(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】心疾患の予防および治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230829BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P9/04
(21)【出願番号】P 2019551969
(86)(22)【出願日】2018-03-20
(86)【国際出願番号】 US2018023390
(87)【国際公開番号】W WO2018175460
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-19
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(73)【特許権者】
【識別番号】301033259
【氏名又は名称】ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカル・センター,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンツウェイグ, アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ロー, ジェイソン, ディー.
(72)【発明者】
【氏名】グラス, デイビッド, ジェー.
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/171948(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/069234(WO,A1)
【文献】特表2012-525128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗ActRII抗体を含む、心不全の治療および/または予防に使用するための医薬組成物であって、
該心不全が、心臓弁膜症、冠動脈疾患、高血圧、糖尿病、老化、不整脈、周産期心筋症、ストレス心筋症、毒性または感染性因子、遺伝性心筋症、または特発性拡張型心筋症の少なくとも1つによって引き起こされるまたは関連付けられ
、
前記抗ActRII抗体が、配列番号9の重鎖可変領域CDR1;配列番号23の重鎖可変領域CDR2;配列番号37の重鎖可変領域CDR3;配列番号51の軽鎖可変領域CDR1;配列番号65の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号79の軽鎖可変領域CDR3を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記心臓弁膜症が大動脈狭窄症である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記大動脈狭窄症が、構造的および/または機能的な心臓の異常と関連している、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
該抗ActRII抗体が、配列番号181のアミノ酸19~134(配列番号182)からなるActRIIBのエピトープに結合する、請求項
1~3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
該
抗ActRII抗体が、配列番号14
6に対して少なくとも95%の配列同一性を有する完全長重鎖アミノ酸配列を含む、請求項
1~4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
該
抗ActRII抗体が、配列番号14
1に対して少なくとも95%の配列同一性を有する完全長軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項
1~5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
該
抗ActRII抗体が
、配列番号107の可変重鎖配列および配列番号93の可変軽鎖配
列を含む、請求項
1~
6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
該
抗ActRII抗体が
、配列番号146の重鎖配列および配列番号141の軽鎖配
列を含む、請求項
1~
7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
該抗ActRII抗体がビマグルマブ
である、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年3月24日に提出された米国仮出願第62/476,054号の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、アクチビン受容体II型(ActRII)アンタゴニスト、例えば、アクチビン、成長分化因子(GDF)、骨形成タンパク質(BMP)、およびヒトActII受容体へのミオスタチンの結合に拮抗することができる分子の分野にあり、例えばActRIIAおよび/またはActRIIBに対するアンタゴニスト抗体、例えばビマグルマブが挙げられる。特に、治療有効量のActRII受容体アンタゴニストを対象に投与することによる、駆出率の低下した心不全(HFrEF)および駆出率の保持された心不全(HFpEF)を含む心不全の予防および/または治療、ならびにこの状態に関連する構造的および/または機能的な心臓の異常、例えば心臓弁膜症、冠動脈疾患、高血圧、糖尿病、老化、不整脈、周産期心筋症、ストレス心筋症、毒性または感染性因子および遺伝性または特発性拡張型心筋症の治療に関する。注目すべきことに、これらの状態は、頻繁に共存するが単独で発生し得る臨床症候群を含み、収縮期および/または拡張期心不全、左側および/または右側心不全、うっ血性心不全と呼ばれることもある。
【背景技術】
【0003】
アクチビンIIB型受容体(ActRIIB)は、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)のスーパーファミリーの様々なメンバーのシグナル伝達受容体である。このファミリーのメンバーには、アクチビンA、ノード、BMP2、BMP6、BMP7、BMP9、GDF5、GDF8(ミオスタチン)およびGDF11が含まれ、これらはすべて筋肉の負の調節に関与している(Akpan et al.,2009)。
【0004】
ミオスタチン(GDF8)はアクチビン受容体II型を介して(主にActRIIBを介して)作用し、その提案されたシグナル伝達は、タンパク質合成の阻害、および筋細胞の分化と増殖に関与するSMAD 2/3経路を介する。ミオスタチン阻害または遺伝的アブレーションは、筋肉量と力を増加させる(Lee et al 2005、Lee and McPherron 2001、Whittemore et al 2003)。
【0005】
BYM338としても知られるビマグルマブは、ミオスタチンまたはその天然リガンドであるアクチビンよりも高い親和性でアクチビン受容体型IIB(ActRII)に競合的に結合するように開発されたモノクローナル抗体である。ビマグルマブは、国際公開第2010/125003号パンフレットに開示されており、完全に説明されているかのように参照により本明細書に組み込まれる。ビマグルマブは完全ヒト抗体(改変IgG1、234-235-Ala-Ala、λ2)であり、ActRIIAおよびBのリガンド結合ドメインに結合し、それにより、骨格筋の成長の天然の阻害剤として作用するミオスタチンやアクチビンを含む、そのリガンドの結合およびその後のシグナル伝達を防止する。
【0006】
ビマグルマブは、ヒトおよびマウスActRIIBと交差反応し、ヒト、カニクイザル、マウス、およびラットの骨格筋細胞に効果的である。ActRIIBは、骨格筋、脂肪組織、および心臓を含む様々な臓器に広く分布している(Rebbapragada et al.,2003)。
【0007】
心不全は、心機能の障害が身体の代謝の要求を満たすのに不十分な全身の灌流を引き起こす臨床症候群である。心不全は、(1)駆出率の低下した心不全(HFrEF)(「収縮期心不全」とも知られる)、および(2)駆出率の保持された心不全(HFpEF)(「拡張期心不全」とも知られる)という2つの主要なタイプに分けられる。HFrEFでは、心収縮性の低下が、心拍出量を低下させて全身の灌流不足を引き起こす主要なメカニズムである。HFpEFでは、安静時の心収縮性が全体的に維持される。ただし、心予備力や拡張機能を含む心機能の他の複数の欠陥は、心臓の機能的能力を損なわせ、臨床的な心不全の同様の表現型をもたらす。様々な状態が、心臓を損傷または弱体化させ、心不全を引き起こす可能性がある。例えば、心臓弁膜症、冠動脈疾患、高血圧、糖尿病、老化、不整脈、周産期心筋症、ストレス心筋症、毒性または感染性因子、ならびに遺伝性および/または特発性拡張型心筋症が挙げられる。
【0008】
糖尿病、老化、高血圧、虚血性心疾患、冠動脈心疾患、心臓弁膜症、ならびに遺伝性および特発性心筋症などの病因による心不全は、世界中の罹患率および死亡率の主な原因である。このいっそう一般的になる病気のプロセスに利用できる薬理学的療法は限られている。心不全の標準治療には、この疾患の複雑な病態生理に関与する様々なメカニズムを標的とする複数の薬物療法が組み込まれている。残念なことに、ガイドラインに基づいた治療を行っても、これらの患者の予後は不良であり、5年死亡率は50%に近い。進行した収縮期心不全では、患者は血行動態、腎性および不整脈性の副作用のために一般的な経口薬物療法に耐えることができないか、そのような療法により十分な緩和を達成できない場合が多い。これらの患者の場合、IV変力剤や、機械の支持装置、心臓移植などの高度な治療法は非常に限られ、高額であり、重大なリスクを伴う。
【0009】
本開示に先立って、アクチビンII型受容体(ActRIIA/B)の標的化された阻害は、心不全または心不全につながる可能性のある前述の状態の予防または治療として研究されていなかった。本明細書に開示されているように、マウス化版BYM338(抗体のヒトFc領域がマウスFcに置換されている)であるCDD866などのActRIIA/B受容体アンタゴニストの全身投与は、大動脈縮窄術(TAC)にさらされたマウスの心機能に対し顕著に有益な効果を与える証拠が現在存在している。TACは、圧力過負荷によって誘発される心肥大と心不全で、一般的に使用される実験モデルである。マウスTACモデルは、1991年にRockmanらによって初めて検証され、ヒトの心血管疾患を模倣し、心肥大反応と心不全の発症に関与する基本的なシグナル伝達プロセスを理解するための貴重なツールとして広く使用されてきた(deAlmeida et al.2010)。本明細書で開示されるように、CDD866は、TAC媒介性心機能障害を予防するだけでなく、薬物投与の1~2週間以内に確立された心不全の後に心機能を回復させることもできる。また、進行した形態の心不全で頻繁に萎縮する骨格筋の成長を増加させ、TACの病的ストレス/損傷を受けていない対照マウスで、最小限の心臓への影響を引き起こす。
【0010】
本明細書で開示されるのは、心臓弁膜症、虚血性心疾患、冠動脈疾患、高血圧、糖尿病、老化、不整脈、周産期心筋症、ストレス心筋症、毒性または感染性因子、ならびに遺伝性および/または特発性拡張型心筋症などの状態によって引き起こされるまたは関連付けられる心不全を含む、心不全の治療および/または予防に使用するためのActRII受容体アンタゴニストである。また、前述の状態に関連する構造的および/または機能的な心臓の異常の治療に使用するためのActRII受容体アンタゴニストも開示されている。心不全を治療および/または予防するため、および前述の状態に関連する構造的および/または機能的な心臓の異常を治療するために、そのようなActRIIアンタゴニストを使用する方法も提供される。
【発明の概要】
【0011】
本明細書で開示されるのは、心不全の治療および/または予防に使用するActRII受容体アンタゴニストである。心不全は、例えば弁膜症、例えば大動脈弁狭窄症、冠動脈疾患、高血圧、糖尿病、老化、不整脈、周産期心筋症、ストレス心筋症、毒性または感染性因子、ならびに遺伝性および/または特発性拡張型心筋症などの様々な状態によって引き起こされるか関連する場合がある。駆出率の低下した心不全(HFrEF)と駆出率の保持された心不全(HFpEF)の両方がここに含まれている。
【0012】
また、本明細書で開示されるのは、心臓弁膜症、冠動脈疾患、高血圧、糖尿病、老化、不整脈、周産期心筋症、ストレス心筋症、毒性または感染性因子、および遺伝性または特発性拡張型心筋症などの状態に関連付けられる、構造的および/または機能的な心臓の異常の治療に使用するためのActRII受容体アンタゴニストである。場合によっては、周産期心筋症は妊娠後期または産後6ヶ月に発生する。ストレス心筋症は、閉経後の年配の女性に頻繁に発生する。心臓弁膜症の例は大動脈弁狭窄症であり、これは虚弱および/または筋肉減少症を伴う場合がある。ストレス心筋症は、心理的、病理学的または身体的ストレスの後に起こる可能性がある。
【0013】
本明細書では、心不全を治療および/または予防する方法が開示されている。この方法は、心不全を有する、または心不全を発症するリスクがある対象に、治療有効量のActRII受容体アンタゴニスト、例えばビマグルマブを投与することを含む。駆出率の低下した心不全(HFrEF)と駆出率の保持された心不全(HFpEF)の両方がここに含まれている。心不全は、例えば、脳性ナトリウム利尿ペプチドの測定、その後陽性の場合は心臓の超音波検査、心エコー検査などの画像診断を含むよく知られた方法を使用して、患者で診断され得る。
【0014】
対象は、例えば、心臓弁膜症、冠動脈疾患(以前の心筋梗塞を含む)、高血圧、糖尿病、老化、不整脈、周産期心筋症、ストレス心筋症、および遺伝性または特発性拡張型心筋症などの状態がある場合、心不全を発症するリスクがある。
【0015】
また、本明細書で開示されるのは、心臓弁膜症、冠動脈疾患、高血圧、糖尿病、老化、不整脈、周産期心筋症、ストレス心筋症、毒性または感染性因子、および遺伝性または特発性拡張型心筋症などの状態に関連付けられる、構造的および/または機能的な心臓の異常の治療方法である。この方法は、そのような状態に関連するそのような構造的および/または機能的な心臓の異常を有する対象に、有効量のActRII受容体アンタゴニストを投与することを含む。
【0016】
本明細書に記載の使用のためのまたは方法におけるActRII受容体アンタゴニストの例は、ActRII受容体結合分子であり、ActRIIへのミオスタチン、GDF11およびアクチビンAなどのActRII相互作用リガンドのアクセスをブロックすることができる。ActRII受容体結合分子は、ActRIIAおよび/またはActRIIB受容体に結合することができる。ActRII結合分子の例には、ActRIIAおよび/またはActRIIB受容体に結合する抗体、例えば抗ActRII受容体抗体が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、抗ActRII受容体抗体は、ビマグルマブとしても知られるBYM338である。
【0017】
本明細書に記載の方法で使用するためのActRII受容体アンタゴニストのさらなる例は、ミオスタチン、GDF11およびアクチビンAなどのActRII相互作用リガンドに結合できるActRIIAまたはActRIIB受容体の細胞外ドメインの可溶性形態である。この「受容体」は、リガンドと競合することにより、細胞に結合したActRII受容体の機能を阻害する。
【0018】
本明細書に開示されるのは、ActRII受容体アンタゴニストが、配列番号181のアミノ酸19~134(配列番号182)からなるActRIIBのエピトープに結合する抗ActRII抗体である、本明細書に記載の使用のためのまたは方法におけるActRII受容体アンタゴニストである。
【0019】
本明細書に開示されるのは、抗ActRII抗体が、
(a)配列番号181のアミノ酸78~83(WLDDFN-配列番号188);
(b)配列番号181のアミノ酸76~84(GCWLDDFNC-配列番号186);
(c)配列番号181のアミノ酸75~85(KGCWLDDFNCY-配列番号190);
(d)配列番号181のアミノ酸52~56(EQDKR-配列番号189);
(e)配列番号181のアミノ酸49~63(CEGEQDKRLHCYASW-配列番号187);
(f)配列番号181のアミノ酸29~41(CIYYNANWELERT-配列番号191);
(g)配列番号181のアミノ酸100~110(YFCCCEGNFCN-配列番号192);または
(h)配列番号181のアミノ酸78~83(WLDDFN)、および配列番号181のアミノ酸52~56(EQDKR)
を含むまたはからなるActRIIBのエピトープに結合する、本明細書に記載の使用のためのまたは方法におけるActRII受容体アンタゴニストである。
【0020】
本明細書に記載の使用のためのまたは方法におけるさらなる抗ActRIIB抗体は、例えば、
a)抗ActRIIB抗体であって、
(a)配列番号181のアミノ酸78~83(WLDDFN-配列番号188);
(b)配列番号181のアミノ酸76~84(GCWLDDFNC-配列番号186);
(c)配列番号181のアミノ酸75~85(KGCWLDDFNCY-配列番号190);
(d)配列番号181のアミノ酸52~56(EQDKR-配列番号189);
(e)配列番号181のアミノ酸49~63(CEGEQDKRLHCYASW-配列番号187);
(f)配列番号181のアミノ酸29~41(CIYYNANWELERT-配列番号191);
(g)配列番号181のアミノ酸100~110(YFCCCEGNFCN-配列番号192);または
(h)配列番号181のアミノ酸78~83(WLDDFN)、および配列番号181のアミノ酸52~56(EQDKR)
を含むActRIIBのエピトープに結合する抗ActRIIB抗体;および
b)配列番号181のアミノ酸78~83(WLDDFN-配列番号188)を含むActRIIBのエピトープに結合するActRIIBに対するアンタゴニスト抗体;
(b)配列番号181のアミノ酸76~84(GCWLDDFNC-配列番号186);
(c)配列番号181のアミノ酸75~85(KGCWLDDFNCY-配列番号190);
(d)配列番号181のアミノ酸52~56(EQDKR-配列番号189);
(e)配列番号181のアミノ酸49~63(CEGEQDKRLHCYASW-配列番号187);
(f)配列番号181のアミノ酸29~41(CIYYNANWELERT-配列番号191);
(g)配列番号181のアミノ酸100~110(YFCCCEGNFCN-配列番号192);または
(h)配列番号181のアミノ酸78~83(WLDDFN)、および配列番号181のアミノ酸52~56(EQDKR)、ここで抗体は約2pMのKDを有する、
を含む。
【0021】
一実施形態では、本明細書に記載の使用のためのまたは方法におけるActRII受容体アンタゴニストは、ActRIIAに結合するよりも約10倍以上の親和性でActRIIBに結合する抗体である。
【0022】
本明細書に記載の使用のためのまたは方法におけるActRII受容体アンタゴニストは、配列番号1~14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号15~28からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号29~42からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号43~56からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号57~70からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;および配列番号71~84からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3を含む抗体であってもよい。
【0023】
本明細書に記載の使用のためのまたは方法におけるActRII受容体アンタゴニストは、
(a)配列番号1の重鎖可変領域CDR1;配列番号15の重鎖可変領域CDR2;配列番号29の重鎖可変領域CDR3;配列番号43の軽鎖可変領域CDR1;配列番号57の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号71の軽鎖可変領域CDR3、
(b)配列番号2の重鎖可変領域CDR1;配列番号16の重鎖可変領域CDR2;配列番号30の重鎖可変領域CDR3;配列番号44の軽鎖可変領域CDR1;配列番号58の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号72の軽鎖可変領域CDR3、
(c)配列番号3の重鎖可変領域CDR1;配列番号17の重鎖可変領域CDR2;配列番号31の重鎖可変領域CDR3;配列番号45の軽鎖可変領域CDR1;配列番号59の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号73の軽鎖可変領域CDR3、
(d)配列番号4の重鎖可変領域CDR1;配列番号18の重鎖可変領域CDR2;配列番号32の重鎖可変領域CDR3;配列番号46の軽鎖可変領域CDR1;配列番号60の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号74の軽鎖可変領域CDR3、
(e)配列番号5の重鎖可変領域CDR1;配列番号19の重鎖可変領域CDR2;配列番号33の重鎖可変領域CDR3;配列番号47の軽鎖可変領域CDR1;配列番号61の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号75の軽鎖可変領域CDR3、
(f)配列番号6の重鎖可変領域CDR1;配列番号20の重鎖可変領域CDR2;配列番号34の重鎖可変領域CDR3;配列番号48の軽鎖可変領域CDR1;配列番号62の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号76の軽鎖可変領域CDR3、
(g)配列番号7の重鎖可変領域CDR1;配列番号21の重鎖可変領域CDR2;配列番号35の重鎖可変領域CDR3;配列番号49の軽鎖可変領域CDR1;配列番号63の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号77の軽鎖可変領域CDR3、
(h)配列番号8の重鎖可変領域CDR1;配列番号22の重鎖可変領域CDR2;配列番号36の重鎖可変領域CDR3;配列番号50の軽鎖可変領域CDR1;配列番号64の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号78の軽鎖可変領域CDR3、
(i)配列番号9の重鎖可変領域CDR1;配列番号23の重鎖可変領域CDR2;配列番号37の重鎖可変領域CDR3;配列番号51の軽鎖可変領域CDR1;配列番号65の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号79の軽鎖可変領域CDR3、
(j)配列番号10の重鎖可変領域CDR1;配列番号24の重鎖可変領域CDR2;配列番号38の重鎖可変領域CDR3;配列番号52の軽鎖可変領域CDR1;配列番号66の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号80の軽鎖可変領域CDR3、
(k)配列番号11の重鎖可変領域CDR1;配列番号25の重鎖可変領域CDR2;配列番号39の重鎖可変領域CDR3;配列番号53の軽鎖可変領域CDR1;配列番号67の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号81の軽鎖可変領域CDR3、
(l)配列番号12の重鎖可変領域CDR1;配列番号26の重鎖可変領域CDR2;配列番号40の重鎖可変領域CDR3;配列番号54の軽鎖可変領域CDR1;配列番号68の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号82の軽鎖可変領域CDR3、
(m)配列番号13の重鎖可変領域CDR1;配列番号27の重鎖可変領域CDR2;配列番号41の重鎖可変領域CDR3;配列番号55の軽鎖可変領域CDR1;配列番号69の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号83の軽鎖可変領域CDR3、または
(n)配列番号14の重鎖可変領域CDR1;配列番号28の重鎖可変領域CDR2;配列番号42の重鎖可変領域CDR3;配列番号56の軽鎖可変領域CDR1;配列番号70の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号84の軽鎖可変領域CDR3
を含む抗体であり得る。
【0024】
別の実施形態において、本明細書に記載の使用のためのまたは方法におけるActRII受容体アンタゴニストは、配列番号146~150および156~160からなる群から選択される少なくとも1つの配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する完全長重鎖アミノ酸配列を含む抗体であり得る。
【0025】
本明細書に記載の使用のためのまたは方法におけるActRII受容体アンタゴニストは、配列番号141~145および151~155からなる群から選択される少なくとも1つの配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する完全長軽鎖アミノ酸配列を含む抗体であり得る。
【0026】
本明細書に記載の使用のためのまたは方法におけるActRII受容体アンタゴニストは、
(a)配列番号99の可変重鎖配列および配列番号85の可変軽鎖配列;
(b)配列番号100の可変重鎖配列および配列番号86の可変軽鎖配列;
(c)配列番号101の可変重鎖配列および配列番号87の可変軽鎖配列;
(d)配列番号102の可変重鎖配列および配列番号88の可変軽鎖配列;
(e)配列番号103の可変重鎖配列および配列番号89の可変軽鎖配列;
(f)配列番号104の可変重鎖配列および配列番号90の可変軽鎖配列;
(g)配列番号105の可変重鎖配列および配列番号91の可変軽鎖配列;
(h)配列番号106の可変重鎖配列および配列番号92の可変軽鎖配列;
(i)配列番号107の可変重鎖配列および配列番号93の可変軽鎖配列;
(j)配列番号108の可変重鎖配列および配列番号94の可変軽鎖配列;
(k)配列番号109の可変重鎖配列および配列番号95の可変軽鎖配列;
(l)配列番号110の可変重鎖配列および配列番号96の可変軽鎖配列;
(m)配列番号111の可変重鎖配列および配列番号97の可変軽鎖配列;または
(n)配列番号112の可変重鎖配列および配列番号98の可変軽鎖配列
を含む抗体であり得る。
【0027】
本明細書に記載の使用のためのまたは方法におけるActRII受容体アンタゴニストは、
(a)配列番号146の重鎖配列および配列番号141の軽鎖配列;
(b)配列番号147の重鎖配列および配列番号142の軽鎖配列;
(c)配列番号148の重鎖配列および配列番号143の軽鎖配列;
(d)配列番号149の重鎖配列および配列番号144の軽鎖配列;
(e)配列番号150の重鎖配列および配列番号145の軽鎖配列;
(f)配列番号156の重鎖配列および配列番号151の軽鎖配列;
(g)配列番号157の重鎖配列および配列番号152の軽鎖配列;
(h)配列番号158の重鎖配列および配列番号153の軽鎖配列;
(i)配列番号159の重鎖配列および配列番号154の軽鎖配列;または
(j)配列番号160の重鎖配列および配列番号155の軽鎖配列
を含む抗体であり得る。
【0028】
また、本明細書に記載の使用のためのまたは方法におけるActRII受容体アンタゴニストが開示され、前述の少なくとも1つの抗体により交差遮断(cross-block)するまたは交差遮断される抗ActRII受容体抗体である。
【0029】
本明細書に記載の使用のためのまたは方法におけるActRII受容体アンタゴニストは、Fc領域の変異によりエフェクター機能が変化(alter)した抗ActRII受容体抗体であってもよい。
【0030】
本明細書に記載の使用のためのまたは方法における抗体の例は、pBW522(DSM22873)またはpBW524(DSM22874)によってコードされる抗ActRII抗体である。
【0031】
本明細書に記載の実施例は、抗体のヒトFc領域がマウスFcによって置換されたBYM338のマウス化バージョンであるCDD866を利用する。
【0032】
しかし、本明細書に記載の使用のためのまたは方法における好ましい抗体は、完全ヒト抗体(修飾IgG1、234-235-Ala-Ala、λ2)であるビマグルマブ(BYM338)である。
【0033】
「ActRII結合分子」とは、ヒトActRII受容体(ActRII Aおよび/またはActRIIB)に単独または他の分子と関連付けられて結合できる分子を意味する。結合反応は、例えば、負の制御の試験を参照した、結合アッセイ、競合アッセイ、またはミオスタチンへのActRII受容体結合の阻害を判定するためのバイオアッセイ、またはあらゆる種類の結合アッセイを含む標準的な方法(定性アッセイ)によって示され得る。例えば、無関係な特異度だが理想的には同じアイソタイプの抗体、例えば抗CD25抗体が使用される。ActRII受容体結合分子の非限定的な例には小分子、例えば、アプタマー、またはB細胞またはハイブリドーマおよびキメラ、CDR移植またはヒト抗体によって産生されるときに受容体、リガンドデコイ、および抗体をActRII受容体に結合するように設計される、および/または結合にさらされる他の核酸分子、またはそのいずれかの断片、例えばF(ab’)2およびFab断片、ならびに単鎖または単一ドメイン抗体が含まれる。好ましくは、ActRII受容体結合分子は、ActRII受容体への天然リガンドの結合に拮抗する(例えば、減少、阻害、減少、遅延する)。開示された方法、レジメン、キット、プロセス、使用および組成物のいくつかの実施形態では、ActRIIB受容体結合分子が使用される。
【0034】
別の実施形態では、組成物は、配列番号181のアミノ酸19~134(配列番号182)からなる結合ドメイン、または(a)配列番号181のアミノ酸78~83(WLDDFN-配列番号188);(b)配列番号181のアミノ酸76~84(GCWLDDFNC-配列番号186);(c)配列番号181のアミノ酸75~85(KGCWLDDFNCY-配列番号190);(d)配列番号181のアミノ酸52~56(EQDKR-配列番号189);(e)配列番号181のアミノ酸49~63(CEGEQDKRLHCYASW-配列番号187);(f)配列番号181のアミノ酸29~41(CIYYNANWELERT-配列番号191);(g)配列番号181のアミノ酸100~110(YFCCCEGNFCN-配列番号192);または(h)配列番号181のアミノ酸78~83(WLDDFN)、および配列番号181のアミノ酸52~56(EQDKR)を含むまたはからなるエピトープに結合する抗ActRII抗体を含む。
【0035】
またさらに別の代替実施形態では、上記の組成物は、ActRIIAに結合するよりも10倍以上の親和性でActRIIBに結合する抗ActRII抗体を含む。
【0036】
