(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】六角形セグメント
(51)【国際特許分類】
E21D 11/08 20060101AFI20230829BHJP
E21D 11/04 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
E21D11/08
E21D11/04 Z
(21)【出願番号】P 2020038278
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(73)【特許権者】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英典
(72)【発明者】
【氏名】杉村 晋之介
(72)【発明者】
【氏名】川内 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大川 俊紀
(72)【発明者】
【氏名】平木 邦晶
(72)【発明者】
【氏名】坂田 隆太
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-121897(JP,A)
【文献】特開平10-082284(JP,A)
【文献】特開2002-070491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/08
E21D 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切羽側軸方向接合面及び坑口側軸方向接合面と、これらの一対の軸方向接合面の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置される、切羽側斜め接合面及び坑口側斜め接合面からなる一対のV字状周方向接合面とを備え、トンネルの軸方向及び周方向に連設させてハニカム状に組み付けられることによって、シールドトンネルの覆工体を形成するコンクリート製の六角形セグメントにおいて、
前記切羽側軸方向接合面の両側の側部領域から両側の各々の前記坑口側斜め接合面の中央部に向けて、前記切羽側斜め接合面と平行に延設して貫通する、斜めボルト挿通孔が設けられていると共に、各々の前記斜めボルト挿通孔の前記切羽側軸方向接合面側の端部には、連結ボルト部材の頭部を締着させる締着凹部が、開口面を前記切羽側軸方向接合面に開口させて形成されており、
前記切羽側軸方向接合面における各々の前記締着凹部よりも前記切羽側斜め接合面側の部分には、位置決め用の凹部が設けられていると共に、前記坑口側軸方向接合面には、両側の側部領域における前記位置決め用の凹部と対応する位置に、位置決め用の凸部が各々設けられており、
当該六角形セグメントの組み付け時に、前記位置決め用の凸部が、先行して組み付けられた六角形セグメントの前記切羽側軸方向接合面に設けられた前記位置決め用の凹部に、嵌め込むようにして各々装着されることで、先行して組み付けられた六角形セグメントの前記切羽側軸方向接合面に対して、前記坑口側軸方向接合面が位置決めされるようになって
おり、
前記坑口側軸方向接合面における、前記位置決め用の凸部よりも前記坑口側軸方向接合面の長手方向の中心側に先端開口面を開口させて、少なくとも一対の雌ネジ孔を有する吊り用インサート部材が、前記坑口側軸方向接合面の長手方向の中心線に対して対称に配置されて、コンクリート中に埋設固定された状態で取り付けられている六角形セグメント。
【請求項2】
前記切羽側斜め接合面及び前記坑口側斜め接合面の各々には、これらの接合面の長手方向に間隔をおいて配置された、ガイド凸部とガイド凹部とが組になって少なくとも一組設けられており、前記ガイド凸部及び前記ガイド凹部を介して、先行して組み付けられた六角形セグメントの前記切羽側斜め接合面に対して前記坑口側斜め接合面が、位置決めされるようになっている
請求項1記載の六角形セグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、六角形セグメントに関し、特に、トンネルの軸方向及び周方向に連設させてハニカム状に組み付けられることによって、シールドトンネルの覆工体を形成するコンクリート製の六角形セグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
都市部や平野部において各種のトンネルを構築する方法として、シールド掘進機によるシールド工法が広く採用されている。シールド工法は、シールド掘進機の先端の切羽面を、泥土、泥水、圧気等によって押さえ付けつつカッターによって地山を掘削すると共に、シールド掘進機の後方に、トンネルの軸方向及び周方向に連設してセグメントを順次組み付けることによって、トンネルの内周面を覆う覆工体を形成し、組み付けられた覆工体の前端部に、シールドジャッキを押し付けることにより反力を得ながら、発進立坑から到達立坑に向けて、トンネルを地中に構築してゆく工法である。
【0003】
近年、工事の効率化等を図る観点から、トンネルの内周面を覆う覆工体を構成するセグメントとして、一般に用いられる矩形状の平面形状を備えるセグメントに換えて、六角形状の平面形状を備える鉄筋コンクリート製の六角形セグメントを用いたシールド工法が採用される場合がある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。六角形セグメントは、平行に配置された切羽側軸方向接合面及び坑口側軸方向接合面と、これらの軸方向接合面の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、切羽側斜め接合面及び坑口側斜め接合面からなる一対のV字状周方向接合面とを備えている(
