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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】所要量計画システム及び所要量計画方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/087 20230101AFI20230829BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20230829BHJP
【FI】
G06Q10/087
G06Q50/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019220413
(22)【出願日】2019-12-05
(65)【公開番号】P2021089649
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】辻部 晃久
【審査官】野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-130466(JP,A)
【文献】特開2019-139379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕入れの対象となる仕入対象物から完成品までの構成物が階層をなす製品について、受注前の引合段階にある案件の情報である引合情報を取得する情報取得部と、
前記引合情報に基づいて、前記仕入対象物の使用確率を推定する製品構成推定部と、
前記仕入対象物の使用確率から前記仕入対象物の所要量を算出する所要量算出部と
を備え、
前記情報取得部は、
前記完成品について、過去に受注した実績を示す過去案件情報をさらに取得し、
前記製品構成推定部は、
前記引合情報と類似する実績を前記過去案件情報から抽出し、
前記完成品の1つ下位の構成物である第一の構成物を使用確率の推定対象とする場合に、抽出した実績全体において前記推定対象が使われている確率を用いて前記使用確率を推定し、
前記第一の構成物の使用確率が得られている状態で、前記第一の構成物の1つ下位の構成物である第二の構成物を使用確率の新たな推定対象とする場合に、抽出した実績全体において前記新たな推定対象が使われている確率を用いて前記新たな推定対象の使用確率を推定し、
前記新たな推定対象が前記仕入対象物となるまで推定を繰り返す
ことを特徴とする所要量計画システム。
【請求項2】
前記情報取得部は、前記完成品及び前記構成物について、1つ下位の構成物との組み合わせに関する制約を示す制約情報をさらに取得し、
前記製品構成推定部は、前記制約に抵触する組み合わせを除外して前記下位の構成物の使用確率を推定することを特徴とする請求項1に記載の所要量計画システム。
【請求項3】
前記所要量算出部は、前記仕入対象物の使用確率と対応する使用数とを乗算した期待値を前記仕入対象物の所要量として算出することを特徴とする請求項1に記載の所要量計画システム。
【請求項4】
前記階層は、前記完成品、前記完成品の構成物としての装置、前記装置の構成物としてのユニット、前記ユニットの構成物としての部品を含み、前記部品が前記仕入対象物であることを特徴とする請求項1に記載の所要量計画システム。
【請求項5】
前記所要量算出部は、複数の引合情報について求めた前記仕入対象物の所要量を、前記仕入対象物ごとに合算することを特徴とする請求項1に記載の所要量計画システム。
【請求項6】
前記所要量算出部は、前記仕入対象物ごとに所定の集計単位期間別の所要量を算出することを特徴とする請求項5に記載の所要量計画システム。
【請求項7】
仕入れの対象となる仕入対象物から完成品までの構成物が階層をなす製品について、受注前の引合段階にある案件の情報である引合情報を取得する情報取得ステップと、
前記引合情報に基づいて、前記仕入対象物の使用確率を推定する製品構成推定ステップと、
前記仕入対象物の使用確率から前記仕入対象物の所要量を算出する所要量算出ステップと
を含み、
前記情報取得ステップは、
前記完成品について、過去に受注した実績を示す過去案件情報をさらに取得し、
前記製品構成推定ステップは、
前記引合情報と類似する実績を前記過去案件情報から抽出し、
前記完成品の1つ下位の構成物である第一の構成物を使用確率の推定対象とする場合に、抽出した実績全体において前記推定対象が使われている確率を用いて前記使用確率を推定し、
