(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】血管形成眼障害を処置するためのVEGFアンタゴニストの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/17 20060101AFI20230829BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230829BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20230829BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20230829BHJP
【FI】
A61K38/17
A61P27/02
C07K14/705 ZNA
C07K19/00
(21)【出願番号】P 2020526625
(86)(22)【出願日】2018-11-29
(86)【国際出願番号】 US2018063025
(87)【国際公開番号】W WO2019108770
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-11-26
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・エル・ヴィッティ
(72)【発明者】
【氏名】アリソン・ジェイ・バーライナー
(72)【発明者】
【氏名】カレン・チュー
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/203183(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0260203(US,A1)
【文献】糖尿病, 2005, Vol.48, No.10, pp.713-716
【文献】EYLEA (aflibercept) Injection For Intravitreal Injection,Full prescribing information, REGENERON, 2016, retrieved from the internet <URL; URL:https://web.archive.org/web/20161206164049if_/URL: https://www.regeneron.com/sites/default/files/EYLEA_FPI_pdf>,2016年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置を必要とする患者において、中央部を含む糖尿病黄斑浮腫のない、中等度から重度の非増殖性糖尿病網膜症を処置する方法で使用するための、
アフリベルセプトを含む医薬組成物であって、
前記方法は、患者の眼に、前記
アフリベルセプトの約2.0mgを約月に1回で5回の用量、それに続き前記
アフリベルセプトの約2.0mgを約8週間ごとに1回またはそれ以上の二次用量で投与することを含む、
前記医薬組成物。
【請求項2】
糖尿病網膜症重症度スケール(DRSS)における少なくとも2ステップの低減をもたらす、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
糖尿病網膜症重症度スケール(DRSS)における少なくとも3ステップの低減をもたらす、
請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
患者は:
(i)糖尿病を有する;
(ii)約8.5のヘモグロビンA1cを有する;
(iii)約82の、早期処置糖尿病網膜症研究(ETDRS)の最高矯正視力(BCVA)スコアを有する;
(iv)約247μmの中心網膜厚を有する;
(v)47または53の糖尿病網膜症重症度スコアを有する;および/または
(vi)年齢約56歳である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
患者は、少なくとも約24週間について治療を受ける、
請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
患者は、少なくとも約52週間について治療を受ける、
請求項1~5のいずれか1項に
記載の医薬組成物。
【請求項7】
患者は、
アフリベルセプトを少なくとも24週間について投与され:
(i)少なくとも約1.9文字の最高矯正視力における改善;
(ii)4文字を超える最高矯正視力における低減を経験しない;
(iii)糖尿病黄斑浮腫を発症しない;
(iv)視力を脅かす合併症を経験しない;
(v)前眼部血管新生を発症しない;
および
(vi)約19μmの中心網膜厚における低減を経験する、
の1つまたはそれ以上を達成する、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
アフリベリセプトは、硝子体内注射によって患者の眼に投与される、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
アフリベリセプト、ヒスチジン緩衝液、糖および界面活性剤を含む、
請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
アフリベリセプトを約40mg/mLの濃度で含む、
請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
患者はヒトである、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
処置を必要とする患者において
、中央部を含む糖尿病黄斑浮腫のない、中等度から重度の非増殖性糖尿病網膜症を処置する方法で使用するための、
アフリベリセプトを含む医薬組成物であって、
前記方法は、患者の眼に、
(i)前記
アフリベリセプトの、約2.0mgの初回用量;
(ii)前記
アフリベリセプトの、前記初回用量の1カ月後の、約2.0mgの二次用量;
(iii)前記
アフリベリセプトの、前記二次用量の1か月後の、約2.0mgの三次用量;
(iv)前記
アフリベリセプトの、前記三次用量の8週間後の、約2.0mgの四次用量;そして
(v)前記
アフリベリセプトの、前記四次用量の開始後16週間ごとの、約2.0mgの1回またはそれ以上の用量
を投与することを含む、
前記医薬組成物。
【請求項13】
アフリベリセプトは、硝子体内注射によって投与される、
請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
患者は、69以上のベースライン最高矯正視力(BCVA)ETDRS文字スコアを有する、
請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
患者の視力は、20/40のスネレン視力またはこれより良好であることによって特徴付けられる、
請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
患者はヒトである、
請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項17】
患者は、18歳以上のヒトである。
請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項18】
患者は:
・網膜血管新生;
・前眼部血管新生(ASNV);
・硝子体出血;および/または
・牽引性網膜剥離
に罹患していない、
請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項19】
10mMリン酸ナトリウム、40mM塩化ナトリウム、0.03%ポリソルベート20、および5%ショ糖、pH6.2中に、アフリベリセプトを40mg/mL含む、
請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項20】
約50mLの医薬組成物が投与される、
請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
30ゲージ、0.5インチ注射針を備えるシリンジを用いる硝子体内注射で投与される、
請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
アフリベリセプトを40mg/mL、ヒスチジン緩衝液、糖および界面活性剤を含む、
請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項23】
クエン酸、ショ糖、アルギニンおよびポリソルベート20を含む、
請求項13に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、それぞれその全体を参照によって本明細書に組み入れる米国仮特許出願第62/593,033号、2017年11月30日出願;第62/644,425号、2018年3月17日出願;および第62/748,782号、2018年10月22日出願;の利益を主張する。
【0002】
本発明は、眼障害の治療処置の分野に関する。さらに詳細には、本発明は、血管形成によって生じるまたはそれに関連する眼障害を処置するためのVEGFアンタゴニストの投与に関する。
【背景技術】
【0003】
いくつかの眼障害は、病理学的血管形成に関連する。例えば、加齢性黄斑変性症(AMD)の発症は、脈絡膜血管新生(CNV)と称されるプロセスと関連する。CNVからの漏出は、黄斑浮腫および視力喪失につながる黄斑下の体液のたまりを生じる。糖尿病黄斑浮腫(DME)は、血管形成構成要素での別の眼障害である。DMEは、糖尿病を有する患者における中程度の視力喪失の最も一般的な原因であり、糖尿病網膜症、網膜の血管に影響する疾患の一般的な合併症である。臨床的に重要なDMEは、液が黄斑の中心、鮮明な直接視に関与する網膜の光感受性部分に漏出すると生じる。黄斑における液は、重度の視力喪失または失明を生じる場合がある。異常な血管形成に関連するさらに別の眼障害は、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)である。CRVOは、網膜における血液および体液のバックアップをもたらす網膜中心静脈の閉塞によって生じる。網膜は虚血になる可能性があり、さらなる視力喪失およびさらに重篤な合併症を生じる場合がある新たな、不適当な血管の増大をもたらす。血管内皮増殖因子(VEGF)の放出は、眼における血管透過性の増大および不適当な新たな血管の増加に寄与する。したがって、VEGFの血管形成促進特性を阻害することは、血管形成眼障害を処置するための有効な戦略であると考えられる。
【0004】
AMDおよびCRVOなどの血管形成眼障害のFDAが認可した処置として、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標)、Genentech、Inc.)と称される抗VEGF抗体の硝子体内注射による毎月の投与が挙げられる。
【0005】
VEGFアンタゴニストを使用する眼障害を処置するための方法は、例えば、特許文献1;特許文献2;特許文献3;特許文献4;および特許文献5に述べられている。それにもかかわらず、血管形成眼障害のための新たな投与レジメン、特に高レベルの効能を維持しながらより少ない頻度の投薬を可能にするものが、当技術分野において必要とされたままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第7,303,746号
【文献】米国特許第7,306,799号
【文献】米国特許第7,300,563号
【文献】米国特許第7,303,748号
【文献】米国特許出願公開2007/0190058号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、血管形成眼障害(例えば、糖尿病網膜症、例えば、非増殖性糖尿病網膜症)を処置するための方法を提供する。本発明の方法は、経時的に患者にVEGFアンタゴニストの複数用量を逐次的に投与することを含む。具体的には、本発明の方法は、VEGFアンタゴニストの単一初回用量に続いて、VEGFアンタゴニストの1回またはそれ以上の二次用量に続いて、VEGFアンタゴニストの1回またはそれ以上の三次用量を患者に逐次的に投与することを含む。本発明者らは、有益な治療効果が、血管形成眼障害を罹患した患者において、患者にVEGFアンタゴニストを8週間またはそれ以上ごとに1回の頻度で投与することによって、特にその様な用量が約2から4週間の頻度で患者に投与される約3用量が先行される場合に達成できることを驚くべきことに発見した。したがって、本発明の方法により、VEGFアンタゴニストの各二次用量は、直前の用量の2から4週間後に投与され、各三次用量は直前の用量の少なくとも8週間後に投与される。本発明の投薬レジメンの一例は
図1に示されている。そのような投薬レジメンの1つの有利点は、処置経過全体を通じて毎月の投与を必要とする血管形成眼障害のための先行する投与レジメンと比較して、処置経過の大部分において(すなわち、三次用量)より少ない投薬頻度(例えば、8週間ごとに1回)を可能にすることである(例えば、Lucentis(登録商標)[ラニビズマブ]、Genentech、Inc.についての処方情報を参照されたい)。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の方法は、例えば、加齢性黄斑変性症、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、網膜中心静脈閉塞症、角膜血管新生などが挙げられる任意の血管形成眼障害を処置するために使用できる。
【0009】
本発明の方法は、患者に(例えば、硝子体内注射によって)任意のVEGFアンタゴニストを投与することを含む。一実施形態では、VEGFアンタゴニストは、1つまたはそれ以上のVEGF受容体ベースのキメラ分子(複数可)(本明細書において「VEGF-Trap」または「VEGFT」とも称される)を含む。本発明の文脈において使用される例示的VEGFアンタゴニストは、本明細書において「VEGFR1R2-FcΔC1(a)または「アフリベルセプト」と称される2つ以上のVEGF受容体ベースのキメラ分子を含む多量体VEGF-結合タンパク質である。
【0010】
種々の投与経路は、例えば、局所投与または眼球内投与(例えば、硝子体内投与)を含んで本発明の方法における使用のために検討される。
【0011】
アフリベルセプト(EYLEA(商標)、Regeneron Pharmaceuticals、Inc)は、血管新生(ウェット)加齢性黄斑変性症を有する患者の処置について、最初の3ヵ月間について4週間ごとに硝子体内注射によって投与される2mg、続いて8週間ごとに1回の硝子体内注射によって投与される2mgの推奨用量で2011年11月にFDAによって認可された。
【0012】
本発明は、処置を必要とする患者(例えば、ヒト、例えば18歳以上、例えば1または2型糖尿病を有する)における任意の重症度レベルの糖尿病網膜症、例えば、非増殖性糖尿病網膜症(NPDR)(例えば、中等度から重度NPDR、例えば、約47~53、例えば47または53の糖尿病網膜症重症度スケールレベルによって特徴付けられる)を処置するための方法を提供し、前記方法は、患者の眼に(例えば、硝子体内注射によって)、
例えば、(1)配列番号2のアミノ酸27から129を含むVEGFR1構成要素;(2)配列番号2のアミノ酸130~231を含むVEGFR2構成要素;および(3)配列番号2のアミノ酸232~457を含む多量体化構成要素を含む、例えばVEGF受容体ベースのキメラ分子である、VEGFアンタゴニスト約2mgの
(i)3回の月用量、それに続く16週間ごとの1回またはそれ以上の二次用量であって、最初の二次用量は3回目の月用量の8週間後(16週目)に開始し、その後16週間ごとに継続する(例えば、用量は32、48、64週目などに与えられる)用量(例えば、
図2を参照されたい)または
(ii)3または4または5回の月用量、それに続く8週間ごとの1回またはそれ以上の二次用量であって、二次用量は3または4または5回の最後の月用量の8週間後に開始し、その後8週間ごとに与えられる用量で継続する用量
