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特許7339309がん治療のためのナチュラルキラー細胞および組成物の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-28
(45)【発行日】2023-09-05
(54)【発明の名称】がん治療のためのナチュラルキラー細胞および組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20230829BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20230829BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230829BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230829BHJP
【FI】
A61K35/17
A61K38/20
A61P43/00 121
C12N5/0783
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021165698
(22)【出願日】2021-10-07
(62)【分割の表示】P 2020541915の分割
【原出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2022000060
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】10-2018-0012938
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0012942
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0001981
(32)【優先日】2019-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0001983
(32)【優先日】2019-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513205259
【氏名又は名称】エヌケーマックス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NKMAX CO., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソンウ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨンマン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジェソブ
(72)【発明者】
【氏名】リーイー,ヨンヒ
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/122147(WO,A1)
【文献】特表2017-515506(JP,A)
【文献】特表2015-502756(JP,A)
【文献】特開2016-008198(JP,A)
【文献】Granzin, M. et al.,Highly efficient IL-21 and feeder cell-driven ex vivo expansion of human NK cells with therapeutic a,Oncoimmunology,2016年,Vol. 5(9):e1219007,pp. 1-18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00
A61K 38/00
C12N 5/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞治療用組成物であって、
治療有効量のCD56+ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはCD3-/CD56+NK細胞の少なくとも1つのNK細胞であって、前記細胞治療用組成物におけるNK細胞の純度が、前記細胞治療用組成物における他の細胞と比較して、少なくとも90%以上である、NK細胞
50~50,000IU/mLの濃度であるIL-2、ならびに
薬剤的に許容可能な担体
を含み、
前記細胞治療用組成物は、NK細胞治療を必要とするヒト患者への投与に適した形態である
組成物。
【請求項2】
前記治療有効量が、ヒト患者の体重のkg当たり、1×10 ~1×10 11 のNK細胞を含むものである、請求項1に記載の細胞治療用組成物。
【請求項3】
細胞組成物を含むバッグであって、
前記組成物が、
ヒト対象の体重のkg当たり、1×10 ~1×10 11 のナチュラルキラー(NK)細胞であって、前記NK細胞が、末梢血単核細胞(PBMC)に由来するCD56+NK細胞および/またはCD3-/CD56+NK細胞であって、前記NK細胞が少なくとも90%の純度を有している細胞、ただし前記バッグ中における細胞のうち1%未満がT細胞である、
50~50,000IU/mLの濃度であるIL-2、ならびに
ハルトマン溶液、アルブミン、DMSOを含むが、IL-21を含まない、薬剤的に許容可能な担体
を含む組成物である、
バッグ。
【請求項4】
前記IL-2が、50~1,000IU/mLで存在する、請求項1または2に記載の
細胞治療用組成物。
【請求項5】
前記細胞治療用組成物が、IL-21を含まないものである、請求項4に記載の細胞治療用組成物。
【請求項6】
前記IL-2が、500IU/mLで存在する、請求項1または2に記載の細胞治療用組成物。
【請求項7】
細胞組成物であって、
CD56+ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはCD3-/CD56+NK細胞の少なくとも1つのNK細胞であって、前記細胞組成物におけるNK細胞の純度が、前記細胞組成物における他の細胞と比較して、少なくとも90%以上である、NK細胞、
50~50,000IU/mLの濃度であるIL-2、ならびに
DMSOを含むが、IL-21を含まない、薬剤的に許容可能な担体
を含み、
前記細胞組成物は、ヒト患者への投与に適した形態である、
組成物。
【請求項8】
前記IL-2が、50~1,000IU/mLで存在する、請求項7に記載の細胞組成物。
【請求項9】
ハルトマン溶液をさらに含む、請求項8に記載の細胞組成物。
【請求項10】
アルブミンをさらに含む、請求項9に記載の細胞組成物。
【請求項11】
前記アルブミンが、1%で存在する、請求項10に記載の細胞組成物。
【請求項12】
前記IL-2が、500IU/mLで存在する、請求項10に記載の細胞組成物。
【請求項13】
細胞組成物であって、
CD56+ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはCD3-/CD56+NK細胞の少なくとも1つのNK細胞であって、前記細胞組成物におけるNK細胞の純度が、前記細胞組成物における他の細胞と比較して、少なくとも90%以上である、NK細胞、
50~50,000IU/mLの濃度であるIL-2、ならびに
薬剤的に許容可能な担体
を含み、
前記細胞組成物は、ヒト患者への投与に適した形態である、
組成物。
【請求項14】
前記細胞が、少なくとも24時間貯蔵されたものである、請求項13に記載の細胞組成物。
【請求項15】
前記細胞が、少なくとも48時間貯蔵されたものである、請求項13に記載の細胞組成物。
【請求項16】
前記IL-2が、ヒトIL-2である、請求項1~15の何れか一項に記載の細胞治療用組成物、細胞組成物またはバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年2月1日に出願された韓国特許出願第KR-10-2018-0012938号、2018年2月1日に出願された韓国特許出願第KR-10-2018-0012942号、2019年1月7日に出願された韓国特許出願第KR-10-2019-0001981号、および2019年1月7日に出願された韓国特許出願第KR-10-2019-0001983号の優先権を主張し、これらの全文を参照することにより本明細書に組み入れられるものとする。
【0002】
本開示は、高純度ナチュラルキラー細胞の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトの体は、多くの免疫関連細胞、サイトカインなどの化学伝達因子、および同種のものから成る免疫系により協調される免疫応答によって病原体から保護されている。白血球、特にリンパ球は、このような免疫系において重要な役割を果たす。リンパ球は、自然免疫および獲得免疫の両方に関係する。
【0004】
ナチュラルキラー細胞(NK細胞)は、自然免疫細胞の一種であり、がんを非特異的に殺傷し、ウイルス、細菌などを認識して殺傷し、パーフォリンおよびグランザイムなどの酵素で、またはFas-FasL相互作用により病原体を殺傷することが知られている。がん患者の場合、これらのNK細胞のがん細胞傷害性の低下は、肺がん(Carrega
P,et al.,Cancer,2008:112:863-875)、肝がん(Jinushi M,et al.,J Hepatol.,2005:43;1013-1020)、乳がん、(Bauernhofer T,et al.,Eur J Immunol.,2003:33:119-124)、子宮がん(Mocchegiani
E.,et al.,Br j Cancer.,1999:79:244-250)、血液がん(Tajima F.,et al,Lekemia 1996:10:478-482)および同種のものなどの様々な種類のがんの発症と関連する。したがって、がん治療のため、NK細胞のがん細胞傷害性を増大することは望ましい。
【0005】
がん細胞のNK媒介殺傷の治療効果を得るため、大量の高純度NK細胞を必要とするが、がん患者から大量の血液を得ることは容易ではなく、血液中のNK細胞の比率は小さく、約5~20%しかない。したがって、免疫療法薬としてNK細胞を使用することは難しかった。
【0006】
結果として、NK細胞のみを効率的に拡大および増殖することが望ましいが、NK細胞増殖の従来の方法では、様々な高価なサイトカインを高濃度で使用する必要があり、したがって、対応する治療は一部の経済的に安定した患者にしか利用できない。更に、NK細胞増殖の従来の方法によれば、他の種類(例えば、T細胞、B細胞、その他)の免疫細胞はNK細胞と共に存在し得、T細胞を含むNK細胞の同種投与は移植片対宿主病(GVHD)を引き起こし得、血液型不適合対象へのB細胞を含むNK細胞の同種投与はパッセンジャーBリンパ球症候群を引き起こし得、したがって、抗がん効果は最大限に高められない。
【0007】
