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特許7339284陽極液画分により触媒されるHMFの製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】陽極液画分により触媒されるHMFの製造
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/46 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
C07D307/46
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020566840
(86)(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2019063851
(87)【国際公開番号】W WO2019229077
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】102018208507.2
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515053771
【氏名又は名称】ズートツッカー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハジ ベクリ,アリレツァ
(72)【発明者】
【氏名】クレーナー,クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】トシリンギリ,ヴァルデマー
(72)【発明者】
【氏名】リーメンスシュニッター,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】マンティク,カイ
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-115061(JP,A)
【文献】特開2015-209411(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0349351(US,A1)
【文献】特開2017-000110(JP,A)
【文献】国際公開第2016/168233(WO,A1)
【文献】特表2015-504069(JP,A)
【文献】CARUSO, T. and VASCA, E.,Electrogenerated acid as an efficient catalyst for the preparation of 5-hydroxymethylfurfural,Electrochemistry Communications,2010年,Vol.12,pp.1149-1153,DOI:10.1016/j.elecom.2010.05.040
【文献】WATANABE, M. et al.,Continuous Process for HMF Production from Cellulose with Ionic Liquid ([BmIm]Cl)-Water Mixtures,Journal of the Japan Institute of Energy,Vol.96, No.10,pp.417-429
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の製造方法であって、
a)フルクトース含有成分及び水の電気分解によって製造された触媒活性な陽極液画分を準備する工程、
b)フルクトース含有成分及び触媒活性な陽極液画分を混合して、反応溶液を得る工程、
c)液体のHMF含有生成物混合物を得るために、反応溶液中に存在するフルクトースを90℃~200℃の温度及び0.1~1.5MPaの圧力でHMFに転化させる工程、並びに
d)液体のHMF含有生成物混合物を得る工程、
を含み、
方法工程a)~c)において、有機溶剤を使用しない
、方法。
【請求項2】
電気分解用の水が、完全脱塩水である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電気分解用の水が、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属硝酸塩、アルカリ土類金属硝酸塩、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ土類金属硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
電気分解用の水が、(水の総重量に対して)0.01~2.5重量%の塩を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
触媒活性な陽極液画分のpH値が、1.5~4.5である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
触媒活性な陽極液画分のpH値が、2~3である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
フルクトース含有成分が、固体のフルクトース含有成分、又は液体のフルクトース含有成分である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
固体のフルクトース含有成分がフルクトースであり、液体のフルクトース含有成分がフルクトースシロップ又はフルクトース溶液である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
方法工程b)において、5~50重量%の炭水化物含有量(反応溶液の総重量に対する炭水化物の乾燥物質)を有する反応溶液を得て、方法工程c)において使用する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
方法工程b)において、40~100重量%のフルクトース含有量(反応溶液の炭水化物成分の乾燥物質に対するフルクトースの乾燥物質)を有する反応溶液を得て、方法工程c)において使用する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
反応溶液中のフルクトース含有成分の炭水化物含有量(乾燥物質)と触媒活性な陽極液画分(総重量)との比が、0.01~2.5である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
反応溶液中のフルクトース含有成分のフルクトース含有量(TS)と触媒活性な陽極液画分(総重量)との比が、0.01~2.5である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程a)において準備されたフルクトース含有成分、陽極液画分、若しくはその両方を工程b)の前に90℃~200℃の温度に調整するか、又は工程b)において得られた反応溶液を90℃~200℃の温度に調整する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
方法工程c)において1~50mol%のフルクトース転化率が達成されるように行われる、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
方法工程c)において60~100mol%のHMF選択率が得られるように調整される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
連続的に実施される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記方法において、触媒活性な陽極液画分を除いて、更なる触媒活性な成分は使用されない、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
e)液体のHMF生成物混合物を20℃~80℃の温度に冷却する工程、
を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
f)液体のHMF生成物混合物を濾過し、脱色し、及び/又は清浄化する工程、
を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
g)液体のHMF生成物混合物を20~70重量%の乾燥物質含有量に調整する工程、
を含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
h)液体のHMF生成物混合物を、クロマトグラフィー、限外-及び/若しくはナノ濾過、適切な抽出剤による抽出、適切な材料への吸着に続いての標的脱着、並びに/又は電気透析によって精製して、少なくともHMF画分を分離する工程、並びに
i)少なくともHMF画分を得る工程、
を含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
液体のHMF生成物混合物を、工程h)において、クロマトグラフィーによって、HMF画分、グルコース画分、フルクトース画分、及び有機酸画分を含む少なくとも4つの画分に分離し、工程i)において、少なくともHMF画分、グルコース画分、フルクトース画分、及び有機酸画分を得る、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
方法工程i)において得られたフルクトース画分を工程a)へと返送する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
方法工程i)において得られたグルコース画分をエタノール製造のために使用する、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
方法工程i)において得られた有機酸画分をレブリン酸及びギ酸の単離のために使用する、請求項22から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
方法工程i)において得られたHMF画分を、直接的に、更なる精製を必要とせずに、更なる工程において2,5-フランジカルボン酸(FDCA)へと酸化させる、請求項21から25のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の製造方法であって、水の電気分解によって製造された触媒活性な陽極液画分を使用して、フルクトース含有成分を90~200℃の温度で転化させて、HMF含有生成物混合物を得る、方法であり、有利には高いHMF選択性(選択率)が達成されると同時に副生成物の形成が明らかにより少ない、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)は、芳香族5員環系、アルデヒド及びアルコール基を有する多官能性分子である。多くの官能性により、この分子は、非常に多数の更なる化合物のベースとして利用することができる多岐にわたり使用可能なプラットフォーム化学物質となる。HMFをベースとして製造することができる化合物には、一方では、石油化学的経路で今日既に大規模に製造される化学物質、例えばカプロラクタム又はアジピン酸が該当するが、これまでにまだ工業的な製造方法が得られていない大きな適用潜在性を有する化合物、例えば2,5-フランジカルボン酸(FDCA)も該当する。
【0003】
HMF及びFDCAの大きな潜在性にもかかわらず、これらの化合物の経済的な技術的に確立された製造方法はこれまでにない。この分子の最大の利点の1つとしてのHMFの多官能性は、それによりもたらされる起こり得る後続化学反応に関連して、同様に合成における主要な欠点であることが明らかになった。HMFは、とりわけ水性系中では、合成に必要な反応条件下(酸性pH値、高められた温度)で安定せず、一方では重合下でそれ自体並びに/又は出発物質及び中間生成物と反応して、鎖長に応じて可溶性又は不溶性であり、反応溶液の褐色ないし黒色の着色につながる、いわゆるフミンとなる。更なる不所望な後続反応は、HMFのレブリン酸及びギ酸への酸触媒による再水和であり、とりわけレブリン酸はHMFと反応して、更なる不所望な副生成物となり得る。したがって、HMFを可能な限り経済的に製造するためには、この副反応の発生及びHMFとレブリン酸との後続反応を可能な限り回避することがどうしても必要である。
【0004】
HMFの製造についての従来技術に記載された多数の異なる合成経路では、単相と二相反応系とが基本的に区別され得る。両方のアプローチでは、均一系触媒も不均一系触媒も使用することができる。単相系では、HMF合成は、純粋に水性の系の他に、有機溶剤、例えばDMSO、DMF及びスルホラン中又はイオン液体中でも実施することができる。水性系を避けると、確かに純粋に化学反応に関してHMFについてより良い選択性がもたらされるが、溶剤の除去のためにしばしば高い温度が必要であり、それらの高い温度下ではHMFの熱分解が起こり得ることから、またしてもHMFの純度及び収率が大幅に悪化する。それに加えて、水不含の系を使用する場合には、溶剤のコスト並びに安全性及び環境の観点が重要である。HMF合成に使用される六炭糖、とりわけフルクトース及び/又はグルコースが、多くの普通の有機溶剤中で溶解性が低いことも不利であることが明らかである。
【0005】
