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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】害虫捕獲器
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/14 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
A01M1/14 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020009412
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021114922
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004020
【氏名又は名称】ニチバン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇津木 義季
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3069927(JP,U)
【文献】実開昭61-007973(JP,U)
【文献】実開平03-041583(JP,U)
【文献】実開昭52-025985(JP,U)
【文献】実開昭58-021278(JP,U)
【文献】特開2018-121566(JP,A)
【文献】実開昭63-071674(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状に形成され、片面側に捕虫用の粘着層が塗工された内底壁面部と、該内底壁面部の両側に複数の可撓連結片を介して連結されるとともに前記内底壁面部の前記片面側を内面とする略筒状をなすよう相互に接続する係合操作が可能な雌側および雄側の接続係合部と、を備え、
前記雌側および雄側の接続係合部が相互に接続されたきに前記略筒状に立体化され、前記内底壁面部の両側に前記複数の可撓連結片により区画された複数の開口を形成する害虫捕獲器であって、
前記雌側の接続係合部が、前記複数の開口に沿って略スリット状に延在する一対の溝側縁を有し、
前記雄側の接続係合部が、前記一対の溝側縁に案内されて前記雌側の接続係合部に挿入される一対の挿入突片と該一対の挿入突片が前記雌側の接続係合部に挿入されたとき前記一対の溝側縁の両端部分に突当て可能に対向する複数の対向側縁とを有するとともに、
前記雌側の接続係合部の前記一対の溝側縁の間に、前記一対の挿入突片の間に挿入可能な中央突片が設けられ、前記一対の挿入突片は、前記中央突片に近いそれぞれの内端縁よりも前記中央突片から遠いそれぞれの外端縁の方が、前記一対の溝側縁に対する傾き角が小さい緩傾斜をなしていることを特徴とする害虫捕獲器。
【請求項2】
前記中央突片は、前記一対の挿入突片より突出高さが小さいことを特徴とする請求項1に記載の害虫捕獲器。
【請求項3】
前記雌側の接続係合部が、前記複数の開口に沿って延在する切込み溝の片側に前記一対の溝側縁および前記中央突片を有するとともに、該切込み溝の他の片側に前記一対の挿入突片の前記外端縁の近傍部分を掛け止め可能な一対の掛止部を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の害虫捕獲器。
【請求項4】
前記一対の挿入突片が、それぞれの前記内端縁および前記外端縁側で略フック形状をなし、前記中央突片の両端側および前記一対の挿入突片の前記外端縁側で、それぞれ前記雌側の接続係合部にフック係合することを特徴とする請求項3に記載の害虫捕獲器。
【請求項5】
前記雌側の接続係合部が、前記切込み溝の前記他の片側に、前記一対の掛止部同士を一体に連結するとともに前記中央突片に対向する一体連結部分を有していることを特徴とする請求項3または4に記載の害虫捕獲器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫捕獲器に関し、特に略筒状に立体化される組立式の害虫捕獲器に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、所定形状の厚紙やプラスチックフィルム等を基材としてその両側端側を折り曲げおよび相互接続することで略筒状に立体化可能とし、その内部に誘引した害虫を粘着性の捕虫剤層にて捕獲するようにした定置式の害虫捕獲器が知られている。
【0003】