更に、NK細胞の拡大および増殖に加えて、拡大および増殖されたNK細胞を実際に使用するまで、NK細胞の機能を高度に維持することが望ましい。結果として、NK細胞増殖を促進、NK細胞由来のTNF-、INF-およびGM-CSFなどのサイトカインの
産生を増加、ならびにNK細胞のがん細胞傷害性の増大を可能とする組成物の開発が探求されている。
【発明の概要】
【0008】
本願は、高純度ナチュラルキラー細胞の製造方法ならびに高純度ナチュラルキラー細胞およびサイトカインを含むがんを治療するための細胞治療用組成物に関する。本明細書で開示されているいずれかの特徴、構造、またはステップは、本明細書で開示されている他の特徴、構造、またはステップで置き換えてもよく、これと組み合わせてもよく、省略してもよい。更に、本開示を要約する目的のため、本発明の特定の態様、利点、および特徴を本明細書に記載している。本明細書に開示されている本発明のいずれかの特定の実施形態により、必ずしもいずれかまたは全てのかかる利点を達成するとは限らないと理解されるべきである。本開示の個々の態様は必須でも不可欠でもない。
【0009】
ある実施形態では、ナチュラルキラー細胞の製造方法を開示する。方法は、血液サンプルから末梢血単核細胞(PBMC)を単離すること、PBMCからCD56+細胞および/またはCD3-/CD56+細胞の少なくとも1つを単離すること、ならびにサイトカインの存在下フィーダー細胞の組合せと共にCD56+細胞および/またはCD3-/CD56+細胞の少なくとも1つを共培養することを含む。
【0010】
特定の実施形態では、PBMCからCD56+細胞および/またはCD3-/CD56+細胞の少なくとも1つを単離することを、CD56マイクロビーズおよびCD3マイクロビーズの少なくとも1つを使用することによって行う。特定の実施形態では、サイトカインは、IL-2、IL-21、IL-15、Flt3-L、SCF、IL-7、IL-18、IL-4、I型インターフェロン、GM-CSF、IGF 1およびこれらの組合せから成る群から選択される。特定の実施形態では、サイトカインを、50~1000IU/mLの濃度で添加してもよい。
【0011】
特定の実施形態では、フィーダー細胞の組合せは、照射ジャーカット細胞および照射エプスタイン・バーウイルス形質転換リンパ球継代株(EBV-LCL)細胞を含む。バリエーションにおいて、照射ジャーカット細胞と照射EBV-LCL細胞との比は、約1:0.1~5であってもよい。照射ジャーカット細胞および照射EBV-LCL細胞の各々を、50~500Gy(グレイ)の照射によって得てもよい。
【0012】
特定の実施形態では、共培養は、1~50日間の共培養を含んでもよい。
【0013】
特定の実施形態では、方法は、第一期間、第一サイトカインの存在下、フィーダー細胞の組合せと共にCD56+細胞および/またはCD3-/CD56+細胞の少なくとも1つを共培養すること、ならびにその後、第二期間、第二サイトカインの存在下、前記フィーダー細胞の組合せと共にCD56+細胞および/またはCD3-/CD56+細胞の少なくとも1つを共培養することを更に含んでもよい。バリエーションにおいて、第二期間の0~6日目の間、第二サイトカインを1回以上添加してもよい。第二期間、14日サイクル毎の最初の6日間に、第二サイトカインを1回以上添加してもよい。第一サイトカインは、IL-2であってもよい。第二サイトカインは、IL-21であってもよい。第二サイトカインを、10~100ng/mLの濃度で添加してもよい。
【0014】
特定の実施形態では、CD56+細胞および/またはCD3-/CD56+細胞の少なくとも1つならびにフィーダー細胞の組合せを、約1:1~100のフィーダー細胞に対するCD56+細胞および/またはCD3-/CD56+細胞の比で共培養する。
【0015】
特定の実施形態では、方法によって製造された組成物を開示する。
【0016】
ある実施形態では、それを必要とする患者のがんを治療するための組成物を開示する。組成物は:有効量の末梢血由来CD56+ナチュラルキラー細胞、50~50,000IU/mLの濃度を有するIL-2、および薬剤的に許容可能な担体を含み、該有効量は患者体重のkg当たり約1×10~5×10の細胞の範囲であり、CD56+ナチュラルキラー細胞は少なくとも約90%の純度である。
【0017】
特定の実施形態では、サイトカインは、IL-2、IL-21、IL-15、Flt3-L、SCF、IL-7、IL-18、IL-4、I型インターフェロン、GM-CSF、IGF 1およびこれらの組合せから成る群から選択され得る。バリエーションにおいて、サイトカインは、IL-2であってもよい。サイトカインは、50~50,000IU/mLの濃度を有してもよい。
【0018】
特定の実施形態では、がんは、血液がん、胃がん、膵がん、胆管がん、結腸がん、乳がん、肝がん、卵巣がん、肺がん、腎がん、前立腺がんおよび神経芽細胞腫から成る群から選択される。
【0019】
特定の実施形態では、組成物は、約1%未満のT細胞を含む。
【0020】
様々な実施形態を例証する目的のため附属の図面に示すが、実施形態の範囲に限定するものと決して解釈すべきでない。さらに、種々の開示されている実施形態の様々な特徴を組み合わせて更なる実施形態を生成することができるが、これも本開示の一部である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A図1Aは、PBMC、CD56+細胞、およびCD3-/CD56+細胞から製造されたNK細胞の細胞増殖率を示すグラフを図示する。
図1B図1Bは、IL-21での処置あり又はなしのPBMCおよびCD56+細胞から製造されたNK細胞の細胞増殖率を示すグラフを図示する。
図2図2は、IL-21での処置あり又はなしのPBMCまたはCD56+細胞から製造されたCD3-/CD56+NK細胞の純度を示すグラフを図示する。
図3図3は、NK細胞の抗がん活性を分析するためのプレートデザインを示す。
図4A図4Aは、様々なエフェクター細胞:標的細胞(E:T)比に対する、PBMCおよびCD56+細胞から製造されたNK細胞の短期細胞傷害性を示すグラフを図示する。
図4B図4Bは、AGS、A549、およびMDA-MB-231細胞に対する、PBMCおよびCD56+細胞から製造されたNK細胞の長期細胞傷害性を示すグラフを図示する。
図5A図5Aは、様々な期間、IL-21での処置によって製造されたNK細胞の細胞増殖率を示すグラフを図示する。
図5B図5Bは、様々な期間、IL-21での処置によって製造されたNK細胞の細胞増殖率を示すグラフを図示する。
図6図6は、様々な濃度のIL-21での処置によって製造されたNK細胞の細胞増殖率を示すグラフを図示する。
図7A図7Aは、様々なE:T比に対する、様々な期間、IL-21での処置によって製造されたNK細胞の短期細胞傷害性を示すグラフを図示する。
図7B図7Bは、AGS、A549、およびMDA-MB-231細胞に対する、様々な期間、IL-21での処置によって製造されたNK細胞の長期細胞傷害性を示すグラフを図示する。
図7C図7Cは、AGS、A549、およびMDA-MB-231細胞に対する、様々な期間、IL-21での処置によって製造されたNK細胞の長期細胞傷害性を示すグラフを図示する。
図8A図8Aは、様々なE:T比に対する、様々な期間、IL-21での処置によって製造されたNK細胞の短期細胞傷害性を示すグラフを図示する。
図8B図8Bは、AGS、A549、およびMDA-MB-231細胞に対する、様々な濃度を有するIL-21での処置によって製造されたNK細胞の長期細胞傷害性を示すグラフを図示する。
図9図9は、フィーダー細胞刺激がある場合のNK細胞の細胞増殖率を示すグラフを図示する。
図10A図10Aは、IL-21での処置あり又はなしのがん患者のPBMCから製造されたNK細胞の細胞増殖率を示すグラフを図示する。
図10B図10Bは、IL-21での処置あり又はなしのがん患者のPBMCから製造されたCD3-/CD56+NK細胞の純度を示すグラフを図示する。
図10C図10Cは、K562細胞に対するIL-21の処置あり又はなしのPBMCから製造されたNK細胞の短期細胞傷害性を示すグラフを図示する。
図10D図10Dは、AGS、A549、およびMDA-MB-231細胞に対する、IL-21の処置あり又はなしのPBMCから製造されたNK細胞の長期細胞傷害性を示すグラフを図示する。
図11図11は、IL-2での処置あり又はなしのNK細胞の生存率を示すグラフを図示する。
図12図12は、様々なE:T比における様々ながん細胞に対する、IL-2での処置あり又はなしのNK細胞の細胞傷害性を示すグラフを図示する。
図13図13は、IL-2での処置あり又はなしのNK細胞を用いて治療された残りのNIH:OVCAR-3細胞の写真を示す。
図14図14は、IL-2での処置あり又はなしのNK細胞を用いて治療された残りのAGS細胞の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
高価なサイトカインを使用しない高純度NK細胞の製造方法を、本発明者らは開発した。本発明者らは、CD56+細胞を末梢血単核細胞から単離した後、末梢血単核細胞から単離されたCD56+細胞をサイトカインの存在下でフィーダー細胞と共に共培養する場合、高純度CD56+NK細胞を製造することができることを見出した。さらに、本発明者らは、同種治療に効果的に使用することができるNK細胞を含むがんを治療するための細胞治療用組成物を開発した。結果として、本発明者らは、末梢血単核細胞から単離されたCD56+NK細胞へ特定のサイトカインを添加する場合、高い生存率および高い抗がん活性を示すことを見出した。したがって、本発明者らは、NK細胞の増殖方法を開発およびサイトカインと共に増殖された末梢血由来CD56+NK細胞を含むがん治療のための細胞治療用組成物を提供することを探求した。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、高純度NK細胞の製造方法は:血液サンプルから末梢血単核細胞(PBMC)を単離すること(「第一単離ステップ」)と、末梢血単核細胞からCD56+細胞およびCD3-/CD56+細胞から成る群から選択される細胞を単離すること(「第二単離ステップ」)と、サイトカインの存在下フィーダー細胞と共にCD56+細胞およびCD3-/CD56+細胞から成る群から選択される細胞を共培養すること(「培養ステップ」)とを含んでもよい。本明細書において、各ステップを更に詳細に説明する。開示されている方法により製造されたCD3-/CD56+細胞は、CD56+細胞を単離しないで末梢血単核細胞から製造されたNK細胞と比較して、より高純度およびより高い抗がん活性だけでなく、種々の表面マーカーまたは活性化された受容体、例えば、CD16、CD25、CD27、CD28、CD69、CD94/NKG2C、CD94/NKG2E、CD266、CD244、NKG2D、KIR2S、KIR3S、Ly94D、NCRs、IFN-a、IFN-b,CXCR3、CXCR4、CX3CR
1、CD62LおよびCD57から1つ以上を有するなど、他の顕著な特性を示し得る。
【0024】
