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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】音響センサを備えた真空弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 37/00 20060101AFI20230829BHJP
   F16K 51/02 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
F16K37/00 M
F16K51/02 B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019566102
(86)(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2018067463
(87)【国際公開番号】W WO2019002488
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】17179101.5
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593030945
【氏名又は名称】バット ホールディング アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン エシェンモーザー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ ガーラー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ツィッカー
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0070823(KR,A)
【文献】特表2016-510385(JP,A)
【文献】実開昭59-106039(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 37/00-51/02
G01M 3/00- 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空弁(1,1’,1’’,1’’’)であって、
・開口軸線(5)を定義する弁開口(2)と、該弁開口(2)を取り囲む第1のシール面(3)とを有する弁座と、
・前記第1のシール面(3)に対応する第2のシール面(6)を備えた、体積流量または質量流量を閉ループ制御し、かつ/または流路を遮断するための弁閉鎖部材(4)と、
・前記弁閉鎖部材(4)に連結された駆動ユニット(7)であって、
前記弁閉鎖部材(4)が、
・それぞれの弁開放状態を提供するために定義されて変化可能かつ調節可能であり、
・前記弁閉鎖部材(4)が前記弁開口(2)を少なくとも部分的に開放する開放位置(O)から、前記第2のシール面(6)が前記第1のシール面(3)の方向に押し付けられ、前記弁開口(2)が実質的に気密に閉じられている閉鎖位置(G)へと、かつ該閉鎖位置(G)から前記開放位置(O)へと戻るように移動可能であるように、
構成されている、駆動ユニットと
を備えた真空弁(1,1’,1’’,1’’’)において、
前記真空弁(1,1’,1’’,1’’’)が、少なくとも1つの音響センサ(10,10’,10’’,10’’’)を有していて、該音響センサ(10,10’,10’’,10’’’)は、該音響センサ(10,10’,10’’,10’’’)により前記真空弁(1,1’,1’’,1’’’)の少なくとも1つの構成要素において発生する固体伝搬音についての情報を測定信号として生成可能であるように、構成されかつ配置されており、
前記真空弁(1,1’,1’’,1’’’)が、処理兼制御ユニットを有していて、該処理兼制御ユニットが、少なくとも前記測定信号を処理するために構成されており、
前記処理兼制御ユニットは、
・前記駆動ユニット(7)を、前記開放位置(O)と前記閉鎖位置(G)との間で前記弁閉鎖部材(4)を移動するための制御値で駆動制御し、
・前記制御値を現在検出された測定信号に応じて自動的に調節する
ために構成されており、
前記処理兼制御ユニットは、前記第2のシール面(6)が前記第1のシール面(3)の方向に押し付けられた際に前記音響センサ(10,10’,10’’,10’’’)により測定される押付け音が目標音に相当するように、前記駆動ユニット(7)を駆動制御もしくは後制御することを特徴とする、真空弁(1,1’,1’’,1’’’)。
【請求項2】
前記音響センサ(10,10’,10’’,10’’’)が、前記駆動ユニット(7)に配置されている、請求項1記載の真空弁(1,1’,1’’,1’’’)。
【請求項3】
前記音響センサ(10,10’,10’’,10’’’)が、前記弁閉鎖部材(4)または前記弁座(3)に配置されている、請求項1または2記載の真空弁(1,1’,1’’,1’’’)。
【請求項4】
前記真空弁(1,1’,1’’,1’’’)が、弁ケーシング(24)を有していて、前記音響センサ(10,10’,10’’,10’’’)が、前記弁ケーシング(24)に配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の真空弁(1,1’,1’’,1’’’)。
【請求項5】
前記処理兼制御ユニットは、検出された前記測定信号が前記処理兼制御ユニットにより処理可能であり、かつ検出された前記測定信号につき前記真空弁(1,1’,1’’,1’’’)の前記少なくとも1つの構成要素のための状態情報を生成可能であるように、構成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の真空弁(1,1’,1’’,1’’’)。
【請求項6】
前記駆動ユニット(7)、前記第1または第2のシール面、および/または前記弁ケーシング(24)の機械的かつ/または構造的な完全性に関する状態情報が提供されている、請求項4記載の真空弁(1,1’,1’’,1’’’)。
【請求項7】
前記処理兼制御ユニットは、規定された期間中の前記測定信号の検出に基づいて、周波数スペクトルを提供するために構成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の真空弁(1,1’,1’’,1’’’)。
【請求項8】
前記処理兼制御ユニットは、1つまたは複数の測定周波数に関する前記測定信号の分析に基づいて、それぞれの測定値周波数を引き起こす固体伝搬音の位置特定に関する出力信号を提供するように、構成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の真空弁(1,1’,1’’,1’’’)。
【請求項9】
前記処理兼制御ユニットは、監視機能を有していて、該監視機能の実施時に、
