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特許7339134パターン形成方法およびその方法を含んだ半導体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】パターン形成方法およびその方法を含んだ半導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20230829BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
G03F7/20 521
H01L21/30 566
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019208766
(22)【出願日】2019-11-19
(65)【公開番号】P2021082700
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】春本 将彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慎一
(72)【発明者】
【氏名】河原▲崎▼ 光
(72)【発明者】
【氏名】浅井 正也
(72)【発明者】
【氏名】谷村 英昭
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕二
(72)【発明者】
【氏名】本野 智大
(72)【発明者】
【氏名】毛利 知佐世
(72)【発明者】
【氏名】有澤 洋
(72)【発明者】
【氏名】服部 貴美子
(72)【発明者】
【氏名】森田 和代
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/163974(WO,A1)
【文献】特表2018-509759(JP,A)
【文献】国際公開第2018/109552(WO,A1)
【文献】特開2017-150849(JP,A)
【文献】特開2008-053464(JP,A)
【文献】特開2009-200388(JP,A)
【文献】特開2012-196613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
G03F 7/26-7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にパターンを形成するパターン形成方法であって、
基板上に酸素原子を含有するポリマーを含む誘導自己組織化材料からなる樹脂膜を塗布形成する成膜工程と、
前記基板を加熱して前記樹脂膜を前記酸素原子を含有するポリマーを含む第1相と前記酸素原子を含有するポリマーを含まない第2相とに相分離させる第1加熱工程と、
金属原子を含むガス中にて前記第1相に金属を含浸させる含浸工程と、
前記第2相を除去する現像工程と、
を備え
前記含浸工程は、前記金属原子を含むガス中にて前記基板を加熱する第2加熱工程を含み、
前記含浸工程の後に、前記樹脂膜を所定温度以上に1秒以下加熱する第3加熱工程をさらに備えることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
請求項記載のパターン形成方法において、
前記第3加熱工程では、前記樹脂膜にフラッシュ光またはレーザー光を照射することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のパターン形成方法において、
前記現像工程では、ドライエッチングによって前記第2相を除去することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のパターン形成方法において、
前記現像工程では、前記樹脂膜に現像液を供給して前記第2相を溶解除去することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項5】
請求項記載のパターン形成方法において、
前記現像工程は、前記含浸工程の前に行うことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれかに記載のパターン形成方法において、
前記ポリマーの酸素原子含有率は、前記ポリマーの全質量に対して20質量%以上であることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
請求項記載のパターン形成方法において、
前記ポリマーはヘミセルロースであることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれかに記載のパターン形成方法を備え、前記樹脂膜をマスクとして前記基板のエッチングを行うことを特徴とする半導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハー等の薄板状精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)上に誘導自己組織化技術を利用してパターンを形成するパターン形成方法およびその方法を含んだ半導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体ウェハー等の基板上にパターンを形成する一般的な手法としてはフォトリソグラフィが用いられていた。フォトリソグラフィは、基板上に感光性物質であるレジストを塗布し、そのレジストに対して回路図の形状を描いたマスクを用いて露光処理を行い、その後現像処理によって余分なレジストを除去して回路図のパターンを形成する技術である。