第一単離ステップ
本明細書では、「血液サンプル」は、これに限定されないが、末梢血の全血または白血球アフェレーシスを使用して末梢血から単離された白血球であってもよい。更に、末梢血を、健常人、がんのリスクのある患者、またはがん患者から得てもよいが、末梢血の供給源はこれに限定されない。
【0025】
本明細書では、用語「白血球アフェレーシス」は、採取された血液から白血球を選択的に除き(単離し)、次いで、再び患者に該血液を与える方法を表すことができ、いくつかの実施形態では、方法により単離された白血球をフィコール-ハイパック密度勾配法など、追加の方法なしで使用してもよい。
【0026】
本明細書では、用語「末梢血単核細胞」は「PBMC」、「単核細胞」または「単球」と互換的に使用してよく、抗がん免疫療法に一般的に使用される末梢血から単離された単核細胞を表すことができる。末梢血単核細胞を、フィコール-ハイパック密度勾配法などの公知の方法を使用して採取されたヒト血液から得てもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、末梢血単核細胞は自己由来であってもよいが、同種末梢血単核細胞を、本明細書に記載されている方法により抗がん免疫療法用に高純度NK細胞を製造するために使用してもよい。更に、いくつかの実施形態では、末梢血単核細胞を健常人から得てもよいが、末梢血単核細胞をがんのリスクを有する患者および/またはがん患者から得てもよい。
【0028】
本明細書では、用語「CD56+細胞」は「CD56+NK細胞」、または「CD56+ナチュラルキラー細胞」と互換的に使用してよく、用語「CD3-/CD56+細胞」は「CD3-/CD56+NK細胞」と互換的に使用してもよい。CD56+細胞またはCD3-/CD56+細胞としては、細胞表面上のCD56糖タンパク質が発現される細胞、または更にCD3糖タンパク質が発現されないが、CD56糖タンパク質が発現される細胞を挙げることができる。同じ型の免疫細胞でさえ、細胞表面に結合したCD型及び発現率の差異を有し得、したがってその機能は異なり得る。
【0029】
第二単離ステップ
いくつかの実施形態では、血液サンプルからのCD56+ナチュラルキラー細胞の単離を、CD56マイクロビーズおよびCD3マイクロビーズマイクロビーズから成る群から選択される少なくとも1つを使用する単離方法、またはCliniMACS、フローサイトメトリー細胞ソーター、その他などの装置を使用する単離方法によって行ってもよい。
【0030】
例えば、CD56マイクロビーズおよび/またはCD3マイクロビーズを使用する単離方法を、PBMCへCD56マイクロビーズを添加してから非特異的結合を取り除くことによって行ってもよく、PBMCへCD3マイクロビーズを添加して特異的結合を取り除いてから再度CD56マイクロビーズを添加して非特異的結合を取り除くことによって行ってもよい。いくつかの実施形態では、PBMCからCD56+細胞および/またはCD3-/CD56+細胞を単離することにより、T細胞または他の非ナチュラルキラー細胞を取り除いてもよい。
【0031】
培養ステップ
本明細書では、用語「サイトカイン」は、末梢血単核細胞がNK細胞に分化するように誘発するために使用することができる免疫活性化合物を表すことができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、サイトカインは、インターロイキン-2(IL-2)、IL-15、IL-21、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt3-L)、幹細胞因子(SCF)、IL-7、IL-18、IL-4、I型インターフェロン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、およびインスリン様増殖因子1(IGF 1)であり得るが、これらに限定されない。
【0033】
いくつかの実施形態では、サイトカインを、50~1,000、50~900、50~800、50~700、50~600、50~550、100~550、150~550、200~550、250~550、300~550、350~550、400~550、450~550IU/mLの濃度で使用してもよい。NK細胞の従来の増殖方法は、様々なサイトカインの高濃度を利用する。逆に、本明細書に記載されているNK細胞の増殖方法のいくつかの実施形態では、2つの型のフィーダー細胞を高純度CD56+細胞と共に使用してもよいので、高収率および高純度を有するNK細胞を低い濃度の1つのサイトカインのみを使用して増殖してもよい。
【0034】
本明細書では、用語「フィーダー細胞」は、分裂および増殖しないが、代謝活性を有して様々な代謝産物を産生し、したがって、標的細胞の増殖の助けとなる細胞を表すことができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、フィーダー細胞は、照射ジャーカット細胞、照射エプスタイン・バーウイルス形質転換リンパ球継代株(EBV-LCL)細胞、およびPBMC、HFWT、RPMI 1866、Daudi、MM-170、K562またはK562を標的にすることにより遺伝子的に改変された細胞(例えば、K562-mbIL-15-41BBリガンド)から成る群から選択される少なくとも1つであってもよい。例えば、1つの実施形態では、フィーダー細胞は、照射ジャーカット細胞およびEBV-LCL細胞であってもよい。
【0036】
本明細書では、用語「ジャーカット細胞」または「ジャーカット細胞株」は、米国サンフランシスコのカリフォルニア大学のArthur Weiss博士により開発された血液がん(不死化急性T細胞白血病)細胞株を表すことができる。様々なケモカイン受容体が発現され、IL-2を産生することができるジャーカット細胞は、通常、ナチュラルキラー細胞活性化阻害剤であるMHCクラスIがその細胞表面上で高度に発現されるので、抗がん免疫療法のためのフィーダー細胞の可能性がある候補と見做されなかった。ジャーカット細胞を、ATCC(ATCC TIB-152)から得ることができる。
【0037】
本明細書では、用語「EBV-LCL細胞」または「EBV-LCL細胞株」は、エプスタイン・バーウイルス形質転換リンパ球継代株(EBV-LCL)(D.M.Koelle et al.,J Clin Invest,1993:91:961-968)を表し、試験管中でヒトB細胞にエプスタイン・バーウイルスを感染させることにより製造されるB細胞である。PBMC中EBVを感染させる方法においてシクロスポリンAを添加する方法によって、一般的な研究室においてEBV-LCL細胞を直接的に製造して使用してもよい。いくつかの実施形態では、EBV-LCL細胞を次のステップにより製造してもよい。9mLの培養培地に30×10のPBMCを添加し、T25培養フラスコ内に混合物を添加してから、9mLのEBV上澄み液を添加する。80μLのシクロスポリンA(50μg/mL)を添加してから、37℃で培養する。培養7日後、上澄み液の半分を除き、新しい培養培地を添加してから、40μLのシクロスポリンAを添加する。培養28日まで、7日毎に1回、同じ方法を反復してもよい。培養28日後、細胞株は使用可能であり得、この時点から、シクロスポリンAを添加しないで培養培地中で細胞株を培養してもよい。
【0038】
ジャーカット細胞およびEBV-LCL細胞を、照射後にフィーダー細胞として使用してよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、照射ジャーカット細胞および照射EBV-LCL細胞は、1:0.1-5、1:0.1-4、1:0.1-3、1:0.1-2、1:0.1-1.5、1:0.5-1.5、1:0.75-1.25、0.1-5:1、0.1-4:1、0.1-3:1、0.1-2:1、0.1-1.5:1、0.5-1.5:1または0.75-1.25:1の含有率比で含まれてもよい。例えば、照射ジャーカット細胞および照射EBV-LCL細胞は、1:1の含有比率で含まれてもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、照射ジャーカット細胞および照射EBV-LCL細胞を、50~500、50~400、50~300、50~200、50~150、70~130、80~120または90~110Gyの照射での処置により得てもよい。例えば、照射ジャーカット細胞および/または照射EBV-LCL細胞を、100Gyの照射でジャーカット細胞および/またはEBV-LCL細胞を処置することによって得てもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、1~50、1~42、1~40、1~35、1~20、1~19、1~18、1~17、1~16、1~15または1~14日間、培養を行ってもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、培養ステップは、次のステップ:フィーダー細胞および第一サイトカインを共培養すること(「第一培養ステップ」)、および第二サイトカインを添加後更に共培養すること(「第二培養ステップ」)を更に含んでもよい。
【0043】
第二培養ステップは、培養0~6日目の間に1回以上第二サイトカインの添加を含んでもよい。例えば、第二培養ステップは、培養0日目および3日目にそれぞれ1回、第二サイトカインの添加を含んでもよい。
【0044】
第二培養ステップは、培養14日サイクルの最初の6日間に第二サイトカインおよびフィーダー細胞の添加を含んでもよい。例えば、第二培養ステップは、14日サイクル中にフィーダー細胞の添加、ならびにサイクル毎に1回、各サイクルの3日目および6日目に第二サイトカインの添加を含んでもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、第一サイトカインは、IL-2であってもよい。いくつかの実施形態では、第二サイトカインは、IL-21であってもよい。いくつかの実施形態では、第二サイトカインを、10~1000、10~500、10~100、20~100、30~100、40~100、50~100または10~50ng/mLの濃度で使用してもよい。いくつかの実施形態では、0~6日目に1回以上第二サイトカインを添加する培養は、優れた増殖および/または抗がん活性を示し得る。いくつかの実施形態では、14日サイクル中の6日間にフィーダー細胞および第二サイトカインを添加する培養は、優れた増殖および/または抗がん活性を示し得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、1:1~100、1:1~90、1:1~80、1:1~70、1:10~65、1:20~65、1:30~65、1:40~65、1:50~65または1:55~65の混合比で末梢血単核細胞およびフィーダー細胞(例えば、ジャーカット細胞およびEBV-LCL細胞)を含むことによって、共培養を行ってもよい。
【0047】
