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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】改質木材製品及び前記製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27K 3/02 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
B27K3/02 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020533689
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 IB2018060226
(87)【国際公開番号】W WO2019123230
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】1751636-0
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フレッケンシュタイン、マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ビツィクス、ウラディミルズ
(72)【発明者】
【氏名】ミリツ、ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】マイ、カーシュタイン
(72)【発明者】
【氏名】メイズ、ダンカン
(72)【発明者】
【氏名】ピンネネン、ヤンネ
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-540058(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03211024(EP,A2)
【文献】特表2010-530324(JP,A)
【文献】特開2005-022377(JP,A)
【文献】特開2016-204277(JP,A)
【文献】Marco Fleckenstein et all,Modification of beech veneers with ligin phenol formaldefyde resins in the production of laminated veneer lumber(LVL),European jpurnal of Wood and Wood Products,Spriger,2018年,76,843-851
【文献】Louis klein et all,Comparison of methods for IMPROVING WOOD,industrial and engineering chemistry,American Chemical Society ,1944年03月,Vol36,No.3,252-256
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27K 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、改質木材製品の製造方法:
a)リグニンを提供すること;
b)リグニンをリグニン切断生成物に分解すること;
c)リグニン切断生成物を分画すること;
d)リグニン切断生成物の1つ以上のフラクションを選択すること;
e)リグニン切断生成物を含むフェノール-ホルムアルデヒド樹脂を調製すること、
ここで、当該樹脂は、リグニン切断生成物を含む混合物に、フェノールおよびホルムアルデヒドを添加することにより、調製される
f)リグニン切断生成物を含むフェノール-ホルムアルデヒド樹脂で木材を処理して、改質された木材製品を得ること。
【請求項2】
触媒として水酸化ナトリウムを使用することにより、または、触媒およびマイクロ波エネルギーを使用することにより、リグニンが分解される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リグニン切断生成物が、工程c)の前にヒドロキシメチル化により化学的に改質される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
木材が約12%の含水率を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
リグニンがクラフトリグニンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
グニン切断生成物を含むフェノール-ホルムアルデヒド樹脂での改質の前に、木材が熱的に改質されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
