IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本車輌製造株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-鉄道車両 図1
  • 特許-鉄道車両 図2
  • 特許-鉄道車両 図3
  • 特許-鉄道車両 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/08 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
B61D17/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019198922
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2021070421
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】大橋 健悟
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-050740(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107512279(CN,A)
【文献】特開2007-112344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓開口部が形成された外板を有する窓ブロックと、入口開口部が形成された入口枠を有する入口ブロックとを備え、前記窓ブロックと前記入口ブロックとが接合されて側構体が形成された鉄道車両において、
前記窓ブロックの前記外板の車内側の面に接合されるシアプレートと、前記入口ブロックに配設されるカバー部材とを備え、
前記外板の車両長手方向側の縁部が前記入口枠の車両長手方向側の縁部よりも前記入口開口部へ張り出す状態において、前記外板の車内側の面に前記入口枠が接合され
前記シアプレートは、前記入口枠における前記入口開口部の上部に位置する部位である幕板部に接合され、
前記カバー部材は、前記入口ブロックの前記幕板部における車外側に配設されることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
窓開口部が形成された外板を有する窓ブロックと、入口開口部が形成された入口枠を有する入口ブロックとを備え、前記窓ブロックと前記入口ブロックとが接合されて側構体が形成された鉄道車両において、
前記窓ブロックの前記外板の車内側の面に接合されるシアプレートを備え、
前記外板の車両長手方向側の縁部が前記入口枠の車両長手方向側の縁部よりも前記入口開口部へ張り出す状態において、前記外板の車内側の面に前記入口枠が接合され
前記入口ブロックの車両長手方向一側および車両長手方向他側に前記窓ブロックがそれぞれ接合され、
前記シアプレートは、前記入口枠における前記入口開口部の上部に位置する部位である幕板部に接合され、
車両長手方向一側における前記窓ブロックの前記シアプレートと車両長手方向他側における前記窓ブロックの前記シアプレートとの間には、車両長手方向における前記窓ブロック同士の対向間隔の2/1000以上、且つ、10/1000以下の隙間が形成されることを特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
前記シアプレートは、車両長手方向で前記入口開口部を望む側の縁部と車両上下方向で前記入口開口部を望む側の縁部とを繋ぐ縁部が円弧状に湾曲して形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関し、特に、側構体の車外側に段差が生じることを抑制できる鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
窓開口部21が形成された外板11を有する窓ブロック2,3と、出入口となる開口部(入口開口部)が形成された側入口フレーム18(入口枠)を有する側入口ブロック4(入口ブロック)とを接合して、側構体1が形成される鉄道車両が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-012861(例えば、段落0012,0018、図7など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の技術では、窓ブロック2,3の外板11における車外側の面に側入口ブロック4の側入口フレーム18が接合される。そのため、側入口フレーム18の板厚の分、側構体1の車外側に段差が生じるという問題点があった。