図1参照)。六角形セグメントは、トンネルの掘進方向後方側に先行して組み付けられた六角形セグメントの切羽側軸方句接合面及び切羽側斜め接合面に、トンネルの掘進方向前方側に後続して組み付けられる六角形セグメントの坑口側軸方向接合面及び坑口側斜め接合面を各々重ね合わせつつ、各々の六角形セグメントにおける、トンネルの掘進方向前方側の半分の部分である等脚台形状部分を、周方向に間隔をおいて交互に突出させながら、トンネルの軸方向及び周方向にハニカム状に配置されて順次組み付けられてゆくことになる(例えば、特許文献3の
図4~
図6参照)。
【0004】
また、鉄筋コンクリート製の六角形セグメントを用いたシールド工法では、六角形セグメントの交互に突出する等脚台形状部分の切羽側軸方向接合面にシールドジャッキを押し当てて、反力を取りつつシールド掘進機を掘進させながら、これと並行して、シールドジャッキを押し当てた周方向に隣接する各一対の等脚台形状部分の間の領域において、後続する六角形セグメントを組み付ける作業を行うことができるので(
図4(a)~(c)参照)、矩形状の平面形状を備えるセグメントを用いたシールド工法のように、シールド掘進機を掘進させる工程を一リング毎に中断してセグメントを組み立てる作業を行うことなく、六角形セグメントを組み付けながら、シールド掘進機を連続して掘進させることで、効率良くシールド工事を行うことが可能になる。
【0005】
さらに、鉄筋コンクリート製の六角形セグメントを用いたシールド工法では、隣接する六角形セグメントの間の連結は、切羽側軸方向接合面や、坑口側軸方向接合面や、切羽側斜め接合面や、坑口側斜め接合面による周辺部の接合面の間を貫通して取り付けられる、連結ボルトを用いて行うようになっているので(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)、矩形状の平面形状を備えるセグメンによる覆工体の内周面に現れるような、連結ボルトの締結作業を行うためのボルトボックス等による凹凸が、六角形セグメントによる覆工体の内周面には形成されないようにすることが可能になる。これによって、覆工体の内周面を平滑な状態に保持することができるので、好ましくは内側面に防食層を施した六角形セグメントによる覆工体の内側に、さらに二次覆工を施工する必要がなく、六角形セグメントによる覆工体の内周面をそのままトンネルの内周面として用いて、構築したシールドトンネルを、例えば水を流通させる、下水道用の管渠や、雨水を一時的に貯留する貯水池用のトンネルとして、有効に活用することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第2596666号公報
【文献】特開平9-273395号公報
【文献】特許第3253870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、鉄筋コンクリート製の六角形セグメントを用いてシールドトンネルの覆工体を形成する場合、六角形セグメントは、上述のように、軸方向及び周方向に、複数の当該六角形セグメントが掘進方向に半分ずつ位置をずらしてハニカム状に配置されることで、特に隣接する3体の六角形セグメントの角部分が集合する角部集合部では、トンネルの掘進が進んで覆工体が安定するまでの間、矩形状のセグメントによる角部と比較して、応力の方向が定まり難いことから、周囲の地盤からの圧力や、シールドジャッキによる掘進時の押圧力により生じる内力や、隣接する六角形セグメントからの外力によって、過度の偏荷重が負荷され易い状態となっており、これにより当該角部集合部において、覆工体を形成する六角形セグメントが、偏荷重による歪み変位によって、各々の接合面の間で位置ずれを生じ易い。
【0008】
これに対して、従来の六角形セグメントでは、切羽側斜め接合面及び坑口側斜め接合面の各々に、少なくとも一組のガイド凸部及びガイド凹部が設けられていることで、これらのガイド凸部及びガイド凹部を介することによって、先行して組み付けられた六角形セグメントの切羽側斜め接合面に対して、後続して組み付けられる六角形セグメントの坑口側斜め接合面が、位置ずれを生じないように強固に位置決めされるようになっている。
【0009】
しかしながら、例えばシールドトンネル及び六角形セグメントの大型化の傾向に伴って、特に隣接する3体の六角形セグメントの角部分が集合する角部集合部では、さらに大きな偏荷重が負荷され易くなるため、より安定して、角部集合部において偏荷重による歪みや変位によって位置ずれが生じないようにする新たな技術の開発が望まれている。特に近年、トンネルの軸方向に連接される切羽側軸方向接合面と坑口側軸方向接合面とを締結接合するための、軸方向に配される連結ボルトを用いることなく、切羽側斜め接合面と坑口側斜め接合面とを締結接合ための、切羽側軸方向接合面の両側の側部領域から、先行して組み付けられた両側の六角形セグメントの各々の切羽側斜め接合面の中央部に向けて、切羽側斜め接合面と平行に延設して貫通する、斜め方向に配される連結ボルトのみによって、複数の六角形セグメントをハニカム状に組み付ける工法が増えてきており、このような斜め方向に配される連結ボルトのみによって、複数の六角形セグメントをハニカム状に組み付ける工法では、軸方向に配される連結ボルトを使用しない分、より一層、角部集合部において切羽側軸方向接合面と坑口側軸方向接合面との間で、偏荷重による歪みや変位によって位置ずれが生じないように、強固に位置決めすることが必要になる。