二相反応系では、六炭糖のHMFへの反応は水相中で実施され、生成したHMFは有機溶剤を用いて連続的に抽出される。この場合に、溶剤は水と混和可能であってはならず、HMFの効率的な抽出を保証するために、水相と有機相との間でHMFについて十分に高い分配係数を有さねばならない。とりわけ分配係数は大抵の溶剤についてそれほど高くないので、そのような系では、しばしば非常に多量の溶剤を使用せねばならない。二相反応系で最も頻繁に使用される有機溶剤は、この場合メチルイソブチルケトン(MIBK)であり、これは場合により相調節剤(Phasenmodifizierer)、例えば2-ブタノールと組み合わせて使用される。しかしながら、既に単相の水不含の反応系について示されたように、この場合にも、使用される1種以上の溶剤の最終的な除去は、適切な溶剤の高い沸点に基づき問題であることが明らかである。
【0006】
EP0230250B1は、溶剤として水を単独で使用する、結晶性生成物を含む5-ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法を開示している。記載された回分法では、糖類は水溶液中で100℃を超える温度で酸触媒によって分解されて、六炭糖及びHMFの混合物となり、引き続き、形成されたHMFはイオン交換カラムを介して35~85℃の温度で副生成物から分離されて、HMF画分の他に糖類画分を得ることができ、この糖類画分は、記載された方法による再度のHMF合成のために利用可能である。この文献に開示される回分式の転化には、高いフルクトース転化率、及びその直接的な結果としての反応溶液中の高いHMF濃度が付随し、その高いHMF濃度により一般的な条件下で副及び分解生成物の形成増加がもたらされ、それにより、転化されたフルクトース量に対してHMF収率の低下が引き起こされる。
【0007】
WO2013/106136A1は、エタノール発酵で直接使用するのに適した未転化の糖の回収を含む、糖からのHMF及びHMF誘導体の製造方法に関する。この場合に、六炭糖含有溶液は、水相中で酸触媒による脱水反応によってHMFに転化され、引き続き、生成物混合物中に含まれる未転化の糖は、吸着及び/又は溶剤抽出によって生成物混合物から分離され、これらは最終的に好気性又は嫌気性発酵法でエタノールを得るために使用される。酸触媒による脱水反応を175~205℃の温度で実施することが教示されている。
【0008】
WO2015/113060A2は、フルクトース含有出発物質のHMF含有生成物への変換を開示している。記載された方法によって、フルクトース、水、酸触媒、及び少なくとも1種の更なる溶剤は反応ゾーン内で混合され、適切な反応パラメーターを選択することにより、80%のHMF収率を超えないように約1~60分の期間にわたって反応される。指定された転化率に達したら、不所望な副生成物の形成を最小限に抑えるために、反応成分は直ちに冷却される。
【0009】
WO2014/158554は、酸触媒による脱水反応を減酸素条件下で実施する、グルコース及び/又はフルクトース含有溶液からのHMF又はその誘導体の製造方法を開示している。この方法は、HMFの安定性を高め、起こり得る分解反応を妨げるため、不所望な副生成物の形成が減少すると言われている。場合により、HMFの自動酸化反応を防ぐために酸化防止剤が添加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】EP0230250B1
【文献】WO2013/106136A1
【文献】WO2015/113060A2
【文献】WO2014/158554
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
コストが低く効率的なHMFの製造方法を保証するためには、フルクトース含有出発溶液をHMFに転化させる間、適切な反応条件及び方法工程を選択することにより、不所望な副生成物の形成及び脱水反応により形成されたHMFの分解を可能な限り回避することが重要である。未転化のフルクトースが、脱水反応の間に形成される妨げとなる副生成物から分離され、それゆえ、場合により連続的な製造方法に返送するために、可能な限り純粋な形態で提供される場合、経済的に更に有意義である。
【0012】
コストが低く効率的な、好ましくは連続的な方法における対応するHMFの製造方法は、これまでに先行技術から公知ではない。
【0013】
したがって、本発明の課題は、従来技術から公知の方法の上述の欠点及び制限を克服すること、とりわけ、フルクトースを、高選択的に、とりわけ副生成物の形成を最大限に回避し、コストが低く効率的な方式で、HMFへと転化させる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の課題は、特許請求の範囲の技術的教示によって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明により使用される反応器システムの概略図を示す図である。
図2】工程a)において準備された成分を最初に工程b)において混合し、得られた反応溶液を引き続き加熱し、精製工程h)後にHMF画分が得られる(工程i))、本発明による方法の概略図を示す図である。
図3】工程h)で、カラムクロマトグラフィー分離が実施され、HMF画分、グルコース画分、フルクトース画分及び有機酸画分が得られる(工程i))、図2と類似した本発明による方法の概略図を示す図である。
図4】工程a)において準備された成分が互いに別々に加熱され、その後に初めて工程b)において混合して反応溶液が得られ、精製工程h)後にHMF画分が得られる(工程i))、本発明による方法の概略図を示す図である。
図5】工程h)で、カラムクロマトグラフィー分離が実施され、HMF画分、グルコース画分、フルクトース画分及び有機酸画分が得られる(工程i))、図4と類似した本発明による方法の概略図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
とりわけ、本発明は、5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の製造方法であって、
a)フルクトース含有成分及び水の電気分解によって製造された触媒活性な陽極液画分を準備する工程、
b)フルクトース含有成分及び触媒活性な陽極液画分を混合して、反応溶液を得る工程、
c)液体のHMF含有生成物混合物を得るために、反応溶液中に存在するフルクトースを90℃~200℃の温度でHMFに転化させる工程、並びに
d)液体のHMF含有生成物混合物を得る工程、
を含む、方法に関する。
【0017】
それによれば、本発明によれば、フルクトース含有成分のフルクトースの選択的な、好ましくは高選択的な転化によって5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)を製造する方法が提供される。フルクトースの転化のために、本発明によれば、水の電気分解によって製造された触媒活性な陽極液画分が使用される。つまり、本発明は、有利には、フルクトース含有成分を触媒活性な陽極液画分と混合し、引き続き、反応溶液中に存在するフルクトースのHMFへの転化を実施することを意図している。フルクトース含有成分中に存在するフルクトースのHMFへの転化のために触媒活性な陽極液画分を使用することは、例えば、硫酸を触媒として使用する通常のHMFの製造方法と比較して明らかにより高いHMF選択性が、同時に明らかに減少した副生成物の形成及び同等のフルクトース転化率で提供されるという点で有利である。こうして、有利な好ましい実施形態では、80%を超える許容可能な選択性でフルクトース転化率≧30%が可能である。その上、陽極液画分の使用により、反応溶液中のより高い炭水化物濃度、すなわち、有利な好ましい実施形態では、40%までの炭水化物の乾燥物質も可能となる。本発明によれば、触媒活性な陽極液画分を使用することで、有利な好ましい実施形態では、均一系又は不均一系の形態の他の触媒の使用を必要とせずに非常に高いHMF選択性がもたされる。驚くべきことに、フルクトースのHMFへの転化のための触媒として触媒活性な陽極液画分を使用する場合に、有利な好ましい実施形態では、フルクトース純度とHMF選択性との間に逆の関係があること、すなわち、炭水化物組成のフルクトース割合が減少するとHMFについての選択性が増加することが示され得た。その上、触媒活性の陽極液画分を使用すると、フミン物質、とりわけ通常の手法では固着及び固結により技術的な問題につながる不溶性のフミンの形成の大幅な減少がもたらされる。それによれば、酸素含有の触媒活性な陽極液画分の本発明による使用により、とりわけ、経済的に有意義なHMF選択性で、明らかにより高いフルクトース転化率がもたらされる。この効果は、前述のWO2014/158554を踏まえると、そこに記載された方法では、とりわけ減酸素条件及び/又は酸化防止剤の存在がHMFの安定性を高め、起こり得る分解反応を防ぐと言われているため、特に驚くべきことである。
【0018】
特に好ましい実施形態では、本発明による方法様式、とりわけ方法工程a)~d)の実施により、明らかにより高いHMF選択性を達成することが可能となり、従来技術と比較して、同等のフルクトース転化率では、副生成物の形成の減少、とりわけHMFのレブリン酸及びギ酸への再水和の減少が生ずる。
【0019】
特に好ましい実施形態では、本発明による方法、とりわけ方法工程a)~d)におけるレブリン酸についての選択性は、≦5%、好ましくは≦4%、好ましくは≦3%、特に好ましくは≦2%(転化されたフルクトース割合に対する)である。
【0020】
本発明との関連では、触媒活性な陽極液画分とは、陽極での水の電気分解の過程でその結果として得られる水の画分と解釈される。水の電気分解後に陽極室内にある溶液が、本発明によれば、本方法における触媒活性な陽極液画分として使用される。この「触媒活性な陽極液画分」は、本明細書では、陽極液、酸性活性化水、電気分解酸化水、酸性電気活性化水、又は酸性電気化学活性化水とも称される。
【0021】
本発明によれば、触媒活性な陽極液画分の製造は、好ましくは膜又は隔膜によって陰極と陽極とが隔離されている電解セル内で行われる。電気分解の実施後に、触媒活性な陽極液画分は電解セルの陽極室から取り出され、本発明による方法において使用される。触媒活性な陽極液画分を製造するために使用される水は、好ましくは、完全脱塩水(VE水(英語ではDI水))、蒸留水、飲料水、又は水道水である。しかしながら、電気分解用の水が塩を含むことも意図され得る。この塩は、好ましくは、LiCl、NaCl、KCl、NaF、又は他のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のハロゲン化物、とりわけアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の塩化物又はアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のフッ化物、NaNO3、又は他のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の硝酸塩、Na2SO4、又は他のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の硫酸塩、クエン酸ナトリウム、又は他のクエン酸の塩、或いはそれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましくは、電気分解用の水は、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属硝酸塩、アルカリ土類金属硝酸塩、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ土類金属硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される塩を含む。特に好ましくは、電気分解用の水は、NaCl、NaNO3、Na2SO4、LiCl及びKClからなる群から選択される塩を含有する。とりわけ、この水は、好ましくはNaClを含有する。電気分解用の水中に含まれる塩は、本明細書では、電解質とも称される。
【0022】
本発明によれば、電気分解用の水は、(水の総重量に対して)0.01~2.5重量%、好ましくは0.05~2.2重量%、好ましくは0.1~2.0重量%、好ましくは0.5~1.5重量%、特に好ましくは0.1~1重量%の塩、とりわけ0.05重量%、0.1重量%、0.18重量%、0.25重量%、0.625重量%、又は1.0重量%の塩を含む。
【0023】
例えば完全脱塩水又は水道水、つまり電解質、すなわち塩の添加を伴わない純水の電気分解によって、好ましくは膜又は隔膜によって互いに隔離されている陽極及び陰極の室内に2つの異なる溶液が生成する。陽極では、水酸化物イオン及びH2Oからオキソニウムイオン(H3O+)、電子及び酸素が生成する。電極での副反応によって、またオゾン(O3)のような更なる反応種、及び例えばHO2 *、OH*又はまたH2O*のような種々のラジカルが少量生成する場合がある。したがって、VE水の電気分解によって得られる触媒活性な陽極液画分は、とりわけO2及びオキソニウムイオン(H3O+)の存在によって特徴付けられる。陰極では、水から水酸化物イオン(OH-)及び水素が生成する。ここでも、副反応によって、例えば過酸化物及びラジカルのような更なる反応種が生成する場合がある。純水は電流を通しにくいので、上述の反応はかなりゆっくり進行する。反応を加速させるために、水溶性電解質、すなわち塩を添加して、水の導電率が高められる。その際、これらの電解質も同様に電気化学的反応に入り得る。電解セル内での、例えばNaCl含有の水の電気分解によって、好ましくは膜又は隔膜によって互いに隔離されている陽極及び陰極の室内に2つの異なる溶液が生成する。負電荷のイオン(OH-、Cl-)は陽極に移動し、そこで反応して塩素(Cl2)、酸素(O2)、次亜塩素酸(HClO)、及び非常に希薄な塩酸(HCl)となるため、低いpH値及び高い酸化還元電位を有する溶液が生成する。塩化物から、HClOの他に、HClO2、ClO2、ClO3 -、又はまたClO4 -も生成し得る。正電荷のイオン(Na+)は陰極に移動し、反応して苛性ソーダ(NaOH)及び水素(H2)となるため、高いpH値及び低い酸化還元電位を有する溶液が生成する。