を投与することを含む。例えば、本発明の一実施形態では、VEGFアンタゴニストはアフリベルセプトである。本発明の一実施形態では、VEGFアンタゴニストは配列番号1の核酸配列によってコードされるVEGFR1R2-FcΔC1(a)を含む。本発明の一実施形態では、患者は、糖尿病黄斑浮腫を罹患していない;69以上のベースライン最高矯正視力(BCVA)ETDRS文字スコアを有する;20/40のスネレン視力またはこれより良好であることによって特徴付けられる視力を有する;網膜血管新生を罹患していない;前眼部血管新生(ASNV)を罹患していない;硝子体出血を罹患していない;および/または牽引性網膜剥離を罹患していない、ことによって特徴付けられる。本発明の一実施形態では、本明細書において考察される場合、患者においてNPDRを「処置する」ことは、ベースライン(最初のVEGFアンタゴニスト投与前)から、例えば、24または48または52週目(最初のVEGFアンタゴニスト投与開始に対して)までにDRSS(糖尿病網膜症重症度スケール)において少なくとも約2ステップの改善をもたらすことを指す。
【0013】
本発明は、処置もしくは予防を必要とする患者(例えば、ヒト)において増殖性糖尿病網膜症(PDR)を処置するもしくは予防するため;または非増殖性糖尿病網膜症(NPDR)から増殖性糖尿病網膜症、前眼部血管新生(ASNV)、糖尿病黄斑浮腫(DME)もしくは中央部を含む糖尿病黄斑浮腫(CI-DME)への進行を予防するための方法であって、患者は非増殖性糖尿病網膜症について最初に処置される(例えば、患者は1もしくは2型糖尿病を有する;約8.5のヘモグロビンA1cを有する;約82のETDRA BCVAスコアを有する;約247μmの中心網膜厚を有する;47もしくは53の糖尿病網膜症重症度スコアを有する;および/または年齢約56歳である)方法を提供し、前記方法は、患者の眼に(例えば、硝子体内注射によって)、
例えば、(1)配列番号2のアミノ酸27から129を含むVEGFR1構成要素;(2)配列番号2のアミノ酸130~231を含むVEGFR2構成要素;および(3)配列番号2のアミノ酸232~457を含む多量体化構成要素を含むVEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプト)約2mgの
(i)3回の月用量、それに続く16週間ごとの1回またはそれ以上の二次用量であって、最初の二次用量は3回目の月用量の8週間後(16週目)に開始する、用量、または
(ii)3または4または5回の月用量、それに続く8週間ごとの1回またはそれ以上の二次用量
を投与することを含む。例えば、本発明の一実施形態では、患者は少なくとも約24週間、52週間または100週間処置され、例えば、ここで患者は24週間かけて約3から約5回の注射を受ける。本発明の一実施形態では、患者は、例えば約24週間以上処置され、次の利益:
(i)糖尿病網膜症重症度スケール(DRSS)スコアにおけるベースラインからの少なくとも2ステップ改善;
(ii)糖尿病網膜症重症度スケール(DRSS)スコアにおけるベースラインからの少なくとも3ステップ改善;
(iii)少なくとも約1.9文字の最高矯正視力における改善;
(iv)4文字を超える最高矯正視力における低減を経験しない;
(v)糖尿病黄斑浮腫を発症しない;
(vi)中央部を含む糖尿病黄斑浮腫を発症しない;
(vii)視力を脅かす合併症を経験しない;
(viii)増殖性糖尿病網膜症を発症しない;
(ix)前眼部血管新生を発症しない;
および/または(x)約19μmの中心網膜厚における低減を経験する、
の1つまたはそれ以上を達成する。したがって、本発明は、非増殖性糖尿病網膜症を有する患者が、上に記載の投薬レジメンに従ってVEGFアンタゴニストを投与することによって、次の利益
(i)糖尿病網膜症重症度スケール(DRSS)スコアにおけるベースラインからの少なくとも2ステップ改善;
(ii)糖尿病網膜症重症度スケール(DRSS)スコアにおけるベースラインからの少なくとも3ステップ改善;
(iii)少なくとも約1.9文字の最高矯正視力における改善;
(iv)4文字を超える最高矯正視力における低減を経験しない;
(v)糖尿病黄斑浮腫を発症しない;
(vi)中央部を含む糖尿病黄斑浮腫を発症しない;
(vii)視力を脅かす合併症を経験しない;
(viii)増殖性糖尿病網膜症を発症しない;
(ix)前眼部血管新生を発症しない;
および/または
(x)約19μmの中心網膜厚における低減を経験する、
の1つまたはそれ以上を達成するようにするための方法も提供する。
【0014】
例えば、本発明は、患者の眼に(例えば、硝子体内注射によって)、
例えば、(1)配列番号2のアミノ酸27から129を含むVEGFR1構成要素;(2)配列番号2のアミノ酸130~231を含むVEGFR2構成要素;および(3)配列番号2のアミノ酸232~457を含む多量体化構成要素を含むVEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプト)約2mgの
(i)3回の月用量、それに続く16週間ごとの1回またはそれ以上の二次用量であって、最初の二次用量は3回目の月用量の8週間後(16週目)に開始する、用量、または
(ii)3または4または5回の月用量、それに続く8週間ごとの1回またはそれ以上の二次用量
を投与することを含む、患者における非増殖性糖尿病網膜症の糖尿病網膜症重症度スケール(DRSS)レベルの低減をもたらすまたは増加を予防する(例えば、
図18を参照されたい)(例えば、少なくとも2または3レベルまで)方法を提供する。
【0015】
本発明は、対象の眼に(例えば、硝子体内注射によって)、VEGF受容体ベースのキメラ分子であるVEGFアンタゴニスト約2mgの(i)3回の月用量、それに続く16週間ごとの1回またはそれ以上の二次用量であって、最初の二次用量は3回目の月用量の8週間後(16週目)に開始する、用量、または(ii)3または4または5回の月用量、それに続く8週間ごとの1回またはそれ以上の二次用量;を投与する(例えば、硝子体内注射によって)ことを含む、その眼が非増殖性糖尿病網膜症を有する対象(例えば、ヒト)の眼における視力を脅かす合併症の発症もしくは再発または失明を処置するまたは予防するための方法も提供する。場合により、対象のもう一方の眼も、それほど苦しめられていない、低レベルのDRSSで苦しめられているまたは別の血管形成眼障害で苦しめられている場合でもVEGFアンタゴニストを投与される。例えば、本発明の一実施形態では、VEGFアンタゴニストは、(i)(1)配列番号2のアミノ酸27から129を含むVEGFR1構成要素;(2)配列番号2のアミノ酸130~231を含むVEGFR2構成要素;および(3)配列番号2のアミノ酸232~457を含む多量体化構成要素を含む;(ii)(1)第1のVEGF受容体のイムノグロブリン様(Ig)ドメイン2および(2)第2のVEGF受容体のIgドメイン3、および(3)多量体化構成要素を含む;(iii)アフリベルセプトである;または(iv)コンベルセプト(conbercept)である、VEGF受容体ベースのキメラ分子である。
【0016】
本発明の一態様は、
薬物容器;および
患者の眼に、
VEGF受容体ベースのキメラ分子であるVEGFアンタゴニスト約2mgの
(i)3回の月用量、それに続く16週間ごとの1回またはそれ以上の二次用量であって、最初の二次用量は3回目の月用量の8週間後(16週目)に開始する、用量、または
(ii)3または5回の月用量、それに続く8週間ごとの1回またはそれ以上の二次用量;
の薬物を投与することによる薬物の使用を示す、その様な処置を必要とする患者において糖尿病網膜症を処置するまたは予防するために薬物を使用することについての説明書
を含むパッケージである。
【0017】
本発明の別の態様は、VEGFアンタゴニストは、
(i)(1)配列番号2のアミノ酸27から129を含むVEGFR1構成要素;(2)配列番号2のアミノ酸130~231を含むVEGFR2構成要素;および(3)配列番号2のアミノ酸232~457を含む多量体化構成要素を含む;
(ii)(1)第1のVEGF受容体のイムノグロブリン様(Ig)ドメイン2および(2)第2のVEGF受容体のIgドメイン3、および(3)多量体化構成要素を含む;
(iii)アフリベルセプトである;または
(iv)コンベルセプトである、
パッケージである。
【0018】
本発明の別の態様は、説明書が薬物が硝子体内注射によって投与されることを示すパッケージである。
【0019】
本発明の別の態様は、説明書が薬物が3または5回の月用量、それに続く8週間ごとの1回またはそれ以上の用量で投与されることを示すパッケージである。
【0020】
本発明の別の態様は、説明書が薬物が3回の月用量、それに続く16週間ごとの1回またはそれ以上の二次用量で投与され、最初の二次用量は3回目の月用量の8週間後(16週目)に開始することを示すパッケージである。
【0021】
本発明の別の態様は、説明書が薬物が8週間ごとに1用量薬物が投与されることを示すパッケージである。
【0022】
本発明の態様は、
薬物容器;および
患者の眼に、
VEGF受容体ベースのキメラ分子であるVEGFアンタゴニスト約2mgの
(i)3回の月用量、それに続く16週間ごとの1回またはそれ以上の二次用量であって、最初の二次用量は3回目の月用量の8週間後(16週目)に開始する、用量、または
(ii)3または5回の月用量、それに続く8週間ごとの1回またはそれ以上の二次用量;
の薬物を投与することによる薬物の使用を示す、その様な処置を必要とする患者において増殖性糖尿病網膜症を処置するまたは予防するために薬物を使用することについての説明書
を含むパッケージである。
【0023】
本発明の別の態様は、VEGFアンタゴニストは、
(i)(1)配列番号2のアミノ酸27から129を含むVEGFR1構成要素;(2)配列番号2のアミノ酸130~231を含むVEGFR2構成要素;および(3)配列番号2のアミノ酸232~457を含む多量体化構成要素を含む;
(ii)(1)第1のVEGF受容体のイムノグロブリン様(Ig)ドメイン2および(2)第2のVEGF受容体のIgドメイン3、および(3)多量体化構成要素を含む;
(iii)アフリベルセプトである;または
(iv)コンベルセプトである、
パッケージである。
【0024】
本発明の他の実施形態は、続く詳細な記載の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の例示的投薬レジメンを示す図である。本レジメンでは、VEGFアンタゴニスト(「VEGFT」)の単一の「初回用量」は、処置レジメンの開始時(すなわち「0週目」)に投与され、2回の「二次用量」は4および8週目にそれぞれ投与され、少なくとも6回の「三次用量」は、その後8週間ごとに1回、すなわち16、24、32、40、48、56週目など、に投与される。このVEGFアンタゴニスト投与レジメンは、本発明の一部を形成する。
【
図2】本発明の第2の例示的投薬レジメンを示す図である。本レジメンでは、VEGFアンタゴニストの3回の月用量(「Q4wk用量」)は、処置レジメンの開始時(すなわち0、4および8週目)に投与され、次いで単一用量が最後のQ4wk用量(「Q8wk用量」)の8週間後(すなわち、16週目)に投与され、Q8wk用量の16週間後およびその後16週間ごとに1回(「Q16wk用量」)投与される3回以上の追加用量(すなわち、32、48、64週目など)が続く。このVEGFアンタゴニスト投与レジメンは、本発明の一部を形成する。
【
図3】第3相二重盲検無作為化対照PANORAMA試験設計の概要を示す図である。中等度から重度のNPDRを有する患者は、(i)シャム注射(「シャム」)、(ii)3回の月用量、それに続く、16週間ごとの1回またはそれ以上の二次用量であって、最初の二次用量は3回目の月用量の8週間後(16週目)に開始する、用量(「群1」)、または(iii)5回の月用量、それに続く8週間ごとの1回またはそれ以上の二次用量(「群2」)を受けた。
【
図4】シャム、群1および群2の群のPANORAMA投薬スケジュールを要約する図である。X=活性注射;O=シャム注射
【
図5】シャム、群1、群2および群1と群2とを合わせて(すべてのIAI)を含む各投薬群でのPANORAMA試験集団のベースラインでの性質および人口動態を示す図である。IAI=硝子体内アフリベルセプト注射
【
図6】シャム、群1、群2および群1と群2とを合わせて(すべてのIAI)を含む各投薬群でのPANORAMA研究集団のベースライン疾患特徴を記載する図である。
【
図7】各投薬群(シャム、群1、群2および群1と群2とを合わせて:「すべてのIAI」)におけるPANORAMA対象によって受けられた注射の回数を記載する図である。
【
図8】糖尿病網膜症重症度スケール(DRSS)でベースラインから≧2-ステップの改善を達成している各投薬群(シャム、群1、群2およびすべてのIAI(群1および群2を合わせて))でのPANORAMA患者の割合(%)を示す図である。
【
図9】糖尿病網膜症重症度スケール(DRSS)でベースラインから≧3-ステップの改善を達成している各投薬群(シャム、群1、群2およびすべてのIAI(群1および群2を合わせて))でのPANORAMA患者の割合(%)を示す図である。
【
図10】24週目までの視力を脅かす合併症(VTC;増殖性糖尿病網膜症(PDR)/前眼部血管新生(ASNV))および/または中央部を含む糖尿病黄斑浮腫(CI-DME)を経験した各投薬群(シャム、群1、群2およびすべてのIAI(群1および群2を合わせて))でのPANORAMA患者の割合(%)を示す図である。
【
図11】24週間までの各PANORAMA投薬群(シャム、群1、群2および群1と群2とを合わせて:「すべてのIAI」)の最高矯正視力(BCVA)スコア(早期処置糖尿病網膜症研究(ETDRS)文字)における平均変化の概要を示す図である。
【
図12】24週間に至るまでの各PANORAMA投薬群(シャム、群1、群2およびすべてのIAI(群1と群2とを合わせて))の中心網膜厚(CRT、μm)における平均変化の概要を示す図である。
【
図13】24週目に至るまでのシャムおよびすべてのIAI(群1と群2とを合わせて)PANORAMA群における対象眼(study eye)の眼球の治療下で発現した有害事象(TEAE)の概要を示す図である。FAS/SAF=完全分析セット/安全性分析セット
【
図14】24週目に至るまでのシャムおよびすべてのIAI(群1と群2とを合わせて)PANORAMA群における対象眼の眼球の重度の治療下で発現した有害事象(TEAE)の概要を示す図である。FAS/SAF=完全分析セット/安全性分析セット
【
図15】24週目に至るまでのシャムおよびすべてのIAI(群1と群2とを合わせて)PANORAMA群によって経験された対象眼の眼球内炎症の概要を示す図である。
【
図16】24週目に至るまでのシャムおよびすべてのIAI(群1と群2とを合わせて)PANORAMA群によって経験された抗血小板薬臨床試験共同研究(anti-platelet trialists' collaboration)(APTC)事象の概要を示す図である。
【
図17】24週目に至るまでのPANORAMA対象の死亡の概要を示す図である。
【
図18】国際臨床糖尿病網膜症疾患重症度スケール(DRSS)を詳述する表である。
【
図19】52週間後のPANORAMA臨床試験の結果の概要を示す図である-DRSSにおいて少なくとも2ステップの改善を経験した各処置群での患者の百分率および視力を脅かす合併症(VTC)および/または中央部を含む糖尿病黄斑浮腫(CI-DME)を発症した対象の百分率。
【
図20】52週目に至るまでの処置群シャム、2q16(6名の内)および2q8(9名の内)における対象に与えられた活性注射の回数の概要を示す図である。
【
図21】52週目でのDRSSにおけるベースラインからの少なくとも2ステップの改善を有するシャム、2q16および2q8群の患者の割合の概要を示す図である。LOCF=52週目に至るまでの最終観測繰越法(last observation carried forward)。
【
図22】8、12、24、40および52週目でのDRSSにおけるベースラインからの少なくとも2ステップの改善を有する各処置群(シャム、2q16および2q8)の対象の百分率の概要を示す図である。
【