【0010】
本発明は、ハニカム状に組み付けられた後、トンネルの掘進が進んで安定するまでの間、隣接する3体の当該六角形セグメントの角部分が集合する角部集合部において、特に切羽側軸方向接合面と坑口側軸方向接合面とを強固に位置決めして、偏荷重による歪みや変位によって位置ずれが生じるのを効果的に回避することのできる六角形セグメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、切羽側軸方向接合面及び坑口側軸方向接合面と、これらの一対の軸方向接合面の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置される、切羽側斜め接合面及び坑口側斜め接合面からなる一対のV字状周方向接合面とを備え、トンネルの軸方向及び周方向に連設させてハニカム状に組み付けられることによって、シールドトンネルの覆工体を形成するコンクリート製の六角形セグメントにおいて、前記切羽側軸方向接合面の両側の側部領域から両側の各々の前記坑口側斜め接合面の中央部に向けて、前記切羽側斜め接合面と平行に延設して貫通する、斜めボルト挿通孔が設けられていると共に、各々の前記斜めボルト挿通孔の前記切羽側軸方向接合面側の端部には、連結ボルト部材の頭部を締着させる締着凹部が、開口面を前記切羽側軸方向接合面に開口させて形成されており、前記切羽側軸方向接合面における各々の前記締着凹部よりも前記切羽側斜め接合面側の部分には、位置決め用の凹部が設けられていると共に、前記坑口側軸方向接合面には、両側の側部領域における前記位置決め用の凹部と対応する位置に、位置決め用の凸部が各々設けられており、当該六角形セグメントの組み付け時に、前記位置決め用の凸部が、先行して組み付けられた六角形セグメントの前記切羽側軸方向接合面に設けられた前記位置決め用の凹部に、嵌め込むようにして各々装着されることで、先行して組み付けられた六角形セグメントの前記切羽側軸方向接合面に対して、前記坑口側軸方向接合面が位置決めされるようになっており、前記坑口側軸方向接合面における、前記位置決め用の凸部よりも前記坑口側軸方向接合面の長手方向の中心側に先端開口面を開口させて、少なくとも一対の雌ネジ孔を有する吊り用インサート部材が、前記坑口側軸方向接合面の長手方向の中心線に対して対称に配置されて、コンクリート中に埋設固定された状態で取り付けられている六角形セグメントを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0013】
また、本発明の六角形セグメントは、前記切羽側斜め接合面及び前記坑口側斜め接合面の各々には、これらの接合面の長手方向に間隔をおいて配置された、ガイド凸部とガイド凹部とが組になって少なくとも一組設けられており、前記ガイド凸部及び前記ガイド凹部を介して、先行して組み付けられた六角形セグメントの前記切羽側斜め接合面に対して前記坑口側斜め接合面が、位置決めされるようになっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の六角形セグメントによれば、ハニカム状に組み付けられた後、トンネルの掘進が進んで安定するまでの間、隣接する3体の当該六角形セグメントの角部分が集合する角部集合部において、特に切羽側軸方向接合面と坑口側軸方向接合面とを強固に位置決めして、偏荷重による歪みや変位によって位置ずれが生じるのを効果的に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい一実施形態に係る六角形セグメントを用いて形成される覆工体を説明する部分破断斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の好ましい一実施形態に係る六角形セグメントの構成を説明する、
図2(a)は正面図、
図2(b)は(a)をA方向から見た側面図、
図2(c)は(a)をB方向から見た側面図、
図2(d)は(a)をC方向から見た周方向端面図である。
【
図3】
図3(a)は、ガイド凸部の斜視図、
図3(b)は、六角形セグメントがハニカム状に組み付けられた際のガイド凸部及びガイド凹部の係止状態を説明する、
図3(a)のD-Dに沿った断面図である。
【
図4】
図4(a)~
図4(c)は、複数の六角形セグメントを組み付けてセグメント覆工体を形成する工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好ましい一実施形態に係る六角形セグメント12は、例えば
図1に示すように、鉄筋コンクリート製の複数の当該六角形セグメント12をトンネルの軸方向(掘進方向)X及び周方向Yに連設してハニカム状に組み付けることによって、好ましくは雨水を一時的に貯留する貯水池用のシールドトンネルの内周面を覆う覆工体11を形成する際に、各隣接する3体の六角形セグメント12の角部分31a,31b,31cが集合する、各々の角部集合部30において、これらの六角形セグメント12を強固に位置決めして、トンネルの掘進が進んで覆工体11が安定するまでの間、当該角部集合部30に偏荷重が生じても、偏荷重による歪みや変位によって位置ずれが生じるのを効果的に回避できるようにする機能を備えている。
【0017】
