(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】細霧散布システム、および細霧散布方法
(51)【国際特許分類】
A01G 9/24 20060101AFI20230829BHJP
A01G 25/02 20060101ALI20230829BHJP
F24F 1/0007 20190101ALI20230829BHJP
【FI】
A01G9/24 R
A01G25/02 602B
F24F1/0007 331
(21)【出願番号】P 2019183900
(22)【出願日】2019-10-04
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】堤 英伸
(72)【発明者】
【氏名】松永 聖也
(72)【発明者】
【氏名】石井 伸二
(72)【発明者】
【氏名】杉山 浩二
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-171577(JP,A)
【文献】特開平11-155389(JP,A)
【文献】登録実用新案第3088613(JP,U)
【文献】特開平11-137101(JP,A)
【文献】特開平11-137100(JP,A)
【文献】特開2004-013596(JP,A)
【文献】登録実用新案第3200676(JP,U)
【文献】国際公開第2017/081887(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/199357(WO,A1)
【文献】特許第3653398(JP,B2)
【文献】特表2017-512488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14- 9/26
A01G 25/00-29/00
F24F 1/0007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物を栽培する施設の内部に細霧を散布する細霧散布システムであって、
逆浸透膜により水を濾過する逆浸透膜濾過装置と、
前記逆浸透膜濾過装置により濾過された処理水を貯めるタンクと、
前記タンクに貯められた前記処理水を加圧するポンプと、
前記施設の内部に配置され、前記ポンプに加圧された前記処理水を前記細霧として噴射するノズルと、
を備
え、
前記ノズルの噴射口の先端から前記細霧の噴射方向に50mm離れた位置における、前記細霧の粒子の体面積平均粒子径は、30μm以下である、
細霧散布システム。
【請求項2】
請求項1に記載の細霧散布システムであって、
前記ノズルは、前記作物よりも上に配置される、
細霧散布システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の細霧散布システムであって、
前記作物から前記ノズルまでの距離は、1m以上である、
細霧散布システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の細霧散布システムであって、
前記ノズルから、前記作物の上にある物体までの距離は、1m以上である、
細霧散布システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の細霧散布システムであって、
前記施設の内部の温湿度を検出する温湿度センサと、
前記温湿度センサの検出値が入力され、前記施設の内部の温湿度が目標設定値内に収まるように前記ポンプを制御する制御装置と、
を備える、
細霧散布システム。
【請求項6】
作物を栽培する施設の内部に細霧を散布する細霧散布方法であって、
逆浸透膜により水を濾過する逆浸透膜濾過工程と、
前記逆浸透膜濾過工程により濾過された処理水を貯める貯水工程と、
前記貯水工程で貯められた前記処理水を加圧する加圧工程と、
前記加圧工程で加圧された前記処理水を細霧として
ノズルから前記施設の内部に噴射する噴射工程と、
を備
え、
前記ノズルの噴射口の先端から前記細霧の噴射方向に50mm離れた位置における、前記細霧の粒子の体面積平均粒子径は、30μm以下である、