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、側構体の車外側に段差が生じることを抑制できる鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の鉄道車両は、窓開口部が形成された外板を有する窓ブロックと、入口開口部が形成された入口枠を有する入口ブロックとを備え、前記窓ブロックと前記入口ブロックとが接合されて側構体が形成されたものであり、前記窓ブロックの前記外板の車内側の面に接合されるシアプレートと、前記入口ブロックに配設されるカバー部材とを備え、前記外板の車両長手方向側の縁部が前記入口枠の車両長手方向側の縁部よりも前記入口開口部へ張り出す状態において、前記外板の車内側の面に前記入口枠が接合され、前記シアプレートは、前記入口枠における前記入口開口部の上部に位置する部位である幕板部に接合され、前記カバー部材は、前記入口ブロックの前記幕板部における車外側に配設される。
また、本発明の鉄道車両は、窓開口部が形成された外板を有する窓ブロックと、入口開口部が形成された入口枠を有する入口ブロックとを備え、前記窓ブロックと前記入口ブロックとが接合されて側構体が形成されたものであり、前記窓ブロックの前記外板の車内側の面に接合されるシアプレートを備え、前記外板の車両長手方向側の縁部が前記入口枠の車両長手方向側の縁部よりも前記入口開口部へ張り出す状態において、前記外板の車内側の面に前記入口枠が接合され、前記入口ブロックの車両長手方向一側および車両長手方向他側に前記窓ブロックがそれぞれ接合され、前記シアプレートは、前記入口枠における前記入口開口部の上部に位置する部位である幕板部に接合され、車両長手方向一側における前記窓ブロックの前記シアプレートと車両長手方向他側における前記窓ブロックの前記シアプレートとの間には、車両長手方向における前記窓ブロック同士の対向間隔の2/1000以上、且つ、10/1000以下の隙間が形成される。
【発明の効果】
【0007】
請求項1又は2に記載の鉄道車両によれば、外板の車両長手方向側の縁部が入口枠の車両長手方向側の縁部よりも入口開口部へ張り出す状態において、外板の車内側の面に入口枠が接合されるので、側構体の車外側に段差が生じることを抑制できる。
【0008】
ブロックの外板の車内側の面に接合されるシアプレートを備え、シアプレートは、入口枠における入口開口部の上部に位置する部位である幕板部に接合されるので、窓ブロック(入口ブロック)に作用する荷重を、シアプレートを介して、入口ブロック(窓ブロック)へ伝達することができる。
【0009】
請求項記載の鉄道車両によれば、入口ブロックの幕板部における車外側に配設されるカバー部材を備えるので、シアプレートや幕板部を覆うことができ、見栄えを向上できる。また、カバー部材の板厚を外板の板厚と同一とすることで、側構体の車外側に段差が形成されることを回避できる。
【0010】
請求項記載の鉄道車両によれば、車両長手方向一側の窓ブロックのシアプレートと車両長手方向他側の窓ブロックのシアプレートとの間には、車両長手方向における窓ブロックの対向間隔の2/1000以上の隙間が形成されるので、側構体の自重たわみによる垂れ下がりを想定して、窓ブロックを入口ブロックに対して傾けた(キャンバを付けた)姿勢で接合する場合に、シアプレート同士の干渉を抑制できる。
【0011】
一方、車両長手方向一側の窓ブロックのシアプレートと長手方向他側の窓ブロックのシアプレートとの間の隙間は、車両長手方向における窓ブロックの対向間隔の10/1000以下とされるので、カバー部材を車内側から支持するためのシアプレートの長さを確保できる。よって、カバー部材の一部が走行風等の外力によって撓むことを抑制できる。
【0012】
請求項記載の鉄道車両によれば、請求項1又は2に記載の鉄道車両の奏する効果に加え、シアプレートは、車両長手方向で入口開口部を望む側の縁部と車両上下方向で入口開口部を望む側の縁部とを繋ぐ縁部が円弧状に湾曲して形成されるので、窓ブロックと入口ブロックとの間で荷重を伝達する際にシアプレートに応力集中が生じることを抑制して、シアプレートの破損を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態における鉄道車両の斜視図である。
図2】側構体の車内側から見た部分拡大図である。
図3】(a)は、窓ブロックの車内側から見た部分拡大図であり、(b)は、入口ブロックの車外側から見た部分拡大図である。