・前記測定信号を前記弁開放状態の変化中に検出し、
・前記真空弁(1,1’,1’’,1’’’)の少なくとも1つの構成要素のための現在の機能状態を、検出された前記測定信号と、関連する目標測定信号との比較に基づいて導出するように、該監視機能が調整されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の真空弁(1,1’,1’’,1’’’)。
【請求項10】
前記処理兼制御ユニットは、前記測定信号につき音波伝搬特性が特定可能であるように、調整されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の真空弁(1,1’,1’’,1’’’)。
【請求項11】
前記処理兼制御ユニットは、前記真空弁(1,1’,1’’,1’’’)により制御される複数のプロセスの前記測定信号の傾向監視に基づいて、出力信号を提供するように構成されていて、該出力信号は、
・前記真空弁(1,1’,1’’,1’’’)の構成要素の高められた摩耗に関する警告と、
・前記真空弁(1,1’,1’’,1’’’)の構成要素の耐久性に関する予測と
のうちの1つまたは両方を含んでいる、請求項1から10までのいずれか1項記載の真空弁(1,1’,1’’,1’’’)。
【請求項12】
前記音響センサ(10,10’,10’’,10’’’)は、前記測定信号により、以下に挙げる箇所、すなわち、
・前記第1のシール面(3)と前記第2のシール面(6)との間にあるシール(23)の少なくとも一部と、前記第1のシール面(3)の少なくとも一部との間、および
・前記シール(23)の少なくとも一部と、前記第2のシール面(6)の少なくとも一部との間
のうちの少なくとも一方において摩擦により発生する固体伝搬音を検出するように、配置されかつ構成されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の真空弁(1,1’,1’’,1’’’)。
【請求項13】
前記音響センサ(10,10’,10’’,10’’’)は、前記測定信号により、前記駆動ユニット(7)内で発生する固体伝搬音を検出するように、配置されかつ構成されている、請求項1から12までのいずれか1項記載の真空弁(1,1’,1’’,1’’’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの音響センサを備えたセンサ装置を備えた真空弁に関する。
【0002】
一般に、体積流量または質量流量を制御するためおよび/または弁ケーシングに加工成形された開口に通じる流路を実質的に気密に閉鎖するための真空弁は、従来技術から様々な実施形態において周知であり、特に保護雰囲気中で可能な限り汚染粒子の存在無しで行われねばならないIC製造、半導体製造または基板製造の分野で真空チャンバシステムに使用される。このような真空チャンバシステムは、特に加工または製造されるべき半導体素子または基板を収容するために設けられる、排気可能な少なくとも1つの真空チャンバを有しており、真空チャンバは、半導体素子または別の基板を真空チャンバ内へ導入可能かつ真空チャンバから導出可能な少なくとも1つの真空チャンバ開口ならびに真空チャンバを排気するための少なくとも1つの真空ポンプを有している。例えば半導体ウェハまたは液晶基板用の製造設備内では、高感度の半導体素子または液晶素子が連続的に複数のプロセス真空チャンバを通走し、これらのプロセス真空チャンバにおいて、その内部に位置する部品がその都度、加工装置により加工される。プロセス真空チャンバ内での加工処理中も、チャンバからチャンバへの移動中も、高感度の半導体素子または基板は、常に保護雰囲気中-特に真空環境中-に位置していなければならない。
【0003】
このために一方では、気体供給部または気体放出部を開閉するためには外周弁が使用され、かつ他方では、部品の導入および導出用の真空チャンバの移動開口を開閉するためには切換弁が使用される。
【0004】
半導体部品を通す真空弁は、説明した使用分野およびこれに関係する寸法設定に基づき真空切換弁と呼ばれ、真空弁のほぼ矩形の開口横断面に基づき矩形弁とも呼ばれ、かつ真空弁の一般的な機能形式に基づき摺動弁、矩形スライダまたは切換摺動弁とも呼ばれる。
【0005】
外周弁は、特に真空チャンバと真空ポンプまたは別の真空チャンバとの間の気体流をコントロールまたは制御するために使用される。外周弁は、例えばプロセス真空チャンバまたは移動室と、真空ポンプ、雰囲気または別のプロセス真空チャンバとの間の管系内に位置している。ポンプ弁とも呼ばれるこのような弁の開口横断面は、一般に真空切換弁におけるよりも小さくなっている。外周弁は、使用分野に応じて開口を完全に開閉するためだけでなく、完全な開放位置と気密な閉鎖位置との間で開口横断面を連続的に調節することにより、流量をコントロールまたは制御するためにも使用されるため、外周弁は制御弁とも呼ばれる。気体流をコントロールまたは制御するための1つの可能な外周弁は、揺動弁である。
【0006】
たとえば米国特許第6089537号明細書(Olmsted)から公知のような典型的なシャトル弁では、第1のステップにおいて、通常は円形の弁ディスクが、通常は同様に円形の開口上に、開口を開放する位置から開口を覆う中間位置へと回転式に旋回させられる。たとえば米国特許第6416037号明細書(Geiser)または米国特許第6056266号明細書(Blecha)に記載されているようなゲート弁の場合、弁ディスクも開口も大抵は方形に形成されており、この第1のステップにおいて、開口を開放する位置から開口を覆う中間位置へと線形に移動させられる。この中間位置において、シャトル弁またはゲート弁の弁ディスクは、開口を取り囲む弁座に対して離間した対向位置に位置している。第2のステップにおいて、弁ディスクと弁座との間の間隔が減少させられて、これにより弁ディスクと弁座とは互いに対して均等に押し合わされ、開口は実質的に気密に閉鎖される。この第2の運動は、好適には、弁座に対して実質的に垂直方向で行われる。シールは、たとえば弁ディスクの閉鎖面に配置されて、開口を取り囲む弁座に押し当てられるシールリングを介して行われるか、または弁ディスクの閉鎖面に対して押し当てられる、弁座に設けられたシールリングを介して行われる。2つのステップにおいて行われる閉鎖過程により、弁ディスクと弁座との間のシールリングは、このシールリングを損傷し得る剪断力をほとんど受けない。なぜならば、弁座の運動が、第2のステップにおいて、実質的に直線状に、弁座に向かって垂直方向に行われるからである。
【0007】
様々なシール装置が、従来技術、例えば米国特許第6629682号明細書(Duelli)から公知である。真空弁のシールリングおよびシールのための適切な材料は、たとえばフッ素ゴム(FKMともいう)であり、特にVitonの商品名で知られるフッ素エラストマ、およびパーフルオロゴム(略してFFKM)である。
