ、一次成形体10の位置ズレを抑制しながら二次成形体20のインサート成形が可能である。
【0028】
更に、成形型30のキャビティ内に樹脂を注入すると、樹脂Rの注入圧により、一次成形体10が第1キャビティ面34および第2キャビティ面35に押し付けられることになる。上述したように、一次成形体10の内側面15および内側面16と、成形型30の第1キャビティ面34および第2キャビティ面35と、の当接により、一次成形体10の変位が抑制されている。これにより、樹脂Rの注入圧によって一次成形体10の変位が生じることが抑制される。よって、一次成形体10の位置ズレをより適正に抑制できる。
【0029】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0030】
ここで、上述した本発明に係る製造方法、及び、成形型の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
一次成形体(10)が二次成形体(20)にインサート成形された樹脂成形体(1)を製造するための樹脂成形体(1)の製造方法であって、
前記一次成形体(10)は、
前記樹脂成形体(1)の外表面に露出することになる第1側面(15)と、前記第1側面(15)に対する交差角度(θ)が90度よりも大きい第2側面(16)と、を有し、
当該製造方法は、
成形型(30)が有する第1キャビティ面(34)及び第2キャビティ面(35)に前記第1側面(15)及び前記第2側面(16)がそれぞれ当接した状態にて、前記一次成形体(10)を前記成形型のキャビティ内に収容する工程と、
前記キャビティ内に樹脂を注入して前記二次成形体(20)を成形するとともに、前記一次成形体(10)が前記二次成形体(20)にインサート成形された前記樹脂成形体(1)を成形する工程と、を備える、
樹脂成形体(1)の製造方法。
[2]
上記[1]に記載の製造方法において、
前記成形型(30)は、
前記樹脂を前記キャビティ内に注入するための注入孔(31a)を、前記第1キャビティ面(34)及び前記第2キャビティ面(35)と当該注入孔(31a)との間に前記一次成形体(10)を収容することになる位置に、有する、
樹脂成形体(1)の製造方法。
[3]
一次成形体(10)が二次成形体(20)にインサート成形された樹脂成形体(1)を製造するための樹脂成形体(1)の成形型であって、
前記一次成形体(10)は、
前記樹脂成形体(1)の外表面に露出することになる第1側面(15)と、前記第1側面(15)に対する交差角度(θ)が90度よりも大きい第2側面(16)と、を有し、
当該成形型は、
前記第1側面(15)を当接可能な第1キャビティ面(34)と、前記第2側面(16)を当接可能な第2キャビティ面(35)と、を有するとともに、前記第1側面(15)及び前記第2側面(16)に前記第1キャビティ面(34)及び前記第2キャビティ面(35)がそれぞれ当接した状態にて、前記一次成形体(10)を収容可能なキャビティを画成する、ように構成される、
樹脂成形体(1)の成形型。
【符号の説明】
【0031】
1 樹脂成形体
10 一次成形体
15 第1側面
16 第2側面
20 二次成形体
30 成形型
31a ゲート孔(注入孔)
34 第1キャビティ面
35 第2キャビティ面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7