細霧散布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施設の内部に細霧を散布する細霧散布システム、および細霧散布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1などに、作物を栽培する施設の内部(同文献における「室内」)において、水を細霧状に噴射することで、施設内の温度および湿度を管理することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同文献に記載の技術では、細霧が作物に付着し、作物が濡れた場合に、作物に病気が発生するおそれがある。また、細霧を噴射するノズルの内部、およびノズルの噴射口周辺に、不純物が堆積および沈着するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、作物に細霧が付着しても作物の病気の発生を抑制することができ、ノズルの内部およびノズルの噴出口周辺での不純物の堆積および沈着を抑制することができる、細霧散布システム、および細霧散布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の手段の細霧散布システムは、作物を栽培する施設の内部に細霧を散布する。細霧散布システムは、逆浸透膜濾過装置と、タンクと、ポンプと、ノズルと、を備える。前記逆浸透膜濾過装置は、逆浸透膜により水を濾過する。前記タンクは、前記逆浸透膜濾過装置により濾過された処理水を貯める。前記ポンプは、前記タンクに貯められた前記処理水を加圧する。前記ノズルは、前記施設の内部に配置され、前記ポンプに加圧された前記処理水を前記細霧として噴射する。
【0007】
第2の手段の細霧散布方法は、作物を栽培する施設の内部に細霧を散布する。細霧散布方法は、逆浸透膜濾過工程と、貯水工程と、加圧工程と、噴射工程と、を備える。前記逆浸透膜濾過工程は、逆浸透膜により水を濾過する。前記貯水工程は、前記逆浸透膜濾過工程により濾過された処理水を貯める。前記加圧工程は、前記貯水工程で貯められた前記処理水を加圧する。前記噴射工程は、前記加圧工程で加圧された前記処理水を細霧として前記施設の内部に噴射する。
【発明の効果】
【0008】
上記の第1の手段および第2の手段のそれぞれにより、作物に細霧が付着しても作物の病気の発生を抑制することができ、ノズルの内部およびノズルの噴出口周辺での不純物の堆積および沈着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図1に示す濾過装置20を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示すノズル43の先端部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1~
図3を参照して、細霧散布システム1について説明する。
【0011】
細霧散布システム1は、施設11の内部に細霧Mを散布する(細霧散布方法を行う)。細霧散布システム1は、施設11の内部の冷房および加湿の少なくともいずれかを細霧Mにより行うシステム(細霧冷房システム、細霧加湿システム)である。細霧散布システム1は、例えば夏季に冷房を行い、例えば冬季に加湿を行う。細霧散布システム1は、施設11と、高設棚13と、作物15と、濾過装置20と、タンク30と、細霧噴射装置40と、温湿度センサ51と、制御装置60と、を備える。
【0012】
施設11は、作物15を栽培するための空間を有する設備である。施設11は、施設園芸のための設備である。施設11は、建物でもよく、建物の一部の区画(室)でもよい。施設11は、例えば、プラスチックハウスでもよく、ビニルハウスでもよく、ガラス室でもよい。
【0013】
高設棚13は、作物15を高設栽培するための棚である。高設棚13は、施設11の内部に配置される。高設棚13は、例えば複数設けられ、1つのみ設けられてもよい。高設棚13は、施設11の下部(例えば地面など)から上に突出する。なお、高設棚13は設けられなくてもよい。
【0014】
作物15は、施設11の内部で栽培される植物(農作物)である。作物15は、高設棚13上に配置されてもよく、施設11の下部(例えば地面など)に配置されてもよい。例えば、作物15は、葉を有し、草本(例えばイチゴ、トマト、キク、バラなど)でもよく、木本(例えばミカンなどの柑橘類、マンゴーなど)でもよい。
【0015】