【0008】
先行技術に基づいて、弁ディスクの、シャトル弁においては回転式の運動、ゲート弁においては開口上で平行に行われる並進的な運動と、開口に対して垂直方向に行われる実質的に並進的な運動とのこの組み合わせを達成するための種々異なる駆動システムは公知であり、たとえばシャトル弁のためには米国特許第6089537号明細書(Olmsted)から、ゲート弁のためには米国特許第6416037号明細書(Geiser)から公知である。
【0009】
弁座に対する弁ディスクの押付けは、全圧力範囲内で要求された気密性が確保されていて、かつ過大な圧力負荷によるシール媒体、特にOリングの形のシールリングの損傷が阻止されるように、行わなければならない。このことを保証するために、公知の弁は、両弁ディスク側で形成される圧力差に応じて制御される、弁ディスクの押付け圧制御が予定される。しかし、特に圧力変動が大きな場合、または負圧から正圧または正圧から負圧への変化時には、シールリングの全周に沿った均一な力分配を常に保証することはできない。概して、シールリングを、弁に加えられる圧力に基づいて生じる支持力から切り離すことが目指される。このためには、米国特許第6629682号明細書(Duelli)では、たとえばシールリングとその隣に位置する支持リングとから構成されるシール媒体を備える真空弁が提案される。これにより、シールリングは支持力から実質的に解放されている。
【0010】
場合によっては正圧のためにも負圧のためにも要求された気密性を達成するために、第2の運動ステップに対して付加的にまたは代替的に、幾つかの公知のシャトル弁またはゲート弁は、弁ディスクに対して垂直方向に移動可能な、開口を取り囲む弁リングが設けられている。この弁リングは、弁を気密に閉鎖するために弁ディスクに対して押圧される。弁ディスクに対して相対的に能動的に移動可能な弁リングを備えるこのような弁は、たとえば独国特許出願公告第1264191号明細書、独国特許発明第3447008号明細書、米国特許第3145969号明細書(von Zweck)および西独国実用新案公開第7731993号明細書から公知である。米国特許第5577707号明細書(Brida)には、開口を有する弁ケーシングと、開口を通る流量を制御するための、開口上で平行に旋回可能な弁ディスクとを備えたシャトル弁が記載されている。開口を取り囲む弁リングは、弁ディスクに向かう方向で垂直方向に、複数のばねおよび圧縮空気シリンダにより能動的に運動可能である。このシャトル弁の可能な発展形は、米国特許出願公開第2005/0067603号明細書(Lucas等)において提案される。
【0011】
上述の弁は特に真空チャンバ内での極めて繊細な半導体素子の製造時に使用されるので、そのようなプロセスチャンバのためにも対応するシール作用が信頼性よく保証されている必要がある。このためには、特にシール材料の状態または押圧時のシール材料に接触するシール面の状態が重要である。真空弁の運転期間の経過中に、シール材料またはシール面の一般的に摩耗が生じてしまう。
【0012】
場合によっては生じる非シール性を回避するか、またはシールの品質を十分に高いレベルで一定に維持するために、弁閉鎖部材は、一般的には規定された時間間隔で交換もしくは更新される。このようなメンテナンスサイクルは、大抵は規定された期間において予想される開閉サイクルの回数に合わせて決定される。つまりメンテナンスは、大抵、非シール性の発生を予め十分に排除することができるように、予防的に行われる。
【0013】
このような修理要求は、シール材料または弁ディスクのみに限定されるのではなく、特に同様に、真空弁の、弁ディスクに対応する部分を形成する弁座にも及ぶ。弁座側のシール面の構造体、たとえば弁座に導入された溝は、同様に機械的荷重にさらされる。したがって、弁の運転に基づき生じる溝の構造的な変化は、シールの損傷を引き起こす。このためにも、通常対応するメンテナンス間隔が定義されている。
【0014】
この弁メンテナンスの欠点は、その予防的な性質にある。メンテナンスに関する部材は、大抵はその通常または実際の寿命の経過前に更新または交換される。このような各メンテナンスステップは、通常、製造プロセスのためのある程度の停止時間と、高められた技術的手間または経済的コストとを意味する。このことは、全体として、必要以上に短期かつ本来要求されているよりも頻繁な間隔での製造の停止を意味する。
【0015】
さらに、弁の一般的な部材、たとえば駆動ユニットは、ローテーションおよび予防的なメンテナンスの枠内では交換または更新されない。しかしこのような構成要素が定期的に更新された場合でさえ、これらの構成要素はいわゆる新品状態でも、場合によっては外部ならびに内部の影響にさらされている。これによりたとえば弁制御の望ましくない変化が生じてしまう。たとえば、これにより生じる、弁閉鎖部材のための移動経路の逸脱は、目標シール作用がもはや達成され得ないことにつながってしまう。場合によっては生じる構造的な欠陥、たとえば亀裂も同様にシール機能の損傷につながってしまう。
【0016】
したがって、本発明の根底を成す課題は、最適化された弁メンテナンス、ひいては場合によっては生じるプロセス停止の改善、つまり短縮を可能にする改善された真空弁を提供することである。
【0017】
本発明の別の課題は、プロセス容積のより確実に気密なシールが達成され、特にシールの品質を診断可能かつ/または監視可能である弁システムを提供することである。
【0018】
この課題は、独立請求項の特徴部に記載の特徴の実現により解決される。本発明を代替的または有利に変更する特徴は、従属請求項から判る。
【0019】
本発明によれば、真空弁と音響センサとが組み合わせられ、組み合わせにより真空弁または少なくとも弁の一部の監視および/または状態確認を行うことができるように、構成されている。センサにより、時間に関連した、かつ/または周波数に関連した測定信号を検出することができる。この測定信号により、さらに真空弁に関する状態情報を導出することができる。
【0020】
音響センサは、一般的には、音波、特に固体伝播音もしくは表面音波をピックアップするために構成されている。このような音響センサは、先行技術から十分に公知である。適切な音響ピックアップとして、たとえば音敏感な振動性のダイヤフラムを備えたセンサタイプまたはピエゾ圧電式、電子的、電気力学的または電子磁気的なセンサが考えられる。これらのセンサは、測定すべき構成要素上に取り付けることができる。センサは、たとえば接着、溶接、ろう接またはねじ締結されていてよい。
【0021】
センサは、特に固体伝送音マイクロフォンとして、または騒音計または音圧計として構成されていてよい。
【0022】
代替的には、光学的かつ無接触に測定する音響センサも使用することができる。
【0023】