【0024】
したがって、触媒活性な陽極液画分が完全脱塩水から製造された場合に、その触媒活性な陽極液画分は、H2O及びH3O+並びに場合により溶存酸素及び低濃度のOH-を含み、とりわけそれらからなる。特に好ましい一実施形態では、触媒活性な陽極液画分が少なくとも1種の塩を含む水から製造された場合に、その触媒活性な陽極液画分は、H2O、H3O+、溶存酸素及び少なくとも1種の塩のアニオンを含み、とりわけそれらからなる。したがって、好ましい実施形態では、触媒活性な陽極液画分は、塩のカチオンを全く含まないか、又はわずかな割合のみ含む。
【0025】
好ましい実施形態では、完全脱塩水から製造された触媒活性な陽極液画分は、飽和濃度を上回る酸素含有量を有する。とりわけ、完全脱塩水から製造された触媒活性な陽極液画分は、15~25mg/l、好ましくは17~23mg/l、好ましくは19~21mg/l、特に好ましくは19.5~20mg/lの酸素含有量を有する。
【0026】
好ましい実施形態では、少なくとも1種の塩を含む水から製造された触媒活性な陽極液画分は、飽和濃度を上回る酸素含有量を有する。好ましくは実施形態では、少なくとも1種の塩を含む水から製造された触媒活性な陽極液画分は、15~30mg/l、好ましくは17~27mg/l、好ましくは19~25mg/l、特に好ましくは20~22mg/lの酸素含有量を有する。
【0027】
本発明により使用される触媒活性な陽極液画分は、好ましい実施形態では、公知の方法において触媒として使用される均一系の酸、とりわけ無機酸のpH値を上回るpH値を有する。それによれば、本発明による方法では一般的なpH値はまた、従来技術の酸触媒による方法において一般的なpH値を明らかに上回っている。有利には、本発明による方法は、均一系又は不均一系の形態の触媒を添加せずに、とりわけ均一系の酸又は無機酸を添加せずに実施することができる。したがって、好ましくは、本発明による方法では、とりわけ方法工程a)~d)、とりわけa)~c)では、触媒活性な陽極液画分を除いて、更なる触媒活性な成分は使用されない。
【0028】
本発明によれば、触媒活性な陽極液画分のpH値は、1.5~4.5、好ましくは2~4、好ましくは2.5~3.5、特に好ましくは2~3、とりわけ2~2.5である。
【0029】
特に好ましい一実施形態では、触媒活性な陽極液画分は水溶液である。本発明によれば、好ましくは、単相の手法が意図されている。好ましくは、二相の手法は除外される。好ましくは、相分離、とりわけ誘起相分離は意図されていない。
【0030】
特に好ましい実施形態では、本発明による方法では、とりわけ方法工程a)~d)、とりわけa)~c)では、有機溶剤を使用しないことが意図されている。とりわけ、方法工程a)~d)、とりわけa)~c)では、水と混和可能であるか又は水と混和可能ではない有機溶剤は使用されない。
【0031】
とりわけ、方法工程a)~d)は水溶液中で行われる。
【0032】
触媒活性な陽極液画分の他に、本発明による方法の工程a)では、フルクトース含有成分が準備される。フルクトース含有成分は、好ましくは、固体のフルクトース含有成分、とりわけフルクトース、又は液体のフルクトース含有成分、とりわけフルクトースシロップ、フルクトース/グルコースシロップ若しくはフルクトース溶液、とりわけフルクトース水溶液である。したがって、フルクトース含有成分は、本明細書ではフルクトース含有出発溶液とも称される。本発明によれば、フルクトース含有成分を、ショ糖若しくはデンプンから得ることもできるか、又はバイオマスから得られるグルコースを、フルクトースに異性化することができる。好ましくは、フルクトース含有成分は、40~100重量%、好ましくは50~90重量%、好ましくは60~85重量%のフルクトースの乾燥物質含有量(TS(英語ではDM))を有する。
【0033】
本発明の好ましい一実施形態では、工程a)において準備された成分を工程b)において混合して、5重量%~50重量%の炭水化物含有量(反応溶液の総重量に対する炭水化物の乾燥物質(以下ではTSとも))を有する反応溶液を得て、方法工程c)に従って転化させる。特に好ましくは、工程b)における反応溶液の炭水化物含有量は、10重量%~45重量%、好ましくは15重量%~40重量%、好ましくは25重量%~35重量%、好ましくは20重量%、30重量%、又は40重量%(それぞれ反応溶液の総重量に対する炭水化物のTS)である。
【0034】
本方法の好ましい一実施形態では、方法工程b)において得られる反応溶液のフルクトース含有量は、40重量%~100重量%、好ましくは70重量%~100重量%、好ましくは80重量%~100重量%、好ましくは90重量%~100重量%、好ましくは95重量%~100重量%、好ましくは40重量%~99重量%、好ましくは45重量%~99重量%、好ましくは50重量%~95重量%、好ましくは45重量%~90重量%、好ましくは55重量%~85重量%(それぞれ炭水化物成分、すなわち反応溶液中に存在する全ての炭水化物の乾燥物質に対するフルクトースのTS)である。
【0035】
本発明の特に好ましい一実施形態では、方法工程a)において準備された成分を工程b)において混合して、5重量%~50重量%、好ましくは10重量%~45重量%、好ましくは15重量%~40重量%、好ましくは25重量%~35重量%、好ましくは20重量%、30重量%、又は40重量%の炭水化物含有量(それぞれ反応溶液の総重量に対する炭水化物のTS)及び40重量%~100重量%、好ましくは70重量%~100重量%、好ましくは80重量%~100重量%、好ましくは90重量%~100重量%、好ましくは95重量%~100重量%、好ましくは40重量%~99重量%、好ましくは45重量%~99重量%、好ましくは50重量%~95重量%、好ましくは45重量%~90重量%、好ましくは55重量%~85重量%のフルクトース含有量(それぞれ炭水化物成分、すなわち反応溶液中に存在する全ての炭水化物の乾燥物質に対するフルクトースのTS)を有する反応溶液を得て、方法工程c)に従って転化させる。
【0036】
本発明の好ましい一実施形態では、反応溶液中のフルクトース含有成分の炭水化物含有量(乾燥物質)と触媒活性な陽極液画分(総重量)との比(フルクトース含有成分の炭水化物含有量(乾燥物質)の触媒活性な陽極液画分(総重量)に対する比)は、0.01~2.5、好ましくは0.02~2.0、好ましくは0.05~1.5、好ましくは0.1~1.0、好ましくは0.2~0.9、特に好ましくは0.3~0.8である。
【0037】
本発明の好ましい一実施形態では、反応溶液中のフルクトース含有成分の炭水化物含有量(乾燥物質)と触媒活性な陽極液画分(総重量)との比は、0.01~2.5、好ましくは0.02~2.0、好ましくは0.05~1.5、好ましくは0.1~1.0、好ましくは0.2~0.9、特に好ましくは0.3~0.8であり、反応溶液の炭水化物含有量は、全部合わせて、5重量%~50重量%、好ましくは10重量%~45重量%、好ましくは15重量%~40重量%、好ましくは25重量%~35重量%、好ましくは20重量%、30重量%、又は40重量%(それぞれ反応溶液の総重量に対する炭水化物のTS)である。
【0038】
本発明の好ましい一実施形態では、反応溶液中のフルクトース含有成分の炭水化物含有量(乾燥物質)と触媒活性な陽極液画分(総重量)との比は、0.01~2.5、好ましくは0.02~2.0、好ましくは0.05~1.5、好ましくは0.1~1.0、好ましくは0.2~0.9、特に好ましくは0.3~0.8であり、反応溶液の炭水化物含有量は、全部合わせて、5重量%~50重量%、好ましくは10重量%~45重量%、好ましくは15重量%~40重量%、好ましくは25重量%~35重量%、好ましくは20重量%、30重量%、又は40重量%(それぞれ反応溶液の総重量に対する炭水化物のTS)であり、その炭水化物含有量には、40重量%~100重量%、好ましくは70重量%~100重量%、好ましくは80重量%~100重量%、好ましくは90重量%~100重量%、好ましくは95重量%~100重量%、好ましくは40重量%~99重量%、好ましくは45重量%~99重量%、好ましくは50重量%~95重量%、好ましくは45重量%~90重量%、好ましくは55重量%~85重量%のフルクトース含有量(それぞれ炭水化物成分、すなわち反応溶液中に存在する全ての炭水化物の乾燥物質に対するフルクトースのTS)が含まれる。
【0039】
本発明の好ましい一実施形態では、反応溶液中のフルクトース含有成分のフルクトース含有量(乾燥物質)と触媒活性な陽極液画分(総重量)との比(フルクトース含有成分のフルクトース含有量(乾燥物質)の触媒活性な陽極液画分(総重量)に対する比)は、0.01~2.5、好ましくは0.02~2.0、好ましくは0.05~1.5、好ましくは0.1~1.0、好ましくは0.2~0.9、特に好ましくは0.3~0.8である。
【0040】
本発明の好ましい一実施形態では、反応溶液中のフルクトース含有成分のフルクトース含有量(乾燥物質)と触媒活性な陽極液画分(総重量)との比は、0.01~2.5、好ましくは0.02~2.0、好ましくは0.05~1.5、好ましくは0.1~1.0、好ましくは0.2~0.9、特に好ましくは0.3~0.8であり、反応溶液の炭水化物含有量は、全部合わせて、5重量%~50重量%、好ましくは10重量%~45重量%、好ましくは15重量%~40重量%、好ましくは25重量%~35重量%、好ましくは20重量%、30重量%、又は40重量%(それぞれ反応溶液の総重量に対する炭水化物のTS)である。
【0041】
本発明の好ましい一実施形態では、反応溶液中のフルクトース含有成分のフルクトース含有量(乾燥物質)と触媒活性な陽極液画分(総重量)との比は、0.01~2.5、好ましくは0.02~2.0、好ましくは0.05~1.5、好ましくは0.1~1.0、好ましくは0.2~0.9、特に好ましくは0.3~0.8であり、反応溶液の炭水化物含有量は、全部合わせて、5重量%~50重量%、好ましくは10重量%~45重量%、好ましくは15重量%~40重量%、好ましくは25重量%~35重量%、好ましくは20重量%、30重量%、又は40重量%(それぞれ反応溶液の総重量に対する炭水化物のTS)であり、その炭水化物含有量には、40重量%~100重量%、好ましくは70重量%~100重量%、好ましくは80重量%~100重量%、好ましくは90重量%~100重量%、好ましくは95重量%~100重量%、好ましくは40重量%~99重量%、好ましくは45重量%~99重量%、好ましくは50重量%~95重量%、好ましくは45重量%~90重量%、好ましくは55重量%~85重量%のフルクトース含有量(それぞれ炭水化物成分、すなわち反応溶液中に存在する全ての炭水化物の乾燥物質に対するフルクトースのTS)が含まれる。
【0042】
本発明の好ましい一実施形態では、反応溶液中の触媒活性な陽極液画分(総重量)とフルクトース含有成分の炭水化物含有量(乾燥物質)との比(触媒活性な陽極液画分(総重量)のフルクトース含有成分の炭水化物含有量(乾燥物質)に対する比)は、0.4~100、好ましくは0.5~50、好ましくは0.7~20、好ましくは1.0~10、特に好ましくは1.1~5、好ましくは1.25~3.3である。
【0043】
本発明の好ましい一実施形態では、反応溶液中の触媒活性な陽極液画分(総重量)とフルクトース含有成分のフルクトース含有量(乾燥物質)との比(触媒活性な陽極液画分(総重量)のフルクトース含有成分のフルクトース含有量(乾燥物質)に対する比)は、0.4~100、好ましくは0.5~50、好ましくは0.7~20、好ましくは1.0~10、特に好ましくは1.1~5、好ましくは1.25~3.3である。
【0044】
本発明によれば、好ましくは、方法工程b)において得られる反応溶液中の触媒活性な陽極液画分のアニオンの濃度は、1×10-5~0.5mol/l、好ましくは1.5×10-5~0.45mol/l、好ましくは1×10-4~0.4mol/l、好ましくは1×10-3~0.35mol/l、特に好ましくは0.01~0.3mol/lである。
【0045】
特に好ましい実施形態では、反応溶液の製造に使用される成分、すなわちとりわけ、フルクトース含有成分及び触媒活性な陽極液画分の混合、つまり本発明による方法の工程b)は、混合装置及び/又は導管内で行われる。混合装置又は導管、及び本方法の転化、すなわち工程c)が行われる反応器システムは、少なくとも1つの導管によって互いに接続されている空間的に隔離された構造単位に相当し得て、それらはまた、装置と隔離されているが一体的な構成部分に相当し得る。好ましくは、反応溶液は、ポンプ、とりわけ高圧ポンプを用いて反応器システムへと導入される。
【0046】