前記第一の構成物の使用確率が得られている状態で、前記第一の構成物の1つ下位の構成物である第二の構成物を使用確率の新たな推定対象とする場合に、抽出した実績全体において前記新たな推定対象が使われている確率を用いて前記新たな推定対象の使用確率を推定し、
前記新たな推定対象が前記仕入対象物となるまで推定を繰り返す
ことを特徴とする所要量計画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所要量計画に関する。
【背景技術】
【0002】
昇降機のような受注生産では、短納期の注文に対応するために、受注から出荷までの供給リードタイムの削減が課題となっている。供給リードタイムの削減には、受注前に部品を仕込生産することが有効である。
【0003】
仕込生産に関する背景技術として、特許文献1がある。特許文献1には、「品目所要予測装置1の先行手配決定部13は、入力部11が取得した商談情報と予測パターンDB122が記憶する予測パターン情報と部品構成DB124が記憶する部品構成情報と購買マスタDB123が記憶する購買マスタ情報と共通在庫DB126が記憶する共通在庫情報とに基づいて、先行手配部品を決定する。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-130466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に製品は、機種、装置、ユニット、部品のように複数の階層で構成される。受注生産では、顧客の注文に応じて製品構成がカスタマイズされるため、同一機種であっても、装置、ユニット、部品は案件毎に異なり、注文の受注まで確定しない。
【0006】
特許文献1の技術では、受注前の各案件が取り得る機種を推定するが、各機種の装置、ユニット、部品は顧客の注文に依存せず同一のものとしている。このため、案件毎に製品構成が異なる受注生産では、高精度に所要量を算出できない。
【0007】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、受注前の案件について各部品の所要量を算出するシステム及び方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、代表的な本発明の所要量計画システム及び所要量計画方法の一つは、仕入れの対象となる仕入対象物から完成品までの構成物が階層をなす製品に対する引合情報を取得する情報取得部と、前記引合情報に基づいて、前記仕入対象物の使用確率を推定する製品構成推定部と、前記仕入対象物の使用確率から前記仕入対象物の所要量を算出する所要量算出部とを備え、前記製品構成推定部は、前記引合情報に適合する完成品の仕様から該完成品の1つ下位の構成物の使用確率を推定し、推定した構成物から1つ下位の構成物の使用確率を推定する処理を繰り返すことで前記仕入対象物の使用確率を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、受注生産における所要量の算出が可能となる。なお、上記した以外の課題、構成、および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】所要量計画システムの機能ブロックの一例を示す図である。
図2】引合情報のデータ構造の一例を示す図である。
図3】過去案件情報のデータ構造の一例を示す図である。
図4】過去製品構成情報のデータ構造の一例を示す図である。
図5】製品制約情報のデータ構造の一例を示す図である。
図6】在庫情報のデータ構造の一例を示す図である。
図7】在庫リスク情報のデータ構造の一例を示す図である。
図8】製品構成推定情報のデータ構造の一例を示す図である。
図9】部品別所要量情報のデータ構造の一例を示す図である。
図10】所要量計画システムによる処理の一例を示すフローチャートである。
図11】過去案件で採用された機種に関する情報の一例を示す図である。
図12】過去案件で採用された装置に関する情報の一例を示す図である。
図13】各機種に対する装置の組合せ可否を示す情報の一例を示す図である。
図14】装置の使用確率の算出方法の一例を示す図である。
図15】使用確率と使用数の一例を示す図である。