グニン切断生成物を含むフェノール-ホルムアルデヒド樹脂での処理中または処理後に、木材が緻密化される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、リグニン分解生成物に基づく低分子量樹脂で木材が処理される、改質木材製品の製造方法に関する。本発明はまた、前記方法を使用して製造された改質木材製品に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
未処理の木材種の多くは、外部環境による影響を非常に受けやすくなっている。湿気及び/又は土壌に持続的にさらされる未処理の木材は、さまざまな種類の微生物や昆虫による攻撃によって弱くなる。したがって、湿気及び真菌の攻撃に対する耐性を高めるために、耐久性の低い木材を処理することが重要である。さらに、紫外線にさらされた木材は、変色や劣化の影響を受けやすくなる。
【0003】
木材の耐性を高めるであろうさまざまな処理方法がいくつかある。生物学的耐久性と強度を高めるための木材の化学処理は、長い間使用されてきた。多くの異なる化学物質が追加される場合がある。これらの化学物質は通常殺菌剤と呼ばれ、木材の劣化を引き起こす生物に対して長期的な耐性を提供する。正しく使用すると、木材の生産寿命を5~10倍延長できる。
【0004】
木材の耐性を向上させる別の既知の方法は、木材を高温で処理して木材を熱的に改質することである。熱改質中、木材に含まれる特定の有機化合物が除去され、それによって菌類や腐敗が木材で繁殖する可能性が減少する。したがって、木材を特定の温度に加熱することにより、リグノセルロース系繊維を真菌および昆虫に対して食欲をそそらなくすることが可能であり得る。熱改質はまた、液体と湿度の両方の水分に関する木材の特性を改善することができる。つまり、平衡含水率が低くなり、水分変形が少なくなり、耐候性が向上する。熱改質木材の潜在的な欠点の1つは、用途の範囲を制限して外観の劣化を早める可能性がある改質プロセスの結果として、曲げ強度と表面硬度の両方の強度が低下することである。
【0005】
何十年もの間、平均分子量の異なる低分子量フェノールホルムアルデヒド(PF)樹脂が、化学的木材改質に適用されてきた。樹脂を木材構造中に組み込むことができるように、真空または真空圧力プロセスによって、木材試験片はPF樹脂で処理される。次に、含浸した試験片をゆっくりと乾燥させて、樹脂を硬化させる。この改質プロセスにより、含浸木材の寸法安定性と耐久性が向上し、外部用途での使用に適するようにする。
【0006】
リグニンを使用したPF樹脂の一部およびPF樹脂中のフェノールの部分的な交換に関連する重要な開発があった。配合物の主な用途は、木材ベースのパネル製造(例:合板、パーティクルボード、MDF)における接着剤としてであった。その基本的な形のリグニンは、その高分子量とリグニン分子の負の立体効果のために、木材細胞壁中に浸透できないことが一般に知られている。したがって、これまでのところ、最先端の技術は、細胞壁の貫通を目的としておらず、木材接着剤の要件を満たすために、よくても内腔の充填に集中していた。
【0007】
芳香族ポリマーであるリグニンは、例えば木材中の主成分であり、セルロースに次ぐ地球上で最も豊富な炭素源である。近年、パルプ製造プロセスから高度に精製された固体の特定の形でリグニンを抽出する技術の開発と商業化により、石油化学産業から現在供給されている主に芳香族化学前駆体の再生可能な代替品として大きな注目を集めている。
【0008】
ポリ芳香族ネットワークであるリグニンは、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂の製造中のフェノールの適切な代替品として広く研究されてきた。そのような樹脂の合成中に、リグニンで部分的に置き換えられるフェノールは、塩基性または酸性触媒の存在下でホルムアルデヒドと反応して、ノボラック(酸性触媒を使用する場合)またはレゾール(塩基性触媒を使用する場合)と呼ばれる高度に架橋された芳香族樹脂を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、改善された改質木材製品が必要とされている。改質木材製品を調製するための改善方法も必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明は、木材改質に使用するための独自の合成低分子量リグニン樹脂で固形木材製品を処理する新規な方法を提示し、木材の耐湿性、耐候性、および生物学的耐久性を、既知の完全フェノールベースの樹脂と同等またはそれ以上に改善することが見出された。
【0011】
本発明の別の目的は、本発明の方法に従って調製された改質木材製品である。
【0012】
これらの目的および他の利点は、独立形式の請求項による方法および製品によって達成される。
【0013】
本発明は、以下の工程を含む、改質木材製品の製造方法に関する:
a)リグニンを提供すること;
b)リグニンをリグニン切断生成物に分解すること;