濾過装置20は、原水WOを濾過し、処理水W5を得るための装置(濾過工程を行う装置)である。濾過装置20は、逆浸透膜濾過装置24を含む装置(逆浸透膜濾過水製造装置)である。濾過装置20で濾過される原水WOは、河川の水でもよく、池沼(例えば農業用ため池など)の水でもよく、地下水(井戸水など)でもよい。なお、原水WOが作物15に付着した場合は、原水中に含まれる雑菌、ウイルスなどにより作物15に病気が発生するおそれがある。濾過装置20は、施設11の内部に配置されてもよく、施設11の外部(例えば施設11の近傍)に配置されてもよい(タンク30およびポンプ41についても同様)。
図2に示すように、濾過装置20は、第1砂濾過装置21と、フィルタ濾過装置22と、第2砂濾過装置23と、逆浸透膜濾過装置24と、を備える。
【0016】
この濾過装置20は、上記の各装置(第1砂濾過装置21、フィルタ濾過装置22、第2砂濾過装置23、および逆浸透膜濾過装置24)が一体的に設けられたもの(ユニット)でもよい。濾過装置20は、上記の各装置の一部が他の部分とは別に設けられたものでもよい。濾過装置20の装置の構成は変更されてもよい。例えば、濾過装置20は、上記の各装置とは異なる装置をさらに備えてもよい。例えば、第1砂濾過装置21および第2砂濾過装置23のうち一方のみが、設けられてもよい。例えば、濾過装置20は、水に含まれる金属イオンを減らすイオン交換樹脂装置を備えてもよい。このイオン交換樹脂装置は、逆浸透膜濾過装置24の前段に設けられてもよく、第2砂濾過装置23の後段に設けられてもよい。
【0017】
第1砂濾過装置21は、砂の層に水を通すことで、水を濾過する装置(第1砂濾過工程を行う装置)である。フィルタ濾過装置22は、フィルタ(例えば不織布など)に水を通すことで、水を濾過する装置(フィルタ濾過工程を行う装置)である。フィルタ濾過装置22は、第1砂濾過装置21で濾過された水を濾過する。第2砂濾過装置23は、砂の層に水を通すことで、水を濾過する装置(第2砂濾過工程を行う装置)である。第2砂濾過装置23は、フィルタ濾過装置22で濾過された水を濾過する。
【0018】
逆浸透膜濾過装置24は、逆浸透膜(RO(Reverse Osmosis)膜)に水を通すことで濾過を行う装置(逆浸透膜濾過工程を行う装置)である。逆浸透膜は、水を通し、イオン、塩類、および微生物などの不純物を通さない膜である。逆浸透膜濾過装置24は、第2砂濾過装置23で濾過された水を濾過することで、処理水W5(RO膜濾過水、RO膜処理水、RO水)を生成する。処理水W5は、純水または略純水である。
【0019】
タンク30(貯水タンク)は、
図1に示すように、濾過装置20により濾過された処理水W5を貯める(貯水工程を行う)。タンク30は、逆浸透膜濾過装置24により濾過された処理水W5を貯める。
【0020】
細霧噴射装置40(ミスト噴霧装置)は、処理水W5を加圧して細霧Mを噴射(噴霧)する装置(細霧噴射工程を行う装置)である。細霧噴射装置40は、ポンプ41と、ノズル43と、を備える。
【0021】
ポンプ41(高圧ポンプ)は、処理水W5を加圧し、さらに詳しくは、タンク30に貯められていた処理水W5を加圧する(加圧工程を行う)。ポンプ41は、ノズル43から所定の粒子径(後述)の細霧Mを噴射できるような圧力で、処理水W5を加圧する。ポンプ41が処理水W5の圧力を高くするほど、細霧Mの粒子径を小さくすることができる。
【0022】
ノズル43(ミスト噴霧ノズル、ミストノズル)は、ポンプ41に加圧された処理水W5を細霧Mとして噴射する(噴射工程を行う)。ノズル43は、施設11の内部に配置され、施設11の内部に細霧Mを噴射する。ノズル43の数、およびノズル43が噴射する処理水W5の流量などは、細霧Mによる降温および加湿の能力に応じて適切に設定される。複数のノズル43が一体的に設けられてもよく、別々に設けられてもよい。
図1に示す例では、2つのノズル43が一体的に設けられた組を、2組示した。なお、ノズル43として、例えば、なごミスト設計有限会社製、旋回流型ノズル、「NA-N05」などを用いることができる。ノズル43は、処理水W5を噴射する噴射口43a(
図3参照)(オリフィス、孔部)を備える。
【0023】
