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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】計測器、メジャー及び計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20230829BHJP
   G01B 5/02 20060101ALI20230829BHJP
   G01B 3/1061 20200101ALI20230829BHJP
【FI】
G01B11/00 C
G01B5/02
G01B3/1061
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020002153
(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公開番号】P2021110621
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】吉松 和也
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-95231(JP,A)
【文献】特開2019-211286(JP,A)
【文献】特開平7-35535(JP,A)
【文献】特開2009-75013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 3/00 - 3/1094
G01B 5/00 - 5/30
G01B 11/00 -11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向に配列された複数のパターンを有する行パターンが長さ方向に複数配列されており、各パターンには二進値のいずれかが割り当てられているメジャーを使って、長さを計測する計測器であって、
第1の行パターンを読み取る第1読取手段と、
前記第1の行パターンから長さ方向に所定行離れた第2の行パターンを読み取る第2読取手段と、
前記第1読取手段で読み取られた前記第1の行パターンに前記第2読取手段で読み取られた前記第2の行パターンを加えた複数桁のパターンからコードを生成する生成手段と
を備えることを特徴とする計測器。
【請求項2】
前記メジャーに含まれる、前記長さ方向に二進値が割り当てられたパターンが交互に並ぶ列パターンを読み取る第3読取手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の計測器。
【請求項3】
前記複数桁のパターンと長さのデータとの対応関係を示す第1情報を格納する格納手段と、
前記生成手段で生成されたコード及び前記第1情報に基づいて、測定対象の長さを算出する算出手段と
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の計測器。
【請求項4】
前記複数桁のパターンと長さのデータとの対応関係を示す第1情報と、前記第1読取手段が前記第1の行パターンと重なる基準位置から前記メジャーが1つのパターンの長さの1/N(N:2以上の整数)ずつ前記長さ方向にずらされたそれぞれの状態における前記列パターンの読取値を示す第2情報とを格納する格納手段と、
前記生成手段で生成されたコード及び前記第1情報に基づいて、前記メジャーの始点から前記基準位置までの第1の長さを算出し、前記第3読取手段による前記列パターンの読取値及び前記第2情報に基づいて、前記基準位置からの前記メジャーの前記長さ方向のずれ量を算出し、前記第1の長さ及び前記ずれ量に基づいて測定対象の長さを算出する算出手段と
を備えることを特徴とする請求項2に記載の計測器。
【請求項5】
前記第1の行パターンに前記第2の行パターンを加えた前記複数桁のパターンと、当該複数桁のパターンに前記長さ方向に隣接する他の複数桁のパターンとのハミング距離が1であり、前記複数桁のパターンは全ての複数桁のパターンの中で1つのみであることを特徴とする請求項1に記載の計測器。
【請求項6】
幅方向に配列された複数のパターンを有する行パターンが長さ方向に複数配列されており、各パターンには二進値のいずれかが割り当てられたメジャーを使って、長さを計測する計測器であって、
第1の行パターンを読み取る第1読取手段と、
前記第1の行パターンから長さ方向に所定行離れた第2の行パターンを読み取る第2読取手段と、
前記長さ方向に並ぶ列パターンを読み取る第3読取手段と
を備え、
前記第3読取手段は、分解能が1つのパターンの長さの1/N(N:2以上の整数)の場合に2×N個設けられており、前記長さ方向に沿って2個ごとに前記1つのパターンの長さの1/Nだけ間隔が離れて配置されていることを特徴とする計測器。
【請求項7】
幅方向に配列された複数のパターンを有する行パターンが複数長さ方向に配列されたメジャーであって、
各パターンには二進値のいずれかが割り当てられており、
第1の行パターンに、前記第1の行パターンから前記長さ方向に所定行だけ離れた第2の行パターンを加えた複数桁のパターンと、当該複数桁のパターンに前記長さ方向に隣接する他の複数桁のパターンとのハミング距離が1であり、
前記複数桁のパターンは全ての複数桁のパターンの中で1つのみであり、
二進値のいずれかが割り当てられたパターンが前記長さ方向に交互に並ぶ列パターンをさらに備えることを特徴とするメジャー。
【請求項8】
幅方向に配列された複数のパターンを有する行パターンが長さ方向に複数配列され、各パターンには二進値のいずれかが割り当てられており、第1の行パターンに、前記第1の行パターンから前記長さ方向に所定行だけ離れた第2の行パターンを加えた複数桁のパターンと、当該複数桁のパターンに前記長さ方向に隣接する他の複数桁のパターンとのハミング距離が1であり、前記複数桁のパターンは全ての複数桁のパターンの中で1つのみであるメジャーを用いる計測器の計測方法であって、
