(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】外壁パネルの取付方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20230829BHJP
E04B 2/56 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
E04G21/16
E04B2/56 642A
(21)【出願番号】P 2019177530
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】大久保 雅司
(72)【発明者】
【氏名】松本 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 隆
(72)【発明者】
【氏名】橘 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】添田 智美
(72)【発明者】
【氏名】鴨下 栄紀
(72)【発明者】
【氏名】日村 みのり
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-028108(JP,U)
【文献】特開平11-011851(JP,A)
【文献】特開平10-007377(JP,A)
【文献】特開2018-199549(JP,A)
【文献】特開2019-112905(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0161567(US,A1)
【文献】特開昭61-146970(JP,A)
【文献】特開2018-31177(JP,A)
【文献】実開平6-47507(JP,U)
【文献】特開2018-43859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/16
E04B 2/56
E04G 21/14
E04B 2/88
B66C 1/62
B66C 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側が吊り対象物の吊り位置となるバランサーと、上記吊り対象物を上記バランサーの他端側に直接または間接的に連結する対象物連結材と、を備えており、吊元が上記一端側と上記他端側との間に設定される吊り装置
を用い、上記吊り対象物としての外壁パネルの屋外側であって中央位置よりも下側の位置に上記対象物連結材を1本以上連結した状態で、上記バランサーの一端側で上記外壁パネルを吊り上げて、当該外壁パネルを建物躯体に取り付ける方法であって、
上記外壁パネルの裏面側の下地材に、当該外壁パネルの下方に突出する下部固定治具を取り付け、上記対象物連結材を、上記外壁パネルの屋外側で且つ当該外壁パネルの下部側となる側において上記下部固定治具に連結した状態で、上記外壁パネルを吊り上げることを特徴とする建物躯体への外壁パネルの取付方法。
【請求項2】
請求項1に記載の
外壁パネルの取付方法において、上記吊り装置は、上記バランサーの他端側に、カウンターウェイトを備えることを特徴とする
外壁パネルの取付方法。
【請求項3】
請求項2に記載の
外壁パネルの取付方法において、上記吊り装置は、上記バランサーの他端側に、カウンターウェイトの全部または一部に代わる重量を有する吊り対象物旋回制御装置を備えることを特徴とする
外壁パネルの取付方法。
【請求項4】
請求項3に記載の
外壁パネルの取付方法において、上記吊り対象物旋回制御装置が上記バランサーに直付け固定されることを特徴とする
外壁パネルの取付方法。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の
外壁パネルの取付方法において、上記吊り装置は、上記吊り対象物から外された上記対象物連結材を巻き上げる巻き上げ機を備えることを特徴とする
外壁パネルの取付方法。
【請求項6】
請求項3または請求項4に記載の外壁パネルの取付方法において、上記吊り装置は、上記吊り対象物から外された上記対象物連結材を巻き上げる巻き上げ機を、上記吊り対象物旋回制御装置に備えることを特徴とする外壁パネルの取付方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の外壁パネルの取付方法において、上記巻き上げ機を地上から遠隔操作することを特徴とする外壁パネルの取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吊り対象物を吊る吊り装置、吊り方法および建物躯体への外壁パネルの取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バランサーの一端側で吊り対象物となるプレキャスト版を吊り、他端側にカウンターウェイトを配置した吊り装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、ジャイロ機構によって吊り対象物の姿勢を制御する吊り対象物旋回制御装置が開示されている。