このノズル43の位置、およびノズル43が噴射する細霧Mの粒子径は、作物15のうち濡らしたくない部分(「特定部」ともいう)ができるだけ濡れないように設定される。さらに詳しくは、細霧Mは逆浸透膜濾過装置24で濾過された水であるため、細霧Mが作物15に多少付着しても、作物15に病害が発生することを抑制できる。一方で、作物15が水で濡れた状態が長く続くと、多湿によるカビの発生や菌の増殖を誘発する場合があり、作物15に病気(例えば灰色かび病など)が発生する場合がある。そこで、作物15の特定部に細霧Mができるだけ付着しないように、ノズル43の位置および細霧Mの粒子径が設定される。作物15の特定部は、例えば、作物15の葉でもよく、実でもよい。作物15の木部は濡れても構わない場合がある。作物15の特定部に細霧Mが到達したか否かは、例えば感水試験紙で確認できる。以下の「作物15」は、特に断らない限り「作物15の特定部」に読み替えてもよく、読み替えなくてもよい。
【0024】
(作物15とノズル43との間隔)
作物15に細霧Mができるだけ付着しないように、作物15とノズル43との間隔が確保されることが好ましい。
【0025】
[配置例A1]作物15と施設11の上部(例えば天井)との間にスペースが十分ある場合、ノズル43は、作物15よりも上に配置されてもよい。例えば、高設棚13の上に作物15が配置される場合、および施設11の下部(地面など)に作物15が配置される場合などに、ノズル43は、作物15よりも上に配置されてもよい。この場合、ノズル43は、施設11の上部(例えば天井の近傍)に配置されてもよい。[配置例A2]作物15と施設11の下部(例えば地面)との間にスペースが十分ある場合、ノズル43は、作物15よりも下に配置されてもよい。この場合、ノズル43は、施設11の下部(例えば地面の近傍)に配置されてもよい。具体的には例えば、作物15が柑橘類などの場合は、施設11の下部にノズル43が配置され、ノズル43から上向きに細霧Mが噴霧された場合、作物15の特定部が濡れることはない、またはほぼない。[配置例A3]ノズル43は、作物15の横(作物15と同じ高さ位置)に配置されてもよい。なお、上記の配置例A1、A2およびA3のうち複数が組み合わされてもよい。
【0026】
作物15からノズル43までの距離(最短距離)が大きいほど、作物15に細霧Mが付着しにくい。[配置例B1]作物15からノズル43までの距離は、好ましくは1m以上であり、さらに好ましくは2m以上であり、さらに好ましくは3m以上である。[設置例B2]作物15からノズル43までの距離は、作物15が最も生育したときに想定される作物15の位置に基づいて設定されることが好ましい。
【0027】
(作物15の上にある物体とノズル43との間隔)
作物15の上(真上または略真上)にある物体に細霧Mが付着すると、細霧Mの粒子が集まって水滴になり、この水滴が落下し、作物15に付着する場合がある。そのため、作物15の上にある物体に細霧Mができるだけ付着しないように、作物15の上にある物体とノズル43との間隔を確保できるように、ノズル43が配置されることが好ましい。作物15の上にある物体は、例えば、施設11の一部(天井、梁など)、膜状部材(シート、ネットなど)、および配管などである。作物15の上にある物体は、ノズル43よりも上に配置される場合がある。作物15の上にある物体は、ノズル43よりも下(ノズル43と作物15との間)に配置される場合がある。[配置例C]ノズル43から、作物15の上にある物体までの距離は、好ましくは1m以上であり、さらに好ましくは2m以上であり、さらに好ましくは3m以上である。
【0028】
(細霧Mの粒子径)
ノズル43が噴射する細霧Mの粒子径(さらに詳しくは細霧Mを構成する水滴の粒子径)は、作物15ができるだけ濡れないような大きさであることが好ましい。細霧Mの粒子径が小さいほど、ノズル43から噴射された細霧Mが作物15に到達することなく蒸発しやすい。また、細霧Mが作物15に付着した場合でも、細霧Mの粒子径が小さいほど、作物15の表面で早く蒸発しやすい。細霧Mの粒子径は、好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは25μm以下であり、さらに好ましくは20μm以下である。上記の通り、ポンプ41が処理水W5の圧力を高くするほど、細霧Mの粒子径を小さくすることができる。具体的には例えば、ポンプ41が処理水W5を6MPa以上に加圧して、噴射口43a(
図3参照)の寸法や形状が適切に設定されたノズル43が細霧Mを噴射した場合、細霧Mの粒子径を30μm以下とすることができる。ここで、細霧Mの粒子径は、