図4】(a)は、図2のIVa-IVa線における側構体の部分切断部端面図であり、(b)は、図2のIVb-IVb線における側構体の部分切断部端面図であり、(c)は、図2のIVc-IVc線における側構体の切断部端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、鉄道車両10の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態における鉄道車両10の斜視図である。なお、図1中の矢印F-B,矢印U-D及び矢印L-Rは、鉄道車両10の前後方向(車両長手方向)、上下方向(車両上下方向)及び左右方向(車幅方向)をそれぞれ表しており、図2から図4においても同様とする。
【0015】
図1に示すように、鉄道車両10は、側構体11、屋根構体12、妻構体13及び台枠(図示せず)から構成される。側構体11は、前後方向(矢印F-B方向)に沿って配設される複数(本実施形態では、2個)の窓ブロック20と、側構体11の両端において、複数の窓ブロック20を挟む態様にて配設される一対の車端ブロック30と、複数の窓ブロック20の間、及び、窓ブロック20及び車端ブロック30の間に配設される複数(本実施形態では、3個)の入口ブロック40及び入口上部カバー50とを主に備えて構成される。なお、入口ブロック40に配設される扉の図示は省略する。
【0016】
次いで、図2から図3を参照して、側構体11の構成について説明する。図2は、側構体11の車内側(矢印R方向側)から見た部分拡大図である。図3(a)は、窓ブロック20の車内側から見た部分拡大図であり、図3(b)は、入口ブロック40の車外側(矢印L方向側)から見た部分拡大図である。なお、図2及び図3では、左方側(矢印L方向側)に配設される側構体11(窓ブロック20及び入口ブロック40)が図示される。
【0017】
図2から図3に示すように、窓ブロック20は、前後方向(矢印F-B方向)に延びる外板21と、外板21の車内側(矢印R方向側)の面に溶接により接合される第1のシアプレート22及び第2のシアプレート23と、外板21、第1のシアプレート22又は第2のシアプレート23の車内側の面に溶接により接合される骨部材24とを主に備えて構成される。
【0018】
外板21、第1のシアプレート22及び第2のシアプレート23は、金属材料の板材からそれぞれ形成される。外板21には、板厚方向(矢印L-R方向)に窓開口部25a,25b(図1参照)が開口形成される。
【0019】
第1のシアプレート22は、外板21の強度を確保するための部材であり、窓開口部25a,25b(図1参照)を取り囲んで配設される。第1のシアプレート22の前後方向(矢印F-B方向)の両端に形成される上下方向(矢印U-D方向)に沿った縁部22aは、外板21の前後方向の両端に形成される上下方向に沿った縁部21aよりも窓ブロック20の前後方向の中央側(窓開口部25b側)に形成される。これにより、外板21の縁部21aの周辺には、第1のシアプレート22が非配設とされる。
【0020】
なお、第1のシアプレート22には、縁部22aから外板21の縁部21aへ向けて突出部22bが突出形成され、突出部22bの前後方向(矢印F-B方向)の両端に形成される上下方向(矢印U-D方向)に沿った突出縁部22cは、外板21の縁部21aと略同一となる位置に形成される。
【0021】
例えば、上下方向(矢印U-D方向)に沿った姿勢で2枚の板材が突き合わされて外板21が構成される場合、突出部22bが2枚の板材の突き合わせられる端部どうしを跨ぎ、突出縁部22cが外板21の縁部21aと略同一となる位置に形成されることで、外板21(2枚の板材)の縁部21aまで突出部22bと外板21とが接合可能となり、接合強度を向上させることができる。
【0022】
なお、2枚の板材の一方の端部の周辺にせぎり加工が行われ、一方の板材の車外側の面に他方の板材の車内側の面が接合されることで外板21が形成される場合、突出部22bを非形成としても良い。
【0023】
第2のシアプレート23は、入口ブロック40及び窓ブロック20の間において荷重を伝達するための部材である。また、第2のシアプレート23は、入口上部カバー50を支持するための部材である。第2のシアプレート23は、外板21の上部(矢印U方向側の部位)に接合される基礎部23aと、その基礎部23aから外板21の縁部21aを跨いで前後方向(矢印F-B方向)に突設される支持部23bとを主に備えて構成される。
【0024】
基礎部23aの下部(矢印D方向側の部位)は、第1のシアプレート22の上部(矢印U方向側の部位)に溶接により接合される。これにより、第2のシアプレート23は、外板21及び第1のシアプレート22に支持される。その結果、第2のシアプレート23に生じる荷重を外板21及び第1のシアプレート22に伝達することができ、第2のシアプレート23が外板21のみに支持される場合と比較して外板21の破損を抑制し易くできる。
【0025】