前記複数桁のパターンと長さのデータとの対応関係を示す第1情報をメモリに格納し、
前記第1の行パターンを読み取り、
前記第2の行パターンを読み取り、
前記読み取られた第1の行パターンに前記読み取られた第2の行パターンを加えた複数桁のパターン、及び前記メモリに格納された第1情報に基づいて、測定対象の長さを算出することを特徴とする計測器の計測方法。
【請求項9】
読取手段が前記第1の行パターンと重なる基準位置から前記メジャーが1つのパターンの長さの1/N(N:2以上の整数)ずつ前記長さ方向にずらされたそれぞれの状態における前記列パターンの読取値を示す第2情報を前記メモリに予め格納し、
実際に読み取られた列パターンの読取値と、前記メモリに格納された第2情報とに基づいて、前記基準位置からの前記メジャーの前記長さ方向のずれ量を算出することを特徴とする請求項8に記載の計測器の計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測器、メジャー及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メジャーに設けられたカラーパターンを光学的に読み取ることで対象物の長さを測定する計測器が知られている(例えば、特許文献1参照)。この測定器では、測定データを手動で端末に入力する必要がなく、測定データを自動で端末に入力することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-95231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の計測器では、三進のコードが割り当てられた3色のパターンが印刷されたメジャーを使って、対象物の長さを計測している。この計測器において、3色以上の色の違いを読み取る性能が低いセンサが使用されるとパターンを正確に読み取れないおそれがある。また、パターンを正確に読み取れないエラーが起きると、誤った計測値が算出され、大きな計測誤差が生じるおそれがある。
【0005】
一方、2色の読取は可能なセンサを使って、二進のコードが割り当てられたパターンが印刷されたメジャーを読み取ることも考えられる。この場合、計測値が長くなるほど、二進のコードが割り当てられたパターンは三進のコードが割り当てられたパターンよりも桁数を増やす必要があり、メジャーの幅が太くなるおそれがある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、パターンの桁数を増やさずに、低性能な読取手段を使ってもパターンを正確に読み取ることができる計測器、メジャー及び計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の計測器は、幅方向に配列された複数のパターンを有する行パターンが長さ方向に複数配列されており、各パターンには二進値のいずれかが割り当てられているメジャーを使って、長さを計測する計測器であって、前記幅方向に配列された第1の行パターンを読み取る第1読取手段と、前記第1の行パターンから長さ方向に所定行離れた第2の行パターンを読み取る第2読取手段と、前記第1読取手段で読み取られた前記第1の行パターンに前記第2読取手段で読み取られた前記第2の行パターンを加えた複数桁のパターンからコードを生成する生成手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パターンの桁数を増やさずに、低性能な読取手段を使ってもパターンを正確に読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る計測器の構成図である。
図2】(A)は、メジャーの裏面に印刷されたパターンの一例を示す図である。(B)は、パターンを読み取る読取センサの配置を示す図である。
図3】(A)は、読取センサがM行目及びM-7行目のパターンを読み取る例を示す図である。(B)は、読取センサがM行目及びM+1行目のパターン並びにM-7行目及びM-6行目のパターンを読み取る例を示す図である。
図4】(A)は、M行目の2~6列目のパターンが読取センサ(領域23)と重なっている状態を示す図である。(B)は、図4(A)の状態からメジャーが上側に0.5mmシフトした状態を示す図である。
図5図4(A)の状態からメジャーが下側に0.5mmシフトした状態を示す図である。
図6】読取センサと1列目のパターンとを示す図である。
図7】読取センサと1列目のパターンとを示す図である。
図8】(A)は、系列1および系列2の場合に、状態「0/5」~「4/5」で各読取センサが読み取る黒の割合を示す図である。(B)は、読取センサが読み取る黒の割合の合計値を示す図である。
図9】計測器で実行される処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る長さ計測器の構成図である。
【0012】
計測器1は、複数桁のパターン付きのメジャー7aのパターンを読み取る読取部2と、読取部2で読み取られたデータから測定対象の長さを算出する算出手段としてのマイコン3(Micro Computer)と、算出された測定対象の長さのデータを有線又は無線で外部端末12に送信する通信装置4と、測定の開始をマイコン3に指示するスイッチ5と、長さのデータと複数桁のパターンとの対応関係を示す情報を格納する格納手段としてのメモリ6と、メジャー7aを格納する格納部7と、読取部2、マイコン3、通信装置4及びメモリ6に電力を供給するバッテリ8とを備えている。
【0013】
読取部2は、パターンに光を照射するLED(Light Emitting Diode)10と、パターンからの反射光を受光し、受光量に応じた値をもつ電流又は電圧に変換するフォトトランジスタ(PT)11とを備えている。LED10は、赤外線、可視光線及び紫外線の少なくとも1つを照射し、PT11はパターンで反射された赤外線、可視光線及び紫外線の少なくとも1つを受光する。LED10及びPT11のセットは後述する読取センサL1~L20に対応する。