【0004】
また、従来、
図7および
図8に示すように、一端側で吊り対象物としての外壁パネル801を吊り、他端側にカウンターウェイト802を配置したバランサー803を、吊り対象物旋回制御装置804で吊り、さらに、この吊り対象物旋回制御装置804を、当該吊り対象物旋回制御装置804の重心上の位置が吊元になるようにして揚重機805で吊り上げることにより、外壁パネル801およびバランサー803の全体に対して旋回制御を行いながら、外壁パネル801を建物躯体806に取り付ける作業を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-335280号公報
【文献】特開2013-35651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術では、吊り対象物が特にパネル物である場合等、その見付面積に比べて重量が軽い場合、揚重機による揚重中に風に煽られやすいという問題がある。また、吊り対象物旋回制御装置を用いたとしても、パネル物の前後方向(パネル面と直交する方向)の荷振れ抑制を的確に行うことができなかった。
【0007】
この発明は、上記の事情に鑑み、吊り対象物における揚重中の風による煽りを軽減することができる吊り装置、吊り方法および建物躯体への外壁パネルの取付方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の吊り装置は、上記の課題を解決するために、一端側が吊り対象物の吊り位置となるバランサーと、上記吊り対象物の中央位置よりも下側の位置を上記バランサーの他端側に直接または間接的に連結する対象物連結材と、を備えており、吊元が上記一端側と上記他端側との間に設定されることを特徴とする。
【0009】
上記の構成であれば、上記対象物連結材によって、上記吊り対象物の動きが抑制されるので、吊り対象物における揚重中の風による煽りを軽減することができる。
【0010】
上記バランサーの他端側に、カウンターウェイトを備えてもよい。
【0011】
また、上記バランサーの他端側に、カウンターウェイトの全部または一部に代わる重量を有する吊り対象物旋回制御装置を備えてもよい。これによれば、上記吊り対象物旋回制御装置がカウンターウェイトの全部または一部として機能するので、全体重量を軽量化でき、揚重機のサイズを小さくして施工コストを軽減することができる。さらに、上記吊り対象物旋回制御装置による旋回制御において、上記吊り対象物がパネル物である場合でも、これに上記対象物連結材が連結されることによって、当該パネル物の前後方向の荷振れも抑制できる。
【0012】
上記吊り対象物旋回制御装置が上記バランサーに直付け固定されてもよい。これによれば、上記吊り対象物旋回制御装置と上記バランサーとを一体的に扱うことが可能になり、吊り作業の準備等が行い易くなる。また、上記吊り対象物旋回制御装置が上記バランサーに線状部材を介して連結されるよりも、制御の遅れを低減して旋回応答性を良好にできる。
【0013】
上記吊り対象物から外された上記対象物連結材を巻き上げる巻き上げ機を備えてもよい。これによれば、上記吊り対象物から外された上記対象物連結材が、風に煽られて上記吊り対象物に当たるのを抑制できる。
【0014】
また、この発明の記載の吊り方法は、上記いずれかの吊り装置を用い、上記吊り対象物の中央位置よりも下側の位置に上記対象物連結材を連結した状態で、上記バランサーの一端側で上記吊り対象物を吊り上げることを特徴とする。これによれば、上記吊り対象物の下部側の揺れを抑制し易くなる。
【0015】
また、この発明の記載の建物躯体への外壁パネルの取付方法は、上記の吊り方法を用い、上記対象物連結材を、吊り対象物としての外壁パネルの屋外側となる側に1本以上取り付け、上記外壁パネルを吊り上げた状態で、上記外壁パネルを建物躯体に取り付けることを特徴とする。
【0016】
上記の方法であれば、上記1本以上の対象物連結材によって、上記外壁パネルの動きが抑制されるので、上記外壁パネルにおける揚重中の風による煽りを軽減することができる。
【0017】
上記の建物躯体への外壁パネルの取付方法において、上記外壁パネルを地組架台上で組み立て、上記地組架台から上記外壁パネルを吊り上げて建物躯体に取り付けることとしてもよい。
【0018】
また、上記の建物躯体への外壁パネルの取付方法において、上記外壁パネルの裏面側の下地材に、当該外壁パネルの下方に突出する下部固定治具を取り付け、この下部固定治具を介して上記対象物連結材を上記外壁パネルの下部側に連結してもよい。これによれば、上記下部固定治具によって上記対象物連結材と上記外壁パネルの下部側との連結作業が行い易くなる。また、上記下部固定治具が上記外壁パネルの裏面側に取り付けられると、作業者が建物躯体上で吊り状態の外壁パネルから上記下部固定治具を外す作業が容易になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明であれば、上記対象物連結材によって、吊り対象物における揚重中の風による煽りを軽減することができ、さらに、上記吊り対象物の前後方向の荷振れ抑制が行えるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】吊り対象物の例としての外壁パネルを示した斜視図である。