本発明の好ましい一実施形態では、工程a)において準備されるフルクトース含有成分、陽極液画分、又はその両方は、工程b)の前に90℃~200℃の温度に調整される。つまり、好ましくは、工程b)の前に、工程a)において準備された成分、すなわちフルクトース含有成分及び触媒活性な陽極液画分の少なくとも1つ、好ましくは全ては、互いに別個に90℃~200℃、好ましくは100℃~175℃、好ましくは150℃~175℃の温度に予熱される。本発明の好ましい一実施形態では、工程b)の前に、工程a)において準備された成分の少なくとも1つ、好ましくは全ては、120℃~180℃、好ましくは130℃~180℃、好ましくは140℃~180℃の温度に予熱される。とりわけ、工程b)の前に、工程a)において準備された成分の少なくとも1つ、好ましくは全ては、互いに別個に160℃、165℃、170℃、又は175℃の温度に予熱される。
【0047】
本発明の代替的な好ましい一実施形態では、工程b)において得られる反応溶液は、90℃~200℃の温度に調整される。つまり、好ましくは、工程a)において準備された成分の混合によって工程b)において得られる反応溶液は、好ましくは工程b)の後で工程c)の前に、90℃~200℃、好ましくは100℃~175℃、好ましくは150℃~175℃の温度に加熱される。好ましくは、工程b)において得られる反応溶液は、好ましくは工程b)の後で工程c)の前に、120℃~180℃、好ましくは130℃~180℃、好ましくは140℃~180℃の温度に加熱される。とりわけ、工程b)において得られる反応溶液は、160℃、165℃、170℃、又は175℃の温度に加熱される。
【0048】
特に好ましい実施形態では、本方法の後続工程c)、つまり反応溶液中に存在するフルクトースのHMFへの転化は、90~200℃、とりわけ120~195℃、とりわけ140~190℃、とりわけ150~180℃、とりわけ160~175℃、とりわけ165~170℃、とりわけ165~175℃、とりわけ170~175℃、とりわけ160~165℃、とりわけ165℃、とりわけ170℃、とりわけ175℃の温度で実施される。
【0049】
本発明によれば、本発明による方法の実施のために使用される温度は、好ましい実施形態では、どの時点でも、200℃まで、好ましくは175℃まで、とりわけ165℃までである。
【0050】
本発明の好ましい一実施形態では、工程c)における反応溶液中に含まれるフルクトースのHMFへの転化は、0.1~20分、とりわけ0.1~15分、とりわけ8~13分、とりわけ4~10分、とりわけ8~10分、好ましくは0.1~8分、好ましくは0.2~7分、好ましくは0.5~5分、好ましくは1~4分、好ましくは5~6分の期間で行われる。好ましくは、工程c)におけるフルクトースのHMFへの転化は、10分まで、好ましくは9分まで、好ましくは8分まで、好ましくは7分まで、好ましくは6分まで、好ましくは5分まで、好ましくは4分までの期間で行われる。
【0051】
好ましい実施形態では、本発明は、工程c)では1mol%~50mol%のフルクトース転化率が達成されることを意図している。好ましい一実施形態では、工程c)におけるフルクトースのHMFへの転化は、1mol%~50mol%、好ましくは5mol%~40mol%、好ましくは10mol%~30mol%、好ましくは15mol%~25mol%、好ましくは20mol%~25mol%のフルクトース転化率の調整で行われる。好ましくは、工程c)におけるフルクトースのHMFへの転化は、50mol%まで、好ましくは40mol%まで、好ましくは30mol%まで、好ましくは25mol%まで、好ましくは20mol%までのフルクトース転化率の調整で行われる。これは、本発明によれば、90℃~200℃の温度で行われる。
【0052】
本発明との関連では、「フルクトース転化率の調整」とは、フルクトースのHMFへの転化に使用される反応パラメーター、とりわけ反応器内の反応温度及び反応時間を、最大50mol%の限定されたフルクトースの転化率にのみ至り、それにより高いHMF選択性及びそれと関連して少ない副生成物の形成が達成され得るように選択することと解釈される。
【0053】
つまり、好ましくは、工程c)について、とりわけ本発明により好ましい反応温度を、場合により好ましい実施形態では反応時間も使用することによって、予め決められたパラメーターの範囲内で意図的に規定されたフルクトース転化率を提供することが可能である。これらのパラメーターに基づいて、本発明により好ましいHMF選択性を調整することもできる。本発明により好ましい様式では、所望のフルクトース転化率及び場合によりHMF選択性の調整は、この方法の間に試料を採取し、試料を分析し、引き続き、所望のフルクトース転化率値及び場合により所望のHMF選択性の達成のために維持又は適合されるべきパラメーターを見積もることによって行うことができる。
【0054】
特に好ましい一実施形態では、フルクトース含有成分中に含まれるフルクトースの転化は、工程c)において、90~200℃、好ましくは150~190℃、とりわけ160℃、165℃、170℃、又は175℃の温度で4~7分、好ましくは5~6分、とりわけ5.6分の期間にわたり行われる。これにより、好ましくは、1~50mol%のフルクトース転化率がもたらされる。
【0055】
本発明の好ましい一実施形態では、この方法は、工程c)において、60mol%~100mol%、好ましくは65mol%~100mol%、好ましくは70mol%~100mol%、好ましくは75mol%~100mol%、好ましくは80mol%~100mol%、好ましくは85mol%~100mol%、好ましくは90mol%~100mol%のHMF選択性が得られるように調整される。好ましくは、工程c)におけるHMF選択性は、少なくとも60mol%、好ましくは少なくとも65mol%、好ましくは少なくとも70mol%、好ましくは少なくとも75mol%、好ましくは少なくとも80mol%、好ましくは少なくとも85mol%、好ましくは少なくとも90mol%、好ましくは少なくとも95mol%である。
【0056】
本発明の好ましい一実施形態では、この方法は、工程c)において、60mol%~100mol%、好ましくは65mol%~100mol%、好ましくは70mol%~100mol%、好ましくは75mol%~100mol%、好ましくは80mol%~100mol%、好ましくは85mol%~100mol%、好ましくは90mol%~100mol%、好ましくは少なくとも60mol%、好ましくは少なくとも65mol%、好ましくは少なくとも70mol%、好ましくは少なくとも75mol%、好ましくは少なくとも80mol%、好ましくは少なくとも85mol%、好ましくは少なくとも90mol%、好ましくは少なくとも95mol%のHMF選択性及び1mol%~50mol%、好ましくは5mol%~40mol%、好ましくは10mol%~30mol%、好ましくは15mol%~25mol%、好ましくは20mol%~25mol%、好ましくは50mol%まで、好ましくは40mol%まで、好ましくは30mol%まで、好ましくは25mol%まで、好ましくは20mol%までのフルクトース転化率が得られるように調整される。
【0057】
本発明の特に好ましい一実施形態では、この方法は、工程c)において、60mol%~100mol%、好ましくは65mol%~100mol%、好ましくは70mol%~100mol%、好ましくは75mol%~100mol%、好ましくは80mol%~100mol%、好ましくは85mol%~100mol%、好ましくは90mol%~100mol%、好ましくは少なくとも60mol%、好ましくは少なくとも65mol%、好ましくは少なくとも70mol%、好ましくは少なくとも75mol%、好ましくは少なくとも80mol%、好ましくは少なくとも85mol%、好ましくは少なくとも90mol%、好ましくは少なくとも95mol%のHMF選択性及び1mol%~50mol%、好ましくは5mol%~40mol%、好ましくは10mol%~30mol%、好ましくは15mol%~25mol%、好ましくは20mol%~25mol%、好ましくは50mol%まで、好ましくは40mol%まで、好ましくは30mol%まで、好ましくは25mol%まで、好ましくは20mol%までのフルクトース転化率が得られるように調整され、これは、90~200℃、とりわけ140~190℃、とりわけ150~180℃、とりわけ160~175℃、とりわけ165~170℃、とりわけ165~175℃、とりわけ170~175℃、とりわけ160~165℃、とりわけ165℃、とりわけ170℃、とりわけ175℃の温度を用いて、0.1~20分、とりわけ0.1~15分、とりわけ8~13分、とりわけ4~10分、とりわけ8~10分、好ましくは0.1~8分、好ましくは0.2~7分、好ましくは0.5~5分、好ましくは1~4分、好ましくは5~6分の期間内で達成される。
【0058】
本発明との関連では、HMF選択性は、転化されたフルクトース割合に対するものであり、他の炭水化物、とりわけグルコースの割合は考慮されないままである。
【0059】
本発明の好ましい一実施形態では、HMF収率は、3~50mol%、好ましくは5~45mol%、好ましくは10~40mol%、好ましくは15~35mol%、特に好ましくは20~30mol%である。
【0060】
本発明の好ましい一実施形態では、工程c)において、反応溶液中に存在するフルクトースのHMFへの転化のための圧力は、反応溶液の沸騰と、それにより蒸気泡の発生とが避けられるように調整される。好ましくは、反応器システム内の反応溶液中に存在するフルクトースのHMFへの転化のための圧力は、0.1~2MPa、好ましくは0.2~1.5MPa、特に好ましくは1MPaである。
【0061】
本発明によれば、反応溶液中に存在するフルクトースを、工程c)において、温度、反応時間及び/又は圧力のような種々のパラメーターの調整下にHMFに転化させ、工程d)において液体のHMF含有生成物混合物を得ることが意図されている。つまり、好ましくは、この方法は、温度の、好ましくはまた反応時間の調整によって、意図的に1mol%~50mol%の限定されたフルクトースの転化率とし、それにより驚くほど高い、好ましくは60mol%~100mol%のHMF選択性が達成され得るように行われる。
【0062】
特に好ましい一実施形態では、本発明により意図される、方法工程c)及びd)による反応溶液中に存在するフルクトースをHMFへと転化させてHMFを得ることは、一段階の方法を意図している。とりわけ、方法工程c)及びd)による本発明による方法様式は、好ましくは二段階の方法様式ではない。
【0063】
好ましい一実施形態では、本方法は、
e)工程d)において得られた液体のHMF生成物混合物を、20℃~80℃、好ましくは25℃~70℃、好ましくは30℃~60℃、好ましくは30℃~55℃、好ましくは30℃~50℃、好ましくは30℃~45℃、好ましくは30℃~40℃、好ましくは80℃、好ましくは70℃、好ましくは60℃、好ましくは55℃、好ましくは50℃、好ましくは45℃、好ましくは40℃、好ましくは35℃、好ましくは30℃の温度に冷却する工程、
を更に含む。好ましくは、液体のHMF生成物混合物は、工程e)において75℃まで、好ましくは70℃まで、好ましくは60℃まで、好ましくは55℃まで、好ましくは50℃まで、好ましくは45℃まで、好ましくは40℃まで、好ましくは35℃までの温度に冷却される。これは、本発明によれば一又は二段階で行われ得る。
【0064】
本発明の好ましい一実施形態では、液体のHMF生成物混合物の温度は、工程e)において0.1~10分、好ましくは0.1~9分、好ましくは0.1~8分、好ましくは0.2~7分、好ましくは0.2~6分、好ましくは0.5~5分、好ましくは0.5~4分、好ましくは0.5~3分の期間で調整又は冷却される。好ましくは、生成物混合物の温度は、工程e)において10分まで、好ましくは9分まで、好ましくは8分まで、好ましくは7分まで、好ましくは6分まで、好ましくは5分まで、好ましくは4分まで、好ましくは3分まで、好ましくは2分まで、好ましくは1分まで、好ましくは0.5分までにおいて調整又は冷却される。
【0065】
それゆえ、工程d)において得られるHMF含有生成物混合物は、最大50mol%の限定されたフルクトース転化率が達成された後に、工程e)において20℃~80℃の温度に冷却される。これは、有利には、不所望な副生成物の形成及び形成されたHMFの分解をほとんど妨げる。
【0066】
本発明によるHMFの製造方法は、好ましくは、適切な反応器システムにおいて実施される。本発明によれば、好ましくは、この反応器システムは連続式反応器システムである。
【0067】
特に好ましい実施形態では、使用される連続式反応器システムは、管形反応器システムとして構成される。そのような連続式反応器システムは、当業者に公知の反応器システムである。特に好ましい実施形態では、逆混合の少ない連続式反応器システム、とりわけ連続システム(Konti-System)を使用することもできる。特に好ましい実施形態では、連続式反応器システムとしてプラグフロー反応器(PFR)を使用することができる。好ましい実施形態では、連続式反応器システムはまた、流管、撹拌槽、又は撹拌槽カスケードとして構成されていてもよい。本発明との関連では、プラグフロー反応器(PFR)とは、いわゆる理想的流管(IR)、すなわち内部にプラグフローが存在する管形反応器と解釈される。そのような反応器は、とりわけ、導通された反応溶液の混合、逆流、又は乱流が起こらずに、むしろ一様な貫流が起こりつつも物質変換が並行して行われることによっても特徴付けられる。プラグフロー反応器は、とりわけ、プラグフロー反応器中に供給されるどの物質も、とりわけ供給されるどの成分も同じ条件下で連続的に転化されること、すなわち全ての成分が同じ期間にわたる転化過程にさらされることを保証する。