【0014】
マイコン3は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサである。マイコン3はLED10のオン/オフを制御し、PT11からの出力の電流値又は電圧値を読み取る。パターンの色によって反射率が異なり、PT11の受光量は反射率に応じて変動するため、マイコン3はPT11から出力される電流値又は電圧値によって読み取ったパターンの色の判断が可能である。
【0015】
また、マイコン3は、読み取られたパターンの色を、メモリ6に格納された長さとパターンとの対応関係を示す情報に照合することによって、測定対象の長さを算出する。長さとパターンとの対応関係を示す情報は、例えば、長さとパターンの色の組み合わせとを関連付けしたテーブルである。長さとパターンとの対応関係を示す情報は、メモリ6に格納されているが、外部端末12に格納し、必要に応じてマイコン3が外部端末12から読み出してもよい。
【0016】
メジャー7aのおもて面には目盛りが長さ方向に沿って印刷されており、裏面には2色のパターンで構成される二進コードが一定の長さ毎に印刷されている。各色は二進値のいずれかに対応している。安価な読取センサなど、読取部で使用する読取センサが3色以上の色の違いを読み取る性能が低いような場合、3色あるいはそれ以上の色で塗り分けられたパターンを正確に読み取れないおそれがある。一方、複数色の読取が可能なセンサは比較的高価である。そのため、本実施例では、安価な読取センサでも色の違いが読み取れるように2色のパターンを用いている。本実施例では、白および黒の2色のパターンがメジャー7aに印刷されている。
【0017】
なお、パターンの色は白及び黒に限定されるものではなく、読み取り時に2種類のパターンが区別できるのであれば、他の色の組合せや、同一色相で濃度や明度の異なるパターン、反射率の異なる2種のパターンなどを用いてもよい。ここでは便宜上、これらも「異なる色」として扱う。
【0018】
格納部7は計測器1の筐体に取り付けられており、計測器1の筐体から取り外し可能である。
【0019】
外部端末12は、コンピュータ又はスマートホンのような有線又は無線の通信機能を有する通信端末であり、測定対象の長さのデータを通信装置4から受信して管理する。
【0020】
図2(A)は、メジャー7aの裏面に印刷されたパターンの一例を示す図である。メジャー7aは、その長さ方向に沿って複数の行パターン21を備えている。1つの行パターン21は、メジャー7aの幅方向に沿って6個の個別のパターン22を備えている。つまり、6列のパターン22が1つの行パターン21を構成する。図2(A)では合計17行の行パターン21が示されている。
【0021】
本実施形態によるメジャーは、二進値で長さを表現している。そのため、メジャーで計測可能な長さを長くしようとすると1つの長さを表現するのに必要な桁数が増えてしまい、これを1行に印刷しようとするとメジャーの幅が大きくなってしまうおそれがある。一方、パターンの幅を狭くすればメジャーの幅も小さくすることはできるが、一つのセンサが隣接するパターンを同時に読み取る可能性が出てしまうため、ある程度パターンの幅を広く取る必要がある。
【0022】
このような問題があるため、本実施形態では2つの行パターンで一つの計測値を示すようにしている。この場合、1つの行に印刷されるパターンの桁数を小さく保つことができ、メジャーの幅が大きくなることを防止できる。
【0023】
図2(A)において、「〇」は白を示し、「×」は黒を示すが、実際のパターンには「〇」や「×」などの印は記載されていない。反射率は、白が黒よりも高い。また、PT11から出力される電圧値はアナログデータであり、例えば白及び黒を読み取った場合、PT11から出力される電圧値はそれぞれ2.0V及び1.0Vであるとする。
【0024】
メジャー7aの長さ方向に沿ったパターン22の長さは、例えば2.5mmであり、メジャー7aの幅方向に沿ったパターン22の幅は、例えば2.5mmである。つまり、パターン22は、2.5mmx2.5mmの正方形である。ただし、パターン22の大きさはこの例に限定するものではない。また、パターン22の長さは、メジャー7aで計測できる最低長さの基準となる。
【0025】
図2(B)は、パターンを読み取る読取センサの配置を示す図である。
【0026】
LED10及びPT11の1セットが1つの読取センサを構成し、1つの読取センサが1つのパターンを読み取るように割り当てられている。図2(B)では、L1~L20が読取センサを示す。
【0027】
第1読取手段としての読取センサL11~L15は、2列目~6列目に、メジャー7aの幅方向に沿って直線状に配列されている。第2読取手段としての読取センサL16~L20は、2列目~6列目に、メジャー7aの幅方向に沿って直線状に配列されており、読取センサL11~L15からメジャー7aの長さ方向に所定行、図示の例では7行離れた位置に配列されている。
【0028】
このように、読取センサL11~L15及び読取センサL16~L20を2行に分けて配置する理由は、上記の通り2つの行パターンで1つの計測値を表現することで、メジャー7aの幅方向に印刷されるパターン22の数、即ち、桁数を抑制することができるからである。
【0029】
図3の例では、長さは読取センサL11~L15が読み取った5桁と、読取センサL16~L20が読み取った5桁とを組み合わせた、10桁の2値コードとして表現されている。1行に10桁のコードを印刷する場合と比較して、メジャー7aの幅を狭くすることが可能となる。以下、10桁のパターンを「コード」とも称する。
【0030】
読取センサL16~L20のセンサ中心と読取センサL11~L15のセンサ中心との間の距離Rは任意の値とすることができる。図2(B)の例では、距離Rは7行分の行パターン21の長さであるが、必ずしも7行分の長さに限定されるものではない。互いに隣接する列に配置される読取センサの中心間の列方向の距離Qは、パターン22の幅に対応する2.5mmである。読取センサL1~L20の各々の幅は、パターン22の幅以下であればよく、例えば2.5mm以下である。