【0003】
半導体デバイスの集積度を高めるためにはパターンの微細化が必要であり、フォトリソグラフィによるパターンの微細化は、露光処理時により短波長の光源を使用することによって実現されてきた。現在、露光処理の光源としては例えばArFエキシマレーザー(波長193nm)が主に使用されているが、このような短波長の光源を用いたとしてもフォトリソグラフィによるパターンの微細化は45nm程度が限界であると考えられている。
【0004】
45nmよりもさらに微細なパターンを形成可能なフォトリソグラフィ技術としては、EUV(極端紫外線)露光や電子線による直接描画等が提案されている。しかし、EUV露光はコストが著しく高く、また電子線による直接描画はパターン形成に長時間を要するという問題がある。
【0005】
このため、低コストかつ比較的短時間にパターンの微細化を実現する手法として、誘導自己組織化技術(DSA:Directed Self-Assembly)が研究されている(例えば、特許文献1,2)。誘導自己組織化技術は、特定のブロック共重合体が球状、板状、柱状または層状等となるように自己組織化する性質を利用したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-22570号公報
【文献】特表2016-518701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の誘導自己組織化技術では、十分なエッチング耐性のパターンを得ることができず、所望のエッチング選択比が得られないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、エッチング耐性に優れたパターンを形成することができるパターン形成技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板上にパターンを形成するパターン形成方法において、基板上に酸素原子を含有するポリマーを含む誘導自己組織化材料からなる樹脂膜を塗布形成する成膜工程と、前記基板を加熱して前記樹脂膜を前記酸素原子を含有するポリマーを含む第1相と前記酸素原子を含有するポリマーを含まない第2相とに相分離させる第1加熱工程と、金属原子を含むガス中にて前記第1相に金属を含浸させる含浸工程と、前記第2相を除去する現像工程と、を備え、前記含浸工程は、前記金属原子を含むガス中にて前記基板を加熱する第2加熱工程を含み、前記含浸工程の後に、前記樹脂膜を所定温度以上に1秒以下加熱する第3加熱工程をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項の発明は、請求項の発明に係るパターン形成方法において、前記第3加熱工程では、前記樹脂膜にフラッシュ光またはレーザー光を照射することを特徴とする。
【0013】
また、請求項の発明は、請求項1または請求項2の発明に係るパターン形成方法において、前記現像工程では、ドライエッチングによって前記第2相を除去することを特徴とする。
【0014】
また、請求項の発明は、請求項1または請求項2の発明に係るパターン形成方法において、前記現像工程では、前記樹脂膜に現像液を供給して前記第2相を溶解除去することを特徴とする。
【0015】
また、請求項の発明は、請求項の発明に係るパターン形成方法において、前記現像工程は、前記含浸工程の前に行うことを特徴とする。
【0016】
また、請求項の発明は、請求項1から請求項のいずれかの発明に係るパターン形成方法において、前記ポリマーの酸素原子含有率は、前記ポリマーの全質量に対して20質量%以上であることを特徴とする。
【0017】
また、請求項の発明は、請求項の発明に係るパターン形成方法において、前記ポリマーはヘミセルロースであることを特徴とする。
【0018】
また、請求項の発明は、半導体の製造方法において、請求項1から請求項のいずれかの発明に係るパターン形成方法を備え、前記樹脂膜をマスクとして前記基板のエッチングを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1から請求項の発明によれば、誘導自己組織化材料からなる樹脂膜を酸素原子を含有するポリマーを含む第1相と酸素原子を含有するポリマーを含まない第2相とに相分離させ、金属原子を含むガス中にて第1相に金属を含浸させるため、第1相が選択的に硬化され、エッチング耐性に優れたパターンを形成することができる。また、含浸工程の後に、樹脂膜を所定温度以上に1秒以下加熱するため、金属が樹脂膜の第1相中を拡散して第1相の全体を硬化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るパターン形成方法の処理手順を示すフローチャートである。
