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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】ヘッダプレートレス型熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/06 20060101AFI20230829BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20230829BHJP
   F28F 1/02 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
F28F9/06
F28F9/02 301B
F28F1/02 A
F28F9/02 301J
F28F9/02 301Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020509385
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2019014402
(87)【国際公開番号】W WO2019189923
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2018058521
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】遠山 洋輝
(72)【発明者】
【氏名】大友 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 喜彦
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-055711(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0088886(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0185833(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0282449(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0219394(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/06
F28F 9/02
F28F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端開口部が厚み方向に拡開されている拡開部(1)を有する複数の偏平チューブ(2)と、
各偏平チューブ(2)が前記拡開部(1)で積層されているコア(3)と、
前記コア(3)の外周を筒状に被嵌するケーシング(4)と、
そのケーシング(4)の端部の内面に接続されているブラケット(6)と、
前記ケーシング(4)とブラケット(6)との間に形成される環状溝(5)と、
前記環状溝(5)にシールパッキン(7)を介し、端部の外周が嵌着されるタンク本体(8)と、を具備し、
前記タンク本体(8)とケーシング(4)との間がカシメ固定されているヘッダプレートレス型熱交換器において、
前記ブラケット(6)は外周に長辺部(11)を有する平面視方形の枠部(10)が形成されており、そのブラケット(6)の横断面が鈎形に形成されており、
前記枠部(10)の長辺方向の中央部のみに、長辺部(11)間を架橋する一以上の架橋部(15)が形成されており、その架橋部(15)が偏平チューブ(2)を厚み方向に横断するように配置され、
前記枠部(10)と架橋部(15)とが一体に形成され
前記架橋部(15)は、横断面が山形に曲折形成された山形部(16)と、
前記架橋部(15)と枠部(10)との付根に長辺方向に拡開されている根元部(17)と、
を有することを特徴とするヘッダプレートレス型熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクがカシメにより接続されているヘッダプレートレス型の熱交換器に関するものであり、特に、熱交換器のケーシング内に配置されるブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タンクをカシメにより接続しているヘッダプレートレス型熱交換器として、下記特許文献1のものが知られている。
このヘッダプレートレス型熱交換器は、両端開口部が厚み方向に拡開された拡開部を有する複数の偏平チューブからなるヘッダプレートレス型のコアと、そのコアの外周に筒状にケーシングが被嵌されている。また、そのケーシングの端部内面には、横断面鈎形で、一対の長辺部とそれらをつなぐ一対の短辺部からなる枠部を有する矩形で短筒状のタンク受け(本発明のブラケットに相当)が配置される。そして、ケーシングとそのタンク受けとの間に環状溝部が形成され、そこにシール材が配置される。そのシール材を介して、タンク本体がカシメにより接続されているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-55711
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1のタンク受け6a(本発明のブラケットに相当)は、ろう付時に自重およびタンク受けの縮みにより、図6に示す如く、その長辺部11a側が内側方向へ変形する。ろう付後、その部品のゆがみにより、タンク本体の端部を配置することが困難となる問題が生じていた。
また、図7の示す如く、白矢印の方向にカシメによる応力が枠部10aにかかると、シール材の変形により、タンク受け6aの枠部10aの内側の側壁が黒矢印の方向へ倒れ込む歪んだ状態となる。その状態でタンク本体がカシメ固定されると、シール性能を低下させる原因となっていた。
本発明は、これらの問題点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、両端開口部が厚み方向に拡開されている拡開部1を有する複数の偏平チューブ2と、
各偏平チューブ2が前記拡開部1で積層されているコア3と、
前記コア3の外周を筒状に被嵌するケーシング4と、
そのケーシング4の端部の内面に接続されているブラケット6と、
前記ケーシング4とブラケット6との間に形成される環状溝5と、
前記環状溝5にシールパッキン7を介し、端部の外周が嵌着されるタンク本体8と、を具備し、