そのような害虫捕獲器として、例えば特許文献1には、捕獲器本体の両側面側に開口する開口の形状もしくは高さあるいはその上部のひさし(庇)の高さを捕獲対象虫の捕獲に適した形状や高さに設定したり、庇を大きくした蓋板部を設けて捕虫器内部を害虫の習性に応じて暗くしたりするものが記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、特許文献2、3には、それぞれ基材を折り畳んで筒状に立体化する際に、基材の両端部のうち片方に設けたスリット部もしくは対向するフック形状部と、他方に設けた両側突片付きのスライド部とを係合させて、基材の両端部を接続するようにしたものが記載されている。
【0005】
さらに、特許文献4ないし6には、それぞれ粘着性の捕虫剤層やその近傍に捕虫用の誘引手段として、化学的な誘引剤の他、誘引し易い絵柄、誘引色、誘引灯等を配置するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実全昭50-64574号公報
【文献】実全昭59-52879号公報
【文献】実全昭61-7973号公報
【文献】特開2002-84958号公報
【文献】特開2006-86号公報
【文献】実全昭57-113879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述のような従来の害虫捕獲器にあっては、内面に粘着性の捕虫剤層を露出させつつ基材の両側端側を折り曲げおよび相互接続して立体化する場合に、作業者の手指が捕虫剤層に触れないようにする必要から、その組立作業が容易でないという問題があった。
【0008】
また、粘着性の捕虫剤層や化学的な誘引剤等を別部品に支持させて捕虫器本体に組み付ける場合に、部品点数の増加により構造が複雑化し、組立工数の増加やコスト高を招いてしまい、さらには組立前の製品のかさ高を招き易くなるという問題があった。
【0009】
本発明は、上述のような従来の課題を解決すべくなされたものであり、構造が簡素で組立作業の容易な害虫捕獲器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る害虫捕獲器は、上記目的達成のため、板状に形成され、片面側に捕虫用の粘着層が塗工された内底壁面部と、該内底壁面部の両側に複数の可撓連結片を介して連結されるとともに前記内底壁面部の前記片面側を内面とする略筒状をなすよう相互に接続する係合操作が可能な雌側および雄側の接続係合部と、を備え、前記雌側および雄側の接続係合部が相互に接続されたきに前記略筒状に立体化され、前記内底壁面部の両側に前記複数の可撓連結片により区画された複数の開口を形成する害虫捕獲器であって、前記雌側の接続係合部が、前記複数の開口に沿って略スリット状に延在する一対の溝側縁を有し、前記雄側の接続係合部が、前記一対の溝側縁に案内されて前記雌側の接続係合部に挿入される一対の挿入突片と該一対の挿入突片が前記雌側の接続係合部に挿入されたとき前記一対の溝側縁の両端部分に突当て可能に対向する複数の対向側縁とを有するとともに、前記雌側の接続係合部の前記一対の溝側縁の間に、前記一対の挿入突片の間に挿入可能な中央突片が設けられ、前記一対の挿入突片は、前記中央突片に近いそれぞれの内端縁よりも前記中央突片から遠いそれぞれの外端縁の方が、前記一対の溝側縁に対する傾き角が小さい緩傾斜をなしていることを特徴とする。
【0011】
この構成により、本発明では、雌側の接続係合部に雄側の接続係合部の一対の挿入突片を挿入させて接続するとき、内底壁面部の片面側を内面とする略筒状に曲げるとともに、一対の溝側縁の両端部分に複数の対向側縁を突き当てる方向に係合操作がなされることになる。このとき、雌側の接続係合部を例えば内底壁面部の一方側の開口を通して一対の溝側縁の間付近で把持し、雄側の接続係合部を例えば内底壁面部の他方側の開口を通して一対の挿入突片の間付近で把持して、雌側の接続係合部の中央突片を雄側の接続係合部の一対の挿入突片の間に挿入する程度の作業で、一対の挿入突片の緩傾斜の外端縁をそれぞれ雌側の接続係合部の一対の溝側縁に小さい傾き角で先に係合開始させた上で、一対の溝側縁の両端部分に複数の対向側縁が突き当たる程度の深さまで一対の挿入突片を雌側の接続係合部に容易に挿入することができる。
【0012】
本発明の害虫捕獲器においては、前記中央突片は、前記一対の挿入突片より突出高さが小さい構成とすることができる。このような実施形態にすると、一対の挿入突片の緩傾斜の外端縁をそれぞれ雌側の接続係合部の一対の溝側縁に確実に先に係合開始させることができ、接続のための係合操作をさらに容易化できることになる。