図23】52週目に至るまでの視力を脅かす合併症(VTC)および/または中央部を含む糖尿病黄斑浮腫(CI-DME)を発症した各処置群(シャム、2q16および2q8)における患者の百分率の概要を示す図である。
【
図24】各処置群(シャム、2q16および2q8)における対象について、経時的な視力を脅かす合併症を発症する確率のカプラン-マイヤープロットである。VTE=VEGF Trap眼 VTC=視力を脅かす合併症。
【
図25】各処置群(シャム、2q16および2q8)において対象がCI-DMEを発症するまでの期間の概要を示す図である。
【
図26】52週間にわたる各処置群(シャム、2q16および2q8)における対象についての最高矯正視力(ETDRS文字)における平均変化の概要を示す図である。
【
図27】52週間にわたる各処置群(シャム、2q16および2q8)における対象についての中心網膜厚(μm)の概要を示す図である。
【
図28】52週間後の各処置群(シャム、2q16および2q8)における対象、処置眼によって経験された眼球治療下で発現した有害事象(TEAE)の発生の概要を示す図である。
【
図29】52週間後の各処置群(シャム、2q16および2q8)における対象、処置眼によって経験された重篤な眼球治療下で発現した有害事象(TEAE)の発生の概要を示す図である。
【
図30】52週間後の各処置群(シャム、2q16および2q8)における対象、処置眼によって経験された眼球炎症の発生の概要を示す図である。
【
図31】52週間後の各処置群(シャム、2q16および2q8)における対象、処置眼において経験された抗血小板薬臨床試験共同研究(APTC)事象の発生の概要を示す図である。
【
図32】52週間後に各処置群(シャム、2q16および2q8)において3ステップ以上の改善を有する患者の割合の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、患者における糖尿病黄斑浮腫を伴わない非増殖性糖尿病網膜症の、増殖性糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫および/または前眼部血管新生などのさらに進んだ視力を脅かす障害への進行を予防するための群を抜いて有効な方法を含む。実際に、本発明のアフリベルセプト投薬レジメンにある中等度から重度の非増殖性糖尿病網膜症患者は、DRSSレベルでの2ステップ以上の改善を達成する疾患進行の逆転を経験した。本発明の投薬レジメンにある対象の眼は、未処置の眼と比較して、視力を脅かす合併症の発症における低減も経験した。この予防は、本明細書に記載する投薬レジメンを使用する患者の眼へのアフリベルセプトなどのVEGFアンタゴニストの投与によって達成できる。
【0027】
本発明が記載される前に、本発明は、記載される具体的な方法および実験条件に、そのような方法および条件が変動する場合があることから、限定されないと考えられる。本明細書において使用される用語は、具体的な実施形態を記載する目的のためのみであり、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることから、限定することを意図されないことも理解される。
【0028】
他に定義されない限り、本明細書で使用するすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において使用される、用語「約」は、具体的に引用される数値を参照して使用される場合、値が、引用される値から1%未満まで変動する場合があることを意味する。例えば、本明細書において使用される、語句「約100」は、99および101ならびにその間のすべての値を含む(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)。
【0029】
本明細書に記載のものと類似のまたは等価の任意の方法および材料は、本発明の実施または検査において使用できるが、好ましい方法および材料は、ここに記載される。
【0030】
対象または患者は、哺乳動物、例えば、ヒト(例えば、50、55、60、65もしくは70歳以上のヒト)、ウサギ、マウス、非ヒト霊長類、サルまたはラットであってよい。本発明の一実施形態では、対象または患者は、DRのための異なる処置、例えば、PDR(例えば、汎網膜光凝固(レーザー)治療)を以前受けた。本発明の一実施形態では、以前の治療はDRを十分に処置することに失敗した。本発明の一実施形態では、患者または対象は、DMEおよび/またはCI-DMEを罹患していない。本発明の一実施形態では、対象または患者は、糖尿病(例えば、1型または2型)を有する。
【0031】
投薬レジメン
本発明は、任意の重症度レベルの糖尿病網膜症、例えば、増殖性または非増殖性糖尿病網膜症(NPDR)、例えば中等度NPDRまたは重度NPDRなどの血管形成眼障害を処置するための方法を提供する。本発明の方法は、対象または患者(例えば、18歳以上のヒトなどのヒト)の眼にVEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプト)の複数用量を逐次的に投与することを含む。本発明の一実施形態では、患者は糖尿病(例えば、1型または2型)を有する。本明細書において使用される「逐次的に投与する」は、VEGFアンタゴニストの各用量が患者の眼に異なる時点で、例えば所定の間隔(例えば、数時間、数日、数週間または数ヵ月)で離れた異なる日に投与されることを意味する。本発明は、VEGFアンタゴニストの単一初回用量に続く、VEGFアンタゴニストの1回またはそれ以上の二次用量に続く、VEGFアンタゴニストの1回またはそれ以上の三次用量を患者の眼に逐次的に投与することを含む方法を含む。
【0032】
本発明は、対象の眼にVEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプト)の3または4または5回の初回月用量、それに続く8週間ごとの1回またはそれ以上の二次用量を投与することを含む、対象において血管形成眼障害(例えば、NPDR)を処置するまたは予防する;DR(例えば、NPDR)のさらに重度の形態またはその合併症への、例えばPDR、ASNV、DMEおよび/またはCI-DMEへの進行を予防する;NPDRのDRSSにおける低減をもたらす;VTCの発症もしくは再発または失明を処置するまたは予防するための方法を提供する。本発明の一実施形態では、障害を罹患している眼はアンタゴニストを投与され、場合によりもう一方の眼も、障害がその眼では現れていない場合、または重度の低い形態の障害が現れている場合または別の血管形成眼障害がもう一方の眼を苦しめている場合でも同じまたは異なる投薬レジメンを用いて処置される。したがって本発明は、3または4または5回の月用量、それに続く初回の3または4または5回の月用量の最後から数えて8週間ごとの用量としてVEGFアンタゴニストの0.5または2mg用量を(例えば、硝子体内注射によって)対象(例えば、ヒト)の眼に投与することを含む方法を提供する。本発明の一実施形態では、障害を罹患している眼はアンタゴニストを投与され、場合によりもう一方の眼も、障害がその眼では現れていない場合、または重度の低い形態の障害が現れている場合または別の血管形成眼障害がもう一方の眼を苦しめている場合でも同じまたは異なる投薬レジメンを用いて処置される。本発明の例示的な一実施形態では、VEGFアンタゴニストの単一初回用量(例えば、2mg)は、処置レジメンの初日(すなわち、0週目)に、続いて2回の二次用量、それぞれ直前の用量の4週間後(すなわち、4週目および8週目)に投与される、に続いて少なくとも5回の三次用量、それぞれ直前の用量の8週間後(すなわち、16、24、32、40および48週目)に投与される、で患者の眼に(例えば、硝子体内注射によって)投与される。三次用量は、処置レジメンの経過の際に不定に(8週間以上の間隔で)継続される。この例示的投与レジメンは、
図1にグラフで示されている。
【0033】
本発明は、対象の眼に(例えば、硝子体内注射によって):
(A)VEGFアンタゴニスト(例えば、2mg)の3回の初回月用量(例えば、4週間ごとに1回または「Q4wk」)を投与すること;に続く
(B)対象の眼にVEGFアンタゴニストの単一用量(例えば、2mg)を直前の用量の8週間後(「Q8wk」)に投与すること;に続く
(C)対象の眼にVEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプト)の1回またはそれ以上のさらなる(維持)用量(例えば、2mg)を直前の用量の16週間後およびその後16週間ごと(「Q16wk」)(初回月用量の最初から数えて32、48および64週目など)に投与することを含む、対象において血管形成眼障害(例えば、NPDR)を処置するまたは予防する;DR(例えば、NPDR)のさらに重度の形態またはその合併症への、例えばPDR、ASNV、DMEおよび/またはCI-DMEへの進行を予防する;NPDRのDRSSにおける低減をもたらす;VTCの発症もしくは再発または失明を処置するまたは予防するための方法も含む。例えば、
図2を参照されたい。本発明の方法は、(i)3回の月用量、それに続く16週間ごとの1回またはそれ以上の二次用量であって、最初の二次用量は3回目の月用量の8週間後(16週目)に開始する、用量、でVEGFアンタゴニストを投与することを含む。本発明の一実施形態では、障害を罹患している眼は、アンタゴニストを投与され、場合によりもう一方の眼も障害がその眼では現れていない場合、または重度の低い形態の障害が現れている場合または別の血管形成眼障害がもう一方の眼を苦しめている場合でも同じまたは異なる投薬レジメンを用いて処置される。
【0034】
本発明の例示的一実施形態では、初回一次用量に続いて、各二次用量は直前の用量の2から4週間後(例えば、2週間後、2週間半後、3週間後、3週間半後または4週間後)に投与され、各三次用量は直前の用量の少なくとも8週間後(例えば、8週間後、8週間半後、9週間後、9週間半後、10週間後、10週間半後、11週間後、11週間半後、12週間後、12週間半後、13週間後、13週間半後、14週間後、14週間半後、またはそれより長い週間後)に投与される。代替的に二次用量に続いて、VEGFアンタゴニストは、必要に応じて/必要なときに(PRN)に基づいて、医師または他の認定された医療従事者によって評価された視覚および/または解剖学的転帰に基づいて投与される。
【0035】
本発明は、対象の眼に(例えば、硝子体内注射によって):
(A)VEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプトまたはコンベルセプト、例えば、0.5mgまたは2.0mg)の3回の初回月用量(例えば、4週間ごとに1回または「Q4wk」)を投与すること;に続く
(B)
・ 対象の眼にVEGFアンタゴニストの1回またはそれ以上の用量を直前の用量の3ヵ月後(または12週間ごともしくは年4回)にVEGFアンタゴニストを投与すること;または
・ 対象の眼にVEGFアンタゴニストを必要に応じて/必要なときに(PRN)に基づいて、医師または他の認定された医療従事者によって評価された視覚および/もしくは解剖学的転帰に基づいて投与すること
を含む、対象において血管形成眼障害(例えば、NPDR)を処置するまたは予防する;DR(例えば、NPDR)のさらに重度の形態またはその合併症への、例えばPDR、ASNV、DMEおよび/またはCI-DMEへの進行を予防する;NPDRのDRSSにおける低減をもたらす;VTCの発症もしくは再発または失明を処置するまたは予防するための方法も含む。
【0036】
用語「初回用量」、「二次用量」および「三次用量」は、時間的に逐次的なVEGFアンタゴニストの投与を指す。したがって、「初回用量」は、処置レジメンの開始時に投与される用量(「ベースライン用量」とも称される)であり;「二次用量」は、初回用量後に投与される用量であり;「三次用量」は、二次用量後に投与される用量である。初回、二次および三次用量は、すべて同じ量のVEGFアンタゴニストを含み得るが、投与の頻度に関しては全般的に相互に異なる。しかしある特定の実施形態では、初回、二次および/または三次用量に含有されるVEGFアンタゴニストの量は、処置の経過の際に相互に変動する(例えば、必要に応じて増量または減量調整される)。
【0037】
本明細書において使用される表現「直前の用量」は、逐次的な複数の投与において、逐次的なまさに次の用量の投与に先行して、介在する用量を伴わずに患者の眼に投与されるVEGFアンタゴニストの用量を意味する。
【0038】
本発明の一実施形態では、VEGFアンタゴニスト投薬レジメンは、24、48、52、96もしくは100週間の(またはさらなる)経過にわたって実行される。
【0039】
本発明の一実施形態では、そのような投薬レジメンを受けている(例えば、NPDRを罹患している)患者は、ベースライン(処置開始前)から24または48または52週目に眼においてDRSS(糖尿病網膜症重症度スケール)における少なくとも2ステップの改善を示す。本発明の一実施形態では、3ステップの改善は、眼において経験される。
【0040】
本発明の方法は、患者の眼にVEGFアンタゴニストの任意の回数の二次および/または三次用量を投与することを含み得る。例えば、ある特定の実施形態では、単一の二次用量だけが患者の眼に投与される。他の実施形態では、2回以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8回以上)の二次用量が患者の眼に投与される。同様に、ある特定の実施形態では、単一の三次用量だけが患者の眼に投与される。他の実施形態では、2回以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8回以上)の三次用量が患者の眼に投与される。
【0041】
複数の二次用量を含む実施形態では、各二次用量は、他の二次用量と同じ頻度で投与される。例えば各二次用量は直前の用量の4週間後に患者の眼に投与される。同様に、複数の三次用量を含む実施形態では、各三次用量は他の三次用量と同じ頻度で投与される。例えば、各三次用量は直前の用量の8週間後に患者の眼に投与される。代替的に、二次および/または三次用量が患者の眼に投与される頻度は、処置レジメンの経過にわたって変動する場合がある。例えば、本発明は、VEGFアンタゴニストの単一の初回用量に続く、VEGFアンタゴニストの1回またはそれ以上の二次用量に続く、VEGFアンタゴニストの少なくとも5回の三次用量を患者の眼に投与することを含む方法であって、最初の4回の三次用量が直前の用量の8週間後に投与され、続く各三次用量が直前の用量の8から12週間後(例えば、8週間後、8週間半後、9週間後、9週間半後、10週間後、10週間半後、11週間後、11週間半後、12週間後)に投与される、方法を含む。投与の頻度は、処置の経過の際に診察後の個々の患者の必要に応じて医師によって調節される場合がある。
【0042】
本発明の一実施形態では、VEGFアンタゴニストは、本発明の投薬レジメンにより、さらなる治療剤(例えば、ビタミンもしくは栄養補助食品)または治療手順(例えば、レーザー療法もしくは手術)と併せて対象に投与される。例えば、本発明の一実施形態では、対象は、汎網膜光凝固(レーザー)治療などのレーザー療法をVEGFアンタゴニストと併せて受ける。本発明の一実施形態では、対象は例えばDR(例えば、PDR)を処置するために以前レーザー療法を受けたが、本発明によるVEGFアンタゴニスト投薬レジメンに切り替えた。
【0043】
用語「と併せて(in association with)」は、構成要素VEGFアンタゴニストと共にさらなる治療剤が例えば同時送達のために単一の組成物中に製剤化される、または2つ以上の組成物中に別々に製剤化される(例えば、キット)ことを示す。各構成要素は、他の構成要素が投与されるのとは異なる時期に対象に投与することができる;例えば各投与は、所定の期間にわたってある間隔で、同時ではなく(例えば、別々にもしくは逐次的に)与えられる。さらに、別々の構成要素は、同じ経路によってまたは異なる経路によって対象に投与することができる。
【0044】
VEGFアンタゴニスト
本発明の方法は、本明細書に記載の具体的な投薬レジメンによりVEGFアンタゴニストを患者の眼に投与することを含む。本明細書において使用される、語句「VEGFアンタゴニスト」は、VEGFの正常な生物学的活性を遮断、低減または妨害する任意の分子を意味する。