さらに、本開示は、抗ActRIIB抗体が、配列番号1~14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号15~28からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号29~42からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号43~56からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号57~70からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;および配列番号71~84からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3を含む組成物に関する。
【0037】
特定の実施形態において、本開示は、抗ActRII抗体が、(a)配列番号1の重鎖可変領域CDR1;配列番号15の重鎖可変領域CDR2;配列番号29の重鎖可変領域CDR3;配列番号43の軽鎖可変領域CDR1;配列番号57の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号71の軽鎖可変領域CDR3、(b)配列番号2の重鎖可変領域CDR1;配列番号16の重鎖可変領域CDR2;配列番号30の重鎖可変領域CDR3;配列番号44の軽鎖可変領域CDR1;配列番号58の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号72の軽鎖可変領域CDR3、(c)配列番号3の重鎖可変領域CDR1;配列番号17の重鎖可変領域CDR2;配列番号31の重鎖可変領域CDR3;配列番号45の軽鎖可変領域CDR1;配列番号59の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号73の軽鎖可変領域CDR3、(d)配列番号4の重鎖可変領域CDR1;配列番号18の重鎖可変領域CDR2;配列番号32の重鎖可変領域CDR3;配列番号46の軽鎖可変領域CDR1;配列番号60の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号74の軽鎖可変領域CDR3、(e)配列番号5の重鎖可変領域CDR1;配列番号19の重鎖可変領域CDR2;配列番号33の重鎖可変領域CDR3;配列番号47の軽鎖可変領域CDR1;配列番号61の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号75の軽鎖可変領域CDR3、(f)配列番号6の重鎖可変領域CDR1;配列番号20の重鎖可変領域CDR2;配列番号34の重鎖可変領域CDR3;配列番号48の軽鎖可変領域CDR1;配列番号62の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号76の軽鎖可変領域CDR3、(g)配列番号7の重鎖可変領域CDR1;配列番号21の重鎖可変領域CDR2;配列番号35の重鎖可変領域CDR3;配列番号49の軽鎖可変領域CDR1;配列番号63の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号77の軽鎖可変領域CDR3、(h)配列番号8の重鎖可変領域CDR1;配列番号22の重鎖可変領域CDR2;配列番号36の重鎖可変領域CDR3;配列番号50の軽鎖可変領域CDR1;配列番号64の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号78の軽鎖可変領域CDR3、(i)配列番号9の重鎖可変領域CDR1;配列番号23の重鎖可変領域CDR2;配列番号37の重鎖可変領域CDR3;配列番号51の軽鎖可変領域CDR1;配列番号65の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号79の軽鎖可変領域CDR3、(j)配列番号10の重鎖可変領域CDR1;配列番号24の重鎖可変領域CDR2;配列番号38の重鎖可変領域CDR3;配列番号52の軽鎖可変領域CDR1;配列番号66の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号80の軽鎖可変領域CDR3、(k)配列番号11の重鎖可変領域CDR1;配列番号25の重鎖可変領域CDR2;配列番号39の重鎖可変領域CDR3;配列番号53の軽鎖可変領域CDR1;配列番号67の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号81の軽鎖可変領域CDR3、(l)配列番号12の重鎖可変領域CDR1;配列番号26の重鎖可変領域CDR2;配列番号40の重鎖可変領域CDR3;配列番号54の軽鎖可変領域CDR1;配列番号68の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号82の軽鎖可変領域CDR3、(m)配列番号13の重鎖可変領域CDR1;配列番号27の重鎖可変領域CDR2;配列番号41の重鎖可変領域CDR3;配列番号55の軽鎖可変領域CDR1;配列番号69の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号83の軽鎖可変領域CDR3、または(n)配列番号14の重鎖可変領域CDR1;配列番号28の重鎖可変領域CDR2;配列番号42の重鎖可変領域CDR3;配列番号56の軽鎖可変領域CDR1;配列番号70の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号84の軽鎖可変領域CDR3を含む組成物を提供する。
【0038】
さらに別の実施形態では、上記の抗ActRII抗体は、(i)配列番号146~150および156~160からなる群から選択される少なくとも1つの配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する完全長重鎖アミノ酸配列、(ii)配列番号141~145および151~155からなる群から選択される少なくとも1つの配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する完全長軽鎖アミノ酸配列、または(iii)(a)配列番号99の可変重鎖配列および配列番号85の可変軽鎖配列;(b)配列番号100の可変重鎖配列および配列番号86の可変軽鎖配列;(c)配列番号101の可変重鎖配列および配列番号87の可変軽鎖配列;(d)配列番号102の可変重鎖配列および配列番号88の可変軽鎖配列;(e)配列番号103の可変重鎖配列および配列番号89の可変軽鎖配列;(f)配列番号104の可変重鎖配列および配列番号90の可変軽鎖配列;(g)配列番号105の可変重鎖配列および配列番号91の可変軽鎖配列;(h)配列番号106の可変重鎖配列および配列番号92の可変軽鎖配列;(i)配列番号107の可変重鎖配列および配列番号93の可変軽鎖配列;(j)配列番号108の可変重鎖配列および配列番号94の可変軽鎖配列;(k)配列番号109の可変重鎖配列および配列番号95の可変軽鎖配列;(l)配列番号110の可変重鎖配列および配列番号96の可変軽鎖配列;(m)配列番号111の可変重鎖配列および配列番号97の可変軽鎖配列;または(n)配列番号112の可変重鎖配列および配列番号98の可変軽鎖配列を含む。
【0039】
特定の態様において、本開示は上記組成物に関し、含まれる抗ActRII抗体が、(a)配列番号146の重鎖配列と配列番号141の軽鎖配列;(b)配列番号147の重鎖配列および配列番号142の軽鎖配列;(c)配列番号148の重鎖配列および配列番号143の軽鎖配列;(d)配列番号149の重鎖配列および配列番号144の軽鎖配列;(e)配列番号150の重鎖配列および配列番号145の軽鎖配列;(f)配列番号156の重鎖配列および配列番号151の軽鎖配列;(g)配列番号157の重鎖配列および配列番号152の軽鎖配列;(h)配列番号158の重鎖配列および配列番号153の軽鎖配列;(i)配列番号159の重鎖配列および配列番号154の軽鎖配列;または(j)配列番号160の重鎖配列および配列番号155の軽鎖配列を含む。
【0040】
本開示のさらなる主題は、(i)抗ActRII抗体が上記抗体の1つにより交差遮断するまたは交差遮断される、(ii)Fc領域の変異によりエフェクター機能が変化した、および/または(iii)上記の抗体の1つによって認識されるエピトープに結合する組成物に関する。
【0041】
またさらに別の代替実施形態では、上記の組成物は、ActRIIAに結合するよりも10倍以上の親和性でActRIIBに結合する抗ActRII抗体を含む。
【0042】
さらに別の実施形態では、開示された組成物は、pBW522(DSM22873)またはpBW524(DSM22874)によってコードされる抗ActRII抗体を含む。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1A 8週間にわたって毎週のCDD866または等方性コントロールAb注射のいずれかで治療した野生型C57BL/6マウスで測定したCDD866血漿レベルをグラフで示している。
図1B 対照群のマウス、アイソタイプAb(n=3)灰色の棒、および実験群マウスCDD866 Ab(n=3)
*p<0.05、黒い棒の両方の心臓重量/脛骨長比(HW/TL)をグラフで示している。これは、CDD866が成体野生型C57BL/6マウスの心臓質量を有意に増加させていないことを示している。
図1C 対照群のマウス(アイソタイプAb、灰色の棒)および実験群のマウス(CDD866 Ab [n=3]。
*p<0.05、黒色の棒)の両方における線維症の割合を示す棒グラフである。CDD866は心筋線維症を減少させるが、成体の野生型C57BL/6マウスではベースラインでの線維症の割合が顕著に低かった。
図1D 心筋細胞のサイズを強調したPAS染色心筋の代表的な顕微鏡写真を示している。
図1E CDD866が野生型動物の心筋細胞の大きさを有意に増加させないという所見をグラフで示している。データは、平均±標準偏差として表示される。灰色=対照群、アイソタイプAb(n=3)。黒=実験群、CDD866 Ab(n=3)。
*p<0.05
【
図2】
図2A %短縮率(FS)で測定される収縮機能がTAC(水平線の棒)で予想通り減少するが、TAC(対角線の棒)にさらされたCDD866治療動物では維持されていることをグラフで示している。SHAM+アイソタイプAb(n=7)、黒の棒。SHAM+CDD866 Ab(n=7)、灰色の棒;TAC+アイソタイプAb(n=10)、水平線の棒;TAC+CDD866 Ab(n=10)、対角線の棒。#p<0.01。
図2B 11週間のSHAMまたはTAC手術後の代表的な心エコー画像を示し、CDD866で治療されたTAC動物の収縮機能の維持を示している。
図2C 異なる治療群のマウスの肺重量/脛骨長比(LW/TL)をグラフで示している。SHAM+アイソタイプAb(n=7)、黒の棒。SHAM+CDD866 Ab(n=7)、灰色の棒;TAC+アイソタイプAb(n=10)、水平線の棒;TAC+CDD866 Ab(n=10)、対角線の棒。
*p<0.01。CDD866治療動物では肺の重量が減少する傾向があり、また肺うっ血が少ないことを示している(マウスモデルでの心不全の代理)。
図2D CDD866の治療による主要エンドポイント(生存または%FS<20%)の有意の減少をグラフで示している。
【
図3】
図3A 様々な治療群の血漿CDD866レベルをグラフで示している:TAC+アイソタイプ;TAC+CDD866;Sham+アイソタイプ;およびSham+CDD866。
図3B 心臓フォリスタチン様3(FSTL3)の発現がTACと共に増加することを示す棒グラフであり、このことは、この心臓損傷モデルにおいて心臓ActRII-A/Bシグナル伝達が増加することを示す。CDD866の治療は、心臓FSTL3の発現を減少させ、それがTACで誘導される心臓のActRII-A/Bシグナル伝達を効果的にブロックすることを示している。黒=SHAM+アイソタイプAb(n=7)。灰色=SHAM+CDD866 Ab(n=7)。水平線の棒=TAC+アイソタイプAb(n=10)。対角線の棒=TAC+CDD866 Ab(n=10)。
*p<0.05。#p<0.01。
図3C 病的心肥大遺伝子の相対的なmRNA発現がCDD866の治療で減少することをグラフで示している。ANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド);BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド);aMHC(アルファミオシン重鎖);bMHC(ベータミオシン重鎖)。黒=SHAM+アイソタイプAb(n=7)。灰色=SHAM+CDD866 Ab(n=7)。水平線の棒=TAC+アイソタイプAb(n=10)。対角線の棒=TAC+CDD866 Ab(n=10)。
*p<0.05。#p<0.01。
図3D TAC誘発性心不全における病理学的心線維症遺伝子の相対的なmRNA発現がCDD866の治療で減少することを示す棒グラフである。COL1(コラーゲン1型);CTGF(結合組織成長因子)。黒=SHAM+アイソタイプAb(n=7)。灰色=SHAM+CDD866 Ab(n=7)。水平線の棒=TAC+アイソタイプAb(n=10)。対角線の棒=TAC+CDD866 Ab(n=10)。
*p<0.05。#p<0.01。
【
図4】
図4A TACの後に収縮機能を発現し、その後8週間の毎週のCDD866注射で治療されたマウスで測定されたCDD866血漿レベルをグラフで示している。
図4B FSTL3(フォリスタチン様3)、アクチビン-A、MSTN(ミオスタチン)ACVR2A(アクチビンA受容体2A型)およびACVR2B(アクチビンA受容体2B型)の相対的なmRNA発現レベルを示す棒グラフである。このグラフは、CDD866による治療アプローチが心臓FSTL3発現を低下させることができることを示しており、CDD866がTACで誘発される心臓のActRII-A/Bシグナルを効果的にブロックできることを示している。
図4C %短縮率を週単位の時間に対してプロットしたグラフである。CDD866は、早くも治療後1週間でTAC誘発性心不全の収縮機能障害を改善し、段階的な改善を示している。
図4D CDD866がマウスモデルの心不全の代理マーカーである肺重量と脛骨の長さの比も減少させることをグラフで示している。灰色=TAC+アイソタイプAb。黒=TAC+CDD866 Ab。
*p<0.05。#p<0.01。LW/TL(肺重量/脛骨長比)。
【
図5】
図5A TAC後の週に対する壁厚をプロットしたグラフであり、CDD866処理で壁厚が徐々に増加することを示している。矢印はCDD866の開始を示す。
図5B 治療過程中の心室中部の連続エコー画像を示しており、アイソタイプ対CDD866の治療動物の心臓の成長の違いを示している。Cdd866を介した心臓の成長は、進行性の収縮機能障害に伴う異常なリモデリングを防ぐ。
図5C TAC+アイソタイプAb(灰色の棒)とTAC+CDD866 Ab(黒の棒)で処理したマウスの両方について、心臓重量/脛骨長比(HW/TL)を示したグラフである。TACモデルの心臓の質量をCDD866が増加させたことを示している。
*p<0.05。#p<0.01。
図5D TAS+アイソタイプAbおよびTAC+CDD866Ab治療マウスの両方の心筋細胞サイズを強調するPAS染色心筋の顕微鏡写真を示す。
図5E TAC+アイソタイプAb(灰色)とTAC+CDD866 Ab(黒)の両方の治療でマウスの心筋細胞断面積を示したグラフである。これは、CDD866がTACの心筋細胞増殖を増加させることを示す。
*p<0.05。#p<0.01。
【
図6】
図6A 病的肥大に関連する遺伝子のmRNA発現がCDD866の治療とともに減少することを示すグラフである。ANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド);BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド);αMHC(アルファミオシン重鎖);βMHC(ベータミオシン重鎖)。TAC+アイソタイプAb(灰色);TAC+CDD866 Ab(黒)が示されている。
*p<0.05。#p<0.01。
図6B 週単位の時間に対するマウスの短縮率、壁厚および体重をプロットしている。矢印=単回投与のタイミング;破線=CDD866治療なしで予想される軌道。プロットは、心臓の成長と体重に対するCDD866の影響が急速に発生し、一時的で可逆的であることを示している。CDD866の単回投与の効果も1~2週間以内に発生し、少なくとも6週間持続する。
図6C マッソントリクローム染色された心筋の顕微鏡写真を示し(青=線維症、赤=筋肉)、CDD866で治療されたTACマウスの心臓線維症の減少を示している。
図6D TAC+アイソタイプAb(灰色)およびTAC+CDD866 Ab(黒色)による線維化率を示す棒グラフであり、CDD866の治療による心筋線維症の減少傾向を示している。
*p<0.05。#p<0.01。
【
図7】
図7A p-SMAD3およびGAPDH抗体でプローブした腓腹筋のサンプルのウェスタンブロットである。TACおよびその後のCDD866(TT-2からTT-10)またはアイソタイプコントロールAb(TT-11からTT-20)による8週間の治療後の心機能障害を確認したC57BL/6マウスからサンプルを収集した。この図は、CDD866がTACを介した心不全のマウスモデルの骨格筋のActRII-A/Bシグナル伝達を減少させることを全体的に示している。C2C12細胞におけるMSTN刺激は、アッセイの陽性対照として使用した。
図7B ベースラインからのマウスの体重の変化の割合が、治療後の週に対して測定されているグラフである。ひし形のデータポイント(赤)は、TAC+アイソタイプAbを示す。正方形のデータポイント(青)は、TAC+CDD866 Abを示す。
*p<0.05。#p<0.01。CDD866は、全体の体重を徐々に増加させる。筋肉量の増加によるものと思われる。
図7C 様々な骨格筋群、EDL(長指伸筋)、腓腹筋および脛骨筋の筋肉量の制御からの変化率をグラフで示したものである。赤は、TAC+アイソタイプAbを示す。青はTAC+CDD866 Abを示す。
*p<0.05。#p<0.01。CDD866は全体として3つの骨格筋群の質量を増加させる。
図7D 線維分布の割合を連続的な組織切片に対してプロットしたグラフであり、CDD866が骨格筋細胞サイズを増加させることを示している。赤はTAC+アイソタイプAb治療を示す。青はTAC+CDD866 Ab治療を示す。
*p<0.05。#p<0.01。
図7E 線維分布の割合が、連続した組織切片に対してプロットされている4つのグラフを示している。これは、CDD866が骨格筋で複数の線維タイプの切り替えを誘発することを示している。赤はTAC+アイソタイプAb治療を示す。青はTAC+CDD866 Ab治療を示す。
【
図8】
図8A αMHC遺伝子(拡張型心筋症のマウスモデル)にミスセンス変異(F764L)を有するマウスの時間に対する%短縮率(FS)の変化を示すグラフである。12週間のCDD866の治療は、収縮機能の増加に向く緩やかな傾向をもたらした。灰色=アイソタイプAb。黒=CDD866 Ab。
*p<0.05。#p<0.01。
図8B CDD866(黒)またはアイソタイプAb(灰色)のいずれかで治療されたこれらのマウスの心臓組織におけるActRII経路に関連する様々な遺伝子の相対的なmRNA発現レベルを示す棒グラフである。CDD866では心臓FSTL3の発現が減少する傾向があり、心臓におけるActRII受容体シグナル伝達の阻害が示唆されている。
*p<0.05。#p<0.01。
図8C アイソタイプAbまたはCDD866 Abで治療されたマウスにおける病的肥大に関連する遺伝子の相対的なmRNA発現レベルを示す棒グラフである。
*p<0.05。#p<0.01。灰色=アイソタイプAb。黒=CDD866 Ab。
*p<0.05。#p<0.01。ANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド);BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド);αMHC(アルファミオシン重鎖);βMHC(ベータミオシン重鎖)。病理学的肥大遺伝子発現プロファイルに有意差はない。
【0044】
定義
本開示がより容易に理解され得るために、特定の用語を最初に定義する。追加の定義は、詳細な説明全体で説明されている。
【0045】
「comprising(含む)」という用語は、「including(含む)」を意味する。例えばXを「含む」組成物は、Xのみからなるのでも、X+Yなど、何か追加のものを含んでいるのでもよい。
【0046】
数値xに関する「約」という用語は、例えばx+10%を意味する。
【0047】
以下は、ActRII結合分子、より好ましくはActRIIに対するアンタゴニスト抗体、例えばビマグルマブによる治療の可能な効果を評価するための可能な前臨床治療計画を例示する。
【0048】
治療は、圧力過負荷誘発性心肥大および心不全で一般的に使用される実験モデルである大動脈縮窄術(TAC)にさらされたマウスを使用することによって例示される。当業者は、他の種、特にヒトに対して適切な実験または投与計画を設定する方法を知っている。霊長類の研究では、抗ActRII抗体、例えばビマグルマブは、静脈注射によりオスとメスのカニクイザルに最大3ヶ月間、週に1回投与することができる。32匹のカニクイザル(16/性)は4つの治療群(3~5動物/性/群)の1つに割り当てることができ、13週間に亘り週に1回、10または30または100mg/kgで、ビヒクルまたはActRIIB抗体、例えばBYM338の静脈注射を投与することができる(合計14用量。心疾患の症状に基づいて用量を選択する)。
【0049】
「ActRIIA」および「ActRIIB」という用語は、アクチビン受容体を示す。アクチビンは、少なくとも2つのI型(IおよびIB)および2つのII型(IIAおよびIIB、別名ACVR2AおよびACVR2B)受容体を含む受容体セリンキナーゼのヘテロダイマー複合体を介してシグナルを送る。これらの受容体はすべて膜貫通タンパク質であり、システインリッチ領域を含むリガンド結合細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、およびセリン/スレオニン特異性が予測される細胞質ドメインで構成されている。I型受容体はシグナル伝達に不可欠であるが、II型受容体はリガンドの結合とタイプI受容体の発現/補充に必要である。I型およびII型受容体は、リガンド結合後に安定した複合体を形成し、II型受容体によるI型受容体のリン酸化をもたらす。アクチビン受容体IIB(ActRIIB)はミオスタチンの受容体である。アクチビン受容体IIA(ActRIIA)もミソスタチンの受容体である。ActRIIBまたはActIIB受容体という用語は、配列番号181(AAC64515.1、GI:3769443)で定義されるヒトActRIIBを示す。研究グレードのポリクローナルおよびモノクローナル抗ActRIIB抗体は、R&D Systems(登録商標)、米国ミネソタ州によって製造されたものなど、当技術分野で知られている。もちろん、他の種のActRIIBに対して抗体を作成し、それらの種の病的状態の治療に使用することができる。
【0050】
「免疫応答」という用語は、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、および侵入する病原体、病原体に感染した細胞または組織、癌細胞、または自己免疫または病理学的炎症の場合、正常なヒトの細胞または組織の人体への選択的損傷、破壊、または人体からの排除に至る、上記の細胞または肝臓によって産生される可溶性高分子(例えば、抗体、サイトカイン、および補体)の作用を示す。
【0051】
「シグナル伝達活性」とは、一般に成長因子の受容体への結合などのタンパク質間の相互作用によって開始される生化学的因果関係を指し、細胞のある部分から細胞の別の部分へのシグナルの伝達をもたらす。一般に、伝達には、シグナル伝達を引き起こす一連の反応における1つまたは複数のタンパク質の1つまたは複数のチロシン、セリン、またはトレオニン残基の特異的リン酸化が含まれる。最後から2番目のプロセスには通常、核イベントが含まれ、遺伝子発現の変化をもたらす。
【0052】
本明細書で言及される「抗体」という用語には、抗体全体および任意の抗原結合断片(すなわち「抗原結合部分」)またはその単鎖が含まれる。自然に発生する「抗体」は、ジスルフィド結合により相互に接続された少なくとも2つの重(H)鎖と2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略記)および重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、CH1、CH2、およびCH3の3つのドメインで構成されている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、CLという1つのドメインで構成されている。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存的な領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分化できる。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置された3つのCDRと4つのFRで構成されている。重鎖と軽鎖の可変領域には、抗原と相互作用する結合ドメインが含まれている。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的な補体系の最初の成分(Clq)を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介できる。
【0053】
本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗原部分」)という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の完全長または1つまたは複数の断片(例えばActRIIBの部分)を示す。抗体の抗原結合機能は完全長の抗体の断片によって実行され得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に含まれる結合断片の例には、Fab断片、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片;F(ab)2断片、2つのFab断片を含む二価断片であり、それぞれが同じ抗原に結合し、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結されている二価断片、VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片;VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.,1989 Nature 341:544-546);単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。
【0054】
さらに、Fv断片の2つのドメインVLとVHは別々の遺伝子によってコードされているが、それらは組換え法を使用して、合成リンカーによって結合できる。それは、VLおよびVH領域が対になって一価分子を形成する単一のタンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Bird et al.,1988 Science 242:423-426;および Huston et al.,1988 Proc.Natl.Acad.Sci.85:5879-5883を参照)として作成できる。そのような一本鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合領域」という用語に含まれることが意図されている。これらの抗体断片は、当業者に知られている従来の技術を使用して得られ、断片は、無傷の抗体と同じように、有用性についてスクリーニングされる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を示す(例えば、ActRIIBに特異的に結合する単離された抗体は、ActRIIB以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。ただし、ActRIIBに特異的に結合する単離された抗体は、他の種のActRIIB分子など、他の抗原と交差反応する可能性がある。さらに、単離された抗体は、他の細胞の物質および/または化学物質を実質的に含まない可能性がある。
【0056】
「交差遮断」、「交差遮断される」および「交差遮断している」という用語は、本明細書では互換的に使用され、標準的な競合結合アッセイにおいて抗体または他の結合剤がActRIIBへの他の抗体または結合剤への結合、特にリガンド結合ドメインへの結合を妨害する能力を意味する。
【0057】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を示す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性と親和性を示す。
【0058】
本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」という用語は、フレームワークおよびCDR領域の両方がヒト起源の配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことを意図している。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域もそのようなヒト配列に由来する。例えば、ヒト生殖系列配列、またはヒト生殖系列配列の突然変異バージョン、またはヒトフレームワーク配列分析に由来するコンセンサスフレームワーク配列を含む抗体に由来する。例えば、Knappik,et al.(2000.J Mol Biol 296,57-86)に記載されているようにである。本開示のヒト抗体は、ヒト配列によってコードされていないアミノ酸残基を含み得る(例えば、インビトロでのランダムまたは部位特異的突然変異誘発またはインビボでの体細胞突然変異により導入された突然変異)。しかし、本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトのフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図しない。
【0059】
「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、フレームワークおよびCDR領域の両方がヒトの配列に由来する可変領域を有する単一の結合特異性を示す抗体を示す。一実施形態では、ヒトモノクローナル抗体は、トランスジェニック非ヒト動物から得られたB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。例えば、不死化細胞に融合したヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニックマウスが挙げられる。
【0060】