すなわち、例えば鉄筋コンクリート製の六角形セグメント12を用いてシールドトンネルの覆工体11を形成する場合、六角形セグメント12は、複数の当該六角形セグメント12が掘進方向Xに半分ずつ位置をずらして、ハニカム状に配置されることで、特に隣接する3体の六角形セグメント12の角部分31a,31b,31cが集合する角部集合部30においては、トンネルの掘進が進んで覆工体11が安定するまでの間、方向の定まらない斜め方向の応力が生じることで、周囲の地盤からの圧力や、シールドジャッキ60(
図4(a)~(c)参照)による掘進時の押圧力により生じる内力や、隣接する六角形セグメント12からの外力によって、過度の偏荷重が負荷され易い状態となっており、これによって、当該角部集合部30において、覆工体11を形成する六角形セグメント12に、偏荷重による歪みや変位によって、位置ずれを生じ易くなることが予想される。本実施形態では、後述する六角形セグメント12を用いたことにより、当該角部集合部30に過度な偏荷重が負荷されても、各々の六角形セグメント12が位置決めされた状態を強固に保持して、当該角部集合部30に歪みや変位による位置ずれが生じるのを効果的に回避できるようになっている。
【0018】
そして、本実施形態の六角形セグメント12は、
図2(a)~(d)に示すように、切羽側軸方向接合面13及び坑口側軸方向接合面14と、これらの一対の軸方向接合面13,14の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置される、切羽側斜め接合面15及び坑口側斜め接合面16からなる一対のV字状周方向接合面17とを備え、トンネルの軸方向X及び周方向Yに連設させてハニカム状に組み付けられることによって、シールドトンネルの覆工体11を形成するコンクリート製の六角形のセグメントにおいて、切羽側軸方向接合面13の両側の側部領域から両側の各々の坑口側斜め接合面16の中央部に向けて、切羽側斜め接合面15と平行に延設して貫通する、斜めボルト挿通孔23が設けられていると共に、各々の斜めボルト挿通孔23の切羽側軸方向接合面13側の端部には、連結ボルト部材24(
図4(c)参照)の頭部を締着させる締着凹部23aが、開口面を切羽側軸方向接合面13に開口させて形成されており、切羽側軸方向接合面13における各々の締着凹部23aよりも切羽側斜め接合面15側の部分には、位置決め用の凹部(ソケット)13aが設けられていると共に、坑口側軸方向接合面14には、両側の側部領域における位置決め用の凹部13aと対応する位置に、位置決め用の凸部(プラグ)14aが各々設けられている。当該六角形セグメント12の組み付け時に、位置決め用の凸部(プラグ)14aが、先行して組み付けられた六角形セグメント12の切羽側軸方向接合面13に設けられた位置決め用の凹部(ソケット)13aに、嵌め込むようにして各々装着されることで、先行して組み付けられた六角形セグメント12の切羽側軸方向接合面13に対して、坑口側軸方向接合面14が位置決めされるようになっている。
【0019】
また、本実施形態では、好ましくは坑口側軸方向接合面14における、位置決め用の凸部14aよりも当該坑口側軸方向接合面14の長手方向Lの中心側に先端開口面を開口させて、少なくとも一対(本実施形態では、一対)の雌ネジ孔を有する吊り用インサート部材27が、坑口側軸方向接合面14の長手方向Lの中心線Cに対して対称に配置されて、コンクリート中に埋設固定された状態で取り付けられている。
【0020】
さらに、本実施形態では、好ましくは切羽側斜め接合面15及び坑口側斜め接合面16の各々には、これらの斜め接合面15,16の長手方向Lに間隔をおいて配置された、ガイド凸部25とガイド凹部26とが組になって、少なくとも一組(本実施形態では、一組)設けられており、ガイド凸部25及びガイド凹部26を介して、先行して組み付けられた六角形セグメント12の切羽側斜め接合面15に対して坑口側斜め接合面16が、位置決めされるようになっている。
【0021】
本実施形態では、
図1に示す六角形セグメント12によるセグメント覆工体11は、好ましくは雨水を一時的に貯留する貯水池用のシールドトンネルとして、例えば内径が4900mm程度の大きさのトンネルを形成するものとなっている。またセグメント覆工体11は、後述する六角形セグメント12が、好ましくは内側面に防食層を施した、二次覆工一体型のコンクリート製のセグメントとなっていることで、内周面を平滑な状態に保持して、内周面をそのまま、雨水を流通させるトンネルの内周面として用いることができるようになっている。
【0022】
セグメント覆工体11を形成する各々の六角形セグメント12は、
図2(a)~(d)に示すように、平行に配置された一対の軸方向接合面である切羽側軸方向接合面13及び坑口側軸方向接合面14と、これらの軸方向接合面13,14の両側の端部を各々連結するようにしてV字形状に配置された、切羽側斜め接合面15及び坑口側斜め接合面16からなる一対のV字状周方向接合面17とを備える、六角形の平面形状を有する鉄筋コンクリート製のセグメントとなっている(
図2(a)参照)。六角形セグメント12は、例えば300mm程度の厚さを有すると共に、切羽側軸方向接合面13及び坑口側軸方向接合面14に沿った方向の断面が、覆工体11の例えば4900mmの内径に対応する曲率半径で、円弧状に湾曲する形状を備えている(
図2(b)、(c)参照)。六角形セグメント12は、切羽側軸方向接合面13及び坑口側軸方向接合面14の間の幅が1500mm程度、一対のV字状周方向接合面17の先端部の間の長さが3116mm程度の大さとなるように形成されている。各々のV字状周方向接合面17における、切羽側斜め接合面15と坑口側斜め接合面16との間の角度θ2は、120°となっている(