図3に示すノズル43の噴射口43aの先端から細霧Mの噴射方向Dに50mm離れた位置における、細霧Mの粒子の体面積平均粒子径(ザウター平均粒子径)で評価される。噴射方向Dに離れた位置とは、ノズル43の噴射口43aの中心軸の方向であって、細霧Mの噴射の向き(ノズル43の内部から外部に向かう向き)に離れた位置を意味する。体面積平均粒子径は、レーザ回折法により、レーザ回折粒子径測定器(Malvern Instruments社製、マスターサイザーS型、使用レーザ:He-Neレーザ)で5回測定した平均値とする。
【0029】
(噴射方向D)
ノズル43による細霧Mの噴射方向Dは、
図1に示す作物15の上にある物体および作物15に細霧Mができるだけ付着しないような向きであることが好ましい。噴射方向Dは、作物15の上にある物体および作物15を避けるような向きであることが好ましい。噴射方向Dの延長線上に、作物15の上にある物体および作物15が存在しないことが好ましい。具体的には例えば、施設11の上部(天井)と作物15との間にノズル43が配置される場合、噴射方向Dは、横向き(水平方向)または斜め下向きであることが好ましい。なお、
図1には、4つのノズル43を示しており、そのうち1つのノズル43の噴射方向Dのみを図示した。
【0030】
(ノズル43が噴射する流体の種類)
ノズル43は、処理水W5のみ(1流体)を噴射してもよい。ノズル43は、処理水W5を含む複数の流体を噴射してもよい。具体的には、ノズル43は、処理水W5および空気(2流体)を噴射してもよい。ノズル43が噴射する処理水W5に、農薬および肥料の少なくともいずれかが混合されてもよい。この農薬および肥料の少なくともいずれかが水溶性である場合は、ノズル43の目詰まりを抑制することができる。その結果、作物15に関する作業(農作業)の負荷を軽減することができる。
【0031】
温湿度センサ51は、施設11の内部の温湿度(温度および湿度)を検出する(温湿度検出工程を行う)。温湿度センサ51は、施設11の内部の温湿度環境を制御するためのものである。温湿度センサ51は、施設11の内部に配置される。温湿度センサ51は、1つのみ設けられてもよく、複数設けられてもよい。複数の温湿度センサ51の検出結果の平均値が、施設11の内部の温湿度の検出値とされてもよい。
【0032】
制御装置60は、施設11の内部の温湿度(温湿度環境)を自動的に制御する(制御工程を行う)。細霧散布システム1が制御装置60を備える場合は、細霧散布システム1は、施設11の内部の温湿度を制御する「温湿度制御システム」でもある。なお、温湿度センサ51に代えて、施設11の内部の温度を検出する(温度検出工程を行う)温度センサ、および、施設11の内部の湿度を検出する(湿度検出工程を行う)湿度センサ、の少なくとも一方が設けられてもよい。制御装置60は、施設11の内部の温度および湿度のうち一方のみを制御してもよい。細霧散布システム1は、温度制御システムまたは湿度制御システムでもよい。以下では、施設11の内部の温度および湿度が、温湿度センサ51に検出され、制御装置60に制御される場合について説明する。
【0033】
(作動)
細霧散布システム1(主に制御装置60)は、以下のように作動するように構成される。
【0034】
制御装置60は、施設11の内部の温湿度を自動的に制御する。この制御の具体例は、次の通りである。制御装置60には、施設11の内部の温湿度の目標設定値が設定されている。温湿度の目標設定値は、例えば範囲を有する値(目標範囲)である。温湿度の目標設定値は、作物15の生育に適した値であり、作物15の種類によって異なる。温湿度の目標設定値は、目標温度、目標湿度、および目標飽差の少なくともいずれかを含む。なお、飽差は、温度および湿度から求まる値である。温湿度の目標設定値は、一定でもよく、条件(例えば時刻、季節、日照の度合いなど)によって変化してもよい。温湿度の目標設定値は、制御装置60が条件に応じて自動的に変化させてもよく、作業者が手作業(手入力)で変化させてもよい。
【0035】
温湿度センサ51が、施設11の内部の温湿度を検出し、温湿度センサ51の検出値が、制御装置60に入力される。制御装置60は、施設11の内部の温湿度が目標設定値内に収まるように、ポンプ41を制御する。その結果、制御装置60は、施設11の内部の温湿度が目標設定値内に収まるように、細霧Mをノズル43から噴射させる。さらに具体的には、制御装置60は、次のように制御を行う。
【0036】