支持部23bは、前後方向(矢印F-B方向)に長い略矩形状に形成される。支持部23bには、前後方向に沿って複数(本実施形態では、2個)の軽量孔23cが開口形成される。軽量孔23cにより、第2のシアプレート23の重量が低減される。
【0026】
第2のシアプレート23は、基礎部23aの下側(矢印D方向側)の縁部よりも上方(矢印U方向)となる位置に支持部23bの下側の縁部(前後方向で後述する入口開口部44を望む側の縁部)が形成され、基礎部23a及び支持部23bの下側の縁部の間には、上下方向(矢印U-D方向)に沿った縁部(上下方向で後述する入口開口部44を望む側の縁部)が形成される。この上下方向に沿った縁部と支持部23bの下側の縁部とを繋ぐ縁部には、応力集中を抑制するために上方へ向けて凹となる湾曲部23dが円弧状に湾曲して形成される。
【0027】
なお、湾曲部23dの曲率は、後述する入口ブロック40の上枠湾曲部42aの曲率よりも小さく形成される。
【0028】
一対の窓ブロック20(外板21)の縁部21a及び第2のシアプレート23(支持部23b)の下側(矢印D方向側)の縁部によりブロック開口部26が開口形成される。
【0029】
ここで、一対の第2のシアプレート23(支持部23b)の突設先端部に形成される縁部である短辺23e同士は、互いに突き合わされた状態で、所定の距離(本実施形態では、8mm)だけ隔てて配設される。即ち、前後方向(矢印F-B方向)において、一対の第2のシアプレート23の間には隙間が形成される。なお、本実施形態では、前後方向における一対の外板21の縁部21aの対向間の距離は、1370mmに設定され、一対の第2のシアプレート23(支持部23b)の隙間は、一対の外板21の縁部21aの対向間の距離の略6/1000に設定される。
【0030】
このように、一対の第2のシアプレート23の間に隙間が形成されることで、側構体11の自重たわみによる垂れ下がりを想定して、窓ブロック20を入口ブロック40に対して傾けた(キャンバを付けた)姿勢で接合する場合に、第2のシアプレート23同士の干渉を抑制できる。
【0031】
ここで、一対の第2のシアプレート23の間に形成される隙間が小さい場合、キャンバを付けた姿勢で接合する際に第2のシアプレート23同士が干渉する虞がある。第2のシアプレート23同士の干渉を抑制するためには、一対の第2のシアプレート23(支持部23b)の隙間は、一対の外板21の縁部21aの対向間の距離の2/1000よりも大きく形成されることが望ましい。
【0032】
骨部材24は、側構体11の強度を確保するための部材であり、前後方向(矢印F-B方向)に沿った姿勢で外板21、第1のシアプレート22又は第2のシアプレート23の車内側(矢印R方向側)の面に溶接により接合される複数の横骨部材24aと、上下方向(矢印U-D方向)に沿った姿勢で横骨部材24aの車内側の面に溶接により接合される複数の縦骨部材24bとを主に備えて構成される。これら骨部材24の各部材は、金属材料の板材からハット状に形成される。なお、骨部材24の車内側の面とは、骨部材24の最も車内側に形成される面と定義する。
【0033】
なお、複数の横骨部材24aは、前後方向(矢印F-B方向)における長さが異なる以外は同一であるため、同一の符号を付して説明する。同様に、複数の縦骨部材24bは、上下方向(矢印U-D方向)における長さが異なる以外は同一であるため、同一の符号を付して説明する。また、車端ブロック30は、前後方向における長さが窓ブロック20とは異なるものの、その他の点では同様に構成されるため、その説明は省略する。
【0034】
ブロック開口部26側(外板21の縁部21a側)における横骨部材24aの縁部は、外板21の縁部21aから所定の距離(本実施形態では、128mm)だけ隔てて配設される。
【0035】
入口ブロック40は、前後方向(矢印F-B方向)に所定の間隔をあけて上下方向(矢印U-D方向)に沿った姿勢で配設される一対の縦枠部材41と、その一対の縦枠部材41の上部に橋架される上枠部材42と、一対の縦枠部材41の下部に橋架される下枠部材43とを主に備え、ブロック開口部26より外縁が大きく形成される矩形枠状に形成される。
【0036】
縦枠部材41は、窓ブロック20の骨部材24(横骨部材24a)の車内側(矢印R方向側)の面に溶接
により接合される接合部材41aと、一対の接合部材41aの対向間側に配設される入口キセ41bと、接合部材41a及び入口キセ41bの車外側(矢印L方向側)の面に溶接により接合される連結板41cとを主に備えて構成される。
【0037】
接合部材41aは、窓ブロック20と入口ブロック40とを接合するための部材である。入口キセ41bは、外板21と側引戸(図示せず)との間に形成される空間が視認されることを抑制するための部材である。
【0038】