したがって、真空弁内における音波伝搬を検出し、特徴付け、したがって真空弁の状態を検出可能なデータにつき監視し、継続的に評価することができる。このようにして生成可能なデータにより、個別の構成要素、たとえば駆動装置内の潤滑油またはシール材料のメンテナンス時点もしくは交換時点を特定することができる。
【0024】
したがって、たとえば弁の密閉性の破損を十分に予測し、時期的かつ場所的にポイントで特定された対抗措置を推奨するか、または開始することができる。メンテナンス間隔は、これにより改善されて計画可能であり、効果的に実施可能であり、同時にプロセス完全性を検知し、確保することができる。
【0025】
真空弁の重要な状態情報として、たとえば駆動装置、弾性的なシール材料またはシール面の部分の音波伝搬特性を考慮することができる。
【0026】
つまり本発明は、体積流量または質量流量を閉ループ制御し、かつ/または流路を気密に遮断するための真空弁、特に真空ゲート弁、シャトル弁またはモノバルブに関する。弁は、開口軸線を定義する弁開口と、弁開口を取り囲む第1のシール面とを有する弁座を有している。さらに、弁は弁閉鎖部材を有している。弁閉鎖部材は、たとえば第1のシール面に対応する第2のシール面を備えた、体積流量または質量流量を閉ループ制御し、かつ/または流路を遮断するための弁ディスクとして形成されている。
【0027】
さらに弁閉鎖部材に連結された駆動ユニットは、弁閉鎖部材がそれぞれの弁開放状態を提供するために定義されて変化可能かつ調節可能であり、弁閉鎖部材が弁開口を少なくとも部分的に開放する開放位置から、第2のシール面が第1のシール面の方向に押しつけられ、弁開口が特に第1のシール面と第2のシール面との間に位置するシールにより実質的に気密に閉じられている閉鎖位置へと、かつ閉鎖位置から開放位置へと戻るように移動可能に、構成されている。
【0028】
真空弁は、少なくとも1つの音響センサを有している。音響センサは、この音響センサにより真空弁の少なくとも1つの構成要素(たとえば駆動ユニット、弁閉鎖部材、弁座、第1および/または第2のシール面)において発生し、形成され、もしくは拡散する固体伝播音に関する音響情報を測定信号として生成可能であるように、構成されかつ配置されている。
【0029】
情報は、個別の音響現象の形で、または発生する連続する音響現象の形で検出され得る。したがって特に、予め定義された閾値の個別の超越を検知しかつ表示することができる。代替的かつ付加的には、固体伝送音挙動の継続的な記録を行うことができ、これに基づいて弁状態の評価を行うことができる。さらに、上述の情報は、特定の弁構成要素に専属的に関連して生成することができるか、または全体的な弁状態に関する推測を包括的な性質で与えることができる。
【0030】
概して、現在に検出された音響情報を保存された目標状態または基準状態と比較することにより、弁状態または弁挙動の評価を行うことができる。
【0031】
音響センサは、必ずしも、音響情報が導出される各構成要素に配置されている必要はない。たとえば、弁の公知の構成では、構成要素間の音響伝達の性質は同様に公知であってよく、したがって、センサから離れた構成要素に関する推測を行うことができる。光学的に測定するセンサは、この形式では測定すべき構成要素に配置されていなくてもよい。
【0032】
それぞれの実施形態において、音響センサは、駆動ユニット、弁閉鎖部材または弁座に配置されていてよい。1つ以上の単独のセンサが弁または弁の構成要素に同時に配置されていてよく、これにより複数の測定点のための測定信号を使用可能であり、引き続き処理可能であることは自明である。したがって、互いに異なる箇所に別個に位置決めされていてよい少なくとも2つのセンサを備えた対応するセンサ装置は、同様に本発明の対称である。
【0033】
特定の構成によれば、真空弁は、弁ケーシングを有していて、音響センサは、弁ケーシングに配置されている。これにより、弁ケーシング内における固体伝播音の発生および拡散を検出することができる。センサのこのような位置決めにより、センサ側で発生する音響現象が検出されるだけではなく、さらに、たとえば真空弁に結合された構成要素により形成された外部の音響効果も検出することができる。原則的には、センサにより、弁、特にケーシングの状態を監視することができる。たとえばケーシングの構造が変化した場合、つまり、たとえばケーシング内に亀裂が形成された場合、これにより弁ケーシングにおける音波伝搬特性または音響発生挙動の変化が生じる。このことは、センサにより、早期の測定または保存された目標音響挙動との比較により、確認することができる。さらに、対応する音響または視覚的な出力情報(たとえば警告信号)の提供により、このような現象に対する反応を引き出すことができる。
【0034】
1つの実施形態では、真空弁が、処理兼制御ユニットを有していて、該処理兼制御ユニットが、少なくとも測定信号を処理するために構成されている。さらに処理兼制御ユニットは、駆動ユニットを駆動制御し、ひいてはメイン弁機能を制御するために設けられていてよい。
【0035】
本発明によれば、処理兼制御ユニットは、駆動ユニットを開放位置と閉鎖位置との間で弁閉鎖部材を移動させるための制御値により駆動制御し、制御値を現在検出された測定信号に応じて自動的に調節するために、構成されていてよい。たとえば、たとえば弁座のシールにおける閉鎖音の傍受時に、所望の押付け圧が(まだ)到達されていないことを検出することができる。したがって、駆動ユニットは、押付け音が、目標押付け圧にとって特徴的である目標音に相当するように駆動制御もしくは後制御することができる。
【0036】
1つの構成では、処理兼制御ユニットは、検出された測定信号が処理兼制御ユニットにより処理可能であり、検出された測定信号につき、真空弁の少なくとも1つの構成要素についての状態情報が生成可能であり、特に予め定義された目標特性と状態情報との対照に基づいて出力信号を提供することができるように、構成されていてよい。
【0037】
測定信号は、たとえば最大の振幅または検出された周波数範囲に関して分析することができる。さらに、発生する個体伝送音現象のための期間が、発生する周波数およびその特徴(振幅)に関連して、状態情報を導出するために考慮され得る。特定の既知の周波数は、たとえば弁の機能への関連する不都合な影響を示唆することができる。
【0038】
特に、駆動ユニット、第1または第2のシール面、シール(シール材料)および/または弁ケーシングの機械的かつ/または構造的な完全性に関する状態情報を提供することができる。状態情報は、検出された測定信号のための実際値-目標値比較により生成されていてよい。
【0039】
本発明の1つの実施形態では処理兼制御ユニットは、規定された期間中の測定信号の検出に基づいて、周波数スペクトルを提供するために、構成されていてよい。この場合、たとえば測定された音圧を周波数上に対応させ、このようなグラフまたは評価につき、弁または構成要素の状態の評価を(自動的にまたはユーザにより)実施することができる。