【
図2】同図(A)は
図1の外壁パネルにおける外壁面材の上部および下部の断面を示した説明図であり、同図(B)は
図1の上下に並ぶ外壁面材の嵌め込み箇所を示した説明図である。
【
図3】
図1の外壁パネルを地上で組み立てる地組架台の一例を示した正面図である
【
図4】この発明の実施形態にかかる吊り装置および吊り方法を示した説明図である。
【
図5】この発明の実施形態にかかる吊り方法で外壁パネルを建物に取り付ける方法を示した説明図である。
【
図6】この発明の他の実施形態にかかる吊り方法で外壁パネルを建物に取り付ける方法を示した説明図である。
【
図7】従来の吊り装置および吊り方法を示した説明図である。
【
図8】従来の吊り装置および吊り方法を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、外壁パネル5は、例えば、複数の横長の外壁面材51を上下に並べて下地材52で相互に連結された構造を有する。
図1に示す例では、上記下地材52として、縦胴縁52aを備えている。
【0022】
上記外壁面材51は、例えば、
図2(A)および
図2(B)に示すように、断熱材51aを鋼板51b、51cで挟み込んだ金属サンドイッチパネルである。2枚の外壁面材51を上下に並べた場合、下段に位置する外壁面材51の上端面に形成された横幅方向に長い2か所の凹部51dに、上段に位置する外壁面材51の下端面に形成された横幅方向に長い2か所の凸部51eが嵌まり込むことにより、上下の外壁面材51が互いに面外方向に位置ずれしないように組み合わされる。
【0023】
図3に示すように、地組架台1を用いることによって、上記複数の外壁面材51を上下に並べて下地材52で連結した外壁パネル5を、当該外壁パネル5が取り付けられる建物躯体7の外壁取付箇所とは異なる場所で組み立てることができる。
【0024】
上記地組架台1は、上記外壁面材51の側面側に位置する支柱部11Aと、上記外壁面材51の後面側となる位置に配置された奥側支柱部11Bと、上記支柱部11A、11Bの下側と中側と上側とにそれぞれ掛け渡される3本の梁部12と、それらを支持する柱11Cとを備える。上記外壁パネル5および上記下地材52は点線で示している。
【0025】
例えば、上記支柱部11Aの下部側は、下側の梁部12の上面上に固定されており、上記支柱部11Aの中央側および上部側は、中側と上側の梁部12の前面側にスペーサを介してそれぞれ固定されている。中側と上側の梁部12は、上記縦胴縁52aの後面側に設けられる。また、上記奥側支柱部11Bの下端は、下側の梁部12の上面上に固定され、上記奥側支柱部11Bの中央部および上部は、中側と上側の梁部12の前面側に固定されている。
【0026】
上段に位置する上記梁部12および中段に位置する上記梁部12上には、上記縦胴縁52aを保持する下地材保持具2が固定されている。なお、下段に位置する上記梁部12には、上記縦胴縁52aが差し込まれる位置決め凸部或いは上記縦胴縁52aの側面が当接される位置決め板部が設けられる。
【0027】
作業者は、上記縦胴縁52aをセットした後に、外壁面材51をセットし、このセットした上記外壁面材51の上端部側にビス等をねじ込み、上記外壁面材51を先にセットした上記縦胴縁52aに固定する。この作業を繰り返すことで外壁パネル5が作製される。
【0028】
図4は、この実施形態の吊り装置6を示している。上記吊り装置6は、例えば、枠形のバランサー61を備える。このバランサー61の一端側の下面部には、吊り対象である外壁パネル5の吊り位置として、例えば、H形鋼からなる長尺の天秤62が横向に固定されている。この天秤62の端部側には、各々吊りワイヤ62aが垂下されており、この吊りワイヤ62aの下端が吊り対象物である外壁パネル5の縦胴縁52aの上端側に連結される。この連結は、例えば、縦胴縁52aに形成されているボルト挿通孔にフック等の係合部材を係合することにより行う。なお、外壁パネル5に開口部が形成される場合、この開口部の下辺側の縦胴縁52aの上端部に上記吊りワイヤ62aを連結することもある。
【0029】
なお、
図4に示す吊り方法に限らず、例えば、上記吊りワイヤ62aを用いないで、上記天秤62を、直接、縦胴縁52aに連結することによって外壁パネル5を吊ってもよい。或いは、バランサー61の先端側でワイヤによって天秤62を吊り下げ、この天秤62を、直接、縦胴縁52aに連結することによって外壁パネル5を吊ってもよい。
【0030】