図2】処理対象となる半導体ウェハーの断面構造を示す図である。
図3】ガイドパターンが形成された半導体ウェハーの断面構造を示す図である。
図4】誘導自己組織化材料の樹脂膜が成膜された半導体ウェハーの断面構造を示す図である。
図5】樹脂膜に相分離が生じた半導体ウェハーの断面構造を示す図である。
図6】ヘミセルロースを含む第1相の表面にアルミニウムが含浸された半導体ウェハーの断面構造を示す図である。
図7】アルミニウムが樹脂膜の第1相中を拡散した半導体ウェハーの断面構造を模式的に示す図である。
図8】現像処理によって樹脂膜の第2相が除去された半導体ウェハーの断面構造を示す図である。
図9】下層膜にパターンが形成された半導体ウェハーの断面構造を示す図である。
図10】誘導自己組織化材料に含まれるポリマーの構造の一例を示す図である。
図11】誘導自己組織化材料に含まれるポリマーの構造の一例を示す図である。
図12】誘導自己組織化材料に含まれるポリマーの構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。本明細書においてヘミセルロースとは、ヘミセルロースを構成するキシロースなどの糖誘導体に由来する単位を含む樹脂のことを意味する。前記糖誘導体としては、植物、木材などから抽出することが可能であり、例えば国際公開第2019/012716号に記載の方法で製造することができる。なお、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0023】
図1は、本発明に係るパターン形成方法の処理手順を示すフローチャートである。本発明の実施の形態においては、処理対象としてシリコンの半導体ウェハーWが使用され、本発明に係るパターン形成方法は、半導体の製造方法として実施可能であり、半導体の製造方法に含まれる。図1に示す処理に先立って処理対象となる半導体ウェハーWの表面には下層膜が形成されている。図2は、処理対象となる半導体ウェハーWの断面構造を示す図である。シリコン(Si)の基材10の上に下層膜20が形成されている。下層膜20は、例えば二酸化ケイ素(SiO)の薄膜と窒化ケイ素(SiN)の薄膜とを交互に積層した多層膜である。下層膜20は、例えばCVDによって基材10上に蒸着されて成膜される。下層膜20は、アモルファスシリコンであっても良い。この下層膜20に対してエッチングによって深いホールが形成されることにより、例えば3D-NANDフラッシュメモリが製造される。
【0024】
図2に示すような構造の半導体ウェハーWに対してガイドパターンが形成される(ステップS1)。図3は、ガイドパターン30が形成された半導体ウェハーWの断面構造を示す図である。ガイドパターン30は、公知のフォトリソグラフィの手法によって形成される。具体的には、下層膜20の上にレジストを塗布し、そのレジストに対してガイドパターン30の形状を描いたマスクを用いて露光処理を行う。その後、現像処理によって余分なレジストを除去してガイドパターン30を形成する。
【0025】
図3に示すようなガイドパターン30が形成された半導体ウェハーWに誘導自己組織化材料の樹脂膜40が成膜される(ステップS2)。図4は、誘導自己組織化材料の樹脂膜40が成膜された半導体ウェハーWの断面構造を示す図である。誘導自己組織化材料の樹脂膜40は、公知のスピンコート法によって塗布形成される。具体的には、図3に示すような半導体ウェハーWが回転されつつ、半導体ウェハーWの上面に誘導自己組織化材料の処理液が吐出される。処理液は遠心力によって半導体ウェハーWの上面に拡布される。これにより、図4に示すように、ガイドパターン30が形成されていない下層膜20上の領域に誘導自己組織化材料からなる塗膜(樹脂膜40)が形成される。
【0026】
ここで、誘導自己組織化材料は、複数種類の重合体によって構成されるブロック共重合体を含む。ブロック共重合体を構成する複数種類の重合体は、互いに非相溶であることが好ましい。本実施形態においては、2種類の重合体によって構成されるブロック共重合体を含む誘導自己組織化材料からなる処理液が半導体ウェハーWに吐出される。また、本実施形態においては、ヘミセルロースを含有するブロック共重合体を含む誘導自己組織化材料からなる処理液が半導体ウェハーWに吐出される。従って、ガイドパターン30に沿って形成された樹脂膜40にはヘミセルロースが含まれる。
【0027】
次に、ヘミセルロースを含む樹脂膜40が形成された半導体ウェハーWが加熱される。半導体ウェハーWの加熱の方法は、ランプから半導体ウェハーWに光を照射するようにしても良いし、ホットプレート上に半導体ウェハーWを載置するようにしても良い。図4に示すような樹脂膜40が形成された半導体ウェハーWが加熱されることにより、樹脂膜40にミクロ相分離が生じる(ステップS3)。図5は、樹脂膜40に相分離が生じた半導体ウェハーWの断面構造を示す図である。樹脂膜40は、2種類の重合体によって構成されるブロック共重合体を含む誘導自己組織化材料からなる。2種類の重合体を含む樹脂膜40が所定の温度に加熱されることによって、それら2種類の重合体が相分離し、一方の重合体からなる第1相P1と他方の重合体からなる第2相P2とが形成されるのである。図5の例では、ガイドパターン30に沿うように、線状の第1相P1と線状の第2相P2とが交互にパターン形成されている。