【0031】
計測器1が測定可能な最小単位の長さ、すなわち計測器1の分解能を1つのパターン22の長さの1/Nとする場合、2×N個の読取センサがメジャー7aの長さ方向に沿って直線状に配列される。図2(B)では、計測器1の分解能を1つのパターン22の長さの1/5、即ち0.5mmとしているので、Nは5であり、読取センサの個数は10(=2×5)個になる。図2(B)の例では、第3読取手段としての読取センサL1~L10が、1列目にメジャー7aの長さ方向に沿って直線状に配列されている。尚、1列目に配置される読取センサの個数は10個に限定されるものではなく、計測器1の分解能に応じて適宜変更される。例えば、計測器1の分解能が1つのパターンの長さの1/2の場合には、N=2であり、1列目に配置される読取センサの個数は4(=2×2)個である。また、読取センサL1~L10は、図2(A)の1列目のように白と黒とのパターンが長さ方向に交互に並ぶ列と同じ列に配置されていればよく、必ずしも1列目に配置されている必要はない。
【0032】
読取センサL1とL2のセンサ中心間、L3とL4のセンサ中心間、L5とL6のセンサ中心間、L7とL8のセンサ中心間、及びL9とL10のセンサ中心間の距離Pは、パターン22の長さと同一であり、例えば、2.5mmである。
【0033】
読取センサL2とL3の中心間、L4とL5の中心間、L6とL7の中心間及びL8とL9の中心間の距離はP+1/Nであり、パターン22の長さよりも1/Nだけ長く、例えば3mm(=2.5mm+0.5mm)である。これらのセンサ間の距離をP+1/Nとする理由は、1つのパターン22の長さよりも短い長さの測定を可能にするためである。例えば、読取センサL11~L15が99行目と100行目の行パターン21を同時に読み取ったときに、100行目の行パターン21からの読取センサL11~L15のメジャー7aの長さ方向のずれ量を正確に測定するために、P+1/Nだけ離れた読取センサを用いる。
【0034】
図3(A)は、読取センサL11~L15がM行目のパターンを読み取り、読取センサL16~L20がM-7行目のパターンを読み取る例を示す図である。なお、M行目のパターンは任意の行パターン21である。領域23は読取センサL11~L15の位置を示し、領域24は読取センサL16~L20の位置を示す。
【0035】
メジャー7aに印刷されるパターン22には、以下の規則がある。(1)第1列目には、メジャー7aの長さ方向に沿って白と黒のパターンが交互に配置されている。(2)M行目の2~6列目のパターン22に、所定のX行(図2のRに相当し、図3(A)(B)の例ではX=7)離れた位置にあるM-X行目の2~6列目のパターン22を加えた10桁のパターンと、これらに隣接するM-1行目及びM-(X+1)行目の2~6列目の10桁のパターン又はM+1行目及びM-(X-1)行目の2~6列目の10桁のパターンとのハミング距離は1である。つまり、M行目の2~6列目のパターン22にM-X行目の2~6列目のパターン22を加えた10桁のパターンは、それぞれに隣接する2つの行の10桁のパターンと1つの桁だけパターンの白黒が異なる。(3)M行目の2~6列目のパターン22にM-X行目の2~6列目のパターン22を加えた10桁のパターンは、全ての10桁のパターンの中で1つのみである。
【0036】
図3(A)において、読取センサL11~L15がM行目の2~6列目のパターン22を読み取るとき、読取センサL16~L20はM-7行目の2~6列目のパターン22を読み取る。本実施例では、読取センサL11~L15及び読取センサL16~L20で読み取られた計10桁のパターンを1つのコードとみなす。長さの計測時には、読取センサL11~L15に読み取られたM行目の2~6列目のパターン22に対応する長さを測定対象の長さとする。読取センサL11~L15及び読取センサL16~L20の読取値は、M行目の2~6列目の読取値及びM-7行目の2~6列目の読取値の順に並べると、「〇〇×〇〇×〇〇〇〇」となり、長さは10ビットの2進コードで表現される。
【0037】
同様に、読取センサL11~L15がM+1行目の2~6列目のパターン22を読み取るとき、読取センサL16~L20はM-6行目の2~6列目のパターン22を読み取る。この場合、読取値は「〇〇×〇〇〇〇〇〇〇」となるので、M行目及びM-7行目の2~6列目の読取値と比べると、読取センサL16の読取値のみが「×」から「〇」に変化する。読取センサL11~L15がM-1行目の2~6列目のパターン22を読み取るとき、読取センサL16~L20はM-8行目の2~6列目のパターン22を読み取る。この場合、読取値は「〇〇〇〇〇×〇〇〇〇」となるので、M行目及びM-7行目の2~6列目の読取値と比べると、読取センサL13の読取値のみが「×」から「〇」に変化する。このように、読取センサL11~L20で読み取られる10桁のパターンと、これに隣接する10桁のパターンとのハミング距離は1である。
【0038】
図3(B)は、読取センサL11~L15がM行目及びM+1行目のパターンを読み取り、読取センサL16~L20がM-7行目及びM-6行目のパターンを読み取る例を示す図である。図3(B)は、図3(A)と比べて領域23,24の位置が異なる。
【0039】