図16】出力画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。本明細書において、案件とは顧客からの注文を意味し、その登録情報は、顧客名と、納期などから構成されているものとする。本明細書では、登録情報は、顧客名と、納期と、製品の金額と、製品の納入先と、建物の高さを表す階床と、希望する速度と、製品の内装仕様と、納入台数から構成されるものとするが、これに限定されるものではない。
【0012】
また、製品構成は、機種と、装置と、ユニットと、部品の4階層で構成されるものとする。具体的には、製品は複数の機種で分類され、それぞれの機種は複数の装置で構成される。また、装置は複数のユニットで構成され、ユニットは複数の部品で構成される。すなわち、製品の機種が特許請求の範囲における完成品に対応し、装置、ユニット及び部品が構成物に対応する。そして、部品が特許請求の範囲における仕入対象物である。本明細書では、機種と、装置と、ユニットと、部品の4階層としたが、これに限定されるものではない。また、装置の名前は、「装置DA-1」のように記載するものとする。「DA」は、巻上機などの装置のカテゴリを表し、「1」は、カテゴリ内の種別を表す。ユニットと、部品の名前も、装置と同様の方法で記載する。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明に係る所要量計画システムの一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態の所要量計画システム100の機能ブロックの一例を示す図である。本実施形態の所要量計画システム100は、各々ネットワーク102を介して通信可能に接続された所要量計画装置101と、ユーザが使用するユーザ端末103と、データが保存されたデータベース104と、を備える。
【0014】
ユーザ端末103は、PC(Personal Computer)等の情報処理装置である。ユーザは、ユーザ端末103を通して所要量計画装置101に処理の実行指示を出す。また、ユーザ端末103は、所要量計画装置101が出力する情報を、ユーザへ表示する機能を有する。
【0015】
データベース104は、例えばERP(Enterprise Resources Plannning)等のシステム、またはそれに準じるデータを蓄積したデータベース、または記憶装置である。
【0016】
ネットワーク102は、ユーザ端末103と、データベース104と、所要量計画装置101を通信可能に接続する。ネットワーク102は、例えば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、VPN(Virtual Private Network)、インターネット等の一般公衆回線を一部または全部に用いた通信網のいずれかである。
【0017】
所要量計画装置101は、PCまたはサーバーコンピュータ等の情報処理装置であり、各案件の取り得る製品構成の確率を推定し、構成部品別の使用確率を算出することで、所要量を算出する。所要量計画装置101は、記憶部110と、演算部120と、入力部130と、出力部140を備える。
【0018】
記憶部110は、引合情報111と、過去案件情報112と、過去製品構成情報113と、製品制約情報114と、在庫情報115と、在庫リスク情報116と、製品構成推定情報117と、部品別所要量情報118と、を記憶する。
【0019】
図2は引合情報111のデータ構造の一例である。引合情報111には、受注前の引合段階にある案件の登録情報が格納されており、案件No1111と、顧客名1112と、納期1113と、受注確度1114と、金額1115と、納入先1116と、階床1117と、速度1118と、内装仕様1119と、納入台数1110から構成されている。
【0020】
案件No1111は、案件を識別する番号情報を示す。顧客名1112は、案件の顧客名を示す。納期1113は、顧客への製品引渡の期限を示す。受注確度1114は、案件が今後受注に至る確率を示す。例えば、図2の案件Noが「1」の案件は、80%の確率で受注することを意味している。金額1115は、製品の見積金額を示す。納入先1116は、製品の納入先を示す。階床1117は、納入先の建物の高さを示す。例えば、図2の案件Noが「1」の案件の場合、60階建の建物に納入される。速度1118は、顧客が希望する製品の速度を示す。例えば、図2の案件Noが「1」の案件の場合、顧客は120m/minの速度の製品を希望している。内装仕様1119は、製品の内装の種別を示す。本明細書では、内装仕様の種別として、汎用的な「標準」と、顧客の要求毎にカスタマイズする「オーダー」を取り上げるが、これらに限定されるものではない。納入台数1110は、顧客が購入した製品の台数を示す。