図2(a)参照)。これによって、複数の六角形セグメント12を、先行する六角形セグメント12の切羽側斜め接合面15及び切羽側軸方向接合面13に、後続して設置される六角形セグメント12の坑口側斜め接合面16及び坑口側軸方向接合面14を順次隙間なく重ね合わせた状態で、軸方向X及び周方向Yにハニカム状に配置できるようになっている(
図1参照)。
【0023】
また、本実施形態では、各々の六角形セグメント12の、切羽側軸方向接合面13、坑口側軸方向接合面14、切羽側斜め接合面15及び坑口側斜め接合面16には、
図2(a)~(d)に示すように、外周面から50mm程度の間隔をおいて、20mm程度の幅の外側シール溝21aが、全周に亘って連続して形成されており、内周面から70mm程度の間隔をおいて、20mm程度の幅の内側シール溝21bが、全周に亘って連続して形成されている。外側シール溝21aには、好ましくは帯状の水膨潤性シール材からなるシール材が、例えば接着剤を介して全周に亘って連続して取り付けられる。内側シール溝21bには、同様に好ましくは帯状の水膨潤性シール材からなるシール材が、例えば接着剤を介して全周に亘って連続して取り付けられる。本実施形態では、外側シール溝21a及び内側シール溝21bが、各々の六角形セグメント12の全周に亘って連続して2段に設けられている。
【0024】
さらに、本実施形態では、各々の六角形セグメント12の、切羽側軸方向接合面13、坑口側軸方向接合面14、切羽側斜め接合面15及び坑口側斜め接合面16には、トンネル内周面側の縁部分に沿って、40mm程度の幅のコーキング溝22が、全周に亘って連続して形成されている。これらのコーキング溝22には、公知の帯状コーキング材が、例えば接着剤を介して連続して取り付けられる。帯状コーキング材としては、例えば特許第4646501号公報に記載のシールドセグメント用コーキング材と、同様の構成を備えるものを使用することができる。より具体的には、好ましくは商品名「シーコーク」(積水化学工業株式会社製)を用いることができる。
【0025】
このような帯状コーキング材は、複数の六角形セグメント12が組み付けられてセグメント覆工体11が形成された際に、隣接する六角形セグメント12の接合部において対向する一対のコーキング溝22による目地部に、圧縮された状態で挟み込まれたり、水分を吸収して膨潤可能な状態で挟み込まれたりすることで、当該目地部に隙間なく充填されて、トンネルの内部の水が、接合部からトンネルの外部に漏出するのを、強固に防止することが可能になる。
【0026】
本実施形態では、各々の六角形セグメント12には、例えば特許第3253870号公報に記載の亀甲型セグメント(六角形セグメント)と同様に、切羽側軸方向接合面13の両側の側部領域から両側の各坑口側斜め接合面16の中央部に向けて、切羽側斜め接合面15と平行に延設して貫通する、斜めボルト挿通孔23が設けられている。各々の斜めボルト挿通孔23の切羽側軸方向接合面13側の端部には、連結ボルト部材24(
図4(c)参照)の頭部を締着させる締着凹部23aが、開口面を切羽側軸方向接合面13に開口させて形成されている。
【0027】
また、本実施形態では、切羽側軸方向接合面13における各々の締着凹部23aよりも切羽側斜め接合面15側の部分には、位置決め用の凹部(ソケット)13aが設けられている。これらの位置決め用の凹部(ソケット)13aには、トンネルの掘進方向Xに後続して設置される六角形セグメント12の坑口側軸方向接合面14に設けられた一対の位置決め用の凸部(プラグ)14aが、嵌め込まれるようにして装着される。これによって、後続して設置される六角形セグメント12の坑口側軸方向接合面14の全体が、先行して設置された六角形セグメント12の切羽側軸方向接合面13の全体に、精度良く重ね合わされるように、トンネルの掘進方向Xに隣接する六角形セグメント12を、位置決めできるようになっている。各々の六角形セグメント12の坑口側軸方向接合面14には、これの両側の側部領域における位置決め用の凹部13aと対応する位置に、上述の位置決め用の凸部(プラグ)14aが、各々設けられている。本実施形態では、位置決め用の凸部(プラグ)14aは、好ましくは直径が63.7(先端)~81(元端)mm程度、突出高さが15mm程度の大きさの円形状のドラム形状を備える凸部となっており、位置決め用の凹部(ソケット)13aは、このような位置決め用の凸部(プラグ)14aと、合致又は略合致する形状(好ましくは位置決め用の凹部13aの方が位置決め用の凸部14aに比して1~4mm程度大きい形状)を備える凹部となっている。
【0028】
また、本実施形態では、各々の六角形セグメント12の一対の切羽側斜め接合面15には、これらの中央部に、雌ネジ孔15aが、例えば雌ネジアンカーを埋込むことによって設けられている。雌ネジ孔15aは、先行して設置された六角形セグメント12の切羽側斜め接合面15に、後続して設置される六角形セグメント12の坑口側斜め接合面16が重ね合わされた際に、後続する六角形セグメント12に設けられたボルト挿通孔23の、締着凹部23aとは反対側の端部と直線状に連通するようになっている。これによって、連通したボルト挿通孔23及び雌ネジ孔15aに、連結ボルト部材24を挿通して締着させることにより、ハニカム状に配置された各々の隣接する六角形セグメント12を、強固に一体として連結することが可能になる(
図4(c)参照)。
【0029】