本明細書で使用される場合、「組換えヒト抗体」という用語は、組換え手段によって調製、発現、作成または単離されるすべてのヒト抗体を含み、例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子またはそれから調製されたハイブリドーマについてトランスジェニックまたはトランスクロモソミックである動物(例えばマウス)から単離された抗体、ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から、例えばトランスフェクトーマから単離された抗体、組換え、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体、およびヒト免疫グロブリン遺伝子、配列のすべてまたは一部を他のDNA配列に対してスプライシングすることを含む他のいずれかの手段により調製、発現、作成または単離された抗体がある。そのような組換えヒト抗体は、フレームワークおよびCDR領域がヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。しかし、特定の実施形態では、そのような組換えヒト抗体は、インビトロ突然変異誘発(または、ヒトIg配列のトランスジェニック動物が使用される場合、インビボ体細胞突然変異誘発)にさらすことができ、したがって組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列VHおよびVL配列に由来し、関連しているが、インビボでヒト抗体生殖細胞系列のレパートリー内に自然には存在できない配列である。
【0061】
本明細書で使用される場合、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によって提供される抗体クラス(例えば、IgM、IgE、IgG、例えばIgG1またはIgG2など)を示す。
【0062】
「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」という語句は、本明細書では「抗原に特異的に結合する抗体」という用語と互換的に使用される。
【0063】
本明細書で使用される場合、「ActRIIBポリペプチドに特異的に結合する」抗体は、約100nM以下、約10nM以下、約1nM以下のKDでヒトActRIIBポリペプチドに結合する抗体を指すことを意図している。「ActRIIB以外の抗原と交差反応する」抗体とは、約10×10-9M以下、約5×10-9M以下、または約2×10-9M以下のKDでその抗原に結合する抗体を示すことを意図している。「特定の抗原と交差反応しない」抗体は、約1.5×10-8M以上のKD、または約5-10×10-8MのKDで、または約1×10-7M以上である当該の抗原に結合する抗体を指すことを意図している。特定の実施形態において、抗原と交差反応しないそのような抗体は、標準的な結合アッセイにおいてこれらのタンパク質に対して本質的に検出不可能な結合を示す。KDは、Biacore(登録商標)システムやSolution Equilibrium Titrationなどのバイオセンサーシステムを使用して求められ得る。
【0064】
本明細書で使用される場合、「アンタゴニスト抗体」という用語は、ミオスタチン、またはアクチビンもしくはGDF-11などの他のActRIIBリガンドの存在下でActRIIB誘導シグナル伝達活性を阻害する抗体、および/または、ミオスタチンまたはアクチビンやGDF-11などの他のActRIIAリガンドの存在下でActRIIA誘導シグナル伝達活性を阻害する抗体を指すことを意図している。これを検出するアッセイの例には、ミオスタチン誘発性シグナル伝達の阻害(例えば、Smad依存性レポーター遺伝子アッセイによる)、ミオスタチン誘発性Smadリン酸化の阻害(P-Smad ELISA)、およびミオスタチン誘発性の阻害の骨格筋細胞分化の阻害(例えばクレアチンキナーゼアッセイによる)が挙げられる。
【0065】
いくつかの実施形態において、抗体は、約10nM以下、約1nM以下、または約100pM以下のIC50でSmad依存性レポーター遺伝子アッセイで測定されるものとして、ミオスタチン誘発性シグナル伝達を阻害する。
【0066】
本明細書で使用される場合、「アゴニスト活性がない」抗体は、ミオスタチン誘発性シグナル伝達の阻害(例えば、Smad依存性レポーター遺伝子アッセイによる)、ミオスタチン誘発性Smadリン酸化の阻害(P-Smad ELISA)、およびミオスタチン誘発性の阻害の骨格筋細胞分化の阻害(例えばクレアチンキナーゼアッセイによる)など、細胞ベースのアッセイにおいてミオスタチンの非存在下でActRIIB媒介シグナル伝達活性を顕著に増加させない抗体を指すことを意図している。
【0067】
本明細書で使用される場合、「Kassoc」または「Ka」という用語は、特定の抗体・抗原相互作用の会合の速度を指すことを意図しており、一方で本明細書で使用される場合、「Kdis」または「Kd」という用語は、特定の抗体・抗原相互作用の解離の速度を指すことを意図している。本明細書で使用される場合、「KD」という用語は、KdとKaの比(すなわちKd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表される解離定数を指すことを意図している。抗体のKD値は、当技術分野で十分に確立された方法を使用して求めることができる。抗体のKDを求める方法は、Biacore(登録商標)のバイオセンサーシステム、またはSolution Equilibrium Titration(SET)などの表面プラズモン共鳴を使用することによるものである(Friguet B et al.(1985) J.Immunol Methods;77(2):305-319、およびHanel C et al.(2005) Anal Biochem;339(1):182-184を参照されたい)。
【0068】
本明細書で使用される場合、「親和性」という用語は、単一の抗原部位での抗体と抗原との間の相互作用の強さを示す。各抗原部位内で、抗体の「アーム」の可変領域は、多数の部位で抗原と弱い非共有結合力を介して相互作用する。相互作用が多いほど、親和性は強くなる。
【0069】
本明細書で使用される場合、「結合力」という用語は、抗体-抗原複合体の全体的な安定性または強度の有益な尺度を示す。それは、抗体エピトープ親和性、抗原と抗体の両方の原子価、相互作用する部分の構造的配置、という3つの主要な要因によって制御される。最終的に、これらの要因は抗体の特異度、つまり特定の抗体が正確な抗原エピトープに結合する可能性を規定する。
【0070】
本明細書で使用される場合、「ADCC」または「抗体依存性細胞傷害性」活性という用語は、ヒトB細胞の枯渇活性を示す。ADCC活性は、当技術分野で公知のヒトB細胞枯渇アッセイにより測定され得る。
【0071】
より高い結合力のプローブを取得するために、二量体コンジュゲート(FACSマーカーに結合した抗体タンパク質の2つの分子)を構築することができ、したがってFACSにより低親和性相互作用(生殖系列抗体など)をより簡単に検出できる。さらに、抗原結合の結合力を増加させる別の手段は、抗ActRIIB抗体の本明細書に記載の構築物のいずれかの二量体、三量体または多量体を生成することを含む。そのような多量体は、例えば、天然のCからN末端への結合を模倣することにより、またはそれらの定常領域を通して一緒に保持される抗体二量体を模倣することにより、個々のモジュール間の共有結合により生成され得る。Fc/Fc界面に設計される結合は、共有結合でも非共有結合でもよい。さらに、Fc以外の二量体化または多量体化パートナーをActRIIBハイブリッドで使用して、このような高次構造を作成できる。例えば、国際公開第2004/039841号パンフレットに記載されている三量体化ドメインまたは国際公開第98/18943号パンフレットに記載されている五量体化ドメインなどの多量体化ドメインを使用することが可能である。
【0072】
本明細書で使用する場合、抗体の「選択性」という用語は、特定の標的ポリペプチドに結合するが、密接に関連するポリペプチドには結合しない抗体を示す。
【0073】
本明細書で使用される場合、抗体に対する「高親和性」という用語は、標的抗原に対して1nM以下のKDを有する抗体を示す。本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。
【0074】
「非ヒト動物」という用語には、すべての脊椎動物が含まれる。例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ネズミ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などの哺乳類および非哺乳類が挙げられる。
【0075】
本明細書で使用される場合、「最適化された」という用語は、産生細胞または生物、一般に真核細胞、例えばピキアの細胞、トリコデルマの細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはヒトの細胞において好ましいコドンを使用して、ヌクレオチド配列がアミノ酸配列をコードするように変更されたことを意味する。最適化されたヌクレオチド配列は、「親」配列としても知られている開始ヌクレオチド配列によって最初にコードされたアミノ酸配列を完全にまたは可能な限り保持するように設計されている。本明細書の最適化された配列は、CHO哺乳動物細胞において好ましいコドンを有するように設計されているが、本明細書では他の真核細胞におけるこれらの配列の最適化された発現も想定される。最適化されたヌクレオチド配列によってコードされたアミノ酸配列は、最適化されたものとも呼ばれる。
【発明を実施するための形態】
【0076】
ActRII受容体、例えばビマグルマブを対象とした抗体は、これらの受容体を介したシグナル伝達を低下させ、心疾患の予防および/または治療をもたらすことができることが発見されている。
【0077】
したがって、一態様では、本開示は、ActRIIAまたはActRIIB結合分子、例えば、ビマグルマブまたは前記抗体の抗原結合部分を含む機能性タンパク質を含む組成物を提供する。結合分子は、ActRIIB結合分子、例えばヒトActRIIBであってもよい。ヒトActRIIBのポリペプチド配列は、配列番号181(AAC64515.1、GI:3769443)に記載されている。一実施形態では、抗体または機能性タンパク質は、ヒトまたはラクダ科動物などの起源を有する哺乳動物に由来する。したがって、開示された組成物に含まれる抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体、またはヒト化抗体であり得る。特定の実施形態では、開示された組成物に含まれる抗ActRIIB抗体は、標的タンパク質ActRIIBに特異的であり、ActRIIBまたはActRIIBの断片に結合する抗原結合領域を有するものとして特徴付けられる。
【0078】
一実施形態では、開示された組成物に含まれる抗体は、アゴニスト活性がない、または低いアゴニスト活性であるActRIIアンタゴニストである。別の実施形態で、開示された組成物に含まれる抗体または機能的断片は、標的タンパク質ActRIIに結合し、ミオスタチンのActRIIへの結合を基礎レベルまで減少させる。この実施形態のさらなる態様において、開示された組成物に含まれる抗体または機能的断片は、ミオスタチンがActRIIに結合することを完全に防ぐ。さらなる実施形態において、開示された組成物に含まれる抗体または機能的断片は、Smad活性化を阻害する。さらなる実施形態では、開示される組成物に含まれる抗体または機能的断片は、Smad依存性経路を介した骨格分化のアクチビン受容体IIB型媒介ミオスタチン誘導性阻害を阻害する。
【0079】
結合は、抗体による拮抗作用または作動作用である活性を測定するために使用できる、1つまたは複数のアッセイによって判定され得る。好ましくは、アッセイは、ELISAによるActRIIBへのミオスタチンの結合の阻害、ミオスタチン誘導性シグナル伝達の阻害(例えば、Smad依存性レポーター遺伝子アッセイによる)、ミオスタチン誘導性Smadリン酸化(P-Smad ELISA)の阻害、および骨格筋細胞の分化のミオスタチン誘導性阻害の阻害(例えば、クレアチンキナーゼアッセイによる)を含む、ActRIIBに対する抗体の効果の少なくとも1つを測定する。
【0080】
一実施形態では、本開示は、ActRIIBのミオスタチン結合領域(すなわち、リガンド結合ドメイン)に特異的に結合する抗体を含む組成物を提供する。このリガンド結合ドメインは、配列番号181のアミノ酸19~134からなり、本明細書では配列番号182に割り当てられている。リガンド結合ドメインは、以下で説明するいくつかのエピトープを含む。
【0081】
一実施形態では、開示された組成物に含まれる抗体は、約100nM以下、約10nM以下、約1nM以下のKDでActRIIBに結合する。好ましくは、開示された組成物に含まれる抗体は、100pM以下(すなわち、約100pM、約50pM、約10pM、約2pM、約1pM以下)の親和性でActRIIBに結合する。一実施形態において、開示された組成物に含まれる抗体は、約1~約10pMの親和性でActRIIBに結合する。
【0082】
一実施形態では、開示された組成物に含まれる抗体は、ActRIIB関連タンパク質と交差反応せず、特にヒトActRIIA(NP_001607.1、GI:4501897)と交差反応しない。別の実施形態では、開示された組成物に含まれる抗体は、Act RIIAと交差反応し、同等の親和性、またはActRIIAに結合するよりも約1、2、3、4または5倍大きい親和性、より好ましくは約10倍、さらにより好ましくは約20倍、30倍、40倍または50倍、さらにより好ましくは約100倍でActRIIBに結合する。
【0083】
一実施形態では、開示された組成物に含まれる抗体は、100pM以上(すなわち、約250pM、約500pM、約1nM、約5nM以上)の親和性でActRIIAに結合する。
【0084】
一実施形態では、開示された組成物に含まれる抗体はIgG2アイソタイプのものである。
【0085】
別の実施形態において、開示された組成物に含まれる抗体はIgG1アイソタイプのものである。さらなる実施形態において、開示された組成物に含まれる抗体はIgG1アイソタイプのものであり、Fc領域の変異によりエフェクター機能が変化している。該変化したエフェクター機能は、ADCCおよびCDC活性の低下であり得る。一実施形態において、前記変化したエフェクター機能は、サイレンシングされたADCCおよびCDC活性である。
【0086】
別の関連する実施形態では、開示された組成物に含まれる抗体は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)活性またはCDC活性のない完全ヒトまたはヒト化IgG1抗体であり、配列番号181のアミノ酸19~134からなるActRIIBの領域に結合する。
【0087】
別の関連する実施形態では、開示された組成物に含まれる抗体は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)活性またはCDC活性の低下した完全ヒトまたはヒト化IgG1抗体であり、配列番号181のアミノ酸19~134からなるActRIIBの領域に結合する。
【0088】
本開示はまた、上記の心疾患などの心疾患の予防および/または治療に使用するためのヒトまたはヒト化抗ActRIIB抗体を含む組成物に関する。
【0089】
特定の実施形態では、開示された組成物に含まれる抗体は、特定の重鎖および軽鎖の配列に由来し、かつ/または特定のアミノ酸配列を含むCDR領域などの特定の構造的特徴を含む。本開示は、単離されたActRIIB抗体、そのような抗体の作製方法、そのような抗体を含むイムノコンジュゲートおよび多価または多重特異性分子、および抗体、イムノコンジュゲートまたは二重特異性分子を含む医薬組成物を提供する。
【0090】
代替実施形態では、本開示は以下の態様に関する。
【0091】
1.心臓弁膜症、高血圧、冠動脈疾患、糖尿病、老化、不整脈、周産期心筋症、ストレス心筋症、毒性または感染性因子、および他の形態の遺伝性または特発性心筋症によって関連付けられるまたは引き起こされる心不全を含む心不全の治療および/または予防に使用するためのActRII受容体アンタゴニスト。
1.
【0092】
2.ActRIIアンタゴニストが約3~10mg/kgの用量でそれを必要とする患者に投与されることになる、態様1による使用のためのActRII受容体アンタゴニスト。
【0093】
3.前記ミオスタチンアンタゴニストが約3または約10mg/kg体重の用量で投与されることになる、態様2による使用のためのActRII受容体アンタゴニスト。
【0094】
あるいは、ActRII受容体アンタゴニストは、約3、4、5、6、7、8、9または約10mg/kg体重の用量で投与されることになる。
【0095】
4.前記ActRII受容体アンタゴニストが静脈内または皮下投与されることになる、態様1~3による使用のためのActRII受容体アンタゴニスト。
【0096】
5.前記ActRII受容体アンタゴニストアンタゴニストが4週間ごとに投与されることになる、態様1~4のいずれか1つによる使用のためのActRII受容体アンタゴニスト。
【0097】
あるいは、ActRII受容体アンタゴニストは8週間ごとに投与することができる。
【0098】
6.前記ActRII受容体アンタゴニストが少なくとも3ヶ月間投与されることになる、態様1~5のいずれか1つによる使用のためのActRII受容体アンタゴニスト。
【0099】
7.前記ActRII受容体アンタゴニストが最大12ヶ月間投与されることになる、態様1~6のいずれか1つによる使用のためのActRII受容体アンタゴニスト。
【0100】
好ましくは、ActRII受容体アンタゴニストアンタゴニストは、少なくともまたは最大3、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヶ月間投与されることになる。
【0101】
8.心不全を有するまたは心不全を発症するリスクがある対象に有効量のActRII受容体アンタゴニストを投与することを含む、心不全を治療および/または予防する方法。
【0102】
多くの場合、心不全は、心臓弁膜症、冠動脈心疾患、高血圧、糖尿病、老化、不整脈、周産期心筋症、ストレス心筋症、毒性および感染性因子への曝露、および他の形態の遺伝性または特発性心筋症などの状態によって引き起こされるまたは関連する場合がある。心不全を発症するリスクのある患者は、これらの状態の1つ以上を抱えている可能性がある。
【0103】
9.心臓弁膜症、高血圧、冠動脈疾患、糖尿病、老化、不整脈、周産期心筋症、ストレス心筋症、毒性および感染性因子、ならびに他の形態の遺伝性または特発性心筋症からなる群から選択される状態に関連する構造的および/または機能的な心臓の異常を治療する方法であって、有効量のActRII受容体アンタゴニストを、前記状態に関連する前記構造的および/または機能的な心臓の異常を有する対象に投与することを含む方法。
【0104】
10.ActRII受容体アンタゴニストを、それを必要とする患者に約3~10mg/kgの用量で投与することを含む、態様8または9に記載の方法。
【0105】
11.ActRII受容体アンタゴニストを、それを必要とする患者に約3または約10mg/kg体重の用量で投与することを含む、態様8または9に記載の方法。
【0106】
12.ActRII受容体アンタゴニストを静脈内または皮下に投与することを含む、態様8または9に記載の方法。
【0107】
13.ActRII受容体アンタゴニストを4週間ごとに投与することを含む、態様8~10のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
14.ActRII受容体アンタゴニストを少なくとも3ヶ月間投与することを含む、態様8~13のいずれか1つに記載の方法。
【0109】
15.ActRII受容体アンタゴニストを最大12ヶ月間投与することを含む、態様14に記載の方法。
【0110】
16.ActRII受容体アンタゴニストが抗ActRII受容体抗体である、態様1~15のいずれか1つによる使用または方法のためのActRII受容体アンタゴニスト。
【0111】
17.抗ActRII受容体抗体がビマグルマブである、態様1~16のいずれか1つによる使用または方法のためのActRII受容体アンタゴニスト。
【0112】
18.ActRII受容体アンタゴニストが、配列番号181のアミノ酸19~134(配列番号182)からなるActRIIBのエピトープに結合する抗ActRII抗体である、態様17による使用または方法のためのActRII受容体アンタゴニスト。
【0113】
19.抗ActRII抗体が、
(a)配列番号181のアミノ酸78~83(WLDDFN-配列番号188);
(b)配列番号181のアミノ酸76~84(GCWLDDFNC-配列番号186);
(c)配列番号181のアミノ酸75~85(KGCWLDDFNCY-配列番号190);
(d)配列番号181のアミノ酸52~56(EQDKR-配列番号189);
(e)配列番号181のアミノ酸49~63(CEGEQDKRLHCYASW-配列番号187);
(f)配列番号181のアミノ酸29~41(CIYYNANWELERT-配列番号191);
(g)配列番号181のアミノ酸100~110(YFCCCEGNFCN-配列番号192);または
(h)配列番号181のアミノ酸78~83(WLDDFN)、および配列番号181のアミノ酸52~56(EQDKR)
を含むまたはからなるActRIIBのエピトープに結合する、態様16~18のいずれか1つによる使用または方法のためのActRII受容体アンタゴニスト。
【0114】
20.a)抗ActRIIB抗体であって、
(a)配列番号181のアミノ酸78~83(WLDDFN-配列番号188);
(b)配列番号181のアミノ酸76~84(GCWLDDFNC-配列番号186);
(c)配列番号181のアミノ酸75~85(KGCWLDDFNCY-配列番号190);
(d)配列番号181のアミノ酸52~56(EQDKR-配列番号189);
(e)配列番号181のアミノ酸49~63(CEGEQDKRLHCYASW-配列番号187);
(f)配列番号181のアミノ酸29~41(CIYYNANWELERT-配列番号191);
(g)配列番号181のアミノ酸100~110(YFCCCEGNFCN-配列番号192);または
(h)配列番号181のアミノ酸78~83(WLDDFN)、および配列番号181のアミノ酸52~56(EQDKR)
を含むActRIIBのエピトープに結合する抗ActRIIB抗体;
および
b)配列番号181のアミノ酸78~83(WLDDFN-配列番号188)を含むActRIIBのエピトープに結合するActRIIBに対するアンタゴニスト抗体;
(b)配列番号181のアミノ酸76~84(GCWLDDFNC-配列番号186);
(c)配列番号181のアミノ酸75~85(KGCWLDDFNCY-配列番号190);
(d)配列番号181のアミノ酸52~56(EQDKR-配列番号189);
(e)配列番号181のアミノ酸49~63(CEGEQDKRLHCYASW-配列番号187);
(f)配列番号181のアミノ酸29~41(CIYYNANWELERT-配列番号191);
(g)配列番号181のアミノ酸100~110(YFCCCEGNFCN-配列番号192);または
(h)配列番号181のアミノ酸78~83(WLDDFN)、および配列番号181のアミノ酸52~56(EQDKR)、ここで抗体は約2pMのKDを有する、
からなる群から選択される、態様16~19のいずれかによる使用のためのActRII受容体アンタゴニスト。
【0115】
21.抗体がActRIIAに結合するよりも10倍以上高い親和性でActRIIBに結合する、態様16~20のいずれかに記載の使用または方法のためのActRII受容体アンタゴニスト。
【0116】
22.抗体が、配列番号1~14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号15~28からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号29~42からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号43~56からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号57~70からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;および配列番号71~84からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3を含む、態様16~21のいずれか1つによる使用または方法のためのActRII受容体アンタゴニスト。
【0117】
23.抗体が
(a)配列番号1の重鎖可変領域CDR1;配列番号15の重鎖可変領域CDR2;配列番号29の重鎖可変領域CDR3;配列番号43の軽鎖可変領域CDR1;配列番号57の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号71の軽鎖可変領域CDR3、
(b)配列番号2の重鎖可変領域CDR1;配列番号16の重鎖可変領域CDR2;配列番号30の重鎖可変領域CDR3;配列番号44の軽鎖可変領域CDR1;配列番号58の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号72の軽鎖可変領域CDR3、
(c)配列番号3の重鎖可変領域CDR1;配列番号17の重鎖可変領域CDR2;配列番号31の重鎖可変領域CDR3;配列番号45の軽鎖可変領域CDR1;配列番号59の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号73の軽鎖可変領域CDR3、
(d)配列番号4の重鎖可変領域CDR1;配列番号18の重鎖可変領域CDR2;配列番号32の重鎖可変領域CDR3;配列番号46の軽鎖可変領域CDR1;配列番号60の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号74の軽鎖可変領域CDR3、
(e)配列番号5の重鎖可変領域CDR1;配列番号19の重鎖可変領域CDR2;配列番号33の重鎖可変領域CDR3;配列番号47の軽鎖可変領域CDR1;配列番号61の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号75の軽鎖可変領域CDR3、
(f)配列番号6の重鎖可変領域CDR1;配列番号20の重鎖可変領域CDR2;配列番号34の重鎖可変領域CDR3;配列番号48の軽鎖可変領域CDR1;配列番号62の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号76の軽鎖可変領域CDR3、
(g)配列番号7の重鎖可変領域CDR1;配列番号21の重鎖可変領域CDR2;配列番号35の重鎖可変領域CDR3;配列番号49の軽鎖可変領域CDR1;配列番号63の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号77の軽鎖可変領域CDR3、
(h)配列番号8の重鎖可変領域CDR1;配列番号22の重鎖可変領域CDR2;配列番号36の重鎖可変領域CDR3;配列番号50の軽鎖可変領域CDR1;配列番号64の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号78の軽鎖可変領域CDR3、
(i)配列番号9の重鎖可変領域CDR1;配列番号23の重鎖可変領域CDR2;配列番号37の重鎖可変領域CDR3;配列番号51の軽鎖可変領域CDR1;配列番号65の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号79の軽鎖可変領域CDR3、
(j)配列番号10の重鎖可変領域CDR1;配列番号24の重鎖可変領域CDR2;配列番号38の重鎖可変領域CDR3;配列番号52の軽鎖可変領域CDR1;配列番号66の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号80の軽鎖可変領域CDR3、
(k)配列番号11の重鎖可変領域CDR1;配列番号25の重鎖可変領域CDR2;配列番号39の重鎖可変領域CDR3;配列番号53の軽鎖可変領域CDR1;配列番号67の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号81の軽鎖可変領域CDR3、
(l)配列番号12の重鎖可変領域CDR1;配列番号26の重鎖可変領域CDR2;配列番号40の重鎖可変領域CDR3;配列番号54の軽鎖可変領域CDR1;配列番号68の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号82の軽鎖可変領域CDR3、
(m)配列番号13の重鎖可変領域CDR1;配列番号27の重鎖可変領域CDR2;配列番号41の重鎖可変領域CDR3;配列番号55の軽鎖可変領域CDR1;配列番号69の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号83の軽鎖可変領域CDR3、または
(n)配列番号14の重鎖可変領域CDR1;配列番号28の重鎖可変領域CDR2;配列番号42の重鎖可変領域CDR3;配列番号56の軽鎖可変領域CDR1;配列番号70の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号84の軽鎖可変領域CDR3
を含む、態様16~22のいずれかによる使用または方法のためのActRII受容体アンタゴニスト。
【0118】
24.抗体が、配列番号146~150および156~160からなる群から選択される少なくとも1つの配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する完全長重鎖アミノ酸配列を含む、態様16~23のいずれかによる使用または方法のためのActRII受容体アンタゴニスト。
【0119】
25.抗体が、配列番号141~145および151~155からなる群から選択される少なくとも1つの配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する完全長軽鎖アミノ酸配列を含む、態様16~24のいずれかによる使用または方法のためのActRII受容体アンタゴニスト。
【0120】
26.抗体が、
(a)配列番号99の可変重鎖配列および配列番号85の可変軽鎖配列;
(b)配列番号100の可変重鎖配列および配列番号86の可変軽鎖配列;
(c)配列番号101の可変重鎖配列および配列番号87の可変軽鎖配列;
(d)配列番号102の可変重鎖配列および配列番号88の可変軽鎖配列;
(e)配列番号103の可変重鎖配列および配列番号89の可変軽鎖配列;
(f)配列番号104の可変重鎖配列および配列番号90の可変軽鎖配列;
(g)配列番号105の可変重鎖配列および配列番号91の可変軽鎖配列;
(h)配列番号106の可変重鎖配列および配列番号92の可変軽鎖配列;
(i)配列番号107の可変重鎖配列および配列番号93の可変軽鎖配列;
(j)配列番号108の可変重鎖配列および配列番号94の可変軽鎖配列;
(k)配列番号109の可変重鎖配列および配列番号95の可変軽鎖配列;
(l)配列番号110の可変重鎖配列および配列番号96の可変軽鎖配列;
(m)配列番号111の可変重鎖配列および配列番号97の可変軽鎖配列;または
(n)配列番号112の可変重鎖配列および配列番号98の可変軽鎖配列
を含む、態様16~25のいずれかによる使用または方法のためのActRII受容体アンタゴニスト。
【0121】
27.抗体が、