【0040】
1つの構成では、処理兼制御ユニットは、1つまたは複数の測定周波数に関する測定信号の分析に基づいて、それぞれの測定値周波数を引き起こす固体伝播音の位置特定に関する出力信号を提供するように、構成されていてよい。たとえば、どの周波数スペクトルにおいて駆動ユニットが潤滑剤の不足時に音響を放出するかが既知である場合、この周波数スペクトルにおける固体伝送音の検出時に、このような潤滑剤不足を推定することができる。
【0041】
たとえば、位置特定は、たとえば低い音響周波数から比較的大きな構成要素または外側から導入された振動を推測し、高い周波数から比較的小さな構成要素を推測させることで、特徴的な周波数の検知を介しても実施され得る。個別の構成部材がそれぞれ意図的に音響的に励振される対応する試験の実施により、このような特徴的な周波数がそれぞれ「経験」され、出力信号のために検知スキームとして役立つ。
【0042】
本発明の1つの実施形態によれば、処理兼制御ユニットは、監視機能を有していて、この監視機能の実施時に、測定信号を弁の開放状態の変化中に検出し、真空弁の少なくとも1つの構成要素のための、特に駆動ユニットまたは第1または第2のシール面のための現在の機能状態を、検出された測定信号とこれに関連する目標測定信号との比較に基づいて導出するように、監視機能が調整されている。このような監視は、弁機能を「良好」または「もはや良好でない」に実際に分類することを可能にするだけではなく、さらに新品状体と必要となるメンテナンス時点との間の現在の弁状態の傾向に基づく分類を可能にする。これにより、システムの次回のメンテナンスがいつ必要となるかを推測することができる。
【0043】
1つの構成では、処理兼制御ユニットは、測定信号につき、音波伝搬特性を特定可能であり、特に既知の目標音波伝搬特性と比較可能であるように、調整されていてよい。
【0044】
1つの構成では、処理兼制御ユニットは、真空弁により制御された複数のプロセスの測定信号の傾向監視に基づいて、出力信号を提供するように、構成されていてよい。この出力信号は、真空弁の構成要素の高められた摩耗に関する警告および/または真空弁の構成要素の耐久性に関する予測を含んでいる。
【0045】
真空弁の構成要素の高められた摩耗に関する警告は、たとえば、傾向監視の枠内で、システム内で突き止められた音響レベルがプロセスからプロセスへと許容範囲増大率でよりも速く増大することが突き止められた場合に行われる。真空弁の構成要素の耐久性に関する予測は、たとえば、傾向監視の枠内で突き止められた、プロセスからプロセスへの振幅増大の傾向が特定されるか、または補間により算出され、この傾向が許容範囲限界値に至るまで継続することがシミュレートされることで、行うことができる。
【0046】
1つの実施形態では、音響センサが、以下に挙げる箇所、すなわち、シールの少なくとも一部と、第1のシール面の少なくとも一部との間またはシールの少なくとも一部と、第2のシール面の少なくとも一部との間の少なくとも1つの箇所において摩擦により発生する固体伝播音が測定信号によって検出されるように、配置されかつ構成されていてよい。
【0047】
音響センサは、特に、測定信号により、駆動ユニット内で発生する固体伝播音が検出されるように、配置されかつ構成されていてよい。
【0048】
真空弁の弁座は、真空弁の一部自体によって形成されてよい。特に、弁座は、真空弁のケーシングに形成されているか、またはプロセスチャンバ(チャンバ壁)により提供されていてよい。
【0049】
さらに真空弁は、外側環境から分離された真空領域を定義することができ、測定信号に寄与する音響センサは、真空領域の外側に配置されていてよい。
【0050】
本発明に係る真空弁を以下に図面に概略的に図示された実施例につき純粋に例示的に詳しく説明する。同一のエレメントは、複数の図面において同一の参照符号で示される。説明された実施形態は、通常、正しい縮尺では図示されておらず、実施形態は、制限するものとして理解すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】a,bは、シャトル弁としての本発明に係る真空弁の可能な実施形態を示す図である。
図2】a~cは、トランスファ弁としての本発明に係る真空弁の可能な実施形態を示す図である。
図3】a,bは、トランスファ弁における本発明に係るセンサ装置の概略図である。
図4】a,bは、モノバルブにおける本発明に係る別のセンサ装置の概略図である。
【0052】
図1aおよび図1bは、シャトル弁1の形の本発明に係る弁の可能な実施形態を概略的に示している。ガス流を閉ループ制御し、かつ流路を実質的に気密に遮断するための弁1は、開口2を有している弁ケーシングを有している。開口2は、この実施形態ではたとえば円形の横断面を有している。開口2は、弁座により取り囲まれる。この弁座は、軸方向で弁ディスク4(弁閉鎖部材)の方向に向いた、開口軸線5に対して横方向に延びる、円環の形を有するシール面3により形成される。このシール面3は、弁ケーシングに成形されている。弁ディスク4は、旋回可能にかつ開口軸線5に対して実質的に平行に移動可能である。弁ディスク4の閉鎖位置G(図1b)において、開口2は、弁ディスク4により気密に閉鎖されている。弁ディスク4の開放位置Oは、図1aに示されている。
【0053】
弁ディスク4は、側方でディスクに配置された、開口軸線5に対して垂直方向に延びるアーム8を介して駆動装置7(駆動ユニット)に結合されている。このアーム8は、弁ディスク4の閉鎖位置Gでは、開口2の、開口軸線5に沿って幾何学的に投影された開口横断面の外側に位置している。
【0054】
駆動装置7は、対応する伝動装置の使用により、弁ディスク4が、シャトル弁において通常であるように、開口軸線5に対して横方向かつ開口2の横断面にわたって実質的に平行、かつ開口軸線5に対して垂直方向に行われる駆動装置7の旋回運動xによって開放位置Oと中間位置との間で旋回軸線9を中心として旋回可能であり、かつ駆動装置7の、開口軸線5に対して平行に行われる長手方向運動yによって線形に移動可能であるように、構成されている。開放位置Oでは、弁ディスク4が側方で開口2の隣に配置された滞留区分に位置決めされているので、開口2および流路は開放されている。中間位置では、弁ディスク4は開口2上に離間して位置決めされていて、開口2の開口横断面を覆っている。閉鎖位置では、弁閉鎖部材(弁ディスク)4と弁座のシール面3との間で気密な接触が生じることにより、開口2は気密に閉じられていて、流路は遮断されている。
【0055】
自動化され、制御された弁1の開閉を可能にするために、弁1は、たとえば電子的な処理兼制御ユニットを規定している。この処理兼制御ユニットは、弁ディスク4がプロセス容積の気密な閉鎖またはこのプロセス容積の内圧の制御のために対応して移動可能であるように、構成されていて、かつ駆動装置7に接続されている。たとえば、処理兼制御ユニットは、駆動装置7のケーシング内に組み込まれているか、またはデータケーブル接続部または無線接続を介して外部に設けられている。