【0028】
本実施形態においては、樹脂膜40が相分離する際に、第1相P1にはヘミセルロースが含まれるとともに、第2相P2にはヘミセルロースが含まれなくなる。すなわち、樹脂膜40は、ヘミセルロースを含む第1相P1とヘミセルロースを含まない第2相P2とに相分離されるのである。ヘミセルロースを含む第1相P1は親水性であり、ヘミセルロースを含まない第2相P2は疎水性を示す。
【0029】
樹脂膜40が相分離してパターンが形成された後、樹脂膜40への金属の含浸処理が行われる(ステップS4)。この処理は、樹脂膜40が相分離してパターンが形成された半導体ウェハーWをトリメチルアルミニウム(TMA:Trimethylaluminium)を含む雰囲気ガス中で加熱することによって進行する。このときの半導体ウェハーWの加熱温度は20℃以上400℃以下である。また、加熱時間は30秒以上60分以下である。トリメチルアルミニウムを含む雰囲気中で樹脂膜40が加熱されることによって、樹脂膜40のうちヘミセルロースを含む第1相P1の表面近傍に金属アルミニウム(Al)が含浸される。このとき、ヘミセルロースを含まない第2相P2は金属アルミニウムとほとんど反応しないため、第2相P2の表面には金属アルミニウムは含浸されない。すなわち、樹脂膜40のうちヘミセルロースを含む第1相P1のみの表面に金属アルミニウムが含浸されるのである。図6は、ヘミセルロースを含む第1相P1の表面にアルミニウムが含浸された半導体ウェハーWの断面構造を示す図である。
【0030】
次に、第1相P1の表面にアルミニウムが含浸された樹脂膜40の短時間加熱処理が行われる(ステップS5)。具体的には、アルミニウムが含浸された樹脂膜40が1秒以下加熱される。本実施形態においては、樹脂膜40が形成された半導体ウェハーWに対するフラッシュランプアニール(FLA:Flash Lamp Anneal)が実行される。図6に示すような樹脂膜40の第1相P1の表面にアルミニウムが含浸された半導体ウェハーWがフラッシュランプアニール装置に搬入される。その半導体ウェハーWの表面にキセノンフラッシュランプからフラッシュ光が照射される。フラッシュ光の照射時間は0.1ミリ秒~100ミリ秒である。本実施形態においては、例えば0.8ミリ秒の照射時間でフラッシュランプからフラッシュ光が照射される。
【0031】
照射強度が強く照射時間の極めて短いフラッシュ光が半導体ウェハーWの表面に照射されることにより、樹脂膜40を含む半導体ウェハーWの表面近傍のみが極短時間加熱される。表面にアルミニウムが含浸された樹脂膜40の第1相P1がフラッシュ光照射によって1秒以下の短時間加熱されることにより、アルミニウムが第1相P1中を拡散する。一方、表面にアルミニウムが含浸されていない樹脂膜40の第2相P2中にはアルミニウムは拡散しない。図7は、アルミニウムが樹脂膜40の第1相P1中を拡散した半導体ウェハーWの断面構造を模式的に示す図である。
【0032】
ステップS5では、樹脂膜40の熱分解温度以上に樹脂膜40が加熱されても良い。フラッシュランプアニールであれば、樹脂膜40が熱分解温度以上に加熱されたとしても、熱分解温度以上となっている時間は1秒以下であるため、樹脂膜40が熱分解することなくアルミニウムが第1相P1中を拡散する。また、フラッシュ光照射時の樹脂膜40の到達温度が高いほどアルミニウムが第1相P1中を拡散しやすくなる。
【0033】
ヘミセルロースは酸素原子を多く含むポリマーである。フラッシュ光照射によってアルミニウムが第1相P1中を拡散してヘミセルロースの酸素原子と反応することにより、樹脂膜40の第1相P1の全体が硬化してエッチング耐性が向上する。その一方、アルミニウムと反応していない樹脂膜40の第2相P2のエッチング耐性は第1相P1に比較して相対的に低い。その結果、樹脂膜40のうちヘミセルロースを含む第1相P1のみが選択的に硬化されて高いエッチング耐性を獲得することとなる。
【0034】
樹脂膜40の短時間加熱が終了した後、樹脂膜40の現像処理が実行される(ステップS6)。本実施形態では、ドライエッチングである反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)によって樹脂膜40の現像処理が行われる。ヘミセルロースを含む第1相P1のみが高いエッチング耐性を有する樹脂膜40に対して反応性イオンエッチングを行うことにより、エッチング耐性が相対的に低い第2相P2のみが選択的にエッチングされて除去されることとなる。図8は、現像処理によって樹脂膜40の第2相P2が除去された半導体ウェハーWの断面構造を示す図である。現像処理により第2相P2が除去されることによって、半導体ウェハーW上のガイドパターン30が形成されていない領域には第1相P1のみが残存することとなる。このようにして、半導体ウェハーWには最終的に微細なパターンが形成される。
【0035】