共培養を培地で行うことができ、当技術分野においてNK細胞に対して末梢血単核細胞を誘発および増殖のために通常使用されるいずれもの適切な培地をかかる培地として限定されることなく使用してもよい。例えば、RPMI-1640、DMEM、x-vivo
10、x-vivo20、またはcellgro SCGM培地をかかる培地として使用してもよい。加えて、温度などの培養条件は、当技術分野において公知の末梢血単核細胞のいずれかの適切な培養条件に従ってもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、産生されたNK細胞内で、CD56+NK細胞の比または純度は、全細胞に対して85%以上、90%以上、または95%以上、または98%以上であってもよい。いくつかの実施形態では、産生されたNK細胞内で、全細胞に対するT細胞の比は、15%以下、10%以下、5%以下、2%以下、1%以下であってもよい。
【0049】
がん治療のための細胞治療用組成物
いくつかの実施形態によれば、がん治療のための細胞治療用組成物は、末梢血由来CD56+NK細胞およびサイトカインを含んでもよい。
【0050】
本明細書では、用語「末梢血由来」は、細胞が「末梢血の全血」または「白血球アフェレーシスをして末梢血から単離された白血球」由来であることを意味する。末梢血由来CD56+NK細胞を、末梢血単核細胞(PBMC)由来CD56+NK細胞と互換的に使用してもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、サイトカインを、18~180,000、20~100,000、50~50,000、50~1,000、50~900、50~800、50~700、50~600、50~550、100~550、150~550、200~550、250~550、300~550、350~550、400~550、450~550IU/mLの濃度で使用してもよい。サイトカインをこれらの範囲で使用する場合、がん治療組成物中に含まれるNK細胞のアポトーシスを抑制し、NK細胞の抗がん活性を増大し得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、組成物は、サイトカインとしてIL-2を含んでもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、CD56+NK細胞を、本明細書において他所に記載されているように得てもよい。例えば、CD56+NK細胞を、フィーダー細胞(例えば、照射ジャーカット細胞および照射EBV-LCL細胞)と共に共培養することによって得てもよい。いくつかの実施形態では、全細胞に対するCD56+NK細胞の比(純度)は、85%以上、90%以上、95%以上、または98%以上であってもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、がんは、血液がん、胃がん、膵がん、胆管がん、結腸がん、乳がん、肝がん、卵巣がん、肺がん、腎がん、前立腺がんまたは神経芽細胞腫であってもよいが、これらに限定されない。
【0055】
いくつかの実施形態では、組成物はT細胞を含まなくてもよく、微量のT細胞のみを含んでもよい。例えば、組成物における全細胞に対するT細胞の比は、15%未満、10%未満、5%未満、2%未満、1%以下未満であってもよい。
【0056】
本明細書では、用語「T細胞」は、以前に出会った抗原を「記憶」し、B細胞に情報を提供し、それにより、抗体の産生を亢進して細胞免疫系において重要な役割を果たすことができる、胸腺由来のリンパ球を表す。これらのT細胞は種々の抗原の中で非常に小さな差異を識別して同種抗原に対する免疫応答を誘発するので、自己治療は可能であるが、同種治療のために使用される限度があり得る。したがって、T細胞を含まない細胞治療用組成物は、同種移植に適切であり得る。
【0057】
本明細書では、用語「細胞治療薬」は、増殖などの一連の作用により治療、診断、およ
び予防のために、ならびに他の方法によって細胞および組織の機能を回復または細胞の生物学的特性を変更するためにインビトロでの自己、同種、および異種間生細胞のスクリーニングのために使用される医薬を表す。細胞治療薬は、米国において1993年から、韓国において2002年から医薬品として規制されている。これらの細胞治療薬は、二分野に大きく分類され得、すなわち、第一は、組織再生または臓器機能回復のための幹細胞治療薬であり、第二は、インビボでの免疫応答の阻害または免疫応答の増強などの免疫応答の調節のための免疫細胞治療薬である。
【0058】
本明細書に記載されている細胞治療用組成物の投与経路は、組成物が標的組織に到達する限り、いずれもの適切な経路であってもよい。投与は、非経口投与、例えば、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、または皮内投与であってもよいが、これらに限定されない。
【0059】
本明細書に記載されている細胞治療用組成物を、細胞治療に適したまたは通常は使用される薬剤的に許容可能な担体と共に、適切な形態で製剤してもよい。「薬剤的に許容可能な」は、生理学的に許容可能であり、ヒトの体に投与された場合に、胃腸疾患、眩暈、もしくは同種のものなどのアレルギー反応、またはそれに類似の反応を通常は引き起こさない組成物を表す。薬剤的に許容可能な担体としては、例えば、水、適切な油、生理食塩水、水性グルコースおよびグリコール、および同種のものなどの非経口投与用担体を挙げることができ、安定剤および防腐剤を更に挙げることができる。適切な安定剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、またはアスコルビン酸、ショ糖、アルブミンなどが挙げられる。適切な防腐剤としては、DMSO、グリセロール、エチレングリコール、ショ糖、トレハロース、デキストロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0060】
細胞治療用組成物を、細胞治療薬を標的細胞に移動し得るいずれものデバイスにより投与してもよい。
【0061】
細胞治療用組成物は、疾病の治療のための細胞治療薬の治療有効量を含んでもよい。用語「治療有効量」は、研究者、獣医師、内科医、または他の臨床医により見做される組織系、動物、またはヒトにおける生物学的または医学的応答を誘発し、治療しようとする疾病または障害の徴候の緩和を誘発する量を含む、有効成分または細胞治療用組成物の量を意味する。細胞治療用組成物中に含まれる細胞治療薬を所望の効果に応じて変更してもよいことは、当業者には明白であろう。したがって、細胞治療薬の最適含有率は、当業者により容易に決定してよく、疾病の種類、疾病の重症度、組成物中に含まれる他成分の含有率、製剤の種類、ならびに年齢、体重、一般的健康状態、性別および患者の食事、投与時間、投与経路、組成物の分泌率、治療期間、ならびに同時に使用される薬物を含む様々な因子に応じて調節してもよい。全ての因子を考慮することにより副作用のない最少量によって最大効果を得ることができる量を含むことが重要である。例えば、細胞治療用組成物は、体重kg当たり1×10~5×10細胞の細胞治療薬を含んでもよい。
【0062】
がんの予防または治療方法
更に、本発明の別の態様によれば、がんの予防または治療方法を提供し、方法は、末梢血由来CD56+ナチュラルキラー細胞およびサイトカインを含む抗がん用細胞治療用組成物を対象に投与することを含む。用語「対象」は、治療、観察、または試験のための対象である哺乳類、好ましくはヒトを表す。対象は、これらに限定されないが、血液がん、胃がん、膵がん、胆管がん、結腸がん、乳がん、肝がん、卵巣がん、肺がん、腎がん、前立腺がんまたは神経芽細胞腫の患者であってもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、成人の場合、細胞治療用組成物を、1日1回~数回、投与してもよい。細胞治療用組成物を毎日または2~180日間隔で投与してよく、組成物中に
含まれる細胞治療薬は、1×10~1×1011の末梢血由来CD56+ナチュラルキラー細胞、例えば、体重kg当たり約1×10~1×10のNK細胞を含んでもよい。いくつかの実施形態では、細胞治療用組成物中の末梢血由来CD56+ナチュラルキラー細胞は、少なくとも約90%の純度である。いくつかの実施形態では、サイトカインは、約50~50,000IU/mlの範囲の濃度のIL-2である。
【0064】
いくつかの実施形態では、本発明の細胞治療用組成物を、直腸、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内、経皮、局所、眼内、または皮内経路による投与など、いずれもの適切な方法によって投与してもよい。いくつかの実施形態では、組成物中に含まれるNK細胞は同種であってもよい、すなわち、治療される対象以外のヒトから得てもよい。いくつかの実施形態では、ヒトは健常人またはがん患者であってもよい。いくつかの実施形態では、組成物中に含まれるNK細胞は自己であってもよい、すなわち、治療される対象から得てもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているNK細胞および本明細書に開示されているNK細胞を含む細胞治療用組成物を、がん以外の疾病または病態の治療のために使用してもよい。NK細胞は、例えば、T細胞の調節による免疫系の調節に重要な役割を果たし、したがって、NK細胞を有する細胞治療用組成物を投与して免疫系に関連する病態を治療することが報告されている。例えば、細胞治療用組成物を投与して神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病およびパーキンソン病)または自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬、脊椎関節症、SLE、シェーグレン症候群、全身性硬化症)を治療してもよい。
【0066】
有利な効果
本発明の特徴および利点は次のように要約される:
【0067】
(a)本発明は、ナチュラルキラー細胞の製造方法に関する。
【0068】
(b)ナチュラルキラー細胞の製造方法によれば、T細胞などを取り除いた高純度ナチュラルキラー細胞を様々な高価なサイトカインを使用しないで製造することができるので、がんの予防および治療、特に、ナチュラルキラー細胞を使用する同種治療の効果を増強することが可能である。
【0069】
(c)本発明は、末梢血由来CD56+NK細胞およびサイトカインを含む抗がんのための細胞治療用組成物に関する。
【0070】
(d)本発明の組成物は、最小限(例えば、約1%未満)のT細胞と共に高純度ナチュラルキラー細胞を含み、したがって、組成物を、自己治療だけでなく同種治療に効果的に使用してもよい。
【実施例
【0071】
次の実施例を提供し、特定の具体的特徴および/または実施形態を例証する。これらの実施例は、本開示を、記載されている特定の特徴または実施形態に限定するものと解釈されるべきでない。