【0013】
本発明の害虫捕獲器においては、前記雌側の接続係合部が、前記複数の開口に沿って延在する切込み溝の片側に前記一対の溝側縁および前記中央突片を有するとともに、該切込み溝の他の片側に前記一対の挿入突片の前記外端縁の近傍部分を掛け止め可能な一対の掛止部を有している構成とすることができる。このような実施形態にすると、雄側の接続係合部の一対の挿入突片の外端縁近傍部分が、雌側の接続係合部の一対の掛止部に掛け止め可能であることから、雌側および雄側の接続係合部を前述の容易な係合操作で的確に接続係合可能となる。
【0014】
本発明の害虫捕獲器においては、前記一対の挿入突片が、それぞれの前記内端縁および前記外端縁側で略フック形状をなし、前記中央突片の両端側および前記一対の挿入突片の前記外端縁側で、それぞれ前記雌側の接続係合部にフック係合するようにしてもよい。このような実施形態にすると、一対の挿入突片のそれぞれの内端縁および外端縁側でそれぞれ雌側の接続係合部にフック係合可能であるので、雌側および雄側の接続係合部を相互に確実に接続可能となる。
【0015】
本発明の害虫捕獲器においては、前記雌側の接続係合部が、前記切込み溝の前記他の片側に、前記一対の掛止部同士を一体に連結するとともに前記中央突片に対向する一体連結部分を有しているものであってもよい。このような実施形態にすると、雌側の接続係合部に雄側の接続係合部の一対の挿入突片を挿入させる際に、雌側の接続係合部の一対の掛止部同士を連結する一体連結部分を介して、一対の挿入突片によって切込み溝を板状の厚さ方向に開く方向に容易に撓めることができ、雌側および雄側の接続のための係合操作をさらに容易化できることになる。
【0016】
なお、本発明の好ましい実施形態においては、組立前の基材の内底壁面部には、捕虫用の粘着層を覆う透明な剥離シートが、剥ぎ取り可能に貼り付けられる。また、本発明の好ましい実施形態においては、基材が雌側および雄側の接続係合部の相互接続により略筒状に立体化されるとき、複数の可撓連結片の間の複数の開口の上方側に庇状の外突板が配置される。庇状の外突板の基端部には、ミシン目が形成されてもよい。基材をなす板状の素材は、例えばPP(ポリプロピレン)シートで、折り曲げ線あるいはミシン目(折り曲げや切断の補助)を有していてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、構造が簡素で組立作業の容易な害虫捕獲器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る害虫捕獲器の組立前の平面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る害虫捕獲器の組立前の底面図である。
図3】(a)は本発明の一実施形態に係る害虫捕獲器の組立前の正面図、(b)は本発明の一実施形態に係る害虫捕獲器の組立前の背面図である。
図4】(a)は本発明の一実施形態に係る害虫捕獲器の組立前の左側面図、(b)は部分拡大図を含む図1のIV-IV矢視断面図、(c)は本発明の一実施形態に係る害虫捕獲器の組立前の右側面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る害虫捕獲器の組立後における雌側および雄側の接続係合部の接合部位側からの外観斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係る害虫捕獲器の組立工程の説明図である。
図7】(a)は本発明の一実施形態に係る害虫捕獲器の組立後の平面図、(b)は本発明の一実施形態に係る害虫捕獲器の組立後の底面図である。
図8】(a)は本発明の一実施形態に係る害虫捕獲器の組立後の正面図、(b)は本発明の一実施形態に係る害虫捕獲器の組立後の背面図である。
図9】(a)は本発明の一実施形態に係る害虫捕獲器の組立後の左側面図、(b)は本発明の一実施形態に係る害虫捕獲器の組立後の右側面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る害虫捕獲器の組立前に粘着層上に貼付されている透明な剥離シートを特殊ハッチングで示した参考平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1ないし図10は、本発明の一実施形態に係る害虫捕獲器を示している。
【0021】