(a)配列番号146の重鎖配列および配列番号141の軽鎖配列;
(b)配列番号147の重鎖配列および配列番号142の軽鎖配列;
(c)配列番号148の重鎖配列および配列番号143の軽鎖配列;
(d)配列番号149の重鎖配列および配列番号144の軽鎖配列;
(e)配列番号150の重鎖配列および配列番号145の軽鎖配列;
(f)配列番号156の重鎖配列および配列番号151の軽鎖配列;
(g)配列番号157の重鎖配列および配列番号152の軽鎖配列;
(h)配列番号158の重鎖配列および配列番号153の軽鎖配列;
(i)配列番号159の重鎖配列および配列番号154の軽鎖配列;または
(j)配列番号160の重鎖配列および配列番号155の軽鎖配列
を含む、態様16~26のいずれかによる使用または方法のためのActRII受容体アンタゴニスト。
【0122】
28.前記組成物に含まれる抗体は、ActRIIBへの結合を交差遮断する、または、態様27の少なくとも1つの抗体によって交差遮断される、態様16~27のいずれかによる使用のためのActRII受容体アンタゴニスト。
【0123】
29.前記組成物に含まれる抗体が、Fc領域の変異によりエフェクター機能が変化している、態様16~28のいずれかによる使用のためのActRII受容体アンタゴニスト。
【0124】
30.前記組成物に含まれる抗体が、態様26~27に列挙された抗体によって認識されるエピトープに結合する、態様16~29のいずれかによる使用のためのActRII受容体アンタゴニスト。
【0125】
31.抗体がpBW522(DSM22873)またはpBW524(DSM22874)によってコードされる、態様16~30のいずれかによる使用のためのActRII受容体アンタゴニスト。
【0126】
32.心不全の治療および/または予防に使用するため、または心臓弁膜症、高血圧、冠動脈疾患、糖尿病、老化、不整脈、周産期心筋症、ストレス心筋症、毒性および感染性因子、および他の形態の遺伝性または特発性心筋症からなる群から選択される状態に関連する構造的および/または機能的な心臓の異常を治療する際に使用するためのビマグルマブであって、4週間ごとに約3~10mg/kg体重の用量で静脈内投与する、ビマグマブ。
【0127】
33.心不全の治療および/または予防に使用するため、または心臓弁膜症、高血圧、冠動脈疾患、糖尿病、老化、不整脈、周産期心筋症、ストレス心筋症、毒性および感染性因子、および他の形態の遺伝性または特発性心筋症からなる群から選択される状態に関連する構造的および/または機能的な心臓の異常を治療する際に使用するための150mg/mlのビマグルマブを含む組成物。
【0128】
34.150mg/mlのビマグルマブを含む単位剤形。
【0129】
さらなる実施形態において、単位剤形、すなわちバイアルは、100~200mg/mlのビマグルマブ、好ましくは100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200mg/mlのビマグルマブを含む。
【0130】
35.溶液で希釈された1つ以上のバイアルからの適切な量のビマグルマブを含む輸液バッグ。
【0131】
溶液はデキストロース溶液であることが好ましい。
【0132】
いくつかのさらなる実施形態では、ActRII受容体アンタゴニストまたはビマグルマブなどの抗ActRII抗体は、約1、2、3、4、5、5、6、7、8、9、10mg/kg体重の用量で投与されることになっている。
【0133】
本明細書に開示されるのは、心不全を治療および/または予防するための、ならびに心臓弁膜症、高血圧、冠動脈疾患、糖尿病、老化、不整脈、周産期心筋症、ストレス心筋症、および他の形態の遺伝性または特発性拡張型心筋症などの状態に関連する構造的および/または機能的な心臓の異常を治療するための薬剤を製造するためのActRII受容体アンタゴニストである。
【0134】
さらなる実施形態では、本明細書で開示されるすべての態様は、一方を他方のいずれかと組み合わせて使用することができる。
【0135】
本開示の様々な態様は、以下のサブセクションでさらに詳細に説明される。様々な種のActRIIに対する抗体の結合能力を評価する標準的なアッセイは、例えばELISA、ウェスタンブロットおよびRIAを含めて、当技術分野で知られている。抗体の結合親和性は、Biacore分析または溶液平衡滴定などの当技術分野で知られている標準的なアッセイによっても評価することができる。Biacoreなどの表面プラズモン共鳴ベースの技術は、結合親和性の計算を可能にする結合動力学を判定できる。
【0136】
したがって、当技術分野で公知であり本明細書に記載の方法論に従って判定されるこれらのActRII機能特性(例えば、生化学、免疫化学、細胞、生理学、または他の生物活性など)の1つまたは複数を「阻害する」抗体が、抗体の不在下で見られるものと比較して(例えば、または無関係な特異度の対照抗体が存在する場合)、特定の活性における統計的に有意な減少に関連すると理解される。ActRII活性を阻害する抗体は、測定パラメーターの少なくとも10%、少なくとも50%、80%または90%だけそのような統計的に有意な減少をもたらし、特定の実施形態では、本開示の抗体は、ActRIIB機能活性の95%、98%、または99%を超えて阻害し得る。
【0137】
抗体または他の結合剤がActRIIへの別の抗体または結合分子の結合を妨害できる能力または程度、またしたがって、本開示に従って交差遮断すると言うことができるかどうかということは、標準的な競合結合アッセイを使用して判定できる。1つの適切なアッセイには、表面プラズモン共鳴技術を使用して相互作用の程度を測定できるBiacoreのテクノロジーの使用が含まれる(例えば、BIAcore機器(Biacore、ウプサラ、スウェーデン)を使用することによる)。交差遮断を測定する別のアッセイでは、ELISAベースのアプローチを使用する。さらなるアッセイは、FACS分析を使用し、ActRIIB発現細胞への結合に関する様々な抗体の競合が検証される。
【0138】
本開示によれば、本開示による交差遮断抗体または他の結合剤は、記載されたBIAcore交差遮断アッセイにおいてActRIIに結合し、抗体または結合剤の組み合わせ(混合物)の記録された結合は、理論上結合で最大の80%~0.1%(例えば80%~4%)、具体的には理論上結合で最大の75%~0.1%(例えば75%~4%)、より具体的には70%~0.1%(例えば70%~4%)、より具体的には、組み合わせた2つの抗体または結合剤の理論上結合で最大(上記で定義)の65%~0.1%(例えば65%~4%)である。
【0139】
抗体は、陽性対照ウェル(すなわち、同じ抗ActRIIB抗体およびActRIIBであるが「試験している」交差遮断抗体ではないもの)と比較した場合、検証している抗体が、ActRIIBへの抗ActRII抗体の結合を60%~100%、特に70%~100%、より具体的には80%~100%減少させることができる場合、ELISAアッセイで、本開示の抗ActRIIB抗体を交差遮断することとして定義される。本明細書で引用される交差遮断抗体の例は、MOR08159およびMOR08213(国際公開第2010/125003号パンフレットに開示)である。したがって、本開示は、ActRIIBへの結合についてMOR08159またはMOR08213を交差遮断する抗体を含む組成物を提供する。
【0140】
組換え抗体
本開示内で使用される組成物に含まれる抗体、例えば、ビマグルマブなどのActRIIに対するアンタゴニスト抗体には、本明細書に記載のような、単離され構造的に特徴付けられたヒト組換え抗体が含まれる。本発明の組成物に含まれる抗体のVHアミノ酸配列は、配列番号99~112に示されている。本発明の組成物に含まれる抗体のVLアミノ酸配列は、それぞれ配列番号85~98に示されている。本発明の組成物に含まれる抗体の好ましい完全長重鎖アミノ酸配列の例は、配列番号146~150および156~160に示されている。本発明の組成物に含まれる抗体の好ましい完全長軽鎖アミノ酸配列の例は、それぞれ配列番号141~145および151~155に示されている。本発明の組成物に含まれる他の抗体には、アミノ酸の欠失、挿入または置換により変異したが、上記の配列に示されているCDR領域とCDR領域で、依然少なくとも60、70、80、90、95、97または99パーセントの同一性を有するアミノ酸が含まれる。いくつかの実施形態では、上記の配列に示されるCDR領域と比較した場合、CDR領域のアミノ酸の欠失、挿入または置換により1、2、3、4または5個以下のアミノ酸が変異している変異アミノ酸配列が含まれる。
【0141】
さらに、可変重鎖親ヌクレオチド配列は、配列番号127~140に示されている。可変軽鎖親ヌクレオチド配列は、配列番号113~126に示されている。哺乳動物細胞での発現に最適化された完全長軽鎖ヌクレオチド配列は、配列番号161~165および171~175に示されている。哺乳動物細胞での発現に最適化された完全長重鎖ヌクレオチド配列は、配列番号166~170および176~180に示されている。本発明の組成物に含まれる他の抗体は、アミノ酸を含むか、変異したが上記の配列に対して少なくとも60以上(すなわち80、90、95、97、99またはそれより多い)のパーセントの同一性を有する核酸によってコードされる。いくつかの実施形態では、上記の配列に示される可変領域と比較した場合、可変領域におけるアミノ酸の欠失、挿入または置換により1、2、3、4または5個以下のアミノ酸が変異した変異アミノ酸配列が含まれる。
【0142】
これらの抗体はそれぞれ同じエピトープに結合し、同じ親抗体の継代であるため、VH、VL、完全長軽鎖、および完全長重鎖の配列(ヌクレオチド配列とアミノ酸配列)を「混合して適合」させ、本開示の他の抗ActRIIB結合分子を作成することができる。そのような「混合して適合」させた抗体のActRIIB結合は、上記の結合アッセイを使用して、例えばELISAなどの周知の方法で試験することができる。これらの鎖が混在して適合される場合、特定のVH/VLペアリングからのVH配列は、構造的に類似したVH配列で置き換えられる必要がある。同様に、特定の完全長重鎖/完全長軽鎖のペアリングからの完全長重鎖配列は、構造的に類似した完全長重鎖配列で置き換える必要がある。同様に、特定のVH/VLペアリングからのVL配列は、構造的に類似したVL配列で置き換える必要がある。同様に、特定の完全長重鎖/完全長軽鎖のペアリングからの完全長軽鎖配列は、構造的に類似した完全長軽鎖配列に置き換える必要がある。したがって、一態様では、本開示は、配列番号99~112からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号85~98からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する組換え抗ActRII抗体またはその抗原結合領域を含む組成物を提供する。
【0143】
別の態様では、本開示は、
(i)配列番号99~112からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む完全長重鎖;および配列番号85~98からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む完全長軽鎖を有する単離された組換え抗ActRII抗体、または
(ii)その抗原結合部分を含む機能性タンパク質
を含む組成物を提供する。
別の態様では、本開示は、
(i)配列番号127~140からなる群から選択される哺乳動物の細胞での発現に最適化されたヌクレオチド配列によりコードされる完全長重鎖を有する単離された組換え抗ActRII抗体、および配列番号113~126からなる群から選択される哺乳動物の細胞での発現のために最適化されたヌクレオチド配列によりコードされる完全長軽鎖、または
(ii)その抗原結合部分を含む機能性タンパク質
を含む組成物を提供する。
【0144】
本発明の組成物に含まれる抗体のVH CDR1のアミノ酸配列の例は、配列番号1~14に示されている。抗体のVH CDR2のアミノ酸配列は、配列番号15~28に示されている。抗体のVH CDR3のアミノ酸配列は、配列番号29~42に示されている。抗体のVL CDR1のアミノ酸配列は、配列番号43~56に示されている。抗体のVL CDR2のアミノ酸配列は、配列番号57~70に示されている。抗体のVL CDR3のアミノ酸配列は、配列番号71~84に示されている。CDR領域は、Kabatシステムを使用して描かれている(Kabat,E.A.,et al.,1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242)。CDR領域を判定する別の方法では、Chothiaが考案した方法を使用する(Chothia et al.1989,Nature,342:877-883)。Chothiaの定義は、構造ループ領域の場所に基づいている。ただし、Chothiaが使用する番号付けシステムの変更により(例えば、http://www.biochem.ucl.ac.uk/~martin/abs/GeneralInfo.html and http://www.bioinf.org.uk/abs/を参照)、このシステムは現在あまり使用されていない。CDRを定義する他のシステムが存在し、これら2つのWebサイトでも言及されている。
【0145】
これらの抗体のそれぞれがActRIIに結合でき、抗原結合特異性が主にCDR1、2、および3領域によって提供されることを考えると、VH CDR1、2、および3配列とVL CDR1、2、および3配列は「混合して適合させる」ことができる(すなわち、異なる抗体からのCDRを混合および適合させることができ、各々VH CDR1、2および3およびVL CDR1、2および3を含む抗体は、本開示の他の抗ActRII結合分子を作成する。そのような「混合して適合」させた抗体のActRIIB結合は、上記および実施例に記載の結合アッセイ(例えばELISA)を使用して試験することができる。VH CDR配列を混合して適合させる場合、特定のVH配列からのCDR1、CDR2、および/またはCDR3配列を構造的に類似したCDR配列で置き換える必要がある。同様に、VL CDR配列を混合して適合させる場合、特定のVL配列からのCDR1、CDR2および/またはCDR3配列は、構造的に類似したCDR配列で置換される必要がある。モノクローナル抗体について本明細書に示されるCDR配列からの構造的に類似の配列で1つ以上のVHおよび/またはVL CDR領域配列を置換することにより、新規VHおよびVL配列を作成できることは、当業者に容易に明らかである。
【0146】
開示された組成物またはその抗原結合領域に含まれる抗ActRII抗体は、配列番号1~14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号15~28からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号29~42からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号43~56からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号57~70からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;および配列番号71~84からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3を有する。
【0147】
一実施形態では、本発明の組成物に含まれる抗体は、配列番号1の重鎖可変領域CDR1;配列番号15の重鎖可変領域CDR2;配列番号29の重鎖可変領域CDR3;配列番号43の軽鎖可変領域CDR1;配列番号57の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号71の軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0148】
一実施形態では、本発明の組成物に含まれる抗体は、配列番号2の重鎖可変領域CDR1;配列番号16の重鎖可変領域CDR2;配列番号30の重鎖可変領域CDR3;配列番号44の軽鎖可変領域CDR1;配列番号58の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号72の軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0149】
一実施形態では、本発明の組成物に含まれる抗体は、配列番号3の重鎖可変領域CDR1;配列番号17の重鎖可変領域CDR2;配列番号31の重鎖可変領域CDR3;配列番号45の軽鎖可変領域CDR1;配列番号59の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号73の軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0150】
一実施形態では、本発明の組成物に含まれる抗体は、配列番号4の重鎖可変領域CDR1;配列番号18の重鎖可変領域CDR2;配列番号32の重鎖可変領域CDR3;配列番号46の軽鎖可変領域CDR1;配列番号60の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号74の軽鎖可変領域CDR3を含む。
一実施形態では、本発明の組成物に含まれる抗体は、配列番号5の重鎖可変領域CDR1;配列番号19の重鎖可変領域CDR2;配列番号33の重鎖可変領域CDR3;配列番号47の軽鎖可変領域CDR1;配列番号61の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号75の軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0151】
一実施形態では、本発明の組成物に含まれる抗体は、配列番号6の重鎖可変領域CDR1;配列番号20の重鎖可変領域CDR2;配列番号34の重鎖可変領域CDR3;配列番号48の軽鎖可変領域CDR1;配列番号62の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号76の軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0152】
一実施形態では、本発明の組成物に含まれる抗体は、配列番号7の重鎖可変領域CDR1;配列番号21の重鎖可変領域CDR2;配列番号35の重鎖可変領域CDR3;配列番号49の軽鎖可変領域CDR1;配列番号63の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号77の軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0153】
一実施形態では、本発明の組成物に含まれる抗体は、配列番号8の重鎖可変領域CDR1;配列番号22の重鎖可変領域CDR2;配列番号36の重鎖可変領域CDR3;配列番号50の軽鎖可変領域CDR1、配列番号64の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号78の軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0154】
一実施形態では、本発明の組成物に含まれる抗体は、配列番号9の重鎖可変領域CDR1;配列番号23の重鎖可変領域CDR2;配列番号37の重鎖可変領域CDR3;配列番号51の軽鎖可変領域CDR1;配列番号65の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号79の軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0155】
一実施形態では、本発明の組成物に含まれる抗体は、配列番号10の重鎖可変領域CDR1;配列番号24の重鎖可変領域CDR2;配列番号38の重鎖可変領域CDR3;配列番号52の軽鎖可変領域CDR1;配列番号66の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号80の軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0156】
一実施形態では、本発明の組成物に含まれる抗体は、配列番号11の重鎖可変領域CDR1;配列番号25の重鎖可変領域CDR2;配列番号39の重鎖可変領域CDR3;配列番号53の軽鎖可変領域CDR1;配列番号67の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号81の軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0157】
一実施形態では、本発明の組成物に含まれる抗体は、配列番号12の重鎖可変領域CDR1;配列番号26の重鎖可変領域CDR2;配列番号40の重鎖可変領域CDR3;配列番号54の軽鎖可変領域CDR1;配列番号68の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号82の軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0158】
一実施形態では、本発明の組成物に含まれる抗体は、配列番号13の重鎖可変領域CDR1;配列番号27の重鎖可変領域CDR2;配列番号41の重鎖可変領域CDR3;配列番号55の軽鎖可変領域CDR1;配列番号69の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号83の軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0159】
一実施形態では、本発明の組成物に含まれる抗体は、配列番号14の重鎖可変領域CDR1;配列番号28の重鎖可変領域CDR2;配列番号42の重鎖可変領域CDR3;配列番号56の軽鎖可変領域CDR1;配列番号70の軽鎖可変領域CDR2;および配列番号84の軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0160】
一実施形態では、本開示は、(a)配列番号85の可変重鎖配列および配列番号99の可変軽鎖配列;(b)配列番号86の可変重鎖配列および配列番号100の可変軽鎖配列;(c)配列番号87の可変重鎖配列および配列番号101の可変軽鎖配列;(d)配列番号88の可変重鎖配列および配列番号102の可変軽鎖配列;(e)配列番号89の可変重鎖配列および配列番号103の可変軽鎖配列;(f)配列番号90の可変重鎖配列および配列番号104の可変軽鎖配列;(g)配列番号91の可変重鎖配列および配列番号105の可変軽鎖配列;(h)配列番号92の可変重鎖配列および配列番号106の可変軽鎖配列;(i)配列番号93の可変重鎖配列および配列番号107の可変軽鎖配列;(j)配列番号94の可変重鎖配列および配列番号108の可変軽鎖配列;(k)配列番号95の可変重鎖配列および配列番号109の可変軽鎖配列;(l)配列番号96の可変重鎖配列および配列番号110の可変軽鎖配列;(m)配列番号97の可変重鎖配列および配列番号111の可変軽鎖配列;または(n)配列番号98の可変重鎖配列および配列番号112の可変軽鎖配列を含む抗体を含む組成物を提供する。
【0161】
一実施形態では、本開示は、(a)配列番号146の重鎖配列と配列番号141の軽鎖配列;(b)配列番号147の重鎖配列および配列番号142の軽鎖配列;(c)配列番号148の重鎖配列および配列番号143の軽鎖配列;(d)配列番号149の重鎖配列および配列番号144の軽鎖配列;(e)配列番号150の重鎖配列および配列番号145の軽鎖配列;(f)配列番号156の重鎖配列および配列番号151の軽鎖配列;(g)配列番号157の重鎖配列および配列番号152の軽鎖配列;(h)配列番号158の重鎖配列および配列番号153の軽鎖配列;(i)配列番号159の重鎖配列および配列番号154の軽鎖配列;または(j)配列番号160の重鎖配列および配列番号155の軽鎖配列を含む抗体を含む組成物を提供する。
【0162】
本明細書で使用される場合、ヒト抗体は、抗体の可変領域または完全長の鎖がヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子を使用するシステムから得られる場合、特定の生殖系列配列の「産物」または「由来」である重鎖または軽鎖可変領域または完全長重鎖または軽鎖を含む。そのような系は、目的の抗原でヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスを免疫すること、または目的の抗原でファージに提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリをスクリーニングすることを含む。ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列の「産物」または「由来」であるヒト抗体は、ヒト抗体のアミノ酸配列をヒト生殖細胞系免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較し、ヒト抗体の配列に最も近い配列(すなわち、最大%同一性)にあるヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列を選択することにより、そのように同定できる。特定のヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列の「産物」または「由来」であるヒト抗体は、例えば、自然に発生する体細胞変異または部位特異的突然変異の意図的な導入のために、生殖系列配列と比較してアミノ酸の違いを含む場合がある。ただし、選択されたヒト抗体は、通常、他の種の生殖細胞系免疫グロブリンアミノ酸配列と比較した場合に、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列とアミノ酸配列が少なくとも90%同一であり、ヒト抗体をヒトであると識別するアミノ酸残基を含む(例えば、マウス生殖系列配列)。特定の場合、ヒト抗体は、生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子によりコードされたアミノ酸配列とアミノ酸配列で少なくとも80%、90%、または少なくとも95%、または少なくとも96%、97%、98%、または99%さえ同一であり得る。典型的には、特定のヒト生殖系列配列に由来するヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と10個以下のアミノ酸の違いを示す。特定の場合、ヒト抗体は、生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と5個以下、または4、3、2、または1個以下のアミノ酸の違いを示す場合がある。
【0163】
一実施形態では、本開示の組成物に含まれる抗体は、pBW522またはpBW524(DSMZ、Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweig,Germany on 18 August 2009、それぞれ寄託番号DSM22873およびDSM22874で寄託)によりコードされるものである。
【0164】
相同抗体
さらに別の実施形態では、本発明の組成物に含まれる抗体は、本明細書に記載の抗体のアミノ酸およびヌクレオチド配列と相同である完全長の重鎖および軽鎖アミノ酸配列、完全長重鎖および軽鎖ヌクレオチド配列、可変領域重鎖および軽鎖ヌクレオチド配列、または可変領域重鎖および軽鎖アミノ酸配列を有し、抗体は本開示の抗ActRIIB抗体の所望の機能特性を保持する。
【0165】
例えば、本開示は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む単離された組換え抗ActRIIB抗体(またはその抗原結合部分を含む機能性タンパク質)を含む組成物を提供し、重鎖可変領域は配列番号99~112からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、または少なくとも90%(好ましくは少なくとも95、97または99%)同一であるアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号85~98からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、または少なくとも90%(好ましくは少なくとも95、97または99%)同一であるアミノ酸配列を含む;あるいは、組成物は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む組換え抗ActRIIB抗体(またはその抗原結合部分を含む機能性タンパク質)を含み;重鎖可変領域は、配列番号99~112からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して、5個以下のアミノ酸、または4個以下のアミノ酸、または3個以下のアミノ酸、または2個以下または1個以下のアミノ酸の変化を含む;軽鎖可変領域は、配列番号85~98からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して、5個以下のアミノ酸、または4個以下のアミノ酸、または3個以下のアミノ酸、または2個以下または1個以下のアミノ酸の変化を含み、抗体は、次の機能特性、(i)インビトロまたはインビボでミオスタチン結合を阻害する、(ii)Smad依存性経路を介して筋肉分化の阻害を減少させる、および/または(iii)血液学的変化、特にRBCの変化を誘発しないということの少なくとも1つを示す。これに関連して、「変化」という用語は、挿入、欠失、および/または置換を示す。
【0166】
さらなる例において、本開示は、完全長重鎖および完全長軽鎖を含む、単離された組換え抗ActRII抗体(またはその抗原結合部分を含む機能性タンパク質)を含む組成物を提供し、ここで、完全長重鎖は、配列番号146~150および156~160からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、または少なくとも90%(好ましくは少なくとも95、97または99%)同一であるアミノ酸配列を含む;完全長軽鎖は、配列番号141~145および151~155からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、または少なくとも90%(好ましくは少なくとも95、97または99%)同一であるアミノ酸配列を含む;あるいは、組成物は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む組換え抗ActRII抗体(またはその抗原結合部分を含む機能性タンパク質)を含み、重鎖可変領域は配列番号146~150および156~160からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して、5個以下のアミノ酸、または4個以下のアミノ酸、または3個以下のアミノ酸、または2個以下または1個以下のアミノ酸の変化を含み;軽鎖可変領域は、配列番号141~145および151~155からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して、5個以下のアミノ酸、または4個以下のアミノ酸、または3個以下のアミノ酸、または2個以下または1個以下のアミノ酸の変化を含み、抗体は、次の機能特性、(i)インビトロまたはインビボでミオスタチン結合を阻害する、(ii)Smad依存性経路を介して筋肉分化の阻害を減少させる、および/または(iii)血液学的変化、特にRBCの変化を誘発しないということの少なくとも1つを示す。好ましくは、そのような抗体はActRIIBおよび/またはActRIIAのリガンド結合ドメインに結合する。これに関連して、「変化(change)」という用語は、挿入、欠失、および/または置換を示す。