さらに、本実施形態では、各々の六角形セグメント12には、これらの六角形セグメント12を、組み付け用のエレクター装置(図示せず。)によって把持できるようにする把持孔28(
図2(a)参照)が、例えば内側面の中央部分に設けられている。
【0030】
さらにまた、本実施形態では、上述のように、好ましくは坑口側軸方向接合面14における、位置決め用の凸部14aよりも当該坑口側軸方向接合面14の長手方向Lの中心側に先端開口面を開口させて、雌ネジ孔を有する一対の吊り用インサート部材27が、坑口側軸方向接合面14の長手方向Lの中心線に対して対称に配置されて、コンクリート中に埋設固定された状態で取り付けられている。吊り用インサート部材27は、内側に雌ネジ孔が形成された、円筒形状を備える公知の各種のインサート用のアンカー部材を用いることができる。吊り用インサート部材27は、例えば型枠を用いて六角形セグメント12を形成する際に、鉄筋等に支持させて型枠内の所定の位置に固定しておくことにより、好ましくは坑口側軸方向接合面14に対して垂直に延設させた状態で、六角形セグメント12を構成するコンクリート中に、容易に埋設固定することができる。吊り用インサート部材27は、六角形セグメント12を吊り上げるのに必要とされる付着力を得ることが可能な、十分な埋設長さ有するものとなっている。
【0031】
六角形セグメント12の坑口側軸方向接合面14に、少なくとも一対の吊り用インサート部材27が埋設固定されていることにより、これらの吊り用インサート部材27に、例えば吊上用ワイヤーの下端部に取り付けたボルト部材を螺着して、六角形セグメント12を吊り上げることによって、例えば型枠から脱型された六角形セグメント12を、水中養生のために移動したり、製造工場や現場で保管場所に移動したりする際に、これらの移動する作業をスムーズに行うなうことが可能になると共に、切羽側軸方向接合面13を下方に向け、坑口側軸方向接合面14を上に向けて縦置きした状態で、複数の六角形セグメント12を、整然と並べた状態で効率良くストックしておくことが可能になる。この時、下側になる切羽側軸方向接合面13には、位置決め用の凸部14aのような突出した部位がなく、平坦であることから、安定した状態で縦置きすることができる。
【0032】
また、少なくとも一対の吊り用インサート部材27が、坑口側軸方向接合面14の長手方向Lの中心線に対して対称に配置されて設けられていることにより、六角形セグメント12を、バランス良く吊り上げて移動させることが可能になると共に、一対の吊り用インサート部材27は、位置決め用の凸部(プラグ)14aが設けられた坑口側軸方向接合面14に埋設固定されているので、各々の六角形セグメント12を吊り上げて所定の位置に移動して設置する際に、位置決め用の凸部14aを破損させることなく、これらの作業を容易に行うことが可能になる。
【0033】
そして、本実施形態では、
図2(a)~(d)に示すように、各々の六角形セグメント12の切羽側斜め接合面15及び坑口側斜め接合面16には、位置決め用のガイド凸部25及びガイド凹部26が組になって、各々一組設けられている。これらの位置決め用のガイド凸部25及びガイド凹部26は、先行して設置された六角形セグメント12に後続して、次の六角形セグメント12を設置する際に、先行して設置された六角形セグメント12による、周方向Yに間隔をおいて掘進方向X前方側に突出する各一対の等脚台形状の凸部12aの間の、各々の等脚台形状の凹部12b(
図4(a)参照)に、後続する六角形セグメント12が配置されるように案内して、精度良く位置決めできるようにすると共に、組み付けられた六角形セグメント12に位置ずれが生じるのを、効果的に防止できるようにする機能を備えている。
【0034】
また、本実施形態では、ガイド凸部25は、
図3(a)、(b)に示すように、切羽側斜め接合面15又は坑口側斜め接合面16から一段高くなった等脚台形状の凸部天面部25aと、等脚台形状の凸部天面部25aの短辺部から切羽側斜め接合面15又は坑口側斜め接合面16に向けて、これらの斜め接合面15,16の長手方向Lに急傾斜して設けられた凸部長手方向当接面部25bと、等脚台形状の凸部天面部25aの長辺部から前記切羽側斜め接合面又は前記坑口側斜め接合面に向けて、これらの斜め接合面15,16の長手方向に緩傾斜して設けられた凸部長手方向密着面部25cと、等脚台形状の凸部天面部25aの両側の側辺部から切羽側斜め接合面15又は坑口側斜め接合面16に向けて、これらの斜め接合面15,16の幅方向Tに傾斜して設けられた一対の凸部幅方向傾斜面部25dとを備える形状を有している。
【0035】
すなわち、本実施形態では、ガイド凸部25の凸部天面部25aは、切羽側斜め接合面15や坑口側斜め接合面16から例えば12mm程度の高さh1位置に、好ましくは切羽側斜め接合面15や坑口側斜め接合面16と平行に配置されて設けられていると共に、例えば長辺部が40.4mm程度、短辺部が26.5mm程度、長辺部と短辺部との間の高さが40mm程度の大きさの、等脚台形状の平面面形状を備えるように形成されている。また凸部天面部25aは、等脚台形状の平面面形状の長辺部側をV字状周方向接合面17の頂部17aに向けた状態で形成されている(
図2(d)参照)。
【0036】
ガイド凸部25の凸部長手方向当接面部25bは、凸部天面部25aにおける、V字状周方向接合面17の頂部17a側とは反対側に位置する短辺部から、切羽側斜め接合面15や坑口側斜め接合面16に向けて、切羽側斜め接合面15や坑口側斜め接合面16に対して例えば50°程度の勾配で急傾斜することで、例えば長辺部(底辺部)が29.4mm程度、短辺部(上辺部)が26.5mm程度、高さが12mm程度の大さきの等脚台形状の正面形状を備えるように形成されている。