【0072】
実施例1.CD56+ナチュラルキラー(NK)細胞の製造
CD56+細胞およびCD3-/CD56+細胞を、次の方法によってPBMCから単離した。第一に、PBMCをフィコール-ハイパック密度勾配法を使用して血液から単離してから、細胞を計数した。
【0073】
実施例1-1.CD56+細胞製造のための調製
計数されたPBMCをMACSバッファー(1×PBS+0.5%HSA)と共に添加し、懸濁し、CD56マイクロビーズ(Miltenyi Biotec社)と共に添加し、1.0×10のPBMC当たり1~20μLとし、それから、2~8℃で5~30分間インキュベートした。インキュベーション後、MACSバッファーを添加し、混合してから、混合物を遠心分離(600×g)して細胞を沈殿させた。遠心分離後、上澄み液を取り除き、MACSバッファーを添加することにより細胞を懸濁し、MACSセパレーターを連結したカラムに添加した。MACSバッファーはカラムを通過し、非特異的結合を除去した。カラムをMACSセパレーターから分離し、15mLコニカルチューブに移してから、MACSバッファーと共に添加してカラムに結合したCD56+細胞を単離した。
【0074】
実施例1-2.CD3-/CD56+細胞製造のための調製
計数されたPBMCをMACSバッファー(1×PBS±0.5%HSA)と共に添加し、懸濁し、CD3マイクロビーズ(Miltenyi Biotec社)と共に添加し、1.0×10のPBMC当たり1~20μLとし、それから、2~8℃で5~30分間インキュベートした。インキュベーション後、MACSバッファーを添加し、混合してから、混合物を遠心分離(600×g)して細胞を沈殿させた。遠心分離後、上澄み液を取り除き、MACSバッファーを添加することにより細胞を懸濁し、MACSセパレーターを連結したカラムに添加した。MACSバッファーはカラムを通過し、CD3-細胞を集めた。計数されたCD3-細胞をMACSバッファー(1×PBS+0.5%HSA)と共に添加し、懸濁し、CD56マイクロビーズ(Miltenyi Biotec社)と共に添加し、1.0×10のCD3-細胞当たり1~20μLとし、それから、2~8℃で5~30分間インキュベートした。インキュベーション後、MACSバッファーを添加し、混合してから、混合物を遠心分離(600×g)して細胞を沈殿させた。遠心分離後、上澄み液を取り除き、MACSバッファーを添加することにより細胞を懸濁し、MACSセパレーターを連結したカラムに添加した。MACSバッファーはカラムを通過し、非特異的結合を除去した。カラムをMACSセパレーターから分離し、15mLコニカルチューブに移してから、MACSバッファーと共に添加してカラムに結合したCD3-/CD56+細胞を単離した。
【0075】
実施例1-3.CD56+細胞およびCD3-/CD56+細胞を使用するNK細胞の製造
実施例1-1および1-2のようにPBMCから単離されたCD56+細胞またはCD3-/CD56+細胞を、100Gy放射線で照射されたフィーダー細胞(ジャーカット細胞およびEBV-LCL細胞)の調製された組合せと共に500IU/mLの濃度でIL-2と共に添加されたFBS10%を含むRPMI-1640培地中に添加し、それから、37℃、5%COにおいてインキュベーター内で共培養した。(CD56+細胞および/またはCD3-/CD56+細胞):(ジャーカット細胞):(EBV-LCL細胞)の比は、約1:30:30であった。
【0076】
一方、ジャーカット細胞をATCC(ATCC TIB-152)から得てもよく、EBV-LCL細胞を次の方法により調製した:30×10のPBMCを9mLの培養培地に添加し、混合物をT25培養フラスコに添加してから、9mのEBV上澄み液を添加した。80μLのシクロスポリンAを添加してから、37℃で培養した。培養7日後、上澄み液の半分を除き、新しい培養培地を添加してから、40μLのシクロスポリンAを添加した。培養28日まで、7日毎に1回、7日目に同じ方法を反復した。培養28日後、細胞株は使用可能であり、この時点から、シクロスポリンAを添加しないで培養培地中で細胞株を培養した。
【0077】
実施例2.CD56+ナチュラルキラー(NK)細胞(IL-2/IL-21処置)の製造
IL-2(500IU/mL)の代わりにIL-2(500IU/mL)およびIL-21(50ng/mL)を添加したこと以外、実施例1(1-1~1-3)と同じ方法を使用してNK細胞を製造した。
【0078】
比較例1.CD56+細胞単離ステップ(IL-2処置)を有しないナチュラルキラー(NK)細胞の製造
フィコール-ハイパック密度勾配法を使用して血液からPBMCを単離した。PBMCを、100Gy放射線で照射された調製されたフィーダー細胞(ジャーカット細胞およびEBV-LCL細胞)と共に500IU/mLの濃度でIL-2と共に添加されたFBS10%を含むRPMI-1640培地中に添加し、それから、37℃、5%COにおいてインキュベーター内で共培養した。
【0079】
比較例2.CD56+細胞単離ステップ(IL-2/IL-21処置)を有しないナチュラルキラー(NK)細胞の製造
IL-2(500IU/mL)の代わりにIL-2(500IU/mL)およびIL-21(50ng/mL)の添加以外、比較例1と同じ方法を使用してNK細胞を製造した。
【0080】
比較例3および4.CD56+細胞単離ステップを有しないナチュラルキラー(NK)細胞の製造
PBMC:(ジャーカット細胞):EBV-LCL細胞)の比が1:0.5:0.5であること以外、それぞれ、比較例1および2と同様な方法を使用してNK細胞を製造した。
【0081】
実験例1.NK細胞の増殖能の確認
実施例1、2および比較例1、2によるCOインキュベーター内で培養されたNK細胞のそれぞれに関して、T25培養フラスコ内の培養6日目、1.0×10~2.0×10/mLの細胞数に基づいて350mLバッグ中に細胞を接種し、更に4日間培養した。培養10日目、1.0×10~2.0×10/mLの細胞数に基づいて1Lバッグ中に細胞を接種し、更に4日間培養した。そして、培養14日目、1.0×10~2.0×10/mLの細胞数に基づいて1Lバッグ中に細胞を接種してから、更に3~6日間培養した。
【0082】
図1Aは、培養中のNK細胞の倍増加(fold increase)を図示する。図1Aおよび下
表1に示されるように、実施例1のCD56+NK細胞(CD56+およびCD3-/CD56+)は、0日目と比較して17日目に、それぞれ、2675倍および1903倍増殖したが、比較例1のPBMC細胞は0日目と比較して17日目に1768倍増殖した。
【表1】
【0083】
図1Bは、NK細胞の倍増加および集団倍加数(PDL)を図示する。更に、図1Bに示されているように、比較例1(IL-21なしのPBMC)および比較例2(IL-21ありのPBMC)のPBMCは、0日目と比較して、それぞれ、243倍および1248倍増殖したが、実施例1(IL-21なしのCD56)および実施例2(IL-21ありのCD56)のCD56+NK細胞は、0日目と比較して、それぞれ、2990倍および20434倍増殖した。
【0084】
実験例2.CD56+NK細胞の純度の確認
実施例1、2および比較例1、2のNK細胞をFACS染色バッファーで1回洗浄し、100μL中に懸濁してから、蛍光に結合するモノクローナル抗体と混合した後、暗状態下20~30分間2~8℃で貯蔵した。1回更なる洗浄後、細胞を、300~500μLのFACS染色バッファー中に懸濁してから、チューブ当たり10,000~100,000細胞を得て、フローサイトメーターのCD56-FITC/CD3-PE/CD20-PerCP5/CD14-APCパネルを使用することにより分析した。CD56+NK細胞の純度は、FSC/SSCゲーティング後CD3-/CD56+領域に導入された細胞の比と定義され、CD20およびCD14はCD3-/CD56+領域における細胞内で発現されなかったことを更に確認した。
【0085】
図2に示されているように、比較例1(IL-21なしのPBMC)および比較例2(IL-21ありのPBMC)のNK細胞の純度は、それぞれ、84.2%および84.7%であったが、実施例1(IL-21なしのCD56)および実施例2(IL-21ありのCD56)のNK細胞の純度は、それぞれ、98.6%および99.2%であった。
【0086】
実験例3.NK細胞のがん細胞傷害性の確認
第一に、慢性骨髄性白血病細胞株であるK562細胞(血液がん、ATCC(登録商標) CCL-243(商標))に対する細胞傷害性を確認した。
【0087】
実験で使用される前に、K562細胞を、7日以上の間に3日の間隔で37±1℃において、FBS 10%を含むRPMI 1640培地中に懸濁されたK562細胞の継代培養によって製造した。
【0088】
製造されたK562細胞を1.0×10細胞/mLの濃度でRPMI-1640培地中に懸濁し、4μMの濃度で蛍光物質(カルセイン-AM)と共に添加した。K562細胞を37±1℃、30分間染色してから、10分の間隔で反転した。蛍光物質で染色されたK562細胞を3,300rpmで3分間遠心分離し、3回洗浄してから、1.0×10細胞/mLの比でFBS 10%を含むSNK培地中に懸濁した。K562細胞を、ウェル当たり1.0×10細胞の量で丸底マイクロウェルプレート(96ウェル)中に接種した。
【0089】
培養14~20日目の実験例1のNK細胞(エフェクター細胞)を懸濁し、それぞれ、1.0×10細胞/mL、3.0×10細胞/mL、1.0×10細胞/mLおよび0.5×10細胞/mLの比でFBS 10%を含むRPMI-1640培地中に希釈した。
【0090】
それぞれ、各3ウェル(三重反復)に対してウェル当たり100μLの濃度で標的細胞(K562細胞)を接種したプレートに、希釈されたエフェクター細胞を接種した。この場合、エフェクター細胞および標的細胞の比は、下表2に示す。
【表2】
【0091】
本実験に使用されたプレートデザインを図3に示しており、ネガティブコントロール群(自然)では、蛍光染色K562生細胞を添加し、ポジティブコントロール群(最大放出)では、K562細胞を、TX-100を使用して完全に殺傷し、最大蛍光を示した。
【0092】
標的細胞およびエフェクター細胞を播種されたプレートを1000rpmで5分間遠心分離し、37±1℃、3~4時間培養してから、1000rpmで5分間、再度、遠心分離した。遠心分離後、80μLの上澄み液を黒色プレート(96ウェル)へ移してから、蛍光マイクロプレートリーダーを使用して蛍光量を測定し、がん細胞に対する細胞傷害性を、下記式1を使用して算出した。
【数1】
【0093】
図4Aおよび下表3は、様々なE:T比におけるK562細胞の溶解%を示す。図4Aおよび下表2に示されているように、比較例3(IL-21なしのPBMC)および比較例4(IL-21ありのPBMC)と比較したとき、実施例1(IL-21なしのCD56+)および実施例2(IL-21ありのCD56+)により培養されたCD56+細胞は、より高い抗がん活性を示した。
【表3】
【0094】