【0068】
好ましい一実施形態では、本方法は、任意選択で、
f)液体のHMF生成物混合物を濾過、脱色及び/又は清浄化(精製)する工程、
を更に含む。
【0069】
すなわち、更なる好ましい一実施形態では、好ましくは適切なフィルター又は適切なフィルターシステムを介したHMF生成物混合物の濾過、並びに生成物混合物の脱色及び/又は清浄化、好ましくは活性炭を介した脱色及び/又は清浄化が行われる。好ましくは、工程e)の後に、適切なフィルター又は適切なフィルターシステムを介した生成物混合物の濾過、並びに生成物混合物の、例えば活性炭を介した脱色及び/又は清浄化が行われる。好ましくは、工程g)又はh)の前に、適切なフィルター又は適切なフィルターシステムを介した生成物混合物の濾過、並びに生成物混合物の、例えば活性炭を介した脱色及び/又は清浄化が行われる。特に好ましい実施形態では、方法工程e)及び/又は方法工程g)の後に、任意の順序で、適切なフィルター又は適切なフィルターシステムを介した濾過、生成物混合物の、とりわけ活性炭を介した脱色及び/又は清浄化、並びに場合により工程g)の後に、適切なフィルター又は適切なフィルターシステムを介した再度の濾過を実施することができる。特に好ましい実施形態では、工程e)及び/又は方法工程g)の後に、最初に適切なフィルター又は適切なフィルターシステムを介した濾過、次いでとりわけ活性炭を介した脱色及び/又は清浄化、そして場合により工程g)の後に、適切なフィルター又は適切なフィルターシステムを介した再度の濾過がこの順序で実施される。本発明により好ましくは、濾過のために金属焼結フィルターが使用される。
【0070】
好ましくは、適切なフィルター又は適切なフィルターシステムを介した生成物混合物の濾過、並びに例えば活性炭を介した脱色及び/又は清浄化によって、不所望な副生成物、とりわけ可溶性及び不溶性のフミン物質が生成物混合物から除去される。
【0071】
本発明の好ましい一実施形態では、工程e)又は場合により工程f)において得られる生成物混合物は、5~50重量%、好ましくは10~40重量%、好ましくは少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、好ましくは50重量%まで、好ましくは40重量%までの乾燥物質含有量を有する。
【0072】
工程e)又は場合により工程f)において得られる生成物混合物の乾燥物質含有量が低すぎる場合には、本発明によれば、本方法が、任意選択で、
g)液体のHMF生成物混合物を、20~70重量%、好ましくは25~60重量%、好ましくは25~50重量%、好ましくは30~45重量%、好ましくは30~40重量%の乾燥物質含有量に調整する工程、
を更に含むことが意図され得る。
【0073】
更なる好ましい一実施形態では、工程e)又は場合により工程f)において得られる生成物混合物は、20~70重量%、好ましくは少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、好ましくは70重量%まで、好ましくは60重量%まで、好ましくは50重量%までの乾燥物質含有量に調整される。
【0074】
好ましい一実施形態では、本方法は、
h)液体のHMF生成物混合物を、クロマトグラフィー、限外-及び/若しくはナノ濾過、適切な抽出剤による抽出、適切な材料への吸着に続いての標的脱着、並びに/又は電気透析によって精製して、少なくとも(1つの)HMF画分を分離する工程、並びに、
i)少なくともHMF画分を得る工程、
を更に含む。
【0075】
すなわち、好ましくは、上述の精製法の少なくとも1つを適用することによって、少なくともHMF画分が液体のHMF含有生成物混合物から分離されるため、例えば未転化のフルクトース、グルコース又は副生成物、例えば有機酸及びフミンのような、生成物混合物中に含まれる他の成分のみが残る。本発明によれば、少なくともHMF画分及び/又は場合により生成物混合物の1種以上の他の成分を含む別の画分の分離のために、上述の精製法の少なくとも2つ以上の組合せを適用することも意図され得る。
【0076】
代替的な好ましい一実施形態では、本方法は、
h)液体のHMF生成物混合物を、クロマトグラフィー、限外-及び/若しくはナノ濾過、適切な抽出剤による抽出、適切な材料への吸着に続いての標的脱着、並びに/又は電気透析によって精製して、HMF画分、グルコース画分、フルクトース画分、及び有機酸画分からなる群から選択される少なくとも1つの画分を分離する工程、並びに
i)HMF画分、グルコース画分、フルクトース画分、及び有機酸画分からなる群から選択される少なくとも1つの画分を得る工程、
を更に含む。
【0077】
工程i)において得られた画分の少なくとも1つを、クロマトグラフィー、限外-及び/若しくはナノ濾過、適切な抽出剤による抽出、適切な材料への吸着に続いての標的脱着、並びに/又は電気透析からなる群から選択される精製法を用いて更に処理することが更に意図され得る。
【0078】
本発明による方法において意図される精製法の1つは、限外-及び/又はナノ濾過である。この場合に、適切な膜を介して、一方では液体のHMF含有生成物混合物の濃縮を行うことができるが、他方では可溶性及び/若しくは不溶性のフミンの除去も、又はナノ濾過の場合には、生成物混合物からのHMF及び/若しくは有機酸の分離も行うことができる。したがって、好ましくは、限外-及び/又はナノ濾過によって、濃縮された生成物混合物、可溶性及び/若しくは不溶性のフミン物質を含まない生成物混合物、HMF画分及びHMFを含まない生成物混合物、HMF画分及び/若しくは有機酸画分並びにHMF及び/若しくは有機酸を含まない生成物混合物、又はグルコース及び/若しくはフルクトース画分並びにフミン及び/若しくはグルコース及び/若しくはフルクトースを含まない生成物混合物を得ることができる。
【0079】
本発明による方法において意図される更なる精製法は、適切な抽出剤による抽出である。HMF含有生成物混合物からHMFを抽出するために、好ましくは、水と混和可能でなく又はほとんど混和可能でなく、HMFに対して十分に高い親和性を有する溶剤が使用される。理想的には、有機溶剤の沸点が好ましくは比較的低く、水と溶剤との間の密度差が十分に高く、その結果相分離が達成され得る。適切な溶剤は、好ましくは、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ブタノール、ジエチルエーテル、メチルブチルエーテル、イソアミルアルコール、又はメチルテトラヒドロフラン等である。抽出工程後に、未転化のフルクトース及びグルコースを含有する水性の生成物混合物が残り、HMF及び場合により有機酸を含む有機相が得られる。
【0080】
本発明による方法において意図される更なる精製法は、適切な材料への吸着に続いての脱着である。HMFの吸着は、原則的に、好ましくは六炭糖含有溶液からHMFを吸着するあらゆる材料で行うことができる。好ましい材料は、ポリマーベースの樹脂、例えばジビニルベンゼン-スチレンコポリマー、吸着樹脂、活性炭、ゼオライト、酸化アルミニウム、非官能化樹脂、又はカチオン交換樹脂である。工程e)、f)又はg)において得られる生成物混合物を、好ましくは連続的に、しかしながら最大では材料が尽きるまで、HMF吸着材料と接触させる。引き続き、吸着されたHMFは、適切な脱着剤、例えば水又は極性有機溶剤、例えばアルコール、酢酸エチル、又はTHF等を用いて脱着される。次いで、有機溶剤から適切な方法によってHMFを得ることができる。
【0081】
本発明による方法において意図される更なる精製法は、電気透析である。電気透析は、イオン交換膜を電位差と組み合わせて利用して、溶液中のイオン性種を非荷電種又は不純物から分離する電気化学的に駆動される膜プロセスである。本方法の場合に、電気透析を利用して、生成物混合物から、無機及び/又は有機のカチオン及びアニオン、例えば陽極液画分からの電解質、副生成物としてのレブリン酸及びギ酸を除去することができる。
【0082】
本発明による方法において意図される更なる精製法は、クロマトグラフィーである。クロマトグラフィーは、以下でより詳細に説明される。
【0083】
前述の全ての精製法は、個別に、又は互いに組み合わせても適用することができる。
【0084】
特に好ましくは、工程h)において、クロマトグラフィー法を使用して、とりわけイオン交換樹脂、とりわけカチオン交換樹脂上でのクロマトグラフィーによって、とりわけイオン交換樹脂、とりわけカチオン交換樹脂上での一又は多段階のクロマトグラフィーによって、生成物混合物中に含まれるHMFが、生成物混合物の他の成分から分離される。
【0085】
本発明の特に好ましい一実施形態では、クロマトグラフィー、とりわけイオン交換樹脂上でのクロマトグラフィー、とりわけカチオン交換樹脂上でのクロマトグラフィーは、イオン交換クロマトグラフィー、とりわけカチオン交換クロマトグラフィーである。
【0086】
本発明の好ましい一実施形態では、液体のHMF生成物混合物は、工程h)において、クロマトグラフィーによって、HMF画分、グルコース画分、フルクトース画分、及び有機酸画分を含む少なくとも4つの画分に分離され、工程i)において、少なくともHMF画分、グルコース画分、フルクトース画分、及び有機酸画分が得られる。
【0087】
特に好ましくは、工程e)、場合によりf)又は場合によりg)において得られる生成物混合物の工程h)による精製は、クロマトグラフィーによって連続的に行われる。連続的なクロマトグラフィーとは、好ましくは、擬似的な(シミュレート)向流クロマトグラフィー、例えば、擬似移動床クロマトグラフィー(SMB)とも解釈される。
【0088】
連続的なクロマトグラフィー法は、当業者に一般的に公知である。例えば、US2011/0137084A1には、SMB法の機能様式が示されている。更なる適切なクロマトグラフィー法は、A. Rajendranら、J. Chromatogr. A 1216 (2009)、第709頁~第738頁に開示されている。
【0089】
擬似移動床(SMB)システム又はSMBシステムの更なる発展形、例えば、逐次式(Sequential)SMB(SSMB)、間欠式(Intermittent)/改良型(Improved)SMB(ISMB)、若しくはNew MCI (NMCI)により、有利な様式で、記載される4つの画分の連続的な運転様式での分離及び回収が可能となる。
【0090】
本発明の好ましい一実施形態では、工程h)におけるクロマトグラフィー、とりわけイオン交換樹脂上でのクロマトグラフィーは、擬似移動床法(SMB)、逐次式擬似移動床法(SSMB)、又は改良型擬似移動床法若しくは間欠式擬似移動床法(ISMB)である。好ましくは、工程h)におけるクロマトグラフィー、とりわけイオン交換樹脂上でのクロマトグラフィーは、擬似移動床法(SMB)、逐次式擬似移動床法(SSMB)、改良型擬似移動床法(ISMB)、又はNew MCI法(NMCI)である。工程h)における擬似移動床法(SMB)、逐次式擬似移動床法(SSMB)、改良型擬似移動床法(ISMB)、又はNew MCI法(NMCI)の使用によって、有利には、工程e)、f)又はg)において得られる生成物混合物を精製して、HMF画分、グルコース画分、フルクトース画分、及び有機酸画分に分離することを、連続的な運転様式で実施することが可能である。
【0091】
本発明の好ましい一実施形態では、工程h)におけるクロマトグラフィー、とりわけイオン交換樹脂上での、とりわけカチオン交換樹脂上でのクロマトグラフィーは一段階法である。好ましくは、工程h)におけるクロマトグラフィー、とりわけイオン交換樹脂上での、とりわけカチオン交換樹脂上でのクロマトグラフィーは多段階法、好ましくは二段階法である。
【0092】
好ましくは、工程h)におけるクロマトグラフィー、とりわけイオン交換樹脂上での、とりわけカチオン交換樹脂上でのクロマトグラフィーは、複数の段階、好ましくは少なくとも2つの段階、好ましくは少なくとも3つの段階、好ましくは2つの段階、好ましくは3つの段階を含む。
【0093】
本発明の好ましい一実施形態では、工程h)においてクロマトグラフィーの第1段階で、少なくとも1つの画分、好ましくは正確に1つの画分、とりわけHMF画分又はグルコース画分が、好ましくは少なくとも2つの画分、好ましくは正確に2つの画分、好ましくは正確に3つの画分が分離される。
【0094】
本発明の更なる好ましい一実施形態では、工程h)においてクロマトグラフィーの第2段階で、少なくとも1つの画分、好ましくは正確に1つの画分、好ましくは少なくとも2つの画分、好ましくは正確に2つの画分、好ましくは正確に3つの画分、とりわけグルコース画分、フルクトース画分、及び有機酸画分又はHMF画分、フルクトース画分及び有機酸画分が分離される。
【0095】
本発明の好ましい一実施形態では、工程h)におけるクロマトグラフィーの第1段階は、擬似移動床法(SMB)、逐次式擬似移動床法(SSMB)、改良型擬似移動床法(ISMB)及びNew MCI法(NMCI)からなる群から選択されるクロマトグラフィー法である。
【0096】
好ましくは、工程h)におけるクロマトグラフィーの第1段階は、改良型擬似移動床法(ISMB)である。好ましくは、工程h)において第1段階で、少なくとも1つの画分、好ましくは正確に1つの画分、とりわけHMF画分又は有機酸画分が、擬似移動床法(SMB)、逐次式擬似移動床法(SSMB)、改良型擬似移動床法(ISMB)及びNew MCI法(NMCI)からなる群から選択されるクロマトグラフィー法によって、好ましくは改良型擬似移動床法(ISMB)によって分離される。