【0167】
別の例において、本開示は、完全長重鎖および完全長軽鎖を含む、単離された組換え抗ActRII抗体(またはその抗原結合部分を含む機能性タンパク質)を含む組成物を提供し、ここで、完全長重鎖は、配列番号166~170および176~180からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、または少なくとも90%(好ましくは少なくとも95、97または99%)同一であるヌクレオチド配列によりコードされる;完全長軽鎖は、配列番号161~165および171~175からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、または少なくとも90%(好ましくは少なくとも95、97または99%)同一であるヌクレオチド配列によりコードされる;あるいは、組成物は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む組換え抗ActRIIB抗体(またはその抗原結合部分を含む機能性タンパク質)を含み、重鎖可変領域は配列番号166~170および176~180からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して、5個以下のアミノ酸、または4個以下のアミノ酸、または3個以下のアミノ酸、または2個以下または1個以下のアミノ酸の変化を含み;軽鎖可変領域は、配列番号161~165および171~175からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して、5個以下のアミノ酸、または4個以下のアミノ酸、または3個以下のアミノ酸、または2個以下または1個以下のアミノ酸の変化を含み、抗体は、次の機能特性、(i)インビトロまたはインビボでミオスタチン結合を阻害する、(ii)Smad依存性経路を介して筋肉分化の阻害を減少させる、および/または(iii)血液学的変化、特にRBCの変化を誘発しないということの少なくとも1つを示す。好ましくは、そのような抗体はActRIIBのリガンド結合ドメインに結合する。これに関連して、「変化」という用語は、挿入、欠失、および/または置換を示す。
【0168】
様々な実施形態において、本発明の組成物に含まれる抗体は、上で議論された機能特性のうちの1つ以上、2つ以上、または3つを示し得る。抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であり得る。好ましくは、抗体は完全ヒトIgG1抗体である。
【0169】
他の実施形態では、VHおよび/またはVLアミノ酸配列は、上記の配列と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であり得る。他の実施形態では、VHおよび/またはVLアミノ酸配列は、1、2、3、4または5個以下のアミノ酸の位置でのアミノ酸置換を除いて同一であり得る。それぞれ配列番号99~112および配列番号85~98のVHおよびVL領域に対して同一性が高い(すなわち80%以上)VHおよびVL領域を有する抗体は、それぞれ核酸分子配列番号127~140および113~126の突然変異誘発(例えば、部位特異的またはPCR媒介変異誘発)により得ることができ、続いて、本明細書に記載の機能アッセイを使用して、保持機能(すなわち上記の機能)についてコードされた改変抗体の試験を行う。
【0170】
他の実施形態では、完全長重鎖および/または完全長軽鎖のアミノ酸配列は、上記の配列と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であってもよく、1、2、3、4、または5個以下のアミノ酸の位置でのアミノ酸の変化を除いて同一であってもよい。配列番号146~150および156~160のいずれかの完全長重鎖およびそれぞれ配列番号141~145および151~155のいずれかの完全長軽鎖に対して同一性が高い(すなわち少なくとも80%以上)完全長重鎖および完全長軽鎖を有する抗体は、それぞれ核酸分子配列番号166~170および176~180および配列番号161~165および171~175の突然変異誘発(例えば、部位特異的またはPCR媒介突然変異誘発)により得ることができる。続いて、本明細書に記載の機能アッセイを使用して、保持機能(すなわち上記の機能)についてコードされた改変抗体の試験を行う。
【0171】
他の実施形態では、完全長重鎖および/または完全長軽鎖ヌクレオチド配列は、上記の配列と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であってもよい。
【0172】
他の実施形態では、重鎖および/または軽鎖ヌクレオチド配列の可変領域は、上記の配列と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であり得るか、1、2、3、4、または5個以下のアミノ酸の位置のアミノ酸の変化を除いて同一であり得る。
【0173】
本明細書で使用される場合、2つの配列間の同一性の割合は、ギャップの数および各ギャップの長さを考慮して、配列によって共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、同一性%=同一の位置の数/位置の総数×100)。それは、2つの配列の最適なアライメントのために導入する必要がある。以下に説明するように、数学的アルゴリズムを使用して、2つの配列間の配列の比較と同一性の割合の判定を成し遂げることができる。
【0174】
2つのアミノ酸配列間の同一性の割合は、PAM120重み残余テーブル、ギャップ長ペナルティ12、ギャップペナルティ4を使用して、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.MeyersとW.Millerのアルゴリズム(Comput.Appl.Biosci.,4:11-17,1988)を使用して判定できる。さらに、2つのアミノ酸配列間の同一性の割合は、Blossom 62マトリックスまたはPAM250マトリックス、および16、14、12、10、8、6、または4のギャップウェイト、および1、2、3、4、5、または6の長さウェイトを使用して、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで利用可能)のGAPプログラムに組み込まれているNeedleman and Wunsch(J.Mol、Biol.48:444-453,1970)アルゴリズムを使用して決定できる。
【0175】
保存的修飾を施した抗体
特定の実施形態では、本発明の組成物に含まれる抗体は、CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域と、CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を有し、これらのCDR配列の1つ以上が、本明細書に記載の抗体に基づく特定されているアミノ酸配列、またはその1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸の変化またはその保存的修飾を含むその変異体の配列を有し、抗体は本開示の抗ActRIIB抗体の所望の機能特性を保持している。したがって、本開示は、単離された組換え抗ActRIIB抗体、またはその抗原結合部分を含む機能性タンパク質を含む組成物を提供し、それは、CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域と、CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域からなり、重鎖可変領域CDR1アミノ酸配列は配列番号1~14、または1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸の変化を含むその変異体の配列、およびその保存的修飾からなる群から選択され;重鎖可変領域CDR2アミノ酸配列は配列番号15~28、または1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸の変化を含むその変異体の配列、およびその保存的修飾からなる群から選択され;重鎖可変領域CDR3アミノ酸配列は配列番号29~42、または1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸の変化を含むその変異体の配列、およびその保存的修飾からなる群から選択され;軽鎖可変領域CDR1アミノ酸配列は配列番号43~56、または1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸の変化を含むその変異体の配列、およびその保存的修飾からなる群から選択され;軽鎖可変領域CDR2アミノ酸配列は配列番号57~70、または1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸の変化を含むその変異体の配列、およびその保存的修飾からなる群から選択され;軽鎖可変領域CDR3アミノ酸配列は配列番号71~84、または1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸の変化を含むその変異体の配列、およびその保存的修飾からなる群から選択される。好ましくは、抗体は以下の機能特性、(i)インビトロまたはインビボでミオスタチン結合を阻害する、(ii)Smad依存性経路を介して筋肉分化の阻害を減少させる、および/または(iii)血液学的変化、特にRBCの変化を誘発しないということの少なくとも1つを示す。
【0176】
種々の実施形態において、抗体は、上記に列挙された機能特性の一方または両方を示し得る。そのような抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であり得る。
【0177】
他の実施形態では、哺乳動物細胞での発現に最適化された本発明の組成物に含まれる抗体は、完全長重鎖配列および完全長軽鎖配列を有し、これらの配列の1つまたは複数は、本開示に記載の抗体に基づいて特定のアミノ酸配列またはその保存的修飾を有し、抗体は、本開示の抗ActRIIB抗体の所望の機能特性を保持する。したがって、本開示は、完全長重鎖および完全長軽鎖からなる哺乳動物細胞での発現に最適化された単離モノクローナル抗ActRII抗体を含む組成物を提供し、完全長重鎖は、配列番号146~150および156~160の群から選択されるアミノ酸配列、または1、2、3、4または5個のアミノ酸の変化を含むその変異体配列、およびその保存的修飾を有し;完全長軽鎖は、配列番号141~145および151~155の群から選択されるアミノ酸配列、または1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸の変化を含むその変異体配列、およびその保存的修飾を有し;抗体は以下の機能特性、(i)インビトロまたはインビボでミオスタチン結合を阻害する、(ii)Smad依存性経路を介して筋肉分化の阻害を減少させる、および/または(iii)血液学的変化、特にRBCの変化を誘発しないということの少なくとも1つを示す。
【0178】
種々の実施形態において、抗体は、上記に列挙された機能特性の一方または両方を示し得る。そのような抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であり得る。
【0179】
本明細書で使用される場合、「保存的配列修飾」という用語は、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に顕著な影響または変化を与えないアミノ酸修飾を指すことを意図している。そのような保存的修飾はアミノ酸置換、付加および欠失を含む。修飾は、部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発などの当技術分野で知られている標準的な技術によって、本開示の抗体に導入することができる。
【0180】
保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されているものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖(例、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、本開示の抗体のCDR領域内の1つまたは複数のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置き換えることができ、変更された抗体は、本明細書に記載の機能的なアッセイを使用して保持機能について試験することができる。
【0181】
開示された組成物に含まれる抗ActRII抗体と同じエピトープに結合する抗体
別の実施形態では、本開示は、本明細書に記載の様々な特異的抗ActRII抗体と同じエピトープに結合する抗体を含む組成物を提供する。実施例に記載されている、ActRIIAおよびActRIIBへのミオスタチンの結合をブロックできる抗体はすべて、ActRIIAおよびActRIIBのエピトープの1つに高親和性で結合し、前記エピトープは配列番号181のアミノ酸19~134の間に含まれる。
【0182】
したがって、追加の抗体は、標準的なActRIIB結合アッセイで本開示の他の抗体と交差競合する能力(例えば、統計的に有意な方法で結合を競合的に阻害する能力)に基づいて特定することができる。本発明の組成物に含まれる抗体のヒトActRIIBへの結合を阻害する試験抗体の能力は、試験抗体がヒトActRIIBへの結合について前記抗体と競合できることを実証している。そのような抗体は、非限定的な理論によれば、それが競合する抗体と同じまたは関連する(例えば、構造的に類似または空間的に近位の)ヒトActRIIB上のエピトープに結合し得る。特定の実施形態では、本発明の組成物に含まれる抗体と同じヒトActRIIAおよびActRIIAのエピトープに結合する抗体は、ヒト組換え抗体である。そのようなヒト組換え抗体は、実施例に記載されているように調製および単離することができる。
したがって、本開示は、配列番号85に記載の可変重鎖配列、および配列番号99に記載の可変軽鎖配列を有する抗体との結合のためにそれに認識されるおよび/または競合するエピトープに結合する抗体を含む組成物を提供する。
【0183】
したがって、本開示は、配列番号86に記載の可変重鎖配列、および配列番号100に記載の可変軽鎖配列を有する抗体によって認識されるエピトープに結合する抗体を含む組成物を提供する。
したがって、本開示は、配列番号87に記載の可変重鎖配列、および配列番号101に記載の可変軽鎖配列を有する抗体によって認識されるエピトープに結合する抗体を含む組成物を提供する。
したがって、本開示は、配列番号88に記載の可変重鎖配列、および配列番号102に記載の可変軽鎖配列を有する抗体によって認識されるエピトープに結合する抗体を含む組成物を提供する。
したがって、本開示は、配列番号89に記載の可変重鎖配列、および配列番号103に記載の可変軽鎖配列を有する抗体によって認識されるエピトープに結合する抗体を含む組成物を提供する。
【0184】
したがって、本開示は、配列番号90に記載の可変重鎖配列、および配列番号104に記載の可変軽鎖配列を有する抗体によって認識されるエピトープに結合する抗体を含む組成物を提供する。
【0185】
したがって、本開示は、配列番号91に記載の可変重鎖配列、および配列番号105に記載の可変軽鎖配列を有する抗体によって認識されるエピトープに結合する抗体を含む組成物を提供する。
【0186】
したがって、本開示は、配列番号92に記載の可変重鎖配列、および配列番号106に記載の可変軽鎖配列を有する抗体によって認識されるエピトープに結合する抗体を含む組成物を提供する。
【0187】
したがって、本開示は、配列番号93に記載の可変重鎖配列、および配列番号107に記載の可変軽鎖配列を有する抗体によって認識されるエピトープに結合する抗体を含む組成物を提供する。
【0188】
したがって、本開示は、配列番号94に記載の可変重鎖配列、および配列番号108に記載の可変軽鎖配列を有する抗体によって認識されるエピトープに結合する抗体を含む組成物を提供する。
【0189】
したがって、本開示は、配列番号95に記載の可変重鎖配列、および配列番号109に記載の可変軽鎖配列を有する抗体によって認識されるエピトープに結合する抗体を含む組成物を提供する。
【0190】
したがって、本開示は、配列番号96に記載の可変重鎖配列、および配列番号110に記載の可変軽鎖配列を有する抗体によって認識されるエピトープに結合する抗体を含む組成物を提供する。
【0191】
したがって、本開示は、配列番号97に記載の可変重鎖配列、および配列番号111に記載の可変軽鎖配列を有する抗体によって認識されるエピトープに結合する抗体を含む組成物を提供する。
【0192】
したがって、本開示は、配列番号98に記載の可変重鎖配列、および配列番号112に記載の可変軽鎖配列を有する抗体によって認識されるエピトープに結合する抗体を含む組成物を提供する。
【0193】
より詳細なエピトープマッピングの実験に続いて、本発明の組成物の好ましい抗体の結合領域がより明確に定義された。
【0194】
したがって、本開示は、配列番号181のアミノ酸78~83を含むエピトープに結合する抗体を含む組成物を提供する(WLDDFN-配列番号188)。
本開示はまた、配列番号181のアミノ酸76~84を含むエピトープに結合する抗体を含む組成物を提供する(GCWLDDFNC-配列番号186)。
【0195】
本開示はまた、配列番号181のアミノ酸75~85を含むエピトープに結合する抗体を含む組成物を提供する(KGCWLDDFNCY-配列番号190)。
【0196】
本開示はまた、配列番号181のアミノ酸52~56を含むエピトープに結合する抗体を含む組成物を提供する(EQDKR-配列番号189)。
本開示はまた、配列番号181のアミノ酸49~63を含むエピトープに結合する抗体を含む組成物を提供する(CEGEQDKRLHCYASW-配列番号187)。
【0197】
本開示はまた、配列番号181のアミノ酸29~41を含むまたはからなるエピトープに結合する抗体を含む組成物を提供する(CIYYNANWELERT-配列番号191)。
【0198】
本開示はまた、配列番号181のアミノ酸100~110を含むまたはからなるエピトープに結合する抗体を含む組成物を提供する(YFCCCEGNFCN-配列番号192)。
【0199】
本開示はまた、これらの配列からなるエピトープまたはこれらのエピトープ領域の組み合わせを含むエピトープに結合する抗体を含む組成物を提供する。
【0200】
したがって、本開示はまた、配列番号181のアミノ酸78~83(WLDDFN)および配列番号181のアミノ酸52~56(EQDKR)を含むまたはからなるエピトープに結合する抗体を含む組成物を提供する。
【0201】
遺伝子操作および改変された抗体
本発明の組成物に含まれる抗体はさらに、本明細書に示されるVHおよび/またはVL配列の1つ以上を有する抗体を、出発抗体から改変された特性を有し得る修飾抗体を遺伝子操作するための出発材料として用いて、調製することができる。抗体は、一方または両方の可変領域(すなわち、VHおよび/またはVL)内、例えば1つまたは複数のCDR領域および/または1つまたは複数のフレームワーク領域内の1つまたは複数の残基を修飾することによって遺伝子操作できる。追加的または代替的に、例えば抗体のエフェクター機能を変更するために、定常領域内の残基を修飾することにより、抗体を遺伝子操作することができる。
【0202】
実行できる可変領域の遺伝子操作の1つのタイプは、CDRグラフトである。抗体は、6つの重鎖および軽鎖の相補性決定領域(CDR)にあるアミノ酸残基を主に介して、標的抗原と相互作用する。このため、CDR内のアミノ酸配列は、CDR外の配列よりも個々の抗体間で多様である。CDR配列はほとんどの抗体抗原相互作用の原因であるため、異なる特性を持つ異なる抗体のフレームワーク配列にグラフトされた特定の天然発生の抗体のCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより、特定の天然発生の抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることができる(例えば、Riechmann,L.et al.,1998 Nature 332:323-327;Jones,P.et al.,1986 Nature 321:522-525;Queen,C.et al.,1989 Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A86:10029-10033;Winterへの米国特許第5,225,539号明細書、Queenらへの米国特許第5,530,101号明細書;第5,585,089号明細書;第5,693,762号明細書、および第6,180,370号明細書を参照)。
【0203】
したがって、本開示の別の実施形態は、モノクローナル抗ActRII抗体、またはその抗原結合部分を含む機能性タンパク質を含む組成物に関し、それは配列番号1~14からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列;配列番号15~28からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列;配列番号29~42からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む重鎖可変領域をそれぞれ;配列番号43~56からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列;配列番号57~70からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列;および配列番号71~84からなる群から選択されるアミノ酸配列からなるCDR3配列を有する軽鎖可変領域をそれぞれ含む。したがって、そのような抗体は、モノクローナル抗体のVHおよびVL CDR配列を含むが、これらの抗体とは異なるフレームワーク配列を含んでもよい。
【0204】
そのようなフレームワーク配列は、生殖細胞系抗体遺伝子配列を含む公的なDNAデータベースまたは公開された参考文献から入手することができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系DNA配列は、「VBase」ヒト生殖系配列データベース(インターネット上のwww.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseで入手可能)で見ることもでき、さらにKabat,E.A.,et al.,[上記];Tomlinson,I.M.,et al.,1992 J.fol.Biol.227:776-798;および Cox,J.P.L.et al.,1994 Eur.J Immunol.24:827-836にもある。
本開示の抗体で使用するためのフレームワーク配列の例は、本開示の選択された抗体によって使用されるフレームワーク配列と構造的に類似するものである。例えば、本開示のモノクローナル抗体によって使用されるコンセンサス配列および/またはフレームワーク配列が挙げられる。VH CDR1、2、および3の配列、およびVL CDR1、2および3の配列は、フレームワーク配列が由来する生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子に見られるものと同じ配列を持つフレームワーク領域に移植でき、またはCDR配列は、生殖系列配列と比較して、1つ以上の突然変異を含むフレームワーク領域に移植され得る。例えば、特定の例では、フレームワーク領域内の残基を変異させて抗体の抗原結合能を維持または強化することが有益であることがわかっている(例えば、Queenらへの米国特許第5,530,101号明細書;第5,585,089号明細書;第5,693,762号明細書、および第6,180,370号明細書を参照)。
【0205】
別のタイプの可変領域修飾は、VHおよび/またはVL CDR1、CDR2および/またはCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させ、それにより「親和性成熟」として知られる目的の抗体の1つまたは複数の結合特性(例えば親和性)を改善する。部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介突然変異誘発を実施して、突然変異を導入し、抗体結合または目的の他の機能的性質に対する効果を、本明細書に記載され、実施例にて提供されるインビトロまたはインビボのアッセイで評価することができる。保存的修飾(上記で説明)を導入できる。変異は、アミノ酸の置換、付加、または欠失であり得る。さらに、典型的には、CDR領域内の1つ、2つ、3つ、4つまたは5つ以下の残基が変更される。
【0206】
したがって、別の実施形態では、本開示は、単離された抗ActRIIモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を含む機能性タンパク質を提供し、それは、配列番号1~14を有する群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号1~14と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列からなるVH CDR1領域;配列番号15~28からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号15~28と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR2領域;配列番号29~42からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号29~42と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR3領域;配列番号43~56からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号43~56と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR1領域;配列番号52~70からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号52~70と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR2領域;および配列番号71~84からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号71~84と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR3領域を有する重鎖可変領域からなる。
【0207】
ラクダ科抗体
ラマ種(Lama paccos、Lama glama、およびLama vicugna)などの新しい世界のメンバーを含むラクダおよびヒトコブラクダ(Camelus bactrianusおよびCamelus dromaderius)のメンバーから得られた抗体タンパク質は、サイズ、構造の複雑さ、およびヒト対象の抗原性に関して特徴付けられている。自然界に見られるこの哺乳類ファミリーの特定のIgG抗体は軽鎖を欠いているため、他の動物の抗体については、2つの重鎖と2つの軽鎖を持つ典型的な4鎖四次構造とは構造的に異なる(国際公開第94/04678号パンフレットを参照)。
【0208】
VHHとして識別される小さな単一可変ドメインであるラクダ科の抗体の領域は、遺伝子工学によって得られ、標的に対して高い親和性を有する小さなタンパク質を生成することができ、「ラクダ科ナノボディ」として知られる低分子量抗体由来タンパク質をもたらす。(米国特許第5,759,808号明細書;Stijlemans,B.et al.,2004 J Biol Chem 279:1256-1261;Dumoulin,M.et al.,2003 Nature 424:783-788;Pleschberger,M.et al.2003 Bioconjugate Chem 14:440-448;Cortez-Retamozo,V.et al.2002 Int J Cancer 89:456-62;およびLauwereys,M.et al.1998 EMBO J 17:3512-3520を参照)。ラクダ科の抗体および抗体断片の遺伝子工学的ライブラリは、例えばベルギーのゲントのAblynxから市販されている。非ヒト起源の他の抗体と同様に、ラクダ科の抗体のアミノ酸配列を組み換えにより変更して、ヒト配列により類似した配列を得ることができる。すなわち、ナノボディを「ヒト化」することができる。したがって、ヒトに対するラクダ科の抗体の自然な低抗原性をさらに減らすことができる。
【0209】
ラクダ科のナノボディの分子量は、ヒトIgG分子の約10分の1で、タンパク質の物理的直径はわずか数ナノメートルである。小さいサイズの1つの結果は、ラクダ科のナノボディが大きな抗体タンパク質には機能的に見えない抗原部位に結合する能力である。つまり、ラクダ科のナノボディは、別段では従来の免疫学的技術を使用して潜在的な抗原を検出する試薬として、および可能な治療薬として有用である。したがって、小さいサイズであることのさらに別の結果は、ラクダ科のナノボディが、標的タンパク質の溝または狭い裂け目の特定の部位へ結合する結果として阻害できるということであり、したがって、従来の抗体よりも、従来の低分子量の薬物の機能により似た能力を発揮できる。
【0210】
低分子量とコンパクトなサイズはさらに、非常に熱安定性が高く、極端なpHおよびタンパク質分解消化に対して安定で、抗原性が低いラクダ科ナノボディをもたらす。別の結果は、ラクダ科動物のナノボディが循環系から組織に容易に移動し、血液脳関門さえも通過し、神経組織に影響を及ぼす障害を治療できることである。ナノボディは、血液脳関門を通過する薬物輸送をさらに促進することができる(米国特許出願公開第2004/0161738号明細書を参照)。これらの特徴は、ヒトに対する低い抗原性と相まって、大きな治療可能性を示している。さらに、これらの分子は大腸菌などの原核細胞で完全に発現でき、バクテリオファージとの融合タンパク質として発現され、機能的である。
【0211】
したがって、一実施形態では、本開示は、ActRIIBに対して高い親和性を有するラクダ科抗体またはナノボディを含む組成物に関する。本明細書の特定の実施形態において、ラクダ科抗体またはナノボディは、他の抗体について本明細書に記載の技術を使用して、ラクダ科動物で自然に産生される、すなわち、ActRIIBまたはそのペプチド断片での免疫後のラクダ科動物によって産生される。あるいは、抗ActRIIBラクダ科ナノボディは、本明細書の実施例に記載されているように、標的としてActRIIBを用いたパニング手順を使用して、適切に変異誘発されたラクダ科ナノボディタンパク質を提示するファージのライブラリなどから選択することにより、遺伝子操作、つまり産生される。遺伝子操作のナノボディは、遺伝子工学によってさらにカスタマイズでき、レシピエント対象の半減期が45分から2週間になる。特定の実施形態では、例えば国際公開第94/04678号パンフレットに記載されているように、本開示のヒト抗体の重鎖または軽鎖のCDR配列をナノボディまたは単一ドメイン抗体フレームワーク配列に移植することにより、ラクダ科抗体またはナノボディが得られる。