【0056】
この実施例では、駆動装置7が、電動モータとして形成されていて、伝動装置は、駆動装置7の駆動が横方向xまたは長手方向yで生じるように、切替え可能である。駆動装置7と伝動装置とは、制御装置により電子的に駆動制御される。特にゲート切替えを備えるこのような伝動装置は、先行技術から公知である。さらに、横方向運動xおよび長手方向運動yを生ぜしめるための複数の駆動装置を使用することも可能であり、この場合、制御装置が駆動装置の駆動制御を引き受ける。
【0057】
上述のシャトル弁による流量の正確な閉ループ制御もしくは調節は、横方向運動xによる開放位置Oと中間位置との間での弁ディスク4の旋回移動によってだけではなく、特に長手方向運動yによる中間位置と閉鎖位置Gとの間での開口軸線5に沿った弁ディスク4の線形の移動によって可能である。記載したシャトル弁は、正確な制御タスクのために使用することができる。
【0058】
弁ディスク4も弁座も、それぞれ1つのシール面3,6、つまり第1のシール面および第2のシール面を有している。第1のシール面3は、さらにシール23を有している。このシール23は、たとえばポリマとして加硫形成により弁座上に加硫固定されていてよい。代替的には、シール23は、たとえばOリングとして弁座の溝内に形成されていてよい。シール材料は、弁座に接着されていてもよく、これにより、シール23を具現化することができる。代替的な実施形態では、シール23は、弁ディスク4側で、特に第2のシール面6に配置されていてよい。これらの構成の組み合わせも可能である。
【0059】
弁ディスク4は、たとえば制御量および出力された制御信号につき可変に調節される。入力信号として、たとえば弁に接続されたプロセス容積内の現在の圧力状態に関する情報が得られる。さらに、制御部に、別の入力量、たとえば容積内への質量供給量を提供することができる。この量について、かつこの容積のために調節もしくは達成されるべき設定された目標圧力について、次いで弁の制御された調節が制御サイクルの時間に関して行われるので、容積からの質量排出流を弁1により時間に関して調節することができる。このためには、弁1の背後に真空ポンプが設けられている。つまり弁は、プロセスチャンバとポンプとの間に配置されている。したがって、所望の圧力推移が調整され得る。
【0060】
弁閉鎖部材4の調節により、弁開口2のためのそれぞれの開口横断面が調節され、ひいては、時間単位ごとにプロセス容積から脱気され得る可能なガス量が調節される。弁閉鎖部材4は、この目的のために、特にできるだけ層状の媒体流を達成するために、円形とは異なる形状を有していてよい。
【0061】
開口横断面を調節するために、弁ディスク4は、制御ユニットによって、駆動装置7の横方向運動xにより開放位置Oから中間位置へ移動可能であり、かつ駆動装置7の長手方向運動yにより中間位置から閉鎖位置Gへと移動可能である。流路の完全な開放のためには、弁ディスク4が制御装置によって、駆動装置7の長手方向運動yにより閉鎖位置から中間位置へと移動可能であり、かつこの中間位置から、駆動装置7の横方向運動xにより中間位置から開放位置Oへと移動可能である。
【0062】
弁座への弁ディスク4の押付けは、要求された気密性が全圧力範囲内で確保され、過大な圧力負荷によるシール23の損傷が回避されるように、行うことができる。このことを保証するために、公知の弁は、両弁ディスク側で形成される圧力差に応じて制御される、弁ディスク4の押付け圧制御が予定される。
【0063】
しかし、特に圧力変動が大きな場合、または負圧から正圧または正圧から負圧への変化時には、制御プロセス中、つまり開口横断面の変化中に均一な力分配は常に保証することはできない。つまり、弁負荷に応じて、たとえばシール23(シール材料)、弁ディスク4およびシール面3,6に互いに異なる負荷が加えられ、これにより、たとえば弁負荷に応じて様々な有効なメンテナンス間隔が生じる。
【0064】
先行技術において、弁閉鎖部材は一般的に固定的な時間間隔で予防的に交換もしくは更新される。これにより場合によっては生じる非密閉性を回避するか、またはシールの品質を十分に高いレベルで一定に維持することができる。このことは特に、弁部材が大抵の場合にその通常または実際の寿命の経過前に更新または交換されるという欠点を有している。
【0065】
本発明によれば、真空弁1は、第1の音響センサ10を有している。この音響センサ10は、弁ケーシングに配置されている。
【0066】
このような音響放射センサ10により、たとえば弁ケーシングのような金属製の構成要素内で拡散する音波を測定することができる。たとえば或る物体がセンサ10を備えた部材に衝突またはこの部材を擦過した場合にそうであるように、音波がこの構成要素内に導入されるか、またはこの構成要素内で形成されると、この音波はセンサにより測定することができる。構成要素内にマイクロクラックが生じると、これにより波の伝播が変化し、このことはやはりセンサ10の測定によって突き止めることができる。
【0067】
したがって、真空ケーシングにおける測定箇所により、弁1の閉鎖時に第1のシール面3もしくはシール23への第2のシール面6の衝突により放たれる音響放射を測定することができる。これにより形成される音響パルスは、使用されたシール装置のために特徴的であってよい。
【0068】
つまり、それぞれ発生した音響パルスを検出することができ、公知の基準音響パルス(たとえば過去の記録)と比較することができる。この比較に基づいて、目標状態からの逸脱を検知することができる。たとえば、種々異なる周波数領域において変化した音響振幅または音響的事象の発生時に、シールの状態に対する対応する推論を行うことができる。
【0069】
現在検出された音響パルスと、その音響パルスの基準からの逸脱とは、シール材料23の摩耗(摩滅)の程度についての情報を提供することができる。このような逸脱は、弁1の運転期間が増すにつれて一般的に増幅される性質を有している。これにより、シール状態を継続的に監視することができ、シール23の必要な交換のための時点が診断可能である。換言すると、これによりシール摩耗の監視が可能にされている。つまりシールは、先行技術とは異なり、弁機能の損傷が発生することなしに、必要に応じて、かつその使用期間とは無関係にメンテナンスすることができる。
【0070】
さらに、センサ信号の相応する分析は、現在の機能精度の確認を可能にする。発生する固体伝送音により、シール材料23(たとえば、エラストマ)が閉鎖または開放工程時にシール面3,6のうちの少なくとも1つに対して相対的に摺動(擦過)した場合に、確認することができる。このような剪断負荷により、不都合な粒子がシール23またはシール面から分離されてしまい、たとえばプロセス容積を汚染してしまう。このような機能不全の早期の検知は、対応する適時の反応を可能にし、したがって製造中止を回避することができる。