図3(B)では、読取センサL11~L15がM行目及びM+1行目の2~6列目のパターン22の境界に、読取センサL16~L20がM-7行目及びM-6行目の2~6列目のパターン22の境界に重なるように位置している。この場合、読取センサL16は、「×」(黒)及び「〇」(白)の両方の影響を受けて1.0Vより大きく2.0Vより小さな、「×」「〇」のどちらでもない値を示す。しかし、読取センサL16がどちらの読取値を示しても、上記パターンの規則(2)により、M行目の2~6列目のパターンとM+1行目の2~6列目のパターンとは同一であり、M-7行目の3~6列目のパターンとM-6行目の3~6列目のパターンとは同一であるので、読取センサL11~L15及びL17~L20の出力値は読み取っているパターンに対応する正確な読取値を示す。従って、上記パターンの規則(3)を考慮すれば、マイコン3は予めメモリ6に保存された各行のパターン22の情報を呼び出し、この情報を読取センサL11~L20の読取値と照合することで、読取センサL11~L15がM行目及びM+1行目の2~6列目のパターン22の少なくとも一方を読み取っており、且つ読取センサL16~L20がM-7行目及びM-6行目の2~6列目のパターン22の少なくとも一方を読み取っていることを確定できる。
【0040】
このように、読取センサL11~L15及び読取センサL16~L20が2行に分けて配置されているので、メジャー7aの幅方向に印刷されるパターンの桁数を抑制することができる。また、読取センサL11~L20で読み取られる10桁のパターンと、これに隣接する10桁のパターンとのハミング距離が1であるために、マイコン3は読取センサL11~L20の値に基づいて、読取センサL11~L15がM行目及びM+1行目の2~6列目のパターン22の双方あるいは一方を読み取っており、且つ読取センサL16~L20がM-7行目及びM-6行目の2~6列目のパターン22の双方あるいは一方を読み取っていることを確定できる。
【0041】
次に1列目のパターンを読み取っている読取センサL1~L10を使い、M行目の2~6列目のパターン22が読取センサL11~L15(領域23)と重なる状態を基準として、メジャー7aがM行目の行パターンに対して上側又は下側にシフトしている量を確定する方法を述べる。
【0042】
図4(A)は、M行目のパターン22が領域23と重なっている状態を示す図である。図4(B)は、図4(A)の状態からメジャー7aが上側に0.5mmシフトした状態を示す図である。図5は、図4(A)の状態からメジャー7aが下側に0.5mmシフトした状態を示す図である。メジャー7aが巻き戻されると、メジャー7aが図4(A)の上側にシフトし、測定長が減少する。メジャー7aが引き延ばされると、メジャー7aが図4(A)の下側にシフトし、測定長が増加する。図4(A)、図4(B)及び図5の1列目のパターン上には、読取センサL1~L10の位置が点線で示されている。以下、メジャー7aが基準状態から引き出される方向にシフトする状態を系列1、基準状態から巻き戻される方向にシフトする状態を系列2と称する。
【0043】
図6及び図7は読取センサL1~L10と1列目のパターン22の状態とを示す図である。
【0044】
上述したように、メジャー7aの1列目には、メジャー7aの長さ方向に沿って白と黒とのパターンが交互に配置されている。図6及び図7において、センサ番号の下に示す%は、黒パターンを読み取った時の受光量を100%としたときの各センサの受光量の割合を示し、各読取センサが読み取る黒の割合に相当する。例えば、「40%」は、読取センサが黒パターンの40%と白パターンの60%を読み取っていることを示す。「100%」は、読取センサが黒パターンのみを読み取っていることを示す。「0%」は、読取センサが白パターンのみを読み取っていることを示す。
【0045】
図6の状態「0/5」は、図4(A)に示すようにM行目の2~6列目のパターン22が領域23と重なっている場合の読取センサL1~L10が読み取る黒の割合を示す。図6の系列1は、状態「0/5」からメジャー7aが計測器1の分解能に対応した0.5mmずつ引き出された場合、つまり、図4(A)の下側に0.5mmずつシフトした場合の読取センサL1~L10が読み取る黒の割合を示す。系列1では、メジャー7aが0.5mmずつ引き出される度に、読取センサL1~L10が読み取る黒の割合は、図6の状態「0/5」→状態「1/5」→状態「2/5」→状態「3/5」→状態「4/5」の順番で遷移する。図6の状態「1/5」は図5の読取センサL1~L10が読み取っている状態を示す。
【0046】
一方、図7の系列2は、図6の状態「0/5」からメジャー7aが0.5mmずつ巻き戻された場合、つまり、図4(A)の上側に0.5mmずつシフトした場合の読取センサL1~L10が読み取る黒の割合を示す。系列2では、メジャー7aが0.5mmずつ巻き戻される度に、読取センサL1~L10が読み取る黒の割合は、図6の状態「0/5」→図7の状態「4/5」→図7の状態「3/5」→図7の状態「2/5」→図7の状態「1/5」→図7の状態「0/5」の順番で遷移する。図7の状態「4/5」は図4(B)の読取センサL1~L10が読み取っている状態を示す。
【0047】
図8(A)は、系列1および系列2の場合に、状態「0/5」~「4/5」で各読取センサが読み取る黒の割合を示す図である。図8(B)は、読取センサL1、L3、L6、L8及びL10が読み取る黒の割合の合計値を示す図である。
【0048】
読取センサL1、L3、L6、L8及びL10が読み取る黒の割合の合計値は、図8(B)に示すように、系列1では300%以上になり、系列2では200%以下になる。従って、系列1と系列2とは例えば250%を閾値として区別することができる。
【0049】
なお、図8(A)から分かる通り、読取センサL2、L4、L5、L7及びL9が読み取る黒の割合の合計値は、系列1では200%以下になり、系列2では300%以上になる。従って、読取センサL1、L3、L6、L8及びL10に代えて、読取センサL2、L4、L5、L7及びL9が読み取る黒の割合の合計値を使用して系列1と系列2とを区別してもよい。
【0050】