【0021】
図3は過去案件情報112のデータ構造の一例である。過去案件情報112には、過去に受注した案件の登録情報が格納されており、案件No1121と、顧客名1122と、納期1123と、金額1124と、納入先1125と、階床1126と、速度1127と、内装仕様1128と、納入台数1129と、から構成されている。それぞれの項目の内容は、引合情報111の項目と同一である。
【0022】
図4は過去製品構成情報113のデータ構造の一例である。過去製品構成情報113には、過去案件情報112に登録された過去案件の製品構成に関する情報が格納されており、案件No1131と、機種1132と、装置1133と、ユニット1134と、部品1135と、使用数1136と、から構成されている。
【0023】
案件No1131は、案件を識別する番号情報である。機種1132は、過去案件で採用された機種を示す。装置1133は、過去案件で採用された装置を示す。ユニット1134は、過去案件で採用されたユニットを示す。部品1135は、過去案件で採用された部品を示す。使用数1136は、部品1135の使用数を示す。例えば、図4では、「ユニットUA―1」は、4個の「部品PA-1」と、1個の「部品PA-2」と、1個の「部品PA-3」と、から構成されている。
【0024】
図5は製品制約情報114のデータ構造の一例である。製品制約情報114には、装置と、ユニットと、部品の組合せ可否に関する情報が記載されている。本明細書では、製品制約情報114は、装置の制約情報114aと、ユニットの制約情報114bと、部品の制約情報114cと、から構成されるが、これらに限定されるものではなく、例えば部品間の組合せ可否などの情報であってもよい。
【0025】
装置の制約情報114aには、機種114a1と、それぞれの機種と組合せ可能な装置114a2が登録されている。例えば、図5の例では、装置DAのカテゴリで「高速・標準型」の機種に組合せ可能な装置は、「装置DA-1」と、「装置DA-2」と、「装置DA-3」である。同様に、ユニットの制約情報114bには、装置114b1と、それぞれの装置と組合せ可能なユニット114b2が登録されている。また、部品の制約情報114cには、ユニット114c1と、それぞれのユニットと組合せ可能な部品114c2が登録されている。
【0026】
図6は在庫情報115のデータ構造の一例である。在庫情報115には、各部品の在庫情報が格納されており、部品1151と、安全在庫1152と、在庫1153と、から構成されている。
【0027】
部品1151は、部品名を示す。安全在庫1152は、需要の変動などに対応するために保持すべき在庫数を示す。在庫1153は、所要量計画装置101の処理時点で保持している各部品の在庫数を示す。
【0028】
図7は在庫リスク情報116の一例である。在庫リスク情報116には、先々使用されずに余剰在庫として保管されるリスクに関する情報が格納されており、部品1161と、在庫リスク1162と、から構成されている。
【0029】
部品1161は、部品名を示す。在庫リスク1162は、部品が余剰在庫となるリスクを示し、在庫リスクが大きいほど余剰在庫となる可能性が低く、在庫リスクが小さいほど余剰在庫となる可能性が高く、0以上1以下の数値とする。具体的には、在庫リスクの値が1より小さければ、安全在庫以上の在庫を保持しており、在庫不足となる可能性は低いが、余剰在庫となる可能性がある。在庫リスクの値が1であれば、在庫が安全在庫に満たず、余剰在庫となる可能性は低いが、在庫不足となる可能性が生じる。
【0030】
図8は製品構成推定情報117の一例である。製品構成推定情報117には、製品構成の使用確率が階層別に格納されており、機種の使用確率117aと、装置の使用確率117bと、ユニットの使用確率117cと、部品の使用確率117dと、から構成されている。
【0031】
機種の使用確率117aには、案件No117a1と、機種117a2と、使用確率117a3が登録されている。例えば、図8の例では、案件Noが「1」の案件が「高速・標準型」の機種を使用する確率は90%、「中速・標準型」の機種を使用する確率は5%、「低速・標準型」の機種を使用する確率は0%である。同様に、装置の使用確率117bには、案件No117b2と、装置117b2と、使用確率117b3が登録されている。ユニットの使用確率117cには、案件No117c1と、ユニット117c2と、使用確率117c3が登録されている。部品の使用確率117dには、案件No117d1と、部品117d2と、使用確率117d3と、部品の使用数117d4が登録されている。