【0071】
さらに、種々異なって使用されるシール材料に対して対応する「基準音」が保管されていることも可能である。これにより、一方では使用されたシール材料の識別が、たとえば閉鎖音の音響的な分析だけで可能である。他方では、シールの交換により、新しく使用されたシール材料を選択し、その情報を別の音響的なプロセス監視のために使用することができる。
【0072】
真空弁1は、2つの別の音響センサ10’,10’’を有している。センサ10’は、駆動装置7に設けられていて、これにより、駆動装置7の操作により引き起こされ得る(固体伝送)音波および音響パルスの直接な検出および分析を可能にする。駆動装置7のこのような移動運動のためにも、それぞれ基準周波数スペクトルが存在していてよく、現在の信号をこれと比較することができる。これにより、駆動ユニット7の正しい機能性に関する駆動ユニット7の監視が可能にされる。たとえば公差範囲を超えた規定された程度での、基準域からの検出された固体伝送音域の著しい逸脱は、駆動装置7のエラーを有する操作のための指標であってよい。
【0073】
音響センサ10’’は、弁座もしくは第1のシール面3の近傍に位置決めされていて、これにより、弁1の閉鎖または開放に直接に関連した音響放出の直接な検出を可能にする。このセンサ10’’は、たとえば専らシール23(シール材料)の現在の状態または状態変化を調査するために設けられていてよい。
【0074】
シール摩耗の評価は、場合によって経験値または上述の基準記録に基づいている。この経験値または基準記録のためには、該当する弁構成要素が目標状態において意図的に音響放射させられる。
【0075】
付加的または代替的には、音響センサが、別の図示された構成要素のそれぞれに提供されていてもよく、この場合、測定値の評価は相応して適合され得る。
【0076】
図示のようなシャトル弁に対して代替的には、本発明によるセンサ解決手段は、別の真空弁タイプ、たとえばフラップ弁、ゲート弁またはいわゆるバタフライ制御弁により実現されていてよい。特に、本発明に係る弁は、真空分野において使用するために構成されている。さらに、その閉鎖体が一方向のみで移動され得るシャトル弁も使用可能である。
【0077】
図2aおよび図2cは、トランスファ弁1’の形の本発明に係る弁1’の可能な実施形態を種々異なる閉鎖位置で概略的に示している。上記の図面において使用された参照符号は、図2においても同様に有効である。
【0078】
示されたトランスファ弁1’は、ゲート弁の特殊形である。真空弁は、方形のプレート状の弁閉鎖エレメント4(たとえば弁ディスク)を有していて、この弁閉鎖エレメント4は、開口2を気密に閉じるためのシール面6を有している。開口2は、閉鎖エレメント4に対応する横断面を有していて、壁部12に成形されている。開口2は、同様に閉鎖エレメント4のシール面6に対応するシール面3を提供する弁座により取り囲まれている。閉鎖エレメント4のシール面6は、閉鎖エレメント4の周囲に延びていて、シール材料23(シール)を支持している。閉鎖位置では、シール面3とシール面6とが、互いに押し付けられ、シール材料23は両シール面3,6の間でプレスされる。
【0079】
開口2は、図面において壁部12の左側に位置する第1のガス領域Lと、壁部12の右側にある第2のガス領域Rとを接続している。壁部12は、たとえば真空チャンバのチャンバ壁により形成される。真空弁は、閉鎖エレメント4とチャンバ壁12との協働により形成される。
【0080】
閉鎖エレメント4は、移動アーム18に配置されている。この移動アーム18は、この実施形態ではたとえばロッド状であり、幾何学的な移動軸線Vに沿って延びている。移動アーム18は、駆動ユニット7に機械的に連結されている。駆動ユニット7により、閉鎖部材4が壁部12の左側の第1のガス領域L内で駆動ユニット7による移動アーム18の移動により開放位置O(図2a)から、中間位置(図2b)を介して閉鎖位置G(図2c)にまで移動可能である。
【0081】
開放位置Oでは、閉鎖エレメント4は開口2の投影領域の外側に位置していて、この開口2を図2aに示されているように完全に開放する。
【0082】
移動アーム18の、移動軸線Vに対して平行かつ壁部12に対して平行な軸方向での移動により、閉鎖エレメント4は駆動ユニット7により開放位置Oから中間位置Zへと移動させることができる。
【0083】
この中間位置Zでは、閉鎖エレメント4は、開口2を覆い、弁座に対して離間した対向位置に位置している。シール面3,6は、同様に対応する対向位置に位置している。
【0084】
移動軸線Vに対して直行する横方向への、つまりたとえば壁部12および弁座に対して垂直な方向への、ひいては軸線5の方向への移動アーム18の移動により、閉鎖エレメント4は中間位置Zから閉鎖位置G(図2c)へと移動させることができる。
【0085】
閉鎖位置Gでは、閉鎖エレメント4が開口2を気密に閉鎖し、第1のガス領域Lを第2のガス領域Rから気密に分離している。
【0086】
つまり真空弁の開閉は、駆動ユニット7により、閉鎖エレメント4および移動アーム18のL字形の運動により行われる。したがって、示されたトランスファ弁はL字型弁とも呼ばれる。
【0087】
示されたようなトランスファ弁は、一般的には、プロセス容積(真空チャンバ)をシールし、かつ容積内への充填および容積からの放出のために設けられる。開放位置Oと閉鎖位置Gとの間の頻繁な交換は、このような使用において通常である。これにより、シール面3,6、シール23および駆動装置7の増幅させられた摩滅現象が生じてしまう。
【0088】
弁1’は、本発明により音響センサ10を有している。センサ10は、弁ロッド18に、もしくは弁ロッド18内に配置されていて、これにより、たとえば駆動ユニット7によるロッド18の運動時に発生する固体伝送音の検出を可能にする。固体伝送音を種類(周波数)および強度(振幅)に関して表わす測定信号が、センサ10により継続的に提供される。さらに、特定の期間にわたる信号の記録は、固体伝送音の変化の検出を可能にする。つまり検出された測定信号を、特に時間に関連して記録し、次いで評価することができる。
【0089】
弁ロッド18を備えた本発明に係るセンサ装置によって、不規則的な、つまり特に許容範囲から逸脱する音響現象または固体伝送音挙動の変化の好ましくない傾向を警告することにより、弁の使用中に種々の構成要素の故障を予測することができる。
【0090】
図3aおよび図3bは、本発明に係るトランスファ弁1’’における別の可能なセンサ装置を閉鎖位置(図3a)と開放位置(3b)とで概略的に示している。
【0091】