【0212】
非抗体の足場
既知の非免疫グロブリンフレームワークまたは足場には、アドネクチン(フィブロネクチン)(Compound Therapeutics、Inc.、ウォルサム、マサチューセッツ州)、アンキリン(Molecular Partners AG、チューリッヒ、スイス)、ドメイン抗体(Domantis、Ltd(ケンブリッジ、マサチューセッツ州)およびAblynx nv(Zwijnaarde、ベルギー))、リポカリン(アンチカリン)(Pieris Proteolab AG、Freising、ドイツ)、小型モジュール式免疫医薬品(Trubion Pharmaceuticals Inc.、シアトル、ワシントン州)、マキシボディ(Avidia、Inc.(Mountain View、カリフォルニア州))、プロテインA(アフィボディ AG、スウェーデン)およびアフィリン(γ-クリスタリンまたはユビキチン)(Scil Proteins GmbH、ハレ、ドイツ)、タンパク質エピトープ模倣薬(Polyphor Ltd、Allschwil、スイス)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0213】
(i)フィブロネクチン足場
フィブロネクチン足場は、好ましくはフィブロネクチンIII型ドメイン(例えば、フィブロネクチンIII型の10番目のモジュール(10 Fn3ドメイン))に基づいている。フィブロネクチンIII型ドメインは、2つのベータシートの間に分布する7または8個のベータ鎖を備え、それらは互いにパックしてタンパク質のコアを形成し、さらにベータ鎖を互いに接続し溶剤にさらされるループ(CDRに類似)を含む。ベータシートサンドイッチの各エッジには少なくとも3つのそのようなループがあり、エッジはベータストランドの方向に垂直なタンパク質の境界である(米国特許第6,818,418号明細書)。
【0214】
これらのフィブロネクチンベースの足場は免疫グロブリンではない、ただし全体の折り畳みは、最小機能抗体断片、重鎖の可変領域と密接に関連しており、それはラクダおよびラマIgGの抗原認識ユニット全体を含む。この構造のため、非免疫グロブリン抗体は、抗体と性質および親和性が類似する抗原結合特性を模倣する。これらの足場は、インビボでの抗体の親和性成熟のプロセスに似たインビトロでのループランダム化およびシャッフル戦略で使用できる。これらのフィブロネクチンベースの分子は、標準的なクローニング技術を使用して、分子のループ領域を本開示のCDRと置き換えることができる足場として使用することができる。
【0215】
(ii)アンキリン―分子パートナー
このテクノロジーは、アンキリン由来のリピートモジュールを含むタンパク質を、様々なターゲットへの結合に使用できる可変領域を担持するための足場として使用することに基づいている。アンキリンリピートモジュールは、2つの反平行αヘリックスと1つのβターンからなる33アミノ酸のポリペプチドである。可変領域の結合は、リボソームディスプレイを使用することにより、ほとんどが最適化される。
【0216】
(iii)マキシボディ/アビマー-Avidia
アビマーは、LRP-1などの天然のAドメイン含有タンパク質に由来する。これらのドメインは、本来タンパク質間の相互作用のために使用されており、ヒトでは250を超えるタンパク質が構造的にAドメインに基づいている。アビマーは、アミノ酸リンカーを介してリンクされた複数の様々な「Aドメイン」モノマー(2~10)で構成されている。例えば、米国特許出願公開第2004/0175756号明細書、米国特許出願公開第2005/0053973号明細書、米国特許出願公開第2005/0048512号明細書、および米国特許出願公開第2006/0008844号明細書に記載されている方法論を使用して、標的抗原に結合できるアビマーを作成することができる。
【0217】
(vi)プロテインA-アフィボディ
アフィボディ(登録商標)アフィニティーリガンドは、プロテインAのIgG結合ドメインの1つの足場に基づく3ヘリックスバンドルで構成される小さな単純なタンパク質である。プロテインAは、黄色ブドウ球菌の表面タンパク質である。この足場ドメインは58個のアミノ酸で構成され、そのうち13個がランダム化されて、多数のリガンド変異体を含むアフィボディ(登録商標)ライブラリが生成される(例えば米国特許第5,831,012号明細書を参照)。アフィボディ(登録商標)分子は抗体を模倣しており、抗体の分子量150kDaと比較して、分子量は6kDaである。サイズが小さいにもかかわらず、アフィボディ(登録商標)分子の結合部位は抗体の結合部位に似ている。
【0218】
(v)アンチカリン-Pieris
アンチカリン(登録商標)は、Pieris ProteoLab AG社によって開発された製品である。それらはリポカリンに由来する。リポカリンは、化学的に感受性が高い、または不溶性の化合物の生理的輸送または貯蔵に通常関与する小さく強健なタンパク質の広範な群である。いくつかの天然リポカリンは、ヒトの組織または体液に存在する。
タンパク質の構造は免疫グロブリンを連想させ、剛体のフレームワークの上部に超可変ループがある。しかし、抗体またはその組換え断片とは対照的に、リポカリンは160~180アミノ酸残基の単一のポリペプチド鎖で構成されており、単一の免疫グロブリンドメインよりわずかに大きいだけである。
結合ポケットを構成する4つのループのセットは、顕著な構造的可塑性を示し、様々な側鎖に耐える。したがって、結合部位は、高い親和性と特異性で異なる形状の処方された標的分子を認識するために、独自のプロセスで再形成することができる。
【0219】
リポカリンファミリーの1つのタンパク質であるオオモンシロチョウのビリン結合タンパク質(BBP)は、4つのループのセットに突然変異を起こさせることによってアンチカリンを開発するために使用されている。「アンチカリン」を記載した特許出願の一例は、国際公開第1999/16873号パンフレットである。
【0220】
(vi)アフィリン-Scil Proteins
アフィリン(商標)分子は、タンパク質と小分子に対する特定の親和性のために設計された小さな非免疫グロブリンタンパク質である。新しいアフィリン(商標)分子は、2つのライブラリから非常に迅速に選択できる。各ライブラリは、異なるヒト由来の足場タンパク質に基づいている。
【0221】
アフィリン(商標)分子は、免疫グロブリンタンパク質といかなる構造的な相同性も示さない。Scil Proteinsは、2つのアフィリン(商標)足場を使用する。その1つはガンマ結晶、ヒトの構造的な眼の水晶体タンパク質、もう1つは「ユビキチン」スーパーファミリータンパク質である。両方のヒトの足場は非常に小さく、高温安定性を示し、pHの変化と変性剤に耐性があるに近い。この高い安定性は、主にタンパク質の拡大されたベータシート構造によるものである。ガンマ結晶由来タンパク質の例は国際公開第2001/004144号パンフレットに記載されており、「ユビキチン様」タンパク質の例は国際公開第2004/106368号パンフレットに記載されている。
【0222】
(vii)タンパク質エピトープ模倣薬(PEM)
PEMは、タンパク質の相互作用に関与する主要な二次構造であるタンパク質のベータヘアピン二次構造を模倣する、中型の環状ペプチド様分子(MW1~2kDa)である。
【0223】
抗原結合ドメインの代替フレームワークまたは足場への移植
得られるポリペプチドがActRIIBに特異的に結合する少なくとも1つの結合領域を含む限り、多種多様な抗体/免疫グロブリンフレームワークまたは足場を使用することができる。そのようなフレームワークまたは足場は、ヒト免疫グロブリンの5つの主要なイディオタイプまたはその断片(本明細書の他の箇所で開示されるものなど)を含み、好ましくはヒト化した側面を有する他の動物種の免疫グロブリンを含む。この点で、ラクダ科動物で同定されたものなどの単一の重鎖抗体が特に興味深い。新規のフレームワーク、足場および断片は、当業者により発見および開発され続けている。
【0224】
一態様では、本開示の組成物は、開示された抗体のCDRが移植され得る非免疫グロブリン足場を使用する非免疫グロブリンベースの抗体を含み得る。配列番号181の標的タンパク質に特異的な結合領域(好ましくは、配列番号182に示すそのリガンド結合ドメイン)を含む限り、既知または将来の非免疫グロブリンフレームワークおよび足場を使用することができる。そのような化合物は、本明細書において「標的特異的結合領域を含むポリペプチド」として知られている。非免疫グロブリンフレームワークの例については、以下のセクションでさらに説明する(ラクダ科抗体および非抗体足場)。
【0225】
フレームワークまたはFc遺伝子操作
本開示の組成物に含まれる遺伝子操作された抗体には、例えば抗体の特性を改善するため、VHおよび/またはVL内のフレームワーク残基に修飾がなされたものが含まれる。通常、このようなフレームワークの修飾は、抗体の免疫原性を低下させるために行われる。例えば、1つのアプローチは、1つまたは複数のフレームワーク残基を対応する生殖系列配列に「突然変異(backmutate)」させることである。より具体的には、体細胞変異を受けた抗体は、抗体が由来する生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含む場合がある。そのような残基は、抗体のフレームワーク配列を、抗体が由来する生殖系列配列と比較することにより同定できる。フレームワーク領域配列を生殖系列構成に戻すために、体細胞突然変異は、例えば、部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介突然変異誘発により、生殖系列配列に「突然変異(backmutate)」することができる。そのような「突然変異(backmutate)」抗体も本開示の組成物に含まれ得る。
【0226】
別のタイプのフレームワーク修飾は、フレームワーク領域内または1つ以上のCDR領域内の1つ以上の残基を変異させてT細胞エピトープを除去し、それにより抗体の潜在的な免疫原性を低下させることを伴う。このアプローチは「脱免疫化(deimmunization)」とも呼ばれ、米国特許出願公開第2003/0153043号明細書でさらに詳しく説明されている。
【0227】
フレームワークまたはCDR領域内で行われた修飾に加えて、または代替として、本開示の抗体は、Fc領域内に修飾を含むように遺伝子操作され、通常、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、および/または抗原依存性細胞傷害性などの抗体の1つまたは複数の機能特性を変更することができる。さらに、本開示の組成物に含まれる抗体は、化学的に修飾することができ(例えば、1つ以上の化学部分を抗体に付着させることができる)、またはそのグリコシル化を変更するために、再び抗体の1つ以上の機能特性を変更するために修飾することができる。これらの実施形態のそれぞれについて、以下でさらに詳細に説明する。Fc領域の残基の番号は、KabatのEUインデックスの番号である。
【0228】
一実施形態では、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域内のシステイン残基の数が変化するように、例えば増加または減少するように改変される。このアプローチは、米国特許第5,677,425号でさらに説明されている。CH1のヒンジ領域のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖および重鎖の集合を促進するために、または抗体の安定性を増加または減少させるために変更される。
【0229】
別の実施形態では、抗体の生物学的半減期を減少させるために、抗体のFcヒンジ領域が変異される。より具体的には、Fc-ヒンジ断片のCH2-CH3ドメイン界面領域に1つ以上のアミノ酸変異を導入し、抗体が天然のFc-ヒンジドメインSpA結合と比較してスタフィロコクシルプロテインA(SpA)結合を損なうようにする。このアプローチは、米国特許第6,165,745号明細書でさらに詳細に説明されている。
【0230】
別の実施形態では、抗体はその生物学的半減期を延長するために修飾される。様々なアプローチが可能である。例えば、米国特許第6,277,375号に記載されているように、T252L、T254S、T256Fの1つ以上の変異を導入することができる。あるいは、生物学的半減期を延長するために、抗体をCH1またはCL領域内で変更して、米国特許第5,869,046号明細書、および米国特許第6,121,022号明細書に記載されているように、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから取られたサルベージ受容体結合エピトープを含むことができる。
【0231】
さらに他の実施形態では、抗体のエフェクター機能を変更するために、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置換することにより、Fc領域が変更される。例えば、1つ以上のアミノ酸は、抗体がエフェクターリガンドに対して変化した親和性を有するが、親抗体の抗原結合能力を保持するように、異なるアミノ酸残基で置換され得る。親和性が変化するエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体または補体のC1成分であり得る。このアプローチは、米国特許第5,624,821号および米国特許第5,648,260号にさらに詳細に記載され、両方ともWinterなどによる。特に、残基234および235が変異され得る。特に、これらの変異はアラニンに対するものである可能性がある。したがって、一実施形態では、本開示の組成物に含まれる抗体は、アミノ酸234および235の一方または両方でFc領域に突然変異を有する。別の実施形態では、アミノ酸234および235の一方または両方をアラニンに置換することができる。アミノ酸234および235の両方をアラニンに置換すると、ADCC活性が低下する。
【0232】
別の実施形態において、記載された抗体のアミノ酸残基から選択される1つ以上のアミノ酸は、抗体がC1q結合を変更し、および/または補体依存性細胞傷害(CDC)を低減または廃止するように、異なるアミノ酸残基で置き換えることができる。このアプローチは、米国特許第6,194,551号でさらに詳細に説明されている。
【0233】
別の実施形態において、記載された抗体の1つ以上のアミノ酸残基が変更され、それにより、補体を固定する抗体の能力が変更される。このアプローチは、国際公開第94/29351号パンフレットにさらに記載されている。
【0234】
さらに別の実施形態において、記載される抗体のFc領域は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を媒介する抗体の能力を高めるために、および/または1つ以上のアミノ酸を改変することによりFcγ受容体に対する抗体の親和性を高めるために改変される。このアプローチは、国際公開第00/42072号パンフレットでさらに説明されている。さらに、FcγR1、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnのヒトIgG1上の結合部位がマッピングされ、結合が改善された変異体が記載されている(Shields,R.L.et al.,2001 J.Biol.Chen.276:6591-6604を参照)。
【0235】
さらに別の実施形態では、本開示の組成物に含まれる抗体のグリコシル化が改変される。例えば、非グリコシル化抗体を作成することができる(すなわち、抗体はグリコシル化を欠いている)。グリコシル化は、例えば、抗原に対する抗体の親和性を高めるために変更することができる。そのような炭水化物の修飾は、例えば、抗体配列内のグリコシル化部位の1つまたは複数の部位を変更することにより達成することができる。例えば、1つまたは複数のアミノ酸置換を行って、1つまたは複数の可変領域フレームワークのグリコシル化部位を除去し、それによりその部位のグリコシル化を除去することができる。そのような非グリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を高める可能性がある。そのようなアプローチは、Coらによる米国特許第5,714,350号明細書および第6,350,861号明細書にさらに詳細に記載されている。
【0236】
追加または代替として、フコシル残基の量が少ない低フコシル化(hypofucosylation)抗体または二分枝GlcNac構造が増加した抗体など、変更されたタイプのグリコシル化を有する抗体を使用することができる。そのような変更されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を高めることが実証されている。そのような炭水化物修飾は、例えば、改変されたグリコシル化機構を備えた宿主細胞で抗体を発現させることにより達成することができる。グリコシル化機構が変更された細胞は当技術分野で記載されており、開示された組換え抗体を発現し、それによりグリコシル化が変更された抗体を産生する宿主細胞として使用できる。例えば、Hangらによる欧州特許第1,176,195号明細書は、このような細胞株で発現した抗体が低フコシル化を示すように、フコシルトランスフェラーゼをコードする機能的に破壊されたFUT8遺伝子を有する細胞株を記述している。したがって、一実施形態では、本開示の組成物に含まれる抗体は、低フコシル化パターンを示す細胞株、例えばフコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子の発現が欠損した哺乳動物細胞株における組換え発現によって産生される。国際公開第03/035835号パンフレットは、変異体CHO細胞株、Lecl3細胞について記載している。それは、フコースをAsn(297)結合炭水化物に付着する能力を低下させ、その宿主細胞で発現された抗体の低フコシル化ももたらす(Shields,R.L.et al.,2002 J.Biol.Chem.277:26733-26740も参照)。国際公開第99/54342号パンフレットは、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、ベータ(1,4)-NアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように遺伝子操作され、遺伝子操作された細胞株で発現した抗体は、抗体のADCC活性の増加をもたらす二分枝GlcNac構造の増加を示すようにする細胞株を記載している(Umana et al.,1999 Nat.Biotech.17:176-180も参照)。あるいは、本開示の組成物に含まれる抗体は、哺乳動物様のグリコシル化パターン用に遺伝子操作された酵母または糸状菌で産生することができ、グリコシル化パターンとしてフコースを欠く抗体を産生することができる(例えば欧州特許第1297172B1号明細書を参照)。
【0237】
本開示により企図される本明細書の抗体の別の修飾はペグ化である。抗体をペグ化して、例えば抗体の生物学的(例えば血清)半減期を延長することができる。抗体をペグ化するために、抗体またはその断片は、通常、1つまたは複数のPEG基が抗体または抗体断片に付着する条件下で、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコール(PEG)と反応する。ペグ化は、反応性PEG分子(または類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応によって実施することができる。本明細書で使用する場合、「ポリエチレングリコール」という用語は、モノ(C1~C10)アルコキシ-またはアリールオキシ-ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール-マレイミドなど、他のタンパク質を誘導体化するために使用されているPEGの形態のいずれかを包含することを意図している。特定の実施形態では、使用されるペグ化される抗体は、非グリコシル化抗体である。タンパク質をペグ化する方法は当技術分野で知られており、開示された抗体に適用することができる(例えば、欧州特許第0154316号明細書および欧州特許第0401384号明細書を参照)。
【0238】
本開示により企図される抗体の別の修飾は、得られた分子の半減期を延長する、本開示の組成物に含まれる抗体の少なくとも抗原結合領域と、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミンまたはその断片とのコンジュゲートまたはタンパク質融合である。(例えば、欧州特許第0322094号明細書を参照)。
【0239】
別の可能性は、少なくとも本開示の組成物に含まれる抗体の抗原結合領域と、得られる分子の半減期を延長するためのヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質に結合することができるタンパク質との融合である(例えば、欧州特許第0486525号明細書を参照)。
【0240】
変更された抗体を遺伝子操作する方法
上記のように、本明細書に示されるCDR配列、VHおよびVL配列または完全長の重鎖および軽鎖の配列を有する抗ActRIIB抗体を使用して、CDR配列の完全長重鎖および/または軽鎖配列、VHおよび/またはVL配列、またはそれに付着した定常領域を改変することにより、新しい抗ActRIIB抗体を作成することができる。したがって、本開示の別の態様では、本開示の組成物に含まれる抗ActRIIB抗体の構造的特徴を使用して、本開示の組成物に含まれる抗体の少なくとも1つの機能特性を保持する構造的に関連する抗ActRIIB抗体が作成される。例えばヒトActRIIBへ結合するが、またActRIIBの1つまたは複数の機能特性(例えば、Smad活性化の阻害)も阻害する。
【0241】
例えば、本開示の組成物またはその突然変異に含まれる抗体の1つまたは複数のCDR領域は、上記のように、既知のフレームワーク領域および/または他のCDRと組換えで組み合わせて、本開示の組成物において含まれる追加の遺伝子組換え操作で抗ActRIIB抗体を作成することができる。他のタイプの修飾には、前のセクションで説明した修飾が含まれる。遺伝子操作の方法の出発材料は、本明細書で提供されるVHおよび/またはVL配列の1つまたは複数、またはその1つまたは複数のCDR領域である。遺伝子操作された抗体を作成するために、本明細書で提供される1つ以上のVHおよび/またはVL配列、またはその1つ以上のCDR領域を有する抗体を実際に調製する(すなわち、タンパク質として発現する)必要はない。むしろ、配列に含まれる情報は、元の配列から派生した「第2世代」配列を作成するための出発材料として使用され、次いで「第2世代」配列が調製され、タンパク質として発現される。
【0242】
改変された抗体配列は、配列番号29~42および配列番号71~84からなる群から選択される固定CDR3配列、または米国特許出願公開第2005/0255552号明細書に記載されている最小必須結合決定因子、およびCDR1およびCDR2配列において多様性を有する抗体ライブラリをスクリーニングすることによっても調製できる。スクリーニングは、ファージディスプレイ技術など、抗体ライブラリから抗体をスクリーニングするのに適した任意のスクリーニング技術に従って実行することができる。
【0243】
標準的な分子生物学技術を使用して、変更された抗体配列を調製および発現させることができる。変更された抗体配列によってコードされる抗体は、本明細書に記載の抗ActRIIB抗体の機能特性の1つ、いくつか、またはすべてを保持するものであり、その機能特性には、ヒトActRIIBへの特異的結合、およびSmad活性化の阻害が含まれるが、これに限定されない。
【0244】
変更された抗体は、上記の機能特性の1つ以上、2つ以上、または3つ以上を示し得る。
【0245】
変更された抗体の機能特性は、実施例に記載されているものなどの、当技術分野で利用可能なおよび/または本明細書に記載されている標準的なアッセイ(例えばELISA)を使用して評価することができる。
突然変異は、抗ActRIIB抗体コード配列の全部または一部に沿ってランダムにまたは選択的に導入でき、得られた修飾された抗ActRIIB抗体は、本明細書に記載の結合活性および/または他の機能特性についてスクリーニングできる。突然変異法は当技術分野で記載されている。例えば、国際公開第02/092780号パンフレットは、飽和突然変異誘発、合成ライゲーションアセンブリ、またはそれらの組み合わせを使用して抗体変異を作成およびスクリーニングする方法を記載している。あるいは、国際公開第03/074679号パンフレットは、抗体の物理化学的特性を最適化するためのコンピューターによるスクリーニング方法を使用する方法を記載している。
【0246】
本開示の組成物に含まれる抗体をコードする核酸分子
哺乳動物細胞での発現に最適化された完全長軽鎖ヌクレオチド配列の例は、配列番号161~165および171~175に示されている。哺乳動物細胞での発現に最適化された完全長重鎖ヌクレオチド配列の例は、配列番号166~170および176~180に示されている。
【0247】
核酸は、細胞全体、細胞溶解物に存在していてもよく、部分的に精製された形態または実質的に純粋な形態の核酸であってもよい。核酸は、他の細胞の成分または他の汚染物質、例えば他の細胞の核酸またはタンパク質から精製された場合に「単離」または「実質的に純粋にレンダリング」される。それは標準的な技術により、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動、および当技術分野で周知の他のものを含む。F.Ausubel,et al.,ed.1987 Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley Interscience,New Yorkを参照。標準的な分子生物学技術を使用して核酸を得ることができる。ハイブリドーマによって発現される抗体(例えば、以下でさらに説明するようにヒト免疫グロブリン遺伝子を担持するトランスジェニックマウスから調製されたハイブリドーマ)については、ハイブリドーマによって作られた抗体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAは、標準的なPCR増幅またはcDNAクローニング技術によって得ることができる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリから得られた抗体の場合(例えば、ファージディスプレイ技術を使用して)、抗体をコードする核酸は、ライブラリのメンバーである様々なファージクローンから回収できる。
【0248】
VHおよびVLセグメントをコードするDNA断片が得られたら、これらのDNA断片を標準的な組換えDNA技術でさらに操作して、例えば可変領域の遺伝子を完全長抗体鎖遺伝子、Fab断片遺伝子、またはscFv遺伝子に変換できる。これらの操作では、VLまたはVHをコードするDNA断片は、別のDNA分子、または抗体定常領域や柔軟なリンカーなどの別のタンパク質をコードする断片に機能的にリンクされる。この文脈で使用される「機能的にリンクされる」という用語は、例えば、2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がインフレームのままであるように、またはタンパク質が所望のプロモーターの制御下で発現されるように、2つのDNA断片が機能的に結合されることを意味することを意図している。
【0249】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHをコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)をコードする別のDNA分子に機能的にリンクすることにより、完全長重鎖遺伝子に変換できる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野で知られており(例えば、Kabat,E.A.,et al.[上記]を参照)、これらの領域を包含するDNA断片は標準的なPCR増幅により得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域であり得る。重鎖定常領域は、IgG1アイソタイプから選択できる。Fab断片重鎖遺伝子の場合、VHをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に機能的にリンクされ得る。
【0250】
VL領域をコードする単離されたDNAは、VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に機能的にリンクすることにより、完全長軽鎖遺伝子(およびFab軽鎖遺伝子)に変換できる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野で知られており(例えば、Kabat,E.A.,et al.[上記]を参照)、これらの領域を包含するDNA断片は標準的なPCR増幅により得ることができる。軽鎖定常領域は、カッパまたはラムダ定常領域であり得る。
【0251】
scFv遺伝子を作成するには、VHおよびVLをコードするDNA断片を、柔軟なリンカーをコードする、例えばアミノ酸配列(Gly4-Ser)3をコードする別の断片に機能的にリンクし、VHおよびVL配列が連続した単鎖タンパク質として発現され、VLおよびVH領域が柔軟なリンカーによって結合されるようにする(例えばBird et al.,1988 Science 242:423-426;Huston et al.,1988 Proc.Natl.AcadSci.USA 85:5879-5883;McCafferty et al.,1990 Nature 348:552-554を参照)。
【0252】
モノクローナル抗体の生成
モノクローナル抗体(mAbs)は、様々な技術で産生でき、例えば従来のモノクローナル抗体方法論、例えばKohlerとMilsteinの標準体細胞ハイブリダイゼーション技術(1975 Nature 256:495)がある。モノクローナル抗体を産生するための多くの技術は、例えば、Bリンパ球のウイルスまたは発癌性形質転換に使用できる。
ハイブリドーマを調製するための動物系はマウス系である。マウスでのハイブリドーマ産生は、十分に確立された手順である。免疫プロトコルおよび融合のための免疫脾細胞の単離のための技術は、当技術分野で公知である。融合パートナー(マウス骨髄腫細胞など)および融合手順も知られている。
【0253】
本開示の組成物に含まれるキメラまたはヒト化抗体は、上記のように調製されたマウスモノクローナル抗体の配列に基づいて調製することができる。重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAは、目的のマウスハイブリドーマから取得し、標準的な分子生物学技術を使用して非マウス(例えば、ヒト)免疫グロブリン配列を含むように遺伝子操作できる。例えば、キメラ抗体を作製するために、当技術分野で公知の方法を使用して、マウス可変領域をヒト定常領域にリンクすることができる(例えば、米国特許第4,816,567号明細書を参照)。ヒト化抗体を作成するために、当技術分野で知られている方法を使用して、マウスCDR領域をヒトフレームワークに挿入することができる(例えば、米国特許第5225539号明細書、第5530101号明細書、第5585089号明細書、第5693762号明細書および第6180370号明細書を参照)。