c)リグニン切断生成物を分画すること;
d)リグニン切断生成物の1つ以上のフラクションを選択すること;
e)場合により、選択したリグニン切断生成物を化学的に改質すること;
f)場合により化学的に改質されたリグニン切断生成物を含むフェノール-ホルムアルデヒド樹脂を調製すること;
g)場合により化学的に改質されたリグニン切断生成物を含むフェノール-ホルムアルデヒド樹脂で木材を処理して、改質された木材製品を得ること。
【0014】
本発明による方法で処理されるべき木材の含水率は、典型的には0~15%、例えば8~12%である。
【0015】
本発明による方法で処理されるべき木材は、無垢材であり、針葉樹または広葉樹のいずれであってもよい。本発明に従って改質され得る広葉樹の例には、ブナおよびバーチが含まれる。本発明に従って改質されるべき木材は、LVL(積層ベニヤ材)または合板で使用されているまたは使用されるためのベニヤなどのベニヤであってよい。
【0016】
本発明の方法に従って改質されるべき木材は、場合により化学的に改質されたリグニン切断生成物を含むフェノール-ホルムアルデヒド樹脂での処理の前に未改質であってもよい。あるいは、本発明に従って改質されるべき木材は、場合により化学的に改質されたリグニン切断生成物を含むフェノール-ホルムアルデヒド樹脂での処理の前に、他の手段によって改質されていてもよい。たとえば、木材は、大気圧で160℃から230℃の温度で、または大気圧より高い圧力で120℃から230℃の温度で、木材を加熱することによって、熱改質に付されていてもよい。
【0017】
リグニンを分解する工程は、当技術分野で既知の方法を使用して実施することができる。リグニンを分解するためのそのような方法の例は、触媒(塩基または酸など)による分解、イオン液体による分解、熱分解(例えば、Vasile et al. Cellulose Chem Technol 44 (2010), 353-363を参照)およびマイクロ波分解である。
【0018】
リグニン切断生成物を分画(分別)する工程は、当該分野で公知の方法に従って実施され得る。例えば、真空蒸留による分別を使用することができる。分別の別の例は、当該技術分野で既知の方法に従う、液体/液体抽出によるものである。
【0019】
本発明による樹脂調製に使用されるリグニンの少なくとも50重量%は、リグニン切断生成物に分解されている。好ましくは、本発明による樹脂調製に使用されるリグニンの少なくとも60重量%、例えば少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%、または少なくとも99重量%は、リグニン切断生成物に分解されている。好ましくは、リグニン切断生成物は、450g/mol未満、例えば300g/mol未満、または、135g/mol未満、例えば125g/mol未満の分子量を有する。一実施形態では、リグニンは、当技術分野で知られている方法を使用してバイオオイルに分解される。
【0020】
本発明はまた、本明細書に記載されている方法に従って処理された木材に関する。本発明の一実施形態では、処理された木材は針葉樹である。本発明の一実施形態では、処理された木材は広葉樹である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図面の簡単な説明
図1図1:化学的木材改質後のWPG
図2図2:化学的木材改質に起因する試験片の断面バルキング(かさ高さ)
図3図3:改質された試験片の寸法安定性
図4図4:未処理の試験片(参照)と比較した、改質された試験片の吸水率
図5図5:化学的に改質された試験片のWPG
図6図6:化学的木材改質後の試験片の断面バルキング(かさ高さ)
図7図7:改質された試験片の寸法安定性
図8図8:未処理の試験片(参照)と比較した、改質された試験片の吸水率
図9図9:バイオオイル成分で改質された木材試験片のWPG
図10図10:バイオオイル成分で改質された木材試験片の断面バルキング(かさ高さ)
図11図11:バイオオイル成分で改質された木材試験片の寸法安定性
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
本発明に従って使用されるリグニンは、広葉樹、針葉樹または環状植物に由来するリグニンなどの任意のタイプのリグニンである。リグニンは、例えば、クラフト法またはオルガノソルブ法に由来し得る。好ましくは、リグニンは、例えばクラフトプロセスで生成されたアルカリ性リグニンである。次に、リグニンは、WO2006031175に開示されているプロセスを使用することにより、黒液から分離することができる。
【0023】