【0037】
ガイド凸部25の凸部長手方向密着面部25cは、凸部天面部25aにおける、V字状周方向接合面17の頂部17a側に位置する長辺部から、切羽側斜め接合面15や坑口側斜め接合面16に向けて、切羽側斜め接合面15や坑口側斜め接合面16に対して例えば18°程度の勾配で緩傾斜することで、例えば長辺部(底辺部)が60mm程度、短辺部(上辺部)が40.4mm程度、高さが12mm程度の大さきの、等脚台形状の正面形状を備えるように形成されている。
【0038】
ガイド凸部25の一対の凸部幅方向傾斜面部25dは、各々、凸部天面部25aにおける両側の側辺部から、切羽側斜め接合面15や坑口側斜め接合面16に向けて、切羽側斜め接合面15や坑口側斜め接合面16に対して例えば80~85°程度の勾配で急傾斜することで、例えば長辺部(底辺部)が90mm程度、短辺部(上辺部)が40mm程度、高さが12mm程度の大さきの、台形状の正面形状を備えるように形成されている。
【0039】
ガイド凹部26は、ガイド凸部25の凸部天面部25a、凸部長手方向当接面部25b、凸部長手方向密着面部25c、及び一対の凸部幅方向傾斜面部25dと対応する形状の、等脚台形状の平面形状を備える凹部底面部26a、等脚台形状の正面形状を備える凹部長手方向当接面部26b、等脚台形状の正面形状を備える凹部長手方向密着面部26c、及び一対の台形状の正面形状を備える凹部幅方向傾斜面部を有している(
図3(b)参照)。
【0040】
また、本実施形態では、好ましくは各々の六角形セグメント12において、ガイド凸部25の凸部天面部25aの、ガイド凸部25の基端部25eにおける切羽側斜め接合面15又は坑口側斜め接合面16からの高さh1が、ガイド凹部26の凹部底面部26aの、ガイド凹部26の基端部25eにおける切羽側斜め接合面15又は坑口側斜め接合面16からの深さh2よりも、1~3mm(本実施形態では、3mm)小さくなるように、各々のガイド凸部25及びガイド凹部26が形成されている(
図4参照)。
【0041】
これによって、各々の六角形セグメント12がシールドジャッキ60(
図4参照)により押圧されてハニカム状に組み付けられた際に、ガイド凸部25の凸部長手方向当接面部25bがガイド凹部26の凹部長手方向当接面部26bと当接し、且つガイド凸部25の凸部長手方向密着面部25cがガイド凹部26の凹部長手方向密着面部26cと密着した状態で、ガイド凸部25の凸部天面部25aとガイド凹部26の凹部底面部26aとの間には、1~3mm(本実施形態では、3mm)の隙間s1が保持されるようになっている(
図3(b)参照)。
【0042】
上述の構成を備える複数の六角形セグメント12を、トンネルの軸方向(掘進方向)X及び周方向Yに連設して、ハニカム状に組み付けることによって、好ましくは雨水を一時的に貯留する貯水池用のシールドトンネルの内周面を覆うセグメント覆工体11を形成するには、例えば
図4(a)~(c)に示すように、トンネルの掘進方向Xの後方側に先行して組み付けられた六角形セグメント12の切羽側軸方向接合面13及び切羽側斜め接合面15に、トンネルの掘進方向Xの前方側に後続して組み付けられる六角形セグメント12の坑口側軸方向接合面14及び坑口側斜め接合面16を各々重ね合わせつつ、各々の六角形セグメント12における、トンネルの掘進方向Xの前方側の半分の部分である等脚台形状部分12aを、交互に突出させながら、複数の六角形セグメント12を、トンネルの軸方向X及び周方向Yにハニカム状に配置して順次組み付けてゆく。
【0043】
また、複数の六角形セグメント12を、トンネルの軸方向X及び周方向Yに順次組み付けてゆく際に、先行して組み付けられた六角形セグメント12による、交互に突出する、当該六角形セグメント12を掘進方向Xに二等分割した形状の等脚台形状部分12aにおける先端の切羽側軸方向接合面13に、シールドジャッキ60を押し当てて、反力を取りつつシールド掘進機を掘進させながら、これと並行して、シールドジャッキ60を押し当てた隣接する等脚台形状部分12aの間の領域である等脚台形状の凹部12bにおいて(
図4(a)参照)、後続する六角形セグメント12を組み付ける作業を行うようになっている。
【0044】
すなわち、切羽側軸方向接合面13にシールドジャッキ60を押し当てた隣設する等脚台形状部分12aの間の等脚台形状の凹部12bにおいて、
図4(a)に示すように、当該等脚台形状の凹部12bの領域のシールドジャッキ60を収縮した状態として、当該等脚台形状の凹部12bに、後続して組み付けられる六角形セグメント12の後側半分の等脚台形状部分を差し込むようにして、これの坑口側軸方向接合面14及び坑口側斜め接合面16を、先行して組み付けられた六角形セグメント12の切羽側軸方向接合面13及び切羽側斜め接合面15に、各々密着させる(
図4(b)参照)。しかる後に、後続して組み付けられる六角形セグメント12の領域に配置された、例えば3本のシールドジャッキ60のうち、中央の1本のシールドジャッキ60を伸長させて、後続する六角形セグメント12を先行して組み付けられた六角形セグメント12に押し付けた状態で、
図4(c)に示すように、連通した後続する六角形セグメント12のボルト挿通孔23及び先行して設置された六角形セグメント12の雌ネジ孔15aに、連結ボルト部材24を挿通して締着させることにより、これらの六角形セグメント12を一体として連結する。