【0097】
本発明の好ましい一実施形態では、工程h)におけるクロマトグラフィーの第2段階は、擬似移動床法(SMB)、逐次式擬似移動床法(SSMB)、改良型擬似移動床法(ISMB)及びNew MCI法(NMCI)からなる群から選択されるクロマトグラフィー法である。
【0098】
好ましくは、工程h)におけるクロマトグラフィーの第1段階は、New MCI法(NMCI)である。好ましくは、工程h)において第2段階で、少なくとも1つの画分、好ましくは正確に1つの画分、好ましくは少なくとも2つの画分、好ましくは正確に2つの画分、好ましくは少なくとも3つの画分、好ましくは正確に3つの画分、とりわけグルコース画分、フルクトース画分及び有機酸画分、又はHMF画分、フルクトース画分及び有機酸画分が、擬似移動床法(SMB)、逐次式擬似移動床法(SSMB)、改良型擬似移動床法(ISMB)及びNew MCI法(NMCI)からなる群から選択されるクロマトグラフィー法によって、好ましくはNew MCI法(NMCI)によって分離される。
【0099】
とりわけ、第1段階でHMF画分が分離される少なくとも2段階のクロマトグラフィー分離が好ましい。或いは、第1段階ではグルコース画分も分離され得る。好ましくは、少なくとも2段階のクロマトグラフィー分離の第1段階は、移動床法(ISMB)である。好ましくは、少なくとも2段階のクロマトグラフィー分離の第2段階は、New MCI法(NMCI)ある。
【0100】
とりわけ、第1段階でHMF画分が分離される2段階のクロマトグラフィー分離が好ましい。或いは、第1段階ではグルコース画分も分離され得る。好ましくは、2段階のクロマトグラフィー分離の第1段階は、移動床法(ISMB)である。好ましくは、2段階のクロマトグラフィー分離の第2段階は、New MCI法(NMCI)ある。好ましくは、2段階のクロマトグラフィー分離の第2段階において、有機酸画分、フルクトース画分、及びグルコース画分が互いに分離される。或いは、2段階のクロマトグラフィー分離の第2段階において、有機酸画分、フルクトース画分、及びHMF画分が互いに分離される。
【0101】
本発明の好ましい一実施形態では、工程h)におけるクロマトグラフィー、とりわけイオン交換樹脂上でのクロマトグラフィーは、カチオン交換樹脂上でのクロマトグラフィーである。
【0102】
本発明の好ましい一実施形態では、工程h)におけるクロマトグラフィー、とりわけイオン交換樹脂上でのクロマトグラフィーは、H+形態のカチオン交換樹脂を使用して実施される。
【0103】
好ましい一実施形態では、工程h)におけるクロマトグラフィー、とりわけイオン交換樹脂上でのクロマトグラフィーは、40℃~80℃、好ましくは40℃~70℃、好ましくは40℃~60℃、好ましくは50℃~80℃、好ましくは50℃~70℃、好ましくは50℃~60℃、好ましくは60℃~80℃、好ましくは60℃~70℃の温度で実施される。
【0104】
場合により工程i)において得られるフルクトース画分は、好ましくは連続的に方法工程a)へと返送される。この場合に、工程i)において場合により得られるフルクトース画分からは、形成されたレブリン酸が、有利にはほとんど、好ましくは完全に除去されている。更なる好ましい一実施形態では、工程i)において得られるフルクトース画分からは、形成されたレブリン酸及びギ酸が、有利にはほとんど、好ましくは完全に除去されている。
【0105】
特に好ましい一実施形態では、場合により工程i)において得られるフルクトース画分は、場合により濃縮後に、連続的に、好ましくは完全に工程a)へと返送される。更なる好ましい一実施形態では、工程i)において得られるフルクトース画分は、連続的に、場合により濃縮後に、少なくとも部分的に、とりわけ少なくとも70%が、好ましくは少なくとも80%が、好ましくは少なくとも90%が、好ましくは少なくとも95%が、好ましくは少なくとも98%が、好ましくは少なくとも99%が工程a)へと返送される(それぞれ、工程i)において得られるフルクトース画分に対する返送されるフルクトース画分の重量%)。
【0106】
本発明によれば、「返送される(返送された)フルクトース画分」とは、本発明による方法に従って実施された精製、つまり工程h)後に場合により得られる未転化のフルクトースの水性画分であって、フルクトース転化の間に形成された副生成物、とりわけレブリン酸及びギ酸並びにフミン物質がほとんど、好ましくは完全に除去されている画分と解釈される。この場合に、未転化のフルクトースの得られた水性画分は、好ましい一実施形態では直接的に、場合により濃縮後に、すなわち更なる精製なしに方法工程a)へと返送され、フルクトース含有成分及び触媒活性な陽極液画分との混合、すなわち工程b)の後に、工程c)でのHMFへの更なる転化に利用可能であるほど高い純度を有する。したがって、特に好ましくは、本発明による方法の工程a)は、フルクトース含有成分、触媒活性な陽極液画分、及び返送されたフルクトース画分を準備することを意図しており、これらは工程b)において混合されて、反応溶液が得られる。この好ましい実施形態では本発明による方法の開始時には、最初はまだ返送されたフルクトース画分は利用可能ではないので、この場合にはその代わりに、好ましくは相応してより多量のフルクトース含有成分が使用される。
【0107】
本発明による方法の工程i)では、つまり精製の実施後に、場合によりHMF画分の他にグルコース画分、フルクトース画分、及び有機酸画分が得られ、とりわけ単離される。有利には、使用される精製法を介して得られた個々の画分は、直接的に、場合により濃縮後に、すなわち更なる精製なしに種々の後続過程で使用され得るほど高い純度を有する。
【0108】
本発明によれば、好ましくは、場合により得られるフルクトース画分は、形成されたレブリン酸をほとんど含まず、とりわけ完全に含まない。本発明によれば、好ましくは、得られるフルクトース画分は、形成された有機酸、とりわけレブリン酸及びギ酸をほとんど含まず、とりわけ完全に含まない。
【0109】
レブリン酸は、不利なことにHMF合成の間のフミン物質の形成を促進する。こうして、好ましい一実施形態に従って返送されたフルクトース画分によって引き起こされる反応溶液中のレブリン酸含有量の増加は、HMF及び炭水化物からのフミン物質の形成の増加をもたらすため、プロセスの経済性を大幅に低下させる。しかしながら、本発明による方法において場合により工程i)において得られるフルクトース画分は、有利には、好ましい一実施形態では直接的に、場合により濃縮後に、とりわけ精製工程なしに更なる転化のためにこの方法へと、とりわけ工程a)へと返送することができるほど高い純度を有し、とりわけ形成されたレブリン酸を含まず、特に好ましくはレブリン酸及びギ酸を含まない。とりわけ、本発明による方法により意図されるフルクトースの転化の制限と、それにつながる副及び分解生成物、とりわけレブリン酸及びギ酸並びにフミン物質の形成の低下とによって、並びに、好ましい実施形態では生成物混合物から分離された未転化のフルクトースの画分の返送によって、高いHMF選択性及び高いHMF収率がもたらされる。
【0110】
驚くべきことに、本発明による手法では、フルクトース純度とHMF選択性との間に逆の関係が明らかとなり、すなわち、反応溶液中のフルクトース割合が減少するほど、HMFの選択性が増加する。
【0111】
特に好ましい一実施形態では、本発明による方法は方法工程a)、b)、c)及びd)からなり、とりわけこれらの方法工程の間に更なる方法工程は実施されない。
【0112】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明による方法は、方法工程a)、b)、c)及びd)を含み、方法工程a)、b)、c)及びd)の間に更なる方法工程は実施されないが、任意選択で方法工程d)の実施後に更なる方法工程が実施される。
【0113】
本発明によれば、本方法は、工程a)~d)、好ましくはa)~e)、好ましくはa)~f)、好ましくはa)~g)、好ましくはa)~h)、とりわけa)~i)を含む。本発明によれば、特に好ましくは、本方法は、工程a)、b)、c)、d)、e)、f)、g)、h)及びi)を含む。しかしながら、本方法が工程a)、b)、c)、d)、e)、h)及びi)又はa)、b)、c)、d)、e)、f)、h)及びi)又はa)、b)、c)、d)、e)、g)、h)及びi)を含むことも意図され得る。特に好ましい実施形態では、本方法は、方法工程a)~d)、好ましくはa)~e)、好ましくはa)~f)、好ましくはa)~g)、好ましくはa)~h)、とりわけa)~i)からなる。特に好ましい実施形態では、本方法は、方法工程a)、b)、c)、d)、e)、h)及びi)又はa)、b)、c)、d)、e)、f)、h)及びi)又はa)、b)、c)、d)、e)、g)、h)及びi)からなる。好ましい実施形態では、この方法は、方法工程a)、b)、c)、d)、e)、f)、g)、h)及びi)の順序で実施される。しかしながら、本方法が方法工程a)、b)、c)、d)、e)、h)及びi)又はa)、b)、c)、d)、e)、f)、h)及びi)又はa)、b)、c)、d)、e)、g)、h)及びi)の順序で実施されることも意図され得る。
【0114】
本発明によれば、工程a)~i)による5-ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法において、反応混合物中に存在するフルクトースのHMFへの転化が連続式反応器システム中で行われ、引き続き、得られた生成物混合物の精製を連続的に行うことにより、すなわち出発物質を一定に供給し生成物を取り出しつつ、少なくとも4つの画分が分離される。
【0115】
好ましくは、連続的な本発明による方法とは、反応器システムのみでなく、生成物混合物の精製も連続的である方法と解釈される。
【0116】
本発明は、HMF及び/又はギ酸及び/又はレブリン酸の製造のための、とりわけ出発材料、すなわちフルクトース含有成分及び場合により返送されたフルクトース画分からの同時の製造のための方法の提供を可能にする。
【0117】
したがって、好ましい実施形態では、本発明によるHMFの製造方法は、工程a)~i)を含み、3つの関心が持たれる生成物の意図した製造に用いられる、HMF及びギ酸及びレブリン酸の製造方法でもある。
【0118】
したがって、好ましい実施形態では、本発明によるHMFの製造方法は、工程a)~i)を含み、2つの関心が持たれる有用物質の製造に用いられる、HMF及びギ酸の製造方法でもある。
【0119】
したがって、好ましい実施形態では、本発明によるHMFの製造方法は、工程a)~i)を含み、2つの関心が持たれる有用物質の製造に用いられる、HMF及びレブリン酸の製造方法でもある。
【0120】
本発明によれば、工程i)において得られるグルコース画分は、生成物混合物に含まれるグルコースの少なくとも20重量%(それぞれ生成物混合物に対するTS)を含む。
【0121】
本発明の更なる好ましい一実施形態では、場合により、工程i)において得られるグルコース画分は、直接的に、場合により濃縮後に、供給物(供給材料)として、とりわけエタノール製造、とりわけエタノールへのグルコース発酵のための発酵プロセスにおいても、出発物質として、とりわけグルコースのグルコン酸への酸化の化学的プロセスにおいても使用することができるほど十分に高い純度を有し、とりわけ発酵阻害物質を含まない。
【0122】
更なる好ましい一実施形態では、場合により工程i)において得られるグルコース画分は、エタノール製造、とりわけエタノールへのグルコース発酵のために、とりわけバイオエタノールを得るために、及び/又はグルコン酸を得るために使用される。
【0123】
したがって、本発明はまた、とりわけエタノール製造、とりわけエタノールへのグルコース発酵のための発酵プロセスのための供給物製造のための、又はとりわけグルコン酸の製造のための化学的プロセスにおける出発材料、すなわち出発物質製造のための方法を提供し、その範囲で、方法工程a)~i)を含む本発明の方法を実施することで、供給物又は出発物質として使用され得るグルコース画分が得られる。
【0124】
特に好ましい一実施形態では、エタノール製造、とりわけエタノールへのグルコース発酵のための方法が提供され、その範囲で、本発明による方法、とりわけ方法工程a)~i)を実施することで、とりわけグルコース画分が得られ、得られたグルコース画分は、エタノール製造、とりわけエタノールへのグルコース発酵のために、とりわけバイオエタノールを得るために使用される。
【0125】
更なる好ましい一実施形態では、場合により工程i)において得られるグルコース画分は、場合により濃縮後にグルコン酸を得るために使用される。
【0126】
特に好ましい一実施形態では、グルコン酸の製造方法が提供され、この本発明による方法は、とりわけ、グルコースを得るために及びグルコースをグルコン酸へと引き続き酸化させるために使用されるグルコース画分を得るために、とりわけ方法工程a)~i)を含む。
【0127】
本発明の好ましい一実施形態では、場合により工程i)において得られる有機酸画分は、レブリン酸及びギ酸の単離のために使用される。更なる好ましい一実施形態では、工程i)において得られる有機酸画分は、レブリン酸の単離のために使用される。更なる好ましい一実施形態では、工程i)において得られる有機酸画分は、ギ酸の単離のために使用される。