【0254】
特定の実施形態では、本開示の組成物に含まれる抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。ActRIIBに対するよう対象とされたこのようなヒトモノクローナル抗体は、マウス系ではなくヒト免疫系の部分を保有するトランスジェニックまたはトランスクロモソミックマウスを使用して生成することができる。これらのトランスジェニックおよびトランスクロモソミックマウスには、本明細書でそれぞれHuMAbマウスおよびKMマウスと呼ばれるマウスが含まれ、本明細書では集合的に「ヒトIgマウス」と呼ばれる。
【0255】
HuMAb mouse(登録商標)(Medarex,Inc.)には、未再構成のヒト重鎖(μおよびγ)およびκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座と、内因性のμおよびκ鎖遺伝子座を不活性化する標的変異が含まれる(例えば、Lonberg,et al.,1994 Nature 368(6474):856-859を参照)。したがって、マウスはマウスIgMまたはκの発現の低下を示し、免疫に応答して、導入されたヒト重鎖および軽鎖導入遺伝子はクラススイッチングおよび体細胞変異を受けて、高親和性ヒトIgGκモノクローナルを生成する(Lonberg、N.et al.,1994[上記];Lonberg,N.,1994 Handbook of Experimental Pharmacology 113:49-101;Lonberg,N.and Huszar,D.,1995 Intern.Rev.Immunol.13:65-93、およびHarding,F.and Lonberg,N.,1995 Ann.N.Y.Acad.Sci.764:536-546でのレビュー)。HuMAbマウスの調製および使用、ならびにそのようなマウスによって保有されるゲノム修飾は、Taylor,L.et al.,1992 Nucleic Acids Research 20:6287-6295;Chen,J.et al.,1993 International Immunology 5:647-656;Tuaillon et al.,1993 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:3720-3724;Choi et al.,1993 Nature Genetics 4:117-123;Chen,J.et al.,1993 EMBO J.12:821-830;Tuaillon et al.,1994 J.Immunol.152:2912-2920;Taylor,L.et al.,1994 International Immunology 579-591;and Fishwild,D.et al.,1996 Nature Biotechnology 14:845-851にてさらに記載される。これらのすべての内容は、参照によりその全体が本明細書に具体的に組み込まれる。さらに、米国特許第5,545,806号明細書、第5,569,825号明細書、第5,625,126号明細書、第5,633,425号明細書、第5,789,650号明細書、第5,877,397号明細書、第5,661,016号明細書、第5,814,318号明細書、第5,874,299号明細書、第5,770,429号明細書、および第5,545,807号明細書、同様に国際公開第92/103918号パンフレット、国際公開第93/12227号パンフレット、国際公開第94/25585号パンフレット、国際公開第97/113852号パンフレット、国際公開第98/24884号パンフレット、国際公開第99/45962号パンフレット、および国際公開第01/14424号パンフレットを参照。
【0256】
別の実施形態では、本開示の組成物に含まれるヒト抗体は、ヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖トランス染色体を保有するマウスなどの導入遺伝子およびトランス染色体上にヒト免疫グロブリン配列を保有するマウスを使用して生じさせることができる。本明細書で「KMマウス」と呼ばれるそのようなマウスは、国際公開第02/43478号パンフレットに詳細に記載されている。
【0257】
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替のトランスジェニック動物系が当技術分野で利用可能であり、本開示の抗ActRIIB抗体を産生するために使用することができる。例えば、Xenomouse(Abgenix,Inc.)と呼ばれる代替のトランスジェニックシステムを使用できる。そのようなマウスは、例えば、米国特許第5,939,598号明細書、第6,075,181号明細書、第6,114,598号明細書、第6,150,584号明細書、および第6,162,963号明細書にて記載されている。
【0258】
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する別のトランスクロモソミック動物系が当技術分野で利用可能であり、本開示の抗ActRIIB抗体を産生するために使用することができる。例えば、「TCマウス」と呼ばれる、ヒト重鎖トランス染色体とヒト軽鎖トランス染色体の両方を保有するマウスを使用できる。そのようなマウスは、Tomizuka et al.,2000 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:722-727に記載されている。さらに、ヒトの重鎖および軽鎖のトランス染色体を保有するウシは、当技術分野で記載されており(Kuroiwa et al.,2002 Nature Biotechnology 20:889-894)、抗ActRIIB抗体を産生するために使用できる。
【0259】
また、本開示の組成物に含まれるヒト組換え抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリをスクリーニングするためのファージディスプレイ法を使用して調製することができる。ヒト抗体を単離するためのそのようなファージディスプレイ法は、当技術分野で確立されているか、以下の実施例に記載されている。例えば、米国特許第5,223,409号明細書、第5,403,484号明細書、第5,571,698号明細書、第5,427,908号明細書、第5,580,717号明細書、第5,969,108号明細書、第6,172,197号明細書、第5,885,793号明細書、第6,521,404号明細書、第6,544,731号明細書、第6,555,313号明細書、第6,582,915号明細書、および第6,593,081号明細書を参照。
【0260】
本開示の組成物に含まれるヒトモノクローナル抗体はまた、免疫時にヒト抗体応答が生成され得るようにヒト免疫細胞が再構成されたSCIDマウスを使用して調製することもできる。そのようなマウスは、例えば、米国特許第5,476,996号明細書、および第5,698,767号明細書に記載されている。
【0261】
ヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの生成
本開示の組成物に含まれるヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを生成するために、免疫マウスから脾細胞および/またはリンパ節細胞を単離し、マウス骨髄腫細胞株などの適切な不死化細胞株に融合することができる。得られたハイブリドーマは、抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングすることができる。例えば、免疫マウスの脾臓リンパ球の単一細胞懸濁液を、50%PEGで6分の1の数のP3X63-Ag8.653非分泌マウス骨髄腫細胞(ATCC、CRL 1580)に融合させることができる。細胞を平底マイクロタイタープレートに約2×145で播種し、その後、20%胎児クローン血清、18%「653」馴化培地、5%オリゲン(IGEN)、4mM L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、5mM HEPES、0:055mM 2-メルカプトエタノール、50ユニット/mlペニシリン、50mg/mlストレプトマイシン、50mg/mlゲンタマイシン、および1X HAT(Sigma;HATは融合の24時間後に追加)を含む選択培地で2週間インキュベートする。約2週間後、HATをHTに置き換えた培地で細胞を培養できる。次いで個々のウェルは、ヒトモノクローナルIgMおよびIgG抗体についてELISAによってスクリーニングできる。広範なハイブリドーマの増殖が発生すると、通常10~14日後に培地を観察できる。抗体を分泌するハイブリドーマを再播種し、再度スクリーニングすることができる。ヒトIgGが依然陽性の場合、モノクローナル抗体は限界希釈により少なくとも2回サブクローニングできる。その後、安定したサブクローンをインビトロで培養して、特性評価のために組織培養培地で少量の抗体を生成できる。
ヒトモノクローナル抗体を精製するには、選択したハイブリドーマをモノクローナル抗体精製用の2リットルのスピナーフラスコで成長させてもよい。プロテインAセファロース(Pharmacia)を用いたアフィニティークロマトグラフィーの前に、上清をろ過して濃縮することができる。溶出したIgGは、ゲル電気泳動と高速液体クロマトグラフィーでチェックして純度を確認できる。緩衝液はPBSに交換でき、濃度は1.43の吸光係数を使用してOD280で判定できる。モノクローナル抗体を分注し、-80℃で保存できる。
【0262】
モノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマの生成
本開示の組成物に含まれる抗体は、例えば、当技術分野で周知の組換えDNA技術と遺伝子トランスフェクション法の組み合わせを使用して、宿主細胞トランスフェクトーマで産生することもできる(例えば、Morrison,S.(1985)Science 229:1202)。
【0263】
例えば、抗体またはその抗体断片を発現するために、部分的または完全長軽鎖および重鎖をコードするDNAは、標準的な分子生物学技術(例えば、目的の抗体を発現するハイブリドーマを使用したPCR増幅またはcDNAクローニング)によって得ることができ、遺伝子が転写および翻訳制御配列に機能的にリンクされるように、DNAを発現ベクターに挿入することができる。この文脈において、「機能的にリンクされた」という用語は、ベクター内の転写および翻訳制御配列が抗体遺伝子の転写および翻訳を調節する意図された機能を果たすように、抗体遺伝子がベクターに連結されることを意味することを意図している。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。抗体の軽鎖遺伝子と抗体の重鎖遺伝子は、別々のベクターに挿入することができる。より一般的には、両方の遺伝子を同じ発現ベクターに挿入する。抗体遺伝子は、標準的な方法で発現ベクターに挿入される(例えば、抗体遺伝子断片とベクターの相補的制限部位のライゲーション、または制限部位が存在しない場合は平滑末端ライゲーション)。本明細書に記載の抗体の軽鎖および重鎖可変領域を使用して、所望のアイソタイプの重鎖定常および軽鎖定常領域を既にコードしている発現ベクターに挿入することにより、任意の抗体アイソタイプの完全長抗体遺伝子を作成でき、VHセグメントはベクター内のCHセグメントに機能的にリンクされ、VLセグメントはベクター内のCLセグメントに機能的にリンクされる。追加的または代替的に、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームでリンクされるように、抗体鎖遺伝子をベクターにクローニングすることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質からのシグナルペプチド)であり得る。
【0264】
抗体鎖遺伝子に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を保有している。「調節配列」という用語は、抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を制御するプロモーター、エンハンサー、および他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図している。そのような調節配列は、例えば、Goeddel(Gene Expression Technology.Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,CA 1990)に記載されている。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどの要因に依存する可能性があることを当業者は理解するであろう。哺乳類宿主細胞発現の調節配列には、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、およびポリオーマ)に由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーなど、哺乳動物細胞で高レベルのタンパク質の発現を指示するウイルスの要素が含まれる。あるいは、ユビキチンプロモーターまたはP-グロビンプロモーターなどの非ウイルス性調節配列を使用してもよい。さらにまた、異なるソースからの配列で構成される調節の要素、例えばSRaプロモーターシステムで構成され、それはSV40初期プロモーターとヒトT細胞白血病ウイルス1型の長い末端反復配列由来の配列を含む(Takebe、Y.et al.,1988 Mol.Cell.Biol.8:466-472)。
【0265】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、組換え発現ベクターは、追加の配列、例えば宿主細胞のベクターの複製を調節する配列(例えば、複製の起点)および選択可能なマーカー遺伝子を保有してもよい。選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を促進する(例えば、米国特許第4,399,216号明細書、第4,634,665号明細書および第5,179,017号明細書を参照)。例えば、典型的には、選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートなどの薬剤に対する耐性を付与する。選択可能なマーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メトトレキサートの選択/増幅を伴うdhfr宿主細胞での使用)およびneo遺伝子(G418の選択)が含まれる。
【0266】
軽鎖および重鎖の発現のために、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターは、標準的な技術により宿主細胞にトランスフェクトされる。「トランスフェクション」という用語の様々な形は、外因性DNAを原核生物または真核生物の宿主細胞に導入するために一般に使用される多種多様な技術を包含することを意図している。例えばエレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクションなどがある。原核生物または真核生物宿主細胞のいずれかで本開示の抗体を発現させることは理論的に可能である。このような真核細胞、また特に哺乳動物細胞は、原核細胞よりも、適切に折りたたまれた免疫学的に活性な抗体を組み立てて分泌する可能性が高いため、真核細胞、特に哺乳類宿主細胞での抗体の発現が議論されている。抗体遺伝子の原核生物発現は、高収率の活性抗体の産生には効果がないことが報告されている(Boss,M.A.and Wood,C.R.,1985 Immunology Today 6:12-13)。
【0267】
本開示の組成物に含まれる組換え抗体を発現させるための哺乳動物宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えばR.J.Kaufman and P.A.Sharp,1982 Mol.Biol.159:601-621に記載されているDH FR選択可能マーカーとともに使用する、Urlaub and Chasin,1980 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216-4220に記載されているdhfr-CHO細胞を含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞が含まれる。一実施形態では、宿主細胞はCHO K1PD細胞である。特に、NSO骨髄腫細胞で使用するための別の発現系は、国際公開第87/04462号パンフレット、国際公開第89/01036号パンフレットおよび欧州特許第338,841号明細書に示されているGS遺伝子発現系である。本開示の組成物に含まれる組換え抗体を発現するための哺乳動物宿主細胞には、例えば米国特許第6,946,292B2号明細書に記載されているようなFUT8遺伝子発現を欠く哺乳動物細胞株が含まれる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入されると、抗体は、宿主細胞での抗体の発現、または宿主細胞が増殖する培養培地への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間、宿主細胞を培養することにより産生される。標準的なタンパク質精製法を使用して、培地から抗体を回収できる。
【0268】
イムノコンジュゲート
別の態様では、本開示は、細胞毒素、薬物(例えば、免疫抑制剤)または放射性毒素などの治療部分にコンジュゲートした抗ActRIIB抗体またはその断片を含む組成物を特徴とする。そのようなコンジュゲートは、本明細書では「イムノコンジュゲート」と呼ばれる。1つ以上の細胞毒素を含むイムノコンジュゲートは、「免疫毒素」と呼ばれる。細胞毒素または細胞毒性剤には、細胞に有害な(例えば、殺す)任意の薬剤が含まれる。
【0269】
当技術分野で利用可能なリンカー技術を使用して、細胞毒素を本開示の抗体にコンジュゲートさせることができる。細胞毒素を抗体にコンジュゲートするために使用されてきたリンカータイプの例には、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィド、およびペプチド含有リンカーが含まれるが、これらに限定されない。例えば、リソソーム区画内の低pHによる切断を受けやすい、またはカテプシン(例えば、カテプシンB、C、D)などの腫瘍組織で優先的に発現されるプロテアーゼなどのプロテアーゼによる切断を受けやすいリンカーを選択できる。
【0270】
細胞毒素、リンカー、および治療薬を抗体にコンジュゲートさせる方法の種類のさらなる考察については、Saito,G.et al.,2003 Adv.Drug Deliv.Rev.55:199-215;Trail,P.A.et al.,2003 Cancer Immunol.Immunother.52:328-337;Payne,G.2003 Cancer Cell 3:207-212;Allen,T.M.,2002 Nat.Rev.Cancer 2:750-763;Pastan,I.and Kreitman,R.J.,2002 Curr.Opin.Investig.Drugs 3:1089-1091;Senter,P.D.and Springer,C.J.,2001 Adv.Drug Deliv.Rev.53:247-264も参照されたい。
【0271】
本開示の組成物に含まれる抗体はまた、放射性同位体とコンジュゲートして、放射性イムノコンジュゲートとも呼ばれる細胞毒性放射性医薬品を生成することができる。診断または治療に使用するために抗体にコンジュゲートできる放射性同位体の例には、ヨウ素131、インジウム111、イットリウム90、およびルテチウム177が含まれるが、これらに限定されない。放射性イムノコンジュゲートを調製する方法は、当技術分野で確立されている。Zevalin(商標)(DEC Pharmaceuticals)およびBexxar(商標)(Corixa Pharmaceuticals)を含む放射性イムノコンジュゲートの例は市販されており、同様の方法を使用して、本開示の抗体を使用して放射性イムノコンジュゲートを調製することができる。
【0272】
本開示の組成物に含まれる抗体コンジュゲートは、所定の生物学的応答を改変するために使用でき、薬物部分は古典的な化学治療薬に限定されると解釈されるべきではない。例えば、薬物部分は、所望の生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドであり得る。そのようなタンパク質には、例えば、酵素的に活性な毒素、またはその活性断片、例えばアブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、またはジフテリア毒素;タンパク質、例えば腫瘍壊死因子またはインターフェロン-γ;または、生物学的応答修飾因子、例えばリンフォカイン、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)、またはその他の成長因子が含まれ得る。
【0273】
そのような治療部分を抗体にコンジュゲートさせる技術は周知であり、例えば、Amon et al.,“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeld et al.(eds.),pp.243-56 (Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstrom et al.,“Antibodies For Drug Delivery”,in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.),Robinson et al.(eds.),pp.623-53 (Marcel Dekker,Inc.1987);Thorpe,“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review”,in Monoclonal Antibodies‘84:Biological And Clinical Applications,Pinchera et al.(eds.),pp.475-506 (1985);“Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwin et al.(eds.),pp.303-16 (Academic Press 1985),and Thorpe et al.,“The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates”,Inmunol.Rev.,62:119-58(1982)を参照されたい。
【0274】
二重特異性分子
別の態様では、本開示は、本開示の抗ActRIIB抗体またはその断片を含む二重特異性または多重特異性分子を含む組成物を特徴とする。本開示の組成物に含まれる抗体、またはその抗原結合領域は、別の機能性分子、例えば少なくとも2つの異なる結合部位または標的分子に結合する二重特異性分子を生成するための別のペプチドまたはタンパク質(例えば、受容体に対する別の抗体またはリガンド)に誘導体化されるか、リンクされ得る。本開示の抗体は、実際には、2つ以上の異なる結合部位および/または標的分子に結合する多重特異性分子を生成する2つ以上の他の機能分子に誘導体化またはリンクされ得る。そのような多重特異性分子も、本明細書で使用される場合、「二重特異性分子」という用語に含まれることが意図されている。本開示の二重特異性分子を作製するために、本開示の抗体は、二重特異性分子が生じるようにする、別の抗体、抗体断片、ペプチドまたは結合する模倣薬などの1つまたは複数の他の結合分子に機能的にリンクすることができる(例えば、化学結合、遺伝子融合、非共有結合性会合など)。
【0275】
したがって、本開示は、ActRIIBに対する少なくとも1つの第1の結合特異性および第2の標的エピトープに対する第2の結合特異性を含む二重特異性分子を含む組成物を含む。例えば、第2の標的エピトープは、第1の標的エピトープとは異なるActRIIBの別のエピトープであってもよい。
【0276】
さらに、二重特異性分子が多重特異性である組成物の場合、分子はさらに、第1および第2の標的エピトープに加えて、第3の結合特異性を含むことができる。
【0277】
一実施形態では、開示された組成物の二重特異性分子は、結合特異性として、少なくとも1つの抗体またはその抗体断片を含む。例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、または単鎖Fvを含む。抗体は、軽鎖もしくは重鎖二量体、またはその内容が参照により明示的に組み込まれているLadnerらの米国特許第4,946,778号明細書に記載のFvまたは単鎖構築物などの任意のその最小断片であってもよい。
【0278】
二重特異性分子に使用できる他の抗体は、マウス、キメラ、およびヒト化モノクローナル抗体である。
【0279】
本開示の組成物に含まれる二重特異性分子は、当技術分野で公知の方法を使用して、構成要素結合特異性をコンジュゲートすることにより調製され得る。例えば、二重特異性分子の各結合特異性は別々に生じさせ、その後互いにコンジュゲートされることができる。結合特異性がタンパク質またはペプチドである場合、様々なカップリング剤または架橋剤を共有結合に使用できる。架橋剤の例には、プロテインA、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオアセテート(SATA)、5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、o-フェニレンジマレイミド(oPDM)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、およびスルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロハクサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)(例えばKarpovsky et al.,1984 J.Exp.Med.160:1686;Liu,MA et al.,1985 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:8648を参照)が挙げられる。他の方法には、Paulus,1985 Behring Ins.Mitt.No.78,118-132;Brennan et al.,1985 Science 229:81-83、および Glennie et al.,1987 J.Immunol.139:2367-2375が挙げられる。コンジュゲート剤は、SATAおよびスルホSMCCであり、両方ともPierce Chemical Co.(イリノイ州ロックフォード)から入手可能である。
【0280】
結合特異性が抗体の場合、2つの重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合によってコンジュゲートできる。特定の実施形態では、ヒンジ領域は、コンジュゲーションの前に、奇数個、例えば1個のスルフヒドリル残基を含むように修飾される。
【0281】
あるいは、両方の結合特異性を同じベクターでコードし、同じ宿主細胞で発現および組み立てることができる。この方法は、二重特異性分子がmAb×mAb、mAb×Fab、Fab×F(ab’)2、またはリガンド×Fab融合タンパク質である場合に特に役立つ。本開示の組成物に含まれる二重特異性分子は、1つの単鎖抗体および結合決定因子を含む単鎖分子、または2つの結合決定因子を含む単鎖二重特異性分子であり得る。二重特異性分子は、少なくとも2つの単鎖分子を含んでもよい。二重特異性分子を調製する方法は、例えば、米国特許第5,260,203号明細書;第5,455,030号明細書;第4,881,175号明細書;第5,132,405号明細書;第5,091,513号明細書;第5,476,786号明細書;第5,013,653号明細書;第5,258,498号明細書;および第5,482,858号明細書に記載されている。
【0282】
二重特異性分子の特定の標的への結合は、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、FACS分析、バイオアッセイ(例えば、成長阻害)、またはウエスタンブロットアッセイによって確認できる。これらのアッセイのそれぞれは、一般に、関心のある複合体に特異的な標識試薬(抗体など)を使用することにより、特定の関心のあるタンパク質-抗体複合体の存在を検出する。
【0283】
多価抗体
別の態様では、本開示は、ActRIIBに結合する開示された抗体の少なくとも2つの同一または異なる抗原結合部分を含む多価抗体を含む組成物に関する。一実施形態では、多価抗体は、抗体の少なくとも2つ、3つまたは4つの抗原結合部分を提供する。抗原結合部分は、タンパク質融合または共有結合または非共有結合を介して互いに結合することができる。あるいは、二重特異性分子について結合方法が記載されている。様々な実施形態では、組成物は、一価、二価、または多価(例えば、1つ、2つ、またはいくつかの抗原に結合することができる)、および/または単一特異性、二重特異性または多重特異性(例えば、1つ、2つ、またはいくつかの異なる抗原に結合できる結合領域を有する)であり得る。組成物は、これらの任意の組み合わせ、例えば、一価および単一特異性(1つの抗原またはエピトープに結合する1つの結合領域を有する);または、二価および二重特異性(それぞれ異なるエピトープまたは抗原に結合する2つの結合領域を有する);または、二価および単一特異性(それぞれが同じエピトープまたは抗原に結合する2つの結合領域を有する);または多価および単一特異性(すべてが同じ抗原またはエピトープに結合するいくつかの結合領域を有する);または多価および多重特異性(いくつかの異なる抗原またはエピトープに結合するいくつかの結合領域を有する)であり得る。
【0284】
医薬組成物
別の態様では、本開示は、組成物、例えば、上記の抗体/モノクローナル抗体の1つまたは組み合わせ、またはその抗原結合部分を含む、薬学的に許容される担体と共に製剤化された医薬組成物を提供する。そのような組成物は、記載された抗体、またはイムノコンジュゲートまたは二重特異性分子の1つまたは組み合わせ(例えば、2つ以上の異なるもの)を含み得る。例えば、本開示の医薬組成物は、標的抗原の異なるエピトープに結合する抗体または相補的活性を有する抗体の組み合わせを含むことができる。
【0285】
本開示の医薬組成物は、併用療法で、すなわち他の薬剤と組み合わせて投与することもできる。例えば、併用療法は、少なくとも1つの他の筋肉量/強度増加剤、例えばIGF-1、IGF-2またはIGF-1またはIGF-2、抗ミオスタチン抗体、ミオスタチンプロペプチド、ActRIIBに結合するがそれを活性化しないミオスタチンデコイタンパク質、ベータ2アゴニスト、グレリンアゴニスト、SARM、GHアゴニスト/模倣薬またはフォリスタチンの変異体と組み合わせた本開示の抗ActRII抗体を含むことができる。併用療法で使用できる治療薬の例は、本開示の抗体の使用に関するセクションで以下により詳細に説明されている。