本発明に従って使用されるリグニン切断生成物は、典型的には、300g/mol未満などの450g/mol未満、または125g/mol未満などの135g/mol未満のモル質量を有する。好ましくは、リグニン切断生成物は極性であり、木材細胞壁中への浸透を容易にする。好ましくは、本発明に従って使用されるリグニン切断生成物は、芳香環上の遊離位置の量として定義される十分な機能性を有する。好ましくは、リグニン切断生成物は、芳香環上に少なくとも2つの遊離位置を有する、すなわち二官能性である。リグニン切断生成物はまた、三官能性であり得る、すなわち、芳香環上での反応のために3つの利用可能な位置を有し得る。
【0024】
本発明による方法で処理されるべき木材の含水率は、典型的には0%~15%である。好ましくは、含水率は、8%から15%、例えば8%から12%である。含水率が繊維の飽和点に近い可能性がある。木材の含水率および繊維飽和点は、当技術分野で知られている方法を使用して決定することができる。
【0025】
本発明の一実施形態では、樹脂処理は、20℃から50℃または20℃から40℃などの室温または周囲温度の間に、高圧、すなわち1バールを超える圧力で行われる。一実施形態では、加圧樹脂処理は、真空中または大気圧よりも低い圧力で行われる。
【0026】
リグニン切断生成物は、樹脂合成の前に化学的に改質することができる。そのような化学的改質の例には、ヒドロキシメチル化およびヒドロキシエチル化が含まれ、当技術分野で公知の方法を使用して実施することができる。例えば、リグニン切断生成物のヒドロキシメチル化は、塩基性反応条件下で行うことができる。化学的改質のさらなる例には、当技術分野で公知の方法による脱メチル化およびフェノール化が含まれる。
【0027】
樹脂を調製するにはいくつかの方法がある。例えば、リグニン切断生成物と低分子量のPF樹脂との混合物を調製して、樹脂として使用することができる。あるいは、リグニン切断生成物とフェノールとの混合物、およびその後のヒドロキシメチル化。あるいは、リグニン切断生成物(フェノールなし)のヒドロキシメチル化を行うことができる。あるいは、分解したリグニンは、特徴的なフェノールとそれに続くヒドロキシメチル化を伴うバイオオイルの形で使用される。
【0028】
本発明による方法で使用される樹脂は、場合により化学的に改質されたリグニン切断生成物を含む混合物に、フェノールおよびホルムアルデヒドを添加することにより、調製することができる。典型的には、添加されるフェノールの量はリグニン切断生成物の量とほぼ同じであるが、どの種類の樹脂組成物が望ましいかに応じて、より多いまたはより少ないフェノールを添加できることが理解される。加熱は、典型的には、70~85℃などの60~95℃の温度で、4~8時間などの2~8時間行われる。樹脂の水溶性を測定して、樹脂合成が完了したかどうかを判断できる。
【0029】
木材を処理するときに使用される樹脂溶液は、通常、1重量%~80重量%の樹脂を含む水溶液である。本発明の一実施形態では、樹脂溶液は10%~15%の樹脂を含むが、60~80重量%の樹脂を含む水溶液など、より高い濃度を使用することもできる。高固形分と少量の遊離ホルムアルデヒドを得ることが望ましい場合は、ソフト真空蒸留を使用できる。樹脂溶液のpHは、一般にpH7以上、好ましくはpH9以上、より好ましくはpH9~pH11の範囲である。樹脂溶液は、場合により、顔料、界面活性剤、硬化剤、pH安定剤および難燃剤などの追加の成分を含んでもよい。
【0030】
樹脂溶液は、ブラッシング、射出、スプレー、真空含浸、真空加圧含浸、浸漬、または浸漬によって木材上に塗布できる。木材上に塗布される樹脂の量は、乾燥物から硬化したとして計算すると、10~400g/m、有利には10~150g/m、好ましくは30~100g/m、最も有利には約50g/mである。樹脂の取り込みは、50kg/m~400kg/m以上の範囲で可能である。樹脂の取り込み(吸収)は、含浸後の木材の重量の増加を測定することで決定できる。
【0031】
樹脂処理の後に、乾燥および/または硬化工程が続く場合があり、そこでは、場合により化学的に改質されたリグニン切断生成物を含むフェノール-ホルムアルデヒド樹脂で処理された木材が、当技術分野で既知の方法を使用して乾燥および/または硬化される。乾燥および/または硬化は、室温などの周囲温度で、または高温で行うことができる。
【0032】
本発明に従って処理されるべき木材は、場合により、改質の間または後に緻密化されてもよい。緻密化は、木材に圧力を加えることによって行うことができる。緻密化は1~3kg/cmの圧力で行うことができ、最大圧縮は木材の厚さの約10%にする必要がある。
【0033】
場合による緻密化では、圧力と熱の両方を加えることが好ましい。これは、この組み合わせが木材の緻密化を改善するからである。緻密化は、オフライン、オンラインまたはインラインで、すなわち本発明による方法とインラインで行うことができる。オフライン緻密化を使用する場合、場合により化学的に改質されたリグニン切断生成物を含むフェノール-ホルムアルデヒド樹脂で木材を処理する工程の後に、ホットプレスを使用することができる。インライン緻密化を使用する場合は、ローラーまたはプレートベースのシステムを使用できる。緻密化は、改質工程中または改質工程とは別に実行できる。