【0128】
したがって、本発明はまた、レブリン酸、ギ酸、又はレブリン酸及びギ酸の製造方法に関し、工程a)~i)を含む本発明の方法を実施し、工程i)においてレブリン酸、ギ酸、又はレブリン酸及びギ酸を得る。
【0129】
本発明の更なる好ましい一実施形態では、工程i)において得られるHMF画分は、直接的に、場合により濃縮後に、すなわち費用のかかる更なる精製を必要とせずに、追加の工程において2,5-フランジカルボン酸(FDCA)へと酸化される。
【0130】
したがって、本発明はまた、本発明の工程a)~i)を含むFDCAの製造方法に関し、工程i)において得られるHMF画分は、好ましくは直接的に、場合により濃縮後に、費用のかかる更なる精製を必要とせずに、FDCAへと酸化される。
【0131】
本発明によれば、場合により得られるグルコース画分は、0.8重量%~100重量%のグルコース、0重量%~99.2重量%のフルクトース、2重量%まで、好ましくは1重量%まで、好ましくは0.5重量%まで、好ましくは0.1重量%までのレブリン酸及びギ酸、並びに10重量%まで、好ましくは5重量%まで、好ましくは2重量%まで、より好ましくは1重量%まで、好ましくは0.5重量%まで、好ましくは0.1重量%までのHMFを含有する(それぞれ、分析される成分(グルコース、フルクトース、レブリン酸、ギ酸、HMF、ジフルクトース無水物(DFA))の合計に対するTS)。本発明によれば、好ましくは、グルコース画分は、10重量%まで、より好ましくは5重量%までのHMFを含有する。
【0132】
場合により工程i)において得られるフルクトース画分は、本発明によれば、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%の生成物混合物中に含まれるフルクトースを含有する(それぞれ生成物混合物に対するTS)。
【0133】
本発明によれば、場合により得られるフルクトース画分は、0重量%~60重量%のグルコース、40重量%~100重量%のフルクトース、2重量%まで、好ましくは1重量%まで、好ましくは0.5重量%まで、好ましくは0.1重量%までのレブリン酸、2重量%まで、好ましくは1.5重量%まで、好ましくは1重量%まで、好ましくは0.5重量%まで、好ましくは0.25重量%まで、好ましくは0.1重量%までのギ酸、及び2重量%まで、好ましくは1.5重量%まで、好ましくは1重量%まで、好ましくは0.8重量%まで、好ましくは0.6重量%まで、好ましくは0.4重量%まで、好ましくは0.2重量%まで、好ましくは0.1重量%までのHMFを含有する(それぞれ、分析される成分(グルコース、フルクトース、レブリン酸、ギ酸、HMF、ジフルクトース無水物(DFA))の合計に対するTS)。本発明によれば、好ましくは、フルクトース画分は、2重量%までのHMFを含有する。本発明によれば、好ましくは、フルクトース画分は、2重量%までのレブリン酸を含有する。特に好ましい実施形態では、フルクトース画分中のフルクトースとグルコースとの比は、工程a)において準備されるフルクトース含有成分中よりも小さくない。
【0134】
本発明によれば、場合により工程i)において得られる有機酸画分は、少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも65重量%、好ましくは少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%、好ましくは少なくとも99重量%、好ましくは少なくとも99.5重量%、好ましくは少なくとも99.8重量%、好ましくは100重量%の生成物混合物中に含まれるレブリン酸及びギ酸を含有する(それぞれ生成物混合物に対するTS)。
【0135】
本発明によれば、場合により得られる有機酸画分は、50重量%~100重量%、好ましくは60重量%~100重量%、好ましくは、より好ましくは65重量%~100重量%、好ましくは70重量%~100重量%、好ましくは80重量%~100重量%、好ましくは90重量%~100重量%、好ましくは95重量%~100重量%、好ましくは98重量%~100重量%、好ましくは99重量%~100重量%、好ましくは99.5重量%~100重量%、好ましくは99.7重量%~100重量%のレブリン酸及びギ酸を含有する(それぞれ、分析される成分(グルコース、フルクトース、レブリン酸、ギ酸、HMF、ジフルクトース無水物(DFA))の合計に対するTS)。本発明によれば、好ましくは、有機酸画分は、少なくとも50重量%のレブリン酸、より好ましくは少なくとも60重量%のレブリン酸、より好ましくは少なくとも70重量%のレブリン酸を含有する。
【0136】
工程i)において得られるHMF画分は、本発明によれば、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも98重量%、好ましくは少なくとも99重量%、好ましくは少なくとも99.5重量%、好ましくは少なくとも99.8重量%、好ましくは100重量%の生成物混合物中に含まれるHMFを含有する(それぞれ生成物混合物に対するTS)。
【0137】
本発明によれば、HMF画分は、80重量%~100重量%、好ましくは85重量%~100重量%、好ましくは90重量%~100重量%、好ましくは95重量%~100重量%、好ましくは98重量%~100重量%、好ましくは99重量%~100重量%、好ましくは99.5重量%~100重量%、好ましくは99.7重量%~100重量%のHMF及び16重量%まで、好ましくは14重量%まで、好ましくは12重量%まで、好ましくは10重量%まで、好ましくは8重量%まで、好ましくは6重量%まで、好ましくは4重量%まで、好ましくは2重量%まで、好ましくは1重量%までのレブリン酸及びギ酸、2重量%まで、好ましくは1重量%まで、好ましくは0.8重量%まで、好ましくは0.6重量%まで、好ましくは0.4重量%まで、好ましくは0.2重量%まで、好ましくは0.1重量%までのグルコース及び2重量%まで、好ましくは1重量%まで、好ましくは0.8重量%まで、好ましくは0.6重量%まで、好ましくは0.4重量%まで、好ましくは0.2重量%まで、好ましくは0.1重量%までのフルクトースを含有する(それぞれ、分析される成分(グルコース、フルクトース、レブリン酸、ギ酸、HMF、ジフルクトース無水物(DFA))の合計に対するTS)。
【0138】
好ましい一実施形態では、本発明による方法では、とりわけ工程a)~g)、場合によりa)~i)の間に、有機溶剤、とりわけイオン液体は使用されない。
【0139】
好ましい一実施形態では、本発明による方法は、とりわけ工程a)~i)の間に、減酸素条件下で実施されない。
【0140】
本発明との関連では、「及び/又は」という語句は、「及び/又は」という語句によって接続されている群の全ての成員が、互いに択一的にも、任意の組合せでそれぞれ互いに累加的にも開示されていると解釈される。これは、「A、B及び/又はC」という語句の場合に、以下の開示内容:A若しくはB若しくはC又は(A及びB)若しくは(A及びC)若しくは(B及びC)又は(A及びB及びC)と解釈されるべきであることを意味する。
【0141】
本発明との関連では、「含む」という語句は、その語句が明確に対象とする要素に追加して、なお更なる明確に挙げられていない要素も加わることができると解釈される。本発明との関連では、これらの語句は明示的に挙げられた要素を単独で対象とし、更なる要素が存在しないこととも解釈される。この特別の実施形態では、「含む」という語句の意味は、「~からなる」という語句と同義である。その上、「含む」という語句はまた、明確に挙げられた要素の他に、挙げられていないが、機能的及び質的に下位の性質がある更なる要素も含む全体を対象とする。この実施形態では、「含む」という語句は、「実質的に~からなる」という語句と同義である。
【0142】
更なる好ましい実施形態は、従属形式請求項から明らかである。
【0143】
本発明を、以下の実施例及び添付の図面に基づきより詳細に説明する。
【実施例
【0144】
[実施例]
本発明の方法では、出発材料として、フルクトースとグルコースとの様々な比を有するフルクトース含有成分、及び触媒活性な陽極液画分が使用される。整水器(Titanion SE Ultra)において、対応する電解質が加えられたVE水から触媒活性な陽極液画分を製造する。フルクトース含有成分を触媒活性な陽極液画分と混合して、20~40重量%の乾燥物質含有量(反応溶液の総重量に対する炭水化物のTS)を有する反応溶液を得る。こうして得られた反応溶液を、HPLCポンプを用いて管形反応器(外径8mm、内径6mm、長さ630mm)の加熱された「加熱ゾーン」へとポンプ圧送し、そこで転化させる。この管形反応器は二重管式熱交換器として向流で構成されており、温度調節は外側ジャケットにおいて熱媒油によって行われる。熱媒油はサーモスタットによって温度調節される。「加熱ゾーン」の後に「冷却ゾーン」への移行部が直接続いている。冷却ゾーンは同様に、二重管式熱交換器として向流で構成されている(生成物を導通する管の外径8mm、内径6mm、長さ125mm)。「冷却ゾーン」内で、反応溶液を室温に冷却して、転化を止める。続いて、生成物混合物を金属焼結フィルター(細孔幅7μm)を介して濾過し、場合によって生成する不溶性のフミン物質を除去する。反応溶液の沸騰と、それにより蒸気泡の発生とが避けられるように、反応器システム内の圧力を圧力保持弁を用いて調整する(180℃で約1MPa)。
【0145】
以下の例は、種々のフルクトース含有成分、製造の異なる触媒活性な陽極液画分、種々のTS含有量を用いた及び異なる温度での本発明による方法の実施を示す。
【0146】
全ての実験で、試験の間に試料を採取し、HPLCによって分析した(BIORAD Aminex 87-H、5mmol/lの硫酸、50℃)。引き続き、分析結果からフルクトース転化率、HMF選択性、及び収支を計算した(収支=(未転化の糖、HMF、及びギ酸の合計(mol)×100/使用された糖(mol))。1分子のHMFから各1分子のギ酸及びレブリン酸が生成するため、収支においてレブリン酸は考慮されない。
【0147】
例1:0.18%のNaClをベースとする触媒活性な陽極液画分を用いた170℃でのHMF合成(MMR 112)
フルクトース含有成分として、95%のフルクトース純度及び70%のTS含有量を有するフルクトースシロップを使用した。0.18重量%の含有量の塩化ナトリウムを含有し、2.3のpH値を有した電解質溶液から、触媒活性な陽極液画分を製造した。フルクトースシロップを、触媒活性な陽極液画分により20%の炭水化物のTSのTS含有量まで希釈した。次いで、この反応溶液を、加熱ゾーンにおいて5.6分の滞留時間で170℃の温度(熱媒油の温度)で転化させた。
【0148】
フルクトース転化率:31.6%
HMF選択性:81.2%
ギ酸選択性:4.5%
レブリン酸選択性:2.3%
収支:96%
【0149】
例2:0.625%のNaClをベースとする触媒活性な陽極液画分を用いた170℃でのHMF合成(MMR 114)
フルクトース含有成分として、95%のフルクトース純度及び70%のTS含有量を有するフルクトースシロップを使用した。0.625重量%の含有量の塩化ナトリウムを含有し、2.3のpH値を有した電解質溶液から、触媒活性な陽極液画分を製造した。フルクトースシロップを、触媒活性な陽極液画分により20%の炭水化物のTSのTS含有量まで希釈した。次いで、この反応溶液を、加熱ゾーンにおいて5.6分の滞留時間で170℃の温度(熱媒油の温度)で転化させた。
【0150】
フルクトース転化率:35.0%
HMF選択性:80.6%
ギ酸選択性:5.2%
レブリン酸選択性:2.3%
収支:95.6%
【0151】
例3:1%のNaNO3をベースとする触媒活性な陽極液画分を用いた165℃でのHMF合成(MMR 117)
フルクトース含有成分として、95%のフルクトース純度及び70%のTS含有量を有するフルクトースシロップを使用した。1.0重量%の含有量の硝酸ナトリウムを含有し、2.2のpH値を有した電解質溶液から、触媒活性な陽極液画分を製造した。フルクトースシロップを、触媒活性な陽極液画分により20%の炭水化物のTSのTS含有量まで希釈した。次いで、この反応溶液を、加熱ゾーンにおいて5.6分の滞留時間で165℃の温度(熱媒油の温度)で転化させた。
【0152】
フルクトース転化率:19.97%
HMF選択性:81.8%
ギ酸選択性:2.9%
レブリン酸選択性:1.6%
収支:97.23%
【0153】
例4:0.25%のNaNO3をベースとする触媒活性な陽極液画分を用いた165℃でのHMF合成(MMR 117/2)
フルクトース含有成分として、95%のフルクトース純度及び70%のTS含有量を有するフルクトースシロップを使用した。0.25重量%の含有量の硝酸ナトリウムを含有し、2.2のpH値を有した電解質溶液から、触媒活性な陽極液画分を製造した。フルクトースシロップを、触媒活性な陽極液画分により20%の炭水化物のTSのTS含有量まで希釈した。次いで、この反応溶液を、加熱ゾーンにおいて5.6分の滞留時間で165℃の温度(熱媒油の温度)で転化させた。
【0154】
フルクトース転化率:16.5%
HMF選択性:86.5%
ギ酸選択性:3.1%
レブリン酸選択性:1.5%
収支:98.6%
【0155】
例5:0.18%のNaClをベースとする触媒活性な陽極液画分を用いた165℃での30%のTSによるHMF合成(MMR 137)