本実施形態の害虫捕獲器は、例えば野菜、果実、花卉(かき)等を栽培する農業用ハウスに害虫捕獲用に設置する組立式のもの、あるいは、昆虫類の生息状況把握用の分布調査に好適な組立式のもので、その組立前には積層状態での搬送に好適な板状の形態を有している。勿論、本発明の害虫捕獲器は、略筒状に立体化する組立がなされるものであって捕虫用の粘着層が塗工されたものであればよく、特定の用途に限定されるものではない。
【0022】
まず、その構成について説明する。
【0023】
図1ないし図4に示すように、本実施形態の害虫捕獲器10は、厚紙やプラスチックフィルム等の板状の素材を折り曲げまたは/および部分的に弾性曲げ可能(以下、同様の曲げが可能な意味で単に可撓という)な所定形状の基材10Mとしたもので、略多角形、例えば長方形の内底壁面部11と、内底壁面部11の一径方向、例えば長方形の短径方向の両側に複数の可撓連結片21、22を介して連結された雌側および雄側の接続係合部23、24とを具備している。
【0024】
内底壁面部11は、その片面11a側に捕虫用の粘着層12が塗工されており、粘着層12には透明な剥離シート13が容易に剥ぎ取り可能に貼付されている。なお、本実施形態では、内底壁面部11の他の片面11b側を定置時の最下面(設置面に接する外底面)とするが、内底壁面部11の一部、例えば周辺部分にその長手方向や短手方向に向かう少なくとも一つの突片を設け、その突片を下方側に折り曲げて、内底壁面部11の主要部を設置面から離間させることができる。粘着層12は、害虫に対して誘引性を有する色(蛍光色を含む)、形、絵柄、模様、香り、透明度、光強度等を有するものであってもよい。
【0025】
また、複数の可撓連結片21、22は、多角形の内底壁面部11の少なくとも一径方向、例えば長方形の短径方向の両側に設けられており、雌側および雄側の接続係合部23、24は、内底壁面部11の片面11a側を内面とする略筒状をなすよう相互に接続させる係合操作、すなわち接続係合の操作が可能な形状を有している。
【0026】
そして、雌側および雄側の接続係合部23、24が相互に接続されたき、害虫捕獲器10が略筒状に立体化されるとともに、その内底壁面部11の短径方向の両側に、複数の可撓連結片21により区画された複数の開口25、26と、複数の可撓連結片22により区画された複数の開口27、28とが形成されるようになっている。
【0027】
具体的には、図1図2図5および図6(a)に示すように、雌側の接続係合部23は、横長の複数の開口25、26に沿って略スリット状に直線的に延在する一対の溝側縁31、32を有している。
【0028】
また、雄側の接続係合部24は、一対の溝側縁31、32に案内されて雌側の接続係合部23に挿入される一対の挿入突片41、42と、それら一対の挿入突片41、42が雌側の接続係合部23に挿入されたときに溝側縁31の両端部分31aおよび溝側縁32の両端部分32aに突当て可能に対向する複数の対向側縁43、44、45と、を有している。
【0029】
この雄側の接続係合部24において、一対の挿入突片41、42は、中央突片33に近いそれぞれの内端縁41a、42aよりも中央突片33から遠いそれぞれの外端縁41b、42bの方が、一対の溝側縁31、32に対して緩傾斜をなしている。
【0030】
すなわち、直線的に延びる一対の溝側縁31、32に対して、一対の挿入突片41、42の外端縁41b、42bの傾き角θbは、それぞれ対応する内端縁41a、42aの傾き角θaよりも小さくなっている。この傾き角θbは、例えば40°以下、より好ましくは30°以下であり、θaは、例えば45°以上、より好ましくは50°以上である。
【0031】
また、一対の挿入突片41、42は、左右の内端縁41a、42aの傾き角θaが互いに略等しく、左右の外端縁41b、42bの傾き角θbも互いに略等しくなっている。
【0032】
さらに、図1および図6中の上下方向(雌側および雄側の接続係合部23、24の接続操作方向)において、一対の溝側縁31、32に対する中央突片33の突出高さh3は、複数の対向側縁43、44、45に対する一対の挿入突片41、42の突出高さh1よりも小さくなっている。
【0033】
図1の上部に示すように、接続係合部23は、横長の複数の開口25、26に沿って平行に延在する切込み溝34、35の片側(同図中の下側の溝側壁部)に、一対の溝側縁31、32および中央突片33を有するとともに、その切込み溝34、35の他の片側(同図中の上側の溝側壁部)に、一対の挿入突片41、42の外端縁41b、42bの近傍部分を抜け止め方向に掛け止め可能な一対の掛止部36、37を有している。