マイコン3は、読取センサL1、L3、L6、L8及びL10で読み取った黒の割合の合計値が系列1または系列2に該当するかを、閾値を用いて決定する。系列1に該当する場合、M行目の2~6列目のパターン22が読取センサL11~L15に重なっている状態からメジャー7aが引き出されているので、マイコン3は、例えば図5に示すように読取センサL11~L15がM行目及びM-1行目の2~6列目のパターン22を読み取っていると判断する。系列2に該当する場合、M行目の2~6列目のパターン22が読取センサL11~L15に重なっている状態からメジャー7aが巻き戻されているので、マイコン3は、例えば図4(B)に示すように読取センサL11~L15がM行目及びM+1行目のパターン22を読み取っていると判断する。つまり、マイコン3は、読取センサL1、L3、L6、L8及びL10で読み取った黒の割合の合計値が系列1または系列2に該当するか否かに基づいて、M行目の2~6列目のパターン22を基準として読取センサL11~L15がメジャー7aのM-1行目側にずれているのか又はM+1行目側にずれているのかを判断している。
【0051】
次に、系列1の場合、マイコン3は、読取センサL1、L3、L6、L8及びL10で読み取った値から、黒の割合が100%である位置の読取センサを特定し、現在の状態が状態「0/5」~「4/5」のいずれであるかを確定する、即ち、読取センサL11~L15がM-1行目側にずれている量を確定する。現在の状態が系列1の状態「1/5」であれば、マイコン3は、読取センサL11~L15がM-1行目側に0.5mmずれていると確定できる。この場合の測定値は、M行目に対応する長さに0.5mmを加えた長さになる。現在の状態が系列1の状態「2/5」であれば、マイコン3は、読取センサL11~L15がM-1行目側に1.0mmずれていると確定できる。
【0052】
読取センサL1、L3、L6、L8およびL10は、1パターン長さの倍数に対して0.5mm(=1/N)だけずれているので、0.5mm単位でいずれかの読取センサにおける黒の割合が100%になることが期待される。そのため、上記のように、計測器1の分解能に対応した0.5mm単位で長さを計測することができる。なお、マイコン3は、読取センサL2、L4、L5、L7及びL9で読み取った値から、黒の割合が0%である位置の読取センサを特定し、現在の状態が状態「0/5」~「4/5」のいずれであるかを確定してもよい。
【0053】
また、ずれ量はかならずしも0.5mm単位になるとは限らず、いずれの読取センサにおける黒の割合も100%にならない可能性がある。このような場合、読取センサL1、L3、L6、L8およびL10のうち黒の割合がもっとも100%に近い読取センサを基準にして、0.5mm単位で長さを求めるようにしてもよい。
【0054】
系列2の場合、マイコン3は、読取センサL1、L3、L6、L8及びL10で読み取った値から、黒の割合が0%である位置の読取センサを特定し、現在の状態が状態「0/5」~「4/5」のいずれであるかを確定する、即ち、読取センサL11~L15がM+1行目側にずれている量を確定する。例えば、現在の状態が系列2の状態「4/5」であれば、マイコン3は、読取センサL11~L15がM+1行目側に0.5mmずれていると確定できる。この場合の測定値は、M行目に対応する長さから0.5mmを減じた長さになる。現在の状態が系列2の状態「3/5」であれば、マイコン3は、読取センサL11~L15がM+1行目側に1.0mmずれていると確定できる。なお、マイコン3は、読取センサL2、L4、L5、L7及びL9で読み取った値から、黒の割合が100%である位置の読取センサを特定し、現在の状態が状態「0/5」~「4/5」のいずれであるかを確定してもよい。
【0055】
なお、状態「0/5」ではメジャー7aがずれていない状態のため、読取センサL11~L15が1つの行パターンのみを読み取っていると確定できる。
【0056】
上記では、読取センサL1、L3、L6、L8及びL10のグループと、読取センサL2、L4、L5、L7及びL9のグループとに分けられている。このグループ分けは、2つのグループの読取センサで読み取った黒の割合の合計値の差が大きくなるように設定されており、系列1と系列2との判断をしやすくするため、つまり読取センサL11~L15がメジャー7aのM-1行目側にずれているのか又はM+1行目側にずれているのかを判断しやすくするためである。例えば、読取センサL1とL2を同一のグループにしてしまうと、いずれの状態でも、読取センサL1とL2で読み取った黒の割合の合計値は系列1及び系列2で100になってしまうため、読取センサL11~L15がメジャー7aのM-1行目側にずれているのか又はM+1行目側にずれているのかを判断できなくなる。これを避けるために、例えば、同一系統の同一状態で、100の値を示す読取センサと0の値を示す読取センサとが互いに異なるグループに属するように、読取センサL1~L10がグループ分けされている。
【0057】
なお、分解能を1/Nとする場合に1列目に配置する読取センサは、2×N個ではなくN個でもよい。図8(B)の例では各状態の判別に読取センサL1、L3、L6、L8及びL10の5つの読取センサのみを用いており、1列目にL1、L3、L6、L8、L10の5つの読取センサのみを設ければ、メジャー7aに対する読取センサL11~L15のずれ方向およびずれ量の判別が可能である。逆に、1列目にL2、L4、L5、L7、L9の5つの読取センサのみを設けることでも、ずれ方向及びずれ量の判別は可能である。
【0058】
尚、図6図8(B)では、説明の便宜上、黒の割合を用いたが、マイコン3は、各読取センサL1~L20から読み取った色に対応する電圧値を取得するため、実際には黒の割合に対応する電圧値が使用される。また、図6図8(B)に示すような、読取センサL11~L15が任意の行パターン21(例えばM行目)と重なる基準位置からメジャー7aが1つのパターンの長さの1/5ずつずらされたそれぞれの状態における1列目のパターン22の読取値(例えば濃度又は電圧値)を示す情報は予めメモリ6に格納されているものとする。
【0059】
図9は、計測器1で実行される処理を示すフローチャートである。パターン22の黒白の電圧値及び黒白を判定するための閾値は予め定義されているものとする。例えば、検出電圧1.0Vを黒濃度100%と定義し、検出電圧2.0Vを黒濃度0%(あるいは白濃度100%)と定義する。