【0045】
VEGFアンタゴニストは、VEGFと天然のVEGF受容体との間の相互作用を妨害する分子、例えばVEGFまたはVEGF受容体に結合し、VEGFとVEGF受容体との間の相互作用を妨げるまたは他に邪魔する分子を含む。具体的な例示的VEGFアンタゴニストとして、抗VEGF抗体およびその抗原結合断片(例えば、FabまたはF(ab)2)、抗VEGF受容体抗体およびその抗原結合断片、抗VEGFおよび抗VEGF受容体1本鎖抗体、抗VEGFおよび抗VEGF受容体二特異性抗体およびその抗原結合断片、抗VEGFおよび抗VEGF受容体DARPins(設計されたアンキリン反復配列タンパク質)ならびにVEGF受容体ベースのキメラ分子(本明細書において「VEGF-Traps」とも称される)が挙げられる。
【0046】
VEGF受容体ベースのキメラ分子は、VEGFR1(Flt1とも称される)および/またはVEGFR2(Flk1もしくはKDRとも称される)などのVEGF受容体の2つ以上の免疫グロブリン(Ig)様ドメインを含み、多量体化ドメイン(例えば、2つ以上のキメラポリペプチドの多量体化[例えば、二量体化]を促進するFcドメイン)も含有する場合があるキメラポリペプチドを含む。例示的VEGF受容体ベースのキメラ分子は、配列番号1の核酸配列によってコードされるVEGFR1R2-FcΔC1(a)と称される分子である。VEGFR1R2-FcΔC1(a)は、3つの構成要素:(1)配列番号2のアミノ酸27から129を含むVEGFR1構成要素;(2)配列番号2のアミノ酸130~231を含むVEGFR2構成要素;および(3)配列番号2のアミノ酸232~457を含む多量体化構成要素(「FcΔC1(a)」)(配列番号2のC末端アミノ酸[すなわち、K458]本発明の方法において使用されるVEGFアンタゴニストに含まれても含まれなくてもよい;例えば米国特許第7,396,664号を参照されたい)を含む。配列番号2のアミノ酸1~26は、シグナル配列である。
【0047】
本明細書下に記載の実施例において使用されるVEGFアンタゴニストは、VEGFR1R2-FcΔC1(a)分子(例えば、そのホモ二量体)を含む分子であり、本明細書において「VEGFT」と称される。本発明の文脈において使用される追加的なVEGF受容体ベースのキメラ分子は、米国特許第7,396,664号、第7,303,746号およびWO 00/75319に開示されている。
【0048】
本発明の一実施形態では、VEGFアンタゴニストは:
(1)第1のVEGF受容体(例えば、VEGFR1)のイムノグロブリン様(Ig)ドメイン2;
(2)第2のVEGF受容体(例えば、VEGFR2)のIgドメイン3;および
(3)多量体化構成要素(例えばFcまたはその変種)
を含むポリペプチド(またはそのホモ二量体)であるVEGF受容体ベースのキメラ分子である。
【0049】
本発明の一実施形態では、VEGFアンタゴニストは:
(1)第1のVEGF受容体(例えば、VEGFR1)のイムノグロブリン様(Ig)ドメイン2;
(2)第2のVEGF受容体(例えば、VEGFR2)のIgドメイン3;
(3)第2のVEGF受容体(例えば、VEGFR2)の免疫グロブリン様(Ig)ドメイン4;および
(4)多量体化構成要素(例えばFcまたはその変種);
を含むポリペプチド(またはそのホモ二量体)であるVEGF受容体ベースのキメラ分子である。
【0050】
本発明の文脈において使用される例示的VEGFアンタゴニストとして、例えば、VEGFミニTrap(例えば、米国特許第7087411号を参照されたい)、アフリベルセプト、Abicipar Pegol DARPinなどの抗VEGF DARPin、ブロルシズマブ(RTH258)などの1本鎖(例えば、VL-VH)抗VEGF抗体、単一特異性、多特異性または二特異性抗VEGF抗体または、例えばRG7716、ラニビズマブ(LUCENTIS)もしくはベバシズマブ(AVASTIN)などのANG2にも結合するその抗原結合断片およびコンベルセプトが挙げられる。
【0051】
血管形成眼障害
本発明の方法は、対象の眼に、VEGFアンタゴニストの治療有効量(例えば、アフリベルセプト2mg)を本明細書に記載される投薬レジメンに従って投与することによって任意の血管形成眼障害を処置または予防するために使用できる。本明細書において使用される語句「血管形成眼障害」は、血管の成長もしくは増殖によってもしくはそれに関連して、または血管漏出によって生じる眼の任意の疾患を意味する。本発明の方法の方法を使用して処置できる血管形成眼障害の非限定的例として、加齢性黄斑変性症(例えば、ウェットAMD、滲出性AMDなど)、網膜静脈閉塞症(RVO)、網膜中心静脈閉塞症(CRVO;例えば、CRVOに続く黄斑浮腫)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)、糖尿病黄斑浮腫(DME)、脈絡膜血管新生(CNV;例えば、近視性CNV)、虹彩血管新生、血管新生緑内障、緑内障での手術後線維症、増殖性硝子体網膜症(PVR)、視神経乳頭血管新生、角膜血管新生、網膜血管新生、硝子体血管新生、パンヌス、翼状片、血管性網膜症ならびに非増殖性糖尿病網膜症および増殖性糖尿病網膜症などの糖尿病網膜症が挙げられる。
【0052】
糖尿病網膜症は、糖尿病を有する人々において生じる場合がある進行性の状態である。典型的には、それは、網膜、眼の奥の光感受性内膜(light-sensitive lining)への進行性の損傷を生じる。糖尿病網膜症は、糖尿病の重篤な視覚を脅かす合併症である。経時的に糖尿病は網膜において血管を損傷し、糖尿病網膜症は、これらの小さな血管が血液および他の液を漏出する場合に生じる。状態は、典型的には両眼を冒す。長く糖尿病を有すると、人は糖尿病網膜症を発症しやすくなる。未処置のままにすると、糖尿病網膜症は失明を生じる可能性がある。
糖尿病網膜症の症状として:
・ 点または浮遊物が見える
・ かすみ目
・ 視野の中央に暗いまたは空の点を有する
・ 夜間に十分に見えにくい
が挙げられる。
【0053】
したがって視力を保存するために、糖尿病網膜症のそのさらに視覚を脅かす後の段階、例えば、増殖性糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫および/または前眼部血管新生(ASNV)への進行を停止するまたは妨げることは重要である。Kleinら、Changes in Retinal Vessel Diameter and Incidence and Progression of Diabetic Retinopathy,Arch.Opthamol.130(6):749~755(2012)
【0054】
前眼部血管新生は、虹彩の血管新生および/または虹彩角膜角の明確な血管新生である。
【0055】
糖尿病網膜症は進行するに従って、以下を含むさらに進行した段階に達する:
1.軽度非増殖性網膜症。この段階は、毛細血管瘤と呼ばれる網膜の小さな血管での風船様腫脹の小さな領域によって特徴付けられる。これらの毛細血管瘤は、網膜に液を漏出する場合がある;次に
2.中程度非増殖性網膜症。疾患は進行するに従って、網膜に栄養を与える血管は腫脹し、歪む。それらは、血液を輸送する能力も喪失する場合がある。両方の状態は、網膜の外観に特徴的な変化を生じ、糖尿病黄斑浮腫の一因となる場合がある;次に
3.重度非増殖性網膜症。この段階では、さらに多くの血管が遮断され、網膜の領域への血液供給が欠乏する。これらの領域は、新たな血管を成長させるように網膜にシグナル伝達する増殖因子を分泌し;次に
4.増殖性糖尿病網膜症(PDR)。
下記を参照されたい。
【0056】
非増殖性糖尿病網膜症(NPDR)は、血管新生によって特徴付けられず、その段階は糖尿病網膜症重症度スケール(DRSS)に従ってもグレード分けされる、糖尿病患者における早期網膜症である。NPDRのグレードは、例えば、早期、中程度、中等度および重度を含む。本発明の一実施形態では、中等度から重度のNPDRは、47から53(例えば、47または53)の重症度レベルと一致する。本発明の一実施形態では、中等度から重度のNPDR患者(例えば、ヒト、例えば1または2型糖尿病を有する18歳以上)は、次の1つまたはそれ以上を用いて特徴付けられる:
・ 黄斑浮腫(例えば、黄斑の中心を脅かす)を有さない;
・ 汎網膜光凝固を少なくとも6ヵ月間安全に延期できる;
・ 69以上のベースライン最高矯正視力(BCVA)ETDRS文字スコアを有する(例えば、20/40またはこれより良いスネレン視力);
・ 網膜血管新生を有さない;
・ 前眼部血管新生(ASNV)を有さない;
・ 硝子体出血を有さない;および/または
・ 牽引性網膜剥離を有さない。
【0057】
増殖性糖尿病網膜症(PDR)は、糖尿病網膜症のさらに進行した形態である。この段階では、新たな脆弱な血管が網膜において硝子体、眼の後ろを満たしているゲル様液に成長し始める場合がある。新たな血管は、血液を硝子体に漏出し、視覚を曇らせる場合がある。
【0058】
したがって本発明は、対象の眼が中等度NPDR(非増殖性糖尿病網膜症)または重度NPDR(例えば、中等度から重度のNPDR)またはPDR(増殖性糖尿病網膜症)を有する、例えば、対象の糖尿病網膜症についてのDRSSが47または53であるかどうかに関わらず、対象の眼に本明細書に記載の投薬レジメン下でVEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプト2mg)を投与することによって、対象の眼における糖尿病網膜症を処置するまたは予防するための方法を含む。本発明の一実施形態では、対象は、糖尿病黄斑浮腫(DME)および/または中央部を含む糖尿病黄斑浮腫(CI-DME)を罹患していない。非増殖性糖尿病網膜症を有する患者では、本明細書に記載の投薬レジメンは、NPDRのさらに重度の形態へのまたは増殖性糖尿病網膜症、ASNV、DMEおよび/もしくはCI-DMEへの患者の進行を予防するために使用される。実際に、本発明の投薬レジメンは、NPDRを罹患している(例えば、DMEおよび/またはCI-DMEを罹患していない)患者においてDRSSの増大を、例えば2レベル以上、例えば3レベル程度まで逆転する(またはその増大を予防する)ために使用される。
【0059】
国際臨床糖尿病網膜症疾患重症度スケール(DRSS)は、そのレベルを含めて、
図18に記載される表に詳述されている。
【0060】
NPDRを罹患している対象は、種々の視力を脅かす合併症または事象(VTC)および失明(例えば、そのようなVTCに続発する失明)を罹患するリスクにある。視力を脅かす合併症は、PDR(PDRによると考えられる硝子体出血または牽引性網膜剥離を有する患者を含む)およびASNVの複合転帰として定義される。ASNVは、虹彩の血管新生(少なくとも2累積クロックアワー(clock hour))、および/または虹彩角膜角の明確な血管新生として定義される。投薬レジメンは、NPDRを罹患している対象におけるそのようなVTCおよび/または失明の発症を低減する。したがって本発明は、対象の眼に、本明細書に記載の投薬レジメン下でVEGFアンタゴニスト(アフリベルセプト、例えば2.0mg)を投与することによって、例えばNPDRまたはPDRを罹患している対象においてVTCの発症もしくは再発(1回またはそれ以上の初回の発症に続く)および/または失明を予防するための方法を提供する。そのような方法は、VTCを罹患している1つの眼を処置するステップだけでなく、もう一方の眼ではVTCおよび/または失明が生じていない場合でもVTCおよび/または失明を予防するためにもう一方の眼を処置することも含む。
【0061】
医薬製剤
本発明は、患者の眼に投与されるVEGFアンタゴニストが医薬製剤に含有される方法を含む。医薬製剤は、VEGFアンタゴニストを例えば、薬学的に許容される担体などの少なくとも1つの不活性成分と共に含み得る。他の薬剤は、移行、送達、忍容性などの改善を提供するために医薬組成物に組み入れられる。用語「薬学的に許容される」は、連邦もしくは州政府の規制当局によって承認されているまたは米国薬局方もしくは動物における、さらに具体的にはヒトにおける使用のために他に一般に認められている薬局方に列挙されていることを意味する。用語「担体」は、それと共に抗体が投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルを指す。多数の適切な製剤は、調剤薬剤師に十分周知の処方集:Remington’s Pharmaceutical Sciences(15th ed,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1975)、特に、その中のBlaug、Seymourによる87章、に見出すことができる。これらの製剤として、例えば粉剤、ペースト剤、軟膏、ゼリー剤、ワックス、油、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)含有ビヒクル(LIPOFECTIN(商標)など)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト剤(anhydrous absorption pastes)、水中油型および油中水型エマルジョン、エマルジョンカーボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲルおよびカーボワックスを含有する半固体混合物が挙げられる。任意の前述の混合物は、VEGFアンタゴニストが製剤によって不活性化されず、製剤が投与の経路と生理学的に適合性であり、忍容される限り、本発明の方法の文脈において適切であり得る。調剤薬剤師に十分周知の賦形剤および担体に関する追加的な情報について、Powell et al.PDA(1998)J Pharm Sci Technol.52:238~311およびその引用物も参照されたい。
【0062】
本発明の文脈における注射による投与のために有用な医薬製剤は、注射のために従来法で使用される滅菌水性媒体または油性媒体中にVEGFアンタゴニストを溶解、懸濁または乳化することによって調製できる。注射のための水性媒体として、例えば生理食塩水、グルコースを含有する等張溶液および、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物)]などの適切な可溶化薬剤と併せて使用できる、他の補助剤がある。油性媒体として、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と併せて使用できる例えば、ゴマ油、ダイズ油などを使用できる。このように調製された注射剤は、所望により適切なアンプルに充填することができる。
【0063】
本発明の一実施形態では、対象に投与される医薬製剤は、アフリベルセプト、例えば10mMリン酸ナトリウム、40mM塩化ナトリウム、0.03%ポリソルベート20および5%ショ糖、pH6.2中の約40mg/mLアフリベルセプトを含む。
【0064】
本発明の一実施形態では、対象に投与される医薬製剤は、VEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプトまたはコンベルセプト、例えばその40mg/ml)ならびに:
(a)ピロリン酸(例えば、5mM~250mM)、本発明の一実施形態では、製剤は、NaCl、クエン酸ナトリウム、クエン酸、マンニトールおよびポリソルベート80、例えば、pH5.2をさらに含む;
(b)ヒスチジン-HClもしくはヒスチジン-アセテート(例えば、10mMから50mM)などのヒスチジン塩などの緩衝液、例えば、pH5.7から6.2;ショ糖、トレハロース、マンニトールもしくはグルコースなどの糖(例えば、6%超だが、10%以下、例えば2.5%~10%);およびポリソルベート20およびポリソルベート80(例えば、0%もしくは0.01%から0.03%)などの界面活性剤;
(c)L-ヒスチジン/ヒスチジン塩酸塩などのヒスチジン含有緩衝液;ポリソルベート20(例えば、0.03%)などの非イオン性界面活性剤、NaClなどの無機塩(例えば、40mM)およびショ糖(例えば、5%)などの炭水化物、例えばpH6.0~6.5(例えば、6.2もしくは6.5);