[制御の例D1]例えば、温湿度センサ51に検出された温度が、目標温度の上限(例えば30℃など)を超える場合、制御装置60は、ポンプ41に処理水W5を加圧させる。すると、細霧Mが、ノズル43から施設11の内部に噴射される。すると、細霧Mが蒸発し、気化熱により、施設11の内部の温度が下がる。[制御の例D2]温湿度センサ51に検出された湿度が、目標湿度の下限未満の場合、制御装置60は、ポンプ41に処理水W5を加圧させる。すると、細霧Mが、ノズル43から施設11の内部に噴射される。すると、施設11の内部の湿度が上がる。[制御の例D3]温湿度センサ51に検出された温度が目標温度の上限以下、かつ、温湿度センサ51に検出された湿度が目標湿度の下限以上の場合、制御装置60は、ポンプ41を停止した状態とする。すると、細霧Mは、ノズル43から噴射されない。
【0037】
[制御の例D4]制御装置60は、温湿度センサ51に検出された温度および湿度に基づいて、飽差を算出する。算出された飽差が、目標飽差(例えば3~7g/m3など)を越える場合、制御装置60は、ポンプ41に処理水W5を加圧させる。すると、細霧Mがノズル43から噴射される。すると、施設11の内部の温度低下、および、施設11の内部の湿度上昇の、少なくともいずれかが生じる結果、施設11の内部の飽差が下がる。算出された飽差が、目標飽差以下の場合、制御装置60は、ポンプ41を停止した状態とする。
【0038】
制御装置60は、処理水W5の生成のタイミングを制御してもよい。[制御の例E1]例えば、細霧Mがノズル43から噴射される場合(タンク30内の処理水W5が減る場合)に、制御装置60は、濾過装置20(特に逆浸透膜濾過装置24)に処理水W5を生成させてもよい。[制御の例E2]例えば、タンク30に貯められた処理水W5が所定量以下になった場合に、制御装置60は、濾過装置20に処理水W5を生成させてもよい。タンク30に貯められた処理水W5が所定量よりも多い場合に、濾過装置20を停止した状態としてもよい。
【0039】
なお、上記の各制御の例が、様々に組み合わされてもよい。また、制御装置60は、上記の各制御の例と実質的に同じ作動をするような処理(演算、判定など)を行ってもよい。また、上記の各制御による作動を制御装置60が自動で行うことに代えて(または加えて)、上記の各制御による作動と同じ作動を作業者が手作業で行ってもよい。具体的には例えば、作業者が手動でポンプ41を操作し、ノズル43から細霧Mを散布させてもよい。
【0040】
(効果)
図1に示す細霧散布システム1による効果は次の通りである。
【0041】
(第1の発明の効果)
[構成1]細霧散布システム1は、作物15を栽培する施設11の内部に細霧Mを散布する。細霧散布システム1は、逆浸透膜濾過装置24と、タンク30と、ポンプ41と、ノズル43と、を備える。逆浸透膜濾過装置24は、逆浸透膜により水を濾過する。タンク30は、逆浸透膜濾過装置24により濾過された処理水W5を貯める。ポンプ41は、タンク30に貯められた処理水W5を加圧する。ノズル43は、施設11の内部に配置され、ポンプ41に加圧された処理水W5を細霧Mとして噴射する。
【0042】
上記[構成1]では、細霧Mは、逆浸透膜濾過装置24で濾過された処理水W5(以下RO水)である。よって、細霧Mは、無菌、または、略無菌である。よって、作物15に細霧Mが付着しても、作物15の病気の発生を抑制できる。作物15の病気の発生を抑制できるので、農薬の使用量を抑制することができる。
【0043】
上記[構成1]では、施設11の内部に散布される処理水W5は、細霧Mである。よって、施設11の内部に散布される水の粒子径が細霧Mの粒子径よりも大きい場合に比べ、ノズル43と作物15との間で細霧Mを容易に蒸発させることができる。よって、作物15に細霧Mが付着しにくい。また、処理水W5が細霧Mであるため、作物15に細霧Mが付着した場合でも、作物15に付着した水が蒸発しやすい。ここで、施設11の内部に存在する気中浮遊菌が、ノズル43から噴射された細霧Mの粒子に、付着や混入する場合がある。この場合でも、作物15に細霧Mが付着しにくいので、また、作物15に細霧Mが付着しても作物15に付着した水が蒸発しやすいので、作物15に到達する菌量を抑制できる。よって、作物15の病気の発生を抑制することができる。
【0044】