【0060】
まず、スイッチ5を押下すると(S1)、長さの計測が開始される。スイッチ5は、メジャー7aを測定対象物に当てた後に、パターンの読取を行うタイミングで押下される。マイコン3は、読取センサL1~L10からの電圧値を検出する(S2)。
【0061】
次いで、読取センサL11~L20からの電圧値を検出する(S3)。ここで、読取センサL11~L15及び読取センサL16~L20で読み取られた2行分のパターン22を1つのコードとみなすために、マイコン3は、読取センサL11~L15からの電圧値に読取センサL16~L20からの電圧値を加えた読取センサL11~L20の電圧値に対応するコードを生成する。
【0062】
マイコン3は予めメモリ6に保存された長さと複数桁のパターンとの対応関係を示す情報を呼び出し、この情報を読取センサL11~L20の電圧値に対応するコードと照合することで(S4)、読取センサL11~L20によって読み取られたパターンを特定する(S5)。S4、S5の処理では、図3(A),(B)に示すように、読取センサL11~L15及び読取センサL16~L20がそれぞれ読み取っている1行又は2行の行パターン21を特定できる。なお、実際の測定対象の長さは、読取センサL11~L15に読み取られたパターンに対応する長さであるので、マイコン3は読取センサL11~L15に読み取られた1行又は2行の行パターン21から測定物のおおよその長さを算出することは可能である。読取センサL11~L15がM行目の行パターンとM-1行目の行パターンとを読み取っているときには、最大で1パターンの長さ分の誤差で長さを求めることができる。M行目の行パターンを読み取っている場合、M-1行目側にずれる場合とM+1行目側にずれる場合との2通りを考慮すると、M行目の行パターンを読み取っているときの長さの測定値は最大で2つのパターンの長さ分の誤差を含む可能性がある。
【0063】
次いで、マイコン3は、読取センサL1、L3、L6、L8及びL10の電圧値の合計が閾値よりも大きいか否かを判別する(S6)。読取センサL1、L3、L6、L8及びL10の電圧値の合計が閾値よりも大きい場合には(S6でYES)、読取センサL1、L3、L6、L8及びL10の電圧値の合計値が系列1に該当するので、マイコン3は、読取センサL11~L15がM行目及びM-1行目の2~6列目のパターン22を読み取っていると判断する(S7)。
【0064】
次いで、マイコン3は、読取センサL1、L3、L6、L8及びL10の電圧値から、黒の割合が100%である位置の読取センサを特定し、現在の状態が系列1の状態「0/5」~「4/5」のいずれであるかを確定することで、読取センサL11~L15がM-1行目側にずれている量を確定する(S8)。なお、上述したように、系列1の状態「0/5」はずれが無い状態を示す。マイコン3は、S5で特定されたM行目のパターンに対応する長さとS8で確定したM-1行目側にずれている量とを合計することで測定物の長さを算出し(S11)、本処理を終了する。なお、S5で特定されたM行目のパターンに対応する長さは、メジャー7aの始点(0cm)から基準位置までの長さ(基準長という)であり、この基準長とS8で確定したM-1行目側にずれている量とを合計することで測定物の長さが算出される。
【0065】
一方、読取センサL1、L3、L6、L8及びL10から出力される電圧値の合計が閾値よりも小さい場合には(S6でNO)、読取センサL1、L3、L6、L8及びL10の電圧値の合計値が系列2に該当するので、マイコン3は、読取センサL11~L15がM行目及びM+1行目の2~6列目のパターン22を読み取っていると判断する(S9)。
【0066】
次いで、マイコン3は、読取センサL1、L3、L6、L8及びL10から出力された電圧値から、黒の割合が0%である位置の読取センサを特定し、現在の状態が系列2の状態「0/5」~「4/5」のいずれであるかを確定する、即ち、読取センサL11~L15がM+1行目側にずれている量を確定する(S10)。マイコン3は、S5で特定された読取センサL11~L15によって読み取られたM行目のパターンに対応する長さとS10で確定したM+1行目側にずれている量とを合計することで測定物の長さを算出し(S12)、本処理を終了する。S12では、メジャー7aの始点(0cm)から基準位置までの基準長と、S10で確定したM+1行目側にずれている量とを合計することで測定物の長さが算出される。
【0067】
以上の処理により、1つのパターンの長さの1/5、つまり0.5mmmの精度で測定対象の長さを測定することができる。また、1つのパターンの長さよりも短い精度で測定対象の長さを測定できるので、計測誤差を低減することができる。
【0068】
図9のS6に代えて、読取センサL1、L3、L6、L8及びL10の電圧値のいずれかが、図8(A)の黒100%のパターンを読み取った時の電圧値に対応するかを判別してもよい。読取センサL1、L3、L6、L8及びL10の電圧値のいずれかが、黒100%のパターンを読み取った時の電圧値に対応する場合には、図8(A)から現在の状態は系列1に該当する。したがって、マイコン3は、読取センサL11~L15がM行目及びM-1行目の2~6列目のパターン22を読み取っていると判断する(S7)。読取センサL1、L3、L6、L8及びL10の電圧値のいずれも、黒100%のパターンを読み取った時の電圧値に対応しない場合には、図8(A)から現在の状態は系列2に該当する。したがって、マイコン3は、読取センサL11~L15がM行目及びM+1行目の2~6列目のパターン22を読み取っていると判断する(S9)。
【0069】