(d)ヒスチジン塩(例えば、ヒスチジン塩はヒスチジン-HClもしくはヒスチジン-アセテートであり、例えば、10mMから50mM)からなり、pH範囲5.7から6.2を有する緩衝液;ショ糖、トレハロース、マンニトールおよびグルコースからなる群から選択される糖(例えば、6%超だが10%以下);ポリソルベート20およびポリソルベート80からなる群から選択される界面活性剤(例えば、0%から0.1%);
(e)クエン酸(例えば、5mM、10mM、15mM、20mM、25mMもしくは30mM)、ショ糖(例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%もしくは10%)、アルギニン(例えば、5mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mMもしくは50mMもしくは100mM)およびポリソルベート20(例えば、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%もしくは0.10%);
(f)リン酸、ヒスチジン、酢酸、コハク酸、クエン酸、グルタミン酸および/もしくは乳酸などの緩衝液(例えば、5~20もしくは5~50mM);ポリソルベート(例えば、PS20もしくはPS80)、ポリエチレングリコールドデシルエーテル、ポロキサマー、4-(l,l,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコール、アルキルサッカライドもしくはアルキルグリコシドなどの非イオン性界面活性剤、ポリオールもしくはアミノ酸、例えば、ショ糖、トレハロース、ソルビトール、マンニトール、グリセリン、プロリン、アルギニン、メチオニン、グリシンもしくはリジンなどの等張化剤(tonicifying agent)、製剤は、約300mOsm/kgの最終浸透圧を有し、塩化物アニオンの濃度は約10mM未満であり;pH5.0~6.5;
(g)酢酸ナトリウム(例えば、10~15mM);ショ糖(例えば、7%)もしくはトレハロース(例えば、8%);およびポリソルベート20(例えば、0.03%)、pH5.5;または
(h)10mMリン酸ナトリウム、40mM塩化ナトリウム、5%(w/v)ショ糖、0.03%(w/v)ポリソルベート20、pH6.2;10mMリン酸ナトリウム、9%(w/v)ショ糖、0.03%(w/v)ポリソルベート20、pH6.2;10mMリン酸ナトリウム、40mM塩化ナトリウム、2%(w/v)プロリン、0.03%(w/v)ポリソルベート20、pH6.2;10mMリン酸ナトリウム、3%(w/v)プロリン、0.03%(w/v)ポリソルベート20、pH6.2;10mMリン酸ナトリウム、9%(w/v)トレハロース、0.03%(w/v)ポリソルベート20、pH6.2;10mMヒスチジン、3%(w/v)プロリン、0.03%(w/v)ポリソルベート20、pH6.2;10mMヒスチジン、9%(w/v)ショ糖、0.03%(w/v)ポリソルベート20、pH6.2;もしくは10mM酢酸、9%(w/v)ショ糖、0.03%(w/v)ポリソルベート20、pH5.2、のいずれか
を含む。
【0065】
投与様式
VEGFアンタゴニスト(またはVEGFアンタゴニストを含む医薬製剤)は、任意の周知の送達システムおよび/または投与方法によって患者に投与することができる。ある特定の実施形態では、VEGFアンタゴニストは、眼球、眼球内、硝子体内または結膜下注射によって患者に投与される。他の実施形態では、VEGFアンタゴニストは、患者に局所投与によって、例えば、VEGFアンタゴニストを含有する点眼剤または他の液体、ゲル、軟膏もしくは液を介して投与することができ、眼に直接適用できる。患者のまたは対象の眼への投与は、患者または対象の眼の組織にVEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプト)を送達するための任意の許容可能な方法(例えば、硝子体内注射)を指す。本発明の一実施形態では、対象のまたは患者の眼への投与は、NPDRなどの血管形成眼障害(例えば、本明細書で考察のとおり)を罹患している眼にVEGFアンタゴニストを送達すること、および場合により、苦しめられていなくてももう一方の眼に送達することを指す。本発明の一実施形態では、投与は30ゲージ、0.5インチ注射針を備えるシリンジを使用する硝子体内注射である。例えば、本発明の一実施形態では、約50μlがVEGFアンタゴニスト約2mg(例えば、アフリベルセプト;例えば、アフリベルセプトを含む医薬製剤中、例えば10mMリン酸ナトリウム、40mM塩化ナトリウム、0.03%ポリソルベート20および5%ショ糖pH6.2中の約40mg/mLアフリベルセプト)の送達のために硝子体内注射される。本発明の一実施形態では、コンベルセプト、クエン酸、ショ糖、アルギニンおよびポリソルベート20を含む医薬製剤中のコンベルセプト0.5または2.0mgは、眼に注射される。
【0066】
他の可能な投与の経路として、例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外および経口が挙げられる。そのような投与の経路が使用される場合、送達は、眼にではなく、皮膚、筋肉組織、腹膜、静脈、皮下組織、鼻腔、硬膜または口腔などの別の組織にである。
【0067】
投与されるVEGFアンタゴニストの量
処置レジメンの経過にわたって患者の眼に投与されるVEGFアンタゴニストの各用量(例えばアフリベルセプト例えば0.5mgまたは2mg)は、同じまたは実質的に同じ量のVEGFアンタゴニストを含有できる。代替的に、個々の用量に含有されるVEGFアンタゴニストの量は、処置レジメンの経過にわたって変動する場合がある。例えばある特定の実施形態では、第1の量のVEGFアンタゴニストは、初回用量において投与され、第2の量のVEGFアンタゴニストは二次用量において投与され、第3の量のVEGFアンタゴニストは三次用量において投与される。本発明は、個々の用量に含有されるVEGFアンタゴニストの量が経時的に増加する(例えば、続く各用量が最後のものより多いVEGFアンタゴニストを含有する)、経時的に減少する(例えば、続く各用量が最後のものより少ないVEGFアンタゴニストを含有する)、最初に増加し次に減少する、最初に減少し次に増加する、または投与レジメンの経過を通じて同じままである投薬スキームを検討する。
【0068】
各用量において患者の眼に投与されるVEGFアンタゴニストの量(例えばアフリベルセプトまたはコンベルセプトの例えば0.5mgまたは2mg)は、大部分の場合において治療有効量である。本明細書において使用される、句「治療有効量」は、血管形成眼障害の1つまたはそれ以上の症状または兆候において検出可能な改善をもたらすVEGFアンタゴニストの用量または、血管形成眼障害の進行を阻害、予防、減速または遅らせるVEGFアンタゴニストの用量を意味する。抗VEGF抗体またはVEGFR1R2-FcΔC1(a)などのVEGF受容体ベースのキメラ分子の場合では、治療有効量は抗体または受容体ベースのキメラ分子約0.05mgから約5mg、例えば、約0.05mg、約0.1mg、約0.15mg、約0.2mg、約0.25mg、約0.3mg、約0.35mg、約0.4mg、約0.45mg、約0.5mg、約0.55mg、約0.6mg、約0.65mg、約0.7mg、約0.75mg、約0.8mg、約0.85mg、約0.9mg、約1.0mg、約1.05mg、約1.1mg、約1.15mg、約1.2mg、約1.25mg、約1.3mg、約1.35mg、約1.4mg、約1.45mg、約1.5mg、約1.55mg、約1.6mg、約1.65mg、約1.7mg、約1.75mg、約1.8mg、約1.85mg、約1.9mg、約2.0mg、約2.05mg、約2.1mg、約2.15mg、約2.2mg、約2.25mg、約2.3mg、約2.35mg、約2.4mg、約2.45mg、約2.5mg、約2.55mg、約2.6mg、約2.65mg、約2.7mg、約2.75mg、約2.8mg、約2.85mg、約2.9mg、約3.0mg、約3.5mg、約4.0mg、約4.5mgまたは約5.0mgであり得る。
【0069】
個々の用量に含有されるVEGFアンタゴニストの量は、患者体重1キログラムあたりの抗体のミリグラム数(すなわち、mg/kg)で表される。例えばVEGFアンタゴニストは、患者体重の約0.0001から約10mg/kgの用量で患者に投与される。
【0070】
処置集団および効能
本発明の方法は、血管形成眼障害を有すると診断された、またはそれに苦しめられるリスクがある患者における血管形成眼障害を処置するために有用である。全般的に本発明の方法は、処置レジメン開始の(「0週目」に投与された初回用量から)104週間以内に、例えば16週目の終わりまで、24週目の終わりまで、32週目の終わりまで、40週目の終わりまで、48週目の終わりまで、52週目の終わりまで、56週目の終わりまでなどで効能を実証する。
【0071】
本発明の一実施形態では、DR、PDR、NPDR、AMD、CRVOおよびDMEなどの血管形成眼障害を処置するための方法の文脈では、「効能」は処置の開始から患者が:
・ 早期処置糖尿病網膜症研究(ETDRS)視力チャートでの15(例えば、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2もしくは1)文字以下の喪失;
・ ETDRSチャートでの1つまたはそれ以上(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11以上)の文字の上昇;
・ DRSSスコアでの維持もしくは改善、例えばDRSSにおける2もしくは3ステップまでの低減;
・ 視力を脅かす合併症(VTC)および/もしくは失明および/もしくは中央部を含む糖尿病黄斑浮腫の発症の低減もしくは予防;ならびに/または
・ 中心網膜厚の低減もしくは維持;
を示し、
例えば、そのような目標の1つまたはそれ以上が処置開始の約24または52週間以内に達成される
ことを意味する。
【0072】
パッケージ
本発明の一態様は:
薬物容器;および
患者の眼に、
VEGF受容体ベースのキメラ分子であるVEGFアンタゴニスト約2mgの
(i)3回の月用量、それに続く16週間ごとの1回またはそれ以上の二次用量であって、最初の二次用量は3回目の月用量の8週間後(16週目)に開始する、用量、または
(ii)3または5回の月用量、それに続く8週間ごとの1回またはそれ以上の二次用量;
の薬物を投与することによる薬物の使用を示す、処置を必要とする患者において糖尿病網膜症を処置するまたは予防するために薬物を使用することについての説明書
を含むパッケージである。
【0073】
本発明の別の態様は、
VEGFアンタゴニストは、
(i)(1)配列番号2のアミノ酸27から129を含むVEGFR1構成要素;(2)配列番号2のアミノ酸130~231を含むVEGFR2構成要素;および(3)配列番号2のアミノ酸232~457を含む多量体化構成要素を含む;
(ii)(1)第1のVEGF受容体のイムノグロブリン様(Ig)ドメイン2および(2)第2のVEGF受容体のIgドメイン3、および(3)多量体化構成要素を含む;
(iii)アフリベルセプトである;または
(iv)コンベルセプトである、
パッケージである。
【0074】
本発明の別の態様は、説明書は薬物が硝子体内注射によって投与されることを示すパッケージである。
【0075】
本発明の別の態様は、説明書は薬物が3または5回の月用量、それに続く8週間ごとの1回またはそれ以上の用量で投与されることを示すパッケージである。
【0076】
本発明の別の態様は、説明書は薬物が3回の月用量、それに続く16週間ごとの1回またはそれ以上の二次用量で投与され、最初の二次用量は3回目の月用量の8週間後(16週目)に開始することを示すパッケージである。
【0077】
本発明の別の態様は、説明書は薬物が8週間ごとに1用量投与されることを示すパッケージである。
【0078】
本発明の態様は:
薬物容器;および
患者の眼に、
VEGF受容体ベースのキメラ分子であるVEGFアンタゴニスト約2mgの
(i)3回の月用量、それに続く16週間ごとの1回またはそれ以上の二次用量であって、最初の二次用量は3回目の月用量の8週間後(16週目)に開始する、用量、または
(ii)3または5回の月用量、それに続く8週間ごとの1回またはそれ以上の二次用量;
の薬物を投与することによる薬物の使用を示す、処置を必要とする患者において増殖性糖尿病網膜症を処置するまたは予防するために薬物を使用することについての説明書
を含むパッケージである。
【0079】
本発明の別の態様は、VEGFアンタゴニストは、
(i)(1)配列番号2のアミノ酸27から129を含むVEGFR1構成要素;(2)配列番号2のアミノ酸130~231を含むVEGFR2構成要素;および(3)配列番号2のアミノ酸232~457を含む多量体化構成要素を含む;
(ii)(1)第1のVEGF受容体のイムノグロブリン様(Ig)ドメイン2および(2)第2のVEGF受容体のIgドメイン3、および(3)多量体化構成要素を含む;
(iii)アフリベルセプトである;または
(iv)コンベルセプトである、
パッケージである。
【0080】
実施例
続く実施例は、本発明の方法および組成物をどのように作り、使用するかの完全な開示および記載を当業者に提供するために提示され、本発明者らが本発明者らの発明とみなすものの範囲を限定することを意図しない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して精度を保証するための努力はなされたが、いくらかの実験誤差および偏差は説明されるべきである。他に示されない限り、割合は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧であるまたは大気圧付近である。
【0081】
下に記載のすべての実施例において使用される例示的VEGFアンタゴニストは(他に示さない限り)、2個の機能性VEGF結合単位を有する二量体分子である。各機能性結合単位は、VEGFR2由来のIgドメイン3に融合されたVEGFR1由来のIgドメイン2から構成され、次にヒトIgG1 Fcドメインのヒンジ領域に融合される(VEGFR1R2-FcΔC1(a);配列番号1によってコードされている)。このVEGFアンタゴニストは、以下の本実施例において「VEGFT」と称される。続く実施例の目的のために、「毎月」投薬は、4週間ごとに1回の投薬と等価である。
【実施例1】
【0082】
血管新生AMDを有する対象での硝子体内投与されたVEGF受容体ベースのキメラ分子(VEGFT)の第I相臨床試験
本第I相試験では、血管新生AMDを有する対象21名は、VEGFTの単一硝子体内(IVT)用量を受けた。対象3名の5つの群は、VEGFT 0.05、0.15、0.5、2または4mgのいずれかをそれぞれ受け、対象6名の6番目の群は1mgを受けた。試験薬に関して重篤な有害事象はなく、同定可能な眼球内炎は報告されなかった。予備的な結果は、VEGFTの注射に続いて、6週間を通じて維持された中心窩厚(foveal thickness)および黄斑体積(macular volume)における急な減少が観察されたことを示した。すべての投与群にわたって43日目に、光干渉断層撮影(OCT)での過剰な網膜厚の平均[過剰な網膜厚=(網膜厚-179μ)]は、急速黄斑スキャン(Fast Macular Scan)による評価で119μから27μに、単回後極スキャン(single Posterior Pole scan)を使用して194μから60μに低減した。最高矯正視力(BCVA)における平均増加は、4.75文字であり、BCVAは、95%の対象において安定していたまたは改善した。2つの高用量群(2および4mg)では、対象6名の内3名は、≧3ラインの改善を実証してBCVAにおける平均増加は13.5文字であった。
【実施例2】
【0083】
血管新生AMDを有する対象に硝子体内投与されたVEGF受容体ベースのキメラ分子(VEGFT)の反復用量の第II相臨床試験