【0034】
本発明の文脈において場合による木材を緻密化することにより、木材の表面はより固くなるであろう、すなわち、表面上の繊維は、水分と反応してその元の形態を保持する傾向がより少なくなる。これはまた、木材の表面上で繊維が緩む傾向の減少につながる。表面密度、したがって木材の硬度も改善されるであろう。
【0035】
木材の緻密化が行われるべきである場合、それは、好ましくは、木材を改質するプロセスの後で、すなわち、本発明によるプロセスの工程g)の後に行われる。
【0036】
本発明はまた、本発明による方法で処理された木材に関する。
【0037】
生産された木材は、クラッディング、デッキ、窓やドアのプロファイル、電柱、突堤、建具、家具など、さまざまな製品の生産に使用できる。耐湿性の観点から、木材は、湿気にさらされる可能性が高い用途で特に有用である。
【0038】
本明細書で使用される「木材」という用語は、含浸が容易な広葉樹および針葉樹の木材ベニヤなどの木材ベニヤを含む、あらゆる種類の木材種の固体木材成分として定義される。
【0039】
【0040】
例1
リグニンは、触媒として水酸化ナトリウムを使用することによって切断された。切断生成物は、酢酸エチルを用いた液液抽出により精製した。酢酸エチルは、ロータリーエバポレーターを使用して除去した(Schmiedl et al. 2012)。得られたリグニン切断生成物(35g)をフェノール(質量%)と混合した:例80_20は、80質量%のフェノールおよび20質量%のリグニン切断生成物を意味する。樹脂化工程中に、0.24モルのホルムアルデヒドおよび0.06モルの水酸化ナトリウムを加えた。樹脂化:65℃、4時間。合成後の樹脂の固形分は35%であった。合成されたPF樹脂(同じ反応条件)は、参照樹脂(100_0)として機能した。25×25×10mm(半径×接線×縦)の未処理のブナ辺材サンプルを、真空含浸(0.5時間、100mbar)し、最後に大気圧で2時間溶液中に保持した。樹脂を140℃で1時間完全に硬化させる前に、含浸した試験片を徐々に温度を上げて(25℃から103℃まで)96時間ゆっくりと乾燥させた。断面バルキング(かさ高さ)(BC)、重量パーセント増加(WPG)、抗収縮/膨潤率(ASE)、吸水率を測定した。最大吸水率を決定するために、サンプルを水中に100mbarで30分間真空含浸した。最後に、試験片は大気圧の水中に24時間留まった。
【0041】
樹脂PF、80_20および60_40を含浸させた試験片のWPGには有意差はなかった。完全なフェノール置換(0_100)により、WPGが減少した(図1)。
【0042】
フェノール含有量の増加に伴って、改質された試験片の寸法安定性(図3)が増加した。しかし、40%のフェノール置換(60_40)では、PF樹脂と比較して寸法安定性がわずかしか低下しなかった。
【0043】
PF、80_20、および60_40樹脂で改質された試験片の吸水率(図4)は非常に類似しており、有意差はなかった。100%のフェノール置換により、参照PF樹脂で改質された試験片と比較して、吸水率が増加した。しかし、吸水率は未加工の木材(参照)と比較してまだ低かった。
【0044】
例2
クラフトリグニンは、触媒(ゼオライト)とマイクロ波エネルギーを使用して液化した。3つの樹脂を合成した:参照PF樹脂(PF)、40%置換フェノール(60_40)、及び、100%置換フェノール(0_100)。樹脂合成のために、0.64モルのホルムアルデヒドと0.04モルの水酸化ナトリウムを加えた。樹脂化:65℃、4時間。樹脂の固形分は30%であった。25×25×10mm(半径方向、接線方向、縦方向)の寸法の未処理のブナ材の試験片に真空含浸(0.5時間、100mbar)を行い、最終的に大気圧で2時間溶液中に保持した。樹脂を140℃で1時間完全に硬化させる前に、含浸した試験片を温度を上げて(25℃から103℃まで)ゆっくりと96時間乾燥させた。断面バルキング(BC)、重量パーセント増加(WPG)、抗収縮/膨潤率(ASE)、および吸水率を測定した。最大吸水率を決定するために、サンプルを水中100mbarで30分間真空含浸した。最後に、試験片は大気圧の水中に24時間保持する。
【0045】
PFおよび60_40樹脂で改質された試験片のWPGは同様であった(図5)。100%フェノール置換(0_100)により、参照PF樹脂で改質された試験片と比較して、WPGが低下した。
【0046】
化学的木材改質(バルキング)後の試験片の寸法の増加は、PF樹脂または60_40で改質された試験片の有意差を示さなかった。PF樹脂で改質された試験片と比較して、100%分解生成物で改質された試験片のかさ高さ(バルキング)は低かった。これは、木材細胞壁によるリグニン分解生成物の取り込みの減少によって説明できる。
【0047】