上記バランサー61の他端側の下面部には、カウンターウェイトを配置することができる。この実施形態では、カウンターウェイトに替えて、当該カウンターウェイトの重量の全部または一部となる重量を有する吊り対象物旋回制御装置63が設けられている。例えば、上記外壁パネル5の重量が約1tであり、上記バランサー61の他端側に、本来2tの重量のカウンターウェイトを配置するところを、約2tの重量を有する吊り対象物旋回制御装置63を取り付けてある。なお、吊り装置6は、上記吊り対象物旋回制御装置63もカウンターウェイトも備えない構成とすることが可能であるが、上記吊り対象物旋回制御装置63やカウンターウェイトを備えて多少重量を有する方が、風による煽りを軽減しやすい。
【0031】
上記吊り対象物旋回制御装置63は、例えば、その方形筐体内に設けられた図示しないジャイロ機構(水平軸回りに高速回転されるフライホイールの回転面をジンバルで傾ける機構)によって吊り対象物の姿勢(回転)を制御するものであり、地上からの遠隔操作によって動作されるようになっている。
【0032】
上記吊り対象物旋回制御装置63は、上記バランサー61の他端側の下面部から垂下されたワイヤ等によって連結されていてもよいが、この実施形態では、上記バランサー61に、例えば、ボルトとナットによって直付けで固定されている。
【0033】
そして、上記吊り装置6では、吊元Cが上記バランサー61の一端側と他端側との間に設定される。また、この実施形態では、上記吊元C側に一端が集まる複数のワイヤ等の線状部材64を備えており、上記線状部材64の他端側は、上記バランサー61の上面部または側面部に連結されている。さらに、この実施形態では、上記天秤62側に位置する2本の線状部材64は、当該天秤62から幾分離れた位置で上記バランサー61に固定されており、上記吊り対象物旋回制御装置63側に位置する2本の線状部材64は、上記バランサー61の端部に固定されている。なお、上記吊り対象物旋回制御装置63は、上記バランサー61の他端側の上面側に固定されてもよく、また、この場合に、2本の線状部材64の他端側が上記吊り対象物旋回制御装置63に連結されてもよいものである。或いは、上記吊り対象物旋回制御装置63が、その上下方向の中間位置において、上記バランサー61の他端側の端面に固定されていてもよいものである。
【0034】
また、上記吊り装置6は、上記外壁パネル5の中央よりも下側、特に下端側を、上記バランサー61の他端側に連結する対象物連結材65を備えている。この実施形態では、上記対象物連結材65を上記バランサー61の他端側に直接連結するのではなく、上記吊り対象物旋回制御装置63の下面側に連結している。上記対象物連結材65は、引張のみ負担するワイヤ等の線状部材でもよいし、引張および圧縮の両方を負担する棒状部材でもよい。そして、上記対象物連結材65を用い、上記外壁パネル5を、そのパネル面が水平に向く鉛直垂下状態からパネル表側(屋外側)に引いて、当該対象物連結材65にテンションがかかるようにしている。なお、上記外壁パネル5を引っ張って上記テンションを上記対象物連結材65にかけるのを容易にするために、当該対象物連結材65に、いわゆるレバーブロック(商品名)やラチェット式の荷締め部材等を設けてもよい。
【0035】
また、この実施形態では、上記外壁パネル5の裏面側には、当該裏面側から当該外壁パネル5の下方に突出する下部固定治具66を、上記外壁パネル5の左右方向の中心から等距離左右に離れた位置に2個取り付け、これら下部固定治具66を介して上記対象物連結材65を上記外壁パネル5の下部側に連結している。上記下部固定治具66としては、例えば、上記縦胴縁52aと同様の鋼材を用いることができ、上下の外壁パネル5を互いに板材で連結する板材固定方式と同様に、板材66aとボルト・ナットで一時固定することができる。また、上記下部固定治具66は上記対象物連結材65から離脱できない構成としてもよいし、離脱可能な構成としてもよい。上記レバーブロック(商品名)やラチェット式の荷締め部材についても、上記外壁パネル5の取り付け後において、上記対象物連結材65から離脱して回収できるようにしてもよい。
【0036】
次に、上記吊り装置6を用いた吊り方法について説明する。この吊り方法では、上記吊り対象物旋回制御装置63の重心を通る鉛直線から外れた位置に吊元Cが設定されることになり、当該吊り対象物旋回制御装置63が、吊り対象物(外壁パネル5)に対するカウンターウェイトの全部または一部の役割を担う方法となる。また、この方法において、上記重心を通る鉛直線から外れた位置を、上記吊り対象物旋回制御装置63の筐体よりも外側の位置に設定してもよい。上記吊元Cが上記吊り対象物旋回制御装置63の筐体から大きく外れるほど、上記吊り対象物旋回制御装置63に、吊り対象物に対するカウンターウェイトの役割を担わせることができる。
【0037】
また、この実施形態の建物躯体への外壁パネルの取付方法は、上記のように、上記対象物連結材65を、吊り対象物としての外壁パネル5の屋外側となる側で互いに離間するように2本取り付け、上記外壁パネル5を吊り上げた状態で、