次に、パターンが形成された樹脂膜40をマスクとして下層膜20のエッチング処理が行われる(ステップS7)。このエッチング処理も反応性イオンエッチングによって実行される。樹脂膜40をマスクとして下層膜20のエッチング処理を行うことにより、樹脂膜40に形成されていたパターンが下層膜20に転写される。すなわち、下層膜20のうち第2相P2に対応する領域がエッチングされることとなる。図9は、下層膜20にパターンが形成された半導体ウェハーWの断面構造を示す図である。
【0036】
トリメチルアルミニウム(TMA)がヘミセルロースと反応して硬化した樹脂膜40の第1相P1をマスクとしてエッチング処理を行うことにより、その第1相P1が損耗することなく下層膜20のみがエッチングされることとなる。その結果、図9に示すように、下層膜20に深いホールが形成されて半導体デバイスが製造される。
【0037】
本実施形態においては、まず半導体ウェハーWに誘導自己組織化材料からなる樹脂膜40を塗布形成し、その半導体ウェハーWを加熱することによって樹脂膜40をヘミセルロースを含む第1相P1とヘミセルロースを含まない第2相P2とに相分離させている。単に樹脂膜40を相分離させただけでは、パターンは形成されるものの、第1相P1および第2相P2ともにエッチング耐性が低く、エッチング用のマスクとして使用することは難しい。そこで、樹脂膜40のうちヘミセルロースを含む第1相P1のみの表面近傍に金属アルミニウムを含浸させ、フラッシュランプアニールによってアルミニウムを拡散させることにより、第1相P1を選択的に硬化させてエッチング耐性を高めている。これにより、現像処理によってエッチング耐性が相対的に低い第2相P2のみが選択的に除去される一方で硬化された第1相P1は残留し、エッチング耐性に優れたパターンを形成することができる。
【0038】
ヘミセルロースは酸素原子を多く含むポリマーである。それゆえ、ヘミセルロースはアルミニウム等の金属と反応しやすい特性を有する。そしてその特性ゆえに、相分離した樹脂膜40をトリメチルアルミニウムの雰囲気中で加熱したときに、ヘミセルロースを含む第1相P1のみの表面近傍に金属アルミニウムが含浸されるのである。その結果、樹脂膜40のうち第1相P1のみを選択的に硬化させることができる。また、植物の細胞壁にも含まれるヘミセルロースは比較的安価な素材でもある。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、ドライエッチングによって第2相P2を除去する現像処理を行っていたが、これに代えて、樹脂膜40に現像液を供給して第2相P2を溶解除去するいわゆるウェット現像を行うようにしても良い。樹脂膜40に供給する現像液としては、例えば酢酸、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、乳酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサノン等を用いることができる。このような現像液を第1相P1のみが硬化された樹脂膜40に供給することにより、上記実施形態のドライエッチングと同様に、エッチング耐性が相対的に低い第2相P2のみが選択的に除去されることとなる。
【0040】
また、上記実施形態においては、ヘミセルロースを含む第1相P1に金属としてアルミニウムを含浸させていたが、これに限定されるものではなく、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等の他の金属を第1相P1の表面に含浸させるようにしても良い。このようにしても樹脂膜40のうち第1相P1を硬化させて上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0041】
また、上記実施形態においては、相分離した樹脂膜40の第1相P1への金属の含浸処理時にトリメチルアルミニウムを含む雰囲気中で半導体ウェハーWを加熱していたが、加熱は必須では無く、ヘミセルロースを含む第1相P1にトリメチルアルミニウムを含む雰囲気を接触させるだけでも良い。加熱を行わずとも、酸素原子を多く含むヘミセルロースを含む第1相P1の表面近傍にトリメチルアルミニウムを含む雰囲気を接触させれば、当該表面にアルミニウムを含浸させることができる。
【0042】
また、上記実施形態においては、短時間加熱処理(ステップS5)を、金属を含浸させる処理(ステップS4)を行った直後に行っていたが、これに限られるものではなく、金属を含浸させる処理を行った後に、引き続いて現像処理を行い、その後に短時間加熱処理を行うようにしてもよい。かかる場合であっても、樹脂膜40のうち第1相P1の表面近傍にはアルミニウム等の金属が含浸しており、エッチング耐性が向上する。そこで、例えドライエッチングである反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)によって樹脂膜40の現像処理を行ったとしても、樹脂膜40のうち、エッチング耐性が相対的に低い第2相P2のみが選択的にエッチングされて除去され、第1相P1のみを確実に残存させることができる。そして、第1相P1に含浸されたアルミニウムを、短時間加熱処理によって、上記実施形態の場合と同様に第1相P1中に拡散させることができる。