施設11の内部に散布される水がRO水であることによる効果と、施設11の内部に散布される水が細霧Mであることによる効果と、の相乗効果により、作物15の病気の発生をより抑制できる。さらに詳しくは、上記のように細霧MがRO水であるため、ノズル43からの噴射直後の細霧M中の菌量が極めて少ない(ほぼゼロである)。さらに、上記のように施設11の内部に散布される水が細霧Mであるため、作物15に到達する菌量を抑制できる。よって、施設11の内部に散布される水が、RO水でない場合(例えば通常の農作業で利用される水である場合)や、細霧Mでない場合に比べ、作物15に到達する菌量を極めて少なくでき、作物15の病気の発生が生じる可能性を低く維持することができる。
【0045】
作物15に細霧Mが付着しても、作物15の病気の発生を抑制できるので、細霧MがRO水でない場合に比べ、作物15に細霧Mが付着することが許容される。よって、細霧MがRO水でない場合に比べ、ノズル43を作物15に近づけることができる。その結果、ノズル43の設置位置の自由度を向上させることができる。その結果、ノズル43を容易に設置することができる。また、メンテナンスを容易に行える位置にノズル43を配置した場合、ノズル43のメンテナンス性を向上させることができる。
【0046】
上記[構成1]では、細霧Mは、逆浸透膜濾過装置24で濾過された処理水W5である。よって、処理水W5は、逆浸透膜濾過装置24により、カルシウムやマグネシウムなどの不純物が取り除かれた(または略取り除かれた)ものである。よって、細霧MがRO水でない場合に比べ、ノズル43に供給される水に含まれる不純物を少なくすることができる。よって、逆浸透膜濾過装置24からノズル43までの配管内、ノズル43の内部、およびノズル43の噴射口43a(
図3参照)周辺での、不純物(例えば、カルシウム塩やマグネシウム塩などのスケール)の堆積および沈着を抑制することができる。ノズル43の内部での不純物の堆積および沈着を抑制できるので、不純物によるノズル43の目詰まりを抑制することができる。
【0047】
細霧MがRO水でない場合に比べ、ノズル43の内部およびノズル43の噴射口43a周辺での不純物の堆積および沈着を抑制できるので、ノズル43の内部および噴射口43a周辺での流体の乱れを抑制することができる。よって、細霧Mの粒子径のばらつきを抑制することができる。その結果、施設11の内部での温湿度のばらつき(斑)を抑制することができる。その結果、施設11の内部で均一(または略均一)に作物15を栽培することができる。その結果、作物15に関する作業のスケジュール(農作業スケジュール)の乱れを抑制することができる。
【0048】
細霧MがRO水でない場合に比べ、ノズル43の目詰まりを抑制できるので、ノズル43の噴射口43a(
図3参照)を小さくすることが許容される。ノズル43の噴射口43aを小さくした場合は、細霧Mの粒子径を小さくすることができる。よって、ノズル43と作物15との間で細霧Mを容易に蒸発させることができる。よって、作物15に細霧Mが付着しにくい。また、細霧Mの粒子径を小さくできるので、作物15に細霧Mが付着した場合でも、作物15に付着した水が蒸発しやすい。その結果、作物15の病気の発生を抑制することができる。
【0049】
上記[構成1]により、次の効果が得られてもよい。
図1に示す細霧Mの粒子径を小さくすると、レナード効果により、細霧Mの粒子がマイナスに帯電しやすい。一方、逆浸透膜濾過装置24は、プラスに帯電した不純物を濾過できる。よって、細霧Mの粒子がプラスに帯電することを抑制することができる。よって、マイナスに帯電した細霧Mの粒子と、プラスに帯電した細霧Mの粒子と、が互いに吸着することを抑制することができる。よって、ノズル43から離れた位置において、細霧Mの粒子径をできるだけ小さい状態で維持することができる。その結果、ノズル43と作物15との間で細霧Mが蒸発しやすく、また、作物15に細霧Mが付着した場合でも、作物15に付着した細霧Mが蒸発しやすい。その結果、作物15の病気の発生を抑制することができる。
【0050】
(第2の発明の効果)
[構成2]ノズル43は、作物15よりも上に配置される。
【0051】
上記[構成1]および[構成2]では、細霧MがRO水でない場合に比べ、ノズル43を作物15に近づけることができ、ノズル43を低い位置に配置できる。その結果、ノズル43を容易に設置することができ、また、ノズル43のメンテナンス性を向上させることができる。
【0052】
(第3の発明の効果)
[構成3]作物15からノズル43までの距離は、1m以上である。
【0053】
上記[構成3]により、作物15からノズル43までの距離が1m未満の場合に比べ、ノズル43と作物15との間で細霧Mが蒸発しやすい。よって、作物15に細霧Mが付着しにくい。よって、作物15の病気の発生をより抑制することができる。