また、図9のS6の代わりに、読取センサL1、L3、L6、L8及びL10の電圧値のいずれかが図8(A)の黒0%のパターンを読み取った時の電圧値に対応するかを判別してもよい。読取センサL1、L3、L6、L8及びL10が出力する電圧値のいずれかが、黒0%のパターンを読み取った時の電圧値に対応する場合には、図8(A)から現在の状態は系列2に該当する。したがって、マイコン3は、読取センサL11~L15がM行目及びM+1行目の2~6列目のパターン22を読み取っていると判断する(S9)。読取センサL1、L3、L6、L8及びL10の電圧値のいずれも、黒0%のパターンを読み取った時の電圧値に対応しない場合には、図8(A)から現在の状態は系列1に該当する。したがって、マイコン3は、読取センサL11~L15がM行目及びM-1行目の2~6列目のパターン22を読み取っていると判断する(S7)。
【0070】
本実施の形態では、1つのパターンの長さの1/5の精度で長さを測定するために読取センサL1~L10を設けているが、測定精度に応じて1列目に配置される読取センサの個数を増減させてもよい。1つのパターンの長さの1/2の精度で長さを測定する場合には、1列目に配置される読取センサの個数は4個でよい。
【0071】
また、1つのパターンの長さの精度で長さを測定する場合、つまり1つのパターンの長さに対応する測定誤差を許容する場合には、2-6列目と同様に、1列目に配置される読取センサは1個でもよい。このような読取センサの配設であっても、1つの行パターンを読み取っているのか、2つの行パターンにまたがって読み取りを行っているのかを、1列目に配置された読取センサによって判断することは可能である。
【0072】
また、図9のS6では、各読取センサが例えば黒100%のパターンを読み取った時の電圧値と黒80%のパターンを読み取った時の電圧値との間に所定値以上の大きな差分が生じない場合を考慮して、読取センサL1、L3、L6、L8及びL10の電圧値の合計が使用されている。例えば、各読取センサの感度が良好で、黒0%、黒20%、黒40%、黒60%、黒80%及び黒100%のそれぞれのパターンを読み取った時の電圧値の間に所定値以上の差分が生じる場合には、1列目に配置される読取センサは2個でもよい。
【0073】
例えば、1列目に配置される読取センサが読取センサL6のみである場合、マイコン3は、読取センサL6が黒80%のパターンを読み取った時の電圧値(黒濃度)と、図8(A)に示す情報とに基づいて、現在の状態が系列1の状態「1/5」及び系列2の状態「4/5」のいずれであるのかを特定できない。しかし、1列目に配置されている読取センサが読取センサL6及びL8の2個である場合、系列1の状態「1/5」及び系列2の状態「4/5」の読取センサL8の電圧値(黒濃度)は互いに異なるので、マイコン3は、2つの読取センサL6及びL8から現在の状態を特定することができる。つまり、マイコン3は、読取センサL6及びL8が読み取ったときの電圧値(黒濃度)と、図8(A)に示す情報とに基づいて、現在の状態が系列1又は2の状態「0/5」~「4/5」のいずれに該当するかを判断できる。なお、1列目に配置される少なくとも2個の読取センサは、一方の読取センサが2つの系列又は2つの状態で同一の電圧値(黒濃度)になるときに、他方の読取センサが一方の読取センサと同じ系列又は同じ状態で異なる電圧値(黒濃度)をとることが必要である。
【0074】
このように、マイコン3は、1列目に配置された読取センサが読み取ったときの電圧値と、読取センサL11~L15が任意の行パターン21と重なる基準位置からメジャー7aが1つのパターンの長さの1/5ずつずらされたそれぞれ状態における1列目のパターン22の読取値(例えば黒濃度又は電圧値)を示す情報とに基づいて、基準位置からのメジャー7aの長さ方向のずれ量を算出してもよい。
【0075】
本実施の形態によれば、メジャー7aに印刷される各パターンには二進値のいずれかが割り当てられおり、読取センサL11~L15で読み取られたパターン22に読取センサL16~L20で読み取られたパターン22を加えた10桁のパターンと当該10桁のパターン22に長さ方向に隣接する他の10桁のパターンとのハミング距離が1であり、読取センサL11~L15で読み取られたパターン22に読取センサL16~L20で読み取られたパターン22を加えた10桁のパターンは全ての10桁のパターンの中で1つのみである。そして、計測器1では、読取センサL16~L20が読取センサL11~L15から所定行離れて配置されており、読取センサL11~L15で読み取られたパターン22に読取センサL16~L20で読み取られたパターン22を加えた10桁のパターンを1つの行パターンとみなして、長さを計測する。従って、10桁のパターンが幅方向に1行に並んで配置されておらず、2行に分けて配置されるので、メジャーの幅に収まるようにパターン22の桁数を抑制することができる。また、2色に分けられた各パターンには二進値のいずれかが割り当てられているため、読取センサL11~L20として3色以上の色の違いを読み取る性能が低い安価なセンサが使用されても、パターン22を正確に読み取ることができる。
【0076】
メジャー7aは、黒のパターンと白のパターンとが長さ方向に交互に並ぶ1列のパターンを含み、分解能を1つのパターンの長さの1/N(N:2以上の整数)とする場合、計測器1は黒白パターンが交互に並ぶ1列のパターンを読み取る2×N個の読取センサL1~L10をさらに備える。そして、読取センサL1~L10は、長さ方向に沿って隣り合う2個ごとに1つのパターンの長さの1/Nだけ離れて配置されている。この場合、図9のS6~S10の処理を実行することで、1つのパターンの長さの1/Nの精度で、読取センサL11~L15がM-1行目側又はM+1行目側にずれている量を算出することができる。
【0077】
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 計測器、2 読取部、3 マイコン、4 通信装置、5 スイッチ、
6 メモリ、7 格納部、7a メジャー、10 LED、
11 フォトトランジスタ、L1~L20 読取センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9