フルクトース含有成分として、85%のフルクトース純度及び75%のTS含有量を有するフルクトースシロップを使用した。0.18重量%の含有量の塩化ナトリウムを含有し、2.3のpH値を有した電解質溶液から、触媒活性な陽極液画分を製造した。フルクトースシロップを、触媒活性な陽極液画分により30%の炭水化物のTSのTS含有量まで希釈した。次いで、この反応溶液を、加熱ゾーンにおいて5.6分の滞留時間で165℃の温度(熱媒油の温度)で転化させた。
【0156】
フルクトース転化率:17.6%
HMF選択性:88.2%
ギ酸選択性:4.7%
レブリン酸選択性:2.1%
収支:97.9%
【0157】
例6:0.18%のNaClをベースとする触媒活性な陽極液画分を用いた165℃での40%のTSによるHMF合成(MMR 136)
フルクトース含有成分として、85%のフルクトース純度及び75%のTS含有量を有するフルクトースシロップを使用した。0.18重量%の含有量の塩化ナトリウムを含有し、2.3のpH値を有した電解質溶液から、触媒活性な陽極液画分を製造した。フルクトースシロップを、触媒活性な陽極液画分により40%の炭水化物のTSのTS含有量まで希釈した。次いで、この反応溶液を、加熱ゾーンにおいて5.6分の滞留時間で165℃の温度(熱媒油の温度)で転化させた。
【0158】
フルクトース転化率:15.5%
HMF選択性:89.7%
ギ酸選択性:5.5%
レブリン酸選択性:1.6%
収支:98.2%
【0159】
例7:触媒活性な陽極液画分を用いたHMF合成におけるHMF選択性に対するフルクトース純度の影響
フルクトース含有成分として、触媒活性な陽極液画分中で異なるフルクトース純度(62%、70%、80%、85%、90%、及び100%)及び30%のTS含有量を有するフルクトース溶液を製造した。0.18重量%の含有量の塩化ナトリウムを含有し、2.3のpH値を有した電解質溶液から、触媒活性な陽極液画分を製造した。次いで、これらの反応溶液を、それぞれ加熱ゾーンにおいて5.6分の滞留時間で165℃の温度(熱媒油の温度)で転化させた。
【0160】
【表1】
【0161】
フルクトースの純度が高まると、同じ転化率でHMFへの選択性は低下する。
【0162】
例8:HMF合成におけるHMF選択性に対する触媒活性な陽極液画分の製造に際してのカチオンの影響
フルクトース含有成分として、85%のフルクトース純度及び75%のTS含有量を有するフルクトースシロップを使用した。このシロップを、それぞれ種々の塩化物塩(リチウム、ナトリウム、カリウムの塩化物、それぞれ0.18重量%)をベースとする触媒活性な陽極液画分により30%の炭水化物の乾燥物質含有量まで希釈した。
【0163】
次いで、これらの反応溶液を、それぞれ加熱ゾーンにおいて5.6分の滞留時間で165℃の温度(熱媒油の温度)で転化させた。
【0164】
【表2】
【0165】
例9:0.75%のH2SO4を用いた(触媒活性な陽極液画分を用いない、従来技術)135℃及び30%のTSでの比較実験(MMR 149)
フルクトース含有成分として、85%のフルクトース純度及び75%のTS含有量を有するフルクトースシロップを使用した。このシロップを、VE水により30%の炭水化物の乾燥物質含有量に調整し、0.75%の硫酸を加えた。
【0166】
次いで、この反応溶液を、それぞれ加熱ゾーンにおいて5.6分の滞留時間で135℃の温度(熱媒油の温度)で転化させた。
【0167】
フルクトース転化率:20.0%
HMF選択性:73.2%
ギ酸選択性:9.15%
収支:96.1%
【0168】
例10:転化率及びHMF選択性に対する塩化物濃度の影響
フルクトース含有成分として、95%のフルクトース純度及び75%のTS含有量を有するフルクトースシロップを使用した。このシロップを、それぞれ電気分解時の種々の塩化ナトリウム濃度(1.0重量%、0.625重量%、0.25重量%、0.18重量%、0.10重量%、及び0.05重量%)をベースとする触媒活性な陽極液画分により20%の炭水化物の乾燥物質含有量まで希釈した。
【0169】
次いで、これらの反応溶液を、それぞれ加熱ゾーンにおいて5.6分の滞留時間で165℃の温度(熱媒油の温度)で転化させた。
【0170】
【表3】
【0171】
フルクトース転化率及びHMF選択性は、ある範囲では塩化物濃度とほとんど無関係である。
【0172】
例11:VE及び水道水を使用した場合の電気分解の効果
これらの実験の範囲内では、85%のフルクトース純度及び75%の当初の乾燥物質含有量を有するフルクトースシロップ(F85/75)をベースとして、それぞれ1つの20%の乾燥物質含有量を有する反応溶液を製造した。この場合に、希釈のために、一方では純粋なVE水又は純粋な水道水を、他方ではVE又は水道水の電気分解に際してそれぞれ生成した触媒活性な陽極液画分を使用した。次いで、これらから得られた反応溶液を、加熱ゾーンにおいて169℃で5.6分の滞留時間で転化させた。定期的な試料採取及びHPLCによる試料の分析によって、転化率及び選択性を追跡し、炭素収支を出した。表1は、得られた結果を示している。
【0173】
【表4】
【0174】
これらの結果は、純粋なVE又は水道水と比較して、脱塩水の及び水道水のそれぞれの陽極液画分を使用した場合に、フルクトース転化率に関してもHMF及び副生成物の選択性に関しても明らかな改善を示している。
【0175】
例12:HMF転化に対する陽極液画分濃度の影響
この実験列の範囲内では、最初に、0.18%の塩化ナトリウム溶液をベースとして触媒活性な陽極液画分を製造した。次いで、この陽極液画分(100%の陽極液画分)から出発して、純粋なVE水による種々の希釈物を作製した(75%の陽極液画分/25%のVE水、50%の陽極液画分/50%のVE水、及び25%の陽極液画分/75%のVE水)。次いで、これらの混合物をそれぞれ使用して、85%のフルクトース純度及び75%の当初の乾燥物質含有量を有するフルクトースシロップをベースとして20%のTSの乾燥物質含有量を有する反応溶液を製造した後に、これらの反応溶液を同じ反応条件下(加熱ゾーンにおいて5.6分の滞留時間、温度169℃)で転化させた。定期的な試料採取及びHPLCによる試料の分析によって、転化率及び選択性を追跡し、炭素収支を出した。表2は、得られた結果を示している。
【0176】
【表5】
【0177】
これらの結果は、フルクトース転化率もHMF及び副生成物の選択性並びに炭素収支も、陽極液画分の濃度に明らかに依存していることを示している。純粋なVE水又はVE水の陽極液画分(表1を参照)と比較して、全ての試験は、とりわけ選択性に関して明らかな改善を示している。
【0178】
例13:種々の陽極液画分の酸素含有量
異なる陽極液画分を製造し、酸素測定装置4100e Mettler Toledoを用いてそれらの酸素含有量及びpH値を調べた。比較のために、完全脱塩水の酸素含有量を測定した。
【0179】
【表6】
【0180】
この表に示される結果は、全ての陽極液画分が、電気分解されていない完全脱塩水と比べて、明らかに高められた酸素含有量を有することを示している。
いくつかの実施形態を以下に示す。
項1
5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の製造方法であって、
a)フルクトース含有成分及び水の電気分解によって製造された触媒活性な陽極液画分を準備する工程、
b)フルクトース含有成分及び触媒活性な陽極液画分を混合して、反応溶液を得る工程、
c)液体のHMF含有生成物混合物を得るために、反応溶液中に存在するフルクトースを90℃~200℃の温度でHMFに転化させる工程、並びに
d)液体のHMF含有生成物混合物を得る工程、
を含む、方法。
項2
電気分解用の水が、完全脱塩水である、請求項1に記載の方法。
項3
電気分解用の水が、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属硝酸塩、アルカリ土類金属硝酸塩、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ土類金属硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される塩を含む、請求項1に記載の方法。
項4
電気分解用の水が、(水の総重量に対して)0.01~2.5重量%の塩を含む、請求項3に記載の方法。
項5
触媒活性な陽極液画分のpH値が、1.5~4.5、好ましくは2~3である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
項6
フルクトース含有成分が、固体のフルクトース含有成分、とりわけフルクトース、又は液体のフルクトース含有成分、とりわけフルクトースシロップ若しくはフルクトース溶液である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
項7
方法工程b)において、5~50重量%の炭水化物含有量(反応溶液の総重量に対する炭水化物の乾燥物質)を有する反応溶液を得て、方法工程c)において使用する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
項8
方法工程b)において、40~100重量%のフルクトース含有量(反応溶液の炭水化物成分の乾燥物質に対するフルクトースの乾燥物質)を有する反応溶液を得て、方法工程c)において使用する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
項9
反応溶液中のフルクトース含有成分の炭水化物含有量(乾燥物質)と触媒活性な陽極液画分(総重量)との比が、0.01~2.5である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
項10
反応溶液中のフルクトース含有成分のフルクトース含有量(TS)と触媒活性な陽極液画分(総重量)との比が、0.01~2.5である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
項11
工程a)において準備されたフルクトース含有成分、陽極液画分、若しくはその両方を工程b)の前に90℃~200℃の温度に調整するか、又は工程b)において得られた反応溶液を90℃~200℃の温度に調整する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
項12
方法工程c)において1~50mol%のフルクトース転化率が達成されるように行われる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
項13
方法工程c)において60~100mol%のHMF選択率が得られるように調整される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
項14
連続的に実施される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
項15
前記方法において、触媒活性な陽極液画分を除いて、更なる触媒活性な成分は使用されない、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
項16
e)液体のHMF生成物混合物を20℃~80℃の温度に冷却する工程、
を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
項17
f)液体のHMF生成物混合物を濾過し、脱色し、及び/又は清浄化する工程、
を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
項18
g)液体のHMF生成物混合物を20~70重量%の乾燥物質含有量に調整する工程、
を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
項19
h)液体のHMF生成物混合物を、クロマトグラフィー、限外-及び/若しくはナノ濾過、適切な抽出剤による抽出、適切な材料への吸着に続いての標的脱着、並びに/又は電気透析によって精製して、少なくともHMF画分を分離する工程、並びに
i)少なくともHMF画分を得る工程、
を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
項20
液体のHMF生成物混合物を、工程h)において、クロマトグラフィーによって、HMF画分、グルコース画分、フルクトース画分、及び有機酸画分を含む少なくとも4つの画分に分離し、工程i)において、少なくともHMF画分、グルコース画分、フルクトース画分、及び有機酸画分を得る、請求項19に記載の方法。
項21
方法工程i)において得られたフルクトース画分を工程a)へと返送する、請求項20に記載の方法。
項22
方法工程i)において得られたグルコース画分をエタノール製造のために使用する、請求項20又は21に記載の方法。
項23
方法工程i)において得られた有機酸画分をレブリン酸及びギ酸の単離のために使用する、請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
項24
方法工程i)において得られたHMF画分を、直接的に、更なる精製を必要とせずに、更なる工程において2,5-フランジカルボン酸(FDCA)へと酸化させる、請求項19から23のいずれか一項に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5