次に、NK細胞に対してより大きな耐性を有することが知られている固形腫瘍細胞に対する細胞傷害性を確認する。AGS(胃がん、ATCC(登録商標) CRL-1739(商標)、A549(肺がん、ATCC(登録商標) CRL-185(商標))、およびMDA-MB0231(乳がん、ATCC(登録商標) HTB-26(商標))を、固形腫瘍細胞株として使用した。
【0095】
各固形腫瘍細胞を、CYTO-ID(登録商標) Green長期トレーサーキット(Enzo Life Sciences Inc.)を使用して緑色蛍光マーカーでタグ付けし、プレートに接種して、24時間培養した。翌日、NK細胞およびがん細胞を、0.5:1の比で48時間反応させた。48時間後、フローサイトメーターを使用して緑色蛍光を示す細胞数を測定することによって、細胞傷害性を確認した。
【0096】
図4Bに示されているように、実施例3(IL-21なしのPBMC)および比較例2(IL-21ありのPBMC)と比較したとき、実施例1(IL-21なしのCD56+)および実施例2(IL-21ありのCD56+)により培養されたCD56+細胞は、より高い抗がん活性を示した。
【0097】
実験例4.IL-21処置のタイミングおよび数に依存するNK細胞の増殖能の比較
IL-21処置のタイミングによるNK細胞の増殖能を評価するため、下記概略の通り実験を行った。
【0098】
実施例1の方法によりCD56+NK細胞を製造したが、0~6日目(D0~6群)、6~10日目(D6~10群)、10~14日目(D10~14群)、または14~17日目(D14~17群)の間で、IL-21(50ng/mL)で処置し、CD56+NK細胞の増殖能を実験例1による方法を使用して比較した。
【0099】
NK細胞をIL-21で処置した:D0~6群に対して0および3日目に2回、D6~10群に対して6日目に1回、D10~14群に対して10日目に1回、D14~17群に対して14日目に1回。コントロール群については、NK細胞をIL-21で処置しなかった。
【0100】
図5Aおよび表4に示されているように、D10~14群およびD14~17群は、コントロール群と比較して、増殖能の有意差を示さなかったが、D0~6群およびD6~10群は、コントロール群と比較して、増殖能増大を示した。特に、D0~6群は、最も大きな増殖倍率の増加を示した。
【表4】
【0101】
IL-21処置の数によるNK細胞の増殖能を評価するため、下記概略の通り実験を行った。
【0102】
実施例1の方法によりCD56+NK細胞を製造したが、0~3日目(D0~3群)、3~6日目(D3~6群)、または0~6日目(D0~6群)の間で、IL-21(50ng/mL)で処置し、CD56+NK細胞の増殖能を実験例1による方法を使用して比較した。
【0103】
NK細胞をIL-21で処置した:D0~3群に対して0日目に1回、D3~6群に対して3日目に1回、D0~6群に対して0および3日目に2回。コントロール群については、NK細胞をIL-21で処置しなかった。
【0104】
図5Bおよび表5に示されているように、培養初期段階にIL-21処置した全ての群は、コントロール群と比較して、増殖倍率の増加を示した。特に、D0~6群は、最も大きな増殖倍率の増加を示した。
【表5】
【0105】
実験例5.IL-21処置の濃度に依存するNK細胞の増殖能の比較
実施例1の方法によりCD56+NK細胞を製造したが、0ng/mL、10ng/mL、30ng/mL、50ng/mLまたは100ng/mLの濃度を有するIL-21で2回処置し、CD56+NK細胞の増殖能を実験例1による方法を使用して比較した。
【0106】
図6に示されているように、10ng/mLの濃度を有するIL-21で処置した場合でさえ、NK細胞は、IL-21処置しないNK細胞と比較して、より大きな増殖倍率を示し、IL-21の濃度が10ng/mL~50ng/mLの間で増加すると共に、NK細胞の増殖倍率は増加した。しかしながら、100ng/mLの濃度を有するIL-21で処置する場合、NK細胞は、50ng/mLの濃度を有するIL-21で処理されたNK細胞との増殖の有意差を示さなかった。
【0107】
実験例6.IL-21処置のタイミングおよび数に依存するNK細胞の細胞傷害性の比較
IL-21処置のタイミングによるがん細胞に対するNK細胞の細胞傷害性を評価するため、下記概略の通り実験を行った。
【0108】
実施例1の方法によりCD56+NK細胞を製造したが、0~6日目(D0~6群)、6~10日目(D6~10群)、10~14日目(D10~14群)、または14~17日目(D14~17群)の間でIL-21(50ng/mL)で処置し、血液がん細胞(K562細胞、CCL-243(商標))に対するCD56+NK細胞の細胞傷害性を実験例3による方法を使用して比較した。
【0109】
NK細胞をIL-21で処置した:D0~6群に対して0および3日目に2回、D6~10群に対して6日目に1回、D10~14群に対して10日目に1回、D14~17群に対して14日目に1回。コントロール群については、NK細胞をIL-21で処置しなかった。
【0110】
図7Aおよび表6に示されているように、D14~17群を除いてIL-21処置したNK細胞の全ての群は、コントロール群と比較して、より大きな抗がん活性を示した。
【表6】
【0111】
更に、CD56+NK細胞の製造された群のそれぞれに対して、固形腫瘍細胞に対するCD56+NK細胞の細胞傷害性を実験例3による方法を使用して比較した。AGS(胃がん、ATCC(登録商標) CRL-1739(商標)、A549(肺がん、ATCC(登録商標) CRL-185(商標))、およびMDA-MB0231(乳がん、ATCC(登録商標) HTB-26(商標))を、固形腫瘍細胞株として使用した。
【0112】
図7Bに示されているように、培養初期段階(D0~6群)にIL-21処置したNK細胞は、全ての3種類の固形腫瘍細胞に対する最も大きな抗がん活性を示した。
【0113】
IL-21処置の数によるNK細胞の増殖能を評価するため、下記概略の通り実験を行った。
【0114】
実施例1の方法によりCD56+NK細胞を製造したが、0~3日目(D0~3群)、3~6日目(D3~6群)、または0~6日目(D0~6群)の間で、IL-21(50ng/mL)で処置し、固形腫瘍細胞に対するCD56+NK細胞の細胞傷害性を実験例3による方法を使用して比較した。AGS(胃がん、ATCC(登録商標) CRL-1739(商標)、A549(肺がん、ATCC(登録商標) CRL-185(商標))、およびMDA-MB0231(乳がん、ATCC(登録商標) HTB-26(商標))を、固形腫瘍細胞株として使用した。
【0115】
NK細胞をIL-21で処置した:D0~3群に対して0日目に1回、D3~6群に対して3日目に1回、D0~6群に対して0および3日目に2回。コントロール群については、NK細胞をIL-21で処置しなかった。
【0116】
図7Cに示されているように、培養初期段階にIL-21処置した全ての群は、コントロール群と比較して、より大きな抗がん活性を示した。
【0117】
実験例7.IL-21処置の濃度に依存するNK細胞の細胞傷害性の比較
実施例1の方法によりCD56+NK細胞を製造したが、0ng/mL、10ng/mL、30ng/mL、50ng/mLまたは100ng/mLの濃度を有するIL-21で2回処置し、血液がん細胞(K562細胞、CCL-243(商標))に対するCD56+NK細胞の細胞傷害性を実験例3による方法を使用して比較した。
【0118】
図8Aに示されているように、IL-21で処置された大部分のNK細胞は、IL-21処置しないNK細胞と比較して、より大きな細胞傷害性を示し、100ng/mLの濃度を有するIL-21で処理した場合、NK細胞は、IL-21で処置されていないNK細胞との増殖の有意差を示さなかった。
【0119】
実施例1の方法によりCD56+NK細胞を製造したが、0ng/mL、10ng/mL、30ng/mL、50ng/mLまたは100ng/mLの濃度を有するIL-21で2回処置し、固形腫瘍細胞(K562細胞、CCL-243(商標))に対するCD56+NK細胞の細胞傷害性を実験例3による方法を使用して比較した。AGS(胃がん、ATCC(登録商標) CRL-1739(商標)、A549(肺がん、ATCC(登録商標) CRL-185(商標))、およびMDA-MB0231(乳がん、ATCC(登録商標) HTB-26(商標))を、固形腫瘍細胞株として使用した。
【0120】
図8Bに示されているように、50ng/mLの濃度を有するIL-21で処置されたNK細胞は、最も大きな抗がん活性を示した。
【0121】
実験例8.フィーダー細胞処置の数に依存するNK細胞の増殖活性の比較
フィーダー細胞での複数処置がNK細胞の増殖を持続するかどうかを分析するため、培養中のNK細胞を14日の間隔で、フィーダー細胞で処置し、NK細胞の増殖を42日間モニターした。
【0122】
IL-21処置に依存するNK細胞増殖の増加を更に分析するため、フィーダー細胞での各処置から6日間(0~6日目、14~20日目、28~34日目)、3日の間隔で2回、NK細胞をIL-21(50ng/mL)で処置した。
【0123】
図9に示されているように、2回以上のフィーダー細胞およびIL-21で処置された場合、NK細胞は有意な増殖倍率の増加を示し、IL-21で処置されたNK細胞はIL-21で処置されていないNK細胞と比較して42日目により大きな増殖倍率を示した(約3.4×1010 対 約5.3×10)。
【0124】
実験例9.特定のがん患者の血液を使用するNK細胞の培養の効果の確認
大腸がん患者のPBMCを使用したことを除き、実施例1の方法により、CD56+NK細胞を17日間で製造した。製造されたNK細胞の増殖能および純度を、実験例1および2による方法を使用して測定した。
【0125】
いくつかの群について、50ng/mLの濃度を有するIL-21で2回(培養0日目および3日目)NK細胞を治療し、IL-21処置の効果を確認した。
【0126】
図10Aに示されているように、IL-21で処置されていないNK細胞数は0日目の8倍に増加したが、IL-21で処置された場合、NK細胞数は0日目の1461倍に増加した。
【0127】
更に、図10Bに示されているように、IL-21で処置されていないNK細胞の純度はたった84.2%であったが、IL-21で処置された場合、NK細胞の純度は99.19%であった。
【0128】
更に、血液がん細胞(K562細胞、CCL-243(商標))に対するIL-21で処置されたNK細胞およびIL-21で処置されていないNK細胞の細胞傷害性を、実験例3による方法を使用して比較した。図10Cに示されているように、IL-21で処置されたNK細胞は、IL-21で処置されていないNK細胞と比較して、より大きな抗がん活性を示した。
【0129】
更に、IL-21で処置されたNK細胞およびIL-21で処置されていないNK細胞のそれぞれに対して、固形腫瘍細胞に対するNK細胞の細胞傷害性を実験例3による方法