【0034】
さらに、接続係合部23は、一対の掛止部36、37同士を一体に連結するとともに図1中の上下方向で中央突片33に対向する一体連結部分38を有している。
【0035】
また、一対の挿入突片41、42は、それぞれの内端縁41a、42a側および外端縁41b、42b側で各対向側縁43、44、45のいずれかの両端間に入り込むようにオーバーハングする略フック形状をなしており、各挿入突片41、42の基端の幅L1、L2は、対応する切込み溝34、35の溝側縁31、32の長さと略等しくなっている。
【0036】
そして、雌側の接続係合部23の一対の溝側縁31、32に雄側の接続係合部24の一対の挿入突片41、42を挿入させるとき、一対の挿入突片41、42は、対応する切込み溝34、35内に入り込むとともに、一対の挿入突片41、42の左右の内端縁41a、42a側および左右の外端縁41b、42b側で、雌側の接続係合部23の中央突片33の両端側の鉤状突部33a、33bおよび一対の掛止部36、37に対してそれぞれにフック係合するようになっている。
【0037】
図5ないし図9に示すように、雌側および雄側の接続係合部23、24の相互接続により害虫捕獲器10が略筒状に立体化されるとき、複数の可撓連結片21、22の間の複数の開口25、26、27、28の上方側に庇状の外突板39、49が配置されるようになっており、これら庇状の外突板39、49の基端部には、ミシン目51、52が形成されている。
【0038】
本実施形態において、板状の素材10Mは、例えばPP(ポリプロピレン)シートで形成されており、各可撓連結片21、22の基端部に対応する折り曲げ線F1、F2を有するとともに、ミシン目51、52によって庇状の外突板39、49の基端側の折り曲げ位置を規定する折り曲げの補助(切断の補助でもよい)が可能になっている。
【0039】
庇状の外突板39、49は、ミシン目51、52に沿った折り曲げにより複数の開口25、26、27、28の上縁部分における板状の素材10Mの曲げ剛性を高めるとともに、複数の開口25、26、27、28の上方で設置面に対する傾き角を変化させることで、複数の開口25、26、27、28の実質的な開口サイズや捕獲対象虫の捕獲に適した導入経路の高さを可変設定でき、さらに、捕獲対象虫の習性に応じて害虫捕獲器10の内部に入る陽射しを加減することができるものである。
【0040】
次に、害虫捕獲器10の組立について説明するとともに、作用について説明する。
【0041】
(組立前の展開状態の製品時)
上述のように構成された本実施形態の害虫捕獲器10は、組立により立体化するまでは、図1ないし図4に示すように板状に展開した状態であり、その内底壁面部11の片面11a側に、捕虫用の粘着層12を覆う剥離シート13が剥離可能に貼付されている。
【0042】
したがって、本実施形態の害虫捕獲器10は、板状の非常に簡素な構造であり、組立による立体化前には、複数枚を積層した状態での搬送に好適な製品形態となっている。また、板状の素材10Mを、各可撓連結片21、22の基端部の折り曲げ線F1、F2で折り曲げたり、ミシン目51、52に沿って庇状の外突板39、49の折り曲げを行ったりすることができる。
【0043】
(組立による立体化時)
上述のように構成された本実施形態の害虫捕獲器10の組立時には、まず、雌側の接続係合部23の一対の溝側縁31、32に対して、雄側の接続係合部24の一対の挿入突片41、42を挿入させる接続係合操作がなされる。
【0044】
この接続係合操作においては、板状の素材10Mを内底壁面部11の片面11a側を内面とする略筒状に曲げるとともに(図5図6参照)、一対の溝側縁31、32の両端部分31a、32aに複数の対向側縁43、44、45を突き当てることになる。
【0045】
このとき、雌側の接続係合部23を例えば内底壁面部11の一方側の開口25、26を通して一対の溝側縁31、32の中間付近(P1、P2;図6参照)で把持し、雄側の接続係合部23、24を例えば内底壁面部11の他方側の開口27、28を通して一対の挿入突片41、42の中間付近P3、P4で把持して、雌側の接続係合部23の中央突片33を雄側の接続係合部24の一対の挿入突片41、42の間に挿入する程度の作業で、接続係合操作が可能となる。
【0046】