【0032】
図9は部品別所要量情報118の一例である。部品別所要量情報118には、各部品の先々の所要量が格納されており、部品1181と、月1182と、所要量1183と、から構成されている。
【0033】
部品1181は、部品名を示す。月1182は、部品の所要が発生する月を示す。所要量1183は、各月における部品の必要数量を示す。例えば、図9の場合、部品「PA1」が9月に1200個必要である。なお、本明細書では、部品の所要が発生するタイミングを月単位で集計しているが、日単位や週単位などの集計単位期間であってもよい。
【0034】
図1の所要量計画装置101の詳述に戻る。演算部120は、情報取得部121と、製品構成推定部122と、在庫リスク算出部123と、所要量算出部124と、を有する。
【0035】
情報取得部121は、データベース104から製品構成推定部122と、在庫リスク算出部123と、所要量算出部124に必要な情報(引合情報111、過去案件情報112、過去製品構成情報113、製品制約情報114、在庫情報115など)を取得し、記憶部110に格納する。
【0036】
製品構成推定部122は、引合情報111と、過去案件情報112と、過去製品構成情報113と、製品制約情報114と、から機種と、装置と、ユニットと、部品の使用確率を算出し、製品構成推定情報117に格納する。
【0037】
在庫リスク算出部123は、在庫情報115から、各部品の在庫リスクを算出し、在庫リスク情報116に格納する。所要量算出部124は、在庫リスク情報116と、製品構成推定情報117から、各部品の所要量を算出し、部品別所要量情報118に格納する。
【0038】
入力部130は、ネットワーク102を介してユーザ端末103と、データベース104に接続される。情報取得部121は、入力部130を介してデータベース104から引合情報111と、過去案件情報112と、過去製品構成情報113と、製品制約情報114と、在庫情報115と、を受け取り、記憶部110へ格納する。
【0039】
出力部140は、記憶部110が記憶している製品構成推定情報117と、部品別所要量情報118と、をネットワーク102により接続されたユーザ端末103へ送信し、ユーザに製品構成と部品別所要量の算出結果を表示する機能を有する。
【0040】
次に、本実施例における所要量計画システム100が実行する処理の流れについて、図10のフローチャートを用いて説明する。以下の一連の処理は、データベース104に所定数の過去案件情報112と、過去製品構成情報113と、が記録されていることを前提とし、例えば、ユーザ端末103へのユーザからの開始コマンドに応じて開始される。
【0041】
まず、ステップS1において、情報取得部121が、ネットワーク102を介して、データベース104から、引合情報111と、過去案件情報112と、過去製品構成情報113と、製品制約情報114と、在庫情報115と、を取得し、記憶部110へ格納する。次に、ステップS2からステップS6の処理を引合情報111に格納された案件数分繰り返す。
【0042】
まず、ステップS2において、製品構成推定部122が引合情報111と、過去案件情報112と、過去製品構成情報113と、から処理対象の案件と類似した過去案件の製品構成情報を抽出する。
【0043】
具体的には、まず製品構成推定部122は、引合情報111と過去案件情報112の金額と、階床と、速度と、内装仕様と、納入台数を比較し、処理対象の案件と類似する過去案件を抽出する。例えば、引合情報111で案件Noが「1」の案件の場合、金額が「100M円」、階床が「60階」、速度が「120m/min」、内装仕様が「標準」、納入台数が「5台」である過去案件を抽出する。その結果、過去案件情報112より、案件Noが「101」と、「104」と、「105」などの過去案件が抽出される。
【0044】
そして、製品構成推定部122は、過去製品構成情報113から、抽出した過去案件の製品構成情報を抽出する。前記の場合、過去製品構成情報113から、案件Noが「101」と、「104」と、「105」などのレコードが抽出される。
【0045】