【0043】
なお、上記実施形態においては、樹脂膜40の第1相P1に対してアルミニウム等の金属を含浸させる処理(ステップS4)を現像処理(ステップS6)の前に行うようにしていた。しかし、この現像処理を、前述した樹脂膜40に現像液を供給して第2相P2を溶解除去するウェット現像により行う場合には、現像処理を先に行い、その後に第1相P1に対して金属を含浸させる処理を行うようにしてもよい。かかる場合にも、その後に短時間加熱処理を行うことによって、上記実施形態の場合と同様に第1相P1中に金属を拡散させることができる。
【0044】
また、ステップS5の短時間加熱処理も必須の工程ではない。フラッシュランプアニールを行わなくても、樹脂膜40の第1相P1にアルミニウムを含浸させれば、酸素原子を多く含むヘミセルロースとアルミニウムとの反応がある程度進行し、第1相P1が硬化して第1相P1に必要なエッチング耐性を付与することができる。もっとも、フラッシュランプアニール等の短時間加熱処理を行った方がよりヘミセルロースとアルミニウムとの反応が進行して樹脂膜40の第1相P1を十分に硬化させることができる。
【0045】
また、ステップS5の短時間加熱処理は、フラッシュランプアニールに限定されるものではなく、例えば樹脂膜40を含む半導体ウェハーWの表面にレーザー光を照射するレーザーアニールであっても良い。すなわち、アルミニウムが含浸された樹脂膜40の第1相P1を所定温度以上に1秒以下加熱する形態であれば良い。
【0046】
また、ステップS3での樹脂膜40の相分離のための加熱にフラッシュランプアニールを用いるようにしても良い。フラッシュランプアニールを用いることにより、欠陥の発生を抑制しつつ樹脂膜40を第1相P1と第2相P2とに相分離させることができる。
【0047】
また、上記実施形態においては、ヘミセルロースを含有するブロック共重合体を含む誘導自己組織化材料からなる処理液を半導体ウェハーWに吐出してヘミセルロースを含む樹脂膜40を形成したが、ブロック共重合体に含まれるポリマーはヘミセルロースに限定されるものではない。誘導自己組織化材料に含まれるブロック共重合体に含有されるポリマーは、酸素原子を含有するポリマーであって、当該ポリマーの酸素原子含有率は、当該ポリマーの全質量に対して20質量%以上のもの(材料1)であれば良い。ヘミセルロースは当該材料1に含まれるポリマーである。
【0048】
特に、誘導自己組織化材料は、図10に示した一般式で表される構造、および、図11に示した一般式で表される構造から選択される少なくとも一方を有する重合部aと、図12で示した一般式で表される構造を有する重合部bと、を含むブロック共重合体(材料2)を含有するものが好ましい。当該ブロック共重合体における重合部aの含有率は、当該ブロック共重合体の全質量に対して3質量%以上80質量%以下である。
【0049】
図10および図11において、R1はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、アシル基、アリール基またはホスホリル基を表し、複数のR1は同一であっても異なっていても良い。R5は水素原子またはアルキル基を表し、複数のR5は同一であっても異なっていても良い。X1およびY1はそれぞれ独立に単結合または連結基を表し、複数のX1は同一であっても異なっていても良く、複数のY1は同一であっても異なっていても良い。pは2以上1500以下の整数を表し、rは0以上の整数を表し、複数のrの少なくとも1つは1以上の整数を表す。*印はrが2以上の場合にR1のいずれか1つとの結合部位を表すか、もしくはR1に代わってR1が結合している酸素原子のいずれか1つの結合部位を表す。
【0050】
図12において、W1は炭素原子またはケイ素原子を表し、複数のW1は同一であっても異なっていても良い。W2は、-CR2-、-O-、-S-、-SiR2-を表し、複数のW2は同一であっても異なっていても良い(但し、Rは水素原子または炭素数が1~5のアルキル基を表し、複数のRは同一であっても異なっていても良い。)。R11は水素原子、メチル基または水酸基を表し、複数のR11は同一であっても異なっていても良い。R12は水素原子、水酸基、アセチル基、メトキシカルボニル基、アリール基またはピリジル基を表し、複数のR12は同一であっても異なっていても良い。qは2以上3000以下の整数を表す。
【0051】
材料2としては、例えば特許第6508422号に記載の糖メタクリレートとスチレンとのブロック共重合体が例示される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る技術は、誘導自己組織化技術を利用してパターンを形成する方法およびそれを含む半導体の製造方法に好適である。
【符号の説明】
【0053】
10 基材
20 下層膜
30 ガイドパターン
40 樹脂膜
P1 第1相
P2 第2相
W 半導体ウェハー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12