【0045】
これらの作業を、周方向に複数形成された、隣設する突出した等脚台形状部分12aの間の各々の等脚台形状の凹部12bにおいて行うと共に、このようにして新たに設置された六角形セグメント12を、先行して組み付けられた既存の六角形セグメント12として、これらの切羽側軸方向接合面13にシールドジャッキ60を押し当てて反力を取りつつシールド掘進機を掘進させながら、これと並行して、シールドジャッキ60を押し当てたこれらの六角形セグメント12の間の等脚台形状の凹部12bにおいて、さらに後続する六角形セグメント12を組み付ける作業を、繰り返し行ってゆくことができる。これによって、トンネルの軸方向X及び周方向Yにハニカム状に配置された複数の六角形セグメント12による、好ましくは雨水を一時的に貯留する貯水池用のシールドトンネルの内周面を覆う覆工体11を、容易に形成することが可能になる。
【0046】
そして、上述の構成を備える本実施形態の六角形セグメント12によれば、ハニカム状に組み付けられた後、トンネルの掘進が進んで安定するまでの間、隣接する3体の当該六角形セグメント12の、V字状周方向接合面17の切羽側斜め接合面15及び坑口側斜め接合面16による頂部角部分31aと、切羽側軸方向接合面13及び切羽側斜め接合面15による切羽側角部分31bと、坑口側軸方向接合面14及び坑口側斜め接合面16による坑口側角部分31cとによる、角部分31a,31b,31cが集合する角部集合部30において、特に切羽側軸方向接合面13と坑口側軸方向接合面14とを強固に位置決めして、偏荷重による歪みや変位によって位置ずれが生じるのを、効果的に回避することが可能になる。
【0047】
すなわち、本実施形態によれば、各々の六角形セグメント12における、切羽側軸方向接合面13の両側の締着凹部23aよりも切羽側斜め接合面15側の部分には、位置決め用の凹部(ソケット)13aが各々設けられていると共に、坑口側軸方向接合面14には、両側の側部領域における位置決め用の凹部13aと対応する位置に、位置決め用の凸部(プラグ)14aが各々設けられており、六角形セグメント12の組み付け時に、位置決め用の凸部(プラグ)14aが、先行して組み付けられた六角形セグメント12の切羽側軸方向接合面13に設けられた位置決め用の凹部(ソケット)13aに、嵌め込むようにして各々装着されることで、先行して組み付けられた六角形セグメント12の切羽側軸方向接合面13に対して、坑口側軸方向接合面14が位置決めされるようになっている。
【0048】
これによって、隣接する3体の当該六角形セグメントの角部分31a,31b,31cが集合する角部集合部30において、位置決め用の凸部(プラグ)14aが位置決め用の凹部(ソケット)13aに、嵌め込むようにして装着されていることで、特に角部集合部30において、切羽側軸方向接合面13と坑口側軸方向接合面14とを強固に位置決めして、偏荷重による歪みや変位によって角部集合部30に位置ずれが生じるのを、効果的に回避することが可能になる。
【0049】
また、本実施形態によれば、好ましくは切羽側斜め接合面15及び坑口側斜め接合面16の各々には、ガイド凸部25とガイド凹部26とが組になって設けられており、隣接する3体の六角形セグメントの角部分31a,31b,31cが集合する角部集合部30において、ガイド凸部25及びガイド凹部26を介して、先行して組み付けられた六角形セグメント12の切羽側斜め接合面15に対して、坑口側斜め接合面16が位置決めされるようになっているので、位置決め用の凸部(プラグ)14aが位置決め用の凹部(ソケット)13aに嵌め込むようにして装着されることと相俟って、偏荷重による歪みや変位によって角部集合部30に位置ずれが生じるのを、さらに効果的に回避することが可能になる。
【0050】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されることなく、種々の変更が可能である。例えば、六角形セグメントの切羽側接合面、坑口側接合面、及び一対のV字状周方向接合面に、シール溝が、内側シール溝及び外側シール溝として2段に形成されている必要は必ずしも無く、トンネル内周面側の縁部分に沿って、コーキング溝が形成されている必要は必ずしも無い。位置決め用の凸部(プラグ)や位置決め用の凹部(ソケット)は、円形状の凸部又は凹部である必要は必ずしも無く、4角形状や楕円形状等、その他の種々の形状の凸部又は凹部であっても良い。本発明の六角形セグメントを用いて形成される覆工体は、貯水池用のシールドトンネルの内周面を覆う覆工体である必要は必ずしも無く、六角形セグメントを用いて形成される、その他の種々のシールドトンネルの内周面を覆う覆工体であっても良い。
【符号の説明】
【0051】
11 覆工体
12 六角形セグメント
12a 等脚台形状の凸部
12b 等脚台形状の凹部
13 切羽側軸方向接合面
13a 位置決め用の凹部(ソケット)
14 坑口側軸方向接合面
14a 位置決め用の凸部(プラグ)
15 切羽側斜め接合面
16 坑口側斜め接合面
17 V字状周方向接合面
23 ボルト挿通孔
23a 締着凹部
24 連結ボルト部材
25 位置決め用のガイド凸部
26 位置決め用のガイド凹部
27 吊り用インサート部材
30 角部集合部
31a 頂部角部分
31b 切羽側角部分
31c 坑口側角部分
60 シールドジャッキ
X トンネルの掘進方向(軸方向)
Y トンネルの周方向
L 接合面の長手方向
T 接合面の幅方向