改質された試験片の寸法安定性(図7)は、参照PF樹脂及び60_40で改質された試験片の間に有意差がないことを示した。0_100を含浸させた試験片は、寸法安定性の低下を示した。
【0048】
樹脂PF、60_40および0_100を使用した改質により、未処理の試験片と比較して吸水率が減少した。PF及び60_40で改質された試験片の吸水率は非常に似ていた。
【0049】
例3
リグニンは、十分に解重合されている場合、芳香族化合物の潜在的な供給源である。検出されたモノ芳香族リグニン分解生成物を混合して(質量%)、バイオベースのバイオオイルを得た。表1にバイオオイルの組成(質量%)を示す。
【0050】
【表1】
【0051】
樹脂は、樹脂化中にホルムアルデヒドと水酸化ナトリウムを加えることによって合成された(フェノール:ホルムアルデヒド:水酸化ナトリウムのモル比=1:1.5:0.1)。樹脂の固形分は31%から38%の間であった。寸法が25×25×10mm(放射状、接線方向、縦方向)の未処理の松辺材サンプルを真空含浸(0.5時間、100mbar)し、最終的に溶液中に大気圧で2時間保持した。樹脂を140℃で1時間完全に硬化させる前に、含浸した試験片を温度を上げて(25℃から103℃まで)ゆっくりと96時間乾燥させた。断面バルキング(BC)、重量パーセント増加(WPG)、抗収縮/膨潤率(ASE)、および吸水率を測定した。最大吸水率を決定するために、サンプルを水中100mbarで30分間真空含浸した。最後に、試験片は大気圧の水中に24時間保持した。
【0052】
樹脂A~Cで改質された試験片のWPGは、樹脂D~Hで改質された試験片のWPGよりも高かった(図9)。これは、樹脂D~Hに比べて樹脂A~Cの固形分が約20%高いことで説明できる。
【0053】
すべての合成樹脂は細胞壁中に浸透できたが、量は異なった。参照PF樹脂、樹脂GおよびHで改質された試験片は、樹脂A~Eで改質された試験片よりも高いバルキング値をもたらした。
【0054】
樹脂A~Eで改質された試験片は、参照PF樹脂(H)で改質された試験片よりも著しく低い寸法安定性を示した(図11)。これは、細胞壁による樹脂の取り込みが少ないことで説明できる。樹脂FおよびGで改質された試験片は、参照PF樹脂で改質された試験片と同等の結果を示した。これは、特定のバイオオイルがPF樹脂中のフェノール成分を完全に置き換えることができることを示している。
【0055】
本発明の上記の詳細な説明を考慮すると、他の改変および変形が当業者には明らかになるであろう。しかしながら、そのような他の改変および変形が、本発明の本質および範囲から逸脱することなくもたらされ得ることは明らかであるはずである。
本発明に関連して、以下の内容を更に開示する。
[1]
以下の工程を含む、改質木材製品の製造方法:
a)リグニンを提供すること;
b)リグニンをリグニン切断生成物に分解すること;
c)リグニン切断生成物を分画すること;
d)リグニン切断生成物の1つ以上のフラクションを選択すること;
e)場合により、選択したリグニン切断生成物を化学的に改質すること;
f)場合により化学的に改質されたリグニン切断生成物を含むフェノール-ホルムアルデヒド樹脂を調製すること;
g)場合により化学的に改質されたリグニン切断生成物を含むフェノール-ホルムアルデヒド樹脂で木材を処理して、改質された木材製品を得ること。
[2]
触媒として水酸化ナトリウムを使用することにより、または、触媒およびマイクロ波エネルギーを使用することにより、リグニンが分解される、[1]に記載の方法。
[3]
リグニン切断生成物が、工程c)の前にヒドロキシメチル化により化学的に改質される、[1]または[2]に記載の方法。
[4]
木材が約12%の含水率を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
リグニンがクラフトリグニンである、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
場合により化学的に改質されたリグニン切断生成物を含むフェノール-ホルムアルデヒド樹脂での改質の前に、木材が熱的に改質されている、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]
場合により化学的に改質されたリグニン切断生成物を含むフェノール-ホルムアルデヒド樹脂での処理中または処理後に、木材が緻密化される、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]
[1]~[7]のいずれかに記載の方法により得られる改質木材製品。
[9]
木材が針葉樹または広葉樹である、[8]に記載の改質木材製品。
[10]
クラッディング、デッキ、窓およびドアプロファイル、電柱、突堤、建具または家具の製造のための、[8]または[9]に記載の改質木材製品の使用。
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