本研究は、4週間および/または12週間投薬間隔で検査したVEGFTの3つの用量(0.5、2および4mg)の二重盲検無作為化研究であった。この研究では、以下のとおり5つの処置アームがあった:1)4週間ごとに0.5mg、2)12週間ごとに0.5mg、3)4週間ごとに2mg、4)12週間ごとに2mgおよび5)12週間ごとに4mg。対象に最初の12週間は固定間隔で投薬し、その後9ヵ月間について4週間ごとに評価し、その間、追加用量は予め指定した基準に基づいて投与した。次にすべての対象をVEGFTの最後の用量の後一年間追跡した。予め計画した中間分析からの予備データは、VEGFTがベースラインと比較した12週間後の網膜厚における統計的に有意な低減の主要エンドポイントに合致したことを示した(すべての群を合わせて、135μの減少、p<0.0001)。視力におけるベースラインからの平均変化、研究の重要な二次エンドポイントも、統計的に有意な改善(すべての群を合わせて、5.9文字の増加、p<0.0001)を実証した。さらに、単回用量だけを受けた用量群の患者は、12週間で平均で過剰な網膜厚における減少(p<0.0001)および視力における増加(p=0.012)を実証した。薬物に関連する重篤な有害事象はなく、VEGFアンタゴニストを用いた処置は、全般に十分に忍容された。最も頻度の高い有害事象は、硝子体内注射に典型的に関連するものであった。
【実施例3】
【0084】
血管新生AMDを有する対象に全身投与されたVEGF受容体ベースのキメラ分子(VEGFT)の第I相臨床試験
本研究は、血管新生AMDを有する対象におけるIV輸注によるVEGFTのプラセボ対照、逐次群(sequential-group)、用量漸増安全性、忍容性および生体効果試験であった。AMDに関連する中心窩下脈絡膜血管新生(CNV)についての適格性基準に合致した対象8名の群は、0.3、1または3mg/kgの用量レベルで8週間の期間にわたるVEGFTまたはプラセボの4回のIV輸注を受けるように割り当てた。
【0085】
VEGFTに起因した大部分の有害事象は、重篤度において軽度から中程度であったが、3mg/kgを用いて処置した対象5名の内2名は、用量規制毒性(DLT)を経験した(1名はグレード4の高血圧、1名はグレード2タンパク尿);したがって、3mg/kg用量群のすべての対象を試験に入れなかった。過剰な網膜厚における平均パーセント変化は:15日目にプラセボ、0.3、1および3mg/kg用量群について-12%、-10%、-66%および-60%(ANOVA p<0.02)、ならびに71日目にプラセボ、0.3および1mg/kg用量群について-5.6%、+47.1%および-63.3%(ANOVA p<0.02)であった。VEGFTを用いて処置した対象におけるBCVAにおいて数値的な改善があった。このような小さな研究において予想されるとおり、結果は統計的に有意でなかった。
【実施例4】
【0086】
血管新生加齢性黄斑変性症を有する対象での硝子体内VEGFTの反復用量の効能、安全性および忍容性の第III相臨床試験
A.目的、仮説およびエンドポイント
二並行第III相臨床試験を加齢性黄斑変性症の血管新生型を有する患者を処置するためのVEGFTの使用を調査するために実行した(試験1および試験2)。これらの研究の主な目的は、血管新生AMDのすべてのサブタイプの対象において中程度視力喪失を予防することにおけるIVT投与されたVEGFTの効能をラニビズマブ(Lucentis(登録商標)、Genentech、Inc.)と比較して、非劣性パラダイムにおいて評価することであった。
【0087】
第2の目的は、(a)血管新生AMDのすべてのサブタイプの対象での2年間までの期間についてのVEGFTの反復IVT投与の安全性および忍容性を評価すること;および(b)血管新生AMDのすべてのサブタイプの対象での視覚に関連する生活の質(QOL)へのVEGFTの反復IVT投与の効果を評価すること、であった。
【0088】
これらの研究の主要な仮説は、安定したまたは改善したBCVA(<15文字喪失)を有する、VEGFTを用いて処置した対象の割合が、安定したまたは改善したBCVAを有するラニビズマブを用いて処置された割合と同様であり、それにより非劣性を実証することであった。
【0089】
これらの研究の主要エンドポイントは、ベースラインと比較して52週間でのETDRSチャートでの15文字以上の視力喪失を予防することであった。二次エンドポイントは、以下のとおりであった:(a)ETDRSチャートでの文字スコアにおけるベースラインから52週目での変化;(b)ベースラインから52週目でのETDRSチャートでの15文字以上の上昇;(c)ベースラインから52週目での合計NEI VFQ-25スコアにおける変化;および(d)ベースラインから52週目でのCNV面積における変化。
【0090】
B.試験設計
各研究のために、対象を4つの投薬レジメン:(1)4週間ごとにVEGFT 2mgを投与(2Q4);(2)4週間ごとにVEGFT 0.5mgを投与(0.5Q4);(3)4週間ごとに8週目まで、次に8週間ごとにVEGFT 2mgを投与(試験薬を投与しない中間の4週目来院でのシャム注射を含む(2Q8);および(4)4週間ごとにラニビズマブ0.5mgを投与(RQ4)、の1つに1:1:1:1の比で無作為に割り当てた。(2Q8)に割り当てた対象は、研究の最初の52週間の間に、4週間ごとに8週目まで2mg注射、次に(試験薬が投与されない)中間の4週間来院でのシャム注射を受けた(シャム注射は52週目に与えられなかった)。
【0091】
各対象についての研究継続期間は、96週間に加えて募集期間となるように計画された。最初の52週間(1年間)について、対象は対象眼に4週間ごとにIVTまたはシャム注射を受けた(シャム注射は52週目に与えなかった)。研究2年目の間は、対象は4週間ごとに評価され、具体的な投薬基準によって決定された間隔だが少なくとも12週間ごとに試験薬のIVT注射を受ける(研究2年目の間、シャム注射は与えられない)。この期間中は、注射は、4週間ごと程度だが12週間ごとより少ない頻度ではなく以下の基準に従って与える:(i)光干渉断層撮影(OCT)によって測定された過去の最低値と比較して≧100μmの中心網膜厚における増加;または(ii)OCTによって示される液の再発を伴う過去の最良の文字スコアからの少なくとも5 ETDRS文字の喪失;または(iii)OCTによって示される新たなもしくは持続的な液体;または(iv)蛍光眼底造影(FA)での典型的な血管新生の新たな発生、または新たなもしくは持続性の漏出;または(v)新たな黄斑出血;または(vi)以前の注射から12週間の経過。本プトロコールに従って、対象は、少なくとも12週間ごとに注射を受けなければならない。
【0092】
対象を、4週間間隔で安全性および、4メートルETDRSプロトコールを使用する最高矯正視力(BCVA)について評価した。生活の質(QOL)は、NEI VFQ-25質問票を使用して評価した。OCTおよびFA試験は定期的に実施した。
【0093】
処置アームあたり対象300名を目標登録として、対象およそ1200名を登録した。
【0094】
本研究に適格性であるために、対象はAMDに続発する中心窩下脈絡膜血管新生(CNV)を有する必要があった。「中心窩下」CNVは、FAによって記録された中心窩下血管新生の存在、または、血管造影的に中心窩近傍の位置にあるが、中心窩に影響を与える病変の存在として定義される。対象適格性は、無作為化の前に血管造影的基準に基づいて確認した。
【0095】
一方の眼だけを対象眼として指定した。両眼で適格性基準に合致している対象については、より悪いVAを有する眼を対象眼として選択した。両眼が等しいVAを有する場合、より透明な水晶体および透光体(ocular media)を有し、中心窩下の瘢痕または地図状萎縮の量が少ない眼を選択した。対象眼を選択するための客観的根拠がない場合、眼球優位性、他の眼球病態および対象優先度などの因子を、選択を行うことにおいて考慮した。
【0096】
両試験についての組み入れ基準は、以下の通りであった:(i)署名されたインフォームドコンセント;(ii)年齢少なくとも50歳;(iii)対象眼においてFAによって証明された中心窩に影響を与える中心窩近傍病変を含む、AMDに続発する活動性の主な中心窩下CNV病変;(iv)総病変サイズの少なくとも50%のCNV;(v)対象眼における早期処置糖尿病網膜症研究(ETDRS)最高矯正視力:20/40から20/320(73から25の文字スコア);(vi)すべての来院に自発的で、関与し、再来でき、すべての研究関連手順を完了する;および(vii)インフォームドコンセントフォームを読み、理解し、自発的に署名する(または、視力障害のために読むことができない場合は、インフォームドコンセントを管理する者または家族によって逐語的に読んでもらう)ことができる。
【0097】
両試験についての除外基準は、以下のとおりであった:1.栄養補助食品またはビタミンを除く、血管新生AMDのための過去の眼球(対象眼における)もしくは全身の処置または手術。2.栄養補助食品またはビタミンを除く、対象眼における血管新生AMDを処置するための別の治験剤を用いた過去または同時の治療。3.以下の抗VEGF薬剤を用いた過去の処置:(a)対象眼における抗VEGF治療を用いた過去の処置は許容されなかった;(b)治験剤(FDA認可されていない、例えばベバシズマブ)を用いた僚眼(fellow eye)における抗VEGF治療を用いた過去の処置は、本試験での最初の用量の3ヵ月前までは許容され、そのような処置は試験中は許容されなかった。僚眼における認可された抗VEGF治療を用いた過去の処置は許容された;(c)過去の全身抗VEGF治療、臨床試験におけるまたはFDA/Health Canada認可、は、最初の用量の3ヵ月前までだけ許容され、試験中は許容されなかった。4.対象眼においてにFAよって評価された全病変サイズ>12乳頭面積(disc areas)(30.5mm2、血液、瘢痕および血管新生を含む)。5.対象眼において、全病変面積の50%以上である、または血液が中心窩下にある場合、サイズで乳頭面積の1倍以上であるのいずれかの網膜下出血(血液が中心窩下にある場合、中心窩は可視のCNVによって270度囲まれていなければならない)。6.対象眼において全病変の>50%を構成する瘢痕または線維化。7.中心窩の中央を含む瘢痕、線維化または萎縮。8.対象眼における黄斑を含む網膜色素上皮の断裂または裂け目の存在。9.対象眼における来院1回目の前4週間以内の硝子体出血の既往歴。10.対象眼における、病的近視(-8ディオプトリまたはさらに負の等価球面度数または25mm以上の眼軸長)、眼球ヒストプラスマ症候群、網膜色素線条、脈絡膜破裂または多発性脈絡膜炎を含むCNVの他の原因の存在。11.いずれかの眼における、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫またはAMD以外の網膜を冒す他の血管疾患の既往歴または臨床的証拠。12.対象眼における過去の硝子体切除術。13.対象眼における網膜剥離または網膜剥離のための処置もしくは手術の既往歴。14.対象眼におけるステージ2以上の黄斑孔の既往歴。15.対象眼における1日目の3ヵ月前以内の眼球内または眼球周囲手術、注射を妨害する可能性が低い限り1日目の1ヵ月前以内に行われていない眼瞼手術を除く。16.対象眼における過去の線維柱帯切除術または他の濾過手術。17.対象眼における管理されていない緑内障(抗緑内障薬物療法を用いた処置にも関わらず25mmHg以上の眼圧として定義される)。18.いずれかの眼における活動性眼球内炎。19.いずれかの眼における活動性眼球または眼球周囲感染。20.いずれかの眼におけるスクリーニング前2週間以内の眼球または眼球周囲感染。21.いずれかの眼におけるぶどう膜炎の既往歴。22.いずれかの眼における活動性強膜炎または上強膜炎。23.いずれかの眼における強膜軟化症の存在または既往歴。24.対象眼における無後嚢(イットリウム・アルミニウム・ガーネット[YAG]後嚢切開術の結果として生じたもの以外)を伴う無水晶体症または偽水晶体。25.対象眼の領域における過去の放射線治療。26.対象眼における角膜移植または角膜ジストロフィーの既往歴。27.視力、安全性の評価または眼底撮影を妨害する可能性がある対象眼における白内障を含む、中間体(media)の顕著な混濁。28.調査者の意見で、96週間検査期間中に医薬によるまたは手術での介入のいずれかを必要とする可能性がある対象眼における同時発生的眼球内状態(例えば白内障)。29.調査者の意見で、眼球内注射の標準的手順から予測されるものを超えて対象へのリスクを増加させる可能性がある、または他に、注射手順または効能もしくは安全性の評価を妨害する可能性がある、対象眼における同時発生的眼球状態。30.治験薬の使用が禁忌となるまたは試験の結果の解釈に影響するもしくは対象に処置合併症の高いリスクを与える可能性がある、疾患または状態の合理的な疑いを与える他の疾患、代謝機能障害、身体的診査所見または臨床検査所見の既往歴。31.1日目の12週間前以内のすべての臨床試験への対象としての参加。32.1日目の過去3ヵ月間以内における治験剤を用いた全身性または眼球の処置。33.1日目の過去6ヵ月間以内における全身性または眼球内のいずれかの長時間作用型ステロイドの使用。34.ポビドンヨウ素へのアレルギーの既往歴。35.血管造影の注射のためのフルオレセインナトリウムへの既知の重篤なアレルギー。36.ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))についてFDA認可ラベルに表示されたいずれかの禁忌の存在。37.試験期間を通じて適切な避妊を行う意志がない、妊娠している、授乳中または妊娠可能な女性。適切な避妊手段として、経口避妊薬(スクリーニング前の2回以上の月経周期についての安定的使用);IUD;Depo-Provera(登録商標);Norplant(登録商標)システムインプラント;両側卵管結紮;精管切除術;コンドームまたはペッサリーに加えて避妊用スポンジ、フォームまたはゼリーのいずれか、が挙げられる。
【0098】
対象は、完了/早期中止来院評価を完了するまでは、対象眼における彼らのAMDの処置のために、プロトコールで指定されたVEGFTまたはラニビズマブを用いた割り当てられた試験処置以外のいかなる標準的または治験剤も受けることを許容されなかった。これは、対象および/または僚眼を処置する意図で局所的に投与される薬物療法(例えば、IVT、局所、強膜近傍または眼窩周囲経路)および全身に投与されるものを含む。
【0099】
研究手順を以下に要約する:
【0100】
最高矯正視力:対象眼および僚眼の視覚機能をETDRSプロトコール(早期処置糖尿病網膜症研究群)を4メートルで使用して評価した。視力試験者は、BCVAの一貫した測定を保証すると認証されていた。VA試験者は、処置割り当てをマスキングされたままであることを求められた。
【0101】
光干渉断層撮影:網膜および病変の特徴を対象眼でのOCTを使用して評価した。スクリーニング来院(来院1)で両眼について画像を記録し、送信した。すべてのOCT画像は、Zeiss Stratus OCT(商標)をソフトウェアバージョン3以降と共に使用して記録した。OCT画像を、OCTが必要である来院時にマスキングされた読み取り者によって画像が読み取られる独立のリーディングセンターに送った。すべてのOCTは、ソースドキュメンテーションの一部として施設に電子的に記録保存した。OCT画像のサブセットを読み取った。OCT技術者は、画像収集における一貫性および品質を保証するようにリーディングセンターによって認証されることを求められた。施設のOCT技術者が処置割り当てについてマスキングされたままであることを確実にするために十分な努力が行われた。
【0102】
眼底撮影および蛍光眼底造影(FA):対象眼の網膜脈管構造の解剖学的状況を眼底検査、眼底撮影およびFAによって評価した。スクリーニング来院(来院1)で両眼について眼底検査、眼底撮影およびFAを記録し、送信した。眼底および血管造影画像を、マスキングされた読み取り者によって画像が読み取られる独立のリーディングセンターに送った。リーディングセンターは、無作為化の前に血管造影的基準に基づいて対象の適格性を確認した。すべてのFAおよび眼底写真をソースドキュメンテーションの一部として施設に記録保存した。写真撮影者は、画像収集における一貫性および品質を保証するようにリーディングセンターによって認証されることを求められた。施設のすべての写真撮影者が処置割り当てについてマスキングされたままであることを確実にするために十分な努力が行われた。
【0103】