上述の図面で使用された参照符号は、図3においても同様に有効である。示された図面において、弁座は、真空弁1’’のケーシング24に形成されている。当業者にとって、以下の説明は実質的に複数の実施形態に同様に使用可能であることは明らかであり、弁座は、プロセスチャンバにより、つまりチャンバケーシングにより提供される。
【0092】
さらに、本実施形態では純粋に概略的に傾倒機構として図示された弁機構を制限するものと理解すべきではなく、当業者は本発明によるセンサ装置をたとえば同様の形式で任意のLモーション駆動装置、たとえば弁ディスクの、互いに垂直である線形の2つの移動方向を備えるLモーションの駆動装置に転用することができることは、自明である。
【0093】
移動アーム18を制御してガイドするために、真空弁はこの実施形態ではたとえばガイド構成要素15を有している。駆動ユニット7とガイド構成要素15とは、この実施形態ではたとえば、駆動ユニット7もガイド構成要素15もそれぞれ弁ケーシング24に不動に結合されていることによって、それぞれ互いに対して固定的な配置にある。さらに移動アーム18は、弁閉鎖部材4と駆動装置7とに機械的に連結されている。駆動ユニット7による移動アーム18の移動により、弁閉鎖部材4が開放位置Oと閉鎖位置Gとの間で実質的に弁座に対して平行に移動可能である、特に図2a~図2dにおいて説明されたようなLモーションの運動において移動可能である。
【0094】
センサ装置は、本発明によりかつ例示的に、音響センサ10を有している。この音響センサ10は、ガイド構成要素15に設けられていて、測定信号が連結構成要素のうちの1つにおける、かつ/または駆動装置7内のスティックスリップ効果を検出し、かつ検出可能にするように、構成されている。シール23における摩擦振動も、このようなセンサ装置により検出することができる。このためにはセンサ10の、シールの近傍に置かれた配置も可能であり、たとえば弁ケーシング24において弁座の近傍に配置することも可能である。
【0095】
音響センサ10は、弁1’’の可動の部分において固体伝播音を直接に検出することを可能にする。これにより、たとえば、駆動ユニット7を起点とする公知かつ通常の音形成(振動)に関して検出された測定信号のための目標値-実際値の比較に基づいて、真空弁1’’のための状態情報を導出することができる。検出された音響値が、前もって臨界的であると評価された値範囲に達した場合に、警告信号を提供することができる。
【0096】
図4aおよび図4bは、本実施形態では例示的にいわゆるモノバルブ1’’’内の音響センサ10~10’’の別の配置を閉鎖位置G(図4b)と開放位置(図4a)で示している。
【0097】
線形運動により流路を気密に閉鎖するための弁1’’’は、流路のための開口2を備えた弁ケーシング24を有している。開口2は、流路に沿った幾何学的な開口軸線5を有している。閉鎖エレメント4は、開口軸線5に対して横方向に延びる、閉鎖エレメント平面内の幾何学的な移動軸線Vに沿って線形に、開口2を開放する開いた位置Oから、開口2上で線形に移動させられた閉じられた位置Gへと閉鎖方向に、かつ反対に開放方向に戻るように移動可能である。
【0098】
たとえば、屈曲させられた第1のシール面3は、弁ケーシング24の開口2を第1の平面20aにおける第1の区分21aに沿って、かつ第2の平面20bにおける第2の区分21bに沿って取り囲んでいる。第1の平面20aと第2の平面20bとは、互いに離間していて、互いに平行に、かつ閉鎖エレメント平面に対して平行に延びている。したがって、第1の区分21aと、反対側に位置する第2の区分21bとは、移動軸線Vに対して横方向かつ開口軸線5の方向での、互いに対して幾何学的なずれを有している。移動軸線Vに沿って延びる領域において互いに反対側に位置する両区分21a,21bの間には、開口2が配置されている。
【0099】
閉鎖エレメント4は、第1のシール面3に対応する第2のシール面6を有している。この第2のシール面6は、第1および第2の区分21a,21bに対応する区分に沿って延びている。
【0100】
モノバルブ1’’’、つまり単独の線形運動により閉鎖可能な真空弁は、たとえば比較的複雑に構成された駆動装置を必要とする、2つの運動により閉鎖可能なトランスファ弁に比べて、たとえば比較的に簡単な閉鎖機構の利点を有している。さらに閉鎖エレメント4が一体的に形成されていてよいので、閉鎖エレメント4を高い加速力にさらすことができ、これによりこの弁は、高速閉鎖および非常閉鎖のためにも使用することができる。閉鎖およびシールは、単独の線形運動により行うことができるので、弁の極めて迅速な閉鎖および開放が可能である。
【0101】
特にモノバルブの利点は、たとえば、シールがその閉鎖時の経過に基づいてシールの長手方向の延在方向に対する横方向で剪断負荷にさらされていないことにある。他方では、シールは、開口軸線5に対する横方向延在長さに基づいて、特に圧力差が大きな場合に閉鎖エレメント4に作用してしまう、閉鎖エレメント4に開口軸線5に沿って発生する力を受け止めることがほとんどできず、このことは、閉鎖エレメント4と、その駆動装置と、その支承部の頑丈な構造を必要としてしまう。
【0102】
センサ10,10’’は、駆動ユニット7と、弁ケーシング24と、弁閉鎖部材4とに配置されている。したがって、対応する特有の測定信号をそれぞれの弁構成要素に関連して検出することができる。個別の信号の評価により、個別の構成要素のそれぞれの状態についての情報を形成することができる。
【0103】
信号の調整または個別の信号評価の概観は、たとえば駆動ユニットにおいて放出された音響現象の、弁閉鎖部材4への直接的な作用を超える情報を導くことができる。したがって、弁内でどのように音波伝搬が行われるかを検出することができる。
【0104】
測定信号を評価するために、時間に応じた測定が周波数に関連した信号(周波数スペクトル)に変換され得る。
【0105】
発生する音響現象に基づいて、たとえば駆動装置7の状態を推測することができる。これによりたとえば周波数スペクトルに基づいて、潤滑油がまだ十分な粘稠度を有しているか否か、または既に劣化現象を有しているか否かを判定することができる。
【0106】
システム内で(たとえば複数のプロセスにわたって)、たとえば摩耗、特に駆動ユニット内の摩滅より周波数スペクトルが変化したか否か、かつ/または求められた傾向に基づいて予測的にもはや甘受されない摩耗がいつ生じるかを検出することができる。
【0107】
既知の基準域との比較により、搬送中の破損、地震またはプロセス中の弁または近傍に位置する構成要素との衝突を検知することができ、特に、非常停止またはプロセスの減速の形で措置を講じることができる。
【0108】
これらの図示された図面は単に可能な実施例を概略的に図示していることは自明である。種々異なる手段を同様に互いに組み合わせ、かつ公知の方法および装置と組み合わせることができる。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4a
図4b