ここでは説明を簡明にするため、引合案件と各項目が一致する案件の抽出を例示したが、項目が完全に一致する過去案件に限らず、例えば各項目について類似度を求め、項目別の類似度を総合的に評価して、引合案件に類似する過去案件を抽出することができる。なお、類似の評価については任意の手法を用いればよい。
【0046】
次に、ステップS3において、製品構成推定部122は、処理対象の案件における各機種の使用確率を推定する。製品構成推定部122は、前記ステップS2で抽出した過去案件の製品構成情報に基づき、図11のように機種別に過去案件数を集計し、使用確率を算出する。図11は、引合情報111の案件Noが「1」の案件に対する算出例である。その後、製品構成推定部122は、使用確率の算出結果を製品構成推定情報117に格納する。
【0047】
図11では、引合案件の仕様に類似する過去案件が100件抽出されており、90件が高速・標準型であり、5件が中速・標準型であり、5件が高速・オーダー型であった。このため、引合案件における高速・標準型の使用確率は90%、中速・標準型の使用確率は5%、高速・オーダー型の使用確率は5%となっている。
【0048】
次に、ステップS4において、製品構成推定部122は、処理対象の案件における装置の使用確率を算出する。以下の処理は、「高速・標準型」、「中速・標準型」など全ての機種に対して行い、各機種に組合される装置の使用確率を算出するが、本明細書では、「高速・標準型」に組合される装置の使用確率の算出例を示す。
【0049】
まず、前記ステップS3と同様に、製品構成推定部122は、前記ステップS2で抽出した過去案件の製品構成情報に基づき、図12のように装置別に案件数を集計し、使用確率を算出する。図12は、引合情報111の案件Noが「1」、カテゴリが「DA」の装置の使用確率の算出例である。図12に示すように、カテゴリが「DA」の装置は、「装置DA-1」と、「装置DA-2」と、「装置DA-3」と、「装置DA-4」と、「装置DA-5」と、「装置DA-6」の6種類あるものとする。
【0050】
図12では、引合案件の仕様に類似するとして抽出された100件の過去案件のうち、35件が「装置DA-1」であり、5件が「装置DA-2」であり、5件が「装置DA-3」であり、20件が「装置DA-4」であり、20件が「装置DA-5」であり、15件が「装置DA-6」であった。このため、引合案件における「装置DA-1」の使用確率は35%、「装置DA-2」の使用確率は5%、「装置DA-3」の使用確率は5%、「装置DA-4」の使用確率は20%、「装置DA-5」の使用確率は20%、「装置DA-6」の使用確率は15%となっている。
【0051】
ここで、ステップS3では、抽出した過去案件の全てを対象に装置の集計を行っている。例えば、機種「高速・標準型」を使用した案件を対象に装置の集計を行えば、機種と装置の関係を反映して集計を行うことができるが、階層を辿るごとに案件が細分化されて集計の母数が減少する。このため、ある階層について集計を行うときには、上の階層に依存せず、抽出した過去案件の全てを母数としているのである。
【0052】
続いて、製品構成推定部122は、製品制約情報114から、各機種と組合せ可能な装置を取得する。図5の例では、カテゴリが「A」の装置の中で、「高速・標準型」と組合せ可能な装置は、「装置DA-1」と、「装置DA-2」と、「装置DA-3」であり、図12の「装置DA-4」と、「装置DA-5」と、「装置DA-6」は組合せできない。この結果、「高速・標準型」との組合せ可否のみを考慮すると、図13のように装置の使用確率が算出される。すなわち、「装置DA-1」が33%、「装置DA-2」が33%、「装置DA-3」が33%であり、「装置DA-4」が0%、「装置DA-5」が0%、「装置DA-6」が0%である。
【0053】
このように、他層の構成物との組み合わせに関する制約を適用し、制約に抵触する組み合わせを除外することで、抽出した過去案件の全てを対象に当該階層の集計を行っていても、上の階層との関係を反映することができる。
【0054】
最後に、製品構成推定部122は、過去案件の製品構成情報に基づき算出した使用確率と、製品制約情報に基づき算出した使用確率を組合せ、最終的な使用確率を算出する。具体的には、製品構成推定部122は、図14のように2つの使用確率を掛け算する。図14は、図12図13の算出結果を掛け算した例である。ただし、単純な2つの使用確率の掛け算では、前記ステップS3で算出した機種別の使用確率を反映できないため、図14のように、各装置に対する使用確率の積の和が、機種の使用確率と一致するように補正する。図14の例では、「高速・標準型」の使用確率が「90%」であるため、2つの使用確率の積を「90%」で割り算する。最後に、製品構成推定部122は、使用確率の推定結果を製品構成推定情報117に格納する。なお、使用確率の組合わせ方法はベイズ推定など他の手法を用いてもよく、本明細書に記載した方法に限定されるものではない。