視覚関連の生活の質:視覚関連のQOLをインタビュアー管理フォーマットのthe National Eye Institute 25項目視覚機能質問票(NEI VFQ-25)を使用して評価した。NEI VFQ-25は、契約したコールセンターで認証された職員によって管理された。スクリーニング来院時に、施設は対象を補助し、コールセンターへの最初の電話を開始し、すべての対象の連絡先情報を回収し、無作為化およびIVT注射の前に電話で最初のNEI VFQ-25を完了した。すべての続く来院について、コールセンターは対象に電話をかけ、IVT注射の前に質問票を完了させた。
【0104】
眼圧:対象眼の眼圧(IOP)は、圧平眼圧測定またはTonopenを使用して測定した。研究を通じて同じIOP測定法を各対象において使用した。
【0105】
C.結果の概要(52週間のデータ)
主要エンドポイント(上に定義された中程度または重度の視力喪失の予防)は、この研究では3つすべてのVEGFT群(2Q4、0.5Q4および2Q8)について合致した。両方の研究からの結果は、表1に要約されている。
【0106】
【0107】
研究1では、VEGFT 2mgを毎月(2Q4)受けた患者は、ラニビズマブ0.5mg毎月(RQ4)と比較して52週目にベースラインに対して視力における統計的に有意に大きな平均改善を達成し(二次エンドポイント);VEGFT 2mg毎月を受けた患者は、月ごとに投薬されたラニビズマブ0.5mgでの平均8.1文字上昇と比較して、平均で10.9文字上昇した(p<0.01)。試験1でのVEGFTのすべての他の用量群および試験2でのすべての用量群は、この二次エンドポイントにおいてラニビズマブと統計的に異ならなかった。
【0108】
全般に好ましい安全性プロファイルがVEGFTおよびラニビズマブの両方について観察された。眼球の治療下で発現した有害事象の発生は、注射手順、基礎疾患および/または老化に関連する最も頻度の高い事象を含んで両方の試験において4つの処置群すべてにわたって均衡していた。最も頻度の高い眼球の有害事象は、結膜出血、黄斑変性症、眼痛、網膜出血および硝子体浮遊物であった。最も頻度の高い重篤な眼球以外の有害事象は、ウェットAMDについての硝子体内処置を受けた高齢者集団において報告される典型的なものであった;報告された最も頻度の高い事象は、転倒、肺炎、心筋梗塞、心房細動、乳がんおよび急性冠症候群であった。試験アーム内に注目すべき差異はなかった。
【実施例5】
【0109】
糖尿病黄斑浮腫(DME)を有する対象でのVEGFTの第II相臨床試験
この研究では、黄斑中心の病変(involvement)を含む臨床的に顕著なDMEを有する患者221名を無作為化し、患者219名を5群にわたる均衡のとれた分布を用いて処置した。対照群はベースラインで黄斑レーザー療法を受けた、患者は反復レーザー処置に適格であったが16週間間隔を超えない頻度であった。残りの4群は、以下のとおり硝子体内注射によってVEGFTを受けた:2つの群は、VEGFT 0.5または2mgを4週間ごとに1回、12ヵ月投薬期間を通じて受けた(それぞれ0.5Q4および2Q4)。2つの群は、VEGFT 2mgの3回の初回用量を4週間ごとに1回(すなわち、ベースラインならびに4および8週目)に受け、続いて52週目に至るまで8週間ごとに1回投薬(2Q8)もしくは非常に厳密な反復投薬基準を用いて必要なときに(PRN)投薬を受けた。ベースラインに対する視力における平均上昇を表2に示す:
【0110】
【0111】
この研究では、24週目にVEGFT投与を用いて達成された視力上昇は、1ヵ月おきに2mg投薬も含んですべてのVEGFT試験群において52週目の試験完了まで維持されたまたは数値的に改善された。
【0112】
前述の実施例において実証したとおり、血管形成眼障害(例えば、AMDおよびDME)を罹患している患者への8週間ごとに1回の頻度でのVEGFTの投与に続く、単回初回用量および4週間離して投与された2回の二次用量は、中程度もしくは重度視力喪失の顕著な予防または視力における改善をもたらした。
【実施例6】
【0113】
CRVOに続発する黄斑浮腫を有する無処置患者での無作為化多施設二重盲検臨床試験
この無作為化二重盲検第3相試験では、患者は硝子体内VEGFT 2mg(患者114名)またはシャム注射(患者73名)のいずれかの6回の毎月注射を受けた。24週目から52週目にすべての患者は、再処置基準に従って必要なときに(PRN)VEGFT 2mgを受けた。したがって「シャム処置患者」は、0週目から20週目に至るまで4週間ごとに1回のシャム注射に続いて、24週目から52週目に至るまで必要に応じて硝子体内VEGFTを受けた患者を意味する。「VEGFT処置患者」は、0週目から20週目に至るまで4週間ごとに1回のVEGFT硝子体内注射に続いて、24週目から52週目に至るまで必要に応じて硝子体内VEGFTを受けた患者を意味する。主要エンドポイントは、ベースラインから24週目に≧15 ETDRS文字上昇した患者の割合であった。24および52週目での二次視覚的、解剖学的および生活の質NEI VFQ-25転帰も評価した。
【0114】
24週目に、VEGFT処置患者の56.1%に対してシャム処置患者の12.3%がベースラインから≧15 ETDRS文字上昇した(P<0.0001)。同様に、52週目に、VEGFT処置患者の55.3%に対してシャム処置患者の30.1%が≧15文字上昇した(P<0.01)。52週目に、VEGFT処置患者は、平均16.2文字に対してシャム処置患者は3.8文字上昇した(P<0.001)。平均注射回数は、VEGFT処置患者について2.7回に対してシャム処置患者について3.9回であった。中心網膜厚における平均変化は、VEGFT処置患者について-413.0μmに対してシャム処置患者について-381.8μmであった。24週目に眼球の血管新生を有する患者の割合は、それぞれVEGFT処置患者について0%およびシャム処置患者について6.8%であり;VEGFT PRNを受けた後の52週目では割合は、VEGFT処置およびシャム処置について0%および6.8%であった。24週目では、VFQ-25合計スコアにおけるベースラインからの平均変化は、VEGFT-処置およびシャム処置群について7.2対0.7であった;52週目では、スコアはVEGFT-処置およびシャム処置群について7.5対5.1であった。
【0115】
本実施例は、硝子体内VEGFT注射2mgを用いる毎月の投薬が24週目に視力において統計的に有意な改善をもたらし、これが、シャムPRN処置と比較してPRN投薬を用いて52週目に至るまで維持されたことを確認している。VEGFTは全般的に十分に忍容され、全般に好ましい安全プロファイルを有した。
【実施例7】
【0116】
投薬レジメン
本発明の範囲内の投薬レジメンの具体的な非限定的例は以下のとおりである:
【0117】
4週間ごと(毎月)に1回の硝子体内注射によって投与されるVEGFT 2mg(0.05mL)
【0118】
最初の8週間について4週間ごとに1回の硝子体内注射によって投与されるVEGFT 2mg(0.5mL)に続く、8週間ごとに1回の硝子体内注射を介する2mg(0.05mL)。
【0119】
最初の8週間について4週間ごとに1回の硝子体内注射によって投与されるVEGFT 2mg(0.5mL)に続く、(医師または他の認定された医療従事者によって評価された)視覚および/または解剖学的転帰に基づいて少ない頻度ベースでの硝子体内注射を介する2mg(0.05mL)。
【0120】
最初の8週間について4週間ごとに1回の硝子体内注射によって投与されるVEGFT 2mg(0.5mL)に続く、(医師または他の認定された医療従事者によって評価された)視覚および/または解剖学的転帰に基づいて必要なときに(PRN)投与される硝子体内注射を介する2mg(0.05mL)。
【0121】
最初の12週間について4週間ごとに1回の硝子体内注射によって投与されるVEGFT 2mg(0.5mL)に続く、8週間ごとに1回の硝子体内注射を介する2mg(0.05mL)。
【0122】
最初の12週間について4週間ごとに1回の硝子体内注射によって投与されるVEGFT 2mg(0.5mL)に続く、(医師または他の認定された医療従事者によって評価された)視覚および/または解剖学的転帰に基づいて少ない頻度ベースでの硝子体内注射を介する2mg(0.05mL)。
【0123】
最初の12週間について4週間ごとに1回の硝子体内注射によって投与されるVEGFT 2mg(0.5mL)に続く、(医師または他の認定された医療従事者によって評価された)視覚および/または解剖学的転帰に基づいて必要なときに(PRN)投与される硝子体内注射を介する2mg(0.05mL)。
【0124】
最初の16週間について4週間ごとに1回の硝子体内注射によって投与されるVEGFT 2mg(0.5mL)に続く、8週間ごとに1回の硝子体内注射を介する2mg(0.05mL)。
【0125】
最初の16週間について4週間ごとに1回の硝子体内注射によって投与されるVEGFT 2mg(0.5mL)に続く、(医師または他の認定された医療従事者によって評価された)視覚および/または解剖学的転帰に基づいて少ない頻度ベースでの硝子体内注射を介する2mg(0.05mL)。
【0126】
最初の16週間について4週間ごとに1回の硝子体内注射によって投与されるVEGFT 2mg(0.5mL)に続く、(医師または他の認定された医療従事者によって評価された)視覚および/または解剖学的転帰に基づいて必要なときに(PRN)投与される硝子体内注射を介する2mg(0.05mL)。
【0127】
最初の20週間について4週間ごとに1回の硝子体内注射によって投与されるVEGFT 2mg(0.5mL)に続く、8週間ごとに1回の硝子体内注射を介する2mg(0.05mL)。
【0128】
最初の20週間について4週間ごとに1回の硝子体内注射によって投与されるVEGFT 2mg(0.5mL)に続く、(医師または他の認定された医療従事者によって評価された)視覚および/または解剖学的転帰に基づいて少ない頻度ベースでの硝子体内注射を介する2mg(0.05mL)。
【0129】
最初の20週間について4週間ごとに1回の硝子体内注射によって投与されるVEGFT 2mg(0.5mL)に続く、(医師または他の認定された医療従事者によって評価された)視覚および/または解剖学的転帰に基づいて必要なときに(PRN)投与される硝子体内注射を介する2mg(0.05mL)。
【0130】
最初の24週間について4週間ごとに1回の硝子体内注射によって投与されるVEGFT 2mg(0.5mL)に続く、8週間ごとに1回の硝子体内注射を介する2mg(0.05mL)。
【0131】
最初の24週間について4週間ごとに1回の硝子体内注射によって投与されるVEGFT 2mg(0.5mL)に続く、(医師または他の認定された医療従事者によって評価された)視覚および/または解剖学的転帰に基づいて少ない頻度ベースでの硝子体内注射を介する2mg(0.05mL)。
【0132】
最初の24週間について4週間ごとに1回の硝子体内注射によって投与されるVEGFT 2mg(0.5mL)に続く、(医師または他の認定された医療従事者によって評価された)視覚および/または解剖学的転帰に基づいて必要なときに(PRN)投与される硝子体内注射を介する2mg(0.05mL)。
【0133】
最初の28週間について4週間ごとに1回の硝子体内注射によって投与されるVEGFT 2mg(0.5mL)に続く、8週間ごとに1回の硝子体内注射を介する2mg(0.05mL)。
【0134】
最初の28週間について4週間ごとに1回の硝子体内注射によって投与されるVEGFT 2mg(0.5mL)に続く、(医師または他の認定された医療従事者によって評価された)視覚および/または解剖学的転帰に基づいて少ない頻度ベースでの硝子体内注射を介する2mg(0.05mL)。
【0135】
最初の28週間について4週間ごとに1回の硝子体内注射によって投与されるVEGFT 2mg(0.5mL)に続く、(医師または他の認定された医療従事者によって評価された)視覚および/または解剖学的転帰に基づいて必要なときに(PRN)投与される硝子体内注射を介する2mg(0.05mL)。
【0136】
単回初回用量として硝子体内注射によって投与されるVEGFT 2mg(0.05mL)に続く、(医師または他の認定された医療従事者によって評価された)視覚および/または解剖学的転帰に基づいて必要なときに(PRN)投与される追加用量。
【0137】
上に記載の投薬レジメンの変更は、当業者によって理解され、本発明の範囲内である。例えば患者に投与されるVEGFTの量および/または製剤の体積は、患者の特徴、疾患の重症度および医師または他の認定された医療従事者による他の診断評価に基づいて変更される場合がある。
【0138】
前述のいずれの投与レジメンも、例えば加齢性黄斑変性症(例えば、ウェットAMD、滲出性AMDなど)、網膜静脈閉塞症(RVO)、網膜中心静脈閉塞症(CRVO;例えば、CRVOに続く黄斑浮腫)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)、糖尿病黄斑浮腫(DME)、脈絡膜血管新生(CNV;例えば、近視性CNV)、虹彩血管新生、血管新生緑内障、緑内障での手術後線維症、増殖性硝子体網膜症(PVR)、視神経乳頭血管新生、角膜血管新生、網膜血管新生、硝子体血管新生、パンヌス、翼状片、血管性網膜症などの処置のために使用できる。
【実施例8】
【0139】
中等度から重度NPDR(PANORAMA)を有する患者における硝子体内IAIの効能および安全性の第3相二重盲検無作為化試験-24および52週目結果
これは、中等度から重度の非増殖性糖尿病網膜症(NPDR)の改善のためのIVT(硝子体内注射)アフリベルセプト(IAI)の効能および安全性の第3相二重盲検無作為化試験であった。これらのデータは、24週間および52週間後に達成された結果に関する。
【0140】
適格な患者を3つの処置群の1つに1:1:1の無作為化スキームで登録し、患者の糖尿病網膜症重症度スケール(DRSS)スコア(レベル47対レベル53)に基づいて層別化した(
図5および
図6を参照されたい)。1つの眼だけを対象眼として選択した。
【0141】
試験設計
試験の一次評価項目は、24週目では2Q8および2Q16群を合わせて、52週目では各群に分けて、DRSSでベースラインから≧2ステップ改善した患者の割合である。
【0142】
患者を効能(4メートル早期処置糖尿病網膜症研究[ETDRS]プロトコールを使用する最高矯正視力[BCVA]、スペクトラルドメイン光干渉断層撮影[SD OCT]および蛍光眼底造影[FA]/眼底撮影[FP])について、ならびに眼球および全身性の安全性(眼科検査、視野検査および臨床検査評価を含む)について100週目に至るまで評価する。
【0143】
二次評価項目も52週目に検査し、以下のとおりである:
(1)52週目に至るまでに糖尿病網膜症による視力を脅かす合併症(VTC)を発症した患者の割合。視力を脅かす合併症は、PDR(PDRによると考えられる硝子体出血または牽引性網膜剥離を有する患者を含む)およびASNVの複合転帰として定義される。ASNVは、虹彩の血管新生(少なくとも2累積クロックアワー)および/または虹彩角膜角の明確な血管新生として定義される。
(2)52週目に至るまでにCI DMEを発症した患者の割合。
(3)52週目に至るまでの視力を脅かす合併症を発症するまでの期間。
(4)52週目に至るまでのCI DME(中央部を含むDME)の発症までの期間。
(5)52週目に至るまでにPRP(汎網膜光凝固)を受けた患者の割合、エンドレーザーを用いた硝子体切除術を受けた患者を含む。
(6)52週目でのベースラインからのBCVAにおける変化についての曲線下面積(AUC)。
【0144】
試験予定表
-21から-1日目:スクリーニング来院(来院1)
1日目:ベースライン来院(来院2)
24週目:一次評価項目(2Q8および2Q16を合わせて)(来院7)
52週目:一次評価項目(2Q8および2Q16を別々に)ならびにすべての二次評価項目(来院11)
100週目:試験終了(来院18)
【0145】
除外基準:スクリーニング来院時または1日目のいずれかに以下の基準のいずれかに合致した患者は試験から除外した:
(1)対象眼における黄斑の中央を脅かすDMEの存在(中心窩中央から1,000ミクロン以内);