図5にも示すように、上記外壁パネル5から上記対象物連結材65を取り外した後に、上記外壁パネル5を建物躯体7に、当該建物躯体7に固定されている図示しないファスナーを用いて取り付ける。このとき、上記吊元Cは、上記建物躯体7から離間して位置できるので、上記外壁パネル5の建物躯体7への取り付けを円滑に行うことができる。また、上記外壁パネル5の吊り上げにおいては、上記外壁パネル5の裏面側から当該外壁パネル5の下方に突出する上記の下部固定治具66を介して上記対象物連結材65を上記外壁パネル5の下部側に連結する。なお、上記外壁パネル5を、例えば、上記建物躯体7の敷地に設けた上記地組架台1上で組み立て、上記地組架台1から上記外壁パネル5を吊り上げて建物躯体7に取り付けることができる。もちろん、組立後に寝かせて置いた外壁パネル5を吊り装置6で立て起こして吊り上げるようにしてもよい。なお、吊り装置6の吊り対象物は上記外壁パネル5に限らないものである。
【0038】
以上述べたように、この実施形態であれば、上記対象物連結材65によって、上記外壁パネル5の下端側の動きが抑制されるので、上記外壁パネル5における揚重中の風による煽りを軽減することができる。
【0039】
上記バランサー61の他端側に、上記吊り対象物旋回制御装置63を備えると、上記吊り対象物旋回制御装置63が上記カウンターウェイトの全部または一部として機能するので、全体重量を軽量化し、揚重機のサイズを小さくして施工コストを軽減することができる。さらに、上記吊り対象物旋回制御装置63による旋回制御において、上記吊り対象物が外壁パネル5である場合でも、その下端側が連結されることによって、当該外壁パネル5の前後方向の荷振れも抑制できる。
【0040】
上記吊り対象物旋回制御装置63が上記バランサー61に直付け固定されていると、上記吊り対象物旋回制御装置63と上記バランサー61とを一体的に扱うことが可能になり、吊り作業の準備等が行い易くなる。また、上記吊り対象物旋回制御装置63が上記バランサー61に線状部材を介して連結されるよりも、制御の遅れを低減して旋回応答性を良好にできる。
【0041】
また、上記外壁パネル5の裏面側から当該外壁パネル5の下方に突出する下部固定治具66を介して上記対象物連結材65を上記外壁パネル5の下部側に連結すると、上記下部固定治具66によって上記対象物連結材65と上記外壁パネル5の下部側との連結作業が行い易くなる。また、上記下部固定治具66が上記外壁パネル5の裏面側に取り付けられると、作業者が建物躯体7上で吊り状態の外壁パネル5から上記下部固定治具66を外す作業が容易になる。なお、取り外すのに遠隔操作等が必要となるが、上記外壁パネル5の表面に吸着できる吸盤を用いることで、上記対象物連結材65を上記外壁パネル5の上記外壁面材51に固定することも可能である。また、
図6に示すように、対象物連結材先端具65A,65Bを用いてもよい。上記対象物連結材先端具65Aは、凹部を有する断面略コ字状の部材からなり、上記凹部にて上記外壁パネル5の下縁部に係合できる。また、上記対象物連結材先端具65Bも、凹部を有する断面略コ字状の部材からなり、上記凹部にて上記外壁パネル5の下部側の側縁部に係合できる。上記対象物連結材先端具65Bは、さらに、上記縦胴縁52aの溝部に入り込むリップ部を備えてもよい。なお、
図6では対象物連結材先端具65Aおよび65Bを用いる例を示しているが、対象物連結材先端具65Aのみを用いてもよく、また、対象物連結材先端具65Bのみを用いてもよい。
【0042】
上記対象物連結材65が棒材やワイヤである場合、これらが外壁パネル5に当たるとキズをつけるおそれがあるので、上記対象物連結材65としてナイロンスリングを用いるようにしてもよい。また、上記対象物連結材65を巻き上げるための巻き上げ機を上記吊り対象物旋回制御装置63の下面等に備えてもよい。これによれば、上記外壁パネル5の下端側から外された上記対象物連結材65が、風に煽られて上記外壁パネル5に当たるのを抑制できる。上記巻き上げ機は、電動モーターによって駆動され、上記吊り対象物旋回制御装置63と同様に地上からの遠隔操作が行えるようにするのがよい。
【0043】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 :地組架台
2 :下地材保持具
5 :外壁パネル
6 :吊り装置
7 :建物躯体
11A :支柱部
11B :奥側支柱部
11C :柱
12 :梁部
51 :外壁面材
51a :断熱材
51b :鋼板
51c :鋼板
51d :凹部
51e :凸部
52 :下地材
52a :縦胴縁
61 :バランサー
62 :天秤(吊り位置)
62a :吊りワイヤ
63 :吊り対象物旋回制御装置
64 :線状部材
65 :対象物連結材
65A :対象物連結材先端具
65B :対象物連結材先端具
66 :下部固定治具
66a :板材
C :吊元