連結板41cは、接合部材41aと入口キセ41bとを連結(接合)するための部材である。接合部材41a及び入口キセ41bが前後方向(矢印F-B方向)に沿って並設され、連結板41cを介して接合部材41a及び入口キセ41bが連結されることで、左右方向(矢印L-R方向)における入口ブロック40の厚みが小さく形成される。
【0039】
連結板41cは、上下方向(矢印U-D方向)に沿って所定の距離を隔てて一対が配設され、一対の連結板41cの対向間の距離は、第1のシアプレート22の突出部22bの上下方向における長さよりもやや大きく形成される。これにより、一対の連結板41cの対向間に突出部22bが配設可能となる。
【0040】
また、連結板41cは、金属材料の板材から形成され、連結板41cの板厚(車幅方向の厚み)は、第1のシアプレート22の板厚と略同一に形成される。これにより、連結板41cが外板21の車内側(矢印R方向側)の面に接合された状態において、第1のシアプレート22の突出部22bの車内側の面は、接合部材41a及び入口キセ41bの車外側(矢印L方向側)の面に当接可能となる。その結果、第1のシアプレート22と接合部材41a及び入口キセ41bとを接合できる。即ち、外板21と連結板41cとの接合スポット溶接に加え第1のシアプレート22(突出部22b)と接合部材41a及び入口キセ41bとの接合スポット溶接を行うことで、窓ブロック20及び入口ブロック40の接合スポット溶接の間隔を狭くすることができ、接合強度を大きくできる。
【0041】
上枠部材42は、入口ブロック40を窓ブロック20の第2のシアプレート23に接合させるための部材である。上枠部材42の前後方向(矢印F-B方向)両側(縦枠部材41との連結部側)における下側(矢印D方向側)の縁部には、上方(矢印U方向)へ向けて凹となる上枠湾曲部42aが円弧状に湾曲して形成される。
【0042】
次いで、図4を参照して、窓ブロック20と入口ブロック40との接合について説明する。図4(a)は、図2のIVa-IVa線における側構体11の部分切断部端面図であり、図4(b)は、図2のIVb-IVb線における側構体11の部分切断部端面図であり、図4(c)は、図2のIVc-IVc線における側構体11の切断部端面図である。
【0043】
図4(a)及び図4(b)に示すように、窓ブロック20と入口ブロック40の縦枠部材41との接合は、外板21の縁部21aが縦枠部材41(連結板41c)の縁部41dよりも張り出した状態で窓ブロック20(外板21)の車内側(矢印R方向側)の面に連結板41cが当接されて溶接されることにより行われる。
【0044】
これにより、側構体11の車外側(矢印L方向側)に段差が生じることを抑制でき、鉄道車両10の見栄えを向上できる。
【0045】
また、外板21の縁部21aの周辺における車内側(矢印R方向側)の面に連結板41cが溶接により接合され、横骨部材24aの車内側の面に接合部材41aが溶接により接合される。骨部材24は、外板21の縁部21aから所定の距離だけ隔てて配設されるため、前後方向(矢印F-B方向)において所定の距離を隔てて複数箇所(本実施形態では、2箇所)において窓ブロック20及び入口ブロック40が接合されることで、窓ブロック20及び入口ブロック40の接合強度を向上させることができる。
【0046】
更に、外板21の縁部21aの周辺に入口ブロック40が接合されることで、入口ブロック40により外板21の縁部21a周辺の強度を確保することができる。これにより、外板21の縁部21aの周辺に第1のシアプレート22や骨部材24が接合されることを不要とでき、側構体11の重量を低減できる。
【0047】
加えて、入口ブロック40が外板21の車内側(矢印R方向側)の面に接合されることで、外板21により入口ブロック40の車外側(矢印L方向側)の面を覆うことができる。これにより、入口ブロック40の車外側の面に見栄えの向上を目的とした仕上げ加工を不要とでき、製造コストを低減できる。
【0048】
一方、入口ブロック40の車内側(矢印R方向側)の面は、側構体11の車内側に配設される内装パネル(図示せず)に覆われるため、仕上げ加工を不要とでき、製造コストが増大することを抑制できる。
【0049】
窓ブロック20と入口ブロック40の上枠部材42との接合は、図4(c)に示すように、第2のシアプレート23の車内側(矢印R方向側)の面に入口ブロック40の上枠部材42が当接されて溶接されることにより行われる。また、第2のシアプレート23の車外側(矢印L方向側)の面には、入口上部カバー50が溶接により接合される。第2のシアプレート23の車外側の面に入口上部カバー50が接合されることで、第2のシアプレート23や上枠部材42が車外側から視認されることを抑制できる。
【0050】