(2)臨床検査またはFA(蛍光眼底造影)での網膜血管新生の証拠;
(3)対象眼における過去の局所またはグリッドレーザー光凝固(中心窩中央の1,000ミクロン以内)または過去のPRP;
(4)対象眼における過去の全身性抗VEGF処置またはIVT抗VEGF処置;
(5)対象眼における過去の眼球内ステロイド;1日目より前の120日前以内の対象眼における眼球周囲ステロイド;
(6)対象眼における網膜硝子体手術の既往歴;
(7)対象眼における眼圧(IOP)≧25mM Hg;
(8)いずれかの眼における活動性感染性眼瞼炎、角膜炎、強膜炎または結膜炎の証拠;
(9)スクリーニング来院の3ヵ月前以内のいずれかの眼におけるすべての眼球内炎または感染;
(10)対象眼におけるスクリーニング評価で見られる現在のASNV、硝子体出血または牽引性網膜剥離;
(11)対象眼における眼底および光干渉断層撮影(OCT)画像を得るためには不十分な質の透光体;蛍光眼底造影を実施する能力を妨げるフルオレセインへのアレルギー;
(12)ヘモグロビンA1c(HbA1c)>12%、またはHbA1cが≦12%である場合に調査者の所見において糖尿病が非管理である;
(13)血圧の非管理(座位での収縮期>160mmHgまたは拡張期>95mmHgとして定義される);
(14)1日目の180日前以内の脳血管性発作または心筋梗塞の既往歴;
(15)腎不全、透析または腎臓の移植歴;
(16)授乳中またはスクリーニングもしくはベースライン来院時に血清hCG/尿妊娠検査陽性である女性;
(17)調査者の意見で、IVT注射の標準的手順から予測されるものを超えて患者へのリスクを増加させる可能性がある、または他に、注射手順をまたは効能もしくは安全性の評価を妨害する可能性がある、対象眼におけるすべての同時発生的眼球状態;
(18)治験薬の使用が禁忌となるまたは試験の結果の解釈に影響するもしくは患者に処置合併症の高いリスクを与える可能性がある、疾患または状態の合理的な疑いを与える他の疾患、代謝機能障害、身体的診査所見または臨床検査所見の既往歴;
(19)試験の1日目の12週間前以内の介入臨床試験への患者としての参加;
(20)初回用量の前/最初の処置の開始時、試験中および最終用量の後、少なくとも3ヵ月間について適切な避妊を行う意志がない性的に活性な男性*または妊娠可能な女性**。適切な避妊手段として、スクリーニング前の2回以上の月経周期についての経口避妊薬または他の処方医薬避妊薬の安定的使用;子宮内避妊具;両側卵管結紮;精管切除術;コンドームに加えて避妊用スポンジ、フォームもしくはゼリーまたはペッサリーに加えて避妊用スポンジ、フォームもしくはゼリー、が挙げられる。
*確認された精管切除術を有する男性については避妊は要求されない
**閉経後の女性は、妊娠の可能性を考慮しないようにするために少なくとも12ヵ月無月経でなければならない。妊娠検査および避妊は、確認された子宮摘出または卵管結紮を有する女性には要求されない。
(21)腫瘍処置のための全身性抗VEGF処置(すなわち、ベバシズマブ、ziv-アフリベルセプト)にある患者(患者が試験中に全身性抗VEGF処置を必要とした場合、患者は離脱する)。
【0146】
処置レジメン:3つの処置群は、1日目から48週目にスケジュールされた以下の投薬レジメンを有する:
【0147】
2Q8:アフリベルセプト2mg Q8 48週目まで(5回の初回月用量後)に続く、52週目以後のアフリベルセプト2mgを用いる柔軟な処置レジメン;
【0148】
2Q16:アフリベルセプト2mg Q16 96週目まで(3回の初回月用量および1回のQ8間隔後);
【0149】
シャム:シャム注射4週間ごと(Q4)に16週目までに続くシャム注射Q8 96週目まで。
【0150】
本明細書においてデータは、2Q16投薬群は「群1」を;2Q8投薬群は「群2」としておよびシャム群は「シャム」を指す。
【0151】
【0152】
24週間後に各用量群が受けた注射の回数を
図7に示し、52週間後の注射の回数を
図20に示す。
【0153】
マスキングを維持するために、シャム注射は、2Q8および2Q16群については患者が96週目に至るまでの活性注射を受けない処置来院時に、およびシャム群についてはベースラインから96週目に至るまでのすべての処置来院で実施される。マスキングは研究の終了まで維持される(100週目)。
【0154】
対象眼でのレスキュー処置:対象眼においてPDR、ASNVまたは中央部を含むDME(CI DME)を発症した患者は、マスキングされた医師によって適切と考えられた場合に処置される。これらの合併症のいずれについても、FP(眼底撮影)はレスキュー処置が行われる前に実施される。
【0155】
CI DMEを発症した患者は、IVTアフリベルセプトまたはレーザー光凝固を受け、患者の無作為化された処置はもはや受けない。レスキュー処置は、マスキングされた医師またはマスキングされていない医師によって行われる。
【0156】
PDRおよび/またはASNVを発症した患者は、必要に応じてPRPまたはエンドレーザーを用いた硝子体切除術を受けるが、患者の無作為化された処置スケジュールに残る。汎網膜光凝固または外科的介入は、マスキングされた医師またはマスキングされていない医師のいずれかによって行われる。加えて、マスキングされていない医師によって投与されなければならないアフリベルセプトの注射1回を与える。
【0157】
DME、ASNVまたはPDRのための処置が行われる場合、患者データは、主要な分析について処置の時点で打ち切られる。
【0158】
研究集団
患者402名を登録した。患者集団は、1または2型糖尿病を有し、中等度から重度のNPDRを有し(黄斑の中央を脅かすDMEを有さない)、PRPを少なくとも6ヵ月間安全に延期できる男性または女性を含んだ。
図5および
図6を参照されたい。患者の約75%は、47のDRSSを有し、約25%は53のDRSSを有した。
【0159】
両眼で適格性基準に合致している対象については、より重度のDRSSスコアを有する眼を対象眼として選択した。両眼が等しいスコアを有する場合、眼球優位性および患者優先度などの因子を、選択を行うことに考慮する。
【0160】
眼球手順(効能および安全性)
最高矯正視力(BCVA):対象眼および僚眼の視覚機能を、各試験来院時に4メートルでETDRSプロトコール(The Early Treatment Diabetic Retinopathy Study Group 1985)を使用して評価する。視力試験者はBCVAの一貫した測定を保証すると認証されている。VA試験者は、処置割り当てをマスキングされたままである。最高矯正視力は、すべての他の眼球手順が実施される前に行われる。
【0161】
眼圧(IOP):対象眼の眼圧をすべての来院時にGoldmann圧平眼圧測定またはTono pen(商標)を使用して測定する。研究を通じて各対象患者に同じ方法のIOP測定を使用した。眼圧をマスキングされた医師(または被指名者)によって投薬前(両眼)に、およびマスキングされていない医師(または被指名者)によって投薬およそ30分後(対象眼)に測定する。
【0162】
細隙灯検査:患者の前眼構造および眼球付属器を各試験来院時の投薬前に両側で細隙灯を使用してマスキングされた調査者によって検査する。
【0163】
隅角鏡検査:患者を虹彩角膜角の血管新生の発症について細隙灯生体顕微鏡と合わせて隅角鏡検査によって評価する。検査は、散瞳剤の適用前に対象眼だけにおいて、または明らかなルベオーシスが存在する場合に実施される。
【0164】
間接眼底検査:患者の後極および末梢網膜を間接眼底検査によってマスキングされた調査者によって各試験来院時の投薬前(両眼)に、およびマスキングされていない調査者によって投薬後(対象眼)に検査する。投薬後評価は、注射(活性薬またはシャム)直後に実施される。
【0165】
眼底撮影(FP)/蛍光眼底造影(FA):網膜脈管構造の解剖学的状況およびDRSSレベルをFAおよびFPによって評価する。
【0166】
スペクトラルドメイン光干渉断層撮影(SD-OCT):網膜の特徴をSD-OCTを使用して来院ごとに評価する。両眼について画像を記録し、送信する。画像を、マスキングされた読み取り者によって読み取られる独立のリーディングセンターに送る。すべてのOCTは、ソースドキュメンテーションの一部として研究施設に電子的に記録保存する。光干渉断層撮影技術者は、画像収集における一貫性および品質を保証するようにリーディングセンターによって認証される。研究施設のOCT技術者が処置割り当てについてマスキングされたままであることを確実にするためにあらゆる努力がなされる。
【0167】
視野検査:視野検査は、Humphrey Visual Field Analyzerを使用して、この装置を利用できる施設によって対象眼において評価される。技術者は、検査手順の一貫性および品質を保証すると認証される。研究施設の視野技術者が処置割り当てについてマスキングされたままであることを確実にするためにあらゆる努力がなされる。
【0168】
有害事象(AE)
全体的な安全性を種々の時点での治療下で発現した有害事象(TEAE)、身体的診査、心電図(ECG)、バイタルサインならびに臨床的安全性臨床検査(血液学、血液化学、ヘモグロビン A1c[HbA1c]および検尿)の評価によって評価する。
【0169】
TEAEは、試験薬の最初の投与後で、試験薬(活性またはシャム注射)の最後の投与の30日後より前に観察または報告される事象(または処置期間中の既存の事象の増悪)として定義される。
【0170】
調査者(または設計者)は、インフォームドコンセントに署名された時点から研究の終了までに生じたすべてのAEを記録する。すべての重篤な有害事象(SAE)は、試験薬との因果関係の評価に関わらず24時間以内に報告されなければならない。
【0171】
24時間以内に報告が必要である他の事象として、試験薬の症候性過剰投薬(予定治療濃度域内の試験薬の意図される用量の少なくとも2倍の偶発的または意図的過剰投薬、AEと関連する場合)および妊娠が挙げられる。
【0172】
AEの重症度は、以下のスケールに従ってグレード分けされる:
【0173】
軽度:患者の正常な機能レベルを顕著に妨害しない。困る場合がある。処方薬は、症状の軽減のために通常は必要でないが、患者の性格により与えられる場合がある。
【0174】
中程度:機能の一部の機能障害を生じるが、健康に有害ではない。不愉快または困惑するものである。症状のための処置が必要である場合がある。
【0175】
重度:機能の顕著な障害または機能不全を生じる、患者の健康に明確に有害である。症状のための処置が与えられる場合があるおよび/または患者は入院する。
【0176】
結果および結論
DRSSにおいて≧2-ステップの改善を有する患者の割合は、シャムに対してIAI群において顕著に大きかった。
図8、19、21および22を参照されたい。患者は、シャムに対してIAI群において≧3-ステップの改善も達成した。
図9および32を参照されたい。
【0177】
IAIは、VTCおよびCI-DMEを発症した患者の数を低減した。24および52週間で、VTCおよび/またはDMEを経験した患者の割合を
図10および23に概説する。各処置群の患者において経時的にVTCまたはCI-DMEを発症する確率のカプラン-マイヤー分析を
図24および25に記載する。視力を脅かす合併症(VTC)は、増殖性糖尿病網膜症(PDR)および前眼部血管新生(ASNV)への進行である。
【0178】
24および52週間で各処置群における患者によって経験された最高矯正視力(BCVA)における変化は、
図11および26に要約されている。各処置群の中心網膜厚の変化は、
図12および27に要約されている。
【0179】
効能転帰は、2Q16(群1)および2Q8(群2)群において同様であった。
【0180】
24および52週間での眼球の治療下で発現した有害事象(TEAE)(それぞれ
図13および28)、24および52週間での眼球の重篤なTEAE(それぞれ
図14および29)、24および52週間での眼球内炎症(それぞれ
図15および30)ならびに24および52週間での抗血小板薬臨床試験共同研究(APTC)事象、(それぞれ
図16および31)ならびに24週間での死亡(
図17)が提示されている。52週間で、合計7名が死亡した(シャム処置群において7名およびq8w処置群において1名)。(APTC:Antithrombotic Trialists’ Collaboration. Collaborative overview of randomized trial of antiplatelet therapy - II: Maintenance of vascular graft or arterial patency by antiplatelet therapy.Br Med J 1994;308:168~171;およびAntithrombotic Trialists’ Collaboration. Collaborative meta-analysis of randomised trials of antiplatelet therapy for prevention of death,myocardial infarction,and stroke in high risk patients. Br Med J 2002;324:71~86を参照されたい)。
【0181】
配列
配列番号1(1377ヌクレオチドを有するDNA配列):
ATGGTCAGCTACTGGGACACCGGGGTCCTGCTGTGCGCGCTGCTCAGCTGTCTGCTTCTCACAGGATCTAGTTCCGGAAGTGATACCGGTAGACCTTTCGTAGAGATGTACAGTGAAATCCCCGAAATTATACACATGACTGAAGGAAGGGAGCTCGTCATTCCCTGCCGGGTTACGTCACCTAACATCACTGTTACTTTAAAAAAGTTTCCACTTGACACTTTGATCCCTGATGGAAAACGCATAATCTGGGACAGTAGAAAGGGCTTCATCATATCAAATGCAACGTACAAAGAAATAGGGCTTCTGACCTGTGAAGCAACAGTCAATGGGCATTTGTATAAGACAAACTATCTCACACATCGACAAACCAATACAATCATAGATGTGGTTCTGAGTCCGTCTCATGGAATTGAACTATCTGTTGGAGAAAAGCTTGTCTTAAATTGTACAGCAAGAACTGAACTAAATGTGGGGATTGACTTCAACTGGGAATACCCTTCTTCGAAGCATCAGCATAAGAAACTTGTAAACCGAGACCTAAAAACCCAGTCTGGGAGTGAGATGAAGAAATTTTTGAGCACCTTAACTATAGATGGTGTAACCCGGAGTGACCAAGGATTGTACACCTGTGCAGCATCCAGTGGGCTGATGACCAAGAAGAACAGCACATTTGTCAGGGTCCATGAAAAGGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCGGGATGAGCTGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCCGGGTAAATGA
【0182】
配列番号2(458アミノ酸を有するポリペプチド配列):
MVSYWDTGVLLCALLSCLLLTGSSSGSDTGRPFVEMYSEIPEIIHMTEGRELVIPCRVTSPNITVTLKKFPLDTLIPDGKRIIWDSRKGFIISNATYKEIGLLTCEATVNGHLYKTNYLTHRQTNTIIDVVLSPSHGIELSVGEKLVLNCTARTELNVGIDFNWEYPSSKHQHKKLVNRDLKTQSGSEMKKFLSTLTIDGVTRSDQGLYTCAASSGLMTKKNSTFVRVHEKDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0183】
本発明は、本明細書に記載の具体的な実施形態によって範囲を限定されない、実際に、本明細書に記載のものに加えて本発明の種々の変更は、前述の記載および添付の図から当業者に明らかである。そのような変更は、添付の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【配列表】