を使用して比較した。AGS(胃がん、ATCC(登録商標) CRL-1739(商標)、A549(肺がん、ATCC(登録商標) CRL-185(商標))、およびMDA-MB-231(乳がん、ATCC(登録商標) HTB-26(商標))を、固形腫瘍細胞株として使用した。図10Dに示されているように、IL-21で処置されたNK細胞は、IL-21で処置されていないNK細胞と比較して、より大きな抗がん活性を示した。
【0130】
したがって、本明細書に記載されている方法を使用することにより、NK細胞の充分な増殖を通常示さない特定のがん患者に対してもNK細胞を製造することが可能であり得る。
【0131】
実験例10.治療用組成物中のNK細胞の生存率の確認
培養の6日目に、実施例1、2に従ってCOインキュベーター内で培養されたNK細胞のそれぞれに関して、1.0×10~2.0×10/mLの細胞数に基づいて350mLバッグ中に細胞を接種し、更に4日間培養した。培養10日目、1.0×10~2.0×10/mLの細胞数に基づいて1Lバッグ中に細胞を接種し、更に4日間培養した。そして、培養14日目、1.0×10~2.0×10/mLの細胞数に基づいて1Lバッグ中に細胞を接種してから、更に3~6日間培養した。
【0132】
培養14~20日目のCD56+NK細胞を3回洗浄してから、1%アルブミンを含む主剤(生理食塩水およびハルトマン溶液)中に懸濁して、2×10/mLとした。細胞を4℃、48時間貯蔵してから、細胞生存率を測定した。
【0133】
更に、IL-2の効果を比較するために、CD56+NK細胞を洗浄し、1%アルブミンを含む主剤(生理食塩水、およびハルトマン溶液またはリン酸緩衝食塩水)中に懸濁してから、500IU/mLの濃度でIL-2と共に添加した。4℃、48時間保持後、細胞生存率を測定した。
【0134】
100μLの各組成物を、合計2×10CD56+NK細胞を得るように取り、1mLのFACS染色バッファーで1回洗浄し、遠心分離して、100μLのアネキシンV結合バッファー中に懸濁した。5μLのアネキシンV-FITCおよび5μLの7-AAD(Biolegend社)を、懸濁液に添加し、よく混合し、暗状態下に貯蔵し、室温で15分間反応させてから、フローサイトメトリー前に400μLのアネキシンV結合バッファーと共に添加して、5秒間混合した。その後、チューブ当たり10,000~100,000細胞を得て、分析した。ネガティブコントロールとしてアネキシンV-FITCおよび7-AADで染色されていない試験チューブをセットすることによりカットオフを決定し、アネキシンV-FITCまたは7-AADがネガティブである細胞フラクションのパーセンテージにより生存率を表した。
【0135】
図11に示されているように、IL-2処置する場合(IL2あり)、CD56+NK細胞のアポトーシスは阻害された。
【0136】
実験例11.治療用組成物中のNK細胞の細胞傷害性の確認
培養の6日目に、実施例1、2に従ってCOインキュベーター内で培養されたNK細胞のそれぞれに関して、1.0×10~2.0×10/mLの細胞数に基づいて350mLバッグ中に細胞を接種し、更に4日間培養した。培養10日目、1.0×10~2.0×10/mLの細胞数に基づいて1Lバッグ中に細胞を接種し、更に4日間培養した。そして、培養14日目、1.0×10~2.0×10/mLの細胞数に基づいて1Lバッグ中に細胞を接種してから、更に3~6日間培養した。
【0137】
実験で使用される前に、がん細胞株を、次の条件下で懸濁し、3日の間隔で1週間以上、37±1℃で継代培養することにより製造した。
【0138】
CCRF-SB(血液がん、ATCC(登録商標) CCL-120(商標))、AGS(胃がん、ATCC(登録商標) CRL-1739(商標))およびMIA-PACA2(膵がん、ATCC(登録商標) CRL-1420(商標)):RPMI培地+10%FBS、
【0139】
SNU245(胆管がん、KCLB No.00245)、HCT15(結腸がん、ATCC(登録商標) CCL-225(商標))およびNIH:OVCAR-3(卵巣がん、ATCC(登録商標) HTB-161(商標)):RPMI培地+10%FBS+25mM HEPES、ならびに
【0140】
MDA-MB-231(乳がん、ATCC(登録商標) HTB-26(商標)):DMEM培地+10%FBS。
【0141】
培養中のがん細胞株(血液がん細胞株を除く)を、トリプシンを使用して培養皿から剥離し、培地に懸濁して5×10/mLとしてから、ウェル当たり1mLで24ウェルに接種し、1日間付着させた。NK細胞から識別するため、懸濁培養細胞である血液がん細胞株を、緑色蛍光で標識し、培地に懸濁して5×10/mLとして、ウェル当たり1mLで24ウェルに接種した。
【0142】
第一に、がん細胞株の中でもAGS(胃がん、ATCC(登録商標) CRL-1739(商標)、MIA-PACA2(膵がん、ATCC(登録商標) CRL-1420(商標))、SNU245(胆管がん、KCLB No.00245)、HCT15(結腸がん、ATCC(登録商標) CCL-225(商標))およびMDA-MB-231(乳がん、ATCC(登録商標) HTB-26(商標))で接種された24ウェルプレートでは、CD56+NK細胞を1日後に添加して細胞傷害性を観察した。エフェクター細胞(CD56+NK細胞)および標的細胞(がん細胞株)を下表7に示す。
【表7】
【0143】
エフェクター細胞および標的細胞を接種されたプレートを37±1℃で1~3日間培養し、この時点で、抗がん活性はIL-2により増大するかどうかを観察するために、500IU/mlのIL-2を実験群へ更に添加した。ネガティブコントロール群では、CD56+NK細胞(エフェクター細胞)を添加せず、抗がん活性反応はなかった。
【0144】
培養1~3日後、細胞をRPMIで3回洗浄して懸濁された形態で存在するCD56+NK細胞を除いてから、ウェル中に残っているがん細胞株を、トリプシンを使用して剥離し、トリパンブルーで染色して計数した。その後、標的細胞およびエフェクター細胞を接
種されたプレートを、37±1℃で1~3日間培養してから、24ウェル中に存在する緑色蛍光で標識された細胞を、フローサイトメーターを使用して計数した。
【0145】
がん細胞株に対する細胞傷害性を、下記式2を使用して算出した。
【数2】
【0146】
結果として、図12に示されているように、CD56+NK細胞のみを処置する場合(IL2なし)と比較して、IL-2を一緒に処置する場合(IL2あり)、がん細胞傷害性は増大することが確認された。
【0147】
次に、CD56+NK細胞を24ウェルプレートに添加し、これにNIH:OVCAR-3(卵巣がん、ATCC(登録商標) HTB-161(商標))細胞をがん細胞株の中で付着させて細胞傷害性を観察し、標的細胞(がん細胞株)およびエフェクター細胞(CD56+NK細胞)の比を下表8に示した。
【表8】
【0148】
エフェクター細胞および標的細胞を接種されたプレートを37±1℃で1日間培養し、抗がん活性はIL-2により増大するかどうかを観察するために、500IU/mlのIL-2を実験群へ更に添加した。ネガティブコントロール群では、CD56+NK細胞を添加せず、抗がん活性反応はなかった。
【0149】
培養1日後、細胞をRPMIで3回洗浄して懸濁された形態で存在するCD56+NK細胞を除いてから、ウェル中に残っているがん細胞株を、カメラを使用して撮影した。
【0150】
結果として、図13に示されているように、がん細胞株をCD56+NK細胞のみ(-IL2)で治療した場合と比較して、がん細胞株をIL-2と共に(+IL2)治療した場合にがん細胞傷害性は増大した。
【0151】
次に、CD56+NK細胞を24ウェルプレートに添加し、これにAGS(胃がん、ATCC(登録商標) CRL-1739(商標))細胞をがん細胞株の中で付着させて細胞傷害性を観察し、標的細胞(がん細胞株)およびエフェクター細胞(CD56+NK細胞)の比を下表9に示した。
【表9】
【0152】
エフェクター細胞および標的細胞を接種されたプレートを37±1℃で1日間培養し、抗がん活性はIL-2により増大するかどうかを観察するために、500IU/mlのIL-2を実験群へ更に添加した。ネガティブコントロール群では、CD56+NK細胞を添加せず、抗がん活性反応はなかった。
【0153】
培養1日後、細胞をRPMIで3回洗浄して懸濁された形態で存在するCD56+NK細胞を除いてから、ウェル中に残っているがん細胞株を、カメラを使用して撮影した。
【0154】
結果として、図14に示されているように、がん細胞株をCD56+NK細胞のみ(-IL2)で治療した場合と比較して、がん細胞株をIL-2と共に(+IL2)治療した場合にがん細胞傷害性は増大した。
【0155】
実験例12.動物モデルにおけるNK細胞の抗がん効果の確認
大腸がん患者のPBMCを使用したことを除き、実施例1、2および比較例1、2の方法により、CD56+NK細胞を17日間で製造する。実施例1、2および比較例1、2によるCOインキュベーター内で培養されたNK細胞のそれぞれに関して、T25培養フラスコ内の培養6日目、1.0×10~2.0×10/mLの細胞数に基づいて350mLバッグ中に細胞を接種し、更に4日間培養する。培養10日目、1.0×10~2.0×10/mLの細胞数に基づいて1Lバッグ中に細胞を接種し、更に4日間培養する。そして、培養14日目、1.0×10~2.0×10/mLの細胞数に基づいて1Lバッグ中に細胞を接種してから、更に3~6日間培養する。
【0156】
ヒトがんの動物モデルを、ヒトがん細胞株をマウスに異種移植することによって構築する。次のヒトがん細胞株を使用する:AGS(胃がん)、MIA-PACA2(膵がん)、SNU245(胆管がん)、HCT15(結腸がん)およびNIH:OVCAR-3(卵巣がん)、およびMDA-MB-231(乳がん)。がんの異種移植後、マウスを無作為にグループ化し、マークする。コントロール群に対し、200μLのハルトマン溶液を尾静脈内に注射する。NK細胞治療(+IL-2)群に対して、1×10のNK細胞/200μLおよび500IU/mLのIL-2を、がん異種移植1週間後から2~3日間隔で5回尾静脈内に注射する。NK細胞治療(-IL-2)群に対して、1×10のNK細胞/200μLを、がん異種移植1週間後から2~3日間隔で5回尾静脈内に注射する。
【0157】
試験期間中腫瘍増殖を追跡するため、週3回体重および腫瘍量についてマウスを試験する。主軸および短軸の長さを、ノギスを使用して測定し、次式(式3)により腫瘍量を決定する。
式3
腫瘍量(mm)=(主軸長さ(mm))×(短軸長さ(mm))×0.5
【0158】
NK細胞治療(-IL-2)群は、各がん型のルシフェラーゼ画像に基づいて、コントロール群と比較して、約50%の治療8週間後に腫瘍増殖の減少を示す。NK細胞治療(+IL-2)群は、各がん型に対し、コントロール群と比較して、約60%の腫瘍増殖の更なる減少を示す。
【0159】
実験例13.がん患者のNK細胞の抗がん効果の確認