【0055】
次に、ステップS5において、製品構成推定部122は、処理対象の案件におけるユニットの使用確率を算出する。ステップS5の処理内容は、前記ステップS4の処理内容と同様である。まず、製品構成推定部122は、前記ステップS2で抽出した過去案件の製品構成情報に基づく使用確率を算出する。次に、製品構成推定部122は、製品制約情報に基づく使用確率を算出する。その後、製品構成推定部122は、2つの使用確率を組合せることで、最終的な使用確率を算出し、製品構成推定情報117に格納する。
【0056】
次に、ステップS6において、製品構成推定部122は、処理対象の案件における部品の使用確率を算出する。ステップS6の処理内容は、前記ステップS4の処理内容と同様である。まず、製品構成推定部122は、前記ステップS2で抽出した過去案件の製品構成情報に基づく使用確率を算出する。次に、製品構成推定部122は、製品制約情報に基づく使用確率を算出する。その後、製品構成推定部122は、2つの使用確率を組合せることで、最終的な使用確率を算出し、製品構成推定情報117に格納する。なお、部品の使用数は、前記ステップS2で抽出した過去案件の部品の使用数を集計し、その最頻値を採用するものとするが、これ以外の方法で使用数を決定してもよい。
【0057】
次に、製品構成推定部122は、ステップS7と、ステップS8の処理を所要量計画の対象となる部品数分繰り返す。
【0058】
まず、ステップS7において、在庫リスク算出部123は、在庫情報115から、処理対象の部品の在庫リスクを算出する。具体的には、在庫リスク算出部123は、安全在庫を現在の在庫数で割り算することで、在庫リスクを算出する。例えば、図6の「部品PA-1」の場合、安全在庫が「200」、現在の在庫が「250」であるため、在庫リスクは200÷250=0.8となる。同様に、図6の「部品PA-2」の場合、安全在庫が「150」、現在の在庫が「100」であるため、在庫リスクは150÷100=1.5となる。ただし、このように、在庫リスクが1より大きくなってしまう場合、在庫リスクは1とする。最後に、在庫リスク算出部123は、在庫リスクの算出結果を在庫リスク情報116へ格納する。
【0059】
次に、ステップS8において、所要量算出部124は、在庫リスク情報116と、製品構成推定情報117から、処理対象の部品の所要量を月別に算出する。まず、所要量算出部124は、図15のように、引合情報111と、製品構成推定情報117から、全案件の納期と、処理対象部品に対する全案件の使用確率と、使用数を抽出する。図15は、「部品PA-1」に対する全案件の使用確率を抽出した一例である。そして、所要量算出部124は、納期の月別に、各案件の使用数と使用確率の積の和を合算する。図15の「9月」に対しては、40%×2+80%×1+90%×4・・・=1500と算出する。
【0060】
次に、所要量算出部124は、在庫リスク情報116から処理対象の部品の在庫リスクを抽出し、前記算出結果に掛け算する。図15の「部品PA-1」の場合、在庫リスクは「0.8」であるため、9月における所要量を1500×0.8=1200と算出する。最後に、所要量算出部124は、算出結果を部品別所要量情報118に格納する。
【0061】
次に、ステップS9において、出力部140が、製品構成推定情報117と、部品別所要量情報118に基づいて、各案件の製品構成の推定結果と、所要量算出結果を示す出力画面1400を生成し、ネットワーク102を介して、ユーザ端末103へ表示する。
【0062】
図16に出力画面1400の一例を示す。出力画面1400は、案件No欄1401と、製品階層欄1402と、名前欄1403と、使用確率欄1404と、部品名欄1405欄と、月欄1406と、所要量欄1407と、から構成される。
【0063】
案件No欄1401には、ユーザが指定した案件Noに関する情報が表示される。製品階層欄1402には、機種と、装置と、ユニットと、部品の中で、ユーザが使用確率を確認したい階層が表示される。名前欄1403には、前記製品階層欄1402に対応する階層の機種、装置、ユニット、部品の名前が表示される。使用確率欄1404には、前記名前欄1403に対する使用確率が表示される。部品名欄1405には、ユーザが所要量を確認したい部品が表示される。月欄1406には、先々の月が表示される。所要量欄1407には、前記月欄1406に表示された月に対する所要量が表示される。