また、入口上部カバー50の板厚は、外板21の板厚と略同一に形成されることで、側構体11(外板21及び入口上部カバー50)の車外側(矢印L方向側)の面を略面一に形成できる。その結果、側構体11(外板21及び入口上部カバー50の間)に段差が形成されることを回避できる。これらにより、鉄道車両10の見栄えを向上できる。
【0051】
更に、一対の第2のシアプレート23の支持部23bが前後方向(矢印F-B方向)に突き合わされることで、入口上部カバー50を車内側(矢印R方向側)から支持する(入口上部カバー50の車内側へ向けての変形を規制する)ための第2のシアプレート23の長さを確保している。これにより、入口上部カバー50の一部が走行風等の外力により撓む(車内側へ向けて変形される)ことを抑制できる。
【0052】
なお、入口上部カバー50を車内側(矢印R方向側)から支持するための第2のシアプレート23の長さを確保するには、前後方向(矢印F-B方向)における一対の第2のシアプレート23(支持部23b)の隙間は、一対の外板21の縁部21aの対向間の距離の10/1000よりも小さく形成されることが望ましい。
【0053】
ここで、入口開口部44の上方(一対の窓ブロック20の縁部21aの対向間)において第2のシアプレート23及び上枠部材42が接合されることで、入口ブロック40(窓ブロック20)に作用する屋根構体12等の荷重を第2のシアプレート23を介して窓ブロック20(入口ブロック40)へ伝達できる。これにより、荷重を入口ブロック40及び窓ブロック20により支持でき、入口ブロック40(窓ブロック20)に作用する荷重を小さくできる。
【0054】
結果として、入口ブロック40に作用する荷重を入口ブロック40のみで支持する場合と比較して、上枠部材42の上枠湾曲部42aの曲率を大きくでき、入口開口部44を大きくできる。
【0055】
なお、上述したように、第2のシアプレート23には、湾曲部23dが形成されるため、入口ブロック40と窓ブロック20との間で荷重を伝達する際に第2のシアプレート23(湾曲部23d)に応力集中が生じることを抑制でき、第2のシアプレート23(湾曲部23d)の破損を抑制できる。
【0056】
また、第2のシアプレート23は外板21に接合されるため、前後方向(矢印F-B方向)において入口開口部44から離れた位置に湾曲部23dを形成できる。これにより、前後方向において上枠湾曲部42aよりも入口開口部44とは反対側(窓ブロック20側)に湾曲部23dを配設でき、湾曲部23dにより入口開口部44が小さくされることを抑制できる。
【0057】
この他、前後方向(矢印F-B方向)において入口開口部44から離れた位置に湾曲部23dを形成することで、湾曲部23dの曲率を上枠湾曲部42aの曲率よりも小さく形成できる。これにより、入口ブロック40と窓ブロック20との間で荷重を伝達する際に第2のシアプレート23(湾曲部23d)に応力集中が生じることを抑制できる。
【0058】
以上、上記実施形態に基づき説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0059】
上記実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0060】
上記実施形態において、各部材の接合に用いられる溶接としてレーザ溶接やアーク溶接等が例示される、また、摩擦撹拌接合により各部材が接合されることは当然可能である。
【0061】
上記実施形態において、外板21、第1のシアプレート22、第2のシアプレート23、骨部材24(横骨部材24a及び縦骨部材24b)、縦枠部材41(接合部材41a、入口キセ41b及び連結板41c)、上枠部材42及び下枠部材43は、ステンレスやアルミニウム等の金属材料から適宜選択される。なお、これらの各部材は、溶接を考慮して同種の材質から形成されることが好ましい。
【0062】
上記実施形態では、外板21の縁部21aが縦枠部材41(連結板41c)の縁部41dよりも入口開口部44へ張り出す場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、外板21の縁部21a及び連結板41cの縁部41dが前後方向において同一となる位置に配設されても良い。
【符号の説明】
【0063】
10 鉄道車両
11 側構体
20 窓ブロック
21 外板
21a 縁部(外板の車両長手方向側の縁部)
23 第2のシアプレート(シアプレート)
25a,25b 窓開口部
30 車端ブロック(窓ブロック)
40 入口ブロック
41 縦枠部材(入口枠)
41a 接合部材(入口枠)
41c 連結板(入口枠)
41d 縁部(入口枠の車両長手方向側の縁部)
42 上枠部材(入口枠、幕板部)
44 入口開口部
50 入口上部カバー(カバー部材)
図1
図2
図3
図4