【0286】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」には、生理学的に適合するいずれかのまたあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮投与(例えば注射または注入による)、好ましくは静脈内注射または注入に適したものであるべきである。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち抗体、イムノコンジュゲート、または二重特異性分子を材料でコーティングして、酸の作用および化合物を不活性化する可能性のある他の自然条件から化合物を保護してもよい。
【0287】
本開示の医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される塩を含んでもよい。「薬学的に許容される塩」とは、親化合物の所望の生物活性を保持し、いかなる望ましくない毒性効果をも与えない塩を指す(例えば、Berge,S.M.,et al.,1977 J.Pharm.Sci.66:1-19を参照)。そのような塩の例には、酸付加塩および塩基付加塩が含まれる。酸付加塩には、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リンなどの無毒の無機酸、ならびに脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル-置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などの無毒の有機酸に由来するものが含まれる。塩基付加塩には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、およびN,N’-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどの非毒性有機アミンに由来するものが含まれる。
【0288】
本開示の医薬組成物はまた、薬学的に許容される抗酸化剤を含んでもよい。薬学的に許容される抗酸化剤の例には、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなどの油溶性抗酸化剤;クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤が含まれる。
【0289】
本開示の医薬組成物に用いることができる適切な水性および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、植物性油、例えばオリーブ油、および注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルなどが含まれる。適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散液の場合には必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。
【0290】
これらの組成物はまた、保存料、湿潤剤、乳化剤および分散剤のような補助剤も含み得る。微生物の存在の防止は、上記の滅菌手順によって、および様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含めることによって確保され得る。また、糖類、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含めることが望ましい場合がある。さらに、モノステアリン酸アルミニウムやゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を含めることにより、注射可能な医薬形態の長期吸収がもたらされ得る。
薬学的に許容される担体には、滅菌水溶液または分散液、および滅菌注射液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野で知られている。いずれかの従来の媒体または薬剤が活性化合物と不適合である場合を除いて、本開示の薬学的組成物におけるそれらの使用が企図される。補助的な活性化合物も組成物に組み込むことができる。
【0291】
治療用組成物は、典型的には、製造および保管の条件下で無菌かつ安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、または高い薬物濃度に適した他の秩序構造として製剤化することができる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合は必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用により維持することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖類、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムなどの多価アルコールを組成物に含めることができる。注射可能な組成物の長期にわたる吸収は、組成物に吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによりもたらされ得る。
【0292】
滅菌注射液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて、上に列挙した薬剤の1つまたは組み合わせとともに適切な溶媒に組み込み、その後に精密ろ過滅菌を行うことにより調製できる。一般に、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒体および上に列挙したものから得る必要な他の薬剤を含む滅菌ビヒクルに組み込むことにより調製される。滅菌注射液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法は、真空乾燥および凍結-乾燥(凍結乾燥)であり、活性薬剤の粉末と、以前に滅菌ろ過されたその溶液から、任意の追加の所望の薬剤が得られる。
【0293】
単一の剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる活性剤の量は、治療される対象、および特定の投与様式に応じて変わる。単一剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性剤の量は、一般に、治療効果を生じる組成物の量である。一般に、100パーセントのうち、この量は、薬学的に許容される担体と組み合わせて約0.01パーセントから約99パーセントの活性剤、約0.1パーセントから約70パーセント、または約1パーセントから約30パーセントの活性剤の範囲である。
【0294】
投与計画は、最適な望ましい反応(例えば、治療反応)を提供するために調整される。例えば、治療状況の緊急性によって示されるように、単一のボーラスを投与しても、数回に分けた用量を経時的に投与しても、用量を比例的に減少または増加させてもよい。投与の容易さおよび投与量の均一性のために、投与単位形態で非経口組成物を処方することが特に有利である。本明細書で使用される用量単位形態は、治療される対象の単位用量として適した物理的に別個の単位を示す。各単位は、必要な医薬担体に関連して所望の治療効果を生み出すために計算された所定量の活性化合物を含む。本開示の投与単位形態の仕様は、活性化合物の固有の特性および達成される特定の治療効果、ならびに個人の治療の感度のためのそのような活性化合物を配合する技術に固有の制限によって規定され、直接依存する。
【0295】
組成物を含む抗体の投与のために、抗体投与量は、宿主の体重の約0.0001から約100mg/kg、より一般的には約0.01から約30mg/kgの範囲である。例えば、投与量は、約1~10mg/kgの範囲内で約1mg/kg体重、約3mg/kg体重、約5mg/kg体重または約10mg/kg体重であり、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10mg/kg体重である。投与は必要に応じて繰り返され、週に1回程度から10週に1回程度、例えば4~8週に1回の範囲であり得る。しかし、状況によっては、パルス療法を利用することもできる。例えば、緊急治療室などで、心疾患の急性増悪の患者にActII受容体アンタゴニストを1回注射する。
【0296】
投与は静脈内で行うことが好ましい。本開示の抗ActRII抗体、例えばビマグルマブの投与計画には、静脈内投与による4週間に1回、約1mg/kg体重または約3mg/kg体重または約10mg/kg体重が含まれる。
【0297】
いくつかの方法では、異なる結合特異性を有する2つ以上のモノクローナル抗体が本開示の組成物に含まれ、したがって同時に投与され、その場合、投与される各抗体の用量は示された範囲内に入る。通常、抗体は複数回投与される。単回投与の間隔は、例えば、毎週、毎月、3ヶ月ごと、6ヶ月ごと、または毎年であり得る。患者の標的抗原に対する抗体の血中濃度を測定することで示されるように、間隔は不規則である場合もある。いくつかの方法では、約1~約1000μg/mlの血漿抗体濃度を達成するように用量を調整し、いくつかの方法では約25~約300μg/mlの血漿抗体濃度を達成する。例えば、本開示のActRII抗体は、抗ミオスタチン抗体と同時に投与され得る。
【0298】
投与量と頻度は、患者の抗体の半減期によって異なる。一般に、ヒト抗体は最長の半減期を示し、その後にヒト化抗体、キメラ抗体、および非ヒト抗体が続く。投与の用量と頻度は、治療が予防か治療かによって異なり得る。予防の適用では、比較的低頻度の投与量が長期間にわたって比較的まれな間隔で投与される。一部の患者は、生涯にわたって治療を受け続ける。治療用途では、疾患の進行が軽減または終了するまで、または患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高い投与量が必要になることがある。その後、患者に予防計画を行うことができる。
【0299】
本開示の組成物に含まれる抗ActRII抗体の「治療有効用量」の投与は、疾患の症状の重症度の低下、疾患の症状のない期間の頻度および持続期間の増加、または障害の予防または疾患の苦悩、すなわち心機能の増大による障害をもたらし得る。
【0300】
活性化合物は、移植片、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤など、急速な放出から化合物を保護する担体とともに調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸などの生分解性の生体適合性ポリマーを使用できる。そのような製剤の調製のための多くの方法が特許にされているか、一般に当業者に知られている。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照されたい。
【0301】
治療組成物は、当技術分野で知られている医療機器で投与することができる。
【0302】
本開示の用途と方法
本開示の組成物および開示された抗体は、心疾患の治療または心疾患に罹患した患者の状態の改善または心疾患に関連する症状の軽減に影響を及ぼすため、治療上の有用性を有する。
【0303】
本明細書で使用される場合、「対象」または「個体」という用語は、ヒトおよび非ヒト動物を含むことを意図している。人間以外の動物には、すべての脊椎動物が含まれる。例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類、および爬虫類などの哺乳類および非哺乳類が挙げられる。
【0304】
したがって、本開示は、本開示の組成物または開示されたActRII受容体アンタゴニスト、例えばActRII結合分子、より好ましくはActRIIに対する抗体、例えばビマグルマブまたはBYM338がActRIIの機能を阻害、すなわち拮抗し、それにより、様々なタイプの心疾患の改善をもたらす治療方法にも関する。本開示は、治療有効量のActRII受容体アンタゴニスト、例えば好ましくはActRIIB結合分子、より好ましくはActRIIBに対するアンタゴニスト抗体、例えばビマグルマブまたはBYM338または開示された組成物を患者に投与することを含む、心疾患を予防および/または治療する方法を提供する。
【0305】
開示された治療方法で使用できるActRII受容体アンタゴニスト、例えばActRII結合分子、好ましくはActRIIB、例えばビマグルマブまたはBYM338に対するアンタゴニスト抗体の例は、上記で詳細に開示または記載されたものである。特定の実施形態では、ActRII抗体(例えば、ビマグルマブまたはBYM338)は、本明細書で開示される本発明の組成物に含まれる。
【0306】
本開示はまた、前述のような様々な形態の心疾患を治療するための医薬品の製造における、ActRII受容体アンタゴニスト、例えばActRIIAまたはActRIIB受容体結合分子、好ましくはActRIIに対するアンタゴニスト抗体、例えばBYM338の使用に関する。
【0307】
ActRII結合分子、好ましくはActRIIに対するアンタゴニスト抗体、例えば、ビマグルマブまたはBYM338は、単独の活性剤として、または例えば他の薬物、例えばIGF-1、IGF-2、またはIGF-1またはIGF-2の変異体、抗ミオスタチン抗体、ミオスタチンプロペプチド、ActRIIBに結合するが活性化しないミオスタチンデコイタンパク質、ベータ2アゴニスト、グレリンアゴニスト、SARM、GHアゴニスト/模倣薬またはフォリスタチンに対する補助剤として、または組み合わせて、併用して投与することができる。例えば、本開示のアンタゴニストは、国際公開第2007/146689号パンフレットに開示されているIGF-1模倣薬と組み合わせて使用され得る。
【0308】
上記に従って、本開示は、さらなる態様において、同時の投与、例えば、同時投与、または連続的に治療的有効量のActRII受容体アンタゴニスト、好ましくはActRII結合分子、より好ましくはActRIIに対するアンタゴニスト抗体、例えばビマグルマブまたはBYM338、および少なくとも1つの第2の薬物物質を含む上記で定義された方法または使用を提供し、前記第2の薬物物質は、IGF-1、IGF-2またはIGF-1またはIGF-2の変異体、抗ミオスタチン抗体、ミオスタチンプロペプチド、ActRIIに結合するがそれを活性化しないミオスタチンデコイタンパク質、ベータ2アゴニスト、グレリンアゴニスト、SARM、GHアゴニスト/模倣薬またはフォリスタチンである。
【0309】
キット
本発明はまた、ActRII受容体アンタゴニスト、例えば、ActRII受容体結合分子(例えば、ActRII受容体抗体またはその抗原結合断片、例えば、ビマグルマブまたはBYM338)またはActRII受容体(すなわち、ActRIIB受容体)結合分子(例えば、抗ActRIIB抗体またはその抗原結合断片)(例えば、液体または凍結乾燥形態)またはActRII受容体アンタゴニストを含む医薬組成物(上記)を含み得るキットを包含する。さらに、そのようなキットは、ActRIIアンタゴニストを投与するための手段(例えば、注射器およびバイアル、事前充填済み注射器、事前充填済みペン)および使用説明書を含み得る。これらのキットは、例えば、同封のActRIIアンタゴニスト、例えばBYM338と組み合わせて送達するための追加の治療薬(上記)を含んでもよい。
【0310】
「投与手段」という語句は、事前に充填されたシリンジ、バイアルとシリンジ、注射ペン、自動注射器、点滴静注とバッグ、ポンプなどを含むが、これらに限定されない、薬物を患者に全身投与するための任意の利用可能な器具を示すために使用される。そのような物品では、患者が薬物を自己投与する(すなわち、自分で薬物を投与する)か、医師が薬物を投与する場合がある。
キットの各構成要素は通常、個々の容器に入れられ、様々な容器はすべて、使用説明書とともに単一のパッケージに収められている。
【0311】
配列
表1:配列のリスト
【0312】
【0313】
開示された方法、治療、レジメン、使用およびキットの実施形態は、ActRII受容体アンタゴニスト、例えば、ActRIIB結合分子を使用する。さらなる実施形態において、ActRIIB結合分子はActRIIBに対するアンタゴニスト抗体である。
【0314】
開示される方法、治療、レジメン、使用およびキットのいくつかの実施形態では、抗ActRIIB抗体は、以下からなる群から選択される:a)配列番号181の配列番号アミノ酸78~83を含むActRIIBのエピトープに結合する抗ActRIIB抗体(WLDDFN-配列番号188);
(b)配列番号181のアミノ酸76~84(GCWLDDFNC-配列番号186);
(c)配列番号181のアミノ酸75~85(KGCWLDDFNCY-配列番号190);
(d)配列番号181のアミノ酸52~56(EQDKR-配列番号189);
(e)配列番号181のアミノ酸49~63(CEGEQDKRLHCYASW-配列番号187);
(f)配列番号181のアミノ酸29~41(CIYYNANWELERT-配列番号191);
(g)配列番号181のアミノ酸100~110(YFCCCEGNFCN-配列番号192);または
(h)配列番号181のアミノ酸78~83(WLDDFN)、および配列番号181のアミノ酸52~56(EQDKR);および
b)配列番号181のアミノ酸78~83(WLDDFN-配列番号188)を含むActRIIBのエピトープに結合するActRIIBに対するアンタゴニスト抗体;
(b)配列番号181のアミノ酸76~84(GCWLDDFNC-配列番号186);
(c)配列番号181のアミノ酸75~85(KGCWLDDFNCY-配列番号190);
(d)配列番号181のアミノ酸52~56(EQDKR-配列番号189);
(e)配列番号181のアミノ酸49~63(CEGEQDKRLHCYASW-配列番号187);
(f)配列番号181のアミノ酸29~41(CIYYNANWELERT-配列番号191);
(g)配列番号181のアミノ酸100~110(YFCCCEGNFCN-配列番号192);または
(h)配列番号181のアミノ酸78~83(WLDDFN)、および配列番号181のアミノ酸52~56(EQDKR)、ここで抗体は約2pMのKDを有する、
からなる群から選択される。
【0315】
開示された方法、治療、レジメン、使用およびキットのいくつかの実施形態では、ActRIIBに対するアンタゴニスト抗体はヒト抗体である。
【0316】
開示された方法、治療、レジメン、使用およびキットのいくつかの実施形態では、抗体はビマグルマブまたはBYM338である。
【0317】
本開示の1つ以上の実施形態の詳細は、上記の付随する説明に記載されている。本開示の実施または試験において、本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料を使用することができる。本開示の他の特徴、目的、および利点は、説明および特許請求の範囲から明らかであろう。本明細書および添付の特許請求の範囲において、文脈がそうでないことを明確に指示しない限り、単数形は複数の指示対象を含む。別に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で引用したすべての特許および刊行物は、参照により組み込まれている。以下の実施例は、本開示をより完全に例示することを意図しており、決してその範囲を限定することを意図していない。
【実施例】
【0318】
一般的な方法論
ActRIIB抗体、それらの特性評価およびそれに関連する方法は、国際公開第2010/125003号パンフレットに開示されている。その方法は、(i)機能アッセイ、(ii)レポーター遺伝子アッセイ(RGA)、(iii)HEK293T/17細胞株の培養、(iv)ミオスタチン誘導ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイ、(v)特異性ELISA、(vi)ActRIIB/Fc-ミオスタチン結合相互作用ELISA、(vii)hActRIIBおよびhActRIIA発現細胞でのFACS滴定、(viii)初代ヒト骨格筋細胞への結合、(ix)表面プラズモン共鳴(Biacore)を使用した、選択された抗ヒトActRIIB Fabの親和性測定、(x)CK ASSAY、(xi)動物モデル、(xii)治療プロトコル、(xiii)統計分析、(xiiii)パニング、(xv)抗体の同定と特性評価、(xvi)最初の親和性成熟に由来する抗体の最適化、(xvii)親和性成熟FabのIgG2変換(1番目の成熟)、(xviiii)2番目の親和性成熟、(xx)IgG2の変換とIgG2の特性評価(2番目の成熟)、(xxi)インビボでのマウス研究における抗ActRIIB抗体の特性評価、(xxii)SETによる親和性の確認、(xxiii)交差遮断研究、および(xxiv)エピトープマッピングの詳細と技術のようなものである。
【0319】
マウスのTAC(大動脈縮窄術)実験モデルは、圧力過負荷によって誘発される心肥大および心不全の一般的に使用される実験モデルであり、例えばRockman et al.(1991)およびdeAlmeida et al.(2010)に記載されている。それは、完全に説明されているかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【0320】
実施例1:TAC予防研究
材料および方法:
この研究は、CDD866が確立された心不全の横行大動脈狭窄症(TAC)マウスモデルで心機能障害の発症を防ぐかどうかを検証する。
16週齢の雄のC57BL/6マウスの次の4つの群(n=7-10/群)は研究の一部である。
1.SHAM+アイソタイプAb
2.SHAM+CDD866 Ab
3.TAC+アイソタイプAb
4.TAC+CDD866 Ab
【0321】
抗体は、1週間に1回、20mg/kgで皮下投与(SQ)され、最後の投与量は屠殺の<24時間前に投与される。
【0322】
心エコー検査が、2週間ごとに実行されている。
主要エンドポイント:TAC後の11週間の事前に指定されたエンドポイントまたは%短縮率(fractional shortening)(FS)<20%
【0323】
結果:
図1A~1Eに示すように、CDD866 Abの治療は、野生型C57BL/6マウスで最小限の心臓への影響しかない。具体的には、
図1Aに示すように、CDD866の血漿レベルの測定値から、薬物が適切に投与されたことが確認される。CDD866は、心臓の質量を有意に増加させていない(
図1B)。健康な野生型コントロールでは、ベースラインでの%線維化率が顕著に低かったものの、CDD866は心筋線維症を減少させる(
図1C)。PAS染色された心筋の代表的な顕微鏡写真(
図1D)は、心筋細胞のサイズを強調している。
図1Eは、CDD866が野生型動物の心筋細胞の大きさを有意に増加させないという所見をグラフで示している。データは、平均±標準偏差として表示される。灰色=対照群、アイソタイプAb(n=3)。黒=実験群、CDD866 Ab(n=3)。
*p<0.05
【0324】
図2A~2Dに示すように、CDD866の治療は、マウスのTAC誘発性心不全を予防する。
図2Aは、収縮期機能(%FSで測定)がTAC(水平線の棒)で予想通り減少するが、TAC(対角線の棒)にさらされたCDD866治療動物では維持されていることをグラフで示している。
図2Bは、11週間のSHAMまたはTAC手術後の代表的な心エコー画像であり、CDD866で治療したTAC動物の収縮機能の維持を示している。CDD866治療動物では肺の重量が減少する傾向があり、肺うっ血が少ないことを示している(マウスモデルでの心不全の代理(
図2C))。CDD866の治療では、主要エンドポイント(生存率または%FS<20%)に有意な減少が見られる(
図2D)。データは、平均±標準偏差として表示される。黒=SHAM+アイソタイプAb(n=7)。灰色=SHAM+CDD866 Ab(n=7)。水平線の棒=TAC+アイソタイプAb(n=10)。対角線の棒=TAC+CDD866 Ab(n=10)。
*p<0.05。#p<0.01(黒はSHAM+アイソタイプ群との比較を示し、赤はTAC+アイソタイプ群との比較を示す。
【0325】
図3A~3Dに示すように、CDD866 Abは、心不全のTACモデルで心臓ActRII-A/Bシグナル伝達を効果的にブロックする。
図3(A)では、測定されたCDD866血漿レベルは、適切に投与された薬物を示している。心臓フォリスタチン様3(FSTL3)の発現はTACとともに増加し、この心臓損傷モデルでは心臓ActRII-A/Bシグナル伝達が増加することを示している。CDD866の治療は、心臓FSTL3の発現を減少させ、それがTACで誘導される心臓のActRII-A/Bシグナル伝達を効果的にブロックすることを示している(
図3B)。病的心肥大遺伝子の発現は、CDD866の治療により減少する(
図3C)。
図3Dに示すように、TAC誘発性心不全の病理学的心線維症プロファイルは、CDD866の治療により減少する。データは、平均±標準偏差として表示される。黒=SHAM+アイソタイプAb(n=7)。灰色=SHAM+CDD866 Ab(n=7)。水平線の棒=TAC+アイソタイプAb(n=10)。対角線の棒=TAC+CDD866 Ab(n=10)。
*p<0.05。#p<0.01(黒はSHAM+アイソタイプ群との比較を示し、赤はTAC+アイソタイプ群との比較を示す。
【0326】
要約すると、(i)CDD866は、野生型コントロールの心臓の成長/機能に対する影響が最小限である。(ii)CDD866はTAC誘発性心不全の発症を効果的に防止する。(iii)CDD866はTACの心不全モデルにおける全生存率を改善する。
【0327】
実施例2:TAC治療研究
材料および方法:
この研究では、CDD866がTACを受けた動物の確立された心機能不全を逆転させることにより、動物を心不全から救えるかどうかを検証する。
16週齢の雄のC57BL/6マウスの次の2つの群(n=10/群)を検証する。
TAC+アイソタイプAb
TAC+CDD866 Ab
【0328】
抗体治療は、%短縮率の減少が4標準偏差を超えた後にのみ開始される。
【0329】
抗体はSQ、20mg/kg/wk×8週間投与される(屠殺の<24時間前に最後の投与が行われる)
【0330】
心エコー検査が、2週間ごとに実行されている。
【0331】
主要エンドポイント:8週間治療の事前指定エンドポイントまたは%FS<25%
【0332】
結果:
図4A~4Dが示すように、CDD866の治療は心機能を回復させ、動物をTAC誘発性心不全から救う。測定されたCDD866血漿レベルは、収縮機能において適切に投与された薬物を示す(
図4A)。
図4Bは、CDD866の治療により心臓FSTL3発現が減少するという発見をグラフで示しており、心臓におけるTAC誘導性ActRII-A/Bシグナル伝達を効果的にブロックしていることを示している。CDD866は、TAC誘発性心不全の収縮機能障害を回復させ、治療後1週間という早い段階で飛躍的な改善が見られる(
図4C)。CDD866は、マウスモデルの心不全の代理マーカーである肺重量も減少させる(
図4D)。データは、平均±標準偏差として表示される。灰色=TAC+アイソタイプAb。黒=TAC+CDD866 Ab。
*p<0.05。#p<0.01
【0333】
CDD866の治療は、TACモデルで心臓の成長を誘発する。
図5Aのグラフで示すように、壁の厚さはCDD866の治療で徐々に増加する(黒矢印はRx開始を示す)。
図5Bは、治療過程中の心室中部の連続エコー画像を示しており、アイソタイプ対CDD866の治療動物の心臓の成長の違いを示している。
図5Cに示すように、CDD866はTACモデルで心臓の質量を増加させる。
図5Dは、心筋細胞のサイズを強調したPAS染色心筋の顕微鏡写真を示している。CDD866は、TACの心筋細胞の成長も増加させる(
図5E)。データは、平均±標準偏差として表示される。灰色=TAC+アイソタイプAb。黒=TAC+CDD866 Ab。
*p<0.05。#p<0.01
【0334】
また、結果は、CDD866が心不全を保護する生理学的な心臓の成長を誘発することを示している。
図6Aは、病的肥大に関連する遺伝子の発現がCDD866の治療とともに減少することをグラフで示している。
図6Bに示すように、CDD866の心臓の成長と体重への影響は一時的で可逆的である。CDD866の単回投与によって誘発される心機能の改善は、少なくとも6週間持続する。(
図6B矢印=単回投与のタイミング;破線=CDD866の治療なしの予想軌跡)。
図6Cは、マッソントリクローム染色された心筋の顕微鏡写真を示している(青=線維症、赤=筋肉)。
図6Dに示すように、CDD866の治療では心筋線維症が減少する傾向がある。データは、平均±標準偏差として表示される。灰色=TAC+アイソタイプAb。黒=TAC+CDD866 Ab。
*p<0.05。#p<0.01
【0335】
CDD866は、
図7A~7Eに示すように、TACを介した心不全で骨格筋の成長を誘導する。CDD866は骨格筋のp-SMAD3発現を減少させ、この心不全モデルで骨格筋のActRII-A/Bシグナル伝達を効果的にブロックすることを示している(
図7A)。CDD866は、全体の体重を徐々に増加させる。筋肉量の増加によるものと思われる(
図7B)。
図7Cは、CDD866が様々な骨格筋群(EDL、ガス、TC)の全体の質量を増加させることを示している。骨格筋細胞のサイズもCDD866によって増加する(
図7D)。骨格筋の線維タイプの切り替えはまた、CDD866によって誘導される(
図7E)。赤=TAC+アイソタイプAb。青=TAC+CDD866 Ab。
*p<0.05。#p<0.01
【0336】
要約すると、CDD866は、TACによって誘発された確立された収縮機能障害を効果的に逆転させる。CDD866は、心臓の成長を促進し、心筋線維症を減少させる。データが心不全を予防する生理学的な心肥大を示す。
CDD866は、心不全のTACモデルで骨格筋の成長を促進し、進行性心不全の心悪液質の改善への用途を示している。
【0337】
実施例3:MHCF764Lタイムポイント研究
材料および方法:
この研究では、CDD866が拡張型心筋症の遺伝子モデル(MHCF764L)の心機能を改善できるかどうかを検証する。
14~24週齢のオスMHC F764L+/-変異マウスの2つの群が研究されている:
アイソタイプAb(n=3)
CDD866 Ab(n=3)
【0338】
抗体は、SQ、20mg/kg/wk×12週間投与される(最終投与量は、屠殺の<24時間前に投与される)
【0339】
心エコー検査は2週間ごとに行われる(q2wk)。
【0340】
主要エンドポイント:12週間治療の事前指定エンドポイントまたは%FS<20%
【0341】
結果:
CDD866の遺伝性拡張型心筋症モデルでは、心臓への影響は最小限に抑えられている(ただし、ベースラインではわずかな心臓表現型のみ)。
図8Aにグラフで示すように、CDD866はMHCF74Lマウスで収縮機能がわずかに増加する傾向を誘発する。
図8Bは、CDD866の治療により心臓FSTL3発現が減少する傾向を示しており、心臓におけるActRII-A/Bシグナル伝達を効果的に遮断していることを示している。
図8Cに示すように、病理学的肥大遺伝子発現プロファイルに有意な差は観察されていない。データは、平均±標準偏差として表示される。灰色=アイソタイプAb。黒=CDD866 Ab。
*p<0.05。#p<0.01。
【0342】
要約すると、収縮機能の軽度の増加がCDD866の治療で観察される。
心不全の遺伝子発現プロファイルに有意差は検出されていない。
【0343】
参考文献
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【配列表】