前記タンク本体8とケーシング4との間がカシメ固定されているヘッダプレートレス型熱交換器において、
前記ブラケット6は外周に長辺部11を有する平面視方形の枠部10が形成されており、そのブラケット6の横断面が鈎形に形成されており、
前記枠部10の長辺方向の中央部のみに、長辺部11間を架橋する一以上の架橋部15が形成されており、その架橋部15が偏平チューブ2を厚み方向に横断するように配置され、
前記枠部10と架橋部15とが一体に形成され
記架橋部15は、横断面が山形に曲折形成された山形部16と、
前記架橋部15と枠部10との付根に長辺方向に拡開されている根元部17と、
を有することを特徴とするヘッダプレートレス型熱交換器である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明のように、ケーシング4の内面に接続されるブラケット6は外周に平面視方形の枠部10を有し、その枠部10の長辺方向の中央部のみに、長辺部11間を架橋する一以上の架橋部15が一体に形成されており、その架橋部15が偏平チューブ2を厚み方向に横断するように配置されているものである。
それにより、ブラケット6の長辺部11側の自重、部品の縮みによる変形が抑制されるとともに、カシメ応力による歪みを防止することができる。
また、枠部10の長辺方向の中央部のみに、架橋部15が形成されており、その架橋部15が偏平チューブ2を厚み方向に横断するように配置されていることにより、特に、コア幅が大きい場合、架橋部15が流れの抵抗になり、中央部に集中する流れを各偏平チューブ2の端部に分散し、流れを均一化することができる。

上記構成において、架橋部15は、横断面が山形に曲折形成された山形部16と、架橋部15と枠部10との付根に長辺方向に拡開されている根元部17を有している。
それにより、剛性が向上し、より自重、部品の縮みによる変形が抑制されるとともに、カシメ応力による歪みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1は本発明のヘッダプレートレス型熱交換器の分解斜視図。
図2は本発明のヘッダプレートレス型熱交換器に用いるブラケット6であって、(A)はその平面図、(B)は図2(A)のB-B矢視断面図。
図3は同ブラケット6の外力に対する変位を説明する平面図。
図4は本発明のヘッダプレートレス型熱交換器のタンク本体8を接続する工程を示す説明図であって、(A)はカシメ前の状態を示し、(B)はカシメ後のブラケット6の架橋部15の状態を示す。
図5は本発明のヘッダプレートレス型熱交換器のブラケット6による第1流体15の整流機能を示す説明図。
図6は従来型ブラケット6aの外力に対する変位を説明する平面図。
図7は従来型ブラケット6aのカシメ作業時に生じる内壁に生じる変形を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき、説明する。
この実施例のヘッダプレートレス型熱交換器は、次の構造を有する。
図1に示す如く、そのコア3は、両開口部が厚み方向の外側に拡開されている拡開部1を有する多数の矩形筒状の偏平チューブ2からなる。各偏平チューブ2の拡開部1で積層されてコア3が形成されている。
そのコア3の外周には筒状のケーシング4が被嵌され、そのケーシング4の端部の内面にはブラケット6が接続されている。ブラケット6は、その外周に一対の長辺部11と、それらを連結する一対の短辺部12とで構成されている枠部10(平面方形)を有し、その枠部10の外周縁にケーシング4の内面に接続される外周壁13が形成され、枠部10の内周縁に内周壁14が形成された横断面鈎型に形成されている。
各部品間は、一体的にろう付固定されている。
この時、図4(A)に示す如く、ブラケット6の内周壁14と枠部10と、ケーシング4の内面とにより環状溝5が形成され、その環状溝5にシールパッキン7が配置される。そのシールパッキン7を介して、タンク本体8の開口端部が環状溝5内に挿入されて、図4(B)のごとく、タンク本体8とケーシング4の端部とが、カシメ手段9により接続されている。
このカシメ手段9は、一例として、ケーシング4の開口端部に周方向に離間して配置された各スリットに隣接する縁部を、タンク本体8の開口縁の外方に突設されたフランジ側に平行に押込んで形成することができる。また、他のカシメ手段を用いても良い。
本発明における特徴部分は、図2図3に示す如く、タンク本体8を取付ける環状溝5の構成要素であるブラケット6の構造にある。
このブラケット6は、図2(A)に示す如く、その枠部10の長辺方向の中間部に長辺部11間を架橋する一以上の架橋部15が形成されている。この例では、架橋部15が3本形成されている。架橋部15は枠部10の長辺部11の内周壁14の端部に一体として形成されている。
この構造により、図3に示す如く、ブラケット6の長辺部11側の自重、部品の縮みによる変形が抑制されるとともに、図4(B)に示す如く、架橋部15がブラケット6の内周壁14を支持しているため、カシメ応力による歪みを防止することができる。
また、コア幅が大きい場合においては、図5に示す如く、タンク本体8側から流入する排気ガス等の第1流体の流れの抵抗になり、各偏平チューブ2の第1流体が流入する側の開口の長手方向の中間部に集中する流れを端部に分散し、第1流体の流れを均一化することができる。第1流体は、各偏平チューブ2の外面側を流通する冷媒等の第2流体により熱交換される。
第1流体の流れを均一化させることができるため、各偏平チューブ2の拡開部1の長手方向の中間部に集中する温度上昇を抑制し、第2流体の突沸を抑制することができる。
また、架橋部15の構造は、図2(B)に示す如く、その長手方向の中間部の横断面が山形に曲折形成された山形部16に形成されるとともに、架橋部15と枠部10との付根に長辺方向に拡開されている根元部17が形成されていることが好ましい。この構造により、剛性が向上し、より自重、部品の縮みによる変形が抑制されるとともに、カシメ応力による歪みを防止することができる。
【符号の説明】
【0009】
1 拡開部
2 偏平チューブ
3 コア
4 ケーシング
5 環状溝
6 ブラケット
6a タンク受け(ブラケット)
7 シールパッキン
8 タンク本体
9 カシメ手段
10 枠部
10a 枠部
11 長辺部
11a 長辺部
12 短辺部
13 外周壁
14 内周壁
15 架橋部
16 山形部
17 根元部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7