すなわち、雄側の接続係合部24の一対の挿入突片41、42の緩傾斜の外端縁41b、42bを、それぞれ雌側の接続係合部23の一対の溝側縁31、32に小さい傾き角θbで先に係合開始させた上で、一対の溝側縁31、32の両端部分31a、32aに複数の対向側縁43、44、45が突き当たる程度の深さまで、一対の挿入突片41、42を雌側の接続係合部23に容易に挿入することができる。
【0047】
また、本実施形態では、一対の挿入突片41、42の緩傾斜の外端縁41b、42bをそれぞれ雌側の接続係合部23の一対の切込み溝34、35の溝側縁31、32に確実に先に係合開始させることができ、接続のための係合操作をさらに容易化できることになる。
【0048】
しかも、一対の挿入突片41、42の外端縁41b、42bの近傍部分が、雌側の接続係合部23の一対の掛止部36、37に掛け止め可能であることから、雌側および雄側の接続係合部23、24を前述の容易な係合操作で的確に接続係合可能となる。
【0049】
さらに、本実施形態では、一対の挿入突片41、42のそれぞれの内端縁41a、42aおよび外端縁41b、42b側でそれぞれ、雌側の接続係合部23の対応部位に、すなわち、中央突片33の両端側の鉤状突部33a、33bおよび一対の掛止部36、37にフック係合可能であるので、雌側および雄側の接続係合部23、24を相互に確実に接続可能となる。
【0050】
加えて、雌側の接続係合部23に雄側の接続係合部24の一対の挿入突片41、42を挿入させる際に、雌側の接続係合部23の一対の掛止部36、37同士を連結する一体連結部分38を介して、一対の挿入突片41、42によって切込み溝34、35を板状の厚さ方向に開く方向に容易に撓めることができ、雌側および雄側の接続係合部23、24の接続のための係合操作をさらに容易化できることになる。
【0051】
(立体化後の製品使用時)
害虫捕獲器10に使用時には、例えば図5に示すように、内底壁面部11の他の片面である外底面を設置面として、害虫捕獲器10を所定姿勢で配置する。
【0052】
勿論、害虫捕獲器10は、内底壁面部11を鉛直方向に傾斜させることができ、適当な支持手段によって鉛直姿勢に保持されてもよい。また、内底壁面部11がその短径方向の各位置で高さが異なるように湾曲してもよいし、害虫捕獲器10が雌側および雄側の接続係合部23、24の接続側である上面部側で支持されてもよい。
【0053】
このように、本実施形態の害虫捕獲器10は、板状の素材10Mを主要部とする構造の簡素なものであり、その立体化のための組立作業を非常に容易なものとすることができるものである。
【0054】
なお、本発明において、内底壁面部11を有する定置部は、前述のように必ずしも略水平な設置面上に定置されるものである必要はなく、鉛直方向に延びる壁面に沿って定置されてもよく、その場合の定置部の固定は、吊り下げ、貼り付け、嵌め込みその他の従来知られた任意の固定法によって可能である。また、内底壁面部11の他の片面を害虫捕獲器10の設置面となる外底面としたが、前述のように、内底壁面部11を設置面より上方に位置させるよう側壁や底壁に連なる板状の基材10Mの一部を下方側に延長させたり突出させたりしてもよい。さらに、接続係合部23は、一対の掛止部36、37同士を一体に連結する一体連結部分38を有しているものとしたが、一対の掛止部36、37が互いに分離されつつ対向配置されてもよい。本発明の害虫捕獲器は、特定の害虫を捕獲するのに有効な捕虫器であるが、益虫を含む各種の昆虫類の分布調査等における試験的な捕獲にも使用できることは勿論である。
【0055】
以上説明したように、本発明は、構造が簡素で組立作業の容易な害虫捕獲器を提供することができるものであり、かかる本発明は、略筒状に立体化される組立式の害虫捕獲器全般に有用である。
【符号の説明】
【0056】
10 害虫捕獲器
10M 板状の基材
11 内底壁面部
11a 片面
12 粘着層
13 剥離シート
21、22 可撓連結片
23、24 接続係合部
25、26 開口
27、28、31、32 溝側縁
31a、32a 両端部分
33 中央突片
33a、33b 鉤状突部
34、35 切込み溝
36、37 掛止部
38 一体連結部分
39、49 外突板(庇状の外突板)
41、42 一対の挿入突片
41a、42a 内端縁
41b、42b 外端縁
43、44、45 対向側縁
51、52 ミシン目
F1、F2 折り曲げ線
h1、h3 突出高さ
L1、L2 基端部の幅
P1、P2 中間付近(間付近)
P3、P4 中間付近(間付近)
θa、θb 傾き角
図1
図2
図3
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図10