【0054】
(第4の発明の効果)
[構成4]
図3に示すノズル43の噴射口43aの先端から細霧Mの噴射方向Dに50mm離れた位置における、細霧Mの粒子の体面積平均粒子径は、30μm以下である。
【0055】
上記[構成4]により、細霧Mの粒子の体面積平均粒子径が30μmよりも大きい場合に比べ、
図1に示すノズル43と作物15との間で細霧Mが蒸発しやすい。よって、作物15に細霧Mが付着しにくい。また、作物15に細霧Mが付着した場合でも、作物15に付着した水が蒸発しやすい。よって、作物15の病気の発生をより抑制することができる。
【0056】
(第5の発明の効果)
[構成5]細霧散布システム1は、温湿度センサ51と、制御装置60と、を備える。温湿度センサ51は、施設11の内部の温湿度を検出する。制御装置60には、温湿度センサ51の検出値が入力される。制御装置60は、施設11の内部の温湿度が目標設定値内に収まるようにポンプ41を制御する。
【0057】
上記[構成5]では、施設11の内部の温湿度を、自動的に、目標設定値内に収めることができる。よって、作業者がポンプ41を手作業で操作する必要がない。よって、作業者の手間を減らすことができる。また、上記[構成5]では、施設11の内部の温湿度が目標設定値内に収まる場合、細霧Mをノズル43から噴射させる必要はない。よって、作物15に細霧Mが付着することをより抑制することができる。その結果、作物15の病気の発生をより抑制することができる。また、施設11の内部の温湿度が目標設定値内に収まる場合、細霧Mを散布させる必要はないので、無駄な細霧Mの散布を抑制することができる。よって、ポンプ41および逆浸透膜濾過装置24の無駄な作動を抑制でき、処理水W5の無駄な消費を抑制でき、消費エネルギーを抑制することができる。
【0058】
(第6の発明の効果)
[構成6]本実施形態の細霧散布方法による効果は次の通りである。細霧散布方法は、作物15を栽培する施設11の内部に細霧Mを散布する方法である。細霧散布方法は、逆浸透膜濾過工程と、貯水工程と、加圧工程と、噴射工程と、を備える。逆浸透膜濾過工程は、水を逆浸透膜により濾過する工程である。貯水工程は、逆浸透膜濾過工程により濾過された処理水W5を貯める工程である。加圧工程は、貯水工程で貯められた処理水W5を加圧する工程である。噴射工程は、加圧工程で加圧された処理水W5を細霧Mとして施設11の内部に噴射する工程である。
【0059】
上記[構成6]では、細霧Mは、逆浸透膜濾過工程で濾過された処理水W5である。よって、上記「(第1の発明の効果)」と同様の効果が得られる。
【0060】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、上記実施形態の各構成要素の配置や形状が変更されてもよい。例えば、
図1などに示す濾過装置20の構成は変更されてもよい。例えば、構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部(例えば温湿度センサ51および制御装置60など)が設けられなくてもよい。例えば、互いに異なる複数の部材や部分として説明したものが、一つの部材や部分とされてもよい。具体的に例えば、濾過装置20とタンク30とが一体でもよい。例えば、一つの部材や部分として説明したもの(例えば
図2に示す濾過装置20の各装置)が、互いに異なる複数の部材や部分に分けて設けられてもよい。
【0061】
また、処理水W5は、ノズル43から細霧Mとして噴射されることに加えて、ノズル43以外の装置(例えば動力噴霧器や煙霧機など)から噴射されてもよい。ノズル43以外の装置から噴射される処理水W5に、農薬および肥料の少なくともいずれかが混合(例えば溶解)されてもよい。ノズル43以外の装置から噴射された処理水W5は、作物15に直接的に供給され(噴き付けられ)てもよく、高設棚13や地面に噴射されることで作物15に間接的に供給されてもよい。農薬および肥料の少なくともいずれかが混合された処理水W5が作物15に供給された場合、処理水W5は無菌または略無菌であるため、農薬や肥料の効果がより発揮される可能性がある。
【符号の説明】
【0062】
1 細霧散布システム
11 施設
15 作物
24 逆浸透膜濾過装置
30 タンク
41 ポンプ
43 ノズル
51 温湿度センサ
60 制御装置
M 細霧
W5 処理水