【0064】
上述してきたように、本実施例に開示した所要量計画システム及び所要量計画方法は、仕入れの対象となる仕入対象物から完成品までの構成物が階層をなす製品に対する引合情報を取得し、引合情報に適合する完成品の仕様から該完成品の1つ下位の構成物の使用確率を推定し、推定した構成物から1つ下位の構成物の使用確率を推定する処理を繰り返すことで仕入対象物の使用確率を推定する。そして、仕入対象物の使用確率から仕入対象物の所要量を算出する。
【0065】
このように、構成のカスタマイズを想定し、階層を辿って順次構成を予測することで、受注生産の製品のように受注前には構成が確定しない製品であっても、引合段階で仕入対象物の所要量を算出することができる。
【0066】
具体的には、過去の完成品の実績を示す過去案件情報を取得し、引合情報と類似する実績を過去案件情報から抽出し、抽出した実績から引合情報に適合する完成品における構成物の使用確率を推定することで、仕入対象物の所要量を算出可能である。
【0067】
また、所定の構成物について該構成物を構成する1つ下位の構成物を推定する場合に、抽出した実績全体における下位の構成物の比率に基づいて、下位の構成物の使用確率を推定するので、下位の階層であっても構成物の使用確率を予測可能である。
【0068】
また、完成品及び前記構成物について、1つ下位の構成物との組み合わせに関する制約を示す制約情報を用い、制約に抵触する組み合わせを除外して下位の構成物の使用確率を推定することで、下位の構成物との関係を反映して精度よく予測が可能である。
【0069】
また、本実施例では、仕入対象物の使用確率と対応する使用数とを乗算した期待値を仕入対象物の所要量として算出する。また、複数の引合情報について求めた仕入対象物の所要量を、仕入対象物ごとに合算することもできる。このため、複数の引合情報における仕入対象物の所要量を総合的に管理することができる。すなわち、個別の案件については受注の成否で仕入対象物の要否がばらつくが、複数の案件の仕入対象物の所要量を期待値で管理すれば、案件ごとの要否のばらつきを吸収して在庫の過不足を回避できるのである。このとき、引合情報の受注確度を用いて引合情報の仕入対象物の所要量の期待値を求めてもよい。
【0070】
また、本実施例では、完成品、完成品の構成物としての装置、装置の構成物としてのユニット、ユニットの構成物としての部品を含む階層を例示し、部品が仕入対象物である場合を例に説明を行ったが、階層構造や仕入対象物は実施例の例示に限定されるものではなく、任意の構造であってよい。また、仕入対象物は、部品に限らず、素材などでもよい。さらに、異なる階層に仕入対象物があってもよい。例えば、あるユニットについては構成物としての部品を仕入れて組み立てるが、特定のユニットについてはそれ自体が仕入対象物であってもよい。
【0071】
なお、本実施例では、在庫管理の一例として月別の所要量を求める場合を示したが、本発明の利用はこれに限定されず、推定した仕入対象物の所要量は任意に利用することができる。例えば、実際の在庫から仕入対象物の所要量を減算し、安全在庫が残るように仕入量を決定してもよい。また、本実施例では、説明を省略したが、仕入対象物の互換性などの情報を用いて仕入対象物の所要量を管理してもよい。
【0072】
このように、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、かかる構成の削除に限らず、構成の置き換えや追加も可能である。
【符号の説明】
【0073】
100:所要量計画システム、101:所要量計画装置、102:ネットワーク、103:ユーザ端末、104:データベース、110:記憶部、120:演算部、130:入力部、140:出力部、111:引合情報、112:過去案件情報、113:過去製品構成情報、114:製品制約情報、115:在庫情報、116:在庫リスク情報、117:製品構成推定情報、118:部品別所要量情報、121:情報取得部、122:製品構成推定部、123:在庫リスク算出部、124:所要量算出部、1400:出力画面
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