大腸がん患者のPBMCを使用したことを除き、実施例1、2および比較例1、2の方法により、CD56+NK細胞を18日間で製造する。実施例1、2および比較例1、2によるCOインキュベーター内で培養されたNK細胞のそれぞれに関して、T25培養フラスコ内の培養6日目、1.0×10~2.0×10/mLの細胞数に基づいて350mLバッグ中に細胞を接種し、更に4日間培養する。培養10日目、1.0×10~2.0×10/mLの細胞数に基づいて1Lバッグ中に細胞を接種し、更に4日間培養する。そして、培養14日目、1.0×10~2.0×10/mLの細胞数に基づいて1Lバッグ中に細胞を接種してから、更に3~6日間培養する。
【0160】
大腸がん患者を無作為にグループ化し、マークする。コントロール群に対して、NK細胞を注射しない。NK細胞治療(+IL-2)群に対して、体重kg当たり1~3×10のNK細胞および500IU/mLのIL-2を6週の間隔で静脈内に3回注射する。NK細胞治療(-IL-2)群に対して、体重kg当たり1~3×10のNK細胞を6週の間隔で静脈内に6回注射する。
【0161】
腫瘍増殖を、1、3、6、12ヶ月でモニターする。12ヶ月後、NK細胞治療(-IL-2)群は腫瘍サイズの全体的減少を示し、NK細胞治療(+IL-2)群は腫瘍サイズの更なる全体的減少を示す。
【0162】
実験例14.アルツハイマー病患者のNK細胞の抗がん効果の確認
大腸がん患者のPBMCを使用したことを除き、実施例1、2および比較例1、2の方法により、CD56+NK細胞を18日間で製造する。実施例1、2および比較例1、2によるCOインキュベーター内で培養されたNK細胞のそれぞれに関して、T25培養フラスコ内の培養6日目、1.0×10~2.0×10/mLの細胞数に基づいて350mLバッグ中に細胞を接種し、更に4日間培養する。培養10日目、1.0×10~2.0×10/mLの細胞数に基づいて1Lバッグ中に細胞を接種し、更に4日間培養する。そして、培養14日目、1.0×10~2.0×10/mLの細胞数に基づいて1Lバッグ中に細胞を接種してから、更に3~6日間培養する。
【0163】
アルツハイマー病患者を無作為にグループ化し、マークする。コントロール群に対して、NK細胞を注射しない。NK細胞治療群に対して、体重kg当たり1~3×10のNK細胞および500IU/mLのIL-2を毎週の間隔で静脈内に6回注射する。
【0164】
患者の認知機能を、1、3、6、12ヶ月でモニターする。12ヶ月後、NK細胞治療群は、改善された認知機能を示す。
【0165】
実験例15.自己免疫疾患患者のNK細胞の抗がん効果の確認
大腸がん患者のPBMCを使用したことを除き、実施例1、2および比較例1、2の方法により、CD56+NK細胞を18日間で製造する。実施例1、2および比較例1、2によるCOインキュベーター内で培養されたNK細胞のそれぞれに関して、T25培養フラスコ内の培養6日目、1.0×10~2.0×10/mLの細胞数に基づいて3
50mLバッグ中に細胞を接種し、更に4日間培養する。培養10日目、1.0×10~2.0×10/mLの細胞数に基づいて1Lバッグ中に細胞を接種し、更に4日間培養する。そして、培養14日目、1.0×10~2.0×10/mLの細胞数に基づいて1Lバッグ中に細胞を接種してから、更に3~6日間培養する。
【0166】
多発性硬化症患者を無作為にグループ化し、マークする。コントロール群に対して、NK細胞を注射しない。NK細胞治療群に対して、体重kg当たり1~3×10のNK細胞および500IU/mLのIL-2を毎週の間隔で静脈内に6回注射する。
【0167】
患者の認知機能を、1、3、6、12ヶ月でモニターする。12ヶ月後、NK細胞治療群は、改善された認知機能を示す。
【0168】
専門用語
例示的実施形態の前述の記載は例証および説明を目的のためだけに示されており、網羅的なものでも本発明を開示されている正確な形態に限定するものでもない。上記教示を踏まえると多くの修正および変化は可能である。上記開示されている実施形態の特定の特徴および態様の様々な組合せまたはサブコンビネーションを作製してもよく、なお、本発明の1つ以上の内である。更に、実施形態に関連していずれもの特定の特徴、態様、方法、特質、特性、質、性状、要素、または同種のものの本明細書における開示を、本明細書に記載されている全ての他の実施形態において使用することができる。したがって、開示されている本発明の様々な様式を形成するために、開示されている実施形態の様々な特徴および様相を、互いと組み合わせるまたは互いに置き換えることができる。したがって、本明細書に開示されている本発明の趣旨は、上記特定の開示されている実施形態によって限定されるべきでないものとする。さらに、本発明は様々な修正物を受け易いが、その代替物、特定の実施例は図面に示されており、本明細書に詳細に記載されている。しかしながら、本発明は開示されている特定の形態または方法に限定されないものとするが、それとは反対に、本発明は記載されている様々な実施形態の趣旨および範囲内ならびに附属のクレーム内にある全ての修正物、均等物、および代替物を包含するものと理解されるべきである。本明細書に開示されているいずれもの方法は、記載されている順序で行う必要はない。本明細書に開示されている方法は、実行者により行われる特定の行為を包含するが、しかしながら、明示的あるいは暗示的にこれらの行為のいずれもの第三者の指示も含むことができる。本明細書に開示されている範囲は、そのいずれかおよび全ての重複部分、部分範囲、および組合せも包含する。
【0169】
本発明の原理および本発明および他の当業者が様々な実施形態ならびに考えられる特定の使用に適した様々な修正と共に利用するように活発になるようにこれらの実際的応用を説明するために実施形態を選択し記載した。代替の実施形態は、前述の記載およびその中に記載されている例示的実施形態よりむしろ、附属された特許請求の範囲によって規定された本発明の当業者に明白になるだろう。
【0170】
「できる(can)」、「できる(could)」、「してもよい(might)」、または「してもよい(may)」などの条件言語は、特に別段に指定されない限り、または使用される文脈内で別段に理解されない限り、他の実施形態は含まないが、特定の実施形態は特定の特徴、要素、および/またはステップを含むと伝えることを通常目的とする。したがって、かかる条件言語は、特徴、要素、および/またはステップが1つ以上の実施形態を多少なりとも必要とすることを暗示することを通常目的としない。
【0171】
用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(having)」などは同義語であり、オープンエンド様式で包含的に使用され、追加の要素、特徴、行為、操作などを排除しない。用語「または(or)」は、例えば、要素一
覧を接続するために使用される場合、用語「または(or)」は、一覧中の要素の1つ、または全てを意味するように、その包含的意味(その排他的意味でない)で使用される。
【0172】
本明細書に開示されている範囲は、そのいずれかおよび全ての重複部分、部分範囲、および組合せも包含する。「まで(up to)」、「少なくとも(at least)」、「より大きい(greater than)」、「未満(less than)」、「間(between)」、および同種のものなどの言語は、記載された数を含む。
【0173】
本明細書で使用されるとき、「約(approximately)」、「約(about)」、および「実質的に(substantially)」などの用語から始まる数は記載された数(例えば、約10%=10%)を含み、なお所望の機能を行うかまたは所望の結果を達成する定められた量に近い量を表す。例えば、用語「約(approximately)」、「約(about)」、および「実質的に(substantially)」は、定められた量の10%未満内、5%未満内、1%未満内、0.1%未満内、および0.01%未満内である量を表す。
【0174】
本明細書で使用されるとき、用語「通常(generally)」は、特定の値、量、または特性値を主に含むかまたは傾向である値、量、または特性値を表す。例として、特定の実施形態では、用語「ほぼ均一(generally uniform)」は、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満、および0.01%未満だけ正確に均一から逸脱する値、量、または特性値を表す。
【0175】
本明細書に開示されている範囲は、そのいずれかおよび全ての重複部分、部分範囲、および組合せも包含する。「まで(up to)」、「少なくとも(at least)」、「より大きい(greater than)」、「未満(less than)」、「間(between)」、および同種のものなどの言語は、記載された数を含む。「約(about)」または「約(approximately)」などの用語から始まる数は、記載された数を含む。例えば、「約5.0cm」は、「5.0cm」を含む。
【0176】
いくつかの実施形態は、概略図と関連して説明されている。しかしながら、概略図は尺度通りに図示されていないと理解されるべきである。距離は単に例証であり、実際の寸法および図示されているデバイスのレイアウトとの正確な関係性を必ずしも有していない。
【0177】
本開示の目的のため、特定の態様、利点、および新規特徴を本明細書に記載している。必ずしも全てのかかる利点をいずれかの特定の実施形態により達成することができるとは限らないと理解されるべきである。したがって、例えば、本明細書に教示または示唆されているように必ずしも他の利点を達成しないで本明細書に教示された1つの利点または一群の利点を達成する方法で、本開示を具体化または実行してもよいと、当業者は認識するだろう。
【0178】
さらに、例証的実施形態を本明細書に記載しているが、均等な要素、修正、省略、組合せ(例えば、様々な実施形態にわたる態様の)、適応および/または変更を有するいずれかおよび全ての実施形態の範囲は、本開示に基づいて当業者により理解されるであろう。クレームにおける限定は、クレーム中に使用される言語に基づいて広義に解釈されるべきであり、本明細書に記載されている実施例または本願の審査中に限定されず、この実施例は非排他的と解釈されるべきである。更に、開示されている方法(processes)および方法(methods)の行為は、順序付け行為および/または挿入追加行為および/または削除行為を含むいずれの方法でも修正してもよい。したがって、クレームに示されている真の範囲および趣旨ならびに均等物の完全な範囲で、本明細書および実施例はほんの例証にすぎないと理解されるものとする。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
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図10D
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図14